(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 651B
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2019101599
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直澄
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062004(JP,A)
【文献】特開2018-110199(JP,A)
【文献】特開2007-329408(JP,A)
【文献】特開2018-113354(JP,A)
【文献】特開2009-218563(JP,A)
【文献】特開2013-033817(JP,A)
【文献】特開2017-045850(JP,A)
【文献】特開2016-096317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、パターンが形成された基板の表面に供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、
前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の
表面に形成する遷移状態膜形成工程と、
前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させることによって、前記遷移状態膜を前記基板の表面から除去する遷移状態膜除去工程とを含
み、
前記遷移状態膜形成工程が開始されてから前記遷移状態膜除去工程が開始されるまでの時間である遷移状態膜形成時間は、前記遷移状態膜形成工程が開始されてから前記昇華性物質の結晶が形成されるまでに要する時間である結晶化時間の半分よりも長く、前記結晶化時間よりも短い、基板処理方法。
【請求項2】
前記遷移状態膜形成時間が、前記結晶化時間の2/3の長さの時間である、請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記遷移状態膜形成工程の実行前に、前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させて前記基板の表面から前記昇華性物質含有液を排除することで、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程をさらに含む、請求項1
または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記遷移状態膜形成工程が、前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させて前記液膜中の前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を形成する工程を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに所定の第1回転速度で前記基板を回転させて前記基板の表面上の前記液膜に遠心力を作用させることによって、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程をさらに含み、
前記遷移状態膜形成工程は、前記薄膜化工程の後、前記第1回転速度よりも低い所定の第2回転速度に前記基板の回転速度を変更して前記液膜中の前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を形成する工程を含む、請求項1
または2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、パターンが形成された基板の表面に供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、
前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに所定の第1回転速度で前記基板を回転させて前記基板の表面上の前記液膜に遠心力を作用させることによって、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程と、
前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の表面に形成する遷移状態膜形成工程と、
前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させることによって、前記遷移状態膜を前記基板の表面から除去する遷移状態膜除去工程とを含み、
前記遷移状態膜形成工程は、前記薄膜化工程の後、前記第1回転速度よりも低い所定の第2回転速度に前記基板の回転速度を変更して前記液膜中の前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を形成する工程を含む、基板処理方法。
【請求項7】
前記遷移状態膜中の前記昇華性物質の固体が、アモルファス固体を含む、請求項1
~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記遷移状態膜中の前記昇華性物質の固体が、微結晶固体を含む、請求項1
~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記遷移状態膜除去工程が、前記遷移状態膜に対して気体を吹き付けることによって、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させる吹付昇華工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記吹付昇華工程が、前記基板の表面の中央領域に気体を吹き付けることによって前記昇華性物質の固体を昇華させて、前記基板の表面の前記中央領域に乾燥領域を形成する乾燥領域形成工程と、前記基板の表面における気体の吹き付け位置を前記基板の表面の周縁領域に向けて移動させながら前記乾燥領域を拡大する乾燥領域拡大工程とを含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、基板の表面に供給する昇華性物質含有液供給ユニットと、
基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに基板を回転させる基板回転ユニットと、
基板の表面上から前記昇華性物質の固体を昇華させる昇華ユニットと、
前記昇華性物質含有液供給ユニット、前記基板回転ユニットおよび前記昇華ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記昇華性物質含有液供給ユニットから、パターンが形成された基板の表面に前記昇華性物質含有液を供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、前記基板回転ユニットによって
前記基板を回転させて前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の
表面に形成する遷移状態膜形成工程と、前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記昇華ユニットによって前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させる遷移状態膜除去工程とを実行するようにプログラムされて
おり、
前記遷移状態膜形成工程が開始されてから前記遷移状態膜除去工程が開始されるまでの時間である遷移状態膜形成時間は、前記遷移状態膜形成工程が開始されてから前記昇華性物質の結晶が形成されるまでに要する時間である結晶化時間の半分よりも長く、前記結晶化時間よりも短い、基板処理装置。
【請求項12】
前記遷移状態膜形成時間が、前記結晶化時間の2/3の長さの時間である、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、基板の表面に供給する昇華性物質含有液供給ユニットと、
基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに基板を回転させる基板回転ユニットと、
基板の表面上から前記昇華性物質の固体を昇華させる昇華ユニットと、
前記昇華性物質含有液供給ユニット、前記基板回転ユニットおよび前記昇華ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記昇華性物質含有液供給ユニットから、パターンが形成された基板の表面に前記昇華性物質含有液を供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、前記基板回転ユニットによって所定の第1回転速度で前記基板を回転させて前記基板の表面上の前記液膜に遠心力を作用させることによって前記液膜を薄膜化する薄膜化工程と、前記基板回転ユニットによって前記基板を回転させて前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の表面に形成する遷移状態膜形成工程と、前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記昇華ユニットによって前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させる遷移状態膜除去工程とを実行するようにプログラムされており、
前記遷移状態膜形成工程は、前記薄膜化工程の後、前記第1回転速度よりも低い所定の第2回転速度に前記基板の回転速度を変更して前記液膜中の前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を形成する工程を含む、基板処理装置。
【請求項14】
液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、パターンが形成された基板の表面に供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、
前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の表面に形成する遷移状態膜形成工程と、
前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させると共に、前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を前記基板の表面から除去する遷移状態膜除去工程とを含み、
前記遷移状態膜は、前記昇華性物質の固体と、前記昇華性物質が溶けた前記溶媒とが混在する状態である、基板処理方法。
【請求項15】
液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、基板の表面に供給する昇華性物質含有液供給ユニットと、
基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに基板を回転させる基板回転ユニットと、
基板の表面上から前記昇華性物質の固体を昇華させる昇華ユニットと、
前記昇華性物質含有液供給ユニット、前記基板回転ユニットおよび前記昇華ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記昇華性物質含有液供給ユニットから、パターンが形成された基板の表面に前記昇華性物質含有液を供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、前記基板回転ユニットによって前記基板を回転させて前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の表面に形成する遷移状態膜形成工程と、前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記昇華ユニットによって前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させると共に、前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を前記基板の表面から除去する遷移状態膜除去工程とを実行するようにプログラムされており、
前記遷移状態膜は、前記昇華性物質の固体と、前記昇華性物質が溶けた前記溶媒とが混在する状態である、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置等の製造工程では、基板に対して必要に応じた処理が行われる。このような処理には、薬液やリンス液等を基板に供給することが含まれる。リンス液が供給された後、リンス液を基板から除去し、基板を乾燥させる。基板を1枚ずつ処理する枚様式の基板処理装置では、基板の高速回転によって基板に付着している液体を除去することにより、基板を乾燥させるスピンドライが行われる。
【0003】
基板の表面にパターンが形成されている場合、基板を乾燥させるときに、基板に付着しているリンス液の表面張力がパターンに作用し、パターンが倒壊することがある。その対策として、IPA(イソプロピルアルコール)等の表面張力が低い液体を基板に供給したり、基板の表面を疎水化してパターンに対して液体が及ぼす表面張力を低減させるために、疎水化剤を基板に供給したりする手法が採られる。しかしながら、IPAや疎水化剤を用いてパターンに作用する表面張力を低減したとしても、パターンの強度によっては、パターン倒壊を充分に防止できないおそれがある。
【0004】
近年、パターン倒壊を防止しつつ基板を乾燥させる技術として昇華乾燥が注目されている。下記特許文献1には、昇華乾燥を行う基板処理方法および基板処理装置の一例が開示されている。特許文献1に記載の昇華乾燥では、昇華性物質の溶液が基板の表面に供給され、基板上のDIW(脱イオン水)が昇華性物質の溶液に置換される。その後、昇華性物質の溶液中の溶媒を蒸発させることによって、昇華性物質が析出し、固体状態の昇華性物質からなる膜が形成される。そして、基板を加熱して昇華性物質を昇華させることによって、固体状態の昇華性物質からなる膜が基板から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された昇華乾燥では、基板上から溶媒を蒸発させて固体状態の昇華性物質からなる膜を形成して基板上から液体を排除した後に、固体状態の昇華性物質を昇華させる。そのため、液体からパターンに作用する表面張力を低減できる。
しかしながら、基板上のパターンには、昇華性物質の固体から力が作用することもあり得る。詳しくは、
図14に示すように、昇華乾燥において形成される昇華性物質の固体は結晶化することある。昇華性物質の結晶Cr中において、昇華性物質の分子が規則的に並んでいる。結晶Crの配向(方位)は、結晶Cr毎に異なっている。そのため、隣接する結晶Cr同士の間には、応力(せん断応力)を伴う界面(結晶界面CI)が発生する。昇華性物質の結晶界面CIに発生する応力に起因して、昇華性物質の結晶界面CIの近傍のパターンに力が作用するおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の1つの目的は、昇華性物質の固体の結晶化に起因する応力の影響を低減して、基板上のパターンの倒壊を減らすことができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一実施形態は、液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、パターンが形成された基板の表面に供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の表面に形成する遷移状態膜形成工程と、前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させることによって、前記遷移状態膜を前記基板の表面から除去する遷移状態膜除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、昇華性物質含有液の液膜から溶媒を蒸発させることで、遷移状態膜が基板の表面上に形成される。遷移状態膜中の昇華性物質の固体は、結晶化される前の結晶前遷移状態である。その後、遷移状態膜中の昇華性物質の固体が結晶前遷移状態に維持されながら昇華されることによって遷移状態膜が基板の表面から除去される。つまり、昇華性物質の固体が結晶化された状態を経由することなく遷移状態膜が基板の表面から除去される。したがって、昇華性物質の固体の結晶化に起因する応力の影響を低減して、基板上のパターンの倒壊を減らすことができる。
【0010】
この明細書において、昇華性物質の固体が結晶化するとは、単に昇華性物質の結晶が形成されることではない。昇華性物質の固体が結晶化するとは、隣接する昇華性物質の結晶同士が応力を伴う結晶界面を形成する程度に結晶が成長することをいう。具体的には、昇華性物質の結晶が、パターン同士の間隔以上のサイズに成長することをいう。
この発明の一実施形態では、前記遷移状態膜中の前記昇華性物質の固体が、アモルファス固体を含む。アモルファス固体中における昇華性物質の分子は不規則に並んでいる。昇華性物質の固体は、アモルファス固体であるため、結晶化した昇華性物質の固体とは異なり、明確な界面を有しない。そのため、昇華性物質のアモルファス固体は、基板の表面のパターンに物理力を及ぼさない。したがって、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記遷移状態膜中の前記昇華性物質の固体が、微結晶固体を含む。微結晶固体とは、昇華性物質の分子が規則的に並んでいる固体であって、隣接する固体同士が面接触しない程度の大きさの固体である。そのため、昇華性物質の微結晶固体同士の間には応力が発生しないため、基板の表面のパターンに物理力を及ぼさない。したがって、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記遷移状態膜形成工程が開始されてから前記遷移状態膜除去工程が開始されるまでの時間である遷移状態膜形成時間は、前記遷移状態膜形成工程が開始されてから前記昇華性物質の結晶が形成されるまでに要する時間である結晶化時間の半分よりも長く、前記結晶化時間よりも短い。
遷移状態膜形成時間が短過ぎると、遷移状態膜除去工程が開始される時点で基板の表面上に残留している溶媒の量が比較的多くなる。したがって、昇華性物質を昇華させるときに、基板の表面上の溶媒の表面張力がパターンに作用し、パターンが倒壊するおそれがある。逆に、遷移状態膜形成時間が長過ぎると、昇華性物質の固体が結晶化した状態で昇華される。そのため、結晶界面に発生する応力に起因してパターンに作用する力によってパターンが倒壊するおそれがある。
【0013】
そこで、遷移状態膜形成時間が、結晶化時間の半分よりも長く、結晶化時間よりも短ければ、遷移状態膜除去工程の開始時に基板の表面上に残留する溶媒の量を充分に低減しつつ、昇華性物質の固体の結晶化を避けることができる。これにより、基板上のパターンの倒壊を減らすことができる。特に、遷移状態膜形成時間が、結晶化時間の2/3の長さの時間であれば、基板上のパターンの倒壊を一層減らすことができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記遷移状態膜形成工程の実行前に、前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させて前記基板の表面から前記昇華性物質含有液を排除することで、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程をさらに含む。そのため、薄膜化工程の後に実行される遷移状態膜形成工程において、薄膜化された昇華性物質含有液の液膜から溶媒を蒸発させることで遷移状態膜を形成することができる。そのため、遷移状態膜を速やかに形成することができる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記遷移状態膜形成工程が、前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させて前記液膜中の前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を形成する工程を含む。そのため、昇華性物質含有液の液膜から溶媒を速やかに蒸発させることができる。したがって、遷移状態膜を速やかに形成することができる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに所定の第1回転速度で前記基板を回転させて前記基板の表面上の前記液膜に遠心力を作用させることによって、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程をさらに含む。そして、前記遷移状態膜形成工程は、前記薄膜化工程の後、前記第1回転速度よりも低い所定の第2回転速度に前記基板の回転速度を変更して前記液膜中の前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を形成する工程を含む。
【0017】
この方法によれば、薄膜化工程において、比較的高速度な第1回転速度で基板が回転される。そのため、遠心力によって基板の表面上から昇華性物質含有液が速やかに排除される。また、基板の表面上の昇華性物質含有液の液膜を速やかに薄膜化することができる。そして、遷移状態膜形成工程において、比較的低速度な第2回転速度で基板が回転される。これにより、基板の表面上の昇華性物質含有液の液膜に作用する遠心力を低減することができる。そのため、昇華性物質含有液が基板の表面上から完全に排除されることを防止しながら、すなわち、昇華性物質含有液の液膜を基板上に維持しながら、液膜から溶媒を蒸発させて速やかに遷移状態膜を形成することができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記遷移状態膜除去工程が、前記遷移状態膜に対して気体を吹き付けることによって、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させる吹付昇華工程を含む。
この方法によれば、気体の吹き付けという簡易な手法によって、基板の表面上の昇華性物質の固体を昇華させることができる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記吹付昇華工程が、前記基板の表面の中央領域に気体を吹き付けることによって前記昇華性物質の固体を昇華させて、前記基板の表面の前記中央領域に乾燥領域を形成する乾燥領域形成工程と、前記基板の表面における気体の吹き付け位置を前記基板の表面の周縁領域に向けて移動させながら前記乾燥領域を拡大する乾燥領域拡大工程とを含む。
【0020】
この方法によれば、基板の表面の中央領域への気体の吹き付けによって乾燥領域が形成される。その後、気体の吹き付け位置が基板の表面の周縁領域に向けて移動される。そのため、乾燥領域の周縁付近の昇華性物質の固体に気体の吹き付け力を効率的に作用させることができる。したがって、乾燥領域を速やかに拡大することができる。その結果、遷移状態膜の形成が開始されてから昇華性物質の固体が昇華されるまでの時間の差を、基板の表面の中央領域と基板の表面の周縁領域とで低減することができる。したがって、基板の表面の全域においてパターンの倒壊を均一に減らすことができる。
【0021】
この発明の他の実施形態は、液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質を溶解させる溶媒とを含む溶液である昇華性物質含有液を、基板の表面に供給する昇華性物質含有液供給ユニットと、基板の表面の中央部を通る鉛直軸線まわりに基板を回転させる基板回転ユニットと、基板の表面上から前記昇華性物質の固体を昇華させる昇華ユニットと、前記昇華性物質含有液供給ユニット、前記基板回転ユニットおよび前記昇華ユニットを制御するコントローラとを含む、基板処理装置を提供する。
【0022】
そして、前記コントローラが、前記昇華性物質含有液供給ユニットから、パターンが形成された基板の表面に前記昇華性物質含有液を供給することによって、前記基板の表面を覆う前記昇華性物質含有液の液膜を前記基板の表面上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程と、前記基板回転ユニットによって前記液膜から前記溶媒を蒸発させて前記昇華性物質の固体を形成することによって、前記昇華性物質の固体が結晶化する前の結晶前遷移状態である遷移状態膜を前記基板の表面に形成する遷移状態膜形成工程と、前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記昇華ユニットによって前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させる遷移状態膜除去工程とを実行するようにプログラムされている。
【0023】
この装置によれば、昇華性物質含有液の液膜から溶媒を蒸発させることで、遷移状態膜が基板の表面上に形成される。遷移状態膜中の昇華性物質の固体は、結晶化される前の結晶前遷移状態である。その後、遷移状態膜中の昇華性物質の固体が結晶前遷移状態に維持されながら昇華されることによって遷移状態膜が基板の表面から除去される。つまり、昇華性物質の固体が結晶化された状態を経由することなく遷移状態膜が基板の表面から除去される。したがって、昇華性物質の固体の結晶化に起因する応力の影響を低減して、基板上のパターンの倒壊を減らすことができる。
前記遷移状態膜は、前記昇華性物質の固体と、前記昇華性物質が溶けた前記溶媒とが混在する状態であってもよい。また、前記遷移状態膜除去工程は、前記昇華性物質の固体を前記結晶前遷移状態に維持しながら、前記基板の表面上の前記昇華性物質の固体を昇華させると共に、前記溶媒を蒸発させることによって、前記遷移状態膜を前記基板の表面から除去する工程であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図5A】
図5Aは、前記基板処理の昇華性物質含有液膜形成工程(ステップS5)の様子を説明するための模式図である。
【
図5B】
図5Bは、前記基板処理の薄膜化工程(ステップS6)の様子を説明するための模式図である。
【
図5C】
図5Cは、前記基板処理の遷移状態膜形成工程(ステップS7)の様子を説明するための模式図である。
【
図5D】
図5Dは、前記遷移状態膜形成工程(ステップS7)の様子を説明するための模式図である。
【
図5E】
図5Eは、前記基板処理の遷移状態膜除去工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
【
図5F】
図5Fは、前記遷移状態膜除去工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
【
図5G】
図5Gは、前記基板処理の下面リンス工程(ステップS9)の様子を説明するための模式図である。
【
図6A】
図6Aは、前記遷移状態膜形成工程(ステップS7)における基板の表面の様子の一例を説明するための模式図である。
【
図6B】
図6Bは、前記遷移状態膜形成工程(ステップS7)における基板の表面の様子の一例を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、前記遷移状態膜形成工程(ステップS7)における基板の表面の様子の別の例を説明するための模式図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による遷移状態膜除去工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
【
図8B】
図8Bは、第2実施形態に係る基板処理装置による遷移状態膜除去工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、小片基板を用いた実験の結果を示すグラフであり、小片基板の回転速度と、結晶化時間との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、小片基板を用いた実験の結果を示すグラフであり、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係を示すグラフである。
【
図11A】
図11Aは、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図11B】
図11Bは、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図11C】
図11Cは、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図11D】
図11Dは、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図12A】
図12Aは、前記薄膜化工程における基板の回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図12B】
図12Bは、前記薄膜化工程における基板の回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図12C】
図12Cは、前記薄膜化工程における基板の回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図13A】
図13Aは、前記遷移状態膜形成工程における基板の回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図13B】
図13Bは、前記遷移状態膜形成工程における基板の回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、昇華性物質の固体が結晶化した場合の基板の表面の様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。
【0026】
基板処理装置1は、基板Wを流体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。詳しくは後述するが、処理ユニット2内で基板Wに供給される処理液には、薬液、リンス液、置換液、昇華性物質含有液、熱媒等が含まれる。
【0027】
各処理ユニット2は、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口4aが形成されている。チャンバ4には、出入口4aを開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0028】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、対向部材6と、処理カップ7と、中央ノズル12と、下面ノズル13とを含む。
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら、基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させる。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、スピンモータ23とを含む。
【0029】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、基板Wの周縁を把持する複数のチャックピン20が、スピンベース21の周方向に間隔を空けて配置されている。スピンベース21および複数のチャックピン20は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットを構成している。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。
【0030】
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。スピンモータ23は、回転軸22に回転力を与える。スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。スピンモータ23は、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例である。
【0031】
対向部材6は、スピンチャック5に保持された基板Wに上方から対向する。対向部材6は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成されている。対向部材6は、基板Wの上面(上側の表面)に対向する対向面6aを有する。対向面6aは、スピンチャック5よりも上方でほぼ水平面に沿って配置されている。
対向部材6において対向面6aとは反対側には、中空軸60が固定されている。対向部材6において平面視で回転軸線A1と重なる部分には、対向部材6を上下に貫通し、中空軸60の内部空間60aと連通する開口6bが形成されている。
【0032】
対向部材6は、対向面6aと基板Wの上面との間の空間内の雰囲気を当該空間の外部の雰囲気から遮断する。そのため、対向部材6は、遮断板とも呼ばれる。
処理ユニット2は、対向部材6の昇降を駆動する対向部材昇降ユニット61をさらに含む。対向部材昇降ユニット61は、たとえば、中空軸60を支持する支持部材(図示せず)に結合されたボールねじ機構(図示せず)と、当該ボールねじ機構に駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。対向部材昇降ユニット61は、対向部材リフタ(遮断板リフタ)ともいう。
【0033】
対向部材昇降ユニット61は、下位置から上位置までの任意の位置(高さ)に対向部材6を位置させることができる。下位置とは、対向部材6の可動範囲において、対向面6aが基板Wに最も近接する位置である。対向部材6が下位置に位置するとき、基板Wの上面と対向面6aとの間の距離は、たとえば、1mmである。上位置とは、対向部材6の可動範囲において、対向面6aが基板Wから最も離間する位置である。
【0034】
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード71と、複数のガード71によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ72と、複数のガード71と複数のカップ72とを取り囲む円筒状の外壁部材73とを含む。
図2は、4つのガード71と3つのカップ72とが設けられており、最も外側のカップ72が上から3番目のガード71と一体である例を示している。
【0035】
処理ユニット2は、複数のガード71を個別に昇降させるガード昇降ユニット74を含む。ガード昇降ユニット74は、たとえば、各ガード71に結合された複数のボールねじ機構(図示せず)と、各ボールねじ機構に駆動力をそれぞれ与える複数のモータ(図示せず)とを含む。ガード昇降ユニット74は、ガードリフタともいう。
ガード昇降ユニット74は、上位置から下位置までの任意の位置にガード71を位置させる。
図2は、2つのガード71が上位置に配置されており、残り2つのガード71が下位置に配置されている状態を示している。ガード71が上位置に位置するとき、ガード71の上端71uは、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも上方に配置される。ガード71が下位置に位置するとき、ガード71の上端71uは、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも下方に配置される。
【0036】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード71が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液が遠心力で基板Wから振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード71の内面に衝突し、このガード71に対応するカップ72に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液が処理カップ7に集められる。
【0037】
中央ノズル12は、対向部材6の中空軸60の内部空間60aに収容されている。中央ノズル12の先端に設けられた吐出口12aは、基板Wの上面の中央領域に上方から対向する。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面の回転中心(中央部)およびその周辺の領域のことである。一方、基板Wの上面の周縁およびその周辺の領域のことを、基板の上面の周縁領域という。中央ノズル12は、対向部材6とともに昇降する。
【0038】
中央ノズル12は、流体を下方に吐出する複数のチューブ(第1チューブ31、第2チューブ32、第3チューブ33、第4チューブ34および第5チューブ35)と、複数のチューブを取り囲む筒状のケーシング30とを含む。複数のチューブおよびケーシング30は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。中央ノズル12の吐出口12aは、第1チューブ31の吐出口でもあり、第2チューブ32の吐出口でもあり、第3チューブ33の吐出口でもある。さらに、中央ノズル12の吐出口12aは、第4チューブ34の吐出口でもあり、第5チューブ35の吐出口でもある。
【0039】
第1チューブ31(中央ノズル12)は、薬液を連続流で基板Wの上面に供給(吐出)する薬液供給ユニットの一例である。第2チューブ32(中央ノズル12)は、リンス液を連続流で基板Wの上面に供給(吐出)するリンス液供給ユニットの一例である。第3チューブ33(中央ノズル12)は、昇華性物質含有液を連続流で基板Wの上面に供給(吐出)する昇華性物質含有液供給ユニットの一例である。第4チューブ34(中央ノズル12)は、置換液を連続流で基板Wの上面に供給(吐出)する置換液供給ユニットの一例である。第5チューブ35は、気体を基板Wの上面と対向部材6の対向面6aとの間に供給(吐出)する気体供給ユニットの一例である。
【0040】
第1チューブ31は、薬液を第1チューブ31に案内する薬液配管40に接続されている。薬液配管40に介装された薬液バルブ50が開かれると、薬液が、第1チューブ31(中央ノズル12)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
第1チューブ31から吐出される薬液は、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえば、クエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液である。これらを混合した薬液の例としては、SPM液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、SC1液(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)等が挙げられる。
【0041】
第2チューブ32は、リンス液を第2チューブ32に案内するリンス液配管41に接続されている。リンス液配管41に介装されたリンス液バルブ51が開かれると、リンス液が、第2チューブ32(中央ノズル12)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
第2チューブ32から吐出されるリンス液は、たとえば、DIWである。リンス液としては、DIW以外にも、水を含有する液体を用いることができる。リンス液としては、DIW以外に、たとえば、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水等を用いることができる。
【0042】
第3チューブ33は、昇華性物質含有液を第3チューブ33に案内する昇華性物質含有液配管42に接続されている。昇華性物質含有液配管42に介装された昇華性物質含有液バルブ52が開かれると、昇華性物質含有液が、第3チューブ33(中央ノズル12)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
第3チューブ33から吐出される昇華性物質含有液は、溶質に相当する昇華性物質と、昇華性物質と溶け合う(昇華性物質を溶解させる)溶媒とを含む溶液である。昇華性物質含有液から溶媒が蒸発(揮発)することによって、昇華性物質の固体が析出する。
【0043】
昇華性物質含有液に含まれる昇華性物質は、常温(室温と同義)または常圧(基板処理装置1内の圧力。たとえば1気圧またはその近傍の値)で液体状態を経ずに固体状態から気体状態に変化する物質であってもよい。
昇華性物質含有液に含まれる昇華性物質は、アミノ基、ヒドロキシ基またはカルボニル基の少なくともいずれか1つを有する。ただし、昇華性物質が一分子当たりに有するヒドロキシ基は最大で1つである。昇華性物質は、好ましくは、五員環または六員環の炭化水素化環または複素環を含んでいる。
【0044】
昇華性物質において、アミノ基および/またはカルボニル基は、炭化水素化環または複素環における環の一部である。昇華性物質において、ヒドロキシ基は、炭化水素環または複素環における環に直接付加される。すなわち、カルボキシル基を有する化合物は、この形態では、昇華性物質に該当しない。好適には、昇華性物質は、かご型の立体構造の母骨格を有する。かご型の立体構造は、たとえば、1,4-Diazabicyclo[2.2.2]octane(以下、DABCO)が挙げられる。分子量と比して、かさ高さを抑制できる点が有利である。別の一態様として、昇華性物質において、アミノ基が環に直接付加される態様も好適である。たとえば、1-アダマンタンアミンは、かご型の立体構造の母骨格を有し、アミノ基は環の一部ではなく、環に直接付加される。
【0045】
昇華性物質は、好ましくは、一分子あたりに有するアミノ基が1~5つ(より好適には1~4つ、さらに好適には2~4つ)、カルボニル基が1~3つ(より好適には1~2つ)、および/またはヒドロキシ基が1つである。アミノ基はC=N-(イミノ基)のように、窒素原子の結合手が二重結合に使用される態様も含む。アミノ基の数は一分子中に存在する窒素原子の数で数える。昇華性物質は、一分子中にアミノ基、カルボニル基またはヒドロキシ基のいずれか1種類を有する形態であることが好ましい。昇華性物質は、一分子中にカルボニル基とアミノ基とを有していてもよい。
【0046】
昇華性物質の分子量は、80~300(好ましくは90~200)である。理論に拘束されないが、分子量が大きすぎると、気化の際にエネルギーが必要になり本発明にかかる方法に適さないと考えられ得る。
昇華性物質の具体例として、以下のものが挙げられる。すなわち、昇華性物質は、たとえば、無水フタル酸、カフェイン、メラミン、1,4-ベンゾキノン、樟脳、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン、1-アダマンタノール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ボルネオール、(-)-ボルネオール、(±)-イソボルネオール、1,2-シクロヘキサンジオン、1,3-シクロヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオン、(±)-カンファーキノン、(-)-カンファーキノン、(+)-カンファーキノン、1-アダマンタンアミンのいずれかである。昇華性物質として、上記の具体例の混合物を用いてもよい。
【0047】
昇華性物質には、微量の不純物が混入していてもよい。たとえば、昇華性物質が無水フタル酸の場合、昇華性物質の全量を基準にして不純物(無水フタル酸以外)が2質量%以下存在することが許容される(好適には1質量%以下、より好適には0.1質量%以下、さらに好適には0.01質量%以下)。
昇華性物質含有液に含まれる溶媒としては、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類、エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等、を挙げることができる。前記エーテル類として、その他にエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。昇華性物質含有液に含まれる溶媒として、これらの有機溶媒を単独で使用することができるし、これらの有機溶媒を2種以上混合したものを使用することもできる。
【0048】
昇華性物質含有液に含まれる溶媒は、MeOH、EtOH、IPA、THF、PGEE,ベンゼン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、これらのいかなる組合せから選ばれることが好ましい。昇華性物質含有液に含まれる溶媒は、より好ましくは、MeOH、EtOH、IPA、PGEE、アセトン、これらのいかなる組合せから、さらに好ましくは、MeOH、EtOH、IPA、PGEEから選ばれる。昇華性物質含有液に含まれる溶媒は、2種類の物質の混合液である場合、その体積比は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30、さらに好ましくは40:60~60:40である。
【0049】
第4チューブ34は、置換液を第4チューブ34に案内する置換液配管43に接続されている。置換液配管43に介装された置換液バルブ53が開かれると、置換液が、第4チューブ34(中央ノズル12)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続流で吐出される。
第4チューブ34から吐出される置換液は、たとえば、IPAである。置換液は、IPAおよびHFEの混合液であってもよいし、IPAおよびHFEの少なくとも一方とこれら以外の成分とを含んでいてもよい。IPAは、水およびフッ化炭化水素化合物のいずれとも混和する液体である。
【0050】
後述するように、第4チューブ34から吐出される置換液は、リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給され、第3チューブ33から吐出される昇華性物質含有液は、置換液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給される。置換液は、リンス液および昇華性物質含有液の両方と溶け合う液体であればよい。つまり、置換液は、リンス液および昇華性物質含有液の両方に対して相溶性(混和性)を有していればよい。
【0051】
第5チューブ35は、気体を第5チューブ35に案内する第1気体配管44に接続されている。第1気体配管44には、第1気体バルブ54および第1気体流量調整バルブ58が介装されている。第1気体バルブ54が開かれると、気体が、第5チューブ35(中央ノズル12)から中央領域に向けて吐出される。第1気体流量調整バルブ58の開度が調整されることによって、中央ノズル12の吐出口12aから吐出される気体の流量が調整される。
【0052】
中央ノズル12から吐出される気体は、たとえば、窒素ガス(N2)等の不活性ガスである。中央ノズル12から吐出される気体は、空気であってもよい。不活性ガスとは、窒素ガスに限られず、基板Wの上面や、基板Wの上面に形成されたパターンに対して不活性なガスのことである。不活性ガスの例としては、窒素ガスの他に、アルゴン等の希ガス類が挙げられる。
【0053】
対向部材6の中空軸60の内周面と中央ノズル12の外周面とは、上下に延びる筒状の気体流路65を形成している。気体流路65は、不活性ガス等の気体を気体流路65に案内する第2気体配管45に接続されている。第2気体配管45には、第2気体バルブ55および第2気体流量調整バルブ59が介装されている。第2気体バルブ55が開かれると、気体が、気体流路65の下端部から下方に吐出される。第2気体流量調整バルブ59の開度が調整されることによって、気体流路65から吐出される気体の流量が調整される。
【0054】
気体流路65から吐出される気体は、中央ノズル12から吐出される気体と同様の気体である。すなわち、気体流路65から吐出される気体は、たとえば、窒素ガス(N2)等の不活性ガスであってもよいし、空気であってもよい。
気体流路65から吐出される気体および中央ノズル12から吐出される気体は、共に対向部材6の開口6bを経由して、基板Wの上面の中央領域に吹き付けられる。
【0055】
下面ノズル13は、スピンベース21の上面中央部で開口する貫通孔21aに挿入されている。下面ノズル13の吐出口13aは、スピンベース21の上面から露出されている。下面ノズル13の吐出口13aは、基板Wの下面の中央部に下方から対向する。
下面ノズル13は、熱媒を下面ノズル13に案内する熱媒配管46に接続されている。熱媒配管46には、熱媒バルブ56Aおよび熱媒流量調整バルブ56Bが介装されている。熱媒バルブ56Aが開かれると、熱媒が、下面ノズル13から基板Wの下面の中央領域に向けて連続的に吐出される。熱媒流量調整バルブ56Bの開度が調整されることによって、下面ノズル13から吐出される熱媒の流量が調整される。下面ノズル13は、基板Wを加熱するための熱媒を基板Wに供給する熱媒供給ユニットの一例である。
【0056】
下面ノズル13から吐出される熱媒は、たとえば、室温よりも高く、昇華性物質含有液に含まれる溶媒の沸点よりも低い温度を有する高温DIWである。たとえば、昇華性物質含有液に含まれる溶媒がIPAである場合、高温DIWの温度は60℃~80℃に設定される。
下面ノズル13から吐出される熱媒によって、基板Wの下面を洗浄することもできる。すなわち、下面ノズル13は、基板Wの下面にリンス液としての高温DIWを供給する下面リンス液供給ユニットとしても機能する。
【0057】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0058】
とくに、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、対向部材昇降ユニット61、ガード昇降ユニット74、薬液バルブ50、リンス液バルブ51、昇華性物質含有液バルブ52、置換液バルブ53、第1気体バルブ54、第2気体バルブ55、熱媒バルブ56A、熱媒流量調整バルブ56B、第1気体流量調整バルブ58、第2気体流量調整バルブ59を制御するようにプログラムされている。
【0059】
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図4には、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
図5A~
図5Gは、基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
以下では、主に
図2および
図4を参照する。
図5A~
図5Gについては適宜参照する。
【0060】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、
図4に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、薬液供給工程(ステップS2)、リンス工程(ステップS3)、置換工程(ステップS4)、昇華性物質含有液膜形成工程(ステップS5)、薄膜化工程(ステップS6)、遷移状態膜形成工程(ステップS7)、遷移状態膜除去工程(ステップS8)、下面リンス工程(ステップS9)、スピンドライ工程(ステップS10)および、基板搬出工程(ステップS11)がこの順番で実行される。
【0061】
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図1参照)によってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5による基板Wの保持は、スピンドライ工程(ステップS10)が終了するまで継続される。基板Wの搬入時には、対向部材6は、上位置に退避しており、複数のガード71は、下位置に退避している。
【0062】
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、薬液供給工程(ステップS2)が開始される。薬液供給工程では、基板Wの上面が薬液によって処理される。
具体的には、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転される(基板回転工程)。薬液供給工程では、基板Wは、所定の薬液速度で回転される。薬液速度は、たとえば、1200rpmである。
【0063】
対向部材昇降ユニット61は、対向部材6を上位置と下位置との間の処理位置に移動させる。そして、対向部材6が処理位置に位置し、かつ、少なくとも1つのガード71が上位置に位置する状態で、薬液バルブ50が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル12から薬液が供給(吐出)される(薬液供給工程、薬液吐出工程)。
【0064】
中央ノズル12から吐出された薬液は、回転状態の基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全体に供給され、基板Wの上面全体を覆う薬液の液膜が形成される。
次に、リンス工程(ステップS3)が開始される。リンス工程では、基板W上の薬液がリンス液によって洗い流される。
【0065】
具体的には、薬液の吐出が開始されてから所定時間が経過すると、薬液バルブ50が閉じられる。これにより、基板Wに対する薬液の供給が停止される。そして、対向部材6を処理位置に維持したまま、リンス液バルブ51が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル12からリンス液が供給(吐出)される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。
【0066】
リンス液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット74は、基板Wから排出される液体を受け止めるガード71を切り替えるために、少なくとも一つのガード71を鉛直に移動させてもよい。
リンス工程では、基板Wは、所定のリンス速度で回転される。リンス速度は、たとえば、1200rpmである。
【0067】
中央ノズル12から吐出されたリンス液は、回転状態の基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、リンス液が基板Wの上面全体に供給され、基板Wの上面全体を覆うリンス液の液膜が形成される。
次に、リンス液および昇華性物質含有液の両方に対する相溶性を有する置換液を基板Wの上面に供給し、基板W上のリンス液を置換液に置換する置換工程(ステップS4)が行われる。
【0068】
具体的には、リンス液の吐出が開始されてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ51が閉じられる。これにより、基板Wに対するリンス液の供給が停止される。そして、対向部材6が処理位置に位置する状態で、置換液バルブ53が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル12から置換液が供給(吐出)される(置換液供給工程、置換液吐出工程)。
【0069】
置換液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット74は、基板Wから排出される液体を受け止めるガード71を切り替えるために、少なくとも一つのガード71を鉛直に移動させてもよい。
置換工程では、基板Wは、所定の置換速度で回転される。置換速度は、たとえば、300rpmである。この実施形態では、リンス工程における基板Wの回転速度および置換工程における基板Wの回転速度は、ともに300rpmである。しかしながら、基板Wは、リンス工程の終了前の所定期間および置換工程の開始後の所定期間において低速度で回転されてもよい。具体的には、基板Wの回転速度は、リンス工程の終了前に、たとえば、10rpmの低速度に変更され、置換工程が開始された後、300rpmに変更されてもよい。
【0070】
中央ノズル12から吐出された置換液は、回転状態の基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、置換液が基板Wの上面全体に供給され、基板Wの上面全体を覆う置換液の液膜が形成される。
次に、基板W上のリンス液が置換液で置換された後に、昇華性物質含有液を基板Wの上面に供給して、昇華性物質含有液の液膜100(昇華性物質含有液膜)を基板W上に形成する昇華性物質含有液膜形成工程(ステップS5)が行われる。
【0071】
具体的には、置換液の吐出が開始されてから所定時間が経過すると、置換液バルブ53が閉じられる。これにより、基板Wに対する置換液の供給が停止される。そして、対向部材6が処理位置に位置する状態で、昇華性物質含有液バルブ52が開かれる。これにより、
図5Aに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル12から昇華性物質含有液が供給(吐出)される。
【0072】
昇華性物質含有液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット74は、基板Wから排出される液体を受け止めるガード71を切り替えるために、少なくとも一つのガード71を鉛直に移動させてもよい。
昇華性物質含有液膜形成工程においても基板Wの回転は継続されている。すなわち、基板回転工程は、昇華性物質含有液膜形成工程と並行して実行される。昇華性物質含有液の吐出中、基板Wは、所定の供給回転速度で回転される。供給回転速度は、たとえば、300rpmである。
【0073】
中央ノズル12から吐出された昇華性物質含有液は、回転状態の基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、昇華性物質含有液が基板Wの上面全体に供給され、基板Wの上面全体を覆う昇華性物質含有液の液膜100が形成される。このように、中央ノズル12は、基板Wの上面に昇華性物質含有液の液膜100を形成する昇華性物質含有液膜形成ユニットとして機能する。
【0074】
次に、昇華性物質含有液の液膜100に遠心力を作用させることによって基板Wの上面から昇華性物質含有液を排除して、昇華性物質含有液の液膜100を薄膜化する薄膜化工程(ステップS6)が実行される。
具体的には、昇華性物質含有液の吐出が開始されてから所定時間が経過すると、昇華性物質含有液バルブ52が閉じられる。これにより、基板Wに対する昇華性物質含有液の供給が停止される。そして、対向部材昇降ユニット61は、対向部材6を上位置に移動させる。
【0075】
図5Bに示すように、昇華性物質含有液の吐出の停止とほぼ同時に、基板Wの回転速度を、薄膜化回転速度に変更する。薄膜化回転速度は、たとえば、500rpmである。
薄膜化工程終了時の昇華性物質含有液の液膜100の膜厚は、基板Wの回転速度(薄膜化回転速度の設定値)および薄膜化工程が実行される時間によって変動する。たとえば、薄膜化回転速度を750rpmとした場合には、薄膜化回転速度を500rpmとした場合と比較して、薄膜化工程終了時の昇華性物質含有液の液膜100の膜厚が小さくなる。
【0076】
薄膜化工程終了後の昇華性物質含有液の液膜100の膜厚を所望の膜厚とするために、薄膜化回転速度および薄膜化工程の継続時間が調整される。すなわち、薄膜化工程は、昇華性物質含有液の液膜100の膜厚を調整する膜厚調整工程でもある。
なお、薄膜化後の液膜100の膜厚は、基板Wの厚みよりもはるかに薄いが、
図5Bでは、説明の便宜上、誇張して(基板Wの厚みと同程度となるように)図示されている(
図5Cにおいても同様)。
【0077】
次に、昇華性物質含有液の液膜100から溶媒を蒸発させることによって、遷移状態膜101を基板Wの上面に形成する遷移状態膜形成工程(ステップS7)が実行される。
詳しくは、後述するが、遷移状態膜101中において、昇華性物質の固体は、結晶化する前の結晶前遷移状態である。遷移状態膜101中には、昇華性物質の固体と、昇華性物質が解けた溶媒とが混在する。
【0078】
遷移状態膜形成工程では、具体的には、薄膜化工程が開始されてから所定時間が経過すると、
図5Cに示すように、基板Wの回転速度を、薄膜化回転速度から、所定の遷移状態膜形成回転速度に変更する。遷移状態膜形成回転速度は、たとえば、100rpmである。遷移状態膜形
成回転速度は、薄膜化回転速度よりも低い。基板Wの回転の減速をきっかけに遷移状態膜形成工程が開始される。
【0079】
遷移状態膜形成工程では、基板Wの回転速度が比較的低いため、基板Wの上面からの昇華性物質含有液の飛散が抑制される。そのため、昇華性物質含有液を基板Wの上面から完全に排除されることを防止できる。そのため、昇華性物質含有液の液膜100を基板W上に維持しながら、液膜100から溶媒を蒸発させることができる。
その一方で、基板Wの回転によって、基板Wの上面付近の雰囲気には、基板Wの回転中心側から基板Wの周縁側に向かう気流が発生する。基板Wの上面付近の雰囲気中の気体状態の溶媒の量が低減され、基板Wの上面の昇華性物質の液膜100からの溶媒の蒸発が促進される。溶媒が蒸発することによって、液膜100中に昇華性物質の固体が形成され、やがて、
図5Dに示すように、遷移状態膜101が形成される。
【0080】
次に、遷移状態膜101中の昇華性物質の固体を結晶前遷移状態に維持しながら、基板Wの上の昇華性物質の固体を昇華させることによって、遷移状態膜101を基板Wの上面から除去する遷移状態膜除去工程(ステップS8)が実行される。
具体的には、
図5Eに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を下位置に移動させる。そして、基板Wの回転速度は、所定の昇華回転速度に変更される。所定の昇華回転速度は、たとえば、300rpmである。
【0081】
なお、対向部材6が下位置に位置するとき、対向面6aと基板Wの上面との距離は、たとえば、1mmであるとした。
図5Eでは、説明の便宜上、誇張して(基板Wの厚みよりも大きくなるように)図示されている(
図5Fおよび
図5Gにおいても同様)。
そして、対向部材6が下位置に位置する状態で、第1気体バルブ54および第2気体バルブ55が開かれる。これにより、対向部材6の開口6bから、基板Wの上面の中央領域に向けて、窒素ガス等の気体が吹き付けられる。中央ノズル12から吐出される気体の流量が、所定の第1気体流量となるように第1気体流量調整バルブ58が調整される。第1気体流量は、たとえば、150L/minである。気体流路65から吐出される気体の流量が、所定の第2気体流量となるように第2気体流量調整バルブ59が調整される。第2気体流量は、たとえば、50L/minである。遷移状態膜除去工程において基板Wの上面に向けて吹き付けられる気体の流量の総量を吹付流量という。そのため、吹付流量は、たとえば、200L/minである。
【0082】
基板Wの上面の中央領域に吹き付けられた気体によって、基板Wの上面の中央領域における遷移状態膜101の付近の雰囲気中から気体状態の溶媒および昇華性物質が排除される。そのため、基板Wの上面の中央領域において昇華性物質の固体の昇華および溶媒の蒸発が促進される(昇華工程、吹付昇華工程、吹付蒸発工程)。中央ノズル12および気体流路65は、昇華ユニットとして機能する。
昇華性物質の固体の昇華および溶媒の蒸発によって、基板Wの上面の中央領域において遷移状態膜101が徐々に薄くなり、やがて、基板Wの上面の中央領域の遷移状態膜101が消滅する。これにより、基板Wの上面の中央領域において、基板Wの上面が乾燥した乾燥領域Dが形成される(乾燥領域形成工程)。乾燥領域Dは、平面視で、基板Wの上面の回転中心を中心とする円形状である。
【0083】
その後、基板Wの上面の中央領域への気体の吹き付けを継続することによって、
図5Fに示すように、乾燥領域Dが拡大される(乾燥領域拡大工程)。具体的には、基板Wの上面の中央領域に吹き付けられた気体が基板Wの周縁に向けて放射状に広がる気流Fを形成する。この気流Fが乾燥領域Dの周縁に到達することで、乾燥領域Dの周縁において、遷移状態膜101中の昇華性物質の固体の昇華および溶媒の蒸発が促進される。これにより、乾燥領域Dが平面視で、基板Wの上面の回転中心を中心とする円形状を維持しながら広がる。
【0084】
最終的には、乾燥領域Dがさらに拡大されることによって、乾燥領域Dの周縁が基板Wの周縁にまで達して遷移状態膜101が消滅する。言い換えると、乾燥領域Dが基板Wの上面の全域に広がる。
このように、昇華性物質の固体が結晶化されていない状態を維持しながら、基板Wの上面の全体から遷移状態膜101を排除して、基板Wの上面を乾燥することができる(昇華性物質含有液膜排除工程、基板上面乾燥工程)。
【0085】
遷移状態膜形成工程が開始されてから遷移状態膜除去工程が開始されるまでの時間(遷移状態膜形成時間)は、遷移状態膜形成工程が開始されてから昇華性物質の結晶が形成されるまでに要する時間(結晶化時間)よりも短い必要がある。
結晶化時間は、目視によって測定することができる。昇華性物質の固体が結晶化すると、基板W上に液膜100や遷移状態膜101が存在している状態よりも基板Wの上面が白く濁る。そのため、基板Wの上面の色を確認することで、昇華性物質の固体の結晶化を確認することができる。したがって、撮像機(図示しない)を用いて、基板Wの上面を撮影することによって、結晶化時間を測定する結晶化時間測定工程が遷移状態膜形成工程と並行して実行されてもよい。
【0086】
遷移状態膜形成時間は、結晶化時間の半分よりも長いことが好ましい。そうであれば、遷移状態膜中に昇華性物質の固体が適度に存在する状態で遷移状態膜除去工程を実行することができる。遷移状態膜形成時間は、結晶化時間の2/3の長さの時間であることが一層好ましい。
次に、基板Wの上面が乾燥した状態を維持しながら基板Wの下面を洗浄する下面リンス工程(ステップS9)が実行される。
【0087】
具体的には、基板Wの上面が乾燥された後、基板Wの上面に対する気体の吹き付けを維持しながら、熱媒バルブ56Aが開かれる。これにより、
図5Gに示すように、下面ノズル13から基板Wの下面の中央領域に向けて熱媒が吐出される。下面ノズル13から吐出される熱媒の流量が所定の下面リンス流量となるように、熱媒流量調整バルブ56Bの開度が調整される。対向部材6は、下位置に維持されている。
【0088】
下面ノズル13から吐出された熱媒は、回転状態の基板Wの下面に着液した後、遠心力によって基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、熱媒が基板Wの下面の全体に広がり、基板Wの下面が洗浄される。
熱媒によって基板Wの下面が洗浄される間、基板Wの上面への気体の吹き付けが継続されており、基板Wの上面の中央領域から基板Wの周縁に向かう気流Fが形成されている。気流Fによって、ガード71から跳ね返った熱媒をガード71に向けて押し戻すことができる。気流Fによって、熱媒が基板Wの下面から基板Wの周縁を経て上面に回り込むのを抑制できる。したがって、基板Wの上面への熱媒の付着を抑制することができる。
【0089】
この実施形態のように、下面リンス工程において熱媒を用いることで、基板Wを加熱することができる。そのため、基板Wの上面に残留する僅かな液体の蒸発を促進することができる。
熱媒の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット74は、基板Wから排出される液体を受け止めるガード71を切り替えるために、少なくとも一つのガード71を鉛直に移動させてもよい。
【0090】
次に、基板Wを高速回転させることによって基板Wの上面および基板Wの下面を乾燥させるスピンドライ工程(ステップS10)が実行される。
具体的には、対向部材6を下位置に維持し、かつ、基板Wの上面への気体の吹き付けを維持した状態で、熱媒バルブ56Aを閉じる。そして、基板Wの回転速度を所定のスピンドライ速度に変更する。スピンドライ速度は、たとえば、1500rpmである。スピンドライ工程によって、基板Wの上面に残留する僅かな液体や、基板Wの下面に付着した熱媒が除去される。
【0091】
スピンドライ工程の後、基板Wの回転が停止される。ガード昇降ユニット74が全てのガード71を下位置に移動させる。そして、第1気体バルブ54および第2気体バルブ55が閉じられる。そして、対向部材昇降ユニット61が対向部材6を上位置に移動させる。
搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5のチャックピン20から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(ステップS11)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0092】
図6Aおよび
図6Bは、遷移状態膜形成工程(ステップS7)における基板Wの上面の様子を説明するための模式図である。
基板処理が実行される基板Wの上面には、微細なパターン160が形成されている。パターン160は、基板Wの上面に形成された微細な凸状の構造体161と、隣接する構造体161の間に形成された凹部(溝)162とを含む。構造体161が筒状である場合には、その内方に凹部が形成されることになる。
【0093】
構造体161は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体161は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。
パターン160のアスペクト比は、たとえば、10~50である。構造体161の幅は10nm~45nm程度、構造体161同士の間隔(パターン160同士の間隔ともいう)は10nm~数μm程度であってもよい。構造体161の高さは、たとえば50nm~5μm程度であってもよい。
【0094】
図6Aには、薄膜化工程の終了直後(遷移状態膜形成工程の開始直後)の基板Wの上面の様子が示されている。
図6Aに示す状態の液膜100から溶媒が蒸発すると、
図6Bに示すように、昇華性物質の固体が析出して、遷移状態膜101が形成される。昇華性物質の固体は、たとえば、アモルファス固体102である。アモルファス固体102中において、昇華性物質の分子は、不規則に並んでいる。そのため、アモルファス固体102は、昇華性物質の結晶Cr(
図14を参照)とは異なり、明確な界面を有さない。
【0095】
一方、
図7に示すように、昇華性物質の固体は、微結晶固体103である場合もあり得る。微結晶固体103中の昇華性物質の分子は、結晶化された昇華性物質の固体と同様に、規則的に並んでいる。
ここで、昇華性物質の固体が結晶化するとは、隣接する結晶同士が結晶界面を形成する程度に成長することをいう。具体的には、昇華性物質の結晶が、パターン160の構造体161同士の間隔以上のサイズに成長すれば、隣接する結晶同士の間に結晶界面が形成される。
【0096】
結晶化時間は、基板Wの回転速度が遷移状態膜形成回転速度に変更されてから、パターン160の構造体161同士の間隔以上のサイズに成長された結晶が発生し始めるまでに要する時間である。
一方、隣接する微結晶固体103の間には結晶界面が形成されておらず、パターン160の構造体161同士の間隔よりも小さいサイズである。微結晶固体103は、互いに面接触しない程度の大きさの結晶である。そのため、微結晶固体103同士の間には、せん断応力が発生しない。具体的には、微結晶固体103は、パターン160の構造体161同士の間隔よりも小さいサイズの昇華性物質の結晶である。「微結晶固体103が互いに面接触しない状態」には、微結晶固体103同士が全く接触していない状態が含まれる。「微結晶固体103が互いに面接触しない状態」には、微結晶固体103同士がほとんど接触していないものの、微結晶固体103同士の間にせん断応力が発生しない程度に接触している状態も含まれる。
【0097】
図示しないが、遷移状態膜101中には、アモルファス固体102および微結晶固体103が混在している場合もあり得る。
第1実施形態によれば、昇華性物質含有液の液膜100から溶媒を蒸発させて結晶前遷移状態の昇華性物質の固体(アモルファス固体102または微結晶固体103)を析出させることによって、遷移状態膜101が基板Wの上面に形成される(遷移状態膜形成工程)。そして、遷移状態膜101中の固体が結晶前遷移状態に維持されたままで昇華される(昇華工程)。これにより、基板Wの上面から遷移状態膜101が除去される(遷移状態膜除去工程)。昇華性物質の固体が昇華する際に、基板W上に残る溶媒も蒸発する。これにより、基板Wの上面が乾燥される。
【0098】
そのため、昇華性物質の固体が結晶化された状態を経由することなく遷移状態膜101が基板Wの上面から除去される。したがって、昇華性物質の結晶化に起因する応力の影響を低減して、基板W上のパターン160の倒壊を減らすことができる。
詳しくは、遷移状態膜101中の昇華性物質の固体は、アモルファス固体102または微結晶固体103であるため、応力を伴う結晶界面CI(
図14を参照)を有していない。そのため、昇華性物質の固体が結晶化した際に結晶界面CIの近傍で発生する応力の影響を受けることなく昇華性物質の固体を昇華させることができる。したがって、パターン160の倒壊を抑制することができる。
【0099】
遷移状態膜形成時間が短過ぎると、遷移状態膜除去工程が開始される時点で基板の表面上に残留している溶媒の量が比較的多くなる。したがって、昇華性物質の固体を昇華させるときに、基板の表面上の溶媒の表面張力がパターン160に作用し、パターン160が倒壊するおそれがある。逆に、遷移状態膜形成時間が長過ぎると、昇華性物質の固体が結晶化した状態で昇華される。そのため、結晶界面CIに発生する応力に起因してパターン160に作用する力によってパターン160が倒壊するおそれがある。
【0100】
そこで、遷移状態膜形成時間が、結晶化時間の半分よりも長く、結晶化時間よりも短ければ、遷移状態膜除去工程の開始時に基板Wの上面に残留する溶媒の量を充分に低減しつつ、昇華性物質の固体の結晶化を避けることができる。これにより、基板W上のパターン160の倒壊を減らすことができる。
特に、遷移状態膜形成時間が、結晶化時間の2/3の長さの時間であれば、昇華性物質の固体の結晶化を避けつつ、遷移状態膜除去工程の開始時に基板Wの上面に残留する溶媒の量を可能な限り低減することができる。したがって、基板W上のパターンの倒壊を一層減らすことができる。
【0101】
また、第1実施形態によれば、昇華性物質含有液の液膜100を薄膜化する薄膜化工程が実行される。そのため、薄膜化工程の後に実行される遷移状態膜形成工程において、薄膜化された昇華性物質含有液の液膜100から溶媒を蒸発させることで遷移状態膜101を形成することができる。そのため、遷移状態膜101を速やかに形成することができる。
【0102】
また、第1実施形態によれば、遷移状態膜101は、主に基板Wの回転によって溶媒を蒸発させることで形成される。そのため、昇華性物質含有液の液膜100から溶媒を速やかに蒸発させることができる。したがって、遷移状態膜101を速やかに形成することができる。
また、第1実施形態によれば、薄膜化工程において、比較的高速度な薄膜化回転速度(第1回転速度)で基板Wが回転される。そのため、遠心力によって基板Wの上面から昇華性物質含有液が速やかに排除される。また、基板Wの上面の昇華性物質含有液の液膜100の膜厚が速やかに調整される。そして、遷移状態膜形成工程において、比較的低速度な遷移状態膜形成回転速度(第2回転速度)で基板Wが回転される。これにより、基板Wの上面の昇華性物質含有液の液膜100に作用する遠心力を低減することができる。そのため、薄膜化工程において膜厚が調整された状態の液膜100を基板Wの上面に維持しながら、液膜100から溶媒を蒸発させて速やかに遷移状態膜101を形成することができる。
【0103】
また、第1実施形態では、遷移状態膜除去工程において、基板Wの上面の昇華性物質の固体(アモルファス固体102や微結晶固体103)は、気体の吹き付けによって昇華される(吹付昇華工程)。すなわち、気体の吹き付けという簡易な手法によって、基板Wの上面の昇華性物質の固体を昇華させることができる。
<第2実施形態>
図8Aおよび
図8Bは、第2実施形態に係る基板処理装置1による遷移状態膜除去工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
図8Aおよび
図8Bにおいて、前述の
図1~
図7に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0104】
第2実施形態に係る処理ユニット2Pが第1実施形態の処理ユニット2(
図2参照)と主に異なる点は、少なくとも水平方向に移動可能であり、基板Wの上面に向けて気体を吐出することができる移動気体ノズル14を含む点である。
移動気体ノズル14は、気体ノズル移動ユニット39によって、水平方向および鉛直方向に移動される。移動気体ノズル14は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
【0105】
移動気体ノズル14は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。移動気体ノズル14は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。移動気体ノズル14は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
気体ノズル移動ユニット39は、たとえば、移動気体ノズル14を支持し水平に延びるアーム39aと、アーム39aを駆動するアーム駆動ユニット39bとを含む。アーム駆動ユニット39bは、アーム39aに結合され鉛直方向に沿って延びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0106】
回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアーム39aを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アーム39aを上下動させる。アーム39aの揺動および昇降に応じて、移動気体ノズル14が水平方向および鉛直方向に移動する。
移動気体ノズル14は、気体を移動気体ノズル14に案内する移動気体配管47に接続されている。移動気体配管47に介装された移動気体バルブ57が開かれると、気体が、移動気体ノズル14の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0107】
移動気体ノズル14から吐出される気体は、たとえば、窒素ガス(N
2)等の不活性ガスである。移動気体ノズル14から吐出される気体は、空気であってもよい。
第2実施形態に係るコントローラ3は、第1実施形態に係るコントローラ3が制御する対象に加えて、移動気体バルブ57および気体ノズル移動ユニット39を制御する(
図3参照)。
【0108】
第2実施形態に係る基板処理装置1では、
図4に示す流れ図と同様の基板処理が可能である。詳しくは、第2実施形態に係る基板処理は、遷移状態膜除去工程(ステップS8)における乾燥領域Dの形成、および、乾燥領域Dの拡大が、主に移動気体ノズル14からの気体の吹き付けによって行われる点を除いては、第1実施形態に係る基板処理とほぼ同じである。以下では、第2実施形態に係る基板処理の遷移状態膜除去工程について説明する。
【0109】
図8Aに示すように、気体ノズル移動ユニット39が、移動気体ノズル14を中央位置に移動させる。移動気体ノズル14が中心位置に位置する状態で、移動気体バルブ57が開かれる。これにより、移動気体ノズル14の吐出口から基板Wの上面に向けて気体が吐出される(気体吐出工程)。移動気体ノズル14から吐出された気体は、基板Wの上面の中央領域に吹き付けられる。
【0110】
基板Wの上面の中央領域に吹き付けられた気体によって、基板Wの上面の中央領域における遷移状態膜101の付近の雰囲気中から気体状態の溶媒および昇華性物質が排除される。そのため、基板Wの上面の中央領域において昇華性物質の昇華および溶媒の蒸発が促進される(昇華工程、吹付昇華工程、吹付蒸発工程)。移動気体ノズル14は、昇華ユニットとして機能する。
昇華性物質の昇華および溶媒の蒸発によって、基板Wの上面の中央領域において遷移状態膜101が徐々に薄くなり、やがて、基板Wの上面の中央領域の遷移状態膜101が消滅する。これにより、基板Wの上面の中央領域において、基板Wの上面が乾燥した乾燥領域Dが形成される(乾燥領域形成工程)。乾燥領域Dは、平面視で、基板Wの上面の回転中心を中心とする円形状である。
【0111】
その後、
図8Bに示すように、気体ノズル移動ユニット39が、基板W上において気体が吹き付けられる位置(気体吹付位置)が基板Wの上面の周縁領域に向けて移動するように、移動気体ノズル14を移動させる。これにより、移動気体ノズル14から吐出される気体が、遷移状態膜101の内周縁に吹き付けられ、遷移状態膜101の内周縁において昇華性物質の固体の昇華および溶媒の蒸発が促進される。
【0112】
ただし、気体吹付位置は、基板Wにおいて乾燥領域Dの周縁と重なる位置、または、乾燥領域Dの周縁よりも基板Wの回転中心側に位置することが好ましい。
しかも、基板Wは、所定の昇華回転速度で回転しているため、気体吹付位置は、基板Wの回転方向に相対移動する。そのため、遷移状態膜101の内周縁には、回転方向の全周において均一に気体が吹き付けられる。これにより、乾燥領域Dが平面視で、基板Wの上面の回転中心を中心とする円形状を維持しながら広がる。
【0113】
最終的には、乾燥領域Dがさらに拡大されることによって、乾燥領域Dの周縁が基板Wの周縁にまで達して遷移状態膜101が消滅する。つまり、乾燥領域Dが基板Wの上面の全域に広がる。言い換えると、基板Wの上面の全体から遷移状態膜101が排除されて基板Wの上面が乾燥される(昇華性物質含有液膜排除工程、基板上面乾燥工程)。その後、第1実施形態に係る基板処理と同様に、下面リンス工程(ステップS9)が開始される。
【0114】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
第2実施形態によれば、基板Wの上面の中央領域への気体の吹き付けによって、乾燥領域Dが形成される。その後、気体吹付位置が基板Wの上面の周縁領域に向けて移動される。そのため、乾燥領域Dの周縁付近の遷移状態膜101中の昇華性物質の固体に気体の吹き付け力を効率的に作用させることができる。したがって、乾燥領域Dを速やかに拡大することができる。その結果、遷移状態膜101の形成が開始されてから昇華性物質の固体が昇華されるまでの時間の差を、基板Wの上面の中央領域と基板Wの上面の周縁領域とで低減することができる。したがって、基板Wの上面の全域においてパターン160の倒壊を均一に減らすことができる。
【0115】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、上述の実施形態では、薬液、リンス液、昇華性物質含有液および置換液は、中央ノズル12から吐出される。しかしながら、各液体が個別のノズルから吐出されてもよい。たとえば、薬液ノズル、リンス液ノズル、昇華性物質含有液ノズルおよび置換液ノズルを、移動ノズルとして設けてもよい。さらに、薬液ノズル、リンス液ノズル、昇華性物質含有液ノズルおよび置換液ノズルを、水平方向および鉛直方向における位置が固定された固定ノズルとして中央ノズル12とは別に設けてもよい。
【0116】
また、たとえば、中央ノズル12、気体流路65および移動気体ノズル14から吐出される気体は、高温不活性ガスや高温空気等の高温気体であってもよい。そうであるならば、溶媒の蒸発や昇華性物質の固体の昇華を促進することができる。
また、下面リンス工程において、基板Wを加熱する必要がない場合には、下面ノズル13から吐出される液体は、熱媒である必要はなく、リンス液であってもよい。
【0117】
また、上述の各実施形態では、遷移状態膜除去工程において、基板Wの中心領域に乾燥領域Dが形成された後、乾燥領域Dが拡大されることで、基板Wの上面から遷移状態膜101が除去される。しかしながら、遷移状態膜101は、基板Wの上面の全域において均一に薄くされて、基板Wの上面から除去されてもよい。基板Wの上面の中央領域に気体を吹き付けるのではなく、基板Wの上面と対向面6aとの間に気体を充満させる基板処理であれば、基板Wの上面の全体から溶媒を蒸発させやすい。
【0118】
以下では、
図9~
図13Bを用いて、本発明によるパターン倒壊の抑制効果について調べるために行った実験の結果について説明する。
図9および
図10の実験では、小片状の基板(小片基板)を用い、以下の前処理を施した。前処理では、IPAに小片基板を浸漬した後、昇華性物質含有液に小片基板を浸漬した。その後、小片基板に対して薄膜化工程、遷移状態膜形成工程、および遷移状態膜除去工程を行った。その後、小片基板を60℃で10秒間加熱した後、小片基板の表面に窒素を40L/minの流量で60秒間吹き付けた。その後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてパターン倒壊率を測定した。
【0119】
図9は、遷移状態膜形成工程における小片基板の遷移状態膜形成回転速度と、結晶化時間との関係性を調べるために行った実験の結果を示している。この実験では、薄膜化工程において、小片基板を500rpmで2秒間回転させた。この実験では、遷移状態膜除去工程において、小片基板を300rpmで60秒間回転させながら、小片基板に対して窒素ガスを40L/minの流量で60秒間吹き付けた。この実験では、遷移状態膜形成回転速度が異なる複数の前処理を、それぞれ、複数の小片基板に対して行った。結晶化時間の測定は、各小片基板の遷移状態膜形成工程中に目視にて昇華性物質の固体の結晶化を観察することで行った。
【0120】
図9は、遷移状態膜形成回転速度と、結晶化時間との関係を示すグラフである。この実験から、
図9に示すように、遷移状態膜形成回転速度が速いほど、結晶化時間が短くなることが分かった。
図10は、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示している。この実験では、薄膜化工程において、小片基板を500rpmで2秒間回転させた。この実験では、遷移状態膜除去工程において、小片基板を300rpmで60秒間回転させながら、小片基板に対して窒素ガスを40L/minの流量で60秒間吹き付けた。この実験では、遷移状態
膜形成
回転速度および遷移状態膜形成時間が異なる複数の前処理を、それぞれ、複数の小片基板に対して行った。
【0121】
図10は、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係を示すグラフである。遷移状態
膜形成
回転速度が100rpmである場合、遷移状態膜形成時間が、結晶化時間の半分の時間よりも長く、結晶化時間よりも短い場合に、パターン倒壊率が低減された。特に、遷移状態膜形成時間が、結晶化時間の2/3の長さの時間であれば、パターン倒壊率が劇的に低減された。
【0122】
さらに、遷移状態
膜形成
回転速度が100rpmである場合には、遷移状態
膜形成
回転速度が300rpmである場合と比較して、パターン倒壊率が低くなる遷移状態膜形成時間の範囲が広くなった。そのため、遷移状態
膜形成
回転速度を遅くすることで、遷移状態膜形成時間の調整範囲(マージン)を広くすることができることが推察される。
図11A~
図13Bに示す実験では、半径150mmの円形状の基板を用いて第1実施形態に係る基板処理を行った後、SEMを用いてパターン倒壊率を測定した。
【0123】
図11A~
図11Dは、遷移状態膜形成時間とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。この実験では、遷移状態膜形成時間が異なる複数の基板処理を、それぞれ、複数の基板に対して行った。そして、基板処理が施された後の各基板上のパターンの倒壊率を基板上の複数箇所(300箇所)において測定した。
この実験では、薄膜化工程において、基板を500rpmで2秒間回転させた。また、この実験では、遷移状態膜除去工程において、基板に対して中央ノズル12から窒素ガスを100L/minの流量で吹き付けて、基板を300rpmで回転させた。この実験では、遷移状態膜形成工程において、基板を100rpmで回転させた。
【0124】
図11A~
図11Dに示すグラフにおいて、横軸は、基板の上面における測定位置(基板の回転中心から測定箇所までの距離)を示しており、縦軸は、各測定箇所におけるパターンの倒壊率を示している。
図11Aは、遷移状態膜形成時間を10秒とした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。遷移状態膜形成時間を10秒とした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、41%であった。
図11Bは、遷移状態膜形成時間を20秒とした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。遷移状態膜形成時間を20秒とした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、39.1%であった。
図11Cは、遷移状態膜形成時間を30秒とした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。遷移状態膜形成時間を30秒とした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、43.9%であった。
図11Dは、遷移状態膜形成時間を40秒とした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。遷移状態膜形成時間を40秒とした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、61.4%であった。
【0125】
このように、遷移状態膜形成時間を10秒、20秒、または30秒とした場合のパターン倒壊率は、遷移状態膜形成時間を40秒とした場合と比較して低いという結果が得られた。この結果から、遷移状態膜形成時間を40秒とした場合には、遷移状態膜除去工程の開始時において基板の上面に昇華性物質の結晶が発生していることが推察される。逆に、遷移状態膜形成時間を10秒、20秒または30秒とした場合には、基板の上面に昇華性物質の結晶が発生していないことが推察される。
【0126】
図12A~
図12Cは、薄膜化回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。この実験では、薄膜化回転速度が異なる複数の基板処理を、それぞれ複数の基板に対して行った。その後、基板処理が施された後の各基板上のパターンの倒壊率を基板上の複数箇所(300箇所)において測定した。
この実験では、遷移状態膜形成工程において、基板を100rpmで回転させ、遷移状態膜形成時間を結晶化時間の2/3の長さの時間とした。また、この実験では、遷移状態膜除去工程において、中央ノズル12から吐出される窒素ガスの流量を150L/minとし、気体流路65から吐出される窒素ガスの流量を50L/minとし、基板の回転速度を300rpmとした。また、この実験では、薄膜化工程において基板を薄膜化回転速度で2秒間回転させた。
【0127】
図12A~
図12Cに示すグラフにおいて、横軸は、基板の上面における測定位置(基板の回転中心から測定箇所までの距離)を示しており、縦軸は、各測定箇所におけるパターンの倒壊率を示している。
図12Aは、薄膜化回転速度を300rpmとした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。薄膜化回転速度を300rpmとした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、28.7%であった。
図12Bは、薄膜化回転速度を500rpmとした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。薄膜化回転速度を500rpmとした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、41.8%であった。
図12Cは、薄膜化回転速度を750rpmとした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。薄膜化回転速度を750rpmとした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、77.3%であった。
【0128】
このように、薄膜化回転速度を750rpmとした場合と比較して、薄膜化回転速度を500rpmまたは300rpmとした場合のパターン倒壊率が低いという結果が得られた。
薄膜化回転速度を500rpmまたは300rpmとした基板処理では、昇華性物質含有液の液膜が充分な厚さに保たれた状態で遷移状態膜形成工程が開始され、基板の上面に昇華性物質の結晶が発生する前に遷移状態膜除去工程が開始されたため、パターン倒壊率が低くなったものと推察される。薄膜化回転速度を750rpmとした基板処理では、昇華性物質含有液の気液界面がパターンの先端よりも下方に位置する程度に昇華性物質含有液の液膜が薄くなり、パターンに表面張力が作用したため、パターン倒壊率が高くなったものと推察される。
【0129】
図13Aおよび
図13Bは、遷移状態膜形成回転速度とパターン倒壊率との関係性を調べるために行った実験の結果を示すグラフである。この実験では、遷移状態膜形成回転速度が異なる複数の基板処理を、それぞれ、複数の基板に対して行った。その後、基板処理が施された後の各基板上のパターンの倒壊率を基板上の複数箇所(300箇所)において測定した。
【0130】
この実験では、遷移状態膜形成時間を結晶化時間の2/3の長さの時間とした。具体的には、遷移状態膜形成回転速度が10rpmである場合には、遷移状態膜形成時間を40秒とし、遷移状態膜形成回転速度が100rpmである場合には、遷移状態膜形成時間を25秒とした。また、この実験では、薄膜化工程において、薄膜化回転速度を500rpmとし、基板を2秒間回転させた。また、この実験では、遷移状態膜除去工程において、中央ノズル12から吐出される窒素ガスの流量を150L/minとし、気体流路65から吐出される窒素ガスの流量を50L/minとした。昇華回転速度を300rpmとした。
【0131】
図13Aおよび
図13Bに示すグラフにおいて、横軸は、基板の上面における測定位置(基板の回転中心から測定箇所までの距離)を示しており、縦軸は、各測定箇所におけるパターンの倒壊率を示している。
図13Aは、遷移状態膜形成回転速度を10rpmとした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。遷移状態膜形成回転速度を10rpmとした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、36.2%であった。
図13Bは、遷移状態膜形成回転速度を100rpmとした場合の、基板上の複数箇所におけるパターン倒壊率を示すグラフである。
遷移状態膜形成回転速度を100rpmとした場合の、基板上におけるパターン倒壊率の平均値は、41.8%であった。
【0132】
このように、遷移状態膜形成回転速度に関わらず、パターン倒壊率を充分低減することができた。その理由としては、遷移状態形成時間を、結晶化時間の2/3の長さの時間としたために、昇華性物質の結晶が発生する前で、かつ、溶媒を充分に蒸発させた後に昇華を開始することができたためと推察される。
図11A~
図12Cに示す実験結果から、遷移状態膜形成時間(遷移状態膜除去工程の開始タイミング)や、遷移状態膜形成工程開始時の昇華性物質含有液の液膜の膜厚が、パターン倒壊率に大きく影響することが推察される。
図13Aおよび
図13Bに示す実験結果から、遷移状態膜形成回転速度に関わらず、遷移状態膜形成時間を結晶化時間の2/3の長さの時間とすれば、パターン倒壊率を低減できることが推察される。
【0133】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0134】
1 :基板処理装置
12 :中央ノズル(昇華ユニット、昇華性物質含有液供給ユニット)
14 :移動気体ノズル(昇華ユニット)
23 :スピンモータ(基板回転ユニット)
65 :気体流路(昇華ユニット)
100 :液膜(昇華性物質含有液の液膜)
101 :遷移状態膜
102 :アモルファス固体(昇華性物質の固体)
103 :微結晶固体(昇華性物質の固体)
160 :パターン
A1 :回転軸線(鉛直軸線)
D :乾燥領域
W :基板