(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/214 20110101AFI20230301BHJP
B60R 21/239 20060101ALI20230301BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20230301BHJP
【FI】
B60R21/214
B60R21/239
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2019134725
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 将太
(72)【発明者】
【氏名】山下 透
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161966(JP,A)
【文献】特開平11-170958(JP,A)
【文献】特開2019-38370(JP,A)
【文献】特開2018-70102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突を予測する衝突予測手段と、
前記衝突予測手段により車両の衝突が予測されると、車両の前方から乗員に向かって展開するメインエアバッグと、
乗員の腕の位置を検知する乗員状態検知装置と、
乗員の腕に向かって展開し、展開後に急速に収縮するサブエアバッグと、
前記衝突予測手段により車両の衝突が予測された際に、前記乗員状態検知装置により検知された乗員の腕に向かって前記サブエアバッグを展開させ、前記サブエアバッグの収縮後に、前記メインエアバッグを展開させる展開制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記サブエアバッグは、乗員の上方でやや前方に設けられ、展開時に前方側となる位置に収縮させるためのベントホールが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記サブエアバッグは、前記メインエアバッグに押圧されることにより、内部のガスがさらに排出される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記展開制御手段は、前記乗員状態検知装置により検知された乗員の腕の位置が、前記メインエアバッグと、乗員の上体と、の間にある場合に限って、前記サブエアバッグを展開させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突等から乗員を保護するため、自動車などの車両では、乗員保護装置としてエアバッグ装置が装備されている。
このエアバッグ装置は、一般に、衝撃センサと、インフレータと、エアバッグと、制御装置等、から構成されている。エアバッグ装置は、前面衝突などにより衝撃センサが衝撃を検知すると、検知信号を制御装置に出力し、制御装置が作動信号をインフレータに送出して、インフレータがガスを発生させてエアバッグに送出する。そして、エアバッグは、インフレータから送出されたガスにより瞬時に膨らみ、乗員の前方に展開する。これにより、エアバッグは、内部のガス圧によって衝撃により前方へ移動する乗員の身体を受け止めて、その運動エネルギーを吸収しながら収縮する。このようにして、自動車の前面衝突等における、衝突の衝撃による乗員の急激な前方移動がエアバッグにより緩和され、乗員の安全が確保される。
【0003】
一方、近年では、自動運転の技術が研究されている。このような自動運転の車両では、運転手といった乗員の意思とは無関係に車両の走行状態が制御される。このため、自動運転に対応した車両の乗員保護装置が提案されている。この車両の乗員保護装置では、乗員の上体の前で展開するフロントエアバッグを有し、着座位置よりも前に移動していた乗員の上体の肩が当接する部位において肩が入り込むことができる肩受凹部を形成している。これにより、車両の自動運転中にシートに着座した乗員の上体が衝突前にシートの着座位置より前へ移動していたとしても、この上体の肩を肩受凹部において支持し、乗員を保護するようにしている。また、この車両の乗員保護装置では、肩受凹部から車幅方向の一方へ向けて、他方側より一方側が後となる傾斜面を形成している。これにより、他方の肩を前にして斜めの姿勢で前へ移動する上体全体を、フロントエアバッグの傾斜面により受けて支えることができ、安定した状態に支え、その状態で衝撃を吸収することができるようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、自動運転が本格的に普及すると、乗員の搭乗状態に自由度が増すこととなる。このため、例えば、運転席に着座していても、車両の走行中に携帯端末等を手に持っていることも考えられる。また、現在でも、運転席以外の座席では、車両の走行中に携帯端末等を手に持っていることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フロントエアバッグが乗員に向かって展開した際に、乗員が携帯端末等を持っていると、フロントエアバッグと乗員の上体との間に、乗員の腕などが挟まってしまい、最適な乗員保護が得られ難くなってしまう。また、本件出願人は、乗員が携帯端末等を持っている場合に、腕払い用のサブエアバッグを用いて、フロントエアバッグの展開前に乗員の腕を振り払うことを考案した。ただし、このようにした場合に、腕払いを行った後のサブエアバッグの処置をうまく行わないと、フロントエアバッグの展開を妨げる虞があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、乗員が携帯端末等を持っていても、最適な乗員保護を行うことができる乗員保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の乗員保護装置は、車両の衝突を予測する衝突予測手段と、前記衝突予測手段により車両の衝突が予測されると、車両の前方から乗員に向かって展開するメインエアバッグと、乗員の腕の位置を検知する乗員状態検知装置と、乗員の腕に向かって展開し、展開後に急速に収縮するサブエアバッグと、前記衝突予測手段により車両の衝突が予測された際に、前記乗員状態検知装置により検知された乗員の腕に向かって前記サブエアバッグを展開させ、前記サブエアバッグの収縮後に、前記メインエアバッグを展開させる展開制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車両の乗員保護装置は、前記サブエアバッグが、乗員の上方でやや前方に設けられ、展開時に前方側となる位置に収縮させるためのベントホールが設けられている、ようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明に係る車両の乗員保護装置は、前記サブエアバッグが、前記メインエアバッグに押圧されることにより、内部のガスがさらに排出される、ようにしてもよい。
【0011】
さらに、本発明に係る車両の乗員保護装置は、前記展開制御手段が、前記乗員状態検知装置により検知された乗員の腕の位置が、前記メインエアバッグと、乗員の上体と、の間にある場合に限って、前記サブエアバッグを展開させる、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乗員が携帯端末等を持っていても、最適な乗員保護を行うことができる乗員保護装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態における乗員保護装置を備えた車両の一部の概略を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における乗員保護装置の概略ブロック図である。
【
図3】サブエアバッグ可動装置の概略を示す図である。
【
図4】エアバッグ袋体の展開経過を示す側面図である。
【
図5】乗員保護装置の動作概要を示すフローチャートである。
【
図6】サブエアバッグ可動装置の収納形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における乗員保護装置を備えた車両の一部の概略を示す断面図である。また、
図2は、本発明の実施の形態における乗員保護装置の概略ブロック図である。また、
図3は、本実施の形態のサブエアバッグ装置を可動させるサブエアバッグ可動装置の概略を示す図である。また、
図4は、本実施の形態の乗員保護装置が作動した際の、エアバッグ袋体の展開経過を示す側面図である。また、
図5は、乗員保護装置の動作概要を示すフローチャートである。
【0016】
(車両1の構成)
図1に示すように、車両1の乗員室は、下部にアンダーフロア3、上部にルーフ4が設けられている。また、アンダーフロア3には、座席シート10が配備されている。さらに、車両1には、後述する乗員保護装置101が備えられている。
【0017】
座席シート10は、車両1に乗車した乗員Pが着座するものである。また、座席シート10は、乗員Pの臀部から大腿部を支えるシートクッション11(座部)と、リクライニング可能に設けられたシートバック12(背もたれ部)と、乗員Pの頭部を支えるヘッドレスト13(ヘッド部)と、を備えている。
【0018】
(乗員保護装置101の構成)
図2に示すように、乗員保護装置101は、車載カメラ31と、レーダー32と、メインエアバッグ装置50と、サブエアバッグ装置60と、サブエアバッグ可動装置70と、制御部110と、を備えている。なお、メインエアバッグ装置50は、ダッシュボード5に設けられている。また、サブエアバッグ装置60は、ルーフ4に設けられたサブエアバッグ可動装置70に設けられている。
【0019】
さらに、制御部110は、後述するように、車載カメラ31、および、レーダー32から入力された情報に基づいて、車両1の衝突および衝突予測を検知するとともに、メインエアバッグ装置50、および、サブエアバッグ装置60に設けられるエアバッグ袋体の展開を制御するエアバッグ展開制御ユニット(以下、ACUという)の機能も備えている。なお、制御部110は、車両1の全体を制御する車両制御装置(以下、ECUという)の一部として設けられていてもよい。
【0020】
(車載カメラ31)
車載カメラ31は、車両1の外部および内部を撮影することができるようになっている。例えば、車載カメラ31は、車両1の周辺環境、具体的には、車両1の前方、後方、および、側方を撮影する。また、車載カメラ31は、車内を撮影し、座席シート10に着座した乗員Pの着座状態、特に、乗員Pの腕や手の位置がわかるように撮影する。そして、撮影した画像情報が制御部110に入力され、制御部110のRAMに画像情報が記録されるとともに、画像情報が制御部110に解析される。これにより、制御部110は、車両1の周囲の状況(車外の状況)をリアルタイムおよび事後的に認識することができる。また、制御部110は、車内の状況、特に、乗員Pの状態をリアルタイムおよび事後的に認識することができる。なお、ここでいう、乗員Pの状態とは、特に、乗員Pの腕や手の位置を想定している。
【0021】
(レーダー32)
レーダー32は、電波を発射して障害物等の物体を探知し、物体までの距離と方位を測定するものである。また、レーダー32は、車両1のフロントバンパやリヤバンパに取り付けられ、車両1の前方監視、側方監視、後方監視等ができるようになっている。そして、監視情報が制御部110に入力され、制御部110のRAMに監視情報が記録されるとともに、監視情報が制御部110に解析される。これにより、制御部110は、車両1の周囲の状況をリアルタイムおよび事後的に認識することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、車載カメラ31と、レーダー32と、を備え、双方の情報を用いて、衝突予測を行うものとしたが、これに限らず、いずれか一方のみを用いるものであってもよく、また、他の装置を用いるものであってもよい。また、本実施の形態では、車内の状況、すなわち、乗員Pの状態の情報を、車載カメラ31による画像情報を用いて取得するものとしたが、これに限らず、人感センサ等を用いるものであってもよい。
【0023】
(メインエアバッグ装置50)
メインエアバッグ装置50は、制御部110に制御され、衝突の衝撃から乗員Pを保護するものである。また、メインエアバッグ装置50は、メイン用インフレータ51と、メインエアバッグ袋体52と、を有している(
図4参照)。
【0024】
(メイン用インフレータ51)
メイン用インフレータ51は、制御部110による車両1の衝突検知または衝突予測に基づく作動信号により、火薬に点火し、燃焼による化学反応でガスを発生させるものである。また、メイン用インフレータ51に発生されたガスは、メインエアバッグ袋体52に圧入される。なお、メイン用インフレータ51は、後述するサブ用インフレータよりも、制御部110による作動信号が遅れて入力される。
【0025】
(メインエアバッグ袋体52)
メインエアバッグ袋体52は、メイン用インフレータ51によってガスが圧入される袋体であって、非作動時は小さく折り畳まれている。また、メインエアバッグ袋体52は、メイン用インフレータ51からガスが圧入されると、ダッシュボード5から座席シート10の方向に膨張展開し、乗員Pの頭部および胸部等に対する、車両1の衝突の衝撃を緩和するものである。すなわち、メインエアバッグ袋体52は、制御部110により車両1の衝突が予測されると、車両1の前方から乗員Pに向かって展開するようになっている。
【0026】
(サブエアバッグ装置60)
サブエアバッグ装置60は、制御部110に制御され、乗員Pの腕や手をメインエアバッグ袋体52の展開領域から展開領域外に移動させるものである。また、サブエアバッグ装置60は、サブエアバッグ可動装置70によって、所定の位置に移動される。また、サブエアバッグ装置60は、サブ用インフレータ(不図示)と、サブエアバッグ袋体62と、を有している。
なお、メインエアバッグ袋体52の展開領域とは、メインエアバッグ袋体52が展開した際に占める、ダッシュボード5と乗員Pの上体等との間の領域をいう。
【0027】
(サブ用インフレータ)
サブ用インフレータは、制御部110による車両1の衝突検知または衝突予測に基づく作動信号により、火薬に点火し、燃焼による化学反応でガスを発生させるものである。また、サブ用インフレータに発生されたガスは、サブエアバッグ袋体62に圧入される。なお、サブ用インフレータは、前述のように、メイン用インフレータよりも、制御部110による作動信号が先に入力される。
【0028】
(サブエアバッグ袋体62)
サブエアバッグ袋体62は、サブ用インフレータによってガスが圧入される袋体であって、非作動時は小さく折り畳まれている。また、サブエアバッグ袋体62は、サブ用インフレータからガスが圧入されると、サブエアバッグ可動装置70によって移動された所定の位置から、下方に向かって膨張展開し、乗員Pの腕や手を、メインエアバッグ袋体52の展開領域外に移動させるものである。すなわち、サブエアバッグ袋体62は、乗員Pの上方から下方に向かって展開するようになっている。
【0029】
また、サブエアバッグ袋体62は、内部のガスを排出する、複数のベントホール62a、62b、62c、62dを有している。このベントホール62a、62b、62c、62dは、通常のエアバッグに設けられるベントホールよりも大きなものとなっている。したがって、サブエアバッグ袋体62は、膨張展開時に、このベントホール62a、62b、62c、62dから大量のガスが排出され、展開後、急速に収縮するようになっている。なお、ベントホール62aは、サブエアバッグ袋体62に一番先端側、すなわち、展開時の一番下側に設けられ、ベントホール62bは、下から2番目に設けられ、ベントホール62cは、下から3番目に設けられ、ベントホール62dは、一番上に設けられている。
【0030】
また、ベントホール62a、62b、62c、62dは、サブエアバッグ袋体62が展開した際の車両1の前方側に設けられている。すなわち、サブエアバッグ袋体62が展開した際に、乗員Pとは反対側に、ベントホール62a、62b、62c、62dが設けられている。したがって、サブエアバッグ袋体62のベントホール62a、62b、62c、62dから排出される高温高圧のガスが、乗員Pに向かって排出されることがなく、乗員保護を良好に行うことができる。
【0031】
さらに、サブエアバッグ袋体62のベントホール62a、62dは、メインエアバッグ袋体52が展開しても、接触されない位置に配置されている。一方、サブエアバッグ袋体62の一部は、メインエアバッグ袋体52が展開すると、メインエアバッグ袋体52に押圧されるようになっている。したがって、メインエアバッグ袋体52の展開時に、サブエアバッグ袋体62が収縮しきっていなくても、サブエアバッグ袋体62がメインエアバッグ袋体52に押圧され、ベントホール62a、62dからガスが排出され、サブエアバッグ袋体62が十分に収縮するようになっている。
【0032】
(サブエアバッグ可動装置70)
サブエアバッグ可動装置70は、ルーフ4に取り付けられ、制御部110に制御されて、サブエアバッグ装置60を、車両1に対する前後左右方向に移動させるものである。したがって、サブエアバッグ可動装置70は、後述するように、サブエアバッグ袋体62の展開位置を可動させるようになっている。また、サブエアバッグ可動装置70は、前後レール71と、左右レール72と、移動台73と、を有している(
図3参照)。
【0033】
(前後レール71)
前後レール71は、ルーフ4の下部に、車両1の前後方向(以下、単に前後方向という)に延在して設けられている。また、前後レール71は、下部に左右レール72を前後方向に摺動可能に、保持している。そして、前後レール71は、制御部110の制御によって、左右レール72を前後レール71の延在方向に沿って前後に移動させるようになっている。
【0034】
(左右レール72)
左右レール72は、上部が前後レール71に保持され、車両1の左右方向(以下、単に左右方向という)に延在して設けられている。また、左右レール72は、下部に移動台73を左右方向に摺動可能に、保持している。そして、左右レール72は、制御部110の制御によって、移動台73を左右レール72の延在方向に沿って左右に移動させるようになっている。
【0035】
(移動台73)
移動台73は、上部が左右レール72に保持され、下部にサブエアバッグ装置60が取り付けられている。したがって、移動台73は、サブエアバッグ装置60とともに、前後レール71に沿って前後方向に移動でき、左右レール72に沿って左右方向に移動できるようになっている。
すなわち、サブエアバッグ装置60は、制御部110の制御により、サブエアバッグ可動装置70によって車両1の前後左右に移動され、サブエアバッグ袋体62の展開位置が自在に変更されるようになっている。
【0036】
(制御部110)
制御部110は、乗員保護装置101の動作を制御するためものである。また、制御部110は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラム、データテーブル、各コマンドやデータ等の記憶を行うROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備え、乗員保護装置101の制御を統括するようになっている。
【0037】
また、制御部110は、入出力インターフェース回路を介して、車載カメラ31、レーダー32、メインエアバッグ装置50、サブエアバッグ装置60、サブエアバッグ可動装置70、および、図示しないECUと接続されている。
【0038】
そして、制御部110は、車載カメラ31、および、レーダー32から入力された情報に基づいて、車両1の衝突予測および衝突判定を行う。
なお、制御部110は、車載カメラ31、レーダー32から入力された情報に限らず、加速度センサ(Gセンサ)、距離センサ、衝撃センサ(圧力センサ)等を用いて、これらの装置から入力された情報に基づいて、衝突予測や衝突判定を行うものであってもよい。
【0039】
また、制御部110は、車載カメラ31から入力された情報に基づいて、乗員Pの状態、具体的には、乗員Pの腕の位置を特定するものである。また、制御部110は、サブエアバッグ可動装置70を可動させ、サブエアバッグ装置60の展開位置を移動させるものである。また、制御部110は、サブエアバッグ装置60を制御し、サブエアバッグ袋体62を展開させるものである。また、制御部110は、メインエアバッグ装置50を制御し、メインエアバッグ袋体52を展開させるものである。
【0040】
そして、制御部110は、車両1の衝突を予測した際、サブエアバッグ可動装置70を可動させ、サブエアバッグ袋体62を乗員Pの腕の位置の上方に移動して、サブエアバッグ袋体62を展開させてから、メインエアバッグ袋体52を展開させるようになっている。
【0041】
(乗員保護装置101の動作)
次に、このような乗員保護装置101の動作について、説明する。
図4は、エアバッグ袋体(メインエアバッグ袋体52、サブエアバッグ袋体62)が展開した際の側面図である。また、
図5は、乗員保護装置101の動作概要を示すフローチャートである。
【0042】
乗員保護装置101は、制御部110によって、
図5に示す制御処理が、所定の周期ごとに定期的に行われる。
制御部110は、制御処理において、まず、衝突予測処理を行う(ステップS101)。具体的には、制御部110は、車載カメラ31、および、レーダー32から入力された情報に基づいて、車両1の衝突予測を行う。また、制御部110は、この衝突予測に加え、車両1の衝突判定処理も行う。なお、制御部110は、車両1の衝突を検知した場合には、以下の衝突予測時の処理と同様の処理を行ってもよいが、衝突時の処理を行うことが望ましい。この衝突時の処理では、例えば、サブエアバッグ袋体62を展開させず、メインエアバッグ袋体52のみを展開させるようにする。
【0043】
次に、制御部110は、車両1の衝突予測を検知したか否かを判定する(ステップS102)。すなわち、制御部110は、上記衝突予測処理において、車両1の衝突が予測されたか否かを判定する。
【0044】
制御部110は、衝突が予測されたと判定した場合(ステップS102でYESと判定)には、ステップS103に処理を移行し、衝突が予測されたと判定しなかった(ステップS102でNOと判定)、すなわち、衝突が予測されなかった場合には、本制御処理を終了する。
【0045】
制御部110は、車両1の衝突予測を検知すると、乗員Pの腕の位置を検出する(ステップS103)。具体的には、制御部110は、車載カメラ31から入力された情報に基づいて、座席シート10に着座している乗員Pの腕の位置を検出する。
【0046】
次に、制御部110は、乗員Pの腕がメインエアバッグ袋体52の展開範囲にあるか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、制御部110は、上記検出した乗員Pの腕の位置が、メインエアバッグ袋体52と、乗員Pの上体と、の間にあるか否かを判定する。すなわち、制御部110は、メインエアバッグ袋体52を展開したときに、乗員Pの腕が、メインエアバッグ袋体52と乗員Pの上体との間に挟まれてしまうか否かを判定する。
【0047】
制御部110は、乗員Pの腕がメインエアバッグ袋体52の展開範囲にあると判定した場合(ステップS104でYESと判定)には、ステップS105に処理を移行し、乗員Pの腕がメインエアバッグ袋体52の展開範囲にないと判定した場合(ステップS104でNOと判定)には、ステップS108に処理を移行する。
【0048】
制御部110は、乗員Pの腕がメインエアバッグ袋体52の展開範囲にあると判定した場合、サブエアバッグ袋体62の展開位置を移動させる(ステップS105)。具体的には、制御部110は、乗員Pの腕の位置に基づいて、サブエアバッグ可動装置70を制御して、サブエアバッグ装置60の位置を移動させる。より詳細には、制御部110は、上記検出した乗員Pの腕の位置に基づいて、サブエアバッグ可動装置70の左右レール72を、乗員Pの腕の位置の上方まで、前後レール71に沿って前後方向に移動させる。また、制御部110は、サブエアバッグ可動装置70の移動台73を、乗員Pの腕の位置の上方まで、左右レール72に沿って左右方向に移動させる。これにより、サブエアバッグ袋体62を展開する前に、サブエアバッグ装置60を、乗員Pの上方に移動させることができる。
【0049】
次に、制御部110は、サブエアバッグ袋体62を展開させる処理を行う(ステップS106)。具体的には、制御部110は、上記移動させたサブエアバッグ装置60のサブ用インフレータに対して、作動信号を送信し、点火し、ガスを発生させる。サブエアバッグ装置60は、サブ用インフレータがガスを発生させると、サブエアバッグ袋体62にガスが圧入され、乗員Pの腕に向かって下方にサブエアバッグ袋体62が展開する。これにより、展開したサブエアバッグ袋体62によって、乗員Pの腕が振り払われ、メインエアバッグ袋体52の展開領域から、乗員Pの腕が除外される。
【0050】
なお、上記のように、乗員Pの腕がメインエアバッグ袋体52の展開範囲にない場合(ステップS104でNOと判定)には、上記ステップS105、ステップS106、ステップS107の処理が飛ばされるので、乗員Pの腕の位置が、メインエアバッグ袋体52と乗員Pの上体との間にある場合に限って、サブエアバッグ袋体62が展開される。
【0051】
次に、制御部110は、サブエアバッグ袋体62をしぼませる処理を行う(ステップS107)。具体的には、制御部110は、所定の時間経過するのを待ち、サブエアバッグ袋体62のベントホール62a、62b、62c、62dから、ガスを排出させる。
なお、本実施の形態では、サブエアバッグ袋体62の収縮を、ベントホール62a、62b、62c、62dからのガスの排出に頼っているが、強制的にガスを排出させるようにしてもよい。例えば、サブエアバッグ装置60に、吸引装置を追加し、サブエアバッグ袋体62の展開後に、サブエアバッグ袋体62からガスを吸引して、排出させるようにしてもよい。
【0052】
次いで、制御部110は、メインエアバッグ袋体52を展開させる処理を行う(ステップS108)。具体的には、制御部110は、メインエアバッグ装置50のメイン用インフレータ51に対して、作動信号を送信し、点火し、ガスを発生させる。メインエアバッグ装置50は、メイン用インフレータ51がガスを発生させると、メインエアバッグ袋体52にガスが圧入され、乗員Pの上体に向かって後方にメインエアバッグ袋体52が展開する。すなわち、制御部110は、サブエアバッグ袋体62の収縮後に、メインエアバッグ袋体52を展開させることとなる。
【0053】
以上のように、本実施の形態における乗員保護装置101は、サブエアバッグ袋体62によって乗員Pの腕を振り払い、腕を振り払ったサブエアバッグ袋体62をしぼませてから、乗員Pの上体に向かって、メインエアバッグ袋体52を展開するので、乗員Pを最適に保護することができる。すなわち、乗員Pが携帯端末等を持っていても、腕がサブエアバッグ袋体62によってメインエアバッグ袋体52の展開領域から除外され、サブエアバッグ袋体62もメインエアバッグ袋体52の展開に邪魔にならないので、乗員Pの腕がメインエアバッグ袋体52によって上体に押し付けられることなく、また、メインエアバッグ袋体52も乗員Pに向かって的確に展開し、乗員Pを適切に保護することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に、サブエアバッグ装置60およびサブエアバッグ可動装置70をルーフ4内に収納した乗員保護装置101の例について、説明する。
第2の実施の形態の乗員保護装置101は、サブエアバッグ装置60およびサブエアバッグ可動装置70の配置位置が異なるだけで、第1の実施の形態の乗員保護装置101と同様である。以下の説明では、第1の実施の形態のものと対応する構成要素には、第1の実施の形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
図6は、第2の実施の形態のサブエアバッグ可動装置70の収納形態を示す断面図である。なお、
図6(a)は、サブエアバッグ袋体62を展開前のサブエアバッグ可動装置の断面図であり、
図6(b)は、サブエアバッグ袋体62を展開後のサブエアバッグ可動装置の断面図である。
【0056】
図6に示すように、ルーフ4は、下部にルーフトリム4aが設けられている。そして、ルーフ4は、上部の外壁と、下部のルーフトリム4aとの間に、中空の内部空間を有している。
【0057】
サブエアバッグ装置60およびサブエアバッグ可動装置70は、ルーフ4内に設けられている。サブエアバッグ可動装置70の前後レール71は、ルーフ4内の上面に取り付けられている。また、左右レール72は、ルーフ4内で、前後レール71に沿って前後に移動するようになっている。また、移動台73およびサブエアバッグ装置60は、ルーフ4内で、左右レール72に沿って左右に移動するようになっている。
【0058】
そして、サブエアバッグ装置60は、制御部110に制御され、サブエアバッグ可動装置70に展開位置が移動され、サブエアバッグ袋体62を展開させる。サブエアバッグ袋体62は、ルーフ4内で膨張展開すると、真下のルーフトリム4aを突き破り、乗員Pの腕に向かって展開するようになっている。
【0059】
また、ルーフトリム4aは、サブエアバッグ袋体62が展開する勢いで突き破られる程度に脆弱性を有している。なお、ルーフトリム4aは、サブエアバッグ装置60が移動する範囲の直下のみが脆弱部となっていてもよい。
【0060】
以上のように、本実施の形態における乗員保護装置101は、サブエアバッグ装置60およびサブエアバッグ可動装置70が、通常時(サブエアバッグ袋体62の展開前)には、ルーフ4内に収納されているので、サブエアバッグ装置60やサブエアバッグ可動装置70が剥き出しとならず、乗員Pの目に触れないので、美観を損なわずに、乗員保護を行うことができる。
【0061】
なお、本実施の形態の乗員保護装置101は、サブエアバッグ可動装置70が、サブエアバッグ装置60を前後左右に移動させるものとしたが、これに限らず、所定の位置から展開方向を変えて、乗員Pの腕をめがけて展開させるようにしてもよい。
例えば、サブエアバッグ可動装置70が、サブエアバッグ装置60を前後方向にのみ移動させて、左右方向には乗員Pの腕をめがけて回転をさせてから、サブエアバッグ装置60がサブエアバッグ袋体62を展開させるようにしてもよい。また、サブエアバッグ可動装置70が、サブエアバッグ装置60を左右方向にのみ移動させて、前後方向には乗員Pの腕をめがけて回転をさせてから、サブエアバッグ装置60がサブエアバッグ袋体62を展開させるようにしてもよい。
さらに、サブエアバッグ可動装置70が、サブエアバッグ装置60を前後左右方向ともに乗員Pの腕をめがけて回転をさせてから、サブエアバッグ装置60がサブエアバッグ袋体62を展開させるようにしてもよい。
【0062】
また、本実施の形態の乗員保護装置101は、サブエアバッグ装置60を1つとしたが、これに限らず、サブエアバッグ装置60を複数設けるようにしてもよい。
例えば、サブエアバッグ装置60として、左腕用と右腕用に2つ設けて、それぞれ必要に応じて、サブエアバッグ袋体62を展開させるようにしてもよい。また、サブエアバッグ装置60を、前後方向に複数設けるようにしてもよい。
【0063】
さらに、サブエアバッグ袋体62の幅を広く持たせ、サブエアバッグ装置60の移動範囲を限定させるようにしてもよい。例えば、サブエアバッグ袋体62の前後方向の長さ(幅)を広くすることにより、サブエアバッグ装置60を前後に大きく動かさなくても、乗員Pの腕の位置をカバーすることができ、サブエアバッグ袋体62が乗員Pの腕を容易に振り落すことができる。
【0064】
また、上述したように、本実施の形態では、サブエアバッグ袋体62の収縮を、ベントホール62a、62b、62c、62dからのガスの排出に頼っているが、これに限らず、強制的にガスを排出させるようにしてもよい。
【0065】
なお、本実施の形態において、車載カメラ31は、本願の乗員状態検知装置を構成する。さらに、本実施の形態において、制御部110は、本願の衝突予測手段、展開制御手段を構成する。
さらに、本実施の形態において、メインエアバッグ袋体52は、本願のメインエアバッグを構成する。また、本実施の形態において、サブエアバッグ袋体62は、本願のサブエアバッグを構成する。
【符号の説明】
【0066】
1 車両、3 アンダーフロア、4 ルーフ、4a ルーフトリム、5 ダッシュボード、10 座席シート、11 シートクッション、12 シートバック、13 ヘッドレスト、31 車載カメラ、32 レーダー、50 メインエアバッグ装置、51 メイン用インフレータ、52 メインエアバッグ袋体、60 サブエアバッグ装置、62 サブエアバッグ袋体、70 サブエアバッグ可動装置、71 前後レール、72 左右レール、73 移動台、101 乗員保護装置、110 制御部