(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】低圧注入器具及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20230301BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230301BHJP
E04B 1/41 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E01D22/00 B
E04B1/41 503G
(21)【出願番号】P 2019181687
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022389
【氏名又は名称】サンコーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】竹村 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小倉 浩則
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 陽介
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255590(JP,A)
【文献】特開昭61-109866(JP,A)
【文献】特開2017-128860(JP,A)
【文献】特開平09-217497(JP,A)
【文献】特開2004-316286(JP,A)
【文献】特開昭59-055938(JP,A)
【文献】特開昭62-082174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102061781(CN,A)
【文献】国際公開第87/001153(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00299121(EP,A1)
【文献】特開2007-146546(JP,A)
【文献】特開平8-291631(JP,A)
【文献】特開2015-28267(JP,A)
【文献】特開2008-202251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E01D 22/00
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物に注入する注入材を動力を用いずに低圧で注入する低圧注入器具であって、
前記注入材を収容して
ゴム弾性体の復元力で収容する前記注入材を低圧の内部圧力で押し出して注入する注入部と、前記鉄筋コンクリート構造物に削孔した孔に固定するアンカー部と、を備え、
前記アンカー部は、金属製のスリーブと、このスリーブの拡張部を押し広げる円錐台状のテーパー部と、ナットと螺合するねじ山が形成されたボルト部と、を有し、締付けにより前記拡張部が開き、前記孔の孔壁に機械的に固着する金属拡張式の一端拡張型のアンカーであるとともに、
前記アンカー部には、前記注入材を注入するための注入孔が穿設され、
前記注入孔は、前記ボルト部を軸に沿って貫通する貫通孔であり、前記注入部と前記注入孔が連通され
、
前記スリーブの外周面には、前記注入材を流通する螺旋状の螺旋溝が形成されていること
を特徴とする低圧注入器具。
【請求項2】
前記ボルト部には、前記貫通孔と連通し、軸直交方向に貫通する横孔が形成され、
前記スリーブには、前記横孔と連通するスリット又は孔が形成されていること
を特徴とする請求項
1に記載の低圧注入器具。
【請求項3】
鉄筋コンクリート構造物に鋼板などの補強材を当接又は離間させて装着し、前記鉄筋コンクリート構造物に発生したひび割れ及び前記鋼板と前記鉄筋コンクリート構造物との間の隙間の両方に注入材を注入して補修する鉄筋コンクリート構造物の補修方法であって、
鉄筋コンクリート構造物に注入する注入材を収容してゴム弾性体の復元力で収容する前記注入材を低圧の内部圧力で押し出して注入する注入部と、前記鉄筋コンクリート構造物に削孔した孔に固定するアンカー部と、を備え、前記アンカー部には、前記注入材を注入するための注入孔が穿設され、前記注入部と前記注入孔が連通されている低圧注入器具を用いて、前記アンカー部で前記コンクリート構造物に前記補強材を固定した状態で前記注入部から前記アンカー部の前記注入孔を通じて
動力を用いずに前記注入部のゴム弾性体の復元力による低圧の内部圧力で押し出して前記注入材を注入すること
を特徴とする鉄筋コンクリート構造物の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物のひび割れ補修や鉄筋の腐食抑制のために樹脂などの注入材を低圧で注入する低圧注入器具及びそれを用いた鉄筋コンクリート構造物の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床版などの鉄筋コンクリート構造物は、塩害や外的要因などに起因して、鉄筋に沿ってひび割れが発生し、それが原因で被りコンクリートが剥離することが知られている。このため、鉄筋コンクリート構造物の外部表面、例えば、コンクリート床版の裏面に、鋼板などの補強材を設置して、その補強材の内部(上部)や構造物内部のひび割れにエポキシ樹脂などの注入材を注入して補修・補強することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンクリート構造物1の不充填部11を特定する工程と、不充填部11に対して溝2を設ける工程と、溝2と投影される位置に、その溝2より深い注入孔3を設ける工程と、注入器31を用いて注入孔3及び溝2に補修材32を充填する工程とを有するコンクリート構造物の補修方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0023]~[0038]、図面の
図1,
図2等参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のコンクリート構造物の補修方法は、コンクリート構造物1の下面に不充填部11がある場合、被覆材4を不充填部11と間隔をおいた状態で保持する必要があった。このため、明記されていないが、被覆材4に注入孔3とは別に孔をあけ、アンカーなどでコンクリート構造物1の下面に固定する必要があり、重労働であるコンクリート構造物1の下面への孔あけ作業やアンカーの撤去に時間を要していた。
【0005】
また、本願出願人が提案した特許文献2には、電気防食法も加味されているが、パネル版の片面に適宜の間隔で条溝を形成し、この条溝に電気防食用電極を面上に突出させて固定した断面修復パネルを、電極を鉄筋コンクリート構造物の撤去部分に向けて設置し、構造物との間に注入材を注入して断面を修復する鉄筋コンクリート構造物の補修方法が開示されている。(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1,3、明細書の段落[0031]~[0039]、図面の
図6,
図7等参照)。
【0006】
さらに、本願出願人が提案した特許文献3には、コンクリート構造体の引張域に補強鋼板を空隙を設けて配置するとともに伸縮可能に仮固定し、補強鋼板を加熱し、加熱により補強鋼板が膨張したとき、引張方向の補強鋼板両端を予めコンクリート構造体に固設した引張方向の補強鋼板の両端のそれぞれを固定するための定着具に固定したのち、常温状態にしてコンクリート構造体への補強鋼板の仮固定を本固定とし、本固定したのち、コンクリート構造体の引張域と補強鋼板の空隙に注入材を注入する鉄筋コンクリート構造物の補修方法が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献2及び3に記載の発明は、前述の特許文献1に記載の発明と同様に、コンクリート構造物の下面に鋼板を固定するために、構造物の下面にアンカー孔を削孔したり、鋼板に注入孔とは別に予めアンカー孔を穿設したりする必要があった。このため、手間であり労務コストや製造コストのコストアップの要因となっているという特許文献1に記載の発明と同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-117183号公報
【文献】特開2003-321941号公報
【文献】特開2008-25178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、注入材を注入するための注入孔と鋼板などの補強材を支持するためのアンカー孔とを兼用することができる低圧注入器具及びそれを用いた鉄筋コンクリート構造物の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の低圧注入器具は、鉄筋コンクリート構造物に注入する注入材を動力を用いずに低圧で注入する低圧注入器具であって、前記注入材を収容してゴム弾性体の復元力で収容する前記注入材を低圧の内部圧力で押し出して注入する注入部と、前記鉄筋コンクリート構造物に削孔した孔に固定するアンカー部と、を備え、前記アンカー部は、金属製のスリーブと、このスリーブの拡張部を押し広げる円錐台状のテーパー部と、ナットと螺合するねじ山が形成されたボルト部と、を有し、締付けにより前記拡張部が開き、前記孔の孔壁に機械的に固着する金属拡張式の一端拡張型のアンカーであるとともに、前記アンカー部には、前記注入材を注入するための注入孔が穿設され、前記注入孔は、前記ボルト部を軸に沿って貫通する貫通孔であり、前記注入部と前記注入孔が連通され、前記スリーブの外周面には、前記注入材を流通する螺旋状の螺旋溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の低圧注入器具は、請求項1に記載の低圧注入器具において、前記ボルト部には、前記貫通孔と連通し、軸直交方向に貫通する横孔が形成され、前記スリーブには、前記横孔と連通するスリット又は孔が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の鉄筋コンクリート構造物の補修方法は、鉄筋コンクリート構造物に鋼板などの補強材を当接又は離間させて装着し、前記鉄筋コンクリート構造物に発生したひび割れ及び前記鋼板と前記鉄筋コンクリート構造物との間の隙間の両方に注入材を注入して補修する鉄筋コンクリート構造物の補修方法であって、鉄筋コンクリート構造物に注入する注入材を収容してゴム弾性体の復元力で収容する前記注入材を低圧の内部圧力で押し出して注入する注入部と、前記鉄筋コンクリート構造物に削孔した孔に固定するアンカー部と、を備え、前記アンカー部には、前記注入材を注入するための注入孔が穿設され、前記注入部と前記注入孔が連通されている低圧注入器具を用いて、前記アンカー部で前記コンクリート構造物に前記補強材を固定した状態で前記注入部から前記アンカー部の前記注入孔を通じて動力を用いずに前記注入部のゴム弾性体の復元力による低圧の内部圧力で押し出して前記注入材を注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1又は2に記載の低圧注入器具によれば、アンカー部でコンクリート構造物に鋼板などの補強材を固定・支持した状態で注入部からアンカー部の注入孔を通じて注入材を注入することができる。このため、注入材を注入するための注入孔と補強材を支持するためアンカー孔とを兼用することができ、孔あけ作業を低減するとともに、補修作業の作業時間を短縮することができる。よって、重労働であるコンクリート構造物の下面への孔あけ作業や鋼板の孔あけ作業を削減して、労務コストや製造コストを低減してコストダウンを達成することができる。
また、請求項1に記載の低圧注入器具によれば、アンカー部が孔壁に機械的に固着する金属拡張式のアンカー部であるので、注入材の注入と同時に鋼板などの補強材の支持を安全確実に安定して実施することができる。
それに加え、請求項1に記載の低圧注入器具によれば、前記スリーブの外周面には、前記注入材を流通する螺旋状の螺旋溝が形成されているので、鉄筋コンクリート構造物のひび割れがどこにあるかにかかわらず前記スリーブの外周面に接触しているだけで注入材を注入することが可能となる。
【0020】
特に、請求項2に記載の低圧注入器具によれば、アンカー部で補強材を支持した状態で、鉄筋コンクリート構造物の内部のひび割れだけでなく、補強材と鉄筋コンクリート構造物との間の隙間にも効率よく注入材の注入が可能となる。
【0021】
請求項3に記載の鉄筋コンクリート構造物の補修方法によれば、アンカー部でコンクリート構造物に鋼板などの補強材を固定・支持した状態で注入部からアンカー部の注入孔を通じて注入材を注入することができる。このため、注入材を注入するための注入孔と補強材を支持するためのアンカー孔とを兼用して孔あけ作業の作業時間を短縮することができる。よって、労務コストを低減してコストダウンを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る低圧注入器具を示す正面図である。
【
図2】同上の低圧注入器具のスリーブを示す図であり、(a)が拡張前、(b)が拡張後を示している。
【
図3】同上の低圧注入器具のボルト部及びテーパー部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。
【
図4】同上の低圧注入器具の連結具を示す図であり、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る低圧注入器具を示す正面図である。
【
図6】同上の低圧注入器具の連結具を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る低圧注入器具を示す正面図である。
【
図8】同上の低圧注入器具のスリーブを示す図であり、(a)が正面図、(b)が菅軸方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図9】同上の低圧注入器具のボルト部及びテーパー部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が軸方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図10】老朽化した鉄筋コンクリート製の床版を示す模式断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法の鋼板取付工程を示す工程説明図である。
【
図12】同上の鉄筋コンクリート構造物の補修方法のシール工程を示す工程説明図である。
【
図13】同上の鉄筋コンクリート構造物の補修方法の注入工程を示す工程説明図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る低圧注入器具を床版のアンカー孔に挿入した状態を示す図である。
【
図15】同上の低圧注入器具を用いて注入材を注入している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る低圧注入器具及びそれを用いた鉄筋コンクリート構造物の補修方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[第1実施形態]
先ず、
図1~
図4を用いて、本発明の第1実施形態に係る低圧注入器具について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る低圧注入器具を示す正面図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る低圧注入器具1は、鉄筋コンクリート構造物に削孔した孔(図示せず)に固定するアンカー部2と、注入材を収容して注入する注入部3と、これらを連結する連結具4など、から構成されている。
【0025】
なお、注入材としてひび割れの補修に使用するエポキシ系樹脂からなる注入材を想定して説明する。但し、本発明に適用可能な注入材は、エポキシ系樹脂などの樹脂材に限られず、セメント系又は樹脂系のグラウト材や亜硝酸ナトリウムなどの防錆剤など、小さな隙間に挿通可能な流動性を有する流動体や液体であればよい。
【0026】
<アンカー部>
このアンカー部2は、金属拡張式のアンカーの一種であるテーパーボルト式の一端拡張型の金属系アンカーである。
図1に示すように、アンカー部2は、円筒状の金属製のスリーブ5と、このスリーブ5に挿通され、外周面にねじ山が形成されたボルト部6と、このボルト部6の一端に形成された逆円錐台状のテーパー部7など、から構成されている。なお、図中の符号Nは、ナットNであり、符号Wは、ワッシャWである。
【0027】
(スリーブ)
図2は、低圧注入器具1のスリーブ5を示す図であり、(a)が拡張前、(b)が拡張後を示している。
図2に示すように、スリーブ5は、金属製スリーブである円筒状のスリーブ本体50から構成されている。また、このスリーブ本体50は、一端から十字状に切り込まれて複数のスリット51が形成され、これらのスリット51で複数(図示形態では4つ)の拡張部52に区分けされている。
【0028】
そして、このスリーブ本体50の中央付近には、円筒体の外周面から内周面まで貫通する長細い4つの注入スリット53が形成されている。なお、これらの注入スリット53は、後述の横孔6bを介して注入孔6aと連通している。
【0029】
このスリーブ5は、
図2(b)に示すように、ねじ締めされたときに、後述のボルト部6に引き上げられて、拡張部52が、テーパー部7に押し付けられることで外側に拡張する。このため、拡張部52が削孔された孔の孔壁に押し付けられることとなり、低圧注入器具1及び後述の補強材がコンクリート構造物に固定され、アンカー部2がアンカーとして機能する仕組みとなっている。
【0030】
(ボルト部及びテーパー部)
図3は、低圧注入器具1のボルト部6及びテーパー部7を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。
図3に示すように、ボルト部6は、鋼棒の外周面にねじ山が形成された全ねじボルトからなる部位であり、そのボルト部6の棒材の一端に逆円錐台状のテーパー部7がヘッダー加工により形成されている。勿論、テーパー部7とボルト部6とを別体に形成して後から固着してもよいことは云うまでもない。
【0031】
また、ボルト部6及びテーパー部7には、これらの軸に沿って貫通する貫通孔からなる注入材を注入するための注入孔6aが穿設されている。そして、
図3(a)に示すように、ボルト部6及びテーパー部7には、この注入孔6aと直交するとともに十字状に互いに直交する2本の横孔6bが形成されている。また、これらの横孔6bは、ほぼ等間隔に複数個所(複数段:図示形態では3か所)に形成されている。勿論、横孔6bは、注入材を挿通できるように、注入孔6aと連通していればよく、互いに直交している必要もないし、注入孔6aと直交している必要もない。
【0032】
また、
図3(a),
図3(b)に示すように、テーパー部7は、円錐台状のテーパー部本体70からなり、テーパー部本体70の径が大きくなった端面(上端面)には、十字状の溝71が形成され、この十字状の溝71の交差部分に、前述の注入孔6aの一端が開口している。
【0033】
<注入部>
注入部3は、インジェクターと呼ばれるゴム弾性体からなる部位であり、ゴム弾性体の復元力で収容する注入材を低圧の内部圧力で押し出す機能を有している。なお、ここで、低圧とは、注入材をコンプレッサーなどの動力を用いずに注入する程度の圧力を指し、具体的には、例えば、245kPa以下、少なくとも後から充填可能な後述のインジェクターを含めて500kPa以下の圧力を指している。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る注入部3は、袋状に一端が開口し、他端が閉塞した定量型(注入材の補充ができないタイプ)のゴムチューブ30から主に構成され、このゴムチューブ30の開口部には、後述の連結具4と連結する連結部31が形成されている。
【0035】
この注入部3は、ゴムチューブ30にエポキシ系樹脂などの所定量の注入材が充填されて、ゴムチューブ30のゴム弾性体の復元力で内部圧力が前述の一定圧力(245kPa)程度に保たれる仕組みとなっている。勿論、この圧力は、例示であり、ゴムチューブ30のゴム厚や径を適宜設定することで所望の圧力に調整できることは云うまでもない。
【0036】
(連結具)
図4は、低圧注入器具の連結具を示す図であり、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が平面図である。連結具4は、硬質樹脂からなる樹脂製の部材であり、
図4に示すように、円筒状の連結具本体40と、連結具本体40の外周面から2方向外側へ突出する把持部41とを備えている。また、連結具本体40の一端(下端)には、軸方向の一方(下方)へ突出して前述の連結部31と嵌合して連結する連結部42も形成されている。
【0037】
[第2実施形態]
次に、
図5,
図6を用いて、本発明の第2実施形態に係る低圧注入器具1’について説明する。第2実施形態に係る低圧注入器具1’が、前述の第1実施形態に係る低圧注入器具1と相違する点は、連結具と注入部であるので、主にその点について説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0038】
図5は、本発明の第2実施形態に係る低圧注入器具1’を示す正面図であり、
図6は、低圧注入器具1’の連結具4’を示す斜視図である。
図5に示すように、第2実施形態に係る低圧注入器具1’は、前述のアンカー部2と、注入材を収容して注入する注入部3’と、これらを連結する連結具4’など、から構成されている。
【0039】
<注入部>
注入部3’は、前述の注入部3のインジェクターと同様のゴム弾性体からなるインジェクターであり、ゴム弾性体の復元力で収容する注入材を低圧の内部圧力で押し出す機能を有している。この注入部3’が、前述の注入部3と相違する点は、後端に注入パイプ33’を有し、使い切った後から注入材を補充可能となっている点である。本実施形態に係る注入部3’は、内部圧力が340kPa程度に設定されている。
【0040】
この注入部3’は、インジェクターの本体となる円筒状のゴムチューブ30’と、このゴムチューブ30’の軸方向の一端に接続された硬質樹脂からなる連結部31’と、他端に接続された硬質樹脂からなる注入部32’と、を備えている。また、注入部3’は、この注入部32’に注入パイプ33’が装着され、この注入パイプ33’から注入材をゴムチューブ30’内に追加充填可能に構成されている。
【0041】
また、連結部31’には、ねじ山31a’が形成され、後述の連結具4’の六角ナット部41’と螺合するように構成されている。
【0042】
なお、注入部3及び注入部3’として、ゴム弾性体の復元力で収容する注入材を押し出すタイプの注入部を例示して説明したが、本発明に係る注入部は、特許文献1に記載の注入器31のような手押しの注射器タイプのものであっても構わない。要するに、本発明に係る注入部は、注入材を動力を用いずに低圧で注入するタイプのものには適用することができる。
【0043】
(連結具)
図6に示すように、低圧注入器具1’の連結具4’は、径の違うねじ同士を接続する金属製の異径ねじ接合ソケットであり、円筒部40’と、六角ナット部41’と、から主に構成されている。この円筒部40’は、円筒体の内周面にボルト部6と螺合するねじ溝が形成され、六角ナット部41’は、前述の連結部31’のねじ山31a’と螺合するねじ溝が形成されている。勿論、この連結具4’は、金属製に限られず、素材に関係なくボルト部6と注入部3’とを連結可能な構成であればよいことは云うまでもない。
【0044】
このように、連結具4’を用いて、ボルト部6と注入部3’又は注入部3とを接合することにより、安価で大量に入手が可能な市販の物品を組み合わせて、本発明に係る低圧注入器具を構成することが可能となる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、
図7~
図9を用いて、本発明の第3実施形態に係る低圧注入器具1”について説明する。第3実施形態に係る低圧注入器具1”が、前述の第1実施形態に係る低圧注入器具1と相違する点は、アンカー部であるので、主にその点について説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0046】
図7は、本発明の第3実施形態に係る低圧注入器具1”を示す正面図であり、
図8は、低圧注入器具1”のスリーブを示す図であり、(a)が正面図、(b)が菅軸方向に沿って切断した状態を示す断面図である。また、
図9は、ボルト部及びテーパー部を示す図であり、(a)が正面図、(b)が軸方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
図7に示すように、第3実施形態に係る低圧注入器具1”は、アンカー部2’と、前述の注入材を収容して注入する注入部3と、これらを連結する連結具4など、から構成されている。
【0047】
<アンカー部>
このアンカー部2’は、前述のアンカー部2と同様に、金属拡張式のアンカーの一種であるテーパーボルト式の一端拡張型の金属系アンカーである。
図7に示すように、アンカー部2’は、円筒状の金属製のスリーブ5’と、このスリーブ5’に挿通され、外周面にねじ山が形成されたボルト部6’と、このボルト部6’の一端に形成された逆円錐台状のテーパー部7’など、から構成されている。
【0048】
(スリーブ)
図8に示すように、スリーブ5’は、金属製スリーブである円筒状のスリーブ本体50’から主に構成されている。また、このスリーブ本体50’は、一端から十字状に切り込まれた複数(4本)のスリ割りとしてスリット51’が形成され、これらのスリット51で複数(図示形態では4つ)の拡張部52’に区分けされている。
【0049】
そして、このスリーブ本体50’の外周面には、注入材を流通する一続きの螺旋状の螺旋溝53’が形成されている。但し、螺旋溝53’は、スリット51’と連通する溝であり、一続きといっても注入材の流通経路として連続しているという意味であり、溝としてはスリット51’で寸断されている。
【0050】
このスリーブ5’は、前述のスリーブ5と同様に、ねじ締めされたときに、後述のボルト部6’に引き上げられて、拡張部52’がテーパー部7に押し付けられることで外側に拡張する。このため、拡張部52’が削孔された孔の孔壁に押し付けられることとなり、低圧注入器具1”及び後述の補強材がコンクリート構造物に固定され、アンカー部2’がアンカーとして機能する仕組みとなっている。
【0051】
(ボルト部及びテーパー部)
図9に示すように、ボルト部6’は、鋼棒の外周面にねじ山が形成された全ねじボルトからなる部位であり、そのボルト部6’の棒材の一端面に金属製の逆円錐台状のテーパー部7’が溶接や接着剤等で固着されている。勿論、テーパー部7’と同径の金属棒からねじ山を切削加工してボルト部6’を形成してもよい。テーパー部7’は、逆円錐台状のテーパー部本体7a’と、円柱状のストレート部7b’を有している。
【0052】
また、
図9(b)に示すように、ボルト部6’及びテーパー部7’には、これらの軸心に沿って上下に貫通する貫通孔からなる注入材を注入するための注入孔6a’が穿設されている。
【0053】
[鉄筋コンクリート構造物の補修方法]
次に、
図10~
図13を用いて、本発明の実施形態に係る低圧注入器具を用いた鉄筋コンクリート構造物の補修方法について説明する。本説明では、前述の第1実施形態に係る低圧注入器具1を用いて、鉄筋コンクリート構造物である橋梁の鉄筋コンクリート製の床版C1の下面と、補強材として接着されていた鋼板S1とが、経年劣化等により浮きなどの隙間が生じ、その部分に前述の注入材e1を充填して補修する場合を例示して説明する。なお、補修とは、鉄筋コンクリート構造物の当初の機能を発揮できるように、老朽化したり損傷したりした部分を元の状態に戻すだけでなく、当初の機能より補強する場合を含むものとする。
【0054】
図10は、老朽化した鉄筋コンクリート製の床版C1を示す模式断面図である。
図10に示すように、床版C1は、下部鉄筋R1が腐食して膨張したり、自動車荷重などの外的要因等により、下部鉄筋R1に沿ってひび割れC2が発生している。また、この床版C1は、床版C1の下面に接着されていた鋼板S1が経年劣化等により、接着材と床版C1との間及び接着材と鋼板S1との間のいずれか一方又は両方に隙間が確認されている状態である。
【0055】
床版C1などの鉄筋コンクリート構造物は、塩害や外的要因等により、鉄筋等に沿ってひび割れC2が発生し、コンクリートが剥離するおそれがあるとともに、強度不足になるという問題が知られている。このような問題を解決するべく、従来、床版C1の下面に鋼板S1を接着して補強する鋼板接着補強工法が知られている。本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法は、この鋼板接着補強工法などに好適に適用することができる。
【0056】
(1.低圧注入器具装着工程)
先ず、
図11に示すように、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法では、鋼板S1や床版C1の下面に削孔したうえ、その孔に前述の低圧注入器具1を装着する低圧注入器具装着工程を行う。
図11は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法の低圧注入器具装着工程を示す工程説明図である。
【0057】
図11に示すように、本工程では、床版C1の下面に所定間隔をおいて鋼板S1及び床版C1の下面にアンカーボルト用のアンカー孔H1を複数削孔する。その後、そのアンカー孔H1に低圧注入器具1を挿入し、ナットNを締めてアンカー部2を拡張してボルト止めする。
【0058】
具体的には、スリーブ5は、ねじ締めされたときに、拡張部52がテーパー部7で押し広げられることで外側に倒れて拡張する(
図2(b)も参照)。このため、拡張部52が削孔されたアンカー孔H1の孔壁に押し付けられることとなり、床版C1の下面に鋼板S1が固定される。
【0059】
このように、本工程では、前述のように、低圧注入器具1のアンカー部2として、テーパーボルト式の一端拡張型の金属系アンカーを用いて、アンカー孔H1に低圧注入器具1を固定する。このため、樹脂系アンカーの接着不良が目視で確認できないのと相違して、金属系アンカーは、目視で不具合を発見し易く鋼板S1の支持を安全確実に実施することができ、剥離した鋼板S1が落下することを確実に防止することができる。
【0060】
(2.シール工程)
次に、
図12に示すように、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法では、鋼板S1の周囲と床版C1との間の隙間をシール材S2で封止するシール工程を行う。
図12は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法のシール工程を示す工程説明図である。
【0061】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法では、ひび割れC2と、鋼板S1と床版C1との隙間の両方同時に注入材e1(
図13参照)を注入して補修することを狙っている。このため、アンカー孔H1を伝って鋼板S1の端部や低圧注入器具1の周りから注入材e1が漏れ出さないようにシールする。
【0062】
具体的には、エポキシ樹脂又はセメント系などからなるシール材S2で鋼板S1と床版C1との間の隙間の端部や低圧注入器具1のナットN及びワッシャWの周りをシールして塞ぎ、注入材e1が漏れないように封止する。
【0063】
(3.注入工程)
次に、
図13に示すように、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法では、低圧注入器具1を用いて、注入部3に収容された2液型のエポキシ系樹脂からなる注入材e1を注入する注入工程を行う。
図13は、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法の注入工程を示す工程説明図である。
【0064】
勿論、本工程で注入する注入材e1は、エポキシ系樹脂などの樹脂に限られず、セメント系のグラウト材を適用することが可能である。但し、2液型のエポキシ系樹脂は、鋼板とコンクリートとの接着性に優れているため好ましい。
【0065】
ここで、従来の注入工程では、鋼板S1に予めアンカー孔とは別に注入用の孔を削孔する必要があった。このため、構造物の下面に重い電動工具等を用いて上方に向け削孔するという重労働となる鋼板S1の孔あけに手間がかかり、労務コストが嵩み、補修工事全体のコストが増大するという問題があった。
【0066】
しかし、本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法では、低圧注入器具1を用いて、アンカー部2で床版C1に鋼板S1を固定した状態で注入部3からアンカー部2の注入孔6a(
図3も参照)を通じて注入材e1を注入することができる。このため、鋼板S1における注入材e1を注入するための注入孔と、アンカー孔とを兼用することができ、鋼板S1や床版C1への削孔作業及び注入作業の労務コストも低減することができる。
【0067】
また、本工程では、従来手動ポンプ等で各注入孔で作業員が手動で注入していた注入材の注入作業を、注入部3のインジェクターのゴム弾性体の復元力で注入材を一定圧力で自動で注入することができる。このため、注入圧力の管理や各注入孔での注入作業が不要となり、極めて効率的に安全かつ安定して注入作業を行うことができる。
【0068】
その上、前述のように、低圧注入器具1は、注入孔6aがテーパー部7の上端面に達するとともに(
図3も参照)、テーパー部7の上端面には、十字状の溝71が形成されている。このため、本工程では、低圧注入器具1によりひび割れC2より上方に位置するアンカー孔H1の孔底に直接注入することができ、そこからひび割れC2にも注入材e1を充填させることができる。
【0069】
それに加え、前述のように、低圧注入器具1には、注入孔6aと連通する、互いに直交する2本の横孔6bが複数段に亘り形成されている(
図3も参照)。このため、本工程では、鋼板S1と床版C1との間にも効率よく注入材e1を注入して充填することができる。
【0070】
なお、本工程では、別途エア抜きパイプ(図示せず)を設置して注入材e1を注入してもよい。
【0071】
(4.仕上工程)
次に、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法では、注入材が硬化する時間である養生期間経過後に、連結具4及び注入部3を撤去し、鋼板S1に必要な防錆塗装を施して補修作業が完了する。
【0072】
勿論、連結具4や注入部3を撤去しないで存置させてもよい場合は、これらを撤去しなくてもよいことは云うまでもない。
【0073】
(注入工程の別例)
次に、
図14,
図15を用いて、本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法において、前述の第3実施形態に係る低圧注入器具1”を用い注入工程を行った場合を説明する。なお、他の工程は略同じであるため、説明を省略する。
図14は、第3実施形態に係る低圧注入器具1”を前述の床版C1のアンカー孔H1に挿入した状態を示す図であり、
図15は、低圧注入器具1”を用いて注入材e1を注入している状態を示す図である。なお、図中において、第1実施形態に係る低圧注入器具1と同構成の低圧注入器具1”の注入部3及び連結具4は、省略している。
【0074】
図14に示すように、前述の鋼板S1をアンカー部2’のボルト部6’に挿通し、ナットNを締めて鋼板S1をボルト部6’に締結してボルト止めし、前述の低圧注入器具装着工程やシール工程を行う。このとき、スリーブ5’は、ねじ締めされたときに、拡張部52’がテーパー部7’のテーパー部本体7a’で押し広げられることで外側に倒れて拡張する(
図15参照)。このため、拡張部52’が削孔されたアンカー孔H1の孔壁に押し付けられることとなり、床版C1の下面に低圧注入器具1”及び鋼板S1が固定される。
【0075】
そして、
図15に示すように、低圧注入器具1”を用いて、注入部3に収容された2液型のエポキシ系樹脂からなる前述の注入材e1を注入する注入工程を行う。このとき、注入材e1は、注入部3の圧力によりテーパー部7’の上端の注入孔6a’から吐出され、広げられたスリーブ5’のスリット51’及び外周面に形成された一続きの螺旋溝53’を伝って自由落下し、鋼板S1と床版C1との間の隙間まで到達することとなる。
【0076】
以上説明した本発明の実施形態に係る低圧注入器具1~1”及びこれらを用いた本発明の実施形態に係る鉄筋コンクリート構造物の補修方法によれば、アンカー部2,2’で鉄筋コンクリート構造物である床版C1に鋼板S1を固定・支持した状態で注入部3から注入孔6a,6a’を通じて注入材e1を注入することができる。このため、鋼板S1の注入材e1を注入するための注入孔と補強材を支持するためのアンカー孔とを兼用して孔あけ作業の箇所数を低減することができる。よって、労務コストや製造コストを低減してコストダウンを達成することができる。
【0077】
また、低圧注入器具1~1”及びこれらを用いた鉄筋コンクリート構造物の補修方法によれば、床版C1に削孔した孔の孔底まで注入材e1の注入が可能となる。このため、削孔したアンカー孔H1と連通するコンクリート構造物の内部のひび割れに対しても注入材e1の注入が可能となる。
【0078】
その上、低圧注入器具1~1”及びこれらを用いた鉄筋コンクリート構造物の補修方法によれば、アンカー部2で鋼板S1を支持した状態で、床版C1の内部のひび割れだけでなく、鋼板S1と床版C1との間の隙間にも注入材e1の注入が可能となる。このため、床版C1の下面の劣化した鋼板S1の浮きを補修する作業を極めて効率よく短時間で行うことができる。
【0079】
それに加え、低圧注入器具1”によれば、アンカー部2’のスリ割り(スリット51’)と螺旋溝53’により、鋼板S1に至るまでの注入材e1の注入経路を確保することができる。このため、低圧注入器具1,1’と比べて、アンカー部2’とアンカー孔H1との隙間が狭い場合でも確実に注入材e1を注入することができる。
【0080】
また、低圧注入器具1”によれば、螺旋溝53’によりスリーブ5’の外周を回りながら注入材e1を落下させて注入するので、鉄筋コンクリート構造物のひび割れ(ひび割れC2)がスリーブ5’と接する範囲内であれば、どこにあっても注入することができる。このため、低圧注入器具1,1’と比べても、ひび割れC2への注入材e1の注入効率が向上する。
【0081】
以上、本発明の実施形態に係る低圧注入器具1~1”及び鉄筋コンクリート構造物の補修方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明に係る技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0082】
特に、補強材として鋼板を例示して説明したが、補強材は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの樹脂繊維強化材などの他の素材からなる補強材であっても構わない。その場合でも、補強材をアンカー部で支持しながら、効率よく注入材を注入可能であることは明らかである。
【0083】
また、アンカー部としてボルト部とテーパー部(拡大部)が一体となったテーパーボルト式のアンカーを例示したが、ボルト部にコーンナット(拡大部)が装着されたボルト部と拡大部とが別体となったコーンナット式の他の一端拡張型のアンカーであっても構わない。その上、本発明に係るアンカー部は、ダブルコーン式やウェッジ式などの平行拡張型の他の締付方式のアンカーとすることもできる。さらに、本発明に係るアンカー部は、芯棒打込み式や内部コーン打ち込み式などの拡張子打込み型のアンカーや、本体打込み式やスリーブ打込み式などの拡張部打込み型のアンカーとすることも可能である。要するに、本発明に係るアンカー部は、締付け又は打込みにより拡張部が開き、孔壁に機械的に固着する金属拡張式のアンカー部であればよい。
【0084】
それに加え、鉄筋コンクリート構造物の補修方法として、鉄筋コンクリート構造物と補強材との隙間と、構造物に発生したひび割れの両方に同時に注入材を注入する場合を例示したが、本発明は、鉄筋コンクリート構造物の内部のひび割れのみに注入材を注入して補修する場合も適用することができる。また、本発明は、鉄筋コンクリート構造物に新たに補強材を設置する場合も適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1,1’,1”:低圧注入器具
2,2’:アンカー部
3,3’:注入部
30、30’:ゴムチューブ
31,31’:連結部
31a’:ねじ山
32’:注入部
33’:注入パイプ
4,4’:連結具
40:連結具本体
40’:円筒部
41:把持部
42:連結部
5,5’:スリーブ(アンカー部)
50,50’:スリーブ本体
51,51’:スリット
52,52’:拡張部
53:注入スリット
53’:螺旋溝
6,6’:ボルト部(アンカー部)
6a,6a’:注入孔
N:ナット
W:ワッシャ
6b:横孔(注入孔)
7,7’テーパー部(拡大部)
70:テーパー部本体
71:溝
7a’:テーパー部本体
7b’:ストレート部
e1:注入材
C1:床版(コンクリート構造物)
R1:下部鉄筋(鉄筋)
C2:ひび割れ
H1:アンカー孔
S1:鋼板(補強材)
S2:シール材