(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】スライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2019196204
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 光
(72)【発明者】
【氏名】木戸 晶之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠佑
(72)【発明者】
【氏名】刀根 大祐
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06145911(US,A)
【文献】国際公開第2018/207239(WO,A1)
【文献】特開平07-156315(JP,A)
【文献】特開2000-141449(JP,A)
【文献】特開2007-069854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A44B 19/00-19/64
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のファスナーチェーン(61A,61B)と、前記一対のファスナーチェーン(61A,61B)を保持する左右一対のサイド部材(40A,40B)とを備えており、
前記サイド部材(40A,40B)は、前記ファスナーチェーン(61A,61B)とともにインサート成形されてなる樹脂押出形材によって形成されており、
前記サイド部材(40A,40B)は、前記ファスナーチェーン(61A,61B)の外側縁部(622)における上面(622A)に固着された上片部(43)と、前記ファスナーチェーン(61A,61B)の外側縁部(622)における下面(622B)に固着された下片部(44)とを有する
ことを特徴とするスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物。
【請求項2】
前記下片部(44)は、左右方向において少なくとも8mmの幅寸法(W2)を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物。
【請求項3】
前記ファスナーチェーン(61A,61B)は、前記サイド部材(40A,40B)が外側縁部(622)に固着されたファスナーテープ(62)と、前記ファスナーテープ(62)の内側縁部(621)に取り付けられたファスナーエレメント(65)とを有しており、
前記ファスナーエレメント(65)は、その少なくとも一部が前記ファスナーテープ(62)よりも下方に突出して配置される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物。
【請求項4】
前記サイド部材(40A,40B)は、板状のサイド本体部(41)と、前記サイド本体部(41)から下方に延出した固定片部(42)とを有しており、
前記サイド本体部(41)は、前記上片部(43)および前記下片部(44)を有しており、
前記固定片部(42)の内部には前記固定片部(42)を補強する補強部材(422)が埋設される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物。
【請求項5】
前記ファスナーチェーン(61A,61B)の外側縁部(622)における外側縁面(622C)を起点とする前記下片部(44)の左右方向における幅寸法(W2)は、当該外側縁面(622C)を起点とする前記上片部(43)の左右方向における幅寸法(W1)よりも大きくされる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な溝部を遮蔽するスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体側に固定されるロワレール(Lower rail(基体))と、座席側に固定されたアッパーレール(Upper rail(移動体))とによって構成されたスライドレール装置が知られている(特許文献1参照)。ロワレールにはアッパーレールがスライド移動可能な案内溝(スライド溝(溝部))が形成されている。
【0003】
このスライドレール装置において、案内溝の開口部は、互いに係合可能な左右一対の溝遮蔽部材(ファスナーチェーン)によって覆われており、アッパーレールのスライド移動方向における両端には一対の溝遮蔽部材に連結したスライダーがそれぞれ取り付けられている。また、一対の溝遮蔽部材には脱落防止用段部がそれぞれ形成されており、これらの脱落防止用段部はロワレールに固定されたプロテクター(サイド部材)の収納部にそれぞれ収納されている。
【0004】
前述したスライドレール装置では、アッパーレールの移動に伴い、アッパーレールのスライド移動方向における前方側のスライダーが一対の溝遮蔽部材の係合を解除して開口部を開くとともに、後方側のスライダーが一対の溝遮蔽部材を係合して開口部を遮蔽する。このように案内溝の開口部が開閉されるので、アッパーレールのスライド移動方向における前方側および後方側では案内溝の開口部は一対の溝遮蔽部材によって遮蔽された遮蔽状態が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のスライドレール装置では、一対の溝遮蔽部材の脱落用段部がプロテクターの収納部に可動に収納される構成となっている。このため、例えば溝遮蔽部材やプロテクターが踏まれるなどして外力が加えられると、溝遮蔽部材がプロテクターの収納部から引き抜かれる力が発生し、またプロテクターに撓みが発生することで、溝遮蔽部材がプロテクターから外れるおそれがある。このため、溝遮蔽部材の脱落防止用段部を大きく形成したり、プロテクターを剛性の高い材料で肉厚に形成したりして外力に耐えられる構成としなければならない。
【0007】
本発明の目的は、溝部を遮蔽するファスナーチェーンの保持力を向上できるスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物は、左右一対のファスナーチェーン(61A,61B)と、前記一対のファスナーチェーン(61A,61B)を保持する左右一対のサイド部材(40A,40B)とを備えており、前記サイド部材(40A,40B)は、前記ファスナーチェーン(61A,61B)とともにインサート成形されてなる樹脂押出形材によって形成されており、前記サイド部材(40A,40B)は、前記ファスナーチェーン(61A,61B)の外側縁部(622)における上面(622A)に固着された上片部(43)と、前記ファスナーチェーン(61A,61B)の外側縁部(622)における下面(622B)に固着された下片部(44)とを有することを特徴とする。
本発明のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物によれば、サイド部材がファスナーチェーンとともにインサート成形されたものであるので、ファスナーチェーンの外側縁部における上面および下面に対してサイド部材の上片部および下片部が固着される。このため、サイド部材に収納部を形成し、この収納部に可動に収納される脱落防止用段部をファスナーチェーンに形成する場合と比べて、サイド部材によるファスナーチェーンの保持力を高めることができ、例えば前記一体物が踏まれるなどして外力が加えられても溝部の遮蔽状態を適切に維持できる。
【0009】
本発明のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物では、前記下片部は、左右方向において少なくとも8mmの幅寸法を有してもよい。
このような構成によれば、前記幅寸法に応じた下片部の幅領域でファスナーチェーンと固着でき、例えば前記一体物が踏まれるなどして外力が加えられても十分に耐えられる程度に、サイド部材によるファスナーチェーンの保持力を高めることができる。
【0010】
本発明のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物では、前記ファスナーチェーンは、前記サイド部材が外側縁部に固着されたファスナーテープと、前記ファスナーテープの内側縁部に取り付けられたファスナーエレメントとを有しており、前記ファスナーエレメントは、その少なくとも一部が前記ファスナーテープよりも下方に突出して配置されていてもよい。
このような構成によれば、サイド部材をファスナーチェーンとともにインサート成形する際にファスナーチェーンを押出し方向に搬送する際のガイドとして、少なくとも一部が下方に突出したファスナーエレメントを利用できる。
【0011】
本発明のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物では、前記サイド部材は、板状のサイド本体部と、前記サイド本体部から下方に延出した固定片部とを有しており、前記サイド本体部は、前記上片部および前記下片部を有しており、前記固定片部の内部には前記固定片部を補強する補強部材が埋設されていてもよい。
このような構成によれば、前記固定片部に補強部材が埋設されるので、溝部が形成された基体に対してサイド部材の固定片部を固定する際の固定強度を向上できる。
【0012】
本発明のスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物では、前記ファスナーチェーンの外側縁部における外側縁面を起点とする前記下片部の左右方向における幅寸法は、当該外側縁面を起点とする前記上片部の左右方向における幅寸法よりも大きくされていてもよい。
このような構成によれば、ファスナーチェーンに対する下片部の固着領域を上片部の固着領域よりも幅広い領域にできるうえ、溝部に沿った下片部の側縁を上片部の側縁よりもファスナーチェーンの内側縁部に近い位置に配置できて、上片部の側縁下方とファスナーチェーンとの固着部分を下片部によって下方から支えることができる。このため、例えばファスナーチェーンが踏みつけられるなどして上方から外力(ピンヒールなどの外力)が加えられても、上片部およびファスナーチェーンの固着部分における剥離を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溝部を遮蔽するファスナーチェーンの保持力を向上できるスライドファスナーおよび樹脂押出形材の一体物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に関するスライドレール装置を示す斜視図。
【
図2】
図1に示すスライドレール装置を示す断面図。
【
図3】
図1に示すスライドレール装置の要部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および
図2おいて、本実施形態に係るスライド溝遮蔽体10を備えた移動案内装置としてのスライドレール装置1は、移動体としての自動車シート(座席)を前後方向に案内するものである。スライド溝遮蔽体10は、スライドファスナー60および樹脂押出形材である第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bの一体物である。自動車シートは、図示しないが、座部を形成したシートクッションと、背もたれ部を形成したシートバッグと、搭乗者の頭部を支えるヘッドレストとによって構成される。
以下の説明において、スライドレール装置1の前後方向(スライド移動方向)をX軸方向とし、スライドレール装置1の左右方向をY軸方向とし、スライドレール装置1の高さ方向(上下方向)をZ軸方向とする。また、スライド溝遮蔽体10についてはスライドレール装置1に取り付けられた状態を基準としてX,Y,Z軸方向を付す。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0016】
スライドレール装置1は、スライド溝21(案内溝)が形成された基体としてのロワレール20(Lower rail)と、スライド溝21に沿って移動可能に配置された移動体としてのアッパーレール30(Upper rail)と、スライド溝21の開口部211を挟んで配置された左右一対のサイド部材としての第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bと、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bに保持されたスライドファスナー60とを備えている。
【0017】
ロワレール20は、自動車内の床に埋設されるものであり、
図2に示すように、下片部22と、下片部22のX軸方向に沿った両側縁から上方に延びた一対の側片部23,24と、側片部23,24の上縁からY軸方向に折曲した一対の上片部25,26と、上片部25,26の内側縁から下方に延出した一対のレール部27,28とを有している。側片部23,24のZ軸方向における高さ寸法は互いに等しく、上片部25,26のY軸方向における幅寸法は互いに等しい。下片部22、側片部23、24および上片部25,26によってスライド溝21が形成されており、スライド溝21の開口部211は、上片部25,26間に形成されている。
ロワレール20のX軸方向における両端部には、
図1に示す端部材11が取り付けられている。端部材11には、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bの後述する固定片部42と係合する係合片部111が形成されている。
【0018】
アッパーレール30は、
図2に示すように、自動車シートのシートクッションが取り付けられる取付部31と、取付部31の下面に連続しているレール部32とを有している。
図1に示すように、取付部31のX軸方向における両端には後述する第一スライダー70Aおよび第二スライダー70Bが取り付けられている。レール部32は、ロワレール20のスライド溝21に配置されており、ロワレール20のレール部27,28にX軸方向に走行可能に嵌合している。
【0019】
第一サイドカバー40Aは、
図2に示すように、X軸方向に沿った板状のサイド本体部41と、サイド本体部41から下方に延出した固定片部42とを有しており、断面略T字状に形成されている。
【0020】
サイド本体部41は、ロワレール20のスライド溝21に対する左右一方側を上方から覆えるY軸方向の幅寸法を有しており、そのスライド溝21側の部分には上片部43および下片部44が形成され、上片部43および下片部44の間には後述するファスナーテープ62の固着部分が配置されており、上片部43の下面431はファスナーテープ62の外側縁部622における上面622Aに固着されており、下片部44の上面441はファスナーテープ62の外側縁部622における下面622Bに固着されている。
【0021】
固定片部42の下縁部421はY軸方向外側に膨出している。固定片部42は、ロワレール20の側片部23および端部材11の係合片部111間に差し込まれることで、
図2に示すように係合片部111に係合し、これにより、固定片部42はロワレール20に固定される。また、固定片部42の内部にはZ軸方向に沿った金属片によって構成される補強部材422が埋設されることで補強されており、これにより、ロワレール20に対して固定片部42を固定する際の固定強度を向上できる。
【0022】
このように構成された第一サイドカバー40Aは補強部材422および後述する第一ファスナーチェーン61Aとともにインサート成形されてなる樹脂押出形材によって形成されている。このように第一サイドカバー40Aをインサート成形するので、補強部材422を容易に埋設でき、上片部43および下片部44を第一ファスナーチェーン61Aに容易に高強度に固着できる。
【0023】
なお、第二サイドカバー40Bは、第一サイドカバー40Aと同様に構成されて左右逆向きに配置されており、後述する第二ファスナーチェーン61Bに固着されているので、図に同符号を適宜付してその詳細な説明を省略する。
【0024】
スライドファスナー60は、
図1および
図2に示すように、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bにそれぞれ保持された左右一対のファスナーチェーンとしての第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bと、アッパーレール30のX軸方向における一方側の端部に取り付けられた第一スライダー70Aと、アッパーレール30のX軸方向における他方の端部に取り付けられた第二スライダー70Bとを備えている。第一スライダー70Aおよび第二スライダー70Bは互いに同様に構成されており、X軸方向に対となって配置されている。
【0025】
第一ファスナーチェーン61Aは、スライド溝21の開口部211を覆って配置されたファスナーテープ62と、ファスナーテープ62のX軸方向に沿った内側縁部621に取り付けられているとともに第一スライダー70Aおよび第二スライダー70Bがスライド可能に連結したファスナーエレメント65とを備えている。本実施形態では、ファスナーテープ62は樹脂製の糸が編み込まれた網組織によってX軸方向に沿ってテープ状に形成されており、ファスナーエレメント65はX軸方向にコイル状に連続したコイルエレメントによって形成されているが、これに限られず、各種のテープ、エレメントによっても構成可能である。
また、ファスナーエレメント65は、その少なくとも一部がファスナーテープ62よりも下方に突出して配置されている。このため、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bを第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bとともにインサート成形する際に第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bを押出し方向に搬送する際のガイドとして、少なくとも一部が下方に突出したファスナーエレメント65を利用できる。
【0026】
ファスナーテープ62は、内側縁部621に対してY軸方向外側に位置する外側縁部622の上面622Aおよび下面622Bが上片部43の下面431および下片部44の上面441に固着されている。また、本実施形態では、ファスナーテープ62の外側縁部622における外側縁面622Cは、上片部43および下片部44の間に形成される固着凹溝45の底面46に固着されている。
【0027】
以上のスライドレール装置1において、スライド溝遮蔽体10は、左右一対の第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bと、第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bをそれぞれ保持する左右一対の第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bとによって構成されている。
以下、スライド溝遮蔽体10における第一サイドカバー40Aの形態について、
図3を参照して説明する。なお、第二サイドカバー40Bも第一サイドカバー40Aと同様に構成可能である。
【0028】
図3(A)において、第一サイドカバー40Aの上片部43および下片部44のY軸方向における幅寸法、ここでは、第一ファスナーチェーン61Aの外側縁面622Cを起点とする幅寸法W1,W2は互いに同じ寸法とされている。このため、上片部43および下片部44のX軸方向に沿った側縁432,442はX軸方向およびZ軸方向に規定される仮想面に沿って配置されている。また、上片部43および下片部44のZ軸方向における厚さ寸法T1,T2は互いに同じ寸法とされている。更に、幅寸法W1,W2はここでは8mmに設定されており、このため、例えばスライド溝遮蔽体10が踏まれるなどして上方から外力が加えられても十分に耐えられる程度に、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bによる第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bの保持力を高めることができる。
ここで、上片部43の下面431および側縁432が連続するコーナー部433には面取り(ここではR面取り)が施されており、また、下片部44の上面441および側縁442が連続するコーナー部443にも面取り(ここではR面取り)が施されている。そして、下片部44の上面441の第一ファスナーチェーン61Aに対する固着部分のうち最も内側縁部621側にある部位P1は、上片部43の下面431の第一ファスナーチェーン61Aに対する固着部分のうち最も内側縁部621側にある部位P2よりも、Y軸方向において差分Cをもって内側縁部621側に位置している。このため、第一ファスナーチェーン61Aに対する下片部44の固着領域を上片部43の固着領域よりも幅広い領域にできる。また、部位P1が部位P2よりも第一ファスナーチェーン61Aの内側縁部621側に位置しているので、部位P1を下片部44によって下方から支えることができる。このため、例えば第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bが踏みつけられるなどして上方から外力(ピンヒールなどの外力)が加えられても、第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bが上片部43から下方への剥離を抑えつつ、第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bと上片部43との固着面にかかる応力を「剥離」から「せん断」にできて固着強度を増すことができる。このようにして、第一サイドカバー40Aの上片部43および第一ファスナーチェーン61Aの固着部分における剥離を抑制でき、且つ、第二サイドカバー40Bの上片部43および第二ファスナーチェーン61Bの固着部分における剥離を抑制できる。
なお、ここでは、コーナー部433,443に面取りを施しているが、この面取りを施していなくてもよい。この場合でも、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bは第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bとともにインサート成形されて固着されるので、必要十分な固定強度を得ることが可能である。
【0029】
図3(B)において、下片部44の幅寸法W2は、上片部43の幅寸法W1よりも大きくされている。このため、第一ファスナーチェーン61Aに対する下片部44の固着領域を上片部43の固着領域よりも幅広い領域にできるうえ、X軸方向に沿った下片部44の側縁442を上片部43の側縁432よりも第一ファスナーチェーン61Aの内側縁部621に近い位置に配置できて、上片部43の側縁432下方と第一ファスナーチェーン61Aとの固着部分を下片部44によって下方から支えることができる。これにより、例えば第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bが踏みつけられるなどして上方から外力(ピンヒールなどの外力)が加えられても、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bの上片部43と第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bとの固着部分における剥離を抑制できる。
また、上片部43の幅寸法W1は6mmとされ、下片部44の幅寸法W2は10mmとされており、厚さ寸法T1,T2は
図3(A)と同様に同じ寸法である。このため、
図3(B)の上片部43は、
図3(A)の上片部43と比べて幅寸法W1が小さくなった分に応じて減少した断面積は、
図3(B)の下片部44が、
図3(A)の下片部44と比べて幅寸法W2が大きくなった分に応じて増加した断面積と同じ面積である。このため、
図3(B)に示すように幅寸法W2を大きくする分と幅寸法W1を小さくする分を同じにする場合には、幅寸法W1,W2を同じにする場合と比べて断面積の増加を抑えることができる。
【0030】
図3(C)において、下片部44の幅寸法W2は
図3(B)に示す幅寸法W2と同じであるが、上片部43は、その側縁432から底面46(外側縁面622C)に向かう領域を厚さ寸法T1よりも小さい厚さ寸法T3とされ、且つ、上片部43の幅寸法W1は
図3(B)に示す幅寸法W1よりも大きくされている。
このように上片部43の幅寸法W1を大きくして固着領域を大きくしても、上片部43に厚さ寸法T3とする部分を形成して薄肉化しているので、
図3(B)の第一サイドカバー40Aと比べて断面積の増加を抑えることができる。また、上片部43を薄肉化することで、第一ファスナーチェーン61AのX軸方向への曲げ変形に対する追従性を向上できて、剥離しにくい構成にし得る。
【0031】
図3(D)において、下片部44の幅寸法W2は上片部43の幅寸法W1よりも大きくされている。上片部43の側縁432は、底面46側から内側縁部621側に向かうにつれてY軸方向に対して斜め下向きに傾斜した傾斜面(テーパー面)とされている。下片部44の側縁442は、底面46側から内側縁部621側に向かうにつれてY軸方向に対して斜め上向きに傾斜した傾斜面(テーパー面)とされている。このように側縁432,442を傾斜面として形成することで、上片部43および下片部44の断面積を増加させずに固着領域を大きくできる。
【0032】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、スライド溝遮蔽体10の第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bは、第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bとともにインサート成形されてなる樹脂押出形材によって形成されており、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bの上片部43および下片部44は、第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bの外側縁部622における上面622Aおよび下面622Bに固着されている。
このように構成されたスライド溝遮蔽体10によれば、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bの上片部43および下片部44がインサート成形によって第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bに固着されているので、例えばサイド部材に収納部を形成し、この収納部に可動に収納される脱落防止用段部をファスナーチェーンに形成する場合と比べて、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bによる第一ファスナーチェーン61Aおよび第二ファスナーチェーン61Bの保持力を高めることができ、例えばスライド溝遮蔽体10が踏まれるなどして外力が加えられてもスライド溝21の遮蔽状態を適切に維持できる。
【0033】
[変形例]
前記実施形態では、ファスナーエレメント65の少なくとも一部がファスナーテープ62に対して下方に突出して形成されているが、これに限らず、下方に突出せずに上方に突出して形成されていてもよい。
前記実施形態では、固定片部42に補強部材422が埋設されているが、十分な強度を得られる場合には補強部材422の構成を省略してもよい。
前記実施形態では、第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bは、ロワレール20に固定される固定片部42を有しているが、固定片部42がなくてもロワレール20などの基体に固定可能な形状や構成を備えていればよい。
前記実施形態では、自動車シートを移動案内するスライドレール装置1に取り付けたスライド溝遮蔽体10を説明したが、このほか、例えば自動ドアやエレベータの扉体の開閉を案内するスライド溝を遮蔽するものとして用いられてもよく、このように各種のスライド溝を遮蔽するものとして利用可能である。
また、前記実施形態では、アッパーレール30などの移動体が移動するスライド溝21を遮蔽するスライド溝遮蔽体10を、スライドファスナー60および樹脂押出形材である第一サイドカバー40Aおよび第二サイドカバー40Bの一体物として説明したが、このほか、前述した移動体が配置されずにスライド移動しない長尺な溝部を遮蔽する前述した一体物として用いてもよい。この場合、第一スライダー70Aや第二スライダー70Bをスライド移動することで溝部を開閉可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…スライドレール装置、10…スライド溝遮蔽体、11…端部材、111…係合片部、20…ロワレール(基体)、21…スライド溝、211…開口部、22,44…下片部、23,24…側片部、25,26…上片部、27,28…レール部、30…アッパーレール(移動体)、31…取付部、32…レール部、40A…第一サイドカバー(サイド部材)、40B…第二サイドカバー(サイド部材)、41…サイド本体部、42…固定片部、421…下縁部、422…補強部材、43…上片部、431,622B…下面、432,442…側縁、433,443…コーナー部、441,622A…上面、45…固着凹溝、46…底面、60…スライドファスナー、61A…第一ファスナーチェーン、61B…第二ファスナーチェーン、62…ファスナーテープ、621…内側縁部、622…外側縁部、622C…外側縁面、65…ファスナーエレメント、70A…第一スライダー、70B…第二スライダー、C…差分、P1,P2…部位、T1~T3…厚さ寸法、W1,W2…幅寸法。