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特許7235651カーボンナノチューブ成形体の製造方法およびカーボンナノチューブ成形体の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ成形体の製造方法およびカーボンナノチューブ成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20230301BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230301BHJP
【FI】
C01B32/168
B82Y40/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019238483
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107295
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】藤本 典史
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0065981(US,A1)
【文献】特開2021-107595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/158-32/178
B65H 19/00,21/00,69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
a)カーボンナノチューブが配向集合した第1のカーボンナノチューブアレイから引き出され、支持部材に支持された第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを準備する工程と、
b)前記第1のカーボンナノチューブアレイと前記支持部材との間において前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを切断し、前記支持部材から延びる前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端部を保持する工程と、
c)カーボンナノチューブが配向集合した第2のカーボンナノチューブアレイから引き出された第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを準備する工程と、
d)前記第2のカーボンナノチューブアレイから延びる前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端部を保持する工程と、
e)前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部の向きと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部の向きとを反対にした状態で、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部と前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部とを積層して接合する工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記b)工程において、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを第1カッターにより切断し、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部を前記第1カッターにより保持することを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記第1カッターは、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの両主面にそれぞれ対向するとともに、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの長手方向における位置が異なる一対の第1切断要素を備え、
前記b)工程において、前記一対の第1切断要素が互いに近づき、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを挟んで、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記両主面に垂直な方向において重なることにより、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムが切断され、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部は、前記一対の第1切断要素のうち一方の第1切断要素により保持されることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記d)工程において、前記第2のカーボンナノチューブアレイから延びる前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを第2カッターにより切断し、切断により形成された前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部を前記第2カッターにより保持することを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記d)工程と前記e)工程との間において、前記第2カッターを前記第2のカーボンナノチューブアレイに対して相対移動することにより、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを前記第2のカーボンナノチューブアレイから引き出す工程をさらに備え、
前記第2のカーボンナノチューブアレイから前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを引き出す力は、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの引出方向における前記第2カッターによる前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの保持力よりも小さいことを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記第2カッターは、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの両主面にそれぞれ対向するとともに、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの長手方向における位置が異なる一対の第2切断要素を備え、
前記d)工程において、前記一対の第2切断要素が互いに近づき、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを挟んで、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記両主面に垂直な方向において重なることにより、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムが切断され、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部は、前記一対の第2切断要素のうち一方の第2切断要素により保持されることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとの接合部において、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端縁は、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの長手方向に対して傾斜する方向に延びており、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端縁は、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端縁と平行に延びることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとを接合した後に、炭素質治具により前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを押さえて、または、ガス噴射により、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの保持を解除することを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとを接合する際に、炭素質治具により前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとの接合部を撫でつけることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ成形体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のカーボンナノチューブを様々な形状に成形し、ヒータやセンサ等の様々な製品に利用することが提案されている。例えば、特許文献1では、基板上に形成されたカーボンナノチューブをシート状に引き出し、撚りを掛けることによりカーボンナノチューブ撚糸を形成する方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献1では、基板を大型化することなく長尺状のカーボンナノチューブ撚糸を得る方法が提案されている。具体的には、基板上のカーボンナノチューブが少なくなった段階で、カーボンナノチューブ撚糸製造装置が一旦停止される。続いて、新たな基板からカーボンナノチューブがシート状に引き出され、新旧の基板から引き出されているシート状のカーボンナノチューブが積層されて液体噴霧により凝集される。次に、新旧のシート状のカーボンナノチューブが積層されている部分に撚りが掛けられた後、旧基板から引き出されているカーボンナノチューブが切断される。そして、カーボンナノチューブ撚糸製造装置の駆動が再開され、カーボンナノチューブ撚糸の製造が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-153392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、新基板からシート状のカーボンナノチューブが引き出される方向と、旧基板からシート状のカーボンナノチューブが引き出される方向とが同じであり、引出方向の比較的長い範囲に亘って2層のカーボンナノチューブが積層されて接合部が形成される。このため、カーボンナノチューブ撚糸において、当該接合部に対応する部位は他の部位よりも太くなり、特性が大きく変化する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、接合部における特性変化を抑制しつつ、長尺状のカーボンナノチューブ成形体を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、カーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、a)カーボンナノチューブが配向集合した第1のカーボンナノチューブアレイから引き出され、支持部材に支持された第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを準備する工程と、b)前記第1のカーボンナノチューブアレイと前記支持部材との間において前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを切断し、前記支持部材から延びる前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端部を保持する工程と、c)カーボンナノチューブが配向集合した第2のカーボンナノチューブアレイから引き出された第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを準備する工程と、d)前記第2のカーボンナノチューブアレイから延びる前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端部を保持する工程と、e)前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部の向きと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部の向きとを反対にした状態で、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部と前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部とを積層して接合する工程とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記b)工程において、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを第1カッターにより切断し、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部を前記第1カッターにより保持する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記第1カッターは、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの両主面にそれぞれ対向するとともに、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの長手方向における位置が異なる一対の第1切断要素を備え、前記b)工程において、前記一対の第1切断要素が互いに近づき、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムを挟んで、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記両主面に垂直な方向において重なることにより、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムが切断され、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部は、前記一対の第1切断要素のうち一方の第1切断要素により保持される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記d)工程において、前記第2のカーボンナノチューブアレイから延びる前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを第2カッターにより切断し、切断により形成された前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部を前記第2カッターにより保持する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記d)工程と前記e)工程との間において、前記第2カッターを前記第2のカーボンナノチューブアレイに対して相対移動することにより、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを前記第2のカーボンナノチューブアレイから引き出す工程をさらに備え、前記第2のカーボンナノチューブアレイから前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを引き出す力は、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの引出方向における前記第2カッターによる前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの保持力よりも小さい。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記第2カッターは、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの両主面にそれぞれ対向するとともに、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの長手方向における位置が異なる一対の第2切断要素を備え、前記d)工程において、前記一対の第2切断要素が互いに近づき、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを挟んで、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記両主面に垂直な方向において重なることにより、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムが切断され、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端部は、前記一対の第2切断要素のうち一方の第2切断要素により保持される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとの接合部において、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端縁は、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの長手方向に対して傾斜する方向に延びており、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムの端縁は、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの前記端縁と平行に延びる。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとを接合した後に、炭素質治具により前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムを押さえて、または、ガス噴射により、前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムの保持を解除する。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとを接合する際に、炭素質治具により前記第1のカーボンナノチューブドローイングフィルムと前記第2のカーボンナノチューブドローイングフィルムとの接合部を撫でつける。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、接合部における特性変化を抑制しつつ、長尺状のカーボンナノチューブ成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1の実施の形態に係る成形体製造装置の側面図である。
図2】成形体製造装置の平面図である。
図3】CNTドローイングフィルムの接合の流れを示す図である。
図4】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図5】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図6】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図7】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図8】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図9】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図10】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図11】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図12】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図13】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図14】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図15】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図16】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図17】CNTドローイングフィルムの接合部近傍の平面図である。
図18】第1の関連技術に係る成形体製造装置の側面図である。
図19A】CNTドローイングフィルムの接合の流れを示す図である。
図19B】CNTドローイングフィルムの接合の流れを示す図である。
図20】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図21】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図22】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図23】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図24】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図25】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図26】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図27】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図28】CNTドローイングフィルムの接合の様子を示す側面図である。
図29】第2の関連技術に係る成形体製造装置の側面図である。
図30】積層フィルムの製造の流れを示す図である。
図31】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図32】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図33】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図34】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図35】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図36】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図37】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図38】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図39】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図40】積層フィルムの接合部近傍の平面図である。
図41】積層フィルムの製造の流れを示す図である。
図42】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図43】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図44】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図45】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図46】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図47】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
図48】積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明のの実施の形態に係るカーボンナノチューブ成形体を製造するカーボンナノチューブ成形体製造装置1(以下、単に「成形体製造装置1」と呼ぶ。)を示す側面図である。図2は、成形体製造装置1を示す平面図である。図1および図2に示す例では、成形体製造装置1は、複数のカーボンナノチューブ(CNT)により形成されるフィルム状(シート状とも呼ぶ。)のカーボンナノチューブ成形体を製造する装置である。以下の説明では、フィルム状のカーボンナノチューブ成形体を「カーボンナノチューブドローイングフィルム」または「CNTドローイングフィルム」とも呼ぶ。また、図1中における上側および下側を、単に「上側」および「下側」とも呼ぶ。図1中の上下方向は、必ずしも実際の鉛直方向と一致しなくてもよい。
【0028】
成形体製造装置1は、第1基板保持部21と、第2基板保持部22と、回収部23と、第1カッター24と、第2カッター25と、接合補助部26とを備える。図1に示す例では、第1基板保持部21および第2基板保持部22は上下方向に並んでおり、第2基板保持部22は、第1基板保持部21の上側に配置される。図2では、図の理解を容易にするために、第2基板保持部22等の一部の構成の図示を省略している。また、図1では、第1カッター24、第2カッター25、接合補助部26および後述するカーボンナノチューブドローイングフィルム95を、当該カーボンナノチューブドローイングフィルム95の幅方向中央における縦断面にて描いている。後述する他の側面図においても同様である。第1基板保持部21および第2基板保持部22はそれぞれ、基板92を下側から保持する。なお、第1基板保持部21および第2基板保持部22は、上下を反対向きにした基板92を上側から保持してもよい。
【0029】
基板92は、例えば、平面視における形状が略矩形の薄板状部材である。基板92は、例えば、シリコン基板、または、表面にセラミック膜(アルミナ(三酸化二アルミ)、二酸化ケイ素等)が設けられた金属(例えば、ステンレス鋼製)の基板である。第1基板保持部21および第2基板保持部22に保持される基板92の主面には、多数のカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイ91(以下、(「CNTアレイ91」とも呼ぶ。)が立設している。図2では、CNTアレイ91に平行斜線を付す。CNTアレイ91の平面視における形状は、例えば略矩形である。CNTアレイ91は、例えば、化学気相成長法(すなわち、CVD法)により、基板92の主面に対して略垂直に配向する多数のカーボンナノチューブを基板92上に成長させることにより形成される。CNTアレイ91の形成は、他の様々な方法により行われてもよい。
【0030】
CNTアレイ91の厚さ(すなわち、CNTアレイ91に含まれるカーボンナノチューブの基板92に垂直な方向における長さ)は、例えば、50μm~1000μmである。本実施の形態では、CNTアレイ91の厚さは、50μm~500μmである。CNTアレイ91の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製)または非接触膜厚計(株式会社キーエンス製)により測定される。図1では、図の理解を容易にするために、CNTアレイ91の厚さを、実際よりも厚く描いている。
【0031】
CNTアレイ91では、例えば、1cm当たりに10本~1011本のカーボンナノチューブが存在する。隣接するカーボンナノチューブ間の距離は、例えば、30nm~300nmである。各カーボンナノチューブの直径は、例えば、4nm~30nmである。各カーボンナノチューブは、例えば、5層~20層の多層カーボンナノチューブである。各カーボンナノチューブは、4層以下または21層以上の多層カーボンナノチューブであってもよく、単層カーボンナノチューブであってもよい。
【0032】
CNTアレイ91の嵩密度は、例えば、10mg/cm~80mg/cmである。好ましくは、CNTアレイ91の嵩密度は、20mg/cm~60mg/cmである。CNTアレイ91の嵩密度は、単位面積当たりのCNTアレイ91の質量(すなわち、目付量)を、CNTアレイ91の厚さで除算することにより求められる。
【0033】
回収部23は、回収ローラ231と、回転機構232とを備える。回収ローラ231は、図1の紙面に略垂直な方向を向く回転軸を中心とする略円柱状または略円筒状の部材である。回転機構232は、回転軸を中心として回収ローラ231を図1中の時計回り方向に回転する。回転機構232は、例えば電動モータである。
【0034】
成形体製造装置1では、回転機構232によって回収ローラ231が回転することにより、第1基板保持部21に保持された基板92上のCNTアレイ91から、多数のカーボンナノチューブの集合体であるフィルム状のCNTドローイングフィルム95が略矩形状に引き出され、回収ローラ231に巻回される。すなわち、回収部23は、CNTアレイ91からCNTドローイングフィルム95を引き出す引出機構でもある。図1および図2に示す例では、CNTドローイングフィルム95は、CNTアレイ91の図中の右側のエッジから、右方へと引き出される。以下の説明では、図1および図2中の左右方向を「引出方向」とも呼ぶ。当該引出方向は、CNTドローイングフィルム95の長手方向でもある。CNTアレイ91から引き出されたCNTドローイングフィルム95は、回収ローラ231に巻き取られることにより回収される。
【0035】
図1に示す状態では、第2基板保持部22により保持されている基板92上のCNTアレイ91から、CNTドローイングフィルム95の引き出しは行われていない。後述するように、成形体製造装置1では、第1基板保持部21により保持されている基板92上のCNTアレイ91からのCNTドローイングフィルム95の引き出しが終了に近づくと、第2基板保持部22上の基板92からCNTドローイングフィルム95が引き出され、第1基板保持部21上の基板92からのCNTドローイングフィルム95に接合される。図1では、第2基板保持部22上の基板92から引き出される予定のCNTドローイングフィルム95を二点鎖線にて描く。
【0036】
第1カッター24は、第1基板保持部21上の基板92から引き出されるCNTドローイングフィルム95を、当該基板92上のCNTアレイ91と回収部23との間において切断(すなわち、裁断)する。第1カッター24は、第1上切断要素271と、下切断要素272と、要素駆動機構(図示省略)とを備える。第1上切断要素271および下切断要素272は、第1基板保持部21上の基板92から引き出されるCNTドローイングフィルム95の上下において、当該CNTドローイングフィルム95の全幅に亘って延びる。第1上切断要素271は、当該CNTドローイングフィルム95の上側の主面に対向し、下切断要素272は、CNTドローイングフィルム95の下側の主面に対向する。
【0037】
図1に示す状態では、第1上切断要素271と下切断要素272とは、上下方向(すなわち、上述のCNTドローイングフィルム95の主面に略垂直な方向)において、CNTドローイングフィルム95を挟んでおよそ対向して配置される。詳細には、当該CNTドローイングフィルム95の長手方向(すなわち、引出方向)において、第1上切断要素271の位置と下切断要素272の位置とは僅かに異なる。換言すれば、当該長手方向において、第1上切断要素271と下切断要素272との間にクリアランスが設けられる。第1上切断要素271および下切断要素272のクリアランスをより小さくすることで、切断後のCNTドローイングフィルム95の2つの端部(すなわち、切断面)が直線状となる。例えば、第1上切断要素271および下切断要素272は、CNTドローイングフィルム95の長手方向に僅かにずれて(例えば、1mm程度のクリアランスを設けて)配置される。図1に示す例では、第1上切断要素271が、下切断要素272よりも回収部23に近い側に配置される。上記クリアランスは、後述するように、第1上切断要素271と下切断要素272とが擦れ合う距離が好ましい。
【0038】
図2に示すように、下切断要素272は、平面視においてCNTドローイングフィルム95の長手方向(すなわち、図2中の左右方向)に対して傾斜する方向に延びる。下切断要素272が延びる方向とCNTドローイングフィルム95の長手方向との成す角度は、例えば0°~90°であり、好ましくは15°~60°である。図2に示す例では、当該角度は約45°である。図2では図示を省略しているが、第1上切断要素271および後述する第2上切断要素274は、平面視において下切断要素272に略平行に延びる。
【0039】
第1上切断要素271および下切断要素272は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等により形成された金属箔(実施例として、厚さ50μmのSUS箔を利用。)であり、上述のCNTドローイングフィルム95の両主面に略垂直に配置される。第1上切断要素271および下切断要素272は、必ずしも箔状である必要はなく、鋭利な(すなわち、細線状の)エッジがCNTドローイングフィルム95の主面に対向するように配置された刃状であってもよい。あるいは、第1上切断要素271および下切断要素272は、略水平に延びる多角柱状の部材であり、略水平に延びる側面の1つの鋭利な辺が、CNTドローイングフィルム95の主面に対向するように配置されてもよい。第1上切断要素271と下切断要素272とは、同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。第1上切断要素271および下切断要素272は、金属以外の材料(例えば、後述する炭素質材料)により形成されてもよい。第1上切断要素271と下切断要素272とは、異なる種類の材料により形成されてもよい。
【0040】
要素駆動機構は、第1上切断要素271および下切断要素272のうち少なくとも一方を、他方に対して上下方向に相対的に進退させる。要素駆動機構としては、例えば、リニアモータまたはエアシリンダが利用可能である。図1に示す例では、要素駆動機構は、第1上切断要素271を下方に移動させ、下切断要素272を上方に移動させることにより、第1上切断要素271および下切断要素272を互いに近付ける。そして、下切断要素272の上端縁が、第1上切断要素271の下端縁よりも上側まで移動することにより、CNTドローイングフィルム95が、第1上切断要素271の下端縁と下切断要素272の上端縁との間にて切断される。換言すれば、第1上切断要素271および下切断要素272が、CNTドローイングフィルム95を挟んで上下方向において重なることにより、CNTドローイングフィルム95が、擦れ合い切断される。また、要素駆動機構は、下切断要素272を水平方向にも移動する。下切断要素272は、図1中において二点鎖線にて示す2つの位置の間で移動可能である。
【0041】
第2カッター25は、第2基板保持部22上の基板92から引き出されるCNTドローイングフィルム95を切断する。第2カッター25は、第2上切断要素274を備え、上述の下切断要素272および要素駆動機構を第1カッター24と共有する。図1中において、下切断要素272が左側の二点鎖線にて示す位置に位置する状態では、第2上切断要素274および下切断要素272は、第2基板保持部22上の基板92から引き出されるCNTドローイングフィルム95の両主面にそれぞれ対向し、当該CNTドローイングフィルム95の全幅に亘って延びる。当該CNTドローイングフィルム95の長手方向(すなわち、引出方向)において、第2上切断要素274の位置と下切断要素272の二点鎖線にて示す位置とは僅かに異なる。図1に示す例では、第2上切断要素274が、二点鎖線にて示す下切断要素272よりも回収部23に近い側に配置される。
【0042】
第2上切断要素274の形状および材料は、上述の第1上切断要素271および下切断要素272と同様に、様々に選択することが可能である。第2上切断要素274の形状および材料は、第1上切断要素271および下切断要素272の形状および材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。図1に示す例では、第2上切断要素274は、ステンレス鋼等により形成された金属箔(実施例として、厚さ50μmのSUS箔を利用。)である。
【0043】
要素駆動機構は、第2上切断要素274および下切断要素272を、上下方向において互いに近付ける。第2上切断要素274および下切断要素272が、第2基板保持部22上の基板92からのCNTドローイングフィルム95を挟んで上下方向において重なることにより、上述のCNTドローイングフィルム95の切断と同様に、第2基板保持部22上の基板92からのCNTドローイングフィルム95が切断される。
【0044】
以下の説明では、第1上切断要素271および下切断要素272の組み合わせを「一対の第1切断要素」とも呼び、第2上切断要素274および下切断要素272の組み合わせを「一対の第2切断要素」とも呼ぶ。上述のように、図1に示す例では、下切断要素272は、一対の第1切断要素および一対の第2切断要素の双方に含まれているが、必ずしもこれには限定されず、第1カッター24と第2カッター25とが、それぞれ個別の下切断要素を備えていてもよい。
【0045】
接合補助部26は、後述するCNTドローイングフィルム95同士の接合の際に利用される。接合補助部26は、治具261と、図示省略の移動機構とを備える。図1に示す例では、CNTドローイングフィルム95の上下に配置される2つの治具261が設けられる。各治具261は、第1基板保持部21上の基板92から引き出されるCNTドローイングフィルム95の主面に沿って略水平に延びる略円柱状または略円筒状の部材である。図2に示すように、治具261は、平面視において下切断要素272と略平行に延びる。図2では、CNTドローイングフィルム95の上側の治具261の図示を省略している。
【0046】
治具261は、主に炭素質材料により形成される炭素質治具である。炭素質材料は、例えば、非結晶形炭素(無定形炭素ともいう。)により主に構成される一般的な炭素質材料(ピッチコークス、カーボンブラック等)、黒鉛結晶により主に構成される黒鉛質材料、炭素の結晶化の程度が上述の一般的な炭素質材料と黒鉛質材料との中間に位置する炭素黒鉛質材料、および、金属粉と黒鉛とを混合して成形した金属黒鉛質材料を含む。上記黒鉛質材料には、天然黒鉛を高温および/または高圧で処理した一般的な黒鉛質材料、および、炭素を電気炉で高温度に加熱焼成し人工黒鉛とした電気黒鉛質材料等が含まれる。
【0047】
図1および図2に示す例では、治具261は、上述の黒鉛質材料により形成された略円柱状の黒鉛ロッドである。上記移動機構は、各治具261をCNTドローイングフィルム95の主面に沿って略水平に往復移動させる。また、当該移動機構は、各治具261を上下方向にも移動可能であり、各治具261をCNTドローイングフィルム95の側方へと退避させることも可能である。2つの治具261は、独立して移動可能である。移動機構としては、例えば、リニアモータまたはエアシリンダが利用可能である。
【0048】
図3は、第1基板保持部21上の基板92から引き出されたCNTドローイングフィルム95と、第2基板保持部22上の基板92から引き出されたCNTドローイングフィルム95との接合の流れを示す図である。以下の説明では、第1基板保持部21に保持される基板92を「第1基板92a」とも呼ぶ。また、第1基板92a上のCNTアレイ91を「第1のCNTアレイ91a」とも呼び、第1のCNTアレイ91aから引き出されるCNTドローイングフィルム95を「第1のCNTドローイングフィルム95a」とも呼ぶ。さらに、第2基板保持部22に保持される基板92を「第2基板92b」とも呼び、第2基板92b上のCNTアレイ91を「第2のCNTアレイ91b」とも呼び、第2のCNTアレイ91bから引き出されるCNTドローイングフィルム95を「第2のCNTドローイングフィルム95b」とも呼ぶ。
【0049】
図4ないし図16は、第1CNTドローイングフィルム95aと第2CNTドローイングフィルム95bとの接合の様子を示す側面図である。図4ないし図16では、成形体製造装置1の構成の一部の図示を省略する。まず、図4に示すように、第1のCNTアレイ91aから引き出されて回収部23により支持された第1のCNTドローイングフィルム95aが準備される(ステップS11)。回収部23は、第1のCNTドローイングフィルム95aを巻回して支持する支持部材である。
【0050】
図4に示す状態では、図1に示す状態よりも第1のCNTドローイングフィルム95aの形成が進んでおり、第1基板92a上に残っている第1のCNTアレイ91aの量(すなわち、第1のCNTアレイ91aの残量)は、図1に示す状態よりも少なくなっている。第1のCNTアレイ91aの残量が所定の閾値以下となると、回収部23の回転機構232が停止され、第1のCNTドローイングフィルム95aの引き出しが一旦停止される。上記閾値は、例えば、側面視における第1のCNTアレイ91aの引出方向の長さである。
【0051】
続いて、図5に示すように、要素駆動機構(図示省略)により、第1上切断要素271が下降して第1のCNTドローイングフィルム95aの上面に近づき、下切断要素272が上昇して第1のCNTドローイングフィルム95aの下面に近づく。そして、図6に示すように、下切断要素272が、第1のCNTドローイングフィルム95aの下面に接触し、第1のCNTドローイングフィルム95aを上方へと持ち上げる。第1カッター24では、下切断要素272と第1上切断要素271とが上下方向に交差する。これにより、下切断要素272と第1上切断要素271との間にて第1のCNTドローイングフィルム95aが切断される。なお、第1カッター24による第1のCNTドローイングフィルム95aの切断の際、下切断要素272および第1上切断要素271の昇降の順序は変更されてよい。
【0052】
第1のCNTアレイ91aと回収部23との間において切断された第1のCNTドローイングフィルム95aの2つの端部(すなわち、第1カッター24による切断により形成された2つの端部)の切断縁は、第1上切断要素271の鋭利な下端縁および下切断要素272の鋭利な上端縁に付着した状態で保持される。具体的には、第1のCNTアレイ91aから回収部23の方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、下切断要素272により保持される。また、回収部23から第1基板92aの方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1カッター24の第1上切断要素271により保持される(ステップS12)。
【0053】
次に、要素駆動機構により下切断要素272を下降させ、第1基板92aに近づく方向へと略水平に移動させる。そして、第1基板92aから延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が下切断要素272から取り外され、図7に示すように、第1基板92aが第1基板保持部21から取り外されて除去される(ステップS13)。下切断要素272は、第2カッター25の第2上切断要素274と上下方向に対向する位置に配置される。なお、下切断要素272の水平移動と、下切断要素272からの第1のCNTドローイングフィルム95aの取り外しとは、どちらが先に行われてもよく、並行して行われてもよい。
【0054】
第1基板92aが除去されると、図8に示すように、第2基板保持部22に保持されている第2基板92bの第2のCNTアレイ91bから、第2のCNTドローイングフィルム95bが引き出されて準備される(ステップS14)。図8に示す例では、第2のCNTドローイングフィルム95bの引き出しは、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が固定された略円柱状または略円筒状の引出治具275を、略水平方向に延びる回転軸を中心として回転させることにより行われる。あるいは、引出治具275を、第2基板92bから離れる方向へと略水平に移動することにより、第2基板92bから第2のCNTドローイングフィルム95bが引き出されてもよい。
【0055】
引出治具275は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向において、第2カッター25の第2上切断要素274よりも第2基板92bから離れた位置に位置する。また、引出治具275は、第2上切断要素274と第1カッター24の第1上切断要素271との間に位置する。第2のCNTドローイングフィルム95bは、第2基板92bの第2のCNTアレイ91bから、上下方向に対向する第2上切断要素274と下切断要素272との間を通過して、回収部23に向かって延びる。
【0056】
なお、図8に示す例では、第2基板92bは第2基板保持部22により保持されているが、第2基板保持部22は成形体製造装置1から省略されてもよい。この場合、ステップS13において第1基板92aが第1基板保持部21から除去された後、当該第1基板保持部21により第2基板92bが保持され、上述のステップS14が行われる。
【0057】
第2のCNTドローイングフィルム95bが準備されると、図9に示すように、要素駆動機構により、下切断要素272が上昇して第2のCNTドローイングフィルム95bの下面に接触し、第2のCNTドローイングフィルム95bを上方へと持ち上げる。そして、図10に示すように、第2カッター25の第2上切断要素274が下降し、下切断要素272と第2上切断要素274とが上下方向に交差し、下切断要素272と第2上切断要素274との間にて第2のCNTドローイングフィルム95bが切断される。なお、第2カッター25による第2のCNTドローイングフィルム95bの切断の際、下切断要素272および第2上切断要素274の昇降の順序は変更されてよい。
【0058】
第2のCNTアレイ91bと引出治具275との間において切断された第2のCNTドローイングフィルム95bの2つの端部(すなわち、第2カッター25による切断により形成された2つの端部)の切断縁は、第2上切断要素274の鋭利な下端縁および下切断要素272の鋭利な上端縁に付着した状態で保持される。具体的には、第2のCNTアレイ91bから引出治具275および回収部23の方へと延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、下切断要素272により保持される。また、引出治具275から第2基板92bの方へと延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、第2上切断要素274により保持される(ステップS15)。すなわち、第2カッター25は、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する保持部材である。
【0059】
続いて、図11に示すように、要素駆動機構により第2上切断要素274を上昇させ、引出治具275から延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が第2上切断要素274から取り外される。引出治具275は、第2基板92bからの第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向に対して、側方または上下方向等、第2のCNTドローイングフィルム95bの引き出しを阻害しない退避位置(図示省略)へと移動される。
【0060】
次に、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持している下切断要素272が、要素駆動機構により下降された後、図12に示すように、第2基板92bから離れる方向に略水平に移動される。これにより、第2基板92b上の第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bが略水平に引き出される(ステップS16)。なお、ステップS16では、下切断要素272が移動することなく、第2基板92bを保持する第2基板保持部22が、下切断要素272から離れる方向に略水平に移動されてもよい。すなわち、ステップS16では、下切断要素272が第2のCNTアレイ91bに対して相対移動することにより、第2のCNTドローイングフィルム95bが第2のCNTアレイ91bから引き出される。
【0061】
ステップS16では、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bを引き出す力(以下、「引出力F1」とも呼ぶ。)は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向における下切断要素272による第2のCNTドローイングフィルム95bの保持力F2よりも小さい。このため、下切断要素272の相対移動により第2のCNTドローイングフィルム95bが第2のCNTアレイ91bから引き出される際に、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が下切断要素272から脱落することが防止される。
【0062】
また、上述の保持力F2は、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向における破断荷重F3よりも小さい。これにより、下切断要素272の相対移動により第2のCNTドローイングフィルム95bが第2のCNTアレイ91bから引き出される際に、第2のCNTドローイングフィルム95bが長手方向(すなわち、引出方向)に破断することが防止される。
【0063】
引出力F1は、例えば0.1×10-3N/mm~1.0×10-3N/mmであり、好ましくは0.25×10-3N/mm~0.6×10-3N/mmである。破断荷重F3は、例えば0.5×10-3N/mm~15.0×10-3N/mmであり、好ましくは2.0×10-3N/mm~8.0×10-3N/mmである。保持力F2は、引出力F1よりも大きく、かつ、破断荷重F3よりも小さい値になるように、後述する第1上切断要素271および下切断要素272の形状が選択される。例えば、第1上切断要素271および下切断要素272は、金属箔等の薄い平板状、または、先端(例えば、刃先)が鋭利な角度を有する形状とされる。第1上切断要素271および下切断要素272が金属箔である場合、金属箔の材質によっても異なるが、当該金属箔の厚さは、例えば、20μm~500μmであることが好ましい。なお、引出力F1、保持力F2および破断荷重F3の値は、CNTアレイ91の厚さや本数密度、CNTアレイ91におけるCNTの絡まり方等によって様々に変化する。
【0064】
表1および表2はそれぞれ、引出力F1および破断荷重F3の測定値を示す。引出力F1および破断荷重F3の測定は、微小荷重用ロードセルを利用して実施した。表1および表2では、CNTドローイングフィルム95の幅を変更した複数のサンプルについて、測定結果を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
引出力F1の測定では、まず、基板92上のCNTアレイ91から引き出されたCNTドローイングフィルム95の先端が台紙に固定される。続いて、基板92が、主面が上下方向に略平行となるように固定台に固定され、台紙は、固定台の上方にてロードセルに固定される。CNTドローイングフィルム95は、基板92からロードセルに向かって上方に延びている。その後、ロードセルにより台紙が上方に引き上げられ、引出力F1が測定される。ロードセルとしては、「株式会社共和電業製、品番:LTS-50GA(定格容量500mN)」を用いた。また、ロードセルによる引上速度は0.2mm/secであり、引き上げ前の固定台と台紙との間の上下方向の距離である初期ギャップは50mmである。
【0068】
破断荷重F3の測定では、まず、CNTアレイ91から切り離されたCNTドローイングフィルム95が準備され、当該CNTドローイングフィルム95の両端が一対の台紙に固定される。そして、CNTドローイングフィルム95の主面が上下方向に略平行となるように、一方の台紙が固定台に固定され、他方の台紙は、固定台の上方にてロードセルに固定される。CNTドローイングフィルム95は、固定台からロードセルに向かって上方に延びている。その後、ロードセルにより台紙が上方に引き上げられ、CNTドローイングフィルム95が破断する際の荷重である破断荷重F3が測定される。使用したロードセル、並びに、引上速度および初期ギャップは、上記と同様である。
【0069】
図12に示す状態では、下切断要素272は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向において、第1上切断要素271と回収部23との間に位置する。換言すれば、第1上切断要素271は、当該引出方向において第2基板92bと下切断要素272との間に位置する。下切断要素272に保持されている第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、第1上切断要素271に保持されている第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と、上下方向に重なる位置に位置する。第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の下側に位置する。
【0070】
第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きは、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の向きと反対である。換言すれば、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部と長手方向において対向する。第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きとは、回収部23から第1のCNTドローイングフィルム95aの端部に向かって第1のCNTドローイングフィルム95aが延びる向きであり、図12中では略左向きである。第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の向きとは、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bの端部に向かって第2のCNTドローイングフィルム95bが延びる向きであり、図12中では略右向きである。
【0071】
続いて、要素駆動機構により、図13に示すように、第1上切断要素271が下降し、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部上に積層されて接合される(ステップS17)。換言すれば、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部とが貼り合わされる。なお、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの積層は、下切断要素272が上昇することにより実現されてもよい。要素駆動機構は、第2カッター25の下切断要素272を第1のCNTドローイングフィルム95aに対して相対的に移動し、第2のCNTドローイングフィルム95bを第1のCNTドローイングフィルム95aに積層して接合する駆動機構である。
【0072】
次に、図14に示すように、接合補助部26において、下側の治具261が第2のCNTドローイングフィルム95bの下方に側方から挿入されて上昇し、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951(すなわち、2層のCNTドローイングフィルムの積層部)において第2のCNTドローイングフィルム95bの下面に接触する。そして、治具261により第2のCNTドローイングフィルム95bが押さえられた状態で、下切断要素272が下降して第2のCNTドローイングフィルム95bの端部から離間する。これにより、下切断要素272による第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の保持が解除される(ステップS18)。
【0073】
また、図15に示すように、接合補助部26において、上側の治具261が第1のCNTドローイングフィルム95aの上方に側方から挿入されて下降し、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951において第1のCNTドローイングフィルム95aの上面に接触する。そして、治具261により第1のCNTドローイングフィルム95aが押さえられた状態で、第1上切断要素271が上昇して第1のCNTドローイングフィルム95aの端部から離間する。これにより、第1上切断要素271による第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の保持が解除される(ステップS19)。なお、ステップS19は、ステップS18よりも先に行われてもよく、ステップS18と並行して行われてもよい。
【0074】
ステップS18,S19が終了すると、接合補助部26の移動機構(図示省略)により、2つの治具261が接合部951の上下において、接合部951の主面に接触しつつ略水平に往復移動される。図14および図15に示す例では、各治具261の移動範囲は、接合部951の略全面に亘る。これにより、接合部951の第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとが互いに対して付勢されるように撫でつけられる(ステップS20)。第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとは、撫でつけられることによって互いのファンデルワールス力により付着する。その結果、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合強度が増大する。
【0075】
なお、ステップS18では、下切断要素272と第2のCNTドローイングフィルム95bとの離間は、必ずしも治具261により第2のCNTドローイングフィルム95bが押さえられた状態で行われる必要はない。例えば、接合部951の下面に対してガスが噴射され、当該ガス噴射により接合部951が僅かに押し上げられ、第2のCNTドローイングフィルム95bが下切断要素272から離間してもよい。ステップS19における第1上切断要素271と第1のCNTドローイングフィルム95aとの離間についても同様である。
【0076】
ステップS20では、接合部951を挟んで対向して配置された2つの治具261がそれぞれ、各治具261の中心軸を中心として回転しつつ、接合部951を上下から撫でつけてもよい。また、2つの治具261が互いに反対向き(すなわち、時計回りと反時計回り)に回転しつつ、互いに対して上下方向に付勢されることにより、2つの治具261の間に挟まれた接合部951が厚密されてもよい。この場合、2つの治具261は、接合部951を厚密する2つのローラとして働く。成形体製造装置1では、当該2つのローラにより第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bのうち、接合部951以外の部位が挟まれて厚密されてもよい。
【0077】
ステップS20が終了すると、2つの治具261が上下方向に移動して第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bから離間し、図示省略の退避位置に退避する(ステップS21)。上述のように、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bを取り扱う治具261は、黒鉛ロッド等の炭素質治具であるため、金属、ガラスまたは樹脂により形成された治具に比べて、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bの治具261に対する付着力を低減することができる。したがって、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bからの治具261の離間を容易に行うことができる。すなわち、治具261として黒鉛ロッド等の炭素質治具を用いることにより、治具261と第1のCNTドローイングフィルム95aとが接着する力、および、治具261と第2のCNTドローイングフィルム95bとが接着する力よりも、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとが接着する力の方が大きくなる。
【0078】
その後、図16に示すように、回収部23の回収ローラ231が回転することにより、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとが接合部951において接続された長尺状のCNTドローイングフィルム950(以下、「接続フィルム950」とも呼ぶ。)が、回収ローラ231に巻き取られ、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bが引き出されることにより、接続フィルム950の形成が実施される。長尺状の接続フィルム950は、上述のカーボンナノチューブ成形体であり、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bは、カーボンナノチューブ成形体を形成するための前駆体である。
【0079】
図17は、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951近傍を示す平面図である。上述のように、下切断要素272(図2参照)は第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向に対して傾斜して延びているため、当該接合部951では、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bが、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向(すなわち、接続フィルム950の長手方向であり、図17中の左右方向)に対して傾斜する方向に延びる。端縁952bが延びる方向と第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向との成す角度は、例えば15°~60°であり、図17に示す例では約45°である。また、接合部951では、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aは、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bに対して略平行な方向に延びる。
【0080】
以上に説明したように、の実施の形態に係る接続フィルム950の製造方法は、カーボンナノチューブが配向集合した第1のCNTアレイ91aから引き出され、支持部材(すなわち、回収部23)に支持された第1のCNTドローイングフィルム95aを準備する工程(ステップS11)と、第1のCNTアレイ91aと回収部23との間において第1のCNTドローイングフィルム95aを切断し、回収部23から延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部を保持する工程(ステップS12)と、カーボンナノチューブが配向集合した第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bを準備する工程(ステップS14)と、第2のCNTアレイ91bから延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する工程(ステップS15)と、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きと第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の向きとを反対にした状態で、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを積層して接合する工程(ステップS17)と、を備える。
【0081】
これにより、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951(すなわち、接続フィルム950において、周囲の部位よりも単位面積当たりのカーボンナノチューブの量が多い部位)の長手方向における長さを短くすることができる。その結果、接合部951における特性変化を抑制しつつ、長尺状の接続フィルム950を得ることができる。また、上記製造方法では、第1基板92a上の第1のCNTアレイ91aのうち引出方向の後端部(すなわち、第1のCNTドローイングフィルム95aの引出方向の後側の端部)は、接続フィルム950の形成に使用されない。このように、第1基板92a上から引き出される際に密度にばらつきが生じる可能性のある第1のCNTアレイ91aの後端部が、接続フィルム950に含まれることを防止することにより、接続フィルム950の特性変化をさらに抑制することができる。
【0082】
上述のように、好ましくは、ステップS12において、第1のCNTドローイングフィルム95aを第1カッター24により切断し、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部を第1カッター24により保持する。第1カッター24と第1のCNTドローイングフィルム95aとの接触面積は小さく、第1カッター24に対する第1のCNTドローイングフィルム95aの付着力は比較的小さいため、第1のCNTドローイングフィルム95aは第1カッター24から比較的離れやすい。したがって、接合部951を構成する予定の第1のCNTドローイングフィルム95aの端部を第1カッター24によって保持することにより、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合後に、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持の解除(すなわち、第1のCNTドローイングフィルム95aの第1カッター24からの離間)を容易に行うことができる。
【0083】
上述のように、第1カッター24は、第1のCNTドローイングフィルム95aの両主面にそれぞれ対向するとともに、第1のCNTドローイングフィルム95aの長手方向における位置が異なる一対の第1切断要素(すなわち、第1上切断要素271および下切断要素272)を備えることが好ましい。また、好ましくは、ステップS12において、当該一対の第1切断要素が互いに近づき、第1のCNTドローイングフィルム95aを挟んで、第1のCNTドローイングフィルム95aの両主面に垂直な方向において重なることにより、第1のCNTドローイングフィルム95aが切断され、第1のCNTドローイングフィルム95aの上記端部は、一対の第1切断要素のうち一方の第1切断要素(例えば、第1上切断要素271)により保持される。このように、第1のCNTドローイングフィルム95aの切断と、切断後の第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の保持とを1つの動作にて行うことにより、長尺状の接続フィルム950の製造を容易とすることができる。
【0084】
上述のように、好ましくは、ステップS15において、第2のCNTアレイ91bから延びる第2のCNTドローイングフィルム95bを第2カッター25により切断し、切断により形成された第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を第2カッター25により保持する。第2カッター25と第2のCNTドローイングフィルム95bとの接触面積は小さく、第2カッター25に対する第2のCNTドローイングフィルム95bの付着力は比較的小さいため、第2のCNTドローイングフィルム95bは第2カッター25から比較的離れやすい。したがって、接合部951を構成する予定の第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を第2カッター25によって保持することにより、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合後に、第2のCNTドローイングフィルム95bの保持の解除(すなわち、第2のCNTドローイングフィルム95bの第2カッター25からの離間)を容易に行うことができる。また、密度にばらつきが生じる可能性のある第2のCNTドローイングフィルム95bの前端部(すなわち、第2のCNTドローイングフィルム95bの形成開始時に保持されていた端部)が、接続フィルム950に含まれることを防止することにより、接続フィルム950の特性変化をさらに抑制することができる。
【0085】
上述のように、第2カッター25は、第2のCNTドローイングフィルム95bの両主面にそれぞれ対向するとともに、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向における位置が異なる一対の第2切断要素(すなわち、第2上切断要素274および下切断要素272)を備えることが好ましい。また、好ましくは、ステップS15において、当該一対の第2切断要素が互いに近づき、第2のCNTドローイングフィルム95bを挟んで、第2のCNTドローイングフィルム95bの両主面に垂直な方向において重なることにより、第2のCNTドローイングフィルム95bが切断され、第2のCNTドローイングフィルム95bの上記端部は、一対の第2切断要素のうち一方の第2切断要素(例えば、下切断要素272)により保持される。このように、第2のCNTドローイングフィルム95bの切断と、切断後の第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の保持とを1つの動作にて行うことにより、長尺状の接続フィルム950の製造を容易とすることができる。
【0086】
上述のように、接続フィルム950の製造方法は、ステップS15とステップS17との間において、第2カッター25を第2のCNTアレイ91bに対して相対移動することにより、第2のCNTドローイングフィルム95bを第2のCNTアレイ91bから引き出す工程(ステップS16)をさらに備えることが好ましい。また、好ましくは、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bを引き出す力(すなわち、引出力F1)は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向における第2カッター25による第2のCNTドローイングフィルム95bの保持力F2よりも小さい。これにより、第2のCNTドローイングフィルム95bが第2カッター25から意図に反して脱落することを防止し、第2のCNTドローイングフィルム95bを第2のCNTアレイ91bから好適に引き出すことができる。
【0087】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951において、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bは、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向に対して傾斜する方向に延びており、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aは、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bと平行に延びる。これにより、接続フィルム950において接合部951が存在する領域(すなわち、接合部951の長手方向の両端において幅方向に延びる一対の直線に挟まれるとともに接続フィルム950の全幅に亘る矩形領域)の平均厚さが、端縁952a,952bが上記長手方向に垂直な場合と比べて小さくなる。したがって、接続フィルム950の特性(例えば、電気抵抗)が接合部951において急激に変化することを抑制することができる。また、接合部951の長手方向の長さが長くなるため、接続フィルム950の強度が接合部951において低下することを抑制することができ、接続フィルム950の長手方向における部位毎の破断荷重の均一性を向上することができる。
【0088】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを接合する際に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951を撫でつける。これにより、接合部951が治具261に付着することを抑制しつつ、接合部951において第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを馴染ませて接合強度を増大することができる。
【0089】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを接合した後に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第1のCNTドローイングフィルム95aを押さえて、または、ガス噴射により、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持を解除する。これにより、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持解除を容易に行うことができる。また、炭素質治具である治具261を用いる場合、第1のCNTドローイングフィルム95aの治具261に対する付着を抑制することができる。
【0090】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを接合した後に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第2のCNTドローイングフィルム95bを押さえて、または、ガス噴射により、第2のCNTドローイングフィルム95bの保持を解除する。これにより、第2のCNTドローイングフィルム95bの保持解除を容易に行うことができる。また、炭素質治具である治具261を用いる場合、第2のCNTドローイングフィルム95bの治具261に対する付着を抑制することができる。
【0091】
次に、本発明の第1の関連技術に係る成形体製造装置1aについて説明する。図18は、成形体製造装置1aを示す側面図である。成形体製造装置1aでは、図1に示す成形体製造装置1から下切断要素272が省略され、第1カッター24が第1下切断要素276を備え、第2カッター25が第2下切断要素277を備える。成形体製造装置1aの他の構成は、成形体製造装置1と略同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
【0092】
図18に示すように、成形体製造装置1aは、第1基板保持部21と、第2基板保持部22と、回収部23と、第1カッター24と、第2カッター25と、接合補助部26とを備える。第1基板保持部21は、第1のCNTアレイ91aが立設する第1基板92aを保持する。第2基板保持部22は、第2のCNTアレイ91bが立設する第2基板92bを保持する。第1カッター24は、第1上切断要素271および第1下切断要素276(すなわち、一対の第1切断要素)を備える。第2カッター25は、第2上切断要素274および第2下切断要素277(すなわち、一対の第2切断要素)を備える。接合補助部26は、2つの治具261を備える。
【0093】
第1下切断要素276および第2下切断要素277の形状および材料は、上述の第1上切断要素271および第2上切断要素274と同様に、様々に選択することが可能である。第1下切断要素276および第2下切断要素277の形状および材料は、第1上切断要素271および第2上切断要素274の形状および材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。図18に示す例では、第1下切断要素276および第2下切断要素277は、ステンレス鋼等により形成された金属箔(実施例として、厚さ50μmのSUS箔を利用。)である。
【0094】
図19Aおよび図19Bは、成形体製造装置1aにおける第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合の流れを示す図である。図20ないし図28は、第1CNTドローイングフィルム95aと第2CNTドローイングフィルム95bとの接合の様子を示す側面図である。図20ないし図28では、成形体製造装置1aの構成の一部の図示を省略する。
【0095】
成形体製造装置1aでは、まず、図20に示すように、第1のCNTアレイ91aから引き出されて回収部23により支持された第1のCNTドローイングフィルム95aが準備される(ステップS31)。回収部23は、第1のCNTドローイングフィルム95aを巻回して支持する支持部材である。
【0096】
図20に示す状態では、図18に示す状態よりも第1のCNTドローイングフィルム95aの形成が進み、第1基板92a上に残っている第1のCNTアレイ91aの量(すなわち、第1のCNTアレイ91aの残量)は少なくなっている。第1のCNTアレイ91aの残量が所定の閾値以下となると、回収部23による第1のCNTドローイングフィルム95aの引き出しが一旦停止される。上記閾値は、例えば、側面視における第1のCNTアレイ91aの引出方向の長さである。
【0097】
続いて、図21に示すように、第2基板92bの第2のCNTアレイ91bから、第2のCNTドローイングフィルム95bが引き出されて準備される(ステップS32)。図21に示す例では、第2のCNTドローイングフィルム95bの引き出しは、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が固定された略円柱状または略円筒状の引出治具275を、略水平方向に延びる回転軸を中心として回転させることにより行われる。あるいは、引出治具275を、第2基板92bから離れる方向へと略水平に移動することにより、第2基板92bから第2のCNTドローイングフィルム95bが引き出されてもよい。
【0098】
引出治具275は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向において、第2カッター25の第2上切断要素274および第2下切断要素277よりも第2基板92bから離れた位置に位置する。第2のCNTドローイングフィルム95bは、第2基板92bの第2のCNTアレイ91bから、上下方向に対向する第2上切断要素274と第2下切断要素277との間を通過して、回収部23に向かって延びる。
【0099】
第2のCNTドローイングフィルム95bが準備されると、図22に示すように、第2カッター25において、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向における位置が僅かに異なる第2上切断要素274と第2下切断要素277とが上下方向に交差し、第2上切断要素274と第2下切断要素277との間にて第2のCNTドローイングフィルム95bが切断される。
【0100】
第2のCNTアレイ91bと引出治具275との間において切断された第2のCNTドローイングフィルム95bの2つの端部(すなわち、第2カッター25による切断により形成された2つの端部)の切断縁は、第2上切断要素274の鋭利な下端縁および第2下切断要素277の鋭利な上端縁に付着した状態で保持される。具体的には、第2のCNTアレイ91bから引出治具275および回収部23の方へと延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、第2カッター25の第2上切断要素274により保持される。また、引出治具275から第2基板92bの方へと延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、第2下切断要素277により保持される(ステップS33)。引出治具275は第2のCNTドローイングフィルム95bの引き出しを阻害しない退避位置(図示省略)へと移動される。
【0101】
次に、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持している第2上切断要素274が、図23に示すように、第2基板92bから離れる方向に略水平に移動される。これにより、第2基板92b上の第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bが略水平に引き出される(ステップS34)。なお、ステップS34では、第2上切断要素274が移動することなく、第2基板92bを保持する第2基板保持部22が、第2上切断要素274から離れる方向に略水平に移動されてもよい。すなわち、ステップS34では、第2上切断要素274が第2のCNTアレイ91bに対して相対移動することにより、第2のCNTドローイングフィルム95bが第2のCNTアレイ91bから引き出される。
【0102】
図23に示す状態では、第2上切断要素274は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向において、第1カッター24(すなわち、第1上切断要素271および第1下切断要素276)と回収部23との間に位置する。換言すれば、第1カッター24は、当該引出方向において第2基板92bと第2上切断要素274との間に位置する。
【0103】
ステップS34では、ステップS16と同様に、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bを引き出す引出力F1は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向における第2上切断要素274による第2のCNTドローイングフィルム95bの保持力F2よりも小さい。このため、第2上切断要素274の相対移動により第2のCNTドローイングフィルム95bが第2のCNTアレイ91bから引き出される際に、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が第2上切断要素274から脱落することが防止される。
【0104】
また、上述の保持力F2は、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向における破断荷重F3よりも小さい。これにより、第2上切断要素274の相対移動により第2のCNTドローイングフィルム95bが第2のCNTアレイ91bから引き出される際に、第2のCNTドローイングフィルム95bが長手方向(すなわち、引出方向)に破断するこが防止される。引出力F1、保持力F2および破断荷重F3の範囲および測定方法は上述のものと同じである。
【0105】
続いて、図24に示すように、第2上切断要素274が下降し、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が、第1のCNTドローイングフィルム95a上に積層されて接合される(ステップS35)。換言すれば、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が、第1のCNTドローイングフィルム95aの上面に貼り合わされる。なお、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの積層は、回収部23等が上昇することにより実現されてもよい。
【0106】
次に、図25に示すように、第1カッター24において、第1のCNTドローイングフィルム95aの長手方向における位置が僅かに異なる第1上切断要素271と第1下切断要素276とが上下方向に交差し、第1上切断要素271と第1下切断要素276との間にて第1のCNTドローイングフィルム95aが切断される。図25に示す例では、第1カッター24による第1のCNTドローイングフィルム95aの切断位置は、第1のCNTドローイングフィルム95aの長手方向において、ステップS35で第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が第1のCNTドローイングフィルム95a上に積層された位置の近傍である。
【0107】
第1のCNTアレイ91aと回収部23との間において切断された第1のCNTドローイングフィルム95aの2つの端部(すなわち、第1カッター24による切断により形成された2つの端部)の切断縁は、第1上切断要素271の鋭利な下端縁および第1下切断要素276の鋭利な上端縁に付着した状態で保持される。具体的には、第1のCNTアレイ91aから回収部23の方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1カッター24の第1上切断要素271により保持される。また、回収部23から第1基板92aの方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1下切断要素276により保持される(ステップS36)。第1基板92aから延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は第1上切断要素271から取り外され、図26に示すように、第1基板92aが第1基板保持部21から取り外されて除去される(ステップS37)。
【0108】
次に、図26に示すように、第1下切断要素276に保持された第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と、第2のCNTドローイングフィルム95bとが、上下方向において相対的に近付けられ、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が、第2のCNTドローイングフィルム95bの下面に積層されて接合される(ステップS38)。
【0109】
そして、図27に示すように、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951(すなわち、2層のCNTドローイングフィルムの積層部)において、第1のCNTドローイングフィルム95aの下面および第2のCNTドローイングフィルム95bの上面に、接合補助部26の2つの治具261が接触する。第1下切断要素276は、治具261により第1のCNTドローイングフィルム95aが押さえられた状態で下降し、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部から離間する。これにより、第1下切断要素276による第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の保持が解除される(ステップS39)。また、第2上切断要素274は、治具261により第2のCNTドローイングフィルム95bが押さえられた状態で上昇し、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部から離間する。これにより、第2上切断要素274による第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の保持が解除される(ステップS40)。なお、ステップS40は、ステップS39よりも先に行われてもよく、ステップS39と並行して行われてもよい。
【0110】
ステップS39,S40が終了すると、2つの治具261が接合部951の上下において、接合部951の主面に接触しつつ略水平に往復移動される。図27に示す例では、各治具261の移動範囲は、接合部951の略全面に亘る。これにより、接合部951の第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとが互いに対して付勢されるように撫でつけられる(ステップS41)。その結果、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合強度が増大する。
【0111】
なお、ステップS40では、第2上切断要素274と第2のCNTドローイングフィルム95bとの離間は、必ずしも治具261により第2のCNTドローイングフィルム95bが押さえられた状態で行われる必要はない。例えば、接合部951の上面に対してガスが噴射され、当該ガス噴射により接合部951が僅かに押し下げられ、第2のCNTドローイングフィルム95bが第2上切断要素274から離間してもよい。ステップS39における第1下切断要素276と第1のCNTドローイングフィルム95aとの離間についても同様である。
【0112】
ステップS41では、接合部951を挟んで対向して配置された2つの治具261がそれぞれ、各治具261の中心軸を中心として回転しつつ、接合部951を上下から撫でつけてもよい。また、2つの治具261が互いに反対向き(すなわち、時計回りと反時計回り)に回転しつつ、互いに対して上下方向に付勢されることにより、2つの治具261の間に挟まれた接合部951が厚密されてもよい。この場合、2つの治具261は、接合部951を厚密する2つのローラとして働く。成形体製造装置1aでは、当該2つのローラにより第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bのうち、接合部951以外の部位が挟まれて厚密されてもよい。
【0113】
ステップS41が終了すると、2つの治具261が上下方向に移動して第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bから離間し、図示省略の退避位置に退避する(ステップS42)。上述のように、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bを取り扱う治具261は、黒鉛ロッド等の炭素質治具であるため、治具261に対する第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bの付着力を低減することができる。したがって、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bからの治具261の離間を容易に行うことができる。
【0114】
その後、図28に示すように、回収部23の回収ローラ231が回転することにより、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとが接合部951において連続する長尺状の接続フィルム950が、回収ローラ231に巻き取られ、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bが引き出されることにより、接続フィルム950の形成が実施される。長尺状の接続フィルム950は、上述のカーボンナノチューブ成形体であり、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bは、カーボンナノチューブ成形体を形成するための前駆体である。
【0115】
1の関連技術に係る接続フィルム950においても、の実施の形態と同様に、接合部951において、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952b(図17参照)が、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向に対して傾斜する方向に延びる。端縁952bが延びる方向と第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向との成す角度は、例えば15°~60°(好ましくは、約45°)である。また、接合部951では、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952a(図17参照)は、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bに対して略平行な方向に延びる。
【0116】
以上に説明したように、第1の関連技術に係る接続フィルム950の製造方法は、カーボンナノチューブが配向集合した第1のCNTアレイ91aから引き出され、支持部材(すなわち、回収部23)に支持された第1のCNTドローイングフィルム95aを準備する工程(ステップS31)と、カーボンナノチューブが配向集合した第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bを準備する工程(ステップS32)と、第2のCNTアレイ91bから延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する工程(ステップS33)と、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を、第1のCNTアレイ91aと回収部23との間において第1のCNTドローイングフィルム95aに積層して接合する工程(ステップS35)と、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951と、第1のCNTアレイ91aとの間において、第1のCNTドローイングフィルム95aを切断する工程(ステップS36)と、を備える。
【0117】
これにより、の実施の形態と略同様に、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951(すなわち、接続フィルム950において、周囲の部位よりも単位面積当たりのカーボンナノチューブの量が多い部位)の長手方向における長さを短くすることができる。その結果、接合部951における特性変化を抑制しつつ、長尺状の接続フィルム950を得ることができる。また、上記製造方法では、第1基板92a上の第1のCNTアレイ91aのうち引出方向の後端部は、接続フィルム950の形成に使用されない。このように、第1基板92a上から引き出される際に密度にばらつきが生じる可能性のある第1のCNTアレイ91aの後端部が、接続フィルム950に含まれることを防止することにより、接続フィルム950の特性変化をさらに抑制することができる。
【0118】
上述のように、好ましくは、ステップS33において、第2のCNTアレイ91bから延びる第2のCNTドローイングフィルム95bを第2カッター25により切断し、切断により形成された第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を第2カッター25により保持する。これにより、の実施の形態と同様に、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合後に、第2のCNTドローイングフィルム95bの保持の解除(すなわち、第2のCNTドローイングフィルム95bの第2カッター25からの離間)を容易に行うことができる。また、密度にばらつきが生じる可能性のある第2のCNTドローイングフィルム95bの前端部が、接続フィルム950に含まれることを防止することにより、接続フィルム950の特性変化をさらに抑制することができる。
【0119】
上述のように、第2カッター25は、第2のCNTドローイングフィルム95bの両主面にそれぞれ対向するとともに、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向における位置が異なる一対の第2切断要素(すなわち、第2上切断要素274および第2下切断要素277)を備えることが好ましい。また、好ましくは、ステップS33において、当該一対の第2切断要素が互いに近づき、第2のCNTドローイングフィルム95bを挟んで、第2のCNTドローイングフィルム95bの両主面に垂直な方向において重なることにより、第2のCNTドローイングフィルム95bが切断され、第2のCNTドローイングフィルム95bの上記端部は、一対の第2切断要素のうち一方の第2切断要素(例えば、第2上切断要素274)により保持される。このように、第2のCNTドローイングフィルム95bの切断と、切断後の第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の保持とを1つの動作にて行うことにより、長尺状の接続フィルム950の製造を容易とすることができる。
【0120】
上述のように、接続フィルム950の製造方法は、ステップS33とステップS35との間において、第2カッター25を第2のCNTアレイ91bに対して相対移動することにより、第2のCNTドローイングフィルム95bを第2のCNTアレイ91bから引き出す工程(ステップS34)をさらに備えることが好ましい。また、好ましくは、第2のCNTアレイ91bから第2のCNTドローイングフィルム95bを引き出す力(すなわち、引出力F1)は、第2のCNTドローイングフィルム95bの引出方向における第2カッター25による第2のCNTドローイングフィルム95bの保持力F2よりも小さい。これにより、第2のCNTドローイングフィルム95bが第2カッター25から意図に反して脱落することを防止し、第2のCNTドローイングフィルム95bを第2のCNTアレイ91bから好適に引き出すことができる。
【0121】
上述のように、好ましくは、ステップS36において、第1のCNTドローイングフィルム95aを第1カッター24により切断し、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部を第1カッター24により保持する。これにより、の実施の形態と同様に、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合後に、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持の解除(すなわち、第1のCNTドローイングフィルム95aの第1カッター24からの離間)を容易に行うことができる。
【0122】
上述のように、第1カッター24は、第1のCNTドローイングフィルム95aの両主面にそれぞれ対向するとともに、第1のCNTドローイングフィルム95aの長手方向における位置が異なる一対の第1切断要素(すなわち、第1上切断要素271および第1下切断要素276)を備えることが好ましい。また、好ましくは、ステップS36において、当該一対の第1切断要素が互いに近づき、第1のCNTドローイングフィルム95aを挟んで、第1のCNTドローイングフィルム95aの両主面に垂直な方向において重なることにより、第1のCNTドローイングフィルム95aが切断され、第1のCNTドローイングフィルム95aの上記端部は、一対の第1切断要素のうち一方の第1切断要素(例えば、第1下切断要素276)により保持される。このように、第1のCNTドローイングフィルム95aの切断と、切断後の第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の保持とを1つの動作にて行うことにより、長尺状の接続フィルム950の製造を容易とすることができる。
【0123】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951において、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bは、第2のCNTドローイングフィルム95bの長手方向に対して傾斜する方向に延びており、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aは、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bと平行に延びる。これにより、の実施の形態と略同様に、接続フィルム950の特性(例えば、電気抵抗)が接合部951において急激に変化することを抑制することができる。また、接続フィルム950の強度が接合部951において低下することを抑制することができ、接続フィルム950の長手方向における部位毎の破断荷重の均一性を向上することができる。
【0124】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを接合する際に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部951を撫でつける。これにより、接合部951が治具261に付着することを抑制しつつ、接合部951において第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを馴染ませて接合強度を増大することができる。
【0125】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを接合した後に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第1のCNTドローイングフィルム95aを押さえて、または、ガス噴射により、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持を解除する。これにより、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持解除を容易に行うことができる。また、炭素質治具である治具261を用いる場合、第1のCNTドローイングフィルム95aの治具261に対する付着を抑制することができる。
【0126】
上述のように、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとを接合した後に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第2のCNTドローイングフィルム95bを押さえて、または、ガス噴射により、第2のCNTドローイングフィルム95bの保持を解除する。これにより、第2のCNTドローイングフィルム95bの保持解除を容易に行うことができる。また、炭素質治具である治具261を用いる場合、第2のCNTドローイングフィルム95bの治具261に対する付着を抑制することができる。
【0127】
次に、本発明の第2の関連技術に係る成形体製造装置1bについて説明する。図29は、成形体製造装置1bを示す側面図である。成形体製造装置1bは、上述の接続フィルム950に代えて、2つのCNTアレイから引き出された2枚のCNTドローイングフィルムが積層された積層CNTドローイングフィルム(以下、「積層フィルム」とも呼ぶ。)を製造する。成形体製造装置1bは、図18に示す成形体製造装置1aの各構成に加えて、第3基板保持部28と、第3カッター29とをさらに備える。成形体製造装置1bの他の構成は、成形体製造装置1aと略同様であり、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。
【0128】
図29に示すように、第3基板保持部28は、多数のカーボンナノチューブの集合である第3のCNTアレイ91cが主面上に立設する第3基板92cを保持する。第3カッター29は、第3のCNTアレイ91cから引き出される第3のCNTドローイングフィルム95cを切断する。第3カッター29は、第3上切断要素278および第3下切断要素279(すなわち、一対の第3切断要素)を備える。第3上切断要素278および第3下切断要素279の形状および材料は、上述の第1カッター24の第1上切断要素271および第1下切断要素276、並びに、第2カッター25の第2上切断要素274および第2下切断要素277と同様に、様々に選択することが可能である。第3上切断要素278および第3下切断要素279の形状および材料は、第1上切断要素271、第1下切断要素276、第2上切断要素274および第2下切断要素277の形状および材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。図29に示す例では、第3上切断要素278および第3下切断要素279は、ステンレス鋼等により形成された金属箔(実施例として、厚さ50μmのSUS箔を利用。)である。
【0129】
図30は、成形体製造装置1bにおける積層フィルムの製造の流れを示す図である。図31ないし図39は、積層フィルムの製造の様子を示す側面図である。図31ないし図39では、成形体製造装置1bの構成の一部の図示を省略する。
【0130】
成形体製造装置1bでは、まず、上述のステップS31~S35(図19A参照)および図20ないし図24と同様に、回収部23により第1のCNTアレイ91aから引き出されている第1のCNTドローイングフィルム95a上に、第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が積層されて接合される。ただし、図31に示すように、第1基板92a上の第1のCNTアレイ91aの残量は、図24に示す状態よりも多い。図31に示す例では、第1のCNTアレイ91aの残量は、第2基板92b上の第2のCNTアレイ91bの残量の約半分である。
【0131】
ステップS35が終了すると、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持していた第2カッター25の第2上切断要素274が、図32に示すように、第2のCNTドローイングフィルム95bから上方へと離間する。第2上切断要素274による第2のCNTドローイングフィルム95bの保持解除の際には、例えば、接合補助部26の治具261(図29参照)により第2のCNTドローイングフィルム95bが押さえられることが好ましい。あるいは、第2のCNTドローイングフィルム95bに対してガスが噴射されてもよい。
【0132】
続いて、回収部23が駆動され、第1のCNTアレイ91aおよび第2のCNTアレイ91bから、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bが並行して引き出される。そして、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとが積層されて接合されることにより積層フィルム960が形成され、回収ローラ231により巻き取られる(ステップS51)。
【0133】
積層フィルム960の形成が進み、第1基板92a上の第1のCNTアレイ91aの残量が所定の閾値以下となると、回収部23による第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bの引き出し(すなわち、積層フィルム960の形成)が一旦停止される。上記閾値は、例えば、側面視における第1のCNTアレイ91aの引出方向の長さである。
【0134】
次に、図33に示すように、第1カッター24において、第1のCNTドローイングフィルム95aの長手方向における位置が僅かに異なる第1上切断要素271と第1下切断要素276とが上下方向に交差し、第1上切断要素271と第1下切断要素276との間にて第1のCNTドローイングフィルム95aが切断される。
【0135】
第1のCNTアレイ91aと回収部23との間(すなわち、第1のCNTアレイ91aと、回収部23により回収された第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部との間)において切断された第1のCNTドローイングフィルム95aの2つの端部(すなわち、第1カッター24による切断により形成された2つの端部)の切断縁は、第1上切断要素271の下端縁および第1下切断要素276の上端縁に付着した状態で保持される。具体的には、第1のCNTアレイ91aから回収部23の方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1下切断要素276により保持される。また、回収部23から第1基板92aの方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1上切断要素271により保持される(ステップS52)。第1基板92aから延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は第1上切断要素271から取り外され、図34に示すように、第1基板92aが第1基板保持部21から取り外されて除去される(ステップS53)。
【0136】
続いて、第3基板92cの第3のCNTアレイ91cから、第3のCNTドローイングフィルム95cが引き出されて準備される(ステップS54)。図34に示す例では、第3のCNTドローイングフィルム95cの引き出しは、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が固定された略円柱状または略円筒状の引出治具275を、略水平方向に延びる回転軸を中心として回転させることにより行われる。あるいは、引出治具275を、第3基板92cから離れる方向へと略水平に移動することにより、第3基板92cから第3のCNTドローイングフィルム95cが引き出されてもよい。第3のCNTドローイングフィルム95cは、上下方向に対向する第3上切断要素278と第3下切断要素279との間を通過する。
【0137】
第3のCNTドローイングフィルム95cが準備されると、図35に示すように、第3カッター29において、第3のCNTドローイングフィルム95cの長手方向における位置が僅かに異なる第3上切断要素278と第3下切断要素279とが上下方向に交差し、第3上切断要素278と第3下切断要素279との間にて第3のCNTドローイングフィルム95cが切断される。
【0138】
第3のCNTアレイ91cと引出治具275との間において切断された第3のCNTドローイングフィルム95cの2つの端部(すなわち、第3カッター29による切断により形成された2つの端部)の切断縁は、第3上切断要素278の鋭利な下端縁および第3下切断要素279の鋭利な上端縁に付着した状態で保持される。具体的には、第3のCNTアレイ91cから引出治具275および回収部23の方へと延びる第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第3カッター29の第3下切断要素279により保持される。また、引出治具275から第3基板92cの方へと延びる第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第3上切断要素278により保持される(ステップS55)。引出治具275は第3のCNTドローイングフィルム95cの引き出しを阻害しない退避位置(図示省略)へと移動される。
【0139】
次に、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部を保持している第3下切断要素279が、図36に示すように、第3基板92cから離れる方向に略水平に移動される。これにより、第3基板92c上の第3のCNTアレイ91cから第3のCNTドローイングフィルム95cが略水平に引き出される(ステップS56)。なお、ステップS56では、第3下切断要素279が移動することなく、第3基板92cを保持する第3基板保持部28が、第3下切断要素279から離れる方向に略水平に移動されてもよい。すなわち、ステップS56では、第3下切断要素279が第3のCNTアレイ91cに対して相対移動することにより、第3のCNTドローイングフィルム95cが第3のCNTアレイ91cから引き出される。
【0140】
ステップS56では、ステップS16,S34と略同様に、第3のCNTアレイ91cから第3のCNTドローイングフィルム95cを引き出す引出力F1は、第3のCNTドローイングフィルム95cの引出方向における第3下切断要素279による第3のCNTドローイングフィルム95cの保持力F2よりも小さい。このため、第3下切断要素279の相対移動により第3のCNTドローイングフィルム95cが第3のCNTアレイ91cから引き出される際に、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が第3下切断要素279から脱落することが防止される。
【0141】
また、上述の保持力F2は、第3のCNTドローイングフィルム95cの長手方向における破断荷重F3よりも小さい。これにより、第3下切断要素279の相対移動により第3のCNTドローイングフィルム95cが第3のCNTアレイ91cから引き出される際に、第3のCNTドローイングフィルム95cが長手方向(すなわち、引出方向)に破断するこが防止される。第3のCNTドローイングフィルム95cに係る上記引出力F1、保持力F2および破断荷重F3の範囲および測定方法は、上述の第2のCNTドローイングフィルム95bに係る引出力F1、保持力F2および破断荷重F3の範囲および測定方法と同じである。
【0142】
図36に示す状態では、第3下切断要素279は、第3のCNTドローイングフィルム95cの引出方向において、第1上切断要素271と回収部23との間に位置する。換言すれば、第1上切断要素271は、当該引出方向において第3基板92cと第3下切断要素279との間に位置する。第3下切断要素279に保持されている第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第1上切断要素271に保持されている第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と、上下方向に重なる位置に位置する。第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の下側に位置する。
【0143】
第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きは、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部の向きと反対である。第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きとは、上述のように、回収部23から第1のCNTドローイングフィルム95aの端部に向かって第1のCNTドローイングフィルム95aが延びる向きであり、図36中では略左向きである。第3のCNTドローイングフィルム95cの端部の向きとは、第3のCNTアレイ91cから第3のCNTドローイングフィルム95cの端部に向かって第3のCNTドローイングフィルム95cが延びる向きであり、図36中では略右向きである。
【0144】
続いて、図37に示すように、第3下切断要素279が上昇し、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部に積層されて接合される(ステップS57)。換言すれば、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部と、積層フィルム960のうち第1のCNTドローイングフィルム95aの端部とが貼り合わされる。なお、第1のCNTドローイングフィルム95aと第3のCNTドローイングフィルム95cとの積層は、第1上切断要素271が下降することにより実現されてもよい。
【0145】
ステップS57が終了すると、図38に示すように、第1上切断要素271が第1のCNTドローイングフィルム95aから上方へと離間し、第3下切断要素279が第3のCNTドローイングフィルム95cから下方へと離間する。第1上切断要素271による第1のCNTドローイングフィルム95aの保持解除、および、第3下切断要素279による第3のCNTドローイングフィルム95cの保持解除の際には、例えば、接合補助部26の治具261により第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第3のCNTドローイングフィルム95cが押さえられることが好ましい。あるいは、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第3のCNTドローイングフィルム95cに対してガスが噴射されてもよい。
【0146】
また、好ましくは、第1のCNTドローイングフィルム95aと第3のCNTドローイングフィルム95cとの接合部951の上下において、接合補助部26の治具261が、接合部951の主面に接触しつつ略水平に往復移動される。これにより、接合部951の第1のCNTドローイングフィルム95aと第3のCNTドローイングフィルム95cとが互いに対して付勢されるように撫でつけられる(ステップS58)。その結果、第1のCNTドローイングフィルム95aと第3のCNTドローイングフィルム95cとの接合強度が増大する。
【0147】
ステップS58では、接合部951を挟んで対向して配置された2つの治具261がそれぞれ、各治具261の中心軸を中心として回転しつつ、接合部951を上下から撫でつけてもよい。また、2つの治具261が互いに反対向き(すなわち、時計回りと反時計回り)に回転しつつ、互いに対して上下方向に付勢されることにより、2つの治具261の間に挟まれた接合部951が厚密されてもよい。この場合、2つの治具261は、接合部951を厚密する2つのローラとして働く。成形体製造装置1bでは、当該2つのローラにより第1のCNTドローイングフィルム95a、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cのうち、接合部951以外の部位が挟まれて厚密されてもよい。後述するステップS78においても同様である。
【0148】
上述のように、第1のCNTドローイングフィルム95a、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cを取り扱う治具261は、黒鉛ロッド等の炭素質治具であるため、治具261に対する第1のCNTドローイングフィルム95a、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cの付着力を低減することができる。したがって、第1のCNTドローイングフィルム95a、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cからの治具261の離間を容易に行うことができる。
【0149】
ステップS58が終了すると、回収部23が再度駆動され、図39に示すように、第2のCNTアレイ91bおよび第3のCNTアレイ91cから、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cが並行して引き出される。そして、第2のCNTドローイングフィルム95bと第3のCNTドローイングフィルム95cとが積層されて接合されることにより、長尺状の積層フィルム960の形成が再開される。形成された積層フィルム960は、回収ローラ231により巻き取られる(ステップS59)。長尺状の積層フィルム960は、上述のカーボンナノチューブ成形体であり、第1のCNTドローイングフィルム95a、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cは、カーボンナノチューブ成形体を形成するための前駆体である。
【0150】
図40は、第1のCNTドローイングフィルム95aと第3のCNTドローイングフィルム95cとの接合部951近傍を示す平面図である。積層フィルム960の接合部951においても、上述の接続フィルム950と略同様に、第3のCNTドローイングフィルム95cの端縁952cは、積層フィルム960の長手方向(すなわち、図40中の左右方向)に対して傾斜する方向に延びる。端縁952cが延びる方向と積層フィルム960の長手方向との成す角度は、例えば15°~60°であり、図40に示す例では約45°である。また、接合部951では、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aは、第3のCNTドローイングフィルム95cの端縁952cに対して略平行な方向に延びる。
【0151】
成形体製造装置1bでは、上述のステップS52において切断された第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が、第3のCNTドローイングフィルム95cが接合されるよりも前に、第2のCNTドローイングフィルム95bに積層されて接合されてもよい。図41は、この場合の積層フィルム960の流れのうち、ステップS51よりも後の工程を示す図である。
【0152】
具体的には、ステップS51の積層フィルム960の形成が一旦停止されると、図33に代えて、図42に示すように、第1のCNTアレイ91aと回収部23との間において、第1のCNTドローイングフィルム95aが第1カッター24により切断される。回収部23から第1基板92aの方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1下切断要素276により保持される(ステップS71)。また、第1のCNTアレイ91aから回収部23の方へと延びる第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第1上切断要素271により保持される。そして、図43に示すように、第1基板92aが第1基板保持部21から取り外されて除去される(ステップS72)。
【0153】
続いて、第1下切断要素276が上昇して第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が第2のCNTドローイングフィルム95bに積層されて接合される(ステップS73)。換言すれば、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が、第2のCNTドローイングフィルム95bの下面に貼り合わされる。なお、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と第2のCNTドローイングフィルム95bとの積層は、第2のCNTドローイングフィルム95bが下降することにより実現されてもよい。
【0154】
ステップS73が終了すると、図44に示すように、第1下切断要素276が第1のCNTドローイングフィルム95aから下方へと離間する。第1下切断要素276による第1のCNTドローイングフィルム95aの保持解除の際には、例えば、接合補助部26の治具261(図29参照)により第1のCNTドローイングフィルム95aが押さえられることが好ましい。あるいは、第1のCNTドローイングフィルム95aに対してガスが噴射されてもよい。
【0155】
次に、ステップS54~S57(図30参照)と同様に、第3基板92cの第3のCNTアレイ91cから、第3のCNTドローイングフィルム95cが引き出されて準備される(ステップS74)。そして、図45に示すように、第3カッター29により第3のCNTドローイングフィルム95cが切断され、第3のCNTアレイ91cから引出治具275および回収部23の方へと延びる第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が、第3下切断要素279により保持される。また、引出治具275から第3基板92cの方へと延びる第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第3上切断要素278により保持される(ステップS75)。その後、図46に示すように、第3下切断要素279が第3基板92cから離れる方向に略水平に相対移動されることにより、第3基板92c上の第3のCNTアレイ91cから第3のCNTドローイングフィルム95cが略水平に引き出される(ステップS76)。
【0156】
続いて、図47に示すように、第3下切断要素279が上昇し、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が、積層フィルム960のうち第1のCNTドローイングフィルム95aの端部に積層されて接合される(ステップS77)。ステップS77では、図48に示すように、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部近傍において、第2のCNTドローイングフィルム95bに積層されて接合されてもよい。すなわち、ステップS77では、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部近傍において、積層フィルム960に積層されて接合される。
【0157】
ステップS77が終了すると、第3下切断要素279が第3のCNTドローイングフィルム95cから下方へと離間する。第3下切断要素279による第3のCNTドローイングフィルム95cの保持解除の際には、例えば、接合補助部26の治具261(図29参照)により第3のCNTドローイングフィルム95cが押さえられることが好ましい。あるいは、第3のCNTドローイングフィルム95cに対してガスが噴射されてもよい。
【0158】
また、好ましくは、接合補助部26の治具261が、第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960との接合部951の主面に接触しつつ往復移動される。これにより、接合部951の第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960(すなわち、第1のCNTドローイングフィルム95aまたは第2のCNTドローイングフィルム95b)とが互いに対して付勢されるように撫でつけられる(ステップS78)。その結果、積層フィルム960と第3のCNTドローイングフィルム95cとの接合強度が増大する。
【0159】
ステップS78が終了すると、回収部23が再度駆動され、第2のCNTアレイ91bおよび第3のCNTアレイ91cから、第2のCNTドローイングフィルム95bおよび第3のCNTドローイングフィルム95cが並行して引き出される。そして、第2のCNTドローイングフィルム95bと第3のCNTドローイングフィルム95cとが積層されて接合されることにより、長尺状の積層フィルム960の形成が再開される。形成された積層フィルム960は、回収ローラ231により巻き取られる(ステップS79)。
【0160】
以上に説明したように、第2の関連技術に係る積層フィルム960の製造方法は、カーボンナノチューブが配向集合した第1のCNTアレイ91aから引き出され、支持部材(すなわち、回収部23)に支持された第1のCNTドローイングフィルム95aを準備する工程(ステップS31)と、カーボンナノチューブが配向集合した第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bを準備する工程(ステップS32)と、第2のCNTアレイ91bから延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する工程(ステップS33)と、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を、第1のCNTアレイ91aと回収部23との間において第1のCNTドローイングフィルム95aに積層して接合する工程(ステップS35)と、第1のCNTドローイングフィルム95aと第2のCNTドローイングフィルム95bとの接合部と、第1のCNTアレイ91aとの間において、第1のCNTドローイングフィルム95aを切断する工程(ステップS52)と、を備える。
【0161】
当該製造方法は、さらに、ステップS35とステップS52との間において、第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95bを第1のCNTアレイ91aおよび第2のCNTアレイ91bから引き出して積層フィルム960を形成する工程(ステップS51)と、カーボンナノチューブが配向集合した第3のCNTアレイ91cから引き出された第3のCNTドローイングフィルム95cを準備する工程(ステップS54,S74)と、ステップS52よりも後に、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部近傍において、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部を積層フィルム960に積層して接合する工程(ステップS57,S77)と、を備える。
【0162】
これにより、複数のCNTドローイングフィルムが積層された長尺状の積層フィルム960を得ることができる。また、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が接合される接合部951において、積層フィルム960の特性変化を抑制することができる。さらに、上記製造方法では、第1基板92a上の第1のCNTアレイ91aのうち引出方向の後端部が、積層フィルム960の形成に使用されない。このように、第1基板92a上から引き出される際に密度にばらつきが生じる可能性のある第1のCNTアレイ91aの後端部が、積層フィルム960に含まれることを防止することにより、積層フィルム960の特性変化をさらに抑制することができる。
【0163】
上述のステップS57では、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きと第3のCNTドローイングフィルム95cの端部の向きとを反対にした状態で、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部に積層されて接合される。これにより、第1のCNTドローイングフィルム95aと第3のCNTドローイングフィルム95cとの接合部951(すなわち、積層フィルム960において、周囲の部位よりも単位面積当たりのカーボンナノチューブの量が多い部位)の長手方向における長さを短くすることができる。その結果、接合部951における特性変化を抑制しつつ、長尺状の積層フィルム960を好適に得ることができる。
【0164】
上述のように、好ましくは、ステップS55,S75において、第3のCNTアレイ91cから延びる第3のCNTドローイングフィルム95cを第3カッター29により切断し、切断により形成された第3のCNTドローイングフィルム95cの端部を第3カッター29により保持する。これにより、第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960との接合後に、第3のCNTドローイングフィルム95cの保持の解除(すなわち、第3のCNTドローイングフィルム95cの第3カッター29からの離間)を容易に行うことができる。また、密度にばらつきが生じる可能性のある第3のCNTドローイングフィルム95cの前端部(すなわち、第3のCNTドローイングフィルム95cの形成開始時に保持されていた端部)が、積層フィルム960に含まれることを防止することにより、積層フィルム960の特性変化をさらに抑制することができる。
【0165】
上述のように、第3カッター29は、第3のCNTドローイングフィルム95cの両主面にそれぞれ対向するとともに、第3のCNTドローイングフィルム95cの長手方向における位置が異なる一対の第3切断要素(すなわち、第3上切断要素278および第3下切断要素279)を備えることが好ましい。また、好ましくは、ステップS55,S75において、当該一対の第3切断要素が互いに近づき、第3のCNTドローイングフィルム95cを挟んで、第3のCNTドローイングフィルム95cの両主面に垂直な方向において重なることにより、第3のCNTドローイングフィルム95cが切断され、第3のCNTドローイングフィルム95cの上記端部は、一対の第3切断要素のうち一方の第3切断要素(例えば、第3下切断要素279)により保持される。このように、第3のCNTドローイングフィルム95cの切断と、切断後の第3のCNTドローイングフィルム95cの端部の保持とを1つの動作にて行うことにより、長尺状の積層フィルム960の製造を容易とすることができる。
【0166】
上述のように、積層フィルム960の製造方法は、ステップS55,S75とステップS57,S77との間において、第3カッター29を第3のCNTアレイ91cに対して相対移動することにより、第3のCNTドローイングフィルム95cを第3のCNTアレイ91cから引き出す工程(ステップS56,S76)をさらに備えることが好ましい。また、好ましくは、第3のCNTアレイ91cから第3のCNTドローイングフィルム95cを引き出す力(すなわち、引出力F1)は、第3のCNTドローイングフィルム95cの引出方向における第3カッター29による第3のCNTドローイングフィルム95cの保持力F2よりも小さい。これにより、第3のCNTドローイングフィルム95cが第3カッター29から意図に反して脱落することを防止し、第3のCNTドローイングフィルム95cを第3のCNTアレイ91cから好適に引き出すことができる。
【0167】
上述のように、図40に示す例では、第3のCNTドローイングフィルム95cの端縁952cは、積層フィルム960の長手方向に対して傾斜する方向に延びており、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aは、第3のCNTドローイングフィルム95cの端縁952cと平行に延びる。これにより、第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960との接合部951において、積層フィルム960の特性(例えば、電気抵抗)が急激に変化することを抑制することができる。また、積層フィルム960の強度が接合部951において低下することを抑制することができ、積層フィルム960の長手方向における部位毎の破断荷重の均一性を向上することができる。
【0168】
上述のように、好ましくは、第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960とを接合する際に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960との接合部951を撫でつける。これにより、接合部951が治具261に付着することを抑制しつつ、接合部951において第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960とを馴染ませて接合強度を増大することができる。
【0169】
上述のように、好ましくは、第3のCNTドローイングフィルム95cと積層フィルム960とを接合した後に、炭素質治具(すなわち、治具261)により第3のCNTドローイングフィルム95cを押さえて、または、ガス噴射により、第3のCNTドローイングフィルム95cの保持を解除する。これにより、第3のCNTドローイングフィルム95cの保持解除を容易に行うことができる。また、炭素質治具である治具261を用いる場合、第3のCNTドローイングフィルム95cの治具261に対する付着を抑制することができる。
【0170】
上述の成形体製造装置1,1a,1b、接続フィルム950および積層フィルム960の製造方法では、様々な変更が可能である。
【0171】
例えば、接合補助部26の治具261は、炭素質材料以外の様々な材料(例えば、金属)により形成されてもよい。
【0172】
第1カッター24では、第1のCNTドローイングフィルム95aのうち接続フィルム950および積層フィルム960を構成しない部位を保持する第1切断要素の端縁は、必ずしも鋭利(すなわち、細線状)である必要はない。第2カッター25でも同様に、第2のCNTドローイングフィルム95bのうち接続フィルム950および積層フィルム960を構成しない部位を保持する第2切断要素の端縁は、必ずしも鋭利である必要はない。第3カッター29でも同様に、第3のCNTドローイングフィルム95cのうち接続フィルム950および積層フィルム960を構成しない部位を保持する第3切断要素の端縁は、必ずしも鋭利である必要はない。
【0173】
第1カッター24による第1のCNTドローイングフィルム95aの保持が解除される際には、必ずしも治具261による押圧やガス噴射が行われる必要はなく、例えば、第1カッター24を単に移動させることにより、第1のCNTドローイングフィルム95aの保持が解除されてもよい。第2カッター25による第2のCNTドローイングフィルム95bの保持解除、および、第3カッター29による第3のCNTドローイングフィルム95cの保持解除についても同様である。
【0174】
第1のCNTドローイングフィルム95aを支持する上述の支持部材は、必ずしも回収部23である必要はない。例えば、回収部23と第1基板92aとの間に、回収部23とは別の支持部材が設けられ、当該支持部材により第1のCNTドローイングフィルム95aが支持されてもよい。また、回収部23とは別の当該支持部材により、第1カッター24による切断後の第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が保持されてもよい。
【0175】
ステップS12では、必ずしも第1カッター24により第1のCNTドローイングフィルム95aの端部を保持する必要はなく、第1カッター24により切断された第1のCNTドローイングフィルム95aの端部が、第1カッター24とは別の保持部材により保持されてもよい。ステップS36,S52,S71においても同様である。第1カッター24は、必ずしも一対の第1切断要素を備える必要はなく、他の様々な構造を有していてもよい。
【0176】
ステップS15では、必ずしも第2カッター25により第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する必要はなく、第2カッター25により切断された第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が、第2カッター25とは別の保持部材により保持されてもよい。ステップS33においても同様である。第2カッター25は、必ずしも一対の第2切断要素を備える必要はなく、他の様々な構造を有していてもよい。
【0177】
ステップS55では、必ずしも第3カッター29により第3のCNTドローイングフィルム95cの端部を保持する必要はなく、第3カッター29により切断された第3のCNTドローイングフィルム95cの端部が、第3カッター29とは別の保持部材により保持されてもよい。ステップS75においても同様である。第3カッター29は、必ずしも一対の第3切断要素を備える必要はなく、他の様々な構造を有していてもよい。
【0178】
ステップS17では、必ずしも第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第2のCNTドローイングフィルム95b端部同士が接合される必要はない。例えば、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部と第2のCNTアレイ91bとの間において第2のCNTドローイングフィルム95bに接合されてもよい。この場合、第2のCNTドローイングフィルム95bの端部は、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と回収部23との間において第1のCNTドローイングフィルム95aに接合される。
【0179】
ステップS57では、必ずしも第1のCNTドローイングフィルム95aおよび第3のCNTドローイングフィルム95c端部同士が接合される必要はない。例えば、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部は、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部と第3のCNTアレイ91cとの間において第3のCNTドローイングフィルム95cに接合されてもよい。この場合、第3のCNTドローイングフィルム95cの端部は、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部と回収部23との間において第1のCNTドローイングフィルム95aに接合される。
【0180】
ステップS15では、必ずしも第2のCNTドローイングフィルム95bを切断して端部を保持する必要はなく、第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bの端部をそのまま保持し、ステップS17において当該端部を第1のCNTドローイングフィルム95aに接合してもよい。ステップS33,S35においても同様である。
【0181】
ステップS55では、必ずしも第3のCNTドローイングフィルム95cを切断して端部を保持する必要はなく、第3のCNTアレイ91cから引き出された第3のCNTドローイングフィルム95cの端部をそのまま保持し、ステップS57において当該端部を積層フィルム960の第1のCNTドローイングフィルム95aに接合してもよい。ステップS75,S77においても略同様である。
【0182】
ステップS20では、治具261による接合部951の撫でつけに代えて、あるいは、当該撫でつけに加えて、接合部951に対して有機溶媒等のミストが噴霧されることにより、接合部951における接合強度が増大されてもよい。また、ガス噴射等の非接触式の方法により、接合部951における接合強度が増大されてもよい。なお、接合部951の接合強度が十分である場合、治具261による撫でつけやミストの噴霧等は省略されてもよい。ステップS41,S58,S78においても同様である。
【0183】
図17に示す例では、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952a、および、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bは、接続フィルム950の長手方向に対して傾斜する方向に延びるが、当該長手方向に対して略垂直な方向に延びていてもよい。また、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aと、第2のCNTドローイングフィルム95bの端縁952bとは、必ずしも平行である必要はなく、互いに対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0184】
図40に示す例では、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952a、および、第3のCNTドローイングフィルム95cの端縁952cは、積層フィルム960の長手方向に対して傾斜する方向に延びるが、当該長手方向に対して略垂直な方向に延びていてもよい。また、第1のCNTドローイングフィルム95aの端縁952aと、第3のCNTドローイングフィルム95cの端縁952cとは、必ずしも平行である必要はなく、互いに対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0185】
の実施の形態に係る接続フィルム950の製造方法では、ステップS12は省略されてもよい。また、ステップS17では、第1のCNTドローイングフィルム95aの端部の向きと第2のCNTドローイングフィルム95bの端部の向きとは、必ずしも反対である必要はなく、当該端部の向きは様々に変更されてよい。第1の関連技術に係る接続フィルム950の製造方法では、ステップS36は省略されてもよい。第2の関連技術に係る積層フィルム960の製造方法では、ステップS52は省略されてもよい。また、第および第2の関連技術のステップS35では、第1のCNTドローイングフィルム95a上において第2のCNTドローイングフィルム95bの端部が接合される位置は適宜変更されてよい。
【0186】
すなわち、上述の接続フィルム950および積層フィルム960の製造方法は、カーボンナノチューブが配向集合した第1のCNTアレイ91aから引き出され、支持部材(すなわち、回収部23)に支持された第1のCNTドローイングフィルム95aを準備する工程と、カーボンナノチューブが配向集合した第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bを準備する工程と、第2のCNTアレイ91bから延びる第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する工程と、第2のCNTドローイングフィルム95bを第1のCNTドローイングフィルム95aに積層して接合する工程と、を備える。これにより、上記と略同様に、接合部951における特性変化を抑制しつつ、長尺状の接続フィルム950および積層フィルム960を得ることができる。
【0187】
また、成形体製造装置1は、カーボンナノチューブが配向集合した第1のCNTアレイ91aから引き出された第1のCNTドローイングフィルム95aを支持する支持部材(すなわち、回収部23)と、カーボンナノチューブが配向集合した第2のCNTアレイ91bから引き出された第2のCNTドローイングフィルム95bの端部を保持する保持部材(すなわち、第2カッター25)と、当該保持部材を第1のCNTドローイングフィルム95aに対して相対的に移動し、第2のCNTドローイングフィルム95bを第1のCNTドローイングフィルム95aに積層して接合する駆動機構(すなわち、要素駆動機構)と、を備える。これにより、上記と略同様に、接合部951における特性変化を抑制しつつ、長尺状の接続フィルム950および積層フィルム960を得ることができる。成形体製造装置1a,1bについても同様である。
【0188】
上記製造方法により製造されるカーボンナノチューブ成形体は、上述の接続フィルム950および積層フィルム960には限定されず、様々な形状を有するものであってよい。例えば、上記製造方法により製造された接続フィルム950または積層フィルム960を線状(すなわち、糸状)に成形することにより、長尺状のカーボンナノチューブワイヤが製造されてもよい。
【0189】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0190】
1,1a,1b 成形体製造装置
23 回収部
24 第1カッター
25 第2カッター
91 CNTアレイ
91a 第1のCNTアレイ
91b 第2のCNTアレイ
91c 第3のCNTアレイ
95 CNTドローイングフィルム
95a 第1のCNTドローイングフィルム
95b 第2のCNTドローイングフィルム
95c 第3のCNTドローイングフィルム
261 治具
271 第1上切断要素
272 下切断要素
274 第2上切断要素
276 第1下切断要素
277 第2下切断要素
950 接続フィルム
951 接合部
952a (第1のCNTドローイングフィルムの)端縁
952b (第2のCNTドローイングフィルムの)端縁
952c (第3のCNTドローイングフィルムの)端縁
960 積層フィルム
S11~S21,S31~S42,S51~S59,S71~S79 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48