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特許7235654細菌株の複合混合物を用いた皮膚マイクロバイオームの組成を変化させる方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】細菌株の複合混合物を用いた皮膚マイクロバイオームの組成を変化させる方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20230301BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20230301BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P17/10
A61P17/08
A61Q19/00
A61K8/99
A61K9/06
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/38
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019521785
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2017001481
(87)【国際公開番号】W WO2018073651
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】62/536,761
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/410,329
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519142398
【氏名又は名称】エス-バイオメディック・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】S-Biomedic NV
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ペーツォルト
(72)【発明者】
【氏名】マルク・グエル
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/172196(WO,A1)
【文献】Plos One, 2014, Vol.9 No.8, Article.e104199(p.1-8)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の異なる生存アクネ菌(P. acnes)細菌株を含む、対象における皮膚の外見を改善するための組成物であって、アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株を含前記組成物が、前記対象の皮膚に投与される、組成物。
【請求項2】
2以上の異なる生存アクネ菌(P. acnes)細菌株を含む、対象における健全な皮膚を維持するための組成物であって、アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株を含み、前記組成物が、前記対象の皮膚に投与される、組成物。
【請求項3】
2以上の異なる生存アクネ菌(P. acnes)細菌株を含む、ざ瘡、および脂性肌から成る群から選択される、対象における状態を処置または予防するための組成物であって、アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株を含み、前記組成物が、前記対象の皮膚に投与される、組成物。
【請求項4】
-担体;
-緩衝剤;
-増粘剤;および/または
-ペプトン、
を、さらに含む、請求項1-3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
増粘剤がヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ゴム、カオリン、水和ケイ酸アルミニウム、フュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチレングリコールモノステアレート、またはアルギン酸ナトリウムを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
ペプトンがカゼイン由来のトリプシン消化ペプトンである、請求項またはに記載の組成物。
【請求項7】
ヒドロキシエチルセルロースがNATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
増粘剤の濃度が約2.5%など約1%~5%である、および/またはペプトンの濃度が約0.25%など約0.05%~1%である、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1mlあたり約10~10コロニー形成単位(CFU/ml)の各生存アクネ菌細菌株など、1mlあたり少なくとも10コロニー形成単位(CFU/ml)の各生存アクネ菌細菌株を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、または粉末の形態である、および/または前記組成物が2成分の分配システムの部分である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
-アクネ菌SLST A5型株;
-アクネ菌SLST F4型株;および/または
D1、H1、H2、H3、K1、K2、K4、K6、K9およびL1 SLST型株から成る群から選択される付加的アクネ菌細菌株、
をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
-アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株が組成物中にほぼ同等の濃度で存在する;
-アクネ菌SLST C3型株が他の生存アクネ菌細菌株より高い濃度で存在する;
-アクネ菌SLST C3型株が組成物中にアクネ菌SLST K8型株より低い濃度で存在する;
-組成物がアクネ菌SLST C3型株、アクネ菌SLST A5型株、アクネ菌SLST F4型株およびアクネ菌SLST K8型株を含み、場合により、各菌株の相対濃度がそれぞれ約55%、約30%、約10%および約5%である;
-組成物がリボタイプ6(RT6)アクネ菌株を含まない、および/またはアクネ菌(P. acnes)のファイロタイプIII株を含まない;および/または
-組成物が室温で少なくとも3か月安定である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株が前記組成物に唯一含まれるアクネ菌である、請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
対象における皮膚の外見を改善する方法における化粧品としての、請求項1、4-13のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記使用が前記対象の皮膚への請求項1、4-13のいずれか一項に記載の組成物の投与を含む、使用
【請求項15】
対象がヒト対象である、請求項14に記載の使用または請求項1-13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
対象が殺菌剤または抗生物質の処置のような標準的なざ瘡処置もまた受けるか、または以前に受けていたものである、請求項1-15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
2以上の異なる凍結乾燥させた生存アクネ菌(P. acnes)細菌株を収容した容器を含む、対象における皮膚の外見を改善するための、対象における健全な皮膚を維持するための、またはざ瘡、および脂性肌から成る群から選択される、対象における状態を処置または予防するためのキットであって、ここで、前記凍結乾燥させた生存細菌株がアクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株を含前記キットが、前記対象の皮膚に投与される、キット。
【請求項18】
殺菌剤または抗生物質をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は合衆国法典第35章、第119条(e)のもと、"METHODS AND COMPOSITIONS FOR CHANGING THE COMPOSITION OF THE SKIN MICROBIOME USING COMPLEX MIXTURES OF BACTERIAL STRAINS"と題された、2016年10月19日に出願された米国仮出願番号第62/410,329号、および"METHODS AND COMPOSITIONS FOR CHANGING THE COMPOSITION OF THE SKIN MICROBIOME USING COMPLEX MIXTURES OF BACTERIAL STRAINS"と題された、2017年7月25日に出願された米国仮出願番号第62/536,761号の利益を主張するものであり、その全体を参照することにより各々の全体の開示を本明細書に包含させる。
【0002】
技術分野
本発明は皮膚マイクロバイオームを修飾するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
人体は極めて複雑かつ豊富な微生物群集の宿主である。これらの微生物は一般に無害であり、ビタミンを産生する、食物の消化に協力する、または免疫系を刺激することにより、健全な状態に寄与する。ヒト微生物叢は主に、皮膚の表面および深層、唾液および口腔粘膜、結膜ならびに消化管に生息する。
【0004】
ヒト微生物叢は、初めに腸内で、ヒトの健康および疾患における基本的な役割を有することが示された。皮膚は膨大な数の微生物によりコロニー形成され、その多くは有益または無害である。しかしながら、皮膚マイクロバイオームは皮膚の疾患状態において特定の組成を有し、これは健全な皮膚と比較して異なる。尋常性ざ瘡のような疾患は、マイクロバイオームの強力な変化と関連する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様は2以上の異なる生存アクネ菌(P. acnes)細菌株を含む皮膚への局所投与のための組成物に関し、ここで組成物はアクネ菌単一遺伝子座配列タイピング(SLST)C3型株および/またはアクネ菌SLST K8型株を含み、そして、組成物はペプトンをさらに含む。
【0006】
いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌SLST A5型株をさらに含む。いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌SLST F4型株をさらに含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、ペプトンの濃度は約0.05%~1%である。いくつかの実施態様において、ペプトンの濃度は約0.25%である。いくつかの実施態様において、ペプトンはカゼイン由来のトリプシン消化ペプトンである。
【0008】
いくつかの実施態様において、組成物は増粘剤をさらに含む。いくつかの実施態様において、増粘剤はヒドロキシエチルセルロースを含む。いくつかの実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースはNATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含む。いくつかの実施態様において、増粘剤の濃度は約1%~5%である。いくつかの実施態様において、ゲル化剤の濃度は約2.5%である。
【0009】
いくつかの実施態様において、各生存アクネ菌細菌株の濃度は少なくとも組成物の5%である。いくつかの実施態様において、アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株は組成物とほぼ同等の濃度で存在する。いくつかの実施態様において、アクネ菌SLST C3型株は他の生存アクネ菌細菌株より高い濃度で存在する。
【0010】
いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌SLST C3型株、アクネ菌SLST A5型株、アクネ菌SLST F4型株およびアクネ菌SLST K8型株を含み、ここで場合により各菌株の相対濃度はそれぞれ約55%、約30%、約10%および約5%である。
【0011】
いくつかの実施態様において、組成物は少なくとも1ミリリットルあたり10コロニー形成単位(CFU/ml)の各生存アクネ菌細菌株を含む。いくつかの実施態様において、組成物は約1ミリリットルあたり10~10コロニー形成単位(CFU/ml)の各生存アクネ菌細菌株を含む。
【0012】
いくつかの実施態様において、組成物はゲル剤、クリーム剤、軟膏剤またはローション剤の形態である。
【0013】
いくつかの実施態様において、組成物はD1、H1、H2、H3、K1、K2、K4、K6、K9およびL1 SLST型株から成る群から選択されるさらなるアクネ菌細菌株をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施態様において、本発明は対象に組成物を投与することを含む方法である。いくつかの実施態様において、対象はヒト対象である。いくつかの実施態様において、方法は皮膚の外見を改善することおよび/または健全な皮膚を維持することを含む。いくつかの実施態様において、方法はざ瘡、脂性肌、進行性黄斑メラニン減少症、ふけ症、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎および酒さから成る群から選択される状態を処置または予防することを含む。
【0015】
いくつかの実施態様において、組成物は、対象における皮膚の外見の改善および/または健全な皮膚の維持における使用のためのものである。いくつかの実施態様において、組成物は、対象におけるざ瘡、脂性肌、進行性黄斑メラニン減少症、ふけ症、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎および酒さから成る群から選択される状態の処置または予防における使用のためのものである。いくつかの実施態様において、対象はヒト対象である。
【0016】
本発明の態様は、対象における皮膚の外見を改善するおよび/または健全な皮膚を維持するための組成物の使用に関し、ここで組成物は2以上の異なる生存アクネ菌細菌株を含み、ここで組成物はアクネ菌SLST C3型株および/またはアクネ菌SLST K8型株を含み、そして組成物はペプトンをさらに含む。
【0017】
本発明のさらなる態様は、ざ瘡、脂性肌、進行性黄斑メラニン減少症、ふけ症、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎および酒さから成る群から選択される状態を処置または予防するための組成物の使用に関し、ここで組成物は2以上の異なる生存アクネ菌細菌株を含み、ここで組成物はアクネ菌SLST C3型株および/またはアクネ菌SLST K8型株を含み、そして組成物はペプトンをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌SLST A5型株をさらに含む。いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌SLST F4型株をさらに含む。いくつかの実施態様において、ペプトンの濃度は約0.05%~1%である。いくつかの実施態様において、ペプトンの濃度は約0.25%である。いくつかの実施態様において、ペプトンはカゼイン由来のトリプシン消化ペプトンである。いくつかの実施態様において、組成物は増粘剤をさらに含む。いくつかの実施態様において、増粘剤はヒドロキシエチルセルロースを含む。いくつかの実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースはNATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含む。いくつかの実施態様において、増粘剤の濃度は約1%~5%である。いくつかの実施態様において、ゲル化剤の濃度は約2.5%である。
【0019】
いくつかの実施態様において、各生存アクネ菌細菌株の濃度は少なくとも組成物の5%である。いくつかの実施態様において、アクネ菌SLST C3型株およびアクネ菌SLST K8型株は、組成物中でほぼ同等の濃度である。いくつかの実施態様において、アクネ菌SLST C3型株は、他の生存アクネ菌細菌株より高い濃度で存在する。いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌SLST C3型株、アクネ菌SLST A5型株、アクネ菌SLST F4型株、およびアクネ菌SLST K8型株を含み、ここで各菌株の相対濃度はそれぞれ、約55%、約30%、約10%および約5%である。いくつかの実施態様において、組成物は少なくとも1ミリリットルあたり10コロニー形成単位(CFU/ml)の各生存アクネ菌細菌株を含む。いくつかの実施態様において、組成物は約1ミリリットルあたり10~10コロニー形成単位(CFU/ml)の各生存アクネ菌細菌株を含む。いくつかの実施態様において、組成物はゲル剤、クリーム剤、軟膏剤またはローション剤の形態である。
【0020】
いくつかの実施態様において、組成物はD1、H1、H2、H3、K1、K2、K4、K6、K9およびL1 SLST型株から成る群から選択される付加的アクネ菌細菌株をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物はリボタイプ6(RT6)アクネ菌株を含まない。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物はファイロタイプIIIアクネ菌株を含まない。本明細書に記載のいくつかの方法において、組成物はリボタイプ6(RT6)アクネ菌株を含まない。本明細書に記載のいくつかの方法において、組成物はファイロタイプIIIアクネ菌株を含まない。本明細書に記載のいくつかの使用の実施態様において、組成物はリボタイプ6(RT6)アクネ菌株を含まない。本明細書に記載のいくつかの使用の実施態様において、組成物はファイロタイプIIIアクネ菌株を含まない。
【0022】
本発明の各々の限定は本発明の多様な実施態様を包含し得る。従って、任意の1つの要素または要素の組合せを含む本発明の各々の限定は、本発明の各々の態様に包含され得ると考えられる。本発明は、その適用を以下の記載において説明されるまたは図面において示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない。本発明は他の実施態様が可能であり、多様な方法で実施および実行できる。
【0023】
図面の簡単な説明
添付の図面は正確な比率であることを意図しない。図面において、いくつかの図において示される同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表される。明確性を目的として、全ての図面において全ての構成要素に符号付けしていない可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】RCM培地における種々のアクネ菌株のcis-9,cis-12 リノール酸の消費を示す。
図2】86時間振盪培養後のグルコース無添加培地における種々のアクネ菌株のtrans-10,cis-12 リノール酸異性体の濃度を示す。OD(600nm)により、濃度は生育に対して標準化される。
図3】種々の菌株における異性体濃度の経時変化を示す。
図4】接種後5日目または6日目の混合物におけるC3の相対量を示す。開始混合物中に高い割合で存在するとき、C3は優占菌株のままである。驚くべきことに、低い開始濃度で存在するとき、後期定常期においてC3の全体的割合は減少する。
図5】37℃でのRCM培地におけるC3、F4、C1およびK8菌株の増殖曲線を示す。
図6】37℃でのグルコース無添加PY培地におけるC3、F4、C1、K8菌株の、2菌株混合物(C3およびK8)および4菌株混合物(A5、C3、F4、およびK8)の増殖曲線を示す。
図7】RCM寒天培地上における増殖前および5日後のシーケンシングリードにより決定された菌株混合物中の種々のアクネ菌株の相対濃度の変化を示す。驚くべきことに、単離菌として使用したとき極めて増殖が遅いK8菌株は、菌株混合物において増殖の5日後に培地中の優占菌株となった。
図8図8Aはパイロット臨床試験において使用される投与スケジュールを示す。14対象を2群に分け、各群に異なる細菌製剤を与えた。図8Bはより規模の大きな臨床試験についての投与スケジュールを示す。
図9】14対象パイロット試験において、全ての対象の皮膚マイクロバイオームにおける9種の最も豊富な細菌の平均化した相対比を示す。
図10】受容者または非受容者として分類した対象の相対比を示す。
【0025】
図11図11Aおよび11Bは完全な細菌皮膚マイクロバイオーム内のアクネ菌の相対量を示す。図11Aはパイロット試験中の受容者および非受容者におけるアクネ菌集団の動的生育を示す。受容者群において、アクネ菌は初めに細菌皮膚マイクロバイオームの34%のみに存在した。BPO処置後、この値はさらに減少し、続いて細菌ゲルを使用した後に2倍近くまで増加した。アクネ菌集団は42日目に60%で安定化した。非受容者群における動態は同様であった。非受容者の基底状態はより高い40%のレベルで開始し、受容者群とは対照的に、42日目において集団における増加は顕著ではなかった。図11Bはアクネ菌の相対比を、データ点の広がりを示す箱ひげ図として示す。受容者群における1日目と42日目の差異は統計学的に高い関連性がある(p=0.001)が、受容者群は、42日目と1日目で類似した。
図12】箱ひげ図として表された非炎症性病変の数を示す。3組の箱ひげ図:全体;A2製剤;およびB4製剤を示す。統計的有意差についてのp値を図の下に示す。
図13】受容者および非受容者についての非炎症性病変の数を表す。両方の群について、減少は統計的に有意である。
図14】箱ひげ図として表された炎症性病変の数を示す。3組の箱ひげ図:全体;A2製剤;およびB4製剤を示す。
図15】受容者および非受容者についての炎症性病変を示す。
図16】受容者および非受容者についてのパイロット試験中の皮膚pHの進展を表す。
図17】対象の回答の平均値に基づいた対象数の分布を示す。
図18】15種の最も一般的に見られるアクネ菌株の相対量を示すヒートマップを示す。ヒートマップは新しい細菌を極めて良好に確立するとして分類された6名の対象の平均を示す。マイクロバイオームの組成における明確な変化が1日目と42日目の間で見られた。
図19】写真ベース比較の結果を示すグラフを示す。1日目~28日目までの結果を1日目~42日目までの結果と比較した。各写真は、対象が改善したならば+1、対象が変化していないとみられたならば0、そして対象が悪化したならば-1で評価された。平均は1日目~28日目:-0.17であり、1日目~28日目:0.29である。差異は統計的に有意な、p<0.05であった。
図20】患者評価概要の結果を示し、これは42日間の臨床試験中の炎症性および非炎症性病変の改善を示す。
図21】実験1.2に記載のように、アクネ菌K8およびC3菌株のpH制御培養物およびpH非制御(「酸性化」)培養物のOD600を示す。グラフは複製培養物からのデータを示す。
図22】実験1.2に記載のように、アクネ菌K8およびC3菌株のpH制御培養物およびpH非制御(「酸性化」)培養物の生菌数を示す。グラフは複製培養物からのデータを示す。
図23】実験1.3に記載のように、アクネ菌K8およびC3菌株のpH制御培養物およびpH非制御(「酸性化」)培養物のOD600を示す。
図24】実験2.2に記載のように、アクネ菌K8(左)およびC3(右)菌株の培養物の位相差顕微鏡像(500倍)を示す。
図25】製剤A2およびB4の投与後の種々のアクネ菌株の相対濃度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
皮膚マイクロバイオームの調節のための組成物および方法が提供される。健全な皮膚、例えばざ瘡のない皮膚の維持において使用するための、またはざ瘡を処置または予防するための、2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物が本明細書に記載される。2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、皮膚がマイクロバイオーム疾患状態を健全なマイクロバイオーム状態に戻すことを助け得る。
【0027】
いかなる理論にも縛られることを願わないが、アクネ菌は皮脂に本来存在するシグナル前駆体分子(リノール酸)を活性シグナル伝達分子(trans-10,cis-12 リノール酸)に変換し、これは、次に皮膚のアクネ菌コロニー形成に重要な皮脂分泌を刺激する。有意に、このシグナル伝達分子の産生は、ざ瘡の発症の現在の理解の種々の態様間の関連を提供する。
【0028】
実施例1に示すように、驚くべきことに、種々のアクネ菌株は種々のレベルのリノール酸イソメラーゼ活性またはtrans-10,cis-12 リノール酸濃度の最終閾値を有することが見出された。例えば、アクネ菌SLST A1型株は最も多くのtrans-10,cis-12 リノール酸異性体を産生することが発見され、一方でアクネ菌SLST C3、C1、F4、A5、K1、K2、K8およびL1型株は極めて少量のtrans-10,cis-12 リノール酸異性体の産生を示した。
【0029】
また驚くべきことに、いくつかの菌株は、菌株混合物中で増殖するときに、別個に増殖するときと異なる増殖パターンを示すことも見出された。例えば、アクネ菌SLST K8型株は別個ではゆっくりと増殖するが、菌株混合物中で増殖するとき、インキュベート5日後に優占菌株となることが発見された(図7)。従って、本発明の態様は本来ゆっくりと増殖し得るおよび本来は駆逐される可能性のある個々の菌株を含むときでさえ、有利な増殖性質を示す菌株混合物に関する。
【0030】
また驚くべきことに、菌株混合物が個々の菌株より高いレベルの防腐剤を許容できることもまた、ここに見出された。従って、本発明の態様は、皮膚に確立され得るおよび特定の化合物(例えば防腐剤を含む製品)への曝露に対して単一のアクネ菌と比較して改善した生存率を有するアクネ菌株の混合物に関する。この特徴は、個々の菌株と比較して、細菌混合物にヒト対象の皮膚における確立および長期持続性について予想外の利点を提供する。
【0031】
驚くべきことに、2以上の生存アクネ菌株の2つの異なる製剤を用いて、生存アクネ菌株の投与がざ瘡を有する対象における非炎症性病変の相当な減少をもたらし得ることもまた、ここに示される。実施例5に記載のパイロット臨床試験において、本明細書に記載の製剤の投与後、対象の85%が、ざ瘡に関連する症状の改善を報告した。
【0032】
本発明は、その適用を以下の記載において説明されるまたは図面において示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない。本発明は他の実施態様が可能であり、多様な方法で実施および実行できる。また、本明細書で使用される表現および用語は説明を目的とするものであり、限定するものと理解されるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」およびそれらの変化形は、その前に挙げられた項目およびその同等物ならびにさらなる項目を包含することを意味する。
【0033】
本発明の態様はマイクロバイオームに関する。本明細書において使用される「マイクロバイオーム」は、身体に生息する全ての微生物を示す。ヒトマイクロバイオームはヒトの健康および疾患における基本的な役割を有する(Consortium, 2012; NIH HMP Working Group et al., 2009)。次世代シーケンシング(NGS)技術の開発は、かつてない深度および分解能での微生物群集の研究を可能にした(Human Microbiota issue, Nature 2012を参照)。10,000を超える異なる細菌株がヒト身体にコロニー形成し、平均的ヒト身体にはヒト細胞より10倍多くの細菌が存在する。近年の研究により、体内の細菌群集の組成はヒト身体の健康と密接に結びついていることが示された(Belkaid and Segre, 2014; Consortium, 2012; Zhao, 2010)。結果として、マイクロバイオームの乱れ(distortions)は多様な疾患に関連する。
【0034】
腸マイクロバイオーム、および腸マイクロバイオームの標的操作のための方法は詳細に調査されている(Dore and Blottiere, 2015)。このような治療法の例は、「便移植」の助けを借りた抗生物質耐性細菌クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の処置である(van Noodら, 2013; Olle, 2013)。
【0035】
近年、研究者らは皮膚マイクロバイオームの調査を開始した(BelkaidおよびSegre, 2014; Ohら、2014)。皮膚は膨大な数の微生物によりコロニー形成され、それらの多くは有益または無害である(GriceおよびSegre、2011)。しかしながら、尋常性ざ瘡のような疾患はマイクロバイオームの強力な変化と関連する(Bek-Thomsenら、2008; Holmes、2013; Kongら、2012)。特に、ざ瘡はヒト皮膚マイクロバイオームの乱れと関連すると考えられる(Fitz-Gibbonら、2013)。この乱れは皮膚細菌アクネ菌の特定のサブセットにより引き起こされると考えられる(LomholtおよびKilian、2010)。
【0036】
本明細書において、組成物および方法は、皮膚マイクロバイオームの乱れに端を発するまたはそれにより影響される皮膚障害に対する処置法を開発するために、皮膚マイクロバイオームの知識を利用する。
【0037】
ざ瘡
本明細書において使用される「尋常性ざ瘡」および「ざ瘡」は、相互交換可能に使用され、世界中で何百万人もの人々に影響を与え、特に十代の人々に多い皮膚状態を示す。ざ瘡はしばしば、皮膚における炎症性および非炎症性病変の形成と関連する。いかなる理論にも縛られることを願わないが、ざ瘡は、少なくとも一部、詰まりおよび/または炎症を起こした毛嚢と関連し得る。ざ瘡はヒト皮膚マイクロバイオームの乱れと関連すると考えられる。この乱れは皮膚細菌の特定菌株であるアクネ菌により引き起こされ得る(Fitz-Gibbonら、2013; Holmes, 2013; LomholtおよびKilian, 2010)。
【0038】
ざ瘡の発症は脂腺からの皮脂分泌の開始と関連する(Makrantonakiら、2011;Zouboulis, 2004)。また、アクネ菌の集団密度は産生される皮脂の量と直接関連する(Kearneyら、1984; Kingら、1982; Mourelatosら、2007)。しかしながら、アクネ菌の存在と疾患であるざ瘡の間の明確な分子的繋がりは、現在まで確立するされていない。これは、少なくとも一部は、大部分の成人の皮膚がアクネ菌によりコロニー形成されるが、これらの成人の多くでざ瘡の症状が発症しないという事実のためである。ざ瘡が発症するためには、皮脂の体積および組成における変化に付随する炎症反応が引き起こされなければならない(Pappasら、2009)。
【0039】
現在、ざ瘡についての標準的な処置はマクロライドおよび/またはテトラサイクリン系抗生物質を用いた処置のような長期の抗生物質処置、またはイソトレチノインの全身使用である(Bersonら、2003)。これらの処置は強力な副作用および高い再発率を示す。例えば、イソトレチノインは皮膚刺激を引き起こし、催奇形性作用(先天的欠損症を含む)もまた有する(McLane, 2001)。さらに、イソトレチノインを用いた再発率もまた好ましくなく、40%を超える(Azoulayら、2007)。イソトレチノインは皮脂産生量を減少させ、それにより間接的に皮膚の細菌密度を減少させることが示しされている(Kingら、1982)。最近数十年間は抗生物質が一般的な処置であるが、1以上の抗生物質に耐性である細菌株の数が劇的に増加している(Leyden, 2001;Rossら、2001)。
【0040】
ざ瘡処置の別の群は、市販(OTC)製品および化粧品を含む。一般に使用されるOTC製品は、過酸化ベンゾイル(例えばBenzaknen、Galderma S.A.,ローザンヌ、スイス、およびAknefug、Dr.August Wolff GmbH&Co.KG Arzneimittel、ビーレフェルト、ドイツ)およびサリチル酸を含む広帯域殺菌剤である。さらに、効果が限定的なまたは証明されていない数多くの天然製品ラインが存在する。
【0041】
ざ瘡のようなマイクロバイオームの乱れに関連する皮膚障害についての現在の治療法は効果が低いか、または重篤な副作用を伴う(McLane, 2001;Tripathiら、2013)。通常、ざ瘡を有する対象の皮膚は、抗生物質またはホルモン剤のような古典的処置中に改善する。しかしながら、対象はほとんどの場合、処置の終了後に再発する。イソトレチノインは約41%の再発率を有する(Azoulayrら、2007)。従って、対象は有益な効果を維持するために長期の処置が必要とされる。この極めて高い再発率は、治療停止後のマイクロバイオームによる皮膚のコロニー再形成により説明できる。
【0042】
本明細書に記載の組成物および方法は、顕著な副作用を伴わず、再発を予防するざ瘡の効果的な処置についての満たされない需要に取り組む。本明細書に記載の新規なアプローチは健全なマイクロバイオームの移植を含み得る。驚くべきことに、ざ瘡の原因に含まれると考えられるのと同じ細菌種であるアクネ菌株が、ざ瘡を処置または予防するために、またはざ瘡が存在しない状態で皮膚を維持するために使用され得る。顕著な副作用を伴わない、改善した皮膚状態を提供し得る、2以上の生存細菌株を含む組成物が本明細書に記載される。本明細書に記載の組成物中の生存細菌株は、アクネ菌細菌株である。
【0043】
いくつかの実施態様において、組成物は化粧品である。本明細書において使用される「化粧品」は、外見を向上させることを意図する製品を示す。1以上の生存細菌株を含む本明細書に記載の化粧組成物はまた「薬用化粧品」とも称され得る(Draelos, 2009)。
【0044】
本発明の態様は、2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物を対象の皮膚に単独で、他の治療法と組み合わせて、または別の治療法の後に投与することに関する。いくつかの態様において、2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、皮膚がマイクロバイオーム疾患状態から健全なマイクロバイオーム状態へ回復するのを助け得る。いくつかの実施態様において、対象の皮膚は抗生物質、殺菌剤またはホルモン剤のような標準的なざ瘡治療法により既に処置されている。本明細書に記載の2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、ざ瘡についての標準的な処置に対する補完的回復方法として使用され、2以上の生存アクネ菌細菌株を含む該組成物により、抗生物質処置後のざ瘡の再発率を減少させることができる。例えば、2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は対象の皮膚からその天然細菌の大部分が除去されたときである抗生物質または殺菌処置後に使用され得る。組成物中の生存細菌は、病原性細菌株と置き換わり、多種の、健全なおよびバランスのとれた皮膚マイクロバイオームが回復するのを助け得る。従って、いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、皮膚から病原性細菌株を除菌し、生存アクネ菌細菌を皮膚に加えて健全な皮膚マイクロバイオームを作ることを含む。
【0045】
本明細書に記載の2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、個体の皮脂の産生量の減少または増加に使用し得る。本明細書に記載の2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物はまた、ろ胞および脂腺においてtrans-10,cis-12 リノール酸を産生し、それにより脂腺の環境へ活性化合物を送達するために使用され得る。これらの方法はtrans-10,cis-12 リノール酸の標準的局所適用に関連する問題を回避する。
【0046】
本明細書に記載の2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物はまた、皮膚における皮脂産生を増加または減少させる細菌株の皮膚への提供により、皮膚における細菌密度を増加または減少させ、それにより間接的に細菌密度を変化させるために使用され得る。
【0047】
本明細書に記載の2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物はまた、皮脂産生を変化させる生存細菌株を皮膚に投与することにより、他の細菌種と比較してまたは真菌類またはダニ類のような微生物叢の他の構成要素と比較して、選択細菌種の比を修飾し、それにより皮膚におけるアクネ菌の細菌密度を間接的に変化させるために使用され得る。
【0048】
本明細書に記載の2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、健全な皮膚、例えばざ瘡のない皮膚を維持するために使用され得る。いくつかの実施態様において、このような組成物の投与はざ瘡の形成の予防を助け得る。いくつかの実施態様において、このような組成物はざ瘡を処置するために使用され得るか、または標準的なざ瘡処置を受けた対象におけるざ瘡の再発を予防するために使用され得る。
【0049】
2以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、皮膚に自然にコロニー形成する1以上の生存細菌の菌株を含む。いくつかの実施態様において、1以上の菌株は天然に存在する。しかしながら、2以上の細菌株を含む組成物は天然に存在しない。2以上の細菌株を含む組成物は、天然での個々の菌株と異なる性質を有する。
【0050】
アクネ菌(P. acnes)
アクネ菌はざ瘡ならびに慢性眼瞼炎および眼内炎のような他の状態に関連する嫌気性グラム陽性桿菌種である。アクネ菌株は大抵の人の皮膚に存在する。アクネ菌株の一部は病原性であるが、他のアクネ菌株は病原性ではないことが報告されている(Fitz-Gibbonら、2013;Lomholtら、2010)。本明細書において使用される「病原性」アクネ菌株は、ざ瘡と関連するアクネ菌株を示す。病原性および非病原性アクネ菌株が同定および選択され得るアッセイが、本明細書に記載される。
【0051】
アクネ菌株は、それらの代謝および表現型的行動(LomholtおよびKilian, 2010)において顕著に異なることが示されている。これらの差異は、限定されないが、ノイラミニダーゼ、α-グルコシダーゼまたはヒアルロニダーゼの発現およびウマ血液の溶血、リボース発酵、エリスリトール発酵またはソルビトール発酵を行う能力を含む。さらに、アクネ菌は、cis 9,c-12 リノール酸をtrans-10,cis-12 リノール酸に特異的に変換する活性リノール酸イソメラーゼを発現することが示されている(Rossonら、2004)。リノール酸は皮脂産生の制御における重要な分子であり、リノール酸の減少は多くの研究においてざ瘡の発生と結び付けられている(Downingら、1986;Letaweら、1998)。
【0052】
さらに、アクネ菌死滅細胞または上清はハムスター脂腺細胞において脂質産生を増加させ得ることがが示されている(Iinumaら、2009a)。
【0053】
アクネ菌種はクレードI~IIIに分類され、さらにサブタイプ:IAおよびIBを含む(Lomholtら)。IAはさらにIAおよびIAに細分されている(McDowellら、2012)。アクネ菌株の遺伝子解析が行われ、どの菌株がざ瘡と関連する病原性であり得るか、およびどの菌株が非病原性であり、ざ瘡と関連し得ないかが決定されている(Fitz-Gibbonら、2013、Lomholtら、2010およびKasimatisら、2013)。いくつかの実施態様において、非病原性アクネ菌株は、次のアクネ菌のクラス:I-2、IIおよびIBの1種に由来する。いくつかの非限定的実施態様において、非病原性アクネ菌株は、Scholzら(2014) PLOS ONE 9(8) e104199に記載の、D1、A5、C3、H1、H2、H3、K1、K2、K4、K6、K8、K9、L1およびF4 SLST型株から成る群から選択される。
【0054】
Scholtzらに記載のように、および当業者に理解されるように、アクネ菌株は標的遺伝子座のPCR増幅およびDNAシークエンシングを含む単一遺伝子座配列タイピング(SLST)を用いて同定され得る。標的遺伝子座PPA2385(Scholzらにおいて「SLST標的配列」と称される)を用いて、アクネ菌についてのSLSTスキームがScholzらにおいて開発され、記載されている。Scholtzらに記載されるSLSTスキームに関連するアクネ菌データベースは、medbac.dk/slst/pacnesでオンラインで利用可能である。典型的なSLST型株は、A1~A24、B1、C1~C4、D1~D3、E1~E9、F1~F10、G1、H1~H5、K1~K14およびL1~L6を含む。使用者はアクネ菌シークエンスをオンラインデータベースに入力し、SLST型菌株を同定できる。他のアクネ菌株同定および命名システムは、MLST9およびMLST8スキーム、リボタイピングおよびrecAおよびtly配列解析に基づくタイプ割り当てを含む。Scholtzらの図1は、これらの種々の命名規則を示す。当業者は、当分野において既知の種々の命名規則によりどのようにアクネ菌株が同定され、かつ分類され得るかを理解する。
【0055】
本明細書において使用される、細菌株を「タイピングする」とは、例えばSLSTを用いることにより細菌株を同定することを示す。アクネ菌SLST D1、A5、C3、H1、H2、H3、K1、K2、K4、K6、K8、K9、L1およびF4型株のような本明細書に記載の菌株を同定するためにSLSTにおいて使用される対立遺伝子配列を表1に列挙する。当業者は、Scholtzらに開示されるものに対応する本明細書において使用される菌株の命名を理解し、アクネ菌株が、例えばSLSTを使用することによりこれらの特定の菌株のいずれかに対応するか否かを特定する方法を理解する。
【0056】
従って、アクネ菌株はScholtzらに記載の標的遺伝子座PPA2385を用いたSLST型命名に基づいて、本明細書に記載される。例えば、「アクネ菌株C3」は、Scholtzらに記載の標的遺伝子座PPA2385を用いたアクネ菌SLST C3型を示す。「アクネ菌株K8」はScholtzらに記載の標的遺伝子座PPA2385を用いたアクネ菌SLST K8型を示す。「アクネ菌株A5」はScholtzらに記載の標的遺伝子座PPA2385を用いたアクネ菌SLST A5型を示し、「アクネ菌株F4」はScholtzらに記載の標的遺伝子座PPA2385を用いたアクネ菌SLST F4型を示す。
【0057】
本明細書に記載の細菌組成物は、2以上のアクネ菌株を含む。例えば、細菌組成物は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または20を超えるアクネ菌株を含み得る。いくつかの実施態様において、組成物は2、3、4または5の異なるアクネ菌株を含む。アクネ菌株の1以上は非病原性菌株であり得る。いくつかの実施態様において、細菌組成物中の全てのアクネ菌株は非病原性菌株であり得る。いくつかの実施態様において、アクネ菌株は、菌株を同定するためおよび組成物に該菌株を含めるか否かについて選択するために、遺伝子型判定される。本明細書に記載の細菌組成物に含まれるアクネ菌は、脂質産生を増加または減少させるために選択され得る。
【0058】
いくつかの実施態様において、2以上の異なるアクネ菌細菌株を含む組成物は、アクネ菌株C3、アクネ菌株K8またはアクネ菌株C3およびアクネ菌株K8の両方を含む。いくつかの実施態様において、アクネ菌株C3およびアクネ菌株K8は組成物中にほぼ同等の濃度で存在する。他の実施態様において、アクネ菌株C3は組成物中にアクネ菌株K8より高い濃度で存在する。他の実施態様において、アクネ菌株C3は組成物中にアクネ菌株K8より低い濃度で存在する。
【0059】
いくつかの実施態様において、2以上の異なるアクネ菌細菌株を含む組成物は、アクネ菌株A5および/またはアクネ菌株F4を含む。例えば、組成物はアクネ菌株C3および/またはアクネ菌株K8、および/またはアクネ菌株A5および/またはアクネ菌株F4を含み得る。いくつかの実施態様において、組成物はアクネ菌株C3およびアクネ菌株K8およびアクネ菌株A5およびアクネ菌株F4を含む。
【0060】
いくつかの実施態様において、アクネ菌株の混合物は1以上のクレードI菌株および1以上のクレードII菌株を含む。いかなる理論にも縛られることを願わないが、クレードII菌株は低病原性であり得る;いずれにしても、これらの菌株はまた、クレードI菌株より増殖が遅く、それ自体で皮膚にコロニー形成できる可能性が低いものであり得る。従って、本発明の態様はクレードIおよびクレードII菌株を含み、クレードII菌株による皮膚のコロニー形成を可能にする菌株混合物に関する。
【0061】
いくつかの態様において、本明細書に記載の1以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、アクネ菌株H1(6609)を含む(Hunyadkuertiら)。このアクネ菌株のゲノムは配列決定され、GenBank受入番号CP002815で利用可能である(Hunyadkuertiら)。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の1以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、特定のCRISPR/CAS9配列を有するアクネ菌株を含む(Brueggemann、2012、Fitz-Gibbon 2013)。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の1以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物はアクネ菌株K1、K4およびH1(6609)の1以上を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の1以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、アクネ菌株K1、K4、D1、A5、C3およびH1(6609)の各々を含む。
【0062】
本発明の態様は、アクネ菌株の混合物に関する。アクネ菌株の選択は、少なくとも一部、菌株が病原性であるか否かの決定を含み得る。この決定は公開情報、先の報告および/またはアクネ菌株が病原性であるか否かを決定するための実験的試験に基づき得る。いくつかの実施態様において、非病原性アクネ菌株のみが選択される。
【0063】
アクネ菌株の選択は、少なくとも一部、どの菌株または菌株の組合せが化粧または医薬組成物における使用に適切な条件において安定であるかの決定もまた含み得る。いくつかの実施態様において、増加した安定性を示すアクネ菌株が選択される。安定性は当分野で既知の方法を用いて、例えばコロニー形成単位(CFU)の変化を測定することにより評価され得る。
【0064】
本明細書に記載の細菌組成物に含まれるアクネ菌株は天然に存在し得るか、遺伝的に修飾され得る。遺伝的に修飾された菌株は自然突然変異誘発および/または遺伝子操作により修飾され得る。いくつかの実施態様において、アクネ菌株の遺伝的修飾はtrans-10,cis-12 リノール酸の産生に影響を与え、および/またはそのリノール酸イソメラーゼ活性を増加または減少させる。いくつかの実施態様において、アクネ菌株は細菌株の分類および/または特定の細菌株の選択に使用され得る種々のレベルのリノール酸イソメラーゼを示す。
【0065】
いくつかの実施態様において、1以上のアクネ菌細菌株はtrans-10,cis-12 リノール酸を産生する能力に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、1以上のアクネ菌細菌株は、その天然の環境においてそれが産生するtrans-10,cis-12 リノール酸の量に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、1以上のアクネ菌細菌株は、それが産生するtrans-10,cis-12 リノール酸の最大濃度に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、1以上のアクネ菌細菌株はそれが産生する酵素、リノール酸イソメラーゼの活性に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、リノール酸活性を有さないアクネ菌株が選択される。他の実施態様において、低レベルのリノール酸活性を有するアクネ菌株が選択される。他の実施態様において、高レベルのリノール酸活性を有するアクネ菌株が選択される。
【0066】
いくつかの実施態様において、アクネ菌株によるtrans-10,cis-12 リノール酸の産生は、2004年6月1日に登録された「Linoleate isomerase」と題された米国特許第6,743,609号に記載され、参照により包含される方法を用いて検出される。いくつかの実施態様において、産生されるtrans-10,cis-12 リノール酸の量は、FAME(脂肪酸メチルエステル)および/またはGC(ガスクロマトグラフィー)を用いて検出される。
【0067】
いくつかの実施態様において、アクネ菌株は500ppmのリノール酸を最大250ppmのtrans-10,cis-12 リノール酸に変換でき、かつこの濃度を一定に保つことができる。いくつかの実施態様において、アクネ菌株はリノール酸をtrans-10,cis-12 リノール酸に変換する高い能力を有するアクネ菌から選択される。他の実施態様において、アクネ菌株はリノール酸をtrans-10,cis-12 リノール酸に変換する低い能力を有するアクネ菌から選択される。
【0068】
いかなる理論にも縛られることを願わないが、いくつかの実施態様において、アクネ菌株がゼロから低レベルのリノール酸イソメラーゼを含む細菌組成物は、ざ瘡を予防または処置するために有益であり得る。なぜならば、このような組成物は皮脂分泌を減少させ得るからである。いくつかの実施態様において、組成物は標準的なざ瘡処置(例えば殺菌剤または抗生物質)終了後のざ瘡の再発を避けるのに有用であり得る。
【0069】
いくつかの実施態様において、細菌組成物は皮膚ろ胞におけるtrans-10,cis-12 リノール酸のレベルを増加させるために使用され得る。他の実施態様において、細菌組成物は皮膚ろ胞におけるtrans-10,cis-12 リノール酸のレベルを減少させるために使用され得る。いくつかの実施態様において、アクネ菌株の組合せは、美容または医療目的のためにtrans-10,cis-12 リノール酸を直接脂腺へ送達するために使用される。
【0070】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細菌組成物は高い皮脂産生レベルを有する皮膚、例えば脂性肌における皮脂産生を減少させるために使用される。他の実施態様において、本明細書に記載の細菌組成物は低い皮脂産生レベルを有する皮膚、例えば乾燥肌における皮脂産生を増加させるために使用される。いくつかの実施態様において、高いリノール酸イソメラーゼ活性を有する菌株の組合せは、十分な皮脂産生を欠く個体の皮膚に適用される。いくつかの実施態様において、このような個体は皮脂産生の減少を経験し得る高齢者である。
【0071】
いくつかの実施態様において、アクネ菌株により産生されるtrans-10,cis-12 リノール酸の量は、試験された菌株におけるtrans-10,cis-12 リノール酸の産生を、trans-10,cis-12 リノール酸を産生しないことが知られているまたは無視できるもしくは平均量より低い量のtrans-10,cis-12 リノール酸を産生するアクネ菌株と比較することにより評価される。他の実施態様において、アクネ菌株により産生されるtrans-10,cis-12 リノール酸の量は、試験された菌株におけるtrans-10,cis-12 リノール酸の産生を、平均または平均より高い量のtrans-10,cis-12 リノール酸を産生することが知られているアクネ菌株と比較することにより評価される。いくつかの実施態様において、産生されるtrans-10,cis-12 リノール酸の相対量が測定または評価される。他の実施態様において、産生されるtrans-10,cis-12 リノール酸の絶対量が測定または評価される。
【0072】
いくつかの実施態様において、アクネ菌株により分解されるcis-9,cis-12 リノール酸の量は、試験された菌株におけるcis-9,cis-12 リノール酸の分解速度を、cis-9,cis-12 リノール酸を分解しないことが知られているまたは無視できるもしくは平均量より低い量のcis-9,cis-12 リノール酸を分解するアクネ菌株と比較することにより評価される。他の実施態様において、アクネ菌株により分解されるcis-9,cis-12 リノール酸の量は、試験された菌株におけるcis-9,cis-12 リノール酸の分解速度を、平均または平均より高い量のcis-9,cis-12 リノール酸の分解速度を有することが知られているアクネ菌株と比較することにより評価される。いくつかの実施態様において、分解されるcis-9,cis-12 リノール酸の相対量が測定または評価される。他の実施態様において、分解されるcis-9,cis-12 リノール酸の絶対量が測定または評価される。
【0073】
いくつかの実施態様において、組成物中の1以上のアクネ菌細菌株は遅いまたは無視できるcis-9,cis-12 リノール酸の分解または変換を示す。いくつかの実施態様において、組成物中の全てのアクネ菌細菌株は遅いまたは無視できるcis-9,cis-12 リノール酸の分解または変換を示す。
【0074】
いくつかの実施態様において、組成物中の1以上のアクネ菌細菌株はその遅いまたは無視できるcis-9,cis-12 リノール酸の分解または変換に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、組成物中の1以上のアクネ菌細菌株はその天然の環境においてそれが分解するcis-9,cis-12 リノール酸の量に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、組成物中の1以上のアクネ菌細菌株は、それが分解するcis-9,cis-12 リノール酸の最大濃度に基づいて選択される。
【0075】
いくつかの実施態様において、組成物中の1以上のアクネ菌細菌株は、より少ないcis-9,cis-12 リノール酸を分解するように、またはcis-9,cis-12 リノール酸をよりゆっくりと分解するように遺伝的に修飾される。
【0076】
所定の方法を用いて個々の菌株および組合せを試験し、どの組合せが安定な組成物をもたらすかが決定され得る。いくつかの実施態様において、このような組成物は少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、30週間または30週間以上、室温で安定である。いくつかの実施態様において、このような組成物は少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月または6か月以上、室温で安定である。
【0077】
いくつかの実施態様において、組成物は少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、30週間または30週間以上、約4℃で安定である。いくつかの実施態様において、組成物は少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月または6か月以上、約4℃で安定である。
【0078】
いくつかの実施態様において、細菌組成物はドナー対象の皮膚マイクロバイオームから採取することにより製剤される。例えば、サンプルはざ瘡を有さない対象から採取され得る。他の実施態様において、サンプルは軽度の、中程度のまたは重度のざ瘡を有する対象から採取される。いくつかの実施態様において、ざ瘡を有するまたはざ瘡になりやすい対象から採取されるが、ざ瘡の発症に関連する細菌株はサンプルから除去される。サンプルは培養され得て、場合により他の成分と組み合わされて細菌組成物を形成し得る。他の実施態様において、細菌組成物は1以上の単離細菌株から形成され得る。
【0079】
ドナー対象から採取されたサンプルは、非病原性アクネ菌株を含むかどうかを調べるために試験され得る。いくつかの実施態様において、ドナー対象の皮膚に由来する1以上の非病原性アクネ菌株が選択され、レシピエント対象に投与される。レシピエント対象はドナー対象と同一であっても、ドナー対象と異なってもよい。
【0080】
いくつかの実施態様において、細菌組成物は、1以上のアクネ菌株に加えて1以上の他の細菌株、例えば非病原性細菌を含み得る。いくつかの実施態様において、1以上の非病原性細菌株は抗生特性を有する。いくつかの実施態様において、細菌組成物は1以上の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)株を含み得る。
【0081】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアクネ菌株は配列番号:1~76から選択される配列を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のアクネ菌株は、配列番号:1~76から選択される配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%同一である配列を含む。
【0082】
いくつかの実施態様において、組成物は配列番号:27と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%同一であるアクネ菌および/または配列番号:64と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%同一であるアクネ菌株を含む。いくつかの実施態様において、組成物は配列番号:27を含むアクネ菌株および/または配列番号:64を含むアクネ菌株を含む。
【0083】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物はリボタイプ6(RT6)アクネ菌株を含まない。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物はファイロタイプIIIアクネ菌株を含まない。
【0084】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0085】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0086】
【表1-11】
【表1-12】
【0087】
【表2】
【0088】
リノール酸およびその異性体trans-10,cis-12 リノール酸
リノール酸は2つの不飽和二重結合を有するC18脂肪酸である。通常、主異性体はcis-9,cis-12である。この異性体はまた、皮脂において遊離の脂肪酸として分泌される。インビトロで、リノール酸は脂腺細胞における脂質産生を刺激し、皮脂産生を調節するフィードバックループに関与し得る。それはまた抗生特性を有し、種々のアクネ菌はリノール酸に対して種々の感受性を示す抗生特性も有する(Hong Lioe Koら, 1978; Madli PuhvelおよびReisner, 1970)。しかしながら、リノール酸はまた、アクネ菌の食物源である皮脂の産生のための刺激剤として作用する。いかなる理論にも縛られることを願わないが、平衡が存在することがあり、これは細菌集団および宿主の皮脂産生により決定される、皮脂におけるリノール酸濃度により表される。この平衡は、ろ胞にコロニー形成しているアクネ菌によるcis,cis-12 リノール酸の分解/変換速度に依存する。
【0089】
リノール酸の共役異性体、すなわちcis-9,cis-11 リノール酸およびtrans-10,cis-12 リノール酸は、フードサプリメントとして注目を集めている(Churrucaら、2009)。リノール酸 trans-10,cis 12はPPAR受容体ファミリー(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体) (Moya-Camarenaら、1999)において作用する。PPAR-αの活性化は上皮モデルにおけるコレステロールを含む脂質合成を活性化する(Rivierら、2000)。trans-10,cis-12 リノール酸はROS(活性酸素種)を増加させ、抗癌活性を有することもまた、報告されている(Pierreら、2013)。
【0090】
表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)
表皮ブドウ球菌は、ヒト皮膚の通常の要素であるグラム陽性細菌である。表皮ブドウ球菌は、エピデルミン、Pep5、エピシジン280、エピランシンK7およびエピデルミシンNI01を含む5つのランチビオティクスを産生し得る。ランチビオティクスは非タンパク質アミノ酸、ランチオニンおよび3-メチルランチオニンを含む抗生物質様ペプチドを示す(Schnellら、1988)。エピデルミンはアクネ菌に対して極めて活性である(Allgaierら、1985)。Goetzらは、エピデルミンについてさらに詳細に記載している。Wangらは、表皮ブドウ球菌がグリセロールの発酵を媒介し、アクネ菌の増殖を阻害し得ることを報告する。
【0091】
本明細書に記載の細菌組成物に含まれる表皮ブドウ球菌菌株は、天然に存在し得る、または遺伝的に修飾され得る。遺伝的に修飾された菌株は自然な突然変異および/または遺伝子操作により修飾され得る。いくつかの実施態様において、表皮ブドウ球菌菌株の遺伝的修飾はその抗生特性を増加させる。いくつかの実施態様において、細菌組成物は1以上のアクネ菌株および1以上の表皮ブドウ球菌菌株を含み得る。1以上のアクネ菌株は、1以上の表皮ブドウ球菌菌株の抗生特性に対して耐性であり得る。いくつかの実施態様において、1以上のアクネ菌株は、1以上の他の細菌株、例えば表皮ブドウ球菌の抗生特性に対するそれらの耐性を増加させるために、遺伝的に修飾される。いくつかの実施態様において、1以上のアクネ菌株は、1以上の他の細菌株の抗生特性に対するそれらの耐性を増加させるために、自然な変異誘発および/または遺伝子操作により修飾される。
【0092】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の1以上の生存アクネ菌細菌株を含む組成物は、1以上の抗生物質、殺菌剤(例えば、BPO)またはサリチル酸を含む。当業者は、あらゆる抗生物質または殺菌剤が本発明の特定の実施態様と適合し得ることを理解する。
【0093】
皮膚マイクロバイオーム移植
本発明の態様は、例えば移植による、皮膚マイクロバイオームの調節に関する。移植は1以上の対象間で行われ得る。いくつかの実施態様において、移植は1の個体で行われ、同一の対象がドナーかつレシピエントである。他の実施態様において、移植は2以上の対象間で行われる。いくつかの実施態様において、1のドナー対象および1のレシピエント対象が存在する。他の実施態様において、複数のドナー対象および/または複数のレシピエント対象が存在する。複数の移植方法が使用され、種々の細菌組成物の製剤が得られる。いくつかの実施態様において、非修飾マイクロバイオームが移植される、つまり、ドナーのマイクロバイオームが単離され、レシピエントに送達するために調製される。他の実施態様において、製剤されたマイクロバイオームが移植される、つまり、ドナーのマイクロバイオームが単離され、場合により、遺伝子型を同定され、製剤のために特定の菌株(例えば、特定の遺伝子型を有する菌株)が選択される。いくつかの実施態様において、製剤化され、遺伝子操作されたマイクロバイオームを移植する、つまり、ドナーのマイクロバイオームを単離し、遺伝子型を同定し、特定の菌株を選択し、遺伝的変異体を菌株から単離し、製剤を生産する。
【0094】
いくつかの実施態様において、方法は、ドナー対象の皮膚から1以上の生存細菌株を得て、ここで該生存細菌株がアクネ菌株であること;1以上の生存細菌株が病原性であるかどうかを決定すること;そして病原性が病原性でないならば、投与を必要とするレシピエント対象の皮膚に殺菌剤または抗生物質を投与した後に、該対象の皮膚に1以上の生存細菌株を投与することを含む。いくつかの実施態様において、1以上の生存アクネ菌株が病原性であるかどうかを決定するためにアッセイを実施する。例えば、アッセイはどのようにして生存細菌株がcis-9,cis-12 リノール酸を変換または分解するかを評価するために実施され得る。いくつかの実施態様において、組成物中の1以上のアクネ菌細菌株はその遅いまたは無視できるcis-9,cis-12 リノール酸分解または変換に基づいて選択される。
【0095】
他の皮膚状態
ざ瘡に加えて、本明細書に記載の組成物は、ふけ症、進行性黄斑メラニン減少症、アトピー性皮膚炎または酒さのような他の皮膚状態を処置または予防するために使用され得る。
【0096】
ふけ症は、皮膚マイクロバイオームの比率における不均衡と関連する。ふけ症は慢性的にまたは発赤および刺激を伴い得る特定の原因の結果として経験され得る。主な寄与体はアクネ菌および表皮ブドウ球菌であり、マラセチア・レストリカ(Malassezia restricta)もまた含み得る。ふけ症については、表皮ブドウ球菌およびマラセチア・レストリカと比較してよりアクネ菌についてのより低い発生率が存在する(Clavaudら、2013;Wangら、2015)。これはアクネ菌細菌を用いた補充療法がふけ症の処置に有益であり得ることを示す。
【0097】
アクネ菌は、主に若年成人における、特に女性における、主に体幹の中央部分における一般的な色素沈着低下である進行性黄斑メラニン減少症に関与することが知られている(Westerhofら、2004)。それは皮膚に白斑として現れるため、より濃い皮膚の色を有する患者に多く診断される。近年、進行性黄斑メラニン減少症はアクネ菌のクレードIIIと関連することが報告された(Barnardら、2016)。本明細書に記載の組成物は、クレードI株およびII株を含み、クレードIII株を含まない。従って、本明細書に記載の組成物は、進行性黄斑メラニン減少症を処置または予防するために使用され得る。
【0098】
アトピー性皮膚炎(アトピー性湿疹としても知られる)は皮膚マイクロバイオームの強いディスバイオシスを示す紅斑と関連する。炎症は赤く、腫大した、痒いおよびひび割れた皮膚をもたらす。膝の裏側、肘の前面、手、足が最も罹患しやすい領域である。皮膚軟化薬は、アトピー性皮膚炎の処置に有効であることが示されている。本明細書に記載の細菌組成物を与えられた患者は、一般に改善された皮膚状態を示す。従って、本明細書に記載の組成物は、アトピー性皮膚炎を処置または予防するために使用され得る。
【0099】
酒さは顔の発赤、顔の皮膚における小さな拡張した血管、膿疱、丘疹および腫脹により特徴付けられる皮膚状態である。4つのタイプの酒さが存在し、そのうち3つは皮膚に影響する。本障害は尋常性ざ瘡または脂漏性皮膚炎と混同され得るか、共存し得る。頭皮または耳における発疹の存在は異なるまたは共存する診断を示唆する。これは、酒さが、時々これらの他の領域に現れ得るが、主として顔面診断であるためである。酒さの処置は、重篤度およびサブタイプにより変化する。本明細書に記載の組成物を用いたアクネ菌を用いた補充療法は酒さを処置または予防するために使用され得る。
【0100】
処置
本明細書で使用される用語、処置する(treat)、処置された(treated)または処置する(treating)とは、ざ瘡のような障害について使用されるとき、少なくとも1つのざ瘡の症状を改善すること、例えばざ瘡に関連する病変の減少および改善を示す。本明細書で使用される、予防するとは、病変のようなざ瘡の症状の形成を予防することおよび/または少なくとも1つのざ瘡の症状が悪化するのを予防すること、例えば病変をさらに予防することもしくは存在する病変が悪化するのを予防することを示す。
【0101】
本発明の態様は、皮膚の外見を改善することおよび/または健全な皮膚を維持することに関する。本発明のさらなる態様は、ざ瘡、脂性肌、進行性黄斑メラニン減少症(Barnardら、2016)、ふけ症、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎および酒さからなる群から選択される状態を処置または予防することに関する。
【0102】
対象
本明細書に記載の組成物はヒトまたは非ヒト対象に投与され得る。いくつかの実施態様において、対象はざ瘡を有するもしくはざ瘡を発症するリスクを有するヒトまたは非ヒトである。いくつかの実施態様において、対象はヒトである。いくつかの実施態様において、対象は家庭用ペット、例えばネコまたはイヌのような飼育動物である。いくつかの実施態様において、対象はウシ、ヤギ、ウマ、ブタまたはヒツジのような家畜である。皮膚を有するあらゆる動物は、本発明の態様に適合し得ると理解されるべきである。
【0103】
いくつかの実施態様において、ざ瘡を有する対象は炎症性病変および/または非炎症性病変を有する。いくつかの実施態様において、多数の非炎症性病変を有するが選択される。いくつかの実施態様において、非炎症性病変の数に基づいて無作為化される。
【0104】
有効量
本明細書に記載の組成物は、有効量で投与される。用語、本発明の組成物の「有効量」は、所望の生物学的効果を実現するために必要または十分な量をいう。例えば、ざ瘡を処置するための有効量の組成物は、少なくとも1つのざ瘡の症状を改善する(例えば病変における減少および改善)ために十分なその量である。有効量は、任意の特定の用途についての有効量は、処置される状態、投与される特定の組成物、対象の体格または状態の重篤度のような因子により変化し得る。当業者は過度の実験を必要とすることなく、経験的に有効量を決定できる。
【0105】
組成物
化粧または医薬組成物を含む局所投与のための組成物は、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、エアロゾルスプレー剤を含むスプレー剤、坐剤、液剤、血清剤または粉剤を含む。いくつかの実施態様において、製剤は2成分の分配システムである。さらに、従来の薬学的担体、液状、粉末状もしくは油状基剤または増粘剤が、局所投与用医薬製剤において使用され得る。このような成分の例は、多様なヒドロキシル化された化合物、例えばプロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリンおよびブチレングリコールのようなモノマー性グリコール、ポリグリセリルメタリレートのようなポリマー性保湿剤、パルミチン酸およびステアリン酸の誘導体、脂肪酸のトリグリセリド、ラノリン、植物または鉱油ならびにワックスを含む。
【0106】
驚くべきことに、ここにおいて、皮膚に非病原性アクネ菌株を確立するための有効な方法は、複数の菌株混合物内にあることが見出された。菌株混合物内で、増殖の遅い菌株が皮膚に確立され得る。いくつかの実施態様において、菌株は、得られた皮膚に確立された菌株が低いリノール酸イソメラーゼ活性を有するように選択される。天然の状況において、新しい菌株が皮膚マイクロバイオームに時々追加されるが(Ohら、2016)、高いイソメラーゼ活性を有する集団が低いイソメラーゼ活性を有する集団に置き換わることはないと考えられる。本明細書に記載のアプローチ(殺菌および接種の組合せを含む)は、低いイソメラーゼ活性を有する集団による高いイソメラーゼ活性を有する集団の天然ではない置き換えを提供する。
【0107】
本明細書に開示されるように、非病原性アクネ菌K8株のような、いくつかの増殖が遅い菌株は、菌株混合物中でより効率的に増殖し、いくつかの実施態様において菌株混合物中で優占種となることが、予想外に見出された。従って、いくつかの実施態様において、種々のアクネ菌株の混合物は、増殖が遅い菌株を他の増殖が速い菌株と混合物ことにより、皮膚を増殖が遅い菌株をより効率的にコロニー形成させるために使用され得る。
【0108】
いくつかの実施態様において、組成物は細菌数を安定化するための培地を含む。培地は純水、PBS、ペプトンおよび/または希釈したもしくは希釈していない適切な増殖培地またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施態様において、細菌組成物(例えば、ゲル)は、細菌の安定化を助ける低い割合のペプトンを含む。いくつかの実施態様において、細菌組成物におけるペプトンの割合は、約0.05%または約0.1%である。ペプトンの割合は、0.005%~1%、または0.05%~1%の範囲であり得る。例えば、ペプトンの割合は約0.005、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1.0%であり得る。いくつかの実施態様において、ペプトンの割合は0.005%未満である。いくつかの実施態様において、ペプトンの割合は1%より大きい。いくつかの実施態様において、ペプトンの割合は約0.25%である。
【0109】
他の実施態様において、適切な増殖培地がペプトンの代わりに使用される。
【0110】
いくつかの実施態様において、ペプトンの供給源はカゼインに由来し、例えばカゼイン由来のトリプシン消化ペプトンである。しかしながら、ペプトンのあらゆる形態または供給源は、本発明の態様に適合し得ると理解されるべきである。例えば、いくつかの実施態様において、ペプトンはトリプシン消化物ではなく、酸分解物である。いくつかの実施態様において、ペプトンは肉に由来する。
【0111】
いくつかの実施態様において、組成物はpHの安定化を助けるための緩衝成分を含む。いくつかの実施態様において、pHは4.5~8である。例えば、pHは約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0(中間の任意の値を含む)であり得る。いくつかの実施態様において、pHは約7.0である。
【0112】
緩衝剤の非限定的な例は、ACES、アセテート、ADA、水酸化アンモニウム、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、AMPD(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、AMPSO、BES、BICINE、ビス-トリス、ビス-トリスプロパン、ボレート、CABS、カコジレート、CAPS、CAPSO、カーボネート(pK1)、カーボネート(pK2)、CHES、シトレート(pK1)、シトレート(pK2)、シトレート(pK3)、DIPSO、EPPS、HEPPS、エタノールアミン、ホルメート、グリシン(pK1)、グリシン(pK2)、グリシルグリシン(pK1)、グリシルグリシン(pK2)、HEPBS、HEPES、HEPPSO、ヒスチジン、ヒドラジン、イミダゾール、マレート(pK1)、マレート(pK2)、マレアート(pK1)、マレアート(pK2)、MES、メチルアミン、MOBS、MOPS、MOPSO、ホスフェート(pK1)、ホスフェート(pK2)、ホスフェート(pK3)、ピペラジン(pK1)、ピペラジン(pK2)、ピペリジン、PIPES、POPSO、プロピオン酸、ピリジン、ピロホスフェート、スクシネート(pK1)、スクシネート(pK2)、TABS、TAPS、TAPSO、タウリン(AES)、TES、トリシン、トリエタノールアミン(TEA)およびTrizma(トリス)を含み得る。
【0113】
いくつかの実施態様において、製剤は増粘剤である。増粘剤の非限定的な例は、ヒドロキシエチルセルロース(例えばNATROSOL(登録商標))、デンプン、アラビアゴムのようなゴム、カオリンもしくは他の粘土、水和ケイ酸アルミニウム、フュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたは他のセルロース誘導体、エチレングリコールモノステアレートおよびアルギン酸ナトリウムを含み得る。
【0114】
いくつかの実施態様において、増粘剤はヒドロキシエチルセルロースである。いくつかの実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースはNATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(Ashland社)を含む。いくつかの実施態様において、NATROSOL(登録商標)はNATROSOL(登録商標)HX(Caesar&Loretz GmbH、注文番号4482、CAS:9004-62-0)またはNATROSOL(登録商標)G(Caesar&Loretz GmbH、注文番号4484、CAS:9004-62-0)である。ヒドロキシエチルセルロースのあらゆる形態は、本発明の態様と適合し得ると理解されるべきである。いくつかの実施態様において、粘性型はHHR-P、HH、H4、H、MH、M、K、G、EまたはLである。
【0115】
いくつかの実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースのような増粘剤の濃度は、約1%~5%である。例えば、濃度は約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3.0%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4.0%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%または約5.0%であり得る。他の実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースのような増粘剤の濃度は、1%未満または5%より高い。いくつかの実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースのような増粘剤の濃度は、約1.5%である。いくつかの実施態様において、ヒドロキシエチルセルロースのような増粘剤の濃度は、約2.5%である。
【0116】
いくつかの実施態様において、組成物は1以上の生存アクネ菌株を少なくとも10~10/mlのコロニー形成単位(CFU)で含む。例えば、CFUは少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または10/mlより大きくてよい。いくつかの実施態様において、全てのアクネ菌株は少なくとも10~10/mlのコロニー形成単位(CFU)で組成物中に存在する。いくつかの実施態様において、細菌組成物は、室温で少なくとも3ヶ月を超えて、安定なCFUを示す。いくつかの実施態様において、CFU数は保存初期に短期間変動し(例えば、2週間)、その後安定化する。
【0117】
いくつかの実施態様において、組成物は約2.5%の増粘剤(例えばNATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース(HEC));約0.25%のペプトン(例えばカゼイン由来のトリプシン分解ペプトン);および約10~10/mlのCFUの2以上の生存アクネ菌株(例えば、約10/mlの各生存アクネ菌株)を含む。
【0118】
本発明の態様は、種々の生存アクネ菌株の混合物を含む組成物に関する。混合物は2以上の菌株を含む。いくつかの実施態様において、組成物は少なくとも2種の異なる生存アクネ菌株を含む。2種の異なる菌株は、同等の濃度または異なる濃度で存在し得る。いくつかの実施態様において、組成物は、アクネ菌株C3とアクネ菌株K8の2種の菌株混合物を含む。特定の実施態様において、両方の菌株は同等の濃度で存在する。特定の実施態様において、両方の菌株は約5x10/mlのCFUで存在する。
【0119】
いくつかの実施態様において、組成物は、少なくとも4種の異なる生存アクネ菌株を含む。特定の実施態様において、組成物はアクネ菌株C3、アクネ菌株A5、アクネ菌株F4およびアクネ菌株K8の4種の混合物を含む。4種の異なる菌株は、同等の濃度または異なる濃度で存在し得る。特定の実施態様において、菌株C3、A5、F4およびK8の相対濃度はそれぞれ、約55%、30%、10%および5%である。いくつかの実施態様において、菌株C3、A5、F4およびK8についてのCFU値はそれぞれ、約5.5x10/ml、約5.5x10/ml、約1x10/mlおよび約5x10/mlである。
【0120】
いくつかの実施態様において、各生存アクネ菌細菌株は、少なくとも組成物の約5%を構成する。
【0121】
いくつかの実施態様において、組成物はサリチル酸をさらに含む。いくつかの実施態様において、組成物は0.05~10%のサリチル酸を含む。例えば、組成物は約0.05、約0.10%、約0.15%、約0.20%、約0.25%、約0.30%、約0.35%、約0.40%、約0.45%、約0.50%、約0.55%、約0.60%、約0.65%、約0.70%、約0.75%、約0.80%、約0.85%、約0.90%、約0.95%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6.0%、約6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%、約8.5%、約9.0%、約9.5%または10%のサリチル酸を含み得る。他の実施態様において、組成物は0.05%未満のサリチル酸または10%より多くのサリチル酸を含む。いくつかの実施態様において、長期間顔に保持される組成物において、サリチル酸の割合は2%未満または2%と同等である。いくつかの実施態様において、顔から洗い流され、長期間顔に保持されていない組成物において、サリチル酸の割合は3%未満または3%と同等である。驚くべきことに、アクネ菌株はサリチル酸により阻害されないため、皮膚状態(例えば、ざ瘡またはふけ)の処置のための本明細書に記載の組成物中にサリチル酸を含有させることができる。
【0122】
いくつかの実施態様において、細菌組成物は1以上の抗炎症性化合物と組み合わせられる。いかなる理論にも縛られることを願わないが、抗炎症性化合物は、短時間で炎症性病変を減少させ得るが、細菌組成物は根底にある問題に対処し得て、長期効果をもたらし得る。
【0123】
いくつかの実施態様において、組成物は参照により包含される米国特許第5,525,336号に開示されるような皮膚軟化剤を含む。皮膚軟化剤の非限定的な例は、ステアリルアルコール、モノリシノレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミンクオイル、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、パルミチン酸セチル、ジメチルポリシロキサン、セバシン酸ジ-n-ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール(polthylene glycol)、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ココナッツ油、落花生油、ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、石油、鉱油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチルを含む。
【0124】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるようなタンパク質安定化が、組成物中に含まれる。非限定的な例は、グリセロール、エチレンジアミン四酢酸、システインならびにロイペプチン、ペプスタチン、アンチパインおよびシスタチンのようなプロテイナーゼ阻害剤を含む。
【0125】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような湿潤剤が、組成物中に含まれる。湿潤剤の非限定的な例は、グリセリン、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチルゼラチンを含む。
【0126】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような収斂剤が、組成物中に含まれる。非収斂剤の非限定的な例は、アルニカの花またはその抽出物、低級アルキルアルコール、マンサク、ホウ酸、乳酸、メントール(methol)、カンファー、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび塩化亜鉛または硫酸亜鉛を含む。
【0127】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような色素は組成物中に含まれる。色素の非限定的な例は、二酸化チタンオキシド、雲母、酸化鉄、バリウムレーキ、カルシウムレーキ、アルミニウムレーキ、オキシ塩化ビスマス、ジルコニウムレーキおよび酸化カルシウムを含む。
【0128】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような着色剤が、組成物中に含まれる。着色剤の非限定的な例は、シコニン、β-カロテン、パプリカ、紅麹菌、サフラワーレッド、サフラワーイエロー、赤キャベツ色素、ムラサキイモ色素、リコペン、カカオ色素、ブドウ色素、コチニール、ラック色素、ビーツ赤、ヘマテイン、赤色215号、赤色218号、赤色223号、赤色225号、橙色201号、橙色206号、黄色201号、緑色202号および紫色201号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104(1)号、赤色105(1)号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色213号、赤色214号、赤色227号、赤色230(1)号、赤色230(2)号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202(1)号、黄色202(2)号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号および褐色201号を含む。
【0129】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるようなUV-AおよびUV-B照射フィルター、日焼け止め、フリーラジカルブロッカー、ビタミン抽出物または抗酸化剤が、組成物中に含まれる。
【0130】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような界面活性剤または溶媒が、組成物中に含まれる。溶媒の非限定的な例は、水、エチルアルコール、トルエン、塩化メチレン、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、ヒマシ油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランを含む。i)脂肪酸の金属塩またはアルカノールアミン塩(例えばラウリン酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンオレイン酸;アルキルベンゼンスルホン、例えばトリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホン酸塩;アルキルスルフェート、例えばラウリル硫酸ナトリウム;アルキルエーテル硫酸塩、例えばラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2~8EO);スルホコハク酸塩、例えばジオクチルスルホンコハク酸ナトリウム;硫酸モノグリセリド、例えばモノステアリン酸グリセリルモノ硫酸ナトリウム;イソチオネート、例えばナトリウムイソチオネート;メチルタウリド、例えばIgepon T;アシルサルコシン、例えばミリスチルサルコシンナトリウム;アシルペプチド、例えばMayponsおよびlamepons;アシルラクチレート、ポリアルコキシル化エーテルグリコレート、例えばtrideceth-7 カルボン酸;ホスフェート、例えばナトリウムジラウリルホスフェートのようなアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤、例えばサパミン塩酸塩のようなアミン塩;四級アンモニウム塩、例えばQuaternium 5、Quaternium 31およびQuaternium 18;両性界面活性剤、例えばミラノールのようなイミダゾール化合物、例えばMiranol;N-アルキルアミノ酸、例えばコカミノプロピオン酸ナトリウムおよびアスパラギン誘導体;ベタイン、例えばコカミドプロピルベタイン;ノニオン性界面活性剤、例えばオレイン酸エタノールアミドのような脂肪酸アルカノールアミド;エステルまたはポリアルコール、例えばSpan;ポリグリセロールエステル、例えば脂肪酸および1個または数個のOH基を用いてエステル化されたポリグリセロールエステル;ポリアルコキシル化誘導体、例えばポリオキシ:ポリオキシエチレンステアリン酸塩;エーテル、例えばポリオキシエーテルラウリルエーテル;エステルエーテル、例えばTween;アミンオキシド、例えばココナッツおよびドデシルジメチルアミンオキシドを含む。いくつかの実施態様において、1以上の界面活性剤または溶媒が含まれる。
【0131】
いくつかの実施態様において、参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような防腐剤、防腐性、色素または着色剤、芳香剤、マスキング剤および担体(例えば水および低級アルキル、アルコール)が、組成物に含まれる。
【0132】
組成物が粉末であるいくつかの実施態様において、粉末は参照により包含させる米国特許第5,525,336号に開示されるような胡粉、タルク、フラー土、コロイド状二酸化ケイ素、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルおよび/またはトリアルキルアリールアンモニウムスクメタイトおよび化学修飾されたケイ酸アルミニウム・マグネシウムを含み得る。いくつかの実施態様において、組成物は香料を含む。
【0133】
本発明の組成物は、投与されるとき、治療的に有効な、薬学的に許容される量で、薬学的に許容される製剤として適用される。いずれかの本発明の組成物は、治療有効量で対象に投与され得る。対象に投与されるとき、有効量は処置される対象の特定の状態または所望の結果に依存する。治療的有効量は、例えば、本明細書に記載するような因子を使用しておよび通常の範囲内の試験を用いて、当業者により決定される。
【0134】
いくつかの実施態様において、1以上の次の物質:局所抗生物質(例えば、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、メトロニダゾール)、経口抗生物質(例えばテトラサイクリン、エリスロマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン)、局所レチノイド(例えば、アダパレン、タザロテン、トレチノイン)、経口レチノイド(例えば、イソトレチノイン)、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、硫黄、アゼライン酸および抗微生物ペプチドおよびその誘導体(例えば、リポヘキサペプチド HB1345、オリゴペプチド-10、マガイニン(例えば、ペキシガナン)、プロテグリン(例えば、イセガナン)、インドリシジン(例えば、オミガナン、MBI 594AN)、ヒスタチン(例えば、P113 P113D)、ヒト殺菌/透過性増加タンパク質(例えば、XMP.629、ニュープレックス)、カテリシジン(例えば、カテリシジン-BF)が、本明細書に記載の組成物に含まれる。
【0135】
いくつかの実施態様において、組成物は、クリーム剤または軟膏剤のような局所形態で投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組合せ処置の部分を構成する、または対象の皮膚のより早期の処置の後に行われる。
【0136】
適用される組成物の適切な量は、多くの種々の因子に依存し得て、通常の試験を通して当業者により決定され得る。考慮すべきいくつかの非限定的な因子は、薬剤の生物活性およびバイオアベイラビリティ、投与方式、半減期および処置される対象の特徴を含む。
【0137】
いくつかの実施態様において、細菌組成物は感受性の皮膚を有する対象には適用されない。いくつかの実施態様において、ざ瘡の処置または予防のために細菌組成物を使用するとき、処置される対象は不必要な日光曝露を回避し、日焼け止め剤を使用する。いくつかの実施態様において、処置される皮膚が発赤、腫脹、火傷、掻痒または剥皮により特徴付けられる炎症を起こしているならば、製品は頻度を少なくして、またはより低い濃度で使用される。
【0138】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物は、健全な皮膚を維持するために、対象の皮膚に投与される。組成物は1回または複数回投与され得る。いくつかの実施態様において、組成物は規則的な間隔で投与されるが、他の実施態様において、組成物は不規則な間隔で投与される。例えば、組成物は約15分毎、約30分毎、約1時間毎、約2時間毎、約3時間毎、約4時間毎、約5時間毎、約6時間毎、約7時間毎、約8時間毎、約9時間毎、約10時間毎、約11時間毎、約12時間毎、約24時間毎、約48時間毎、約3日毎、約4日毎、約5日毎、約1週毎、約2週毎、約3週毎、約4週毎、約5週毎、約6週毎、約7週毎、約8週毎またはそれ以上または以下の頻度(中間の全ての値を含む)で投与され得る。
【0139】
いくつかの実施態様において、組成物は、当業者により認識されるように、殺菌または抗生物質のような標準的なざ瘡処置もまた受けるまたは以前に受けていた対象に投与される。いくつかの実施態様において、組成物は標準的なざ瘡処置と並行して投与される。他の実施態様において、組成物は標準的なざ瘡処置後に投与される。組成物は先の処置の直後に投与され得るまたは、先の処置から時期を遅らせて組成物を投与し得る。先の処置後、組成物は1回または複数回投与される。いくつかの実施態様において、組成物は先の処置後に規則的な間隔で投与されるが、他の実施態様において、組成物は先の処置後に不規則な間隔で投与される。例えば、組成物は約15分毎、約30分毎、約1時間毎、約2時間毎、約3時間毎、約4時間毎、約5時間毎、約6時間毎、約7時間毎、約8時間毎、約9時間毎、約10時間毎、約11時間毎、約12時間毎、約24時間毎、約48時間毎、約3日毎、約4日毎、約5日毎、約1週間毎、約2週毎、約3週毎、約4週毎、約5週毎、約6週毎、約7週毎、約8週毎またはそれ以上または以下の頻度で(中間の全ての値を含む)、先の処置後に投与され得る。
【0140】
本発明の態様は、細菌株、例えば表皮ブドウ球菌を変異させることを包含する。変異は、いくつかの実施態様において、アミノ酸置換を選択することにより、または核酸またはポリペプチドにおける選択部位の無作為変異誘発により行われ得る。変異がバリアントポリペプチドに所望の性質を提供するか否かを決定するために、1以上の活性についてバリアントポリペプチドを発現させ、試験し得る。さらなる変異が、ポリペプチドのアミノ酸配列について無変化であるバリアントに対して(または非バリアントポリペプチドに対して)行われ得るが、これは特定の宿主における翻訳に好ましいコドンを提供する。例えば、大腸菌(E. coli)における核酸の翻訳に好ましいコドンは、当業者によく知られている。ポリペプチドの発現を強化するために、さらなる他の変異が遺伝子の非コード配列またはcDNAクローンに対して行われ得る。バリアントポリペプチドの活性は、バリアントポリペプチドを細菌または真核発現ベクターにエンコードする遺伝子をクローニングすること、適切な宿主細胞をベクターに導入すること、バリアントポリペプチドを発現させることおよび本明細書に記載のポリペプチドの機能的能力について試験することにより、試験され得る。
【0141】
本発明による細菌細胞は、富培地または最少培地を含む多様な培地において培養され得る。当業者により理解されるように、通常の最適化は多様なタイプの培地の使用を可能にする。培地は糖源を含む種々の付加的成分を追加され得る。追加成分のいくつかの限定的な例は、グルコース、アミノ酸、抗生物質およびATCC Trace Mineral Supplementを含む。同様に、培地の他の態様および本発明の細胞の増殖条件は、通常の試験を通して最適化され得る。例えば、pH、温度および組成物中の成分の濃度は、最適化され得る因子の非限定的な例である。
【0142】
本発明に関連する増殖細胞に使用される液体および/または固体培養物は、当分野で知られ、使用されるいずれかの培養容器に収容される。
【0143】
いくつかの実施態様において、細菌株はバッチで増殖させる。いくつかの実施態様において、細菌株は発酵槽で増殖させる。いくつかの実施態様において、細菌株を含む組成物は包装される。特定の実施態様において、細菌株を含む組成物は経腸シリンジまたは小袋に包装される。
【0144】
キット
本発明はまた、キットにおいて上記組成物のいずれかを提供する。いくつかの実施態様において、キットは生存細菌を収容した容器または凍結乾燥させた生存細菌を収容した容器を含む。キットは、ペプトンのような培地を含む第二の容器を含み得る。いくつかの実施態様において、抗生物質、殺菌剤(例えば、BPO)および/またはサリチル酸を含み得る。いくつかの実施態様において、抗生物質、殺菌剤および/またはサリチル酸は、生存細菌を含む組成物の提供前に皮膚を前処置するために使用される。キットはまた、組成物を投与するための指示書を含む。特定の実施態様において、指示書は細菌株と組成物の他の成分を混合させるために提供される。いくつかの実施態様において、キットは対象に細菌組成物を適用するためのアプリケーターを含む。
【0145】
本発明は以下の実施例によりさらに説明され、これは決してさらなる限定と理解されるべきではない。本願を通じて引用される全ての引用文献(文献、発行された特許、公開された特許出願および同時係属中の特許出願を含む)の全体的な内容は、参照により本明細書に明確に包含させる。
【実施例
【0146】
実施例1:種々のアクネ菌株は種々のレベルのリノール酸イソメラーゼ活性またはtrans-10,cis-12 リノール酸濃度の最終閾値を有する
複数の異なるアクネ菌株のリノール酸イソメラーゼ活性を特徴付けるために、試験を実施した。アクネ菌株はリノール酸を含まない増殖培地で増殖させた(Rossonら、2004)。Cis-9,cis-12 リノール酸を増殖培地に添加し、その後脂肪酸メチルエステルへの変換およびその後のガスクロマトグラフィーを含むアッセイを用いて、種々の時点でのcis-9,cis-12 リノール酸異性体およびtrans-10,cis-12 リノール酸異性体の量を決定した。不飽和脂肪酸のcisおよびtrans異性体を区別するために確立された方法がKramerら、2004に記載され、これをその全体における参照により本明細書に包含させる。
【0147】
驚くべきことに、培地および接種条件の選択が、これらの試験を行うための重要な可変因子であることが分かった。培地におけるリノール酸の減少を測定するために、いくつかの他のタイプの培地においてリノール酸沈殿が観察されたため、強化クロストリジウム培地(RCM)を使用した。
【0148】
cis-9,cis-12 リノール酸の分解を示す結果を図1に示す。試験の最初の48時間で大部分の分解が生じる、極めて迅速なcis-9,cis-12 リノール酸の減少が観察された。菌株A1は培地からリノール酸を完全に枯渇させるが、菌株C3は驚くべきことに、リノール酸の分解が遅く、平衡濃度に達することもまた、観察された。いかなる理論にも縛られることを願わないが、ざ瘡患者は通常、皮脂において、健全な対象と比較して低いリノール酸濃度を有する。従って、分解が遅い菌株の集団は皮脂に高いリノール酸濃度をもたらし、これは有利であり得る。
【0149】
極めて少量のtrans-10,cis-12 リノール酸異性体が、RCMのような富培地で検出され、これはRCMのような富培地は脂腺において遭遇する環境に存在しないからであると考えられる。特に、グルコースは通常、脂腺では有限であり、細菌の代謝プログラムに影響し得る(ImおよびHoopes、1974)。アクネ菌について使用される全ての先の培地(例えば、RCM、BHI、GAM)は少なくとも3g/Lのグルコースを含むが、一方で脂腺において、グルコースは比較的低い濃度(例えば、約0.6~1.4g/kg乾燥重量(ImおよびHoopes、1974))で生じるのみである。
【0150】
従って、全てのアクネ菌株が増殖するグルコース無添加培地をここで設計し、11種のアクネ菌株を試験し、特徴付けるために使用した。細菌が遭遇する天然の環境に類似するため、細菌の増殖およびtrans-10,cis-12 リノール酸異性体の生成の測定を可能にするペプトンおよび酵母抽出物(PY-培地)から最小培地を確立した。
【0151】
最少培地においてサンプルを振盪させることを含めてtrans-10,cis-12 リノール酸異性体の産生を評価するための条件を開発した。複数の菌株を用いて行われた経時的分析を図3に示す。個々の菌株の増殖が異なるため、読み取りは、寒天プレート上のCFU数により確認された、600nmで測定された光学密度(OD)により標準化補正した。ODを標準化するために、各培養物のODを各菌株のバイオマスについての測定値として使用した。全てのOD測定値を、次いで最高測定値で除して、相対的な増殖を表す因子を導いた。次いで、測定されたtrans-10,cis-12 リノール酸濃度を、核菌株についてのこの因子で乗じた。根底にある前提は、高い光学密度まで増殖する菌株は、増殖が遅い菌株より少ない細胞あたりのイソメラーゼを産生するはずであるとのことである。補正したtrans-10,cis-12 リノール酸異性体の濃度を図2に示す。ざ瘡に関連する菌株A1(McDowellら、2012、PLoS ONE 7、e41480)は多くのtrans-10,cis-12 リノール酸異性体を産生した。極めて少量のtrans-10,cis-12 リノール酸異性体を産生する菌株は、C3、C1、F4、A5、K1、K2、K8およびL1であった。K株およびL1株は、ほとんど増殖を示さなかった。これらの菌株はまた、富培地において極めて遅い増殖をし、天然にほとんど存在しない。下で検討されるように、予想外に、他の菌株との特定の組合せにおいて、K8株は改善した増殖を示した。
【0152】
材料および方法
各菌株を前培養物として増殖させ、前培養物をODにより標準化した。各々の試験前に、1.7mMのcis-9,cis-12 リノール酸を含む新鮮培地を調製した。培養物をその後、静置または220rpmで振盪して、37℃でインキュベートした。サンプルを種々の時点で採取し、直に脂質抽出およびガスクロマトグラフィー(GC)解析まで-80℃で凍結した。
【0153】
GC分析について、培地中の脂質を抽出し、それらのメチルエステルに変換した。このために、100μlの培地サンプルを900μlのHOで希釈した。20μgのヘプタデカン酸を内部標準として添加し、完全な脂質フラクションを酢酸エチルで抽出した。有機相をその後分離し、窒素下で乾燥させた。脂質をその後、14% 三フッ化ホウ素-メタノール溶液(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号B1252)を用いて変換し、ヘキサンで抽出し、窒素下で乾燥させ、100μlのヘキサン中に再懸濁した。その後、FID検出器を備えたVarian CP 3800ガスクロマトグラフで、サンプルを分析した。使用したカラムは、CP-WAX 58(FFAP)キャピラリーカラム 25mx0.32mm I.D(Agilent Technologies、サンタクララ、カリフォルニア州)であり、温度プログラムは120℃(1分)-120℃~250℃(20℃/分)-250℃(12分)であった。
【0154】
実施例2:細菌株混合物の最適化
実施例1は、単離したアクネ菌株がそれらの増殖行動において有意に異なったことを示す。一般に、クレードI由来の菌株は増殖が速いことが分かったが、クレードII由来の菌株は増殖が遅いことが分かった(例えば、図5を参照)。一般に、ざ瘡に関連しないと考えられる菌株は、クレードIIに由来することがより多い(LomholtおよびKilian、2010;Yuら)。この遅い増殖は、これらの菌株が、殺菌後に皮膚にコロニー形成する可能性が低いことを示す。クレードII由来の菌株はまた、ヒト対象においてあまり見られない。天然において、皮膚は増殖が速いクレードI由来の菌株によりコロニー形成される傾向がある。対照的に、クレードII菌株による皮膚のコロニー形成を可能にする菌株混合物が本明細書に記載される。
【0155】
さらなる増殖曲線試験は、2種または4種の菌株混合物が、混合物における最も速い純粋な単離種と同等の速さで増殖することを示した。驚くべきことに、寒天上で5日間増殖させた6種の菌株から成る混合物の組成物を分析したとき、細菌の大部分は個々に増殖させたときに増殖が遅いことが観察されたK8株に由来することが分かった(図7)。従って、菌株混合物は、本来増殖が遅く、本来駆逐される可能性のある菌株を含むとしても、有利な増殖性質を有する菌株混合物が生み出され得る。
【0156】
クレードIのA1株は、尋常性ざ瘡に関連することが報告されている(LomholtおよびKilian、2010、PLoS One 5;McDowellら、2012、PLoS ONE 7、e41480)。クレードII由来の菌株と混合して皮膚を共にコロニー形成するためのクレードIA1由来の菌株を選択するために、cis-9,cis-12 リノール酸のtrans-10,cis-12 異性体への変換基準を菌株の選択のために使用した。防腐剤を有する化粧品および衛生用品の増加する使用は皮膚で優占種となる増殖が速い菌株の自然選択をもたらすため、このような菌株混合物を用いた皮膚のコロニー形成は、一部は自然に起こりにくい。従って、自然に起こるアクネ菌株の移動(例えば、近接した身体の接触による)において、移動した細菌の大部分は、1種の菌株のみに由来する。
【0157】
増殖行動およびtrans-10,cis-12 リノール酸の両方に基づいて、細菌株混合物を含む組成物において使用するための、コロニー形成のための菌株として、C3株を選択した。その後、皮膚上の組成物の開始濃度を変化させる効果を、試験した。6種の異なる菌株を同量混合させ6種の菌株の1種を過剰に添加した。増殖の5日後または6日後、混合物の組成物をその後評価した。増殖曲線に関するこのデータに基づいて、細菌株混合物を含む組成物中の菌株の濃度を選択した。
【0158】
高濃度(例えば、60%以下)のクレードI由来の菌株を添加し、それらはcis-9,cis-12 リノール酸の低い変換率を示し、中高ODまで増殖し、5日から6日で混合物の相対量が減少を示した。
【0159】
混合物は、所定の菌株が最大で集団の50%で存在するように調製された。天然では、ほとんどの時間、1種のアクネ菌株は、1個体において観察されたアクネ菌集団の90%以上で存在する可能性がある。
【0160】
アクネ菌の増殖行動は、いくつかの菌株については開始CFU数に大きく依存することが観察された。従って、培養物が定常状態に達した後に、どのようにして混合物における1つの菌の相対的割合が展開するかを調査した。驚くべきことに、菌株が優占種となる根底の動態は、少なくとも一部は細菌の開始量により決定され、菌株により異なることが分かった。
【0161】
前培養物をRCM培地で増殖させ、遠心分離後、PBS中で再懸濁した。培地をOD 0.5に対して標準化した。その後1mlの培地を50μlの標準化した懸濁液に接種した。プレートを気密性に密封し、その後培養物をTecan Sparkで37℃でインキュベートした。培養物を30分ごとに振盪させ、600nmでのODを測定した。RCM培地はBD(BD/Difco カタログ番号218081)から入手した。PY培地は2%酵母抽出物(Sigma カタログ番号Y1625-250G)および3%ペプトン(Sigma 70172-500G)のみから成るカスタム培地である。この培地はグルコースを含まず、それにより、RCMまたはBHIのような高いグルコース含量を有する富培地よりも、脂腺においてアクネ菌により遭遇するグルコース環境を正確に反映する。
【0162】
図4は、接種5日後または6日後の混合物におけるC3菌株の相対量を示す。開始混合物中に高い割合のC3が存在するとき、C3は優占菌株のままである。驚くべきことに、より低いC3の開始濃度は、後期定常状態における全体的割合を減少させる。
【0163】
図5は、37℃でのRCM培地C3、F4、C1およびK8株の増殖曲線を示す。
【0164】
図6は、37℃でのグルコース無添加PY培地におけるC3、F4、C1、K8株、2種の菌株(C3株およびK8株)の混合物および4種の菌株(A5、C3、F4およびK8)の混合物の増殖曲線を示す。
【0165】
実施例3:菌株の組合せを用いた競合実験
多様な細菌混合物の相乗効果を決定するために、インビトロ試験を実施した。新しい細菌培養物を-80℃ストックから取り出し、RCM寒天プレート上で増殖させた。寒天プレートから、BHI液体培地に接種され、定常状態まで5日間増殖させた。その後培養物を遠心分離(4000g、4℃で10分間)により回収し、1.4mlの0.1%ペプトン(カゼイン由来トリプシン分解ペプトン)中に再懸濁した。ペプトン中の細菌懸濁液をその後、0.8のODに対して標準化した。適用前の保存を模倣するために、菌株をペプトン溶液中で室温(RT)で一晩保存した。翌朝、全ての菌株を等モル濃度で混合し、この混合物をペプトン溶液でさらに1.6倍希釈した。従って、各菌株はストック溶液と比較して、混合物中で1:10で希釈される。その後、種々の組合せを含む96ウェルマスタープレートを作製した(表3)。
【表3】

【0166】
これは次の濃度をもたらす(表4)。
【表4】

【0167】
プレートを次のプロトコルに従い回収した。各ウェルについて、10μlの無菌PBSを添加した。短時間のインキュベート後、各ウェルの細菌を再懸濁し、新たなプレートへ移した。細胞を遠心分離によりペレット化し、MilliQ 水で2回洗浄した。ペレットをその後90μlの新たに調製した0.05M NaOH(20mlのMilliQ水に100μlの30% NaOH)に再懸濁した。プレートをその後PCR機で、60℃で45分間インキュベートした。その後、9.2μlのTris(pH 7)および5μlの上清を添加することにより反応を中和し、20μlのPCR反応液におけるテンプレートとして使用した。PCRを、集団を特徴付けるためのSLST対立遺伝子を増幅するために行った。使用したプライマー配列は:
SLST FW:TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCAGCGGCGCTGCTAAGAACTT(配列番号:81)および
SLST-RV:GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGCCGGCTGGCAAATGAGGCAT(配列番号:82) (Scholzら、2014)
であった。
【0168】
κポリメラーゼ(5分 95℃;35サイクル:(98℃ 20秒、62℃ 25秒、72℃ 30秒);1分 72℃)を用いてサンプルを増幅させた。2ラウンドのPCRを用いて配列ライブラリを構築した。第一ラウンドでは、イルミナシーケンシングと適合する配列を含むSLSTプライマーを使用した。第二ラウンド(10サイクル)は、単一のイルミナフローセルにおけるシーケンシングのために種々のサンプルをバーコード付けするために使用した。PCR反応および3-S-Biokit DNA抽出物を、(RohlandおよびReich、2012)に従って製造された磁性粒子を用いて精製した。プロメガWIZARD(登録商標) SV GelおよびPCRクリーンアップシステムを用いて、指標反応をプールし、アガロースゲルから精製した。その後、最終ライブラリをAgilent TapeStationで品質管理し、Roche LightCycler 480でKAPAライブラリ定量キットKK4854を用いて、qPCRにより定量化した。2*300Bp読み取り(MS-102-3003)を備えたMiSeq Reagent Kit v3を用いて、イルミナMiSeqシーケンシングを行った。
【0169】
社内開発されたコンピュータパイプライン(S-ジェノタイピング)を用いて、サンプルを分析した。品質フィルター;bwaソフトウェアを用いてサンプルを内部データベースにマッピングし;R統計言語を用いてデータ処理および可視化を行った。アクネ菌SLSTタイプの最新ライブラリをmedbac.dk/slst/pacnesからダウンロードした。
【0170】
本実験は個々の菌株の増殖行動は、混合物としてのそれらの増殖行動と異なることを示した。A5のように単独での増殖が速い菌株が培養物中で優位になると予測されていた。驚くべきことに、他の菌の存在下で増殖させたならば、最終混合物に対して少量でのみ寄与すると予測されていた増殖が遅い菌株(K8)が、最終バイオマスに対する主な寄与者であった。図7は、CM寒天における増殖前および5日後の、配列読み取りにより決定された種々のアクネ菌の混合物の相対的な組成物の変化を示す。驚くべきことに、単離菌として使用したとき、増殖が極めて遅いK8株は、試験5日目で培養物の大部分を奪取した。試験前、全ての菌株を、それらのODにより、開始培養物におけるバイオマスの16%といなるように標準化した。試験後、K8は69%で最も優勢な菌株であった。また、E3のみがまたバイオマスにおいてその占有率を増加させることができた。C3部分は8%まで減少し、一方でA5、C1およびF4は1%まで減少した。
【0171】
実施例4:化粧品に見られる一般的な防腐剤であるDMDMヒダントインおよび安息香酸を用いた単離菌株および菌株混合物についての最小細菌濃度(MBC)および最小阻害濃度(MIC)の決定
ヒト対象の皮膚における防腐剤を含む化粧品の適用を模倣するために、および対象の皮膚マイクロバイオームに対するそれらの防腐剤の効果を評価するために、実験を行った。単一の菌株または複数の菌株混合物に対する防腐剤の効果の間に何らかの差異があるかどうかを調査した。
【0172】
4種の個々のアクネ菌株を、接種材料として別個の培養物中で増殖させた。その後、各培養物をそのODにより標準化し、化粧品に一般的に使用される2つの防腐剤、DMDMヒダントインまたは安息香酸を負荷した。各菌株を単独でおよび他の菌株と組合せて試験した。個々の菌株および菌株の組合せを、防腐剤に24時間曝露させ、そしてその後、防腐剤の最小細菌濃度(MBC)および最小阻害濃度(MIC)を決定するために寒天上に蒔いた。
【0173】
A5株、C3株、F4株およびK8株を強化クロストリジウム培地(RCM)(Becton-Dickinson、カタログ番号218081、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)で-80℃のストックから増殖させた。各菌株について、50mlのRCMに0.5mlのOD 1.0のストックを接種した。細菌を37℃でインキュベートしながら、一定の間隔でODを測定した。MIC試験について、対数期に細菌を収集し、下記のとおり標準化した。MBC試験について、細菌を定常期に達するまで増殖させ、次の試験に進める前に37℃で24時間さらにインキュベートした。その後、希釈剤としてRCM培地を用いて、サンプルをOD 0.5に標準化した。
【0174】
DMDMヒダントインの希釈標準溶液(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号PHR1358-1ML)および安息香酸(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号242381-25G)を、RCM培地中でDMDMヒダントインについて1%、0.25%、0.125%および0.1%、2.5%、0.63%、0.31%および0.25%の濃度およびRCMのみから成るブランク対照として調製した。これらの濃度は化粧品において一般的に使用される量に対応する希釈率を示す。DMDMヒダントインはEUにより化粧品中に1%までの濃度に制限され、および安息香酸はFDAにより「洗い流す製品」において2.5%および「洗い流さない製品」において0.5%に制限されている。96ウェルプレート中で曝露させ、各条件を、トリプリケートで試験した。各サンプルについて、防腐剤を含む200μlの培地を20μlの標準化した細菌溶液とインキュベートした。
【0175】
負荷培地に菌株を別個にまたは混合物として添加した。各菌株について、菌株を別個に添加するときまたは菌株を混合物の成分として添加するとき、同一の全体細菌数(OD測定により決定される)を使用した。混合物は2種の菌株または4種の菌株で構成した。2種の菌株混合物は、C3株およびK8株を含み、各細菌は細菌重量の約50%で存在した。4種の菌株混合物はA5株(約35%)、C3株(約55%)、F4株(約10%)およびK8株(約5%)を含んでいた。MBCおよびMIC試験の両方を96ウェルプレートにおいて設置した。プレート効果を避けるために、最も外側のウェルを水で満たした。MIC試験について、細菌を嫌気性条件下で、液体培養中で5日間増殖させ、その後それらを分析した(表5)。
【0176】
MBC試験について、細菌をRCM培地中で24時間、嫌気性環境中で、37℃で防腐剤に曝露させた。24時間後、10μlの各試験ウェルを、200μlのRCM寒天(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号91365-500g)でそれぞれ満たされた寒天プレート(96ウェルプレート)に移し、酸素の非存在下で、37℃で4日間インキュベートした。4日後、MBCを決定するために、各プレートをコロニーの可視増殖について分析した(表6)。
【0177】
【表5】


【表6】


【0178】
結果
インビトロ試験は2つの状況を模倣した。MIC試験は、アクネ菌が標準的な化粧品に混入する状況を表した。MBC試験は、皮膚に生存細菌が局所適用された化粧品に由来する防腐剤に曝露される状況を表した。
【0179】
予想されるように、MIC試験において、液体増殖培地に存在するとき、両方の防腐剤は効果的に増殖を阻害した。化粧品において一般的に使用される濃度より顕著に低い濃度でさえ、個々のアクネ菌株または混合物の増殖は検出されなかった。
【0180】
MBC試験において、驚くべきことに、結果はMIC試験と異なるものであった。一般的な防腐剤である安息香酸は、0.31% 体積/体積より高い濃度で全ての菌株の増殖に影響を与えた。しかしながら、種々の菌株間で差異が観察された。A5株およびC3株は0.31% 安息香酸の曝露に対して24時間生存したが、F4株およびK8株はこの曝露後に増殖できなかった。菌株混合物は、個々の菌株により耐容される安息香酸 0.31%の最大濃度までのみ増殖した。「洗い流さない」製品は、最大濃度0.5%の安息香酸を含む。データに基づいて、このような濃度は、アクネ菌の一部にしか影響を与えず、他のアクネ菌株はこのような濃度で生存する。
【0181】
DMDMヒダントインを用いて同様の試験を実施したとき、驚くべき結果が得られた。任意の個々の菌株単独により耐容される濃度(0.1%)より高い濃度(0.13%)菌株混合物の予想外の増殖が観察された。これは皮膚に確立されたアクネ菌株の細菌群集が、皮膚に確立された単一細菌株と比較して、DMDMヒダントインのような防腐剤を含む製品への曝露に対して改善した生存率を有することを示す。これはヒト対象の皮膚への確立および長期持続性について、個々の菌株と比較して細菌混合物についての予想外の利点を提供する。2種の菌株の組合せは、DMDMヒダントインのようなホルムアルデヒド遊離物質に対して、試験されたあらゆる個々の菌株より優れた耐性を提供した。
【0182】
実施例5:ざ瘡患者における臨床試験(ACBAC)
ざ瘡患者における臨床パイロット試験を実施した。パイロット試験では、マイクロバイオームの細菌生着ならびに安全性および有効性傾向を評価した。安全性、安定性および反応速度のような基準を含むパイロット試験に基づいて、パイロット試験において試験された混合物の1つをより規模の大きな臨床試験のために選択した。
【0183】
パイロット試験スケジュール
18~23歳の14名の対象で6週間、パイロット試験を実施した。第一エンドポイントは安全性および有効性傾向であった。2つの異なる細菌製剤:A2(アクネ菌のC3株およびK8株を含む2種の菌株混合物)およびB4(アクネ菌のC3株、K8株、A5株およびF4株を含む4種の菌株混合物)を試験した。実施例2に記載のデータと一致して、A2製剤を与えられた対象はC3と比較して皮膚におけるK8より高いまたはそれと同等の相対的存在量を示し、これはC3株が増殖の遅いK8株が皮膚にコロニー形成するのを助けたことを示唆する(図25)。
【0184】
両方の製剤は、副作用を伴わない優れた安全性プロファイルを示した。非炎症性病変の顕著な減少および炎症性病変の軽減のわずかな傾向が観察された。さらに、一般に健全な皮膚への前向きな進展と考えられる皮膚pHの低下が観察された。セブメーター測定値は雑音が多かったため、皮脂産生における変化の可能性はなお調査中である。より精密なセブテープの解析がなお継続中である。一部対象において、適用した菌株の増加が明確かつ顕著であった(例えば、21日目とおよび42日目の両方で、1日目と比較して少なくとも15%まで増加)。菌の相対的存在量をSLSTのアンプリコンシーケンシング(NGS)で測定した。これらの対象は、受容者として定義された。下記のとおり、受容対象は、例えば、例えば、非炎症性病変およびpHに対する効果を示した。従って、パイロット試験からの結果は肯定的なものであり、より大規模な臨床試験をもたらした。
【0185】
パイロット試験設計
対象を無作為に2群に分け、各群の対象に異なる細菌製剤を投与した。細菌製剤は二重盲検式であった:群1:n=8対象は製剤A2を与えられた。群2:n=6対象は製剤B4を与えられた。1日目、7日目、21日目および42日目に対象を評価した。第一週、1日目~7日目に、全ての対象に過酸化ベンゾイル(BPO)処置をした(1日に1回適用)。その後5週間、7日目~42日目、全ての対象に細菌製剤を与えた(1日に2回ゲルを適用)。図8Aはパイロット試験の設計を示す。
【0186】
1日目、7日目、21日目および42日目の4回の来院時に対象を試験した。表7は各来院時に実施し、記録した測定値を示す。
【0187】
安全性
投与される製剤の安全性を、各回で、例えば発赤、炎症または他の何らかの皮膚の問題の視覚的評価により評価した。試験中、安全性問題は観察されなかった。7名の対象から、BPOの使用中(1日目~7日目)に皮膚の乾燥または発赤が報告された。しかしながら、生存細菌投与中、対象の皮膚は赤くならず、炎症を起こさずまたは他の問題も起こらなかった。生存細菌の投与に関連する副作用は観察されなかった。
【表7】

【0188】
マイクロバイオームサンプル
細菌種分類(16S)
マイクロバイオームサンプル中の細菌種(16S)の組成を各来院時に解析した。図9は治験における全対象の皮膚マイクロバイオームに最も多く存在する9種の細菌の相対比を示す。BPO適用後、総アクネ菌集団の減少が観察された(7日目)(図11A)。細菌適用2週間後、総アクネ菌集団の顕著な増加が観察された(21日目)(図11A)。細菌適用5週間後(42日目)、総アクネ菌集団のわずかな減少が観察された。いかなる理論にも縛られることを願わないが、この減少はマイクロバイオームの均衡状態および/または細菌集団の多様性の増加を表し得る。図11Bは、アクネ菌の相対比を箱ひげ図として示す。これらの観察は本明細書に記載の製剤の投与後のマイクロバイオーム組成生育における肯定的な傾向を示す。
【0189】
アクネ菌の菌株レベル解析(SLST)
単一遺伝子座配列タイピング(SLST)を用いて、各来院時(1日目、7日目、21日目および42日目)に採取したマイクロバイオームサンプルのアクネ菌株レベル組成を決定した。
【0190】
一般的に見られる菌株は1日目の大部分のサンプルにおいて優勢であった(基底状態)。細菌製剤の投与後、大部分の対象において適用した菌株への皮膚マイクロバイオームの組成のシフトが観察された。一部対象において、適用した菌株の増加は明確かつ顕著であった(1日目と比較して、21日目および42日目の両方で少なくとも15%の特定の菌株の増加)。これらの対象は、受容者として分類された。一部対象において、適用した菌株の増加はあまり顕著ではなかった。これらの対象は、非受容者として分類された。図10は受容者および非受容者として分類された対象の相対比を示す。
【0191】
全体で、対象の43%が受容者として分類され、57%が非受容者として分類された。製剤で分けると、50%の受容者および50%の非受容者がA2製剤群で観察され、一方で33%の受容者および67%の非受容者がB4製剤群で観察された。両群とも小規模であるため、2つの群の間の差異は統計的に有意ではない。
【0192】
年齢、性別、抗菌製品の使用またはシャワーのパターン(showering pattern)のような受容者となる確率に顕著に影響する可能性のある他の交絡因子は観察されなかった。
【0193】
細菌種(16S)および菌株レベル(SLST)分析
細菌種(16S)データとアクネ菌の菌株レベルデータ(SLST)を比較したとき、1日目(基底状態)にアクネ菌の相対存在量が非受容者(41%)と比較して受容者(34%)で低かったことが観察された。治験中、受容者におけるアクネ菌の平均相対存在量は、42日目(最終来院時)までにほぼ2倍(60%)に増加した。相対存在量は、標準的な16Sアンプリコンシーケンシングを用いて決定した。当分野で既知のこの方法において、16Sリボソームサブユニットの特定部位がPCRによりサンプル中の全ての細菌DNAから増幅される。サンプル中に存在する種々の細菌種は、アンプリコンを配列決定することにより同定される。次世代シーケンシングは、サンプル中の全ての配列/種の完全な相対分布を評価することを可能とする。
【0194】
非受容者群は、t検定で分析されたように、試験中にわずかな、かつ統計学的に有意でないアクネ菌の増加を示すのみであった(図11)。
【0195】
マイクロバイオーム結果の概要
患者のサブセットにおいて、適用した細菌は投与後に効率的に確立された。この対象のサブセットは、治験開始時のアクネ菌の低い割合および治験終了時の顕著に増加したアクネ菌の割合により特徴付けられた。
【0196】
ざ瘡病変数
1日目(基底状態)および42日目(最終来院時)の来院時、皮膚科医が対象の顔の病変数をカウントした。病変数は炎症性および非炎症性病変に分けられた。
【0197】
非炎症性病変
非炎症性病変は、面疱としても知られる。面皰は開放(黒色面皰)または閉鎖(白色面皰)であり得る。
【0198】
両方の製剤において非炎症性病変の相当な減少(37%、P=0.006)が観察された。減少は、A2製剤においては55%、P=0.05、およびB4製剤においては35%、P=0.06に相当した(図12)。
【0199】
受容者および非受容者(皮膚マイクロバイオーム組成が変化した/変化しなかった対象)間の非炎症性病変の減少を比較すると、病変減少の大部分は受容者群において観察された(図13)。
【0200】
群を受容者および非受容者に層別化した後、効果は両群において統計的に有意であり、p値は0.03未満であった。非受容者は全体的に基底状態(1日目に)における非炎症性病変が少なかった;しかしながら、広がりが小さく、病変の減少が比較的顕著ではなかったため、結果は依然として極めて統計的に有意であった(図13)。
【0201】
炎症性病変
炎症性病変は通常、閉鎖面皰(非炎症性病変)の壁面の破裂後に生じる。それはまた、正常に見える皮膚からもまた、生じ得る。ざ瘡における炎症性病変は、いくつかの実施態様において、小さな赤い隆起(丘疹)、膿疱、大きな赤い隆起(小結節)および仮性嚢胞(変動制結節)を含む。
【0202】
炎症性病変数の減少が、細菌製剤の投与後に観察された。全対象の平均(両方の製剤について)は処置前が19の炎症性病変であり、処置後が16であり、これは処置後約15%の減少に相当した。A2製剤は約20%の減少(20/16)をもたらし、一方でB4製剤は約9%の減少(17/15.5)をもたらした(図14)。この差異は統計的に有意ではなく、かつ受容者と非受容者の間に顕著な差異は見られなかったが(図15)、統計的有意差がないことは、少なくとも一部は、高い標準偏差をもたらす、短い試験期間、サンプル規模の小ささおよび全病変数の少なさによると考えられた。いかなる理論にも縛られることを願わないが、非炎症性病変が炎症性病変に先行するため、生存細菌を用いた処置は、非炎症性病変と比較して炎症性病変に対する効果の発揮が遅い可能性がある。観察されたデータに基づいて、炎症性病変の減少に対する統計的に有意な効果は、より長期の治験で期待される。
【0203】
皮脂測定
対象の皮脂産生を評価するために、2つのタイプのアッセイを使用した。各来院時(1日目、7日目、21日目および42日目)にセブメーター測定を行い、一方でサンプリングに時間がかかるため、セブテープ測定を1日目(基底状態)および42日目(最終来院時)のみ行った。セブメーターを用いた初期の読み取りからは、一般的傾向は明らかにならなかった。しかしながら、セブメーターは簡単に迅速な測定を提供するが、洗浄、発汗などのような外部因子に強く影響されるため、いくつかの他のアッセイより信頼性が低い。
【0204】
皮膚pH測定
pHメーターを用いて、対象の皮膚のpHを各来院時(1日目、7日目、21日目および42日目)に測定した。対象の皮膚のpHにおける減少は1日目と42日目の間で0.4ポイントまで観察された。pHの減少は健全な皮膚の肯定的な進展であると考えられる。
【0205】
非炎症性病変と同様に、効果は受容者として分類された対象においてより顕著であり、非受容者として分類された対象においてあまり顕著でなかった(図16)。投与される特定の製剤に基づく相関は観察されなかった。観察された効果は、Nodakeら(2015)により報告された効果と同程度であった。
【0206】
自己評価
各来院時、対象は問診に回答した。問診は、皮膚の自己評価および製品の使用に関するものであった。次の皮膚の状態:面皰の発生、面皰の数、面皰に関連する発赤の出現、面皰の大きさ、面皰の重篤度、皮膚の油分、皮膚のてかり、皮膚の乾燥、皮膚の剥離、皮膚の滑らかさおよび皮膚の全体的な外観を報告した。
【0207】
上記問診の平均を用いて、1日目と42日目の間に対象の85%が改善を報告し、対象の15%が変化なしと報告した。全体の平均的な改善(1日目と4日目の対象の全ての問診の平均)は、1.62点であった(スケール1~10について)。A2製剤使用者(2.05点)および受容者(1.75点)でより高い満足度が観察された。
【0208】
全対象で、最も改善が観察されたのは「皮膚の乾燥」(2.21点)であり、続いて「皮膚の全体的な外観」(2.07点)および「皮膚の滑らかさ」(2.00点)であった。
【0209】
トップボックス分析に基づいて、スケールを3つのボックス:下=1~3点、中央=4~7点および上=8~10点に分けた。図17は、各来院時(1日目、7日目、21日目および42日目)での全回答の対象の平均値に基づく対象の分布を示す。試験を通してより高いスコアへのシフトが見られる。自己評価において対象から高い製品の受容率および全体的に肯定的なフィードバックが観察された。
【0210】
図18は、15種の最も一般的に見られるアクネ菌株の相対的存在量のヒートマップを示す。図19は、写真に基づく比較からのデータを示す。図20は、患者評価概要からのデータを示す。何名かの対象は、3回目の来院で初期の減少を示したが、4回目の来院までに全体的に改善した。いかなる理論にも縛られることを願わないが、新しく確立した菌株に適応することは、一時的な悪化に寄与し得る。試験の開始時および終了時に、病変カウントを実施した。大部分の対象はざ瘡病変の減少を示した。
【0211】
パイロット試験の概要
非炎症性病変における統計的に有意な減少が観察された。標準的な治療処置において非炎症性病変の減少は一般的に長期間かけてしか観察されないため、これは驚くべきことであった。BPOと他の技術常識の処置(SeidlerおよびKimball、2010)を比較したComprehensive meta-analysisにおいて、プラセボ群は非炎症性病変において6.7%までの減少を示した。本明細書に記載の試験において、受容者群は50%近い減少を有し、これはプラセボを超える効果が観察され得ることを示す。効果の程度は、非炎症性病変を標的とする能力において現在の最先端処置より潜在的に優れている。
【0212】
16Sマイクロバイオームデータの分析およびアクネ菌集団の菌株レベル分類との相関に基づいて、適用した細菌株を許容する対象(受容者として分類される)が他の全ての細菌と比較してアクネ菌の相対割合で増加を示したことは明らかであった。非受容者は試験を通じてアクネ菌の相対比を維持したが、ベースライン来院時(1日目)のアクネ菌の相対割合がより高いことにより特徴付けられた。いかなる理論にも縛られることを願わないが、非受容者は、細菌株が投与される前に施される殺菌処置が常在アクネ菌集団を排除するのに十分でなく、ろ胞中に隠れたままであり得るなどのように、既にアクネ菌により完全にコロニー形成されている可能性がある。対照的に、受容者は完全にコロニー形成されておらず、細菌株の投与前に殺菌処置により生息するアクネ菌集団を減少させるまたは排除することが可能である可能性がある。改良された殺菌性製品は、受容者率の増加を可能にし得る。
【0213】
皮膚pHについて観察された効果は、皮膚細菌を用いた他の無作為二重盲検臨床試験により報告された効果(Nodakeら、2015)と同程度であった。試験を通じてpHが低下しただけでなく、対象の皮膚pHの標準化を示すその変動の減少もまた励みとなる。
【0214】
パイロット試験における多数の対象が、より滑らかな皮膚を報告し、これはパイロット試験に参加した皮膚科医が記録した非炎症性病変の減少と相関する。さらに、多数の対象が減少した皮脂産生の指標となり得る脂の少ない皮膚を報告した。
【0215】
データは、菌株レベルでの皮膚マイクロバイオームの調節が十分に耐容性であったことを示す。対象の大部分は皮膚状態の全体的な改善を経験した。特に、掻痒の減少、目立つざ瘡病変の減少およびより良好な全体的な皮膚の外観が報告された。顕著な悪化または長期の炎症を経験した対象は存在しなかった。この臨床試験において脱落者は存在しなかった。
【0216】
材料および方法
アクネ菌産生のために使用された材料は、1Lのショットボトル;細胞培養フラスコ磁石;セロロジカルピペット;フィルター付きピペットチップ、1000μl;ファルコン;大規模バッチを回転させるためのカップ;ペトリ皿;シリンジ 2.5ml;シリンジ用ストロー;シリンジ用キャップ;およびエッペンドルフを含んだ。
【0217】
使用された化学物質は、NATROSOL(登録商標) 250 Hx Pharm.、ヒドロキシエチルセルロース;Kat-Hefe培地;デキストロース(α-D-グルコース)、無水96%、Aldrich、参照番号:158968;塩化ナトリウム(NaCl);強化クロストリジウム寒天;およびカゼイン由来ペプトン(トリプシン分解)を含む。
【0218】
細菌培地調製:各リットルを含めて、RCM寒天を次の販売者の指示書に従って調製した:液体プログラム中の混合物をオートクレーブし;寒天を分配する前にそれぞれ1Lの最終体積に対して100mg/mlのフラジリドン(200μl)を添加し;調製したRCM寒天をペトリ皿および平底96ウェルプレート(各ウェル200μl)に分配した。
【0219】
次の溶液を調製した:
1)1Lのショットボトル中に、20gのKat-Hefeタンパク質;5gのNaCl;および900mlの水を含む培地ベース溶液混合物
2)100mLのショットボトル中に、30gのデキストロース(α-D-グルコース)および100mlの水を含む10xデキストロース溶液混合物。
【0220】
両方の溶液をオートクレーブした。無菌的に冷却した後、100mlの10xデキストロース溶液を、最終培地を形成する培地ベース溶液(1Lボトル)に添加した。最終培地は次の濃度:20g/LのKat-Hefeタンパク質;5g/L NaCl;および30g/Lのデキストロースを含んだ。
【0221】
2.5gのカゼイン由来ペプトン(トリプシン分解)および1Lの水を含むペプトン溶液混合物を、1Lのショットボトルに調製した。この溶液を液体プログラム中でオートクレーブした。最終溶液は、0.25%のペプトンを含んだ。
【0222】
細菌培養物
確認された純粋な菌株から、細菌前培養物の調製を開始した。各ファルコンを50mlのRCM培地で満たした。菌株に応じて、所望の菌を含むシリンジを室温で解凍し、0.5mlのゲルを対応するファルコンに移した。細菌培養物を37℃で増殖させた。
【0223】
細菌培養物を作製するための段階を下に概説する。
・50mlの前培養物を、750mlの無菌細胞培養フラスコ(主培養)中の450mlのKat-Hefe培地に添加した。サンプルを37℃でインキュベーターに入れて、定期的OD測定により増殖をモニタリングした。
・サンプルを10分間沈降させ、上清を除去した。
・サンプルを50mlの0.25% カゼイン由来ペプトン(トリプシン分解)で1回洗浄した。
・サンプルを10分間沈降させ、上清を除去した。
・各ペレットを50mlの0.25% カゼイン由来ペプトン(トリプシン分解)中で再懸濁した。
・細菌懸濁液を標準化した。
・所望の製剤に応じて細菌混合物を混合した。
・ゲルを調製するために無菌のHec粉末を添加し、静置した。
・シリンジを満たした。
【0224】
アクネ菌C3株およびアクネ菌K8株はそれぞれ2017年10月19日に、DSMZ(Leibniz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、Inhoffenstraβe 7B、38124 Braunschweig、ドイツに寄託された。
【0225】
実施例6:大規模臨床試験のためのアクネ菌の産生
食品グレード法を用いて、大規模臨床試験において使用される細菌株のサンプルを製造し、同様に細菌を含まないプラセボサンプルを製造した。製造されたサンプルは9000個のラミネート加工されたアルミホイル小袋に無菌的に包装され、-80℃で保存された一分量あたり少なくとも1x10 cfuの濃度で2種のアクネ菌の1:1のブレンドを含む1ml分量のゲル培地、および5500個の同様の小袋に包装され、-80℃で保存された細菌を含まない1ml分量のゲル培地(placebo サンプル)を含んでいた。アクネ菌細菌株の産生に使用される方法および関連する結果は、本明細書に記載される。試験は2相に分けられた。パート1において、細菌の増殖、収集および保存が開発および評価された。パート2は細菌とプラセボサンプルのブレンド製造および包装から成った。
【0226】
材料および方法
菌株、培地および培養条件
アクネ菌株K8およびC3を無菌の1mlシリンジ中で2.5% ヒドロキシエチルセルロース(HEC)に希釈した培養物として得た。シリンジを-80℃で保存した。
【0227】
ストック培養物:K8株およびC3株を、ブレインハートインフュージョン寒天(BHIA;Tritium Microbiologie、Eindhoven、オランダ)プレートにシリンジ培養物から約0.05ml接種し、嫌気性容器中で一晩インキュベートすることにより調製した。インキュベート後のプレートからの細菌物質を希釈し、新しいBHIAプレートに広げて単一のコロニーを得た。37℃で一晩嫌気的にインキュベートした後、各菌株由来の単一のコロニーをBHI培養液(Tritium Microbiologie)に接種し、37℃で嫌気的一晩インキュベートした。得られた培養物は無菌60% グリセロール溶液と最終グリセロール濃度15%まで混合され、複数のサブサンプルに分配され、-80℃で保存された。これらのストック培養物は、発酵実験1.1、1.2、1.3および2.1に使用されるBHI培地において前培養物に接種するために使用した。実験2.2の実施前に、シリンジ培養物から新しいストック培養物を調製した。
【0228】
試験に使用した培地は:ブレインハートインフュージョン培養液(BHI)およびブレインハートインフュージョン寒天(BHIA);培地A:3% デキストロース、0.5%塩化ナトリウム、2%酵母抽出物(Kat、ドイツのみ)、pH 6.7;培地B:培地Aと1% ダイズペプトン(AM41、Organotechnie、La Courneuve、フランス)、pH 6.7;培地C:3% デキストロース、0.5% 塩化ナトリウム、2% 酵母抽出物(Springer 0251/0-MG-L、Biospringer、Maisons-Alfort、フランス)、pH 6.7;培地D:培地Cと1% ダイズペプトン、pH 6.7;および培地E:pH 6.3に調製した培地Dであった
【0229】
下に記載するように、全体で5回の発酵実験(パート1で3回、パート2で2回)を実施した。
【0230】
実験1.1:
アクネ菌K8およびC3を、100mlの培地A、B、CまたはDを含む100mlフラスコで培養した。BHI中の一夜培養物から培地を10ml接種した。フラスコを嫌気性容器中で保存し、37℃で24時間、撹拌せずにインキュベートした。
【0231】
実験1.2:
アクネ菌K8およびC3を、温度、撹拌およびpHを制御するためのユニットを備えた0.5L体積の発酵容器(Multifors 2 system、Infors、Bottmingen スイス)中の400mlの培地D中で培養した。BHI中の一夜培養物から1ml接種することによって調製した培地Dの一夜培養物から培地を40ml接種(10%接種)した。培養条件は:温度37℃;撹拌速度150rpm;2.5N 水酸化ナトリウムを用いてpH 6.0に制御またはpH制御なし;95% N/5% CO(流速125ml/分)を通気したヘッドスペースであった。
【0232】
実験1.3:
培地Dの一夜培養物から培地を8ml接種(2%接種)したことを除き、実験1.2について記載したものと同様の設定および培養条件である。
【0233】
実験2.1:
アクネ菌K8およびC3を、温度、撹拌およびpHを制御するためのユニットを備えた3L体積の発酵容器(Applikon Biotechnology、Delft オランダ)中の2Lの培地D中で培養した。接種方法および培養条件は実験1.3に記載したものと同様であった。
【0234】
実験2.2:
培地をpH 6.0に調製し(培地E;段落2.1.2を参照)、撹拌速度を250rpmに増加させたことを除き、設定、接種方法および培養条件は実験2.1に記載したものと同様であった。
【0235】
収集
アクネ菌株を含む小袋の製造のために、実験2.2を使用した。両方の菌株について、2.0Lの体積の培養物を1Lの遠心分離容器中で、16,000xgで10分間、環境温度で遠心分離することにより収集した。ペレットを200mlの0.25% ダイズペプトン(AM41、organotechnie、La Courneuve、フランス)溶液に再懸濁し、もう一度遠心分離した。細菌を環境温度の200mlの0.25% ダイズペプトン溶液に再懸濁し、30分以内で処理した。これらの濃縮懸濁液の600nmでの光学密度は、アクネ菌C3については54.3であり、アクネ菌K8については48.4であった。
【0236】
アクネ菌を含むゲル培地およびプラセボゲル培地
アクネ菌C3およびK8の濃縮懸濁液(それぞれ19mlおよび21ml)を0.25% ダイズペプトン溶液中に最終体積2.0Lまで希釈した。この懸濁液のOD600は1.1であり、菌株間の比はOD600基準で1:1であった。無菌HECを激しく混合しながらこの溶液に最終濃度1.5%(w/v)まで溶解した。これを全体で9回繰り返した。バッチを混合し、総体積18Lのアクネ菌K8およびC3を含むゲル培地を得た。ゲル培地を環境温度で1時間保持し、ホイル小袋への包装を開始した。プラセボゲル培地は、イソ吉草酸を含む0.25% ペプトン溶液中に1.5% HECが最終濃度10μl/Lとなるように構成された。全体積10Lを製造した。HECを溶解する方法は、アクネ菌を含むゲル培地について記載したものと同様である。
【0237】
袋詰め(sacheting)、包装および保存
アクネ菌を含むゲル培地またはプラセボゲル培地を含む小袋は、小袋包装機を用いて独立した実施で製造した。機械はポンプ、袋詰め部位および熱伝導式印刷ユニットから成るものであった。ゲル培地を溶液から袋詰め部位へポンプ輸送した。袋詰め部位は、周囲で小袋が折りたたまれる無菌ステンレス鋼チューブ(ゲル培地用に1本および窒素ガス用に1本)ならびに130℃の温度で動く垂直および水平のシーリング部材から成るものであった。袋詰め部分の前に位置する印刷ユニットを、小袋にラベル付けするために使用した。65x65mmのラミネート加工されたアルミホイルのシートから小袋を製造し、折りたたんで3方向を熱で封をした(とじ幅約12mm)。最終的な小袋は65x30mmの大きさであり、約2mlの体積を有していた。1分あたり28個の小袋の製造速度および小袋1個あたり1.2(±0.15)グラムのゲル培地の量で機械を作動させ;小袋の残りの体積はNヘッドスペースである。充填中、小袋の上部に無菌窒素ガスを流した。充填作業の開始時および中断後、10~20個の小袋を廃棄した。充填作業の最後に、ゲル培地のサンプルを微生物学的分析(アクネ菌生存数および病原体分析)のために取った。アクネ菌を含むゲル培地を含む小袋をビニール袋(袋1個あたり小袋18個)に包装した。充填作業の過程で、小袋を連続1000~1500個の小袋で-80℃の冷凍庫に移した。出荷まで小袋を-80℃で保存した。アクネ菌を含む小袋またはプラセボ小袋を含む小袋は、独立した処理で製造した。
【0238】
分析
増殖測定および微生物学的解析
OD600の測定により、培養物中の細菌量を決定した。寒天における段階希釈液のプレート化し、37℃で24~30時間嫌気的にインキュベートすることにより、培養物およびゲル培地中のアクネ菌の生存数を決定した。アクネ菌を含むゲル培地およびプラセボゲル培地に病原体が存在しないことを確認するために、外部施設(Merieux NutriSciences、Ede、オランダ)により、表9に挙げる次の病原体についてゲル培地サンプルを分析した。
【表8】

【0239】
FACSフローサイトメトリー
FACSフローサイトメトリーを用いて、培養物の全体の数および生存率を決定した。LIVE/DEADTMBACLIGHTTM Bacterial Viability and Counting Kit(ThermoFisher scientific カタログ番号L34856)を用いて、2つの核酸染色液(緑色-蛍光LIVE/DEADTM9染色液および赤色-蛍光ヨウ化プロピジウム)の混合物で細菌を染色した後、生存率を決定した。
【0240】
結果
パート1
パート1の主な目的は、アクネ菌株の増殖についてのプロトコルを評価および改善することであった。プロトコルは2~3日のフラスコ内での嫌気培養から成り、OD600 0.6~1.2のバイオマス収量を与えるものであった。試験は、収量の増加、培養時間の短縮およびスケールアップ可能な培養系の使用を目的とした。
【0241】
実験1.1:
収量についての培地組成を最適化するために、実験1.1を行った。酵母抽出物の二つの供給源を比較し、ダイズペプトンの培地への添加の効果を決定した。細菌をフラスコで培養した。表10は培養物の生存数およびOD600を示す。データは、Springer酵母抽出物がKat酵母抽出物より高いOD600値および生存数を達成したことを示した。さらに、OD600に対する、およびそれより程度は少ないが、生存数に対するダイズペプトンの有益な効果が検出された。C3株よりK8株でより高いOD600および生存数が得られた。これらの結果に基づいて、ペプトンおよびSpringer酵母抽出物を含む培地を用いて後の実験を行った。
【表9】
【0242】
実験1.2:
発酵槽中での培養中の菌株の増殖特性を試験するために、および一定のpH 6.0での培養の効果を決定するために実験1.2を行った。OD600および生存数測定の結果を、表22および23にそれぞれ示す。pH制御した培養物は、pH非制御培養物より顕著に高いOD600および生存数を有した。pH非制御培養物の生存数は、4時間のインキュベート後より21時間のインキュベート後が約25倍低かった。この発見は、この実施態様において、恐らくpH非制御培養物の低いpH(pH 5.25)により細菌が死滅したことを示す。この結果は、図22はまた、21時間培養のうちに最大OD600値に達することも示した。pH制御発酵槽での培養中の塩基滴定の記録(示していない)は、接種後約14時間で、すでに定常期に達したことを示した。実験1.1の結果とは対照的に、K8よりC3株についてより高いOD600および生存数が得られた。これらの結果に基づいて、pH制御をpH 6.0に設定して後の発酵を行った。
【0243】
保存前および保存3週間後の生存数を測定することにより、-80℃で保存中のゲル培地におけるアクネ菌C3およびK8の安定性を試験した。細菌を収集し、ゲル培地(2.5% HEC)中に懸濁した。pH制御したK8の培養物ならびにpH制御していないC3およびK8の培養物は、保存中に生存数の減少を全く示さないか、少し示したのみであった。対照的に、pH制御したC3の培養物の生存数は、約60%まで減少した(表11)。
【表10】
【0244】
実験1.3:
実験1.2の観察を確認するために、および接種レベルが10%から2%に減少し得るかどうかを試験するために実験1.3を行った。培養中のOD600図24に示す。実験1.2の結果と一致して、K8株よりC3株についてより高いOD600が観察された結果はまた、C3菌株がK8よりわずかに速く増殖することを示した。さらに、この結果は、接種レベルを2%に減少させることができたことを確認した。OD600測定は、C3株およびK8株についての接種後、それぞれ約14時間および約18時間で定常期に達したことを示した。
【0245】
パート2
プラセボ小袋の製造
プラセボゲル培地を含む約6000個の小袋を製造した。小袋1個当たりの平均量は1.25g(1.10~1.40gの範囲)であった。微生物学的分析は、材料がサルモネラ菌、リステリア・モノサイトゲネス、腸内細菌、亜硫酸塩還元クロストリジウムおよびコアグラーゼ陽性ブドウ球菌を含まないことを示した(表12)。
【表11】
【0246】
アクネ菌を含む小袋の製造
C3株およびK8株を培養した。発酵期間は14時間であった。実験1.2および1.3と一致して、K8株よりC3株についてわずかに高いOD600および生存数が観察された。OD600値に基づいて、C3およびK8の濃縮培地を47:53の比で混合し、混合物中の最終比を1:1とし、それに1.5% HECを添加して小袋に包装した。表13にその結果を要約する。細菌の顕微鏡写真(図24)はアクネ菌の典型的な形態学を示した。生存数の測定に加えて、細菌の濃度もまた、FACSフローサイトメトリーにより決定した(表4)。この方法は、2つの異なるDNA染色により、生存している、損傷したおよび死滅した細胞を識別できる。生存数およびFACS生存細胞についての結果は、両菌株について同様であった。C3株およびK8株の培養物におけるFACS死滅細胞の割合(全体の割合)は、18%および40%であった。予想外に、濃縮細胞懸濁液におけるFACS死滅細胞は、培養物における割合より低く、C3およびK8について、それぞれ8%および16%であった。
【表12】
【0247】
合計約10,000個の小袋を製造し、そのうち9000個の小袋をビニール袋(袋1個あたり小袋18個)に包装した。小袋1個あたりのゲル培地の量を、小袋1個あたり1.2gに調製した。この量は通常開封し、絞り出すことにより、小袋から少なくとも1ml取り出すことを可能にする。小袋1個あたりのゲル培地の量を、小袋500~1000個ごとに(各時点で6個)測定した。小袋1個あたりの量は1.17g~1.38gまで変化し、平均は1.28gであった。小袋の製造の総稼働時間は7時間であった。小袋におけるゲル培地の生存数を製造作業中に4回決定し、それらは3.8x10~4.3x10cfu/mlの間で変化し、平均は4.0x10cfu/mlであった(表13)。これらの結果に基づいて、-80℃で保存する前の小袋1個あたりの平均生存数は5.1x10cfuであった。-80℃で7日間保存後の小袋1個あたりのゲル培地の生存数は、2.9x10cfu/mlであり(表4)、小袋1個あたり3.7x10cfuに対応する。微生物学的分析は、アクネ菌細菌のブレンドを含むゲル培地はサルモネラ菌、リステリア・モノサイトゲネス、腸内細菌、亜硫酸塩還元クロストリジウムおよびコアグラーゼ陽性ブドウ球菌を含まないことを示した(表12)。表14は小袋製造に使用されるラミネート加工したアルミホイルの規格を示す。
【表13】
【0248】
要約
酵母抽出物の代替源およびペプトンの添加を用いることにより、アクネ菌C3およびK8の培養ついての培地組成を変更した。酵母抽出物の二つの供給源を比較し、ダイズペプトンの培地への添加の効果を決定した。細菌をフラスコで培養した。表10は培養物の生存数およびOD600を示す。データは、Springer酵母抽出物はKat酵母抽出物より高いOD600値および生存数を達成した。さらに、OD600、およびそれより少ない程度に、生存数に対するダイズペプトンの有益な効果が検出された。C3株よりK8株でより高いOD600および生存数が得られた。これらの結果に基づいて、ペプトンおよびSpringer酵母抽出物を含む培地を用いて後の実験を行った。アクネ菌株はpH制御発酵槽において、14時間で約5x10cfu/mlに対応するOD600 4.0~5.0の最終バイオマス量まで増殖した。全体で9000個を超える5.1x10cfu/小袋のアクネ菌C3株とK8株の1:1のブレンドを含む小袋を製造し、-80℃で保存した。
【0249】
培養方法の変更(別の酵母抽出物源、ペプトン含有培地およびpH制御発酵槽における培養)は、5~10倍高いアクネ菌C3およびK8の収量をもたらした。
【0250】
生存数とOD600の間の比は、試験を通じて完全に一定であり:OD600 1.0の培養物または懸濁液について5x10~1x10cfu/ml懸濁液であった。この細胞濃度は他の多くの細菌、例えばラクトバチルス種および大腸菌と比較して低い。これはアクネ菌細胞がこれらの種より大型であることを示す。
【0251】
-80℃で1週間保存した小袋中のアクネ菌の濃度は、冷凍前よりわずかに低く(それぞれ4.0x10および2.9x10cfu/ml)(表4)、これは細菌が冷凍作業で十分に生存したことを示す。
【0252】
実施例7:大規模臨床試験
パイロット試験の解析に基づいて、次の態様を大規模臨床試験に包含させた:製剤A2が試験に選択され;23名の対象が活性群に割り当てられ、23名の対象がプラセボ群に割り当てられ;マイクロバイオームにおいていくつかの種の菌株レベル分析が包含され;そして受容者の割合を増加させるために最適化された殺菌プロトコルが包含される。ざ瘡患者は、少なくとも一部は多い病変数およびより高いざ瘡グレード、および対象が尋常性ざ瘡(pure teenage acne)(ホルモン性ざ瘡、成人性ざ瘡などを除く)を有する対象であるかどうかに基づいて選択される。
【0253】
対象は顔の尋常性ざ瘡グレード1.5~4(リード規模)を有する個体である。対象は、16~23歳の男女両方を含む。
【0254】
1日目に、全ての対象は過酸化ベンゾイル製品(Akneroxid gel 50mg/g、Almirall社)を受け取り、1日1回、7日間(1日目~7日目)顔に適用した。8日目に、対象は試験製品(細菌製品またはプラセボ)を受け取った。対象は顔に試験製品を1日2回(朝晩)、洗顔後に適用する。対象は製品を11週間(8日目~84日目)適用し続ける。この期間後、あらゆる適用なしに2週間経過観察する。測定およびサンプリングを1日目、7日目、28日目、56日目、84日目、91日目および98日目に実施する(表8、図8B)。表8において、「X」は試験のそれぞれ指定された日にどの解析法が行われるかを示す。
【表14】

【0255】
測定方法
病変カウントは熟練された研究者により視覚的に行われた。安全性評価は治験担当医または治験担当看護師により、発赤、炎症または何らかの他の皮膚の問題の視覚的評価により評価される。各来院時に画像を撮影する。実施例5で検討されたパイロット期間試験中は通常のカメラを使用したが、大規模臨床試験において、イメージングは、皮膚の状態を記録するために熟練治験担当医または治験担当看護師によって撮影された可視光線、交差偏光または青色蛍光灯によって行われる。
【0256】
治験担当看護師により、セブメーターを使用した脂質分析が行われる。セブテープを使用した脂質分析は、皮膚における皮脂の内容物および量に関して詳細を提供する。測定のために、被験者の皮膚を、70%イソプロパノールを浸透させた綿棒または同様の製品で試験領域を脱脂することにより準備する。その後セブテープを対象の皮膚(額)に30分間置き、測定する。
【0257】
皮膚pHメーターを使用することにより、pH分析を実施した。それは皮膚の調製を何ら伴わない非観血的即時的方法である
【0258】
無菌綿棒を用いたマイクロバイオーム分析は、綿棒を回転させながら30秒間皮膚上を移動させ、皮膚表面に生息している細菌群集を収集する非観血的即時的方法である。
【0259】
ストリップ3-S-Biokit(Skin surface Technology)を用いたマイクロバイオーム分析により、ろ胞中の細菌群集に到達することが可能となる。それは皮膚に優しい1滴のシアノアクリレートを有するプラスチック製ストリップを優しく皮膚に押し付け、1分間乾燥させる非観血的方法である。反応性の皮膚では、ストリップの除去後数分間、発赤が観察される。しかしながら、長期のまたは顕著な刺激は予想されない。
【0260】
統計的方法
継続的な変数について、数値、平均値、中央値、標準誤差、最小値および最大値を評価する。有意閾値は5%である。
【0261】
包含データについて記述的解析を実施する。包含および非包含基準を記載し(数値および割合)、偏差を挙げる。脱落した患者もまた記載し(数値および割合)、中断の理由を挙げる。
【0262】
一次解析は、無作為化され少なくとも1回のベースライン後の来院歴を有する全ての患者を含む治療企図集団で実施される。完全なデータを有し、重大なプロトコル違反を有さない全ての患者を含むパープロトコル集団において、感度解析を実施する。少なくとも1回の微生物での処置(実験的または対照)を受けた全ての患者を包含する安全性集団において、安全性解析を実施する。
【0263】
サンプル規模計算:細菌集団において予想される変化についてのデータが入手できないため、サンプル規模計算は全病変における有効性エンドポイントに基づく。University Clinic of Dermatology in Magdeburg (Thielitzら、2015)での先のざ瘡試験において、3つの異なるゲル剤が比較された。3回の処置にわたって平均化した12週間の処置期間にわたって、40%±32%(平均±標準偏差)の全病変数の減少が観察された。本明細書に記載される大規模臨床試験の活性処置において同様の効果が予想される。対照群において、残存効果(試験での測定およびプラセボ効果による)の最大15%の減少が観察され得る。したがって、試験群ごとの少なくとも27名のサンプル規模が、誤差レベル0.05および80%の検出力を有する2つのt検定における差異を検出するために含まれる。脱落の希釈効果を相殺するためのさらなる10%の対象を含めて、処置群ごとに30名の患者が含まれる。1つのコホートで60人の患者全員を勧誘できないならば、中間解析を用いた適応的デザインが実行される。第一のコホートを実行し、このコホートが完了した後、マイクロバイオーム組成物の変化の解析を行う。既にマイクロバイオーム組成物の変化についての明確かつ統計的に有意なシグナルが観察されるならば、その後臨床パラメーターを評価する。臨床パラメーターもまた統計的に有意な結果を示すならば、その後試験を終了し、全体の解析を開始する。結果が統計的に有意でないならば、または結果の統計的有意差が不明確であるならば、その後第二の患者のコホートを試験する。
【0264】
効果解析:細菌の組成物および臨床的パラメーター(主要:全病変数、副次:皮脂産生)における変化の2つの異なるレベルでの効果が考えられる。
【0265】
記述的解析:処置されたまたは処置されていない対象の両方について、各評価時(パイロット:1日目、7日目、21日目および42日目;大規模臨床試験:1日目、7日目、28日目、56日目、84日目および112日目)および差異(評価の日 - D0)についてに記述的解析を実施する。数値、平均、中央値、標準誤差、最小値および最大値が得られる。
【0266】
主要臨床エンドポイントの解析:全病変数を各患者のベースライン測定の割合(または分布が歪んでいるならば、その対数)とみなす。ベースラインから12週目までの差異を、ベースライン後12週目までの全ての来院を含む反復測定についての線形混合モデルにおいて両方の試験群を比較し、これは明確な補完技術を用いず、数来院の数値を欠く患者を含んでよい。固定因子は処置群および性別および全病変の絶対ベースライン数および共変数としての年齢である。処置効果についての検定が有意である(p<0.05)ならば、その後レベル0.05でベースラインから16日目までの数における差異についてもまた検定を実施する。この階層的な方法は、両方の段階にわたる誤差レベルを明確にする。二次解析として、全ての方法をパープロトコル集団において実施する。
【0267】
副次臨床エンドポイント:副次臨床エンドポイントは、主要臨床エンドポイントと同様に処理される。
【0268】
細菌組成解析:細菌組成物の一次分析は、活性処置の化合物である4種の細菌株の相対存在量を含む。解析は、主要エンドポイントに類似するが、4種の菌株の並行評価について0.05/4=0.0125のBonferroni補正された有意差レベルで行われる。
【0269】
二次多変量解析について、マイクロバイオームの差異を、マイクロバイオームを記載するベクターとコンピューターで比較する。ベクターの各位置は、特定の菌株が検出された回数を示す数字を含む。種々のマイクロバイオーム間の差異を測定するために、相関距離を使用する。さらに、適用される混合物の組成についてのアクネ菌マイクロバイオームの距離を、上と同様の方法を用いて計算する。単純なスピアマン相関が使用され得るが、他の統計的方法もまた、適用され得る。さらなる解析は、両方の試験群間の経時的な種々の細菌の分布の比較(例えば、Shannon指数として表される)およびその安定性の比較を含む。
【0270】
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【0276】
等価物
通常の範囲内の実験を用いることにより、当業者は本明細書に記載の本発明の特定の実施態様についての多数の等価物を認識するか、または確認できる。このような等価物は次の特許請求の範囲により包含されることを意図される。
【0277】
本明細書に開示される、特許文書を含む全ての引例はそれらの全体の参照により包含させる。「Methods and Compositions for Changing the Composition of the Skin Microbiome Using Complex Mixtures of Bacterial Strains」と題された、2016年4月20日に出願された国際公開第2016/172196号の全体の開示はその全体を参照により包含させる。
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