(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】エプシロンリシン残基を含む抗菌ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20230301BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20230301BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20230301BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20230301BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230301BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230301BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230301BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230301BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230301BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
C07K14/00
C07K7/06
C12N1/20 E
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P27/02
A61P31/10
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2019523802
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(86)【国際出願番号】 SG2017050548
(87)【国際公開番号】W WO2018084807
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】10201609136R
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508320723
【氏名又は名称】シンガポール ヘルス サービシーズ ピーティーイー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】504161939
【氏名又は名称】ナンヤン・テクノロジカル・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ラジャマニ ラクシュミナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】マヤンディ ヴェンカテシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゴー ツェ レン エウニス
(72)【発明者】
【氏名】ボイアーマン ロジャー ウィルマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ ナヴィン クマール
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0045736(US,A1)
【文献】国際公開第2007/023509(WO,A2)
【文献】特開2006-055157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0316643(US,A1)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1986年,Vol. 83,pp.5708-5712
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LKLKSIVSWAKKVL(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、リシン残基(K)の少なくとも1つがエプシロン-リシン残基である、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが1個のエプシロン-リシン残基を含む場合、前記エプシロン-リシン残基が
2位(配列番号7)または
4位(配列番号8)または
11位(配列番号9)または
12位(配列番号10)に位置する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号2)のアミノ酸配列を含み、リシン残基の少なくとも1つがエプシロン-リシン残基である、ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが
(i)1つのエプシロン-リシン残基を含有する場合、エプシロン-リシン残基は
7位(配列番号13)、もしくは
21位(配列番号12)、もしくは
23位(配列番号11)
に位置し;
または
(ii)2つのエプシロン-リシン残基を含有する場合、エプシロン-リシン残基は
7位および21位(配列番号15)、もしくは
7位および23位(配列番号16)
に位置し;
または
(iii)3つのエプシロン-リシン残基を含有する場合、3つのエプシロン-リシン残基は、7位、21位、および23位に位置する(配列番号14)、
請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
KRKRKRKRKRKR(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、リシン残基の少なくとも1個がエプシロン-リシン残基である、ペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが6つのエプシロン-リシン残基を含む場合、前記6つのエプシロン-リシン残基は、1位、3位、5位、7位、9位、および11位(配列番号17、または配列番号18、または配列番号19)に位置する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
療法または医学における使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の1以上のペプチド(複数可)を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の1以上のペプチド(複数可)および/または請求項8に記載の組成物を含む、キット。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の1以上のペプチド(複数可)および/または請求項8に記載の組成物を含む、眼科用製剤。
【請求項11】
微生物の成長を阻害するかまたは微生物のコロニー形成を管理するための薬剤の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドおよび/または請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項12】
微生物の前記成長を阻害することが微生物感染を処置する、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記微生物が細菌、真菌、薬剤耐性細菌、または薬剤耐性真菌である、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
前記細菌が、アシネトバクター・バウマンニ、エンテロバクター・クロアカ、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、フェーカリス菌およびフェシウム菌からなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記薬剤耐性細菌が、カルバペナム耐性エンテロバクター株(CRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ポリミキシンB耐性エンテロバクター・クロアカ、薬剤耐性アシネトバクター・バウマンニ、および多発性バイオフィルム形成緑膿菌および表皮ブドウ球菌株からなる群から選択される、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
前記真菌が、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・パプシローシス、カンジダ・トロピカリス、フザリウム・ソラニ、フザリウム・オキシスポラム、およびアスペルギルス・フミガーツスからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
前記薬剤耐性真菌が、フザリウム・ソラニ、フザリウム・オキシスポラム、およびアスペルギルス・フミガーツスからなる群から選択される、請求項13または16に記載の使用。
【請求項18】
前記微生物感染が、黄色ブドウ球菌角膜炎、緑膿菌角膜炎、真菌性角膜炎、カンジダ角膜炎、およびフサリウム角膜炎からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項19】
請求項1、3、または5に記載の単離したペプチドの治療指数(安全性)を改善する方法であって、前記方法は、エプシロン-リシ
ンに対するリシン残基の少なくとも1つを修飾することを含む、前記方法。
【請求項20】
増殖性疾患および/または炎症を処置するための薬剤の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドおよび/または請求項8に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、シンガポール仮出願第10201609136R号、2016年11月1日出願の優先権の利益を主張し、その内容を、あらゆる目的のためにその全体において参照により本明細書に組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、ペプチドの設計およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗生物質耐性細菌/真菌の広範な進化によって、公衆衛生にかなりの脅威がもたらされ、抗生物質の開発で達成される何十年もの便益がむしばまれる。好ましくない経済的利益および承認を得る際の規制上の課題のために、新しい抗生物質の発見および開発における著しい減少があった。多くのカチオン性ポリマーまたは殺生物剤は、過去50年間にわたって、医学的および非医学的用途の両方で使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細菌の広範な進化の観点から、代替の抗菌ペプチドを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、単離されたペプチドを提供する。少なくとも5個のアミノ酸残基を含むペプチド、以下のものがある:D-エプシロン-リシン、L-エプシロン-リシン、D-デルタ-オルニチン、L-デルタ-オルニチン、D-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、L-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、D-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸およびL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1個の他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較した場合、低下した細胞毒性を有するかまたは細胞毒性を有しない。1つの実施形態において、ペプチドは、エプシロン-ポリリシンを含まない。別の実施形態では、ペプチド中のリシン残基に関して、ペプチドは、エプシロン-リシンアミノ酸残基およびアルファ-リシンアミノ酸残基のいずれか、またはエプシロン-リシンアミノ酸残基のみを含む。さらに別の態様において、ペプチドは、5~100個のアミノ酸を含む。
【0006】
なおもう1つの実施形態において、ペプチドは、LKLKSIVSWAKKVL(配列番号1)のアミノ酸配列を有し、ここで、リシン残基(K)の少なくとも1つは、エプシロン-リシン残基である。さらに別の態様において、ペプチドが1個のエプシロン-リシン残基を含む場合、エプシロン-リシン残基は、2位(配列番号7)、または4位(配列番号8)、または11位(配列番号9)、または12位(配列番号10)に位置する。
【0007】
なおもう1つの実施形態において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号2)のアミノ酸配列を有し、ここで、リシン残基の少なくとも1つは、エプシロン-リシン残基である。なおもう1つの実施形態において、ペプチドが、(i)1個のエプシロン-リシン残基を含む場合、エプシロン-リシン残基は、7位(配列番号13)、もしくは21位(配列番号12)、もしくは23位(配列番号11)に位置し;または(ii)2個のエプシロン-リシン残基を含む場合、エプシロン-リシン残基は、7位および21位(配列番号15)、もしくは7位および23位(配列番号16)に位置し;または(iii)3個のエプシロン-リシン残基を含む場合、3つのエプシロン-リシン残基は、7位、21位および23位(配列番号14)に位置する。
【0008】
さらに別の態様において、ペプチドは、KRKRKRKRKRKR(配列番号3)のアミノ酸配列を有し、ここで、リシン残基の少なくとも1つは、エプシロン-リシン残基である。さらに別の態様において、ペプチドは、6個のエプシロン-リシン残基を含み、6個のエプシロン-リシン残基は、1位、3位、5位、7位、9位、および11位に位置する(配列番号17、または配列番号18、または配列番号19)。
【0009】
別の局面において、療法または医学における使用のための、本明細書中に記載するペプチドを提供する。
【0010】
なお別の局面において、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)および/または本明細書中に記載する組成物を含むキットを提供する。
【0012】
さらに別の態様では、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)および/または本明細書中に記載する組成物を含む眼科用製剤を提供する。
【0013】
さらに別の態様では、本明細書中に記載するペプチドおよび/または本明細書中に記載する組成物の薬学的に有効な量の投与を含む、微生物の成長を阻害する方法、または微生物のコロニー形成を管理する方法を提供する。さらに別の態様において、微生物の成長を阻害することは、微生物感染を処置する。さらに別の態様において、微生物は、細菌、真菌、薬剤耐性細菌、または薬剤耐性真菌である。さらに別の実施形態では、細菌は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、フェーカリス菌およびフェシウム菌からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、薬剤耐性細菌は、カルバペナム耐性エンテロバクター株(CRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ポリミキシンB耐性エンテロバクター・クロアカ、薬剤耐性アシネトバクター・バウマンニ、ならびに大量のバイオフィルム形成緑膿菌および表皮ブドウ球菌株からなる群から選択される。さらに別の態様において、真菌は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・パラプローシス(Candida parpsilosis)、カンジダ・トロピカリス、フサリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、およびアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)からなる群から選択される。さらに別の態様において、薬剤耐性菌は、フサリウム・ソラニ、フサリウム・オキシスポラム、およびアスペルギルス・フミガーツスからなる群から選択される。さらに別の態様において、微生物感染症は、黄色ブドウ球菌角膜炎、緑膿菌角膜炎、真菌性角膜炎、カンジダ角膜炎、およびフサリウム角膜炎からなる群から選択される。
【0014】
別の態様では、ペプチドの治療指数(安全性)を改善する方法であって、ペプチドが、D-エプシロン-リシン、L-エプシロン-リシン、D-デルタ-オルニチン、L-デルタ-オルニチン、D-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、L-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、D-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸、およびL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基、ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1個の他のものを含む少なくとも5個のアミノ酸残基を含み、当該ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1つを有しない同等のペプチドと比較した場合に低下した細胞毒性を有し、当該方法は、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸からなる群から選択される少なくとも1つに対するリシン残基の少なくとも1つを修飾することを含む、前記方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本明細書中に記載するペプチドおよび/または本明細書中に記載する組成物の薬学的有効量の投与を含む、増殖性疾患および/または炎症を処置する方法を提供する。
【0016】
本発明は、非限定的な実施例および添付の図面と併せて考察される場合、詳細な説明を参照してより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、アルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンの対比を示す。
図1Aは、アルファ-ポリリシンの化学構造を図形的に示したものである。
図1Bは、エプシロン-ポリリシンの化学構造を図形的に示したものである。
図1Cは、黄色ブドウ球菌、緑膿菌およびカンジダ・アルビカンス(C.albicans)のそれぞれ5種類の異なる株に対するアルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンの総平均MIC(最小発育阻止濃度)値を相関させる散布図を示す。したがって、
図1は、両ポリマーの総平均MIC(GM-MIC)がグラム陽性株およびグラム陰性株に対して同等であり、一方εPLはカンジダ・アルビカンス株に対してαPLよりも低いMICを示したことを例示する。
【
図2】
図2は、アルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンの細胞毒性の対比を示す。
図2Aは、MTS細胞増殖アッセイによって評価した初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)に対するアルファ-ポリリシンの細胞毒性を表す散布図を示す。
図2Bは、MTS細胞増殖アッセイによって評価した初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)に対するエプシロン-ポリリシンの細胞毒性を表す散布図を示す。したがって、
図2は、アルファ-ポリリシンが初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)細胞に対してエプシロン-ポリリシンよりも細胞毒性が低いことを例示する。
【
図3】
図3は、初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)の健康に対するアルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンの効果の対比を示す。
図3Aは、種々の濃度の初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)に対するアルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンの細胞毒性を示す高含有量分析(HCA)画像のセットを示す。
図3Bは、種々の濃度のアルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンへの曝露後の初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)の細胞健康における濃度依存的変化を示すヒートマップを表す一組の画像を示す。細胞毒性薬物であるノコダゾール(5μg/ml)を、陰性対照として用いる。したがって、
図3は、アルファ-ポリリシンに曝露した初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)が細胞形態のかなりの異常を示し、一方エプシロン-ポリリシンに曝露した細胞は処理していない対照と類似したままであることを例示し、それによってさらに、エプシロン-ポリリシンがアルファ-ポリリシンよりも細胞毒性が低いことを示す。
【
図4】
図4は、エプシロン-ポリリシンのバイオフィルムを形成する細胞への曝露の影響を示す。
図4は、エプシロン-ポリリシンへの曝露後の生細胞/死細胞比の定量的推定を表す棒グラフを示す。多量のバイオフィルム形成性PA01株を、用いた。PA01に対するエプシロン-ポリリシンのMICは、16mg/mlであった。対比のため、カチオン性ペプチド抗生物質ポリミキシンBのバイオフィルム根絶特性もまた、示す。したがって、
図4は、エプシロン-ポリリシンがカチオン性環状リポペプチド、ポリミキシンBと比較した場合バイオフィルムの還元においてより有効であることを例証する。
【
図5】
図5は、エプシロン-ポリリシンおよびナタマイシンの真菌菌糸生存率に対する効果の比較を示す。
図5Aは、種々の濃度のエプシロン-ポリリシンに16時間曝露した後の真菌菌糸の生存(MTTアッセイにより決定した)の定量的推定を表す線グラフを示す。
図5Bは、種々の濃度のナタマイシンに16時間曝露した後の真菌菌糸の生存(MTTアッセイにより決定した)の定量的評価を表す線グラフを示す。したがって、
図5は、エプシロン-ポリリシンが、FDA承認の点眼用抗真菌薬であるナタマイシンと比較して、真菌菌糸の生存を減少させるのにより有効であることを例証する。
【
図6-1】
図6-1は、グラム陰性菌株およびグラム陽性菌株のパネルに対するエプシロン-ポリリシンの時間死滅動力学実験の結果を表す一組の線グラフを示す。このように、
図6は、多様な疾患を引き起こす病原体および薬剤耐性病原体に対するエプシロン-ポリリシンの強力な殺菌特性を例証する。
【
図6-2】
図6-2は、グラム陰性菌株およびグラム陽性菌株のパネルに対するエプシロン-ポリリシンの時間死滅動力学実験の結果を表す一組の線グラフを示す。このように、
図6は、多様な疾患を引き起こす病原体および薬剤耐性病原体に対するエプシロン-ポリリシンの強力な殺菌特性を例証する。
【
図6-3】
図6-3は、グラム陰性菌株およびグラム陽性菌株のパネルに対するエプシロン-ポリリシンの時間死滅動力学実験の結果を表す一組の線グラフを示す。このように、
図6は、多様な疾患を引き起こす病原体および薬剤耐性病原体に対するエプシロン-ポリリシンの強力な殺菌特性を例証する。
【
図6-4】
図6-4は、グラム陰性菌株およびグラム陽性菌株のパネルに対するエプシロン-ポリリシンの時間死滅動力学実験の結果を表す一組の線グラフを示す。このように、
図6は、多様な疾患を引き起こす病原体および薬剤耐性病原体に対するエプシロン-ポリリシンの強力な殺菌特性を例証する。
【
図7】
図7は、感染性角膜炎のウサギモデルにおける0.3%(w/v)エプシロン-ポリリシンの有効性を比較する一組の細隙灯生体顕微鏡画像を示す。5×10
6CFU/ml(50μl)の最初の接種物を、創傷角膜に適用し、画像を、感染後24時間(p.i.)に撮像した。処置を、この時点で、50μlのエプシロン-ポリリシンまたはジマー(0.3%ガチフロキサシン)を感染した眼に4回/日で3日間適用することによって開始した。画像を、処置後(p.t.)24、48、72時間に撮影した。溶媒単独(10mMのPBS)を、対照として供した。したがって、
図7は、エプシロン-ポリリシンで処置した眼が、他の群と比較して、結膜浮腫および分泌物、角膜混濁および結膜発赤の有意な減少を示したことを例証する。
【
図8-1】
図8-1は、ウサギ角膜におけるエプシロン-ポリリシンおよびザイマー処置の対比を示す。
図8Aは、感染した、および処置したウサギ角膜の前方セグメント光干渉断層撮影(AS-OCT)試験の結果を表す一組の画像を示す。従って、
図8は、エプシロン-ポリリシンで処置した眼が、Zymar(登録商標)またはPBSで処置した眼と比較して、処置後24時間で浮腫の有意な減少を示したことを例証する。さらに、エプシロン-ポリリシンおよびZymarで処置した角膜は共に、生菌の存在を示さず、一方PBSで処置した角膜は、4.1±0.13log
10CFU/mlの細菌を含んでいた。
【
図8-2】
図8-2は、ウサギ角膜におけるエプシロン-ポリリシンおよびザイマー処置の対比を示す。
図8Bは、PBS、エプシロン-ポリリシン、およびザイマーの適用後の中心角膜厚の漸進的変化を表すグラフを示す。合計6匹のウサギを、各適用について含めた。
図8Cは、エプシロン-ポリリシンおよびザイマーの処置後(p.t.)72時間での切除角膜における細菌生存率の微生物学的計数を表すグラフを示す。従って、
図8は、エプシロン-ポリリシンで処置した眼が、Zymar(登録商標)またはPBSで処置した眼と比較して、処置後24時間で浮腫の有意な減少を示したことを例証する。さらに、エプシロン-ポリリシンおよびZymarで処置した角膜は共に、生菌の存在を示さず、一方PBSで処置した角膜は、4.1±0.13log
10CFU/mlの細菌を含んでいた。
【
図9-1】
図9-1は、シュードモナス角膜炎に感染したウサギ角膜におけるエプシロン-ポリリシンおよびザイマー処置の対比を示す。緑膿菌ATCC 9027株。
図9Aは、シュードモナス角膜炎のウサギモデルにおける0.3%(w/v)エプシロン-ポリリシンの有効性を比較する一組の細隙灯生体顕微鏡画像を示す。緑膿菌ATCC 9027株を用いて、角膜に感染させた。5×10
6CFU/ml(50μl)の最初の接種物を、創傷した角膜に適用し、画像を、感染後(p.i.)24時間に撮像した。処置を、この時点で、50μlのエプシロン-ポリリシンまたはTobrex(0.3%トブラマイシン(Tobramcyin))を感染した眼に4回/日で3日間適用することによって開始した。画像を、処置後(p.t.)24、48、72時間に撮影した。溶媒単独(10mMのPBS)を、対照として供した。計10匹のウサギを、エプシロン-ポリリシン処理に、および各々4匹を、PBSおよびTobrexに用いた。
図9Bは、感染/処置の前および後の角膜厚の漸進的変化を表すグラフを示す。したがって、
図9は、エプシロン-ポリリシンが緑膿菌感染の除去に有効であり、エプシロン-ポリリシンが局所的適用に適した抗菌特性を有することを例示する。
【
図9-2】
図9-2は、シュードモナス角膜炎に感染したウサギ角膜におけるエプシロン-ポリリシンおよびザイマー処置の対比を示す。緑膿菌ATCC 9027株。
図9Cは、処置後(p.t.)72時間における感染した角膜における細菌生存能の微生物学的計数を表すグラフを示す。したがって、
図9は、エプシロン-ポリリシンが緑膿菌感染の除去に有効であり、エプシロン-ポリリシンが局所的適用に適した抗菌特性を有することを例示する。
【
図10】
図10は、ペプチド中のエプシロン-リシン残基の抗菌効果を示す。
図10Aは、エプシロン-リシンの数の増加に伴う最小発育阻止濃度(MIC)値の変化を表す線グラフを示す。グラフについてのデータを、Shima.et al.(J Antibiot(Tokyo).1984 Nov;37(11):1449-55.)から得た。
図10Bは、トリプシンと1時間インキュベートした後のHC1およびHC2ペプチドの抗菌活性を表す棒グラフを示す。HC1についての活性の完全な喪失が観察され、一方HC2は、細菌生存率において6log
10の低下(99.9999%)を誘発した。したがって、
図10は、ペプチドHC2(すなわち、12個の残基(6つのリシンおよびアルギニン対)を有し、リシン残基がエプシロン結合を介して連結されているペプチド)が、トリプシンとの1時間のインキュベーション後でさえも保持される抗菌活性を有することを例示する。
【
図11】
図11は、HDFに対する種々の数のエプシロン-リシン残基を担持する一連のメリチンペプチドアナログについてのMTS細胞毒性アッセイを示す。
図11Aは、3つのアルファ-リシル残基がエプシロン-リシル残基で置き換えられているメリチンおよびメリチン類似体(ペプチド1、2、および3)の細胞毒性を示す。
図11Bは、1つより多いε-リシル残基を担持するメリチンおよびメリチン類似体(ペプチド4、5および6)の細胞毒性を示す。したがって、
図11は、メリチン中のアルファ-リシンのエプシロン-リシニル化によって孔を形成するメリチンの選択性がアミオレレートされ(amiolerate)、それによって治療的可能性が増強され得ることを例示する。
【
図12-1】
図12-1は、24時間後にペプチド3および4に曝露したヒト一次血液T細胞リンパ球(PBTL)からのサイトカインの定量的決定を表す一組の棒グラフを示す。定量するサイトカインは、インターロイキン-2(IL-2;
図12Aに示す)、インターロイキン-4(IL-4;
図12Bに示す)である。分裂促進的植物レクチンフィトヘマグルチニン(PHA)を、正の対照として用いた。従って、
図12は、ヒト一次血液T細胞リンパ球(PBTL)からのサイトカイン産生の明らかな誘発がないことを例示し、従って、ペプチドの非免疫原性の性質を確認する。
【
図12-2】
図12-2は、24時間後にペプチド3および4に曝露したヒト一次血液T細胞リンパ球(PBTL)からのサイトカインの定量的決定を表す一組の棒グラフを示す。定量するサイトカインは、インターロイキン-5(IL-5;
図12Cに示す)、およびインターフェロン-ガンマ(IFN-γ;
図12Dに示す)である。分裂促進的植物レクチンフィトヘマグルチニン(PHA)を、正の対照として用いた。従って、
図12は、ヒト一次血液T細胞リンパ球(PBTL)からのサイトカイン産生の明らかな誘発がないことを例示し、従って、ペプチドの非免疫原性の性質を確認する。
【
図13-1】
図13-1は、ペプチドを微生物および哺乳動物モデルの大型単ラメラ小胞(LUV)に添加した場合の蛍光カルセイン色素漏出の対比を示す。
図13AおよびBは、ペプチドをLUVに添加した場合の微生物モデル大型単ラメラ小胞(LUV)からの蛍光カルセイン色素漏出の量を表す線グラフを示す。したがって、
図13は、メリチンのエプシロン-リシル化が、ペプチドの哺乳動物膜との相互作用を減弱したことを例示する。
【
図13-2】
図13-2は、ペプチドを微生物および哺乳動物モデルの大型単ラメラ小胞(LUV)に添加した場合の蛍光カルセイン色素漏出の対比を示す。
図13CおよびDは、ペプチドをLUVに添加した場合の哺乳動物モデル大型単ラメラ小胞(LUV)からの蛍光カルセイン色素漏出の量を表す線グラフを示す。したがって、
図13は、メリチンのエプシロン-リシル化が、ペプチドの哺乳動物膜との相互作用を減弱したことを例示する。
【
図14】
図14は、MTTアッセイにより評価した初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)に対するマストパランB類似体MB-1~MB-4の細胞毒性を表す線グラフを示す。従って、
図14は、マストパランBペプチドの種々の位置におけるエプシロン-リシン置換によってマストパランBの細胞毒性が低下することを例示する。
【
図15】
図15は、宿主細胞への緑膿菌感染の副作用を防止するエプシロン-ポリリシンの能力を確認する一組の共焦点画像を示す。
図15Aは、未処理のhDFの共焦点画像を示し、未変化の細胞骨格および核形態を示す。
図15Bは、PAO1_gfp株に感染したhDF(感染多重度、MOI=25)の共焦点画像を示し、変形した細胞形態を示す。hDFのアクチンフィラメントの近位にPAO1細胞(白矢印で示す)が顕著に存在することに注意されたい。
図15Cは、予防様式(すなわち、微生物感染前)におけるエプシロン-ポリリシン(1mg/ml)の効果を示す共焦点画像を示す。
図15Dは、回帰モード(すなわち、宿主細胞の感染の2時間後)におけるεPL(1mg/ml)の効果を示す共焦点画像を示す。(
図15Cおよび15Dに示す)両方の条件下では、いかなる細菌細胞も存在せず、ポリマーの強力な抗菌活性を示すことに注意されたい。拡大した領域を、白色枠内に表示する。したがって、
図15は、感染前(防止)または感染後(退行)に適用するエプシロン-ポリリシンによってヒト皮膚線維芽細胞(hDF)に対する緑膿菌および黄色ブドウ球菌の副作用が減弱されることを例示する。
【
図16】
図16は、エプシロン-ポリリシンの抗炎症特性を示す棒グラフを示す。THP-1細胞におけるリポ多糖(LPS)によるNF-κB活性化のエプシロン-ポリリシン濃度依存的減弱。1mg/mlを超える濃度では、NF-κBの活性化が大幅に低下することに注意されたい。したがって、
図16は、細菌の外膜の鍵となる成分であるリポ多糖(LPS)に結合するエプシロン-ポリリシンによってエンドトキシンの有害作用が減弱されることを例示する。
【
図17-1】
図17-1は、引っかき創傷アッセイモデルにおける種々の条件下でのヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の細胞移動に対するエプシロン-ポリリシンの効果を示す。
図17Aは、2つの異なる時点でのヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の細胞移動に対する1mg/mlエプシロン-ポリリシンの効果を示す一組の写真である。エプシロン-ポリリシン添加の後、14時間で処理しなかった場合と比較して、引っかいた領域でより高密度の細胞が存在することに注意されたい。したがって、
図17は、エプシロン-ポリリシンが生体適合性であり、ヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の移動をin vitroで促進し、細菌分泌産物の有害作用を回避することを例証する。
【
図17-2】
図17-2は、引っかき創傷アッセイモデルにおける種々の条件下でのヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の細胞移動に対するエプシロン-ポリリシンの効果を示す。
図17Bは、処理していない、または線維芽細胞成長因子と比較した、細胞移動におけるエプシロン-ポリリシン濃度依存性の時間的変化を示す線グラフである。
図17Cは、黄色ブドウ球菌ATCC 29213株から収集した細菌セクレトームの阻害作用がエプシロン-ポリリシン(1mg/ml)によって無効にされることを示す線グラフである。25%(v/v)では、黄色ブドウ球菌セクレトームによって、細胞移動が阻害された。結果はすべて、2回の独立した重複実験の平均である。したがって、
図17は、エプシロン-ポリリシンが生体適合性であり、ヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の移動をin vitroで促進し、細菌分泌産物の有害作用を回避することを例証する。
【
図18】
図18は、エプシロン-ポリリシン溶液(0.3%および1.5%)の損傷後のウサギ角膜創傷閉鎖に対する効果を示す。
図18Aは、エプシロン-ポリリシンおよびビヒクルでの処置後の損傷した角膜の細隙灯試験結果を示す一組の写真を示す。創傷した面積を、フルオレセイン染色により決定した。
図18Bは、測定の各時点における平均創傷閉鎖を、平均±平均の標準誤差として表す線グラフである。したがって、
図18は、エプシロン-ポリリシンが損傷した角膜の創傷閉鎖を損なわず、したがってエプシロン-ポリリシンが生体適合性であることを例証する。
【
図19】
図19は、T/B細胞リンパ腫および網膜芽細胞腫細胞株に対するεPLの抗がん特性を示す棒グラフを示す。図中の数字は、ポリマーの濃度を示す:1-処理していない対照(0μg/ml);2-62.5μg/ml;3-125μg/ml;4-125μg/ml;5-250μg/ml。水平の点線は、50%の細胞生存率を表す。したがって、
図19は、エプシロン-ポリリシンがT細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫および網膜芽細胞腫細胞株に対して強力な抗がん活性を示したことを例示する。
【
図20-1】
図20-1は、Sytox Green取り込みアッセイの結果を示す組のデータを示す。
図20Aは、種々の濃度のメリチンに曝露したときのVRE 1002細菌細胞の代表的なSytox Green(SG)取り込みアッセイを示す線グラフを示す。メリチンの濃度を、MIC値の用語で表す。実質的なSG取り込みがMIC値で、およびそれより高い値で観察されたことに注意されたい。
図20Bは、致死濃度のメリチンならびにペプチド5およびペプチド6に曝露したVREを示す一対の棒グラフである。実質的な殺菌特性(細菌生存率の90~99%の低下)がSG取り込み値が低いにもかかわらず観察されたことに注意されたい。従って、
図20は、修飾されたメリチンペプチドがメリチンより孔形成特性が不良であったとしても、それらの細菌致死性はメリチンと同様であったことを例示する。
【
図20-2】
図20-2は、Sytox Green取り込みアッセイの結果を示す組のデータを示す。
図20Cは、アシネトバクター・バウマンニ(A.baumanni)株のSG取り込み値の対比を示す一対の棒グラフである。
図20Dは、種々のペプチドについてのSG取り込みと細菌致死性との間の関係を示す散布図である。実質的な殺菌特性(細菌生存率の90~99%の低下)がSG取り込み値が低いにもかかわらず観察されたことに注意されたい。従って、
図20は、修飾されたメリチンペプチドがメリチンより孔形成特性が不良であったとしても、それらの細菌致死性はメリチンと同様であったことを例示する。
【
図21】
図21は、過剰に荷電したペプチド(すなわち、ペプチドHC1、HC2、HC4、およびHC6)の配列および化学構造のグラフ表示の組を示す。
【
図22-1】
図22-1は、T/B細胞リンパ腫細胞株に対する過剰に荷電したペプチドHC1(
図22A)、HC2(
図22B)の抗がん特性を示す一組の棒グラフを示す。図中の数字は、ポリマーの濃度を示す:1-処理していない対照(0μg/ml);2-62.5μg/ml;3-125μg/ml;4-250μg/ml;5-500μg/ml。水平の点線は、50%の細胞生存率を表す。したがって、
図22は、過剰に荷電したペプチド(HC1、HC2、HC4、およびHC6)が、リンパ腫細胞株において様々な程度の細胞死滅を用量依存的方式において示したことを例示する。興味深いことに、PBL T細胞(PBTL)は、リンパ腫細胞株(HuT78、MJ、HH、Ly-4、およびLy-18)と比較して、これらのペプチドに対する感受性が低かった。
【
図22-2】
図22-2は、T/B細胞リンパ腫細胞株に対する過剰に荷電したペプチドHC4(
図22C)、およびHC6(
図22D)の抗がん特性を示す一組の棒グラフを示す。図中の数字は、ポリマーの濃度を示す:1-処理していない対照(0μg/ml);2-62.5μg/ml;3-125μg/ml;4-250μg/ml;5-500μg/ml。水平の点線は、50%の細胞生存率を表す。したがって、
図22は、過剰に荷電したペプチド(HC1、HC2、HC4、およびHC6)が、リンパ腫細胞株において様々な程度の細胞死滅を用量依存的方式において示したことを例示する。興味深いことに、PBL T細胞(PBTL)は、リンパ腫細胞株(HuT78、MJ、HH、Ly-4、およびLy-18)と比較して、これらのペプチドに対する感受性が低かった。
【0018】
表の簡単な説明
表1は、細菌および酵母株のパネルに対するアルファ-ポリリシンおよびエプシロン-ポリリシンの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。
【0019】
表2は、薬剤耐性細菌および真菌のパネルに対するエプシロン-ポリリシンの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。使用した菌株の数を、括弧内に示す。
【0020】
表3は、病原体のパネルに対するエプシロン-ポリリシン模倣ペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。使用した菌株数を、括弧内に示す。
【0021】
表4は、細菌および酵母株に対するメリチンおよび修飾ペプチド1~4のアミノ酸配列および最小発育阻止濃度(MIC)および平均治療指数値を示す。エプシロン-リシン残基を、イタリック体および下線付きで示す。
【0022】
表5は、薬剤耐性細菌のパネルに対する、および他の病原性酵母株に対するメリチン、ペプチド3、ペプチド4、ペプチド5およびペプチド6の最小発育阻止濃度(MIC)を示す。
【0023】
表6は、膜選択性を改善するためのメリチンペプチドの種々の化学的修飾の対比を示す。
【0024】
表7は、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)、アシネトバクター・バウマンニおよび他の細菌および真菌株に対するマストパランペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。MIC値を、範囲で示す。MIC50は、50%の菌株が感受性である濃度を示す。ε-リシル残基を、イタリック体および下線付きで示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
利用可能な抗生物質の無効性、これと組み合わせて新しい抗菌薬の数の絶え間ない減少は、多剤耐性および汎剤耐性(pan-drug resistant)微生物病原体に対する代替の治療的戦略を開発するための強い需要を形成している。ヒトの消費に使用される抗菌薬を別の用途に使用することは、抗生物質耐性微生物病原体に対抗するための代替の、しかし時間がかからず、費用対効果も低いアプローチである。したがって、代替の抗菌ペプチドを提供する緊急の必要性が存在する。
【0026】
エプシロン-ポリリシン(εPL)は、天然に存在するホモポリアミドであり、その中で骨格アミド基は、アミノ酸リシンのアルファ-カルボキシル基とエプシロン-アミノ基との間に形成し、25~35個のL-リシン残基を含有することが、当該分野で公知である(
図1)。エプシロン-ポリリシンは一般に、米国食品医薬品局(US FDA)によって食品消費のために承認された安全な物質(GRAS)とみなされている。
【0027】
理論によって束縛されることを望まずに、エプシロン-ポリリシンの抗菌特性およびバイオセーフティーは2つの特性の組み合わせに起因すると考えられており、それは、(1)反復されたリシン残基の伸長、および(2)1つのリシン残基を隣に結合させるエプシロン結合である。本開示の発明者らは、驚くべきことに、単離されたペプチドが、抗菌特性および/または抗がん特性を有するために、上記の当該2つの特性を必ずしも有する必要はないことを見出した。
【0028】
上記の知見に照らして、本開示の発明者らは、代替の抗菌ペプチドを提供した。本開示の発明者らは、抗菌特性を有するが、細胞毒性または哺乳動物細胞に対して毒性でもあるペプチドが存在することを見出した。ペプチドの細胞毒性をその抗菌特性を維持しながら減少させるために、本開示の発明者らは、エプシロンリシン残基および/またはデルタ-オルニチン残基および/またはガンマ-2,4-ジアミノ酪酸残基および/またはベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基を用いて、ペプチド中の少なくとも1つのリシン残基を置き換えた。理論によって束縛されることを望まずに、かかる置き換えによってまた、驚くべきことに、(1)抗菌ペプチドの細胞選択性が高まり、(2)良好な抗菌特性を有し、タンパク質分解抵抗性であるペプチドが提供され、(3)孔形成ペプチドの治療的能力が改善され、同時に薬剤耐性病原体に対する効能が保持され、(4)抗菌特性を損なうことなく孔形成細胞毒性ペプチドの治療的能力が高められる。したがって、当該アプローチ(すなわち、ペプチド中のリシン残基の置き換え)によってまた、抗がん剤および抗炎症薬の設計のための修飾ペプチドの応用のレパートリーが拡大されるであろう。
【0029】
したがって、一態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのD-エプシロン-リシンアミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-エプシロン-リシンアミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0030】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのL-エプシロン-リシンアミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-エプシロン-リシンアミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0031】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのD-デルタ-オルニチンアミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-デルタ-オルニチンアミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0032】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのL-デルタ-オルニチンアミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-デルタ-オルニチンアミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない同等のペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0033】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのD-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0034】
もう1つの態様において、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのL-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非β-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0035】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのD-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0036】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1つの他のアミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;および少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0037】
別の態様では、本開示は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む単離されたペプチドに関し、それに、以下のものが存在し:少なくとも1つのD-エプシロン-リシンアミノ酸残基および/または少なくとも1つのL-エプシロン-リシンアミノ酸残基および/または少なくとも1つのD-デルタ-オルニチンアミノ酸残基および/または少なくとも1つのL-デルタ-オルニチンアミノ酸残基および/または少なくとも1つのD-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基および/または少なくとも1つのL-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基および/または少なくとも1つのD-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基および/または少なくとも1つのL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有するか、または細胞毒性を有しない。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個のアミノ酸残基;少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-エプシロン-リシンアミノ酸残基、および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-エプシロン-リシンアミノ酸残基、および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-デルタ-オルニチンアミノ酸残基および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-デルタ-オルニチンアミノ酸残基および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸アミノ酸残基および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のD-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基および/または少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基;ならびに少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個の非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよく;ここで、ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較して、低下した細胞毒性を有し得るか、または細胞毒性を有しない場合がある。
【0038】
1つの例において、本開示のペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含まない等価なペプチドと比較した場合、低下した細胞毒性を有する。例えば表4および5に示すように、本開示のペプチド、例えば、ペプチド3(配列番号13)、ペプチド4(配列番号14)、ペプチド5(配列番号15)、およびペプチド6(配列番号16)は、高濃度(250μg/mLまたは87.8μMのペプチド3、および1000μg/mLまたは351.3μMのペプチド4~6)においてのみ、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)に対して細胞毒性になる。対照的に、例えば表6に示すように、当該分野で公知の他の修飾したペプチドによって、ヘモグロビンまたは赤血球の分解が引き起こされ(すなわち、溶血活性を有する)、比較的低濃度でさえ細胞毒性になる。従って、本開示の発明者らは、驚くべきことに、本開示のペプチドにおける細胞毒性の低下が、当該分野で公知の他の修飾したペプチドにおける細胞毒性の低下よりも明らかであることを見出した。
【0039】
本明細書中で使用する「D-エプシロン-リシン」という用語は、以下の構造:
【化1】
を有するアミノ酸残基を指す。「D-エプシロン-リシン」の化学構造における用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「D-エプシロン-リシン」を含むと言われる場合、エプシロンアミノ基(または「ε」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0040】
本明細書中で使用する「L-エプシロン-リシン」という用語は、以下の構造:
【化2】
を有するアミノ酸残基を指す。「L-エプシロン-リシン」の化学構造における用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「L-エプシロン-リシン」を含むと言われる場合、エプシロンアミノ基(または「ε」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0041】
本明細書中で使用する「D-デルタ-オルニチン」という用語は、以下の構造:
【化3】
を有するアミノ酸残基を指す。「D-デルタ-オルニチン」の化学構造に関する用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「D-デルタ-オルニチン」を含むと言われる場合、デルタアミノ基(または「δ」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0042】
本明細書中で使用する「L-デルタ-オルニチン」という用語は、以下の構造:
【化4】
を有するアミノ酸残基を指す。「L-デルタ-オルニチン」の化学構造における用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「L-デルタ-オルニチン」を含むと言われる場合、デルタアミノ基(または「δ」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0043】
本明細書中で使用する「D-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸」という用語は、以下の構造:
【化5】
を有するアミノ酸残基を指す。「D-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸」の化学構造に関する用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「D-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸」を含むと言われる場合、ガンマアミノ基(または「γ」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0044】
本明細書中で使用する「L-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸」という用語は、以下の構造:
【化6】
を有するアミノ酸残基を指す。「L-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸」の化学構造に関する用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「L-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸」を含むと言われる場合、ガンマアミノ基(または「γ」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0045】
本明細書中で使用する「D-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸」という用語は、以下の構造:
【化7】
を有するアミノ酸残基を指す。「D-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸」の化学構造に関する用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「D-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸」を含むと言われる場合、ベータアミノ基(または「β」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0046】
本明細書中で使用する「L-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸」という用語は、以下の構造:
【化8】
を有するアミノ酸残基を指す。「L-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸」の化学構造に関する用語「R
1」および「R
2」は、例えば、ペプチド中の他のアミノ酸残基を指す。1つの例において、ペプチドが「L-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸」を含むと言われる場合、ベータアミノ基(または「β」で標識された炭素に結合したアミノ基)は、ペプチド結合形成に関与する。
【0047】
本明細書中で用いる「ペプチド結合」という用語は、一方の分子のカルボキシル基(例えば-COOH)が他方の分子のアミノ基(例えば-NH2)と反応し、水の分子(H2O)を放出するときに2つの分子間に形成する化学結合を指す。これは、脱水合成反応(縮合反応とも呼ばれる)であり、通常はアミノ酸間で起こる。
【0048】
本明細書中で使用する「単離された」という用語は、例えば、ペプチドが天然に会合しているタンパク質、脂質、核酸を含まない、または実質的に含まないペプチドを指す。用語「単離された」をまた、本明細書中では、ポリペプチドおよび他の細胞タンパク質から単離されたタンパク質を指すために用い、精製されたポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。他の実施形態において、用語「単離された」は、通常天然に会合している細胞、組織、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片(複数可)が成分、細胞および他の成分から分離されていることを意味する。
【0049】
本明細書中で用いる「抗菌ペプチド」という用語は、微生物を死滅させるか、またはその成長を阻害するオリゴまたはポリペプチドを指す。本明細書中で使用する場合、用語「抗がんペプチド」は、がん細胞を死滅させるか、またはその増殖を阻害するオリゴまたはポリペプチドを指す。本明細書中で使用する「抗炎症ペプチド」という用語は、炎症を防止または停止するオリゴまたはポリペプチドを指す。「抗菌ペプチド」は、リボソーム的にまたは非リボソーム的に合成される、より大きなタンパク質またはペプチドの切断から生じるペプチドを含んでもよい。一般に、抗菌ペプチドは、疎水性領域および荷電領域が空間的に分離されたカチオン性分子である。例示的な抗菌ペプチドは、膜においてアルファ-ヘリックス構造を形成する直線状ペプチド、または膜においてジスルフィド架橋で任意に安定化されたベータ-シート構造を形成するペプチドを含む。代表的な抗菌ペプチドとしては、カテリシジン、デフェンシン、ダームシジン、およびより具体的にはマガイニン2、プロテグリン、タキプレシン、プロテグリン-1、メリチン、デルマセプチン01、セクロピン、カエリン、オビスピリン、アラメチシン、パンジニン1、パンジニン2、およびマストパランスBが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ペプチドは、植物、ヒト、真菌、微生物、および昆虫を含む脊椎動物および非脊椎動物からのペプチドを含むことが、当業者によって理解される。ペプチドには、例えば孔を膜中に形成することにより膜透過性を増加させる当該ペプチドが含まれる。いくつかの例において、ペプチドは、抗菌ペプチドである。
【0051】
用語「減少(decrease)」、「減少させる(reduce)」、「減少した(reduced)」、「減少(reduction)」、「減少(decrease)」、「除去(removal)」、または「阻害する(inhibit)」を、全て、統計的に有意な量だけの減少を意味するために、本明細書中で一般的に使用する。しかしながら、疑いを避けるために、「減少した(reduced)」、「減少させる(reduce)」、「減少(reduction)」、「減少(decrease)」、「除去(removal)」、または「阻害する(inhibit)」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%までの減少および100%を含む減少(例えば、参照試料と比較して不在レベル)、または参照レベルと比較して最大で10~100%の減少(例えば、本明細書中に記載するペプチドの不在)を意味する。本明細書中で使用する「細胞毒性」という用語を、その最も広い意味で使用し、それは、本開示のペプチドを使用して処置する対象の細胞に対して毒性である品質を指す。「低下した細胞毒性」の基準は、親ペプチドと比較して細胞に最大の細胞毒性を付与するペプチド濃度の相対的増加に基づき得る。細胞毒性が低下したペプチドが、かかるペプチドを微生物の増殖を阻害するか、または対象に害を及ぼすかまたは対象の細胞に負の影響を及ぼすことなく微生物のコロニー形成を管理するのに必要な濃度で対象に投与することができるため、望ましい。対象には、哺乳動物(例えば、ヒト)が含まれるが、これらに限定されない。例えば表7および実施例15に示すように、本開示の単離されたペプチドは、等価なペプチドよりも驚くほど細胞毒性が低い。1つの非限定的な例において、マストパランBは、125μg/mlで細胞毒性であり、一方本開示の例示的なペプチド(例えば、MB1(配列番号7)およびMB2(配列番号8))は、250μg/mlおよび1000μg/mlで細胞毒性である。
【0052】
本明細書中で使用する「等価なペプチド」という用語は、本開示のペプチドと同一のアミノ酸配列を有するペプチドであって、等価なペプチドがエプシロン-リシンアミノ酸残基を含まず、本開示のペプチドがエプシロン-リシンアミノ酸残基を含むペプチドを指す。
【0053】
1つの例において、単離されたペプチドは、エプシロン-ポリリシンではない。本明細書中で用いる「エプシロン-ポリリシン」という用語は、骨格アミド基がアミノ酸リシンのα-カルボキシル基とε-アミノ基との間に形成する、天然に存在するかまたは合成的に製造されるホモポリアミドを指す。いくつかの例において、エプシロン-ポリリシンは、少なくとも4つの連続したエプシロン-リシン残基を含む。
【0054】
1つの例において、本開示のペプチドは、リシン残基を含み得、ここで、ペプチド中のリシン残基に関して、ペプチドは、エプシロン-リシンアミノ酸残基およびアルファ-リシンアミノ酸残基を含んでもよい。例えば表4に示すように、修飾したメリチン、例えば表4のペプチド1~3(配列番号11、12、および13)は、各々、1つのエプシロンリシン残基および2つのアルファリシン残基を含む。別の例において、本開示のペプチドは、リシン残基を含み得、ここで、ペプチド中のリシン残基に関して、ペプチドは、エプシロン-リシンアミノ酸残基のみを含んでもよい。例えば表4に示すように、修飾したメリチン、例えば表4のペプチド4(配列番号14)は、全てエプシロン-リシンである3つのリシン残基を含む。本明細書中で使用する「エプシロン-リシンアミノ酸残基」という用語は、主鎖アミド基がアミノ酸リシンのα-カルボキシル基とε-アミノ基との間に形成するペプチド中のリシン残基を指す。
【0055】
1つの例において、本開示のペプチドは、非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を含んでもよい。1つの例において、非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される他のアミノ酸残基を、正準アミノ酸残基および非正準アミノ酸残基から選択してもよい。
【0056】
本明細書中で用いる「正準アミノ酸残基」という用語は、天然に存在するペプチドおよびタンパク質中に一般に包含され得、汎用遺伝暗号のコドンによって直接コードされ得る20個のアミノ酸残基を指し、それは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)のヌクレオチド配列をタンパク質のアミノ酸配列に翻訳するための、ほぼ全ての生物についての共通の言語である。1つの例において、「正準アミノ酸残基」は、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リシン(K)(例えばアルファ-リシン(アルファ-K))、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)およびチロシン(Y)を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書中で用いる「非正準アミノ酸残基」という用語は、天然に存在するタンパク質中に一般に組み込まれる20個の正準アミノ酸の中にないDまたはL形態のアミノ酸残基を指す。非正準アミノ酸には、天然に稀な(ペプチドもしくはタンパク質において)アミノ酸残基または非天然のアミノ酸残基が含まれる。非正準アミノ酸の例としては、限定されずにβ-アミノ酸、ホモアミノ酸、環状アミノ酸、α、α二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、および誘導体化側鎖を有するアミノ酸が挙げられる。他の例としては、以下のものが含まれる(L形態またはD形態において):シトルリン(Cit)、ホモシトルリン(hCit)、N-メチルシトルリン(NMeCit)、N-メチルホモシトルリン(NMeHoCit)、オルニチン(OrnまたはO)、N-メチルオルニチン(NMeOrn)、サルコシン(Sar)、ホモリシン(hKまたはHlys)、ホモアルギニン(hRまたはhArg)、ホモグルタミン(hQ)、N-メチルアルギニン(NMeR)、N-メチルロイシン(NMeL)、N-メチルホモロイシン(NMeHoK)、N-メチルグルタミン(NMeQ)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(Tic)、ニトロフェニルアラニン(nitrophe)、アミノフェニルアラニン(aminophe)、ベンジルフェニルアラニン(benzylphe)、γ-カルボキシグルタミン酸(γ-carboxyglu)ヒドロキシプロリン(hydroxypro)、p-カルボキシル-フェニルアラニン(Cpa)、α-アミノアジピン酸(Aad)、アセチルアルギニン(acetylarg)、α,β-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、α,γ-ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、β-(1-ナフチル)-アラニン(1Na1)、β-(2-ナフチル)-アラニン(2Na1)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、4-メチル-フェニルアラニン(MePhe)、β,β-ジフェニル-アラニン(BiPhA)、アミノ酪酸(Abu)、4-フェニル-フェニルアラニン(4Bip)、α-アミノ-イソ酪酸(Aib)、ベータ-アラニン、ベータ-アミノプロピオン酸、ピペリジン酸、アミノカプリン酸、アミノヘプタン酸、アミノピメリン酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ-ヒドロキシリシン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、β-N,N,N-トリメチルリシン、β-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、ω-メチルアルギニンおよび他の同様のアミノ酸、ならびにこれらのいずれかの誘導体化された形態。
【0058】
1つの例において、本開示のペプチドは、5~100個のアミノ酸、または5~20個のアミノ酸、または20~30個のアミノ酸、または30~40個のアミノ酸、または40~50個のアミノ酸、または50~60個のアミノ酸、または60~70個のアミノ酸、または70~80個のアミノ酸、または80~90個のアミノ酸、または90~100個のアミノ酸、または5~90個のアミノ酸、または5~80個のアミノ酸、または5~70個のアミノ酸、または5~60個のアミノ酸、または5~50個のアミノ酸、または5~40個のアミノ酸、または10~90個のアミノ酸、または10~80個のアミノ酸、または10~70個のアミノ酸、または10~60個のアミノ酸、または10~50個のアミノ酸、または10~40個のアミノ酸を含み得る。いくつかの例において、本開示のペプチドは、5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個、または11個、または12個、または13個、または14個、または15個、または16個、または17個、または18個、または19個、または20個、または21個、または22個、または23個、または24個、または25個、または26個、または27個、または28個、または29個、または30個、または31個、または32個、または33個、または34個、または35個、または36個、または37個、または38個、または39個、または40個のアミノ酸を含み得る。いくつかの例において、本開示のペプチドは、12~37個のアミノ酸を含み得る。例えば
図21に示すように、本開示のペプチドは、12個の残基を含む。例えば表7に示すように、本開示のペプチドは、14個の残基を含む。例えば表4に示すように、本開示のペプチドは、26個の残基を含む。
【0059】
1つの理論によって束縛されることを望まずに、本明細書において提供するペプチドは、細胞の膜透過性を、膜中に孔を形成することによって、または膜を破壊することによって増加させると考えられる。孔は、1つのペプチドによって形成され得、または複数のペプチドが結合して多量体複合体を形成し得る。例えば、あるペプチドは、アルファヘリックス構造を生じて孔を形成することができる。あるいはまた、ペプチドは、膜においてベータ-プリーツ構造を採用することができ、それによって膜透過性が増加する。孔は、小さな有機分子またはタンパク質が膜を横断して移動するのを可能にするのに十分な大きさであり得る。1つの例において、本開示のペプチドは、微生物中に孔を形成する能力があり得る。上記で述べたように、例えば
図20に示すように、本発明者らは、エプシロン-リシル化が本開示のペプチドの孔形成特性に影響を及ぼす場合でさえ、修飾したペプチドの殺菌特性は影響を受けないことも見出した。
【0060】
1つの理論によって束縛されることを望まずに、微生物中の孔は、ペプチドの構造のために形成され得る。例えば、両親媒性のα-ヘリックス構造は、孔を形成するのに有用であり得る。従って、本開示のペプチドは、両親媒性α-ヘリックス構造を形成し得ると考えられる。抗菌ペプチドに関して本明細書中で使用する場合、用語「両親媒性α-ヘリックス構造」は、生理学的pHでいくつかの極性残基を含む親水性面および無極性残基を含む疎水性面を有するα-ヘリックスを意味する。極性残基は、例えば、リシンまたはアルギニン残基であり得、一方、無極性残基は、例えば、ロイシンまたはアラニン残基であり得る。両親媒性α-ヘリックス構造を有する抗菌ペプチドは、一般的に、両親媒性ドメイン内の同数の極性および無極性残基、ならびにペプチドに中性pHで全体的に正電荷を付与するのに十分な数の塩基性残基を有する。
【0061】
いくつかの例において、および例えば
図21に示すように、ペプチドは、12個のアミノ酸残基(例えば、HC2)を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、6個のリシン残基を含んでもよく、ここで1個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、6個のリシン残基を含んでもよく、ここで2個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であり得る。いくつかの例において、ペプチドは、6個のリシン残基を含んでもよく、ここで、3個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、6個のリシン残基を含んでもよく、ここで4個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、6個のリシン残基を含んでもよく、ここで5個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、6個のリシン残基を含んでもよく、ここで6個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。
【0062】
いくつかの例において、および例えば表7に示すように、ペプチドは、14個のアミノ酸残基(例えば、マストパランB)を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで1個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで2個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで3個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで4個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。
【0063】
いくつかの例において、および例えば表4に示すように、ペプチドは、26個のアミノ酸残基(例えば、メリチン)を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、3個のリシン残基を含んでもよく、ここで1個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、3個のリシン残基を含んでもよく、ここで2個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、3個のリシン残基を含んでもよく、ここで3個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。
【0064】
いくつかの例において、ペプチドは、23個のアミノ酸残基(例えば、マガイニン2)を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで1個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで2個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで3個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで4個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。
【0065】
いくつかの例において、ペプチドは、24個のアミノ酸残基(例えば、パンジニン2)を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで1個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで2個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで3個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、4個のリシン残基を含んでもよく、ここで4個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。
【0066】
いくつかの例において、ペプチドは、37個のアミノ酸残基(例えば、セクロピンA)を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで1個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで2個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで3個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで4個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで5個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで6個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。いくつかの例において、ペプチドは、7個のリシン残基を含んでもよく、ここで7個のリシン残基は、エプシロン-リシン残基であってもよい。
【0067】
いくつかの例において、および例えば表7に示すように、ペプチドは、LKLKSIVSWAKKVL(配列番号1)のアミノ酸配列を有してもよい(例えば、マストパランB)。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、2位、または4位、または11位、または12位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、2位および4位、または2位および11位、または2位および12位、または4位および11位、または4位および12位、または11位および12位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、2、4および11位、または2、4および12位、または2、11および12位、または4、11および12位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、4個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、2、4、11および12位に位置し得る。1つの例、例えば表7におけるペプチドMB1において、ペプチドは、LKLKSIVSWAKKVLのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、2位に位置する(配列番号7)。1つの例、例えば表7におけるペプチドMB2において、ペプチドは、LKLKSIVSWAKKVLのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、4位に位置する(配列番号8)。1つの例、例えば表7におけるペプチドMB3において、ペプチドは、LKLKSIVSWAKKVLのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、11位に位置する(配列番号9)。1つの例、例えば表7におけるペプチドMB4において、ペプチドは、LKLKSIVSWAKKVLのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、12位に位置する(配列番号10)。
【0068】
いくつかの例において、および例えば表4に示すように、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号2)のアミノ酸配列を有してもよい(例えば、メリチン)。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、7位、または21位、または23位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく、エプシロン-リシン残基は、7位および21位、または7位および23位、または21位および23位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、7、21、および23位に位置し得る。1つの例、例えば表4のペプチド1において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、23位に位置する(配列番号11)。1つの例、例えば表4のペプチド2において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、21位に位置する(配列番号12)。1つの例、例えば表4のペプチド3において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、7位に位置する(配列番号13)。1つの例、例えば表4のペプチド4において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、7、21、および23位に位置する(配列番号14)。1つの例、例えば表5のペプチド5において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、7位および21位に位置する(配列番号15)。1つの例、例えば表5におけるペプチド5において、ペプチドは、GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、7位および23位に位置する(配列番号16)。
【0069】
いくつかの例において、および例えば
図21に示すように、ペプチドは、KRKRKRKRKRKR(配列番号3)のアミノ酸配列を有してもよい(例えば、HC1)。配列番号3のペプチドを、以下の構造:
【化9】

によって表すことができる。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1位、または3位、または5位、または7位、または9位、または11位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく、エプシロン-リシン残基は、1位および3位、または1位および5位、または1位および7位、または1位および9位、または1位および11位、または3位および5位、または3位および7位、または3位および9位、または3位および11位、または5位および7位、または5位および9位、または5位および11位、または7位および9位、または7位および11位、または9位および11位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3および5位、または1、5および7位、または1、7および9位、または1、9および11位、または3、5および7位、または3、7および9位、または3、9および11位、または5、7および9位、または5、9および11位、または7、9および11位、または1、3および7位、または1、3および9位、または1、3および11位、または1、5および9位、または1、5および11位、または1、7および11位、または3、5および9位、または3、5および11位、または3、7および11位、または5、7および11位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、4個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、5および7位、または1、3、5および9位、または1、5、7および9位、または1、7、9および11位、または1、3、7および9位、または1、3、5および11位、または1、3、7および11位、または1、3、9および11位、または1、5、9および11位、または1、5、7および11位、または3、5、7および11位、または3、5、7および9位、または3、7、9および11位、または3、5、9および11位、または5、7、9および11位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、5個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、5、7および9位、または1、5、7、9および11位、または1、3、5、7および11位、または1、3、5、9および11位、または1、3、7、9および11位、または3、5、7、9および11位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、6個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく、エプシロン-リシン残基は、1、3、5、7、9、および11位に位置し得る。1つの例、例えば
図21におけるペプチドHC2において、ペプチドは、KRKRKRKRKRKRのアミノ酸配列を有し、ペプチドは、6個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、1、3、5、7、9、および11位に位置する(配列番号17)。配列番号17のペプチドを、以下の構造:
【化10】
によって表すことができる。1つの例、例えば
図21におけるペプチドHC4において、ペプチドは、KrKrKrKrKrKr(ここで「r」はD-アルギニルまたはD-アルギニン残基を表す)のアミノ酸配列を有し、ペプチドは、6個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、1、3、5、7、9および11位に位置する(配列番号18)。配列番号18のペプチドを、以下の構造:
【化11】
によって表すことができる。1つの例、例えば
図21におけるペプチドHC6において、ペプチドは、kRkRkRkRkRkR(ここで「k」はD-リシルまたはD-リシン残基を表す)のアミノ酸配列を有し、ペプチドは、6個のエプシロン-リシン残基を含み、エプシロン-リシン残基は、1、3、5、7、9および11位に位置する(配列番号19)。配列番号19のペプチドを、以下の構造:
【化12】
によって表すことができる。
【0070】
いくつかの例において、ペプチドは、GIGKFLHSAKKFGKAFVGEIMNS(配列番号4)のアミノ酸配列を有してもよい(例えば、マガイニン2)。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、4位、または10位、または11位、または14位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、4および10位、または4および11位、または4および14位、または10および11位、または10および14位、または11および14位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、4、10、および11位、または4、11、および14位、または10、11、および14位、または4、10、および14位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、4個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、4、10、11および14位に位置し得る。
【0071】
いくつかの例において、ペプチドは、FWGALAKGALKLIPSLFSSFSKKD(配列番号5)のアミノ酸配列を有してもよい(例えば、パンジニン2)。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、7位、または11位、または22位、または23位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、7および11位、または7および22位、または7および23位、または11および22位、または11および23位、または22および23位、または22および23位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、7、11、および22位、または7、11、および23位、または11、22、および23位、または7、22、および23位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、4個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、7、11、22、および23位に位置し得る。
【0072】
いくつかの例において、ペプチドは、KWKLFKKIEKVGQNIRDGIIKAGPAVAVVGQATQIAK-NH2(配列番号6)のアミノ酸配列を有してもよい(例えば、セクロピンA)。いくつかの例において、ペプチドは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個のリシン残基を含んでもよい。いくつかの例において、ペプチドは、1個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1位、または3位、または6位、または7位、または10位、または21位、または37位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、2個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1および3位、または1および6位、または1および7位、または1および10位、または1および21位、または1および37位、または3および6位、または3および7位、または3および10位、または3および21位、または3および37位、または6および7位、または6および10位、または6および21位、または6および37位、または7および10位、または7および21位、または7および37位、または10および21位、または10および37位、または21および37位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、3個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、および6位、または1、3、および7位、または1、3、および10位、または1、3、および21位、または1、3、および37位、または1、6、および7位、または1、6、および10位、または1、6、および21位、または1、6、および37位、または1、7、および10位、または1、7、および21位、または1、7、および37位、または1、10、および21位、または1、10、および37位、または1、21、および37位、または3、6、および7位、または3、6、および10位、または3、6、および21位、または3、6、および37位、または3、7、および10位、または3、7、および21位、または3、7、および37位、または3、10、および21位、または3、10、および37位、または3、21、および37位、または6、7、および10位、または6、7、および21位、または6、7、および37位、または6、10、および21位、または6、10、および37位、または6、21、および37位、または7、10、および21位、または7、10、および37位、または7、21、および37位、または10、21、および37位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、4個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、6および7位、または1、3、6および10位、または1、3、6および21位、または1、3、6および37位、または1、3、7および10位、または1、3、7および21位、または1、3、7および37位、または1、3、10および21位、または1、3、10および37位、または1、3、21および37位、または1、6、7および10位、または1、6、7および21位、または1、6、7および37位、または1、6、10および21位、または1、6、10および37位、または1、6、21および37位、または1、7、10および21位、または1、7、10および37位、または1、7、21および37位、または1、10、21および37位、または3、6、7および10位、または3、6、7および21位、または3、6、7および37位、または3、6、10および21位、または3、6、10および37位、または3、6、21および37位、または3、7、10および21位、または3、7、10および37位、または3、7、21および37位、または3、10、21および37位、または6、7、10および21位、または6、7、10および37位、または6、7、21および37位、または6、10、21および37位、または7、10、21および37位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、5個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、6、7、および10位、または1、3、6、7、および21位、または1、3、6、7、および37位、または1、3、6、10、および21位、または1、3、6、10、および37位、または1、3、6、21、および37位、または1、3、7、10、および21位、または1、3、7、10、および37位、または1、3、7、21、および37位、または1、3、10、21、および37位、または1、6、7、10、および21位、または1、6、7、10、および37位、または1、6、7、21、および37位、または1、6、10、21、および37位、または1、7、10、21、および37位、または3、6、7、10、および21位、または3、6、7、10、および37位、または3、6、7、21、および37位、または3、6、10、21、および37位、または3、7、10、21、および37位、または6、7、10、21、および37位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、6個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、6、7、10、および21位、または1、3、6、7、10、および37位、または1、3、6、7、21、および37位、または1、3、6、10、21、および37位、または1、3、7、10、21、および37位、または1、6、7、10、21、および37位、または3、6、7、10、21、および37位に位置し得る。いくつかの例において、ペプチドは、7個のエプシロン-リシン残基を含んでもよく;エプシロン-リシン残基は、1、3、6、7、10、21、および37位に位置し得る。
【0073】
本開示のペプチドのin vitro抗菌効力は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、カルバペナム耐性腸内細菌(CRE)、ポリミキシンB耐性エンテロバクター・クロアカ、カンジダ・アルビカンスおよびフサリウム株を含むがこれらに限定されない広範囲の病原体に対する最小発育阻止濃度(MIC)を決定することによって確立された。in vivoでの抗菌効果は、シュードモナスおよびスタフィロコッカス角膜炎のウサギモデルで例証されている。本開示はまた、哺乳動物細胞よりも微生物細胞を標的とするための、タンパク質分解安定性および選択性が増強されたペプチドの合理的設計にも関する。従って、実験の節(例えば、
図6および
図20)において例示するように、本開示のペプチドを、成長を阻害するために使用してもよい。従って、また本開示の別の態様は、療法または医学で使用するための本開示のペプチドを提供することである。さらに、また本開示の別の態様は、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)を含む医薬組成物を提供することである。
【0074】
本開示の別の態様は、微生物の成長を阻害する方法を提供することである。いくつかの例において、および例えば
図15に示すように、微生物の成長を阻害する方法によってまた、微生物感染が処置され得る。いくつかの例において、当該方法は、本明細書中に記載するペプチドおよび/または本明細書中に記載する組成物の薬学的に有効な量の投与を含んでもよい。いくつかの例において、本明細書中に記載する微生物の成長を阻害する方法は、微生物の成長を、微生物感染を処置することによって阻害し得る。
【0075】
本明細書において使用する場合、用語「処置する(treat)」、「処置(treatment)」およびその文法的変化形は、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を指し、ここで、目的は、所望されない生理学的状態、障害もしくは疾患を防止するかもしくは低速化させること(軽減すること)、または有益な、もしくは所望される臨床的結果を得ることである。かかる有益な、または所望される臨床的結果は、症状の緩和;状態、障害もしくは疾患の程度の低下;状態、障害もしくは疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態;状態、障害もしくは疾患の進行の遅延もしくは低速化;状態、障害もしくは疾患状態の改善;検出可能もしくは検出不能を問わない寛解(部分的もしくは全体的を問わない);または状態、障害もしくは疾患のエンハンスメントもしくは改善を含むが、これらに限定されない。処置には、過剰なレベルの副作用なしに、臨床的に重要である細胞応答を誘発することが含まれる。処置には、処置を受けない場合の予想される生存期間と比較して生存期間を延長することも含まれる。
【0076】
本明細書中で使用する場合、用語「微生物(microbe)」または「微生物(microorganism)」を、その最も広い意味で用い、従って、範囲が原核生物に限定されない。むしろ、「微生物」という用語は、その範囲内に細菌、古細菌、酵母、真菌、原生動物および藻類を含む。1つの例において、本開示のペプチドの薬学的に有効な量の投与を含む、微生物感染を処置する方法または微生物を除去する方法を、提供する。1つの例において、微生物は、細菌または真菌を含むが、これらに限定されない。従って、1つの例において、微生物感染は、細菌感染または真菌感染を含むが、これらに限定されない。
【0077】
1つの例において、細菌は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌であり得る。本明細書中で使用する「グラム陽性細菌」という用語は、グラム染色においてクリスタルバイオレット染色の色を保持する細菌を指し得る。当該細菌は、ペプチドログリカンの厚い層から構成される細胞壁を有し得る。本明細書中で使用する「グラム陰性細菌」という用語は、グラム染色においてクリスタルバイオレット染色の色を保持しない場合がある細菌を指し得る。当該細菌は、ペプチドログリカンの薄い層から構成される細胞壁を有し得る。
【0078】
従って、処置され得る細菌感染は、アセトバクター(Acetobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、アクチノミセス(Actinomyces)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)種、アゾリゾビウム(Azorhizobium)、アゾトバクター(Azotobacter)、アナプラズマ(Anaplasma)種、バチルス(Bacillus)種、バクテロイデス(Bacteoides)種、バルトネラ(Bartonella)種、ボルデテラ(Bordetella)種、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ(Brucella)種、バークホルデリア(Burkholderia)種、カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア(Chlamydia)種、クラミドフィラ(Chlamydophila)種、クロストリジウム(Clostridium)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、コクシエラ(Coxiella)、エーリキア(Ehrlichia)、エンテロバクター(Enterobacter)、腸球菌種、大腸菌類、フランシセラ(Francisella)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ガードネレラ(Gardnerella)、ヘモフィルス(Haemophilus)種、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、ラクトコッカス(Lactococcus)、レジオネラ(Legionella)、リステリア(Listeria)、メタノバクテリウム・エクストロクエンス(Methanobacterium extroquens)、マイクロバクテリウム・マルチフォルメ(Microbacterium multiforme)、ルテウス菌、カタル球菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、マイコプラズマ(Mycoplasma)種、ナイセリア(Neisseria)種、パスツレラ(Pasteurella)種、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、シュードモナス、根粒菌、リケッチア(Rickettsia)種、ロシャリメア(Rochalimaea)種、ロチア(Rothia)、サルモネラ種、セラチア(Serratia)、赤痢菌、ブドウ球菌種、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、連鎖球菌種、トレポネーマ(Treponema)種、ビブリオ(Vibrio)種、ボルバキア(Wolbachia)、およびエルシニア(Yersinia)種の属からの細菌によって引き起こされるものを含むが、これらに限定されない。1つの例において、細菌は、アセトバクター オウランティウス(Acetobacter aurantius)、アシネトバクター・バウマンニ、アクチノマイセス・イスラエリ(Actinomyces Israelii)、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アゾリゾビウム・カウリノダンス(Azorhizobium caulinodans)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、アナプラズマ・マジナーレ(Anaplasma marginale)、炭疽菌、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、セレウス菌、バチルス・フシフォルミス(Bacillus fusiformis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ジンジバリス菌、バクテロイデス・メラニノゲニカス(Bacteroides melaminogenicus)(プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaminogenica))、ヘンセラ菌、塹壕熱菌、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、百日咳菌、ライム病ボレリア、ウシ流産菌、ヤギ流産菌、ブタ流産菌、鼻疽菌、類鼻疽菌、セパシア菌複合体、バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)、肉芽腫カリマトバクテリウム、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・ピロリ(Campylobacter pylori)、トラコーマクラミジア、クラミドフィラ(例えば肺炎クラミジア、オウム病クラミジア、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌、破傷風菌)、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・フシフォルメ(Corynebacterium fusiforme)、Q熱コクシエラ、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chajfeensis)、エンテロバクター・クロアカ、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス‐デューランス(Enterococcus durans)、フェーカリス菌、フェシウム菌、エンテロコッカス・ガリナルム(Enterococcus galllinarum)、エンテロコッカス・マロラツス(Enterococcus maloratus)、大腸菌、野兎病菌、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ガードネレラ菌、軟性下疳菌、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パーツッシス(Haemophilus pertussis)、ヘモフィルス・バギナリス(Haemophilus vaginalis)、ピロリ菌、肺炎桿菌、アシドフィルス菌、カゼイ菌、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、在郷軍人病菌、リステリア菌、メタノバクテリウム・エクストロクエンス、マイクロバクテリウム・マルチフォルメ、ルテウス菌、カタル球菌、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・ジフセリエ(Mycobacterium diphtheriae)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、らい菌、マイコプラズマ・レプラムリウム(Mycobacterium lepraemurium)、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)、スメグマ菌、結核菌、マイコプラズマ・ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、マイコプラズマ・ペネトランス(Mycoplasma penetrans)、肺炎マイコプラズマ、淋菌、髄膜炎菌、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、野兎病菌 ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ジンジバリス菌、緑膿菌、リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium Radiobacter)、発疹チフスリケッチア、リケッチア・シタッシ(Rickettsia psittaci)、リケッチア・クインターナ(Rickettsia quintana)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、リケッチア・トラコーマ(Rickettsia trachomae)、ロシャリメア・ヘンセラ(Rochalimaea henselae)、ロシャリメア・クインターナ(Rochalimaea quintana)、ロチア・デントカリオーサ(Rothia dentocariosa)、腸炎菌、チフス菌、ネズミチフス菌、霊菌、志賀赤痢菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アビウム(Streptococcus、avium)、ウシ連鎖球菌、ストレプトコッカス・クリセツス(Streptococcus cricetus)、フェシウム菌(Streptococcus faceium)、フェカリス菌、ストレプトコッカス・フェラス(Streptococcus ferus)、ストレプトコッカス・ガリナルム(Streptococcus gallinarum)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・ミチオール(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ミュータンス菌、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、肺炎球菌、化膿性連鎖球菌、ミュータンス群レンサ球菌(Streptococcus rattus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、サンギス菌、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、梅毒トレポネーマ、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、コレラ菌、ビブリオ・コンマ(Vibrio comma)、腸炎ビブリオ、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、ボルバキア(Wolbachia)、エンテロコリチカ菌、ペスト菌および仮性結核菌を含むが、これらに限定されない。1つの例において、細菌は、アシネトバクター(Acinetobacter)、バチルス種、エンテロバクター、腸球菌種、大腸菌類、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス、およびブドウ球菌種の属を含むが、これらに限定されない。1つの例において、および例えば表5および表7に示すように、細菌は、アシネトバクター・バウマンニ、エンテロバクター・クロアカ、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、フェーカリス菌およびフェシウム菌を含むが、これらに限定されない。
【0079】
一例では、細菌感染は、症状、例えば、しかし限定されずに肺炎、結核、髄膜炎、下痢性疾患、バイオフィルムの形成、敗血症、リステリア症、胃腸炎、毒素性ショック症候群、出血性大腸炎;溶血性尿毒症症候群、ライム病、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、ヒトエーリキア症、偽膜性大腸炎、コレラ、サルモネラ症、ネコ引っかき熱、壊死性筋膜炎(GAS)、連鎖球菌毒素ショック症候群、院内感染および地域社会関連感染、アテローム性動脈硬化症、乳幼児突然死症候群(SIDS)、耳の感染症、気道感染症、尿路感染症、皮膚および軟部組織感染、爪床感染症、創傷感染、敗血症、胃腸疾患、院内心内膜炎および血流感染症を引き起こし得る。1つの例において、細菌感染は、症状、例えば、しかし限定されずに眼瞼炎、麦粒腫、Preseptal Cellulitis、涙のう炎、眼窩蜂巣炎、丹毒、春季角結膜炎、細菌性結膜炎、結膜裂傷、上方輪部角結膜炎、偽膜での結膜炎、流行性角結膜炎、細菌性角膜炎、角膜潰瘍、Phlyctenulosis、前部ぶどう膜炎、眼内炎、細菌性膿瘍、急性敗血症性網膜炎、慢性細菌性網膜炎、乳頭炎、視神経炎、および眼窩蜂巣炎を引き起こし得る。1つの例において、ならびに例えば
図7および
図9に示すように、細菌感染は、症状、例えば、しかし限定されずに黄色ブドウ球菌角膜炎、および緑膿菌角膜炎を引き起こす。
【0080】
1つの例において、細菌は、薬剤耐性細菌であり得る。1つの例において、ならびに例えば表5および表7に示すように、薬剤耐性細菌には、カルバペナム耐性エンテロバクター株(CRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ポリミキシンB耐性エンテロバクター・クロアカ、薬剤耐性アシネトバクター・バウマンニ、ならびに多産のバイオフィルム形成緑膿菌および表皮ブドウ球菌株が含まれるが、これらに限定されない。従って、本明細書中で使用する場合、用語「薬剤耐性細菌」は、一般的に細菌を死滅させるかまたは成長を制限し得る化学物質(薬物)中で成長する能力を有し得る細菌を指す。
【0081】
1つの例において、処置され得る真菌感染には、アブシディア(Absidia)、アジェロミセス属、アントロデルマ科、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス(Blastomyces)、カンジダ、クラドフィアロフォラ属、コクシジオイデス(Coccidioides)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クスダマカビ(Cunninghamella)、表皮菌、エクソフィアラ属、フィロバジエラ(Filobasidiella)、フォンセケア属、フサリウム、ゲオトリクム属、ヒストプラズマ(Histoplasma)、ホルタエア(Hortaea)、イサチェンキア(Issatschenkia)、マヅレラ属、マラセチア属、小胞子菌、微胞子虫、ケカビ、ネクトリア属、ペシロマイセス属、パラコクシジオイデス属、アオカビ類、ピキア(Pichia)、ニューモシスチス(Pneumocystis)、シュードアレシェリア属、クモノスカビ属、ロドトルラ属、スケドスポリウム(Scedosporium)、スエヒロタケ属、スポロトリクス属、白癬菌および毛芽胞菌の属からの真菌によって引き起こされたものが含まれるが、これらに限定されない。1つの例において、真菌には、アブシディア・コリンビフェラ(Absidia corymbifera)、アジェロミセス・カプスラーツス(Ajellomyces capsulatus)、アジェロミセス・デルマティティジス(Ajellomyces dermatitidis)、アルソダーマ・ベンハミエ(Arthroderma benhamiae)、アルソダーマ・フルバム(Arthroderma fulvum)、アルソダーマ・ジプセム(Arthroderma gypseum)、アルソダーマ・インカーバタム(Arthroderma incurvatum)、アルソダーマ・オタエ(Arthroderma otae)、アルソダーマ・バンブレウセゲミ(Arthroderma vanbreuseghemii)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガーツス、クロコウジカビ、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ クルーセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・ペレクローサ(Candida pelliculosa)、クラドフィアロフォラ・カリオニー(Cladophialophora carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシ(Coccidioides posadasii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クスダマカビ種、鼠径表皮菌(Epidermophyton floccosum)、エクソフィアラ・デルマチチヂス(Exophiala dermatitidis)、フィロバジエラ・ネオフォルマンス(Filobasidiella neoformans)、フォンセカエ・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フサリウム・ソラニ、ジェオトリクム カンディデュム(Geotrichum candidum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ホルタエア・ウェルネキイ(Hortaea werneckii)、イサチェンキア・オリエンタリス(Issatschenkia orientalis)、マズレラ・グリセア(Madurella grisae)、癜風菌(Malassezia furfur)、マラセチア・グロボサ(Malassezia globosa)、マラセチア・オブツサ(Malassezia obtusa)、マラセチア・パキダーマティス(Malassezia pachydermatis)、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)、マラセチア・スロフィエ(Malassezia slooffiae)、マラセチア・シンポジアリス(Malassezia sympodialis)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、ミクロスポルム・フルバム(Microsporum fulvum)、ミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)、微胞子虫、ムーコル・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、ネクトリア・ヘマトコッカ(Nectria haematococca)、ペシロマイセス・バリオチ(Paecilomyces variotii)、南アメリカ分芽菌、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、ピキア・アノマーラ(Pichia anomala)、ピキア・グリエルモンディ(Pichia guilliermondii)、ニューモシスチス・ジロベシ(Pneumocystis jiroveci)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、シュードアレシェリア・ボイジイ(Pseudallescheria boydii)、リゾプス・ オリゼ(Rhizopus oryzae)、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、スケドスポリウム・アピオスペルムム(Scedosporium apiospermum)、スエヒロタケ、スポロトリックス・ シェンキイ(Sporothnx schenckii)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・ベルコーズム(Trichophyton verrucosum)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)、トリコスポロン・インキン(Trichosporon inkin)およびトリコスポロン・ムコイデス(Trichosporon mucoides)が含まれるが、これらに限定されない。1つの例において、真菌は、カンジダ属、フザリウム属、およびアスペルギルス属を含むが、これらに限定されない。1つの例において、ならびに例えば表5および表7に示すように、真菌は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・パプシローシス、カンジダ・トロピカリス、フサリウム・ソラニ、フサリウム・オキシスポラム、およびアスペルギルス・フミガーツスを含むが、これらに限定されない。
【0082】
1つの例において、真菌感染によって、状態、例えば、しかし限定されずに輪虫、真菌性結膜炎、角膜真菌症、ぶどう膜炎、膿瘍、カンジダ網膜炎、真菌性乳頭炎および視神経炎、侵襲性アスペルギルス症、ムコール症、真菌性角膜炎、カンジダ角膜炎、およびフザリウム角膜炎が引き起こされ得る。
【0083】
1つの例において、真菌は、薬剤耐性真菌であり得る。1つの例において、薬剤耐性真菌は、フサリウム・ソラニ、フサリウム・オキシスポラム、およびアスペルギルス・フミガーツスを含むが、これらに限定されない。従って、本明細書中で使用する用語「薬剤耐性真菌」は、一般に真菌を死滅させるかまたは成長を制限し得る化学物質(薬物)中で成長する能力を有し得る真菌を指す。
【0084】
別の態様では、単離したペプチドの治療指数(安全性)を改善する方法であって、ペプチドが、D-エプシロン-リシン、L-エプシロン-リシン、D-デルタ-オルニチン、L-デルタ-オルニチン、D-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、L-ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、D-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸、およびL-ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基、ならびに非エプシロン-リシン、非デルタ-オルニチン、非ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸および非ベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸アミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも1個の他のものを含む少なくとも5個のアミノ酸残基を含み、当該ペプチドは、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1つを有しない同等のペプチドと比較した場合に低下した細胞毒性を有し、当該方法は、エプシロン-リシン、デルタ-オルニチン、ガンマ-2,4-ジアミノ酪酸、およびベータ-2,3-ジアミノプロピオン酸残基からなる群から選択される少なくとも1つに対するリシン残基の少なくとも1つを修飾することを含む、前記方法を提供する。例えば
図11に示すように、メリチン中のアルファ-リシン残基をエプシロン-リシン残基で置換すると、メリチンの細胞毒性が減少し、それによってその治療指数または安全性が増加し得る。
【0085】
別の態様では、増殖性疾患を処置する方法であって、本明細書中に記載するペプチドおよび/または本明細書中に記載する組成物の薬学的に有効な量の投与を含む、前記方法を提供する。1つの例において、増殖性疾患は、がんおよび腫瘍を含むが、これらに限定されない。例えば
図22に示すように、本開示のペプチドによって、種々のT細胞およびB細胞リンパ腫細胞株の生存率が低下する。
【0086】
従って、本明細書中で使用する場合、用語「がん」は、異常な細胞が、制御されずに分裂し、近傍の組織に浸潤し得る疾患を指す。がん細胞はまた、血液およびリンパ系を介して身体の他の部位に伝播し得る。主な種類のがんには、がん腫、肉腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および中枢神経系がんが含まれるが、これらに限定されない。がんとは、皮膚において、または内臓を補強するかもしくは覆う組織において開始するがんであう。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織において開始するがんである。白血病は、造血組織、例えば骨髄において開始し、多数の異常な血液細胞の産生が生じ、血液に入るがんである。リンパ腫および多発性骨髄腫は、免疫系の細胞において開始するがんである。中枢神経系がんは、脳および脊髄の組織において開始するがんである。本明細書中で使用する「腫瘍」という用語は、細胞増殖が制御されず、進行性である組織の新しい増殖を指す。腫瘍組織の成長は、正常組織の成長よりも速く、成長を誘発した刺激の停止後にも継続し、有用な生理学的目的には役立たない。腫瘍は、良性(がんではない)または悪性(がん)であり得る。
【0087】
別の例において、増殖性疾患は、結腸直腸がん、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、胃がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部の扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん腫、皮脂腺がん腫、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性肺がん、腎細胞がん、肝がん、肝転移、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん腫、甲状腺がん、例えば組織非形成性甲状腺がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、肺の小細胞がん、肺の非小細胞がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、T細胞リンパ腫およびB細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0088】
例えば
図16に示すように、本開示のペプチドは、細胞の脂肪多糖で誘導された炎症を実質的に阻害する。したがって、別の態様では、炎症を処置する方法であって、本明細書中に記載するペプチドおよび/または本明細書中に記載する組成物の薬学的に有効な量の投与を含む、前記方法を提供する。1つの例において、炎症は、ざ瘡、神経炎症、アテローム性動脈硬化症、エンドトキシン血症性ショック、角膜炎症、および結膜炎を含むが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書中で使用する「最小発育阻止濃度」(MIC)という用語は、特定の条件下で、例えば液体ブロス培地において微生物の成長を防止するか、または他の方法でその機能を修正するのに必要な抗菌剤(例えば、本明細書中に記載するペプチド)の最低濃度を指し、当該分野で周知の標準的技法に従って、多くの異なる微生物について決定することができる。
【0090】
本明細書中で用いる「治療指数」という用語は、本明細書中に記載するペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)に対する、細胞代謝活性の完全な喪失または完全な細胞毒性を引き起こすペプチドの最小濃度の比を指す。細胞代謝活性または細胞毒性の損失を、当該分野で公知の任意の方法を用いて決定することができる。1つの例において、細胞代謝活性または細胞毒性の損失を、MTS細胞増殖アッセイによって決定することができる。
【0091】
本明細書中で用いる「最小発育阻止濃度」という用語は、細菌、酵母または真菌の成長を完全に阻止するのに必要なペプチドおよび/またはポリマーの最小濃度を指す。
【0092】
本明細書中で使用する「タンパク質分解安定性」安定性という用語は、酵素媒介加工に耐えるペプチドの能力を指す。典型的な酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、およびペプシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
別の態様では、微生物コロニー形成を管理する方法であって、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)を含む剤および/または本明細書中に記載する組成物の投与を含む、前記方法を提供する。1つの例において、剤は、消毒剤、保存料、防腐剤、および殺生物剤を含むが、これらに限定されない。1つの例において、消毒剤は、臨床的(病院)消毒剤、家庭消毒剤、多目的消毒剤、および高度な創傷被覆のための殺生物剤を含むが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書中で使用する「消毒剤」という用語は、微生物を含まない製品を滅菌または維持することができる薬剤を指す。本質的に、微生物の成長が望ましくないあらゆる製品、例えば動物およびヒトと接触する物質を、微生物の成長を防止するために本明細書中で提供するペプチドで処理することができる。かかる製品としては、例えば、おしり拭き、おむつ、バンドエイド(bandaid)、タオル、化粧製品、手術用品、創傷包帯、洗眼剤およびコンタクトレンズ溶液が挙げられ得る。本明細書中で用いる「保存剤(preservation agent)」または「保存剤(preservative)」または「消毒剤(antiseptic)」という用語は、食品、飲料、調合薬、塗料、生物学的試料、化粧品、および木材を含むがこれらに限定されない製品に添加して、微生物の成長による、または所望されない化学的変化による分解を防止することができる、本明細書中で開示するペプチドを指す。
【0095】
例えば
図18に示すように、本開示のペプチドは、損傷した角膜の創傷閉鎖を損なわず、従って、本開示のペプチドは、生体適合性であり、眼科用調製に好適である。さらに、本開示は、グラム陽性、グラム陰性および真菌感染に対する広範囲の眼科用点眼製剤としてカチオン性抗菌ポリマーを含む特定の組成物に関する。本開示はまた、本開示のペプチドの、緑膿菌、黄色ブドウ球菌およびF.solaniによって引き起こされる感染に対抗するための強力な広範囲の眼科用抗生物質としての使用に関する。本開示はまた、ポリマーの構造に基づく高められたタンパク質分解安定性および高い治療指数を有するペプチドの合理的な設計、ならびに、感染性疾患、多目的消毒液、保存剤および消毒剤を含むがこれらに限定されない微生物コロニー形成の管理におけるそれらの適用に関する。従って、別の局面において、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)および/または本明細書中に記載する組成物を含む眼科用製剤を、提供する。本明細書中で使用する「眼科用製剤」を、眼科用溶液、眼科用懸濁液、眼科用ゲル、眼科用軟膏、または眼科用ストリップ/インサートの形態で包含させることができる。眼科用溶液は、点眼剤として使用するために処方した水溶液または有機溶液である。眼科用懸濁剤は、ペプチドを含有する小さな粒子、例えば、超微粒ナノ粒子を水溶液または有機溶液中に添加することである。眼科用ゲルは、涙液膜中に分散し、眼表面を横断して本質的に透明な膜を形成する特殊なポリマーである。眼科用軟膏は、ワセリン基剤の羊毛脂肪との混合物である。眼科用ストリップ/インサートは、ペプチドを含浸させることができる濾紙または不溶性コンタクトレンズ様物体を指す。含浸された眼科用ストリップ/インサートを、次いで眼の表面上に配置するか、または下部結膜嚢中に挿入することができる。いくつかの例において、本明細書中に記載する眼科用製剤は、眼科用溶液、点眼薬、レンズケア溶液、多目的保存剤、眼組織保存剤、高度な創傷被覆のための消毒剤、ならびに医療機器および表面のためのコーティング材料を含むが、これらに限定されない。
【0096】
1つの理論によって束縛されることを望まずに、本開示のペプチドを、当該分野で公知の任意の方法を用いて合成してもよい。本開示のペプチドの合成は、Fmoc化学を介して、または固相ペプチド合成を介してであり得る。
【0097】
別の態様では、本明細書中に記載する1以上のペプチド(複数可)および/または本明細書中に記載する組成物を含むキットを提供する。
【0098】
本出願において使用する単数形、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、文脈が別段明らかに指示しない限り、複数の言及が含まれる。例えば、用語「単離されたペプチド」は、複数の単離されたペプチドを包含し、それらの混合物および組合せを含む。
【0099】
本明細書中で使用する場合、用語「増加(increase)」および「減少(decrease)」は、集団全体中に存在するものと同じ特質または特性と比較しての、集団のサブセットにおいて選択された特質または特性の相対的変化を指す。増加は、したがって正の尺度での変化を示し、一方減少は、負の尺度での変化を示す。本明細書中で使用する「変化」という用語はまた、単離された集団サブセットの選択された特質または特徴の、全体としての集団における同じ特質または特徴と比較しての差も指す。しかし、この用語は、認められた差の評価を伴わない。
【0100】
本明細書中で使用する用語「約」は、特定の明記した値の文脈において、明記した値の±5%、または明記した値の±4%、または明記した値の±3%、または明記した値の±2%、または明記した値の±1%、または明記した値の±0.5%を意味する。
【0101】
本開示全体を通じて、特定の実施形態は、範囲の様式で開示され得る。範囲の様式での説明は、単に便宜上および簡潔さのためであり、開示した範囲の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈するべきではないことを理解すべきである。従って、範囲の説明を、全ての可能な下位範囲および当該範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなすべきである。例えば、1~6などの範囲の説明を、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示した下位範囲、ならびに当該範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を有するとみなすべきである。これは、範囲の幅に関係なく該当する。
【0102】
本明細書中に例示的に記載する本発明は、本明細書中に特に開示していないいかなる要素(単数)または要素(複数)、制限(単数)または制限(複数)の非存在下でも好適に実施され得る。従って、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等は、広範に、かつ限定されずに読まれるものとする。さらに、本明細書中で使用する用語および表現を、説明の用語として用い、限定の用語として用いておらず、かかる用語および表現の使用において、示し、説明した特徴の任意の等価物またはその一部を除外する意図はなく、様々な修正が特許請求する本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書中に開示したその中に例示した本発明の修正および変形は、当業者に頼ることができ、かかる修正および変形は、本発明の範囲内にあると考えられることを理解するべきである。
【0103】
本発明を、本明細書中で広範かつ包括的に記載した。一般的な開示内にあるより狭い種および亜属的分類の各々もまた、本発明の一部を形成する。これは、切除した材料が本明細書中で具体的に列挙されているか否かにかかわらず、属からいかなる主題も除去する、ただし書きまたは否定的な限定を伴う本発明の一般的説明を含む。
【0104】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲および非限定的な例の範囲内にある。さらに、本発明の特徴または局面をマーカッシュ群の観点において記載する場合、当業者は、本発明がまたそれによって、マーカッシュ群の任意の個々の要素または要素の下位集団の観点において記載されることを認識する。
【実施例】
【0105】
実験の章
材料および方法
最小発育阻止濃度(MIC)決定。
カチオン性ポリマーおよびポリペプチドのMICを、臨床検査標準研究所(CLSI)ガイドラインに従って、抗生物質感受性/耐性細菌、酵母および真菌株のパネルに対して試験した。細菌および酵母株を、それぞれ、トリプシン大豆寒天(TSA)およびSabaroudデキストロース寒天(SDA)プレート(Neogen Corporation,MI,USA)上で一晩培養した。細菌のためのMueller-Hintonブロス(MHB)およびカンジダ・アルビカンスのためのSDブロス(Beckton Dickinson,MD,USA)中の接種液を、0.5 McFarlandで調製した。懸濁液を、次いで96ウェルマイクロタイタープレート(SPL Life Sciences Co.,Ltd,Korea)中で105CFU/mlの最終濃度に希釈した。ポリマーおよびポリペプチドを、2倍連続希釈で接種物に添加して、2~1024μg/mlの濃度の範囲を得た。ポリマーおよびポリペプチドのMICを、TECAN Infinite M200マイクロプレートリーダー(Tecan,Austria)を用いてOD600を測定するとともに、目視により35℃での24時間のインキュベーションの後に決定した。抗菌活性を、局所消毒剤、BAKおよびCHXと比較した。同様のプロトコルを用いて、抗生物質耐性病原体に対するεPLのMICを決定した。フサリウム株に対するポリマーおよびポリペプチドのMICを、完全強度のRPMI-1640緩衝液中で決定した。真菌胞子を、ジャガイモデキストロース寒天上での5日齢の培養から回収し、0.9%生理食塩水で105胞子/mlの濃度に希釈した。さらなる50倍希釈を、RPMI-1640緩衝液中で行い、100μlの接種物を、等容量の試験ペプチドを含む96ウェルプレートに2倍連続希釈で添加した。いかなる添加剤をも含まない接種物および緩衝液単独200μlを、それぞれ正の、および負の対照として供した。プレートを、次いで30℃で48時間インキュベートした。吸光度値を、前述のように600nmで測定し、90%成長を阻害するペプチドの最低濃度を、報告した。すべてのMIC決定を、2つ1組で行った。
【0106】
ポリマーおよびポリペプチドの細胞適合性評価
MTS((3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム))アッセイおよび高含有量分析(HCA)を実施して、培養したヒト皮膚線維芽細胞(hDF)の代謝活性および形態学的パラメーターに対する種々のポリマーの効果を、それぞれ前に記載したように解明した。抗腫瘍薬ノコダゾール(5μg/ml)を負の対照として供し、一方PBSで処理した細胞を正の対照として供した。3回の独立した3つ1組の実験からの平均値を、報告する。細胞を、96ウェルプレートで培養し、自動顕微鏡IN Cell Analyzer 2200(GE Healthcare)を用いて走査した(16の無作為に選択した場/ウェル)。IN Cell Investigatorソフトウェア(GE Healthcare)の多パラメーター細胞毒性生物学的応用モジュールを、得た画像の定量的推定および形態型的(morphotypic)解析に使用し、それを、Spotrfire(登録商標)ソフトウェアを用いて色分けされたヒートマップに自動的に変換した。
【0107】
角膜上皮創傷治癒のウサギモデルにおけるεPLのin vivo生体適合性
本研究で使用したすべての動物を、Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)記述の原則に従って処置し、プロトコルは、SingHealth Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC;AALAC accredited,Protocol #2012/SHS/775、創傷治癒について、#2014/SHS/1010、細菌性角膜炎について)によって承認されている。5ヶ月齢のニュージーランド白色ウサギ(体重3~3.5kg)8匹を、研究のために用い、2つの群に分けた。創傷に先立ち、すべてのウサギの眼を、細隙灯写真術によって、角膜異常、例えば血管新生またはあらゆる他の眼表面欠損の不存在について試験した。角膜表面の直径6mmの円形領域を、ウサギを麻酔した後に、滅菌ミニブレード(BD Beaver,MA,USA)で脱上皮した。2つの群のウサギに、0.3%のεPL(PBS中w/v、pH7.0)またはPBSの50μlの局所的滴下注入を1日4回、完全な創傷の閉鎖が観察されるまで施与した。角膜上皮創傷治癒を、2% w/vのフルオレセインナトリウム(Bausch & Lomb)の滴の添加により可視化し、それによって、コバルトブルーフィルターで照射すると上皮欠損が明らかになり、創傷直後ならびに損傷後1、2、3および4日後に写真撮影した。上皮欠損の領域を、次いでImage Jソフトウェアを用いることによって推定した。
【0108】
感染性角膜炎の緑膿菌および黄色ブドウ球菌モデルにおけるεPLのin vivoの効能
体重2~2.5kgのニュージーランド白色ウサギを、本試験のために使用した。ウサギを麻酔し、角膜表面を滅菌ミニブレード(BD Beaver,MA,USA)で脱上皮した。角膜感染を、5×106CFU/mlの黄色ブドウ球菌ATCC 29213または緑膿菌ATCC 9027株50μlを表面を傷つけた角膜に塗布することにより誘発した。感染後24時間後、50μLの0.3%εPL(PBS中w/v、pH7.0)またはPBSを、感染した眼に4回/日で局所的に適用した。0.3%トブラマイシンを含有するTobrex(登録商標)点眼薬(Alcon,Belgium)を、緑膿菌角膜炎についての正の対照として供し、一方Zymar(登録商標)(Allergan,USA)点眼薬を、黄色ブドウ球菌角膜炎についての正の対照として使用した。細隙灯写真および前部光干渉断層撮影(AS-OCT)走査を、感染の前および後ならびに処置の経過中に撮影した。接種前および接種後の角膜厚(CT)を角膜前面に対して垂直に測定し、平均CTを報告した。
【0109】
生菌の定量
εPLまたは眼科用抗生物質点眼剤またはPBSでの処置の3日後に、ウサギ角膜を穿孔により除去し、プラスチック乳棒を用いて滅菌PBS中で個別にホモジナイズし、続いて滅菌2mm直径ガラスビーズを用いてビーズ叩打でより微細にホモジナイズした。細菌計数を、ホモジネート(101~102連続希釈)をTSAプレートに広げ、37℃で48時間インキュベートすることによって行った。
【0110】
結果
実施例1:アルファ-(αPL)およびエプシロン-ポリ-L-リシン(εPL)の抗菌特性および細胞毒性
εPLおよびポリ-ガンマ-L-ジアミノブタン酸(γPAB)は、これまでに報告された唯一の天然に存在し、微生物により産生されたカチオン性アミノ酸ホモポリマーであった。アルファ-ポリ(L-リシン)(PLL)とは異なり、εPLは、それぞれモノマーのアルファ-カルボキシル基およびエプシロン-アミノ基によって結合している25~35個のL-リシン残基からなっていた(
図1AおよびB)。εPLは、グラム陽性、グラム陰性、酵母および真菌病原体に対して広範囲の抗菌活性を示すことが示されており、当該活性は、γPABよりも優れていた。εPLは、US FDAにより「一般に安全とみなされる」(GRAS)として分類され、米国、韓国および日本で食品保存剤として使用されている。しかし、この多用途のUS FDAが承認したポリマーの抗菌特性は、薬剤耐性病原体に対してはあまり詳細には調査されていなかった。同様の化学組成を考慮して、グラム陽性(黄色ブドウ球菌)、グラム陰性(緑膿菌)および酵母(カンジダ・アルビカンス株、表1)の5種類の異なる株に対するαPLおよびεPLの最小発育阻止濃度(MIC)を、決定した。
図1に示すように、両ポリマーの総平均MIC(GM-MIC)は、グラム陽性およびグラム陰性株に対して類似しており、一方εPLは、カンジダ・アルビカンス株に対してαPLよりも低いMICを示した。
【0111】
表1 細菌および酵母株のパネルに対するαPLおよびεPLの最小発育阻止濃度
【表1】
【0112】
実施例2:MTTおよび高含有量分析(HCA)により評価したαPLおよびεPLの細胞毒性
初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)に対するカチオン性ポリマーの細胞毒性を、MTTアッセイにより評価した。
図2AおよびBは、種々の濃度のαPLおよびεPLで処理したHDFの代謝活性を比較した。低濃度では、αPLはHDFの代謝活性を阻害し、一方εPLは試験した最高濃度(2mg/mL)でも特性を変化させなかった。これらの結果と整合して、HCA解析から、αPLに曝露したHDFは細胞形態のかなりの異常を示し、一方εPLに曝露した細胞は処理していない対照と類似したままであることが示された(
図3)。形態学的解析から、εPLに曝露したHDFは、4種類の定量的パラメーター:平均細胞/場、細胞形状係数、細胞面積および核面積に明らかな変化を示さないことが示され、それは、高ポリマー濃度でも細胞健康の状態を表した。アルファPLに曝露した細胞は、しかしながら125μg/mlでも細胞形態の著しい変化および細胞骨格成分の欠如を示し、従って、ポリマーの細胞毒性効果を示唆した。
【0113】
実施例3:εPLの広範囲の抗菌特性
哺乳動物細胞に対する細胞毒性の欠如を推奨して、グラム陽性およびグラム陰性細菌および糸状菌の抗生物質耐性株のパネルに対するεPLの抗菌特性を、試験した。表2は、病原性グラム陽性、グラム陰性および真菌株のパネルに対するεPLのMIC値の範囲を列挙した。値を、広範囲の点眼抗菌/抗真菌薬と比較した。結果によって、εPLのMICは様々な抗生物質耐性株について有意に変化せず、一方多くの株はトブラマイシンに対して顕著な耐性を示したことが示された。静的バイオフィルムモデルにおいて、εPLによって10×MICでPA01株のバイオフィルム負荷のかなりの減少(>90%)が生じ(
図4)、活性は、カチオン性環状リポペプチドであるポリミキシンBよりも優れていた。当該ポリマーによってまた、真菌菌糸細胞の生存率が減少し、IC
50は、30.8±3.8μg/mlであり(
図5A)、当該値は、FDAが承認した眼科用抗真菌薬ナタマイシンよりも高かった(
図5B)。
【0114】
表2:薬剤耐性細菌および真菌のパネルに対するεPLのMIC。使用した菌株数を括弧内に示す。
【表2】
【0115】
実施例4:グラム陽性およびグラム陰性細菌に対するεPLの時間死滅動態
各種グラム陰性菌に対するεPLの用量依存的死滅動態を、
図6に示す。εPLの殺菌活性は、アミノグリコシド系抗生物質に対する増強された耐性を示した菌株に対して迅速であった。CRE株大腸菌19211およびエンテロバクター・クロアカ6780は、100μg/mlでトブラマイシンに対する増強された耐性を示し、一方εPLへの曝露で急速に死滅した。生存率における3log
10単位以上の低下は、ポリマーの2×MICで4時間で達成できた。同様に、より速い殺菌効果が、ゲンタマイシンに対する増強された耐性を示したアシネトバクター・バウマンニ1001株に対して観察された。グラム陰性菌株と比較した場合、εPLは、全ての黄色ブドウ球菌およびMRSA株に対して殺菌活性のより遅い動態を示した。全体として、微生物学的研究により、多様な疾患原因病原体および薬剤耐性病原体に対するεPLの強力な抗菌特性が確立された。
【0116】
実施例5:感染性角膜炎のウサギモデルにおけるεPLの抗菌効力
黄色ブドウ球菌角膜炎のウサギモデルにおけるPBS中のεPL(0.3%w/v)のin vivo効能を、試験した。ウサギを、先に麻酔し、角膜感染を、50mlの黄色ブドウ球菌ATCC 29213(5×10
6CFU/ml)株を適用することによって誘発した。感染後24時間後、50μLのポリマーまたはPBSを、感染した眼に4回/日で局所的に適用した。比較のため、Zymar(登録商標)点眼剤を、正の対照として用いた。眼を、感染および治療後の角膜厚の変化をモニタリングする細隙灯生体顕微鏡検査および前部光干渉断層撮影により試験した。εPLで処置した眼のSL試験では、他の群と比較して、結膜浮腫および排泄物、角膜混濁および結膜発赤の有意な減少が認められた(
図7)。前部OCT(AS-OCT)試験を行って、感染/処置の前および後の角膜の形態変化を推論した。AS-OCT画像は、p.i.24時間で角膜浮腫および不規則表面の有意な増加および角膜上皮下の過反射領域を例証した。感染眼を0.3%εPL局所処置すると、p.t.24時間の角膜厚および反射亢進領域の有意な減少がもたらされた。48時間後、角膜浮腫の大幅な減少が観察され、p.t.48時間のベースライン値に近づいた。ベースラインの角膜厚の完全な回復は、72時間p.t.に達成され得た。AS-OCT画像はまた、εPLで処置した眼がZymar(登録商標)またはPBSで処置した眼と比較して、24時間p.t.で浮腫の有意な減少を示したことを示した(
図8AおよびB)。3日p.t.の終了時に、細菌生存を計数した。εPLおよびZymarで処置した角膜は共に生菌の存在を示さず、一方PBSで処置した角膜は、4.1±0.13log
10CFU/mlを含んでいた(
図8C)。
【0117】
次に、緑膿菌角膜炎のウサギモデルにおけるεPLの効能を、試験した。感染および処置プロトコルを、黄色ブドウ球菌角膜炎モデルについて以前と同様に維持した。24時間p.i.後、緑膿菌ATCC 9027株で感染した角膜は、浸潤の濁った、浮腫性の、および有意な存在の外見を呈した。結膜浮腫および濁りの顕著な減少が、0.3%εPLの局所適用後、24時間p.t.で観察された。結膜発赤、結膜浮腫および濁りの次第の減少は、処置レジメンの増加に伴い観察された(
図9A)。AS-OCT画像はさらに、術前角膜厚が24時間p.i.で370±8μmから570±49に増加したことを例証した。εPLでの処置の1~3日後に、角膜厚の次第の減少が観察された(
図9B)。εPLでの3日p.t.後に、過剰反射(hyperrefelective)領域の実質的な減少および角膜粗さが観察され、緑膿菌感染の除去におけるεPLの効力が確認された。細菌生存率の微生物学的計数は、εPL処置後の5/6角膜において生存細菌の検出を示さず、一方1つの角膜において、3.4±0.12log
10CFUの生存率が観察された(
図9C)。しかし、PBSで処置した角膜は、5.1±0.7log
10CFUを含んでおり、εPL処置後の細菌負荷の実質的な減少を示唆した。in vitroの微生物学的研究と共に、これらの結果は、局所的適用のためのεPLの優れた抗菌特性を例証した。
【0118】
例6:εPLは、ヒト皮膚線維芽細胞(hDF)に対する緑膿菌および黄色ブドウ球菌の有害作用を減弱する。
緑膿菌は、全身および慢性創傷を有する患者の死亡率の増加の原因である。日和見病原体は、非食細胞に侵入し、細菌によって産生される酵素のタンパク質分解活性は、組織侵入において重要な役割を果たす。hDFの形態変化を決定するために、細胞を、緑色蛍光タンパク質標識PAO1(PAO1_gfp)株に4時間曝露した。宿主細胞の表現型の顕著な変化が、感染4時間後(p.i.、
図15AおよびB)に細胞円形化およびアクチンフィラメントの有意な損失として明らかであった。感染前(防止)または感染2時間後(退行)にεPL(1mg/ml)で処置したhDFは、細胞内細菌が観察されなかったことと同様に、細菌の有害作用および侵入能を防止した(
図15CおよびD)。同様の効果が黄色ブドウ球菌感染に対しても観察され、哺乳動物細胞に対する病原性細菌の副作用を回避するポリマーの強力な抗菌特性が確立された。
【0119】
例7:εPLはLPS誘発炎症を軽減する。
εPLが細菌の外膜の重要な構成要素であるリポ多糖(LPS)に結合するか否かを決定するために、THP1-Blue(商標)NF-κBレポーターアッセイを実施した。結果は、1mg/mlで単球細胞のLPSで誘導された炎症の実質的な阻害を示し、LPSへのポリマー結合がエンドトキシンの有害作用を減弱することを確認した(
図16)。
【0120】
実施例8:εPLはhDFs細胞移動を促進し、細菌セクレトームの阻害作用を無効にする。
日和見性眼病原体セラチア・マルセセンス(Serratia marcescenes)、緑膿菌および黄色ブドウ球菌から由来する因子(セクレトーム)は、上皮細胞の移動を阻害し、したがって角膜創傷治癒の遅延に寄与することが示されている。εPLは、角膜炎のウサギモデルで細菌のバイオバーデンおよび角膜浮腫を減少させ、高濃度のポリマーでもhDFsに対して非細胞毒性であったため、ポリマーが線維芽細胞の移動に干渉するか否かの事実を、調査した。hDFのin vitro細胞移動アッセイ(引っかき傷)を用いて、ポリマーが細胞移動に干渉するか否かを評価した。結果は、1mg/mlのポリマーによって相対的創傷閉鎖(RWC)が増加し、初期速度は組換え線維芽細胞成長因子のものと類似していたことを示唆する(
図17AおよびB)。
【0121】
次に、分泌および細断された分子を含む細菌セクレトームがhDF移動を阻害するか否かを、評価した。黄色ブドウ球菌セクレトームの25~50%(v/v)の添加はhDFsに対して非細胞毒性であったが、hDFsの移動を阻害した(データは示していない)。しかし、εPL(1mg/ml)の存在下では、自発的な回収が観察され、当該ポリマーが細菌セクレトームの有害な作用を無効にすることが示唆された(
図17C)。商業的に入手できる創傷洗浄剤および局所消毒剤は、線維芽細胞の移動および増殖を防止することが報告されている。まとめると、これらの観察は、εPLが生体適合性であり、インビトロでhDFの移動を促進し、細菌分泌産物の有害作用を回避することを実証する。
【0122】
実施例9:εPLの眼毒性
高濃度(PBS中1.5%、w/v)でのεPLの眼毒性を、決定した。結果は、ポリマーが、PBSまたは0.3%εPL(PBS中w/v)で処置した損傷した角膜と比較して、損傷後3日後にわずかな遅れが観察されたが、ポリマーは、損傷した角膜の創傷閉鎖を損なわないことを示した(
図18AおよびB)。これらの結果は、ポリマーの優れた生体適合性を確立する。
【0123】
実施例10:εPLの抗がん特性
εPLは、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫および網膜芽細胞腫細胞株に対して強力な抗がん活性を示した(
図19)。末梢血液T細胞(PBTL)または網膜色素上皮細胞株(ARPE 19)と比較した場合、生存能のより高い喪失が、様々な濃度のポリマーに曝露したがん細胞について観察された。
【0124】
実施例11:εPL模倣ペプチドの設計
以上の結果から、エプシロン-リシル結合の存在はアルファ-リシル結合よりも原核細胞を標的とする選択性に優れていると仮定した。さらに、エプシロン-リシル結合の存在によって、同様にペプチドのタンパク質分解安定性が増加し得る。系統的研究において、Shima et alは、最小限の9個のイソペプチド結合が最小限の抗菌活性を付与するために必要であることを示した。反復の数が12以上に増加すると、プラトーが観察された。これらの結果は、最低12個のカチオン性残基がMIC値に基づいて合理的に良好な抗菌活性を得るために必要であることを示唆した(
図10A)。これに基づいて、6つのリシンおよびアルギニンの対を連続において含む12個の残基のペプチドを、合成した。使用したアミノ酸残基のタイプ(D-またはLアミノ酸のいずれか)および各アミノ酸残基間の結合(アルファまたはエプシロン結合のいずれか)を、
図21に示す。ペプチドは、広範囲の病原体に対して広範囲の抗菌性を示した(表3)。ペプチドが抗菌活性を保持したか否かをチェックするために、トリプシンの存在下でのそれらの抗菌特性を、評価した。
図10Bに示すように、活性の完全な喪失が、HC1について観察され、一方HC2は、トリプシンと共に1時間インキュベートした後でさえ抗菌活性を維持した。
【0125】
表3:病原体のパネルに対するεPL模倣ペプチドのMIC。使用した菌株の数を、括弧内に示す。n.d.は、決定せずを示す。
【表3】
【0126】
ε-リシルペプチド結合(複数可)の存在が選択性を改善するという全体的な目的を確認するために、メリチンを選択した。メリチンは、ハチ毒(Apis mellifera)からの天然に存在する宿主防御ペプチドであり、哺乳動物細胞および微生物細胞の両方において周知の孔形成特性を有する。当該ペプチドは、強力な抗菌、抗腫瘍および溶血活性を示し、従って、その治療的可能性を低下させた。メリチンはアルファ-ペプチド結合によって結合している3個のリシン残基(7番目、21番目、23番目)を含む。各アルファ-リシン残基を個別に、および3個の残基全部を同時に、エプシロン-リシン残基によって置き換え、設計したペプチドの抗菌活性および細胞毒性を試験した(表4)。Lys23(ペプチド1)およびLys21(ペプチド2)を置換することによって、黄色ブドウ球菌、緑膿菌およびカンジダ・アルビカンス株に対するペプチドのMIC値は変化しなかった。表4に示すように、Lys21およびLys23を置き換えても、総平均MIC(GM-MIC)値の明らかな増加は観察されなかった。しかしながら、Lys7のε-リシンへの変換(ペプチド3)によって、黄色ブドウ球菌株に対するGM-MIC値の有意な増加、緑膿菌に対する値の中程度の増加がもたらされ、カンジダ・アルビカンスに対する有意な増加または減少はもたらされなかった。3個の残基すべての置換(ペプチド4)によって、しかしながら、MIC値の4~32倍の増加、緑膿菌株に対するGM-MICの3倍の増加によって示されるように、抗黄色ブドウ球菌活性が完全に無効になり、カンジダ・アルビカンス株に対するGM-MICは変化しなかった。これらの結果は、7番目の位置のα-リシン残基がメリチンの抗菌特性に対する鍵であることを強調した。ペプチド3および4は、微生物細胞よりも優れた選択性を示したため(下記を参照)、他のグラム陽性菌株および薬剤耐性病原体のパネル、例えばカルバペナム耐性腸内細菌(CRE)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ポリミキシンB耐性E.cloacae複合体に対するそれらの抗菌活性を、比較した。表5に示すように、MIC値の中程度の増加が、メリチンと比較して、薬剤耐性株に対するペプチド3および4について観察された。
【0127】
表4 細菌および酵母株に対するメリチンおよび修飾ペプチド1~4のアミノ酸配列および治療指数値。ε-リシル残基をイタリック体で示し、下線を付す。
【表4】
【0128】
MTSアッセイにより、ペプチド1および2はメリチンよりもHDFに対する細胞毒性作用が低いことが確認された。興味深いことに、ペプチド3の細胞毒性の著しい低下が、HDFについて観察され、このことは、Lys
7のε-リシンへの変換によって選択性が増強されることを示唆している(
図11)。細胞毒性のより顕著な低下が、3個のα-リシンをすべてε-リシンに置き換えた際に観察された。興味深いことに、ペプチド5および6もまた、メリチンまたはペプチド3よりも低い細胞毒性を示し、ペプチド5および6のより大きな細胞選択性を示唆した。HCAからの重要な細胞健康パラメーターの分析によって、さらに、ペプチド4~6(
図11)が細胞形態、細胞骨格および核成分を変化させないことが確認された。したがって、メリチン中のα-リシンのε-リシン化によって、孔形成メリチンの選択性がアミオレレートされ(amiolerate)、それによって治療的可能性が高められると結論づけられた。
【0129】
2つのε-リシル残基を有する2つの新たなペプチドの細胞選択性もまた、N末端リシン(Lys7)を置き換えるとC末端α-リシン残基(Lys21およびLys23)よりも治療指数が有意に改善されるという上記の観察に基づいて評価した。新たに設計したペプチドの抗菌性および細胞毒性を、表5に示す。
【0130】
表5 メリチン、ペプチド3、4、5および6のMIC(または抗菌特性)を、薬剤耐性細菌のパネルに対して、および他の病原性酵母株に対して決定した。結果は、ペプチド4および6が他のペプチドの中でも強力であることを示した。
【表5】
【0131】
表6 膜選択性を改善するためのメリチンペプチドの種々の化学的修飾の比較。
【表6】
[a] 入手可能であれば、修飾していない親ペプチドのMICおよび溶血データを、比較の基礎として提供する。
[b] 突然変異ペプチドに対して行った関連する修飾を、太字とし、下線を付す。
[c] 試験した多くの微生物に対する最小発育阻止濃度の範囲
[d] 修飾していない親ペプチドに対応するデータは、入手可能でない。
参考文献:
4-D.Wade,A.Boman,B.Wahlin,C.Drain,D.Andreu,H.G.Boman,R.B.Merrifield,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1990,87,4761-4765.
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9-R.Kini,H.J.EVANS,Int.J.Pept.Protein Res.1989,34,277-286.
【0132】
実施例12:ペプチド3および4の免疫原性
ペプチド3および4が哺乳動物細胞への曝露時に有害な免疫原性反応を引き起こさないか否かを理解するために、ヒト一次血液T細胞リンパ球(PBTL)に対するそれらの免疫原性を決定した。細胞を、ペプチド(62.5および125μg/ml)に曝露し、インターロイキン-2、-4および5(IL-2、IL-4およびIL-5)ならびにインターフェロンγ(IFNγ)の量を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって定量的に決定した。有糸分裂誘発性植物レクチンフィトヘマグルチニン(PHA)を、正の対照として用いた。
図12A~Dは、ペプチド3および4の添加後のPBTLからのサイトカインの定量的決定を示した。結果は、PBTLからのサイトカイン産生の明らかな誘導がないことを示し、従って、ペプチドの非免疫原性の性質を確認した。
【0133】
実施例13:エプシロン-リシル化によって哺乳動物膜との相互作用が減弱された
膜識別の機構への洞察を得るために、哺乳動物(PC/コレステロール)および微生物(PE:PG)細胞の細胞質膜を模倣する大きな単ラメラ小胞(LUV)を、使用した。メリチン、ペプチド1およびペプチド2は、負に荷電したPE:PG LUVからの蛍光プローブの急速かつ濃度依存性の放出(90%超)を示し、一方ペプチド3は、色素漏出の中程度の増加のみを示し、約40%の色素放出を達成した(
図13A)。ペプチド4~6は、しかしながら約70%超の色素放出を示し、ペプチド5および6は、メリチンと類似の膜透過特性を示し、一方、より弱いものが、ペプチド4について観察された(
図13B)。より劇的な結果が、実験をPC/コレステロールLUVで実施した場合に観察された。メリチン、ペプチド1およびペプチド2は、哺乳動物モデルLUVSからの最大色素放出を示し、低い(0.0625)ペプチド:脂質比でさえ約70%の色素漏出を達成した(
図13C)。しかし、ペプチド3は、最も高い(0.5)ペプチド:脂質比でさえも有意な色素漏出(20%未満)を示さなかった。これらの結果は、メリチン配列中のε-リシンによるN末端α-リシン(Lys7)の置換によって膜選択性が増大することを明らかに証明した。複数のε-リシン残基を有するペプチドの中で、ペプチド4は、ペプチド5および6よりも哺乳動物モデル膜との弱い相互作用を示した。
【0134】
例14:複数のε-リシル化によって孔形成特性が修正されるが、殺菌特性には影響しなかった
メリチンと比較して修飾ペプチドの孔形成能を識別するために、SYTOXグリーン(SG)取り込みアッセイを、ペプチドの曝露時に行い、それらの殺菌特性を決定した。SGは、細胞膜の完全性が損なわれ、DNA-SG複合体が蛍光強度の有意な増加を示す場合に、ゲノム核酸に結合する膜不透過性色素である。したがって、蛍光強度は、試験ペプチドによって引き起こされる細胞膜破壊の程度に比例すると考えられる。
図20Aは、メリチンをVRE 1002株に添加した場合の代表的なSG取り込み曲線を示す。1×および2×MIC値でメリチンに曝露した細菌細胞の結果、破裂およびSG取り込みの有意な増加がもたらされた(1×MICで79.2%および2×MICで89.7%)。しかしながら、同じ条件下でペプチド5およびペプチド6について、SG取り込みの減少が観察された(
図20B)。同様に、アシネトバクター・バウマンニ株に対して、メリチンは、2×MICでペプチド5およびペプチド6ペプチドよりも高いSG取り込みを示した(
図20C)。これらの結果は、ε-リシル化によってメリチンの孔形成特性が低下することを確認する。SG取り込み結果を細菌生存率アッセイと比較すると、しかしながら、明らかな相関は示されず、孔形成(すなわち、SG取り込み)および殺菌特性が共役していないことが示唆された(
図20D)。これらの結果は、修飾ペプチドはメリチンよりも孔形成特性が不良であるが、それらの細菌致死性はメリチンと類似していることを強調している。
【0135】
実施例15:マストパランペプチドの抗菌活性および細胞毒性
マストパランは、ハチ毒からの孔形成ペプチドのファミリーであり、それはまた、膜様環境において両親媒性らせん構造を形成した。本研究について、4つのリシン残基を含むマストパランB(MB、LKLKSIVSWAKKVL)を調査し、各α-リシン残基がε-リシン残基で置換された4つの類似体(MB-1~MB-4)を合成した。様々なVREおよびCREに対するMICおよび細胞毒性を、決定した。結果は、両方の薬剤耐性株に対する抗菌活性の位置感受性変化を示した。VREに対して、N末端α-リシンの置換によって、MIC50値が変化せず、一方C末端リシンを置き換えた結果、MIC50値の16倍の増加がもたらされた(表7)。同様に、MIC50値の8~16倍の増加が、CRE株に対してN末端α-リシンをε-リシンに置換した際に観察された(表7)。ペプチドMB3およびMB4は、14株および11株に対してのみ明らかなMIC値を示し、他のCREについては256を超える値まで増加した。
【0136】
表7 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)、アシネトバクター・バウマンニならびに他の薬剤耐性細菌および真菌に対するマストパランペプチドのMIC。使用した菌株の数を、括弧内に示す。n.d.は、決定せずを示す。MIC値を、範囲で示す。MIC50は、50%の菌株が感受性である濃度を示す。ε-リシル残基を、イタリック体で示し、下線を付す。
【0137】
【0138】
MTSアッセイは、濃度が62.5μg/mlを超えたため、マストパランBが初代ヒト線維芽細胞に対して細胞毒性であることを示した(
図14)。それぞれ250および1000μg/mlのペプチド濃度が、細胞毒性効果を付与するために、MB1およびMB2/MB3に必要であった。ペプチドMB4は、1000μg/mでもいかなる細胞毒性作用をも示さなかった。抗菌アッセイと共に、これらの結果は、ε-リシン置換が、メリチンペプチドについて観察されたように、マストパランBペプチドにおいて位置感受性であることを例証した。
【0139】
実施例16:MTSアッセイによる細胞毒性を評価するためのプロトコル。
ヒト皮膚線維芽細胞を、96ウェルプレート(2×103細胞/ウェル)に播種し、37℃および5%CO2で24時間インキュベートした。細胞を、次に種々の濃度のポリマーまたはペプチド(62.5μg/ml~1mg/ml)で処理した。処理時間の終了時(24時間後)に、20または50μlのMTSテトラゾリウム溶液を、96ウェルまたは12ウェルプレート中に添加し、37℃で2時間さらにインキュベートした。その後、吸光度を、490nmにおいて、マイクロプレートリーダー(Infinite M200 Pro,Tecan,Switzerland)を用いて測定し、相対的な細胞生存率を計算した。各処理を、2つの3回1組で実施し、報告した。
【0140】
実施例17:カチオン性ペプチドおよびポリマーの細胞毒性の評価。
ペプチドおよびポリマーの細胞毒性を、CellTier 96(登録商標)Aqueous One溶液細胞増殖アッセイキットを用い、製造元の取扱説明書(Promega Corporation,Madison,WI)に従って決定した。このアッセイは、ミトコンドリア機能を、MTS((3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム))を定量可能な青色の不溶性ホルマザン生成物に還元する生存細胞の能力を測定することによって評価する。HDFを、96ウェルプレート(2×103個の細胞/ウェル)に播種し、37℃および5%CO2で24時間インキュベートした。細胞を、次いでポリマー(ウェル中の最終濃度62.5~2000μg/ml)またはペプチド(ウェル中の最終濃度4~1000μg/ml)の濃縮保存溶液で処理した。24時間後、20μLのMTSテトラゾリウム溶液を、96ウェルプレートに添加し、37℃で2時間さらにインキュベートした。その後、吸光度を、490nmにおいて、マイクロプレートリーダー(Infinite M200 Pro,Tecan,Switzerland)を用いて測定し、相対的細胞生存率を、未処理対照(10mMのPBS、pH7.0)に相対させて算出した。各処理を、2つの3回1組で実施し、報告した。治療指数を計算するために、HDFの生存能の完全な喪失が観察されたペプチドまたはポリマー濃度を、MIC値で除した。
【0141】
実施例18:抗菌薬感受性試験。
ポリマー/抗生物質のMICを、96ウェルマイクロタイタープレート(SPL Life Sciences Co.,Ltd,Korea)で微量希釈法を用いて、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)文献M100-S18のガイドラインに従って決定した。簡単に、ポリマー(1~512μg/ml)または抗生物質を、適切な培地(細菌についてMueller Hinton broth,MHB;酵母についてSabaroud’s Dextrose(SD)ブロスおよびフサリウム染色についてRPMI緩衝液)に溶解し、この100μlを、次いで同じ培地中で等容量の微生物接種物(OD600=約0.08)と混合し、密閉したインキュベーター中で振盪した。24時間後(細菌について)または48時間後(真菌について)に、MICを、完全な阻害(視覚的観察およびOD600読み取り値による)が観察された濃度として決定した。ペプチドについては、MilliQ水中の2×濃度のペプチド(2~256μg/ml)を、微生物接種物と混合し、MICを、前述のように決定した。
【0142】
実施例19:治療指数。
MTSおよび抗菌薬アッセイから誘導された実験データを用いて、TI値を決定し、それは、完全な細胞毒性が最小発育阻止濃度に対して観察された最低濃度の比として定義される。TIを計算した各株の平均値を、表4に報告した。
【0143】
実施例20:トリプシン中のペプチドの抗菌活性。
プロテアーゼの存在下でペプチドの抗菌活性を測定するために、1mg/mlのHC1およびHC2を、トリプシン酵素:ペプチドの重量比1:100)と共に37℃で1時間インキュベートした。この後、この溶液の20μlアリコートを、180μlの細菌接種物(緑膿菌ATCC 9027、MHB中105CFU/ml)と混合し、室温で6時間インキュベートした。懸濁液の100μLアリコートを、10mMのPBS溶液中で連続的に(10倍)希釈し、MH寒天プレート上に注いでプレートにし、37℃で48時間インキュベートし、1ml当たりのコロニー形成単位(CFU/ml)を計数した。
【0144】
実施例21:過剰に荷電したペプチドの抗がん特性
過剰に荷電したペプチドを、それらの抗がん特性について、T細胞リンパ腫(HuT78、MJ、HH)およびB細胞リンパ腫(Ly-4およびLy-18)を含む様々な形態の皮膚リンパ腫を有する患者から誘導された細胞株を用いてスクリーニングした。これらのペプチドの相対的細胞毒性をまた、健常な一次末梢血リンパ球(PBL)T細胞において評価した。細胞毒性を、MTSの代謝減少によるミトコンドリア機能として測定した。この目的のために、細胞を、4つの異なる濃度(62.5、125、250または500μg/ml)のペプチドで処理し;処理していない細胞を、対照として用いた。細胞生存率データは、すべての修飾したペプチドおよびεPLが、様々な程度の細胞死滅をリンパ腫細胞株において用量依存的方式で示すことを示した(
図22)。興味深いことに、PBL T細胞は、リンパ腫細胞株と比較してこれらのペプチドに対する感受性が低かった。
【配列表】