(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】クーラント液処理システム及びフロート式逆止弁
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20230301BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20230301BHJP
B01D 24/48 20060101ALI20230301BHJP
B01D 29/60 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/10 E
B01D29/36 F
(21)【出願番号】P 2019543441
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2018026484
(87)【国際公開番号】W WO2019058719
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017179839
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】西澤 信也
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202778084(CN,U)
【文献】実開昭58-172168(JP,U)
【文献】実開昭47-026427(JP,U)
【文献】登録実用新案第3071283(JP,U)
【文献】特開2001-252847(JP,A)
【文献】登録実用新案第3060849(JP,U)
【文献】特開2001-322051(JP,A)
【文献】特開2003-225514(JP,A)
【文献】特開2016-131859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00、10
B01D 21/18、26
B01D 29/01、11
B03C 1/00、30
F16K 31/18、26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンクと、
前記スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンクと、を備え、
前記一次タンクと前記二次タンクは、区画壁又は壁により区画され、
区画壁又は壁に形成された通液部を介して連通しており、前記通液部には、前記一次タンクから前記二次タンクへの流入を制限するフロート式逆止弁を備えたことを特徴とする、クーラント液処理システム。
【請求項2】
前記一次タンクは、複数設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のクーラント液処理システム。
【請求項3】
前記フロート式逆止弁は、クーラント液より比重の小さい浮き子、及び、前記浮き子を収容する収容部を備え、
前記収容部は、クーラント液が流入する流入口を有し、前記浮き子が前記流入口を封止することを特徴とする、請求項1又は2に記載のクーラント液処理システム。
【請求項4】
スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンクと、
前記スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンクと、前記一次タンクと前記二次タンクとを連通する通液部と、を備え
、
前記一次タンクと前記二次タンクは、区画壁又は壁により区画され
、前記通液部は区画壁又は壁に形成されたクーラント液処理システムに使用するフロート式逆止弁の使用方法であって、
前記通液部に備えられることにより、前記通液部を介して前記一次タンクから前記二次タンクへの流入を制限することを特徴とする、フロート式逆止弁の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去するためのクーラント液処理システムに関する。また、本発明は、クーラント液処理システムに使用するフロート式逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に供給されたクーラント液は、加工中に発生した切粉などの不純物がスラッジとしてクーラント液に混入する。スラッジを含むクーラント液は、ろ過処理等によりスラッジが除去される。そして、スラッジが除去された処理済クーラント液は、工作機械のクーラント液として再利用している。
例えば、特許文献1には、スラッジを含むクーラント液を貯留するダーティー槽と、フィルタでろ過したクーラント液を貯留するクリーン槽を備えたクーラント液処理システムが記載されている。工作機械から排出されたスラッジを含むクーラント液は、ダーティー槽に一時的に貯留され、ダーティー槽からポンプにより吸い上げられて、ろ過装置へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおり、特許文献1のクーラント液処理システムでは、スラッジを含むクーラント液をダーティー槽に一時的に貯留するため、スラッジがダーティー槽の底部に堆積する。堆積したスラッジは、ダーティー槽の底部付近に吸い込み口を設置した配管により吸い上げている。しかし、配管の吸い込み口の近傍にあるスラッジは、ポンプの吸引力により吸い上げることができるが、配管の吸い込み口から遠くに堆積したスラッジは、ポンプの吸引力が及ばないため、吸い上げることができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンク(ダーティー槽)と、スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンク(クリーン槽)とを備えたクーラント液処理システムにおいて、一次タンクの底部におけるスラッジの堆積を抑制しつつ、一次タンク中のスラッジが二次タンク中に流入することを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題について鋭意検討した結果、本発明者は、一次タンクと二次タンクとを通液部を介して連通させ、二次タンクから一次タンクへの処理済クーラント液を流入させることにより、一次タンク内にクーラント液の流れが形成され、一次タンクの底部におけるスラッジの堆積を抑制できることを見出した。さらに、該通液部に、一次タンクから二次タンクへのクーラント液の流入を抑制するフロート式逆止弁を備えることにより、一次タンク中のスラッジが二次タンク中に流入することを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のクーラント液処理システム及びクーラント液処理システムに使用するフロート式逆止弁である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のクーラント液処理システムは、スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンクと、前記スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンクと、を備え、前記一次タンクと前記二次タンクは、通液部を介して連通しており、前記通液部には、前記一次タンクから前記二次タンクへの流入を制限するフロート式逆止弁を備えたことを特徴とする。
【0008】
このクーラント液処理システムによれば、一次タンクと二次タンクが通液部を介して連通しているため、二次タンクから一次タンクへ処理済クーラント液を流入させることができる。これにより、一次タンク中にクーラント液の流れが生じ、スラッジの堆積を抑制することができる。さらに、このクーラント液処理システムによれば、一次タンク中の液量が低下しても二次タンクから処理済クーラント液が補充されるため、一次タンクを小型化することができる。一次タンクを小型化することにより、一次タンク中のクーラント液の流れがより強くなるため、スラッジの堆積を一層抑制することができる。
また、一次タンクの容量を小型化すると、一次タンク内の液面が変動しやすくなる。しかし、本発明のクーラント液処理システムは、一次タンクから二次タンクへの流入を制限するフロート式逆止弁を備えているため、一次タンクの液量が増加した場合でも二次タンクへのスラッジの混入を防止することができる。
【0009】
本発明のクーラント液処理システムの一実施態様としては、一次タンクは、複数設けられていることを特徴とする。
この特徴によれば、一次タンクを複数に分けることにより、一次タンクの容量及び底部の面積をより小さくすることが可能となり、スラッジの堆積を抑制する効果を一層高めることができる。
【0010】
本発明のクーラント液処理システムの一実施態様としては、フロート式逆止弁は、クーラント液より比重の小さい浮き子、及び、前記浮き子を収容する収容部を備え、前記収容部は、クーラント液が流入する流入口を有し、前記浮き子が前記流入口を封止することを特徴とする。
この特徴によれば、浮き子が直接流入口を封止するための栓として作用するため、簡素な構造物で流入口を素早く封止することができる。よって、一次タンクから二次タンクへのスラッジの混入を抑制する作用に優れるという効果がある。
【0011】
上記課題を解決するための本発明のクーラント液処理システムに使用するフロート式逆止弁は、スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンクと、前記スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンクと、前記一次タンクと前記二次タンクとを連通する通液部を備えたクーラント液処理システムに使用するフロート式逆止弁であって、前記通液部に備えられることにより、前記通液部を介して前記一次タンクから前記二次タンクへの流入を制限することを特徴とする。
このフロート式逆止弁によれば、既設のクーラント液処理システムに適用することにより、本発明のクーラント液処理システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンクと、スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンクとを備えたクーラント液処理システムにおいて、一次タンクの底部におけるスラッジの堆積を抑制しつつ、一次タンク中のスラッジが二次タンク中に流入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明のクーラント液処理システムのフロート式逆止弁の作動を説明する概略説明図である。
【
図3】本発明のクーラント液処理システムのフロート式逆止弁の別の態様の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第二の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの一次タンク、二次タンク、三次タンクの配置を示す概略説明図である。
【
図7】
図6のa-a方向から見た本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図8】
図6のb-b方向から見た本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図9】
図6のc-c方向から見た本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
クーラント液は、切削や研磨等の加工機械に使用する潤滑油、水等であり、水性液体及び油性液体のいずれでもよい。クーラント液を、切削や研磨等の加工機械に使用すると、切削や研磨等の加工により生じる切粉等のスラッジが使用済クーラント液に混入する。本発明のクーラント液処理システムは、切粉等のスラッジを含有するクーラント液からスラッジを除去するためのシステムである。特に、本発明のクーラント液処理システムは、スラッジを含むクーラント液を貯留する一次タンクと、前記スラッジを含むクーラント液からスラッジを除去処理した処理済クーラント液を貯留する二次タンクと、を備えたクーラント液処理システムであって、前記一次タンクと前記二次タンクは、通液部を介して連通しており、前記通液部には、前記一次タンクから前記二次タンクへの流入を制限するフロート式逆止弁を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
以下に、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
〔第一の実施態様〕
[クーラント液処理システム]
図1には、本発明の第一の実施態様のクーラント液処理システム1A及び工作機械100の構造を示す。なお、工作機械100は、クーラント液を使用する研削盤や切削機等の加工機械であり、切粉等が発生するものである。
本発明のクーラント液処理システム1Aは、工作機械100から排出された使用済クーラント液中のスラッジ量を減量するための前処理装置6と、前処理装置6から排出されたスラッジを含むクーラント液を貯留するための一次タンク2と、一次タンク2に貯留されたクーラント液からスラッジを除去処理するためのスラッジ除去装置7と、スラッジ除去装置7でスラッジが除去された処理済クーラント液を貯留するための二次タンク3を備えている。なお、一次タンク2と二次タンク3は、一つのタンク13を区画壁14A及び区画壁14Bで仕切ることにより構成されている。一次タンク2と二次タンク3は、区画壁14A及び区画壁14Bの間に形成された通液部4を介して連通している。通液部4はフロート式逆止弁5を備え、このフロート式逆止弁5が一次タンク2から二次タンク3へのクーラント液の流入を制限している。
【0016】
<一次タンク>
一次タンク2は、工作機械100から排出されたスラッジを含有するクーラント液を貯留するためのタンクである。一次タンク2に貯留された使用済クーラント液は、流路L3に設けられたポンプP1により吸い上げられて、スラッジ除去装置7に供給される。流路L3の吸い込み口は、一次タンク2に堆積するスラッジを吸い込むことできるように、一次タンク2の底面付近に配置されている。流路L3の出口は、スラッジ除去装置7に連結されている。なお、堆積するスラッジの吸い込む範囲を広げるため、流路L3とポンプP1を複数設置したり、流路L3を分岐させて吸い込み口を増やしたり、吸い込み口を拡径したりしてもよい。
【0017】
一次タンク2の容量は、特に制限されないが、例えば、ポンプP1の毎分あたりの流量の10倍量以下とすればよく、好ましくは5倍量以下であり、より好ましくは3倍量以下である。ポンプP1の毎分あたりの流量に対する一次タンク2の容量を小さくすることにより、ポンプP1を稼働した際に、一次タンク2の内部に強い流れが発生して、底部に堆積したスラッジを十分に吸い込むことができる。なお、流路L3及びポンプP1を複数設置する場合には、一次タンク2の容量は、複数のポンプP1の合計の流量に対して設計すればよい。
【0018】
また、本発明のクーラント液処理システムの一実施態様として、一次タンク2を複数設け、それぞれの一次タンク2に流路L3を設けてもよい。一次タンク2を複数設置することにより、1つ当たりの一次タンク2の容量を小さくしても、一次タンク2の所定の容量を確保することができる。これにより、スラッジ除去装置7へ供給される使用済クーラント液の毎分あたりの流量を変えずにスラッジを吸い上げる効果をより一層高めることができる。なお、吸い上げのためのポンプP1は、複数の一次タンクに設けられた各流路L3にそれぞれ設置してもよいし、各流路L3が合流した流路に設置してもよい。
【0019】
<二次タンク>
二次タンク3は、スラッジ除去装置7でスラッジが除去された処理済クーラント液を貯留するためのタンクである。二次タンク3に貯留された処理済クーラント液は、流路L5に設けられたポンプP2により吸い上げられて、工作機械100に供給される。
【0020】
二次タンク3と一次タンク2を区画する区画壁14A及び区画壁14Bの間には、一次タンク2への通液が可能な通液部4が形成されている。通液部4は、一次タンク2から二次タンク3へのクーラント液の流入を制限するためのフロート式逆止弁5を備えている。通液部4は、二次タンク3から一次タンク2への通液が可能であればどのように形成してもよいが、フロート式逆止弁5による封止力を鑑みると、上下方向に流入するように形成することが好ましく、下方向へ向かって流入するように形成することが特に好ましい。下方向へ向かって流入するように形成された通液部4は、浮き子を弁体として用いたフロート式逆止弁5を備えており、このフロート式逆止弁5が、クーラント液の流入する流入口を封止することができる。
【0021】
また、一次タンク2と二次タンク3の上部の気相領域には、連通部8が形成されている。連通部8は、ろ過処理量の低下や、工作機械からのクーラント液の流入量の増加など、一次タンク2の液量が増加するなどのトラブルが生じた場合に、一次タンク2から二次タンク3にクーラント液を流すための機能を有する。
【0022】
<フロート式逆止弁>
フロート式逆止弁5は、クーラント液より比重の小さい浮き子の浮力を利用して、クーラント液が流入する流入口を封止するための逆止弁である。フロート式逆止弁5の作動としては、一次タンク2のクーラント液の液量が低下すると弁を開口して、二次タンク3から処理済クーラント液が一次タンク2に流れ込み、一次タンク2のクーラント液の液量が増加すると閉口して、一次タンク2から二次タンク3への流入を制限する。
【0023】
図2に、フロート式逆止弁5の作動を説明する概略説明図を示す。
図2(A)は、二次タンク3から一次タンク2へ処理済クーラント液が流入する状態を示す図であり、
図2(B)は、一次タンク2から二次タンク3へのクーラント液の流入を制限する状態を示す図である。
図2に示す通液部4は、区画壁14A及び区画壁14Bから構成され、下方向に向かって、二次タンク3から一次タンク2へクーラント液が流入するように形成されている。フロート式逆止弁5は、クーラント液より比重の小さい浮き子51と、浮き子51を収容する収容部52を備えており、浮き子51は収容部52の内部を上下方向に移動可能である。
収容部52の天面57には、クーラント液が流入する流入口53が形成されており、流入口53の形状は、浮き子51が浮上すると流入口53を封止するような形状である。一方、収容部52の底部58は、二次タンク3からの処理済クーラント液が一次タンク2に流れ込むように複数の流出口54が形成されている。
また、収容部52の底部58には、浮き子保持部55が設けられている。浮き子保持部55は、浮き子51を保持することで、処理済クーラント液が流れ込む際の浮き子51の振動を抑え、浮き子51が収容部52と擦れて劣化することを防止する。
【0024】
次に、フロート式逆止弁5の作動について説明する。一次タンク2に貯留された使用済クーラント液を、ポンプP1により吸い上げると、一次タンク2の液面が低下する。一次タンク2の液面が低下し、浮き子51より一次タンク2の液面が下がると、浮き子51が下降し、二次タンク3から一次タンク2へクーラント液が流入する(
図2(A))。一方、一次タンク2の液面が上昇すると、一次タンク2の液面と共に浮き子51が上昇し、流入口53を閉塞し、二次タンク3から一次タンク2へのクーラント液の流入を制限する(
図2(B))。
【0025】
図3には、フロート式逆止弁5の別の態様を示す。
図3(A)は、二次タンク3と一次タンク2が、水平方向に設置された区画壁15により区画され、フロート式逆止弁は、区画壁15から上方向に突設して設置されている。二次タンク3と一次タンク2は、上下方向に配置されており、通液部4は、下方向に向かって流れ込むように構成されている。フロート式逆止弁の構成及び作動は、
図2と同様である。
図3(B)は、通液部4として、クーラント液が上方向に向かって流れるように構成した例である。フロート式逆止弁は、浮き子51と弁部56が回動軸を介して連結した構造である。この作動も
図2と同様、一次タンク2の水面が下降し、一次タンク2の液面が浮き子51より下がると、浮き子51が下がって弁部56が開口し、一次タンク2の液面が上昇し、該液面と共に浮き子51が上昇すると、弁部56が流入口53を閉口する。なお、浮き子51の形状は球状である必要はなく、平板状のものでもよい。
【0026】
<スラッジ除去装置>
スラッジ除去装置7は、一次タンク2に貯留されたクーラント液からスラッジを除去処理するための装置である。スラッジ除去装置7は、スラッジを除去できる装置であれば、どのような装置であってもよい。スラッジ除去性能に優れるという点から、フィルタを備えたろ過装置が好ましい。
【0027】
ろ過装置のフィルタの目開きは、クーラント液に含まれるスラッジの粒子径により適宜設計されるが、例えば、1~30μmであり、より好ましくは5~20μmである。フィルタの目開きを1μm以上とすることにより、ろ過処理量を十分に確保することができる。一方、フィルタの目開きを30μm以下とすることにより、クーラント液が十分に清浄化され、工作機械100における不具合を防止することができる。
【0028】
また、フィルタの材質は、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、4フッ化エチレン(PTFE)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)等の有機膜、酸化アルミニウム(アルミナ Al2O3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア ZrO2)、酸化チタン(チタニア TiO2)、ステンレス(SUS)、ガラス(SPG)等の無機膜等が挙げられる。
【0029】
フィルタの形状は、どのような形状でもよく、例えば、板状、円筒状のものが挙げられる。ろ過方式としては、例えば、クーラント液の全量をろ過する全量ろ過方式や、クーラント液を膜面に対して平行に流しながらろ過するクロスフロー方式等がある。ろ過方式は、特に制限されず、クーラント液の供給ポンプの動力費や、膜面へのスラッジの堆積状態等を考慮しつつ、適宜選択することができる。
【0030】
ろ過装置には、フィルタ洗浄装置を設けることが好ましい。フィルタ洗浄装置としては、特に制限されないが、例えば、逆洗装置や、掻き取り装置等が挙げられる。逆洗装置とは、ろ過の流れ方向とは逆方向に流体を流すことにより、フィルタ表面に堆積したスラッジを剥がし落とす装置である。また、掻き取り装置とは、掻き取り部材等をフィルタ表面に摺動させたり、高圧エアをフィルタ表面に吹き付けたりすることにより、フィルタ表面に堆積したスラッジを掻き取る装置である。洗浄性能に優れるという観点から、逆洗装置を使用することが好ましい。また、逆洗装置に使用する流体としては、特に制限されないが、例えば、空気やろ過処理された処理済クーラント液等を使用することができる。空気を使用する場合、フィルタを透過する速度が速く、作業性に優れるという効果がある。
【0031】
また、ろ過装置には、フィルタを洗浄する時期を決定するため、フィルタの目詰まりの状態を検知する手段を設けることが好ましい。フィルタの目詰りの状態を検知する手段としては、例えば、フィルタの前後の差圧を測定する圧力スイッチ等が挙げられる。圧力スイッチを用いることにより、差圧が所定の値に上昇すると、目詰りした状態であると判断して、洗浄装置を自動的に作動することができる。
【0032】
その他、ろ過装置には、フィルタの交換時期を決定するため、フィルタの性能を検知する手段を設けてもよい。フィルタの性能を検知する手段としては、例えば、単位時間当たりのろ過処理量を検出する手段等が挙げられる。単位時間当たりのろ過処理量が所定の値まで低下すると、フィルタの性能が低下したと判断して、フィルタの交換時期を決定することができる。
【0033】
また、本発明のクーラント液処理システムは、複数のろ過装置を並列に設置することが好ましい。複数のろ過装置を並列に設置することにより、フィルタ洗浄やフィルタ交換の際にも、運転を停止することなく、洗浄操作や交換操作を実施することができる。
【0034】
<前処理装置>
前処理装置6は、クーラント液中のスラッジ量を減量するための装置であり、工作機械100から排出されたクーラント液が流路L1を介して一次タンク2に供給される前に設置される。前処理装置6は、スラッジ量を減量できる装置であれば、どのような装置でもよい。例えば、磁力によりスラッジを付着して除去するマグネットセパレータや、貯留槽の底部に沈降したスラッジを掻き寄せて除去するスラッジコンベアや、遠心力によりスラッジを分離除去するサイクロン分離機等が挙げられる。なお、前処理装置6は、これらの装置を単独で使用しても、複数組み合わせて使用してもよい。
【0035】
また、本発明のクーラント液処理システム1Aの運転では、スラッジ除去装置7で処理される処理量は、工作機械100に供給される処理液の量よりも大きくなるように設定することが好ましい。例えば、二次タンク3から工作機械100に供給される処理済クーラント液の流量に対する一次タンク2からスラッジ除去装置7に供給されるスラッジ含有クーラント液の流量の比(スラッジ含有クーラント液の流量/処理済クーラント液の流量)は、1以上であり、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.4以上である。スラッジ含有クーラント液の流量/処理済クーラント液の流量の比を1以上とすることにより、二次タンク3から一次タンク2への循環流が生じるため、一次タンク2内にクーラント液の流れが生じて、スラッジの堆積を抑制することができる。また、二次タンク3の液面が低下して、工作機械100へのクーラント液の供給が停止するというトラブルも防止することができる。
【0036】
〔第二の実施態様〕
図4には、本発明の第二の実施態様のクーラント液処理システム1B及び工作機械100の構造を示す。
第二の実施態様のクーラント液処理システム1Bでは、二次タンク3を区画壁14C及び区画壁14Dにより分割して、三次タンク31を設けている。また、三次タンク31と二次タンク3は、上部で通液が可能な構成となっており、スラッジ除去装置7でスラッジが除去された処理済クーラント液は三次タンク31に貯留され、次いで、溢流として二次タンク3に流れ込むように構成されている。
このクーラント液処理システム1Bによれば、トラブルが生じて連通部8からスラッジを含むクーラント液が二次タンク3側に流入した場合に、スラッジの流入を二次タンク3までで止めることができる。そのため、仮に、スラッジを含むクーラント液が連通部8から二次タンク3側に流れ込んでしまった場合でも、二次タンク3のみを洗浄すれば復旧が可能となる。
【0037】
〔第三の実施態様〕
図5には、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1C及び研削盤101の概略説明図を示す。
本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、スラッジ除去装置として、2つのろ過装置7A及び7Bが並列に設置されている。さらに、各ろ過装置7A及び7Bには、フィルタの目詰まりを検知する圧力スイッチSW、エアコンプレッサーACから供給された圧縮空気によりフィルタを洗浄する逆洗装置が設けられている。ろ過装置7A及び7Bは、交互に運転するように制御され、停止している間に、ろ過装置の洗浄が行われる。フィルタ洗浄により回収されたスラッジは、スラッジコンベア61に供給されて、系外に排出される。
【0038】
ろ過装置7A及び7Bによりろ過処理された処理済クーラント液は、液採取ボックス9に一時的に集められ、その後、三次タンク31に供給される。また、液採取ボックス9から三次タンク31の間の流路L14は、流路L15が分岐されており、分岐された流路L15には、オイルフィーダー10及び光学的検知手段11が設けられている。光学的検知手段11は、処理済クーラント液に含まれる粒子の粒子径や粒子数を検知するための装置であり、ろ過装置で除去するべきスラッジの漏出を検知することができる。スラッジの漏出の有無を判断する方法としては、特に制限されないが、例えば、所定の粒子径(例えば、フィルタの目開きと同じ大きさの粒子径)以上の粒子が検知される場合や、所定の粒子径以上の粒子が設定した粒子数より多くの検知される場合等に、フィルタに破損等が生じていると判断する。オイルフィーダー10は、流路L15の圧力を0.2MPa以上に加圧するための装置である。これにより、流路L15内の圧力の変動による気泡の発生を抑制し、光学的検知手段11の測定精度を高めることができる。
【0039】
また、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、前処理装置6として、スラッジコンベア61及びマグネットセパレータ62を備えている。
スラッジコンベア61は、使用済クーラント液に含まれるスラッジを沈降分離により分離し、系外へ排出するための装置である。使用済クーラント液は、研削盤101から流路L6を介してスラッジコンベア61に供給される。また、スラッジコンベア61には、ろ過装置7A及びろ過装置7Bを逆洗浄した際に生じるスラッジも供給される(流路L17及び流路L18)。スラッジコンベア61で沈降したスラッジは掻き寄せられて系外へ排出する。上澄みのクーラント液は、流路L7を介してマグネットセパレータ62に供給される。なお、スラッジコンベア61には、液面計S1が設けられており、クーラント液量の低下などの異常を検知している。
マグネットセパレータ62は、磁石によりスラッジを回収するための装置である。マグネットセパレータ62は、略水平方向に軸支された回転ドラム型のマグネットを備えており、回転ドラム型マグネットの略下半分がクーラント液に没している。クーラント液に含まれるスラッジは、回転ドラム型マグネットに付着し、回転ドラム型マグネットを回転させることにより、スラッジを系外に排出することができる。
このように、前処理装置6として、スラッジコンベア61及びマグネットセパレータ62を備えることにより、スラッジの含有量を大きく低減することができるため、ろ過装置7A及び7Bの負荷を低減することができる。
【0040】
また、本発明の第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、三次タンク31に、液温調整機H1、液面計S3が設置されている。
液温調整機H1は、研削盤101で熱を吸収したクーラント液の温度を低下するための装置である。
液面計S3は、三次タンク31の液面が低下した際に、異常を検知し、研削盤101へのクーラント液の供給が停止しないように監視するための装置である。
【0041】
また、第三の実施態様のクーラント液処理システム1Cでは、研削盤101の駆動軸を冷却するためのクーラント液を供給する構成として、主軸冷却タンク102を備えている。主軸冷却タンク102は、一つの槽を区画壁102Cで区画した二つの槽で構成され、クーラント液が供給される槽102Aに液温調整機H2を備え、もう一方の槽102Bには、研削盤101にクーラント液を供給するためのポンプP7と、クーラント液量の低下等の異常を検知するための液面計S4を備えている。また、研削盤101にクーラント液を供給するための流路L20の先端には、サクションフィルタFを設け、研削盤101への異物の混入を防止している。
【0042】
次に、
図6~
図9を用いて、本発明のクーラント液処理システム1Cについて詳細に説明する。
図6は、本発明のクーラント液処理システム1Cにおける一次タンク2、二次タンク3、三次タンク31の配置を示した図(
図5を上から見た図)である。
図7は、
図6のa-a方向から見た図であり、
図8は、
図6のb-b方向から見た図であり、
図9は、
図6のc-c方向から見た図である。
【0043】
図6に示すように、一次タンク2は、壁16A、壁16F、壁16D及び壁16Eにより区画された一次タンク2Aと、壁16A、壁16B、壁16C及び壁16Dにより区画された一次タンク2Bから構成されている。また、二次タンク3は、壁16A、壁16C、壁16D及び壁16Eにより区画され、一次タンク2A及び2Bの間に配置されている。二次タンク3の略中央底部には、矩形状の筒体からなる連結路17(
図7参照。)が配置され、一次タンク2A及び2Bを連結する。そして、連結路17の天面には、フロート式逆止弁5が設けられ、二次タンク3から連結路17を介して一次タンク2A及び2Bにクーラント液が流入するように構成されている。なお、フロート式逆止弁5は、
図3(A)に図示するものと同様に構成されている。
【0044】
三次タンク31は、壁16Aにより一次タンク2A、2B及び二次タンク3と区画されている。
図7に示すように、壁16Aの上部に開口18(斜線部)が設けられ、開口18から溢流として3次タンク31から二次タンク3へクーラント液が流入するように構成されている。
【0045】
図6に示すように、一次タンク2A及び2Bの壁16A側には、流路L11及びL10が設置されており、一次タンク2A及び2Bに貯留されたスラッジ含有クーラント液をポンプP4及びP5で吸い上げ、ろ過装置7A及び7B(
図5参照。)に供給する。そして、ろ過装置7A及び7Bで処理された処理済クーラント液は、流路L12~L15(
図5参照。)を介して三次タンク31に供給される。
【0046】
また、
図6の破線に示すように、一次タンク2A及び2Bの上方には、マグネットセパレータ62が配置されており、壁16D側には、マグネットセパレータ62で処理されたクーラント液を一次タンク2A及び2Bに投入するための流路L8及びL9が設置されている。なお、
図7~9に示すように、マグネットセパレータ62は、架台64を介して、一次タンク2A及び2Bの上方に設置されている。
【0047】
図8に示すように、マグネットセパレータ62の底部には、マグネットセパレータドレン63が形成されており、マグネットセパレータ62で処理されたクーラント液は、マグネットセパレータドレン63に連結した流路L8及びL9を介して一次タンク2A及び2Bに流入する。一次タンク2A及び2Bに投入されたスラッジ含有クーラント液は、流路L10及びL11からの吸い込みにより、流路L10及びL11方向へ移送される。
また、
図9に示すように、流路L8(及びL9)の下方には、傾斜部12が形成されており、投入されたスラッジ含有クーラント液の流路L10及びL11方向への移送を補助している。
【0048】
次に、クーラント液処理システム1Cのクーラント液の処理について説明する。
図8に示すようにマグネットセパレータドレン63から排出されたスラッジ含有クーラント液は、流路L8及びL9を介して一次タンク2A及び2Bに投入され、一次タンク2A及び2Bに貯められる。一次タンク2A及び2Bに貯められたスラッジ含有クーラント液は、ポンプP4により流路L10を介してろ過装置7Aに供給され、スラッジが除去される。スラッジが除去された処理済クーラント液は、流路L12、液採取ボックス9、流路L14及びL15を介して三次タンク31に流入する。なお、ろ過装置7Aにスラッジが堆積し、フィルタの差圧が上昇した場合には、ろ過装置7Aを逆洗し、その間に、ポンプP5を稼働して、ろ過装置7Bを使用する。
【0049】
ここで、ポンプP4の稼働により、一次タンク2A及び2Bの液面の位置が下降し、フロート式逆止弁5の浮き子より一次タンク2A及び2Bの液面が下がると、浮き子を押し下げ、二次タンク3から一次タンク2Aに処理済クーラント液が流入する。また、二次タンク3から一次タンク2Aに処理済クーラント液が流入すると、二次タンク3の液面が低下し、三次タンク31から処理済クーラント液が二次タンク3に流入する。このように、クーラント液は、一次タンク2A(2B)から、ろ過装置7A(7B)、三次タンク31及び二次タンク3を経て、一次タンク2A(2B)に循環するように流れることにより、一次タンク2A(2B)の内部に強い流れが生じてスラッジの堆積を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のクーラント液処理システムは、クーラント液に含まれるスラッジを除去するための装置として利用することができる。例えば、金属を被削材とする金属研磨加工機械、岩石を被削材する岩石研磨加工機械等におけるクーラント液からスラッジを除去するために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B,1C…クーラント液処理システム、2,2A,2B…一次タンク、3…二次タンク、31…三次タンク、4…通液部、5…フロート式逆止弁、51…浮き子、52…収容部、53…流入口、54…流出口、55…浮き子保持部、56…弁部、57…天面、58…底部、6…前処理装置、61…スラッジコンベア、62…マグネットセパレータ、63…マグネットセパレータドレン、64…架台、7…スラッジ除去装置、7A,7B…ろ過装置、8…連通部、9…液採取ボックス、10…オイルフィーダー、11…光学的検知手段、12…傾斜部、13…タンク、14A~14D…区画壁、15…区画壁、16A~16F…壁、17…連結路、18…開口、100…工作機械、101…研削盤、102…主軸冷却タンク、102A,102B…槽、102C…区画壁、L1~L20…流路、P1~P7…ポンプ、S1~S4…液面計、H1,H2…液温調整機、F…サクションフィルタ、AC…エアコンプレッサー、SW…圧力スイッチ