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特許7235747硫黄架橋性ゴム混合物、ゴム混合物の加硫物、及び車両用タイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】硫黄架橋性ゴム混合物、ゴム混合物の加硫物、及び車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230301BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20230301BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230301BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L47/00
C08K3/36
C08K3/06
C08J3/20 A CEQ
B60C1/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020529558
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018078135
(87)【国際公開番号】W WO2019110176
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】102017221863.0
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】サー・カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】タラントーラ・ジェーザ
(72)【発明者】
【氏名】パーフォン・ジエラ・ヴィクトーリア
(72)【発明者】
【氏名】ベーヒェアヌ-ベーケ・アルマン・ガブリエル
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015218745(DE,A1)
【文献】特開2015-083649(JP,A)
【文献】国際公開第2016/180649(WO,A1)
【文献】特開2007-284645(JP,A)
【文献】特開2003-327755(JP,A)
【文献】特開2006-063209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121316(US,A1)
【文献】特開2016-060810(JP,A)
【文献】特開2009-126987(JP,A)
【文献】特表2014-518912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 3/00 - 3/28
B60C 1/00 - 19/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-少なくとも1種のジエンゴム成分であって、但し、液状ジエンゴム成分の場合は、GPCによる重量平均分子量Mwが20000g/molを超える液状ゴムに限られ、及びスチレン-ブタジエンゴムである場合は、末端基変性されていないスチレン-ブタジエンゴムに限られる、ジエンゴム成分と、
-式I):
I)(R)Si-X-NH-C(=O)-O-
(式中、R、R、及びRは、互いに独立して、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基、及びフェニル基から選択され、いずれの場合もR、R、及びRの基のうちの少なくとも1つは、メトキシ基、エトキシ基、又はフェノキシ基であり、Xは1~6個の炭素原子を有する二価のアルキル基である)
の官能基で一方のみの鎖末端が変性されており、1分子あたりの官能基の数が平均0.8~1であり、及び500~15000g/molの、GPCによる重量平均分子量Mwを有する、少なくとも1種の液体の直鎖変性ジエンポリマーA成分と、
を少なくとも含有する硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項2】
10~300phrの少なくとも1種のシリカを含有することを特徴とする、請求項1に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項3】
前記ポリマーAがポリブタジエンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項4】
Xが、2~4個の炭素原子を有する二価アルキル基であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項5】
1~80phrの、少なくとも1種のポリマーAを含有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項6】
前記ジエンゴムが、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項7】
少なくとも1種のシランを含有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の少なくとも1種のゴム混合物の硫黄加硫により得られる加硫物。
【請求項9】
少なくとも1種の構成要素中に、請求項に記載の少なくとも1種の加硫物を含むことを特徴とする、車両用タイヤ。
【請求項10】
技術的なゴム製品における、請求項に記載の加硫物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄架橋性ゴム混合物、その加硫物、及び車両用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの、とりわけ空気入り車両用タイヤの走行特性は、トレッドのゴム組成物に大きく依存し、トレッド混合物の組成物に対する要求は特に高い。ゴム混合物におけるカーボンブラック充填材をシリカで部分的に又は完全に置き換えることにより、過去数年にわたって走行特性が全体的に高いレベルに達している。しかしながら、正反対のタイヤ特性に関する公知の相反する目的は、シリカ含有トレッド混合物でも存在し続けている。例えば、ウェットグリップの改善は、依然として一般に、転がり抵抗、冬季特性、及び摩耗特性の悪化を必然的に伴う。それと同時に、混合物の変更に応じて同様にドライブレーキ特性が低下する。これは、転がり抵抗とウェットブレーキとの間の目的の相反とはほぼ無関係である。
【0003】
トレッドにおける目的の相反を解決するために、既に様々なアプローチが追求されている。例えば、変性ポリマーを含む多種多様な異なるポリマー、樹脂、可塑剤及び微粉化された充填材がゴム混合物用に使用されてきており、混合物製造を変更することによって加硫物特性に影響を及ぼす試みが行われてきた。
【0004】
欧州特許出願公開第1052270 A号明細書は、例えば、充填材としてのカーボンブラックをベースとするトレッド混合物であって、氷上での効果的なグリップのために他の成分の中でも液体ポリマー、例えばポリブタジエンを含むトレッド混合物を開示している。
【0005】
独国特許出願公開第3804908 A1号明細書は同様に、充填材としてのカーボンブラックをベースとするトレッド混合物であって、良好な冬季特性のために液体ポリブタジエンを含むトレッド混合物を開示している。
【0006】
高いビニル含量及び高いガラス転移温度(T)を有する液体ポリブタジエンが、従来の可塑剤油の代用品としてタイヤトレッド用に欧州特許出願公開第1035164 A号明細書に提案されている。
【0007】
独国特許出願公開第102008058996 A1号明細書及び独国特許出願公開第102008058991 A1号明細書は、従来の可塑剤油の代用品として、多量の合成ゴムを有するトレッド混合物における末端アミン変性液体ポリブタジエン又は末端カルボキシル変性液体ポリブタジエンを開示している。このタイヤは、耐摩耗性を同時に維持しながら、低燃費及び良好な接着特性と、プロファイル溝底部での亀裂を抑える能力との間の非常に良好なバランスを特徴とすると言われている。
【0008】
欧州特許第2060604 B1号明細書は、60phrの天然ゴムと組み合わされた、20000g/モルのMwを有する官能化ポリマーと、充填材としてのカーボンブラックとを含むゴム混合物を開示している。
【0009】
米国特許出願公開第20020082333 A1号明細書は、合成ゴムと充填材としてのシリカとに基づくNRを含まないゴム混合物において、シランではなくトリエトキシシラン変性ポリブタジエンを使用することによって加工性を改善している。
【0010】
しかしながら、特性を改善するための、先行技術で公知の変性液体ポリブタジエンの使用は、タイヤのブレーキ特性、特にドライブレーキに非常に有害である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、先行技術と比較して、ドライブレーキ特性を損なうことなく、転がり抵抗とウェットブレーキ特性との間の目的の相反の改善を示すゴム混合物を提供することである。それと同時に、例えば、引張特性などの他の特性は、同等のレベルのままであるか、更には同様に改善される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、
-少なくとも1種のジエンゴム成分と、
-式I):
I)(R)Si-X-NH-C(=O)-O-
(式中、R、R、及びRは、互いに独立して、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基、及びフェニル基から選択され、いずれの場合もR、R、及びRの基うちの少なくとも1つは、メトキシ基、エトキシ基、又はフェノキシ基であり、Xは1~6個の炭素原子を有する二価のアルキル基である)
の官能基で一方のみの鎖末端が変性されており、1分子あたりの官能基の数が平均0.8~1である、少なくとも1種の液体の直鎖変性ジエンポリマーA成分と、
を少なくとも含有する硫黄架橋性ゴム混合物によって達成される。
【0013】
液体の直鎖変性ジエンポリマーAは、本発明との関係においては、略して「液体ポリマーA」又は「ポリマーA」とも呼ばれる。
【0014】
驚くべきことに、ゴム混合物中で液体ポリマーAを用いると、転がり抵抗特性とウェットブレーキ特性の間の目的の相反に関して、より高いレベルが達成されることが明らかになった。それと同時に、驚くべきことに、ゴム混合物は大幅に改善されたドライブレーキ特性を有する。
【0015】
本発明の更なる主題は、本発明の少なくとも1種のゴム混合物の加硫物である。
【0016】
本発明の更なる主題は、少なくとも1種の成分中に本発明のゴム混合物の本発明の少なくとも1種の加硫物を含む車両用タイヤである。車両用タイヤは、好ましくは、少なくともトレッド中に少なくとも1種の加硫物を有する。
【0017】
本発明の加硫物及び本発明の車両用タイヤは、転がり抵抗とウェットブレーキ特性との間の目的の相反に関してより高いレベルに位置し、またドライブレーキに関して改善されている。
【0018】
2部材構成のトレッド(上側:キャップ、下側:ベース)の場合、本発明のゴム混合物は、キャップとベースの両方に使用することができる。好ましくは、少なくともキャップ又は少なくともベース、又は少なくともキャップとベースは、本発明のゴム混合物の本発明の少なくとも1種の加硫物を有する。
【0019】
本発明のゴム混合物は、更に、互いに並んで及び/又は互いに重ねて配置された様々なトレッド混合物からなるトレッド(多成分トレッド)にも好適である。
【0020】
本発明との関係において、車両用タイヤは、産業用及び建設現場用の車両のタイヤ、並びにトラック、自動車、及び二輪車用のタイヤを含む、空気入り車両用タイヤ及び固体ゴムタイヤを意味すると理解される。
【0021】
更に、本発明のゴム混合物は、車両用タイヤの他の構成要素、例えば特にフランジプロファイル、及びタイヤの内部構成要素にも適している。
【0022】
更に、本発明によるゴム混合物は、ジャバラ、コンベヤベルト、空気ばね、ベルト、駆動ベルト又はホース、及び靴底などの他の技術的なゴム製品にも適している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以降で、本発明による硫黄架橋性ゴム混合物の成分を詳細に説明する。全ての観察は、本発明の加硫物、及び少なくとも1種の成分中に本発明のゴム混合物の本発明の少なくとも1種の加硫物を含む本発明の車両用タイヤに対して等しく有効である。
【0024】
本発明に不可欠な硫黄架橋性ゴム混合物は、少なくとも1種の液体の直鎖変性ジエンポリマーAを、好ましくは1~80phr、より好ましくは5~50phr、非常に好ましくは10~40phrの量で含有する。
【0025】
本明細書で用いられる単位「phr」(ゴム100重量部当たりの重量部)は、ゴム業界におけるブレンドレシピについての量の標準単位である。本明細書においては、個々の物質の添加量(重量部)は、混合物中に存在する全ての高分子量質量、したがって固体の液体ではないゴムの総質量(100重量部)を基準とする。
【0026】
本発明の目的のためには、「液体ポリマー」は、25℃でブルックフィールド法(DIN EN ISO 2555による方法)粘度が30000mPas以下、より詳しくは500~30000mPasであるポリマーである。
【0027】
好ましくは、25℃の液体ポリマーAは、3000mPas~30000mPas、より好ましくは3000~15000mPas、非常に好ましくは3000~10000mPasの粘度を有する。
【0028】
本発明に従って存在する液体ポリマーA、及び適切な場合には可塑剤として存在する他の液体ポリマーは、より詳しくは、20000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有し、phr計算の100部の中のゴムとしては含まれない。
【0029】
ポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、溶離液として40℃のテトラヒドロフラン(THF)を流量1.0mL/minで使用、サンプル濃度5mg/10mL、参照ポリスチレン標準;装置「GPC 8020」、検出器:東ソー株式会社製「RI-8020」)により決定される。
【0030】
本発明との関係において、略語Mwは、重量平均分子量のために使用される。
【0031】
ポリマーAは、好ましくは、500~15000g/mol、好ましくは5000~15000g/mol、より好ましくは5200~15000g/mol、非常に好ましくは5200~10000g/molの、GPCによる重量平均分子量Mwを有する。
【0032】
これにより、特に、最適化されたウェットブレーキ特性と共に、転がり抵抗及びドライブレーキ特性に関して、本発明のゴム混合物及び本発明の車両用タイヤによって特に優れた特性が得られる。
【0033】
本発明に従って存在するポリマーAは、好ましくは1.0~2.0、より好ましくは1.0~1.6、非常に好ましくは1.0~1.4のMw/Mn比を有する。
【0034】
これらのMw/Mn比は、粘度の変動が小さいことを意味するため有利である。
【0035】
液体の直鎖変性ジエンポリマーAは、式I):
I)(R)Si-X-NH-C(=O)-O-
(式中、R、R、及びRは、互いに独立して、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基、及びフェニル基から選択され、いずれの場合もR、R、及びRの基のうちの少なくとも1つは、メトキシ基、エトキシ基、又はフェノキシ基であり、Xは1~6個の炭素原子を有する二価のアルキル基である)
の官能基で一方のみの鎖末端が変性されており、1分子あたりの官能基の数は平均0.8~1である。
【0036】
ポリマー鎖の鎖末端の変性は、「末端変性」とも呼ばれる。
【0037】
本明細書の式I)の官能基は酸素原子(O-)を介してポリマー鎖に結合しているため、末端変性されたポリマーは(R)Si-X-NH-C(=O)-O-ポリマー鎖である。
【0038】
先行技術から公知のシロキサン変性ポリマーとは対照的に、ポリマーAは、多くても各鎖末端でのみ、式I)による前記基で変性されている。ポリマーAのポリマー鎖は、両方の鎖末端で変性されていない。
【0039】
ここでは、特定のポリマー鎖は完全に変性されていない場合もあり、そのため多数のポリマー鎖の混合物内で平均で1未満の官能化度が得られる。本発明によれば、ゴム混合物中に存在するポリマーAでは、ポリマー鎖の80%~100%が1つの鎖末端で変性されており、そのため、1分子あたりの官能基の数について平均で0.8~1の値になる。
【0040】
驚くべきことに、官能化度が0.8~1である少なくとも1種のポリマーAを含有する本発明のゴム混合物は、両方の鎖末端が変性されたポリマーを含む本発明でないゴム混合物と比較して、大幅に改善されたドライブレーキ特性を示す。
【0041】
官能基の平均数が0.8未満の場合、フィラーと直鎖変性ポリマーAとの間の相互作用が不十分であるため、架橋したゴム混合物は特性の改善を十分には示さない。
【0042】
官能基が1つの鎖末端のみに存在しない場合のように官能基の平均数が1を超える場合、フィラーと直鎖ポリマーAとの間の過剰な相互作用により、特性の改善が同様に損なわれるであろう。
【0043】
1分子あたりの官能基の数は、好ましくは0.85~1、より好ましくは0.9~1である。
【0044】
直鎖変性ポリマーAの1分子あたりの官能基の数は、重合開始剤(未変性鎖末端)、及びウレタン結合(変性された鎖末端)に基づくピークに基づいて、H-NMR(500MHz;サンプルの濃度//CDCl50mg/1L、記録数1024)により計算することができる(面積比に基づいて計算)。
【0045】
基Xは、好ましくは2~4個の炭素原子、より好ましくは3個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、そのため好ましくは二価プロピルラジカルである。プロピルラジカルは、n-プロピル基又はイソプロピル基であってもよい。
【0046】
これにより、特にドライブレーキ特性に関して、ゴム混合物と車両用タイヤにおいて特に優れた特性が得られる。
【0047】
有利な実施形態によれば、ラジカルR、R、及びRは、1つの分子内で同一である。
【0048】
1つの有利な実施形態によれば、ラジカルR、R、及びRはエトキシ基である。
【0049】
1つの有利な実施形態によれば、ラジカルR、R、及びRはメトキシ基である。
【0050】
特に好ましくは、ここでのXはn-プロピル基又はイソプロピル基であり、好ましくはn-プロピル基である。
【0051】
ポリマーAは、共役ジエンの重合に基づいており、特に、直鎖の未変性ポリマーA’は、変性ポリマーAの前駆体として少なくとも1種の共役ジエンのモノマーを含む重合用モノマーに基づいている。
【0052】
ジエンとして含まれるものは、原則として、特にブタジエンやイソプレンなどの当業者に公知の任意の共役ジエンである。
【0053】
更なる共役ジエンは、例えば、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、及びクロロプレンである。
【0054】
重合は、好ましくはブタジエン及び/又はイソプレンモノマーに基づく。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態によれば、未変性ポリマーA’は、未変性ポリマーA’の重量を基準として、50重量%以上、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%の重量分率でブタジエン及び/又はイソプレンモノマーを含む。
【0056】
更に、直鎖ジエンポリマーA’及びそれぞれの直鎖末端変性ポリマーAは、特には芳香族ビニル化合物などの更なるモノマーを含んでいてもよい。
【0057】
芳香族ビニル化合物の例は、特に、スチレン、α-メチルスチレン(アルファ-メチルスチレン)、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、及びジビニルベンゼンである。
【0058】
芳香族ビニル化合物の中で好ましいものは、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンである。
【0059】
直鎖未変性ポリマーA’がブタジエン及びイソプレン以外のモノマーを含む場合、直鎖未変性ポリマーA’の重量に基づくその重量分率は、50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0060】
例えば、変性ポリマーAを含む架橋ゴム混合物の転がり抵抗特性は、芳香族ビニル化合物が記載の重量比で未変性ポリマーA’中にモノマーとして含まれる場合に改善される。
【0061】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、ポリマーAはポリブタジエンである。この実施形態によれば、未変性ポリマーA’は、100mol%のブタジエンモノマーから構成されることが好ましい。
【0062】
液体ポリマーAは、好ましくは90mol%以下、より好ましくは85mol%以下、非常に好ましくは80mol%以下のビニル含量を有する。更に、ビニル含量は、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上である。本発明の目的のためには、「ビニル含量」は、イソプレン単位、ブタジエン単位、又は存在するイソプレンとブタジエン以外のモノマー単位の100mol%中の1,2-架橋又は3,4-架橋を介して互いに連結している共役ジエン単位の合計のモル分率を指す。
【0063】
ビニル含量は、1,4-結合に対する1,2-結合又は3,4-結合のピークに基づいて、H-NMRにより決定することができる。
【0064】
有利な実施形態によれば、液体ポリマーAは、40~80mol%、より好ましくは50~70mol%、非常に好ましくは55~70mol%、特に好ましくは60~65mol%のビニル含量を有する。
【0065】
液体ポリマーAは、DSC(示差走査熱量測定;+70℃~-150℃まで測定、10K/minの温度変化;DDSC(微分DSC)のピークからガラス転移点を決定)による-150℃~+50℃、より好ましくは-130℃~+50℃、非常に好ましくは-130℃~+30℃(プラス30)、更に好ましくは-85℃~-30℃(マイナス30)、更に非常に好ましくは-60℃~-40℃、特には-55℃~-45℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0066】
これにより、特に優れた転がり抵抗の指標が生じる。
【0067】
本発明によれば、ゴム混合物は硫黄架橋性であり、その目的のために少なくとも1種のジエンゴムを含む。
【0068】
ジエンゴムは、ジエン及び/又はシクロアルケンの重合又は共重合によって形成されるゴムであり、したがって主鎖又は側基のどちらかにC=C二重結合を有する。
【0069】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン及び/又は合成ポリイソプレン及び/又はエポキシ化ポリイソプレン及び/又はブタジエンゴム及び/又はブタジエン-イソプレンゴム及び/又は溶液重合スチレン-ブタジエンゴム及び/又は乳化重合スチレン-ブタジエンゴム及び/又はスチレン-イソプレンゴム及び/又は分子量Mが20000g/molを超える液状ゴム及び/又はハロブチルゴム及び/又はポリノルボルネン及び/又はイソプレン-イソブチレンコポリマー及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴム及び/又はニトリルゴム及び/又はクロロプレンゴム及び/又はアクリルゴム(acrylate rubber)及び/又はフルオロゴム及び/又はシリコーンゴム及び/又はポリスルフィドゴム及び/又はエピクロロヒドリンゴム及び/又はスチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー及び/又は水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム及び/又は水素化スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0070】
ニトリルゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、ベルト、駆動ベルト、及びホースなどの技術的なゴム製品並びに/又は靴底の製造に使用されている。
【0071】
ゴム混合物は、特に車両用タイヤに適しており、本明細書では、これは原則として、特にトレッド、サイドウォール、フランジプロファイル、及び他のいわゆるボディの構成要素などの任意の構成要素において使用することができる。
【0072】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)、及びハロブチルゴムからなる群から選択される。
【0073】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、ジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)なる群から選択される。この種のゴム混合物は、車両用タイヤのトレッドに特に適している。
【0074】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、ゴム混合物は、少なくとも1種の天然ポリイソプレンを、好ましくは2~100phrの量で含み、本発明の特に有利な一実施形態によれば、5~30phr、非常に好ましくは5~20phrの量で含む。本発明のゴム混合物の特に優れた加工性は、これにより達成される。
【0075】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、ゴム混合物は、少なくとも1種のポリブタジエン(ブタジエンゴム)を、好ましくは2~100phrの量で含み、本発明の特に有利な一実施形態によれば、5~50phr、非常に好ましくは10~25phrの量で含む。本発明のゴム混合物の特に優れた摩耗特性及び引張特性は、低いヒステリシス損失と組み合わされて、これにより達成される。
【0076】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、ゴム混合物は、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を、好ましくは2~100phrの量で含み、本発明の特に有利な一実施形態によれば、25~80phr、非常に好ましくは60~85phrの量で含む。低いヒステリシス損失並びに優れた摩耗及び引張特性と組み合わされた優れた加工性は、本発明のゴム混合物の部分でこれにより達成される。
【0077】
この場合のSBRは、好ましくは最適化されたヒステリシス特性を生じるSSBRである。
【0078】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、ゴム混合物は、記載されているゴムNR、BR、及びSBR、好ましくはSSBRのポリマーブレンドを含み、全ての考え得る組み合わせで、好ましくはそれぞれを記載された量で含み、存在する全てのゴムの合計は100phrである。
【0079】
特に有利な一実施形態では、ゴム混合物は、5~30phrの少なくとも1種の天然ポリイソプレン及び/又は少なくとも1種の合成ポリイソプレンと、25~80phrの少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムと、5~50phrの少なくとも1種のブタジエンゴムとを含む。
【0080】
全ての実施形態の天然及び/又は合成ポリイソプレンは、シス-1,4-ポリイソプレン、又は3,4-ポリイソプレンのいずれであってもよい。しかしながら、90重量%超のシス-1,4含量のシス-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。第一に、チーグラー-ナッタ触媒を用いて又は細分されたリチウムアルキルを用いて溶液での立体特異的重合によってそのようなポリイソプレンを得ることが可能である。第二に、天然ゴム(NR)は、1種のそのようなシス-1,4-ポリイソプレンであり;天然ゴム中のシス-1,4含量は、99重量%超である。
【0081】
加えて、1種以上の天然ポリイソプレンと、1種以上の合成ポリイソプレンとの混合物も考えられる。
【0082】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含む場合、当該ゴムの種類は当業者に公知の任意の種類を含んでいてもよい。これらには、いわゆる高-シス及び低-シスタイプが含まれ、ここで、90重量%以上のシス含量を有するポリブタジエンは高-シスタイプと呼ばれ、90重量%未満のシス含量を有するポリブタジエンは低-シスタイプと呼ばれる。低-シスポリブタジエンの例は、20重量%~50重量%のシス含量を有するLi-BR(リチウム触媒ブタジエンゴム)である。高-シスBRは、ゴム混合物の特に優れた摩耗特性及び低いヒステリシスを達成する。
【0083】
使用される1種以上のポリブタジエンは、変性及び官能化により末端基変性されていてもよく、並びに/又はポリマー鎖に沿って官能化されていてもよい。変性は、ヒドロキシル基及び/又はエトキシ基及び/又はエポキシ基及び/又はシロキサン基及び/又はアミノ基及び/又はアミノシロキサン及び/又はカルボキシル基及び/又はフタロシアニン基及び/又はシラン-スルフィド基を有する変性であってもよい。しかしながら、当業者に公知の官能化としても知られている更なる変性も適切である。金属原子がそのような官能化の構成要素であってもよい。
【0084】
ゴム混合物中に少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)が存在する場合、これは溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)又は乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)のいずれかであってもよく、少なくとも1種のSSBRと少なくとも1種のESBRとの混合物も使用可能である。用語「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」は、本発明との関連では同意語として用いられる。
【0085】
使用されるスチレン-ブタジエンコポリマーは、末端基変性されていてもよく、及び/又はポリブタジエンについて上で列挙した変性及び官能化を用いて、ポリマー鎖に沿って官能化されていてもよい。
【0086】
好ましくは、ゴム混合物は、30~300phr、より好ましくは30~250phrの、少なくとも1種の充填材を含有する。
【0087】
充填材は、特に、好ましくはシリカ及び/又はカーボンブラック及び/又はその他の強化充填材のような強化充填材などのゴム混合物用の考え得る全ての充填材を含み得る。
【0088】
更に、任意選択的な強化充填材は、例えば、分離型のCNT、いわゆる中空炭素繊維(HCF)、及び1つ以上の官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基等)を含む修飾されたCNTなどのカーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト、及びグラフェン、並びにいわゆる「カーボン-シリカ二相フィラー」である。
【0089】
更に、本発明のゴム混合物は、非強化充填材を含み得る。本発明の目的のための非強化充填材としては、好ましくはアルミノケイ酸塩、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、又はゴムゲル、並びに繊維(例えばアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維など)が挙げられる。
【0090】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ゴム混合物は、少なくとも1種のシリカを、好ましくは10~300phr、より好ましくは30~250phr、非常に好ましくは50~200phrの量で含有する。
【0091】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、ゴム混合物は、60~200phr、好ましくは80~150phrの少なくとも1種のシリカを含有する。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明のゴム混合物はカーボンブラックを含まない、すなわち0phrのカーボンブラックを含有する。
【0093】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、ゴム混合物は、少なくとも1種のカーボンブラックを、好ましくは0.1~100phr、より好ましくは1~50phr、非常に好ましくは5~30phr、更に好ましくは5~15phrの量で含む。
【0094】
シリカは、当業者に公知の、タイヤゴム混合物用の充填材として好適なタイプのシリカであり得る。しかし、35~400m/g、好ましくは35~350m/g、特に好ましくは85~320m/g、非常に特に好ましくは120~235m/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132に準拠)、及び30~400m/g、好ましくは30~330m/g、特に好ましくは80~300m/g、非常に特に好ましくは110~230m/gのCTAB表面積(ASTM D 3765に準拠)を有する微粉化された沈降シリカを使用することが特に好ましい。そのようなシリカは、例えばタイヤトレッド用のゴム混合物において、加硫物の特に優れた物理的特性をもたらす。加えて、同じ製品特性を維持しながら改善された生産性をもたらす混合時間の減少の結果として混合物の加工に利点が生じ得る。したがって、使用されるシリカは、例えば、EvonikからのUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)又はHDシリカとして知られる高分散シリカ(例えばSolvayからのZeosil(登録商標)1165 MP)のいずれかであってもよい。
【0095】
例えばBET表面積が異なる少なくとも2種の異なるシリカが本発明のゴム混合物中に存在する場合、記載されている量の数値は、存在する全てのシリカの合計量を常に指す。
【0096】
本発明との関係においては、原則的には当業者に公知のあらゆるタイプのカーボンブラックが考えられる。しかしながら、ASTM D 1510によるヨウ素吸着量が20~180g/kg、より好ましくは30~140g/kgであり、ASTM D 2414によるDBP量が30~200mL/100g、好ましくは90~180mL/100g、特に好ましくは110~180mL/100gであるカーボンブラックを使用することが好ましい。本発明の目的に特に適したカーボンブラックは、例えば、ヨウ素吸着量が90g/kgであり、DBP量が120mL/100gであるASTMタイプN339のカーボンブラックである。
【0097】
加工性を更に改善するために、並びに存在するシリカ及び任意の他の極性充填材をジエンゴムに結合させるために、シランカップリング剤がゴム混合物に使用されてもよい。本明細書では、1種以上の異なるシランカップリング剤が互いに組み合わされて使用されてもよい。ゴム混合物はしたがって、異なるシランの混合物を含んでもよい。
【0098】
シランカップリング剤は、ゴムの若しくはゴム混合物の混合中(その場)に、又はゴムへの充填材の添加前の前処理(プレ変性)の形でも、シリカの表面シラノール基又は他の極性基と反応する。シランカップリング剤として、ゴム混合物での使用について当業者に公知である全てのシランカップリング剤を使用することが可能である。先行技術から公知のそのようなカップリング剤は、脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ、又はフェノキシ基をケイ素原子上に有し、且つ他の官能基として、任意選択的には脱離後に、ポリマーの二重結合との化学反応を受けることができる基を有する二官能性有機シランである。後者の基は、例えば以下の化学基であってもよい:
-SCN、-SH、-NH又は-S-(x=2~8である)。
【0099】
例えば、使用されるシランカップリング剤は、例えば、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン又は2~8個の硫黄原子を有する3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)であってもよく、或いは、1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと、異なる含量の様々なスルフィドとの混合物であってもよい。TESPTは、例えば、工業用カーボンブラック(Evonik製の商品名X50S(登録商標))との混合物として添加することもできる。
【0100】
40重量%~100重量%のジスルフィド、より好ましくは55重量%~85重量%のジスルフィド、最も好ましくは60重量%~80重量%のジスルフィドを含有するシラン混合物を使用することが好ましい。この種の混合物は、例えば、EvonikからSi 266(登録商標)商標で入手可能であり、それは、例えば、独国特許出願公開第102006004062 A1号明細書に記載されている。
【0101】
例えば、国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるようなブロック化メルカプトシランもシランカップリング剤として使用することができる。国際公開第2008/083241 A1号パンフレット、国際公開第2008/083242 A1号パンフレット、国際公開第2008/083243 A1号パンフレット、及び国際公開第2008/083244 A1号パンフレットに記載されているようなシランを使用することも可能である。例えば、Momentive,USAから多数の変形において名称NXTで市販されているシラン(例えば3-オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン)又はEvonik Industriesによって名称VP Si 363(登録商標)として市販されているものを使用することが可能である。
【0102】
前述したメルカプトシランのうちの1つ、特には
3-メルカプトプロピルトリエトキシシランは、加工助剤(以下に記載)、特にPEGカルボキシレートと組み合わせて使用される。
【0103】
本発明の好ましい実施形態では、ゴム混合物は、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランと、PEGカルボキシレートとの組み合わせを含み、これは、とりわけ解決されるべき技術的課題に関する特に優れた特性、及び他の特性に関する全体的に優れたレベルの特性をもたらす。
【0104】
加えて、ゴム混合物は、追加の活性化剤及び/又は充填材(特にカーボンブラック)の結合のための試剤を含有してもよい。これは、例えば、欧州特許出願公開第2589619 A1号明細書に開示されている例えば化合物S-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその金属塩であってもよく、それにより、特に充填材としての少なくとも1種のカーボンブラックとの組み合わせで、ゴム混合物の非常に優れた物理的特性が得られる。
【0105】
列挙したシラン及び活性化剤は、ゴム混合物の製造において、好ましくは少なくとも1つの予備混合段階で添加される。
【0106】
特に好ましい一実施形態によれば、ゴム混合物は、本発明の目的のために、式I)による有機ケイ素で変性された液体ポリマーAを抜きにして、上述した少なくとも1種のシランカップリング剤を含有する。したがって、本発明のこの好ましい実施形態によれば、ゴム混合物は、液体ポリマーAと少なくとも1種のシランカップリング剤(シラン)とを含有する。
【0107】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種のシランは、少なくとも1種のブロック化及び/又は少なくとも1種の非ブロック化メルカプトシランを含む。
【0108】
非ブロック化メルカプトシランで意味されるものは、-S-H基、すなわち硫黄原子上に水素原子を有するシランである。ブロック化メルカプトシランで意味されるものは、-S-PG基(ここで、PGは硫黄原子上の保護基の省略形である)を有するシランである。以下で示す好ましい保護基はアシル基である。
【0109】
「ブロック化及び/又は非ブロック化メルカプトシラン」という表現は、本発明のゴム混合物が、ブロック化シラン、非ブロック化シラン、又はブロック化シランと非ブロック化シランとの混合物のいずれかを代替的に含み得ることを意味する。
【0110】
当業者には、この詳細事項が硫黄架橋性ゴム混合物の構成要素の初期状態に関連し、保護基が混合プロセス中及び/又は加硫中に除去され、それぞれの硫黄原子が化学的に反応することは明らかである。
【0111】
ブロック化及び/又は非ブロック化メルカプトシランは、好ましくは一般実験式IV)を有する:
IV)(RSi-Z-S-R
(式中、ラジカルRは、1つの分子内で互いに同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、
は、1~20個の炭素原子を有するアシル基又は水素原子であり、
Zは1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)。
Sは硫黄、Siはケイ素の略称である。
【0112】
ブロック化メルカプトシランは、硫黄原子上に保護基(本明細書の場合は式IV)における基R)を有しており、そのため「保護されているメルカプトシラン」とも呼ばれる。
【0113】
本発明の好ましい一実施形態によれば、メルカプトシランは、ブロック化メルカプトシランである3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランを含み、上述した式IV)において、全てのラジカルRがエトキシ(OEt)であり、Zがプロピル基であり、Rがオクタノイル基であることを意味する。
【0114】
驚くべきことに、上述した変性液体ポリブタジエンと、ブロック化及び/又は非ブロック化、好ましくはブロック化メルカプトシラン、特に3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランとの組み合わせは、達成すべき技術目的に関して相乗的相互作用をもたらす。
【0115】
更に、ゴム混合物は、慣用の添加剤を慣用の重量部で含有していてもよく、これらは、好ましくは、混合物の製造の過程における少なくとも1つの主要な混合段階で添加される。これらの添加剤としては、
a)N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)などの老化防止剤、
b)活性化剤、例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)並びに/又は他の活性化剤(亜鉛錯体等、例えばエチルヘキサン酸亜鉛)、
c)ワックス、
d)任意選択的な、特に粘着付与樹脂などの炭化水素樹脂、
e)素練り助剤、例えば、2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)、並びに
f)特に脂肪酸エステルや金属石鹸(例えば亜鉛石鹸及び/又はカルシウム石鹸等)などの加工助剤、
g)可塑剤、
が挙げられる。
【0116】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ゴム混合物が(上記の液体ポリマーAに加えて)少なくとも1種の可塑剤を含有する場合が有利であり、この場合、追加の可塑剤の合計量は、好ましくは1~90phr、より好ましくは5~70phr、最も好ましくは15~60phrである。これにより、特に上述した成分と組み合わせると、ゴム混合物、特に架橋前の押出物の特に優れた加工性が得られ、それと同時に優れた転がり抵抗の指標が得られる。
【0117】
本発明との関係において使用される可塑剤としては、例えば、芳香族、ナフテン系、又はパラフィン系の鉱油系可塑剤、例えばMES(軽度抽出溶媒和物)、又はRAE(残留芳香族系抽出物)、又はTDAE(処理蒸留出物芳香族系抽出物)、又はゴム液化油(RTL)、又はバイオマス液化油(BTL)、好ましくは方法IP 346による多環式芳香族含量が3重量%未満であるもの、又は菜種油などのトリグリセリド、又はファクチス、又は炭化水素樹脂、又はジエンポリマーAに対応せずその平均分子量(GPC=ゲル浸透クロマトグラフィーより決定、BS ISO 11344:2004に準拠)が特に500~20000g/molである追加の液体ポリマー、ジブチルメチレンジチオジアセテートなどの置換アルキルエステル、及びリン酸トリス(2-エチルヘキシル)などのリン酸エステル、のような当業者に公知の全ての極性及び無極性可塑剤が挙げられる。
【0118】
追加の液体ポリマーが本発明のゴム混合物の可塑剤として用いられる場合、これらはポリマーマトリックスの組成の計算においてゴムとして計算しない。
【0119】
可塑剤は、好ましくは上述の可塑剤からなる群から選択される。
【0120】
特に好ましくは、可塑剤は、炭化水素樹脂、液体ポリマー、及び鉱油からなる群から選択される。
【0121】
鉱油が使用される場合、それは、好ましくは、DAE(蒸留芳香族系抽出物)、及び/又はRAE(残留芳香族系抽出物)、及び/又はTDAE(処理蒸留出物芳香族系抽出物)、及び/又はMES(軽度抽出溶媒和物)、及び/又はナフテン系油からなる群から選択される。
【0122】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ゴム混合物は、少なくとも1種の鉱油系可塑剤、好ましくは可塑剤としての少なくともTDAE及び/又はRAEを含有する。これにより、特に優れた加工品質が得られ、特にゴム混合物部分の混合容量が大きくなる。
【0123】
本発明の好ましい一実施形態では、ゴム混合物は、可塑剤として少なくとも1種の追加の液体ポリマーを含有する。
【0124】
本発明の好ましい一実施形態では、ゴム混合物は、可塑剤として少なくとも1種の炭化水素樹脂を含有する。
【0125】
炭化水素樹脂がモノマーから構成されているポリマーであり、炭化水素樹脂が形式的にはモノマー同士の連結によりモノマーの誘導体から構成されていることは、当業者には明らかであろう。しかしながら、本発明との関係において、これらの炭化水素樹脂はゴムとしてはみなされない。「炭化水素樹脂」という用語は、本出願との関係においては、炭素原子と水素原子を含み、任意選択的には特に酸素原子などのヘテロ原子も含んでいてもよい樹脂を包含する。炭化水素樹脂は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「ホモポリマー」という用語は、本出願では、Roempp Online Version 3.28による「1種類のモノマーのみから形成された」ポリマーを意味すると理解すべきである。モノマーは、脂肪族Cモノマーやカチオン重合できる更なる不飽和化合物(芳香族及び/又はテルペン及び/又はアルケン及び/又はシクロアルケン等)などの、当業者に公知の炭化水素樹脂のあらゆるモノマーであってもよい。
【0126】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素樹脂は、脂肪族C樹脂、並びにアルファ-メチルスチレン及びスチレンから形成される炭化水素樹脂からなる群から選択される。
【0127】
炭化水素樹脂は、好ましくは10~180℃、より好ましくは60~150℃、非常に好ましくは80~99℃のASTM E28(環球法)軟化点を有する。更に、炭化水素樹脂は、好ましくは500~4000g/mol、好ましくは1300~2500g/molの分子量Mwを有する。
【0128】
追加の添加剤の合計量の割合は、3~150phr、好ましくは3~100phr、より好ましくは5~80phrである。
【0129】
追加の添加剤の全体の割合の中に酸化亜鉛(ZnO)が含まれていてもよい。
【0130】
これは、当業者に公知の任意のタイプの酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であってもよい。従来使用されている酸化亜鉛は、通常10m/g未満のBET表面積を有する。しかしながら、BET表面積が10~100m/gの酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することもできる。
【0131】
特に、本発明のゴム混合物が、存在する強化成分と直接接触するタイヤ又は工業用ゴム製品の内部構成要素のために使用される場合には、多くの場合粘着付与樹脂の形態である適切な接着系も、通常ゴム混合物に添加される。
【0132】
加硫は、好ましくは、硫黄及び/又は硫黄供与体の存在下で、加硫促進剤を用いて行われ、いくつかの加硫促進剤は同時に硫黄供与体として機能することができる。
【0133】
硫黄及び/又は更なる硫黄供与体並びにまた1種以上の促進剤は、最後の混合工程においてゴム混合物に添加される。促進剤は、チアゾール系促進剤及び/又はメルカプト系促進剤及び/又はスルフェンアミド系促進剤及び/又はチオカルバミン酸塩系促進剤及び/又はチウラム系促進剤及び/又はチオリン酸塩系促進剤及び/又はチオ尿素系促進剤及び/又はキサントゲン酸塩系促進剤及び/又はグアニジン系促進剤からなる群から選択される。
【0134】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、及び/又はN,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、及び/又はベンゾチアジル-2-スルフェノモルホリド(MBS)、及び/又はN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)からなる群から選択される少なくとも1種のスルフェンアミド系促進剤を使用することが好ましい。
【0135】
使用される硫黄供与物質は、当業者に公知の任意の硫黄供与物質であってもよい。ゴム混合物が硫黄供与物質を含む場合、それは、好ましくは、例えばチウラムジスルフィド、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、及び/又はテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、及び/又はテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及び/又はチウラムテトラスルフィド、例えばジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及び/又はジチオホスフェート、例えばDipDis(ビス(ジイソプロピル)チオホスホリルジスルフィド)、及び/又はビス(O,O-2-エチルヘキシルチオホスホリル)ポリスルフィド(例えばRhenocure SDT50(登録商標)、Rheinchemie GmbH)、及び/又はジクロリルジチオリン酸亜鉛(例えばRhenocure ZDT/S(登録商標)、Rheinchemie GmbH)、及び/又はアルキルジチオリン酸亜鉛、及び/又は1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、及び/又はジアリールポリスルフィド、及び/又はジアルキルポリスルフィドを含む群から選択される。
【0136】
例えば、商品名Vulkuren(登録商標)、Duralink(登録商標)、若しくはPerkalink(登録商標)として入手可能な追加のネットワーク形成系、又は国際公開第2010/049216 A2号パンフレットに記載されているようなネットワーク形成系も、ゴム混合物において使用することができる。この系は、4より大きい官能価で架橋する加硫剤と少なくとも1種の加硫促進剤とを含む。
【0137】
単体硫黄及び/又は追加の硫黄供与体の形態での追加的な硫黄の必要量は、それぞれのゴム混合物の使用分野に依存する。添加されるべきそれぞれの量は当業者に公知である。単体硫黄が添加される場合、車両用タイヤのビード用のゴム混合物の場合における量は、例えば0~5phrである。一般的にビードよりも少ない硫黄含量を有する車両用タイヤのトレッドの場合、添加すべき単体硫黄の量は、好ましくは0~4phrである。
【0138】
加えて、加硫遅延剤がゴム混合物中に存在してもよい。
【0139】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明に関連して同義で使用される。
【0140】
本発明の更なる主題は、最初に加硫系以外の全ての構成成分を含むベース混合物が1つ以上の混合段階で製造される、本発明の硫黄架橋性ゴム混合物の製造方法である。最終的な混合物は、最終混合段階で加硫系を添加することにより製造される。最終的な混合物は、更に処理を受け、例えば、押し出し処理又はカレンダー加工によって適切な形状にされる。これに続いて、加硫による更なる処理が行われ、本発明のとの関係で添加された加硫系により、硫黄架橋が生じる。
【0141】
本発明による上述したゴム混合物は、車両用タイヤ、特に空気入り車両用タイヤにおける使用に特に適している。本明細書で原理上考えられるものは、既に上述した全てのタイヤの構成要素、特にはトレッド、より具体的にはキャップ/ベース構造のトレッドのキャップにおける利用である。
【0142】
車両用タイヤにおいて使用するために、加硫前の完成混合物としての混合物は、好ましくはトレッド形状にされ、車両用のグリーンタイヤの製造中に、公知の方法で利用される。
【0143】
車両用タイヤのサイドウォール又は他のボディ混合物として使用するための本発明によるゴム混合物の製造は、既に述べた通りに行われる。違いは、混合物の押し出し処理/カレンダー加工後の成形である。このようにして得られた、1つ以上の異なるボディ混合物のための未加硫のゴム混合物の形状は、その後グリーンタイヤの形成に役立てられる。
【0144】
ここでの「ボディ混合物」とは、本質的に分離プレート、インナーライナー(インナーレイヤー)、コアプロファイル、ブレーカーベルト、ショルダー、ブレーカーベルトプロファイル、カーカス、ビード補強材、ビードプロファイル、フランジプロファイル、及びバンデージなどの、タイヤの他の構成要素のためのゴム混合物を指す。本発明によるゴム混合物を、駆動ベルト及び他のベルト、特にはコンベヤベルトにおいて使用するために、押し出された未加硫の混合物が適切な形状にされ、例えば合成繊維やスチールコードなどの強度部材と同時に又はその後にしばしば供給される。これにより、通常、ゴム混合物の1つ及び/又は複数の層、同一及び/又は異なる強度の部材の1つ及び/又は複数の層、並びに同じ及び/又は別のゴム混合物の1つ及び/又は複数の追加の層からなる多層構造が得られる。
【実施例
【0145】
本発明を、表1にまとめられている比較例及び実施例を用いて以降でより詳しく説明する。
【0146】
比較混合物はC、本発明の混合物はIと表されている。
【0147】
混合物は、ゴム業界で慣用のプロセスにより、密閉式ミキサーにおいて2段階で標準条件下で製造し、加硫系(硫黄及び加硫に影響を与える物質)以外の全ての成分を最初の混合段階で最初に混合した(一次混合段階)。2番目の段階(完全混合段階)で加硫系を添加することにより、90~120℃で混合しながら最終的な混合物を製造した。
【0148】
全ての混合物を使用して、加圧下、160℃で20分後に加硫することにより試験片を製造し、これらの試験片を使用して、以降で規定する試験方法を用いてゴム業界で典型的な材料特性を決定した。
【0149】
更に、比較例C1及び本発明の実施例I1の両方において、トレッドキャップとしてのそれぞれの場合の混合物を用いてタイヤ試験を行った。適用した試験方法は以下の通りであった:
・ウェットブレーキ:ABSブレーキ、80km/hからのブレーキ距離、ウェットアスファルト、低μ
・ドライブレーキ:ABSブレーキ、100km/hからのブレーキ距離、ドライアスファルト、高μ
・転がり抵抗:ISO 28580に準拠
【0150】
決定した値を性能に変換した。比較混合物C1は、試験した各特性の100%の性能に標準化されている。他の全ての混合物の性能は、この比較混合物C1を基準とする。これらの数値では、100%未満の値は特性の低下を示し、100%より大きい値は改善を示す。
【0151】
使用した物質
a)高-cis Nd-BR
b)SLR3402,Trinseo
c)本発明ではない液体ポリブタジエン、両方の鎖末端にシロキサン官能基を保有、そのためA*と表示
d)ポリマーA:最大でも1つの鎖末端のみが(末端で)変性されたポリブタジエン、式I)の通りに変性、R、R、及びR=エトキシ基、X=二価の直鎖プロピル基、Mw=5400g/mol、Mw/Mn=1.05、ビニル分率=65mol%、ガラス転移温度=-50℃、官能化度=0.97;以下の通りに製造;
e)Zeosol 1165 MP,Rhodia
f)TDAE
g)NXT,Momentive:3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン
h)酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、オゾン保護ワックス
【0152】
使用したポリマーAの製造d)
注意深く乾燥させた5Lのオートクレーブを窒素でフラッシュした。次いで、1680gのヘキサン、6.2gのN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、及び122gのn-ブチルリチウム(ヘキサン溶液中で15.6質量%)をオートクレーブの中に入れた。
【0153】
温度が50℃に上昇したときに撹拌しながら及び50℃で温度を監視及び維持しながら850gのブタジエンを徐々に添加した。ブタジエンの全ての量を添加してから1分後、14.5gのエチレンオキシドを添加し、その後撹拌を60分間継続した。その後、重合反応を終了した。この後、11.5gのメタノールを添加し、ポリマー溶液を得た。
【0154】
得られたポリマー溶液に、ポリマー溶液/水の体積比が2/1になるまで60℃の温度の水を添加した。
【0155】
この後30分間撹拌し、その後に混合物を30分間静置した。水相とポリマー含有相を分離した後、水相を除去した。
【0156】
この洗浄手順を、触媒残留物の除去のために、水相及びポリマー含有相がpH6~8になるまで繰り返した。
【0157】
得られた洗浄済みポリマー溶液を160℃で8時間加熱して溶媒を除去した。
【0158】
これにより、前駆体としての直鎖ヒドロキシル基変性ジエンポリマー(ポリブタジエン)を得た。
【0159】
続いて、700gの得られた直鎖ヒドロキシル基変性ジエンポリマーを、66.9gの3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン及び14mgのジラウリン酸ジブチルスズと共に1Lのオートクレーブの中に入れた。
【0160】
官能基の目的の化学反応を達成するために、混合物を60℃で3時間撹拌した。これにより、上に記載のポリマーAd)が得られた。
【0161】
【表1】
【0162】
表1から明らかなように、本発明のゴム混合物、及びそれぞれの本発明の車両用タイヤは、転がり抵抗とウェットブレーキとの間の目的の相反における改善を示す。それと同時に、驚くべきことに、ドライブレーキは、C1(先行技術からの液体ポリマーを含有)に対して+3%と大幅に改善されている。特にゴム混合物I1はC1よりも硬度が低いため、これは必ずしも予期したものではなかった。より軟らかい混合物のため、ドライブレーキ特性の悪化が予想されていた。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
-少なくとも1種のジエンゴム成分と、
-式I):
I)(R )Si-X-NH-C(=O)-O-
(式中、R 、R 、及びR は、互いに独立して、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基、及びフェニル基から選択され、いずれの場合もR 、R 、及びR の基のうちの少なくとも1つは、メトキシ基、エトキシ基、又はフェノキシ基であり、Xは1~6個の炭素原子を有する二価のアルキル基である)
の官能基で一方のみの鎖末端が変性されており、1分子あたりの官能基の数が平均0.8~1である、少なくとも1種の液体の直鎖変性ジエンポリマーA成分と、
を少なくとも含有する硫黄架橋性ゴム混合物。
2.
10~300phrの少なくとも1種のシリカを含有することを特徴とする、上記1.に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
3.
前記ポリマーAがポリブタジエンであることを特徴とする、上記1.又は2.に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
4.
Xが、2~4個の炭素原子、好ましくは3個の炭素原子を有する二価アルキル基であることを特徴とする、上記1.~3.のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
5.
前記ポリマーAが、500~15000g/mol、好ましくは5000~15000g/mol、より好ましくは5200~15000g/mol、非常に好ましくは5200~10000g/molの、GPCによる重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、上記1.~4.のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
6.
1~80phr、より好ましくは5~50phrの、少なくとも1種のポリマーAを含有することを特徴とする、上記1.~5.のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
7.
前記ジエンゴムが、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択されることを特徴とする、上記1.~6.のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
8.
少なくとも1種のシラン、好ましくは少なくとも1種のブロック化及び/又は少なくとも1種の非ブロック化メルカプトシランを含有することを特徴とする、上記1.~7.のいずれか1項に記載の硫黄架橋性ゴム混合物。
9.
上記1.~8.のいずれか1項に記載の少なくとも1種のゴム混合物の硫黄加硫により得られる加硫物。
10.
少なくとも1種の構成要素中に、好ましくは少なくともトレッド中に、上記9.に記載の少なくとも1種の加硫物を含むことを特徴とする、車両用タイヤ。
11.
技術的なゴム製品における、上記9.に記載の加硫物の使用。