(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/08 20060101AFI20230301BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20230301BHJP
【FI】
B60K17/08 E
F16H57/04 F
(21)【出願番号】P 2020530086
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025277
(87)【国際公開番号】W WO2020012956
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018131522
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】沼田 和也
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 太平
(72)【発明者】
【氏名】柳川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 智也
(72)【発明者】
【氏名】東山 晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 尚也
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0268393(US,A1)
【文献】特開平10-331961(JP,A)
【文献】特開2000-74194(JP,A)
【文献】実開昭57-90955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/08
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパンと、
前記オイルパンの上方に位置するストレーナと、
前記オイルパンの上方に位置するコントロールバルブユニットと、
前記ストレーナの上方に位置するオイルポンプと、を有し、
前記コントロールバルブユニットは、前記オイルパン側の下方から視た場合に前記コントロールバルブユニットの一部が欠けている切欠部を有する形状を有し、
前記ストレーナは、側面視で前記コントロールバルブユニットと少なくとも一部が重なり合うように前記切欠部内に配置され
、
前記オイルポンプは、前記切欠部内の位置に配置する動力伝達装置。
【請求項2】
オイルパンと、
前記オイルパンの上方に位置するストレーナと、
前記オイルパンの上方に位置するコントロールバルブユニットと、を有し、
前記コントロールバルブユニットは、前記オイルパン側の下方から視た場合に前記コントロールバルブユニットの一部が欠けている切欠部を有する形状を有し、
前記ストレーナは、側面視で前記コントロールバルブユニットと少なくとも一部が重なり合うように前記切欠部内に配置され、
前記コントロールバルブユニットは、前記オイルパン側から視た場合にL字状の外形をした部分を有し、
前記切欠部は、前記L字状の外形をした部分に隣接する動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1
又は2において、
前記切欠部は、前記オイルパン側の下方から視て前記コントロールバルブユニットにおける前記ストレーナとオーバラップする領域を切り欠いて形成されている動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記ストレーナの吸い口は、前記オイルパン側の下方から視た場合に前記切欠部とオーバラップしている動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記ストレーナ内部に蛇腹構造を有するフィルタが設けられている動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記ストレーナの吸い口は前記オイルパンの所定方向における中央部に位置する前記切欠部と重なる位置に配置されている動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6において、
所定方向は、車両の進行方向、及び/又は、前記車両の進行方向と直交する方向である動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記ストレーナと直接接続され且つ前記切欠部とオーバラップするオイルポンプを有する動力伝達装置。
【請求項9】
請求項
1において、
前記コントロールバルブユニットは、前記オイルパン側から視た場合にL字状の外形をした部分を有し、
前記切欠部は、前記L字状の外形をした部分に隣接する動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用変速機のオイルパン構造が開示されている。
【0003】
特許文献1のものでは、コントロールバルブとストレーナは高さ方向に完全にオーバラップして配置されている。
そのため、高さ方向に対してレイアウト上の制約がある。
【0004】
そこで、高さ方向に対するレイアウト上の制約を緩和できるようにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明は、
オイルパンと、
前記オイルパンの上方に位置するストレーナと、
前記オイルパンの上方に位置するコントロールバルブユニットと、を有し、
前記コントロールバルブユニットは、前記オイルパン側から視た場合に前記コントロールバルブユニットの一部が欠けている切欠部を有する形状を有し、
前記ストレーナは、前記切欠部とオーバラップしている構成の動力伝達装置とした。
【0007】
本発明によれば、ストレーナが切欠部とオーバラップしているので、高さ方向に対するレイアウト上の制約を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】変速機ケースの開口内でのコントロールバルブユニットとオイルストレーナの配置を説明する図である。
【
図2】オイルパン内でのオイルストレーナの配置を説明する図である
【
図3】コントロールバルブユニットを上方から見た図である。
【
図4】コントロールバルブユニットの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を、車両用のベルト式の無段変速機1を例に挙げて説明する。
図1は、変速機ケース10の開口14内でのコントロールバルブユニット2とオイルストレーナ3の配置を説明する図である。なお、
図1では、説明の便宜上、開口14を囲む周壁部15の端面にハッチングを付して示している。また、コントロールバルブユニット2の下面の形状の図示を省略しており、コントロールバルブユニット2の外周縁を太線で示している。
【0010】
図2は、オイルパン16内でのオイルストレーナ3の配置を説明する図である。なお、
図2では、説明の便宜上、オイルストレーナ3を断面で示している。
図3は、コントロールバルブユニット2を上方から見た図である。なお、
図3では、説明の便宜上、オイルポンプOPの上面の形状の図示を省略しており、オイルポンプOPの外周縁を太線で示している。また、ケース13側の周壁部15の位置を仮想線で示している。
【0011】
図1に示すように、車両用のベルト式の無段変速機1の変速機ケース10は、ハウジング11とサイドカバー12との間に、ケース13を挟み込んだ基本構成を有している。
無段変速機1を車両(図示せず)に搭載すると、ハウジング11とサイドカバー12とケース13は、車幅方向に並ぶ向きで配置される。
【0012】
ケース13の下部には、開口14が設けられている。この開口14は、ケース13内に収容された変速機構部の作動や回転要素の潤滑に用いられたオイルOLを、オイルパン16(
図2参照)側に戻すために設けられている。
【0013】
図2に示すようにオイルパン16は、開口14を囲む周壁部15の下面にボルトで固定されている。ケース13の開口14は、オイルパン16で塞がれており、ケース13の下部には、オイルパン16で囲まれたオイルOLの貯留空間Sxが形成されている。
【0014】
図1に示すように、オイルパン16側から見て、変速機ケース10の開口14は、無段変速機1の車両(図示せず)への設置状態を基準として、車両の前方寄りの位置で開口している。
開口14の車幅方向の開口幅は、車両前方側のほうが、車両後方側よりも幅広で形成されている。
開口14を、車幅方向の開口幅を基準として区別すると、車両前方側の第1開口部141と、後方側の第2開口部142とに区別できる。
【0015】
第1開口部141は、ケース13を挟んで一方側に位置するハウジング11の下方から、他方側に位置するサイドカバー12の下方まで及ぶ範囲に設けられている。
第2開口部142は、ケース13の下方からサイドカバー12の下方まで及ぶ範囲で設けられている。
【0016】
車両の前後方向において、第1開口部141は、ハウジング11から車両前方側に膨出している。第2開口部142の車両後方側の端部142aは、ケース13内に配置されるバリエータ(変速機構部:図示せず)の直下まで及んでおり、バリエータを潤滑したオイルOLが、第2開口部142に連絡する開口(図示せず)を通って、オイルパン16側に戻されるようになっている。
【0017】
オイルパン16側から見て、変速機ケース10の開口14を囲む周壁部15の内側には、ケース13に固定されたコントロールバルブユニット2と、オイルストレーナ3と、が設けられている。オイルストレーナ3の紙面奥側には、オイルポンプOPが付設されている(
図2参照)。
【0018】
ここで、無段変速機1の車両における設置状態を基準とした上下方向で、オイルポンプOPは、オイルストレーナ3の上側の面に固定されている。オイルパン16側の下方から見ると、周壁部15の内側では、オイルポンプOPとオイルストレーナ3はオーバラップしている。そのため、オイルパン16側の下方からケース13の開口14を見ると、オイルポンプOPにおける開口14内に位置する領域は、オイルストレーナ3の裏側に略全体が隠れている。
【0019】
図2に示すように、オイルポンプOPは、オイルパン16内に貯留されたオイルOLを、オイルストレーナ3を介して吸引する。そして、オイルポンプOPは、吸引したオイルOLを加圧してコントロールバルブユニット2内の油圧制御回路(図示せず)に供給する。
【0020】
コントロールバルブユニット2は、バルブボディ20、20の間にセパレートプレート25を挟み込んだ基本構成を有しており、コントロールバルブユニット2の内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。
油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧等で作動する調圧弁が設けられている。
【0021】
油圧制御回路は、オイルポンプOPで発生させた油圧から、変速機構部(バリエータなど)の作動油圧を調圧する。また、調圧弁からドレーンされたオイルOLの一部が、変速機ケース10内に設定された摩擦締結要素などの回転体の潤滑に用いられる。
【0022】
図1に示すように、オイルパン16側の下方から見てコントロールバルブユニット2は、ケース13の開口14内に位置している。コントロールバルブユニット2は、図示しないボルトBにより、ケース13の下部に固定されている。
【0023】
コントロールバルブユニット2が固定されたケース13をオイルパン16側から見ると、開口14のうちの第1開口部141は、略全域に亘ってコントロールバルブユニット2により覆われている。
一方、第2開口部142では、車両後方側(図中、左側)とハウジング11側(図中、上側)に、コントロールバルブユニット2で覆われていない領域が残されている。
ハウジング11側の領域は、コントロールバルブユニット2の一部の領域を切り欠いて形成した切欠部21である。
【0024】
切欠部21は、オイルストレーナ3を、コントロールバルブユニット2の高さh_valveを利用して、開口14内に設置できるようにするために設けられている。
本実施形態では、コントロールバルブユニット2をオイルパン16側の下方から見ると、切欠部21は、コントロールバルブユニット2におけるオイルストレーナ3と重なる領域(オーバーラップする領域)を切り欠いて形成されている。
そのため、切欠部21を有するコントロールバルブユニット2は、オイルパン16側の下方から見ると略L字形状を成している。
【0025】
そのため、コントロールバルブユニット2を、切欠部21を基準として二つに分けると、車両の前後方向で切欠部21の車両前方側に位置する第1領域201と、車両の幅方向で切欠部21の一方側に位置する第2領域202とに分けられる。
これら第1領域201と第2領域202は、切欠部21に接しつつ、互いに直交する位置関係で設けられている。
【0026】
周壁部15の内側においてコントロールバルブユニット2は、切欠部21(切り欠かれた領域)の開口を、車両の前後方向の車両後方側と、車両の幅方向のハウジング11側(車幅方向の他方側)に向けて設けられている。この状態で、切欠部21内にオイルストレーナ3が配置されている。
【0027】
図2に示すように、オイルストレーナ3は、アッパケース31とロアケース32との間に、フィルタ33を挟み込んだ基本構成を有している。
【0028】
アッパケース31は、ロアケース32から離れる方向に窪んだ基部310と、基部310の外周縁を全周に亘って囲むフランジ部311と、を有する。
ロアケース32は、アッパケース31から離れる方向に窪んだ基部320と、基部320の外周縁を全周に亘って囲むフランジ部321と、を有する。
【0029】
アッパケース31とロアケース32は、互いのフランジ部311、321同士を重ね合わせた状態で接合されており、重ね合わせたフランジ部311、321の部分に、フィルタ33の周縁部が挟み込まれている。
フィルタ33は、アッパケース31の基部310と、ロアケース32の基部320との間に形成された空間Sを、上下方向で隣接する2つの空間S1、S2に区画している。
【0030】
本実施形態では、蛇腹構造を有するフィルタ33が用いられている。
フィルタ33は、空間S内に位置する領域が、山部33aと谷部33bとが周期的に繰り返す蛇腹構造を有している。
【0031】
図2には、フランジ部311、321の厚み方向の中心線Cを挟んだ一方側に位置する山部33aと、他方側(オイルパン16側)に位置する谷部33bとが、車両の前後方向で交互に、所定ピッチTxで繰り返す蛇腹構造を例示している。
【0032】
図1に示すように、オイルパン16側から見てオイルストレーナ3は、略長方形形状を成しており、オイルストレーナ3の長手方向を、車両の前後方向に沿わせた向きで設けられている。
オイルストレーナ3には、ボルト孔(図示せず)を有する接続片313、314が設けられている。
【0033】
接続片313は、オイルストレーナ3の車両前方側(図中、右側)の側縁から車両前方側に延びており、オイルストレーナ3から離れるにつれて幅が狭くなる先細り形状を成している。
接続片314は、オイルストレーナ3の車幅方向におけるサイドカバー12側(図中、下側)の側縁から車幅方向に延びており、オイルストレーナ3から離れるにつれて幅が狭くなる先細り形状を成している。
【0034】
オイルストレーナ3は、接続片313、314のボルト孔(図示せず)を貫通させたボルトB、Bにより、コントロールバルブユニット2のオイルパン16側の下面に取り付けられている。
【0035】
図2に示すようにオイルストレーナ3は、コントロールバルブユニット2の高さh_valveの範囲内に収まる高さh1で形成されている。
そのため、オイルストレーナ3をコントロールバルブユニット2に取り付けると、オイルストレーナ3が、コントロールバルブユニット2の切欠部21内に収容されて、オイルパン16側の下方に大きく突出しないようになっている。
【0036】
図2に示すように、オイルストレーナ3のロアケース32では、車両の前後方向における前方寄りの位置に、オイルOLの吸込口32aが設けられている。吸込口32aは、無段変速機1の車両への設置状態を基準とした上下方向で、上方側からオイルパン16を向いて開口している。
【0037】
図1に示すように、オイルパン16側から見て吸込口32aは、略矩形形状を成している。オイルパン16側の下方から見て吸込口32aは、コントロールバルブユニット2の所定方向における中央部に設けられている。
【0038】
ここで、オイルパン16側の下方から見たときのコントロールバルブユニット2の所定方向における中央部は、以下のように定義できる。
(a)用語「中央部」は、オイルパン16側の下方から見て、コントロールバルブユニット2を、所定方向(車両前後方向、または車幅方向)で、3以上の奇数個に等分割(所定方向における距離が全ての区画で等しくなるように分割)した時に中央に位置する区画領域を意味する。
【0039】
図3を用いて説明すると、車両の前後方向でコントロールバルブユニット2を3つに等分割して3つの領域(領域A、B、C)に区画した場合には、中央に位置する領域Bがこれに該当する。車両の幅方向でコントロールバルブユニット2を3つに等分割して3つの領域(領域a、b、c)に区画した場合には、中央に位置する領域bがこれに該当する。
【0040】
なお、吸込口32aの位置は、オイルパン16側の下方から変速機ケース10を見たときの開口14を基準としても特定できる。
例えば、
図1に示すように、吸込口32aは、線分Lmと線分Lnとが交差する位置で開口している。線分Lmは、車幅方向におけるケース13の部分の幅Waの中間を通る線分である。線分Lnは、車両前後方向における開口14の幅Wbの中間を通る線分である。
そのため、オイルパン16側の下方から見て吸込口32aは、開口14の略中央部に設けられている。開口14の略中央部は、オイルパン16を下方から見た場合におけるオイルパン16の略中央部でもある。
【0041】
無段変速機1を搭載した車両の走行時には、オイルパン16内に貯留されたオイルOLの油面Oil_level(
図2参照)は、車両の走行状態の影響を受けて変動する。
例えば、車両が旋回する際や加減速をする際には、旋回半径、旋回速度、そして加減速の程度等に応じて、オイルパン16内のオイルOLの油面Oil_levelに傾きが生じる。
【0042】
オイルOLの油面Oil_levelの傾きの影響は、オイルパン16の中央部が最も小さくなり、中央部から、オイルパンの周縁部(車両の前後方向、車幅方向)に離れるにつれて大きくなる。
上記のように、吸込口32aを、オイルパン16の中央部に設けると、吸込口32aは、オイルOLの傾きの影響が最も小さく、油面Oil_levelの高さの変動が最も小さい領域に位置していることになる。
【0043】
かかる場合、無段変速機1を搭載した車両の旋回時や加減速時に、オイルパン16内の油面Oil_levelの変動や傾きが大きくなっても、吸込口32aを、オイルOL内(油中)に置くことができるので、エア吸いの発生を好適に抑制できる。
【0044】
図2に示すように、上下方向におけるオイルストレーナ3の上部には、オイルポンプOPが付設されている。オイルポンプOPもまた、コントロールバルブユニット2の切欠部21を利用して設けられている。
オイルポンプOPは、オイルストレーナ3の上部に付設した状態で、コントロールバルブユニット2の高さh_valveの範囲内に収まる高さh2で形成されている。
【0045】
そのため、オイルポンプOPを付設したオイルストレーナ3を、コントロールバルブユニット2に取り付けると、オイルポンプOPとオイルストレーナ3が、コントロールバルブユニット2の切欠部21の高さの範囲内に収容できる。
これにより、オイルポンプOPが、コントロールバルブユニット2から上方に大きく突出しないようになっている。
【0046】
図3に示すように、コントロールバルブユニット2を上方から見ると、切欠部21の形状(大きさ、および範囲)は、オイルポンプOPがコントロールバルブユニット2の側縁から大きく突出しないように設定されている。
このように、コントロールバルブユニット2に設けた切欠部21を利用して、オイルストレーナ3とオイルポンプOPが、コントロールバルブユニット2の高さ方向(
図2参照)、幅方向(
図3:車両の前後方向、車幅方向)の外側まで、大きく突出しないようにした。
これにより、オイルパン16周りでの高さ方向の制限を緩和することができ、オイルストレーナ3やオイルポンプOPを配置する場合における自由度が高くなる。
【0047】
本実施形態にかかる無段変速機1(動力伝達装置)は、以下の構成を有している。
(1)無段変速機1は、
オイルパン16と、
オイルパン16の上方に位置するオイルストレーナ3(ストレーナ)と、
オイルパン16の上方に位置するコントロールバルブユニット2と、を有する。
コントロールバルブユニット2は、オイルパン16側から視た場合にコントロールバルブユニット2の一部が欠けている切欠部21を有している。
オイルストレーナ3は、切欠部21とオーバラップしている。
【0048】
このように構成すると、オイルストレーナ3の高さ方向(重力方向、上下方向)に対する制約を緩和することができる。
オイルストレーナ3の高さh1を稼げるので、例えば、オイルストレーナ3の内部に設置されるフィルタ33に、蛇腹構造を有するフィルタを採用することが可能になる。
蛇腹構造のフィルタを採用すると、フィルタの表面積を稼ぐことができるので、オイルパン16側から見た場合のオイルストレーナ3の外形(面積)を縮小して、オイルストレーナ3の横方向の面積を縮小することもできるようになる。
【0049】
例えば、コントロールバルブユニット2に設ける切欠部の位置及び形状を工夫することで、オイルストレーナ3の吸込口32a(吸い口)を、オイルパン16側の下方から見たときに、オイルパン16の中央部と重なる位置に配置することもできる。
オイルパン16の中央部は、オイルOLの油面Oil_levelの傾きの影響を最も受け難い場所である。よって、無段変速機1を搭載した車両の旋回時または加減速時に、オイルパン16内のオイルOLの油面Oil_levelが傾いても、吸込口32aを常にオイルOL中に油没させておくことが可能になる。これにより、オイルストレーナ3は、オイルOLの油面Oil_levelの傾きに対して強くなるので、エア吸いの抑制が期待できる。
【0050】
本実施形態にかかる無段変速機1(動力伝達装置)は、以下の構成を有している。
(2)オイルストレーナ3の内部に、蛇腹構造を有するフィルタ33が設けられている。
【0051】
このように構成すると、蛇腹構造(ジグザグ構造)を有するフィルタ33は、横方向の面積と比して実際の面積が大きい。そのため、総通過面積を等しくする場合にフィルタの目をより細かくできることになり、洗浄能力を向上することができる。
【0052】
本実施形態にかかる無段変速機1(動力伝達装置)は、以下の構成を有している。
(3)オイルストレーナ3の吸込口32a(吸い口)は、下方から見た場合のオイルパン16の所定方向における中央部と重なる位置に配置されている。
【0053】
オイルパン16の中央部は、油面Oil_levelの高さの変動が最も小さい。よって、無段変速機1を搭載した車両の旋回時または加減速時に、オイルパン16内のオイルOLの油面Oil_levelが傾いても、オイルストレーナ3は、オイルOLの油面Oil_levelの傾きに対して強い位置(傾きの影響を受け難い位置)に吸込口32aを有しているので、エア吸いを抑制することもできるようになる。
【0054】
本実施形態にかかる無段変速機1(動力伝達装置)は、以下の構成を有している。
(4)所定方向は、無段変速機1を搭載した車両の進行方向、及び/又は、車両の進行方向と直交する方向(車幅方向)である。
【0055】
例えば、吸込口32aを、車両の進行方向(前後方向)の中央部と重なる位置に設けると、無段変速機1を搭載した車両の加減速時におけるオイルOLの油面Oil_levelの変化に対して強くなる。すなわち、車両の加減速時にオイルOLの油面Oil_levelが変化しても、吸込口32aを油中に配置することが可能になるので、車両の加減速時でのエア吸いを好適に抑制できる。
【0056】
例えば、吸込口32aを、車両の進行方向と直交する方向(車幅方向)の中央部に重なる位置に設けると、無段変速機1を搭載した車両の旋時におけるオイルOLの油面Oil_levelの変化に対して強くなる。すなわち、車両の旋回時にオイルOLの油面Oil_levelが変化しても、吸込口32aを油中に配置することが可能になるので、車両の加減速時でのエア吸いを好適に抑制できる。
【0057】
なお、車両の進行方向(前後方向)の中央部であって、車両の進行方向と直交する方向(車幅方向)の中央部でもある位置に、吸込口32aを設けた構成としても良い。かかる場合に、車両の加減速時と旋回時の両方において、オイルOLの油面Oil_levelの変化に対して強くなる。
【0058】
すなわち、車両の進行方向で等分割(1次元的な分割)した領域A、B、Cの中央の領域Bと、車両の進行方向と直交する方向(車幅方向)で等分割(1次元的な分割)した領域a、b、cの中央の領域bとの交差領域に、吸込口32aを設けた構成としても良い。
このように、コントロールバルブユニット2の領域を、車両の進行方向と車幅方向の両方で分割(2次元的な分割)して、領域Bと領域bの交差領域に吸込口32aを設けることで、車両の加減速時と旋回時の両方において、エア吸いを好適に抑制できる。
【0059】
本実施形態にかかる無段変速機1(動力伝達装置)は、以下の構成を有している。
(5)オイルストレーナ3と直接接続され且つ切欠部21とオーバラップするオイルポンプOPを有する。
【0060】
変速機ケース10内のオイルポンプOPの設置場所の高さの制約によりオイルストレーナ3に隣接して設置できない場合、オイルポンプOPは、ケース13に形成した迂回油路などを介してオイルストレーナ3と間接的に接続する必要がある。
上記のように構成して、コントロールバルブユニット2に切欠部21を設けて、オイルパン16側の下方から見て、切欠部21とオーバラップする位置にオイルポンプOPを配置する。そうすると、オイルストレーナ3とオイルポンプOPを迂回油路を介さず直接的に接続することができる。これにより、オイルストレーナ3とオイルポンプOPとを接続する回路(油路)を、短い距離で、且つ屈曲部を持つことなく形成できる。
【0061】
回路(油路)に屈曲部があると、屈曲部の部分がオイルの流れに対する抵抗となるので、オイルポンプOPに対する吸入抵抗が大きくなる結果、オイルポンプOPに対する負荷が大きくなる。
屈曲部を持つことなく回路(油路)を形成できると、オイルポンプOPに対する吸入抵抗を小さくすることができる。これにより、オイルポンプOPの負荷を低減できるので、省エネルギー化(燃費向上、電費向上)につなげることができる。
【0062】
本実施形態にかかる無段変速機1(動力伝達装置)は、以下の構成を有している。
(6)コントロールバルブユニット2は、オイルパン16側から視た場合にL字状(L字形状)の外形をした部分を有している。
切欠部21は、L字状の外形をした部分に隣接している。
【0063】
例えば、コの字状(U字状)にして切欠部を形成することも可能であるが、コントロールバルブユニットの端から端までの距離が長くなり油路抵抗が増えてしまう場合があるので、油路抵抗を極力短くするためにL字状が好ましい。
【0064】
図4は、切欠部21の形状の変形例を説明する図である。
図4の(a)は、コントロールバルブユニット2をオイルパン16側の下方から見た図であって、前記した実施形態で説明した切欠部21の形状を模式的に示した図である。
図4の(b)~(d)は、コントロールバルブユニット2をオイルパン16側の下方から見た図であって、変形例に係る切欠部21A、21B、21Cの形状を説明する図である。
図4の(e)は、オイルストレーナ3Dとコントロールバルブユニット2Dの配置の変形例を説明する図である。
図4の(f)は、コントロールバルブユニット2を側方から見た図であって、変形例に係る切欠部21Eを説明する図である。
【0065】
前記した実施形態では、コントロールバルブユニット2をL字形状(
図4の(a)参照)に形成して、以下の条件を満たすようにしていた。
(I)コントロールバルブユニット2およびオイルストレーナ3の集合体で形成される形状を略四角形状に収めつつ、オイルストレーナ3の吸込口32aを中央部に位置させる。
【0066】
そのため、コントロールバルブユニット2において切欠部21は、第1領域201の側縁201aと、第2領域202の側縁202aとに跨がって開口していた。
【0067】
例えば、
図4の(b)に示すように、矩形形状の切欠部21Aを、コントロールバルブユニット2Aの一つの側縁202aにのみ開口するように設けて、略コ字形状のコントロールバルブユニット2Aとしても良い。
この場合、第2領域202が、切欠部21Aにより車幅方向で二つに分割されている。
このような構成とすることによっても、コントロールバルブユニット2の高さを利用して、オイルストレーナ3を配置することができ、オイルストレーナ3を配置する際の高さの制約を緩和できる。
【0068】
また、
図4の(c)に示すように、コントロールバルブユニット2Bを斜めに切除して、三角形形状の切欠部21Bを設けた構成としても良い。
さらに、
図4の(d)に示すように、側縁202aを円弧状に切り欠いて、円弧状の切欠部21Cを設けた構成としても良い。
【0069】
なお、本件発明は、L字形状のコントロールバルブユニット2Dと、矩形形状のオイルストレーナ3Dとが、上方(または下方)から見て重なる範囲を持って設けられた態様(
図4の(e)参照)を除外するものではない。
【0070】
さらに、
図4の(f)に示すオイルストレーナ3Eのように、オイルストレーナは、コントロールバルブユニット2Eと重なる部分と、重ならない部分の両方を持つ形状で形成されていても良い。
この場合には、コントロールバルブユニット2Eと重な
らない部分において、オイルストレーナ3Eの高さを高くすることができる。かかる場合、オイルストレーナ3Eの高さが高くなった部分において、フィルタ33Eの長さを長くすることで、オイルストレーナ3Eを通過するオイルOLに含まれる夾雑物の捕捉効率を高めることが期待できる。
【0071】
図4の(b)~(f)に示すような切欠部21A、21B、21C、21Eの形状とすることによっても、コントロールバルブユニット2の高さを利用して、オイルストレーナ3を配置することができ、オイルストレーナ3を配置する際の高さの制約を緩和できる。
【0072】
なお、コントロールバルブユニットおよびストレーナの集合体で形成される形状を略四角形状に収めつつ、ストレーナの吸込口を中央部に位置させるためには(斜めに切り欠いた形状)などよりもL字形状の方がレイアウトがしやすいため、L字形状が好ましいと言える。
【0073】
前記した実施形態では、動力伝達装置が、車両用のベルト式の無段変速機である場合を例示した。本願発明の動力伝達装置は、いわゆる車両用の自動変速機のみに限定されない。
複数のギアから構成されるギア列であって、少なくとも1つのギアが、ギア列の収容ケース内のオイルを掻き上げ得るように構成された装置にも適用可能である。このような装置として、入力された回転を減速して出力する減速装置が例示される。
【0074】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。