(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】選択的Treg刺激因子RUR20kD-IL-2及び関連組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20230301BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230301BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230301BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230301BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230301BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61K47/60
A61P37/08
A61P37/02
A61P17/00
A61P1/04
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2020564540
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019033100
(87)【国際公開番号】W WO2019226538
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597148884
【氏名又は名称】ネクター セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】カーク,ピーター ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ランゴウスキ,ジョン エル
(72)【発明者】
【氏名】ザレヴスキー,ジョナサン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506116(JP,A)
【文献】国際公開第2017/156720(WO,A1)
【文献】特表2014-510725(JP,A)
【文献】Int. Immunopharmacol. (Feb 2018) vol.56, p.269-276
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/20
A61K 47/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
(式中、IL-2はインターロイキン-2であり、
nは各出現で独立して約3~約4000の整数であり、
n’は1および2および3である)
のPEG化IL-2コンジュゲートを含
み、
モルベースで、2.25~4.95モルパーセントのモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び31.5~55モルパーセントのジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び34.2~50.6モルパーセントのトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び2.7~11モルパーセントのより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、組成物。
【請求項2】
IL-2がアルデスロイキンである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、あわせて考慮した場合に、式
【化2】
(式中、n’は1、4、および5から選択される)によって包含される、PEG化IL-2コンジュゲートを約10モルパーセント以下で含む、請求項
1または2に記載の組成物。
【請求項4】
4に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約10モルパーセント以下で含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
4に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約7モルパーセント以下で含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
4に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約5モルパーセント以下で含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、ほぼ等モル量の
【化3】
を含む、請求項1に記載のPEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含む組成物。
【請求項8】
アルデスロイキンあたりの分岐ポリエチレングリコール部分の平均数が約2.5である、請求項
2に記載の組成物。
【請求項9】
nの平均値が約226である、請求項
1または2に記載の組成物。
【請求項10】
あわせた合計が約80~約95モルパーセントのジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、請求項
1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
モルベースで、約2.8~約3.8モルパーセントのモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モルパーセントのジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モルパーセントのトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モルパーセントのより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、請求項
1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
あわせた合計が約87~約90モルパーセントのジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
モルベースで、約2.8~約3.8モルパーセントのモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モルパーセントのジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モルパーセントのトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モルパーセントのより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、前記組成物がリジンK7又はK8又はK31又はK75の1つに付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、請求項
1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
あわせた合計が約87~約90モルパーセントのジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
モルベースで、約2.8~約3.8モルパーセントのモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モルパーセントのジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モルパーセントのトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モルパーセントのより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、前記組成物がリジンK7に付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、請求項
1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
あわせた合計が約87~約90モルパーセントのジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む、請求項
1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
非経口投与に適した形態の、請求項
1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
皮下投与に適した形態の、請求項
1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
水性希釈剤を含む、請求項
17に記載の組成物。
【請求項21】
約5のpHを有する、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びスクロースを更に含む、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
1.5mg/mlタンパク質当量、10mM酢酸ナトリウム、110mM塩化ナトリウム、2%スクロース(重量/体積)、pH5.0を含む請求項
17に記載の組成物。
【請求項24】
治療法に使用するための、請求項
1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
制御性T細胞対エフェクターT細胞の比率を増加させる方法に使用するための、請求項
1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
制御性T細胞がFoxp3+細胞及びCD25+細胞から選択される、請求項
25に記載の組成物。
【請求項27】
エフェクターT細胞がCD4+細胞及びCD8+細胞から選択される、請求項
25に記載の組成物。
【請求項28】
ベースラインと比較した場合、制御性T細胞の倍増が、in-vivoマウスモデルで評価した場合、少なくとも約2の値に達する、請求項
25に記載の組成物。
【請求項29】
ベースラインと比較した場合、制御性T細胞の倍増が、in-vivoマウスモデルで評価した場合、少なくとも約4の値に達する、請求項
25に記載の組成物。
【請求項30】
制御性T細胞数の増加が、投与後少なくとも3日間、ベースラインレベルを超えて持続する、請求項
25に記載の組成物。
【請求項31】
制御性T細胞数の増加が、投与後少なくとも5日間、ベースラインレベルを超えて持続する、請求項
25に記載の組成物。
【請求項32】
自己免疫疾患の治療に使用するための、請求項
1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
皮下注射により投与される、請求項
32に記載の組成物。
【請求項34】
2週間に1回又は4週間に1回投与される、請求項
32または33に記載の組成物。
【請求項35】
2週間に1回、3μg/kg~24μg/kgの用量で投与される、請求項
32または33に記載の組成物。
【請求項36】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデスである、請求項
32~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記自己免疫疾患が、アトピー性皮膚炎である、請求項
32~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記自己免疫疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項
32~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
アレルギー疾患に使用するための、請求項
1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エフェクターT細胞と比較して、制御性T細胞の数及び活性化を選択的に増加させる長時間作用型インターロイキン-2受容体(IL-2R)アゴニストTreg刺激因子組成物、並びに自己免疫疾患及び炎症性疾患、及び/又はTreg刺激療法に反応する他の状態の治療においてこれらのTreg刺激因子組成物を使用する方法に関する。特に、本出願は、選択的Treg刺激因子組成物RUR20kD-IL-2及び関連組成物、並びにそれを作製する方法、それらの製剤、並びにRUR20kD-IL-2及び関連組成物を自己免疫疾患及び炎症性障害の治療に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、感染性微生物による侵入に対する体の主な防衛線である。正常に機能している免疫系では、自己抗原に対して免疫反応は起こらず、これは自己寛容と称される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する寛容性が失われたために身体組織がその身体自身の免疫系によって攻撃された場合に発生する(Dejaco,C.,ら,Immunology.2006;117(3):289-300)。自己免疫疾患を患っている被験体では、身体組織は抗原特異的細胞傷害性T細胞又は自己抗体によって破壊され、付随する炎症が機能障害を引き起こし、場合によっては死に至る可能性がある。自己免疫疾患は、人口のおよそ6%に影響を与える広範囲の症状を伴う不均一な疾患の集まりである(Siatskas,C.,ら,Curr Gene Ther.2006;6(1):45-58)。自己免疫疾患の臨床的特徴は非常に異なるが、免疫介在性メカニズムは、標的抗原に対する適応免疫応答の生成と関連している(Kuby,J.,1994:Autoimmunity.Immunology,2nd ed.,p 445-467.WH Freeman and Company,New York)。
【0003】
コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン及びメトトレキサート等の様々な従来の治療法は、自己免疫疾患の一部の患者ではわずかに効果的であるが、均一に効果的ではなく、副作用及び毒性と関連する(Jantunen,E.,ら,Bone Marrow Transplant.2000;25(4):351-6)。かかる従来のアプローチでは、自己反応性免疫に関連する根本的な病理に対処することはできない。
【0004】
自己免疫疾患の病態生理学の理解における最近の進歩に照らして、細胞又は分子標的に焦点を合わせた可能性のある新たな治療法が開発され、現在評価されている。自己免疫疾患の病因は不明であるが、遺伝的要因、不適切な免疫調節、及びホルモン要因と環境要因との間の潜在的な相互作用によって引き起こされると考えられている。自己免疫疾患の誘発には、隔離された抗原、分子擬態、MHCクラスII分子の不規則な発現、サイトカインの不均衡、イディオタイプネットワーク調節経路の機能不全、全身の制御性T細胞の欠陥、及びポリクローナルB細胞の活性化を含む様々なメカニズムが提案されている(Kuby,1994、同上)。自己免疫疾患の治療のために、B細胞枯渇、抗サイトカイン療法、及び幹細胞療法を含む幾つかのアプローチが研究されてきたが、これらのアプローチには、有効性、安全性及び/又は望ましくない副作用に関して欠点がある。自己免疫疾患を治療するための従来の治療法は、免疫系全体を抑制することによって機能し、それによって感染症及び他の深刻な副作用の重大なリスクにつながる。したがって、自己免疫疾患の治療に対して有効性、安全性及び/又は忍容性の改善された組み合わせを提供するための追加の治療の必要性が残されている。
【0005】
長年にわたり、自己免疫応答におけるIL-2の役割は炎症性サイトカインとして確立されてきた。しかしながら、より最近の研究では、IL-2が特定の条件下で慢性自己免疫性炎症において保護的な役割を果たすことができるということが示唆された。特に、制御性T細胞(Treg)とエフェクターT細胞(Teff)とのバランスの崩れは、様々な自己免疫疾患の共通の特徴として特定されており、かかるバランスの崩れはIL-2等の恒常性サイトカインの影響を受けると考えられている。その薬物動態プロファイルにより、自己免疫療法のための未修飾IL-2の投与は、頻繁な毎日又は隔日の投与を必要とし、これはしばしば痛みのある注射部位反応を伴う。更に、頻繁な注射の必要性は、不快感及び不便さのためにしばしば患者のコンプライアンスの低下を伴う。IL-2の長期反復投与はまた、IL-2の望ましくない多面的な全身作用のリスク上昇、並びに関連するリスク及び有害作用も伴う。更に、治療域が限られているため、免疫恒常性を達成するための未修飾IL-2の使用と、望ましいTreg/Teffバランスの維持は、達成不可能ではないにしても、長期間にわたって困難であることが判明する可能性がある。更に、自己免疫疾患療法に関するその狭い治療マージンは、非常に低用量のIL-2の投与を必要とすることで、その有効性に悪影響を与える。何らかの臨床的利益を得るため低用量のIL-2を使用することができるが、有害事象によって用量が制限され、Tregの増加は中程度で短命である。例えば、自己免疫疾患療法に対する未修飾のIL-2の投与は、IL-5の望ましくない増加と、それに続く好酸球レベルの上昇を誘発し、炎症を引き起こす可能性がある。そのため、様々な自己免疫疾患において、制御性T細胞及びエフェクターT細胞の活性の疾患緩和バランスを促進する方法でIL-2シグナル伝達を選択的に調節し得る作用物質の必要性が残されている。
【0006】
特定の自己免疫疾患は、IL-2産生の障害及び/又は制御性T細胞の欠損を含む根本的な病因を有しており、これらは疾患の発症に先立つ免疫学的メカニズムとして関係している。自己免疫症状を効果的に軽減し、生活の質を改善し、好ましくは様々な自己免疫疾患において長期の寛解を提供するために、代替のより効果的な治療用組成物及び治療計画の必要性が残されている。本開示は、慢性自己免疫疾患を治療するための現在の選択肢の限られた利用可能性及び関連する欠点に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、選択的Treg刺激因子RUR20kD-IL-2及び関連組成物の発見に基づいている。RUR20kD-IL-2の選択的Treg刺激因子組成物は、定義された不均一性のIL-2-PEGコンジュゲート混合物である。それらの組成物は、他の免疫細胞への影響を最小限に抑えながら、Treg恒常性を選択的に回復するための低用量皮下投与を目的としている。RUR20kD-IL-2選択的Treg刺激因子組成物は、20kDaポリエチレングリコール(PEG)部分に安定して共有結合的に複合化されている、組換えヒトインターロイキン-2(rhIL-2、特に追加のアミノ酸の変異又は置換を含まないアルデスロイキンアミノ酸配列)を含むコンジュゲートの混合物であり、ここで、混合物は、IL-2部分ごとに一定のPEG化を伴う定義された画分を有する。本開示の組成物は、主にジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2の定義された画分、並びにモノ-PEG化IL-2及び/又はテトラ若しくはより高PEG化されたIL-2の定義されたより少ない画分を有するIL-2PEGコンジュゲートの選択された混合物を含む。特に、本開示の組成物は、選択的Treg刺激因子RUR20kD-IL-2及び関連組成物、それを作製する方法、それらの製剤、並びにRUR20kD-IL-2及び関連組成物を自己免疫疾患及び炎症性障害の治療に使用する方法を提供する。RUR20kD-IL-2組成物は、抗原特異的T制御性細胞を活性化及び拡大することにより、免疫炎症性疾患において持続的な応答を誘導する。RUR20kD-IL-2組成物の低用量皮下投与による自己免疫障害の治療は、従来のT細胞機能への影響を最小限に抑えて、Treg恒常性を選択的に回復する手段を提供し、それにより、これらの障害を軽減するための代替及び/又は改善されたアプローチを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、RUR
20kD-IL-2組成物の一般的な組成を示す代表的な逆相HPLCプロットであり、その調製は、実施例1及び実施例1Aに記載されている。
【
図1B】
図1Bは、RUR20kD-IL-2組成物の一般的な組成を示す代表的な逆相HPLCプロットであり、その調製は、実施例1及び実施例1Aに記載されている。x軸(溶出時間、分)に沿って左から右に移動して、精製されたコンジュゲート組成物は、主にジ-PEG化及びトリ-PEG化rIL-2を含む。
【
図2】
図2は、アルデスロイキン(大腸菌(E.coli)で発現される組換え非グリコシル化インターロイキン-2である125-L-セリン-2-133インターロイキン-2)のアミノ酸配列である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、実施例2に記載されるように、マウスにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の血液(
図3A)及び脾臓(
図3B)におけるマウスTregの薬力学的分析の結果を示すプロットである。
【
図4A】
図4Aは、実施例2に記載されるように、マウスにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の、血中のNK細胞、CD4 T細胞、及びCD8 T細胞のレベルをそれぞれ示すプロットである。
【
図4B】
図4Bは、実施例2に記載されるように、マウスにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の、血中のNK細胞、CD4 T細胞、及びCD8 T細胞のレベルをそれぞれ示すプロットである。
【
図4C】
図4Cは、実施例2に記載されるように、マウスにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の、血中のNK細胞、CD4 T細胞、及びCD8 T細胞のレベルをそれぞれ示すプロットである。
【
図5A】
図5Aは、実施例2に記載されるように、マウスにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後のCD25及びFoxp3の平均蛍光強度(MFI)によって測定されるTreg機能及び活性のプロットである。
【
図5B】
図5Bは、実施例2に記載されるように、マウスにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後のCD25及びFoxp3の平均蛍光強度(MFI)によって測定されるTreg機能及び活性のプロットである。
【
図6A】
図6Aは、実施例3に記載されるように、in vitro Treg抑制アッセイにおいて1及び4日目にビヒクル治療マウスから単離された脾臓Tregのプロットである。
【
図6B】
図6Bは、実施例3に記載されるように、in vitro Treg抑制アッセイにおいて1及び4日目にビヒクル治療マウスから単離された脾臓Tregのプロットである。
【
図6C】
図6Cは、実施例3に記載されるように、in vitro Treg抑制アッセイにおいて1及び4日目にビヒクル治療マウスから単離された脾臓Tregのプロットである。
【
図6D】
図6Dは、実施例3に記載されるように、in vitro Treg抑制アッセイにおいて1及び4日目にビヒクル治療マウスから単離された脾臓Tregのプロットである。
【
図7】
図7は、実施例3に記載されるように、経時的に評定された1:2の比率でTcon(従来のT細胞)とともに培養された単離Tregの相対的抑制能力を示すプロットである。
【
図8A】
図8Aは、RUR
20kD-IL-2組成物で治療したマウスにおける耳介腫脹の程度を示し、この研究を、実施例4に記載されるように、RUR
20kD-IL-2投与によるTreg誘導の遅延型過敏症(DTH)のマウスモデルにおいてT細胞抗原駆動性の炎症を抑制する能力を評定するために行った。
【
図8B】
図8Bは、RUR
20kD-IL-2組成物で治療したマウスにおける耳介腫脹の程度を示し、この研究を、実施例4に記載されるように、RUR
20kD-IL-2投与によるTreg誘導の遅延型過敏症(DTH)のマウスモデルにおいてT細胞抗原駆動性の炎症を抑制する能力を評定するために行った。
【
図9A】
図9Aは、実施例5に記載されるように、カニクイザルにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の血中のTregレベル(それぞれ、CD4、CD25、FOXP3)のプロットである。
【
図9B】
図9Bは、実施例5に記載されるように、カニクイザルにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の血中のTregレベル(それぞれ、CD4、CD25、FOXP3)のプロットである。
【
図9C】
図9Cは、実施例5に記載されるように、カニクイザルにおいて単回用量のRUR
20kD-IL-2組成物を投与した後の血中のTregレベル(それぞれ、CD4、CD25、FOXP3)のプロットである。
【
図10A】
図10Aは、実施例7に記載されるように、RUR
20kD-IL-2組成物又は未修飾IL-2(アルデスロイキン)のいずれかをマウスに投与した後のマウスTregの薬力学的分析の結果を示すプロットである。
【
図10B】
図10Bは、実施例7に記載されるように、RUR
20kD-IL-2組成物又は未修飾IL-2(アルデスロイキン)のいずれかをマウスに投与した後のマウスTregの薬力学的分析の結果を示すプロットである。
【
図11】
図11は、実施例8に詳述されるように、全身性エリテマトーデス(SLE)のマウスモデルで評価した場合のRUR
20kD-IL-2組成物(0.3mg/kg)を投与したマウスの経時的な尿タンパクレベル(g/L)のプロットである。
【
図12】
図12は、様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血(細胞/μl)サンプル中のCD4+FoxP3+CD25
brightTregの薬力学的分析の結果を示すプロットである。
【
図13】
図13は、実施例10に記載されるように、ヒト被験体への様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血(細胞/μl)サンプル中の総CD4+FoxP3+CD25+Tregの薬力学的分析の結果を示すプロットである。
【
図14A】
図14Aは、実施例10に記載されるように、ヒト被験体への様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血サンプルにおける、CD3細胞のパーセンテージとして表される、Tcon細胞集団、CD4+(
図14A)及びCD8+Tcon細胞(
図14B)のプロットである。
【
図14B】
図14Bは、実施例10に記載されるように、ヒト被験体への様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血サンプルにおける、CD3細胞のパーセンテージとして表される、Tcon細胞集団、CD4+(
図14A)及びCD8+Tcon細胞(
図14B)のプロットである。
【
図14C】
図14Cは、実施例10に記載されるように、ヒト被験体への様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血サンプルにおける、CD3細胞のパーセンテージとして表される、Tcon細胞集団、CD4+(
図14A)及びCD8+Tcon細胞(
図14B)のプロットである。
【
図14D】
図14Dは、実施例10に記載されるように、ヒト被験体への様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血サンプルにおける、CD3細胞のパーセンテージとして表される、Tcon細胞集団、CD4+(
図14A)及びCD8+Tcon細胞(
図14B)のプロットである。
図14C~
図14Dは、それぞれ、実施例10に記載されるように、ヒト被験体への様々な投与量のRUR
20kD-IL-2組成物の単回投与後の経時的(日)な末梢血サンプルにおける、CD8+T細胞(細胞/μl)及びKi67+CD8+T細胞(CD8のパーセンテージとして表される)の数を示すプロットである。
【
図15A】
図15Aは、フローサイトメトリーを用いて数えたCD25bright+/FoxP3+Tregのプロットである。
【
図15B】
図15Bは、フローサイトメトリーを用いて数えたCD25bright+/FoxP3+Tregのプロットである。実施例10に記載されるように、様々な投与量のRUR
20kD-IL-2の単回投与による治療前及び治療後の複数の時点で、ヒト被験体から全血を収集した。
図15Aは、CD25bright+/FoxP3+Tregの数(細胞/μl)に対する各投与量のピーク効果の中央値を示し、
図15Bは、治療後の経時的な(日)CD25bright+/FoxP3+Tregの絶対数を提供する。
【
図16A】
図16Aは、それぞれ、フローサイトメトリーを用いて数えた、CD4+及びCD8+T細胞のプロットである。
【
図16B】
図16Bは、それぞれ、フローサイトメトリーを用いて数えた、CD4+及びCD8+T細胞のプロットである。実施例10に記載されるように、様々な投与量のRUR
20kD-IL-2の単回投与による治療前及び治療後の複数の時点で、ヒト被験体から全血を収集した。結果を、各細胞集団の割合(%)、及び治療前の値に基づいて計算された倍率変化として表す。
【
図17】
図17Aは、Treg対Tconの用量反応比(
図17A)、並びにフローサイトメトリーを用いて数えたCD25bright+/FoxP3+Treg及びCD8+T細胞(
図17B)のプロットである。
図17Bは、Treg対Tconの用量反応比(
図17A)、並びにフローサイトメトリーを用いて数えたCD25bright+/FoxP3+Treg及びCD8+T細胞(
図17B)のプロットである。実施例10に記載されるように、様々な投与量のRUR
20kD-IL-2の単回投与による治療前及び治療後の複数の時点で、ヒト被験体から全血を収集した。結果を、各細胞集団の割合(%)、及び治療前の値に基づいて計算された倍率変化の比として表す。Tcon細胞はCD8+T細胞である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、RUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む、選択的Treg刺激因子組成物を提供する。概して、本明細書で提供される化学修飾されたIL-2コンジュゲート組成物は、そのアミノ基を介してIL-2に安定に共有結合した特定の優勢な数の分岐ポリエチレングリコール部分を有することを特徴とする。本明細書で提供される組成物は、主にジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2の定義された画分、並びにモノ-PEG化IL-2及び/又はテトラ若しくはより高PEG化されたIL-2の定義されたより少ない画分を有するIL-2PEGコンジュゲートの選択された混合物を含む。
【0010】
一態様では、本開示は、構造:
【0011】
【0012】
(式中、IL-2はインターロイキン-2であり、
nは各出現で独立して約3~約4000の整数である)
を有するPEG化IL-2を含む組成物を提供する。
【0013】
当該組成物の特定の実施形態では、IL-2はアルデスロイキンである。当該組成物の特定の実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約20000ダルトンである。当該組成物の更なる特定の実施形態では、組成物のPEG化IL-2コンジュゲートは、リジン31に付着したPEG部分を有する。
【0014】
一態様では、本明細書で提供されるのは、式:
【0015】
【0016】
(ここで、IL-2はインターロイキン-2、nは約3~約4000の整数、n’は2及び3である)のコンジュゲートを含む組成物である。
【0017】
式(I)のポリマー部分は、1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW10000カルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-ブタノイル(IL-2部分のアミノ窒素に共有結合により付着しているカルボニル基まで及びそれを含む)とも称される。式(I)による混合物の組成物は、一般に、本明細書ではRUR-IL2と称され、これは、ある範囲のPEGサイズを包含する。nの例示的な範囲は、例えば、約3~約4000に加えて、約5~2000、又は約10~1000、又は約10~750、又は約10~500、又は約10~400、又は約10~300、又は約10~250、又は約20~250を含む。幾つかの実施形態では、nは平均して約226である。
【0018】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、式:
【0019】
【0020】
(ここで、IL-2はインターロイキン-2、nは約3~約4000の整数、n’は1及び2及び3である)の組成物である。
【0021】
幾つかの実施形態では、式Iの選択的Treg刺激因子組成物は、分岐ポリエチレングリコール部分と安定に共有結合したIL-2Rを含み、IL-2部分あたりの分岐PEG部分の数(PEG化の程度)は、1-mer(モノ-PEG化)及び4-mer(テトラ-PEG化)を含む微量画分との混合物における2及び3-mer(ジ-及びトリ-PEG化)の主な分布である。したがって、幾つかの実施形態では、式Iによる組成物中の微量画分は、n’が1、4、5、又はそれより大きいが、11以下であるコンジュゲートを含むであろう。
【0022】
例えば、一実施形態では、選択的Treg刺激因子組成物は、以下の構造に包含される:
【0023】
【化4】
ここで、IL-2は、IL-2のアミノ酸残基の1つであり、構造(Ib)に示される「NH」は、当該IL-2残基のアミノ基であり、「n」は約3~約4000の整数であり、n’は2及び3である。
【0024】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2と称される選択的Treg刺激因子組成物及び関連組成物である。これらの組成物は、本明細書に記載されるように、合計約20kDの名目上の分子量を有する個々の共有結合性のPEGの付着を有するIL-2コンジュゲートを含む。好ましくは、IL-2部分はアルデスロイキンである。これらの組成物は、主にジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2の定義された画分、並びにモノ-PEG化IL-2及び/又はテトラ若しくはより高PEG化されたIL-2の定義されたより少ない画分を有するIL-2PEGコンジュゲートの選択された混合物を更に含む。RUR20kD-IL-2組成物の特定の調製物が、以下及び本出願を通して記載される。本明細書で使用される場合、式AのRUR20kD-IL-2の組成物、式BのRUR20kD-IL-2の組成物、式CのRUR20kD-IL-2の組成物、式DのRUR20kD-IL-2の組成物、及び/又は式EのRUR20kD-IL-2の組成物は、選択的Treg刺激因子RUR20kD-IL-2の特定の実施形態及び関連組成物を表し、これらの実施形態では、IL-2部分はアルデスロイキンである(本明細書に記載される)。任意に、これらの組成物は、その薬学的に許容可能な塩を含む。
【0025】
ある実施形態では、本明細書において提供されるのは、式AのRUR20kD-IL-2の組成物であり、組成物は、モルベースで、約5モル%以下のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約28モル%~約60モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約24モル%~約65モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約12モル%以下のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は約20000ダルトンである。好ましくは、式AのRUR20kD-IL-2の組成物は、80モル%以上の組み合わされたジ-及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。
【0026】
ある実施形態では、式BのRUR20kD-IL-2の組成物が本明細書において提供され、組成物は、モルベースで、約2.5~約4.5モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約35~約50モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約38~約46モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約3~約10モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は約20000ダルトンである。好ましくは、式BのRUR20kD-IL-2の組成物は、あわせた合計が約80~約95モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。
【0027】
ある実施形態では、式CのRUR20kD-IL-2の組成物が本明細書において提供され、組成物は、モルベースで、約2.8~約3.8モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は約20000ダルトンである。好ましくは、式CのRUR20kD-IL-2組成物は、あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。
【0028】
ある実施形態では、式DのRUR20kD-IL-2の組成物が本明細書において提供され、ここで、組成物は、モルベースで、約2.8~約3.8モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、当該組成物はリジンK7又はK8又はK31又はK75の1つに付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は約20000ダルトンである。好ましくは、式DのRUR20kD-IL-2組成物は、あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。
【0029】
ある実施形態では、式EのRUR20kD-IL-2の組成物が本明細書において提供され、ここで、組成物は、モルベースで、約2.8~約3.8モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、組成物はリジンK7に付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は約20000ダルトンである。好ましくは、式EのRUR20kD-IL-2組成物は、あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「RUR20kD-IL-2及び関連組成物」は、式AのRUR20kD-IL-2、及び/又は式BのRUR20kD-IL-2及び/又は式CのRUR20kD-IL-2、及び/又は式DのRUR20kD-IL-2、及び/又は式EのRUR20kD-IL-2、及び/又はこれらの組成物の薬学的に許容可能な塩のいずれか1つによる1つ以上の組成物を指す場合がある。実施例1及び/又は実施例1Aの調製物は、本開示の「RUR20kD-IL-2及び関連組成物」の非限定的な例である。
【0031】
本明細書で提供される選択的Treg刺激因子組成物の更なる実施形態:
本明細書で提供される組成物は、nが2に等しいコンジュゲート、例えば、上に示す1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)10kDカルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-ブタノイル構造をそれぞれ有する2つの分岐ポリエチレングリコールポリマーが組成物中の実質的に全てのジ-PEG化IL-2コンジュゲートについて同じ相対位置に付着しているジ-PEG化コンジュゲートを含み得る。或いは、ジ-PEG化コンジュゲートは、ジ-PEG化コンジュゲートの混合物、例えば、分岐ポリエチレングリコール部分の付着がIL-2上の2つの部位で起こり、特定の付着部位が組成物に含まれる全てのジ-PEG化IL-2コンジュゲートについて同じではない、ジ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み得る。したがって、かかるジ-PEG化組成物は、PEG化の程度、特に付着した分岐PEG部分の数(例えば、2-mer)に関しては均一であるが、IL-2分子上のPEG付着の位置に関しては不均一であり、この場合、PEG付着の位置異性体となる。
【0032】
組成物はまた、nが3に等しい単一のコンジュゲート、例えば、3つの分岐ポリエチレングリコール部分が、組成物中の実質的に全てのIL-2コンジュゲートについて同じ相対位置に付着しているトリ-PEG化コンジュゲートを含み得る。或いは、トリ-PEG化コンジュゲートは、トリ-PEG化コンジュゲートの混合物、例えば、分岐ポリエチレングリコール部分の付着部位が組成物に含まれるコンジュゲートについてIL-2上の異なる部位で生じるトリ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み得る。したがって、かかるトリ-PEG化組成物は、PEG化の程度、特に付着した分岐PEG部分の数に関しては均一であるが、IL-2分子上のPEG付着の位置に関しては不均一であり、この場合、PEG付着の位置異性体となる。
【0033】
組成物はまた、nが1に等しい単一のコンジュゲート、例えば、1つの分岐ポリエチレングリコール部分が、組成物中の実質的に全てのIL-2コンジュゲートについて同じ相対位置に付着しているモノ-PEG化コンジュゲートを含み得る。或いは、モノ-PEG化コンジュゲートは、モノ-PEG化コンジュゲートの混合物、例えば、分岐ポリエチレングリコール部分の付着部位が組成物に含まれるコンジュゲートについてIL-2上の異なる部位で生じるモノ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み得る。したがって、かかるモノ-PEG化組成物は、PEG化の程度、特に付着した分岐PEG部分の数に関しては均一であるが、IL-2分子上のPEG付着の位置に関しては不均一であり、この場合、PEG付着の位置異性体となる。
【0034】
IL-2分子上のPEG付着の特定の位置は、本明細書に記載の組成物においてより一般的である。例えば、リジンK7又はK8又はK31又はK75は、通常PEG化された部位である。RUR20kD-IL-2の組成物及び関連組成物は、リジンK7又はK8又はK31又はK75がPEG化部位であるコンジュゲートを含み得る。RUR20kD-IL-2の組成物及び関連組成物は、リジンK7又はK8又はK31又はK75がPEG化部位であるモノ-PEG化コンジュゲートを含み得る。RUR20kD-IL-2の組成物及び関連組成物は、リジンK7がPEG化部位であるモノ-PEG化コンジュゲートを含み得る。RUR20kD-IL-2の組成物及び関連組成物は、リジンK31がPEG化部位であるモノ-PEG化コンジュゲートを含み得る。
【0035】
幾つかの実施形態では、組成物は、あわせて考慮した場合、約20モル%以下、好ましくは約15モル%以下のコンジュゲートを含み、式(I)(式中、n’は、1、4、5、又は5より大きい整数から選択される整数である)に包含され、モルパーセンテージは総PEG-IL-2コンジュゲートに基づいている。幾つかの実施形態では、組成物は、あわせて考慮した場合、約10モル%以下のコンジュゲートを含み、式(I)(式中、n’は、1、4、5、又は5より大きい整数から選択される整数である)に包含され、モルパーセンテージは総PEG-IL-2コンジュゲートに基づいている。幾つかの追加の実施形態では、組成物は、約10モル%以下の単量体、好ましくは約7モル%以下の単量体、又は約5モルパーセント以下の単量体(すなわち、nが1に等しい場合の構造(I)に従う)を含む。幾つかの更なる実施形態では、組成物は、約10モル%以下の四量体、好ましくは約7モル%以下の四量体、又は約5モルパーセント以下の四量体を含む(すなわち、nが4に等しい場合の構造(I)に従う)を含む。特定の追加の実施形態では、組成物は、約10モル%以下の単量体及び約10モル%以下の四量体を含む。或いは、組成物は、約7モル%以下の単量体及び約7モル%以下の四量体を含むか、又は約5モル%以下の単量体及び約5モル%以下の四量体を含み得る。
【0036】
幾つかの実施形態では、組成物中のPEG化IL-2に関して、組成物は、一般に、以下の特徴のうちの1つ以上を満たすであろう:組成物中のコンジュゲートの少なくとも約80%は、ジ-PEG化コンジュゲート及びトリ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み、IL-2部分に付着した上記の式(I)に示す構造を有する2個及び3個の分岐ポリマーを有するものもある;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約85%は、ジ-PEG化コンジュゲート及びトリ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み、IL-2部分に付着した上記の式(I)に示す構造を有する2個及び3個の分岐ポリマーを有するものもある;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約90%は、ジ-PEG化コンジュゲート及びトリ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み、IL-2部分に付着した上記の式(I)に示す構造を有する2個及び3個の分岐ポリマーを有するものもある;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約95%は、ジ-PEG化コンジュゲート及びトリ-PEG化コンジュゲートの混合物を含み、IL-2部分に付着した上記の式(I)に示す構造を有する2個及び3個の分岐ポリマーを有するものもある;組成物中のコンジュゲートの約20%以下が、IL-2部分部分に付着した上記の式(I)に示される構造を有する1個又は4個以上の分岐ポリマーを有するであろう;組成物中のコンジュゲートの約15%以下が、IL-2部分部分に付着した上記の式(I)に示される構造を有する1個又は4個以上の分岐ポリマーを有するであろう;組成物中のコンジュゲートの約10%以下が、IL-2部分部分に付着した上記の式(I)に示される構造を有する1個、4個以上の分岐ポリマーを有するであろう;組成物中のコンジュゲートの約7%以下が、IL-2部分部分に付着した上記の式(I)に示される構造を有する1個又は4個以上の分岐ポリマーを有するであろう。
【0037】
幾つかの実施形態では、組成物は、あわせて考慮した場合、約20モル%以下、好ましくは約15モル%以下の組成物を含み、式(I)(式中、n’は、1、4、5、又は5より大きい整数から選択される整数である)に包含され、モルパーセンテージは総PEG-IL-2コンジュゲートに基づいている。幾つかの実施形態では、組成物は、あわせて考慮した場合、約10モル%以下のコンジュゲートを含み、式(I)(式中、n’は、1、4、5、又は5より大きい整数から選択される整数である)に包含され、モルパーセンテージは総PEG-IL-2コンジュゲートに基づいている。幾つかの追加の実施形態では、組成物は、約10モル%以下の単量体、好ましくは約7モル%以下の単量体、又は約5モルパーセント以下の単量体(すなわち、nが1に等しい場合の構造(I)に従う)を含む。幾つかの更なる実施形態では、組成物は、約10モル%以下の四量体、好ましくは約7モル%以下の四量体、又は約5モルパーセント以下の四量体を含む(すなわち、nが4に等しい場合の構造(I)に従う)を含む。特定の追加の実施形態では、組成物は、約10モル%以下の単量体及び約10モル%以下の四量体を含む。或いは、組成物は、約7モル%以下の単量体及び約7モル%以下の四量体を含むか、又は約5モル%以下の単量体及び約5モル%以下の四量体を含み得る。
【0038】
幾つかの更なる実施形態では、組成物は、ほぼ等モル量の
【0039】
【0040】
例えば、例示的な組成物は、ジ-PEG化種とトリ-PEG化種との近似比:1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3又は1:1.4のいずれか1つ以上を含み得る。かかる組成物のIL-2あたりのPEG部分の平均数は、例えば、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.6、2.7、2.8、2.9及び3から選択される。特定の実施形態では、IL-2あたりのPEG部分の平均数は、約2.5である。
【0041】
例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、約20モルパーセント(モル%)以下のIL-2コンジュゲートを含み、これは、あわせて考慮した場合、式
【0042】
【0043】
に包含され、
n’は1、4、5、又は5より大きい整数から選択される。
【0044】
しかしながら、幾つかの追加の実施形態では、組成物は、約15モルパーセント(モル%)以下のIL-2コンジュゲートを含み、これは、あわせて考慮した場合に、式
【0045】
【0046】
に包含され
1、4、5、又は5より大きい整数から選択されるn’を有する。
【0047】
更に幾つかの更なる実施形態では、組成物は、約10モルパーセント(モル%)以下のIL-2コンジュゲートを含み、これは、あわせて考慮した場合、式
【0048】
【0049】
に包含され、
1、4、5、又は5より大きい整数から選択されるn’を有する。
【0050】
上述の幾つかの追加の実施形態では、組成物は、n’が1に等しい約10モル%以下のIL-2コンジュゲートを含む。更に幾つかの他の実施形態では、組成物は、n’が1に等しい約7モル%以下のIL-2コンジュゲートを含む。
【0051】
更に幾つかの更なる実施形態では、組成物は、n’が1に等しい約5モル%以下のIL-2コンジュゲートを含む。更に幾つかの代替の実施形態では、組成物は、1に等しいn’を有する約5モル%未満のIL-2コンジュゲートを含む。
【0052】
幾つかの更なる実施形態では、上述のいずれか1つ以上の組成物に関して、組成物は4に等しいn’を有する約10モル%以下のIL-2コンジュゲートを含む。又は、他の幾つかの実施形態では、組成物は、n’が4に等しい約7モル%以下のIL-2コンジュゲートを含む。更に幾つかの更なる実施形態では、組成物は、4に等しいn’を有する約5モル%以下のIL-2コンジュゲートを含む。
【0053】
ほぼ等モル量の、
【0054】
【0055】
を含む組成物も本明細書で提供される。
【0056】
更に追加の実施形態では、式
【0057】
【0058】
(ここで、ジPEG/トリPEGコンジュゲートのモル比は、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3及び1:1.4から選択される)のIL-2コンジュゲートを含む組成物である。
【0059】
更に幾つかの更なる実施形態では、組成物は、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.6、2.7、2.8、2.9及び3からなる群から選択されるIL-2残基あたり(上記のような構造を有する)分岐ポリエチレングリコール部分の平均数を有する。特定の実施形態では、IL-2部分あたりの分岐ポリエチレングリコール部分(上記のような構造を有する)の平均数は約2.5である。前述の1つ以上に関連する幾つかの実施形態では、nの値は5~2000の範囲である。他の幾つかの実施形態では、nの値は10~1000の範囲である。更に幾つかの追加の実施形態では、nの値は10~750の範囲である。幾つかの実施形態では、nの値は、10~500、又は20~250の範囲である。
【0060】
本明細書で提供される実施形態におけるnの値は、各出現で独立して変化し得る。本明細書に記載の1つ以上の実施形態では、分岐ポリマーのポリエチレングリコールアームのそれぞれにおけるnの値は実質的に同じである。幾つかの更なる実施形態では、分岐ポリマーを含むポリマーアームのそれぞれにおけるnの値は、約170~285の範囲である。更に幾つかの更なる実施形態では、分岐ポリマーを含むポリマーアームのそれぞれにおけるnの値は、約204~約250の範囲である。1つ以上の特定の実施形態では、分岐ポリマーを含むポリマーアームのそれぞれにおけるnの値は、約226である。
【0061】
本明細書で提供される態様又は実施形態のいずれか1つ以上に関連する1つ以上の実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約250ダルトン~約90000ダルトンの範囲である。幾つかの他の実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約1000ダルトン~約60000ダルトンの範囲である。更なる実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約5000ダルトン~約60000ダルトンの範囲である。幾つかの他の実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約10000ダルトン~約55000ダルトンの範囲である。
【0062】
更に幾つかの追加の実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約15000ダルトン~約25000ダルトンの範囲である。更に1つ以上の更なる実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約18000ダルトン~約22000ダルトンの範囲である。更に幾つかの更なる実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約20000ダルトンである。
【0063】
追加の例示的な組成物は、分子の全体のポリマー部分が約250ダルトン~約90000ダルトンの範囲の名目上の平均分子量を有する、上記の式による組成物を含む。分子のポリマー部分の追加の適切な範囲には、約1000ダルトン~約60000ダルトン、約5000ダルトン~約60000ダルトンの範囲、約10000ダルトン~約55000ダルトン、約15000ダルトン~約50000ダルトンの範囲、及び約20000ダルトン~約50000ダルトンの範囲から選択される範囲の名目上の平均分子量が含まれる。
【0064】
ポリエチレングリコールポリマー部分の追加の例示的な重量平均分子量には、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900、約1000ダルトン、約1500ダルトン、約2000ダルトン、約2200ダルトン、約2,500ダルトン、約3000ダルトン、約4000ダルトン、約4400ダルトン、約4500ダルトン、約5000ダルトン、約5500ダルトン、約6000ダルトン、約7000ダルトン、約7500ダルトン、約8000ダルトン、約9000ダルトン、約10000ダルトン、約11000ダルトン、約12000ダルトン、約13000ダルトン、約14000ダルトン、約15000ダルトン、約20000ダルトン、約22,500ダルトン、約25000ダルトン約30000ダルトン、約35000ダルトン、約40000ダルトン、約45000ダルトン、約50000ダルトン、約55000ダルトン、約60000ダルトン、約65000ダルトン、約70000ダルトン、及び約75000ダルトンが含まれる。幾つかの好ましい実施形態では、分岐ポリエチレングリコールポリマーの重量平均分子量は、約20000ダルトンである。各分岐PEG部分が約20000ダルトンの名目上の分子量を有する幾つかの特定の実施形態では、組成物の結果として生じる分子量範囲は、組成物全体について特徴付けられる場合、約55kDa~75kDaである。
【0065】
本明細書で提供される選択的Treg刺激因子組成物の更なる実施形態は、その薬学的に許容可能な塩を含む。上記のように、IL-2コンジュゲート組成物は、薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。典型的には、かかる塩は、薬学的に許容可能な酸又は酸同等物との反応によって形成される。この点での「薬学的に許容可能な塩」という用語は、一般に、比較的非毒性の、無機及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクル又は剤形製造プロセスにおいてその場で(in situ)、又は本明細書に記載の長時間作用型インターロイキン-2組成物を適切な有機酸若しくは無機酸と別々に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、シュウ酸塩(oxylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩(glucoheptonate)、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩等が挙げられる。(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照されたい)。したがって、記載されている塩は、塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導することができ;又は酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸等の有機酸から調製することができる。本明細書で使用される場合、本明細書に記載のRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む「組成物(複数の場合もある)」という用語は、PEG化IL-2コンジュゲートの任意及び/又は全ての薬学的に許容可能な塩を含む。この説明は、「又はその薬学的に許容可能な塩」という用語が組成物の説明に追加されるかどうかにかかわらず適用される。
【0066】
使用方法の実施形態
未修飾のIL-2とは対照的に、本明細書に記載のRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物は、自己反応性免疫に関連する根底にある病理に対処し、並びに有益なT細胞機能をもたらす特定の機構を標的として、未修飾のIL-2の投与に比べて大幅な改善を提供する。既存の自己免疫疾患療法の欠陥に対処するため、本組成物は、投与時に持続的な曝露を提供し、独特の薬理学的プロファイルを有する。本発明の組成物は、in vivoで内因性Tregを選択的に拡大及び活性化し、従来のT細胞及び/又はナチュラルキラー細胞の拡大を制限して、それにより自己免疫疾患の治療のための優れたアプローチを提供する。
【0067】
より詳しくは、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含み、そのアミノ基を介してIL-2に安定に共有結合により連結した特定の優勢な数の分岐ポリエチレングリコール部分を有する選択的Treg刺激因子組成物は、低用量で投与された場合に特に効果的であることが発見された。本発明の組成物は、IL-2受容体に結合及びそれを活性化して、制御性T細胞(Treg)の細胞集団及び免疫抑制機能を優先的に増加させる一方で、Tエフェクター細胞(Teff)に対する刺激効果を最小限にするのに効果的である。げっ歯類、非ヒト霊長類研究、及びヒト臨床研究における本組成物(一般に本明細書ではRUR20kD-IL-2及び関連組成物、又は他の例ではRUR-IL-2組成物と称される)への持続的曝露は、同等の用量の未修飾IL-2では達成できなかったTreg対Teff応答の大きさ、持続時間、及び特異性提供するのに効果的であった。
【0068】
選択的Treg刺激因子組成物RUR20kD-IL-2の単一の低漸増皮下用量(補足例に記載)のヒトへの投与は、用量規制毒性、重篤な有害事象、又は臨床的に重大な異常をもたらさなかった。予備的な薬物動態分析は、組成物がほとんどの被験体で投与後約4~6日あたりで最大濃度に達し、投与後およそ2週間まで濃度の変化がほとんどなく、その後濃度がおよそ8~9日の半減期で低下したことを示した。予備的な薬力学的評定により、選択的長時間作用型IL-2受容体アゴニストTreg刺激因子組成物の投与により、循環CD4+FoxP3+CD25brightTregが用量依存的に増加することが明らかになり、すなわち、循環CD4+FoxP3+CD25brightTregの絶対数が持続的に増加し、投与後およそ20~25日までレベルがベースラインに戻らなかった。投与前と比較して、CD4+FoxP3+CD25brightTregの数に数倍(大きさは投与量に応じて)の平均増加があった。変化の大きさはCD4+FoxP3+CD25brightTregで観察されたものよりも小さかったものの、CD4+FoxP3+CD25+Tregの総個体数も増加した。最低用量では、治療を受けた被験体対プラセボ被験体のTregの数に変化はなかった。どの用量のRUR20kD-IL-2組成でもT細胞集団(CD4+、CD8+)の割合又は数の変化は観察されなかったことから、主な効果はTregで見られた。したがって、本発明の組成物及び方法は、in vivo/ex vivoバイオアッセイ(代替の化学修飾IL-2化合物と比較した場合でも)及びヒト研究においても、以下に説明するように、下記の項目にあるその他の特徴とともに、Tregの抑制能力を高めるのに驚くほど効果的である。
【0069】
本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物は、(とりわけ)自己免疫疾患及び障害を治療するのに有用である。本明細書に記載のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2組成物の投与によって治療することができる例示的な自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、全身性硬化症、強直性脊椎炎、移植片対宿主病、及び多発性筋炎等の全身状態;又は1型糖尿病、アディソン病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、白斑、悪性貧血、糸球体腎炎、重症筋無力症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、ピーナッツアレルギー、肺線維症等の臓器特異的自己免疫疾患が挙げられる。
【0070】
幾つかの実施形態では、治療される状態は全身性エリテマトーデス(SLE)である。全身性エリテマトーデス(SLE)は、主に中年の女性に発症する自己免疫性炎症性疾患である。SLEの特徴としては、例えば、皮膚の発疹、関節痛、再発性胸膜炎、及び腎臓疾患が含まれる。Tconと比較したTregの進行性恒常性不均衡は、SLEを含む多くの自己免疫疾患によって共有されている。まとめると、Treg恒常性をSLEの病理に関連付ける治療仮説、SLE患者における低用量IL-2の活性、及びIL-2と比較した本明細書に記載のRUR20kD-IL-2及び関連組成物の優れたTreg誘導特性は、SLE、並びに他の自己免疫疾患及び状態の治療における本発明のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2及び関連組成物の使用に対する十分な裏付けを提供する。1つ以上の更なる実施形態では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物を投与することによって状態を治療する方法であり、ここで、状態は、例えば、アレルギー、GVHD、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症及び乾癬からなる群から選択される。
【0071】
更に幾つかの更なる実施形態では、RUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物は、治療有効用量で被験体に投与された場合、従来のT細胞及びナチュラルキラー細胞よりも制御性T細胞を優先的に拡大及び活性化するのに効果的である。
【0072】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される治療有効量のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物を被験体に投与することによって、被験体における制御性T細胞対エフェクターT細胞の比率を増加させる方法である。
【0073】
前述の方法に関連する幾つかの実施形態では、制御性T細胞は、Foxp3+細胞及びCD25+細胞から選択される。前者の実施形態又は方法に関連する1つ以上の実施形態では、エフェクターT細胞は、CD4+細胞及びCD8+細胞から選択される。
【0074】
上記の方法又は関連する実施形態に関連する幾つかの更なる実施形態では、ベースラインと比較した場合の制御性T細胞の倍増は、in-vivoマウスモデルで評価した場合、少なくとも約2、又は少なくとも約4、又は更には少なくとも約6に達する。
【0075】
上記方法の幾つかの実施形態では、制御性T細胞数の増加は、投与後少なくとも3日間、ベースラインレベルを超えて持続する。幾つかの追加の実施形態では、制御性T細胞数の増加が、投与後少なくとも5日間、ベースラインレベルを超えて持続する。好ましくは、制御性T細胞数の増加が少なくとも7日間、ベースラインレベルを超えて持続する。
【0076】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、上記又は本明細書の他の場所に記載されているRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物の実施形態を含む治療有効量の選択的Treg刺激因子組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法である。
【0077】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式A、RUR20kD-IL-2 式B、RUR20kD-IL-2 式C、RUR20kD-IL-2 式D、及びRUR20kD-IL-2 式Eからなる群から選択される治療有効量の組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法である。
【0078】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式A、RUR20kD-IL-2 式B、及びRUR20kD-IL-2 式Cからなる群から選択される治療有効量の組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法である。
【0079】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のRUR20kD-IL-2 式Aの組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法である。
【0080】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のRUR20kD-IL-2 式Bの組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法である。
【0081】
更なる態様では、本明細書で提供されるのは、治療有効量のRUR20kD-IL-2 式Cの組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法である。
【0082】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式A、RUR20kD-IL-2 式B、RUR20kD-IL-2 式C、RUR20kD-IL-2 式D、及びRUR20kD-IL-2 式Eからなる群から選択される組成物の治療法における使用である。
【0083】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式Aの組成物の治療法における使用である。
【0084】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式Bの組成物の治療法における使用である。
【0085】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式Cの組成物の治療法における使用である。
【0086】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式Dの組成物の治療法における使用である。
【0087】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2 式Eの組成物の治療法における使用である。
【0088】
更なる態様では、本明細書で提供されるのは、自己免疫疾患の治療用薬剤の製造のためのRUR20kD-IL-2 式A、RUR20kD-IL-2 式B、RUR20kD-IL-2 式C、RUR20kD-IL-2 式D、及びRUR20kD-IL-2 式Eからなる群から選択される選択的Treg刺激因子組成物の使用である。
【0089】
より特定の実施形態では、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療は、治療有効量のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物を含む製剤の皮下投与を含む。例えば、SLEの代表的な動物モデルにおける生理学的免疫応答及び疾患進行の制御に対するRUR20kD-IL-2組成物誘導性Tregの効果を説明する実施例8に記載の結果を参照されたい。そこに記載されているように、RUR20kD-IL-2組成物は、腎傷害のバイオマーカー(SLEを患う患者の特徴の1つ)を正常なマウスで観察されるのとほぼ同じレベルまで抑制するのに効果的であった。
【0090】
本明細書に記載の治療方法を参照する実施形態では、かかる実施形態は、その治療で使用するための、或いはその治療で使用するための薬剤の製造で使用するための更なる実施形態でもある。本開示は更に、治療法に使用するための、本明細書に記載のその製剤を含む、組成物の実施形態のいずれか1つによる組成物を提供する。本開示は更に、自己免疫疾患の治療に使用するための、本明細書に記載のその製剤を含む、組成物の実施形態のいずれか1つによる組成物を提供する。
【0091】
一態様では、本開示は、治療法で使用するための、
構造:
【0092】
【0093】
(式中、IL-2はインターロイキン-2であり、
nは各出現で独立して約3~約4000の整数である)を有するPEG化IL-2を含む組成物を提供する。治療法で使用するための当該組成物の特定の実施形態では、IL-2はアルデスロイキンである。治療法で使用するための当該組成物の特定の実施形態では、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量は、約20000ダルトンである。治療法で使用するための当該組成物の更なる特定の実施形態では、組成物のPEG化IL-2コンジュゲートは、リジン31に付着したPEG部分を有する。治療法で使用するための当該組成物の特定の実施形態では、治療法は自己免疫疾患に使用するためのものである。
【0094】
用語
本開示の特定の特徴を説明及び主張する際に、以下の用語は、別段の指定がない限り、以下に記載される定義に従って使用される。
【0095】
本明細書で使用及び記載される場合、「選択的」という用語は、誘導された免疫細胞の特徴を具体化するin vivo免疫学的応答を指すか、又は幾つかの点では免疫学的シグナル応答を指すが、他の点ではそうではないことを指す。特に、Treg誘導及び/又は活性化に関する「選択的」は、ICOS又はKi67又はSTAT5等の活性化の1つ以上のマーカーによって示されるように、Treg細胞数の増加(CD25が高く、フローサイトメトリーによる合計)、及び/又はTreg活性化状態の増加を示す免疫応答を指し、及び/又は活性化は、下流の誘導免疫抑制応答及び/又は誘導免疫寛容応答を指し、同時に特定の他の免疫応答を欠いていることを指す。これに関して、「選択的Treg誘導」は、記載されているようにTregの免疫応答を指し、同時に、有意な及び/又は臨床的に重要なエフェクターT細胞及び関連する免疫学的活性化応答を欠いていることを指す。重要な及び/又は臨床的に重要なエフェクターT細胞及び関連する免疫学的活性化応答には、例えば、CD4陽性Tエフェクター細胞及び/又はCD8陽性Tエフェクター細胞の増殖、及び/又はICOS又はKi67等の活性化のマーカー、又は他の周知のエフェクター免疫応答が含まれる。他のエフェクター免疫応答シグナルには、「サイトカイン症候群」として知られるもの等、及び/又はIL-5、INFgamma、IL-6、IFNalpha、IL-17、IL-22、IL-19等の特定の炎症性サイトカインの上昇が含まれる場合がある。選択的Treg刺激は、平均Treg:Tcon比にも反映され得る。好ましくは、本明細書に記載のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物に応答して達成される平均Treg:Tcon比は、少なくとも5倍、好ましくは7倍、より好ましくは10倍以上である。
【0096】
本明細書で使用される場合、「PEG化の程度」という用語は、個々のアルデスロイキンポリペプチドのアミノ基(複数の場合もある)に共有結合により連結した安定なPEG置換基の数を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された数値のプラスマイナス10%等の記載された数値の合理的な付近を意味する。好ましくは、本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ、ほぼ」は、所与の量のプラスマイナス5%以内を意味する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「nは2及び3である」という用語は、IL-2コンジュゲートの混合物を指し、混合物は、本明細書に記載されるように、ジ-PEG化及びトリ-PEG化のコンジュゲートを含む。
【0099】
「制御性T細胞」又は「Treg」という用語は、CD4+FoxP3+CD25bright表現型等のT細胞を指す。(例えば、Jeffrey A.Bluestone and Qizhi Tang,Treg cells-the next frontier of cell therapy,Science,12 October 2018・Vol.362 Issue 6411,p154-155.を参照されたい)
「Tcon」又は「従来のT細胞」という用語は、aβT細胞受容体(TCR)、並びに共受容体CD4又はCD8を発現し、Tヘルパー細胞機能及び細胞傷害性T細胞エフェクター機能等の確立された適応免疫エフェクター機能を実行するTリンパ球を指す。例えば、TconはCD4+CD25-ナイーブな従来のT細胞を指す場合がある。「エフェクターT細胞(Teff)」は、当業者に知られているように、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞等のCD4+及びCD8+細胞エフェクター表現型を指す。「ナチュラルキラー細胞」、「K細胞」、又は「キラー細胞」としても知られる「NK細胞」は、リンパ球(白血球)の一種であり、自然免疫系の構成要素である。NK細胞は、腫瘍やウイルスに感染した細胞の宿主拒絶反応において主要な役割を果たす。
【0100】
「IL-2中間体」は、IL-2ポリペプチド、特にアルデスロイキンを指す。「RUR
20kD-IL-2」は、IL-2部分が本明細書に記載されるようなアルデスロイキンであり、PEG部分が本明細書に記載されるとおりであるIL-2 PEGコンジュゲートを指す。RUR
20kD-IL-2組成物を、一般的に化学名(1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)
10kDカルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-ブタンアミド)インターロイキン-2)と呼ぶこともできるが、これは組成を完全に説明しているわけではない。本明細書で使用される場合、アルデスロイキンは、大腸菌で発現される組換え非グリコシル化インターロイキン-2である125-L-セリン-2-133インターロイキン-2)のアミノ酸配列を指す。アルデスロイキンのアミノ酸配列を
図2に示す。当業者に知られている他の宿主系で発現されるアルデスロイキンもまた、本明細書で使用される用語の意味の範囲内である。
【0101】
本明細書で使用される場合、「IL-2」という用語は、ヒトIL-2活性を有する部分を指す。「IL-2部分」という用語は、分岐ポリエチレングリコール部分に付着する前のIL-2部分、並びに共有結合より付着した後のIL-2部分を指す。元のIL-2部分が、本明細書で提供される分岐ポリエチレングリコールポリマー等のポリエチレングリコールポリマーに付着される場合、IL-2部分は、ポリエチレングリコール部分への連結に関連する1つ以上の共有結合の存在のためにわずかに変化することが理解される。別の分子に付着したそのようなわずかに変化した形態のIL-2部分は、本明細書では、IL-2部分の「残基」と称される。IL-2の残基に関して「残基」という用語は、本明細書の式において示されるように、1つ以上の共有結合性の付着部位で、ポリエチレングリコール等のポリマーへの共有結合による付着の後に残るIL-2分子の部分を意味する。通常、付着部位は、IL-2のリジンの11個のアミン基の1つである。
【0102】
未修飾のIL-2がポリエチレングリコール等のポリマーに付着している場合、ポリマー(複数の場合もある)への連結に関連する1つ以上の共有結合の存在により、IL-2がわずかに変化することが理解されよう。分岐PEG部分等の別の分子に付着したIL-2のこのわずかに変化した形態は、場合によってはIL-2の「残基」と称されることもあれば、単に「IL-2」等と称されることもあり、かかるポリマーコンジュゲートに含まれるIL-2は、1つ以上の共有結合の存在のためにわずかに変化し、それぞれが分岐したPEG部分をIL-2に連結しているということが理解される。「より高PEG化されたIL-2コンジュゲート」という用語は、テトラPEGコンジュゲート又はペンタPEGコンジュゲート又はPEG部分が最大11個のコンジュゲートを指す。好ましくは、「より高PEG化されたIL-2コンジュゲート」は、テトラPEGコンジュゲート又はペンタPEGコンジュゲートを指す。
【0103】
例えば、国際特許公開第2012/065086号公報に記載されている配列番号1~配列番号4のいずれか1つに対応するアミノ酸配列を有するタンパク質は、それに実質的に相同な任意のタンパク質又はポリペプチドと同様に、例示的なIL-2タンパク質である。実質的に相同であるという用語は、特定の対象配列、例えば、変異配列が、1つ以上の置換、欠失又は付加によって参照配列から変化しており、その正味の効果が参照配列と対象配列との間で有害な機能的非類似性をもたらさないことを意味する。本発明の目的のため、95パーセントを超える相同性、同等の生物学的活性(ただし、必ずしも同等の生物学的活性の強度ではない)、及び同等の発現特性を有する配列は、実質的に相同であるとみなされる。相同性を決定する目的で、成熟配列のトランケーションは無視されるべきである。本明細書で使用される場合、「IL-2」という用語は、例えば、部位特異的突然変異誘発によって、又は偶発的に突然変異によって改変されたかかるタンパク質を含む。これらの用語はまた、1個~6個の追加のグリコシル化部位を有する類縁体、追加のアミノ酸(複数の場合もある)が少なくとも1つのグリコシル化部位を含むタンパク質のカルボキシ末端に少なくとも1つの追加のアミノ酸を有する類縁体、及び少なくとも1つのグリコシル化部位を含むアミノ酸配列を有する類縁体を含む。この用語には、天然部分と組換え生成部分の両方が含まれる。更に、IL-2は、ヒト由来、動物由来、及び植物由来であり得る。1つの例示的なIL-2は、アルデスロイキンと称されるヒト組換えIL-2である(
図2を参照)。本明細書に記載の長時間作用型IL-2Rアゴニストへの言及は、その薬学的に許容可能な塩形態を包含することを意味する。
【0104】
本明細書に記載のRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物は、ある意味で長時間作用型薬剤である。本明細書で提供されるRUR-IL-2又はRUR20kD-IL-2関連組成物に関して、長時間作用型は、修飾されていない同じIL-2Rアゴニスト(例えば、修飾されていないアルデスロイキン又は他の適切なインターロイキン-2配列)の血清中の循環半減期よりも延長された循環半減期を有するかかる組成物を指す。例えば、コンパレータアゴニストは、ポリエチレングリコール部分等の1つ以上の水溶性ポリマー部分へと共有結合により付着することによって修飾されず、同じ薬物動態分析によって同じ被験体にタンパク質等価用量のIL-2Rアゴニストを投与したものとして比較される。
【0105】
本明細書で使用される場合、「PEG」又は「ポリエチレングリコール」は、任意の水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含することを意味する。特に明記しない限り、「PEGポリマー」又はポリエチレングリコールは、実質的に全ての(好ましくは全ての)単量体サブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものであるが、ポリマーは、例えば、複合化のために、別個のエンドキャッピング部分又は官能基を含んでもよい。本開示で使用するためのPEGポリマーは、末端酸素(複数の場合もある)が例えば、合成変換中に変位されているかどうかに応じて、「-(CH2CH2O)n-」又は「-(CH2CH2O)n-1CH2CH2-、」の2つの構造のうちの1つを含む。上記のように、PEGポリマーの場合、変数(n)は約3~4000の範囲であり、末端基及び全体的なPEGの構造は変化する場合がある。好ましくは、PEGは、本明細書に詳細に記載されるような特定の意味を有する。
【0106】
「分岐」は、ポリマーの形状又は全体的な構造に関して、分岐点又は中央の構造的特徴から延びる2つ以上のポリマー「アーム」又は「鎖」を有するポリマーを指す。一例として、例示的なPEG試薬、mPEG2-ブタン酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)カルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-スクシンイミジルブタノエート)は、それぞれがカルバメート結合(~NHC(O)O~)を介して中央のプロピル基の1-及び3-炭素にそれぞれ共有結合により付着し、そこからオキシブタノエートスクシンイミジルエステルが伸びる2つの直鎖のPEG鎖で構成される分岐ポリエチレングリコールポリマーである。
【0107】
PEG等の水溶性ポリマーとの関連での分子量は、数(名目上の)平均分子量又は重量平均分子量のいずれかとして表すことができる。特に明記しない限り、本明細書における分子量への全ての言及は、名目上の平均分子量を指す。数平均と重量平均の両方の分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、又は他の液体クロマトグラフィーの手法を使用して測定することができる。また、分子量の平均値を決定するための末端基分析若しくは束一的性質(凝固点降下、沸点上昇、又は浸透圧等)の測定等の使用、又は重量平均分子量を決定するための光散乱技術、超遠心分離若しくは粘度測定の使用等の分子量値を測定する他の方法を使用することもできる。ゲルろ過クロマトグラフィーは、分岐ポリマーの平均分子量を決定するために頻繁に使用される。PEGポリマーは、典型的には多分散性であり(すなわち、ポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は等しくない)、好ましくは約1.2未満、より好ましくは約1.15未満、更により好ましくは約1.10未満、更により好ましくは約1.05未満、及び最も好ましくは約1.03未満の低い多分散性値を有する。
【0108】
「安定な」連結又は結合は、水中で実質的に安定である、すなわち、生理学的条件下で長期間にわたって感知できる程度に加水分解を受けない化学結合を指す。加水分解的に安定な連結の例としては、限定されるものではないが、一般に、炭素-炭素結合(例えば、脂肪族鎖)、エーテル、アミド、アミン等が挙げられる。一般に、安定した連結とは、生理学的条件下で1日あたり約1~2%未満の加水分解速度を示す結合である。代表的な化学結合の加水分解速度は、ほとんどの標準的な化学の教科書に記載されている。
【0109】
本明細書で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」には、文脈で別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。
【0110】
「実質的に」又は「本質的に」とは、別段の記述がない限り、ほぼ完全に又は完全に、例えば、所与の量の95%以上を意味する。
【0111】
調製及び実施例
調製及び実施例は、限定ではなく例示として記載されており、当業者によって様々な修正を加えることができることを理解されたい。RUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む、選択的Treg刺激因子組成物を調製する方法は、本明細書に記載され、及び/又は当業者に知られている。試薬及び開始物質は、容易に入手可能であるか、又は当業者によって容易に合成され得る。これらの方法の工程に適した条件はよく知られており、緩衝液及び試薬の適切な置換は当業者の範囲内である。更に、当業者は、幾つかの状況では、組成物が製造される工程及び順序が変更されてもよく、これは当業者によって十分に理解されることを理解するであろう。同様に、調製物は、必要に応じて又は所望に応じて、様々な周知の手法によって単離及び/又は精製され得ることが理解されるであろう。
【0112】
IL-2中間体の調製:
IL-2部分は、非組換え法及び/又は組換え法から誘導することができ、本開示は、この点に関して限定されない。IL-2部分は、ヒト由来、動物由来、及び植物由来であり得る。例えば、生物学的システムからIL-2を単離すること、或いは培養培地からIL-2を得ることが可能である。例えば、米国特許第4,401,756号及びPaulyら(1984)J.Immunol Methods 75(1):73-84に記載されている手順を参照されたい。
【0113】
in vitro、並びに原核生物及び真核生物の宿主細胞において組換えポリペプチドを産生及び発現するための方法は、当業者によく知られている。例えば、米国特許第5,614,185号を参照されたい。IL-2部分を、細菌[例えば大腸菌、例えば、Fischerら(1995)Biotechnol.Appl.BioIL-2m.21(3):295-311を参照されたい]、哺乳動物[例えば、Kronmanら(1992)Gene 121:295-304を参照されたい]、酵母[例えば、Pichia pastoris、例えば、Morelら(1997)Biochem.J.328(1):121-129を参照されたい]、及び植物[例えば、Morら(2001)Biotechnol.Bioeng.75(3):259-266を参照されたい]の発現系において発現させることができる。タンパク質を調製するための組換えベースの方法は異なる場合があるが、組換え方法は通常、所望のポリペプチド又はフラグメントをコードする核酸を構築すること、核酸を発現ベクターにクローニングすること、宿主細胞(例えば、植物、細菌、酵母、トランスジェニック動物細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞若しくはベビーハムスター腎臓細胞等の哺乳動物細胞)を形質転換すること、及び核酸を発現させて、所望のポリペプチド又はフラグメントを産生することを含む。タンパク質精製の様々な方法を用いて、本開示の組成物を精製することができ、かかる方法は当技術分野で知られており、例えば、Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,3rd Edition,Springer,NY(1994)に記載されている。組換えポリペプチドの同定及び精製を容易にするために、エピトープタグ又は他の親和性結合配列をコードする核酸配列を、コード配列とインフレームで挿入又は付加することができ、それにより、所望のポリペプチド及び結合に適したポリペプチドで構成される融合タンパク質を生成する。
【0114】
IL-2活性を有するタンパク質を発現するために使用されるシステムに応じて、IL-2部分は、非グリコシル化又はグリコシル化され得て、これらのいずれかを使用することができる。すなわち、IL-2部分は、グリコシル化されていなくてもよく、IL-2部分は、グリコシル化されていてもよく、1つ以上の好ましい実施形態では、IL-2部分は、グリコシル化されていない。IL-2部分はまた、ポリマーのアミノ酸の側鎖内の原子への容易な付着を提供するために、例えば、リジン、システイン及び/又はアルギニン等の1つ以上のアミノ酸残基を含む及び/又はそれを置換するように有利に修飾され得る。IL-2部分の置換の例は、米国特許第5,206,344号公報に記載されている。更に、IL-2部分は、天然に存在しないアミノ酸残基を含むように修飾することができる。アミノ酸残基及び天然に存在しないアミノ酸残基を付加するための手法は、当業者によく知られている。
【0115】
更に、IL-2部分は、有利には官能基の付着を含むように修飾することができる(官能基含有アミノ酸残基の付加による場合を除く)。例えば、IL-2部分は、チオール基を含むように修飾することができる。更に、IL-2部分はN末端アルファ炭素を含むように修飾することができる。更に、IL-2部分は、1つ以上の炭水化物部分を含むように改変することができる。更に、IL-2部分を修飾してアルデヒド基を含めることができる。更に、IL-2部分を修飾してケトン基を含めることができる。本開示の幾つかの実施形態では、IL-2部分は、チオール基、N末端アルファ炭素、炭水化物、アルデヒド基及びケトン基のうちの1つ以上を含むように修飾されないことが好ましい。
【0116】
例示的なIL-2部分は、文献に記載されており、例えば、米国特許第5,116,943号、同第5,153,310号、同第5,635,597号、同第7,101,965号及び同第7,567,215号、並びに米国特許出願公開第2010/0036097号公報及び同第2004/0175337号公報に記載されている。好ましいIL-2部分は、
図2に提供されるアミノ酸配列を有し、本明細書で使用されるアルデスロイキンのアミノ酸配列を表す。
【0117】
場合によっては、IL-2部分は「単量体」形態であり、対応するペプチドの単一の発現が別個のユニットに組織化される。他の例では、IL-2部分は、タンパク質の2つの単量体形態が(例えば、ジスルフィド結合によって)互いに会合している「二量体」(例えば、組換えIL-2の二量体)の形態である。例えば、組換えヒトIL-2の二量体との関連で、二量体は、各単量体のCys125残基から形成されるジスルフィド結合によって互いに会合された2つの単量体の形態であり得る。
【0118】
任意の所与のペプチド若しくはタンパク質部分、又は組成物について、その部分がIL-2活性を有するかどうかを判断することが可能である。in vitroでIL-2活性を決定するための様々な方法が当技術分野及び本明細書に記載されている。例示的なアプローチは、本明細書に記載のCTTL-2細胞増殖アッセイである。例示的なアプローチは、Moreauら(1995)Mol.Immunol.32:1047-1056)にも記載されている。簡単に説明すると、非特異的結合アッセイでは、提案されるIL-2部分又は組成物を、IL-2の受容体を持つ細胞株の存在下で4℃で1時間プレインキュベートさせる。その後、125I標識IL-2を系内で4℃で3時間インキュベートする。データは、野生型IL-2に対する提案されるIL-2部分活性の%阻害能力として表される。電位測定法、分光光度法、クロマトグラフィー及び放射測定法を含む、当技術分野で知られている他の方法論もまた、IL-2機能を評定するために使用することができる。
【0119】
RUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む、選択的Treg刺激因子組成物の調製:
RUR20kD-IL-2の例示的な選択的Treg刺激因子組成物は、一般に、約9の高pHのビシン溶液中で、精製IL-2をモル過剰(IL-2に関してモル当量の過剰)のPEG試薬、mPEG2(20kD)-ブタン酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(又は他の適切に活性化されたエステル)(1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW10000カルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-スクシンイミジルブタノエートと反応させることによって調製される。反応物を、一般に穏やかな条件下、例えば、約20℃~約65℃、又は約20℃~約40℃、又は周囲温度若しくは室温で約30分~約5時間、又は約30分~4時間、又は約30分~2時間、又は約30分~1時間混合する。反応は、酢酸等の適切な酸の添加による低pHへの酸性化によってクエンチされる。
【0120】
次に、PEG化されたrIL-2反応生成物は、イオン交換クロマトグラフィー等の適切な方法によって精製される。例えば、イオン交換クロマトグラフィーを使用する場合、RUR20kD-IL-2組成物は、樹脂に結合し、次いで、塩化ナトリウム勾配等の適切な勾配で溶出される。次いで、クロマトグラフィー生成物プールを濃縮し、例えば、タンジェント流ろ過(TFF)を使用して、適切な製剤バッファー(例えば、スクロースを含む酢酸ナトリウムバッファー)にダイアフィルトレーションする。
【0121】
必要に応じて、生成物プールを、適切なカラム(例えば、Amersham Biosciences又はVydac等の企業から市販されているC18カラム又はC3カラム)を使用する逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用する逆相クロマトグラフィーによって、又はイオン交換カラム、例えば、Amersham Biosciencesから入手可能なSepharose(商標)イオン交換カラムを使用するイオン交換クロマトグラフィーによって位置異性体へと更に分離することができる。どちらのアプローチも、同じ分子量を有するポリマー活性作用物質の異性体(すなわち、位置アイソフォーム)を分離するために使用することができる。
【0122】
RUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物は、本明細書に記載の及び/又は分析HPLC、SDS-Page、LCMS、並びにCTLL-2増殖及びin vivoでのTreg誘導等のバイオアッセイを含む当業者に既知の様々な分析及びバイオアッセイの手法によって特性評価され得る。
【0123】
配合:
本明細書で提供される更に1つ以上の実施形態は、RUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物であり、本明細書に記載のIL-2コンジュゲート組成物、及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0124】
「薬学的に許容可能な賦形剤」又は「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書に記載の組成物に含めることができ、被験体に重大な有害な毒物学的影響を引き起こさない成分を指す。本開示の組成物は、好ましくは、静脈内、筋肉内又は皮下を含む非経口投与等、組成物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組成物として配合される。そかかる医薬組成物及びそれを調製するためのプロセスは、当技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(D.B.Troy,Editor,21st Edition,Lippincott,Williams&Wilkins,2006)を参照されたい)。任意に、本明細書で提供される組成物は薬学的に許容可能な賦形剤を更に含むことができ、例示的な賦形剤としては、限定されるものではないが、炭水化物、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、バッファー、酸、塩基、アミノ酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。組成物中の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性及び組成物の特定の必要性に応じて変化するであろう。通常、任意の個々の賦形剤の最適量は、実験、すなわち、様々な量の賦形剤(低から高までの範囲)を含む組成物を調製し、安定性及び他のパラメータを調べ、次いで、重大な有害作用を伴わずに最適な性能が得られる範囲を決定することによって決定される。糖等の炭水化物、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖、及び/又は糖ポリマー等の誘導体化糖が賦形剤として存在し得る。特定の炭水化物の賦形剤としては、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等の単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等の二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等の多糖;及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール、シクロデキストリン等のアルジトール等が挙げられる。賦形剤はまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせ等の無機塩又はバッファーを含み得る。組成物はまた、微生物の増殖を防止又は抑止するための抗菌剤を含むことができる。本開示の1つ以上の実施形態に適した抗菌剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール(thimersol)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。抗酸化剤も組成物中に存在することができる。酸化防止剤は酸化を防ぐために使用され、それによってコンジュゲート又は製剤の他の成分の劣化を防ぐ。本開示の1つ以上の実施形態で使用するのに適した抗酸化剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。界面活性剤は、賦形剤として存在することができる。例示的な界面活性剤としては、「Tween 20」及び「Tween 80」等のポリソルベート、並びにF68及びF88(これらは両方ともニュージャージー州マウントオリーブのBASFから入手可能)等のプルロニック;ソルビタンエステル;レシチン及び他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(ただし、好ましくはリポソーム形態ではない)等のリン脂質、脂肪酸及び脂肪酸エステル等の脂質;コレステロール等のステロイド;並びにEDTA等のキレート剤;亜鉛及び他のかかる適切な陽イオンが挙げられる。酸又は塩基は、組成物中の賦形剤として存在することができる。使用できる酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるそれらの酸が挙げられる。適切な塩基の例としては、限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム(potassium fumerate)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられる。1つ以上のアミノ酸は、本明細書に記載の組成物中に賦形剤として存在することができる。この点に関する例示的なアミノ酸には、アルギニン、リジン、及びグリシンが含まれる。追加の適切な薬学的に許容可能な賦形剤としては、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,7th ed.,Rowe,R.C.,Ed.,Pharmaceutical Press,2012に記載されているものが挙げられる。本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物の好ましい製剤は、1.5mg/mlタンパク質当量、10mM酢酸ナトリウム、110mM塩化ナトリウム、2%スクロース(重量/体積)、pH5.0である。RUR20kD-IL-2組成物を、滅菌済みで供給されすぐに使用できる、シリコンライナー付きのポリプロピレンキャップを備えた適切な容量の滅菌済みの使い捨てポリカーボネートボトルに保管することができる。
【0125】
投薬:
本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物の投薬量は、幾つかの要因に応じて変化するが、組成物が単位用量容器(例えば、バイアル)に保管される場合、治療上有効な用量であることが最適である。更に、製剤は注射器に収容することができる。治療有効用量は、自己免疫症状及び/又は免疫抑制の緩和、及び/又は寛容の誘導等の本明細書に記載の臨床的に望ましいエンドポイントをもたらす量を決定するために、本明細書に提供されるRUR20kD-IL-2実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物の漸増量の反復投与によって実験的に決定され得る。
【0126】
好ましい投与量は、被験体において従来のT細胞及びナチュラルキラー細胞よりも制御性T細胞を優先的に拡大及び活性化するのに有効な低投与量である。制御性T細胞の活性化を、様々なアプローチで測定することができる。例えば、IL-2依存性T細胞プロセスにおけるSTAT5の不可欠な役割を考えると、リンパ球におけるSTAT5の増加の検出は、Treg活性化の重要なマーカーとして利用することができる。表現型的には、Tregの活性化は、細胞表面IL-2Rα(CD25)の増加、及び/又はTreg系統の主要制御因子であるタンパク質フォークヘッドボックスP3(FoxP3)の細胞内発現の増加、及び/又は細胞増殖に関連するタンパク質Ki67の発現増加を通じて、フローサイトメトリーによって測定することもできる。まとめると、これらのマーカーはTreg細胞の機能と関連しており、自己免疫疾患においてかかる細胞ではしばしば調節不全になっている。本明細書において、Treg細胞の誘導及び活性化の好ましい検出は、フローサイトメトリーによるものである。Tregの機能性は、従来のT細胞の増殖を阻害する能力を測定するex vivo抑制アッセイによっても評定することができる。Tregの動員及び活性化の結果は、抗原駆動型炎症モデルを使用してin vivoで直接測定することもできる。
【0127】
本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2実施形態及び関連組成物の投与は、典型的には注射によるものである。肺、鼻、頬、直腸、舌下及び経皮等の他の投与様式も企図されている。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、動脈内、腫瘍内、リンパ管内、腹腔内、心臓内、髄腔内、及び筋肉内の注射、並びに点滴注入を含む。特定の実施形態では、注射は皮下である。例えば、患者への投与は、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物と希釈剤とを含む組成物の注射によって達成することができる。可能な希釈剤に関して、希釈剤は、例えば、注射用静菌水、水中の5%デキストロース、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、乳酸リンガー溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水及びそれらの組み合わせから選択され得る。当業者は、2つの所与の薬理学的成分が所与の製剤において一緒に適合性があるかどうかを試験することによって判断することができる。患者に投与するための例示的な組成物、例えば、皮下製剤は、例えば、治療有効量の本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物、水、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びスクロースを含む。液体組成物は、約4.5~7.5、又は約4.5~6の範囲のpHを有する。
【0128】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む、選択的Treg刺激因子組成物は固体形態である。好ましい固体形態は、例えば、5重量パーセント未満の水、又は好ましくは2重量パーセント未満の水を含有する、固体の乾燥形態のものである。固体形態は、一般に、水性希釈剤での再構成に適している。好ましい固体製剤は、約0℃~10℃の温度で密封容器に保管された場合、少なくとも約24ヶ月間安定である。
【0129】
本明細書で使用される場合、「患者」又は「被験体」という用語は、自己免疫疾患等、本明細書で提供される組成物の投与によって予防又は治療することができる状態に罹患している、又はその傾向がある生物を指し、ヒト及び動物の両方を含む。被験体としては、限定されるものではないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)が挙げられ、好ましくはヒトである。特定の実施形態では、患者、好ましくはヒトは、本開示の組成物の投与から利益を得るであろう、自己免疫状態等の疾患、障害又は状態を更に特徴とする。
【0130】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療する、治療すること」という用語は、これらの状態の症状及び合併症と闘う又は緩和する目的で、本開示の組成物の投与が示される状態を有する患者の管理及びケアを指す。治療には、症状若しくは合併症の発症を予防するため、症状若しくは合併症を軽減するため、又は疾患、状態若しくは障害を排除するために、それを必要とする患者に本開示の組成物を投与することが含まれる。例えば、自己免疫障害。好ましくは、治療は、免疫抑制及び/又は寛容をもたらすために、それを必要とする患者に本開示の組成物を投与することを含む。治療される患者は動物であり、好ましくはヒトである。本明細書で使用される投与には、患者が組成物を消費するとき、及び/又は患者が組成物を消費するように指示されるときのいずれかが含まれる。
【0131】
「薬学的に有効な量」及び「薬理学的に有効な量」及び「治療有効量」及び「生理学的に有効な量」という句は、本明細書で同じ意味で使用され、血流又は標的組織内の物質の望ましいレベルを達成するのに必要とされる、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2及び関連組成物の量を指す。正確な量は、例えば、治療される特定の状態、意図される患者集団、個々の患者の考慮事項、投与される治療用組成物の成分及び物理的特性等の多くの要因に依存するであろう。
【0132】
本開示の化合物を含む医薬組成物を、かかる治療を必要とする患者に非経口的に投与することができる。非経口投与は、シリンジ、任意にペン状シリンジ又は機械的駆動注射器による皮下、筋肉内又は静脈内の注射によって実施され得る。或いは、非経口投与は、注入ポンプによって行われてもよい。本開示の実施形態は、それを必要とする患者に、治療有効量の本開示の組成物及び1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を投与することを含む、患者への投与に適した医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物を、当技術分野で周知の医薬品用の従来の賦形剤を使用する様々な手法のいずれかによって調製することができる。(Remington’s Pharmaceutical Sciences,21st Edition,University of the Sciences in Philadelphia,Philadelphia,PA,USA(2006))。
【0133】
本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物の用量と並んで、方法及び組成物と関連する投与計画は、被験体の年齢、体重及び全身状態と並んで、治療されている状態の種類及び状況、医療専門家の判断、並びに投与される特定の選択的Treg刺激因子組成物に応じて変化する。
【0134】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者又は被験体への単回又は複数回用量の投与時に、研究者、獣医、医師若しくは他の臨床医が求めている、組織、器官、動物、哺乳動物若しくはヒトの生物学的若しくは医学的応答、又はそれらに対する所望の治療効果を誘発する本開示の組成物の量又は用量を指す。好ましくは、有効量は、患者又は被験体への単回又は複数回用量の投与時に、投与前レベルの少なくとも10倍の選択的Treg細胞増加を誘導する、本開示の組成物の量又は用量を指す。用量は、より高い初期負荷用量、それに続くより低い用量を含み得る。1つ以上の例では、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2及び関連組成物を含む治療有効量の選択的Treg刺激因子組成物は、IL-2の量で表される以下の範囲:約0.10~約700μg/kg、約0.20~約650μg/kg、約0.30~約600μg/kg、約1.0~約550μg/kg、約2.0~約500μg/kg、約10~約450μg/kg、約25~約400μg/kg、約50~約350μg/kg、又は約100~約300μg/kgの1つ以上に包含される量であり、前述の範囲のそれぞれ及び全てからの前述の開始値及び終了値のありとあらゆる組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、例えば、自己免疫疾患、又は被験体における従来のT細胞及びナチュラルキラー細胞よりも制御性T細胞の優先的な拡大及び活性化から利益を得ることができる疾患若しくは状態を治療するために、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物は、用量、例えば500μg/kg以下の用量で投与される。本開示の好ましい投与計画は、RUR20kD-IL-2及び関連組成物、特に式A~Eの組成物が、2週間に1回、3~24μg/kgの用量で投与される場合である。本開示の別の好ましい用量レジメンは、RUR20kD-IL-2及び関連組成物、特に式A~Eの組成物が、2週間に1回、3~18μg/kgの用量で投与される場合である。本開示の別の好ましい投与計画は、RUR20kD-IL-2及び関連組成物、特に式A~Eの組成物が、2週間に1回、3~12μg/kgの用量で投与される場合である。本開示の別の好ましい投与計画は、RUR20kD-IL-2及び関連組成物、特に式A~Eの組成物が、2週間に1回、3~6μg/kgの用量で投与される場合である。本開示の別の好ましい投与計画は、RUR20kD-IL-2及び関連組成物、特に式A~Eの組成物が、2週間に1回3μg/kgの用量で投与される場合である。
【0135】
本明細書で提供される組成物は、免疫系の恒常性能力を回復するのに効果的であり、例えば、Treg機能不全が自己免疫疾患、アレルギー及び移植片拒絶等の役割を果たす疾患にプラスの影響を与える能力を有する。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、RUR20kD-IL-2実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物を投与することにより、in vivoで内因性Tregを選択的に拡大する方法である。例示的な投薬範囲としては、例えば、約100μg/kg~約500μg/kg、又は約150μg/kg~約450μg/kg、又は約175μg/kg~約400μg/kg、又は更には約175μg/kg~約350μg/kgが挙げられる。好ましい用量及び投与計画は、本明細書に提供される実施例に記載されている。Teff細胞及びNK細胞の刺激を最小限に抑えながら、Treg細胞を最大限に増幅するには、適切な用量が効果的であり、このようなものは、フローサイトメトリー分析のために末梢血を収集することによってモニタリングして、Treg細胞、エフェクターCD4+及びCD8+T細胞、及びNK細胞の出現率を特定することができる。これらの数値に基づいて、投与量を適切に調整することができる。
【0136】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療効果)を提供するように調整され得る。静脈内(i.v.)若しくは非静脈内投与、局所若しくは全身、又はそれらの組み合わせの投与スケジュールは、通常、単回ボーラス投与量又は連続注入から、1日あたり(例えば、4時間~6時間ごと)の複数回投与までの範囲であるか、又は治療する医師及び患者の状態によって指定される。RUR20kD-IL-2の実施形態及び本明細書で提供される関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物を投与する頻度及びスケジュールに関して、当業者は、適切な投与計画を決定することができる。例えば、治療サイクルにおいて、臨床医は、単回用量として、又は一連の用量として、(例えば、数日又は数週間にわたって)、組成物を投与することを決定することができる。組成物の長時間作用性に基づいて、通常、比較的まれにしか投与されないことが好ましい(例えば、3週間に1回、2週間に1回、8日~10日に1回、毎週1回等)。治療過程に関連する例示的な期間としては、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月、約23ヶ月、約24ヶ月、約30ヶ月、約3年、約4年及び約5年が挙げられる。本明細書に記載の治療方法は、通常、患者のケアを監督する臨床医が治療方法が効果的であるとみなす限り、すなわち、患者が治療に反応している限り、又は状態の関連する症状が治まるまで継続される。治療法が有効であることを示す非限定的なパラメータには、CD25+Treg及びFoxP3+Treg等の制御性T細胞の数の増加、及び/又はNK細胞、並びにCD4+及びCD8+エフェクター細胞の数の減少の1つ以上が含まれる
本明細書で提供される組成物は、治療有効用量で被験体に投与された場合、CD4+細胞及びCD8+細胞等のエフェクターT細胞に対するFoxP3+細胞及びCD25+細胞等の制御性T細胞の比率を増加させるのに有用である。例えば、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物の投与は、ベースラインと比較され、例えば本明細書に記載されるようなin-vivoマウスモデルにおいて評価される場合、制御性T細胞の少なくとも2倍の増加をもたらすのに効果的であり得る。この方法はまた、幾つかの実施形態では、ベースラインと比較され、例えば本明細書に記載されるようなin-vivoマウスモデルにおいて評価される場合、制御性T細胞の少なくとも4倍の増加をもたらすのに有効であり得る。場合によっては、制御性T細胞数の増加は、投与後少なくとも3日間、又は更には投与後少なくとも5日間、ベースラインレベルを超えて持続する。
【0137】
添付の実施例に示されるように、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物は、適切な投与量範囲内で投与される場合、Tエフェクター細胞に対して最小限の刺激効果を持ちながら、制御性T細胞の細胞集団及び免疫抑制機能を優先的に増加させるのに効果的である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物は、同等のネイティブIL-2の用量では達成できないTreg対Tef応答の大きさ、持続時間及び特異性を提供するための持続的曝露を達成することができる。
【実施例】
【0138】
前述の説明及び以下の実施例は、本明細書で提供される開示の範囲(複数の場合もある)を説明することを意図しており、限定するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点、及び修正は、本開示が属する技術分野の当業者には明らかであろう。
【0139】
材料及び方法
アルデスロイキン(デス-アラニル-1、セリン-125ヒトインターロイキン-2、
図2を参照されたい)と同一のアミノ酸配列を有する組換えヒトIL-2をクローン化し、発現させ、使用して、ここではRUR
20kD-IL-2と称される例示的な選択的Treg刺激因子組成物を調製する。この配列は、天然の成熟ヒトIL-2配列からアミノ酸#1(アラニン)を除外しており、アミノ酸#125にシステインからセリンへのアミノ酸変異がある。配列の第1のアミノ酸は、細菌を直接発現させるためのメチオニンである(シグナルペプチドはコードされていない)。発現すると、N末端メチオニンは宿主メチオニンアミノペプチダーゼによって除去される。単一のジスルフィド結合が、アミノ酸58位と105位とのシステイン間に形成される。このタンパク質は大腸菌に由来するため、グリコシル化されていない。一部の記載において、複合化されたIL-2組成物は、幾つかの点で(1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)カルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-ブタンアミド)インターロイキン-2)として記載する場合があり、この命名法はPEG化パターン又は混合物を完全に説明するものではないことに留意されたい。
【0140】
ポリエチレングリコール試薬、mPEG2(20kD)-ブタン酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)10kDカルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-スクシンイミジルブタノエート(本明細書ではmPEG2-ru-20K NHSとも称される)は、米国特許第7,887,789号公報の実施例2に記載されているとおりに調製される。外観:白色から灰白色の粒状粉末;分子量(Mn)18~22kDa(ポリマーの多分散性による)。1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)10kDカルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-スクシンイミジルブタノエートの構造を以下に示す。
【0141】
【0142】
特に明記しない限り、本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2の実施形態及び関連組成物を含む選択的Treg刺激因子組成物の濃度、量及び投薬レベルはタンパク質ベースで報告され、タンパク質成分が寄与する質量のみをカウントし、PEG部分が寄与するものではない。タンパク質ベースを使用することにより、計算に使用される有効なRUR20kD-IL-2組成分子量は、rIL-2タンパク質のみがカウントされるため、様々な程度のPEG化を有する複合化されたrIL-2分子の混合物でも15.3kDaである。
【0143】
RUR20kD-IL-2関連組成物は、リジン基で共有結合した複数のポリエチレングリコール(PEG)部分に複合化されたrhIL-2(アルデスロイキン配列)からなるPEG化コンジュゲート混合組成物である。rhIL-2分子あたりのPEG部分の数(PEG化の程度)は、1分子(ジ又はトリ-PEG化)あたり主に2及び3のPEG部分の分布であり、少数種は1 PEG(モノ-PEG化)及び4 PEG(テトラ-PEG化)及び/又はより高PEG化された分子を含み、rhIL-2あたり平均約2.5のPEG部分をもたらす。各PEG部分の名目上の分子量は20kDaであり、rhIL-2の分子量は15.3 kDaであるため、名目上のRUR20kD-IL-2の分子量は65kDaになる。
【0144】
実施例1
RUR20kD-IL-2及び関連組成物の調製
mPEG2-ru-20K NHSのストック溶液(100mg/ml)を2mM HCl中に調製する。IL-2の典型的なPEG化反応を次のように行う:IL-2(アルデスロイキン)ストック溶液(1.3mg/ml)115mLを250mLのプラスチックボトルに移し、0.5Mビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)15mL、pH9.2及び水0.5mLをIL-2の溶液に加える。PEG化を、19.5mLのmPEG2-ru-20K NHSストック溶液をIL-2含有溶液に滴下することで開始する。得られた反応混合物は、1mg/mlのIL-2、50mM ビシン、及び10モル当量のmPEG2-ru-20K NHS(タンパク質に関して)を含み、pHは8.7である。穏やかに攪拌しながら、反応を周囲温度で40分間進行させる。酢酸2.2mLを加えて反応物のpHを4.1に下げることにより、反応を停止する。
【0145】
得られたIL-2コンジュゲート生成物を、SPFFセファロースを使用する陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製する。コンジュゲーション反応が完了したら、反応混合物を20倍量の10mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.0)に対して透析する。透析したサンプルを水で1:4に希釈し、SPFFセファロース樹脂を充填したカラムにロードする。陽イオン交換クロマトグラフィーに使用されるバッファーは次のとおりである:バッファーA:10mM酢酸ナトリウム(pH4.0)、及びバッファーB:10mM酢酸ナトリウム、1.0M塩化ナトリウム(pH4.0)。サンプルをロードする前に、樹脂をバッファーBで洗浄し、バッファーAで平衡化する。ロード後、樹脂を3カラム容量のバッファーAで洗浄する。5カラム容量に0~50%バッファーB、1カラム容量に25%~50%バッファーB、1カラム容量に50%バッファーB、1カラム容量に50%~100%、及び1カラム容量に100%バッファーBからなる4段階の勾配を用いて、28cm/時の流速で複合化された及び複合化されていないIL-2を溶出する。2及び3(すなわち、二量体及び三量体)のPEG化度(dP)を有するIL-2コンジュゲートを含む画分を、SDS-PAGEによって識別し、プールする。
【0146】
二量体及び三量体を含むプールされた画分は、撹拌限外ろ過セル(Amicon)及び窒素ガスを使用して濃縮する。最終生成物の組成を、移動相:A、水中0.09%TFA、及びB、アセトニトリル中0.04%TFAを使用するRP-HPLCによって決定する。Intrada WP-RP C18カラム(3×150mm)を流速0.5mL/分、カラム温度50℃で使用する。精製されたコンジュゲート混合物は、約4.6%(モル)のモノ-PEG化rIL-2、約47.7%(モル)のジ-PEG化rIL-2、約42.9%(モル)のトリ-PEG化rIL-2、及び約4.8%(モル)のテトラPEG化IL-2を含むと決定される。溶出時間がx軸に示されている
図1を参照されたい。最終生成物の混合物の平均PEG化度は、2.48(すなわち、約2.5)であると決定される。最終生成物の混合物には遊離IL-2は検出されない。この調製物は、式AのRUR
20kD-IL-2の組成物の例である。
【0147】
実施例1-A
RUR20kD-IL-2及び関連組成物の代替の調製
所望のRUR20kD-IL-2及び関連組成物の調製は、rhIL-2タンパク質プロセス中間体の発酵及び精製、rhIL-2とPEG試薬開始物質mPEG2-ru-20K NHSとの複合化、特定の程度のPEG化を有するIL-2コンジュゲート画分の精製、並びに本明細書に記載の実施形態による所望の分布のRUR20kD-IL-2組成物を生成するためのPEG化rhIL-2コンジュゲートの最終の製剤化からなる。
【0148】
所望のRUR20kD-IL-2組成物は、1,3-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)10kDカルバモイル)-2-プロパノキシ)-4-スクシンイミジルブタノエート(本明細書ではmPEG2-ru-20K NHSとも称される)をインターロイキン-2(IL-2)タンパク質(アルデスロイキン配列)のリジン残基と反応させることで調製され、PEG化IL-2コンジュゲートの分布をもたらす。この生成物は、主にジ-PEG化及びトリ-PEG化種を含み、モノ-PEG化及び/又はテトラ-PEG化種の量は少ない。
【0149】
凍結したIL-2開始物質(-70℃で保管した10mM酢酸、5%トレハロース、pH4.5バッファー中の精製組換えIL-2(アルデスロイキン配列))を室温まで解凍する。PEG反応物であるmPEG2-ru-20K NHS(粉末)を、室温で約90g/Lの2mM HCl溶液に添加することにより可溶化し、最低15分間攪拌する。次いで、溶液を反応容器に充填する。解凍したIL-2を反応容器に加え、水で適切に希釈した後、0.75MビシンpH9.7バッファーを加える。反応混合物中の最終的なIL-2濃度はおよそ1.0g/Lであり、ビシン濃度は目標のpH8.7に達するようにおよそ50mMである。一般に、タンパク質をPEG化するためのPEG:rhIL-2の質量比は、pH8.5~9.5のビシン緩衝液中で約10:1~13:1である。mPEG2-ru-20K NHS溶液の添加が完了してから測定する場合、反応液を22℃で40分間撹拌を続けながらインキュベートする。インキュベーション期間の終わりに、1N酢酸を添加して反応を停止し、pHを急速に下げ、すぐに追加の1N酢酸を使用してpH4.0まで更に段階的に滴定する。クエンチした反応液を水を加えて10倍に希釈する。希釈したクエンチした反応液を0.22μmフィルターでろ過し、粗生成物を提供する。
【0150】
次に、SP SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow陽イオン交換クロマトグラフィーを粗生成物に対して行い、PEG化反応画分を部分的に分離する。SP SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを平衡化し、フィードを室温で約5分の滞留時間でロードした後、ロードバッファーで5CV(カラム容量)で洗浄する。PEG化rhIL-2は樹脂に結合するが、遊離PEGは洗い流される。次いで、生成物を、10mM酢酸ナトリウムpH4.0バッファーバックグラウンド中の0~500mM塩化ナトリウムによる線形勾配溶出を使用して溶出する。それぞれ0.15CVの画分を収集し、溶出を約1CVから開始する。280nmでの吸光度がピーク最大値の5%未満になったとき、画分の収集を終了する。各画分におけるPEG化画分濃度(すなわち、モノ-PEG化IL-2(単量体)、ジ-PEG化IL-2(二量体)、トリ-PEG化IL-2(三量体)、テトラ-PEG化IL-2(四量体)等)を280nmの波長での吸光度によって測定する。PEG化画分の分布は、本明細書に記載されているようにRP-HPLCによって測定され、モノ-PEG、ジ-PEG、トリ-PEG、及びそれ以上の成分を含む画分が特定され、必要な画分の再プールを決定するために使用されて本明細書で提供されるRUR20kD-IL-2組成物、特に式A~式Eに記載される、標的PEG化画分の分布プロファイルを有する組成物を生成する。特定された組成物の選択された画分のアリコート、例えば、ジ-PEG-IL-2、及びトリ-PEG-IL-2及び/又はモノ-PEG以上のPEGは、本明細書に提供される標的プロファイルを達成するように計算され、次いで、必要に応じて再プールして、PEG化画分の望ましい分布を持つ生成物を有するRUR20kD-IL-2組成物を得る。或いは、精製スキームを考案することができ、それにより、溶出及び収集は、再プールする必要なしに、本明細書に記載の実施形態による所望のプロファイルを提供し得る。次いで、所望の(及び/又は再プールされた)クロマトグラフィー精製した調製物を濃縮し、タンジェント流ろ過(TFF)を用いて10mM酢酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、2%重量/体積スクロース、pH5.0にダイアフィルトレーションして、RUR20kD-IL-2組成物の原薬の最終目標濃度1mg/ml(タンパク質ベース)を達成する。
【0151】
再プールされた及び/又は標的の生成物を分析し、組成分布を、PEG画分のプロファイルを評定するために、RP-HPLCを含む本明細書に記載される方法によって検証する。式A~式EのRUR20kD-IL-2組成物に関する本明細書の仕様に従った組成物の調製物を、以下の表1に収載される1番~4番の製品バッチの例によって示す。属性のアッセイは当業者に知られており、及び/又は実施例1-B~実施例1-Iに記載されているか、そうでなければ本明細書に記載されている。適切な履歴標準サンプル組成物を確立し、後続の調製での比較に使用する。
【0152】
表1.RP-HPLC及びSEC-HPLCによるRUR20kD-IL-2組成物の異なるバッチからのサンプルの実例分析の要約
【0153】
【0154】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、モルベースで、1%未満の遊離の非結合IL-2(より好ましくは、検出可能な遊離IL-2なし)、5%以下のモノ-PEG化IL-2、28%~約60%のジ-PEG化IL-2、約24%~約65%のトリ-PEG化IL-2、12%以下のより高PEG化されたIL-2種、及び80%以上の組み合わされたジ-PEG化IL-2及びトリ-PEG化IL-2種を含有する。
【0155】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、例えば、0.5モル%未満の遊離IL-2、約2.5~約4.5モル%のモノ-PEG化IL-2、約35~約50モル%のジ-PEG化IL-2、約38~約46モル%のトリ-PEG化IL-2、約3~約10モル%のより高PEG化されたIL-2種、及びあわせた合計が約80~約95モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2を含有する。
【0156】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、例えば、モルベースで5%以下のモノ-PEG化IL-2と、28%~約60%のジ-PEG化IL-2と、約24%~約65%のトリ-PEG化IL-2と、12%以下のより高PEG化されたIL-2種を含有する。好ましくは、組成物は、80%以上の組み合わされたジ-及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。
【0157】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、例えば、約2.5~約4.5モル%はモノ-PEG化IL-2を含み、約35~約50モル%はジ-PEG化IL-2を含み、約38~約46モル%はトリ-PEG化IL-2を含み、約3~約10モル%はより高PEG化されたIL-2種を含む。好ましくは、組成物は、あわせた合計が約80~約95モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2を含む。
【0158】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、例えば、約2.8~約3.8モル%はモノ-PEG化IL-2を含み、約44~約48モル%はジ-PEG化IL-2を含み、約41~約44モル%はトリ-PEG化IL-2を含み、約7~9モル%はより高PEG化されたIL-2種を含む。好ましくは、組成物は、あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2を含む。
【0159】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、例えば、約2.8~約3.8モル%はモノ-PEG化IL-2を含み、約44~約48モル%はジ-PEG化IL-2を含み、約41~約44モル%はトリ-PEG化IL-2を含み、約7~約9モル%はより高PEG化されたIL-2種を含み、ここで、当該組成物は、リジンK7又はK8又はK31又はK75の1つに付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含む。好ましくは、組成物は、あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2を含む。
【0160】
幾つかの実施形態では、RUR20kD-IL-2組成物生成物は、例えば、約2.8~約3.8モル%はモノ-PEG化IL-2を含み、約44~約48モル%はジ-PEG化IL-2を含み、約41~約44モル%はトリ-PEG化IL-2を含み、約7~約9モル%はより高PEG化されたIL-2種を含み、ここで、当該組成物は、リジンK7に付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートを含む。好ましくは、組成物は、あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2を含む。
【0161】
実施例1-B
逆相高速液体クロマトグラフィーによるRUR20kD-IL-2組成物の純度及び特性評価
ダイオードアレイ検出器(215nmのUV)を備えたAgilent 1200シリーズ機器を用いて、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用し、RUR20kD-IL-2組成のサンプルのクロマトグラフィー純度及び同一性を評定する。使用するカラムは、ACE 3 Phenyl-300カラム(Mac-Mod Analytical Inc.)(又は他の適切なカラム)で、溶離液の流量は0.6mL/分である。RP-HPLCは、2つの移動相:(1)移動相A、0.1%ギ酸水溶液、及び(2)移動相B、0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液の混合物を含む勾配を使用し行われる。線形勾配は、60%移動相A/40%移動相Bから40%移動相A/60%移動相B、20%移動相A/80%移動相B、60%移動相A/40%移動相Bの範囲であった。希釈剤/配合バッファーの成分は、10mM酢酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、2%スクロース、pH5.0である。
【0162】
凍結したRUR20kD-IL-2組成の標準物質及びサンプルを解凍し、製剤バッファーで1.0mg/mlに希釈する。製剤バッファーの少なくとも1つのブランク対照を、注入によって最初にRP-HPLCに供し、RUR20kD-IL-2組成物に関連するピークの分析に干渉しないことを確実にする。次に、RUR20kD-IL-2組成物標準物質又は対照を5回注入した。次に、RUR20kD-IL-2組成物サンプルを注入する。RUR20kD-IL-2組成物標準物質/対照を、6回のサンプル注入ごとに、注入順序の最後に注入する。
【0163】
ジ-PEG化(ジ-PEG)及びトリ-PEG化(トリ-PEG)RUR20kD-IL-2組成物を含む最初の5つの標準物質注入の保持時間の%相対標準偏差(RSD)は2.0%以下である。ジ-PEG及びトリ-PEG成分の全ての標準物質RUR20kD-IL-2組成物注入の%RSD面積パーセントは5.0%以下である。標準及びサンプルの注入からの全てのRUR20kD-IL-2組成物のピークが統合されている。具体的には、1.0mg/mlの濃度のRUR20kD-IL-2組成物の場合、0.5%の検出限界(LOD)を超えるジ-PEG及びトリ-PEG RUR20kD-IL-2組成物種、及び0.3%LODを超えるrhIL-2ピークがそれぞれ統合されている。RUR20kD-IL-2の濃度が1.0mg/mlの場合、定量限界(LOQ)はジ-PEG及びトリ-PEG RUR20kD-IL-2種で1.0%、rhIL-2で0.5%である。分析結果を下記表2(6サンプル)及び表3(12サンプル)に示す。
【0164】
表2:RP-HPLCで分析した6つのRUR20kD-IL-2組成物の複製サンプルからのモノ-PEG、ジ-PEG、トリ-PEG、テトラ-PEG及びペンタ-PEG画分の面積パーセント
【0165】
【0166】
表3:RP-HPLCで分析した12個のRUR20kD-IL-2組成物の複製サンプルからのモノ-PEG、ジ-PEG、トリ-PEG、テトラ-PEG及びペンタ-PEG画分の面積パーセント
【0167】
【0168】
実施例1-C
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーによるRUR20kD-IL-2組成物の純度及び特性評価
ダイオードアレイ検出器(280nmのUV)及びYarraSEC-2000カラム(Phenomenex)を備えたAgilent1200シリーズ機器を用いて、0.225mL/分の溶離液流量で、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用し、RUR20kD-IL-2組成物の純度を決定し、特性評価をすることもできる。移動相は、アセトニトリルを含む80:20の体積比の0.2M酢酸アンモニウム(pH5.5)である。希釈剤/製剤バッファーは、10mM酢酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、2%スクロースを含み、pHは5.0であった。
【0169】
凍結したRUR20kD-IL-2組成の標準物質及び分析サンプルを解凍し、製剤バッファーで1.0mg/mlに希釈する。サンプルは、溶液中5℃で最大5日間安定である。
【0170】
手順として、製剤バッファーの少なくとも1つのブランク対照を、注入によって最初にRP-HPLCに供し、RUR20kD-IL-2に関連するピークの分析に干渉しないことを確実にする。次に、RUR20kD-IL-2組成物、システム適合性溶液を注入して、凝集体又は高分子量種がテトラ-PEG RUR20kD-IL-2画分から確実に分離されるようにする。続いて、RUR20kD-IL-2組成物の標準物質又は対照を5回注入する。次に、RUR20kD-IL-2組成物サンプルを注入する。RUR20kD-IL-2組成物標準物質/対照を、6回のサンプル注入ごとに、注入順序の最後に注入する。
【0171】
最初の5回の標準物質注入について、ジ-PEG及びトリ-PEG RUR20kD-IL-2フラクションの保持時間の%RSDは2.0%以下である。全ての標準物質の注入に対するジ-PEG及びトリ-PEG RUR20kD-IL-2の%RSD面積パーセントは5.0%以下である。標準及びサンプルの注入からの全てのRUR20kD-IL-2画分のピークが統合されている。具体的には、1.0mg/mlの濃度のRUR20kD-IL-2組成物の場合、1.0%の検出限界(LOD)を超えるジ-PEG及びトリ-PEG RUR20kD-IL-2画分が統合される。1.0mg/mlの濃度のRUR20kD-IL-2の場合、3.0%LOQを超えるジ-PEG及びトリ-PEG RUR20kD-IL-2のみが報告された。
【0172】
RUR20kD-IL-2組成物の複製サンプルの分析を以下の表4及び表5に示し、表中にRUR20kD-IL-2組成物のモノ-PEG、ジ-PEG、トリ-PEG、テトラ-PEG、及びペンタ-PEG画分のピーク面積を示す。
【0173】
表4:SEC-HPLCによるRUR20kD-IL-2のモノ-PEG、ジ-PEG、トリ-PEG、テトラ-PEG、及びペンタ-PEG成分の%ピーク面積
【0174】
【0175】
表5:SEC-HPLCによるRUR20kD-IL-2組成物サンプルのモノ-PEG、ジ-PEG、トリ-PEG、テトラ-PEG、及びペンタ-PEG画分の%ピーク面積
【0176】
【0177】
RP-HPLCとSEC-HPLCの両方によるRUR20kD-IL-2組成物の様々なサンプルの代表的な分析の要約を表1に示す。わかるように、RUR20kD-IL-2組成物調製物は、PEG化画分の混合物(すなわち、モノ-PEG化、ジ-PEG化、トリ-PEG化、テトラ-PEG化、ペンタ-PEG化等)に関して、良好なバッチ間の一貫性を実証する。
【0178】
実施例1-D
SDS-Page
SDS-PAGEを、RUR20kD-IL-2組成物の同一性の確認に利用する。RUR20kD-IL-2組成物のサンプル、分子量マーカー、及び適切なRUR20kD-IL-2組成物の標準物質を、NuPAGE Bis-Trisゲルにロードし、ゲル内を泳動させる。電気泳動後、GelCodeTM Blue Safe Protein Stainを使用してゲルを染色する。ゲル泳動のバンドパターンを標準物質と比較し、サンプルに新たなバンドがないことを確認すると、サンプルの同一性が確認される。最も強い2つのバンドは、トリ-PEG化画分とジ-PEG化画分に対応する。レーンの一番上のバンドはより高PEG化された変種に対応し、最も低いバンドはモノ-PEG化変種に対応する。
【0179】
実施例1-E
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用したIL-2Rαβに対する親和性、及びヒトIL-2Rαβα複合体を発現するU-2 OS細胞における効力。
【0180】
RUR20kD-IL-2組成物の結合親和性を、偏光検出を備えたBiacoreX-100表面プラズモン共鳴を使用して決定する。この手法では、Biacore CM5センサーチップの表面をN-ヒドロキシスクシンイミド1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(NHS EDC)の1:1複合体で活性化して、活性NHSエステルを生成する。酢酸ナトリウム中のヤギ抗ヒトFc抗体、pH4.0バッファーがチップの表面に共有結合により付着している。残留NHSエステルを1Mエタノールアミンでクエンチする。IL-2-Rα-Fc(ヒトIL-2Rα-Fcキメラ;Symansis)とIL-2Rβ-Fc(ヒトIL-2Rβ-Fcキメラ;Symansis)の1:1混合物を、0.1%BSAを含むHBS-EPバッファー(1mM HEPES、pH7.4、15mM NaCl、0.3mM EDTA、0.0005%体積/体積界面活性剤P20)を使用してチップに捕捉する。RUR20kD-IL-2組成物を0.1%BSAを含むHBS-EPバッファーで連続希釈し、センサーチップ上に注入する。動的結合親和性を、3分間の溶液(kon)、続いて3分間洗浄(koff)の適用中によって測定する。koffとkonの比率を、動的結合親和性KDを計算するために使用する。RUR20kD-IL-2組成物の2つのバッチの3回の分析の結果を表6に示す。結合親和性及び結合率は、2つの原薬ロットで一貫している。
【0181】
表6:SPRを使用したIL-2Rαβに対するRUR20kD-IL-2組成物の結合親和性
【0182】
【0183】
或いは、PathHunter(登録商標)プラットフォームは、凍結保存されたすぐに使用できる細胞アッセイ形式であり、培養細胞よりも堅牢で一貫性のある細胞応答を提供する。酵素(β-ガラクトシダーゼ)フラグメント補完アッセイ(カナダのDiscoverX CorporationによるPathHunter(登録商標)プラットフォーム)を使用して、薬物/リガンド-受容体相互作用を測定する。RUR20kD-IL-2組成物の効力を、ヒトIL-2Rαβα複合体を発現するU-2 OS細胞で測定する。アッセイの基礎は、単独では不活性である開裂酵素(split enzyme)のフラグメントを利用する。2つの酵素フラグメントがIL-2Rβ又はIL-2Rγサブユニットの細胞内ドメインに融合し、受容体とのリガンド相互作用により、受容体サブユニットが近接して酵素活性を回復する。基質を加えると、酵素が作用して発光シグナルを生成する。酵素フラグメント補完による受容体の活性化を、サンプル及び標準を細胞と約6時間インキュベートした後に測定する。RUR20kD-IL-2組成物は、高親和性ヘテロ三量体αβγIL-2受容体(IL-2R)により低用量のシグナル伝達を提供する。
【0184】
実施例1-F
RUR20kD-IL-2組成物のPEG化部位占有率
2つのロットに由来するRUR20kD-IL-2組成物のPEG化部位占有率を、ペプチドマッピングによるRUR20kD-IL-2組成物とrhIL-2との直接比較によって特性評価する。RUR20kD-IL-2消化物において、リジン含有ペプチドはPEG化され得て、標準rhIL-2消化物中の同じペプチドと比較して、より少ない存在量を有する対応する天然のリジン含有ペプチドによって反映され得る。したがって、PEG化部位の占有率は、分析されたRUR20kD-IL-2消化物中の天然ペプチドの存在量の減少に基づいて計算することができる。更に、代用物質のペプチドマッピングを、部位占有率の追加確認に使用できる。
【0185】
一般的に、この分析は次のように行うことができる。直接ペプチドマッピング比較研究では、RUR20kD-IL-2組成及びrhIL-2標準対照サンプルをGluC及びGluC/トリプシンで同時に消化した後、LC-UV/MS/MS分析を行ってペプチドの同定と存在量を提供する。RUR20kD-IL-2組成とrhIL-2とのペプチドマッピングの比較を用いて、PEG化部位の占有率を決定する。
【0186】
簡単に説明すると、リジンを含まない一般的なペプチドを、RUR20kD-IL-2組成とrhIL-2分析の両方で標準(複数の場合もある)として選択する。ペプチドの相対強度は、それらの標準(複数の場合もある)に対する正規化である。リジンによるネイティブペプチド(RR)の相対存在量の減少は、ペプチドの相対強度によって計算される(式1)。リジンでのPEG化部位の占有率は、リジンを含むペプチドによる平均RRである。
【0187】
式1:
【0188】
【0189】
ペプチド相対強度(Pep/Ref)=UVピーク面積(ペプチド)/UVピーク面積(標準ペプチド)
RUR20kD-IL-2組成の代用物として使用される物質は、単分散4kD PEGのrhIL-2のリジンへの複合化による結合生じる生成物である。RUR20kD-IL-2組成物のPEG化プロファイルを模倣するため、代用物を同じ複合化リンカーを使用して調製し、複合化反応を、RUR20kD-IL-2組成物を調製するために使用したのと同じ反応条件下で実施した。LC MS/MSベースのGluCマッピング及び代用物のトリプシンマッピングは、PEG化されたリジンを識別し、RUR20kD-IL-2を裏付ける情報を提供する。
【0190】
RUR20kD-IL-2(GMPロット)のGluCマップは、rhIL-2の95%の配列包括度を有する。RUR20kD-IL-2のGluCマップをrhIL-2と直接比較すると、RUR20kD-IL-2の11個のリジンのうち4個の相対的定量が得られ(表7を参照されたい)、ここで、リジン7及びリジン8はペプチドマップで1つの部位としてカウントした。GluCマップの残りのリジンを含むペプチドは、部位差別化(site differentiation)のないPEG化の証拠を示している。GluC/トリプシンマップでリジンを含むペプチドを更にトリプシンで切断すると、K31、K34、K42及びK47でPEGが占有される。RUR20kD-IL-2及びrhIL-2によるGluC/トリプシンマッピングクロマトグラムを比較すると、これらのペプチドが大幅に減少していることがわかる(表7を参照されたい)。K48部位のPEG化占有率は、酵素による切断の誤り(mis-cleavage)が原因であり、トリプシン/GluCマップでは利用できない(N/A)。
【0191】
4k PEG化rhIL-2代用物のペプチドマッピングにより、4k PEG標識リジンを含むペプチドが高い質量精度(5ppm未満)で同定される。RUR20kD-IL-2及び4k PEG化rhIL-2代用物の直接ペプチドマッピングの結果をあわせると、K7、K31及びK75が主要なPEG化部位であることがわかる(表8を参照されたい)。RUR20kD-IL-2組成物のあまり優勢でないPEG化部位は、K8、K34、K42、K47、K53及びK63である可能性がある。K48はPEG化されている可能性があり、K96は未定である。
【0192】
PEG化部位の占有率は、2番目のRUR20kD-IL-2組成GMP調製物、及び開発ロットで同等である(表7を参照されたい)。GluCマッピングとトリプシン/GluCマッピングとを組み合わせたアプローチにより、RUR20kD-IL-2組成物のコンジュゲートの幾つかの主要なPEG化部位に関するロット間情報が提供される。
【0193】
表7.
RUR20kD-IL-2組成物におけるPEG化部位占有率:GMPロット及びDEMOロット
【0194】
【0195】
表8.RUR20kD-IL-2組成物及び4k PEG化rhIL-2代用物におけるPEG化部位占有率の要約
【0196】
【0197】
実施例1-G
RUR20kD-IL-2組成物の液相安定性
RUR20kD-IL-2組成物(2%(重量/体積)スクロースを含む10mM酢酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、pH5中の約1mg/mlのrhIL-2当量)1.0mg/mlの溶液の安定性を、室温(周囲実験室条件)、5℃(冷蔵)及び-20℃の3つの異なる保管条件下で、前述のようにRP-HPLCによって1、3、5及び7日間の時点で評価する。
【0198】
RUR20kD-IL-2組成物溶液間の差異を、対照の新たに調製されたRUR20kD-IL-2組成物サンプル溶液に対して評価する。室温、5℃及び-20℃で最大7日間保管したRUR20kD-IL-2組成物サンプルのジ-PEG及びトリ-PEG種は、名目上の-70℃サンプル保管と比較して最大1%の相対差を示す。RUR20kD-IL-2の成分PEG化種(モノ-PEG、テトラ-PEG、ペンタ-PEG種)の割合が少ない場合の相対差(Rel.Diff.)は最大8%である。これは、これらの代表的な保管条件下で保管された溶液サンプルが安定していることを示している。
【0199】
in vitroバイオアッセイ:
in vitro法は、IL-2受容体複合体の代表である受容体の活性化後の生物学的活性を特性評価するための細胞ベースのアッセイを含む、RUR20kD-IL-2組成物の生物学的効力の更なる測定及び生物学的特性評価に使用され得る。
【0200】
バイオアッセイの方法論
【0201】
【0202】
3つのアッセイ全てにおいて、用量反応曲線(反応対濃度)からのデータを非線形回帰モデルを使用して評価する。RUR20kD-IL-2組成物サンプルの効力を、50%有効濃度(EC50)比により標準物質と比較して測定する。
【0203】
実施例1-H
CTLL-2細胞増殖アッセイ
細胞増殖アッセイでは、サンプル及び標準を約26時間インキュベートした後、CTLL-2細胞を使用してin vitroで細胞増殖を測定し、ここでは細胞増殖は、発光アデノシン三リン酸ベースのアッセイ(CellTiter-Glo(登録商標)、ウィスコンシン州のPromega)で測定される。例えば、この細胞ベースの増殖アッセイでは、rhIL-2タンパク質に対して用量依存的な増殖応答を示すCTLL-2細胞株を使用する。rhIL-2はアッセイ対照として使用され、この方法ではRUR20kD-IL-2組成とは異なる濃度範囲で調製される。このアッセイを96ウェルプレートフォーマットで行う。CTLL-2細胞を飢餓培地でrhIL-2の飢餓状態にし、37℃及び5%CO2インキュベーター内で20±3時間一晩インキュベートする。飢餓状態の細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、RUR20kD-IL-2組成物の希釈系列を細胞に供給し、37℃及び5%CO2インキュベーターで更に25±3時間インキュベートする。RUR20kD-IL-2組成により誘導される各ウェルの細胞増殖を、PromegaのCellTiterGlo(登録商標)検出キットを使用して測定する。CellTiterGlo(登録商標)は、各ウェルに存在するATPの量に比例する発光シグナルを生成し、これは、存在する生細胞に正比例する。発光シグナルをSpectramaxM5プレートリーダーで読み取る。RUR20kD-IL-2組成物の標準物質及び各サンプルの用量反応曲線を、発光シグナル(y軸)を濃度(x軸)に対してプロットすることによって生成する。プロットを、4パラメータのロジスティック非線形回帰モデルに適合させる。Parallel Line Analysis(PLA)ソフトウェアを使用して、回帰の有意性である勾配の差(平行度)に対する同等性試験を評定し、同じプレート内の標準物質に対するサンプルの効力比を計算する。
【0204】
実施例1-I
リン酸-STAT5の活性化
受容体結合後のリン酸化STAT5アッセイでは、下流の細胞シグナル伝達がリン酸化を介してシグナル伝達性転写因子5(STAT5)を活性化し、遺伝子発現を促進して細胞増殖を誘導する。リン酸-STAT5の活性化は、IL-2依存性マウスTリンパ球細胞株であるCTLL-2細胞において、サンプル及び標準の約10分間の処理に応答して、リン酸-STAT5/全STAT5マルチプレックスアッセイ(メリーランド州のMeso Scale Discovery)を使用して測定される。
【0205】
実施例2
in vivo研究:マウスにおける単回用量PK/PD研究
RUR20kD-IL-2組成物によるTregの選択的刺激を、マウスで実証することができる。C57BL/6マウス(n=4/群)に、0.03、0.1及び0.3mg/kgの用量のRUR20kD-IL-2組成物の単回皮下投与を行う。投与後、投与後1~7日目及び10日目に血液及び脾臓のサンプルを収集する。より具体的には、各時点で、血液及び脾臓のサンプルを収集し、サンプルをプールし、フローサイトメトリーによるリンパ球細胞集団に対する薬物作用の薬力学的分析について評定し(例えば、実施例5を参照されたい)、ビヒクル対照と比較した倍率変化として表す。細胞数の変化に加えて、機能マーカー及び活性マーカーを定量する。最後に、血漿薬物濃度も評定する。
【0206】
図3A及び
図3Bに示されるように、RUR
20kD-IL-2組成物の投与は、血液と脾臓の両方においてCD4
+Tregの用量依存的増加をもたらし、投与の4日後に細胞数のピーク増加をもたらす。試験した最高用量(0.3mg/kg)では、Treg動員に対する持続的な効果が達成され、Tregレベルは投与後7日~10日までベースラインレベルに戻らない。血液中では、試験した最高用量の投与後にNK細胞が上昇するが、CD4T細胞への変化はわずかであり、CD8T細胞のわずかな減少が起こる(
図4A~
図4C)。B細胞及びCD8T細胞は、試験した最高用量の投与後にわずかに減少し、この用量では、NK細胞の増加も2倍未満になる。Tregの機能及び活性のマーカー(
図5A及び
図5B)は、試験した最高用量で、RUR
20kD-IL-2組成物の投与により、CD25及びFoxP3の平均蛍光強度(MFI)により測定されるTreg活性化が増加することを示している。Treg数は投与後4日まで最大値に達しないが、これらの活性化マーカーは投与後最初の2日で最大値に達し、RUR
20kD-IL-2の血漿曝露に従ってゆっくりと減少する。Ki67で測定した急速に増殖するTregの割合は、投与後2日で急速に上昇し、6日目まで持続してベースラインレベルに戻った。更に、細胞表面マーカー誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)を発現するTregの割合も増加し、これは、ICOSの発現が自己免疫環境におけるTregの抑制活性の増加に関連しているという注目すべき知見である。Ki67及びICOSの増加は、ピークRUR
20kD-IL-2組成物濃度に比べていくらか遅れているように見えるが、ベースラインレベルへの復帰は、この前臨床マウス研究における血漿濃度の減少と一致している。
【0207】
実施例3
in vitro Treg抑制アッセイ
この研究の目的は、制御性T細胞の阻害機能を評定することである。皮下投与後1日~7日及び10日に、ナイーブ及びRUR20kD-IL-2組成物で治療したC57BL/6マウスからTregを磁気的に分離する。Treg及びTconを1:2~1:512の範囲の比率で3日間共培養する。アッセイの最後の16時間に3H-チミジンの取り込みによって細胞増殖を評価し、プレート対照と比較した増殖細胞の割合を計算する。
【0208】
簡単に言えば、脾臓を、様々な用量レベル(0.03、0.1及び0.3mg/kg)のRUR20kD-IL-2組成物又は投薬後の指定された時間にビヒクルで処理された雌性C57BL/6マウス(n=4マウス/治療群/時間)から収集する。単一細胞分離物を各脾臓に対して調製し、得られた脾細胞混合物を各時点で各用量群に対してプールする。1つの脾臓に相当するプールされたサンプルの一部を、免疫細胞プロファイリングのために分注する。残りの脾細胞調製物を、制御性T細胞(Treg)の分離に利用する。CD4+CD25+Tregを、CD4+CD25+制御性T細胞分離、マウス、キット(ドイツ国ベルギッシュグラートバッハのMiltenyi Biotec)を製造元の推奨に従って利用する磁気活性化セルソーティング(MACS)によってマウス脾臓から分離する。CD4+T細胞を陰性選択し、CD4+CD25-T細胞とCD4+CD25+Tregとに分離する。ナイーブな従来のCD4+CD25-T細胞(Tcon)を、ナイーブCD4+T細胞分離キット(Miltenyi Biotec)を使用し、メーカーの推奨手順に従って、未治療の動物より採取したマウス脾臓からMACSによって分離する。
【0209】
in vitro抑制アッセイを、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.5μMβ-メルカプトエタノール、及び1×抗生物質/抗真菌剤(100単位/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び250ng/mLアンホテリシンB)を添加したRPMI1640培地で行う。5×104Tconを、抗CD3及び抗CD28(T Cell Activation/Expansionキット、マウス、Miltenyi Biotec)でコーティングされたビーズで、96ウェル丸底プレートの100μl培地において各Tconに対してビーズ2個の比率で刺激する。Tregsの抑制能力を、Tconに様々な比率(Treg:Tconの比率が2:1~1:512)でTregを追加することによって評定する。各Treg:Tcon比を3回試験する。細胞を加湿雰囲気下で37℃、5%CO2で72時間共培養し、アッセイ終了の16時間前に、0.5μCi[3H]-チミジンをウェルに添加する。取り込まれなかった[3H]-チミジンを含まない細胞を洗浄した後、マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT、Perkin Elmer)を使用して、チミジンの取り込みを1分あたりのカウント(CPM)として測定する。個々のCPM値を、4つの最低Treg:Tcon希釈で記録した平均CPMで割ることにより、最大増殖に対して正規化する。濃度応答曲線を、Prism(登録商標)6.03(カリフォルニア州サンディエゴのGraphPad Software)で4パラメータ非線形回帰及び1/y2重み付けを使用してグラフ化する。
【0210】
図6A~
図6Dに示すように、研究開始後1日及び4日でビヒクル治療マウスから単離された脾臓Tregは抑制能力を示し、最大の抑制は1:2の比率で発生する。しかしながら、RUR
20kD-IL-2組成物の投与後のこれらの時点で分離されたTregは、特に1:8を超える比率で、Tcon増殖の減少によって証明されるように、大幅に増加した抑制能力を示す。1:2の比率でTconとともに培養された単離されたTregの相対的抑制能力も経時的に評定する(
図7)。RUR
20kD-IL-2投与後、増加したTreg抑制活性は4日間維持された後、ビヒクル対照治療群によって示されるベースライン活性に戻る。
【0211】
実施例4
マウスKLH DTH有効性モデルにおけるRUR20kD-IL-2組成物の評価
T細胞抗原による炎症を抑制するRUR20kD-IL-2組成物の投与によるTreg誘導の能力を評定するため、Balb/cマウス(n=6~10/群)を遅延型過敏症(DTH)のモデルで利用する。完全フロイントアジュバント(CFA)及び不完全フロイントアジュバントをそれぞれ1:1:1の比率で含むエマルションに、100μgのキーホールリンピットヘモシアニン(KLH)を含む100μlの皮下注射を用いて、マウスを背部の皮下で感作する。5日後、チャレンジの前にベースラインの耳介厚を測定し、左耳に10μgのKLHを皮内投与し、右耳は未治療のままにする。耳介厚の測定値を、全ての群でKLHチャレンジの24時間、48時間、72時間及び96時間後にキャリパーで測定する。RUR20kD-IL-2組成物を、感作時の0日目に、3日ごとに0.003mg/kg~0.3mg/kgの範囲の皮下用量で投与する。シクロスポリン(10mg/kg、単回用量)からなる陽性対照を0日目に投与した。
【0212】
図8A、
図8Bに示されるように、抗原チャレンジに続いて、耳介の腫れが誘発され、耳介厚の平均増加が48時間で最大14mm超に達する。ナイーブのチャレンジされていない耳介は、研究の過程で厚さの変化を示さなかった。この研究における感作及びチャレンジ期間を通してRUR
20kD-IL-2組成物の投与は、ビヒクル対照と比較して各時点での炎症の減少によって証明されるように、耳介の腫れの有意な用量依存的減少をもたらす。チャレンジ後の効果をより定量的に評定するために、厚さの変化のAUCを各治療群(AUC
0-96時間)について計算する。
図8A及び
図8Bに示されるように、最小有効量は0.01mg/kg q3dであり、最大効果は0.3mg/kg q3dで達成される。ビヒクル群からの統計学的に有意なAUC値は、アスタリスクで示される(p<0.05;ANOVA、Tukey)。まとめると、このデータは、投与後に達成されたTregの動員及び活性化の増強が、in vivoでの抗原駆動性炎症機構を抑制できることを示している。
【0213】
実施例1のRUR20kD-IL-2組成物の活性を、げっ歯類及びカニクイザルにおいてin vivo投与後に評定する。マウスでは、RUR20kD-IL-2組成により、Tregが用量依存的に増加し、投与後4日に最大に達する。マウスにおいてRUR20kD-IL-2組成物によって誘導されたTregのフローサイトメトリー分析は、FoxP3及びCD25平均蛍光強度(MFI)等のTreg活性化のマーカーが、投与後最初の2日以内に最大値に達し、RUR20kD-IL-2組成物の血漿曝露に応じて経時的に徐々に減少することを示した。活発に増殖しているTregの割合も、投与後2日以内に最大値に達し、6日目まで持続する。Treg機能マーカーICOSの発現は、3日目にピークに達して、7日目までにベースラインに戻る。治療を受けたマウスの脾臓から分離されたTregは、投与後最初の4日間で抑制能力を大幅に増加させた後、ベースレベルの活性に戻る。実施例1のRUR20kD-IL-2組成物は、3日ごとに投与された場合、遅延型過敏症(DTH)マウスモデルにおいて抗原駆動性炎症反応を抑制した。
【0214】
実施例5
カニクイザルにおける単回用量研究
この研究では、雌1匹と雄1匹のカニクイザルに、25μg/kgのRUR20kD-IL-2組成物を皮下投与する。Treg細胞数と活性化状態のフローサイトメトリーによる評定のため、治療前(-6及び-1日目)と治療後の複数の間隔で各動物から一連の血液サンプルを採取する。
【0215】
免疫表現型分析のため、血液サンプル(およそ1.0mL)を、次の時点で各サルから収集する:治療前(-6及び-1日目)、治療後2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、10日目、14日目、21日目。静脈穿刺サンプルを、抗凝固剤K2EDTAを含むチューブに収集し、チューブを移送するまで湿った氷の上に置く。全血サンプルを、以下のパネルを使用したフローサイトメトリーによって分析し、サンプルは以下について分析する:
T細胞パネル:CD45/CD3/CD4/CD8/ICOS
T/B/NKパネル:CD45/CD3/CD16/CD20
pSTAT5パネル:CD3/CD4/CD8/CD25/CD127/pSTAT5
Tregパネル1:CD3/CD4/CD8/CD25/FoxP3/Ki67
Tregパネル2:CD3/CD4/CD8/CD25/FoxP3/Helios
コンピュータ化されたシステムを研究の実施に使用することができ、例えば、フローサイトメトリーデータの取得にはBD FACSCanto II/FACSDiva LEGENDPlexデータ分析ソフトウェアを使用でき、フローサイトメトリーデータ分析にはDe Novo FCS Expressソフトウェアを使用できる。
【0216】
雄及び雌の値を平均化し、変化の大きさをd-1値に対して示し、点線でマークする。
図9に示されるように、Treg細胞数は、投与後に実質的に増加し、投与の7日後にそれらの最大レベルに達し、14~21日目までにほぼd-1レベルに戻る。
図9A中、白抜きの三角形で示されているように、Ki67で測定した場合、RUR
20kD-IL-2組成物によって誘導されたほぼ全てのTregは増殖性である。
【0217】
RUR20kD-IL-2組成物の投与によって刺激されたTregの相対的な活性化状態は、FoxP3及びCD25の平均蛍光強度(MFI)によって更に測定される。CD25 MFIは、6日目に最大値に達し、その後10日目までプラトーに達した後、21日目までにほぼ投与前のレベルに戻る。FoxP3 MFIはまた、投与後6日目に最大に達し、その後14日目~21日目で投与前のレベルにほぼ戻る。まとめると、これらのデータは、Treg活性化の増加を伴って、同様の大きさの血中Treg誘導が見られることから、マウスでの所見のカニクイザルへのトランスレータビリティ(translatability)を示している。しかしながら、マウスでの発見とは対照的に、カニクイザルでの影響は本質的により長くなる。
【0218】
実施例6
マウス、ラット及びサルにおける単回用量の薬物動態及び毒物動態
マウス、ラット、及びサルにおけるRUR20kD-IL-2組成物の単回用量の薬物動態/毒物動態の結果を要約する。投与計画の詳細を表10に示す。
【0219】
表10:RUR20kD-IL-2組成物の単回用量の薬物動態及び毒物動態研究の概要
【0220】
【0221】
マウス研究の場合、RUR20kD-IL-2組成物のビヒクルは、10mM酢酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、及び2%スクロース(pH5)である。ラット及びサルの研究では、RUR20kD-IL-2組成物のビヒクルは、50mM酢酸ナトリウム、200mM塩化ナトリウム、及び2%スクロース(pH5)である。
【0222】
皮下投与後、RUR20kD-IL-2組成物は、マウス、ラット及びサルでそれぞれ0.33~1.0日、1.0~2.3日及び2.0日のTmaxでゆっくりと吸収される(表11)。RUR20kD-IL-2組成の血漿曝露は、マウス及びラットで多かれ少なかれ用量を比例的に増加させる。バイオアベイラビリティは、ラットで29.8~46.0%の範囲、サルで86.2%である。
【0223】
RUR20kD-IL-2組成物の定常状態での分布容積(Vss)は、用量とともにラットで増加するようであり、25.1(0.01mg/kg)~52.6mL/kg 1.0mg/kg)の範囲であった(表12)。全体として、Vssはラット及びサルの種特異的血漿量よりもそれぞれ1倍~2倍及び2倍~4倍大きく、RUR20kD-IL-2が主に血管空間に留まっていることを示唆している。
【0224】
血漿クリアランス(CL)は非常に低い(ラットで0.560~1.14mL/時/kg、サルで0.245mL/時/kg)(表)。静脈内又は皮下投与後、RUR
20kD-IL-2組成物濃度は、マウスで1.85~2.24日、ラットで1.25~2.44日、及びサルで10.4~12.9日の半減期を伴って単指数関数的減衰を示すようである(表11及び12、並びに
図10A、
図10B)。RUR
20kD-IL-2の腎排泄は、糸球体フィルターの分子量カットオフに近い平均分子量63kDaであるため、低いと予測される。
【0225】
表11:C57BL/6マウス、Sprague-Dawleyラット又はカニクイザルにRUR20kD-IL-2組成物を単回皮下投与した後の平均±SE血漿薬物動態/毒物動態パラメータ
【0226】
【0227】
表12:Sprague-Dawleyラット又はカニクイザルにRUR20kD-IL-2組成物を単回静脈内用量を投与した後の平均±SE血漿薬物動態パラメータ
【0228】
【0229】
実施例7
マウスでの比較研究
C57BL/6マウスに、0.03、0.1及び0.3mg/kgのRUR
20kD-IL-2組成物の単回皮下用量を投与するか、又は0.03mg/kg(qddx5)、0.1mg/kg(qdx5)及び1mg/kg(qdx5)の投与量の未修飾IL-2(アルデスロイキン)を投与する、実施例2に記載の研究と本質的に同様の研究を実施する。投与後、血液及び脾臓のサンプルを収集し、フローサイトメトリーによるリンパ球細胞集団に対する薬力学的分析のために分析して、ビヒクル対照と比較した倍率変化として表す。結果を
図10A及び
図10Bに示す(RUR
20kD-IL-2組成物は「RUR-IL-2」と表示され、アルデスロイキンは「IL-2」と表示される)。
【0230】
実施例8
全身性エリテマトーデス(SLE)のマウスモデルにおけるRUR20kD-IL-2組成物の有効性の調査
この研究は、この疾患の最も一般的に研究されているマウスモデルであるMRL/MpJ-Faslprマウスモデル(Perry D.,ら,J Biomed Biotechnol 2011:271694)を使用して、SLEの発症と進行及びそれに関連する特徴に対するRUR20kD-IL-2組成物の有効性を決定するために実施される。MRL/MpJ-Faslprマウスモデルは、リンパ節腫大、IgGレベルの上昇、抗核抗体産生、タンパク尿、及び糸球体の炎症による腎不全等、ヒトSLEの病態を反映する自己免疫疾患を発症する。実施例1に記載のRUR20kD-IL-2組成物のストック溶液を、注射用滅菌水(SWFI)、USPで調製;pH5.0±0.1)に調製したビヒクル(透明な液体;10mM酢酸ナトリウム/200mM塩化ナトリウム/2%(重量/体積)スクロース)中に供給される試験品(1.58mg/mL)として使用する。投与日に、適切な量の試験品を取り出し、ビヒクルで希釈して、所望の投与濃度(0.03mg/kg用量及び0.3mg/kg用量)に到達させる。投薬量は5mL/kgであった。この研究に使用した動物は、MRL/MpJ-Faslprマウス及びMRL/MpJナイーブの雌性マウスで、6週齢~8週齢である。動物を無作為化に治療群に割り当てる。治療群を、以下の表13に記載する。45匹のMRL/MpJ-Faslprマウスを、実験開始前の体重及び尿中のタンパク質含有量のレベルに基づいて、3群(群2~4でそれぞれ15匹)に無作為化する。群2~4の動物には、表6に記載されているように、ビヒクル又は試験品を皮下投与する。群1-MRL/MpJマウスは陰性対照としてとしてビヒクルを受ける。
【0231】
8週目の初回投与から3日後、群2~4の3匹のマウスを人道的に犠牲にし、血液サンプルを収集して処理した。体重を、研究の開始から週に2回測定し、終わりまで継続する。
【0232】
皮膚病変の写真を、最初に観察したとき、及びその後1週間間隔で撮影した。
【0233】
尿を投与の前日(ベースライン時)に採取し、その後毎週採取する。尿中のタンパク質レベルを、Siemens Clinitek Status Analyzerを使用して測定する。
【0234】
犠牲の日(20週目の最後の投与から3日後)に、抱水クロラール(50mg/kg)の腹腔内注射により全てのマウスに麻酔をかける。血液サンプルを採取し、10000r/分で10分間遠心分離して、血清サンプルを取得する。血清を、臨床生化学検査まで-80℃で保管する。血清サンプル(100μl)をELISA(マウス抗dsDNA IgG特異的ELISAキット、Alpha Diagnostic International、カタログ番号5120)で分析し、Hitachi7020自動生化学分析装置を使用して血清のBUN濃度を試験する。リンパ球分析では、血液サンプルをEDTA-Kチューブに収集し、フローサイトメトリーによってCD3/CD4/CD8/Treg/NK/B細胞%を試験する。結果を
図11に示す。そこに示されているように、0.3mg/kgの用量でのRUR
20kD-IL-2組成物の投与は、腎臓損傷のバイオマーカー(すなわち、尿中のタンパク質レベル)を正常なマウスで観察されるのとほぼ同じレベルに抑制するのに効果的である。この研究は、SLEの代表的な動物モデルにおける生理学的免疫応答及び疾患進行の制御に対するRUR-IL-2誘導性Tregの効果を更に解明する。
【0235】
表13-治療群
【0236】
【0237】
実施例9
抗原依存性、T細胞性、遅延型過敏症(DTH)モデルにおけるRUR20kD-IL-2組成の研究
この研究は、RUR20kD-IL-2組成物によるin vivo Treg刺激及び増殖が、高度のアナフィラキシーが確立される食物アレルギーモデルにおいて、抗原依存的にT細胞性遅延型過敏症(DTH)応答を下方制御する方法をモデル化している。
【0238】
DTHモデルを開発するため、完全及び不完全フロイントアジュバントに乳化されたモデル抗原キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の皮下投与でBalb/cマウスを感作する。RUR20kD-IL-2組成物(0.003、0.01、0.3、0.1又は0.3mg/kg、q3d)又はシクロスポリンA(10mg/kg、qd)の皮下投与を0日目に開始し、8日目まで継続し、5日目にKLHの皮内チャレンジを投与して、耳介の腫れを4日間測定した。炎症を起こした耳を免疫組織化学(IHC)に供し、KLHチャレンジ後のFoxP3+Treg細胞の割合を定量する。応答の特異性を、KLH再チャレンジ、又は無関係の抗原であるオボアルブミン(OVA)による感作及びチャレンジを行うことのいずれかによる治療をせずに、更に3週間~4週間後に評定する。食物アレルゲンに対するRUR20kD-IL-2組成物-拡張Tregの効果を理解するため、Balb/cマウスを、OVAをミョウバンで腹腔内に乳化することによって週に2回感作する。2回目の感作の10日後、マウスを隔日で8回経口的にOVAでチャレンジする。RUR20kD-IL-2組成物(0.1mg/kg、q3d×3)又はシクロスポリンA(10mg/kg、qd)の皮下投与を0日目に開始し、8日目まで継続する。アレルギー反応の重症度を、8回目のチャレンジ後30分~45分以内の臨床スコアによって評定する。更に、血清肥満細胞プロテアーゼ1(MCPT 1)及びOVA特異的IgEの力価を定量する。パーセントTregを、末梢血及び脾臓のフローサイトメトリーによって決定する。
【0239】
DTHのこのマウスモデルでは、RUR20kD-IL-2組成物の投与により、KLH再チャレンジに対する炎症反応が用量依存的に抑制された。炎症を起こした耳介のIHC分析は、FoxP3+Treg細胞の有意な浸潤を示している。炎症に対する抑制効果は、RUR20kD-IL-2組成物を更に投与せず、感作後の同じ抗原及び無関係の抗原による3週間~4週間後の再チャレンジによって例示されるとおり、永続性があり、抗原特異的である。最後に、RUR20kD-IL-2組成物の投与は、モデル食品アレルゲンであるOVAの反復投与によって引き起こされる高度なアナフィラキシー症状の軽減に効果的であることがわかった。アナフィラキシーの臨床スコアの低下は、MCPT1のレベル及び抗OVA特異的IgEの力価の有意な低下、並びにTregの有意な増加と相関している。RUR20kD-IL-2組成物は、抗原特異的で永続性のあるTreg増殖、及びこのKLH過敏症モデルのマウスにおける治療反応を示した。更に、RUR20kD-IL-2組成物は、食物アレルギーモデルで有効であることがわかっている。このデータは、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の場合のように、抗原特異的炎症に対するRUR20kD-IL-2組成物の使用を支持している。
【0240】
本明細書で提供される前臨床証拠は、IL-2コンジュゲートTreg刺激因子RUR20kD-IL-2組成物が自己免疫及び炎症性の障害の治療のために制御性T細胞の数及び抑制機能を増加させるという概念を裏付ける。IL-2産生の障害及び制御性T細胞の機能障害は、複数の自己免疫疾患の免疫学的メカニズムとして関係している。臨床的利益を得るため低用量のIL-2を使用することができるが、薬物動態が不十分な場合は毎日の送達が必要であり、有害事象は用量を制限し、Tregの増加は中程度で短命である。RUR20kD-IL-2組成物は、従来のT細胞機能への影響を最小限に抑えながらTreg恒常性を選択的に回復する低用量皮下投与を目的としたIL-2コンジュゲートTreg刺激因子を提供する。ここに、マウス及び非ヒト霊長類モデルにおいてTregの数及び活性を選択的に拡大するRUR20kD-IL-2組成物の能力を特性評価し、自己免疫のモデルにおけるRUR20kD-IL-2組成物の有効性を評定するためのデータを提供する。IL-2受容体への親和性を、表面プラズモン共鳴によって評定する。ヒトPBMCの活性を、フローサイトメトリー及び飛行時間型質量分析(CyToF)を使用して、複数のリンパ球集団におけるpSTAT5誘導によって測定することができる。C57BL/6マウス又はカニクイザルの皮下投与後のin vivo活性を、リンパ球数の変化及びフローサイトメトリーによる活性化によって測定する。ex vivoのTreg機能を、単離された脾臓TregによるTcon増殖の阻害によって決定する。有効性を、MRL/MpJ-Faslprマウスを使用して全身性エリテマトーデス(SLE)のモデルで評定する。RUR20kD-IL-2組成物は、IL-2Rα及びIL-2Rαβ複合体と比較してヒトIL-2Rβに対する親和性を大幅に弱め、低親和性IL-2Rβγを発現するTconよりも高親和性IL-2Rαβγを発現するTregの優先的な活性化を示唆している。in vitroでは、TregはRUR20kD-IL-2組成刺激に対してより感受性が高く、ヒトPBMCの他のリンパ球サブセットと比較してSTAT5リン酸化の増加を示す。マウスでは、単回投与により、Tcon活性化を伴わずに、血液及び脾臓で7日間~10日間Treg動員が持続し、これは、Treg活性化マーカーの誘導及びex vivoでの抑制能力の増加が同時に起こる効果である。カニクイザルでは、血漿曝露は、単回投与後14日間以上、持続的なTreg動員及び活動により延長され、これは、5日間毎日投与されるrhIL-2の同等の総投与量と比較して、大きさ、期間及び特異性に優れた反応である。最後に、RUR20kD-IL-2組成物はSLEのマウスモデルで有効である。SLEモデルでは、12週間にわたってRUR20kD-IL-2組成物を繰り返し投与すると、Tregの上昇が持続し、血中尿素窒素が減少し、尿タンパクレベル及び腎臓の組織病理学が正常に戻る。cGVHDモデルでは、RUR20kD-IL-2組成物を繰り返し投与すると、Tregが増加し、脾臓の胚中心B細胞が減少し、肺機能障害が逆転する。RUR20kD-IL-2組成物は、Tregの持続的で優先的な活性化をもたらし、SLEのモデル系で有効性を示す。
【0241】
実施例10
健康なボランティアにおけるRUR20kD-IL-2組成物の単回漸増皮下投与の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価するための第I相、二重盲検、無作為化プラセボ対照研究
健康なボランティアにおけるRUR20kD-IL-2組成物(RUR20kD-IL-2)の単回漸増低皮下用量の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価するために、二重盲検、無作為化、プラセボ対照研究を行う。この研究は7つのコホートに分けられ、被験者は0.3、1.0、3.0、6.0、9.0、13.5又は20.0μg/kgのRUR20kD-IL-2を受けた。12人の被験者を各用量コホートに無作為化され、そのうち9人はRUR20kD-IL-2の単回皮下投与を受け、3人はプラセボを受けた。RUR20kD-IL-2を、0.9%塩化ナトリウム滅菌液で希釈した皮下注射用の滅菌液として配合する。医薬品を使い捨てガラスバイアルで供給し、2℃~8℃で保管する。医薬品の各バイアルには、0.75±0.1mgのrhIL-2(RUR20kD-IL-2に基づく)が含まれていた。RUR20kD-IL-2を、10mM酢酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、2%(重量/体積)スクロース、pH5.0中におよそ1.0mg/mlタンパク質の濃度で配合する。プラセボは市販の0.9%塩化ナトリウム溶液である。0.3μg/kgの開始用量は、最小予測生物学的影響レベル(MABEL)アプローチを使用して選択され、非臨床毒性研究からの最も感受性の高い種における無毒性量(NOAEL)によって支持される。RUR20kD-IL-2の薬物動態及び安全性の評価を可能にするため、開始用量を0.3μg/kgに設定する。1人はRUR20kD-IL-2を受け、もう1人はプラセボを受けた2人の被験者に二重盲検法で投薬し、研究開始前の少なくとも7日間、起こりうる副作用を監視する。
【0242】
この研究の主要目的は、単回皮下投与として投与されたRUR20kD-IL-2の安全性及び忍容性を評価することである。この研究の副次目的は、(1)制御性T細胞(Treg)の数及び/又は活性の変化の時間経過と程度を観察すること、(2)単回皮下用量として投与したRUR20kD-IL-2の薬物動態(PK)プロファイルを特性評価すること、並びに(3)サイトカイン、T細胞、他の末梢血集団、他の血清タンパク質、遺伝子発現の変化、及び抗薬物抗体への影響を含む、血液中のRUR20kD-IL-2の免疫学的影響を評定することである。研究の最初の段階では、免疫マーカーを投与前から投与後20時間まで試験する。具体的には、Treg、CD4+-T細胞、CD8+-T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、サイトカイン、可溶性CD25及びRNAを、RUR20kD-IL-2受容及びプラセボ受容のコホートで試験する。その後のフェーズでは、同じ免疫マーカーを投薬後4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、10日目、12日目、15日目、18日目、20日目、25日目、30日目、40日目及び50日目にも試験する。
【0243】
用量規制毒性(DLT)、重篤な有害事象(SAE)、死亡又は臨床上重大な異常は報告されていない。有害事象(AE)は、軽度(グレード1)の注射部位反応に限定されており、高用量のIL-2に関連することが知られているAEの証拠は観察されなかった。
【0244】
予備的なPK分析は、RUR20kD-IL-2がほとんどの被験者で投与後4日~6日あたりで最大濃度に達し、投与後およそ2週間まで濃度の変化がほとんどなく、その後濃度がおよそ8日~9日の半減期で低下したことを示す。
【0245】
薬力学的(PD)評定は、RUR20kD-IL-2が循環CD4+FoxP3+CD25brightTregの用量依存的な増加をもたらすことを明らかにしている。3.0、6.0、9.0、13.5及び20.0μg/kgの単回用量コホートでは、循環CD4+FoxP3+CD25brightTregの絶対数が持続的に増加し、レベルは投与後およそ20日~25日までベースラインに戻らない。それぞれ3.0、6.0、9.0、13.5及び20.0μg/kgの用量では、投与前と比較して、CD4+FoxP3+CD25brightTregの数が平均で3、3.5、4.1、5及び8.1倍増加する。3.0、6.0、9.0、13.5及び20.0μg/kgの用量では、CD4+FoxP3+CD25+Tregの総数も増加するが、変化の大きさはCD4+FoxP3+CD25brightTregで観察されたものよりも小さくなる。プラセボを受けた被験者と比較して、0.3及び1.0μg/kgの用量でのRUR20kD-IL-2治療被験者対プラセボ被験者のTregの数に変化はない。どの用量のRUR20kD-IL-2でも、T細胞集団(CD4+、CD8+)の割合又は数に変化が見られないことから、RUR20kD-IL-2の主な効果はTregで見られる。13.5及び20.0μg/kgでNK細胞の割合及び絶対数がわずかに増加しているが、高用量IL-2に関連するAEの証拠はない。
【0246】
図12に示すように、RUR
20kD-IL-2組成は、CD4+FoxP3+CD25brightTregの用量依存的な増加をもたらした。3.0、6.0、9.0及び13.5μg/kgでは、CD4+FoxP3+CD25brightTregの絶対数の持続的な増加をもたらし、投与後20~25日までレベルはベースラインに戻らなかった。CD4+FoxP3+CD25brightTregsの数は、3.0、6.0、9.0及び13.5μg/kgの用量では、プラセボと比較して、それぞれ3.0、3.5、4.1及び5.0倍の平均増加があり、最大応答は、3.0μg/kgで84時間のピークから、13.5μg/kgで7~12日続くより延長されたピーク応答にシフトし、20日~25日目までにベースラインレベルに戻る。
図13に示すように、3.0、6.0、9.0及び13.5μg/kgの用量では、CD4+FoxP3+CD25+Tregの総集団も用量依存的に増加したが、変化の大きさはCD4+FoxP3+CD25bright制御性T細胞で観察されたものよりも小さくなる。0.3μg/kg及び1μg/kgの用量で、RUR
20kD-IL-2治療被験者対プラセボ被験者の合計CD4+Tregに変化は観察されなかった(
図13)。
【0247】
重要なことに、RUR
20kD-IL-2又はプラセボ治療を受けたいずれの被験者においてもTcon細胞集団(CD4+、CD8+)の割合の変化は観察されなかったため、RUR
20kD-IL-2の主な効果はTregで見られた。しかしながら、RUR
20kD-IL-2の被験者では、13.5μg/kgでCD8+T細胞の絶対数及びKi67+CD8+T細胞の割合のわずかな増加が観察された(
図14A~
図14D)。どの用量レベルでもCD4+T細胞の絶対数に変化はなかった。
【0248】
CD56+NK細胞集団も分析した。循環NK細胞の絶対数の増加が認められ、13.5μg/kgの用量レベルではこの細胞サブセットの割合が同様に増加したが、低用量レベルでは増加しなかった。また、3.0、6.0、9.0及び13.5μg/kgで、増殖のマーカーであり、したがって活性化のマーカーであるKi67を発現するCD56+NK細胞の割合の用量依存的な増加が認められた。3.0、6.0及び9.0μg/kgで、Ki67を発現する割合は、RUR20kD-IL-2投与後、それぞれ約10%、20~30%及び30~40%であった。13.5μg/kgの用量ではKi67を発現する割合の更なる増加はなく、30~40%のままであった。
【0249】
SAD研究によるRUR20kD-IL-2治療は、CD4+FoxP3+CD25brightTregの数の持続的な増加をもたらし、投与後20~25日までレベルはベースラインに戻らなかった。変化の大きさはCD4+FoxP3+CD25brightTregで観察されたものよりも小さかったものの、CD4+FoxP3+CD25+Tregの総個体数も増加した。CD8+T細胞及びNK細胞の数の増加が13.5μg/kgで観察された。
【0250】
RUR20kD-IL-2の追加コホート、20.0mg/kg(n=13);プラセボ(n=3)、及びRUR20kD-IL-2、28.0mg/kg(n=9);プラセボ(n=3)も実施した。各コホートを50日間追跡し、有害事象、バイタルサイン、及び臨床検査評価、並びにTreg、Tcon、及びNK細胞及びサブセットの数及び活性の時間経過及び程度の変化、RUR20kD-IL-2の薬物動態、並びにサイトカインレベル、末梢血細胞集団、血清タンパク質及び遺伝子発現等の他の免疫学的効果によって評価される、健康なボランティアにおけるRUR20kD-IL-2の単回漸増用量の皮下投が被験者の安全性及び忍容性に及ぼす影響を評定する。
【0251】
一般に、安全性の結果では、研究の中止につながる用量規制毒性、死亡又は有害事象、臨床上重要なバイタルサイン、ECG又は身体検査の異常は見られなかった。有害事象は主に軽度又は中等度(グレード1又はグレード2)の注射部位反応に限定され、4人の被験者がグレード1の頭痛事象を経験し、1人の被験者が試験した最高用量(28.0μg/kg)でサイトカインレベルの上昇に起因する軽度(グレード1)の兆候及び発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、頻脈及び筋肉痛(全てグレード1の重症度)の症状を経験し、抗薬物抗体の誘発はなかった。
【0252】
一般に、CD25-bright Tregの持続的で用量依存的な増加が、RUR
20kD-IL-2に応答して観察された(
図15を参照されたい)。28μg/kgのRUR
20kD-IL-2組成物では、投与前の値を超えるCD25-bright Tregの数の17倍の平均ピーク増加が観察された。Tregレベルは10日目~12日目にピークに達し、投与後20日~25日までベースラインに戻らない。Treg活性化マーカーであるICOS及びCTLA4の増加は、13.5μg/kg以上の用量で観察された。
【0253】
Tcon細胞の割合に実質的な変化は観察されず、RUR
20kD-IL-2に応答したCD56+NK細胞では最小限の増加が観察された(
図16を参照されたい)。(CD16+CD56+NK細胞も数えた。データは示されていない)。NK細胞の増加は用量依存的ではなかった。RUR
20kD-IL-2の最高濃度でNK細胞の2倍の増加が観察された。RUR
20kD-IL-2は、28μg/kgまでCD8+T細胞を誘導することはなく、Tregの用量依存的な増加を誘導する。RUR
20kD-IL-2の投与により、28μg/kgのベースラインよりも平均ピークTreg:CD8比が15倍に増加する。(
図17を参照されたい)。
【0254】
研究の目的は、皮下に単回漸増用量(SC)を投与したヒトにおけるRUR20kD-IL-2の安全性及び忍容性を評定した。更に、Treg、従来のCD4+及びCD8+T細胞、NK細胞、サイトカインレベルの数及び割合の変化の時間経過及び程度、並びに末梢血中のRUR20kD-IL-2組成物の薬物動態(PK)を調査した。このヒト初の二重盲検、単回漸増用量研究では、健康なボランティアに0.3~28μg/kgの範囲のSC用量(コホートあたり、治療薬9:プラセボ3)を投与し、被験者を50日間追跡した。計画した8つのコホート全てが投薬を完了した。バイタルサイン、心電図又は臨床検査値には、用量規制毒性、重篤な有害事象、死亡又は臨床上重大な異常はなかった。RUR20kD-IL-2に起因する有害事象は、主に軽度(グレード1)の注射部位反応に限定されていた。試験した最高用量の1人の被験者は、サイトカインレベルの上昇及びリンパ球減少症の一過性で軽度(グレード1)の症状を示したが、治療せずに解消した。他のどの用量レベルの個人にも、IL-2療法に関連することが知られている全身性の兆候又は症状はなかった。これまでに最初の6つのコホートで抗薬物抗体の検査を行ったが、いずれも検出されていない。RUR20kD-IL-2は、投与後4日~6日で最大血漿レベルに達し、約2週間はほとんど変化せず、その後、約8日~9日の半減期で減少した。RUR20kD-IL-2の主な効果はTregで見られた。3.0~28.0μg/kgの用量コホートでは、循環CD4+FoxP3+CD25bright Tregの絶対数及び割合の用量依存的で持続的な増加が観察された。上昇したレベルは10~12日目にピークに達し、投与後約20~25日までベースラインに戻らなかった。28.0μg/kgでは、これらのCD25bright Tregの数の平均ピーク増加はベースラインの17倍であり、平均ピークパーセンテージは0.5%から7.4%に増加した。更に、13.5μg/kg以上の用量ではTreg活性化マーカーが増加した。試験した最高用量では、NK細胞の割合及び数は平均3.5倍増加したが、従来のCD4+又はCD8+T細胞の割合及び数に変化は見られなかった。RUR20kD-IL-2組成物は、Tregを選択的に誘導し、28.0μg/kg群のベースラインを超える平均ピークTreg:CD8比の15倍の増加によって証明される。結論として、試験した用量範囲でのIL-2コンジュゲートT-reg刺激因子RUR20kD-IL-2の単回投与は、忍容性が高く安全であった。RUR20kD-IL-2は、循環CD25bright Tregの顕著な選択的用量依存的増加をもたらし、従来のT細胞への影響は最小限で、NK細胞への影響は比較的小さかった。これらの臨床結果は、RUR20kD-IL-2の長期にわたるTreg選択的作用を示す以前の動物研究を拡大し、全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患の新たな治療法としてRUR20kD-IL-2を試験するための強力な裏付けを提供する。
【0255】
RUR20kD-IL-2組成物は安全であり、この最初のヒトにおける単回漸増用量研究で十分に忍容され、循環CD25-brightTreg細胞の顕著な選択的用量依存的増加をもたらした。Tcons及びNK細胞への影響は最小限であり、この研究データは、自己免疫疾患及び炎症性疾患におけるRUR20kD-IL-2を試験するための裏付けを提供する。
【0256】
実施例11
全身性エリテマトーデス患者における皮下RUR20kD-IL-2の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価するための第I相、二重盲検、無作為化プラセボ対照漸増複数回用量研究
最小から中等度の全身性エリテマトーデス(SLE)の患者の4つの用量コホートにおけるRUR20kD-IL-2の漸増複数回用量の安全性、忍容性、PK及び免疫学的効果を評価するための二重盲検、無作為化、プラセボ対照研究を行う。SLE疾患活動性への影響も評価する。疾患活動性が最小から中程度の12人のSLE患者を、4つの用量コホートのそれぞれに無作為化し、そのうち9人はRUR-IL-2-20kDの1.0mg/ml水溶液の皮下用量を複数回受け、3人はプラセボを受けた。RUR20kD-IL-2薬物及びプラセボを、本明細書に記載されているように、例えば実施例1-Aのとおりに調製する。活動性の臨床SLE疾患活動は選択基準として必要とされない。コホート1では、3.0μg/kgの開始用量を2週間間隔で3回投与する(1、15及び29日目)。この開始用量は、上記の研究で以前に決定されたRUR20kD-IL-2の単一皮下用量の好ましい安全性及びPDプロファイルに基づいている。コホート2、3及び4のその後の用量レベルは、それぞれ、前の用量コホートの最大2倍であった。コホート1~3の患者は、2週間間隔で合計4週間にわたって3回の治験薬の投与を受けた。研究の過程で評価される用量は、3.0μg/kg~24μg/kgの範囲である。コホート4の患者は、1、15、29、43、57、71及び85日目に投与されるRUR20kD-IL-2による12週間の治療を受ける。このコホートは、RUR20kD-IL-2治療の長期にわたる投与の安全性、並びにPK及びPDプロファイルに関するデータを提供する。RUR20kD-IL-2又はプラセボの最終投与を受けた後、安全性、PK、PD及び予備的有効性を評価するために患者を更に50日間追跡する。各コホートの12人の被験者のうち8人を、安全性の問題の可能性について、安全性審査委員会によって最終患者の3回目の投薬の2週間後に評価する。更に、安全性審査委員会によって2回、すなわち(1)最初の8人の被験者が3回目の投与を受けてから2週間後、及び(2)全ての被験者が全ての投与量の治験薬を投与されてから2週間後にコホート4の全ての患者を評価する
安全性の所見に加えて、Treg、CD4+-T細胞、CD8+-T細胞、NK細胞応答、サイトカインレベル、利用可能なPKデータ等の免疫学的変化を使用して、用量レベルを決定する。この研究の主要目的は、SLE患者に複数回漸増皮下用量として投与されたRUR20kD-IL-2の安全性及び忍容性を評価することであり、この研究の副次目的は、(1)SLE患者における複数回の皮下投与後のRUR20kD-IL-2のPKプロファイルを特性評価すること、(2)SLE患者におけるTreg及びTregサブセットの数及び機能、CD4+-T細胞、CD8+-T細胞、NK細胞、並びにサイトカインレベルを含む、PDバイオマーカーの変化の時間経過及び程度に関するRUR20kD-IL-2の効果を評定すること、(3)二本鎖DNAに対する抗体の存在及びレベル、並びにSLE患者の補体C3及びC4のレベルに対するRUR20kD-IL-2の効果を評定すること、並びに(4)SLE患者の疾患活動性に対するRUR20kD-IL-2の効果を評定することである。漸増複数回用量研究からの予備的なPKデータを表す結果を、以下の表15の単回皮下研究からのデータと比較する。
【0257】
表15.単回及び複数回用量のヒト試験におけるPKデータ
【0258】
【表14】
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]構造:
【化13-1】
(式中、IL-2はインターロイキン-2であり、
nは各出現で独立して約3~約4000の整数である)
を有するPEG化IL-2コンジュゲートを含む組成物。
[2]IL-2がアルデスロイキンである、上記[1]に記載の組成物。
[3]前記組成物が、あわせて考慮した場合に、
式
【化13-2】
(式中、n’は1、4、5又は5より大きい整数から選択される)によって包含される、PEG化IL-2コンジュゲートを約20モルパーセント以下で含む、上記[2]に記載の組成物。
[4]前記組成物が、あわせて考慮した場合に、
式
【化13-3】
(式中、n’は1、4、5又は5より大きい整数から選択される)によって包含される、PEG化IL-2コンジュゲートを約15モルパーセント以下で含む、上記[3]に記載の組成物。
[5]前記組成物が、あわせて考慮した場合に、式
【化13-4】
(式中、n’は1、4、5又は5より大きい整数から選択される)によって包含される、PEG化IL-2コンジュゲートを約10モルパーセント以下で含む、上記[3]に記載の組成物。
[6]1に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約10モル%以下で含む、上記[3]~[5]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[7]1に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約7モル%以下で含む、上記[3]~[5]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[8]1に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約5モル%以下で含む、上記[3]~[5]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[9]4に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約10モル%以下で含む、上記[3]~[8]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[10]4に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約7モル%以下で含む、上記[3]~[8]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[11]4に等しいn’を有するPEG化IL-2コンジュゲートを約5モル%以下で含む、上記[3]~[8]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[12]前記組成物が、ほぼ等モル量の
【化13-5】
を含む、上記[1]に記載のPEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含む組成物。
[13]組前記組成物が、式
【化13-6】
(ここで、(II)/(III)のモル比が、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3及び1:1.4からなる群から選択される)を有するPEG化IL-2コンジュゲートを含む、上記[2]に記載のPEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含む組成物。
[14]アルデスロイキンあたりの分岐ポリエチレングリコール部分、
【化13-7】
の平均数が、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.6、2.7、2.8、2.9及び3からなる群から選択される、上記[13]に記載の組成物。
[15]アルデスロイキンあたりの分岐ポリエチレングリコール部分の平均数が約2.5である、上記[13]に記載の組成物。
[16]nの値が5~2000の範囲である、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[17]nの値が10~1000の範囲である、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[18]nの値が10~750の範囲である、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[19]nの値が10~500の範囲である、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[20]nの値が20~250の範囲である、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[21]nの平均値が約226である、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[22]各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が、約250ダルトン~約90000ダルトンの範囲にある、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[23]各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が、約1000ダルトン~約60000ダルトンの範囲にある、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[24]各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が、約5000ダルトン~約60000ダルトンの範囲にある、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[25]各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が、約10000ダルトン~約55000ダルトンの範囲にある、上記[1]~[15]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[26]モルベースで、約5モル%以下のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約28モル%~約60モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約24モル%~約65モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約12モル%以下のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[27]80%以上の組み合わされたジ-及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、上記[26]に記載の組成物。
[28]モルベースで、約2.5~約4.5モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約35~約50モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約38~約46モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約3~約10モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[29]あわせた合計が約80~約95モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、上記[28]に記載の組成物。
[30]モルベースで、約2.8~約3.8モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[31]あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、上記[30]に記載の組成物。
[32]モルベースで、約2.8~約3.8モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、前記組成物がリジンK7又はK8又はK31又はK75の1つに付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートの混合物を含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[33]あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、上記[32]に記載の組成物。
[34]モルベースで、約2.8~約3.8モル%のモノ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約44~約48モル%のジ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約41~約44モル%のトリ-PEG化IL-2コンジュゲート、及び約7~約9モル%のより高PEG化されたIL-2コンジュゲートを含み、前記組成物がリジンK7に付着したPEG部分を有するモノ-PEG化IL-2コンジュゲートを含み、各分岐ポリエチレングリコール部分の名目上の平均分子量が約20000ダルトンである、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[35]あわせた合計が約87~約90モル%のジ-PEG化及びトリ-PEG化IL-2コンジュゲートを更に含む、上記[34]に記載の組成物。
[36]薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む、上記[1]~[35]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[37]非経口投与に適した形態の、上記[1]~[35]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[38]皮下投与に適した形態の、上記[1]~[35]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[39]水性希釈剤を含む、上記[36]に記載の組成物。
[40]約5のpHを有する、上記[39]に記載の組成物。
[41]酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びスクロースを更に含む、上記[39]又は上記[40]に記載の組成物。
[42]1.5mg/mlタンパク質当量、10mM酢酸ナトリウム、110mM塩化ナトリウム、2%スクロース(重量/体積)、pH5.0を含む上記[37]記載の組成物。
[43]上記[1]~[42]に記載のいずれか一項に記載の組成物の治療有効量を被験体に投与することにより、被験体における制御性T細胞対エフェクターT細胞の比率を増加させる方法。
[44]制御性T細胞がFoxp3+細胞及びCD25+細胞から選択される、上記[43]に記載の方法。
[45]エフェクターT細胞がCD4+細胞及びCD8+細胞から選択される、上記[44]に記載の方法。
[46]ベースラインと比較した場合、制御性T細胞の倍増が、in-vivoマウスモデルで評価した場合、少なくとも約2の値に達する、上記[43]~[45]に記載のいずれか一項に記載の方法。
[47]ベースラインと比較した場合、制御性T細胞の倍増が、in-vivoマウスモデルで評価した場合、少なくとも約4の値に達する、上記[43]~[45]に記載のいずれか一項に記載の方法。
[48]制御性T細胞数の増加が、投与後少なくとも3日間、ベースラインレベルを超えて持続する、上記[43]~[47]に記載のいずれか一項に記載の方法。
[49]制御性T細胞数の増加が、投与後少なくとも5日間、ベースラインレベルを超えて持続する、上記[43]に記載の方法。
[50]上記[1]~[42いずれか一項]に記載の組成物の治療有効量を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を有する被験体を治療する方法。
[51]前記投与が皮下注射によるものである、上記[50]に記載の方法。
[52]前記投与が2週間に1回又は4週間に1回行われる、上記[50]~[51]に記載のいずれか一項に記載の方法。
[53]前記投与が、2週間に1回、3μg/kg~24μg/kgの用量を含む、上記[50]~[52]に記載のいずれか一項に記載の方法。
[54]治療法に使用するための、上記[1]~[42]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[55]自己免疫疾患の治療に使用するための、上記[1]~[42]に記載のいずれか一項に記載の組成物。
[56]自己免疫疾患を治療するための薬剤を製造するための、上記[1]~[42]に記載のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【配列表】