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特許7235775水性エチレン-ビニルアルコールコポリマー分散体及び前記分散体でコーティングされた酸素バリア多層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】水性エチレン-ビニルアルコールコポリマー分散体及び前記分散体でコーティングされた酸素バリア多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20230301BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20230301BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20230301BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L29/04 C
C08K5/05
C08K5/5415
C08L5/00
B32B27/30 102
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020568506
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2019055909
(87)【国際公開番号】W WO2020012396
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】102018000007179
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ヴァッカ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・サントロ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ムドゥ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-052501(JP,A)
【文献】特開平08-067786(JP,A)
【文献】特開2001-172443(JP,A)
【文献】国際公開第2006/057351(WO,A1)
【文献】特開平11-310712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/10、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.24から38mol%のエチレン含有量を有するカプセルの形態の第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーと、
b.15mol%未満のエチレン含有量を有する第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーと、を含み、
前記第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーと前記第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーの質量比(第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマー/第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマー)が0.40から0.70である、水性分散体。
【請求項2】
アルコールを5から10質量%の量でさらに含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
前記第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーのカプセルが、0.1から10.0μmの体積平均直径を有する粒子径分布を有する、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項4】
1.0μmより大きい直径を有する前記第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーのカプセルが、内部空洞を含む、請求項3に記載の水性分散体。
【請求項5】
フィラーを0.1から7質量%の量でさらに含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項6】
前記フィラーが、ゼオライト、グラフェン、酸化グラフェン、セルロース及びリン酸ジルコニウムからなる群から選択される、請求項5に記載の水性分散体。
【請求項7】
テトラエトキシシラン(TEOS)を前記第1及び前記第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーに対して25から100質量%の量でさらに含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項8】
キトサンを前記第1及び前記第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーに対して0.5から5質量%の量でさらに含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項9】
少なくとも1つの基板;及び
少なくとも1つのコーティング層を含むラッカーでコーティングされたバリア積層体であって、
前記コーティング層が、24から38mol%のエチレン含有量を有するカプセルの形態の第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマー、及び15mol%未満のエチレン含有量を有する第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーを含み、前記第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーと前記第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーの質量比(第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマー/第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマー)が0.40から0.70である、ラッカーでコーティングされたバリア積層体。
【請求項10】
前記基板が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、でんぷんブレンド、リグニンセルロースブレンド及びセロファンからなる群から選択される、請求項9に記載のラッカーでコーティングされたバリア積層体。
【請求項11】
接着層をさらに含む、請求項9に記載のラッカーでコーティングされたバリア積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に食品包装の分野における要求を満たすことに関する、優れた酸素バリア目的を達成するための、柔軟な又は硬い基板をコーティングするためのラッカーとして使用されるのに好適な、エチレン-ビニルアルコール(一般的にEVOHと省略される)コポリマーの水性分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンビニルアルコール(EVOH)は、エチレン及びビニルアルコールのホルマールコポリマーであり、通常はエチレン及び酢酸ビニルの重合並びにそれに続く得られたエチレン-酢酸ビニル(EVA)の加水分解によって調製される。EVOHコポリマーは、大抵、mol%で測定されるそのエチレン含有量によって定義され、結果として、高エチレンEVOH及び低エチレンEVOHの両方が商業的に入手可能であり得る。
【0003】
本発明の適用分野に関して、食品の品質の低下、保存可能期間の減少及び腐敗の事象は、包装に入った酸素が食品-反応性成分と反応し又は好気性細菌の増殖を促進させる場合の酸化現象によって起こりうることが公知である。したがって、食品包装分野における近年の研究の重要な役割は、低い酸素透過性(すなわち、高いバリア性)を有するポリマー材料を調製することに重点を置いている。前述での予想どおり、酸素-感受性の食品又は医薬品への周囲からの酸素の透過を制限することによって、製品の品質は保存され得、廃棄物削減及びコスト節約の結果に伴い保存可能期間は増加し得る。
【0004】
高いバリア性の要求に加えて、プラスチック包装の材料は、力学的強度、耐熱性、耐薬品性、透明性及び柔軟性等の様々な他の特性を有するべきである。
【0005】
合成ポリマー材料は、食品包装のための様々な商品の製造において広く使用されているが、酸素バリア特性を有するコーティング又は層を提供するために従来使用されてきたエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコールコポリマー(PVOH)及びポリ塩化ビニル(PVC)等の、特定のポリマーが存在する。
【0006】
EVOHは、0%相対湿度(RH)での、乾燥状態におけるより優れた酸素バリア性能によって特徴付けられており、バリア材料としてのその使用に関する最も重要な問題は、その水分感受性に関する。実際に、ポリマー組成物を膨張させその結晶相を部分的に融解する湿気の作用に起因して、EVOHの親水性は、(通常は60%RHより高い)高湿度状態に直接さらされた場合に大量の水の吸収を引き起こし、最終的な酸素透過性の増加の結果を伴う。したがって、食品包装におけるバリアとしてのEVOHの性能と、特に高湿度及び/又は高温の過酷な状態に関与する場合の包装がさらされる処理条件及び保存状態との間に、考慮すべき厳しい関連性がある。
【0007】
欧州特許第2164898号には、ブレンドの質量に基づいて65から95質量%の量の21から30mol%のエチレン-ビニルアルコールコポリマー含有量を有する第1のポリマー成分と、5から35質量%の量の41~50mol%の範囲のエチレン-ビニルアルコールコポリマーを有する第2のバリア成分とのブレンドを含むバリアフィルムが記載されている。
【0008】
前述の欧州の先行文献において、最終的なバリアフィルムは押し出し技術、例えばチューブ状キャスト共押し出し(tubular cast coextrusion)、チューブ状又はフラット状キャスト押し出し(tubular or flat cast extrusion)、(単層に対する)ブローバブル(blown bubble)押し出し又は(多層に対する)ブローバブル共押し出しによって得られることに注目することが重要である。押し出しプロセスは、いずれにしても、使用される材料のいくつかの特性、例えばプロセス温度に適した融解温度、高温プロセス条件下及び標準大気下での熱力学的安定性(酸化リスク/分解リスク)、圧縮応力及びせん断応力下での力学的安定性並びに高温プロセスに起因する添加剤又はフィラーの選択における制限を必要とし、特に生体適合性の包装の分野においてそれらの適用性を制限し得る。
【0009】
したがって、包装用の溶液における前述の重要な特性を得るために、最も重要な工程の一つは、製造に適したEVOHを含有する水系の配合物、例えば、ラッカーコーティングによって代表される。
【0010】
本分野において、ラッカーという用語は、通常は包装コーティングを製造するために適用される液状配合物を意味しており、あらゆる劣化から包装された製品を保護し、製造プロセスのための基板の湿潤、柔軟性、接着促進及び潤滑性等の技術的効果を得るために、好適な物理的特性及び耐薬品特性を要する。
【0011】
この点について、特開2001-172443号公報には、16から70mol%のエチレン含有量(高エチレン含有量)を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマー及び2から15mol%のエチレン含有量(低エチレン含有量)を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む水性組成物が記載されている。第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーは微粒子の形態で水中に分散され、続いて第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーの水性分散体中に分散される。特開2001-172443号公報において、高エチレン含有量を有するEVOHは、高い湿度状態下での最も優れた性能システムと考えられており、したがって、主成分としてその使用から開始し、組成物の加工性(すなわち溶媒の適合性)を改善するために、低エチレン含有量を有するEVOHを次に加える。特に、特開2001-172443号公報は、低エチレンEVOHは、100質量部の第1のEVOHに対して0.05から100質量部の量であることを記載しており、したがって、高エチレンEVOHの量が常に低エチレンEVOHの量以上である組成物を開示している。
【0012】
欧州特許第1816159号は、ガスバリア性能、長期間保存安定性及び優れたフィルム形成特性によって特徴付けられる水性エチレン-ビニルアルコールベースのコポリマー分散体を開示している。欧州特許第1816159号は、具体的には、15~65mol%のエチレン含有量及び80mol%以上の鹸化度を有するEVOHコポリマー、塩基で中和されたエチレン/α,β-不飽和カルボン酸ベースのコポリマー及び75~100mol%の鹸化度、100~3500の重合度を有しかつ100質量部のEVOHコポリマーにつき0.5~100質量部の含有量であるポリビニルアルコールを使用する。直接得られる積層体は、層の厚みが15μmの場合、0.286fm/Pa・s以下の、好ましくは0.229fm/Pa・s以下の20℃及び85%相対湿度の条件下で測定された酸素透過性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許第2164898号
【文献】特開2001-172443号公報
【文献】欧州特許第1816159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
10μm未満の減少された厚みを有するフィルムに関する全ての利点を保ちながら、フィルム形成特性に優れており、かつ高いガスバリア性能によって特徴付けられる水性エチレン-ビニルアルコールベースのコポリマー分散体を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
具体的には、本発明は15mol%未満のエチレン含有量(低エチレン含有量)を有する第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマー中に分散された、24から38mol%のエチレン含有量(高エチレン含有量)を有するカプセルの形態の第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーを含み、前記第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーと前記第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーの質量比が0.40から0.70であることを特徴とする水性分散体に関する。
【0016】
前述の先行文献を考慮すると、本発明も低エチレン含有量及び高エチレン含有量によってそれぞれ特徴付けられる2種類のEVOHの使用を開示しているが、本発明において実現される最終的な組成物は完全に異なりかつ新しいことが明白である。
【0017】
先行技術と比較した場合、低エチレンEVOHに対するより多くの量の高エチレンEVOHは、60%RH未満の中相対湿度(medium relative humidity)での酸素バリア性能の低下を引き起こすため、特許請求の範囲に係る組成物は、特に0.40から0.70の質量比の、低エチレンEVOHに対するより少ない量の高エチレンEVOHによって特徴付けられている。さらに、15mol%未満のエチレン含有量を有する、特許請求の範囲に記載された相対量の低エチレンEVOHによって水溶性系を得られるようになり、その一方でより高いエチレン含有量を有する、すなわち24~38mol%の範囲のエチレン含有量を有する特許請求の範囲に記載された相対量のEVOHによって、高湿度状態の存在下での安定性の向上が可能になる。
【0018】
より具体的には、特許請求の範囲に記載した高エチレン含有量ポリマー及び低エチレン含有量ポリマーの間の割合は、先行技術に対して逆であり、高湿度状態で本発明のガスバリアを使用する目的を考慮すると、本発明者らの発明は、特に、特開2001-172443号公報の10から15[ccday-1-2]の値に対して、10[ccday-1-2]未満の20℃及び80%RHでの酸素透過測定(OTR)によって特徴付けられた、より優れた酸素透過性能を報告する。
【0019】
さらに、本発明者らは、その結晶形の安定化を通してEVOHバリア特性を向上するために、噴霧乾燥、乳化、ナノ沈殿及び超臨界流体技術等のいくつかのカプセル調製方法が採用されることを見出した。特に噴霧乾燥方法は、高エチレンEVOHカプセルを製造するために採用されている。得られた最終的な水性分散体のカプセルは、湿潤環境でその結晶性を維持し、0.1から10.0μmの体積平均直径を有する粒子径分布及び1.0μmより大きい直径を有する粒子に対する内部空洞の存在によって特徴付けられている。前述の体積平均直径(VMD)は、乾式分散レーザー回析によって測定されたサンプルの体積加重平均粒子径(volume weighted mean particle size)として定義され、フラウンホーファー理論を用いて計算され得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
いくつかの実施形態において、コーティングの均一性を向上するために、水性分散体は任意選択的にアルコール、例としてエタノール又はイソプロパノールを、10質量%未満の量で含み得る。
【0021】
さらに、最終的なバリアの性能を向上することを目的として、本発明の分散体は、0.1から7質量%の量で活性フィラー及び/又は不活性フィラーの添加をさらに含み得る。特に、ゼオライト、例としてLinde Type A(LTA)ゼオライト等の活性フィラーの使用は、低湿度条件下(60%RH未満)及び高湿度条件下(80%RH)の両方でより高いバリア性能を誘導する湿度溶解性(moisture solubility)の点でポリマー性能を向上し得る。一方で、グラフェン、酸化グラフェン又はリン酸ジルコニウム等の不活性フィラーの添加は、高分子網目中の酸素の拡散係数を減少させることによって、乾燥状態、すなわち0%相対湿度での酸素バリア性能を向上させ得る。
【0022】
コーティングの力学的安定性及び接着性は、テトラエトキシシラン(TEOS)等のいくつかの分散剤を、好ましくはEVOHの量に対して25から100質量%の濃度で使用することで向上され得、又はセルロース等のフィラーが、好ましくはEVOHの量に対して7質量%未満の濃度で添加され得る。さらに、キトサン等の添加剤が、コーティングのリサイクル適合性を向上させるために、好ましくはEVOHに対して0.5から5質量%の量で添加され得る。
【0023】
本発明によって達成される第2の態様として、高いバリア性能を維持しながら、透明性、ヘイズレベル、プラスチック基板への接着性、加工性、より高いリサイクル適合性、力学的安定性及びコストの減少等の優れた特性を保つために、低減された厚みを有するコーティングされたバリア積層体が得られ得る。
【0024】
実際に、欧州特許第1816159号で報告されたように、特に高湿度状態において高いバリア性能を獲得するために、通常10μmより厚い、最終的なフィルムのより厚い厚みが必要であることが知られている。
【0025】
それにもかかわらず、本開示において、発明者らは少なくとも1つの基板及び少なくとも1つのコーティング層を含むラッカーでコーティングされたバリア積層体であって、前記コーティング層は、24から38mol%のエチレン含有量を有する第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマーのカプセル、及び10mol%未満のエチレン含有量を有する第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーを含み、前記第1のエチレン-ビニルアルコールコポリマー及び前記第2のエチレン-ビニルアルコールコポリマーは、0.40から0.70のそれぞれの質量比であり、前記コーティング層は0.1から10.0μmの厚みを有することを特徴とする、ラッカーでコーティングされたバリア積層体を調製することができる。
【0026】
薄い厚みの値で特徴付けられるラッカーでコーティングされたバリア積層体の調製のために、分散体はスパイラルバー(spiral bar)を用いるキャスティングによって得られ得、溶媒は蒸発され、得られたコーティングは80℃から150℃、好ましくは130℃から150℃の温度でのベーキング工程に付される。別の調製方法は、ブレーディング(blading)、スピンコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、3-ロールコーティング、スロットダイコーティング、ニードルディスペンシング、ジェットディスペンシングであり得る。得られた薄いコーティングされた層は、優れたOTR値を提供し、一方で透過率及びヘイズ値等の包装の用途において要求される代表的な特性に対して優れた性能を維持する。
【0027】
さらに、ラッカーコーティングの組成物は、制御された雰囲気での食品包装の用途に好適な、それを作るCOに対するバリアとして関連する性能及びそれぞれの積層体によっても特徴付けられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、積層構造の基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、でんぷんブレンド、リグニンセルロースブレンド及びセロファンからなる非限定的な群から選択されることができ、8から150μmの厚みを有する。
【0029】
他の可能な実施形態において、前述のラッカーでコーティングされた積層体は、コーティングされた層、基板又はそれらの両方と接触して配置され得る、ポリウレタン積層接着剤などの接着層をさらに含む多層系からなり得る。
【0030】
以下、本発明を下記の実施例を参照してより詳細に説明する。
【実施例
【0031】
本発明に従って、試料A~Hにおいて、(100rpm及び80℃で)攪拌しながらエチレン-ビニルアルコールコポリマーをヒドロアルコール溶液に加えることで、高エチレンEVOHカプセルを調製した。ポリマーの可溶化の後に、得られた配合物を噴霧乾燥し、必要であれば、5μm(±20%)の体積平均直径及び10μm未満のD90(ここでD90は90%の累積粒子径分布での粒子寸法として定義されている)を有する単分散のカプセルを得るために、ジェットミル処理にさらに付した。次に、目的のガスバリア特性を有する最終的な水性分散体を得るために、15mol%未満のエチレン含有量を有する低エチレンEVOHコポリマーの水性配合物にこの配合物を加えた。最終的に、ラッカーでコーティングされたバリア積層体の調製のために、スパイラルバーを用いて分散体をキャスティングし、溶媒を蒸発し、得られたコーティングを80℃から150℃の温度でのベーキング工程に付した。
【0032】
比較試料1、2及び3を、特許請求の範囲に記載した範囲外のEVOHコポリマー間の相対比率を用いること以外は上述の方法によって調製した。
【0033】
比較試料4を、欧州特許第1816159号に従って調製した。具体的には、第一の溶液(A)を、80℃で攪拌しながらHO中でアクリル酸及びNaOHを可溶化することで調製した。第2の溶液(B)のために、EVOH27mol%の量を80℃で攪拌しながら2-プロパノール及びHO中で可溶化した。続いて、第1の溶液(A)を第2の溶液(B)に注入し、得られた溶液を5℃で12時間冷却し、次に低エチレンEVOH(15mol%)ベースの溶液と混合し、その後キャスティングした。
【0034】
【表1】
【0035】
試料組成物AからHは、本発明によるものであり、単位厚みに対する相対的なOTRの値(OTR/μm)は、2つのEVOH成分間の異なる比率によって特徴付けられている比較試料1、2及び3の値、並びに欧州特許第1816159号に従って調製した比較試料4の値と比較して非常に優れていた。
【0036】
(表1にまとめられている)前述の試料および比較試料の全てに対して得られた結果は、0.4未満又は0.7より大きい、本発明の特許請求の範囲に記載された範囲外の高エチレン含有量EVOH及び低エチレン含有量EVOHの間の質量比は、低減された(すなわち10.0μm未満の)厚みを有するフィルム及び高湿度条件での高いガスバリア要求に適さない酸素透過値をもたらすことを示す。
【0037】
本発明による組成物を用いることで得られ得る第2の技術的効果の例として、表2及び表3は、いくつかの試料に対する透過率の測定値、ヘイズの測定値及びCO透過度の測定値を示す。
【0038】
【表2】
【0039】
CO透過度を、50%RHで試料の両面をさらし(50%RH/50%RH)、次にバリア積層体のラッカーでコーティングされた表面の相対湿度を80%RHの値まで上げる(80%RH/50%RH)ことで測定した。
【0040】
特に、実験データは、本発明の組成物により得られたコーティングが、先行技術と比較した場合に、より優れた性能を有し(試料B対比較試料1)、様々な湿度条件においてCOバリアとしても作用する能力を示す。
【0041】
【表3】