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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230301BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H05K7/20 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021014299
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117678
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】秋山 晶吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 央
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126639(JP,A)
【文献】特開2008-235387(JP,A)
【文献】特開2016-181547(JP,A)
【文献】特開2018-186633(JP,A)
【文献】特開2009-239212(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189726(WO,A1)
【文献】特開2011-233849(JP,A)
【文献】特開2013-041334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/20
H05K7/20
H01L23/36;23/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
厚み方向で一方側の外面を形成する第1カバー部材と、他方側の外面を形成する第2カバー部材と、を有する筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
ファン筐体の内部にインペラ部を収容した送風ファンと、
互いに並んで設けられた複数のフィンを有し、第1面が前記第1カバー部材との間に第1の隙間を設けて配置され、第2面が前記第2カバー部材との間に第2の隙間を設けて配置され、前記第1面及び前記第2面と直交する側面が前記送風ファンの排気口に臨んで配置されることで、各フィン相互間の隙間に前記送風ファンからの空気が流通するヒートシンクと、
一部が前記第2の隙間に配置され、前記発熱体と前記ヒートシンクの前記第2面との間を熱的に接続する熱輸送デバイスと、
を有し、
前記ヒートシンクは、
前記第1面と前記側面とが交差する角部における前記複数のフィンの高さ方向の一部を面取り状に斜めに切り欠いたように形成されることで、前記排気口と前記第1の隙間との間に前記排気口からの空気の一部を前記第1の隙間へと導入する空気流路を形成する切欠形状部と、
前記ファン筐体内での前記インペラ部による空気の流通方向で前記排気口の上流側端部に臨む位置に設けられ、前記切欠形状部の幅方向で一方側を塞ぐ第1壁部と、
前記ファン筐体内での前記空気の流通方向で前記排気口の下流側端部に臨む位置に設けられ、前記切欠形状部の幅方向で他方側を塞ぐ第2壁部と、
を有し、
さらに、前記第1壁部と前記第1カバー部材との間、及び前記第2壁部と前記第1カバー部材との間を塞ぐことで、前記筐体内の空気が前記第1壁部及び前記第2壁部と前記第1カバー部材との間の隙間から前記排気口に逆流することを防ぐためのシール部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項に記載の電子機器であって、
前記切欠形状部は、前記複数のフィンのうち、前記幅方向で一方側及び他方側にそれぞれ位置する複数枚のフィンを除いた各フィンに形成され、
前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記幅方向で一方側及び他方側にそれぞれ位置し、前記切欠形状部が形成されていない前記複数枚のフィンによって構成され、
前記シール部材は、前記複数枚のフィンの上面と前記第1カバー部材との間に介在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記熱輸送デバイスの前記第2面に接続された部分は、前記第2カバー部材との間に第3の隙間を設けて配置され、
前記ファン筐体は、前記第2カバー部材側の外面に開口し、前記インペラ部によって送られる空気を第3の隙間へと流通させる補助排気口を有する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を冷却するための冷却モジュールを搭載している(例えば特許文献1参照)。この種の冷却モジュールには、CPU等が発生する熱を吸熱して輸送するヒートパイプ等の熱輸送デバイスと、熱輸送デバイスで輸送された熱を筐体外に排出するヒートシンク及び送風ファンと、を備えた構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6469183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なヒートシンクは、互いに並ぶ複数のフィン相互間の隙間に送風ファンからの空気を流通させることで、熱輸送デバイスで輸送された熱を放熱する構成である。このため、ヒートシンクは、送風抵抗が大きい。その結果、送風ファンは、本来の風量を発生することができず、モジュール全体での冷却効率が低下する要因となっていた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却効率を高めることができる冷却モジュールを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、厚み方向で一方側の外面を形成する第1カバー部材と、他方側の外面を形成する第2カバー部材と、を有する筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、ファン筐体の内部にインペラ部を収容した送風ファンと、互いに並んで設けられた複数のフィンを有し、第1面が前記第1カバー部材との間に第1の隙間を設けて配置され、第2面が前記第2カバー部材との間に第2の隙間を設けて配置され、前記第1面及び前記第2面と直交する側面が前記送風ファンの排気口に臨んで配置されることで、各フィン相互間の隙間に前記送風ファンからの空気が流通するヒートシンクと、一部が前記第2の隙間に配置され、前記発熱体と前記ヒートシンクの前記第2面との間を熱的に接続する熱輸送デバイスと、を有し、前記ヒートシンクは、前記第1面と前記側面とが交差する角部を切り欠いたように形成され、前記排気口と前記第1の隙間との間に空気流路を形成する切欠形状部と、前記ファン筐体内での前記インペラ部による空気の流通方向で前記排気口の上流側端部に臨む位置に設けられ、前記切欠形状部の幅方向で一方側を塞ぐ第1壁部と、を有する。
【0007】
本発明の第2態様に係る冷却モジュールは、ファン筐体の内部にインペラ部を収容した送風ファンと、互いに並んで設けられた複数のフィンを有し、前記フィンの起立方向で一方側の第1面及び他方側の第2面と直交する側面が前記送風ファンの排気口に臨んで配置されることで、各フィンの相互間の隙間に前記送風ファンからの空気が流されるヒートシンクと、前記ヒートシンクの前記第2面に接続された熱輸送デバイスと、を備え、前記ヒートシンクは、前記第1面と前記側面とが交差する角部を切り欠いたように形成され、前記排気口からの空気を前記第1面に沿って流通させるための空気流路を形成する切欠形状部と、前記ファン筐体内での前記インペラ部による空気の流通方向で前記排気口の上流側端部に臨む位置に設けられ、前記切欠形状部の幅方向で一方側を塞ぐ第1壁部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
図3図3は、冷却モジュールを上方から見た斜視図である。
図4図4は、図3に示す冷却モジュールを下方から見た斜視図である。
図5図5は、図3に示すヒートシンク及び送風ファンの拡大図である。
図6図6は、図2中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、又はゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を図1に示すように開いた状態とし、ディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、下面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側のカバー部材14Aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14Bは、略平板形状を有し、カバー部材14Aの下面開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14A,14bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14は、後端部がヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。
【0015】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す平面図である。図2は、筐体14をキーボード20の少し下で切断した状態を模式的に示す。
【0016】
図2に示すように、筐体14の内部には、冷却モジュール22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが設けられている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に亘って延在している。マザーボード24は、CPU(Central Processing Unit)30、及びGPU(Graphics Processing Unit)31の他、通信モジュール、メモリ等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の裏面やカバー部材14Aの内面14Aaにねじ止めされている。マザーボード24は、上面がカバー部材14Aに対する取付面となり、下面がCPU30やGPU31等の実装面となる。
【0018】
CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。GPU31は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。本実施形態の電子機器10の場合、GPU31は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。CPU30は、GPU31に次ぐ発熱量の発熱体である。
【0019】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0020】
マザーボード24は、バッテリ装置26の後方に配置され、左右方向に延在している。CPU30及びGPU31は、マザーボード24の左右略中央で左右に並んでおり、後述する送風ファン38L,38R間の谷間となる位置に設置されている。マザーボード24は、送風ファン38L,38Rによって複数に分割された構成でもよい。
【0021】
次に、冷却モジュール22の構成を説明する。
【0022】
冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと排出する冷却装置である。冷却モジュール22の冷却対象となる電子部品は、CPU30及びGPU31の一方、又はこれら以外であってもよい。冷却モジュール22は、マザーボード24の下面に積層される。
【0023】
図3は、冷却モジュール22を上方から見た斜視図である。図4は、図3に示す冷却モジュール22を下方から見た斜視図である。図2図4に示すように、冷却モジュール22は、左右一対のヒートシンク36L,36Rと、左右一対の送風ファン38L,38Rと、前後一対のヒートパイプ40,41と、ベーパーチャンバ42と、熱伝導プレート44,45と、を備える。
【0024】
左右のヒートシンク36L,36Rは、大きさ等は多少異なるが、実質的には左右対称構造である。同様に、左右の送風ファン38L,38Rも実質的には左右対称構造である。そこで以下では、主として左側のヒートシンク36L及び送風ファン38Lについて説明し、右側のヒートシンク36R及び送風ファン38Rについては左側のものと同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0025】
図2図4に示すように、ヒートシンク36L(36R)は、前後方向に沿って延在し、上下方向に起立した複数のプレート状のフィン36aを左右方向に等間隔に並べた構造である。隣接するフィン36a,36a間には、送風ファン38L(38R)から送られた空気が通過する隙間G0が形成されている。つまり隙間G0は、前後方向に貫通し、複数が左右方向に並んでいる。各フィン36aは、例えば下端面がプレート36bで接合され、一体化されている(図6参照)。フィン36a及びプレート36bは、アルミニウムや銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されたプレートある。図3図5では、各フィン36a及びプレート36bをまとめて1つのブロックとして模式的に図示している。本実施形態のヒートシンク36L(36R)は、送風ファン38L(38R)側の上側角部に切欠形状部46を有するが、詳細は後述する。
【0026】
図2図4に示すように、送風ファン38L(38R)は、ヒートシンク36L(36R)の前部に配置され、後向きに開口した排気口38aがヒートシンク36L(36R)の前側の側面36cに面している。送風ファン38L(38R)は、ファン筐体38bの内部に収容されたインペラ部38c(図6参照)をモータ部によって回転させる遠心ファンである。ファン筐体38bは、上面及び側面を形成するカバープレート38dと、下面を形成するカバープレート38eとで構成されている。本実施形態の送風ファン38L(38R)は、各カバープレート38d,38eのそれぞれに吸気口38f,38gが開口している。吸気口38f,38gは、一方を省略してもよい。本実施形態の送風ファン38L(38R)は、下側のカバープレート38eの後縁部に補助排気口48を有するが、詳細は後述する。
【0027】
図2及び図4に示すように、ヒートパイプ40,41は、例えば中央部が湾曲したパイプ型の熱輸送デバイスである。本実施形態では、2本のヒートパイプ40,41を前後に2本1組で並列して用いているが、ヒートパイプは1本や3本以上で用いてもよい。ヒートパイプ40,41は、薄く扁平な金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入したものである。金属パイプは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間は、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウイックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0028】
図2図4に示すように、ベーパーチャンバ42は、ヒートパイプの一種類であるプレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ42は、2枚の薄い金属プレート間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。ベーパーチャンバ42において、金属プレートの材質、作動流体の種類、及び密閉空間内に設置されるウイックの構成等は、上記したヒートパイプ40,41と同様でよい。
【0029】
図2図4に示すように、熱伝導プレート44,45は、ベーパーチャンバ42の前縁部及び後縁部に接合され、ここから張り出すように設けられている。熱伝導プレート44,45は、アルミニウムや銅等の金属やグラファイト等の熱伝導率が高い材質で形成されたプレートである。熱伝導プレート44,45は、ベーパーチャンバ42が拡散した熱をさらに拡散し放熱する補助的な熱拡散部材である。熱伝導プレート44,45は、ベーパーチャンバ42よりも板厚を薄く構成できるため、筐体14内で高さ方向のスペースが狭い領域にも容易に設置できる。
【0030】
以上のように構成された冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ42の上面がCPU30及びGPU31に対してそれぞれ受熱板30a,31aを介して当接する。受熱板30a,31aは、銅やアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成されたプレートである。ヒートパイプ40,41は、受熱部となる中央部がベーパーチャンバ42の下面に接合され、放熱部となる両端部がそれぞれヒートシンク36L,36Rの下面36dに接合される。
【0031】
これによりCPU30及びGPU31が発生した熱は、ベーパーチャンバ42で吸熱及び拡散されると共に、ヒートパイプ40,41を介してヒートシンク36L,36Rまで効率よく輸送された後、送風ファン38L(38R)の送風によって筐体14の外部へと排出される。同時に、ベーパーチャンバ42で拡散した熱は、熱伝導プレート44,45を介してさらに拡散及び放熱される。
【0032】
図5は、図3に示すヒートシンク36R及び送風ファン38Rの拡大図である。上記した通り、左側のヒートシンク36L及び送風ファン38Lの基本的な構成は図5に示すものと左右対称である。図6は、図2中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
【0033】
図5及び図6に示すように、ヒートシンク36L(36R)は、上面36eがカバー部材14Aの内面14Aaとの間に隙間G1を設けて配置され、下面36dがヒートパイプ40,41を間に挟んでカバー部材14Bの内面14Baとの間に隙間G2を設けて配置されている。ヒートパイプ40,41の端部は、隙間G2に配置され、下面36dに接続されている。さらに前側の側面36cが送風ファン38L(38R)の排気口38aに臨んで配置される。
【0034】
これによりヒートシンク36L(36R)は、排気口38aから排出された空気が各フィン36a相互間の隙間G0を後方に向かって流れる。隙間G0を通過した空気は、筐体14の後端面に形成された筐体排気口14Abから外部に排出される。
【0035】
なお、ヒートシンク36L(36R)は、左右方向に並んだ複数のフィン36aをプレート36bで支持した構成である。このため、上面36eは、実際には隙間G0を介して左右方向に並んだ各フィン36aの上端面によって形成されているが、説明の便宜上、上面36eと呼んでおり、側面36cについても同様である。一方、下面36dは、プレート36bで構成されている。ヒートシンク36L(36R)は、上下逆向きで設置されてもよい。つまりヒートシンク36L(36R)は、上面36eが下側のカバー部材14B側に配置され、下面36dが上側のカバー部材14A側に配置されてもよい。
【0036】
本実施形態の冷却モジュール22は、隙間G0だけでなく、ヒートシンク36L(36R)の上面36e及び下面36dに沿って空気を流通させる構成も備える。この空気の流れは、ヒートシンク36L(36R)に設けた切欠形状部46と、送風ファン38L(38R)に設けた補助排気口48とによって形成される。
【0037】
先ず、切欠形状部46及びその周辺部の構成を説明する。
【0038】
図3図5及び図6に示すように、ヒートシンク36L(36R)は、上面36eと側面36cとが交差する角部に、切欠形状部46と、左右一対の壁部50a,50bとを備える。
【0039】
切欠形状部46は、左右に並んだフィン36aのうち、左右両端側の数枚(例えば1~5枚程度)を除いた残りのフィン36aの上記角部を切り欠いたような面取り状の部分である。切欠形状部46の下端部(後端部)は、対向する送風ファン38L(38R)の排気口38aの上下中央部或いはその近傍に位置している。これにより切欠形状部46は、排気口38aと隙間G1との間に排気口38aからの空気を流通させる空気流路46aを形成している。図6中に1点鎖線で示す矢印は、排気口38aから筐体排気口14Abに向かう空気の流れを模式的に示したものである。
【0040】
図3及び図5中に1点鎖線で示す円弧状の矢印は、送風ファン38L(38R)におけるインペラ部38cの回転方向を示している。一方の壁部50aは、インペラ部38による空気の流通方向で排気口38aの上流側端部38a1に臨む位置に設けられ、切欠形状部46の幅方向で一方側を塞いでいる(図2及び図6も参照)。他方の壁部50bは、インペラ部38による空気の流通方向で排気口38aの下流側端部38a2に臨む位置に設けられ、切欠形状部46の幅方向で他方側を塞いでいる(図2も参照)。
【0041】
壁部50a,50bは、左右に並んだ各フィン36aのうち、中央部で切欠形状部46を形成する各フィン36a以外、つまり左右両端側に位置し、切欠形状部46が形成されていない数枚のフィン36aによって構成されている。壁部50a,50bは、それぞれ少なくとも1枚のフィン36aによって構成されればよい。本実施形態ではその上面36eにシール部材52を貼り付けるスペースを確保するため、壁部50a,50bは、4~5枚のフィン36aによって形成している。ヒートシンク36L(36R)は、全てのフィン36aの上記角部を切除して切欠形状部46を形成してもよく、この場合、壁部50a,50bは、ヒートシンク36L(36R)の左右の側面に別のプレート等を固定して構成してもよい。
【0042】
壁部50a,50bの上面36eには、シール部材52が設けられている。シール部材52は、壁部50a,50bとカバー部材14Aの内面14Aaとの間を塞ぐように設けられている。シール部材52は、例えば帯状に形成されたスポンジやゴムである。シール部材52は、筐体14内の空気が壁部50a,50bとカバー部材14Aとの間の隙間から排気口38aに逆流することを抑制する。本実施形態のシール部材52は、壁部50a,50bの上面の他、送風ファン38L(38R)の上面の外縁に沿った部分にもけられている(図5参照)。
【0043】
次に、補助排気口48及びその周辺部の構成を説明する。
【0044】
図4及び図6に示すように、送風ファン38L(38R)は、ファン筐体38bの下側のカバープレート38eの後縁部に補助排気口48を備える。
【0045】
補助排気口48は、ファン筐体38bのカバー部材14Bの一部を切り欠いて形成したものである。補助排気口48は、インペラ部38cによって送られる空気の一部を隙間G3へと流通させるための開口である。
【0046】
送風ファン38L(38R)の下面には、シール部材54が設けられている。シール部材54は、ファン筐体38bの下面(カバープレート38e)とカバー部材14Bの内面14Baとの間を塞ぐように設けられている。シール部材54は、例えば帯状に形成されたスポンジやゴムである。シール部材54は、筐体14内の空気がファン筐体38bとカバー部材14Bとの間の隙間から補助排気口48へと逆流することを抑制する。本実施形態のシール部材54は、ファン筐体38bの下面の外縁を囲むように設けられると共に、ヒートシンク36L(36R)の左右両縁部に沿うようにヒートパイプ40,41の下面にも設けられている。
【0047】
次に、切欠形状部46及び補助排気口48の作用を説明する。
【0048】
送風ファン38L(38R)の排気口38aから排出された空気の大部分は、対向するヒートシンク36L(36R)の側面36cからフィン36a,36a間の隙間G0へと流れ込む。但し、隙間G0は、各フィン36a,36a間に形成された狭小な隙間であるため、高い流通抵抗を有する。このため、排気口38aからの空気の一部は、切欠形状部46によって形成された空気流路46aを通過して隙間G1に流れ込む。さらに送風ファン38L(38R)から送られる空気の一部は、補助排気口48から排出され、ヒートパイプ40,41の下面とカバー部材14Bの内面14Baとの間の隙間G3に流れ込む。
【0049】
従って、筐体14内では、送風ファン38L(38R)から送られる空気は、図6中に3本の1点鎖線の矢印で示すように上下三方に分かれて流れ、最終的には筐体排気口14Abから筐体14の外部に排出される。その結果、電子機器10は、送風ファン38L(38R)から排出される空気が、フィン36a,36a間の隙間G0だけに流れることがなく、隙間G0での圧損によって送風量が制限されることが抑制される。このため、送風ファン38L(38R)は、その送風能力が最大限に発揮される。
【0050】
すなわち、先ず、ヒートシンク36L(36R)は、送風ファン38L(38R)の排気口38aに対向する角部に切欠形状部46を有する。これにより排気口38aから排出される空気のうち、隙間G0での圧損の影響で滞留することが懸念される余剰の空気がヒートシンク36L(36R)の上面36eに沿って隙間G1を通過する。その結果、ヒートシンク36L(36R)は、その上面36eが効率的に冷却され、全体としての放熱量が向上する。また、隙間G1に低温の空気が流通することで、ユーザが手や指を置く筐体14の上面(カバー部材14A)の温度上昇を抑制することもできる。
【0051】
この際、切欠形状部46は、その両端部が壁部50a,50bで塞がれている。このため、筐体14内の空気が切欠形状部46の側部から排気口38a内に逆流することが抑制される。なお、壁部は、少なくとも一方の壁部50aのみを有していればよい。すなわち、壁部50aは、ファン筐体38b内でのインペラ部38cによる空気の流通方向で排気口38aの上流側端部38a1に臨む位置にある。この上流側端部38a1は、反対側の下流側端部38a2に比べて風速が大きい。このため、上流側端部38a1側の壁部50aは、壁逆流を引き起こす吸込みや排気口38aからの風量低下を引き起こす吐き出しを抑制する効果が壁部50bよりも高いためである。
【0052】
また、切欠形状部46は、ヒートパイプ40,41が接続されるヒートシンク36L(36R)の下面36dではなく、上面36e側に設けられている。これにより切欠形状部46は、隙間G1と排気口38aとの間を確実に連通することができる。本実施形態の場合、下面36d側は、仮にフィン36aの角部を切り欠いたとしてもヒートパイプ40,41(及びプレート36b)が邪魔になり、隙間G3に空気を流通させることは難しいからである。
【0053】
次に、送風ファン38L(38R)は、排気口38aに面した下面に補助排気口48を有する。これにより排気口38aから隙間G0,G1に排出できなかった余剰の空気は、補助排気口48を通して隙間G3を通過する。その結果、ヒートシンク36L(36R)は、その下面36dも効率的に冷却され、全体としての放熱量が一層向上する。また、隙間G3に低温の空気が流通することで、ユーザの膝上等に載置されることがある筐体14の下面(カバー部材14B)の温度上昇を抑制することもできる。補助排気口48は、省略されてもよい。
【0054】
なお、本実施形では、切欠形状部46はヒートシンク36L(36R)に設け、補助排気口48は送風ファン38L(38R)に設けている。その理由は、図3に示すように、ファン筐体38bは、上面側のカバープレート38edの吸気口38fは、1つの大きな孔で形成されているため、このカバープレート38dを切り欠くとファン筐体38bの強度に問題を生じる可能性があるからである。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0056】
送風ファン38L,38R及びヒートシンク36L,36Rは、左右一対ではなく、一方のみで構成されてもよい。また、受熱板30a,31a、ベーパーチャンバ42、熱伝導プレート44,45は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
12 ディスプレイ筐体
14 筐体
14A,14B カバー部材
22 冷却モジュール
36L,36R ヒートシンク
38L,38R 送風ファン
40,41 ヒートパイプ
46 切欠形状部
48 補助排気口
50a,50b 壁部
52,54 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6