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特許7235797離型フィルム、及び該離型フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】離型フィルム、及び該離型フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B32B27/00 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021064682
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2021172083
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0048313
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】尹 宗郁
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146294(WO,A1)
【文献】特開2013-086263(JP,A)
【文献】特開2015-003408(JP,A)
【文献】特開2020-006616(JP,A)
【文献】国際公開第2009/088094(WO,A1)
【文献】特開2009-184339(JP,A)
【文献】特開2010-069661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0118443(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101909875(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の少なくとも一面に位置した離型層と、
を含む離型フィルムであって、
前記離型層がバインダ及び離型剤を含み、
前記バインダが、メラミン系樹脂であり、
前記離型剤が、下記化学式2:
【化1】
(式中、R’ 、R’ は、互いに独立して、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、水素原子またはヒドロキシ基であり、
R’ 、R’ 、R’ 、R’ は、互いに独立して、アクリル基、ポリエステル基、ポリエーテル基、ポリウレタン基、アルキド基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボニル基、カルビノール基、ヒドロキシ基、アミン基、チオール基、フッ素基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基または水素原子であり、
nは、0ないし30の整数であり、mは、0ないし30の整数であり、n+mは、1ないし60の整数であり、
但し、R’ ~R’ の少なくとも1つはアルキル基ではない。)
で表示され、
前記離型剤は、バインダ100重量部を基準として、0.05~20重量部の量であり、
前記基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10~30nm未満であり、
前記離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が15nm未満であり、最大突起高(Rt)が150nm以下であり、
前記離型フィルムが巻き取られたロールのコア表面からロール表面までの全体距離において、前記コア表面からロール表面方向に1/3以上の位置において、ロール表面硬度が500~800である、離型フィルム。
【請求項2】
基材と、
前記基材の少なくとも一面に位置した離型層と、
を含む離型フィルムであって、
前記離型層がバインダ及び離型剤を含み、
前記バインダが、メラミン系樹脂であり、
前記離型剤が、アクリル基、エステル基、ウレタン基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボニル基、ヒドロキシ基、エーテル基、アミン基、チオール基、アルキル基及びアルケニル基から選択された1種以上の作用基を有するシリコン系樹脂であり、
前記離型剤は、バインダ100重量部を基準として、0.05~20重量部の量であり、
前記基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10~30nm未満であり、
前記離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が15nm未満であり、最大突起高(Rt)が150nm以下であり、
前記離型フィルムが巻き取られたロールのコア表面からロール表面までの全体距離において、前記コア表面からロール表面方向に1/3以上の位置において、ロール表面硬度が500~800である、離型フィルム。
【請求項3】
前記離型層のダイナミック超微細小硬度(DH)が0.2~3.0gf/μmである、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層のセラミックスシートに対する剥離力が0.5gf/25mm~10gf/25mmである、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層の残留接着率が85%以上である、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層の厚みが0.01μm~0.5μmである、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記離型フィルムがセラミックスシート成形に使用される、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項8】
基材を準備する段階と、
前記基材の少なくとも一面に、バインダ及び離型剤を含む離型層形成用組成物を塗布して熱処理し、離型層が形成されたフィルムを製造する段階と、
前記フィルムをロールに巻き取り、マスターロールを作製し、それをスリッティングして離型フィルムを製造する段階と、
を含み、
前記離型層形成用組成物中の前記離型剤の固形分含量が、バインダ100重量部を基準として、0.05~20重量部である、請求項1~7のいずれか一項に記載の離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム、及び前記離型フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリエステル系フィルムを基材にする離型フィルムは、セラミックスシート成形用離型フィルムとして使用されている。前記セラミックスシート成形用離型フィルムは、例えば、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)のセラミックスシートを加工するのに利用されている。
【0003】
最近、エネルギー保存装置の小型化及び薄型化により、例えば、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)も、小型化及び大容量化が進められており、セラミックスシートも、だんだんと薄膜化、大面積化及び高積層化が進められている。
【0004】
そのようなセラミックスシートの薄膜化、大面積化及び高積層化を充足させるためには、セラミックススラリーの固形分含量と粘度とがさらに低くならなければならず、セラミックスシート成形用離型フィルムに、セラミックススラリーが薄く、かつ大面積にコーティングされなければならない特性が要求される。
【0005】
そのような要求条件を満足させない場合、セラミックススラリーが離型フィルム上に均一に塗布されないか、あるいはセラミックススラリー塗布層にピンホールなどが生じることになり、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)加工後、ショート(short)不良を誘発し、絶縁破壊電圧(BDV:breakdown voltage、BDV)を低下させる問題が発生する。
【0006】
従って、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を有する離型フィルム、及び前記離型フィルムの製造方法への要求が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を有し、セラミックスコンデンサ(MLCC)のようなエネルギー保存装置の加工時、ショート不良が低減し、絶縁破壊電圧(BDV)が向上するというように、チップ信頼性を向上させる離型フィルムを提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記離型フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面により、
離型フィルムであって、
基材と、前記基材の少なくとも一面に位置した離型層と、を含み、
前記基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10~30nm未満であり、
前記離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が15nm未満であり、最大突起高(Rt)が150nm以下であり、
前記離型フィルムは、巻き取られたロールのコア表面からロール表面までの全体距離において、前記コア表面からロール表面方向に1/3以上の位置において、ロール表面硬度が500~800である、離型フィルムが提供される。
【0010】
前記離型層のダイナミック超微細小硬度(DH)は、0.2~3.0gf/μmでもある。
【0011】
前記離型層は、バインダ及び離型剤を含んでもよい。
【0012】
前記バインダは、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択された1種以上を含んでもよい。
【0013】
前記離型剤は、アクリル基、エステル基、ウレタン基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボニル基、ヒドロキシ基、エーテル基、アミン基、チオール基、アルキル基及びアルケニル基から選択された1種以上の作用基を有するシリコン系樹脂を含んでもよい。
【0014】
前記離型層のセラミックスシートに対する剥離力は、0.5gf/25mm~10gf/25mmでもある。
【0015】
前記離型層の残留接着率は、85%以上でもある。
【0016】
前記離型層の厚みは、0.01μm~0.5μmでもある。
【0017】
前記離型フィルムは、セラミックスシート成形にも使用される。
【0018】
他の一側面により、
基材を準備する段階と、
前記基材の少なくとも一面に、バインダ及び離型剤を含む離型層形成用組成物を塗布して熱処理し、離型層が形成されたフィルムを製造する段階と、
前記フィルムをロールに巻き取り、マスターロールを作製し、それをスリッティングして離型フィルムを製造する段階と、
を含む、離型フィルムの製造方法が提供される。
【0019】
前記離型剤の固形分含量は、バインダ100重量部を基準にし、0.05~20重量部でもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明による離型フィルムは、基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10~30nm未満であり、前記離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が15nm未満であり、最大突起高(Rt)が150nm以下であり、離型フィルムが巻き取られたロールのコア表面からロール表面までの全体距離において、前記コア表面からロール表面方向に1/3以上の位置において、ロール表面硬度が500~800であるために、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を有することができる。前記離型フィルムを利用し、セラミックスコンデンサ(MLCC)のようなエネルギー保存装置を加工する場合、ショート不良が低減し、絶縁破壊電圧(BDV)が向上するというようなチップ信頼性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一具現例による離型フィルムのロール表面硬度の測定位置を示した断面模式図である。
図2】一具現例による離型フィルムのロール表面硬度の測定位置を示した側面図である。
図3】一具現例による離型フィルムの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例と図面とを参照し、離型フィルム、及び前記離型フィルムの製造方法について詳細に説明する。それら実施例は、単に本発明についてさらに具体的に説明するために例示的に提示されたものであるのみ、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではないということは、当業界で当業者において自明であろう。
【0023】
取り立てて定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により、一般的に理解されるところと同一の意味を有する。相反する場合、定義を含む本明細本書が優先されるのである。
【0024】
本明細書において説明されるところと類似しているか、あるいは同等な方法及び材料が、本発明の実施または試験にも使用されるが、適する方法及び材料が本明細書に記載される。
【0025】
本明細書において、「含む」という用語は、特別に反対となり記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0026】
本明細書において、「それら組み合わせ」という用語は、記載された構成要素の1以上との混合または組み合わせを意味する。
【0027】
本明細書において、「及び/または」という用語は、関連記載の1以上項目の任意の組み合わせ、及び全ての組み合わせを含むことを意味する。本明細書において、「または」という用語は、「及び/または」を意味する。本明細書において、構成要素前における、「少なくとも1種」または「1以上」という表現は、全体構成要素のリストを補完することができ、前記記載の個別構成要素を補完することができることを意味するものではない。
【0028】
本明細書において、一構成要素が他の構成要素の「上」にまたは「上部」に配置されていると言及される場合、該一構成要素は、他の構成要素上に直接配置されもし、前記構成要素間に介在された構成要素が存在しうるのである。一方、一構成要素が他の構成要素の「上に直接」または「上部に直接」配置されていると言及される場合、介在された構成要素が存在しないのである。
【0029】
本明細書において、「~系樹脂」、「~系重合体」または/及び「~系共重合体」は、「~樹脂」、「~重合体」、「~共重合体」または/及び「~樹脂、重合体または共重合体の誘導体」をいずれも含む広義の概念である。
【0030】
本明細書において特に取り立てて規定しない限り、単位「重量部」は、各成分間の重量比を意味する。
【0031】
最近、エネルギー保存装置の小型化、薄型化及び大型化が進められるにつれ、離型層表面が平坦な離型フィルムをロール状に巻き取っても、ブロッキングなどが発生せず、薄膜グリーンシート成形用に使用可能な離型フィルムを提供する試みがなされてきた。一例として、離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が30nm以下であり、離型層表面の突起高と突起数との関係を特定し、薄膜グリーンシート成形用離型フィルムに係わる研究が進められてきた。しかし、セラミックスシートの厚みが1μm以下においては、離型層表面で400nm以上の突起個数のみを管理し、電気装置の要求される物性が確保されえない。他の例として、基材フィルムにつき、シラン易接着層に係わる研究が進められてきた。しかし、低分子量のシランは、基材フィルムの表面凹凸に対する追従性が強いために、離型フィルム表面の凹凸を容易に平坦化させることができないという問題があり、シリコン系樹脂だけで厚いコーティング層を加工する場合、ブロッキングなどの問題が発生しうる。さらに他の例として、低分子量の硬化型樹脂を利用した平坦化層を導入し、離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が8nm以下、最大突起高(Rt)が50nm以下である剥離フィルムに係わる研究が進められてきた。しかし、平坦化層加工を行い、その上面にさらに離型層を加工する場合、加工性が良好ではなくなり、走行性が好ましくなく、均一な巻き取り品質の確保が容易ではないという問題がある。
【0032】
そのような問題を改善するために、本発明の発明者らは、次のような離型フィルムを提案する。
【0033】
一具現例による離型フィルムは、基材と、及び前記基材の少なくとも一面に位置した離型層と、を含む離型フィルムであって、前記基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10~30nm未満であり、前記離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が15nm未満であり、最大突起高(Rt)が150nm以下であり、前記離型フィルムは、巻き取られたロールのコア表面からロール表面までの全体距離において、前記コア表面からロール表面方向に1/3以上の位置において、ロール表面硬度が500~800でもある。
【0034】
一具現例による離型フィルムは、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を提供することができる。
【0035】
離型フィルムを構成する基材、離型層、離型フィルム、エネルギー保存装置、及び前記離型フィルムの製造方法について具体的に説明すれば、次のとおりである。
【0036】
<基材>
本発明に使用される基材は、離型フィルムの基材として知られた公知の基材フィルムまたはシートを利用することができる。例えば、基材としては、ポリエステル系樹脂フィルムを使用することができる。該ポリエステル系樹脂としては、離型フィルム分野で通用される公知の基材フィルムを使用することができる。例えば、前記ポリエステル系基材フィルムは、大韓民国登録特許第10-1200566号、同第10-1268584号、大韓民国公開特許第2012-45213号及び同第2012-99546号などに開示されたポリエステル系基材フィルムを使用することができる。ただし、本発明の一具現例においては、本発明の特徴だけとして説明するために、ポリエステル系基材フィルムにつき、限定なしに記述されているが、公知のポリエステル系基材フィルムに係わる技術的特徴を含むものであると理解されなければならないのである。
【0037】
前記ポリエステル系基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートなどを含んでもよい。
【0038】
前記基材フィルムを形成するポリエステル系樹脂としては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られたポリエステルでもあり、該芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、ρ-オキシ安息香酸など)などを使用することができ、該脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどを使用することができる。そのようなポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分及びグリコール成分のうち2種以上を併用することもでき、第3成分を含んだ共重合体も可能である。
【0039】
また、ポリエステル系基材フィルムは、高い透明性を有すると共に、生産性及び加工性にすぐれる一軸または二軸の配向フィルムを使用することができる。前記ポリエステル系基材フィルムは、単層構造、または同種または異種の2層以上の多層構造のフィルムでもある。
【0040】
前記ポリエステル系基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)などを使用することができる。
【0041】
また、該ポリエステル系基材フィルムは、優秀なロール間走行特性を付与するために、粒子を含んでもよいが、添加される粒子として、優秀な滑り特性を示すことができるものであるならば、制限なしに使用することができる。
【0042】
そのような粒子の例としては、シリカ、酸化シリコン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸バリウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタンのような粒子を含んでもよく、使用される粒子の形状に限定があるのではないが、例えば、球状、ボックス状、棒状、板状の粒子のうちいずれも使用されうる。
【0043】
また、粒子の硬度、比重及び色相について制限はないが、必要により、2種類以上を併行使用することができ、使用する粒子の平均粒径は、0.1ないし5μmでもあり、例えば、0.1ないし2μm範囲のものを使用することができる。このとき、粒子の平均粒径が0.1μm未満であるならば、粒子間の凝集現象が発生し、分散不良が生じ、粒子の平均粒径が5μmを超えれば、フィルムの表面粗度特性が良好ではなくなり、後加工時、コーティング不良が発生しうる。
【0044】
また、ポリエステル系基材フィルムに粒子が含まれる場合、粒子含量は、ポリエステル系基材フィルム全体重量を基準にし、0.01ないし5重量%でもあり、例えば、0.01ないし3重量%でもある。粒子含量が0.01重量%未満であるならば、ポリエステルフィルムの滑り特性が良好ではなくなり、ロール間の走行特性が劣化され、粒子含量が5重量%を超えれば、フィルムの表面平滑性が劣悪となってしまう。
【0045】
該ポリエステル系基材フィルムは、厚みに制限がないが、30~125μmでもある。
【0046】
前記ポリエステル系基材フィルムが30μm以下と過度に薄い場合、加工時、熱処理によって変形される恐れがあり、125μm以上と過度に厚い場合には、熱が十分に伝達されず、硬化に問題があることになる。
【0047】
前記基材は、巻き取り品質と工程特性とを考慮するとき、基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10nm以上30nm未満でもある。前記基材表面の中心線平均粗度(Ra)が10nm未満である場合、基材のロール走行性が良好ではなくなり、ブロッキング現象による静電気不良などの要因により、離型層のコーティング時、コーティング欠点が誘発されうる。前記基材表面の中心線平均粗度(Ra)が30nm以上である場合、離型層として平坦化させるのに、基材の表面粗度が過度に高く、離型層の厚みを必要以上に厚くコーティングしなければならないために、コーティング層の不均一現象及びブロッキング現象などが生じてしまう。
【0048】
<離型層>
一具現例による離型フィルムの離型層は、バインダ及び離型剤を含んでもよい。前記バインダは、前記基材の表面粗度を平坦化させる役割を行い、前記離型剤は、セラミックスシートに対する剥離特性を示す役割を行う。
【0049】
前記バインダは、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択された1種以上を含んでもよい。例えば、前記バインダは、メラミン系樹脂でもある。前記メラミン系樹脂は、乾燥後、架橋度が高く、離型層の硬度を高めることができ、離型剤と容易に反応することができる。
【0050】
例えば、前記メラミン系樹脂は、下記化学式1によっても表示される:
【化1】
前記化学式1で、
、R、R、R、R、Rは、互いに独立して、-H、-CHOHまたは-CHOR(ここで、Rは、置換もしくは非置換のC-C12アルキル基である)でもある。
【0051】
前記化学式1で表示されるメラミン系樹脂は、2個以上縮合されてなる多核体を含んでもよい。
【0052】
前記メラミン系樹脂は、置換基により、フルエーテル(full ether)化メラミン樹脂、イミノメチル化メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂またはイミノ化メラミン樹脂でもある。例えば、前記メラミン系樹脂は、反応速度が速く、コーティング時に使用される溶媒に優秀な溶解性を有するメチル化メラミン樹脂またはイミノ化メラミン樹脂でもある。
【0053】
前記離型剤は、アクリル基、エステル基、ウレタン基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボニル基、ヒドロキシ基、エーテル基、アミン基、チオール基、アルキル基及びアルケニル基から選択された1種以上の作用基を有するシリコン系樹脂を含んでもよい。
【0054】
例えば、前記離型剤は、下記化学式2によっても表示される:
【化2】
前記化学式2で、
R’、R’は、互いに独立して、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、水素原子またはヒドロキシ基でもあり、
R’、R’、R’、R’は、互いに独立して、アクリル基、ポリエステル基、ポリエーテル基、ポリウレタン基、アルキド基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボニル基、カルビノール基、ヒドロキシ基、アミン基、チオール基、フッ素基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基または水素原子でもあり、
nは、0ないし30の整数でもあり、mは、0ないし30の整数でもあり、n+mは、1ないし60の整数でもある。
【0055】
前記化学式2で表示される離型剤の作用基R’,R’,R’,R’,R’,R’は、前記バインダ及び前記基材との反応性にすぐれ、加工後、コーティング層から脱落せず、離型層の表面エネルギーを低くし、セラミックスシートに対する剥離性が具現されうる。
【0056】
例えば、前記化学式2で表示される離型剤は、シロキサン構造単位(A)と有機構造単位(B)とを含んでもよい。例えば、前記化学式2で表示される離型剤は、ABA、BAB、AB、またはAとBとの構造単位が反復された構造、あるいは/及びグラフト構造でもある。例えば、前記化学式2で表示される離型剤は、剥離特性を考慮し、AB構造、BAB構造、または/及びグラフト構造でもある。
【0057】
前記離型層は、架橋反応を促進させるために、酸触媒をさらに含んでもよい。前記酸触媒の例としては、p-トルエンスルホン酸でもあり、リン酸、カルボン酸、クエン酸、硝酸、硫酸または塩酸などを含んでもよい。
【0058】
前記離型層は、静電気制御のために、帯電防止剤をさらに含んでもよい。前記帯電防止剤の例としては、金属性帯電防止剤、イオン性帯電防止剤または伝導性ポリマーなどを含んでもよい。
【0059】
前記離型層は、必要により、物性を変化させない範囲で、湿潤剤(ウェッティング剤)、レベリング剤、架橋剤、反応抑制剤、光重合開始剤、光安定剤またはシランカップリング剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0060】
前記離型層は、その表面の中心線平均粗度(Ra)が15nm未満でもあり、最大突起高(Rt)が150nm以下でもある。
【0061】
前記離型層表面の中心線平均粗度(Ra)が15nmを超えれば、セラミックスシートの加工時、セラミックスシートの厚み不均一現象が生じ、例えば、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)チップの加工時、ショート不良及び絶縁破壊電圧(BDV:break down)が劣化され、離型層の最大突起高(Rt)が150nmを超えれば、セラミックスシートの加工時、セラミックスシート上にピンホール不良が生じ、例えば、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)チップの加工時、ショート不良及び絶縁破壊電圧(BDV)が劣悪となってしまう。
【0062】
前記離型層のダイナミック超微細小硬度(DH)は、0.2~3.0gf/μmでもある。前記離型層のダイナミック超微細小硬度(DH)が0.2gf/μm未満であるならば、セラミックスシートと離型層との付着力が上昇し、剥離時、剥離不良が生じ、前記離型層のダイナミック超微細小硬度(DH)が3.0gf/μm超過であるならば、離型層からのセラミックスシートの剥離時、剥離不良により、被膜が破れたり、巻き取り品質が劣悪となったりしてしまう。
【0063】
前記離型層のセラミックスシートに対する剥離力は、180°剥離角度、0.3mpm剥離速度において、0.5gf/25mm~10gf/25mmでもあり、例えば、3gf/25mm~7gf/25mmでもある。前記離型層のセラミックスシートに対する剥離力が0.5gf/25mm未満であるならば、離型層とセラミックスシートとの付着力が良好ではなくなり、セラミックスシート成形工程中、セラミックスシートの浮き上がる問題が生じ、前記離型層のセラミックスシートに対する剥離力が10gf/25mmを超えれば、セラミックスシート積層工程において、セラミックスシートの剥離が正しくなされず、セラミックスシートが裂ける問題が生じてしまう。
【0064】
前記離型層の残留接着率は、85%以上でもある。例えば、前記離型層の残留接着率は、90%以上でもある。
【0065】
前記離型層の残留接着率が85%未満であるならば、離型層の硬化が不足し、セラミックスシート層から離型剤が転移し、セラミックスシートの粘着性が良好ではなくなり、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)の加工時、品質不良が発生しうる。
【0066】
前記離型層の厚みは、0.01μm~0.5μmでもある。前記離型層の厚みが0.01μm未満であるならば、均一なコーティング層が形成されず、平坦化特性及び剥離性が良好ではなくなり、セラミックスシートの成形時、セラミックスシートにピンホール不良が生じ、成形されたセラミックスシートを剥離するとき、剥離不良により、セラミックスシートが裂ける問題が生じてしまう。前記離型層の厚みが0.5μmより厚ければ、離型フィルムの走行性が良好ではなくなり、ロール巻き取り時、ブロッキング及びフィルム断面抜けなどの問題が生じてしまう。
【0067】
前記離型フィルムが巻き取られたロールのコア表面からロール表面までの全体距離において、前記コア表面からロール表面方向に1/3以上の位置、例えば、ロールのコア表面からロール表面までの全体距離約600mmにおいて、前記コア表面からロール表面方向に200mm以上の位置において、ロール表面硬度が500~800でもある。
【0068】
図1は、一具現例による離型フィルムのロール表面硬度の測定位置を示した断面模式図である。図2は、一具現例による離型フィルムのロール表面硬度の測定位置を示した側面図である。
【0069】
図1を参照すれば、一具現例による離型フィルム10のロール表面硬度の測定位置(「X」と表記されている)として、ロールのコア1表面からロール表面2までの全体距離tにおいて、コア1表面からロール表面2の方向に1/3以上の位置を示している。
【0070】
図2を参照すれば、一具現例による離型フィルム20のロール表面硬度の測定位置として、ロールのコア21表面から、ロール表面22まで全体距離tにおいて、ロールのコア21表面からロール表面22の方向に1/3以上の位置23を示している。例えば、ロールのコア1,21表面からロール表面2,22までの全体距離tが約600mm以上であるならば、ロールのコア1,21表面からロール表面2,22の方向に1/3以上の位置23である200mm以上の位置でもあり、この位置は、巻き取り後、フィルムの断面を基準に、コアに対する硬度が影響を及ぼさない位置を示す。
【0071】
前記位置において、ロール表面硬度が500未満であるならば、巻き取られたフィルムの断面が容易に抜けてしまい、フィルム送り出しが困難である問題がある。前記ロール表面硬度が800を超えるならば、過度に堅い巻き取りになり、ブロッキングが生じ、フィルムとフィルムとの摩擦がはなはだしく、離型層が損傷される問題が生じてしまう。前記離型フィルムのロール表面硬度及び巻き取り品質は、巻き取り条件によってのみ達成されるものではなく、前記離型層硬度及び離型層表面粗度の品質に影響されてなされる物性を示す。
【0072】
<離型フィルム及びエネルギー保存装置>
図3は、一具現例による離型フィルム100の断面模式図である。
【0073】
図3を参照すれば、一具現例による離型フィルム120は、基材100及び離型層110が順に位置した構造である。
【0074】
一具現例による離型フィルム120は、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を提供することができる。
【0075】
前記離型フィルムは、セラミックスシート成形にも使用される。
【0076】
前記離型フィルムを利用し、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)のようなエネルギー保存装置加工するとき、ショート不良が低減し、絶縁破壊電圧(BDV)が向上されるというようなチップ信頼性が向上される。
【0077】
<離型フィルムの製造方法>
一具現例による離型フィルムの製造方法は、基材を準備する段階と、前記基材の少なくとも一面に、バインダ及び離型剤を含む離型層形成用組成物を塗布して熱処理し、離型層が形成されたフィルムを製造する段階と、前記フィルムをロールに巻き取り、マスターロールを作製し、それをスリッティングして離型フィルムを製造する段階と、を含んでもよい。
【0078】
一具現例による離型フィルムの製造方法によって製造された離型フィルムは、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を提供することができる。
【0079】
このとき、離型層形成用組成物に使用される溶媒としては、前記離型層形成用組成物の固形分を分散させ、基材上に塗布させることができるものであるならば、制限なしにも使用される。
【0080】
前記離型層形成用組成物に使用される溶媒としては、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィンのような脂肪族炭化水素系溶媒;工業用ガソリン(ゴム揮発油など)、石油ベンゼン、ソルベントナフサのような炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブブチル、酢酸イソブチルのようなエステル系溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサンのようなエーテル系溶媒;2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ブトキシエチルアセテートのようなエステル部分とエーテル部分とを有する溶媒;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカンメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シランのようなシロキサン系溶媒;トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロキシレン、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルのようなフッ素系溶媒;またはそれらの混合溶媒などを使用することができる。例えば、前記離型層形成用組成物に使用される溶媒としては、イソプロピルとメチルエチルケトンとの混合溶媒を使用することができる。
【0081】
前記離型層形成用組成物の全体固形分は、0.5ないし20重量%でもある。前記離型層形成用組成物の全体固形分含量が0.5重量%未満であるならば、均一な離型層が形成されず、平坦化特性及び剥離性が良好ではなくなり、セラミックスシートの成形時、セラミックスシートにピンホール不良が生じ、成形されたセラミックスシートを剥離するとき、剥離不良により、セラミックスシートが裂ける問題が生じてしまう。前記離型層形成用組成物の全体固形分含量が20重量%を超えるならば、離型層、例えば、シリコンコーティング層のレベリング不均一により、コーティング層外観が良好ではなくなり、表面粗度が良好ではなくなり、セラミックスシート成形後、セラミックスシートの厚み均一度が劣悪となってしまう。
【0082】
前記離型剤の固形分含量は、バインダ100重量部を基準にし、0.05~20重量部でもある。前記離型剤の固形分含量が0.05重量部未満であるならば、セラミックスシートに対する剥離性が表れず、セラミックスシート剥離時、シートが裂ける問題が生じ、前記離型剤の固形分含量が20重量部超過であるならば、コーティング層の架橋度が低くなり、前記コーティング層の硬度が低くなり、巻き取り特性が良好ではなくなり、ブロッキングのような巻き取り品質問題が発生しうる。
【0083】
前記離型層形成用組成物を基材上に塗布する方法としては、バーコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティングのような、当該技術分野で使用可能なオフライン塗布法を利用することができる。前記離型層形成用組成物を硬化処理するエネルギー源は、特別に制限されるものではないが、熱処理、紫外線照射または電子線照射を利用することができ、それらの単独、あるいはそれらを組み合わせて利用されるが、熱処理単独、熱と紫外線との併用処理を利用することができる。
【0084】
前記フィルムをロールに巻き取り、マスターロールを作製し、それをスリッティングして離型フィルムを製造する段階において、離型フィルムをロール状に作製するとき、限定された幅と長さとに作製されるものではなく、巻き取り時、巻き取り速度、張力及び面圧を特別に限定するものではない。
【0085】
本明細書において、「置換」は、置換されていない親基(mother group)において、1以上の水素が、他の原子や作用基に交換されることによって誘導される。取り立てての記載がなければ、ある作用基が「置換された」とされるとき、それは、前記作用基が炭素数1ないし40のアルキル基、炭素数2ないし40のアルケニル基、炭素数2ないし40のアルキニル基、炭素数3ないし40のシクロアルキル基、炭素数3ないし40のシクロアルケニル基、炭素数7ないし40のアリール基のうちから選択された1以上の置換基で置換されることを意味する。作用基が「選択的に置換される」と記載される場合、前記作用基が、前述の置換基で置換されうることを意味する。
【0086】
本明細書において、C-C12アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基のような直鎖状アルキル基;イソプロピル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基のような分枝状アルキル基などを意味する。そのうち、原料の調逹容易性を考慮し、アルキル基でもあり、生成物の有用性を考慮し、メチル基またはエチル基でもある。
【0087】
本明細書において、C-C10アルケニル基は、少なくとも1つの炭素・炭素二重結合を有する分枝状または非分枝状の炭化水素を意味する。アルケニル基の非制限的な例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソプロペニル基またはイソブテニル基などを挙げることができる。
【0088】
以下、実施例と比較例とを介し、本発明の構成、及びそれによる効果についてさらに詳細に説明する。しかし、本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではないということは、自明な事実であるのである。
【実施例
【0089】
実施例1:離型フィルム
30μm厚のポリエステルフィルム(XD601(Ra=20nm)、東レ先端素材(株))基材を準備した。
それと別個に、バインダとして、イミノ化メラミン樹脂(CYMEL 323、Allnex社)100重量部、離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部、及び酸触媒として、ρ-トルエンスルホン酸(Aldrich社)3重量部を、イソプロピルアルコール(IPA)とメチルエチルケトン(MEK)との混合溶媒(重量比=1:1)に希釈し、離型層形成用組成物を準備した。
前記ポリエステルフィルム基材の一面に、前記離型層形成用組成物を塗布し、140℃の熱風乾燥器で60秒間熱処理し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造した。前記フィルムをロールに巻き取り、マスターロールを作製した。前記マスターロールをスリッティング機器でスリッティングし、離型フィルムを製造した。
【0090】
実施例2:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、0.5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0091】
実施例3:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.01μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0092】
実施例4:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.1μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0093】
実施例5:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0094】
実施例6:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.5μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0095】
実施例7:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、10重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0096】
実施例8:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、20重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0097】
実施例9:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、プロポキシ化シロキサン(1248 Fluid、Dow Chemical社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0098】
実施例10:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、アクリル化シロキサン(DMS-R22、Gelest社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0099】
実施例11:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、カルボキシ化シロキサン(DMS-B25、Gelest社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0100】
実施例12:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、末端にジメチルアミノ作用基を有するシロキサン(DMS-N05、Gelest社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0101】
実施例13:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、エポキシシロキサン(KF-105、信越化学工業社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0102】
実施例14:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、フルオロアルキルシラン(KBM-7103、信越化学工業社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0103】
実施例15:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、アルキルシラン(KBM-3103C、信越化学工業社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0104】
実施例16:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、ポリエステル変性シロキサン(KP-621、信越化学工業社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0105】
実施例17:離型フィルム
バインダとして、イミノ化メラミン樹脂(CYMEL 323、Allnex社)の代わりに、メチル化メラミン樹脂(CYMEL 304、Allnex社)100重量部を使用し、離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、エトキシ化シロキサン(Q2-5218、Dow Chemical社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0106】
実施例18:離型フィルム
バインダとして、イミノ化メラミン樹脂(CYMEL 323、Allnex社)の代わりに、ブチル化メラミン樹脂(CYMEL1156、Allnex社)100重量部を使用し、離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、エトキシ化シロキサン(Q2-5218、Dow Chemical社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0107】
比較例1:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.7μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0108】
比較例2:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.005μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0109】
比較例3:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、0.02重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0110】
比較例4:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、30重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0111】
比較例5:離型フィルム
離型剤を含まない離型層形成用組成物を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0112】
比較例6:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、ポリジメチルシロキサン(DMS-T22、Gelest社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0113】
比較例7:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、アルキド樹脂(AS-8601、エギョン化学社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0114】
比較例8:離型フィルム
離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、1-デカノール(Aldrich社)5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0115】
比較例9:離型フィルム
30μm厚のポリエステルフィルム(XD601(Ra=20nm)、東レ先端素材(株))基材の代わりに、30μm厚のポリエステルフィルム(XD500(Ra=40nm)、東レ先端素材(株))基材、及び離型剤として、エトキシ化シロキサン(Q2-5211、Dow Chemical社)0.05重量部の代わりに、5重量部を使用し、0.3μm厚の離型層が形成されたフィルムを製造したことを除いては、実施例1と同一方法で離型フィルムを製造した。
【0116】
評価例1:物性評価
実施例1~18及び比較例1~9によって製造された離型フィルムの物性を次のような方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0117】
(1)セラミックススラリー塗工性評価
チタン酸バリウム(BaTiO、粒径:300nm)粉末100重量部、ポリビニルブチラル樹脂(BL-10、積水化学工業社)5重量部、ジオクチルフタレート(エギョン油化社)3重量部及び分散剤(DISPERBYK-180、BYK社)1重量部を、トルエンとエチルアルコールとの混合溶媒(重量比=1:1)10重量部に希釈し、セラミックススラリーを製造した。前記セラミックススラリーを、それぞれの離型フィルム試料の離型層表面に湿塗膜(wet film)厚10μmに塗布して乾燥させ、セラミックスシートを作製した。前記作製されたセラミックスシートの塗工面を肉眼で確認し、ピンホール及びオレンジピール(orange peel)を下記の判断基準で評価した。
<判断基準>
○:ピンホール、オレンジピール発生なし
△:試料のエッジ部に、ピンホール、オレンジピールが弱く発生
X:試料全面にわたり、ピンホール、オレンジピールが顕著に発生
【0118】
(2)セラミックスシートの剥離力(gf/25mm)測定
前述の「(1)セラミックススラリー塗工性評価」で作製されたセラミックスシートを、それぞれ25mm×150mmサイズに切り、剥離力を測定した。剥離力測定は、ChemInstrument社のAR-1000機器を利用し、180°剥離角度、12インチ/分剥離速度で5回測定し、その平均値を求めた。
【0119】
(3)離型層の残留接着率(%)測定
それぞれの離型フィルムを500mmx1,500mmサイズに切り、25℃、65%RHで24時間保存した。その後、それぞれの離型フィルム試料の離型層表面に、標準粘着テープ(No.31B、Nitto社)を付け、常温で20g/cmの荷重で24時間圧着した。その後、前記離型層表面に接着された粘着テープを、汚染なしに収去し、表面が平坦であって清潔なポリエチレンテレフタレートフィルム面に接着した後、2kgのテープローラー(ASTMD-1000-55T)で1回往復圧着させ、離型層表面(250mmx1,500mm)に接着させた後で剥離された粘着テープの剥離力と、離型層表面に接触させていない粘着テープの剥離力とを測定し、下記数式1により、残留接着率を求めた。該剥離力は、ChemInstrument社のAR-1000機器を利用し、180°剥離角度、0.3mpm剥離速度で測定した。
【数1】
【0120】
(4)離型層の表面粗度測定
それぞれの離型フィルムを、三次元表面粗度測定器(SE3500K31、KOSAKA社)を使用し、5μm先端半径、30mg針圧、0.5mm測定長、0.25mm cutoff値の条件で分析し、中心線平均粗度(Ra)と最大突起高(Rt)とを測定した。
【0121】
(5)離型層の硬度(DH)評価
それぞれの離型フィルムの離型層につき、超微小硬度計(dynamic ultra micro hardness testers、DUH-W201S、島津製作所社)を使用し、1gf、115°三角柱圧子を使用し、2秒間維持した後、下記数式2によって超微細小硬度(DH)を評価した。
[数式2]
超微小強度(gf/μm)=α(P/D2)
数式2において、
P(gf)は、試験荷重であり、D(μm)は、試料に対する圧子の侵入量であり、αは、圧子形状による定数である(115°三角錐:37.837)。
【0122】
(6)離型層のロール表面硬度測定
リーブ硬度試験機器(Leeb Hardness Testers)にDタイプインパクトを使用し、それぞれの離型フィルム巻き取りロールのコア表面からロール表面までの全体距離が約600mm以上であるとき、前記離型フィルム巻き取りロール断面を基準に、コア表面からロール表面方向に200mm以上の位置で測定するが、ロール表面において、幅方向に1cm単位で26~50個地点において、インパクトのリバウンド速度(VB)と、インパクトの衝突速度(VA)とを測定し、下記数式3によって平均値を求めた。
【数2】
【0123】
(7)ロール巻き取り外観評価
それぞれの離型フィルムの断面状態を肉眼で検査し、下記の判断基準で評価した。
<判断基準>
○:ロール断面に欠点なしに均一な状態
△:ロール断面に年輪状の欠点が見られるが、10mm以内である場合
X:ロール断面が抜けるか、あるいはブロッキングにより、フィルムとフィルムと付いていない
【0124】
【表1】
【0125】
表1を参照すれば、実施例1~18によって製造された離型フィルムは、比較例1~9によって製造された離型フィルムと比較し、表面平坦性と剥離力とにすぐれる離型層を形成することにより、セラミックスシートの成形時、優秀な塗工性、及び良好な剥離安定性を有し、ロール巻き取り時、優秀な巻き取り品質を有することができることを確認することができる。
【0126】
それと比較し、比較例1~9によって製造された離型フィルムは、離型層の厚み、含量、または離型剤の種類または表面粗度などが適さず、セラミックスシートの成形時、塗工性、剥離力及び平滑性が劣化され、ロールを巻き取ったときも、ロール表面硬度が良好ではなく、巻き取り品質が不良になることを確認することができる。
【符号の説明】
【0127】
1,21 ロールのコア
2,22 ロール表面
23 ロール表面硬度の測定位置
100 基材
110 離型層
120 離型フィルム
t ロールのコア表面からロール表面までの全体距離
図1
図2
図3