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特許7235800複数の繊維をシミュレーションするための方法及びコンピュータ読み取り可能媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】複数の繊維をシミュレーションするための方法及びコンピュータ読み取り可能媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 13/40 20110101AFI20230301BHJP
【FI】
G06T13/40
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021080241
(22)【出願日】2021-05-11
(62)【分割の表示】P 2019514004の分割
【原出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2021128788
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】16188947.2
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クヌート マイネルト
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク エル.ミヒェルス
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-541840(JP,A)
【文献】特表2015-513560(JP,A)
【文献】特表2010-512532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0279413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維の構成変化をシミュレーションするためのコンピュータ実施方法であって、 繊維の機械的挙動を記述するための計算モデルを提供するステップと、
前記計算モデルで使用するために、所定のタイプの繊維に関連付けられた繊維機械的パラメータの第1のセットを取得するステップと、
シミュレーションすべき前記複数の繊維の形状及び位置を記述する、第1のジオメトリ情報を取得するステップと、
前記計算モデル、前記繊維機械的パラメータの第1のセット、及び前記第1のジオメトリ情報を使用して、前記複数の繊維の前記構成変化をシミュレーションして、第2のジオメトリ情報を生成するステップであって、前記第1のジオメトリ情報及び前記第2のジオメトリ情報は、前記繊維のそれぞれの複数の区分の位置を記述し、および、繊維間での衝突時の相互作用を定めることができるように、前記シミュレーションは前記複数の繊維の接合分布を決定し、前記シミュレーションされる構成変化は、前記繊維の前記機械的挙動を修正するための前記繊維機械的パラメータの補間処理を含み、前記補間処理は、化学的又は物理的処理後に測定された異なる複数の繊維機械的パラメータ間で補間された繊維機械的パラメータを決定することを含む、該ステップと、
を含み、
前記繊維機械的パラメータの第1のセットは、
前記所定のタイプの繊維間の1つ以上の摩擦係数と、
前記所定のタイプの繊維間での凝集力の測定値と、
前記所定のタイプの繊維間での粘着力の測定値と
のうちの少なくとも1つ、いずれか2つ、又は3つすべてを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記繊維機械的パラメータの第1のセットは、
前記所定のタイプの繊維に関連付けられたヤング率と、
前記所定のタイプの繊維に関連付けられた剪断弾性率又はねじり弾性率と、
前記所定のタイプの繊維に関連付けられた曲げ弾性率と
のうちの少なくとも1つ、いずれか2つ、又は3つすべてを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維機械的パラメータの第1のセットは、
前記所定のタイプの繊維に関連付けられた直径と、
前記所定のタイプの繊維の物質密度と、
前記所定のタイプの繊維に関連付けられた断面形状又は楕円度と
のうちの少なくとも1つ、いずれか2つ、又は3つすべてを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シミュレーションされる構成変化は、
前記繊維の運動と、
前記繊維の機械的操作と、
前記繊維の伸縮と、
前記繊維の機械的挙動を修正する、前記繊維の化学的又は物理的処理と
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
複数の異なるタイプの繊維のそれぞれについて繊維の機械的パラメータセットを含むデータベースを提供するステップを更に含み、
前記繊維機械的パラメータの第1のセットを取得するステップは、前記データベース内の前記セットのうちの1つを選択するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記データベースは、繊維の各タイプについて繊維機械的パラメータの1つ以上の追加のセットを含み、
前記1つ以上の追加のセットのそれぞれは、それぞれの化学的又は物理的処理後に、当該繊維のタイプの前記機械的パラメータを特性化することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のジオメトリ情報は繊維の実試料から取得され、前記第1のジオメトリ情報を取得するステップは、好ましくは、
マイクロコンピュータ断層撮影と、
レーザースキャニングと、
IR撮像と、光干渉断層撮影のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記計算モデルは、
各繊維のCosseratロッドと、
各繊維に関する記述に基づいた有限要素と、
各繊維のKirchoffロッドと、
各繊維の振動子ネットワークのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記シミュレーションに基づいて、前記構成変化後の前記複数の繊維を示す1つ以上の画像をレンダリングすることを更に含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記複数の繊維は、一房の毛髪、又は頭髪を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記複数の繊維の所望の構成を定めるターゲットジオメトリ情報を受信するステップと、
前記ターゲットジオメトリに基づいて、前記ターゲットジオメトリの生成に好適な繊維機械的パラメータのターゲットセットを検索するステップと、を更に含み、
前記繊維機械的パラメータのターゲットセットを検索するステップは、
繊維機械的パラメータの複数の修正されたセットを生成するステップと、
前記修正されたセットごとに、当該修正されたセットによって生じる前記構成変化をシミュレーションするステップと、
前記ターゲットジオメトリに最も近似する構成変化を生じさせる、前記修正されたセットを前記ターゲットセットとして選択するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項1ないし11のいずれか1つに記載の方法を実行させることが可能な命令を有することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする非一過性コンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の繊維をシミュレーションするためのコンピュータ実施方法に関する。本方法は、具体的には一房の毛髪又は頭髪の機械的挙動をシミュレーションするために適用されてよい。これはまた、織布、不織布、ブラシ、又は繊維状物質を組み込んだ他の製品をシミュレーションするために適用され得る。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンピュータグラフィックススアニメーションのために、一房の毛髪又は頭髪など繊維の集合体をシミュレーションする試みは既知である。しかしながら、既知の手法は十分に現実的ではない。具体的には、これらは、繊維の機械的挙動を物理的に正確な方法で捕捉しない傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
毛髪などの繊維を、実環境におけるこれらの繊維の機械的挙動により忠実な方法でシミュレーションすることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は請求項によって定義される。
【0005】
本発明の一態様によると、複数の繊維の構成変化をシミュレーションするためのコンピュータ実施方法が提供され、この方法は、
繊維の機械的挙動を記述するための計算モデルを提供するステップと、
計算モデルで使用するために、所定のタイプの繊維に関連付けられた繊維機械的パラメータの第1のセットを取得するステップと、
シミュレーションすべき複数の繊維の形状及び位置を記述する、第1のジオメトリ情報を取得するステップと、
計算モデル、繊維機械的パラメータの第1のセット、及び第1のジオメトリ情報を使用して、複数の繊維の構成変化をシミュレーションして、第2のジオメトリ情報を生成するステップ、を含み、
繊維機械的パラメータの第1のセットは、
所定のタイプの繊維間の1つ以上の摩擦係数と、
所定のタイプの繊維間での凝集力の測定値と、
所定のタイプの繊維間での粘着力の測定値とのうちの少なくとも1つ、いずれか2つ、又は3つすべてを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明者らは、一般的には繊維の、具体的には毛髪繊維の機械的パラメータのより優れた特性化に対するニーズを認識した。以前の手法は、個々の繊維の剛性又は可撓性に重点を置いていたが、本発明者らは、複数の繊維のシミュレーションの全体の精度のためには、繊維間の相互作用の正確な特性化が重要であることを見出した。繊維で作製された本体の挙動は、繊維間での衝突(接点)の複雑なネットワーク及び衝突時の繊維の相互作用方法の影響を受ける。摩擦、凝集力、及び粘着力は、繊維間の相互作用を決定付ける3つの最も重要なパラメータであることが見出されている。
【0007】
粘着力は、互いに接触している2つの毛髪繊維の分離に反対する力を指し、接触点において液体は存在しない。
【0008】
凝集力は、互いに接触している2つの毛髪繊維の分離に反対する力を指し、接触点において液体が存在する。凝集力は、毛細管力及びラプラス圧に依存する。
【0009】
凝集力及び粘着力は、好ましくは、繊維機械的パラメータセット内で、接触面積によって正規化される。
【0010】
好ましくは、繊維機械的パラメータの第1のセットは2つ以上の摩擦係数を含み、各摩擦係数は、異なる相互標定に関連する。これにより、異方摩擦効果が記述され得る。
【0011】
繊維機械的パラメータの第1のセットは、好ましくは所定のタイプの繊維に関連付けられたヤング率と、所定のタイプの繊維に関連付けられた剪断弾性率又はねじり弾性率と、所定のタイプの繊維に関連付けられた曲げ弾性率とのうちの少なくとも1つ、いずれか2つ、又は3つすべてを更に含む。
【0012】
繊維間の相互作用を特性化するパラメータは、好ましくは個々の繊維の機械的特性の正確な特性化と組み合わされる。具体的には、個々の繊維の可撓性を十分詳細に特性化することが有利である。この点に関して言えば、ヤング率、曲げ弾性率、及びねじり弾性率は、最も重要なパラメータであることが見出されている。ねじり弾性率は、剪断弾性率に関連する。
【0013】
繊維機械的パラメータの第1のセットは、好ましくは、所定のタイプの繊維に関連付けられた直径と、所定のタイプの繊維の物質密度と、所定のタイプの繊維に関連付けられた断面形状又は楕円度とのうちの少なくとも1つ、いずれか2つ、又は3つすべてを更に含む。
【0014】
これらの他の繊維機械的パラメータを、相互作用を特性化し、個々の繊維の可撓性を特性化する上記のパラメータと組み合わせることは有利である。
【0015】
シミュレーションされる構成変化は、繊維の運動と、繊維の機械的操作と、繊維の伸縮と、機械的挙動を修正する、繊維の化学的又は物理的処理とのうちの少なくとも1つを任意追加的に含む。
【0016】
一般に、構成変化は、繊維のジオメトリの変化若しくはこれらの機械的パラメータの変化、又はこれらの両方と関連付けられてよい。繊維の運動、機械的操作(梳かす、編む、又はグルーミングするなど)、及び切断は、繊維のジオメトリ変化と関連付けられてよい。シャンプー、コンディショニング、カラーリング、パーマ、縮毛矯正、又はブリーチなど化学的処理は、機械的パラメータの変化と関連付けられてよい。縮毛化、カール、ストレート化、又はドライヤー乾燥など熱処理は、ジオメトリパラメータ及び機械的パラメータの両方の変化と関連付けられてよい。
【0017】
本方法は、複数の異なるタイプの繊維のそれぞれについて繊維機械的パラメータセットを含むデータベースを提供することを更に含んでよく、繊維機械的パラメータの第1のセットを取得するステップは、データベース内のセットのうちの1つを選択することを含む。
【0018】
異なるタイプの繊維は、構成変化に対して大きく異なる方法で反応してよく、したがって、シミュレーションすべき特定のタイプの繊維の機械的挙動を正確に特性化できることが望ましい。それにもかかわらず、繊維機械的パラメータを測定することは困難であり、時間がかかり得る、又は、場合によっては、実環境の所定の繊維については不可能であり得る。したがって、これまでに測定されている繊維のタイプの繊維機械的パラメータを記録する、繊維機械的パラメータのデータベース又はライブラリを提供することは有利であってよい。シミュレーション用の繊維機械的パラメータは、次いで、例えば、リストから繊維のタイプを選択することにより、データベースから検索され得る。
【0019】
このようにデータベース又はライブラリを使用することにより、データベースから選択した1つの繊維機械的パラメータセットを別のセットに置き換えることで、繊維パラメータの変化の効果のシミュレーションが可能になる。
【0020】
データベースは、繊維タイプごとに繊維機械的パラメータの1つ以上の追加のセットを含んでよく、1つ以上の追加セットのそれぞれは、それぞれの化学的又は物理的処理後に、当該繊維のタイプの機械的パラメータを特性化する。
【0021】
例えば、繊維が毛髪繊維である場合、所定の処理の適用後に、頭髪のジオメトリ(したがって、外見)の予測が可能になり得る。この処理は、機械的パラメータを変化させ、シミュレーションは、これにより毛髪の構成(ジオメトリ)がどのように変化するかを予測する。
【0022】
第1及び第2のジオメトリ情報は、好ましくは繊維のそれぞれの複数の区分の位置を記述する。
【0023】
この場合、計算モデルは、各繊維を一連の区分としてモデル化してよい。
【0024】
ジオメトリ情報はまた、所定のタイプの繊維間での接合分布を含んでよい。あるいは、接合分布は、ジオメトリ情報に暗示されていてよい、及び/又はシミュレーション中にジオメトリ情報から判定されてよい。第2のジオメトリ情報(すなわち、各区分の位置)と共に、シミュレーションはまた、任意追加的に各区分の速度を出力する。
【0025】
第1のジオメトリ情報は、繊維の実試料から取得されてよく、第1のジオメトリ情報を取得するステップは、好ましくはマイクロコンピュータ断層撮影と、レーザースキャニングと、IR撮像と、光干渉断層撮影のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
このようにして繊維の実試料からジオメトリ情報を取得することにより、繊維ジオメトリのより正確な捕捉が可能になり得る。また、実ジオメトリでの実繊維の構成変化のシミュレーションが可能になり得る。したがって、実環境での繊維の構成変化の仮想予測が可能になり得る。
【0027】
計算モデルは、各繊維のCosseratロッドと、各繊維の記述に基づいた有限要素と、各繊維のKirchoffロッドと、各繊維の振動子ネットワークのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0028】
任意追加的に、各繊維の振動子ネットワークは、立法体状又は4面体状の振動子ネットワークを含んでよい。
【0029】
計算モデルはまた、好ましくは温度、湿度、及び確率論的な風の影響が挙げられるが、これらに限定されない、環境条件を考慮する。
【0030】
本方法は、シミュレーションに基づいて、構成変化後の複数の繊維を示す1つ以上の画像をレンダリングすることを更に含んでよい。
【0031】
画像のレンダリングにより、構成変化の視覚化が可能になり得る。複数の画像をレンダリングすることにより、構成変化が画像シーケンス(例えば、アニメーション又は動画)として視覚化され得る。
【0032】
複数の繊維は、好ましくは一房の毛髪、又は頭髪を含んでよい。
【0033】
繊維が毛髪繊維であるとき、異なるタイプの繊維は、異なる毛髪色、異なる民族、及び/又は異なる損傷度と関連付けられてよい。好ましくは、これらの異なるタイプの毛髪の繊維機械的パラメータセットは、データベースに格納される。
【0034】
本方法は、任意追加的に、複数の繊維の所望の構成を定める、ターゲットジオメトリ情報を受信することと、ターゲットジオメトリに基づいてターゲットジオメトリの生成に好適な繊維機械的パラメータのターゲットセットを検索することと、を更に含み、繊維機械的パラメータのターゲットセットを検索することは、好ましくは繊維機械的パラメータの複数の修正されたセットを生成することと、修正されたセットごとに、当該修正されたセットによって生じる構成変化をシミュレーションすることと、ターゲットジオメトリに最も近似する構成変化を生じさせる修正されたセットをターゲットセットとして選択することと、を含む。
【0035】
これは、合成による分析手法を使用し、好ましくは上記に要約したシミュレーションを繰り返すことにより、繊維機械的パラメータのターゲットセットを検索する。
【0036】
また、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータ読み取り可能媒体が提供され、このコンピュータプログラムコードは、当該プログラムが物理コンピューティングデバイス上で実行されると、物理コンピュータデバイスを制御して、上記に要約した方法の全ステップを実行するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態が実行されてよい、例示的コンピュータシステムを示す概略ブロック図である。
図2】本発明の実施形態による方法における論理情報フローを示すフロー図である。
図3】ある実施形態によるシミュレーション方法の流れ図である。
図4】本発明の更なる実施形態による方法における論理情報フローを示すフロー図である。
図5】ある実施形態による逆シミュレーション方法の流れ図である。
図6A】繊維のヤング率及び曲げ弾性率を測定する1つの方法の概略図である。
図6B】繊維のヤング率及び曲げ弾性率を測定する1つの方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付図面の図1は、本発明の実施形態が実行されてよい、例示的コンピュータシステム100を概略的に示す。例示的コンピュータシステム100は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102と、メモリ104と、プロセッサ106と、1つ以上のインターフェース108と、を備え、これらは、1つ以上の通信バス110を通じてすべて接続されている。例示的コンピュータシステム100は、例えば、デスクトップコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチ、VRヘッドセット、サーバ、メインフレームコンピュータなど従来のコンピュータシステムの形態であってよい。
【0039】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102及び/又はメモリ104は、1つ以上のコンピュータプログラム(又はソフトウェア又はコード)及び/又はデータを格納してよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102に格納されているコンピュータプログラムは、コンピュータシステム100を機能させるために実行するプロセッサ106用のオペレーティングシステムを含んでよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102及び/又はメモリ104に格納されているコンピュータプログラムには、本発明の実施形態によるコンピュータプログラム、又はプロセッサ106による実行時に、本発明の実施形態による方法をプロセッサ106に実行させる、コンピュータプログラムを含んでよい。
【0040】
プロセッサ106は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102及び/又はメモリ104に格納されているコンピュータプログラムに属するものなど、1つ以上のコンピュータ読み取り可能なプログラム命令を実行するのに好適な任意のデータ処理ユニットであってよい。1つ以上のコンピュータ読み取り可能なプログラム命令の実行の一環として、プロセッサ106は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102及び/若しくはメモリ104にデータを格納してよい、並びに/又はこれらからデータを読み取ってよい。プロセッサ106は、単一のデータ処理ユニット、又は並列で、若しくは互いに協働して作動する複数のデータ処理ユニットを備えてよい。プロセッサ106は、1つ以上のコンピュータ読み取り可能なプログラム命令の実行の一環として、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体102及び/若しくはメモリ104にデータを格納してよい、並びに/又はこれらからデータを読み取ってよい。
【0041】
1つ以上のインターフェース108は、コンピュータシステム100がネットワーク上で他のコンピュータシステムと通信可能にするネットワークインターフェースを備えてよい。このネットワークは、あるコンピュータシステムから別のコンピュータシステムにデータを伝送する、又は通信するのに好適な任意の種類のネットワークであってよい。例えば、ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、メトロポリタンエリアネットワーク、インターネット、無線通信ネットワークなどのうちの1つ以上を含み得る。コンピュータシステム100は、任意の好適な通信機構/又はプロトコルを介してネットワーク上で他のコンピュータシステムと通信してよい。プロセッサ106は、1つ以上の通信バス110を介してネットワークインターフェースと通信して、ネットワークインターフェースがネットワーク上で別のコンピュータシステムに対してデータ及び/又はコマンドを送信するようにさせてよい。同様に、1つ以上の通信バス110は、プロセッサ106が、ネットワーク上でネットワークインターフェースを介して他のコンピュータシステムからコンピュータシステム100が受信したデータ及び/又はコマンドに基づいて作動できるようにする。
【0042】
インターフェース108は、あるいは、又は、加えて、ユーザ入力インターフェース及び/又はユーザ出力インターフェースを備えてよい。ユーザ入力インターフェースは、システム100のユーザ又はオペレータからの入力を受信するように準備されていてよい。ユーザは、マウス(又は他のポインティングデバイス、トラックボール、若しくはキーボードなど1つ以上のユーザ入力装置(図示なし)を介してこの入力を提供してよい。ユーザ出力インターフェースは、システム100のユーザ又はオペレータにディスプレイ(又はモニタ若しくは画面)(図示なし)上でグラフィック/視覚的出力を提供するように準備されてよい。プロセッサ106は、ユーザ出力インターフェースに命令して、ディスプレイに所望のグラフィック出力を表示させる画像/ビデオ信号を形成させてよい。ディスプレイは、ユーザが、ディスプレイに接触する、又はディスプレイを押すことにより入力を提供できるようにする接触式であってよい。
【0043】
本発明の実施形態によると、インターフェース108は、あるいは又は加えて、実繊維の繊維機械的パラメータを測定するために、測定システムへのインターフェースを備えてよい。いくつかの実施形態では、インターフェース108は、複数の実繊維のジオメトリを捕捉するために、3Dスキャナーなどジオメトリ捕捉システムへのインターフェースを備えてよい。
【0044】
図1に示され、上述したコンピュータシステム100のアーキテクチャは、単なる例示であり、別の構成要素を使用する、又はより多い(若しくはより少ない)構成要素を使用する別のアーキテクチャを有するシステムが代わりに使用されてよいことが理解されよう。
【0045】
以下では、本発明は、繊維が毛髪繊維である実施形態に即して記載されるであろう。しかしながら、当業者には明らかであるように、本発明の範囲はかかる実施形態に限定されるものではなく、任意のタイプの繊維のシミュレーションに使用され得る。
【0046】
図2は、本発明の実施形態による方法における論理情報フローを示す。複数の繊維のシミュレーション240は、3種類の情報、つまり計算モデル210、繊維機械的パラメータセット220、及び第1のジオメトリ情報230に依存する。シミュレーション240はこれらを組み合わせて、複数の繊維の構成変化をシミュレーションする。新しい構成は、第2のジオメトリ情報250によって表される。
【0047】
計算モデル210は、好ましくは一連の個々の区分として各繊維をモデル化する。第1のジオメトリ情報230は、各繊維の区分のそれぞれに初期位置を提供する。シミュレーション240は、これらの初期位置(及び任意追加的に初期速度に関する情報も)から開始して、時間内で徐々に進み、計算モデル210を使用して繊維系の機械的挙動を記述する。計算モデル210の機械的反応は、繊維機械的パラメータ220の値によって決定付けられる。
【0048】
この実施形態では、繊維は毛髪繊維であり、目的は、頭髪の構成変化をシミュレーションすることである。シミュレーションすべき構成変化は、毛髪の実際の(つまり、物理的に認識可能な)変更又は操作の仮想表現であってよい。これは、例えば、重力下、又は何らかの摂動による毛髪の運動を含んでよいが、運動のシミュレーションは必須ではない。
【0049】
図3は、ある実施形態によるシミュレーション方法の流れ図である。ステップ310では、計算モデル210が準備される。計算モデル210は、記憶媒体102に格納されてよく、プロセッサ106によってそこから検索される。次に、ステップ320では、プロセッサ106は、計算モデル210で使用するために、所定のタイプの繊維に関連付けられた繊維機械的パラメータの第1のセットを取得する。ステップ330では、プロセッサ106は、シミュレーションすべき複数の繊維の形状及び位置を記述する、第1のジオメトリ情報230を取得する。次いで、ステップ340では、プロセッサ106は、計算モデル210、繊維機械的パラメータ220、及び第1のジオメトリ情報230を使用して、繊維の構成変化をシミュレーションする。シミュレーションの出力は第2のジオメトリ情報であり、繊維の新しい形状及び/又は位置を記述する。任意追加的に、ステップ350では、プロセッサ106は、シミュレーションによって生成された第2のジオメトリ情報に基づいて、1つ以上の繊維の画像をレンダリングする。これにより、ユーザは、ディスプレイ画面上で新しい毛髪のジオメトリを調べることができる。
【0050】
図3に示された実施形態では、第1のジオメトリ情報230は、繊維の実試料から取得される。具体的には、プロセッサ106は、光干渉断層撮影(OCT)装置370からジオメトリ情報を取得する。OCT装置370は、インターフェース108を介してコンピュータシステム100に接続されている。光干渉断層撮影は、毛髪繊維の本体の3Dジオメトリを捕捉するために使用され得る。これは、毛髪繊維の本体の3Dジオメトリが物質の屈折率の差に敏感であるためである。OCTは、個々の構造を高解像度で分解できるようにし得る。ジオメトリ情報の生成に使用される繊維の実試料は、少量の毛髪又は頭髪全体であってよい。
【0051】
一般に、第1のジオメトリ情報230の生成に使用された同一の毛髪試料から繊維機械的パラメータ220の測定値を取得することは不可能であり得る。例えば、繊維機械的パラメータの測定には、毛髪の切断、損傷、及び/又は複雑な計測機器での検査が必要であり得る。ジオメトリ情報の生成に使用された一房の毛髪又は頭髪から繊維機械的パラメータを直接測定する必要性を回避するために、図3のステップ330では、プロセッサ106は、データベース360から第1の繊維機械的パラメータを取得する。データベースは、複数の異なる毛髪タイプのそれぞれについて繊維機械的パラメータを格納する。これらのタイプは、毛髪色(例えば、金髪、赤髪、黒髪)及び/又は民族(例えば、アフロ-カリブ族の毛髪、西欧人の毛髪など)に従って定められてよい。データベースは、好ましくは、複数の損傷状態のそれぞれにおいて、これらの毛髪タイプのそれぞれに関連する繊維機械的パラメータを格納する。また、各損傷度の各毛髪タイプについて、データベースは、好ましくは、複数の異なる毛髪処理の結果に関連する繊維機械的パラメータ、並びに「原生の」未処理毛髪の機械的パラメータを格納する。したがって、毛髪タイプ、損傷度、及び毛髪処理を指定してインデックス化されるとき、データベースは、計算モデルで使用するために関連する繊維機械的パラメータに戻る。このデータベースは、好適な少量の毛髪試料の機械的分析によって事前に構築され得る。
【0052】
本実施形態では、繊維機械的パラメータセットは、6個のパラメータを含む、毛髪の機械的指紋を含む。3個のパラメータは毛髪繊維間の相互作用を定め、これらは、少なくとも1つの繊維間の摩擦係数、繊維間での凝集力、及び繊維間での粘着力である。更なる3個のパラメータは、個々の繊維の機械的特性を定め、これらは、繊維のヤング率、繊維のねじり弾性率、及び繊維の曲げ弾性率である。好ましくは、繊維機械的パラメータセットはまた、繊維の直径、繊維の断面形状の楕円度、及び各繊維の物質密度を含む。繊維機械的パラメータは、以下で更に詳述する。
【0053】
本実施形態では、各繊維を記述する計算モデルは、区分に離散化されたCosseratロッドに基づいている。Cosseratロッドモデル自体は、当業者に周知であろう。このモデルはまた、繊維と、空気若しくは他のガス状物質、及び又は水若しくは他の液体と、の相互作用を記述する、毛髪繊維系における減衰の測定を含む。減衰効果は、温度及び湿度など環境条件に依存する。したがって、これは、繊維機械的パラメータの一部ではなく、計算モデルのグローバルパラメータである。
【0054】
前述したように、ジオメトリ情報は、モデルにおける各繊維の各区分の開始位置を定める。シミュレーションは、ジオメトリ情報に基づいて、繊維間の接合点の数を判定する。これは、ソフトウェアの衝突検出機能を使用して行われる。接合点の数は、複数の繊維の接合分布を定める。
【0055】
図3に示されているシミュレーション方法は、様々な異なる目的に使用され得る。
【0056】
第1実施例では、シミュレーションは、ヘアスタイルの変更のシミュレーションに使用され得る。これは、美容室での顧客との相談の一環として行われ得る。この場合、第1のジオメトリ情報は、開始時のヘアスタイルを記述する。第1のジオメトリ情報は、仮想頭髪における各毛髪繊維の位置を定める。この仮想頭髪は、顧客の既存のヘアスタイルの捕捉された3Dジオメトリに基づいてよい。毛髪をシミュレーションするための繊維機械的パラメータは、データベース360から取得される。民族、毛髪色、顧客の実際の毛髪の損傷度に最も一致するデータベースエントリが選択される。毛髪の切断をシミュレーションするために、仮想頭髪の各繊維の長さが短くされてよい。次いで、本方法は、繊維の長さを変更したことの効果をシミュレーションし、各毛髪の位置が再び定常状態に達するまで進める。毛髪繊維の新たな定常状態ジオメトリは、当該顧客にとってのヘアカットの結果を表す。これにより、カット後に顧客の毛髪がどのように見えるかを物理的に正確に予測できるようになり得る。この予測は、顧客の承認又は意見を得るために画面にレンダリングされ、表示される。
【0057】
所望に応じて、本方法はまた、ヘアカット後に毛髪を再び伸ばすことの効果をシミュレーションし得る。これは、仮想頭髪において各繊維の長さを連続的に増加させ、各長さにおいてシミュレーションを元に戻すことによって実行される。これにより、アニメーション化された画像シーケンスのレンダリングが可能になり、カットした毛髪が経時的にどのように伸びるかを示し得る。
【0058】
更なる選択肢として、所望の場合、本方法は、新しいヘアカットの動的外見のシミュレーションに使用され得る。これは、シミュレーション中に、頭部の位置を(仮想的に)動かす、又は振動させることによって行われ得る。次いで、シミュレーションは時間内で徐々に進み、毛髪繊維が、どのように頭部の動きを追うかを予測する。各ステップにおいて画像がレンダリングされて、頭髪の動きのアニメーションがフレームごとに作成される。
【0059】
顧客が休暇で外国に行く場合、シミュレーションは、その国の気候条件及び/又は天候条件及び/又は水条件を使用してプログラミングされ得る。これにより、(美容室での条件とは異なり得る)これらの環境条件下でのヘアスタイルの外見を予測できるようになり得る。例えば、湿度の増加は、毛髪を重くし得る、硬さを変化させ得る、及び/若しくは縮れを増加させ得る。又は、毛髪化粧処理に使用される水のミネラル含有量の変化は、毛髪を硬く、若しくは柔らかくし得る。これらの変化は、本方法によって好適にシミュレーションされてよい。
【0060】
前述した内容から明らかであるように、これらのようなシミュレーションにより、美容師又はスタイリストは、顧客とより効率的にコミュニケーションを取ることができ得る。顧客は、ヘアカットの最終結果を予測できることによって安心し得、希望をより明確に美容師/スタイリストに指示できてよい。
【0061】
第2実施例では、本方法は、毛髪化粧料製品を使用した顧客の毛髪の処理のシミュレーションに使用され得る。これもまた、美容室での顧客との相談の一環として行われ得る。あるいは、化粧品を販売する小売店など毛髪化粧料製品の販売店にて行われ得る。この使用例を支援するために、データベース360は、異なる毛髪化粧料製品で処理された場合の異なるタイプの毛髪の繊維機械的パラメータを含む。これらの繊維機械的パラメータは、関連タイプの毛髪の少量の試料から事前に取得されてよいことに留意されたい。これにより、毛髪化粧料製品を使用して頭髪全体を処理する必要性を回避する。それにもかかわらず図3の方法を使用して、毛髪化粧料製品によって処理された頭髪全体の外見が、仮想シミュレーションによって予測され得る。第1のジオメトリ情報は、顧客の頭部の3Dスキャンによって取得されてよい。顧客(又はヘアスタイリスト又は製品販売アシスタント)は、次いで、例えば、顧客の民族、毛髪色、及び損傷度をユーザインターフェースのドロップダウンメニューから選択することにより、顧客の毛髪タイプを手動で入力する。
【0062】
本方法は、次いで、対応の格納されている繊維機械的パラメータセットをデータベース360から使用して、毛髪化粧料製品による処理後の顧客の毛髪の定常状態のジオメトリをシミュレーションできる。本質的に、このシミュレーションにより、少量の毛髪試料(一房の毛髪)での試験から推定して、頭髪の外見を予測することができる。
【0063】
処理後の顧客の毛髪の予測される外見を示す画像は、レンダリングされ、顧客に表示され得る。任意追加的に、現在のジオメトリの顧客の毛髪の画像もレンダリングされ得る。これにより、2つの仮想画像を並べて比較し、毛髪化粧料製品を使用した結果として、予測される外見の差異を示すことができる。
【0064】
このようなシミュレーションはまた、新しい毛髪化粧料製品の開発のために産業研究所で有用であり得る。試験サロンにおいて実際のモデルで新しい製品処方を大規模に試験する代わりに、図3の方法は、異なるヘアスタイルの、多数の異なる頭髪の外見に対する製品の効果をシミュレーションするために使用され得る。これは、(データベース360を投入するために、処理後の様々な毛髪タイプの毛髪繊維機械的パラメータを決定するために)少量の毛髪サンプルを処理するだけで達成され得る。処理結果間で補間することも可能であり得る。例えば、新しい製品処方は、まず軽損傷度の金髪で試験され、次いで重損傷度の金髪で試験されて、いずれの場合においても処理した少量の毛髪から毛髪繊維機械的パラメータが測定され得る。本方法は、次いで、2つの極端な例の毛髪繊維機械的パラメータ間での線形又は非線形補間により、中損傷度の金髪の毛髪繊維機械的パラメータを補間してよい。このようにして、新しい製品処方の生じ得る効果に関する、より豊かな情報セットを取得しつつ、必要とされる実際の実験の数を低減させ得る。このフィードバックは、開発プロセスの誘導に使用され得、製品処方の専門家が、より少ない反復回数及びこれまで可能だったよりも少ない試験回数で好適な製品組成に到達するように支援する。
【0065】
毛髪繊維を使用した他の仮想実験も同様に実施され得る。例えば、本方法は、毛髪をブラッシングする又は梳かすなど相互作用のシミュレーションに使用され得る。
【0066】
繊維機械的パラメータの更なる詳細については、ここで説明する。
【0067】
摩擦、粘着、及び凝集を測定する方法は複数存在する。これは、複数の繊維の集合体を使用して行われ得る(繊維の数は、好ましくは既知である)。あるいは、単一繊維間での相互作用を測定することにより行われ得る。例えば、改良された先端部を使用する原子間力顕微鏡法(AFM)は、ある単一繊維と別の単一繊維との間の相互作用を測定するために使用され得る。従来、AFMは、先鋭部(シリコン結晶など)を有するカンチレバーをプローブとして使用する。毛髪繊維でAFMを使用するために、この先鋭プローブは、1本の短い毛髪繊維(<1mm)に置き換えられる。この繊維は、固定するために樹脂に取り付けられてよい。第2繊維は、同様の方法でAFMステージ上に取り付けられる。次いで、2つの繊維間の相互作用は、AFM装置によって測定され得る。あるいは、従来のプローブの先端部は、例えばアミノ官能化(-NH3+)コーティングで、化学的に官能化され得る。これは、(この時点で正に荷電された)先端部と、-COO--SO3基によって特徴付けられる、負に荷電された毛髪の表面積との間の引力を増加させる。これは、液体でコーティングされていない毛髪繊維の部分及びコーティングされている部分を検出するのに有用であり得る。毛髪繊維へのAFMの適用については、Wood et al.(Claudia Wood,Albert Budiman Sugiharto,Eva Max,and Andreas Fery,「From conditioning shampoo to nanomechanics and haptics of human hair」,J.Cosmet.Sci.,62,259~264,March/April 2011)に記載されている。摩擦、粘着、及び凝集は、いわゆる表面力装置(SFA)を使用して測定され得る。これについての更なる詳細は、Israelachvili et al.(J Israelachvili,Y Min,M Akbulut,A Alig,G Carver,W Greene,K Kristiansen,E Meyer,N Pesika,K Rosenberg,and H Zeng,「Recent advances in the surface forces apparatus(SFA)technique」,Reports on Progress in Physics,Vol.73,No.3,2010)に見出される。
【0068】
本実施形態では、機械的指紋で使用するための摩擦、粘着、及び凝集の好ましい測定方法は、SFAである。これは、個人の頭部の実環境にできる限り近い測定条件を生成できるためである。
【0069】
摩擦係数は、別の毛髪繊維と接触しているある毛髪繊維を動かすために必要な力の量を特性化する。摩擦係数は、好ましくは、繊維の運動ベクトルの少なくとも2つの異なる相互標定について測定される。これは、毛髪繊維が均一に平滑ではなく、異なる方向で異なる粗さ、したがって、異なる摩擦係数を呈するためである。本質的に、この測定は、ある繊維を別の繊維に擦り付け、このために必要な力を測定することを含む。類似の測定は、あるいは、同一タイプの複数の繊維を同時に互いに擦り付け、繊維の数で除することによって行われ得る。本実施形態では、摩擦係数は、互いに対して90°にある毛髪繊維間で測定される。次いで、第1繊維は、第2繊維の長手方向に沿って動かされる。摩擦係数は、各方向で測定される(第2繊維の根元から先端の方向で第2繊維に沿って第1繊維を摺動させる、及び先端から根元の方向で第2繊維に沿って第1繊維を摺動させる)。これにより、繊維機械的パラメータセットの2つの摩擦係数が得られる。これらの係数は、通常、互いに大きく異なる。第1繊維が毛小皮の隆起方向に対して摺動するとき、毛小皮角度はインターロック機構を提供するが、摺動が、毛小皮をはがす方向であるとき、摩擦係数は約50%低い。
【0070】
摩擦係数と同様に、粘着力及び凝集力は、好ましくは、互いに対して直角にある毛髪繊維で、ロードセルを使用して力測定を行うことにより測定される。毛髪繊維は、両端を所定の位置に保持するために、両端で樹脂に封入されてよい。摩擦測定には、ある繊維を他の繊維に沿って摺動させることが必要であるが、粘着力及び凝集力測定は、個々の接合位置(交差点)で行われる。
【0071】
粘着力は、繊維の表面特性によるその「粘着性」、つまり繊維が互いに粘着する傾向を特性化する。したがって、粘着力は、2つの繊維を分離させるために必要な力の量を測定することにより得られる。粘着では、一方の繊維から反対側の繊維への物質移動は生じない。
【0072】
凝集力は、繊維間での液体の存在により生じる繊維間の結合を特性化する。毛髪繊維に液体付着物が存在することはよくある。例えば、天然の未処理毛髪上でさえも、毛包の腺が皮脂を生成し、毛髪繊維に付着する。シャンプーは皮脂を取り除くものの、他の毛髪処理が皮脂を他の液体付着物に置き換える。例えば、コンディショナーは、毛髪繊維にシリコーンを付着させてよい。
【0073】
液体は、通常、毛髪繊維の長さに沿って不均一に付着する。したがって、繊維間の引力は、繊維の交差点に応じて異なってよい。粘着力は、液体が存在しない接合部における繊維間の結合を特性化する。凝集力は、液体が存在する接合部における繊維間の結合を特性化する。したがって、繊維機械的パラメータセットに凝集力を含むことにより、繊維上の液体付着物の効果、並びに繊維自体を特性化する。例えば、凝集力は、接合部における、繊維をそこで接続するシリコーン液滴による2つの毛髪繊維の結合を特性化してよい。凝集力は、液体シリコーン液滴によって生じる、2つの繊維間での毛細管力によって定められる。
【0074】
完全に清浄な毛髪繊維は、その表面に付着物を持たないとみなされ得る。この「原生」状態での最外層は、18-MEA又はF層と呼ばれる。毛髪が損傷すると、F層は、部分的に又は完全に除去され、したがって、毛髪の表面特性は、疎水性から親水性へと変化する。この異なる表面エネルギーはまた、毛髪表面での活性化合物の付着に影響する。異なる表面エネルギーを有する毛髪では、毛髪化粧料活性物質は異なる方法で付着し、毛髪化粧料活性物質に起因する、繊維間での異なる毛細管力をもたらし、異なる凝集力/エネルギーを生じさせる。
【0075】
凝集力を測定するには、液体が存在する、2つの繊維の交差点を見出す必要がある。粘着力を測定するには、液体が存在しない交差点を見出す必要がある。本実施形態では、これは、繊維を直角に保持し、繊維を互いに対して移動させ、様々な交差点を選択することにより行われる。液体の有無は、白色光で接合部を照射し、生じた干渉パターンを分析することにより検出され得る。
【0076】
粘着力及び凝集力のそれぞれの一次測定値は、2つの繊維を接触から分離するために必要な力である。各力測定値は、好ましくは、正規化された結果を繊維機械的パラメータに含める前に、2つの繊維の接触面積によって正規化される。
【0077】
ヤング率、曲げ弾性率、及びねじり弾性率にも複数の測定方法が存在する。図6Aは、単繊維のヤング率の測定方法の概略図である。繊維は、2つの吊り点間に吊り下げられ、破損が生じるまで長手方向に引き伸ばされる。繊維の引き伸ばしに従って、応力対ひずみ曲線が記録される。弾性率(ヤング率)は、応力-ひずみ曲線の線状部分の勾配として測定される。
【0078】
曲げ弾性率を測定するために、繊維は、図6Bに示されるように、2つの吊り点間に再度吊り下げられる。次いで、繊維は切断され、一方の自由端を上吊り点から吊り下げられたままにする。繊維の切断端は、力センサーを備えるプレートに押し付けられる。次いで、曲げ力及び曲げ弾性率が測定され得る。単繊維の弾性率測定値(ヤング率、剪断/ねじり弾性率、曲げ弾性率)のすべてについて、測定時に繊維の楕円の断面積、又は楕円度、又は長軸及び短軸を把握しておいて、繊維の断面に対して測定された力を正規化することが必要である屈曲法は、繊維の柔軟性(可撓性)に関する情報を提供する。
【0079】
曲げ弾性率及びヤング率を測定するための力測定は、Dia-Stron MTT600又はFBS900試験器を使用して実施され得る。屈曲法の繊維は予め切断され、引張試験の繊維は破損するまで引き伸ばされるため、これらの試験のそれぞれには、同一試料の異なる繊維が使用されるべきであることに留意されたい。例えば、捻転及び曲げは1つの繊維で測定され得、引張特性は第2繊維で測定される。あるいは、捻転特性及び引張特性は1つの繊維で測定され得、曲げ弾性率は第2繊維で測定される。
【0080】
毛髪繊維の捻転挙動は、複数の著者による文献に報告されている。これは、ねじり振り子法を使用して測定され得る。この方法については、剪断弾性率G’を計算する式が公開されている。例えば、Robbins(C.R.Robbins,「Chemical and Physical Behavior of Human Hair」,Springer-Verlag,2002,4th Edition)を参照されたい。この式は、式(1)に再現される。この式は、Ip(断面の極慣性モーメント)に基づいている。
【0081】
剪断弾性率G’=4π2**M/T2*Ip (1)
=128π**M/T2*4
L=繊維の長さ、[m]
M=振り子の慣性モーメント[kg*2
T=振動期間[s]
Ip=断面の極慣性モーメント[m4
d=繊維直径
【0082】
当初、式(1)のIpは、円形繊維断面に基づいていた(以下の式(2)を参照)。Ipについて楕円形断面を考慮するように適合され得る(以下の式(3)を参照)。
【0083】
円形断面の場合Ip=πd4/32 (2)
楕円形断面の場合Ip=π(dmin3*dmax+dmax3*dmin)/64 (3)
【0084】
これらの式により剪断弾性率G’を計算すると、多くの場合、大きい標準偏差が生じることが見出されている。理論に束縛されるものではないが、これは、剪断弾性率と毛髪繊維断面の楕円度との間の依存関係によるものと考えられる。楕円度=dmin/dmaxであり、式中、dminは毛髪繊維断面の最小径であり、dmaxは最大径である。つまり、dmin及びdmaxは、それぞれ楕円断面の長軸及び短軸に沿った寸法である。
【0085】
したがって、楕円形断面については、Ipを断面のねじり慣性モーメント(It)で置き換えることが提案される。
【0086】
It=(π(dmin3*dmax3))/(16*(dmin2+dmax2)) (4)
【0087】
これは、楕円度に関して標準偏差を低減することが見出されている。したがって、繊維機械的パラメータセット内のねじり弾性率は、好ましくは剪断弾性率G’として定義され、断面のねじり慣性モーメントを使用して、つまり、上記の式(1)でItをIp代わりに使用して計算される。
【0088】
上記のように試験される各繊維の長さは、好ましくは1cm~3cmの範囲である。いくつかの実施形態では、パラメータは、根元から先端までの各毛髪繊維の複数の区分のそれぞれについて、別個に測定されてよい。これにより、毛髪繊維の長さに沿った機械的パラメータの変動が捕捉され得、それによってより向上したシミュレーション精度を提供する可能性がある。
【0089】
上記の実施形態には、多くの変更例が可能である。例えば、3D繊維のジオメトリ情報は、様々な方法で取得されてよい。OCTに代わるも方法の1つは、複数の繊維のレーザースキャニングである。レーザースキャニングからの未加工データは、繊維の3D構造を形成するための処理を必要とする点群である。レーザースキャニングの優位性は、高精度で3D形状を認識することである。レーザースキャニングは、好適な安全対策を講じつつ、ヒトに対して使用され得る。OCTに代わる別の方法は、マイクロコンピュータ断層撮影(μ-CT)である。これは、病院のCTスキャンに類似しているが、より高い解像度を有する、より小規模な技術を使用した3Dでのx線撮像であり、μ-CTは、約25μm以下のボクセルサイズを有し得る。μ-CTは、ごく限定的な量を調べることができるため、少量の毛髪により好適であり得る。また、試料へのx線の照射に依存するため、in vivoでのヒトの毛髪のスキャニングよりも少数の検査室試料により好適であり得る。μ-CTの更なる難点は、溶着により個々の繊維を区別することが困難であることであり得る。
【0090】
毛髪ジオメトリはまた、技術の組み合わせ(例えば、レーザースキャニング及びOCT)によって捕捉されて、合成によって完全な毛髪の3Dジオメトリを得ることができる。
【0091】
繊維ジオメトリ情報が実試料のスキャニングから得られることは、必須ではない。ジオメトリ情報は合成であってよい。例えば、必ずしも実環境に類自体を有さない、コンピュータグラフィックスツールを使用して考案した仮想ヘアスタイルであってよい。
【0092】
上記の実施形態では、各繊維の計算モデルは、離散化されたCosseratロッドに基づいていた。これもまた、必須ではない。他の計算モデルが、当技術分野において周知である。
【0093】
前述のように、本発明の範囲は、毛髪繊維のシミュレーションに限定されるものではない。シミュレーションすべき複数の繊維は、任意のタイプの繊維であってよい。例えば、これらは、織布若しくは不織布の繊維、又はブラシ毛を形成する繊維であってよい。繊維は、分離してシミュレーションされる必要はない。例えば、繊維と、他の固形物、液体、気体との相互作用がシミュレーションされてよい。一実施形態では、シミュレーションすべき繊維は歯ブラシの毛を含み、シミュレーションは、歯ブラシの毛と、歯、歯茎、又は他の口腔組織との相互作用をシミュレーションすることを含む。本方法により、個々の繊維と、歯の表面との相互作用が予測され得るであろう。これにより、例えば、より優れた歯ブラシを設計する、又は仮想シミュレーションで異なる歯磨き技術を評価する目的で、含まれるプロセスの理解が向上してよい。
【0094】
図4~5は、図3のシミュレーション法の拡張を示す。ここにおいても、本方法は、毛髪繊維のシミュレーションに即して説明されるが、当業者は、本発明の範囲がこのように限定されないことを理解するであろう。
【0095】
図4は、1つの例示的実施形態による論理情報を示す概略フロー図である。本方法への入力は、ターゲットジオメトリ情報235である。これは、例えば、スタイリストが顧客のために実現することを望む、所望のヘアスタイルを表してよい。このターゲットジオメトリ情報235は、逆シミュレーション410によって使用されて、繊維機械的パラメータのターゲットセット225を得る。このターゲットセットは、達成された場合には、所望のヘアスタイル(ターゲットジオメトリ情報によって定められたように)を実現する、繊維機械的パラメータセットである。
【0096】
繊維機械的パラメータのターゲットは、所望のヘアスタイルを実現する際にスタイリストの誘導を支援する。例えば、スタイリストは、ターゲットジオメトリを実現するために、毛髪がより低い摩擦及びより高い曲げ剛性を呈することを必要とすることを、ターゲット機械的パラメータから見出し得る。次いでスタイリストは、自身の専門知識に基づいて、毛髪をターゲットパラメータセットに近づけるであろう適切な処理を選択し得、それによって、スタイリストがターゲットジオメトリを実現しやすくする。
【0097】
図5を参照して、本方法について更に詳述する。ステップ530では、プロセッサ106は、ターゲットジオメトリ情報235を受信する。ターゲットジオメトリ情報235は、様々な方法で生成されてよい、又は取得されてよい。一例では、顧客の希望は、相談中にスタイリストによって3D仮想ヘアスタイルに転送される。これは、顧客の既存のヘアスタイルの3Dスキャンから開始して、コンピュータグラフィックスツールを使用して、顧客の意見に応じてリアルタイムで変更することにより行われ得る。あるいは、開始点は、コンピュータ100の記憶媒体102に格納されている、多数の完全合成の「標準」ヘアスタイルのうちの1つであり得る。顧客は、所望のターゲットに最も類似する標準ヘアスタイルを選択し得、次いで、スタイリストと相談して、このヘアスタイルのジオメトリを適合させて、自身の希望に合わせてカスタマイズし得る。別の例では、ターゲットヘアスタイルは、2Dスケッチ又は写真から推定されて、3Dターゲットジオメトリ情報が得られてよい。いずれの場合においても、ターゲットジオメトリ情報は、各毛髪繊維の各区分の3D位置を定める。本実施形態では、各区分の速度は0である、換言すれば、指定のターゲットジオメトリでは、毛髪は静止していると考えられている。
【0098】
逆シミュレーション410は、「合成による分析」手法を使用して続行する。これは、繊維機械的パラメータの初期セットを選択し、開始ジオメトリを適合させることにより初期化される。繊維機械的パラメータの初期セットはランダムに選択されてよい、又はターゲットジオメトリ情報にある程度依存してよい。開始ジオメトリは、顧客の現在のヘアスタイルに基づいてよい。次いで、このプロセスは、繰り返し手法を適用する。ステップ340では、プロセッサ106は、繊維機械的パラメータの初期セットを初期ジオメトリに適用することによって生じる構成変化をシミュレーションする。このシミュレーションの出力は、結果として生じたジオメトリを記述するジオメトリ情報である。ステップ510では、プロセッサは、この結果として生じたジオメトリをターゲットジオメトリと比較する。これら2つがまだ十分に類似していないと仮定すると、本方法は、ステップ520へと進む。このステップでは、プロセッサ106は、繊維機械的パラメータセットを修正する。本方法は、次いで、プロセッサが、修正された繊維機械的パラメータを開始ジオメトリに適用することにより生じる構成変化をシミュレーションするためにステップ340に再び戻る。ここにおいても、本方法はステップ510へと進み、新しい、結果として生じたジオメトリ情報が、ターゲットジオメトリと十分に良好に一致するかどうかを確認する。繰り返しごとに、繊維機械的パラメータは、結果として生じたジオメトリ情報がターゲットジオメトリに近づくように修正される。これは、多数の方法で達成され得、多数の可能な方法を使用してパラメータを調整する。かかる方法には、勾配降下法、モンテカルロ法、及び遺伝的アルゴリズムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
ステップ510において、本方法が、現在の結果として生じたジオメトリ情報は十分にターゲットジオメトリに類似すると判定すると、繰り返しは終了する。この時点で、最終繰り返し回の修正された繊維機械的パラメータが、繊維機械的パラメータのターゲットとして選択される(ステップ550)。繰り返しは、複数の考えられる規則に基づいて終了され得る。例えば、繰り返しは、現在のジオメトリ情報とターゲットジオメトリ情報との自乗差の合計が所定の閾値未満であるまで続いてよい。あるいは、繰り返しは、繰り返し間で自乗差の合計が減少しなくなるまで続いてよい。当業者は、自乗差の合計が、ジオメトリの質を評価するために使用する、多数の考えられる好適な測定基準のうちの1つに過ぎないことを理解するであろう。
【0100】
図5の例では、逆シミュレーション410は、順方向シミュレーションを繰り返し、各繰り返しにおいて繊維機械的パラメータを更新することによって実施された。しかしながら、一般に、必ずしも繰り返し手法に従わなくてよい。例えば、複数のシミュレーション340は、異なる繊維機械的パラメータを使用して並列に実行され得る。これは、上述の方法に類似の方法で並列シミュレーションのそれぞれを繰り返すことにより、繰り返し手法と組み合わされ得る。これにより、完全パラメータ空間のより高速の及び/又は広範囲の調査が可能になり得る。
【0101】
上記の実施形態は、本発明を制限することを示すものではなく、当業者は、添付の特許請求項の範囲から逸脱することなく別の実施形態を考案できることに留意するべきである。請求項において、括弧間に配置されるいずれの参照記号も請求項を制限するものとしてみなされるべきではない。用語「comprising」は、請求項に列挙される要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する用語「a」又は「an」は、複数のかかる要素の存在を除外するものではない。実施形態は、複数の異なる要素を備えるハードウェアによって実施されてよい。複数の手段を列挙する装置に関する請求項では、複数のこれらの手段は、ハードウェアの全く同一の品目によって具体化されてよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項で列挙されるという事実だけでは、これらの手段の組み合わせを使用して利益をもたらすことができないことを示すものではない。更に、添付の特許請求項の範囲では、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」を含むリストは、(A及び/若しくはB)並びに/又はCと解釈されるべきである。
【0102】
更に、一般に、ハードウェア若しくは専用回路、ソフトウェア、論理、又はこれらの組み合わせにおいて、様々な実施形態が実施されてよい。例えば、一部の態様は、ハードウェアにおいて実施されてよく、他の態様は、コントローラ、マイクロプロセッサ、又は他のコンピューティングデバイスによって実行されてよい、ファームウェア又はソフトウェアにおいて実施されてよいが、これらは、非限定例である。本明細書に記載の様々な態様は、ブロック図、フロー図として、又は他の図的記述を使用して、例示され、記述されてよいが、本明細書に記載のこれらのブロック、装置、システム、技術、又は方法は、非限定例として、ハードウェア、ソフトウェア、専用回路若しくは論理、汎用ハードウェア若しくはコントローラ若しくは他のコンピューティングデバイス、又はこれらのいくつかの組み合わせにおいて実施されてよいことは十分理解されている。
【0103】
本明細書に記載の実施形態は、プロセッサエンティティ内のものなど装置のデータプロセッサによって実行可能なコンピュータソフトウェアによって、又はハードウェアによって、又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実施されてよい。更にこの点に関しては、図内のものなど論理フローのすべてのブロックは、プログラムステップ、又は相互に接続される回路、ブロック、及び機能、又はプログラムステップ、並びに論理回路、ブロック、及び機能の組み合わせを表してよい。ソフトウェアは、メモリチップ、又はプロセッサ内に実装されたメモリブロックなど物理媒体、ハードディスク又はフロッピーディスクなど磁気媒体、及び例えばDVD及びそのデータバリアント、CDなど光媒体に格納されてよい。
【0104】
メモリは、局所的技術環境に好適な任意のタイプであってよく、半導体ベースのメモリデバイス、磁気メモリデバイス及びシステム、光メモリデバイス及びシステム、固定メモリ及び着脱式メモリなど任意の好適なデータ格納技術を使用して実装されてよい。データプロセッサは、局所的技術環境に好適な任意のタイプであってよく、非限定例として、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、ゲートレベル回路及びマルチコアプロセッサベースのプロセッサのうちの1つ以上を含んでよい。
【0105】
本明細書に記載の実施形態は、集積回路モジュールなど様々な構成要素で実施されてよい。集積回路の設計は、概して高度に自動化されたプロセスである。論理レベルの設計を、いつでも半導体基材上でエッチングされ、形成される半導体回路設計に変換するために、複雑かつ強力なソフトウェアツールを使用できる。
【0106】
本明細書にて開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指示がない限り、このような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B