(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】装置、家具及び特に医療機器用のキャスタ
(51)【国際特許分類】
B60B 33/02 20060101AFI20230301BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B60B33/02
B60B33/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021105522
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】10 2020 117 833.6
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521279284
【氏名又は名称】シュタインコ・パウル・フォム・シュタイン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヴァイヒブロット
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・デーラン
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-185802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0206565(US,A1)
【文献】米国特許第05263226(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00 - 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置用、家具用、及
び医療機器(11)用のキャスタ(10)であって、
このキャスタは、一つのフット部(18)と一つのヘッド部(17)から形成されている支持部分(16)を
備え、
このヘッド部は、一つの固定ボルト(19)を収容し、
かつそのフット部(18)は少なくとも一つの車輪(22)が配置されている車輪軸(21)を支承し、
キャスタ(10)は、一つの方向ロック部材(23)を備える、
当該キャスタにおいて、
キャスタ(10)は、方向ロック部材(23)のための可動の阻止要素(26)を備え、この阻止要素は、少なくとも間接的に車輪(22)と摩擦接触があること、
かつ摩擦接触から生じる摩擦力は、キャスタ(10)がy方向に移動する際に、y方向に方向ロックを生
じ、
阻止要素(26)は、ばねで負荷をかけられていて、そのばね力が、摩擦力に対して反対に作用することを特徴とするキャスタ(10)。
【請求項2】
阻止要素(26)は、方向ロック部材(23)付近の車輪上で支承する摩擦シューから形成されていて、
摩擦シューに配置されている垂直の阻止ロッドを
備え、
この阻止ロッドは、車輪表面の上方に、方向ロック部材の方向へ移動可能に案内されてい
ることを特徴とする請求項
1に記載のキャスタ(10)。
【請求項3】
阻止要素(26)は、車輪軸(20)上で旋回可能に配置されていて、
阻止要素(26)の第1のアーム(27)には、阻止突起(28)が設けられていて、
この阻止突起は、方向ロック部材(23)に係合することが可能であり、
かつ
阻止要素(26)の第2のアーム(29)は、少なくとも間接的にタイヤ(34)の内周面(33)に摩擦を生じるように接す
ることを特徴とする請求項
1に記載のキャスタ(10)。
【請求項4】
阻止要素(26)の第2のアーム(29)の自由端部領域には、突起として形成されている作動ウェイト(30)が設けられていて、
アーム軸線(x)から離れた場所で作用するその作動ウェイトの重量は、キャスタ(10)の静止時に、方向ロックが自動的に解除されるトルクを提供す
ることを特徴とする請求項
3に記載のキャスタ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置用、家具用、及び特に医療機器用のキャスタに関するものであり、このキャスタは、フット部とヘッド部から形成されている支持部分を有し、ヘッド部は、固定ボルトを収容し、且つそのフット部は車輪軸を支持し、この車輪軸には少なくとも一つの車輪が配置されていて、キャスタは方向ロック部材を備える。
【背景技術】
【0002】
例えば、このような方向ロック部材を有するキャスタが、特許文献1(DE 203 17 456 U1)から知られていて、このキャスタでは、ステップレバーを作動させることによって、ロックプランジャが方向ロック方式で戻り止めディスク19の尖った歯部に係合する。
【0003】
さらに、従来技術では、特許文献2(DE 100 47 006A1)による装置、家具及び病院ベッド用の回転キャスタが含まれ、旋回方向ロック及び/又は車輪ロックのための制動装置が作動ロッドを介して制御可能である。
【0004】
しかし、病院内で、例えば、重い医療機器を搬送する場合には、特に狭い廊下又は狭い部屋での方向転換は、手動操作が必要な際、一人の人間で実施することが困難であることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国実用新案第20317456号明細書
【文献】独国特許出願公開第10047006号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの背景に対して、本発明の課題は、方向転換後に手動操作なしで、まっすぐ進行する際に自動で方向ロックされる、装置用、家具用、及び特に医療機器用の新たなキャスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の装置用、家具用、及び特定の医療機器用のキャスタで解決する。
【0008】
装置用、家具用、及び特に医療機器用のキャスタであって、
このキャスタは、一つのフット部と一つのヘッド部から形成されている支持部分を有し、
このヘッド部は、一つの固定ボルトを収容し、且つそのフット部は少なくとも一つの車輪が配置されている車輪軸を支承し、
キャスタは、少なくとも一つの方向ロック部材を備える、
当該キャスタにおいて、
キャスタは、方向ロック部材のための可動の阻止要素を備え、この阻止要素は、少なくとも間接的に車輪と摩擦接触があること、及び摩擦接触から生じる摩擦力は、キャスタがy方向に移動する際に、y方向に方向ロックが生じることを特徴とするキャスタ。
【0009】
基本的な本発明の利点は、
一方では、一方向への走行中、走行中に生じ且つ阻止要素上で作用する摩擦力によって、可動の阻止要素が所望の方向への直線移動を保証し、
他方では、キャスタが第1の方向で停止し、方向を変更して第2の方向への移動を開始した後、自動的に方向ロックを再び阻止する、
ことである。
【0010】
その結果、医療機器を押す人は、方向ロックをかみ合わせる為に、手の操作又は足の操作が必要なくなることで負担が軽減される。その結果、搬送プロセスが大幅に簡略化される。
【0011】
本発明の有利な実施形態では、阻止要素がばねで負荷をかけられていて、そのバネ力は摩擦力に対して反対に作用する。これにより、キャスタが一方向に移動して停止後、摩擦力の消失後、阻止要素がバネ力に基づいて方向ロック部材内の停止位置から外へ移動することが、より確実に保障される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、
阻止要素は、方向ロック部材付近の車輪上で支承する摩擦シュー(Reibschuh)から形成されていて、
摩擦シューに配置されている垂直の阻止ロッドを有し、
この阻止ロッドは、方向ロック部材の車輪表面の上方に移動可能に案内されている。
【0013】
この実施形態は、非常に簡単に構成されているという利点を有する。
【0014】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、
阻止要素は、車輪軸上で旋回可能に配置されていて、
阻止要素の第1のアームには、阻止突起が設けられていて、
この阻止突起は、方向ロック部材に係合することが可能であり、及び
阻止要素の第2のアームは、少なくとも間接的に車輪の内周面に摩擦を生じるように接する。
【0015】
この実施形態は、キャスタの内部に非常に良好に配置することができ、単一及び二重キャスタにも適しているという利点を有する。
【0016】
先述の実施形態では、阻止要素の第2のアームの自由端部領域には、突起として形成されている作動ウェイトが設けられていることも可能であり、アーム軸線から離れた場所で作用するその作動ウェイトの重量は、キャスタの静止時に、方向ロックが自動的に解除されるトルクを提供することができる。
【0017】
この作動ウェイトによって、キャスタの停止後に、それと同時に、摩擦力がなくなった後に、確実な方法で方向ロック部材の解除が保証される。
【0018】
本発明のさらなる利点は、実施例の以下の記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】自動の方向ロック付きの第5キャスタの斜視図を示す。
【
図3】
図2の切断線III-IIIによる断面図を示す。
【
図4】方向ロック部材を有する
図2によるキャスタの部分図を示す。
【
図5】
図2中の切断線V-Vによるキャスタの断面図を示す。
【
図6】方向ロックでの
図2中の切断線III-IIIによる断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面において、本発明による方向ロック付きの装置用、家具用、特に医療機器用のキャスタは、参照番号10が全体に付されている。
【0021】
図1において、入力パネル12及びモニタ13を有する医療機器11は、下方から見た斜視図で見ることができる。下側14には、4つの回転キャスタ15と、自動方向ロックを有する中央の第5キャスタ10とが配置されている。
【0022】
基本的には、4つの回転キャスタ15のうち1つ以上に本発明の自動方向ロックが設けられていて、本発明の自動方向ロックを有する追加の第5キャスタ10を設けないことも可能である。
【0023】
図2には、先述の第5キャスタ10が斜視図で拡大して示されている。ヘッド部17とフット部18とを有する支持部分16が見られる。支持部分16のヘッド部17には、ねじ留め板20を含む固定ボルト19(
図3参照)が配置されていて、車輪22は車輪軸21(
図3参照)によってフット部18に回転可能に固定されている。
【0024】
図2の切断線III-IIIによる断面図は、
図3で示す。支持部分16には、方向ロック部材23として利用されている戻り止めディスク、軸受24、及びカバーキャップ25が、固定ボルト19に、追加的に配置されていることがわかる。
【0025】
旋回可能な阻止要素26(
図7も参照)が車輪軸21上で固定されていて、上方に突き出ているその第1アーム27には、方向ロック部材23として機能する戻り止めディスクに係合することが可能である阻止突起28が設けられている。
【0026】
第2のアーム29は重力方向sに延在し、端部には横方向の突起として形成されている作動ウェイト30を有する。この作動ウェイトには、アーム軸線xから離れた場所にあり、キャスタ10の静止時に、方向ロックが自動的に解除されるトルクを提供することができる。
【0027】
特に
図4及び
図5で見られるように、第2のアーム29の自由端の両側にはそれぞれ1つの摩擦ボルト31がさらに配置されていて、その外周面32は車輪34の内周面33に対して摩擦が生じるように接し、タイヤ34はリム35上で連結して固定されている。
【0028】
図3には、ロック解除位置が、図示されている。即ち、阻止要素26が方向ロック部材23の戻り止めディスクに係合しない。同時に、アーム軸線xと重力方向sは一致する。
【0029】
車輪22がy方向に移動すると、摩擦ボルト31/内周面33の領域に時計回りに向けられた摩擦力が生じる。その結果として生じるトルクにより、阻止要素26は
図6に図示されているロック位置に移動する。具体的には、阻止突起28は方向ロック部材23の戻り止めディスクに係合し、これにより、直進走行時に方向ロックが引き起こされる。同時に、第2のアーム29が時計回りに移動し、これ以降、アーム軸線xが、さらに重力方向sに延在しないことが分かる。
【0030】
車輪22が再び静止すると同時に、時計回りに向けられた摩擦力及び関連するトルクはゼロになり、それによって、阻止要素26は作動ウェイト30の重量に基づいて再びロック解除位置に移動する(
図3参照)。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.装置用、家具用、及び特に医療機器(11)用のキャスタ(10)であって、
このキャスタは、一つのフット部(18)と一つのヘッド部(17)から形成されている支持部分(16)を有し、
このヘッド部は、一つの固定ボルト(19)を収容し、且つそのフット部(18)は少なくとも一つの車輪(22)が配置されている車輪軸(21)を支承し、
キャスタ(10)は、一つの方向ロック部材(23)を備える、
当該キャスタにおいて、
キャスタ(10)は、方向ロック部材(23)のための可動の阻止要素(26)を備え、この阻止要素は、少なくとも間接的に車輪(22)と摩擦接触があること、及び摩擦接触から生じる摩擦力は、キャスタ(10)がy方向に移動する際に、y方向に方向ロックを生じる、ことを特徴とするキャスタ(10)。
2.阻止要素(26)は、ばねで負荷をかけられていて、そのばね力が、摩擦力に対して反対に作用する、ことを特徴とする上記1に記載のキャスタ(10)。
3.阻止要素(26)は、方向ロック部材(23)付近の車輪上で支承する摩擦シューから形成されていて、
摩擦シューに配置されている垂直の阻止ロッドを有し、
この阻止ロッドは、車輪表面の上方に、方向ロック部材の方向へ移動可能に案内されている、ことを特徴とする上記1又は2に記載のキャスタ(10)。
4.阻止要素(26)は、車輪軸(20)上で旋回可能に配置されていて、
阻止要素(26)の第1のアーム(27)には、阻止突起(28)が設けられていて、
この阻止突起は、方向ロック部材(23)に係合することが可能であり、及び
阻止要素(26)の第2のアーム(29)は、少なくとも間接的にタイヤ(34)の内周面(33)に摩擦を生じるように接する、ことを特徴とする上記1又は2に記載のキャスタ(10)。
5.阻止要素(26)の第2のアーム(29)の自由端部領域には、突起として形成されている作動ウェイト(30)が設けられていて、
アーム軸線(x)から離れた場所で作用するその作動ウェイトの重量は、キャスタ(10)の静止時に、方向ロックが自動的に解除されるトルクを提供する、ことを特徴とする上記4に記載のキャスタ(10)。
【符号の説明】
【0031】
10 方向ロック部材を有するキャスタ
11 医療機器
12 入力パネル
13 モニタ
14 11の底部
15 回転キャスタ
16 支持部分
17 ヘッド部
18 フット部
19 固定ボルト
20 支持板
21 車輪軸
22 車輪
23 方向ロック部材
24 軸受
25 カバーキャップ
26 阻止要素
27 第1のアーム
28 阻止突起
29 第2のアーム
30 作動ウェイト
31 摩擦ボルト
32 外周面
33 内周面
34 タイヤ
35 リム
S 重力方向
x アーム軸線
y 走行方向