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特許7235829電力量計の開閉器の制御方法及び電力量計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電力量計の開閉器の制御方法及び電力量計
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20230301BHJP
   H01H 33/00 20060101ALI20230301BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H01H33/59 G
H01H33/00 A
H01H9/54 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021174597
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2022-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309042071
【氏名又は名称】東光東芝メーターシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰亨
(72)【発明者】
【氏名】田川 澄人
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6933786(JP,B1)
【文献】特開2004-241204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
H01H 33/00
H01H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点が設けられ、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により前記可動接点が前記固定接点に対して開動作と閉動作することにより前記電力系統の電力の前記負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の制御方法であって、
前記可動接点と前記固定接点との間に流れる接点電流のピーク値を検出し、
制御部が前記接点電流のピーク値の時刻を検出し、前記接点電流の前記ピーク値を検出した時刻から前記可動接点を開動作させる接点開時間だけ遅延させた時刻に、前記可動接点を開動作させる駆動信号を開閉器制御回路に出力し、
前記開閉器制御回路が前記駆動信号を前記励磁コイルに出力した時刻から所定時間経過した時刻に前記可動接点が開状態となったときに前記接点電流をゼロ又はゼロ近傍にすることを特徴とする電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項2】
前記所定時間は、前記開閉器毎に予め定められた一定値であり、前記接点開時間は、前記ピーク値を検出した時刻と前記所定時間と前記接点電流の周期とに基づき設定されることを特徴とする請求項記載の電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項3】
前記励磁コイルの特性のばらつきに対応付けした前記所定時間をメモリに記憶し、
記制御部は、前記所定時間を前記メモリから読み出し、読み出した前記所定時間と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき前記接点開時間を設定することを特徴とする請求項記載の電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項4】
電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点が設けられ、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により前記可動接点が前記固定接点に対して開動作と閉動作することにより前記電力系統の電力の前記負荷への供給遮断を行う開閉器を備えた電力量計であって、
前記可動接点と前記固定接点との間に流れる接点電流のピーク値を検出する電流センサと、
前記接点電流のピーク値の時刻を検出し、前記接点電流のピーク値を検出した時刻から前記可動接点を開動作させる接点開時間だけ遅延させた時刻に、前記可動接点を開動作させる駆動信号を開閉器制御回路に出力する制御部とを備え、
前記開閉器制御回路が、前記駆動信号を前記励磁コイルに出力した時刻から所定時間経過した時刻に前記可動接点が開状態となったときに前記接点電流をゼロ又はゼロ近傍にすることを特徴とする電力量計。
【請求項5】
前記所定時間は、前記開閉器毎に予め定められた一定値であり、前記接点開時間は、前記ピーク値を検出した時刻と前記所定時間と前記接点電流の周期とに基づき設定されることを特徴とする請求項記載の電力量計。
【請求項6】
前記励磁コイルの特性のばらつきに対応付けした前記所定時間を記憶するメモリを備え、
記制御部は、前記所定時間を前記メモリから読み出し、読み出した前記所定時間と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき前記接点開時間を設定することを特徴とする請求項記載の電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計の開閉器の制御方法及び電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
電力量計の電力系統(Source)から負荷(Load)の間に設けられる開閉器において、開閉器に設けられた可動接点を固定接点に対して閉動作させると、可動接点と固定接点との間に電流が流れる。
【0003】
次に、開閉器の可動接点を固定接点に対して開動作させると、可動接点と固定接点との間に流れていた電流が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2892717号公報
【文献】特許第3716691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電流がゼロではない場合には、可動接点と固定接点との間にアーク(火花)が発生し、可動接点と固定接点とへダメージを与えることになる。両方の接点に与えダメージは、アーク放電電流の大きさとアーク放電の持続時間によって決定される。
【0006】
このため、電流がゼロ又はゼロ近傍のタイミングにおいて、可動接点を固定接点に対して開動作させた方が、両方の接点へのダメージを抑制し、両方の接点を保護することができる。
【0007】
本発明の課題は、接点へのダメージを抑制し、接点の信頼性及び寿命を向上させることができる電力量計の開閉器の制御方法及び電力量計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力量計の開閉器の制御方法の請求項1は、電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点が設けられ、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により前記可動接点が前記固定接点に対して開動作と閉動作することにより前記電力系統の電力の前記負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の制御方法であって、前記可動接点と前記固定接点との間に流れる接点電流のピーク値を検出し、制御部が前記接点電流のピーク値の時刻を検出し、前記接点電流の前記ピーク値を検出した時刻から前記可動接点を開動作させる接点開時間だけ遅延させた時刻に、前記可動接点を開動作させる駆動信号を開閉器制御回路に出力し、前記開閉器制御回路が前記駆動信号を前記励磁コイルに出力した時刻から所定時間経過した時刻に前記可動接点が開状態となったときに前記接点電流をゼロ又はゼロ近傍にすることを特徴とする。
【0010】
請求項は、請求項記載の電力量計の開閉器の制御方法であって、前記所定時間は、前記開閉器毎に予め定められた一定値であり、前記接点開時間は、前記ピーク値を検出した時刻と前記所定時間と前記接点電流の周期とに基づき設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項は、請求項記載の電力量計の開閉器の制御方法であって、前記励磁コイルの特性のばらつきに対応付けした前記所定時間をメモリに記憶し、前記制御部は、前記所定時間を前記メモリから読み出し、読み出した前記所定時間と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき前記接点開時間を設定することを特徴とする。
【0012】
請求項は、電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点が設けられ、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により前記可動接点が前記固定接点に対して開動作と閉動作することにより前記電力系統の電力の前記負荷への供給遮断を行う開閉器を備えた電力量計であって、前記可動接点と前記固定接点との間に流れる接点電流のピーク値を検出する電流センサと、前記接点電流のピーク値の時刻を検出し、前記接点電流のピーク値を検出した時刻から前記可動接点を開動作させる接点開時間だけ遅延させた時刻に、前記可動接点を開動作させる駆動信号を開閉器制御回路に出力する制御部とを備え、前記開閉器制御回路が、前記駆動信号を前記励磁コイルに出力した時刻から所定時間経過した時刻に前記可動接点が開状態となったときに前記接点電流をゼロ又はゼロ近傍にすることを特徴とする。
【0014】
請求項は、請求項記載の電力量計であって、前記所定時間は、前記開閉器毎に予め定められた一定値であり、前記接点開時間は、前記ピーク値を検出した時刻と前記所定時間と前記接点電流の周期とに基づき設定されることを特徴とする。
【0015】
請求項は、請求項記載の電力量計であって、前記励磁コイルの特性のばらつきに対応付けした前記所定時間を記憶するメモリを備え、前記制御部は、前記所定時間を前記メモリから読み出し、読み出した前記所定時間と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき前記接点開時間を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1,によれば、接点電流のピーク値を検出した時刻から可動接点を開動作させる接点開時間だけ遅延させた時刻に、可動接点を開動作させる駆動信号を開閉器制御回路に出力する。開閉器制御回路が駆動信号を励磁コイルに出力した時刻から所定時間経過した時刻に可動接点が開状態となるので、接点開時間を制御することで、可動接点が開状態となったときに接点電流をゼロ又はゼロ近傍にする。従って、接点へのダメージを抑制し、接点の信頼性及び寿命を向上させることができる。
【0018】
請求項によれば、接点開時間は、ピーク値を検出した時刻と所定時間と接点電流の周期とに基づき設定されるので、可動接点が開状態となったときに接点電流がゼロ又はゼロ近傍にすることができる。
【0019】
請求項によれば、励磁コイルの特性のばらつきに対応した所定時間と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき接点開時間を設定するので、励磁コイルの特性がばらついても可動接点が開状態となったときに接点電流がゼロ又はゼロ近傍にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電力量計を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器閉時の接点状態と接点電流波形を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の可動接点を開動作させた時の接点状態と接点間で発生するアーク放電電流波形を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器において接点電流がゼロの瞬間に可動接点を開動作させたときに、アークが一番発生しないことを示す図である。
図5】の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器において接点電流がゼロを過ぎた直後の時刻に可動接点を開動作させたとき、アーク時間が一番長くなることを示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の接点におけるアークを抑制した可動接点の開動作の制御を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電力量計の開閉器の接点におけるアークを抑制した可動接点の開動作の制御を示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る電力量計の開閉器の接点におけるアークを抑制した可動接点の開動作の制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る電力量計の開閉器の接点制御方法及び電力量計について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1に第1の実施形態に係る電力量計の構成図を示す。電力量計1は、電力系統1S,2S(Source側)の系統電圧と電流を検出し、検出された電圧と電流とに基づき電力量を演算する。電力系統1Sは、商用周波数(50Hz又は60Hz)の交流電圧及び交流電流を負荷に供給する。
【0023】
電力量計1は、図1に示すようにCPU2(中央処理装置)、電圧信号変換回路3、開閉器4、開閉器制御回路6、電流センサ8、電流信号変換回路10、電源回路11を備えている。
【0024】
電圧信号変換回路3は、電力系統1S,2S(Source側)のアナログ信号の系統電圧をデジタル信号の電圧信号に変換する。CPU2は、演算部21、制御部22、メモリ23を備える。
【0025】
演算部21は、電圧信号変換回路3からの電圧信号と電流センサ8からの電流信号とを入力し、電圧信号の電圧と電流信号の電流とを乗算することにより電力量を演算する。メモリ23は、後述する接点開時間Δt1を記憶する。
【0026】
制御部22は、第1制御部に対応し、メモリ23から接点開時間Δt1を読み出し、電流信号変換回路10を介して電流センサ8から入力される接点電流に基づき接点電流のピーク値とピーク値の時刻を検出し、検出した時刻から接点開時間Δt1だけ遅延させた後、励磁コイル5を駆動するための駆動信号を開閉器制御回路6に出力する。
【0027】
電流センサ8は、電力系統1Sと負荷1Lとの間の電線9に設けられ、可動接点7bが固定接点7aに対して閉動作している時に電力系統1Sから負荷1Lに流れる接点電流を検出する。電流センサ8としては、磁気センサや変流器(CT)やシャント抵抗等がある。
【0028】
電流信号変換回路10は、電流センサ8で検出されたアナログ信号の電流信号をデジタル信号の電流信号に変換し、CPU2に出力する。電源回路11は、CPU2と開閉器制御回路6に電源を供給する。
【0029】
開閉器制御回路6は、CPU2からの駆動信号に基づき駆動信号により開閉器4内の励磁コイル5を駆動する。
【0030】
開閉器4は、ラッチングリレーからなり、励磁コイル5と、電力系統1Sと負荷1Lとの間に固定接点7aと可動接点7bとが設けられ、可動接点7bが固定接点7aに対して開閉することにより電力系統の電力の負荷1Lへの供給遮断を行う。
【0031】
励磁コイル5に励磁電流を一方向に流すと、電磁力が発生して、電磁力により可動接点7bが固定接点7aに対して閉動作する。一方、励磁コイル5に励磁電流を一方向とは逆方向に流すと、可動接点7bが固定接点7aに対して開動作する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の閉動作時の接点状態と接点電流波形を示す図である。図2(a)に示すように、可動接点7bが固定接点7aに閉動作している時には、負荷側で電力を消費している場合であり、図2(b)に示すように、商用周波数の電流が流れている。
【0033】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の開動作時の可動接点7bを開動作させた時の接点状態とアーク放電電流波形を示す図である。図3(a)に示すように、可動接点7bが固定接点7aに開動作させた時、図3(b)に示すように、電流がゼロでない場合には、固定接点7aから可動接点7bにアーク(火花)が発生する。
【0034】
アークが発生した場合、図3(b)に示すように、可動接点7bの開動作の時刻t10から電流がゼロになる時刻t11(ゼロクロス)まで、アークが継続する。従って、図4に示すように、接点電流がゼロになる時刻t12に可動接点7bを開動作させたとき、アークが一番発生しない。
【0035】
上記とは逆に、図5に示すように、接点電流がゼロを過ぎた直後の時刻t13に可動接点7bを開動作させたときには、時刻t13から、接点電流がゼロクロスする時刻t14までアークが発生し、アーク時間が一番長くなる。
【0036】
このように開閉器4の可動接点7bの開動作のタイミングを制御しない場合には、可動接点7bの開動作のタイミングは図4図5のいずれかのタイミングとなる。
【0037】
アークは光と熱を大量に発生させ、アーク時間が長ければ長いほど、熱も発生する。可動接点7bの一度の開動作でのアーク時間が電流の1/4波であった場合でも、可動接点7bと固定接点7aとは、発生する熱によって変形してしまう。
【0038】
可動接点7bの開動作を多数回繰り返すことで可動接点7bと固定接点7aのダメージが蓄積し、いずれ接点が故障に至る。
【0039】
接点が故障に至るまでの開閉回数寿命は、アーク時間が一定であれば、接点部分の材料や構造を強化するしかない。アークが発生しないまたはアークが発生しても短い時間で常に可動接点7bを開動作制御できるならば、接点のダメージが軽減され、故障までの寿命(開閉回数)を延ばすことができる。
【0040】
そこで、第1の実施形態に係る電力量計においては、制御部22が、電流センサ8からの接点電流(図6(b)に示す電流波形)のピーク値とピーク値の時刻t1を検出し、検出した時刻から接点開時間(t2-t1=Δt1)だけ遅延させた時刻t2に、励磁コイル5を駆動するための駆動信号(図6(a)に示すCPU2からの制御信号)を開閉器制御回路6に出力する。接点開時間Δt1は、図6(b)に示す電流がゼロクロスで可動接点7bを開動作させるための調整時間である。
【0041】
開閉器制御回路6は、制御部22からの駆動信号により励磁コイル5を駆動する。時刻t2から電流がゼロクロスする時刻t3までの所定時間Δt2は、励磁コイル5に電流が流れて可動接点7bが開動作(離れる)までの時間である。所定時間Δt2は、開閉器4毎に概ね一定値である。
【0042】
接点開時間Δt1を考慮せずに可動接点7bの開動作を制御した場合には、前述したように図4図5のようなアーク時間となる。
【0043】
これに対して、接点開時間Δt1を制御して電流のゼロクロスを狙って制御した場合には、図4に示すようにアークの発生が抑制でき、これによって、接点へのダメージが抑制できる。
【0044】
接点開時間Δt1の開始時刻の基準については、図6(b)に示すように電流波形のピーク値としている。電流波形は、様々な形となるため、電流のピーク値を基準にした制御が好適である。
【0045】
接点開時間Δt1は、電流のピーク値を検出した時刻と所定時間Δt2と接点電流の周期とに基づき設定される。電力系統の交流電源の商用周波数が例えば50Hzとすると、図6(b)に示す電流波形の周期は、20msである。周期が20msであることから、時刻t1から時刻t3までの時間は、35msである。
【0046】
所定時間Δt2は、開閉器4毎に概ね一定値で既知であることから、所定時間Δt2が例えば、23msであるとすると、接点開時間Δt1は、12msとなる。
【0047】
従って、ピーク値を検出した時刻t1から12ms遅延した時刻t2に、駆動信号を励磁コイル5に出力すると、所定時間Δt2経過時の時刻t3に可動接点7bが開動作し、その時に電流がゼロクロスする。
【0048】
従って、アークの発生が大幅に抑制でき、接点へのダメージが抑制できる。これにより、接点の信頼性及び寿命を向上させることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る電力量計について説明する。同じ種類の開閉器4を大量生産した場合に、開閉器4内の励磁コイル5の特性がばらつく。この場合には、所定時間Δt2は、一定値ではなく、励磁コイル5毎にばらつき、変化する。
【0050】
しかし、第1の実施形態に係る電力量計のように、一定値の時間Δt2を用いて接点開時間Δt1を設定すると、可動接点7bが開動作した時に電流がゼロクロスせず、アークの発生が抑制できない。
【0051】
即ち、励磁コイル5に電流が流れて接点が動作するまでの時間Δt2にはバラツキがある。このため、第2の実施形態に係る電力量計では、統計的手法を用い、所定時間Δt2の平均時間とバラツキを加味して、時間Δt2を固定値に設定している。
【0052】
あるメーカーの開閉器において、制御信号を受けてから接点が「開」になるまでの所定時間(コイル励磁時間)を大量に測定したとき、その測定結果が正規分布に従うものと仮定する。平均時間=Δt2av, 標準偏差=σと仮定する。
【0053】
複数個nの開閉器4-1~4-nの励磁コイル5-1~5-nの特性のばらつきにより、所定時間Δt2-1~Δt2-nもばらつくので、制御部22が所定時間Δt2-1~Δt2-nの平均時間Δt2avを求める。平均時間Δt2avは、式(1)で求められる。
Δt2av=(Δt2-1+Δt2-2+Δt2-3…Δt2-n)/n …(1)
理想としては、時間が最も長い(ここではΔt2av+3σとして扱う)開閉器であっても電流がゼロクロスする直前で開閉器が「開」状態になることが望ましい。即ち、図7に示すようになる。
【0054】
この場合、Δt2=Δt2av+3σを固定値として設定し、メモリ23に所定時間Δt2=Δt2av+3σを記憶する。なお、管理上限値を+3σにするか或いは他の値にするかは、採用する開閉器の実態に合わせて決めれば良い。
【0055】
制御部22は、メモリ23から読み出した所定時間Δt2=Δt2av+3σと電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき平均値化された接点開時間Δt1avを設定する。
【0056】
従って、ピーク値を検出した時刻から接点開時間Δt1avだけ遅延した時刻に、駆動信号を励磁コイル5に出力すると、時間Δt2=Δt2av+3σの時間経過時に可動接点7bが開動作し、その時に電流がゼロクロス又はゼロクロス近傍になる。従って、アークの発生が大幅に抑制でき、接点へのダメージが抑制できる。これにより、接点の信頼性及び寿命を向上させることができる。
【0057】
また、使用する開閉器の各々の個体に合わせて時間Δt2を設定する必要がなく、電力量計内蔵のメモリ23で所定時間Δt2=Δt2av+3σを固定値として扱うため、電力量計の製造性が良い。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電力量計について説明する。第2の実施形態に係る電力量計で説明したように、所定時間Δt2は、励磁コイル5毎にばらつく。所定時間Δt2のバラツキが大きい場合、所定時間Δt2を固定値として扱うと、図8に示すように、一部開閉器の制御が電流ピークより前の接点動作となってしまい、アーク時間が伸びて信頼性を損なうこととなる。
【0059】
このため、開閉器における所定時間Δt2を個別に測定し、その結果をそれぞれの電力量計内蔵のメモリ23に保存し、制御時にメモリ23から所定時間Δt2を読み出して用いる。
【0060】
即ち、第3の実施形態に係る電力量計では、制御部22が、所定時間Δt2のばらつきに応じて、接点開時間Δt1を変化させる制御を行う。
【0061】
この制御方法は、開閉器毎の各々の励磁コイル5に電流を流し、各々の所定時間Δt2を測定し、測定された各々の所定時間Δt2をCPU2内のメモリ23に記憶する。具体的には、複数個の開閉器4-1~4-nにおいて、励磁コイル5-1~5-nの特性のばらつきに対応付けした所定時間Δt2-1~Δt2-nをメモリ23に記憶する。
【0062】
次に、制御部22は、開閉器4-1では、励磁コイル5-1の特性のばらつきに対応付けした所定時間Δt2-1をメモリ23から読み出す。制御部22は、所定時間Δt2-1と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき接点開時間Δt1-1を設定する。
【0063】
また、制御部22は、開閉器4-nでは、励磁コイル5-nの特性のばらつきに対応付けした所定時間Δt2-nをメモリ23から読み出す。制御部22は、所定時間Δt2-nと電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき接点開時間Δt1-nを設定する。
【0064】
このように第3の実施形態に係る電力量計によれば、制御部22が、励磁コイル5の特性のばらつきに対応した所定時間と電流のピーク値を検出した時刻と接点電流の周期とに基づき接点開時間を設定する。
【0065】
従って、励磁コイル5の特性がばらついても可動接点7bが開状態となったときに接点電流がゼロ又はゼロ近傍にすることができる。これにより、アークの発生が大幅に抑制でき、接点へのダメージが抑制でき、接点の信頼性及び寿命を向上させることができる。また、開閉器のバラツキを気にしなくて済むので、精度良い接点開制御が行える。
【符号の説明】
【0066】
1 電力量計
2,2a CPU
3 電圧信号変換回路
4 開閉器
5 励磁コイル
6 開閉器制御回路
7a 固定接点
7b 可動接点
8 電流センサ
9 電線
10 電流信号変換回路
11 電源回路
21 演算部
22 制御部
23 メモリ
【要約】
【課題】接点へのダメージを抑制し、接点の信頼性及び寿命を向上させる電力量計の開閉器の制御方法及び電力量計。
【解決手段】電力系統と負荷との間に固定接点7aと可動接点7bが設けられ、励磁コイル5への電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う開閉器4備える電力量計であって、可動接点と固定接点との間に流れる接点電流のピーク値を検出する電流センサ8と、接点電流のピーク値を検出した時刻から可動接点を開動作させる接点開時間を制御し、検出した時刻から接点開時間だけ遅延させた後、可動接点を開動作させる駆動信号を開閉器に出力する制御部22と、駆動信号を励磁コイルに出力し、駆動信号を出力した時刻から所定時間経過後に可動接点が開状態となったときに接点電流をゼロ又はゼロ近傍にする開閉器制御回路6とを備える。
【選択図】図1
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図8