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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】装着ヘッドメンテナンス装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021506860
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011247
(87)【国際公開番号】W WO2020188711
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正隆
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036670(JP,A)
【文献】特開平11-340689(JP,A)
【文献】特開2007-184648(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ノズルを着脱可能に保持するノズル保持部、および保持された前記吸着ノズルに負圧および正圧のエアを選択的に供給する内部流路を有する装着ヘッドの前記ノズル保持部に着脱可能に取り付けられて、前記内部流路に連通される連通部材と、
その一端が前記連通部材に連通される外部流路と、
前記外部流路に設けられて前記エアの流量および圧力の少なくとも一方を検出するエアセンサと、を備え、
前記外部流路は、その他端に開閉弁を有し、
前記エアセンサは、前記開閉弁が開いた状態で前記エアの前記流量を検出するエア流量センサ、および、前記開閉弁が閉じた状態で前記エアの前記圧力を検出するエア圧力センサである、
装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項2】
吸着ノズルを着脱可能に保持するノズル保持部、および保持された前記吸着ノズルに負圧および正圧のエアを選択的に供給する内部流路を有する装着ヘッドの前記ノズル保持部に着脱可能に取り付けられて、前記内部流路に連通される連通部材と、
その一端が前記連通部材に連通される外部流路と、
前記外部流路に設けられて前記エアの流量および圧力の少なくとも一方を検出するエアセンサと、を備え、
前記エアセンサは、一方向の前記エアの前記流量のみを検出する一方向エア流量センサを含み、
前記外部流路は、前記エアが負圧であるか正圧であるかに対応して、前記一方向エア流量センサに前記一方向の前記エアが流れるように流路系統を切り替える切り替え弁を有する、
装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項3】
吸着ノズルを着脱可能に保持するノズル保持部、および保持された前記吸着ノズルに負圧および正圧のエアを選択的に供給する内部流路を有する装着ヘッドの前記ノズル保持部に着脱可能に取り付けられて、前記内部流路に連通される連通部材と、
その一端が前記連通部材に連通される外部流路と、
前記外部流路に設けられて前記エアの流量および圧力の少なくとも一方を検出するエアセンサと、を備え、
前記装着ヘッドは、昇降駆動部によって下降駆動された前記吸着ノズルの下端が物体に当接することを監視するタッチダウン監視センサを有し、
前記連通部材は、上下方向の寸法および構成が前記吸着ノズルと同一であり、前記昇降駆動部からの駆動および前記タッチダウン監視センサによる監視が可能である、
装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項4】
吸着ノズルを着脱可能に保持するノズル保持部、および保持された前記吸着ノズルに負圧および正圧のエアを選択的に供給する内部流路を有する装着ヘッドの前記ノズル保持部に着脱可能に取り付けられて、前記内部流路に連通される連通部材と、
前記装着ヘッドを取り付ける取り付けユニットと、
前記取り付けユニットに設けられ、前記取り付けユニットに取り付けられた前記装着ヘッドを電気接続する電気接続部と、
の一端が前記連通部材に連通される外部流路と、
前記外部流路に設けられて前記エアの流量および圧力の少なくとも一方を検出するエアセンサと、
を備える装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項5】
前記外部流路は、その他端に開閉弁を有し、
前記エアセンサは、前記開閉弁が開いた状態で前記エアの前記流量を検出するエア流量センサ、および、前記開閉弁が閉じた状態で前記エアの前記圧力を検出するエア圧力センサである、
請求項4に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項6】
前記エアセンサは、一方向の前記エアの前記流量のみを検出する一方向エア流量センサを含み、
前記外部流路は、前記エアが負圧であるか正圧であるかに対応して、前記一方向エア流量センサに前記一方向の前記エアが流れるように流路系統を切り替える切り替え弁を有する、
請求項4または5に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項7】
前記装着ヘッドの前記内部流路に負圧および正圧の前記エアを選択的に供給する圧力源を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項8】
前記圧力源は、前記内部流路のうち少なくとも負圧の前記エアが流れる負圧流路範囲を洗浄する正圧の洗浄用エアの供給源を兼ね、
前記エアセンサは、前記負圧流路範囲が洗浄された後に検出を行う、
請求項7に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項9】
前記装着ヘッドを撮像して画像データを取得するカメラ、および、前記画像データを画像処理して前記装着ヘッドを検査する画像処理検査部を含む撮像検査器具を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項10】
前記装着ヘッドは、昇降駆動部によって下降駆動された前記吸着ノズルの下端が物体に当接することを監視するタッチダウン監視センサを有し、
前記連通部材は、上下方向の寸法および構成が前記吸着ノズルと同一であり、かつ前記昇降駆動部からの駆動および前記タッチダウン監視センサによる監視が可能である、
請求項4~9のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項11】
前記装着ヘッドメンテナンス装置に設けられかつ前記エアセンサと相違する検査器具が前記装着ヘッドを検査して取得した検査情報、および、前記装着ヘッドに設けられた監視センサが前記装着ヘッドを監視して取得した監視情報の少なくとも一方を受け取り、前記エアセンサの検出結果と、前記検査情報および前記監視情報の少なくとも一方とに基づいて、前記装着ヘッドの使用可否を判定する総合判定部を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、吸着ノズルを有して部品装着機に着脱可能に装備される装着ヘッドを保守するメンテンナンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、回路基板を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、吸着ノズルを有する装着ヘッドが着脱可能に取り付けられる。装着ヘッドは、吸着ノズルに負圧および正圧のエアを選択的に供給する内部流路を有する。内部流路のうち負圧のエアが流れる負圧流路範囲は、外気エアの吸い込みに伴って塵埃などが混入する場合があり、吸着ノズルの機能低下が懸念される。この対策として、例えば特許文献1に開示された装置により、装着ヘッドのメンテンナンスが実施される。
【0003】
特許文献1の装着ヘッド洗浄装置は、内部流路に正圧のエアを供給して装着ヘッド内を洗浄するメンテナンス装置である。この装着ヘッド洗浄装置は、部品装着機と共通のヘッドクランプ装置と、エア供給源から供給される正圧のエアを洗浄用通路あるいは検査用通路に選択的に供給する切り替え手段と、検査用通路に設けられたエア測定手段と、を備える。これによれば、装着ヘッド内を自動で洗浄することが可能となり、さらに、洗浄後にエアの流れを測定することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/153598号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の装置において、装着ヘッドの洗浄およびエアの流れの測定を自動化できる点は好ましい。しかしながら、検査用通路は、内部流路の上流端に連通され、エア測定手段は、内部流路の下流端に連通される吸着ノズルから見て離れた位置に配置される。このため、エア測定手段で測定されるエアの流れは、離れた位置の吸着ノズルの機能を高精度に表わすことができるとは限らなかった。
【0006】
また、エアの流量および圧力の両方を測定する場合、内部流路の下流端を開いた状態および閉じた状態にする2種類の測定治具が必要であった。さらには、2種類の測定治具の交換作業が必要となり、特に、複数の吸着ノズルを有するロータリ型の装着ヘッドでは、測定治具の交換作業に多くの作業時間が必要となっていた。
【0007】
本明細書では、吸着ノズルを保持するノズル保持部の近くにおいて、吸着ノズルの機能に直結するエアの流量および圧力の少なくとも一方を高精度に検出することができる装着ヘッドメンテナンス装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、吸着ノズルを着脱可能に保持するノズル保持部、および保持された前記吸着ノズルに負圧および正圧のエアを選択的に供給する内部流路を有する装着ヘッドの前記ノズル保持部に着脱可能に取り付けられて、前記内部流路に連通される連通部材と、その一端が前記連通部材に連通される外部流路と、前記外部流路に設けられて前記エアの流量および圧力の少なくとも一方を検出するエアセンサと、を備える装着ヘッドメンテナンス装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する装着ヘッドメンテナンス装置によれば、吸着ノズルに代えて連通部材を装着ヘッドのノズル保持部に取り付け、連通部材に連通される外部流路にエアセンサを設けることができる。したがって、装着ヘッドメンテナンス装置は、ノズル保持部の近くにおいて、吸着ノズルの機能に直結するエアの流量および圧力の少なくとも一方をエアセンサによって高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】装着ヘッドが取り付けられる部品装着機の構成例を示す斜視図である。
図2】吸着ノズルおよびノズル保持部の周りの構成を示す側面断面図である。
図3】装着ヘッドの取り付け構造を示す側面断面図である。
図4】部品装着機の内部においてエアが流れる流路の系統構成を示した図である。
図5】第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置の外形を示す斜視図である。
図6】装着ヘッドメンテナンス装置の内部の斜視図である。
図7】装着ヘッドメンテナンス装置において、測定を実施している状態を示す側面図である。
図8】装着ヘッドメンテナンス装置において、装着ヘッドの内部流路を洗浄している状況を示す図である。
図9】装着ヘッドメンテナンス装置において、正圧のエアにより測定を実施している状況を示す流路系統図である。
図10】装着ヘッドメンテナンス装置において、負圧のエアにより測定を実施している状況を示す流路系統図である。
図11】装着ヘッドメンテナンス装置の制御の構成を示す機能ブロック図である。
図12】装着ヘッドメンテナンス装置を使用して装着ヘッドをメンテナンスするときの動作フローの図である。
図13】第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置の制御の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機1の構成例
まず、装着ヘッド46が取り付けられる部品装着機1の構成例について、図1図4を参考にして説明する。図1の左上から右下に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、左下(後側)から右上(前側)に向かう方向がY軸方向、鉛直方向がZ軸方向である。部品装着機1は、部品の装着作業を繰り返して実施する。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、部品カメラ11、および図略の制御装置などで構成されている。
【0012】
基板搬送装置2は、第1ガイドレール21および第2ガイドレール22、一対のコンベアベルト、ならびにクランプ装置などで構成される。第1ガイドレール21および第2ガイドレール22は、基台10の上部中央を横断してX軸方向に延在し、かつ互いに平行するように基台10に組み付けられる。第1ガイドレール21および第2ガイドレール22に沿い、互いに平行に配置された一対のコンベアベルトが設けられる。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを戴置した状態で輪転して、基台10の中央に設定された装着実施位置に基板Kを搬入および搬出する。また、基台10の中央部のコンベアベルトの下方にクランプ装置が設けられる。クランプ装置は、基板Kを複数の押し上げピンで押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。
【0013】
部品供給装置3は、部品装着機1の後側に着脱可能に装備される。部品供給装置3は、デバイスパレット35上に複数のフィーダ装置31が列設されて構成される。フィーダ装置31は、本体32と、本体32の後側に設けられた供給リール33と、本体32の前端上部に設けられた部品取り出し部34とを備える。供給リール33には、多数の部品が所定ピッチで封入されたキャリアテープが巻回保持される。このキャリアテープが所定ピッチで送り出されると、部品は、封入状態を解除されて部品取り出し部34に順次送り込まれる。
【0014】
部品移載装置4は、一対のY軸レール41、Y軸移動台42、Y軸モータ43、X軸移動台44、X軸モータ45、および装着ヘッド46などで構成される。一対のY軸レール41は、基台10の前側から後側の部品供給装置3の上方にかけて配設される。Y軸移動台42は、一対のY軸レール41に装架されている。Y軸移動台42は、Y軸モータ43からボールねじ機構を介して駆動され、Y軸方向に移動する。
【0015】
X軸移動台44は、Y軸移動台42に装架されている。X軸移動台44は、X軸モータ45からボールねじ機構を介して駆動され、X軸方向に移動する。装着ヘッド46は、X軸移動台44の後側に、着脱可能に取り付けられる。Y軸レール41、Y軸移動台42、Y軸モータ43、およびX軸モータ45は、装着ヘッド46を駆動するヘッド駆動機構40を構成する。
【0016】
装着ヘッド46は、ロータリツール47を下側に有する。ロータリツール47は、R軸モータ4A(図11参照)によって回転駆動される。図1には省略されているが、ロータリツール47の下側に、複数の吸着ノズル5(図2参照)が環状に配置される。マークカメラ49は、装着ヘッド46の下側に設けられ、ロータリツール47に並んで配置される。マークカメラ49は、位置決めされた基板Kに付設された位置マークを撮像して、基板Kの正確な装着実施位置を検出する。
【0017】
部品カメラ11は、基板搬送装置2と部品供給装置3との間の基台10の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ11は、装着ヘッド46の複数本の吸着ノズル5が部品取り出し部34で部品を吸着して基板Kに移動する途中の状態を撮影する。これにより、部品カメラ11は、複数本の吸着ノズル5にそれぞれ保持された部品を一括して撮像できる。取得された画像データは、画像処理されて、部品の有無や正誤が確認されるとともに、吸着姿勢が取得される。
【0018】
制御装置は、基板Kの種類ごとのジョブデータを保持して、装着作業を制御する。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や方法などを記述したデータである。制御装置は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品カメラ11に各種の指令を送信する。また、制御装置は、これらの装置から動作状況に関する情報を受信する。制御装置は、単一のコンピュータ装置で構成されてもよく、複数のコンピュータ装置に機能分散されて構成されてもよい。
【0019】
2.吸着ノズル5および装着ヘッド46の構成
次に、吸着ノズル5および装着ヘッド46の詳細な構成について説明する。ロータリツール47の中心から離れた円周上に等間隔で、複数のノズル保持部4Bが設けられる。図2に示されるように、ノズル保持部4Bは、上下方向に延在する円柱状の内部空間によって形成される。ノズル保持部4Bは、吸着ノズル5を着脱可能かつ動作可能に保持する。
【0020】
吸着ノズル5は、ノズル本体部51、ノズル先端部53、および付勢ばね56などで構成される。ノズル本体部51は、上下方向に長く形成され、ノズル保持部4Bの内部に昇降可能に配置される。ノズル本体部51の外周面と、ノズル保持部4Bの内周面との間は、気密構造とされている。ノズル本体部51は、軸方向流路511、径方向流路512、外周流路513、および先端保持空間514を有する。軸方向流路511は、ノズル本体部51の中心に形成されて、上下方向に延在する。径方向流路512は、径方向に形成されて、軸方向流路511の上部からノズル本体部51の外周面に連通する。
【0021】
外周流路513は、ノズル本体部51の外周の一部分が縮径されて形成される。外周流路513は、径方向流路512に連通しつつ、ノズル本体部51の外周において上下方向および周方向に拡がっている。先端保持空間514は、軸方向流路511の下側に連通して形成される。先端保持空間514は、軸方向流路511よりも大径の空間であり、下方に開口している。ノズル本体部51は、先端保持空間514の内側面から外周面に開口する昇降規制窓52をもつ。
【0022】
ノズル先端部53は、先端保持空間514の内部に、気密を確保しつつ昇降可能に設けられる。ノズル先端部53は、円筒状の部材で形成され、その外径が先端保持空間514の内径に略等しい。ノズル先端部53は、下方に進むにつれて徐々に縮径されつつ下方に開口する開口部54を下側に有する。吸着する様々な大きさの部品に対応するために、開口部54の開口面積が相違する複数種類の吸着ノズル5が用いられる。
【0023】
ノズル先端部53の途中高さに、エアの流れを妨げない支持板55が設けられる。支持板55は、水平方向に配置され、その端部が昇降規制窓52に係入している。支持板55とノズル本体部51の間に、付勢ばね56が設けられる。付勢ばね56は、ノズル本体部51を基準にして、ノズル先端部53を下方に付勢する。したがって、通常時に、ノズル先端部53は、支持板55が昇降規制窓52の下面に接する高さに維持される(図2参照)。
【0024】
ここで、装着ヘッド46の後部寄りの特定箇所に、吸着ノズル5が動作するノズル動作位置が設定されている。ノズル動作位置の上方には、昇降駆動部に相当するZ軸モータ48が設けられる。ロータリツール47の回転によってノズル動作位置にセットされた吸着ノズル5は、Z軸モータ48に駆動されて、ノズル保持部4Bの中を昇降する。また、ノズル動作位置にセットされた吸着ノズル5は、Q軸モータ4C(図11参照)に駆動されて、ノズル保持部4Bの中で自転する。
【0025】
さらに、ノズル動作位置の近傍に、タッチダウン監視センサ4Dが設けられる。タッチダウン監視センサ4Dは、下降駆動された吸着ノズル5の下端が物体に当接するタッチダウン状態を監視する。タッチダウン監視センサ4Dとして、検出光の通過および反射を利用して支持板55の高さ位置を監視する光電センサを例示することができる。光電センサ(タッチダウン監視センサ4D)は、Z軸モータ48に駆動されて、吸着ノズル5とともに下降する。
【0026】
光電センサ(タッチダウン監視センサ4D)による検出方式について補足説明する。Z軸モータ48に下降駆動されたとき、ノズル本体部51、ノズル先端部53、および光電センサは、始めのうちは共に下降する。ノズル先端部53が物体に当接して下降できなくなると、以降は、ノズル本体部51および光電センサが下降し続ける。この結果、付勢ばね56が圧縮され、支持板55は、昇降規制窓52の下面から離れてゆく。つまり、光電センサから見て、支持板55が相対的に上昇することから、タッチダウン状態の検出が可能となる。なお、タッチダウン監視センサ4Dとして、光電センサ以外の監視手段、例えば、吸着ノズル5の下降動作を撮影する監視カメラを用いてもよい。
【0027】
さらに、ロータリツール47には、吸着ノズル5ごとに内部流路4Eおよびメカバルブ4Fが設けられる。内部流路4Eは、吸着ノズル5に負圧および正圧のエアを選択的に供給する。内部流路4Eは、ノズル保持部4Bに開口して形成され、吸着ノズル5の外周流路513に連通される。外周流路513が上下方向および周方向に拡がっているので、吸着ノズル5が昇降し、また自転しても、内部流路4Eと外周流路513の連通が維持される。
【0028】
メカバルブ4Fは、内部流路4Eの開閉をメカニカルに行う。メカバルブ4Fは、内部流路4Eを遮断しつつ上下方向に延在し、昇降可能に設けられる。メカバルブ4Fは、昇降駆動される係合部4Gを上部に有し、内部流路4Eを連通させる開口部4Hを下方寄りに有する。メカバルブ4Fは、図略の摩擦力保持機構を備えており、重力や振動などの影響が抑制される。これにより、メカバルブ4Fは、通常時に安定して下側に位置する。
【0029】
また、装着ヘッド46のノズル動作位置の近傍に、駆動軸4Jおよびステッピングモータ4Lが設けられる。駆動軸4Jは、メカバルブ4Fの係合部4Gを係止する係止部4Kを有して、昇降可能に保持される。ロータリツール47が回転すると、駆動軸4Jの係止部4Kは、別のメカバルブ4Fの係合部4Gを係止する。
【0030】
ステッピングモータ4Lは、駆動軸4Jを昇降駆動する。図3において、ステッピングモータ4Lは動作しておらず、駆動軸4Jは下側に位置し、メカバルブ4Fは下側に位置する。このとき、メカバルブ4Fの開口部4Hは、内部流路4Eから外れており、内部流路4Eは遮断される。ステッピングモータ4Lが動作して駆動軸4Jを上方に駆動すると、係止部4Kが係合部4Gを上方に駆動して、メカバルブ4Fが上昇する。これにより、メカバルブ4Fの開口部4Hが内部流路4Eに重なり、内部流路4Eは連通される。メカバルブ4Fは、ノズル動作位置にある場合に開閉操作され、ノズル動作位置以外では常に閉じた状態となる。
【0031】
また、図3に示されるように、X軸移動台44の後側には、装着ヘッド46を取り付けるためのクランプ機構4Mが設けられる。クランプ機構4Mは、下部の脚部支承部4N、上部のプッシャ部材4Pおよび押圧部材4Qなどで構成される。脚部支承部4Nは、上方に開口するV溝形状に形成されている。プッシャ部材4Pは、上下動可能に設けられ、下側に係止斜面4P1を有し、上側に従動斜面4P2を有する。押圧部材4Qは、プッシャ部材4Pの後方の上部の位置に、前後動可能に配置される。押圧部材4Qの前側の下部に形成された駆動斜面4Q1は、プッシャ部材4Pの従動斜面4P2に接する。また、X軸移動台44のクランプ機構4Mよりも上方の位置に、後方に向かって延在する図略の電気接続部が設けられている。
【0032】
一方、装着ヘッド46は、前側の下部に脚部4Rを有し、前側の上部に係合ローラ4Sを有する。脚部4Rの断面は、V字状に下向きに突出している。係合ローラ4Sの断面は、円形とされている。また、装着ヘッド46の上面に、コネクタ461(図6図7参照)が設けられている。コネクタ461は、X軸移動台44の電気接続部に接続されて、電源供給を受けるとともに、制御情報の授受などを行う通信路を確保する。
【0033】
装着ヘッド46の取り付け作業において、まず、装着ヘッド46が傾けられ、脚部4Rが脚部支承部4Nに係入される。次に、装着ヘッド46が起立されて、係合ローラ4Sがプッシャ部材4Pの前側まで入り込む。次に、押圧部材4Qが前側に駆動されると、駆動斜面4Q1が従動斜面4P2を下向きに押圧し、プッシャ部材4Pは下降する。これにより、プッシャ部材4Pの係止斜面4P1は、係合ローラ4Sを係止する。最後に、X軸移動台44の電気接続部と、装着ヘッド46のコネクタ461とが接続されて、取り付け作業が完了する。なお、装着ヘッド46の取り外し作業は、概ね取り付け作業の逆順となる。
【0034】
また、図4に示されるように、X軸移動台44は、負圧源4T、正圧源4U、切り替え弁4V、および供給管路4Wを有する。負圧源4Tは、吸着ノズル5に負圧のエアを供給するものであり、例えば、エアを吸引する真空ポンプを用いて構成される。正圧源4Uは、吸着ノズル5に正圧のエアを供給するものであり、例えば、エアを圧縮して送り出すコンプレッサを用いて構成される。切り替え弁4Vは、供給管路4Wに供給するエアの負圧と正圧を切り替える。切り替え弁4Vは、例えば、1個の三方弁や、複数の開閉弁の組み合わせにより構成される。
【0035】
図3に示されるように、供給管路4Wは、X軸移動台44の後面に開口している。一方、内部流路4Eは、ロータリツール47から装着ヘッド46の本体に連通され、装着ヘッド46の前面に開口している。クランプ機構4Mを用いて装着ヘッド46が取り付けられたとき、供給管路4Wと内部流路4Eは、気密を維持して連通される。図4に示されるように、内部流路4Eは、途中で吸着ノズル5の個数に等しい流路数に分岐され、メカバルブ4Fを経由して吸着ノズル5に至る。
【0036】
3.第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置6
第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置6の説明に移る。図5に示されるように、装着ヘッドメンテナンス装置6は、箱形状のフレーム61を用いて形成される。フレーム61の下側に複数のキャスタ62が設けられており、装着ヘッドメンテナンス装置6は、移動が可能である。フレーム61の前面の上部に、扉63が設けられる。扉63は、透明な樹脂で形成され、フレーム61内が目視されるようになっている。装着ヘッド46は、扉63が開けられてフレーム61内に持ち込まれる。扉63の上側に、操作部91および表示部92が設けられる。
【0037】
図6には、装着ヘッドメンテナンス装置6からフレーム61を取り外した状態の概ね上半分が示されている。フレーム61の内部の略中間高さに、基台64が水平に架け渡される。装着ヘッドメンテナンス装置6は、取り付けユニット65、検査ユニット7、および制御部9(図11参照)を含んで構成される。
【0038】
取り付けユニット65は、基台64の後寄りに立設される。取り付けユニット65の前側にクランプ機構66が設けられる、クランプ機構66は、X軸移動台44に設けられたクランプ機構4Mと同一の構成を有する。したがって、装着ヘッド46は、X軸移動台44への取り付け作業と同じ要領で、取り付けユニット65に取り付けられる。図6および図7において、既に装着ヘッド46が取り付けられており、クランプ機構66の上部の電気接続部68および装着ヘッド46の上面のコネクタ461が示されている。
【0039】
検査ユニット7は、エアセンサ(後述)による測定の機能に加えて、装着ヘッド46を洗浄する機能を併せもつ。検査ユニット7は、圧力源71、検査機能部8、汚れ吸引ブロア72、およびX-Y駆動機構73などで構成される。圧力源71は、取り付けユニット65の内部に配置される。図8~10に示されるように、圧力源71は、X軸移動台44の供給管路4Wと同一形状の供給管路75を有する。供給管路75は、取り付けユニット65に取り付けられた装着ヘッド46の内部流路4Eに連通される。なお、図8~10において、ノズル動作位置以外のメカバルブ4Fおよび内部流路4Eは、図示省略されている。
【0040】
圧力源71は、装着ヘッド46の内部流路4Eに負圧および正圧のエアを選択的に供給する。圧力源71は、負圧源4Tと同等の負圧、および正圧源4Uと同等の正圧を切り替えて発生する。さらに、圧力源71は、内部流路4Eのうち少なくとも負圧のエアが流れる負圧流路範囲を洗浄する洗浄用エアの供給源を兼ねる。圧力源71は、例えば、真空ポンプ、コンプレッサ、および弁類の組み合わせによって構成される。第1実施形態において、内部流路4Eの全体が負圧流路範囲に該当する。また、洗浄用エアの圧力は、正圧源4Uの正圧よりも高いパージ圧力とされている。
【0041】
検査機能部8は、取り付けユニット65に取り付けられた装着ヘッド46の下側に位置する箱体の内部に収納される。図9および図10に示されるように、検査機能部8は、外部流路、弁類、およびエアセンサで構成される。外部流路は、樹脂製チューブや金属製パイプを用いて構成される。外部流路は、共通外部流路80、第1外部流路81、第2外部流路82、および測定流路83を含む。弁類は、切り替え弁85、第1開閉弁86、および第2開閉弁87を含む。弁類は、電気的に制御可能な電磁弁とされる。エアセンサは、エア流量センサ8Xおよびエア圧力センサ8Yを含む。
【0042】
共通外部流路80は、上流端に設けられたパッキン801と、切り替え弁85の共通ポート850を連通する。図7に示されるように、パッキン801は、箱体の上部に突出している。パッキン801は、取り付けユニット65に取り付けられた装着ヘッド46から見て、基板Kと同じ高さに設定される。第1外部流路81は、切り替え弁85の第1ポート851と、第1開閉弁86を連通する。第2外部流路82は、切り替え弁85の第2ポート852と、第2開閉弁87を連通する。測定流路83は、第1外部流路81の途中位置から分岐して、第2外部流路82の途中位置に合流する。外部流路を短く構成することにより、エアセンサの位置をノズル保持部4Bに近付けることができる。
【0043】
切り替え弁85は、次に説明する第1状態と第2状態を切り替える。第1状態において、共通ポート850と第1ポート851が連通し、第2ポート852が閉止される(図9参照)。第2状態において、共通ポート850と第2ポート852が連通し、第1ポート851が閉止される(図10参照)。第1開閉弁86は、第1外部流路81の下流端811を開閉操作する。第2開閉弁87は、第2外部流路82の下流端821を開閉操作する。
【0044】
エアセンサは、測定流路83に設けられる。エアセンサは、良好な検出精度を有することが確認されている必要がある。エア流量センサ8Xは、測定流路83内に直列に接続される。エア流量センサ8Xは、第1外部流路81から第2外部流路82に向かう一方向のエアの流量のみを検出する一方向エア流量センサとされている。エア圧力センサ8Yは、第1外部流路81とエア流量センサ8Xの間から分岐された分岐流路8Zに接続され、袋小路を形成する。エア圧力センサ8Yは、負圧および正圧の両方を測定できるタイプが採用される。また、分岐流路8Zの分岐点よりも第1外部流路81に近い箇所に、混入した塵埃を除去するフィルタ831が直列に接続される。
【0045】
装着ヘッド46のメンテナンスに際し、ノズル動作位置の吸着ノズル5に代えて、連通部材67がノズル保持部4Bに取り付けられる。連通部材67は、上下方向の寸法、および付勢ばね56などの構成が吸着ノズル5と同一に形成されている。前述したように、吸着ノズル5の開口部54は、開口面積の相違する複数種類がある。連通部材67の下側の開口部の開口面積は、最も大きな開口部54に合わせて設定される。これにより、内部流路4Eに大きな塵埃が仮に混入していても、確実に排出することが可能となる。
【0046】
ノズル保持部4Bに保持された連通部材67は、内部流路4Eに連通され、かつ、Z軸モータ48からの昇降駆動、およびタッチダウン監視センサ4Dによる監視が可能となっている。また、検査機能部8のパッキン801は、連通部材67の開口部に適合する形状とされている。したがって、連通部材67が下降してパッキン801に圧接されたとき、連通部材67および共通外部流路80は、気密を確保しつつ相互に連通する。
【0047】
図6図8に示されるように、汚れ吸引ブロア72は、検査機能部8の箱体の上側に一体的に設けられる。汚れ吸引ブロア72は、装着ヘッド46の内部流路4Eの洗浄に使用される。汚れ吸引ブロア72は、上方に開口する円筒状に形成され、ファンなどを備えて塵埃の吸引機能を有する。X-Y駆動機構73は、基台64の上面の取り付けユニット65の前側に配置される。X-Y駆動機構73は、検査機能部8および汚れ吸引ブロア72を水平二方向に駆動する。
【0048】
制御部9は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。制御部9の配設位置は特に限定されない。図11の機能ブロック図に示されるように、制御部9には、前述した操作部91および表示部92が付属されている。操作部91は、操作スイッチやテンキーなどで構成され、洗浄や測定の動作指令などが入力される。表示部92は、液晶表示装置などで構成され、装着ヘッド46の個体情報、洗浄や測定の進捗状況および実施結果などを表示する。
【0049】
制御部9は、モータ制御部93および測定制御部94を含む。モータ制御部93は、装着ヘッド46のZ軸モータ48、R軸モータ4A、Q軸モータ4C、およびステッピングモータ4Lを制御する。測定制御部94は、圧力源71、X-Y駆動機構73、切り替え弁85、第1開閉弁86、および第2開閉弁87を制御する。測定制御部94は、さらに、エア流量センサ8Xおよびエア圧力センサ8Yの検出出力を取得する。測定制御部94は、洗浄動作、ならびに正圧および負圧のエアによる測定動作の手順を記述したソフトウェアにしたがい、制御を進める。
【0050】
ここで、エアセンサの測定結果は、良否を判定する検査に適用可能な物理量であることが必要条件となる。詳述すると、エアの流れが時間的に一定でないので、検出される瞬時値は時々刻々と変化し得る。また、過渡的なエアの流れの状態は、流路の位置に依存して変化する。したがって、エアセンサの測定結果として、エアの流れが停止した後の圧力値や、流量の時間平均値などが用いられる。
【0051】
4.装着ヘッドメンテナンス装置6を使用したメンテナンス動作
次に、装着ヘッドメンテナンス装置6を使用して装着ヘッド46のメンテナンスを実施する動作について説明する。メンテナンスでは、まず、装着ヘッド46の内部流路4Eの洗浄が実施され、続いて、エアセンサによる測定および検査が実施される。図12に示された動作フローは、作業者と装着ヘッドメンテナンス装置6の共同作業により進められる。
【0052】
図12のステップS1で、作業者は、装着ヘッドメンテナンス装置6の扉63を開け、装着ヘッド46を取り付けユニット65に取り付ける。電気接続部68とコネクタ461の接続により、装着ヘッド46への電源供給が確保され、かつ、制御部9から装着ヘッド46を制御できるようになる。次のステップS2で、作業者は、装着ヘッド46のノズル動作位置にある吸着ノズル5を取り外して、連通部材67を取り付ける。
【0053】
次のステップS3で、作業者は、扉63を閉じて、操作部91から動作指令を入力する。動作指令は、洗浄動作、正圧エアによる測定動作、および負圧エアによる測定動作を続けて実施させる指令である。これに限定されず、三つの動作に個別の指令が設定され、いずれか一つの動作のみが実施されてもよい。動作指令を認識した制御部9は、測定制御部94を起動する。測定制御部94は、1番目に、洗浄動作を制御する。
【0054】
具体的に、測定制御部94は、X-Y駆動機構73を制御して、汚れ吸引ブロア72を連通部材67の真下に移動させ、図8に示された状況とする。測定制御部94は、次に、モータ制御部93経由でステッピングモータ4Lを制御してメカバルブ4Fを開き、内部流路4Eを連通させる。測定制御部94は、その次に、圧力源71を制御して、パージ圧力の洗浄用エアを供給させる。この制御により、洗浄用エアは、圧力源71から内部流路4Eおよび連通部材67を通り、汚れ吸引ブロア72に向かって排気される。したがって、内部流路4Eに混入していた塵埃は、洗浄用エアの流れに乗って移動し、汚れ吸引ブロア72に排出される。
【0055】
次のステップS4で、測定制御部94は、2番目に、正圧エアによる測定動作を制御する。具体的に、測定制御部94は、X-Y駆動機構73を制御して、検査機能部8を連通部材67の真下に移動させる。さらに、測定制御部94は、モータ制御部93経由でZ軸モータ48を制御して連通部材67を下降させ、パッキン801に圧接させる。これにより、図9および図10に示される測定用の流路系統が形成される。
【0056】
測定制御部94は、次に、切り替え弁85を第1状態、第1開閉弁86を閉状態、第2開閉弁87を開状態に制御し、圧力源71を正圧源4Uの正圧に制御する。すると、正圧エアは、図9に示された太線の矢印の方向に流れ、エア流量センサ8Xによる測定が可能となる。圧力源71の制御から第1所定時間が経過すると、正圧エアの流れが安定化するので、測定制御部94は測定を開始する。測定制御部94は、所定の測定時間幅の間、エア流量センサ8Xの検出出力を取得して平均化し、正圧エアの流量の時間平均値を取得する。
【0057】
測定制御部94は、その次に、第2開閉弁87を閉じる制御を行う。これにより、測定用の流路系統は出入り口が無くなり、エア圧力センサ8Yによる静的な正圧の測定が可能となる。第2開閉弁87が閉じてから第2所定時間が経過すると、正圧エアの流れが停止して静的圧力が安定化する。測定制御部94は、エア圧力センサ8Yの検出出力を取得して、正圧値を求める。
【0058】
次のステップS5で、測定制御部94は、3番目に、負圧エアによる測定動作を制御する。具体的に、測定制御部94は、切り替え弁85を第2状態、第1開閉弁86を開状態、第2開閉弁87を閉状態に制御し、圧力源71を負圧源4Tの負圧に制御する。すると、負圧エアは、図10に示された太線の矢印の方向に流れ、エア流量センサ8Xによる測定が可能となる。圧力源71の制御から第3所定時間が経過すると、負圧エアの流れが安定化するので、測定制御部94は測定を開始する。測定制御部94は、所定の測定時間幅の間、エア流量センサ8Xの検出出力を取得して平均化し、負圧エアの流量の時間平均値を取得する。
【0059】
測定制御部94は、その次に、第1開閉弁86を閉じる制御を行う。これにより、測定用の流路系統は出入り口が無くなり、エア圧力センサ8Yによる静的な負圧の測定が可能となる。第1開閉弁86が閉じてから第4所定時間が経過すると、負圧エアの流れが停止して静的圧力が安定化する。測定制御部94は、エア圧力センサ8Yの検出出力を取得して、負圧値を求める。なお、第1~第4所定時間は、相互に相違しても、または等しくてもよい。
【0060】
次のステップS6で、測定制御部94は、測定結果を処理して検査結果を作成し、表示部92に表示する。なお、測定制御部94は、複数の吸着ノズル5に対応する複数個の測定結果をまとめて処理し、あるいは、複数の検査結果をまとめて表示部92に表示してもよい。この後、作業者は、連通部材67を取り外して、吸着ノズル5を取り付ける。これで、1本の吸着ノズル5に対応する内部流路4Eのメンテナンスが終了する。
【0061】
次のステップS7で、吸着ノズル5の全数に対応するメンテナンスが終了したか否かが判定される。否の場合、測定制御部94は、モータ制御部93経由でR軸モータ4Aを制御して、ロータリツール47を回転させる。これにより、次の吸着ノズル5に対応する内部流路4Eがメンテナンスの対象となる。そして、動作フローの実行は、ステップS2に戻される。
【0062】
ステップS7で、吸着ノズル5の全数に対応するメンテナンスが終了した場合、動作フローの実行は、ステップS8に進められる。ステップS8で、作業者は、扉63を開け、取り付けユニット65から装着ヘッド46を取り外して装置外に取り出す。これで、1個の装着ヘッド46に対するメンテナンスが終了する。
【0063】
第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置6によれば、吸着ノズル5に代えて連通部材67を装着ヘッド46のノズル保持部4Bに取り付け、連通部材67に連通される外部流路(83)にエアセンサ(8X、8Y)を設けることができる。したがって、装着ヘッドメンテナンス装置6は、ノズル保持部4Bの近くにおいて、吸着ノズル5の機能に直結するエアの流量および圧力の少なくとも一方をエアセンサ(8X、8Y)によって高精度に検出することができる。
【0064】
また、エア流量センサ8Xに一方向エア流量センサを用いているので、正圧および負圧でエアの流れる方向を切り替える切り替え弁85が必要となる。それでも、特殊で高価な双方向エア流量センサをエア流量センサ8Xに用いる構成と比較して、装着ヘッドメンテナンス装置6のコストは低廉化される。さらに、エアの流量および圧力の両方を測定するために、連通部材67を取り付けて流路系統を切り替え制御する。したがって、従来技術で2種類の測定治具を取り替えることと比較して、作業者の手間が省力化される。
【0065】
5.第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置6A
次に、第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置6Aについて、第1実施形態と異なる点を主にして説明する。装着ヘッドメンテナンス装置6Aは、第1実施形態と同様の取り付けユニット65および検査ユニット7を備える。また、図13に示されるように、装着ヘッドメンテナンス装置6Aは、第1実施形態に無い撮像検査器具76および総合判定部96を備える。さらに、モータ制御部93Aの機能が第1実施形態と相違する。
【0066】
撮像検査器具76は、エアセンサと相違する検査器具である。撮像検査器具76は、カメラ77および画像処理検査部95からなる。カメラ77は、基台64上に配置される。カメラ77は、取り付けユニット65に取り付けられた装着ヘッド46を側方から撮像して、画像データを取得する。カメラ77は、ノズル動作位置の吸着ノズル5が昇降する状況やロータリツール47が回転するする状況を連続的に撮像する動画カメラとすることができる。また、カメラ77は、吸着ノズル5がタッチダウンしている状態などを撮像する静止画カメラでもよい。
【0067】
画像処理検査部95は、ソフトウェアで実現されており、制御部9Aの中に設けられる。画像処理検査部95は、カメラ77から画像データを受け取って画像処理を実施することにより、装着ヘッド46を検査する。例えば、画像処理検査部95は、連通部材67や吸着ノズル5が傾斜取り付けされた外観異常、および、吸着ノズル5やロータリツール47の中心軸がずれる振れ回り動作などが認められた場合に、不合格と判定する。撮像検査器具76を用いた検査は、図12の動作フローと並行して、ノズル保持部4Bに連通部材67が取り付けられた状態で実施される。あるいは、ステップS6で再び吸着ノズル5が取り付けられて、装着ヘッド46が実使用状態に戻されてから実施される。
【0068】
モータ制御部93Aは、装着ヘッド46のZ軸モータ48、R軸モータ4A、Q軸モータ4C、およびステッピングモータ4Lを制御しつつ、モータ電流を検出する。モータ制御部93Aは、さらに、タッチダウン監視センサ4Dの検出信号を取得する。モータ制御部93Aは、装着ヘッド46の動作特性に関する次の1)~5)の監視項目を監視する。これら5項目の監視は、撮像検査器具76を用いた検査と同時に実施される。
【0069】
1)Z軸、R軸、およびQ軸の移動時間
モータ制御部93Aは、Z軸モータ48のモータ電流の通電継続時間から、吸着ノズル5の昇降に要する時間を求めて良否を判定する。同様に、モータ制御部93Aは、R軸モータ4Aのモータ電流の通電継続時間から、ロータリツール47の回転に要する時間を求めて良否を判定する。さらに、モータ制御部93Aは、Q軸モータ4Cのモータ電流の通電継続時間から、吸着ノズル5の自転に要する時間を求めて良否を判定する。
【0070】
2)Z軸、R軸、およびQ軸の発生トルク
モータ制御部93Aは、Z軸モータ48、R軸モータ4A、およびQ軸モータ4Cのモータ電流の大きさに基づき、それぞれの発生トルクを求めて良否を判定する。仮に、可動部の摩耗やかじり、こじれ等に起因して摺動抵抗や軸受抵抗が増加すると、発生トルクが過大となるため、不合格と判定される。なお、モータ電流の大きさとして、ピーク値、実効値、および平均値などを用いることができる。
【0071】
3)R軸およびQ軸の寄り付き
モータ制御部93Aは、R軸モータ4AおよびQ軸モータ4Cのモータ電流の大きさや波形の変歪に基づいて、軸周りの寄り付きの良否を判定する。仮に、ロータリツール47や吸着ノズル5が中心軸の周りにスムーズに回転しない振れ回り状態に陥っていると、モータ電流の波形が通常時から変化するため、不合格と判定される。
【0072】
4)メカバルブ4Fの動作確認
メカバルブ4Fを開閉操作するステッピングモータ4Lの回転量は、モータ制御部93Aで検出することができる。モータ制御部93Aは、ステッピングモータ4Lの回転量に異常が生じたときに、メカバルブ4Fの動作が不十分であるとして、不合格と判定する。
【0073】
5)タッチダウン監視センサ4Dの動作確認
モータ制御部93Aは、Z軸モータ48が吸着ノズル5を下降駆動してもタッチダウン監視センサ4Dが動作しない場合に、不合格と判定する。また、モータ制御部93Aは、Z軸モータ48の通電開始とタッチダウン監視センサ4Dの動作時期との時間差を検出し、許容時間幅に収まっているか否かを判定してもよい。不合格の場合、タッチダウン監視センサ4Dの故障、または、吸着ノズル5が下降しない不具合が想定される。
【0074】
総合判定部96は、ソフトウェアで実現されており、制御部9Aの中に設けられる。総合判定部96は、エア流量センサ8Xおよびエア圧力センサ8Yを用いた検査の結果を測定制御部94から取得する。さらに、総合判定部96は、カメラ77を用いた検査の結果を画像処理検査部95から取得し、モータ制御部93Aから監視の結果を取得する。
【0075】
そして、総合判定部96は、全項目の検査結果および監視結果が合格である場合に、装着ヘッド46を使用できると判定する。また、総合判定部96は、一項目でも不合格がある場合に、装着ヘッド46を使用できないと判定する。総合判定部96は、装着ヘッド46の使用可否の判定結果、ならびに全項目の検査結果および監視結果を表示部92に表示する。第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置6Aは、複数の検査項目および監視項目を併用するので、極めて高い信頼性で装着ヘッド46の使用可否を判定できる。
【0076】
6.実施形態の応用および変形
なお、装着ヘッド46がロータリツール47を備えず、1本の吸着ノズル5のみを備える場合でも、装着ヘッドメンテナンス装置(6、6A)を使用することができる。また、装着ヘッド46の内部流路4Eが負圧流路範囲と正圧流路範囲に分かれていてもよい。この態様では、洗浄用エアは、内部流路4Eの少なくとも負圧流路範囲を流れる。また、洗浄動作を行わないときに、連通部材67を使用せず、吸着ノズル5の開口部54と検査機能部8のパッキン801との間をチューブで接続してもよい。
【0077】
さらに、多数の連通部材67が有る場合、動作フローの始めに全部の吸着ノズル5を連通部材67に付け替えてもよい。この場合、洗浄動作および測定動作と、ロータリツール47の回転が交互に繰り返される。また、エア流量センサ8Xおよびエア圧力センサ8Yの一方だけを用い、他方を省略することもできる。この態様において、検査機能部8の流路系統が簡略化される。第1および第2実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1:部品装着機 44:X軸移動台 46:装着ヘッド 47:ロータリツール 4B:ノズル保持部 4D:タッチダウン監視センサ 4E:内部流路 4F:メカバルブ 4M:クランプ機構 4T:負圧源 4U:正圧源 5:吸着ノズル 6、6A:装着ヘッドメンテナンス装置 66:クランプ機構 67:連通部材 7:検査ユニット 71:圧力源 72:汚れ吸引ブロア 73:X-Y駆動機構 76:撮像検査器具 77:カメラ 8:検査機能部 80:共通外部流路 81:第1外部流路 82:第2外部流路 83:測定流路 85:切り替え弁 86:第1開閉弁 87:第2開閉弁 8X:エア流量センサ 8Y:エア圧力センサ 9、9A:制御部 93、93A:モータ制御部 94:測定制御部 95:画像処理検査部 96:総合判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13