(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/02 20060101AFI20230301BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
F04B39/02 Y
F04C29/02 361A
(21)【出願番号】P 2021511824
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014605
(87)【国際公開番号】W WO2020202459
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】木全 央幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193619(JP,A)
【文献】特開2009-097486(JP,A)
【文献】特開2018-021493(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167489(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0104062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/02
F04C 29/02
F04C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延び、底部に油が溜まることで形成された油溜まりが配置されたハウジングと、
前記ハウジング内に収容されて前記鉛直方向に延び、軸線回りに回転する回転軸と、
前記回転軸の外周面に設けられ、前記回転軸とともに回転するモータロータ、及び前記モータロータを外周側から囲むように、前記ハウジングの内周面に設けられたモータステータを有するモータと、
前記ハウジング内に収容され、前記モータによって駆動されて、冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記ハウジング内の上部に移動した前記油を前記底部に導く第1の油戻し経路と、
を備え、
前記第1の油戻し経路は、前記ハウジングに内設されて前記鉛直方向に延びる油戻し経路本体と、前記ハウジングに形成され、前記油戻し経路本体の下端と前記ハウジング内の底部とを連通させる油出口部と、を有
し、
前記ハウジングは、前記鉛直方向に延び、両端が開放端とされた筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の上端側に位置する開放端を塞ぐ上蓋部と、前記ハウジング本体の下端側に位置する開放端を塞ぐ下蓋部と、を有し、
前記ハウジング本体は、前記鉛直方向に延び、径方向の厚さが他の部分よりも厚い肉厚部を含み、
前記第1の油戻し経路は、前記肉厚部に形成されている圧縮機。
【請求項2】
前記油戻し経路本体の上端は、前記ハウジング本体の上端面から露出されており、
前記上蓋部は、前記油戻し経路本体の上端の少なくとも一部を露出させるように配置されている請求項
1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジング内に収容され、前記回転軸の上部を回転可能に支持するラジアル軸受部を備え、
前記ラジアル軸受部は、前記回転軸の上部を回転可能に支持する軸受本体と、前記軸受本体を支持するとともに、前記油戻し経路本体の上端を塞ぐように配置された支持部と、を有しており、
前記支持部の前記上蓋部と対向する側には、前記上蓋部から前記下蓋部に向かう方向に窪んだ凹部が形成されており、
前記支持部の前記下蓋部と対向する側には、前記回転軸の一部が挿入され、前記凹部に連通する貫通孔が形成されており、
前記支持部には、前記凹部と前記油戻し経路本体の上端とを連通させる第2の油戻し経路が形成されている請求項
2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記第2の油戻し経路は、前記支持部を径方向に貫通する第1の経路部と、
前記支持部のうち、前記鉛直方向において前記第1の経路部と前記油戻し経路本体の上端との間に位置する部分に形成され、前記第1の経路部と前記油戻し経路本体の上端とを連通させる第2の経路部と、
を有する請求項
3記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第1の経路部の2つの端部のうち、径方向外側に位置する端部を塞ぐ蓋部を備える請求項
4記載の圧縮機。
【請求項6】
前記油出口部は、前記油戻し経路本体の形成位置よりも径方向外側に窪んでいる請求項1から
5のうち、いずれか一項記載の圧縮機。
【請求項7】
鉛直方向に延び、底部に油が溜まることで形成された油溜まりが配置されたハウジングと、
前記ハウジング内に収容されて前記鉛直方向に延び、軸線回りに回転する回転軸と、
前記回転軸の外周面に設けられ、前記回転軸とともに回転するモータロータ、及び前記モータロータを外周側から囲むように、前記ハウジングの内周面に設けられたモータステータを有するモータと、
前記ハウジング内に収容され、前記モータによって駆動されて、冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記ハウジング内の上部に移動した前記油を前記底部に導く第1の油戻し経路と、
を備え、
前記第1の油戻し経路は、前記ハウジングに内設されて前記鉛直方向に延びる油戻し経路本体と、前記ハウジングに形成され、前記油戻し経路本体の下端と前記ハウジング内の底部とを連通させる油出口部と、を有し、
前記油出口部は、前記油戻し経路本体の形成位置よりも径方向外側に窪んでいる圧縮機。
【請求項8】
前記圧縮機構は、前記モータの下方に配置され、前記油溜まりに浸漬された状態で前記冷媒を圧縮するロータリ圧縮部と、
前記モータの上方に配置され、前記ロータリ圧縮部で圧縮された前記冷媒を圧縮するスクロール圧縮部と、
を有しており、
前記回転軸は、前記鉛直方向に延び、前記ロータリ圧縮部を貫通する回転軸本体と、前記回転軸本体の上端に設けられ、前記スクロール圧縮部を構成する旋回スクロールを旋回させる偏心軸部と、を有する請求項1から7のうち、いずれか一項記載の圧縮機。
【請求項9】
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの外側から前記油戻し経路本体の状態を観察するサイ
トグラスを備える請求項1から8のうち、いずれか一項記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型の圧縮機として、例えば、特許文献1に開示された圧縮機がある。
特許文献1に開示された圧縮機は、ハウジングと、ロータリ圧縮部と、スクロール圧縮部と、モータと、排油パイプと、を備える。
【0003】
ハウジングは、鉛直方向に延びている。ロータリ圧縮部は、ハウジング内の底部に配置されている。スクロール圧縮部は、ハウジング内の上部に配置されている。
モータは、モータステータと、モータロータと、を有する。モータステータには、油を下方に戻すためのステータカットが形成されている。
【0004】
排油パイプは、モータステータの上方に配置されている。排油パイプは、ステータカットを介して、ハウジング上部の油を底部に戻す。排油パイプの下端は、ステータカットの上端から離れた位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、排油パイプの下端は、ステータカットの上端から離れた位置に配置されている。このため、特許文献1に開示された圧縮機では、排油パイプの下端からステータカットの上端に油を効率良く導くことが困難であった。これにより、ハウジング内の上部に移動した油をハウジングの底部に効率良く戻すことが困難となる可能性があった。
【0007】
また、特許文献1に開示された圧縮機の場合、モータの下方に油に浸漬されたロータリ圧縮部が配置されているため、ロータリ圧縮部の駆動により、圧縮された冷媒とともに油がハウジング内の上部に導かれる。
このため、排油パイプの下端から流れ出る油が、上方に移動する冷媒と接触し、下方に移動しにくくなってしまう。これにより、ハウジング内の上部に移動した油をハウジングの底部に効率良く戻すことがさらに困難となる可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、ハウジングの上部に移動した油をハウジングの底部に効率良く戻すことの可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る圧縮機によれば、鉛直方向に延び、底部に油が溜まることで形成された油溜まりが配置されたハウジングと、前記ハウジング内に収容されて前記鉛直方向に延び、軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸の外周面に設けられ、前記回転軸とともに回転するモータロータ、及び前記モータロータを外周側から囲むように、前記ハウジングの内周面に設けられたモータステータを有するモータと、前記ハウジング内に収容され、前記モータによって駆動されて、冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記ハウジング内の上部に移動した前記油を前記底部に導く第1の油戻し経路と、を備え、前記第1の油戻し経路は、前記ハウジングに内設されて前記鉛直方向に延びる油戻し経路本体と、前記ハウジングに形成され、前記油戻し経路本体の下端と前記ハウジング内の底部とを連通させる油出口部と、を有し、前記ハウジングは、前記鉛直方向に延び、両端が開放端とされた筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の上端側に位置する開放端を塞ぐ上蓋部と、前記ハウジング本体の下端側に位置する開放端を塞ぐ下蓋部と、を有し、前記ハウジング本体は、前記鉛直方向に延び、径方向の厚さが他の部分よりも厚い肉厚部を含み、前記第1の油戻し経路は、前記肉厚部に形成されている。
【0010】
本発明によれば、ハウジングに内設されて鉛直方向に延びる油戻し経路本体、及びハウジング本体に形成され、油戻し経路本体の下端とハウジング内の底部とを連通させる油出口部を有するとともに、ハウジング内の上部に移動した油をハウジングの底部に導く第1の油戻し経路を備えることで、第1の油戻し経路を流れる油、及び油出口部から流れ出る油と冷媒との接触を抑制することが可能となる。
これにより、ハウジング内の上部から底部に向かう油の移動を冷媒が邪魔することを抑制可能となるため、ハウジング内の上部から回収した油をハウジング内の底部に効率良く戻すことができる。
また、ハウジング本体に、鉛直方向に延び、径方向の厚さが他の部分よりも厚い肉厚部を形成することで、ハウジング本体に油戻し経路本体を内設することができるとともに、油出口部をハウジング本体に形成することができる。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記油戻し経路本体の上端は、前記ハウジング本体の上端面から露出されており、前記上蓋部は、前記油戻し経路本体の上端の少なくとも一部を露出させるように配置されていてもよい。
【0014】
このように、油戻し経路本体の上端の少なくとも一部を露出させるように上蓋部を配置させることで、ハウジング内の上部に移動した油を油戻し経路本体の上端から回収することができる。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記ハウジング内に収容され、前記回転軸の上部を回転可能に支持するラジアル軸受部を備え、前記ラジアル軸受部は、前記回転軸の上部を回転可能に支持する軸受本体と、前記軸受本体を支持するとともに、前記油戻し経路本体の上端を塞ぐように配置された支持部と、を有しており、前記支持部の前記上蓋部と対向する側には、前記上蓋部から前記下蓋部に向かう方向に窪んだ凹部が形成されており、前記支持部の前記下蓋部と対向する側には、前記回転軸の一部が挿入され、前記凹部に連通する貫通孔が形成されており、前記支持部には、前記凹部と前記油戻し経路本体の上端とを連通させる第2の油戻し経路が形成されていてもよい。
【0016】
このように、凹部と油戻し経路本体の上端とを連通させる第2の油戻し経路を支持部に形成することで、第1及び第2の油戻し経路を介して、凹部内に存在する油をハウジングの底部に効率良く戻すことができる。
【0017】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記第2の油戻し経路は、前記支持部を径方向に貫通する第1の経路部と、前記支持部のうち、前記鉛直方向において前記第1の経路部と前記油戻し経路本体の上端との間に位置する部分に形成され、前記第1の経路部と前記油戻し経路本体の上端とを連通させる第2の経路部と、を有してもよい。
【0018】
このような構成とされた第1及び第2の経路部を第2の油戻し経路が有することで、凹部内に存在する油を油戻し経路本体の上端に導くことができる。
また、第1の経路部の形状を、支持部を径方向に貫通する形状とすることで、第1の経路部を容易に形成することができる。
【0019】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記第1の経路部の2つの端部のうち、径方向外側に位置する端部を塞ぐ蓋部を備えてもよい。
【0020】
このように、第1の経路部の2つの端部のうち、径方向外側に位置する端部を塞ぐ蓋部を有することで、径方向外側に位置する端部を介して、ラジアル軸受部の外側に油が流れ出ることを抑制できる。
【0021】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記油出口部は、前記油戻し経路本体の形成位置よりも径方向外側に窪んでいてもよい。
また、本発明の一態様に係る圧縮機によれば、鉛直方向に延び、底部に油が溜まることで形成された油溜まりが配置されたハウジングと、前記ハウジング内に収容されて前記鉛直方向に延び、軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸の外周面に設けられ、前記回転軸とともに回転するモータロータ、及び前記モータロータを外周側から囲むように、前記ハウジングの内周面に設けられたモータステータを有するモータと、前記ハウジング内に収容され、前記モータによって駆動されて、冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記ハウジング内の上部に移動した前記油を前記底部に導く第1の油戻し経路と、を備え、前記第1の油戻し経路は、前記ハウジングに内設されて前記鉛直方向に延びる油戻し経路本体と、前記ハウジングに形成され、前記油戻し経路本体の下端と前記ハウジング内の底部とを連通させる油出口部と、を有し、前記油出口部は、前記油戻し経路本体の形成位置よりも径方向外側に窪んでいる。
【0022】
このように、油戻し経路本体の形成位置よりも径方向外側に窪むように油出口部を形成することで、油出口部の体積を増加させることが可能となる。これにより、油出口部からハウジング内の底部に油を容易に導くことができる。
【0023】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において前記圧縮機構は、前記モータの下方に配置され、前記油溜まりに浸漬された状態で前記冷媒を圧縮するロータリ圧縮部と、前記モータの上方に配置され、前記ロータリ圧縮部で圧縮された前記冷媒を圧縮するスクロール圧縮部と、を有しており、前記回転軸は、前記鉛直方向に延び、前記ロータリ圧縮部を貫通する回転軸本体と、前記回転軸本体の上端に設けられ、前記スクロール圧縮部を構成する旋回スクロールを旋回させる偏心軸部と、を有してもよい。
【0024】
このように、モータの下方に配置されたロータリ圧縮部と、モータの上方に配置され、ロータリ圧縮部が圧縮した冷媒をさらに圧縮するスクロール圧縮部と、を有する場合、ロータリ圧縮部が圧縮した冷媒をスクロール圧縮部に供給するために、ハウジングの底部から上部に向かう方向に冷媒の流れが形成される。
【0025】
一方、油戻し経路本体は、ハウジング本体に内設され、油出口部は、ハウジング内の底部に配置された油溜まりに浸漬されている。このため、第1の油戻し経路を流れる油が上記冷媒の流れと接触することを抑制可能となる。
これにより、上記冷媒の流れの影響により、第1の油戻し経路を流れる油がハウジング内の底部に向かう方向に移動しにくくなることを抑制可能となるので、ハウジング内の底部に油を効率良く戻すことができる。
【0026】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの外側から前記油戻し経路本体の状態を観察するサイトグラスを備えてもよい。
【0027】
このような構成とされたサイトグラスを有することで、油戻し経路本体を油が下方に向かって流れているか否かを作業者が確認することができる。
また、サイトグラスが配置された位置よりも上方に位置する油戻し経路本体に不具合が生じたか否かについて作業者が判定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ハウジング内の上部に移動した油をハウジング内の底部に効率良く戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る圧縮機を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す圧縮機のうち、領域Aで囲んだ部分を拡大した断面図である。
【
図3】
図1に示す圧縮機のうち、領域Bで囲んだ部分を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0031】
(実施形態)
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る圧縮機10について説明する。
図1において、O
1は回転軸本体55の軸線(以下、「軸線O
1」という)、O
2は偏心軸部56の軸線(以下、「軸線O
2」という)をそれぞれ示している。
また、
図1において、X方向は圧縮機10の径方向、Z方向はX方向に対して直交する鉛直方向をそれぞれ示している。
図1では、ロータリ圧縮部の一例として、2気筒式ロータリ圧縮部78を例に挙げる。
【0032】
圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸13と、下軸受部15と、上軸受部16と、給油ポンプ17と、ラジアル軸受部21と、蓋部22と、モータ23と、圧縮機構25と、吐出弁26と、ブッシュアセンブリ27と、スラストプレート29と、オルダムリング30と、カバー31と、吐出管35と、サイトグラス36と、を有する。
【0033】
ハウジング11は、半密閉構造とされている。ハウジング11内の底部11Aには、油38が溜まることで形成された油溜まり39が配置されている。
ハウジング11は、ハウジング本体41と、下蓋部42と、上蓋部43と、を有する。
【0034】
ハウジング本体41は、筒状とされており、Z方向に延びている。ハウジング本体41は、両端(上端及び下端)が開放端とされている。
ハウジング本体41は、Z方向に延び、かつX方向(径方向)の厚さが他の部分よりも肉厚とされた肉厚部41Aを有する。ハウジング本体41は、例えば、鋳造法により製造することが可能である。
このように、鋳造法を用いて、ハウジング本体41を製造することで、肉厚部41Aを容易に形成することができる。
【0035】
ハウジング本体41の肉厚部41Aには、第1の油戻し経路45と、装着穴46と、が形成されている。
第1の油戻し経路45は、ハウジング11内の上部に移動した油をハウジング11内の底部11Aに導くための経路である。
【0036】
第1の油戻し経路45は、油戻し経路本体51と、油出口部52と、を有する。
油戻し経路本体51は、肉厚部41Aに内設されており、Z方向に延びている。油戻し経路本体51は、上蓋部43側に配置された上端51Aと、下蓋部42側に配置された下端51Bと、を有する。
【0037】
上端51Aは、肉厚部41Aの上端面41Aa(ハウジング本体41の上端面41aの一部)から露出されている。下端51Bは、肉厚部41A内に配置されている。
上記構成とされた油戻し経路本体51は、ハウジング11内の上部に移動した油をハウジング11内の底部11Aに導くための経路である。
【0038】
油出口部52は、油戻し経路本体51の下端51Bの直下に位置する肉厚部41Aに形成されている。
油出口部52は、肉厚部41Aの内周面から露出されている。油出口部52は、肉厚部41Aの内周面から径方向外側に延びている。油出口部52は、油戻し経路本体51の下端51Bとハウジング11内の底部11Aとを連通させている。
油戻し経路本体51を経由した油は、油出口部52を介して、ハウジング11内の底部11Aに戻される。
【0039】
油出口部52は、圧縮機構25を構成するとともに、油溜まり39の液面39aよりも下方に配置された2気筒式ロータリ圧縮部78の上端面よりも下方に配置されている。これにより、油出口部52は、油溜まり39を構成する油38に覆われている。
【0040】
油出口部52は、油戻し経路本体51の形成位置よりも径方向外側に窪んで形成してもよい。
【0041】
このように、油戻し経路本体51の形成位置よりも径方向外側に窪むように油出口部52を形成することで、油出口部52の体積を増加させることが可能となる。これにより、油出口部52からハウジング11内の底部11Aに油を容易に導くことができる。
【0042】
下蓋部42は、ハウジング本体41の下端側に位置する開放端を塞ぐように、ハウジング本体41に設けられている。
【0043】
上蓋部43は、ハウジング本体41の上端側に位置する開放端を塞ぐように、ハウジング本体41に設けられている。
【0044】
回転軸13は、Z方向に延びた状態で、ハウジング11内に収容されている。回転軸13は、回転軸本体55と、偏心軸部56と、を有する。
回転軸本体55は、円柱形状とされており、軸線O1回りに回転する。回転軸本体55は、上端部55Aと、下端部55Bと、を有する。下端部55Bは、2気筒式ロータリ圧縮部78をZ方向に貫通している。
上記構成とされた回転軸本体55は、下軸受部15、上軸受部16、及びラジアル軸受部21により回転可能な状態で支持されている。
【0045】
偏心軸部56は、回転軸本体55の上端に設けられている。偏心軸部56は、軸線O1に対してオフセット(偏心)された軸線O2を中心軸としている。偏心軸部56は、回転軸本体55の外径よりも小さい円柱状の軸である。
このような構成とされた偏心軸部56は、軸線O1回りに回転軸本体55が回転すると、軸線O1回りに公転することで、スクロール圧縮部79を構成する旋回スクロール86を旋回させる。
【0046】
下軸受部15は、2気筒式ロータリ圧縮部78の下側に配置されている。上軸受部16は、2気筒式ロータリ圧縮部78の上側に配置されている。
つまり、下軸受部15及び上軸受部16は、上下から2気筒式ロータリ圧縮部78を挟むように配置されている。
【0047】
給油ポンプ17は、下軸受部15に内設されている。給油ポンプ17は、ハウジング11内の底部11Aに溜まった油38の一部を回転軸13に形成された貫通孔(図示せず)を介して、スクロール圧縮部79に供給する。
【0048】
モータ23は、ハウジング11内に収容されており、モータロータ58と、モータステータ59と、を有する。
モータロータ58は、Z方向における回転軸本体55の中間領域に位置する外周面に固定されている。モータステータ59は、ハウジング本体41の内周面に固定されている。
上記構成とされたモータ23は、回転軸13を介して、2気筒式ロータリ圧縮部78及びスクロール圧縮部79を駆動させる。
【0049】
ラジアル軸受部21は、支持部61と、軸受本体62と、を有する。
支持部61は、軸受本体62を支持する部材であり、ハウジング11内に収容されている。支持部61は、ハウジング本体41の上端面41aのうち、内側部分と接触した状態で、ハウジング本体41に固定されている。
支持部61には、凹部64と、貫通孔65と、第2の油戻し経路66と、が形成されている。
【0050】
凹部64は、上蓋部43と対向する支持部61の上部側の中央部に形成されている。凹部64は、上蓋部43から下蓋部42に向かう方向に窪んでいる。凹部64は、円柱状の空間である。
【0051】
貫通孔65は、下蓋部42と対向する支持部61の下部側の中央部に形成されている。貫通孔65の上端側は、凹部64に連通している。貫通孔65は、円柱形状とされた孔である。貫通孔65の開口径は、凹部64の開口径よりも小さい。貫通孔65には、回転軸本体55の上端部55Aが配置されている。
【0052】
第2の油戻し経路66は、支持部61に内設されている。第2の油戻し経路66は、第1の経路部71と、第2の経路部72と、を有する。
【0053】
第1の経路部71は、油戻し経路本体51の上端51Aの上方に第1の経路部71の径方向外側の一部が配置されるように、凹部64の径方向外側に位置する支持部61を径方向に貫通することで形成されている。
このように、第1の経路部71の形状を、支持部61を径方向に貫通する形状とすることで、第1の経路部71を容易に形成することができる。
【0054】
第1の経路部71は、径方向内側に配置され、凹部64に連通する端部71Aと、径方向外側に配置された端部71Bと、を有する。
端部71Bの内周面には、めねじ部71Cが形成されている。端部71Bは、蓋部22により塞がれている。
上記構成とされた第1の経路部71は、凹部64内に存在する油を支持部61の径方向外側へと導く。
【0055】
第2の経路部72は、支持部61のうち、Z方向において第1の経路部71と油戻し経路本体51の上端51Aとの間に位置する部分に、Z方向に延びて形成されている。
第2の経路部72は、第1の経路部71と油戻し経路本体51の上端51Aとを連通させている。
【0056】
このような構成とされた第1及び第2の経路部71,72を有する第2の油戻し経路66を備えることで、凹部64内に存在する油を油戻し経路本体51の上端51Aに導くことができる。
【0057】
上述した油戻し経路本体51、及び油出口部52を有する第1の油戻し経路45を備えることで、第1の油戻し経路45を流れる油、及び油出口部52から流れ出る油が冷媒と接触することがなくなるため、冷媒から悪影響を受けることがなくなる。これにより、ハウジング11内の上部から回収した油をハウジング11内の底部11Aに効率良く戻すことができる。
【0058】
なお、
図1に示す構造の場合、上述した第2の油戻し経路66を形成する必要があるが、例えば、ラジアル軸受部21の直下の領域と油戻し経路本体51とを連通させる油導入口(図示せず)を形成して、ラジアル軸受部21の下方に位置する油を回収する場合、第2の油戻し経路66を形成する必要はない。
つまり、第2の油戻し経路66は、第1の油戻し経路45を適用する圧縮機の構造に応じて、適宜形成すればよい。
【0059】
軸受本体62は、貫通孔65を区画する支持部61の面に設けられている。軸受本体62は、回転軸本体55の上端部55Aの外周面と対向している。軸受本体62は、回転可能な状態で回転軸本体55のラジアル方向を支持する。
【0060】
蓋部22は、イモネジ75であり、端部71Bに形成されためねじ部71Cに締結されている。蓋部22は、端部71Bを塞ぐための部材である。
このように、第1の経路部71の2つの端部71A,71Bのうち、径方向外側に位置する端部71Bを塞ぐ蓋部22を有することで、端部71Bを介して、ラジアル軸受部21の外側に油が流れ出ることを抑制できる。
【0061】
なお、
図2では、蓋部22の一例として、イモネジ75を例に挙げて説明したが、端部71Bにめねじ部71Cを形成することなく、イモネジ75に替えて、別の部材(蓋部)を用いて、端部71Bを塞いでもよい。
【0062】
圧縮機構25は、2気筒式ロータリ圧縮部78と、スクロール圧縮部79と、を有する。
2気筒式ロータリ圧縮部78は、ハウジング11内の底部11Aに配置されている。2気筒式ロータリ圧縮部78は、油溜まり39に浸漬されている。
【0063】
2気筒式ロータリ圧縮部78は、第1のロータリ圧縮部81と、第2のロータリ圧縮部82と、を有する。
【0064】
第1のロータリ圧縮部81、及び第2のロータリ圧縮部82には、冷媒を気液分離するアキュムレータ(図示せず)から気相冷媒(以下、単に「冷媒」という)が供給される。第1のロータリ圧縮部81、及び第2のロータリ圧縮部82は、アキュムレータから供給された冷媒を圧縮する。
【0065】
第2のロータリ圧縮部82は、第1のロータリ圧縮部81上に積層配置されている。第1のロータリ圧縮部81、第2のロータリ圧縮部82によりそれぞれ圧縮された冷媒は、2気筒式ロータリ圧縮部78の上方に配置されたスクロール圧縮部79に供給される。
【0066】
スクロール圧縮部79は、ハウジング11内の上部に設けられており、カバー31とラジアル軸受部21との間に配置されている。
スクロール圧縮部79は、固定スクロール85と、旋回スクロール86と、を有する。
【0067】
固定スクロール85は、カバー31と旋回スクロール86との間に配置されている。固定スクロール85は、端板85Aと、固定ラップ85Bと、を有する。
【0068】
端板85Aは、円盤形状とされている。端板85Aは、ラジアル軸受部21上に固定されている。
端板85Aは、上面と、下面と、吐出ポート85Cと、を有する。吐出ポート85Cは、端板85Aの中央を貫通するようにZ方向に延びて形成されている。
吐出ポート85Cは、スクロール圧縮部79により圧縮された冷媒をスクロール圧縮部79の外部に吐出させるための貫通孔である。
固定ラップ85Bは、端板85Aの下面から下方に突出している。固定ラップ85Bは、軸線O1方向から見て渦巻き状に形成された壁体である。
【0069】
旋回スクロール86は、固定スクロール85とラジアル軸受部21との間に配置されている。旋回スクロール86は、端板86Aと、旋回ラップ86Bと、ボス部86Cと、を有する。
【0070】
端板86Aは、円盤形状とされている。端板86Aは、スラストプレート29を介して、支持部61上に配置されている。端板86Aは、Z方向において端板85Aと対向配置されている。端板86Aは、上面と、端板85Aの上面と対向する下面と、を有する。
【0071】
旋回ラップ86Bは、端板86Aの上面に設けられており、上方に突出している。旋回ラップ86B、軸線O1方向から見て渦巻き状に形成された壁体である。
上記構成とされた旋回ラップ86Bは、固定ラップ85Bと噛み合うように配置されている。これにより、旋回ラップ86Bと固定ラップ85Bとの間には、冷媒を圧縮する圧縮室が形成されている。そして、旋回ラップ86Bが固定スクロール85に対して旋回することで、圧縮室の容積が変化し、圧縮室内の冷媒が圧縮される。
【0072】
ボス部86Cは、端板86Aの下面に設けられており、下方に突出している。ボス部86Cは、円筒形状とされた部材であり、下部側が凹部64内に配置されている。
【0073】
上述したように、モータ23の下方に配置された2気筒式ロータリ圧縮部78と、モータ23の上方に配置され、2気筒式ロータリ圧縮部78が圧縮した冷媒をさらに圧縮するスクロール圧縮部79と、を有する場合、2気筒式ロータリ圧縮部78が圧縮した冷媒をスクロール圧縮部79に供給するために、ハウジング11内の底部11Aから上部に向かう方向に冷媒の流れが形成される。
【0074】
先に説明したように、油戻し経路本体51は、肉厚部41Aに内設され、油出口部52は、ハウジング11内の底部11Aに配置された油溜まり39に浸漬されている。そして、油戻し経路本体51に連通する第2の油戻し経路66は、ラジアル軸受部21を構成する支持部61に内設されている。
【0075】
したがって、第1及び第2の油戻し経路45,66を流れる油が上記冷媒の流れと接触することが抑制され、第1及び第2の油戻し経路45,66を流れる油がハウジング11内の底部11Aに向かう方向に移動しにくくなることを抑制可能となる。これにより、ハウジング11内の上部に移動した油をハウジング11内の底部11Aに効率良く戻すことができる。
【0076】
吐出弁26は、端板86Aの上面に設けられている。吐出弁26は、吐出ポート85Cを開閉可能な位置に配置されている。
【0077】
ブッシュアセンブリ27は、旋回スクロール86と回転軸13との間に設けられている。ブッシュアセンブリ27は、旋回スクロール86と回転軸13とを連結している。ブッシュアセンブリ27は、偏心軸部56とボス部86Cとの間に設けられたブッシュ27Aを有する。
【0078】
スラストプレート29は、端板86Aとラジアル軸受部21との間に設けられている。スラストプレート29は、旋回スクロール86に発生するスラスト荷重を保持するための部材である。
【0079】
オルダムリング30は、端板86Aと端板85Aとの間に設けられている。オルダムリング30は、端板86A、端板85Aに形成された溝(図示せず)に嵌合される突起を有する。オルダムリング30は、旋回スクロール86の自転(軸線O2回りの回転)を抑制するとともに、回転軸本体55の回転運動を旋回運動に変換するための部材である。
【0080】
カバー31は、ハウジング11内に収容されており、端板85Aの上面に設けられている。カバー31は、カバー31の内面と端板85Aの上面との間に吐出空間31Aを形成している。
吐出弁26により吐出ポート85Cが開かれると、スクロール圧縮部79により圧縮された冷媒が吐出空間31Aに吐出される。
【0081】
吐出管35は、吐出空間31Aに連通した状態で、ハウジング11に設けられている。吐出管35は、圧縮機10により圧縮された冷媒を圧縮機10の外部に吐出する。
【0082】
サイトグラス36は、装着穴46に装着された状態で肉厚部41Aに固定されている。サイトグラス36は、ハウジング11の外側から油戻し経路本体51の状態を観察するためのものである。
【0083】
このような構成とされたサイトグラス36を有することで、油戻し経路本体51を油が下方に向かって流れているか否かを作業者が確認することができる。
また、サイトグラス36が配置された位置よりも上方に位置する油戻し経路本体51に不具合が生じたか否かについて作業者が判定することができる。
【0084】
本実施形態の圧縮機10によれば、上述した第1及び第2の油戻し経路45,66を有することで、第2の油戻し経路66及び第1の油戻し経路45を経由して、第1の油戻し経路45の油出口部52からハウジング11内の底部11Aへと流れ出る油が冷媒と接触することがなくなるため、冷媒が油の回収に悪影響を及ぼすことが抑制される。これにより、ハウジング11内の上部から回収した油をハウジング11内の底部11Aに効率良く戻すことができる。
【0085】
ここで、
図4を参照して、第1の油戻し経路の他の例(第1の油戻し経路91)について説明する。
図4において、
図3に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0086】
第1の油戻し経路91は、第1の油戻し経路45を構成する油出口部52に替えて、油出口部92を有すること以外は、第1の油戻し経路45と同様に構成されている。
油出口部92は、油戻し経路本体51の下端51Bから油溜まり39に向かうように、斜め下方に傾斜して形成された流路である。油出口部92の径は、例えば、油戻し経路本体51の径以上の大きさとすることが可能である。
このような構成とされた油出口部92は、先に説明した油出口部52と同様な効果を得ることができる。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0088】
なお、本実施形態では、ロータリ圧縮部の一例として、2気筒式ロータリ圧縮部78を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、単気筒式ロータリ圧縮部を用いてもよい。
また、第1の油戻し経路45,91、及び第2の油戻し経路66は、2気筒式ロータリ圧縮部78及びスクロール圧縮部79のうち、どちらか一方の圧縮部を有する圧縮機にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、圧縮機に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 圧縮機
11 ハウジング
11A 底部
13 回転軸
15 下軸受部
16 上軸受部
17 給油ポンプ
21 ラジアル軸受部
22 蓋部
23 モータ
25 圧縮機構
26 吐出弁
27 ブッシュアセンブリ
27A ブッシュ
29 スラストプレート
30 オルダムリング
31 カバー
31A 吐出空間
35 吐出管
36 サイトグラス
38 油
39 油溜まり
41 ハウジング本体
41a,41Aa 上端面
41A 肉厚部
42 下蓋部
43 上蓋部
45,91 第1の油戻し経路
46 装着穴
51 油戻し経路本体
51A 上端
51B 下端
52,92 油出口部
55 回転軸本体
55A 上端部
55B 下端部
56 偏心軸部
58 モータロータ
59 モータステータ
61 支持部
62 軸受本体
64 凹部
65 貫通孔
66 第2の油戻し経路
71 第1の経路部
71A,71B 端部
71C めねじ部
72 第2の経路部
75 イモネジ
78 2段式ロータリ圧縮部
79 スクロール圧縮部
81 第1のロータリ圧縮部
82 第2のロータリ圧縮部
85 固定スクロール
85A,86A 端板
85B 固定ラップ
85C 吐出ポート
86 旋回スクロール
86B 旋回ラップ
86C ボス部
A,B 領域
O1,O2 軸線