(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】集積型パッシブコンポーネントを搭載したパワーモジュール用パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230301BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
H01G2/08 A
(21)【出願番号】P 2021548667
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019060746
(87)【国際公開番号】W WO2020171861
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルチチュード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ ロニー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】テンプルトン アレン
(72)【発明者】
【氏名】レスナー フィリップ エム.
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-217170(JP,A)
【文献】特開平07-045787(JP,A)
【文献】特開2013-229583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337002(US,A1)
【文献】特開2006-196886(JP,A)
【文献】特開平07-045786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/33
H01G 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する内部電極の間に10より大きく300以下の誘電率を有する常誘電体を備えて、交互に極性を変えた平行な内部電極を含む、少なくとも1つのPDCを含み、
前記PDCは少なくとも1つの半導体と結合するコンデンサを形成
し、
前記PDCと前記半導体との間にある放熱層をさらに含む、半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項2】
前記PDCは構造基板に内蔵される、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項3】
交互に配置された内部電極に電気的に接触する少なくとも1つの容量性カップリング終端をさらに含む、請求項2に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項4】
前記容量性カップリング終端は、Cu、Ni、W、Ag、Pd、PtおよびAuからなるグループから選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項3に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項5】
前記容量性カップリング終端は、外部終端およびビアから選択される、請求項3に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項6】
少なくとも1つのPDCインターフェースパッドをさらに含む、請求項2に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項7】
前記半導体デバイスは、前記PDCインターフェースパッドと電気的に接触する、請求項6に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項8】
前記PDCインターフェースパッドは、はんだボール、はんだピラー、またはワイヤボンディングによって前記半導体デバイスに接続される、請求項7に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項9】
前記構造基板に内包された内部電極をさらに含む、請求項2に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項10】
前記内部電極は、Cu、Ni、Al、W、Ag、Pd、PtおよびAuからなるグループから選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項11】
前記内部電極はNiを含む、請求項7に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項12】
前記誘電率は25以上175以下である、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項13】
前記常誘電体はC0G誘電体である、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項14】
前記常誘電体は、ジルコン酸カルシウムを含む、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項15】
隣接する内部電極の間に10より大きく300以下の誘電率を有する常誘電体を備えて、交互に極性を変えた平行な内部電極を含む、少なくとも1つのPDCを含み、
前記PDCは少なくとも1つの半導体と結合するコンデンサを形成し、
前記PDCと前記半導体との間にある放熱層をさらに含み、
前記常誘電体は、ジルコン酸カルシウムを含み、
前記常誘電体は、少なくとも50重量%のジルコン酸カルシウムを含む、半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項16】
前記PDCの定格電圧は1Vから20,000Vである、請求項15に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項17】
前記PDCは、500Vから10,000Vの定格電圧を有し、定格電圧500Vで単位体積あたりの静電容量は少なくとも1.0μF/ccであり、定格電圧10,000Vで単位体積あたりの静電容量は少なくとも0.003μF/ccである、請求項16に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項18】
65℃から300℃の定格動作温度範囲を有する、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項19】
150℃から300℃の範囲のピーク動作温度を有する、請求項18に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項20】
前記PDCは少なくとも1つの放熱チャネルを含む、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項21】
隣接する内部電極の間に10より大きく300以下の誘電率を有する常誘電体を備えて、交互に極性を変えた平行な内部電極を含む、少なくとも1つのPDCを含み、
前記PDCは少なくとも1つの半導体と結合するコンデンサを形成し、
前記PDCと前記半導体との間にある放熱層をさらに含み、
前記PDCは少なくとも1つの放熱チャネルを含み、
少なくとも1つの前記放熱チャネルが、前記内部電極に平行であるものと前記内部電極に垂直であるものとから選択される、半導体をパッケージングするモジュールであって、
前記PDCと電気的に接触する少なくとも1つのコンポーネントをさらに含む、半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項22】
前記コンポーネントは、トランジスタ、コンデンサ、ダイオード、レジスタ、バリスタ、インダクタ、ヒューズ、集積回路、過電圧放電デバイス、センサ、スイッチ、静電気放電サプレッサ、インバータ、整流器、およびフィルタからなるグループから選択される、請求項21に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項23】
前記PDCはビアを含む、請求項1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項24】
前記内部電極の少なくとも1つの内部電極は、前記ビアを介して外部終端と電気的に接触する、請求項23に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項25】
前記放熱層を通る少なくとも1つのビアをさらに含む、請求項
1に記載の半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項26】
隣接する内部電極の間に10より大きく300以下の誘電率を有する常誘電体を備えて、交互に極性を変えた平行な内部電極を含む、少なくとも1つのPDCを含み、
前記PDCは少なくとも1つの半導体と結合するコンデンサを形成する、半導体をパッケージングするモジュールであって、
放熱層と、前記放熱層を通る少なくとも1つのビアとをさらに含み、
前記放熱層は、前記PDCと前記半導体との間にあり、
前記ビアは絶縁ビアである、半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項27】
隣接する内部電極の間に10より大きく300以下の誘電率を有する常誘電体を備えて、交互に極性を変えた平行な内部電極を含む、少なくとも1つのPDCを含み、
前記PDCは少なくとも1つの半導体と結合するコンデンサを形成する、半導体をパッケージングするモジュールであって、
放熱層をさらに含み、
前記放熱層は、前記PDCと前記半導体との間にあり、
前記放熱層は、常誘電体よりも低い誘電率を有する、半導体をパッケージングするモジュール。
【請求項28】
請求項1に記載のモジュールを含む、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積型パッシブコンポーネントを含むパワーモジュール用パッケージに関する。より具体的には、本発明はモジュールに一体の静電容量を含むことにより、実装されるコンポーネントとしての個々のコンデンサの組み込みを最小限に抑えるパワーモジュール用パッケージに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本発明は2019年2月21日に出願された係属中の米国仮出願第62/808,493号に基づいて優先権を主張し、該米国仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
電子機器のサイズ縮小に対する絶えることのないニーズがある。業界で「小型化」と呼ばれるこの努力は、主として2つの視点で顕著である。主たる視点の1つはコンポーネントレベルにあり、各コンポーネントは、より小さい容積でより高いレベルの機能を実現することを目的として、構造または機能の非効率領域に対し継続的な精査がなされている。他の主たる視点は、電子部品のアセンブリがまとめられて機能モジュールまたは機能デバイスを形成する、モジュールまたは電子デバイスレベルにある。本発明は、具体的にはモジュールの小型化、特にパワーモジュールの小型化に関する。
【0004】
パワーモジュールの小型化に関する取り組みにより、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリム)をベースにしたものなど、より高いスイッチング周波数とより高い電圧で動作するワイドバンドギャップ半導体が使用されることになった。より高いスイッチング周波数では、より少ない静電容量が求められ、その結果コンデンサが占めるスペースが減少する。たとえば、Hz単位の所定の周波数でDCリンクコンデンサに必要な静電容量値は、式1を使って計算される。
【0005】
【数1】
式中:
C=静電容量(F)
P
load=パワー(W)
U
ripple=リップル電圧(V)
U
max=最大電圧(V)
f=スイッチング周波数(Hz)である。
【0006】
式1を使用して、
図1および2に示されるように、所定の電源負荷に必要な静電容量を推定することが可能である。
図1および2から分かるように、電圧を上げることで必要な静電容量を減らせるが、電源負荷が増えるとより高い静電容量が必要になる。スイッチング周波数を上げることでスナバコンデンサに必要な静電容量も減少する。サイズ縮小には低い静電容量値が望ましいが、高い周波数では電磁障害(EMI)が問題になる。
【0007】
図1および
図2に示されるように、低周波数では、高電力および低電圧の非常に大きなDCリンクコンデンサが必要になる。20kHzのスイッチング周波数では、たとえばSiベースの半導体に特有の、必要とされる大きな静電容量が、フィルムコンデンサと電解コンデンサによって維持される。しかしながら、より高い周波数と電圧であってもスイッチングする、SiCとGaNに基づいたワイドバンドギャップ半導体デバイスが採用されている。理由は、ワイドバンドギャップ半導体デバイスが高い変換効率とより小さなサイズを支援するためである。
【0008】
低温同時焼成セラミックス(LTCC)が半導体を他のパッシブコンポーネントと共にパッケージ化するために使用されている。ただし、使用されるガラスセラミック材料は10未満の低い誘電率を有し、それらは主に高周波や低電圧エネルギー変換および制御電子機器に使用される。この低い誘電率の結果、現場で実現できるのは低い静電容量のみであり、低電圧ディスクリートコンデンサによる高い静電容量値を表面実装または埋め込みによってこれらのパッケージ内に組み込む必要がある。
【0009】
本明細書で提供されるのは、高電圧および高スイッチング周波数での使用に適したパワーモジュールである。さらに、本明細書で提供されるのは、パワーモジュールのさらなる小型化を可能にする高電圧および高スイッチング周波数で使用するためのパワーモジュールである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、集積型パッシブコンポーネント、特にコンデンサを備えた改良されたパワーモジュールに関する。
【0011】
より具体的には、本発明は、高誘電率の常誘電体を備えた多層セラミックコンデンサ構造に基づく、内蔵された静電容量を有する改良された電源装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
明細書から理解されるように、これら及びその他の実施形態は、半導体をパッケージングするモジュールに提供され、該モジュールは、隣接する内部電極の間に10より大きく300以下の誘電率を有する常誘電体を備えて、交互に極性を変えた平行な内部電極を含む、少なくとも1つの常誘電体コンデンサ(PDC)を含み、該PDCは少なくとも1つの半導体と結合するコンデンサを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】10%のリップル電圧で400Vのさまざまな電力レベルにおいて周波数の関数として静電容量をグラフで示す。
【
図2】10%のリップル電圧で1200Vのさまざまな電力レベルにおいて周波数の関数として静電容量をグラフで示す。
【
図10】本発明の代表的なコンポーネントの概略図である。
【
図11】本発明の使用に適した内部電極パターンの概略図である。
【
図12】本発明の使用に適した内部電極パターンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、改善されたパワーモジュール、より具体的には、内蔵された、または一体の静電容量を含むパワーモジュールに関する。より具体的には、本発明は、内蔵される多層セラミックコンデンサ構造を使用して個別に実装されるコンポーネントとしてではなく、モジュールまたはマイクロプロセッサ内に内蔵された、またはモジュールまたはマイクロプロセッサと一体の静電容量を効果的に組み込む、高出力電子機器の改善されたパッケージングに関する。
【0015】
改善されたパワーモジュールパッケージは、好ましくは内蔵されたコンデンサを含んで提供され、該内蔵されたコンデンサは、本明細書では常誘電体コンデンサ(PDC)と呼ばれる常誘電体を含む。PDCを使用すると、パワーモジュールをさらに小型化し、より高い電圧かつより高い周波数で動作することができる。基板にPDCを埋め込むことで基板の容積自体を機能させ、それによって回路領域を犠牲にすることなく、かつコンポーネントの実装を必要とせずに、内蔵静電容量を提供できる。さらに、パワーモジュールの回路を形成する導電路が大幅に縮小され、それによってESRとESLを改善し、したがってモジュールの電気的機能が改善する。このような小型化を容易にするためには、より高い電圧と周波数で動作でき、250℃近くになる高い接合部温度であっても、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体に近いパッケージ化ができるコンデンサが必要になる。
【0016】
本発明は、開示に不可欠な構成要素を形成する図を参照して説明されるが、これらの開示に限定されない。さまざまな図を通して同様の要素にはそれに応じた番号が付される。
【0017】
本発明の実施形態は、
図3を参照して説明される。
図3では、モジュールの一部が分離図で示されている。常誘電体コンデンサ(PDC)を10で示す。PDCは、平行な平面内部電極14を含み、隣接する電極は反対の極性を有する。隣接する電極間には常誘電体12がある。内部電極は容量性カップリングを形成する。容量性カップリング終端16は、交互に配置された内部電極14と電気的に接触しており、それにより、PDCインターフェースパッド18またはそれの相当物に対し容量性カップリングによる電気的接続を提供し、それが、本明細書でさらに十分に説明するように、モジュールの少なくとも1つのコンポーネント24に対する電気的接続を可能にする。インターフェースパッドへの接続方法は、本明細書では特に限定されないが、はんだボール、はんだピラー、またはワイヤボンディングによる取り付けが好ましい。
【0018】
本発明の実施形態を、
図4を参照して説明する。
図4では、モジュール20が部分概略図で示されている。モジュールは、構造基板22に内蔵された少なくとも1つのPDC10を含み、オプションとして好ましくは、少なくとも、常誘電体12に内包されたPDCの内部電極を備えている。構造基板に対し、構造基板上に、または構造基板内に取り付けられた多数のコンポーネント24は、相互に及び/又はPDCと電気的に接続されて、モジュールの所望の電気的機能を提供する。電源28はモジュールに電力を供給し、コントローラ26は電力を供給されるデバイス30に対し供給電力を制御する。モジュールを形成するコンポーネントの接続方法は業界で知られており、本明細書では限定されないので、PDCと多数のコンポーネントとの間の回路トレースは、
図4には示されていない。
【0019】
PDC10、構造基板22、およびコンポーネント24を統合してマイクロプロセッサを形成でき、該マイクロプロセッサは任意にモジュール20内に収納できる。マイクロプロセッサに内蔵されるPDCは、200ボルト未満のより低い電圧での使用に特に適している。
【0020】
PDCについて、常誘電体を含む多層セラミックコンデンサの概略を示す
図5乃至
図8を参照して説明する。
図5は一対の内部電極100を示しており、説明のために符号A、Bが付されている。実際には、好ましくは、内部電極は同一である。各電極は静電容量領域102と多数のタブ104を有する。内部電極は、隣接する内部電極間に常誘電体誘電体を挟んで重ねられ、内部電極AおよびBが交互に配置されており、静電容量領域の位置が合わされ、交互に配置されるタブ、例えば、内部電極Aのタブが位置合わせされて、内部電極のスタックを形成する。該スタックが、
図6の上面概略図に示され、ここで、隣接するタブは交互の極性を有している。アセンブリ全体が、セラミック、好ましくは常誘電体に内包されることが好ましい。
図7に示される実施形態では、外部終端106が位置合わせされた共通の極性のタブと電気的に接触して形成される。使用時に、外部終端は容量性カップリング終端として機能し、引き続きPDCインターフェースパッドと電気的に接触する。外部終端は、好ましくは、銅、ニッケル、タングステン、銀、パラジウム、白金、金、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0021】
図8に示される実施形態では、ビア108が、位置合わせされた共通の極性のタブのスタックを貫通して形成される。ビアは、容量性カップリング終端として機能し、その後引き続いて好ましくは前記PDCの好ましい表面上で外部終端を介して、PDCインターフェースパッドと電気的に接触する。ビアは、モジュールから不要な熱を取り除くための低熱抵抗経路を提供する。ニッケル内部電極を備えた好ましいジルコン酸カルシウムベースの誘電体の場合、銅めっきされたビアが好ましい。タブおよびビアの露出した銅の表面は、ニッケル、銀、スズ、金、パラジウム、またはこれらの組み合わせでオーバーめっきされる。ビアは、建築に使用される誘電体テープのギャップを使用するか、グリーンボディまたは焼成ボディで機械加工することによって形成できる。これらが、内部電極に接触していない状態で、純粋に機械的な取り付けに使用できることも、当業者によって理解されるであろう。さらに、オプションのオーバーめっきにより銅をスクリーン印刷することで部品表面にトレースを形成でき、モジュール内に他のコンポーネントをパッケージングするために、及び半導体に接触するために、パッドと電気接点を提供する。
【0022】
本発明の実施形態が
図9を参照して説明され、
図9では、説明を分かりやすくするために三相電源モジュールが概略図で示されている。
図9では、第1のコンポーネントは、AC電源200によって表される。電磁干渉フィルタまたは無線周波数干渉フィルタEMI/RFI202として表されている第2のコンポーネントは、AC電源と一体に表面実装が可能であり、あるいは、該EMI/RFIフィルタは、PDCインターフェースパッド18
1-18
3に終端する容量性カップリング終端16
1-16
3で示されているように、構造基板22に埋め込むことができる。代表的なEMI/RFIフィルタの概略が回路
図Aとして
図10に示されている。一実施形態では、EMI/RFIフィルタの少なくともコンデンサは、本明細書に記載されるように内蔵されたPDCである。AC高調波フィルタ204として表される第3のコンポーネントは、好ましくは内部電極201
1-201
3を介してEMI/RFIフィルタでフィルタリングされた電力を受け取る。代表的なAC高調波フィルタの概略が回路
図Bとして
図10に示されている。一実施形態では、AC高調波フィルタのコンデンサおよびインダクタは、本明細書に記載されるように内蔵されたPDCである。AC/DCコンバータ206として表される第4のコンポーネントは、AC信号をDC信号に変換するために実装されるデバイスである。AC/DCコンバータは、PDCインターフェースパッド18
4-18
6に終端する容量性カップリング終端16
4-16
6によってAC高調波フィルタに電気的に接続され、それにより導電路の長さを最小限に抑えられる。AC/DCコンバータと、DC/ACインバータとして表される第5コンポーネント214との間には、スナバ回路208および212とDCリンクコンデンサ210として表されるコンポーネントが内蔵される。代表的なスナバ回路の概略が回路
図Cとして
図10に示され、代表的なDCリンクコンデンサの概略が回路
図Dとして
図10に示されている。スナバ回路のコンデンサは、容量性カップリング終端16
7-16
10によってPDCインターフェース18
7-18
10と電気通信する内蔵されたPDCであることが好ましい。DCリンクコンデンサは、好ましくは内蔵されたPDCであり、内部電極201
3-201
6によって各スナバ回路と電気的に接続されていることが好ましい。内部電極を使用することでファラデーシールドを改善し、それによりモジュールから発生するEMIノイズを最小限に抑える。
【0023】
いくつかの回路設計では、性能を最適化するために、最小の等価直列インダクタンス(ESL)および/または最小の等価直列抵抗(ESR)を備えることが有利である。構造内に含まれる反対の極性を有する複数のコンデンサはESLを最小限に抑える。
図11から理解されるように、
図5および
図6に関連して上記で説明した層Aおよび層Bを交互に積み重ねることで、共通の構造内部に2つの容量性カップリングを提供し、隣接する外部終端は反対極性となり、それによってESLを最小化する。
【0024】
回路のリンギングを防ぐために、コンデンサのESRを増加させることが望ましい場合がある。PDCのESRを増加させることは、PDCの内部電極の経路長を増加させることによって実現できる。
図12から理解されるように、より大きなオーバーラップ領域は、誘電体を間に挟んだA-1およびB-1の交互の層によって形成されたPDCのような長方形の内部電極を利用することによって実現される。
図12の左から右に向かって示すように、経路長に沿って幅が減少すると、ESRが増加する。コンデンサの数と電極の形状を組み合わせることにより、ESLおよび/またはESRを最適化できる。
これらの技術を使用して、モジュールを含むPDCの性能を最適化することができる。
WBG半導体アプリケーションにおいて、より高いスイッチング電流エッジレートdI/dtおよびより高いスイッチング周波数は、誘導性負荷を駆動するより大きな電圧リンギングを生成するため、低いインダクタンスが有利である。スイッチパッケージの近傍に配置されたスナバコンデンサは、このリンギングを低減するのに役立つ。基板上のスナバ回路を集積化することで、スナバ回路からスイッチングデバイスまでのトータルループインダクタンスをさらに低減し、スナバ回路の利点を最大にする。
【0025】
内蔵されたPDCは、他のコンポーネントと組み合わされて、多くの用途に適したモジュールまたは電子パッケージを提供することができる。
図13はフライングコンデンサ回路の概略図である。
図14は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)回路の概略図である。
図15はMOSFETのHブリッジ回路の概略図である。
図16は集積転流コンデンサの概略図である。
【0026】
図13に示される例では、2つのスイッチセルを備えたマルチレベルフライングコンデンサインバータの転流ループインダクタンスが制限要因である。スイッチの近傍に集積転流コンデンサを加えると転流性能が向上する。ソフトスイッチングでは、
図14に示すように、負荷電流が方向を変えるときスナバ回路を使用して充電電流と放電電流を供給し、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)を可能にする。
【0027】
図15および16に示される4つのスイッチ回路において、スイッチの近傍に静電容量を加えることで、スイッチングデバイスからさらに離れて位置するDCリンクコンデンサやフライングコンデンサなどのバルク平滑コンデンサの性能が向上する。
【0028】
本発明の実施形態を、
図20を参照して説明する。
図20では、モジュール218は、少なくとも1つの半導体19と接触する、少なくとも1つの放熱層20を搭載する。放熱層は、モジュールからの熱の横方向の放散を容易にする。少なくとも1つのPDC10は半導体と電気的に接触し、好ましくは、該半導体とPDCとの間の放熱層と接触する。PDCは、絶縁されたビア222により、放熱層を介して、半導体に電気的に接続され、絶縁されたビアは導電性コア226を有し、絶縁体224が放熱層を貫通して延在するビア内の該導電性コアを放熱層から電気的に分離する。
【0029】
ビアに結合されたPDC、具体的にはビアを介するPDCの使用により、ディスクリート半導体のパッケージングアプローチに対し代替手段を提供する。結果として得られるマルチコンデンサPDCは、はんだボール実装など周知の従来技術を使用してマイクロプロセッサにパッケージ化され、統合されたマイクロプロセッサとコンデンサのコンポーネントを形成する。他のタイプのコンポーネントもPDCの一部としてパッケージ化が可能と考えられ、これらはESDサプレッサ、インダクタ、およびその他のコンポーネントを含む。
【0030】
様々なメタライゼーションが施された、Al2O3、BeO、AlN、Si3N4などの酸化物から形成される代表的な高電力用基板が、放熱層として利用される。たとえば、AlNとBeOは高い熱伝導率が評価される。具体的には、AlNは140-200W/m-Kの熱伝導率を有する。しかしBeOは有毒であり、AlNにはCuのメタライゼーションの信頼性に問題がある。これらの理由から、35-60W/m-Kの熱伝導率を持ち、ろう付けされたAlを備えたSi3N4が、本発明の実施に適している。Z方向のPDC熱伝導を改善するには、より高い熱伝導率の材料が好ましい。PDCは、アクティブな内部電極の最後の層の上に、PDC誘電体よりも高い熱伝導率材料を含むカバー層を組み込むことができる。これは絶縁性接着層を使用して実現でき、または、より実用的には、高熱伝導率誘電体を含むカバー層が製造プロセス中にPDCと同時焼成されることが当業者によって理解されるだろう。CaZrO3ベースの誘電体の場合、酸素との親和性が高いため、AlN、Si3N4などの空気に敏感な材料との組み合わせを実現できる。卑金属電極や非酸化物セラミックの焼結に必要な還元性雰囲気での焼成中に酸素が失われることはない。他の酸化物セラミックは酸素を失い、その結果として生じる酸素空孔がその後電界下で移動することで信頼性を損なうことも起こり得る。ジルコン酸カルシウムのこの作用は、非酸化物基板材料との組み合わせを実現可能にする。熱膨張係数(CTE)を考慮すると、CaZrO3をこれらの非酸化物基板材料と効果的に組み合わせる能力も重要である。信頼性を向上させるためにはCTEの不一致を最小限に抑えることが重要であるからである。ジルコン酸カルシウムのCTEは8.4PPM/℃であり、これは8-10PPM/℃の範囲の市販のAl2O3およびBeOベースの基板に近い。しかしながら、AlNやSi3N4などの非酸化物基板材料は、3.3-5.6PPM/℃の範囲ではCTEが低いため、これらの材料をCaZrO3と効果的に組み合わせることでこのような不一致に対処できる。
【0031】
放熱層にとって特に好ましい材料は、PDCの誘電率よりも低い誘電率を有する誘電体である。PDCのセラミックよりも低い誘電率を有する誘電体を含む放熱層は、高周波特性に関して特定の利点を有する。
【0032】
別の実施形態では、PDC内部の自己発熱に関連する問題を、熱伝達媒体により熱を伝達させてPDCのコア温度を低下させることのできる、PDC本体を通る少なくとも1つの、好ましくは連続する放熱チャネルを導入することによって、緩和することができる。PDCの内部電極は、電極の平面を介して高電力アプリケーションの終端まで熱を効果的に放散するが、より効果的に熱を除去する必要がある。MLCCの内部から熱を取り除く熱伝達を増やすには、熱伝達媒体が静止していてもよいし、制限された流れであってもよいし、あるいは放熱チャネルに流れ込んで放熱チャネルの中を流れてもよい。
【0033】
図21および
図22を参照して本発明の実施形態を説明する。ここで、全般的に110で示される本発明のPDCは、
図21の概略側面断面図および
図22の概略端面断面図に示されている。
図21および22では、PDCは、誘電体116を間に備えた、インターリーブされた平行な内部電極112および114を含み、隣接する内部電極は、反対極性の外部終端118および120に終端する。内部電極に平行な放熱チャネル122は、好ましくは、コンデンサ本体の少なくとも1つの表面を破り、より好ましくは、コンデンサ本体中を通る連続する経路を備えたチャネルを提供する。放熱チャネルの終端すなわち開口部は、好ましくは、コンデンサ本体表面上の外部終端がない位置に存在し、それにより、チャネルの開口部124へのアクセスが可能になり、熱伝達媒体が放熱チャネルの1つの開口部から入り、放熱チャネルの好ましくは別の開口部から出て行くことを可能にする。放熱チャネルの高さにわたるオプションとしての支柱126を設けることで、構造保全性を促進し、あるいは乱流を発生させて層流を抑えることによってコンデンサ本体と熱伝達媒体との間の熱伝達率を高めても良い。支柱は、開口部から開口部へのように、コンデンサの幅全体に延在しないことが好ましい。
図21および22の実施形態では、放熱チャネルは、放熱チャネルと内部電極112および114との間に接触点がない状態で、セラミックによって4面が固定されている。セラミックは優れた熱伝導体ではないため、セラミックにより4面が固定される放熱チャネルは熱伝達効率が劣る。しかしながら、セラミックは導電性ではなく、それによってより広い範囲の熱伝達媒体を使用することが可能になり、本実施形態はそれによっていくつかのアプリケーションにおいて有利である。
【0034】
別の実施形態では、放熱チャネルは、3面がセラミックによって固定され、1面の少なくとも一部分が内部電極によって固定されている。さらに別の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,419,096号に図示および記載されているように、放熱チャネルは2面がセラミックで固定され、2面の少なくとも一部分が内部電極で固定されている。放熱チャネルが少なくとも1つの内部電極によって固定されることが特に有利であるのは、通常はセラミックよりも熱伝達において優れた内部電極によって、より優れた熱伝達が提供されることである。熱伝達媒体が内部電極と接触している場合は、熱伝達媒体が非導電性かつ非腐食性であることが好ましい。
【0035】
図23を参照して本発明の実施形態を説明する。本発明のPDCは、全般的に110で表され、概略側面断面図で示されている。
図23では、PDCは、バリア127をその間に備えた複数の放熱チャネル122を含み、該放熱チャネルは、各共通の放熱チャネル面が内部電極に平行である複数の共通の放熱チャネル面に並べられている。
【0036】
PDCの概略断面図を示す
図24を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図24において、外部終端118および120、およびセラミック116は、上記に説明したとおりである。シールド電極128および129が示され、シールド電極は、PDCの最も外側の内部電極として配置された、反対極性の同一平面上の電極として定義される。シールド電極は、外部終端から反対極性の内部電極へのアーク放電を防止する。例として、電極128および129′は、外部終端と、130および131として示される反対極性の最も近い内部電極との間のアーク放電を防止する。放熱チャネル122は、反対極性の同一平面上の内部電極132および134と同一平面上にある。
図24に示される実施形態では、前述のように、放熱チャネルは全面がセラミックによって固定されている。
【0037】
PDCの概略断面図を示す
図25を参照して本発明の実施形態を説明する。
図25のPDCは、反対極性である同一平面上のアクティブ内部電極136および138を含み、該同一平面上のアクティブ内部電極と平行な平面に浮遊電極140を備え、好ましくは、各浮遊電極は、各面に隣接する同一平面上のアクティブ内部電極を有する。アクティブ電極は、本明細書では、外部終端と電気的に接触している内部電極として定義される。浮遊電極は外部終端と電気的に接触していない内部電極である。少なくとも1つの放熱チャネル122は、反対極性の同一平面上のアクティブ電極と同一平面上にある。
【0038】
PDCの概略断面図を示す
図26を参照して本発明の実施形態を説明する。
図26のPDCは、反対極性である同一平面上のアクティブ内部電極136および138を含み、該同一平面上のアクティブ内部電極と平行な平面に浮遊電極140を備え、好ましくは、各浮遊電極は、各面に隣接する同一平面上のアクティブ内部電極を有する。少なくとも1つの放熱チャネル122が、同一平面上のアクティブ内部電極と同一平面上にあり、オプションとして内部電極と流れ接触している。
【0039】
PDCの概略断面図を示す
図27を参照して本発明の実施形態を説明する。
図27において、放熱チャネル122は、その内部にオプションとしてのコーティング130を施されており、コーティングは好ましくは熱伝導性のコーティングであり、それによってセラミックと熱伝達媒体128との間の熱伝導を促進する。好ましくは誘電体をコーティングできて誘電体から熱伝達媒体への適切な熱伝達を提供することができる材料であれば、本明細書でコーティングの材料は特に限定されない。
図28を参照して本発明の実施形態を説明する。
図28において、PDC110は、電極112および114に平行ではなく、好ましくは、該電極に垂直である放熱チャネル122を有する。電極を通り抜ける放熱チャネルを利用することにより、熱伝達媒体と内部電極との間の接触を高めることができる。一実施形態では、熱伝達媒体は導電性ではない。別の実施形態では、熱伝導性ではあるが電気的に絶縁性のコーティングを放熱チャネルの内部に塗布することもできる。
【0040】
図29を参照して本発明の実施形態を説明する。
図29では、モジュール218は、少なくとも1つの半導体19に取り付けられたPDC110を有し、PDCは、その内部を貫通する少なくとも1つの放熱チャネルを含み、該放熱チャネルは、電極に対し平行であるか、垂直であるか、またはそれらの間の中間角度にある。冷却装置228は、放熱チャネルを通して集められた熱を放散する。冷却装置は、媒体、好ましくは空気との相互作用によって熱を放散する、ヒートシンクなどのパッシブデバイスとなり得る。あるいは、冷却装置は、断熱膨張、流動媒体、またはペルチェ方式などによる電気的、機械的、または化学的方法によって熱を放散する、アクティブデバイスであってもよい。
【0041】
金属、熱伝導性セラミック、ポリマー、およびそれらの組み合わせを含む熱伝導性無機または有機材料は、本発明の実施に特に適している。シリコーンサーマルグリースは、その高い熱伝導率、低い熱抵抗、コスト、加工性、およびリワーク性のために特に好ましい。限定されない例として、ダウコーニング(登録商標)TC-5026、ダウコーニング(登録商標)TC-5022、ダウコーニング(登録商標)TC-5600、ダウコーニング(登録商標)TC-5121、ダウコーニング(登録商標)SE4490CV、ダウコーニング(登録商標)SC102、ダウコーニング(登録商標)340ヒートシンク、信越MicroSI(登録商標)X23-7853W1、信越MicroSI(登録商標)X23-7783D、信越MicroSI(登録商標)G751および信越MicroSI(登録商標)X23-7762Dは、放熱チャネルのコーティングとしての使用に特に適している。
【0042】
熱伝達媒体は、静止しているかあるいは熱伝導を促進するために流動する、気体または液体である。導電体ではない材料が特に好ましい。パーフルオロハイドロカーボン、ナノ流体、ミネラルオイル、およびエーテルは、電気伝導率が最小かつ優れた熱伝達能力があるため特に適している。限定されない例として、ガルデン(登録商標)HT55、ガルデン(登録商標)HT70、ガルデン(登録商標)HT80、ガルデン(登録商標)HT110、ガルデン(登録商標)HT135、ガルデン(登録商標)HT170、ガルデン(登録商標)HT200、ガルデン(登録商標)HT230およびガルデン(登録商標)HT270は、本発明を実施する際に熱伝達媒体としての使用に特に適している。空気、少なくとも部分的に乾燥した空気、または不活性ガス等の気体は、熱伝達媒体として特に適している。
【0043】
放熱チャネルは、PDCの製造中に様々な技術によって形成できる。セラミック前駆体の層は、有機犠牲材料または炭素により放熱チャネルに対応する予め定めたパターンで印刷できる。有機犠牲材料または炭素は、PDCのベークアウトおよび共焼結中に、好ましくは蒸発によって除去される。PDCをラミネートする前にセラミックテープの領域を除去できるし、又は放熱チャネルをベークアウトおよび焼結の前後に機械加工することもできる。
【0044】
PDCは、当該技術分野で知られているように、セラミック前駆体および導体前駆体を適切に重ね合わせて、シーケンシャルに層状にすることで作成される。十分な数の層が構築された後、そのアセンブリは加熱されて、内部導体と、セラミック層内に放熱チャネル前駆体を有する焼結セラミックの交互の層を形成する。
【0045】
放熱チャネルを有することが意図された各層において、プレチャネル材料が、放熱チャネルに対応するパターンで印刷される。焼結すると、プレチャネル材料が蒸発し、印刷されたプレチャネル材料の形状にボイドを残す。不揮発性材料、好ましくはセラミックをプレチャネル材料に添加して、ボイド内に支持用の支柱を形成してもよい。
【0046】
プレチャネル材料は、予め定めたパターンに塗布されて層の焼結時に放熱チャネルをボイドとして残すことできる、任意の材料である。特に好ましい材料は、金属を除去した電極インクである。そのような材料は、入手が容易であること、および製造環境に対し固有の適合性があることが好ましい。その他の特に適切な材料は、セラミック前駆体と共に使用されるようなバインダーであり、セラミック前駆体は除外される。
【0047】
構造基板の広い領域は、通常、電気的機能を持たない。内蔵された静電容量を形成するためにこれらの領域を再配置することで、モジュールの総体積を増やすことなく、容量性カップリングのためのオーバーラップ領域を増やすことができる。これらの利点は、誘電体の高い誘電率と相まって、他の方法では電気的に機能しないパワーモジュールの領域に高い静電容量値を提供する。さらに、構造内部に高電圧静電容量を組み込むことにより、反対極性のコンポーネント間の表面アーク放電が本質的に排除され、これは表面実装のディスクリートコンポーネントと比較して大きな利点である。
【0048】
PDCの構築に使用されるセラミック材料は、信頼できる機能および200Vを超えるような高電圧にとって極めて重要である。これは、多層セラミック構造が高電圧と強く連携する可能性があり、結果的にセラミックアクチュエータの基本である機械的動作を引き起こすからである。この電歪結合は、強誘電性および反強誘電性タイプの材料で強くなり、これにより高電圧コンデンサに故障を誘発することがある。このため、好ましいセラミック材料は、電歪結合係数が低い常誘電体である。特に好ましいのは、比誘電率が10より大きく300以下、より好ましくは25以上175以下の常誘電体である。特に好ましい常誘電体は、ジルコン酸カルシウム、Ba2Ti9O20;BaTi4O9などの不定比バリウムチタン酸化物、ネオジムまたはプラセオジムを含むバリウム希土類酸化物、さまざまな添加剤をドープしたチタニア、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛マグネシウム、チタン酸スズジルコニウム、ニオブ酸ビスマス亜鉛、タンタル酸ビスマス亜鉛およびそれらの組み合わせを含む。特に、EIAクラス1タイプの誘電体が好ましく、特に少なくとも50重量%のジルコン酸カルシウムを含む誘電体が好ましい。さらに、C0Gの指定を満たすこのタイプの温度安定誘電体が最も好ましい。C0Gは、静電容量の温度係数が±30℃の誘電体を指定する。ジルコン酸カルシウムを利用するPDCは、少なくとも260℃の動作温度で、1Vから10,000Vまでの、より好ましくは20,000Vまでの定格電圧を実現できる。比誘電率32の誘電体としてジルコン酸カルシウムを使用することで、500Vから10,000Vの定格電圧のPDCを得ることができ、定格電圧500Vで1.0μF/ccの単位体積あたりの静電容量と定格電圧10,000Vで少なくとも0.003μF/ccの単位体積あたりの静電容量を有し、それは定格動作温度範囲65℃から300℃および最大定格温度150℃から300℃に適している。
【0049】
本発明に適した構造基板は、高電圧、高スイッチング周波数のアプリケーションを想定した電圧および温度範囲に耐えることができれば、本明細書では特に限定されない。PDCの機能が構造基板によって妨げられることがなく、構造基板が導電性であってもPDCが該構造基板から電気的に絶縁されていることは、当業者によって理解されるだろう。非導電性基板の使用が好ましい。特に好ましい構造基板は、96%Al2O3または99.6%Al2O3などのアルミナなどのセラミック;窒化アルミニウム;窒化ケイ素または酸化ベリリウム;G10;FR1-6、エポキシとガラスの複合材料であるFR4、フェノール紙またはフェノール綿および紙を使用したFR2、などのFR(難燃性)材料;CEM1、2、3、4、5などの複合エポキシ材料(CEM);BergquistMfg.から入手可能なアルミニウム基板などの絶縁金属基板およびポリイミドなどの材料を含むフレックス回路を含む。ラミネート、繊維強化樹脂、セラミック充填樹脂、特殊材料、およびフレキシブル基板が特に適する。難燃性(FR)ラミネートは、インターポーザー材料として特に適しており、特にFR-1、FR-2、FR-3、FR-4、FR-5、またはFR-6が適する。FR-2は、フェノールペーパー、フェノールコットンペーパー、またはフェノールホルムアルデヒド樹脂を含浸させたペーパーである。エポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維織布であるFR-4が特に好ましい。複合エポキシ材料(CEM)が適切であり、特にCEM-1、CEM-2、CEM-3、CEM-4、またはCEM-5は、それぞれコットンペーパー、ガラス不織布、またはエポキシガラス織布などの補強材を含む。G-5、G-7、G-9、G-10、G-11などのガラス基板(G)が広く使用されており、それぞれがエポキシガラス織布であるG-10とG-11が最も好ましい。セラミック充填可能の、またはRF-35のようにガラス繊維で強化可能の、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に適切な基板である。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)も、特にその高温耐性のために適切なポリマーである。アルミナまたはイットリア安定化ジルコニアなどの電子グレードのセラミック材料が入手可能であり、96%Al2O3および99.6%Al2O3は市販のものを容易に入手できる。ビスマレイミド-トリアジン(BT)エポキシは、特に適した基板材料である。フレキシブル基板は、通常、カプトンまたはユーピレックスとして市販されているポリイミドフォイルまたはピララックスとして市販されているポリイミド-フルオロポリマー複合材料などのポリイミドである。これらの基板には、Alloy42、Invar、Kovarなどの鉄合金、またはCu、リン青銅、BeCuなどの非鉄材料で作られたリードを組み込んでもよい。
【0050】
コンポーネントは、トランジスタ、コンデンサ、ダイオード、レジスタ、バリスタ、インダクタ、ヒューズ、集積回路、過電圧放電デバイス、センサ、スイッチ、静電気放電サプレッサ、インバータ、整流器、およびフィルタから選択される。特に好ましいトランジスタは、GaNおよびSiCベースのワイドバンドギャップデバイスである。コンポーネントは、AC/DCコンバータ、DC/ACインバータ、EMI/RFIフィルタ、スナバ回路、高調波フィルタ、特にAC高調波フィルタなどの機能デバイスと一体であることが好ましい。
【0051】
内部電極は、好ましくは、ニッケル、銅などの卑金属、または銀、パラジウム、タングステン、白金または金などの貴金属/半貴金属、またはそれらとニッケルまたはニッケル合金との組み合わせを含むのが好ましい。好ましいニッケル合金は、Mn、Cl、Co、およびAlから選択される少なくとも1つの部材を含み、そのようなニッケル合金は、少なくとも95重量%のニッケルを含むのがより好ましい。ニッケルおよびニッケル合金は、最大約0.1重量%までのリンおよびその他の微量成分を含んでもよい。
【実施例】
【0052】
図12のセット1に概略的に表される常誘電体およびニッケル電極を含むPDCを作成した。電極は誘電体であるジルコン酸カルシウムによって分離され、PDCは3.1cm×5cm×0.3cmのサイズを有した。誘電体の厚さは、定格650VDCのBME C0G MLCCに対して実証された信頼性に基づいて選択された。代表的なMLCC製造プロセスを使用して、110層のアクティブレイヤーを含んだPDCを構築した。
図19は、CSAM(超音波探傷)スキャンの画像であり、亀裂、層間剥離、または構造に関連した欠陥の痕跡は見られない。PDCの最終的な静電容量は2.7μFであり、0.58μF/ccの静電容量(μF)/体積(CC)を生み出した。
【0053】
図17および18に提示されたデータは、500Vから10,000Vに対して、K値が約32の誘電体で1.0から0.003の静電容量(μF)/体積(cc)を実現できることを示している。K値300および10の誘電体に同じルールを適用することで、それぞれ9.8から0.020および0.33から0.001の静電容量(μF)/体積(cc)の値を生むものと予測される。
【0054】
本発明は、それに限定されない好ましい実施形態を参照して説明されてきた。当業者は、具体的には述べられていないが、本明細書に添付された特許請求の範囲内にある、追加の実施形態および改善を実現するであろう。