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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20230301BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20230301BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20230301BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20230301BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20230301BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20230301BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20230301BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20230301BHJP
   B62M 23/02 20100101ALI20230301BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60K6/28 ZHV
B60K6/26
B60K6/485
B60W10/00 900
B60W20/00
B60W20/10
B62M23/02 110
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021563982
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045725
(87)【国際公開番号】W WO2021117738
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/048900
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】日野 陽至
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-74296(JP,A)
【文献】特開2017-46572(JP,A)
【文献】特表2016-516389(JP,A)
【文献】特開2003-87988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60W 10/26
B60K 6/28
B60K 6/26
B60K 6/485
B60W 10/00
B60W 20/00
B60W 20/10
B62M 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
車輪と、
クランク軸を有し、燃焼動作によって生じた前記車輪を駆動するためのトルクを前記クランク軸から出力するエンジンと、
前記クランク軸の一端部に設けられ、永久磁石を有し、前記クランク軸を回転させることにより前記エンジンを始動又はアシストするとともに、前記エンジンに駆動されることにより発電する永久磁石式モータジェネレータと、
12V以上の最大定格電圧を有し電力を蓄えるバッテリである第1蓄電部と、
前記永久磁石式モータジェネレータに対して前記第1蓄電部と常時直列接続され、前記第1蓄電部の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有する第2蓄電部と、
前記第1蓄電部に常時直列接続された前記第2蓄電部と前記永久磁石式モータジェネレータとに電気的に接続され、前記永久磁石式モータジェネレータから出力される電流を制御する複数のスイッチング部を備えたインバータと、
前記エンジンの始動又はアシスト時に、直列接続された前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部から前記インバータを介して前記永久磁石式モータジェネレータへ電流を出力させるとともに、前記クランク軸の一端部に減速機を介さずに設けられた前記永久磁石式モータジェネレータが発電することにより前記インバータが少なくとも前記第1蓄電部を充電する間、前記第2蓄電部を電気的に切断することなく、前記第2蓄電部に掛かる電圧が前記第2蓄電部に設定された上限電圧を超えないように電圧降下を生じつつ前記第1蓄電部へ充電電流が流れる状態を維持する電流維持回路と、
を備える。
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両であって、前記第2蓄電部の上限電圧は、前記第1蓄電部の最大定格電圧よりも低い。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鞍乗型車両であって、
前記インバータが少なくとも前記第1蓄電部を充電する間、前記第2蓄電部に掛かる前記電圧である第2電圧が、前記第1蓄電部に掛かる第1電圧よりも低い。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、バッテリである前記第1蓄電部と並列接続されたキャパシタを備える。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
永久磁石式モータジェネレータは、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有するロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式モータジェネレータの周方向に間隔を空けて形成された複数のティースを有するステータコア及び前記スロットを通るように設けられた巻線を有するステータと、を備え、
前記磁極部の数は前記複数のティースの数より多い。
【請求項6】
請求項1から4いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
永久磁石式モータジェネレータは、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有し、クランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されたロータと、
複数のスロットが前記モータジェネレータの周方向に間隔を空けて形成されたステータコア及び前記スロットを通るように設けられたステータ巻線を有するステータと、
周方向に間隔を空けて前記ロータに設けられる複数の被検出部と、
複数の前記被検出部と対向する位置に設けられ、前記ステータ巻線とは別に設けられた検出用巻線を有するロータ位置検出装置と、
を備える。

【請求項7】
請求項1から6いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記エンジンは、オイルで内部が潤滑されるように構成されたクランクケースを更に備え、
前記永久磁石式モータジェネレータは、前記オイルと接触する位置に設けられる。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記インバータは、前記鞍乗型車両の走行中、前記永久磁石式モータジェネレータに前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部からの電力を供給し、永久磁石式モータジェネレータにクランク軸の回転を補助する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、鞍乗型車両が示されている。特許文献1の鞍乗型車両は、ハイブリッド車両である。特許文献1の鞍乗型車両は、エンジンと、ACGスタータ(alternating current generator starter)と、第1バッテリと、第2バッテリとを備える。
ACGスタータは永久磁石式発電機である。ACGスタータは、エンジンのクランク軸の一端部に設けられている。エンジンは、ACGスタータの駆動により始動する。第1バッテリは、ACGスタータに電力を供給する48V系のバッテリである。第2バッテリは、複数の補機に電力を供給する低電圧12V系のバッテリである。ACGスタータは発電機として機能する。第1バッテリが充電される。また、第1バッテリの電圧に起因する電荷がコンデンサに蓄積される。この電荷は、コンバータを介して第2バッテリに充電される。
特許文献1の鞍乗型車両の第1バッテリは、ACGスタータに電力を供給することによりエンジンを始動させる。第1バッテリの残容量が設定値未満である場合、第2バッテリから供給される電力によりACGスタータが駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/180650号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両は、走行時に運転者の体重移動によって車両の姿勢が制御されるように構成されている。そのため、操作性及び走行性能の観点から、鞍乗型車両は、車体をコンパクトにすることが求められている。
鞍乗型車両は、エンジン始動性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにすることが求められている。
例えば、特許文献1に示すように鞍乗型車両のACGスタータは、ギア又はベルトプーリといった減速装置を介することなくクランク軸に接続される。このため、エンジンとACGスタータを含むユニットの構造が簡潔であり、鞍乗型車両の車体のコンパクト化が図られている。
【0005】
減速機を介さずクランク軸に設けられたACGスタータは、減速装置を介してクランク軸に接続される場合と比べて、エンジン始動性能を発揮してクランク軸を駆動する場合に大きなトルクの出力を求められる。
鞍乗型車両は、エンジン始動又はアシスト性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにすることが求められている。
【0006】
本発明の目的は、クランク軸に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機によるエンジン始動又はアシスト性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにできる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1の鞍乗型車両によれば、例えば第1バッテリはエンジン始動のため48Vを出力する。なお、第1バッテリの残容量が設定値未満である場合、電源が第1バッテリから12V系の第2バッテリに切り替わる。エンジン始動のため48Vを出力する第1バッテリは、12V系のバッテリよりも多いセルを内蔵するため、一般的に12Vを出力するバッテリと比べて大型である。この結果、特許文献1に示すような鞍乗型車両は、減速装置を介することなくクランク軸に接続されるACGスタータを備えるにも拘わらず、却って大型化する。つまり、車体をコンパクトにできない。
【0008】
本発明者は、2種類の蓄電部を有効活用する方法を考えた。
本発明者は、12V以上の最大定格電圧を有し電力を蓄える第1蓄電部に加え、第1蓄電部と常時直列接続される第2蓄電部について検討した。第2蓄電部が、第1蓄電部の最大充電レートより大きい最大充電レートを有するように設定した。本発明者は、更に、第2蓄電部に掛かる電圧が第2蓄電部の上限電圧を超えないように電圧降下を生じる第1蓄電部へ充電電流が流れる状態を維持する電流維持回路の追加を検討した。
これによって、第1蓄電部を充電する間、第2蓄電部を電気的に切断することなく、第2蓄電部に掛かる電圧が第2蓄電部に設定された上限電圧を超えないように第1蓄電部へ充電電流が流れる状態を維持することができる。
【0009】
また、特表2014-510657号公報には、自動車に備えられた第1の電圧供給ユニットと蓄電ユニットとが示されている。この公報によれば、スイッチの状態によって蓄電ユニットが切り離されるため、発電の最大電圧が第1の電圧供給ユニットに直接に印加される場合がある。特表2014-510657号公報に示すような自動車には、一般的に界磁電流で出力を調整可能なオルタネータが搭載される。
これに対し、鞍乗型車両は、永久磁石式モータジェネレータを備えることによって、搭載される発電手段をコンパクト化できる。しかし、永久磁石式モータジェネレータは、オルタネータとは異なり、界磁電流による発電電力の調節ができない。
しかし、電流維持回路が第2蓄電部を電気的に切断することなく電圧降下を生じる構成とすることによって、第1蓄電部に印加される残りの電圧が第1蓄電部の充電に適するように抑制できる。
【0010】
蓄電装置が、12V以上の最大定格電圧を有する第1蓄電部と第2蓄電部とを備え、第1蓄電部と第2蓄電部とが常時直列接続されることによって、蓄電装置が放電する時に、12Vよりも大きな電圧を出力することができる。これにより、エンジンの始動又はアシスト時に、永久磁石式モータジェネレータ及びインバータを12Vよりも大きな電圧で駆動することができる。第2蓄電部の組合せによって、12Vよりも大きな電圧を出力することが容易である。
しかも、第1蓄電部に組合せられる第2蓄電部の種類及び構成、及び、電流維持回路の電圧を調整することによって、蓄電装置が放電する場合の電圧を、永久磁石式モータジェネレータの能力及び要求出力に容易に適合することができる。つまり、蓄電装置の出力電圧として、第1蓄電部の電圧より大きな電圧を容易に設定することができる。
【0011】
第2蓄電部の最大充電レートは、第1蓄電部の最大充電レートの2倍より大きく設定される。このため、蓄電装置の充電時に第2蓄電部を流れる電流が第1蓄電部も流れる場合、第2蓄電部の満充電に対する充電率は、第1蓄電部における充電率よりも高くなりやすい。つまり、例えば、第2蓄電部は、第1蓄電部よりも短い期間で充電される。このため、蓄電装置が放電した後で充電されている途中でも、蓄電装置が12Vよりも大きな電圧を出力でき、しかも、充電開始後に短時間で大きな電圧を出力可能な状態に回復できる。
【0012】
このため、エンジンの始動又はアシスト時に、永久磁石式モータジェネレータを12Vよりも大きな電圧で駆動することができる。
【0013】
例えば、特表2014-510657号公報における第1の電圧供給ユニットと蓄電ユニットは、直列接続されている。直列接続された第1の電圧供給ユニットと蓄電ユニットの双方からの電圧は、印加電圧に安定化を求める電装品に供給される。エンジンの始動又はアシスト時、始動モータである第1の電気機械には、第1の電圧供給ユニットと蓄電ユニットのうち、第1の電圧供給ユニットのみから電力が供給される。第1の電圧供給ユニットは、12Vのバッテリである。このため、始動モータに供給される最大の電圧は12Vに制約される。
【0014】
これに対し、始動モータが、直列接続された第1蓄電部及び第2蓄電部から電力の供給を受ける場合には、12V以下の場合と比べて、始動モータが大きいトルクを出力できる。また、始動モータが、より高い回転速度まで、クランク軸を駆動することができる。従って、鞍乗型車両の始動性能又はアシスト性能を向上できる。
【0015】
蓄電装置は、第1蓄電部と第2蓄電部の組合せにより12Vよりも大きな電圧を出力することができる。このため、第1蓄電部も第2蓄電部も、単独で、12Vよりも大きな電圧を出力する必要はない。従って、12Vよりも大きな電圧で永久磁石式モータジェネレータを駆動する構成において、例えば、特許文献1のように第1蓄電部又は第2蓄電部の少なくとも一方が12Vよりも大きな電圧に対応する場合と比べ、蓄電装置の容積を小型化することができる。
【0016】
また、蓄電装置が放電する場合及び充電する場合の双方で、蓄電装置と永久磁石式モータジェネレータとの間の電圧が、12Vよりも大きい。このため、電力を伝送する場合に、蓄電装置と永久磁石式モータジェネレータとの間で流れる電流を低減できる。従って、電流による損失を低減できる。また、上述したように第2蓄電部は、第1蓄電部よりも短い期間で充電される。また、第1蓄電部はバッテリであるので、放電による電圧の低下量が、第2蓄電部と比べて小さい。即ち、放電による第1蓄電部の電圧の低下は抑制される。このため、蓄電装置が放電した状態から充電開始後に短時間で、蓄電装置は、第1蓄電部の電圧に第2蓄電部の電圧が加えられた大きな電圧を出力できる。
【0017】
蓄電装置が大きな電圧を出力できるため、ある損失の許容範囲に対し、蓄電装置-インバータ永久磁石式モータジェネレータの配線距離を長く設定することができる。この結果、蓄電装置及びインバータの車体におけるレイアウト自由度が高まるので、蓄電装置及びインバータを配置する場合に生じる空間の無駄が抑えられるように蓄電装置及びインバータの配置位置を調整することができる。従って、車体をコンパクトにすることができる。
【0018】
以上の知見に基づいて完成した本発明の各観点による鞍乗型車両は、次の構成を備える。
【0019】
(1) 鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
車輪と、
クランク軸を有し、燃焼動作によって生じた前記車輪を駆動するためのトルクを前記クランク軸から出力するエンジンと、
前記クランク軸の一端部に設けられ、永久磁石を有し、前記クランク軸を回転させることにより前記エンジンを始動又はアシストするとともに、前記エンジンに駆動されることにより発電する永久磁石式モータジェネレータと、
12V以上の最大定格電圧を有し電力を蓄えるバッテリである第1蓄電部と、
前記永久磁石式モータジェネレータに対して前記第1蓄電部と常時直列接続され、前記第1蓄電部の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有する第2蓄電部と、
前記第1蓄電部に常時直列接続された前記第2蓄電部と前記永久磁石式モータジェネレータとに電気的に接続され、前記永久磁石式モータジェネレータから出力される電流を制御する複数のスイッチング部を備えたインバータと、
前記エンジンの始動又はアシスト時に、直列接続された前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部から前記インバータを介して、前記クランク軸の一端部に減速機を介さずに設けられた前記永久磁石式モータジェネレータへ電流を出力させるとともに、前記永久磁石式モータジェネレータが発電することにより前記インバータが少なくとも前記第1蓄電部を充電する間、前記第2蓄電部を電気的に切断することなく、前記第2蓄電部に掛かる電圧が前記第2蓄電部に設定された上限電圧を超えないように前記第1蓄電部へ充電電流が流れる状態を維持する電流維持回路と、
を備える。
【0020】
上記構成における鞍乗型車両では、12V以上の最大定格電圧を有する第1蓄電部と第2蓄電部とが常時直列接続されることによって、蓄電装置が放電する場合、12Vよりも大きな電圧を出力することができる。なお、蓄電装置は、第1蓄電部と第2蓄電部とを備える。これにより、エンジンの始動又はアシスト時に、永久磁石式モータジェネレータ及びインバータを12Vよりも大きな電圧で駆動することができる。第2蓄電部の組合せによって、12Vよりも大きな電圧を出力することが容易である。
しかも、第1蓄電部に組合せられる第2蓄電部の種類及び構成を調整することによって、蓄電装置が放電する場合の電圧を、永久磁石式モータジェネレータの能力及び要求出力に容易に適合することができる。
第2蓄電部の最大充電レートは、第1蓄電部の最大充電レートの2倍より大きく設定される。このため、蓄電装置の充電時に第2蓄電部を流れる電流が、第2蓄電部と直列接続の関係にある第1蓄電部にも流れる場合、第2蓄電部の満充電に対する充電率は、第1蓄電部における充電率よりも高くなりやすい。つまり、例えば、第2蓄電部は、第1蓄電部よりも短い期間で充電される。このため、蓄電装置が一旦放電した後で充電されている途中で放電する場合でも、蓄電装置が12Vよりも大きな電圧を出力できる。
第2蓄電部は、第1蓄電部よりも短い期間で充電状態の変化が進む。電流維持回路は、第2蓄電部が第2蓄電部の上限電圧を超えないように、電圧降下を生じる。上記構成における鞍乗型車両では、電流維持回路によって、第2蓄電部が第2蓄電部の上限電圧を超えないように第1蓄電部へ充電電流が流れる状態が維持される。従って、例えば第2蓄電部の充電終了後も第1蓄電部への充電状態が継続できる。
【0021】
また、上記構成における鞍乗型車両では、エンジンの始動又はアシスト時に、永久磁石式モータジェネレータを12Vよりも大きな電圧で駆動することができるので、12V以下の場合と比べて、永久磁石式モータジェネレータが大きいトルクを出力できる。また、永久磁石式モータジェネレータが、より高い回転速度まで、クランク軸を駆動することができる。従って、クランク軸の一端部に設けられた永久磁石式発電機を有する鞍乗型車両において、性能の低下を抑えることができる。
【0022】
蓄電装置は、第1蓄電部と第2蓄電部の組合せにより12Vよりも大きな電圧を出力することができる。このため、第1蓄電部も第2蓄電部も、12Vよりも大きな電圧を出力する必要はない。従って、12Vよりも大きな電圧で永久磁石式モータジェネレータを駆動する構成において、例えば、特許文献1のように第1蓄電部又は第2蓄電部の少なくとも一方が12Vよりも大きな電圧に対応する場合と比べ、蓄電装置の容積を小型化することができる。
【0023】
また、蓄電装置が放電する場合及び充電する場合の双方で、蓄電装置と永久磁石式モータジェネレータとの間の電圧が、12Vよりも大きい。このため、電力を伝送する場合に、蓄電装置と永久磁石式モータジェネレータとの間で流れる電流を低減できる。従って、電流による損失を低減できる。このため、ある損失の許容範囲に対し、蓄電装置-インバータ永久磁石式モータジェネレータの配線距離を長くすることができる。この結果、蓄電装置及びインバータの車体におけるレイアウト自由度が高まるので、蓄電装置及びインバータを配置する場合に生じる空間の無駄が抑えられるように蓄電装置及びインバータの配置位置を調整することができる。従って、車体をコンパクトにすることができる。
このように、上記構成における鞍乗型車両によれば、クランク軸の一端部に設けられた永久磁石式発電機を有する鞍乗型車両において、エンジン始動又はアシスト性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにすることができる。
【0024】
(2) (1)の鞍乗型車両であって、前記第2蓄電部の上限電圧は、前記第1蓄電部の最大定格電圧よりも低い。
【0025】
上記構成における鞍乗型車両によれば、蓄電装置の充電時、第2蓄電部は、第1蓄電部よりも短い期間で充電されやすい。このため、12V以上の電圧を出力する第1蓄電部の充電期間よりも短い充電期間で第2蓄電部が充電される。従って、短い充電期間の後でも、第2蓄電部の活用が可能となる。
【0026】
(3) (1)又は(2)の鞍乗型車両であって、
前記インバータが少なくとも前記第1蓄電部を充電する間、前記第2蓄電部に掛かる前記電圧である第2電圧が、前記第1蓄電部に掛かる第1電圧よりも低い。
【0027】
上記構成における鞍乗型車両によれば、第2電圧が第1電圧よりも低い。このため、蓄電装置及びインバータから電圧の供給を受けて動作する電動補機の種類の変更なしに、蓄電装置の電圧を調整することができる。
【0028】
(4) (1)~(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、バッテリである前記第1蓄電部と並列接続されたキャパシタを備える。
【0029】
上記構成における鞍乗型車両の第1蓄電部は、例えば劣化により充電容量が低下した場合でも最大定格電圧の低下が抑えられるので、最大定格電圧でキャパシタを充電することができる。このため、エンジンの始動又はアシスト時に、キャパシタに充電された電荷も合わせて、永久磁石式モータジェネレータに電力を出力することができる。
【0030】
(5) (1)~(4)いずれか1の鞍乗型車両であって、
永久磁石式モータジェネレータは、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有するロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式モータジェネレータの周方向に間隔を空けて形成されたステータコア及び前記スロットを通るように設けられた巻線を有するステータと、を備え、
前記磁極部の数は前記複数のティースの数より多い。
【0031】
上記構成における鞍乗型車両によれば、磁極部の数が複数のティースの数より少ない場合と比べてロータの回転速度に対する角速度が大きい。
角速度は、磁極の繰返し周期を基準とした電気角についての角速度である。角速度が大きいと、巻線のインダクタンスが大きい。また、角速度は、ロータの回転速度の増大に伴い更に増大する。巻線のインダクタンスは、巻線を流れる電流を妨げる。このため、誘導起電圧は、ロータの回転速度の増大に伴い増大するが、大きな巻線のインダクタンスによって、発電機から出力される過度の電流の増大が抑えられる。
このため、上記構成における鞍乗型車両によれば、磁極部の数が複数のティースの数より少ない場合と比べて、さらに高いクランク軸の回転速度まで蓄電装置を充電することができる。従って、電力の無駄な消費を抑えることができる。
【0032】
(6) (1)~(4)いずれか1の鞍乗型車両であって、
永久磁石式発電機は、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有し、クランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されたロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式発電機の周方向に間隔を空けて形成されたステータコア及び前記スロットを通るように設けられたステータ巻線を有するステータと、
周方向に間隔を空けて前記ロータに設けられる複数の被検出部と、
複数の前記被検出部と対向する位置に設けられ、前記ステータ巻線とは別に設けられた検出用巻線を有するロータ位置検出装置と、
を備える。
【0033】
(7) (1)~(6)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記エンジンは、オイルで内部が潤滑されるように構成されたクランクケースを更に備え、
前記永久磁石式モータジェネレータは、前記オイルと接触する位置に設けられる。
【0034】
上記構成における鞍乗型車両によれば、高いクランク軸の回転速度までの範囲で、電力を無駄に消費することなく蓄電装置を充電することができる。従って、このような永久磁石式モータジェネレータでは、ステータ巻線の温度がオイルの温度よりも高くならない又は高くなり難いため、永久磁石式モータジェネレータがオイルと接触するように配置されても、オイルの蒸発を抑制できる。
例えば、永久磁石式モータジェネレータがオイルと接触する環境下に配置される場合には、通常、冷却機構を大型化することが求められる。しかし、上記構成における鞍乗型車両によれば、冷却機構の大型化を抑制乃至回避できる。従って、車体をよりコンパクトにできる。
【0035】
(8) (1)~(7)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記インバータは、前記鞍乗型車両の走行中、前記永久磁石式モータジェネレータに前記第1蓄電部及び第2蓄電部からの電力を供給し、永久磁石式モータジェネレータにクランク軸の回転を補助する。
【0036】
上記構成における鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両の走行中、永久磁石式モータジェネレータが、12Vよりも大きい電圧で駆動することができる。このため、例えば12Vで駆動する場合と比べて、より高い回転速度までクランク軸を駆動することができる。従って、例えば12Vで駆動する場合と比べて、より高い回転速度までエンジンによる加速を補助することができる。さらに、例えば12Vの蓄電装置とは異なる蓄電装置を設ける場合と比べて、車体をよりコンパクトにできる。
【0037】
第1蓄電部は、例えばバッテリである。第1蓄電部は、例えば鉛バッテリである。ただし、第1蓄電部は、特に限定されず例えばリチウムイオンバッテリでもよい。
【0038】
第2蓄電部は、例えばキャパシタである。第2蓄電部は、例えば、リチウムイオンキャパシタである。但し、第2蓄電部は、特に限定されず例えば電気二重層キャパシタ、又は電解コンデンサでもよい。また、第2蓄電部は、例えばバッテリであってもよい。第2蓄電部は、例えば、負極に炭素材料を採用したリチウムイオンバッテリ(例えばSCiB(登録商標))、又はニッケル水素電池でもよい。なお、蓄電装置は、第1蓄電部及び第2蓄電部、並びに電流維持回路を備える。蓄電装置は、他の蓄電部を備えていてもよい。他の蓄電部としては、例えば、第1蓄電部と並列接続されるキャパシタが挙げられる。蓄電装置は、必ずしも、全体としてユニット化されている必要は無い。言い換えれば、蓄電装置を構成する各蓄電部は、必ずしも、物理的に一体として構成されている必要は無い。各蓄電部が、互いに電気的に接続された状態で、鞍乗型車両における異なる位置に別々に設置されていてもよい。
【0039】
最大充電レートとは、蓄電部が許容する最大の充電レートである。充電レートとは、充電のスピードを表す。単位はCである。定電流充電測定の場合、電池の容量を1時間で完全充電させる電流の大きさを1Cと定義される。例えば、電池の容量が2Ahである場合、1Cは、2Aである。
【0040】
永久磁石式モータジェネレータは、ジェネレータとして機能する。また、永久磁石式モータジェネレータは、モータとして機能する。永久磁石式モータジェネレータは、エンジンの始動モータとして機能することができる。永久磁石式モータジェネレータは、特に限られず、例えば、始動モータとして機能せず、鞍乗型車両の加速時にエンジンによる駆動をアシストする機能を有してもよい。また、永久磁石式モータジェネレータは、例えば、エンジンによる駆動をアシストする機能と始動モータの機能の双方を有してもよい。
【0041】
永久磁石式モータジェネレータは、例えば、電力の供給を受けてエンジンのクランク軸を駆動する。永久磁石式モータジェネレータは、例えば、クラッチを介することなくクランク軸に接続される。この場合、クラッチが動力切断状態であっても、永久磁石式モータジェネレータはエンジンを始動することができる。また、鞍乗型車両が停止状態であっても永久磁石式モータジェネレータは発電できる。
【0042】
永久磁石式モータジェネレータの接続構成は、特に限定されず、例えば、クランク軸と永久磁石式モータジェネレータとの間にクラッチ又は変速装置が介在してもよい。この場合、永久磁石式モータジェネレータは、エンジンの状態に拘わらず鞍乗型車両の加速を行なうことができる。また、永久磁石式モータジェネレータは、エンジンの状態に拘わらず、車輪からの動力で発電できる。この場合、鞍乗型車両は、永久磁石式モータジェネレータとは別個のスタータモータを備えてもよい。
【0043】
永久磁石式モータジェネレータは、永久磁石を有する。例えばロータに永久磁石ではなく界磁用のコイルを備えた構成は、本構成における永久磁石式モータジェネレータと異なる。
【0044】
「電気的に切断する」とは、対象を含む電力の閉回路の一部を、例えば、スイッチ又はリレーの動作により開状態とすることである。「電気的に切断する」には、閉回路を構成するトランジスタを導通状態から非導通状態にすることも含まれる。これに対し、「電気的に切断することなく」とは、対象を含む電力の閉回路の状態を維持することである。「電気的に切断することなく」する状態は、対象に電流が流れない状態も含む。例えば、対象が充電されたキャパシタであり、しかも、キャパシタの両端の電圧と等しい電圧がキャパシタに印加された場合は、キャパシタに電流は流れないが電気的に切断されていない状態である。
【0045】
エンジンは、例えば単気筒エンジン、2気筒エンジン、不等間隔燃焼型3気筒エンジン、又は、不等間隔燃焼型4気筒エンジンである。エンジンは、例えば、3つより少ない気筒を有するエンジンである。2気筒エンジンは、2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンであってもよい。2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンとして、例えばV型エンジンが挙げられる。但し、エンジンは、特に限定されず、等間隔燃焼型多気筒エンジンでもよい。
【0046】
鞍乗型車両は、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両をいう。鞍乗型車両は、サドル型のシートを備える車両である。鞍乗型車両は、運転者が騎乗スタイルで乗車する車両である。鞍乗型車両は、ビークルの一例である。鞍乗型車両は、例えば、リーン姿勢で旋回する車両であり、旋回時にカーブ中心方向にリーンするように構成されている。
鞍乗型車両は例えば自動二輪車である。自動二輪車としては、特に限定されず、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば三輪車であってもよい。また、鞍乗型車両としては、例えば、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。
【0047】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。
本明細書にて使用される用語「および/または」はひとつの、または複数の関連した列挙された構成物のあらゆるまたはすべての組み合わせを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」およびその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分および/またはそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「結合された」および/またはそれらの等価物は広く使用され、特に指定しない限り直接的および間接的な取り付け、および結合の両方を包含する。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本発明の説明においては、技術および多くの工程が開示されていると理解される。
これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
したがって、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。
それにもかかわらず、明細書および特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明および請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、新しい鞍乗型車両について説明する。
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。
しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。
本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、エンジン始動性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにできる鞍乗型車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両を模式的に示す図である。
図2図1に示す電流維持回路の構成例を示すブロック図である。
図3図1に示す第1蓄電部の電圧と第2蓄電部の一例の充電時における電圧変化の概略を示すチャートである。
図4】(A)は、鞍乗型車両における蓄電装置の配置の第1の変形例を示す側面図である。(B)は、鞍乗型車両における蓄電装置の配置の第2の変形例を示す側面図である。
図5図1に示す実施形態の適用例である鞍乗型車両及び電気系統を模式的に示す図である
図6図5に示すエンジンユニットの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
図7図6に示す永久磁石式モータジェネレータの回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図8】異なる種類の第2蓄電部を有する第2の適用例の充電時における電圧変化の概略を示すチャートである。
図9図1に示す蓄電装置のバリエーションの例を示す図である。
図10図1に示す鞍乗型車両の電気構成のバリエーションを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を、実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0051】
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両を模式的に示す図である。図1のパート(a)は、鞍乗型車両の側面図である。図1のパート(b)は、パート(a)に示す鞍乗型車両の概略的な電気構成を示すブロック図である。
【0052】
図1に示す鞍乗型車両1は、車輪3a,3bと、エンジン10と、永久磁石式モータジェネレータ20と、蓄電装置4と、インバータ21とを備える。また、鞍乗型車両1は、電動補機Lを備えている。蓄電装置4は、第1蓄電部41と、第2蓄電部42と、電流維持回路43とを備える。つまり、鞍乗型車両1は、車輪3a,3bと、エンジン10と、永久磁石式モータジェネレータ20と、第1蓄電部41と、第2蓄電部42と、電流維持回路43と、インバータ21とを備える。
また、鞍乗型車両1は、車体2を備えている。図1には、鞍乗型車両1の例として、リーン車両が示されている。リーン車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し右旋回中に車両右方向に傾斜する。
【0053】
鞍乗型車両1に備えられた車輪3a,3bは、前の車輪3aと後ろの車輪3bを含む。後ろの車輪3bは駆動輪である。
【0054】
エンジン10は、クランク軸15を備えている。
エンジン10は、クランク軸15を介して動力を出力する。エンジン10は、車輪3bを駆動するためのトルクをクランク軸15から出力する。車輪3bは、クランク軸15の動力を受け、鞍乗型車両1を走行させる。
エンジン10から出力される動力は、例えば、変速機及びクラッチを介して車輪3bに伝達されることができる。
【0055】
電動補機Lは、鞍乗型車両1に搭載される電動装置である。電動補機Lは、電力の供給を受けて動作する。
電動補機Lは、例えば、エンジン10に燃焼を行なわせるよう動作するエンジン用補機である。エンジン用補機は、例えば、燃料噴射装置18及び点火装置19(図6参照)を含む。燃料噴射装置18は、エンジン10の内部に向けて若しくは当該内部において燃料を噴射する。点火装置19は、エンジン10の内部の燃料に点火する。
【0056】
永久磁石式モータジェネレータ20は、クランク軸15の一端部に設けられる。
永久磁石式モータジェネレータ20は、永久磁石を有する。より詳細には、永久磁石式モータジェネレータ20は、永久磁石で構成された永久磁石部37を備えている。
永久磁石式モータジェネレータ20は、エンジン10を始動するスタータを兼ねる。永久磁石式モータジェネレータ20は、永久磁石式始動発電機である。永久磁石式モータジェネレータ20は、クランク軸15を回転させることによりエンジン10を始動する。永久磁石式モータジェネレータ20はまた、エンジン10に駆動されることにより発電する。
【0057】
蓄電装置4は、電気を充電及び放電することができる装置である。蓄電装置4は、電力を蓄える。
蓄電装置4は、充電された電力を外部に出力する。蓄電装置4は、電力を永久磁石式モータジェネレータ20に供給する。蓄電装置4は、エンジン10の始動時に永久磁石式モータジェネレータ20に電力を供給する。また、例えばエンジン10の始動後、蓄電装置4は、永久磁石式モータジェネレータ20で発電された電力によって充電される。
【0058】
蓄電装置4は、第1蓄電部41と、第2蓄電部42と、電流維持回路43とを備える。
第1蓄電部41は、電力を蓄えるバッテリである。第1蓄電部41は、12V以上の最大定格電圧を有する。例えば、第1蓄電部41は、12Vの公称電圧を有するバッテリである。例えば、第1蓄電部41は、鉛バッテリである。第1蓄電部41は、例えば最大定格電圧14Vを有する。第1蓄電部41は、エンジン10を少なくとも1回始動する量の電力を充電可能な容量を有する。
第2蓄電部42は、第1蓄電部41と常時直列接続される。第2蓄電部42は、第1蓄電部41の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有する。例えば、第2蓄電部42は、電力を蓄えるバッテリである。第2蓄電部42は、エンジン10を少なくとも1回始動する量の電力を充電可能な容量を有する。
充電レートとは、充電のスピードを表す。単位はC[シー]である。電池の容量を1時間で完全充電させる電流の大きさを1Cと定義される。最大充電レートとは、許容する最大の充電レートである。
第1蓄電部41と第2蓄電部42のコンビネーションはこれに限られない。上述したように、第2蓄電部42は、第1蓄電部41の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有する。
【0059】
第1蓄電部41としては、例えば1C以下の最大充電レートを有するバッテリが挙げられる。
【0060】
第1蓄電部41の種類は、例えば、鉛バッテリ、負極に炭素材料を採用したリチウムイオンバッテリである。
【0061】
第2蓄電部42としては、例えば20C以上の最大充電レートを有するバッテリが挙げられる。
【0062】
第2蓄電部42の種類は、例えば、ニッケル水素バッテリ、及び負極にチタン酸リチウムを採用したリチウムイオンバッテリである。第2蓄電部42の種類として、例えば、キャパシタが挙げられる。例えば、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0063】
ただし、第2蓄電部42としては、第1蓄電部41の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有する装置が採用可能である。
【0064】
例えば、第1蓄電部41は、1Cの最大充電レートを有するバッテリであり、第2蓄電部42は、40Cの最大充電レートを有するバッテリである。例えば、第1蓄電部41は、1Cの最大充電レートを有する鉛バッテリである。例えば、第1蓄電部41は、6Ahの容量を有し最大充電電流6Aの鉛バッテリである。この場合、第1蓄電部41の最大充電レートは、1Cである。
第2蓄電部42は、10Cの最大充電レートを有するニッケル水素バッテリである。例えば、第2蓄電部42は、1Ahの容量を有し最大充電電流20Aのニッケル水素バッテリである。この場合、第1蓄電部41の最大充電レートは、20Cである。
【0065】
電流維持回路43は、エンジン10の始動時に直列接続された第1蓄電部41及び第2蓄電部42からインバータ21を介して永久磁石式モータジェネレータ20へ電流を出力させる。また、電流維持回路43は、インバータ21が少なくとも第1蓄電部41を充電する間、第2蓄電部42を電気的に切断することなく、第1蓄電部41へ充電電流が流れる状態を維持する。
電流維持回路43は、蓄電装置4が充電される間、第2蓄電部42に掛かる電圧が第2蓄電部42に設定された上限電圧を超えないように第1蓄電部41へ充電電流が流れる状態を維持する。ここでいう「蓄電装置4が充電される間」とは、少なくとも第1蓄電部41が充電される間を指す。電流維持回路43は、第2蓄電部42を電気的に切断することなく、第1蓄電部へ充電電流が流れる状態を維持する。
第2蓄電部42に設定された上限電圧は、第2蓄電部42に印加され得る上限である。第2蓄電部42に設定された上限電圧は、第2蓄電部42の最大定格電圧よりも小さい。第2蓄電部42として、例えば、第1蓄電部41の最大定格電圧よりも小さい最大定格電圧を有する装置が採用される。この場合、第1蓄電部41の最大定格電圧よりも小さい上限電圧が採用される。例えば、公称電圧12Vの第1蓄電部41と、上限電圧6Vの第2蓄電部42が採用される。但し、第1蓄電部41と第2蓄電部42の組合せはこれに限られない。例えば、最大定格電圧が14Vの第1蓄電部41が採用される場合、第2蓄電部42の最大定格電圧は14Vよりも小さい。例えば、第2蓄電部42の上限電圧は14Vよりも小さい。また、第1蓄電部41の最大定格電圧は14V以外でもよい。第1蓄電部41の最大定格電圧は、例えば、28V、または、7Vでもよい。
電流維持回路43としては、例えば、第2蓄電部42と並列接続され、かつ、第1蓄電部41と直列接続された回路が挙げられる。この場合、電流維持回路43は、第2蓄電部42に掛かる電圧が、上限電圧を超えると、蓄電装置4から流れる電流を第1蓄電部41に流す。例えば、電流維持回路43は、第2蓄電部42の電圧が上限電圧を超えたことを検出する回路と、検出に応じて、インバータ21から流れる電流を第1蓄電部41に流す回路とを有する。
【0066】
但し、電流維持回路43は、例えば、上限電圧に見合う数の直列接続された低電圧ダイオードでもよい。また、電流維持回路43は、第2蓄電部42と直列接続されてもよい。
【0067】
インバータ21は、例えばエンジン10が燃焼動作している場合に、永久磁石式モータジェネレータ20で発電された電力を、蓄電装置4に供給する。この場合、インバータ21は、永久磁石式モータジェネレータ20で発電された電流を整流する。
また、インバータ21は、永久磁石式モータジェネレータ20に電力を供給することによって、永久磁石式モータジェネレータ20を回転させる。インバータ21は、永久磁石式モータジェネレータ20のステータ巻線Wに流れる電流のオン・オフを制御することによって、電流を制御する。
【0068】
インバータ21は、スイッチング部211と、制御装置60を含んでいる。制御装置60は、インバータ21と物理的に一体に設けられている。制御装置60は、インバータ21のスイッチング部211の動作を制御することによって、インバータ21から出力される電圧を制御する。制御装置60は、インバータ21のスイッチング部211の動作を制御することによって、永久磁石式モータジェネレータ20と蓄電装置4との間で流れる電流を制御する。また、制御装置60は、永久磁石式モータジェネレータ20の動作を制御する。制御装置60は、例えば位相制御方式又はベクトル制御によって、インバータ21から出力される電圧を制御する。
【0069】
制御装置60は、例えば、インバータ21から出力される電圧が、第1蓄電部41の最大定格電圧と第2蓄電部42の最大定格電圧との和よりも小さい電圧を出力するよう、インバータ21を制御する。制御装置60は、例えば、インバータ21から出力される電圧が、第1蓄電部41の最大定格電圧と第2蓄電部42の上限電圧との和よりも小さい電圧を出力するよう、インバータ21を制御する。
【0070】
例えば、制御装置60は、スタータスイッチ6からの信号に応じて、インバータ21に、蓄電装置4から永久磁石式モータジェネレータ20に電流を供給させる。これによって、蓄電装置4から永久磁石式モータジェネレータ20に電力が供給され、エンジン10が始動する。
エンジン10の始動の場合に、蓄電装置4が、従来一般に採用されている12Vよりも大きい電圧で永久磁石式モータジェネレータ20を駆動することができる。従って、永久磁石式モータジェネレータ20は、12Vの場合と比べて大きいトルクを出力できる。従って、永久磁石式モータジェネレータ20の性能の低下が抑えられる。
【0071】
エンジン10の始動後、即ち燃焼動作開始後、制御装置60は、永久磁石式モータジェネレータ20からの電流を蓄電装置4に流すようインバータ21を制御する。これによって、蓄電装置4が永久磁石式モータジェネレータ20の発電電力によって充電される。
また、制御装置60は、エンジン10の始動後、即ち燃焼動作開始後、加速指示部8(図5参照)の操作に応じてインバータ21に、蓄電装置4の電力を永久磁石式モータジェネレータ20に供給させることができる。より詳細には、制御装置60は、鞍乗型車両1の走行中、永久磁石式モータジェネレータ20に蓄電装置4からの電力を供給し、永久磁石式モータジェネレータ20にクランク軸15の回転を補助させる。これによって、エンジン10による鞍乗型車両1の加速が永久磁石式モータジェネレータ20でアシストされる。
【0072】
制御装置60は、エンジン10への燃料の供給及び燃焼を制御するエンジン制御部の機能も有する。制御装置60は、エンジン用補機として機能する電動補機Lの動作を制御することによって、エンジン10の燃焼を制御する。
制御装置60は、図示しない中央処理装置及びメモリを備えている。制御装置60は、メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、エンジン10の燃焼を制御する。
制御装置60は、蓄電装置4の電力で動作する。より詳細には、制御装置60は、蓄電装置4の電圧から、制御装置60に適用するようダウンコンバートされた動作電圧で動作する。ダウンコンバータは、例えばインバータ21に設けられている。例えば蓄電装置4がバッテリとキャパシタを有する場合、制御装置60は、バッテリの電圧からダウンコンバートされた動作電圧で動作してもよい。
【0073】
図2は、図1に示す電流維持回路の構成例を示すブロック図である。図2には、電流維持回路の機能の分かりやすさのため、第1蓄電部41及び第2蓄電部42も示されている。図2には第2蓄電部42の例としてキャパシタが示されている。
図2に示す例としての電流維持回路43aは、電圧降下生成部431を備えている。電圧降下生成部431は、電気的に第2蓄電部42と並列接続されている。電圧降下生成部431は、第2蓄電部42と直列接続されていないので、第2蓄電部42の電流経路を遮断しない。電圧降下生成部431は、スイッチではない。
電圧降下生成部431は、第2蓄電部42に掛かる電圧が第2蓄電部42に設定された上限電圧を超えないように電圧降下を生じる。より詳細には、電圧降下生成部431が生じる電圧降下の量は、第2蓄電部42に掛かる電圧と実質的に等しい。従って、電圧降下生成部431は、上限電圧を超えない量の電圧降下を生じる。
つまり、電気的に第2蓄電部42と並列接続された電圧降下生成部431は、第2蓄電部42の電流経路を遮断することなく、上限電圧を超えない量の電圧降下を生じる。
【0074】
より詳細には、電圧降下生成部431は、第2蓄電部に掛かる電圧が上昇して上限電圧に近づくほど、内部抵抗を低下させる。これにより、電圧降下の量が上限電圧を超えないように制御される。
【0075】
より詳細には、電流維持回路43aは、電圧降下生成部431と、電圧降下制御部432と、フィードバック部433と、基準電圧生成部434とを備えている。
基準電圧生成部434は、上限電圧に関連する基準電圧を生成する。電圧降下制御部432は、基準電圧と第2蓄電部に掛かる電圧とに基づいて、電圧降下生成部431における電圧降下の量を制御する。フィードバック部433は、電圧降下制御部432の出力電圧を入力に反映させる。
電圧降下生成部431は、第2蓄電部に掛かる電圧に応じて電圧降下の量をアナログで制御する。
【0076】
なお、図1に示す電流維持回路43の構成は、図2に示す電流維持回路43aに限られない。電圧降下生成部431としてバイポーラトランジスタが示されているが、電圧降下生成部431は例えば電界効果トランジスタ(FET)といった電流制御素子でもよい。また、電圧降下制御部432としてアンプが示されているが、電圧降下制御部432は、例えばデジタル制御回路でもよい。
【0077】
図3は、図1に示す第1蓄電部41の電圧と第2蓄電部42の一例の充電時における電圧変化の概略を示すチャートである。
【0078】
第1蓄電部41の例として公称電圧12Vのバッテリと、第2蓄電部42の例として公称電圧6Vバッテリの組合せが示されている。第1蓄電部41の充電前の電圧は放電により11Vとなっている。第2蓄電部42の充電前の電圧は放電により5.5Vとなっている。第2蓄電部42は、第1蓄電部41の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有する。
【0079】
直列接続された第1蓄電部41と第2蓄電部42が18Vで充電されると、充電時間の経過に伴い第1蓄電部41の第1電圧V1および第2蓄電部42の第2電圧V2が上昇する。第2蓄電部42は、第1蓄電部41の最大充電レートの2倍より大きい最大充電レートを有するので、第2蓄電部42の第2電圧V2は、第1蓄電部41の第1電圧V1と比べて急速に上昇する。つまり、第2蓄電部42は、第1蓄電部41と比べて急速に充電される。
蓄電装置4の電圧VTは、第1蓄電部41の第1電圧V1と第2蓄電部42の第2電圧V2との合計である。蓄電装置4の電圧VTは、例えば第2蓄電部無しで第1蓄電部41の規模の単純に1.5倍とした場合における蓄電装置の電圧VT’と比べて大きい。例えば、充電開始から、蓄電装置4の電圧VTが充電電圧の約95%である17.5Vに到達するまでの時間t1は、例えば第2蓄電部無しで第1蓄電部41の規模を単純に1.5倍とした場合における蓄電装置の電圧VT’が17.5Vに到達するまでの時間t2よりも短い。
【0080】
このように、直列接続された第1蓄電部41と第2蓄電部42によって、蓄電装置4の電圧VTは、例えば第1蓄電部41の規模が単純に拡大した場合の電圧VT’と比べて大きい。
図3の例に示すように、第2蓄電部42が第1蓄電部41よりも短い期間で充電されるため、蓄電装置4は、蓄電装置4が放電した状態から充電開始後に短時間で大きな電圧VTを出力できる。例えば、時刻t1でエンジン10の始動の場合でも、永久磁石式モータジェネレータ20が、従来一般に採用されている12Vよりも大きい17Vで駆動されることができる。
【0081】
図3を参照して、12Vと6Vの組合せを説明した。しかし、本実施形態の鞍乗型車両1では、第2蓄電部42の種類及び構成、及び、電流維持回路43の上限電圧設定値を調整することによって、蓄電装置4が放電する場合の電圧を、容易に調整することができる。つまり、蓄電装置4の出力電圧として、第1蓄電部41の電圧より高い電圧を容易に設定することができる。例えば、第1蓄電部41として公称電圧12Vのバッテリを用いる場合、蓄電装置4が放電した後の短い充電時間で蓄電装置4が出力可能な電圧を12Vよりも大きい要求電圧に調整することが容易である。
蓄電装置4が大きな電圧を出力できる場合、ある損失の許容範囲に対し、蓄電装置4-インバータ21-永久磁石式モータジェネレータ20の配線距離を長くすることが許容できる。この結果、蓄電装置4及びインバータ21の車体におけるレイアウト自由度が高まる。
【0082】
図4(A)は、鞍乗型車両1における蓄電装置4の配置の第1の変形例を示す側面図である。図4(B)は、鞍乗型車両1における蓄電装置4の配置の第2の変形例を示す側面図である。
【0083】
図4(A)に示す第1の変形例では、蓄電装置4が、車体2の後端部に配置されている。図4(B)に示す第2の変形例では、蓄電装置4が、車体2の前端部に配置されている。
蓄電装置4-インバータ21-永久磁石式モータジェネレータ20の配線距離を長くすることが許容できるので、図4(A)又は図4(B)に示すように、蓄電装置4及びインバータ21の車体におけるレイアウト自由度が高まる。このため、蓄電装置4及びインバータ21を配置する場合に生じる空間の無駄が抑えられるように蓄電装置4及びインバータ21の配置位置を調整することができる。従って、車体2をコンパクトにすることができる。
【0084】
このように、鞍乗型車両1によれば、エンジン始動性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにできる。
【0085】
[第1の適用例]
続いて、図5を参照して、実施形態の適用例を説明する。
【0086】
図5は、図1に示す実施形態の適用例である鞍乗型車両1及び電気系統を模式的に示す図である。図5のパート(a)は、鞍乗型車両1の平面図である。図5のパート(b)は、鞍乗型車両1の側面図である。図5のパート(c)は、鞍乗型車両1の電気系統の接続を模式的に示す実体配線図である。
図5以降に示す適用例において、図1に示す実施形態に対応する要素は、図1と同じ符号を付して説明を行う。
【0087】
図5に示す鞍乗型車両1は、車体2を備えている。車体2には、運転者が着座するためのシート2aが備えられている。運転者は、シート2aに跨がるようにして着座する。図5には、鞍乗型車両1の一例として自動二輪車が示されている。
【0088】
鞍乗型車両1は、前の車輪3aと後ろの車輪3bを備えている。鞍乗型車両1の車輪3a,3bのトレッド面は、路面と接触しない状態で円弧状の断面形状を有する。
【0089】
エンジン10は、エンジンユニットEUを構成する。即ち、鞍乗型車両1は、エンジンユニットEUを備えている。
エンジンユニットEUは、エンジン10と、永久磁石式モータジェネレータ20とを含む。
エンジン10は、クランク軸15を介して動力を出力する。エンジン10は、車輪3bを駆動するためのトルクをクランク軸15から出力する。車輪3bは、クランク軸15の動力を受け、鞍乗型車両1を走行させる。エンジン10は、例えば100mL以上の排気量を有する。エンジン10は、例えば、400mL未満の排気量を有する。
また、鞍乗型車両1は、変速機CVT及びクラッチCLを備えている。エンジン10から出力される動力は、変速機CVT及びクラッチCLを介して車輪3bに伝達される。
【0090】
永久磁石式モータジェネレータ20は、エンジン10に駆動されて発電する。図5に示す永久磁石式モータジェネレータ20は、磁石式始動発電機である。
永久磁石式モータジェネレータ20は、ロータ30及びステータ40(図6参照)を有する。ロータ30は、永久磁石で構成された永久磁石部37を備えている。ロータ30は、クランク軸15から出力される動力で回転する。ステータ40は、ロータ30と対向するように配置されている。
【0091】
蓄電装置4は、充電及び放電することができる装置である。蓄電装置4は、充電された電力を外部に出力する。蓄電装置4は、電力を永久磁石式モータジェネレータ20及び電動補機Lに供給する。蓄電装置4は、エンジン10の始動時に永久磁石式モータジェネレータ20に電力を供給する。また、蓄電装置4は、永久磁石式モータジェネレータ20で発電された電力によって充電される。
【0092】
鞍乗型車両1は、インバータ21を備えている。インバータ21は、永久磁石式モータジェネレータ20と蓄電装置4との間を流れる電流を制御する複数のスイッチング部211を備えている。
【0093】
永久磁石式モータジェネレータ20は、蓄電装置4の電力によってクランク軸15を回転させる。これによって永久磁石式モータジェネレータ20はエンジン10を始動する。
【0094】
鞍乗型車両1は、メインスイッチ5を備えている。メインスイッチ5は、操作に応じて鞍乗型車両1に備えられた電動補機L(図5(c)参照)に電力を供給するためのスイッチである。電動補機Lは、永久磁石式モータジェネレータ20を除いて、電力を消費しながら動作する装置を包括的に表したものである。電動補機Lは、例えば、前照灯9、燃料噴射装置18、及び点火装置19(図6参照)を含む。
鞍乗型車両1は、スタータスイッチ6を備えている。スタータスイッチ6は、操作に応じてエンジン10を始動するためのスイッチである。鞍乗型車両1は、メインリレー75を備えている。メインリレー75は、メインスイッチ5からの信号に応じて、電動補機Lを含む回路を開閉する。
鞍乗型車両1は、加速指示部8を備えている。加速指示部8は、操作に応じて鞍乗型車両1の加速を指示するための操作子である。加速指示部8は、詳細には、アクセルグリップである。
【0095】
蓄電装置4は、例えば、12Vで動作する第1蓄電部41と、このバッテリに直列接続された第2蓄電部42とを有する。第1蓄電部41は、例えば鉛バッテリである。キャパシタは、例えば電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor, EDLC)である。
また、蓄電装置4は、キャパシタの電圧が6Vを超えると蓄電装置4に入力される電流を、キャパシタではなくバッテリに供給する電流維持回路43を有する。
蓄電装置4は、18Vで充電され、18Vを出力する。ただし、充電電圧及び出力電圧は、蓄電装置4の充電状態及びクランク軸15の回転速度によっても変動する。18Vを含む範囲の電圧を、18V系統電圧と称する。
【0096】
図5に示す構成で、蓄電装置4は、エンジン10の始動時に永久磁石式モータジェネレータ20に電力を供給する。永久磁石式モータジェネレータ20が、18V系統電圧で駆動されることができる。従って、永久磁石式モータジェネレータ20は、例えば12Vの場合と比べて大きいトルクを出力できる。
【0097】
図5のパート(c)に示すように、永久磁石式モータジェネレータ20、蓄電装置4、メインリレー75、インバータ21、及び電動補機Lは、配線Jで電気的に接続されている。符号の見やすさのため、配線の符号(J)は、図5のパート(c)に示す配線の一部に付している。
配線Jは、例えばリード線で構成される。配線Jは、繋ぎ合わされた複数のリード線で構成される場合もある。また、配線Jは、リード線を中継するコネクタ、ヒューズ、及び接続端子を含む場合もある。コネクタ、ヒューズ、及び接続端子の図示は省略する。また、図5のパート(c)の実体配線図では、正極領域の接続が示されている。負極領域即ちグランド領域は、車体2を介して電気的に接続されている。より詳細には、負極領域は、車体2の図示しない金属製フレームを介して電気的に接続されている。車体2を介した各装置の電気的な接続の距離は、通常、リード線等による正極領域の接続と同等であるか、より短い。そこで、図5のパート(c)において、車体2による負極領域の接続の図示を省略し、主として、正極領域の配線について説明する。
図5に示す配線Jは、車両に設けられた他の配線と組み合わされて図示しないワイヤハーネスを構成する。図5のパート(c)では、図に示された装置を電気的に接続する配線Jのみを示す。
図5のパート(c)には、各装置間の配線Jの接続関係、及び配線Jの距離が概略的に示されている。
【0098】
[エンジンユニット]
図6は、図5に示すエンジンユニットEUの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【0099】
エンジンユニットEUは、エンジン10を備えている。エンジン10は、クランクケース11と、シリンダ12と、ピストン13と、コネクティングロッド14と、クランク軸15とを備えている。ピストン13は、シリンダ12内に往復動可能に設けられている。
クランク軸15は、クランクケース11内に回転可能に設けられている。クランク軸15は、コネクティングロッド14を介して、ピストン13と連結されている。シリンダ12の上部には、シリンダヘッド16が取り付けられている。シリンダ12とシリンダヘッド16とピストン13とによって、燃焼室が形成される。クランク軸15は、クランクケース11に、回転自在な態様で支持されている。クランク軸15の一端部15aには、永久磁石式モータジェネレータ20が取り付けられている。クランク軸15の他端部15bには、変速機CVTが取り付けられている。変速機CVTは、入力の回転速度に対する出力の回転速度の比である変速比を変更することができる。変速機CVTは、クランク軸15の回転速度に対する、車輪の回転速度に対応する変速比を変更することができる。
【0100】
エンジンユニットEUには、燃料噴射装置18が備えられている。燃料噴射装置18は、燃料を噴射することによって、燃焼室に燃料を供給する。吸気通路Ipを通って流れる空気に対し、燃料噴射装置18が燃料を噴射する。空気と燃料の混合気が、エンジン10の燃焼室に供給される。
また、エンジンユニットEUには、点火装置19が設けられている。点火装置19は、点火プラグ19a及び点火電圧生成回路19bを有する。点火プラグ19aは、エンジン10に設けられている。点火プラグ19aは、点火電圧生成回路19bと電気的に接続される。
燃料噴射装置18及び点火装置19は、図1に示す電動補機Lの一例である。燃料噴射装置18及び点火装置19は、エンジン用補機の一例である。燃料噴射装置18及び点火装置19は、18V系統電圧で動作する。
【0101】
エンジン10は、内燃機関である。エンジン10は、燃料の供給を受ける。エンジン10は、混合気を燃焼する燃焼動作によって動力を出力する。即ち、ピストン13が、燃焼室に供給された燃料を含む混合気の燃焼によって往復動する。ピストン13の往復動に連動してクランク軸15が回転する。動力は、クランク軸15を介してエンジン10の外部に出力される。
燃料噴射装置18は、供給燃料の量を調整することによって、エンジン10から出力される動力を調節する。燃料噴射装置18は、制御装置60によって制御される。燃料噴射装置18は、エンジン10に供給される空気の量に基づいた量の燃料を供給するよう制御される。点火装置19は、燃料と空気が混合されたガスに点火する。燃料噴射装置18及び点火装置19は、エンジン10に燃焼を行なわせるよう動作するエンジン用補機である。
エンジン10は、クランク軸15を介して動力を出力する。クランク軸15の動力は、変速機CVT及びクラッチCL(図5のパート(b)参照)を介して、車輪3bに伝達される。
【0102】
クランクケース11は、潤滑オイル(oil図5パート(b))で内部が潤滑されるように構成されている。永久磁石式モータジェネレータ20は、潤滑オイル(oil)と接触する位置に設けられている。
【0103】
エンジン10は、4ストロークの間に、クランク軸15を回転させる負荷が大きい高負荷領域と、クランク軸15を回転させる負荷が高負荷領域の負荷より小さい低負荷領域とを有する。高負荷領域とは、エンジン10の1燃焼サイクルにおいて、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも高い領域をいう。また、低負荷領域とは、エンジン10の1燃焼サイクルにおいて、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも低い領域をいう。クランク軸15の回転角度を基準として見ると、低負荷領域は高負荷領域よりも広い。より詳細には、エンジン10は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び排気行程の4行程を繰返しながら正回転する。圧縮行程は、高負荷領域との重なりを有する。エンジン10は、単気筒エンジンである。
【0104】
図7は、図6に示す永久磁石式モータジェネレータ20の回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図6及び図7を参照して永久磁石式モータジェネレータ20を説明する。
【0105】
永久磁石式モータジェネレータ20は、ロータ30と、ステータ40とを有する。本適用例の永久磁石式モータジェネレータ20は、ラジアルギャップ型である。永久磁石式モータジェネレータ20は、アウタロータ型である。即ち、ロータ30はアウタロータである。ステータ40はインナーステータである。
ロータ30は、ロータ本体部31を有する。ロータ本体部31は、例えば強磁性材料からなる。ロータ本体部31は、有底筒状を有する。ロータ本体部31は、筒状ボス部32と、円板状の底壁部33と、筒状のバックヨーク部34とを有する。底壁部33及びバックヨーク部34は一体的に形成されている。なお、底壁部33とバックヨーク部34とは別体に構成されていてもよい。底壁部33及びバックヨーク部34は筒状ボス部32を介してクランク軸15に固定されている。ロータ30には、電流が供給される巻線が設けられていない。
【0106】
ロータ30は、永久磁石部37を有する。ロータ30は、複数の磁極部37aを有する。複数の磁極部37aは永久磁石部37により形成されている。複数の磁極部37aは、バックヨーク部34の内周面に、設けられている。本適用例において、永久磁石部37は、複数の永久磁石を有する。即ち、ロータ30は、複数の永久磁石を有する。複数の磁極部37aは、複数の永久磁石のそれぞれに設けられている。
なお、永久磁石部37は、1つの環状の永久磁石によって形成されることも可能である。この場合、1つの永久磁石は、複数の磁極部37aが内周面に並ぶように着磁される。
【0107】
複数の磁極部37aは、永久磁石式モータジェネレータ20の周方向にN極とS極とが交互に配置されるように設けられている。本適用例では、ステータ40と対向するロータ30の磁極数が24個である。ロータ30の磁極数とは、ステータ40と対向する磁極数をいう。磁極部37aとステータ40との間には磁性体が設けられていない。
磁極部37aは、永久磁石式モータジェネレータ20の径方向におけるステータ40よりも外方に設けられている。バックヨーク部34は、径方向における磁極部37aよりも外方に設けられている。永久磁石式モータジェネレータ20は、歯部45の数よりも多い磁極部37aを有している。
なお、ロータ30は、磁極部37aが磁性材料に埋め込まれた埋込磁石型(IPM型)であってもよいが、本適用例のように、磁極部37aが磁性材料から露出した表面磁石型(SPM型)であることが好ましい。
【0108】
ステータ40は、ステータコアSTと複数のステータ巻線Wとを有する。ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて設けられた複数の歯部(ティース)45を有する。複数の歯部45は、ステータコアSTから径方向外方に向かって一体的に延びている。本適用例においては、合計18個の歯部45が周方向に間隔を空けて設けられている。換言すると、ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて形成された合計18個のスロットSLを有する。歯部45は周方向に等間隔で配置されている。
【0109】
ロータ30は、歯部45の数より多い数の磁極部37aを有する。磁極部の数は、スロット数の4/3である。
【0110】
各歯部45の周囲には、ステータ巻線Wが巻回している。つまり、複数相のステータ巻線Wは、スロットSLを通るように設けられている。図7には、ステータ巻線Wが、スロットSLの中にある状態が示されている。
【0111】
永久磁石式モータジェネレータ20は、三相発電機である。ステータ巻線Wのそれぞれは、U相、V相、W相の何れかに属する。ステータ巻線Wは、例えば、U相、V相、W相の順に並ぶように配置される。
【0112】
鞍乗型車両1が走行中にエンジン10が動作状態している場合、永久磁石式モータジェネレータ20で発電される電力によって、蓄電装置4が充電される。蓄電装置4が満充電になると、永久磁石式モータジェネレータ20で発電される電力は、充電に用いられることなく例えば巻線の短絡によって熱として消費される。また、インバータ21から蓄電装置4に出力される電圧が定格値に抑えられない程度にクランク軸15の回転速度が大きくなる場合、インバータ21は、永久磁石式モータジェネレータ20のステータ巻線Wを短絡するようにスイッチング部211を制御する。蓄電装置4を充電することができるクランク軸15の上限回転速度は、高い値に設定することができる。
発電機が発電する場合、ステータ巻線Wを流れる電流は、ステータ巻線W自体に生じるインピーダンスの影響を受ける。インピーダンスはステータ巻線Wを流れる電流を妨げる要素である。インピーダンスは、回転速度ωとインダクタンスの積を含む。ここで、回転速度ωは、実際には、単位時間に歯部近傍を通過する磁極部の数に相当する。即ち、回転速度ωは、発電機における歯部の数に対する磁極部の数の比と、ロータの回転速度とに比例する。
【0113】
図7に示す永久磁石式モータジェネレータ20は、歯部45の数より多い数の磁極部37aを有する。即ち、永久磁石式モータジェネレータ20は、スロットSLの数より多い数の磁極部37aを有する。このため、ステータ巻線Wが大きなインピーダンスを有する。従って、蓄電装置4に掛かる電圧が、例えば歯部の数より少ない数の磁極部を有する場合と比べ、減少する。このため、クランク軸15の上限回転速度は、例えば12Vの場合と比べて高い値に設定することができる。このため、永久磁石式モータジェネレータ20において始動時のトルクを増大するため、電気抵抗の小さい太い巻線を採用することができる。
【0114】
また、永久磁石式モータジェネレータ20では、ステータ巻線Wの温度が潤滑オイルの温度よりも高くならない又は高くなり難いため、永久磁石式モータジェネレータ20が潤滑オイルと接触するように配置されても、潤滑オイルの蒸発を抑制できる。従って、潤滑オイルの冷却機構の大型化を抑制乃至回避できる。
【0115】
ロータ30には、周方向に間隔を空けて前記ロータに設けられる複数の被検出部38が設けられている。複数の被検出部38は、ロータ30の回転位置を検出させるため設けられている。被検出部38によって、ロータ30及びクランク軸15の回転位置を精密に検出することができる。
被検出部38は、ロータ30の外面に設けられている。複数の被検出部38は、磁気作用によって検出される。複数の被検出部38は、周方向に間隔を空けてロータ30の外面に設けられている。本実施形態において、複数の被検出部38は、周方向に間隔を空けてロータ30の外周面に設けられている。
【0116】
ロータ位置検出装置50は、ロータ30の位置を検出する。ロータ位置検出装置50は、複数の被検出部38と対向する位置に設けられている。つまり、ロータ位置検出装置50は、複数の被検出部38がロータ位置検出装置50と順次対向するような位置に配置されている。ロータ位置検出装置50は、ロータ30の回転に伴い被検出部38が通過する経路に対向している。ロータ位置検出装置50は、ステータ40とは離れた位置に配置されている。本実施形態において、ロータ位置検出装置50は、クランク軸15の径方向においてロータ位置検出装置50とステータ40及びステータ巻線Wとの間にロータ30のバックヨーク部34及び永久磁石部37が位置するように配置されている。ロータ位置検出装置50は、スタータモータSGの径方向における、ロータ30よりも外側に配置されており、ロータ30の外周面に向いている。
【0117】
ロータ位置検出装置50は、検出用巻線を有している。検出用巻線51は、ステータ40が有するステータ巻線Wとは別に設けられた巻線である。ステータ巻線Wには、スタータモータSGのロータ30を電磁力によって駆動する電流が供給されるのに対し、検出用巻線51には、スタータモータSGのロータ30を駆動する電流が供給されない。
ロータ位置検出装置50は、被検出部38を電磁気的に検出するので、例えばホールICと比べて配置の自由度が高い。エンジンユニットEUを小型化することができる。
【0118】
[第2の適用例]
図8は、異なる種類の第2蓄電部42を有する第2の適用例の充電時における電圧変化の概略を示すチャートである。
図8に示される第2の適用例では、第2蓄電部42としてキャパシタが想定されている。なお、第1蓄電部41は、図3に示す例と同じバッテリである。
【0119】
キャパシタは、化学反応によらず静電気力を利用してイオンといった電荷を蓄える素子である。このため、キャパシタの電圧は、充電量にほぼ比例する。例えば、キャパシタの放電に従いキャパシタの電圧は低下する。
キャパシタの容量は、一般的に、等しい容積を有するバッテリよりも小さい容量を有する。また、キャパシタは、化学反応によらず電荷を蓄えるため、等しい容積を有するバッテリよりも大きな最大充電電流を有する。このため、キャパシタの最大充電レートは、バッテリよりも高い。
図8では、キャパシタである第2蓄電部42で充電量が放電によってほぼ0%となった状態(時刻0)から、充電が開始した場合における電圧変化の概略を示す。
時刻0で、充電量がほぼ0%である第2蓄電部42の第2電圧V2bは、ほぼ0Vである。
第2蓄電部42は、大きい最大充電レートを有するので、第2蓄電部42の第2電圧V2bは、急速に上昇する。第2蓄電部42は、第1蓄電部41と比べて急速に充電される。第2蓄電部42の第2電圧V2bが上限電圧に達すると、第2電圧V2bは、電流維持回路43によって上限電圧に制御される。図8の例では約6Vに維持される。第2蓄電部42は、第2蓄電部42の第2電圧V2bが上限電圧に達するまで、第2電圧V2bが上限電圧に達する後よりも急速に充電される。急速な充電は、充電速度、即ち単位時間あたりの充電量が大きい充電である。図8に示す例において、第2蓄電部42は、時刻t3よりも前の期間で、時刻t3よりも後の期間に比べ大きな充電速度で充電される。これに対し、第1蓄電部41は、時刻t3よりも前の期間で、時刻t3よりも後に比べ小さな充電速度で充電される。第1蓄電部41は、時刻t3よりも後の期間で電流維持回路43からの電流により、大きな充電速度で充電される。
【0120】
蓄電装置4の電圧VTbは、第1蓄電部41の第1電圧V1bと第2蓄電部42の第2電圧V2bとの合計である。充電開始から、蓄電装置4の電圧VTbが例えば充電電圧の約95%である17.5Vに到達するまでの時間t3は、例えば第2蓄電部無しに第1蓄電部41の規模が単純に1.5倍となった場合における蓄電装置4の電圧VTb’が17.5Vに到達するまでの時間t4よりも短い。
【0121】
図9は、図1に示す蓄電装置4のバリエーションの例を示す図である。
【0122】
図9の(A)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としてのバッテリとを備える。蓄電装置4には、電流維持回路43が設けられている。
第2蓄電部42としてのバッテリの最大充電レートは、第1蓄電部41としてのバッテリの最大充電レートの2倍より大きい。第2蓄電部42としてのバッテリの最大定格電圧は、第1蓄電部41としてのバッテリの最大定格電圧より小さい。第2蓄電部42としてのバッテリの上限電圧は、第1蓄電部41としてのバッテリの最大定格電圧より小さい。第2蓄電部42としてのバッテリの上限電圧は、第1蓄電部41としてのバッテリの公称電圧よりも小さい。
第1蓄電部41としてのバッテリの公称電圧は、例えば12Vである。第2蓄電部42としてのバッテリの公称電圧は、例えば6Vである。第2蓄電部42としてのバッテリの上限電圧は、例えば6Vである。但し、第1蓄電部41と第2蓄電部42の具体的な電圧の組合せは特に限られず、例えば8Vと6Vの組合せ、例えば10Vと8Vの組合せ、又は、11Vと8Vの組合せ、又は、12Vと2.5Vの組合せでもよい。
【0123】
図9の(B)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としての1個のキャパシタとを備える。蓄電装置4には、電流維持回路43が設けられている。第2蓄電部42としての1個のキャパシタに掛かる最大電圧は、電流維持回路43に設定される上限電圧である。電流維持回路43の上限電圧は、キャパシタの耐圧及び蓄電装置4の最大定格電圧に応じて設定される。電流維持回路43に設定される上限電圧は、例えば6Vである。但し、上限電圧は、特に限られず、キャパシタの耐圧及び蓄電装置4に応じて2.5V又は8V又は10Vでもよい。
【0124】
図9の(C)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としての2個のキャパシタとを備える。これによって、電流維持回路43の上限電圧として、1つのキャパシタの耐圧よりも大きな電圧を設定することができる。また、第2蓄電部42が1つのキャパシタの耐圧よりも大きな電圧を入力及び出力することができる。
【0125】
図9の(D)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としての3個のキャパシタとを備える。これによって、電流維持回路43の上限電圧として、1つのキャパシタの耐圧の2倍よりも大きな電圧を設定することができる。また、第2蓄電部42が1つのキャパシタの耐圧の2倍よりも大きな電圧を入力及び出力することができる。
【0126】
図9の(E)に示す例の蓄電装置4は、図9の(B)に示す例に対し、さらに並列キャパシタ部44を備える。並列キャパシタ部44は、第1蓄電部41と並列に接続されている。並列キャパシタ部44は、1個のキャパシタを備える。この構成は、1個のキャパシタの耐圧が第1蓄電部41としてのバッテリよりも大きい場合に好適である。
キャパシタは、一般的に、同じ電力を放電するバッテリよりも短い期間で電力を供給することができる。キャパシタの内部抵抗は、一般的にバッテリの内部抵抗よりも小さい。また、キャパシタは、電圧に実質的に比例した電力(電荷)を蓄電する。キャパシタは、一般的に電圧に比例する電力を放電することができる。
従って、例えばエンジン始動によって第1蓄電部41と並列キャパシタ部44の電力が消費された後、第1蓄電部41から並列キャパシタ部44に電圧が供給され得る。即ち並列キャパシタ部44が、第1蓄電部41の電力で充電できる。次のエンジン始動で、第1蓄電部41が、始動に求められる電力を単独で供給できない状況でも、並列キャパシタ部44が、始動に求められる電力を供給できる可能性が高い。
【0127】
図9の(F)に示す例の蓄電装置4では、図9の(C)に示す例に対し、並列キャパシタ部44が付加されている。
図9の(F)に示す例のように、第1蓄電部41が有するキャパシタの数と、並列キャパシタ部44が有するキャパシタの数とは異なってもよい。第1蓄電部41が有するキャパシタの数と、並列キャパシタ部44が有するキャパシタの数とは、電流維持回路43の上限電圧及び第1蓄電部41としてのバッテリの最大定格電圧に応じて選択することが可能である。図9の(F)に示す例の蓄電装置4では、並列キャパシタ部44が4個のキャパシタを備えている。
【0128】
図9の(G)に示す例の蓄電装置4では、図9の(D)に示す例に対し、並列キャパシタ部44が付加されている。図9の(G)に示す例の蓄電装置4では、並列キャパシタ部44が3個のキャパシタを備えている。
【0129】
バッテリの数及びキャパシタの数は、図9の(A)から(G)に示す数に限られない。
例えば、図7の(G)に示す例の蓄電装置4に対し、並列キャパシタ部44が6個のキャパシタを備えていてもよい。第1蓄電部41を構成するキャパシタと、並列キャパシタ部44を構成するキャパシタの最大定格電圧のバランスが保ちやすい。
また更に、蓄電装置4に対し、第1蓄電部41は、例えば、互いに並列接続された2組のキャパシタの組を備えてもよい。キャパシタの組は、例えば、直列接続された3個のキャパシタで構成される。この場合、第1蓄電部41の容量が増大する。また例えば、更に、並列キャパシタ部44が6個のキャパシタを備えていてもよい。
並列キャパシタ部44が有するキャパシタと第2蓄電部42が有するキャパシタは同種類である。例えば最大定格電圧及び静電容量が実質的に等しいキャパシタは同種類のキャパシタである。例えば電圧及び静電容量の公称値が等しいキャパシタは同種類のキャパシタである。
但し、並列キャパシタ部44が有するキャパシタと第2蓄電部42が有するキャパシタとは互いに異なる種類でもよい。
【0130】
図10は、図1に示す鞍乗型車両の電気構成のバリエーションを示すブロック図である。
図10に示す例では、電動補機Lが、第2蓄電部42から電力供給を受けること無しに第1蓄電部41から電力供給を受ける。
これによって、第1蓄電部41に蓄えられた電力を、永久磁石式モータジェネレータ20の駆動により集中的に供給することができる。例えば、エンジン10の始動時に、より長い期間永久磁石式モータジェネレータ20を駆動することができる。
また、電動補機L又はその一部として、第1蓄電部41及び第2蓄電部42の最大合計電圧よりも小さい定格電圧を有する装置を備えることができる。
【0131】
なお、図10に示す例におけるメインリレー75aは、18V系統電圧と12V系統電圧の双方に対応した2回路タイプである。ただし、リレーは特に限られず、例えば独立した2つのリレーであってもよい。また、電動補機Lのみならず、例えば制御装置60の一部の回路が、電動補機Lと同様に、第2蓄電部42から電力供給を受けること無しに第1蓄電部41から電力供給を受けるように構成されてもよい。
【0132】
また、鞍乗型車両は、永久磁石式モータジェネレータ20とは異なるスタータモータを備えてもよい。即ち、鞍乗型車両は、永久磁石式モータジェネレータ20と、スタータモータとを備えてもよい。この場合、スタータモータは、電気的には、図10の例における電動補機Lの位置に設けられる。この場合、スタータモータは、スタータスイッチ6と連動するスイッチを介して、第1蓄電部41から電力の供給を受ける。この場合、永久磁石式モータジェネレータ20は、スタータモータによるエンジン始動のアシストを行なう。つまり、スタータモータが電力の供給を受けてクランク軸15を駆動する期間の少なくとも一部は、永久磁石式モータジェネレータ20が電力の供給を受けてクランク軸15を駆動する期間の少なくとも一部と重なる。
つまり、スタータモータは、第1蓄電部41から例えば12Vの電圧の供給を受ける。永久磁石式モータジェネレータ20は、直列接続された第1蓄電部41及び第2蓄電部42から電力の供給を受ける。つまり、永久磁石式モータジェネレータ20は、例えば12Vより大きな電圧の供給を受ける。
【0133】
但し、鞍乗型車両のバリエーションにおけるスタータモータの電力供給経路は、上記の説明の構成に限られない。例えば、スタータモータは、永久磁石式モータジェネレータ20と同じく、直列接続された第1蓄電部41及び第2蓄電部42から電力の供給を受けてもよい。
また、例えば、電源経路の切替部がさらに備えられることで、例えば、第1蓄電部41の電圧が基準よりも大きい場合に、スタータモータが第1蓄電部41から電力の供給を受け、そして、第1蓄電部41の電圧が基準よりも小さい場合に、直列接続された第1蓄電部41及び第2蓄電部42から電力の供給を受けてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 鞍乗型車両
3a,3b 車輪
4 蓄電装置
41 第1蓄電部
42 第2蓄電部
43 電流維持回路
10 エンジン
15 クランク軸
20 永久磁石式モータジェネレータ
21 インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10