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特許7235902正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子
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  • 特許-正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/60 20230101AFI20230301BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230301BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20230301BHJP
   C07D 491/048 20060101ALI20230301BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20230301BHJP
   C07C 211/61 20060101ALI20230301BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230301BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230301BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20230301BHJP
【FI】
H10K85/60
H05B33/14 A
C07D307/91 CSP
C07D491/048
C07D333/76
C07C211/61
C09K11/06 690
H05B33/22 D
H10K50/15
H10K101:30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022025053
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191220
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520146581
【氏名又は名称】ビーピーシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】キム,キュソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ナムチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,シヒョン
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/225071(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287069(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0067968(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第107868090(CN,A)
【文献】特表2022-530840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/15
H10K 50/00
C07D 307/91
C07D 491/048
C07D 333/76
C07C 211/61
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で示されることを特徴とする正孔輸送化合物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
一対の電極の間に正孔輸送層を含む有機発光素子であって、
前記正孔輸送層が、請求項1に記載の正孔輸送化合物を含むことを特徴とする有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子に関し、より詳しくは、スターバースト(starburst)形状の構造を基に、熱的及び形態的安定性を確保し、高い正孔輸送特性を有し、イオン化電位を低減して正孔輸送能力を向上させ、高いガラス転移温度による長時間の寿命、及び低い駆動電圧を有する正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(electroluminescent device: EL素子)は、自発光型表示素子であり、視野角が広く、コントラストに優れているだけでなく、応答時間が早いというメリットを有している。
【0003】
EL素子は、発光層(emitting layer)形成用材料によって、無機EL素子と有機EL素子に分けられる。ここで、有機EL素子は、無機EL素子と比較して、輝度、駆動電圧、及び応答速度特性に優れ、多色化が可能であるというメリットを有している。
【0004】
一般の有機EL素子は、基板上にアノードが形成されており、このアノード上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及びカソードが順次形成されている構造を有している。ここで、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層は、有機化合物からなる有機薄膜である。
【0005】
上述したような構造を有する有機EL素子の駆動原理は、以下の通りである。前記アノード及びカソードの間に電圧を与えると、アノードから注入された正孔は、正孔輸送層を介して発光層へ移動する。一方、電子は、カソードから電子輸送層を介して発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して、エキシトン(exiton)を生成する。このエキシトンが励起状態から基底状態に変化し、これにより、発光層の分子が発光することで、画像が形成される。発光材料は、その発光メカニズムによって、一重項状態のエキシトンを用いる蛍光材料と、三重項状態を用いる燐光材料とに分けられる。
【0006】
現在までこのような有機発光素子に用いられる正孔輸送材料には、カルバゾール骨格を有するアミン誘導体が多く研究されているが、より高い駆動電圧、低い効率、及び短い寿命のため、実用化には多くの困難さがあった。
【0007】
そこで、優れた特性を有する物質を用いて、低電圧駆動、高輝度、及び長寿命を有する有機発光素子を開発しようという努力が持続されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1631507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような問題点を解決するため、本発明は、スターバースト形状の構造を基に、熱的及び形態的安定性を確保し、高い正孔輸送特性を有し、イオン化電位を低減して正孔輸送能力を向上させ、高いガラス転移温度による長時間の寿命、及び低い駆動電圧を有する正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で示される正孔輸送化合物を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、前記R1及びR2はそれぞれ、独立して、フルオレンアミン、ジフェニルアミン、フェニル-ベンゾフランアミン誘導体であり、前記R1及びR2の少なくとも1つは、フルオレンアミン誘導体を含む。
【0013】
前記のような課題を解決するため、本発明は、下記式で示される正孔輸送化合物を提供する。
【0014】
【化2】
【0015】
前記のような課題を解決するため、本発明は、下記化学式2で示される正孔輸送化合物を提供する。
【0016】
【化3】
【0017】
式中、前記R3及びR4はそれぞれ、独立して、フルオレンアミン、ジフェニルアミン、フェニル-ベンゾフランアミン誘導体であり、前記R3及びR4の少なくとも1つは、フルオレンアミン誘導体を含む。
【0018】
前記のような課題を解決するため、本発明は、下記式に示される正孔輸送化合物を提供する。
【0019】
【化4】
【0020】
前記のような課題を解決するため、本発明は、下記化学式3で示される正孔輸送化合物を提供する。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、前記R5及びR6はそれぞれ、ベンゾフロカルバゾール又はスピロ基誘導体であり、前記R5及びR6の少なくとも1つは、ベンゾフロカルバゾールを含む。
【0023】
前記のような課題を解決するため、本発明は、下記式で示される正孔輸送化合物を提供する。
【0024】
【化6】
【0025】
前記のような課題を解決するため、本発明は、下記式のいずれかで示される正孔輸送化合物を提供する。
【0026】
【化7】
【0027】
前記のような課題を解決するため、本発明は、一対の電極の間に正孔輸送層を含む有機発光素子であって、前記の正孔輸送層が、前記化学式1、化学式2、化学式3、もしくは前記式のいずれかによる正孔輸送化合物を含むことを特徴とする有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明による正孔輸送化合物は、高い正孔輸送特性を有し、イオン化電位を低減して正孔輸送能力を向上させ、一般のOLED素子の他の層と高い互換性を有し、高いガラス転移温度、高い正孔移動度、及び長時間の寿命を有する。
【0029】
また、本発明による正孔輸送化合物は、スターバースト形状の構造を有しており、熱的及び形態的安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施例による有機発光素子の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0032】
本発明の好適な実施例を添付の図面により詳細に説明すると、以下の通りである。本発明の詳細な説明に先立ち、後述する本明細書及び請求の範囲で使用している用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解析してはいけない。そこで、本明細書に記載された実施例と図面に示される構成は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点において、これらに代わる様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。
【0033】
正孔輸送層に用いられる素材もしくは化合物は、OLED素子にて発光材料の1つとしての役割を果たす。
【0034】
具体的に、正孔輸送層は、正極から正孔注入層を介して伝達された正孔を、より円滑に発光層へ移動させる機能を果たすと共に、負極から伝達された電子を発光層に束縛する機能を果たす。
【0035】
一方、正孔輸送層素材は、OLED素子の性能に大きな影響を与え、素材をデザインし合成するかによって、全体的なOLED素子の性能が大きく変わる。
【0036】
正孔輸送層の基本要件は、高い正孔移動度である。このような特性を示すためには、正孔注入層と発光層の間に位置する仕事関数を有するべきであり、電子を発光層に束縛するために、低いLUMO値を要し、薄膜を形成したとき、結晶性が現れない無定形の特性を有するのが望ましい。
【0037】
また、正孔輸送層は、物理的にも高い熱安定性を有するため、高いガラス転移温度を有し、可視光領域では、可視光を通過できるように、フィルムが可視光領域で投光性を有するべきである。
【0038】
一方、正孔輸送層の自体の物性だけでなく、正孔注入層、発光層、及び電極層が結合した形態でも高い互換性を有し、OLED素子の全体的な効率及び寿命が一定水準以上を維持しなければならない。
【0039】
前記のような要件を満たすために、本発明の正孔輸送化合物を導出している。
【0040】
具体的には、本発明による正孔輸送化合物は、化合物全体に対する分子立体性を付与することになり、全体構造が安定性を具現できるスターバースト形状の構造を有することを特徴とする。構造的には、スピロ基誘導体を母核構造とし、様々な置換基を導入して、熱的及び形態的安定性を有する化合物を特徴とする。
【0041】
一方、本発明による正孔輸送化合物は、強固な構造を有し、優れた電荷キャリア移動度及び低いイオン化電位を有するフルオレンアミン誘導体、ジフェニルアミン誘導体、ベンゾフロカルバゾール誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、もしくは、フェニル-ベンゾフランアミン誘導体は、スピロ基を結合した構造をより強固にして、高いガラス転移温度を得られるようにし、また、正孔移動度を大幅改善することができる。
【0042】
具体的に、本発明による正孔輸送化合物は、下記3つの化学式(順に化学式1、2、3とする)の構造を有する。
【0043】
【化8】
【0044】
式中、前記R1及びR2はそれぞれ、独立して、フルオレンアミン、ジフェニルアミン、フェニル-ベンゾフランアミン誘導体であり、前記R1及びR2の少なくとも1つは、フルオレンアミン誘導体を含む。
【0045】
【化9】
【0046】
式中、前記R3及びR4はそれぞれ、独立して、フルオレンアミン、ジフェニルアミン、フェニル-ベンゾフランアミン誘導体であり、前記R3及びR4の少なくとも1つは、フルオレンアミン誘導体を含む。
【0047】
【化10】
【0048】
式中、前記R5及びR6はそれぞれ、ベンゾフロカルバゾール、もしくはスピロ基誘導体であり、前記R5及びR6の少なくとも1つは、ベンゾフロカルバゾールを含む。
【0049】
また、本発明による正孔輸送化合物は、下記化学式のいずれか1つに示される構造を有する。
【0050】
【化11】
【0051】
前記化学式の構造を有する本願発明による化合物は、正孔輸送において有利なHOMOエネルギーレベルを有し、また、高いLUMOエネルギーレベルを有することで、電子の移動を遮断することができる。
【0052】
従って、前記化学式による構造を有する化合物は、全体的な正孔輸送特性が、一般に正孔輸送層として用いられるTAPC、NPB、BPBPAよりも優れており、高いエネルギー効率を有し、適正なガラス転移温度と共に、一般のOLED素子での互換性や長寿命を有することで、全体的な安定性においても優れている。また、前記化学式による構造を有する化合物は、スピロ基誘導体を母核とするスターバースト形状の構造を有しているので、熱的及び形態的安定性を確保することができる。
【0053】
また、本願発明の実施例による正孔輸送化合物は、正孔輸送層に用いたれる化合物であって、正孔輸送層は、正極から正孔輸送層を介して伝達された正孔を、より円滑に発光層へ移動させ、負極から伝達されてきた電子を発光層に束縛する機能まで果たす層である。
【0054】
正孔輸送層(HTL)の基本的な要件は、高い正孔移動度を有することであり、そこで、正極から発光層(EML)への効果的な正孔の注入が行われるべきである。
【0055】
このような素材としてよく知られている物質は、アミン構造を有した芳香族アミン系列の素材で、素材の蒸着過程で結晶化が生じないフィルムを形成し、高い熱安定性を有し、且つ、正極との接触性質・平坦度に優れており、可視光線領域で薄膜を形成したとき、透明な性質を有するべきである。
【0056】
本発明は、スピロ基誘導体の母核構造に、少なくとも1つのフルオレンアミン、ジフェニルアミン、ベンゾフロカルバゾール、ベンゾチオフェン、もしくはフェニル-ベンゾフランアミンを結合することで、熱的及び形態的安定性を有している。具体的に、本発明の一実施例でのように、スピロ基母核の周囲に、フルオレンアミン、ジフェニルアミン、もしくはフェニル-ベンゾフランアミンが結合してスターバースト形状を有するとき、熱的及び形態的安定性を有することになり、また、正孔移動度の側面でも有利な点を有することができる。
【0057】
本発明の前記実施例による化合物は、下記の化学式により示される。
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
このような構造では、母核周囲で少なくとも1つのフルオレンアミン誘導体、ジフェニルアミン、ベンゾフロカルバゾール、ベンゾチオフェン、もしくはフェニル-ベンゾフランアミンを有することで、最長有効共役(LONGESTEFFECTIVE CONJUGATION)を極大化する構造を有する。
【0062】
スピロ基を含む母核周囲で少なくともいずれか1つが、フルオレンアミン、ジフェニルアミン、ベンゾフロカルバゾール、フェニル-ベンゾフランアミン、もしくはベンゾチオフェンとなって、スターバースト形状の分子構造を有するとき、最長有効共役の側面では、有利な点を有することができる。
【0063】
有機発光素子
以下、本発明による正孔輸送化合物を採用した有機発光素子の構造及び製造方法について説明する。
【0064】
本発明による有機発光素子は、通常の発光素子の構造を採ることができ、必要に応じて、構造が変わることがある。基本的に有機発光素子は、第1電極(アノード電極)と第2電極(カソード電極)の間に、有機膜(発光層)を含む構造を有し、正孔注入層、正孔輸送層、正孔抑制層、電子注入層、又は電子輸送層をさらに含む。本発明の発光素子の構造を説明するために、図1を参照する。
【0065】
図1に示しているように、本発明による有機発光素子は、アノード電極20とカソード電極80の間に発光層50を含む構造であり、アノード電極20と発光層50の間に、正孔注入層30と正孔輸送層40を含み、また、発光層50とカソード電極80の間に、電子輸送層60と電子注入層70を含む。
【0066】
一方、本発明の一実施例による図1の有機発光素子は、以下のような工程により製造され、これは一例に過ぎず、この方法に限定されるものではない。
【0067】
まず、基板10上に、アノード電極用物質をコートして、アノード電極20を形成する。ここで、基板10としては、当該分野において一般に用いられる基板が使用可能であり、特に、透明性、表面平滑性、取扱容易性、及び防水性に優れているガラス基板又は透明プラスチック基板が望ましい。また、前記基板上に形成されたアノード電極用物質としては、透明で伝導に優れている酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などが使用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記アノード電極20上に、正孔注入層(HIL)30を選択的に形成する。この際、正孔注入層は、真空蒸着又はスピンコートのような通常の方法で形成する。正孔注入層用の物質としては、特に制限されないが、CuPc(銅フタロシアニン)又はIDE406(Idemitsu Kosan社)が使用可能である。
【0069】
ついで、前記正孔注入層30上に、前記正孔輸送層(HTL)40を、真空蒸着又はスピンコートのような通常の方法で形成する。前記正孔輸送層用物質としては、一般に、N、N’-ジフェニル-N、N’-ビス(1-ナフチル)-1、1’-ビフェニル-4、4’-ジアミン(NPB)、N、N’-ビス(3-メチルフェニル)-N、N’-ジフェニル-[1-ビフェニル]-4、4’-ジアミン(TPD)、N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニルベンジジン、N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン:α-NPD)などが使用可能であるが、本発明の実施例では、前述した化学式による正孔輸送化合物を含む。
【0070】
ついで、正孔輸送層40上に、発光層(EML)50を形成する。前記発光層形成材料としては、燐光ホスト用化合物より選ばれた1種以上を、発光ホスト物質として含めることができ、単層又は2層以上の多層構造を有する。この際、化学式1の化合物は、単独で含まれるか、当業界で公知されたその他の化合物、例えば、青色発光ドーパント(FIrppy又はFIrpicなどのイリジウム化合物)などと混合して含まれ得る。前記発光層に燐光ホスト用化合物は、発光層を構成する物質総重量に基づき、1~95重量%の範囲内で含まれる。
【0071】
前記燐光ホスト用化合物は、真空蒸着法で形成され、また、スピンコートのような湿式工程を通じて蒸着可能であり、レーザ熱転写法(LITI)も利用可能である。
【0072】
更に、前記発光層50上には、発光物質で形成されるエキシトンが電子輸送層へ移動することを防止するか、正孔が電子輸送層60へ移動することを防止する正孔抑制層(HBL)が形成され、正孔抑制層用物質としては特に制限されないが、フェナントロリン系化合物(例えば、BCP)などが使用可能である。これは、真空蒸着法又はスピンコート法により形成される。
【0073】
また、発光層50上に、電子輸送層(ETL)60が形成され、真空蒸着法又はスピンコート法が利用される。電子輸送層用の材料としては、特に制限されないが、TBPI、アルミニウム錯体(例えば、Alq3(トリス(8-キノリノラート)-アルミニウム))が使用される。
【0074】
前記電子輸送層60上に、電子注入層(EIL)70が、真空蒸着又はスピンコートのような方法を用いて形成され、電子注入層70用の材料としては、特に制限されないが、LiF、NaCl、CsFなどの物質が利用される。
【0075】
ついで、電子注入層70上に、カソード電極80が真空蒸着により形成されることで、発光素子が完成する。ここで、カソード用金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などが用いられる。
【0076】
なお、本発明による有機発光素子は、図1に示しているような積層構造を有し、必要に応じて、1層又は2層の中間層、例えば、正孔抑制層などを更に形成することも可能である。なお、発光素子の各層の厚さは、当該分野において一般的に使用される範囲で、必要に応じて決められる。
【0077】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0078】
本発明による正孔輸送化合物の合成例
【0079】
合成例1
【0080】
【化15】
【0081】
N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミンの合成
9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン21.55g(85.80mmol)と、ソディウムtert-ブトキシド12.37g(128.70mmol)を、トルエン300mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、4-ブロモ-1,1’-ビフェニル20.0g(85.80mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.49g(0.86mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン1.04mL(2.15mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:2混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン16.2g(52.2%)を得た。
【0082】
合成例2
【0083】
【化16】
【0084】
N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-4-アミンの合成
N-(1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン8.05g(22.26mmol)と、ソジウムtert-ブトキシド2.92g(30.36mmol)を、トルエン80mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、4-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン8.0g(20.24mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.12g(0.20mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.25mL(0.51mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-4-アミン7.2g(52.6%)を得た。
【0085】
合成例3
【0086】
【化17】
【0087】
N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-2-アミンの合成
N-(1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン8.05g(20.24mmol)と、ソジウムtert-ブトキシド2.92g(30.36mmol)を、トルエン80mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、4-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン8.0g(20.24mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.12g(0.20mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.25mL(0.51mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-2-アミン8.1g(59.2%)を得た。
【0088】
合成例4
【0089】
【化18】
【0090】
5,5-(5-ブロモ-1,3-フェニレン)ビス(5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾールの合成
5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール16.35g(63.53mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド9.16g(95.30mmol)を、トルエン100mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、1,3,5-トリブロモベンゼン10.0g(31.77mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.18g(0.32mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.39mL(0.79mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:7混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物5,5-(5-ブロモ-1,3-フェニレン)ビス(5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール2.9g(13.7%)を得た。
【0091】
合成例5
【0092】
【化19】
【0093】
5-5’-(5-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3-フェニレン)ビス(5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾールの合成
5,5-(5-ブロモ-1,3-フェニレン)ビス(5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール2.8g(4.19mmol)、9,9’-スピロビフルオレン-2-イルボロン酸1.81g(5.03mmol)、そして、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.12g(011mmol)を、テトラヒドロフラン50mLに加えて溶かした後、30分間攪拌した。反応溶液に、2N-炭酸カリウム水溶液50mLを加えた後、80℃で、18時間の間、激しく撹拌した。反応終結を確認した後、反応溶液を減圧蒸留して得られた残渣に、ジクロロメタン500mLを加え、水で数回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで処理した後、ろ過する。有機層を減圧濃縮して得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:5混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物5,5’-(5-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3-フェニレン)ビス(5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール3.2g(84.4%)を得た。
【0094】
合成例6
【0095】
【化20】
【0096】
5-(3,5-ジブロモフェニル)-5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾールの合成
5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール8.17g(31.77mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド4.58g(47.65mmol)を、トルエン100mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、1,3,5-トリブロモベンゼン10.0g(31.77mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.18g(0.32mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.39mL(0.79mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:7混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物5-(3,5-ジブロモフェニル)-5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール3.0g(19.2%)を得た。
【0097】
合成例7
【0098】
【化21】
【0099】
5-(3-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-5-(9,9’-スピロビフルオレン-3-イル)フェニル)-5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾールの合成
5-(3,5-ジブロモフェニル)-5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール2.9g(5.90mmol)、9,9’-スピロビフルオレン-2-イルボロン酸2.55g(7.09mmol)、そして、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.17g(0.15mmol)を、テトラヒドロフラン50mLに加えて溶かした後、30分間攪拌した。反応溶液に、2N-炭酸カリウム水溶液50mLを加えた後、80℃で、18時間の間、激しく撹拌した。反応終結を確認した後、反応溶液を減圧蒸留して得られた残渣に、ジクロロメタン500mLを加え、水で数回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで処理した後、ろ過する。有機層を減圧濃縮して得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物5-(3-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-5-(9,9’-スピロビフルオレン-3-イル)フェニル)-5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール4.9g(86.2%)を得た。
【0100】
合成例8
【0101】
【化22】
【0102】
N-(3-ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミンの合成
9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン23.31g(111.39mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド13.38g(139.24mmol)を、トルエン300mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、1-(3-ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]フラン30.0g(92.83mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.53g(0.93mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン1.13mL(2.32mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーし、目的の化合物N-(3-ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン37.6g(89.7%)を得た。
【0103】
合成例9
【0104】
【化23】
【0105】
N-(3-(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-4-アミンの合成
N-(3-ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン17.82g(39.47mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド4.74g(49.33mmol)を、トルエン200mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、4-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン13.0g(32.89mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.19g(0.33mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.40mL(0.82mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物N-(3-(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-4-アミン21.3g(84.5%)を得た。
【0106】
合成例10
【0107】
【化24】
【0108】
N-(3-(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9‘-スピロビフルオレン-2-アミンの合成
N-(3-ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン17.82g(39.47mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド4.74g(49.33mmol)を、トルエン200mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、2-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン13.0g(32.89mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.19g(0.33mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.40mL(0.82mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物N-(3-(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル)フェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン-2-アミン20.6g(81.8%)を得た。
【0109】
合成例11
【0110】
【化25】
【0111】
ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アミンの合成
[1,1’-ビフェニル]-4-アミン26.13g(154.44mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド18.55g(193.05mmol)を、トルエン300mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、4-ブロモ-1,1’-ビフェニル30.0g(128.70mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.74g(1.29mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン1.56mL(3.22mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認してから、シリカろ過後、常温に冷却させる。生成された結晶をろ過して、目的の化合物ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アミン25.3g(61.2%)を得た。
【0112】
合成例12
【0113】
【化26】
【0114】
2’-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレンの合成
2,7-ジブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン10.0g(28.40mmol)、9,9’-スピロビフルオレン-2-イルボロン酸12.28g(34.09mmol)、そして、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.82g(0.71mmol)を、テトラヒドロフラン150mLに加えて溶かした後、30分間攪拌した。反応溶液に、2N-炭酸カリウム水溶液150mLを加えた後、80℃で、18時間の間、激しく撹拌した。反応終結を確認した後、反応溶液を減圧蒸留して得られた残渣に、ジクロロメタン500mLを加え、水で数回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで処理した後、ろ過する。有機層を減圧濃縮して得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物2’-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン6.3g(37.7%)を得た。
【0115】
合成例13
【0116】
【化27】
【0117】
7-(9,9’-スピロフルオレン-2-イル)-N,N-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミンの合成
ジ([1’-ビフェニル]-4-イル)アミン3.94g(12.25mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド1.47g(15.32mmol)を、トルエン80mLに加え、30分間撹拌して溶かす。 これに、2’-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレン6.0g(10.21mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.06g(0.10mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.12mL(0.26mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:2混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物7-(9,9’-スピロフルオレン-2-イル)-N,N-ジ(1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン4.1g(48.5%)を得た。
【0118】
合成例14
【0119】
【化28】
【0120】
2-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-8-ブロモジベンゾ[b,d]チオフェンの合成
2,8-ジブロモジベンゾ[b,d]チオフェン10.0g(29.24mmol)、9,9’-スピロビフルオレン-2-イルボロン酸12.64g(35.08mmol)、そして、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.84g(0.73mmol)を、テトラヒドロホラン150mLに加えて溶かした後、30分間攪拌した。反応溶液に、2N-炭酸カリウム水溶液150mLを加えた後、80℃で、18時間の間、激しく撹拌した。反応終結を確認した後、反応溶液を減圧蒸留して得られた残渣に、ジクロロメタン500mLを加え、水で数回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで処理した後、ろ過する。有機層を減圧濃縮して得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:5混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物2-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-8-ブロモジベンゾ[b,d]チオフェン6.8g(40.3%)を得た。
【0121】
合成例15
【0122】
【化29】
【0123】
8-(9,9’-スピロフルオレン-2-イル)-N,N-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-アミンの合成
ジ(1,1’-ビフェニル)-4-イル)アミン4.34g(13.51mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド1.62g(16.88mmol)を、トルエン100mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、2-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-8-ブロモジベンゾ[b,d]チオフェン6.5g(11.26mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.06g(0.11mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.14mL(0.28mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物8-(9,9’-スピロフルオレン-2-イル)-N,N-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-アミン4.0g(43.4%)を得た。
【0124】
合成例16
【0125】
【化30】
【0126】
4-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-2-ブロモジベンゾ[b,d]フランの合成
2-ブロモ-4-ヨードジベンゾ[b,d]フラン10.0g(26.81mmol)、9,9’-スピロビフルオレン-2-イルボロン酸9.66g(26.81mmol)、そして、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.77g(0.67mmol)を、テトラヒドロフラン200mLに加えて溶かした後、30分間攪拌した。反応溶液に、2N-炭酸カリウム水溶液200mLを加えた後、80℃で、18時間の間、激しく撹拌した。反応終結を確認した後、反応溶液を減圧蒸留して得られた残渣に、ジクロロメタン500mLを加え、水で数回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで処理した後、ろ過する。有機層を減圧濃縮して得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:6混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物4-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-2-ブロモジベンゾ[b,d]フラン7.4g(49.2%)を得た。
【0127】
合成例17
【0128】
【化31】
【0129】
4-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-N,N-ジ([1,1’-ビフェニル-4-イル]ジベンゾ[b,d]フラン-2-アミンの合成
ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アミン4.81g(14.96mmol)と、ソジウム-tert-ブトキシド1.80g(18.70mmol)を、トルエン100mLに加え、30分間撹拌して溶かす。これに、4-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-2-ブロモジベンゾ[b,d]フラン7.0g(12.47mmol)を添加し、50℃で、1時間撹拌する。反応溶液に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.07g(0.12mmol)を、トリ-tert-ブチルホスフィン0.15mL(0.31mmol)で溶かした溶液を加えた後、100℃で、18時間反応する。反応終結を確認した後、常温に冷却し、シリカろ過後に余液を減圧蒸留する。得られた残渣をジクロロメタンとn-ヘキサン1:4混合溶液を溶離液としてシリカゲルクロマトグラフィーして、目的の化合物4-(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-N,N-ジ([1,1’-ビフェニル-4-イル]ジベンゾ[b,d]フラン-2-アミン5.5g(55.0%)を得た。
【0130】
前述した本発明の実施例による化合物は、通常の技術者が、前記合成例1乃至17を参照して合成することができるだろう。
【0131】
合成例2乃至17により合成された正孔輸送化合物(化合物1乃至9)自体の実験結果
前記合成例で製造された化合物1乃至9(合成例2乃至17)に対する代表的な物性を評価し、その結果を下記表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
前記表1に示しているように、本発明の実施例による正孔輸送化合物は、全般的に高いガラス転移温度を有し、正孔輸送に有利なHOMOエネルギーレベルを有していると共に、高いLUMOエネルギーレベルを有していることが確認できる。
【0134】
また、前記物質は、前述した合成例により、高い歩留まりで製造されるというメリットがある。
【0135】
合成例2乃至15により合成された正孔輸送化合物(化合物1乃至8)を適用した有機発光素子の実験結果
比較例
ITO基板は、発光面積が3mm×3mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。基板を真空チャンバーに装着した後、ベース圧力が1×10-6torrとなるようにした後、アノードITO上に、正孔輸送層として、BPBPA:3%p-dopant(10nm)/BPBPA(35nm)で成膜し、p-dopantは、novaled社のNDP-9を用いた。前記正孔輸送層上には、EBL層(10nm)、発光層としては、DPTTP1とドーパントであるIr(ppy)3をドーパントのドーピング濃度10%で30nmの厚さで成膜した。その上に、電子輸送層として、ZADNを真空蒸着して35nmの厚さで成膜し、電子注入層であるLiFを1.5nmの厚さで成膜した後、カソードであるAlを200nmの厚さで成膜し、有機発光素子を製造して、発光特性を評価し、電流、電圧、及び輝度の相対変化をリアルタイムで測定して素子の寿命を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0136】
前記p-dopantは、TCNQ、MoO3、NDP-2、NDP-9などが使用される。
【0137】
実施例
ITO基板は、発光面積が3mm×3mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。基板を真空チャンバーに装着した後、ベース圧力が1×10-6torrとなるようにした後、アノードITO上に正孔輸送層として、化合物1~8による物質:3%p-dopant(10nm)/化合物1~8による物質(35nm)で成膜し、p-dopantは、novaled社のNDP-9を用いた。前記正孔輸送層上にはEBL層(10nm)、発光層としては、DBTTP1とドーパントであるIr(ppy)3を、ドーパントのドーピング濃度10%で30nmの厚さで成膜した。その上に、電子輸送層としてZADNを真空蒸着して、35nmの厚さで成膜し、電子注入層であるLiFを1.5nmの厚さで成膜した後、カソードであるAlを200nmの厚さで成膜し、有機発光素子を製造して、発光特性を評価し、電流、電圧、及び輝度の相対変化をリアルタイムで測定して、素子の寿命を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0138】
このような素子の層構造をまとめると、以下の通りである。
比較例: ITO/Reference : 3% p-dopant (10nm)/Reference (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
実施例1: ITO/化合物1 : 3% p-dopant (10nm)/化合物1 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF(1.5nm)/Al (200nm)
実施例2: ITO/化合物2 : 3% p-dopant (10nm)/化合物2 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
3: ITO/化合物3 : 3% p-dopant (10nm)/化合物3 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
実施例4: ITO/化合物5 : 3% p-dopant (10nm)/化合物5 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
実施例5: ITO/化合物6 : 3% p-dopant (10nm)/化合物6 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
実施例6: ITO/化合物7 : 3% p-dopant (10nm)/化合物7 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
実施例7: ITO/化合物8 : 3% p-dopant (10nm)/化合物8 (35nm)/EBL (10nm)/GH : GD (30nm)/ETL (35nm)/LiF (1.5nm)/Al (200nm)
【0139】
【表2】
【0140】
表2に示しているように、本発明の一実施例による正孔輸送化合物は、通常的に商用化された物質であるBPBPA物質よりも正孔注入が容易なHOMOエネルギーレベルを有し、電子を遮断できる高いLUMOエネルギーレベルを有し、正孔輸送特性に優れており、有機発光素子の正孔輸送層に適用する際の高いエネルギー効率を有していることが確認できる。
【0141】
特に、本発明の実施例による正孔輸送化合物を用いた素子の場合、極めて低い駆動電圧を有していることを確認した。
【0142】
以上でのように図面と明細書において最適な実施例を開示している。本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明の精神から逸脱しない範囲内で、当該発明が属する技術分野における通常の知見を有する者により、様々な変更・修正が可能であり、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の請求範囲の技術思想により定められるべきである。
【符号の説明】
【0143】
10: 基板
20: アノード電極
30: 正孔注入層
40: 正孔輸送層
50: 発光層
60: 電子輸送層
70: 電子注入層
80: カソード電極
【要約】      (修正有)
【課題】スターバースト形状の構造を基に、熱的及び形態的安定性を確保し、高い正孔輸送特性を有し、イオン化電位を低減して正孔輸送能力を向上させ、高いガラス転移温度による長時間の寿命、及び低い駆動電圧を有する正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子を提供する。
【解決手段】下記式で示される正孔輸送化合物及びこれを含む有機発光素子。

【選択図】図1
図1