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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】シートパッド
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20230301BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20230301BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B29C39/26
B29C39/10
B29C44/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022031525
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2018035105の分割
【原出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2022066341
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-054928(JP,A)
【文献】特開2006-000416(JP,A)
【文献】特開2011-143746(JP,A)
【文献】特開2006-006349(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 39/00 - 39/44
B29C 44/00 - 44/60
A47C 7/00 - 7/74
A47C 27/00 - 27/22
A47C 31/00 - 31/12
B68G 1/00 - 99/00
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を備えるパッド本体が、前記凹部の内面を覆う補強用面材と一体に発泡成形されてなるシートパッドであって、
前記補強用面材には、前記凹部の奥部に配置される第1の開口と、前記第1の開口と前記凹部の入口との間で前記第1の開口寄りに配置されて前記第1の開口が開口する方向とは交差する方向に開口する第2の開口と、が設けられているシートパッド。
【請求項2】
エアバッグ装置が収容される凹部を備えるパッド本体が、前記凹部の内面を覆う補強用面材と一体に発泡成形されてなるシートパッドであって、
前記補強用面材には、前記凹部の奥部に配置される第1の開口と、前記第1の開口よりも前記凹部の入口側に配置されて前記第1の開口が開口する方向とは交差する方向に開口する第2の開口と、が設けられ、
前記第2の開口は、前記凹部のうち前記エアバッグ装置が配置される部分よりも奥側に配置されているシートパッド。
【請求項3】
凹部を備えるパッド本体が、前記凹部の内面を覆う補強用面材と一体に発泡成形されてなるシートパッドであって、
前記補強用面材には、前記凹部の奥部に配置される第1の開口と、前記第1の開口よりも前記凹部の入口側に配置されて前記第1の開口が開口する方向とは交差する方向に開口する第2の開口と、が設けられ、
前記第2の開口として、前記パッド本体のうち着座者を受ける部分に重なったものが含まれるシートパッド。
【請求項4】
凹部を備えるパッド本体が、前記凹部の内面を覆う補強用面材と一体に発泡成形されてなるシートパッドであって、
前記補強用面材には、前記凹部の奥部に配置される第1の開口と、前記第1の開口よりも前記凹部の入口側における該第1の開口の開口縁に配置されて前記第1の開口が開口する方向とは交差する方向に開口する第2の開口と、が設けられているシートパッド。
【請求項5】
凹部を備えるパッド本体が、前記凹部の内面を覆う補強用面材と一体に発泡成形されてなるシートパッドであって、
前記補強用面材には、前記凹部の奥部に配置される第1の開口と、前記第1の開口よりも前記凹部の入口側に配置されて前記第1の開口が開口する方向とは交差する方向に開口し、互いに対向する1対の第2の開口と、が設けられているシートパッド
【請求項6】
凹部を備えるパッド本体が、前記凹部の内面を覆う補強用面材と一体に発泡成形されてなるシートパッドであって、
前記補強用面材には、前記凹部の奥部に配置される第1の開口と、前記第1の開口よりも前記凹部の入口側に配置されて前記第1の開口が開口する方向とは交差する方向に開口する第2の開口と、が設けられ、
前記パッド本体の前記凹部の内面のうち前記第2の開口と重なる部分には、へこみが形成されているシートパッド。
【請求項7】
前記パッド本体において、前記第1の開口と重なる部分は、前記第2の開口と重なる部分よりも、薄肉になっている請求項1から6の何れか1の請求項に記載のシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のシートパッドの製造方法では、発泡成形型において、エアバッグ装置が収容される収容凹部を成形する成形突部を補強用面材の開口部に挿通し、該補強用面材を成形突部の外面に重ねて固定する。次いで、発泡成形型内で樹脂を発泡させることでパッド本体を成形すると共に、そのパッド本体に補強用面材を一体的に固定する。
【0003】
また、補強用面材を発泡成形型の内面に固定する方法としては、発泡成形型の内面にマグネットを設けると共に、このマグネットと吸着する磁性体を補強用面材に設けて、これら磁性体とマグネットの吸着によって補強用面材を発泡成形型に固定する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4541778号公報(段落[0026]~[0027]、図5図7図8
【文献】特開2001-252930号公報(段落[0019]、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エアバッグ装置を収容するシートパッドを製造する場合、補強用面材を発泡成形型に磁気吸着により固定する方法では、発泡してきた樹脂が補強用面材と発泡成形型の間に入り込むことを防ぐために、補強用面材の磁性体を開口部の近傍に配置する必要がある。そのため、エアバッグ装置が作動したときに、磁性体が飛散するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エアバッグ装置の作動時に磁性体を飛散し難くすることが可能なシートパッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた発明の第1態様は、エアバッグ装置を収容する収容凹部を備えたパッド本体と、前記収容凹部の内面に敷設される補強用面材と、を有し、前記パッド本体のうち前記補強用面材に設けられた開口部と重なる部分が、前記エアバッグ装置の作動時に開裂するシートパッドを発泡成形するための発泡成形型であって、前記収容凹部を成形する成形突部と、その成形突部の先端が前記開口部に挿通された状態で前記補強用面材を前記成形突部の外面に重ねて固定する固定手段と、を有し、前記固定手段は、前記成形突部の先端部に設けられて、前記補強用面材において前記開口部の近傍に形成された係合孔に係止する係止突部と、前記補強用面材のうち前記開口部から離れた部分に設けられた磁性体と磁気吸着するマグネットと、を有する、発泡成形型である。
【0008】
発明の第2態様は、前記成形突部は、前記発泡成形型の開閉方向に沿って突出し、前記係止突部のうち前記成形突部の基端側を向く面は、該基端側へ向かうにつれて徐々に前記係止突部の突出量を小さくする傾斜面となっている、第1態様に記載の発泡成形型である。
【0009】
発明の第3態様は、上型と下型と前記上型に宛がわれる中子とを有し、前記中子の外縁部には、前記上型に対して下側から間隔を空けて対向する外縁対向部が設けられ、前記成形突部は、前記外縁対向部から下側に突出し、前記マグネットには、前記外縁対向部のうち前記上型との対向面に配置されるものが含まれる、第1態様又は第2態様に記載の発泡成形型である。
【0010】
発明の第4態様は、第1態様から第3態様に記載の発泡成形型を用いるシートパッドの製造方法であって、前記補強用面材に、前記開口部の近傍を貫通する係合孔を形成しておき、前記補強用面材を前記成形突部に固定するにあたり、前記補強用面材の前記係合孔に前記発泡成形型の係止突部を係止させてから、前記補強用面材の前記磁性体と前記発泡成形型の前記マグネットと磁気吸着させる、シートパッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
[発明の第1態様、第4態様]
本態様では、補強用面材が発泡成形型に取り付けられる際、成形突部の先端部に設けられた係止突部が、補強用面材において開口部の近傍に形成された係合孔に係止する。また、発泡成形型に備えられたマグネットが、補強用面材のうち開口部から離れた部分に設けられた磁性体と磁気吸着する。これにより、シートパッドのうちエアバッグ装置によって開裂する部分の近くに配置される磁性体の数を減らすことが可能となり、エアバッグ装置が作動したときの磁性体の飛散が抑制される。
【0012】
また、発明の第4態様では、補強用面材の係合孔を係止突部に引っ掛けて、補強用面材に張力を持たせながら補強用面材の磁性体をマグネットに磁気吸着させることが可能となる。これにより、成形突部の外面に補強用面材を密着させることが可能となり、発泡樹脂原料が成形突部と補強用面材の間に入り込むことが抑制される。
【0013】
[発明の第2態様]
本態様では、係止突部のうち成形突部の基端側を向く面が、該基端側に向かうにつれて徐々に係止突部の突出量を小さくする傾斜面となっているので、シートパッドを発泡成形型からスムーズに外すことが可能となる。
【0014】
[発明の第3態様]
本態様では、マグネットが中子の外縁対向部のうち上型との対向面に配置される。これにより、補強用面材が中子の下側から側方を通って上側に巻き付けられることになるので、補強用面材と成形突部との密着性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シートパッドの斜視図
図2】シートパッドの平断面図
図3】(A)シートパッドの収容凹部周辺の拡大平断面図、(B)エアバッグ装置が作動したときのシートパッドの平断面図
図4】型開き状態の発泡成形型の斜視図
図5】型閉じ状態の発泡成形型の正断面図
図6】補強用面材が取り付けられる成形突部の正断面図
図7】発泡成形型が型閉じされたときの成形突部周辺の拡大正断面図
図8】パッド本体の発泡成形中における成形突部周辺の拡大正断面図
図9】発泡成形されたパッド本体の正断面図
図10】型開き状態の発泡成形型の上型及び中子とパッド本体の正断面図
図11】発泡成形型から外されるパッド本体の係止突部周辺の拡大正断面図
図12】他の実施形態に係る係止突部の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係るシートパッド10は、車両用シート90の背もたれ部92に用いられるバックパッドである。なお、背もたれ部92は、シートパッド10をカバー93で覆ってなる。
【0017】
図2に示されるように、シートパッド10は、発泡樹脂からなるパッド本体11と、パッド本体11の後側を向く面に一体化された補強用面材30と、を備えている。補強用面材30は、例えば、不織布によって構成されている。
【0018】
パッド本体11は、車両用シート90のバックフレーム(図示せず)を前側から覆うベース12と、ベース12の外縁部から後側に突出した後方突部13と、後方突部13の後端部から内側に張り出したフランジ部14と、からなる。詳細には、ベース12は、前側から見て、縦長の長方形状をなしている。後方突部13及びフランジ部14は、ベース12の上辺部と左右の側辺部とに沿って連続して形成されている。そして、ベース12、後方突部13及びフランジ部14によって囲まれた空間が、バックフレームの外縁部を受容する受容凹部15となっている。
【0019】
ベース12は、ベース12の左右中央側に配置されて着座者の背中を受け止めるメイン受け部12Aと、メイン受け部12Aの左右両側に配置された1対のサイド受け部12B,12Bと、を備えている。メイン受け部12Aは、前後方向で扁平に形成され、サイド受け部12Bは、メイン受け部12Aに対して前側に膨出するように形成されている。サイド受け部12Bの後面には、上下方向に延在するサイド溝16が形成されている。なお、後方突部13は、サイド溝16の溝側壁に連設され、サイド溝16は、上述の受容凹部15に連通している。そして、サイド溝16に、バックフレームの左右両側部が係合する。
【0020】
車両ドアに近い側のサイド受け部12B(図2の例では、右側のサイド受け部12B)に設けられたサイド溝16には、エアバッグ装置90を収容するための収容凹部20が形成されている。詳細には、エアバッグ装置90は、車両ドアに近い側のサイド受け部12Bと、後方突部13のうち該サイド受け部12Bから後側に突出する部分と、フランジ部14のうち該サイド受け部12Bの後側に配置される部分と、によって囲まれた空間に収容され、収容凹部20には、エアバッグ装置90の一部が収容されている。
【0021】
収容凹部20の内面には、前側を段付き状に幅狭にする段差部23が設けられている。収容凹部20のうち段差部23より後側の幅広部20Aは、エアバッグ装置90を受容する。収容凹部20のうち段差部23より前側の幅狭部20Bは、車両ドアに近い側に寄せて配置されている。具体的には、段差部23は、収容凹部20の内面のうち車両ドア側を向く面に形成されていて、幅狭部20Bは、幅広部20Aのうち車両ドアに近い側の部分から前側に延設されている。なお、図2の例では、収容凹部20を構成する凹部構成壁21のうち幅狭部20Bの前側に配置される前端壁部21Fは、凹部構成壁21の中で最も薄肉になっている。
【0022】
図2に示されるように、補強用面材30は、ベース12におけるメイン受け部12Aの後面及びサイド溝16の内面と、後方突部13及びフランジ部14のうち受容凹部15に臨む面(即ち、受容凹部15の内面)と、に敷設されている。補強用面材30は、1枚の不織布により構成されてもよいし、複数の不織布を繋ぎ合わせて構成されてもよい。
【0023】
図3(A)に示されるように、補強用面材30のうち収容凹部20の内面(即ち、凹部構成壁21の内面)に敷設された部分には、上下方向に直線状に延びる開口部31が形成されている。開口部31は、凹部構成壁21の前端壁部21Fに重ねられている。
【0024】
補強用面材30のうち開口部31の近傍(具体的には、開口部31の開口縁)には、係合孔32が貫通形成されている。係合孔32は、開口部31の延在方向に沿って並ぶように複数設けられている。また、補強用面材30のうち、開口部31から離れた部分には、複数の磁性体33が備えられている。即ち、磁性体33は、係合孔32よりも開口部31から離れた位置に配置されている。
【0025】
図3(B)に示されるように、エアバッグ装置90が作動すると、エアバッグ装置90に収納されていたエアバッグ91が前側に膨張する。ここで、収容凹部20を構成する凹部構成壁21の前端壁部21Fは、開口部31と重なることで補強用面材30により補強されていない。しかも、前端壁部21Fは、凹部構成壁21の中で最も薄肉になっている。これらにより、エアバッグ91が膨張すると、凹部構成壁21の前端壁部21Fが優先的に開裂し、パッド本体11から前側に飛び出したエアバッグ91が車両ドアと着座者との間に配置される。
【0026】
図4及び図5には、シートパッド10を発泡成形するための発泡成形型50が示されている。発泡成形型50は、上型51と、下型52と、上型51に取り付けられる中子53と、を備えている。発泡成形型50では、中子53に補強用面材30を取り付けた状態で、パッド本体11が発泡成形される。パッド本体11は、その前面を下向きにして成形される。
【0027】
図4に示されるように、上型51と下型52は、平面視長方形状をなし、短辺部同士がヒンジで連結されている。下型52は、上側に開放した成形凹部52Aを有する容器状をなし、成形凹部52Aの内面によって、パッド本体11の前面が成形される。上型51は、成形凹部52Aを閉塞する蓋状に形成されている。なお、図5に示されるように、上型51の下面中央部には、中子53の中央突部54Tを収めるための中央凹部51Aが形成されている。
【0028】
図5に示されるように、中子53は、上下に扁平な主盤54と、主盤54の上面の中央部から突出した中央突部54Tと、を有している。そして、中央突部54Tが上型51の中央凹部51Aと係合することによって、中子53が上型51に対して位置決めされる。
【0029】
図4に示されるように、主盤54は、平面視長方形状に形成され、パッド本体11におけるベース12の後面を成形する。なお、主盤54の短辺は、上型51及び下型52の短辺に沿って配置される。
【0030】
図5に示されるように、主盤54と下型52における成形凹部52Aの内周面との間には、平面視コの字状の隙間が形成され、その隙間によってパッド本体11の後方突部13(図2参照)が成形される。また、中子53の中央突部54Tの高さは、上型51の中央凹部51Aの深さより大きくなっていて、主盤54の外縁部には、上型51との間に隙間を形成する隙間形成部55(本発明の「外縁対向部」に相当する。)が設けられている。そして、その隙間形成部55と上型51との間の隙間によってパッド本体11のフランジ部14(図2参照)が成形される。別の見方をすれば、主盤54の隙間形成部55は、パッド本体11における受容凹部15(図2参照)を成形する。
【0031】
図4及び図5に示されるように、主盤54における短辺方向の両端部からは、パッド本体11のベース12におけるサイド溝16を成形するためのサイド突条56が下方に突出している。なお、サイド突条56は、主盤54の長辺方向に沿って延在している。
【0032】
図5に示されるように、主盤54の短辺方向の一方側(図5では、右側)に配置されたサイド突条56(本発明の「成形突部」に相当する。)には、サイド突条56の先端側を段付き状に幅狭にする段差部57が形成されている。そして、サイド突条56のうち段差部57より基端側の幅広部56Aによってパッド本体11における収容凹部20の幅広部20Aが形成され、サイド突条56のうち段差部57より先端側の幅狭部56Bによって収容凹部20の幅狭部20Bが形成される。なお、詳細には、段差部57は、サイド突条56のうち主盤54の短辺方向の他方側を向く部分(図5では、左側を向く部分)に成形されていて、サイド突条56の幅狭部56Bは、主盤54の短辺方向の一方側に寄せて配置されている。
【0033】
サイド突条56の幅狭部56Bからは、幅方向外側に係止突部60が突出している。図4に示されるように、係止突部60は、幅方向の一方側と他方側に突出する2つを1組にして、サイド突条56の延在方向に沿って複数組備えられている。なお、係止突部60の突出量は、補強用面材30の厚みより若干大きくなっている。
【0034】
図5の拡大図に示されるように、係止突部60のうちサイド突条56の先端側を向く面は、サイド突条56の突出方向に対して略垂直に配置される垂直面61となっている。また、係止突部60のうちサイド突条56の基端側を向く面は、サイド突条56の基端側へ向かうにつれて係止突部60の突出量を小さくするように傾斜した傾斜面62となっている。
【0035】
詳細には、図4の拡大図に示されるように、係止突部60は、台形状の底部60Bと、直線状の頂部60Tと、を有する5面体状に形成されている。底部60Bは、サイド突条56の先端側が幅広となる等脚台形状に形成されていて、係止突部60の垂直面61と傾斜面62は、係止突部60の先端側(即ち、頂部60T)に向かうにつれて幅狭となる台形状に形成されている。
【0036】
図5に示されるように、中子53の外面には、補強用面材30の磁性体33と結合するマグネット65が複数備えられている。複数のマグネット65は、サイド突条56の幅狭部56Bを避けて配置され、具体的には、隙間形成部55における上型51との対向面、サイド突条56の幅広部56Aのうち主盤54の中央側を向く面、主盤54の中央部の下面等に備えられている。
【0037】
なお、本実施形態では、係止突部60とマグネット65から本発明の「固定手段」が構成される。
【0038】
シートパッド10は以下のようにして製造される。まず、開口部31、係合孔32及び磁性体33を有する補強用面材30を用意する。なお、係合孔32は、補強用面材30の開口部31の近傍に形成されていて、磁性体33は、補強用面材30のうち開口部31から離れた所定複数箇所に備えられている。
【0039】
次いで、図6に示されるように、型開きされた発泡成形型50の中子53に補強用面材30を取り付ける。なお、このとき、中子53は上型51から離れた状態となっている。
【0040】
補強用面材30の取り付けの詳細は以下の通りである。即ち、まず、中子53の短辺方向一方側のサイド突条56(詳細には、幅狭部56B)の先端を補強用面材30の開口部31に通しながら、補強用面材30を該サイド突条56に被せる。次いで、サイド突条56の幅狭部56Bの複数の係止突部60を補強用面材30の複数の係合孔32に通す。そして、複数の係止突部60を複数の係合孔32に引っ掛けながら、補強用面材30の複数の磁性体33を中子53の複数のマグネット65に磁気吸着させる。このとき、補強用面材30の開口部31から離れた部分を引っ張るようにして補強用面材30に張力を持たせることで、補強用面材30をサイド突条56の外面に密着させることが可能となる。特に、図6において矢印で示されるように、中子53の隙間形成部55における上型51との対向面に備えられたマグネット65に磁性体33を吸着される場合には、補強用面材30が中子53の下側から側方を通って上側に巻き付けられるので、補強用面材30とサイド突条56との密着性を向上させることが可能となる。
【0041】
中子53への補強用面材30の取り付けが完了すると、中子53を上型51に取り付ける。次いで、下型52の成形凹部52Aに発泡樹脂原料80を注入し、発泡成形型50を型閉じする(図7参照)。そして、発泡成形型50内で、発泡樹脂原料80を発泡させる。すると、発泡成形型50内で、補強用面材30と一体になったパッド本体11が成形される(図9参照)。
【0042】
ところで、本実施形態では、中子53の短辺方向一方側のサイド突条56に段差部57が設けられているので、補強用面材30が中子53に取り付けられたときに、補強用面材30が段差部57から浮き上がり、補強用面材30がサイド突条56に密着し難いという問題がある。この問題は、発泡樹脂原料80の発泡によって解決される。即ち、図8に示されるように、発泡樹脂原料80が発泡膨張すると、補強用面材30が段差部57に押し付けられて、サイド突条56と密着する。ここで、補強用面材30のうち開口部31から離れた部分は、磁性体33とマグネット65の磁気吸着によって中子53に固定されているので、補強用面材30が段差部57に押し付けられるときに補強用面材30に過大な張力が掛かっても、マグネット65に対して磁性体33の位置がずれることで補強用面材30の損傷が防がれる。
【0043】
パッド本体11が成形されると、発泡成形型50を開いて、パッド本体11と補強用面材30が一体化したシートパッド10を発泡成形型50から外す。以上により、シートパッド10が完成する。
【0044】
なお、詳細には、発泡成形型50が開かれると、パッド本体11は、フランジ部14が中子53の隙間形成部55に引っ掛かることで、中子53と一緒になって下型52から離れる(図10参照)。また、上型51から中子53が外されることで、パッド本体11は、上型51から離れる。そして、パッド本体11が中子53から外される。ここで、パッド本体11を中子53から外す際、係止突部60がアンダーカットになる可能性があるが、図11に示されるように、本実施形態では、係止突部60のうちサイド突条56の基端側を向く面は、サイド突条56の基端側へ向かうにつれて係止突部60の突出量を小さくするように傾斜した傾斜面62になっているので、弾性を有したパッド本体11を中子53からスムーズに外すことができる。
【0045】
本実施形態の発泡成形型50では、補強用面材30が中子53に取り付けられる際、中子53におけるサイド突条56の先端部(幅狭部56B)に設けられた係止突部60が、補強用面材30において開口部31の近傍に形成された係合孔32に係止する。また、中子53の所定箇所に備えられたマグネット65が、補強用面材30のうち開口部31から離れた部分に備えられた磁性体33と磁気吸着する。これにより、シートパッド10のうちエアバッグ装置90によって開裂する部分の近くに配置される磁性体33の数を減らすことが可能となり、エアバッグ装置90が作動したときの磁性体33の飛散が抑制される。
【0046】
また、発泡成形型50を用いたシートパッド10の製造方法では、補強用面材30の係合孔32を係止突部60に引っ掛けて、補強用面材30に張力を持たせながら該補強用面材30の磁性体33をマグネット65に磁気吸着させることが可能となる。これにより、中子53の外面に補強用面材30を密着させることが可能となり、発泡樹脂原料80が中子53と補強用面材30の間に入り込むことが抑制される。
【0047】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0048】
(1)上記実施形態において、図12に示されるように、係止突部60のうちサイド突条56の先端側を向く面に、補強用面材30の係合孔32の開口縁を受容する受容溝60Uが形成されていてもよい。この場合、係止突部60のうちサイド突条56の先端側を向く面は、垂直面61であってもよいし、サイド突条56の突出方向に対して傾斜する傾斜面であってもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、係止突部60のうちサイド突条56の先端側を向く面が、サイド突条56の突出方向に対して、略垂直に配置されていたが、サイド突条56の幅狭部56B側を向くように傾斜していてもよい。
【0050】
(3)上記(1)、(2)の構成を、サイド突条56の幅方向の一方側と他方側の係止突部60のうち、片方のみに適用してもよいし、両方に適用してもよい。
【0051】
(4)上記実施形態において、サイド突条56に段差部57が設けられていなくてもよい。この場合、サイド突条56が、先端側に向かうにつれて幅狭となるように構成されていることが好ましく、サイド突条56のうち最も幅狭となる部分が、主盤54の短辺方向の一方側に寄せて配置されていることがより好ましい。
【符号の説明】
【0052】
10 シートパッド
11 パッド本体
20 収容凹部
30 補強用面材
31 開口部
32 係合孔
33 磁性体
50 発泡成形型
51 上型
52 下型
53 中子
56 サイド突条
60 係止突部
62 傾斜面
65 マグネット
90 エアバッグ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12