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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230301BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20230301BHJP
   E04H 12/10 20060101ALI20230301BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20230301BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G06F30/13
E04H12/00 Z
E04H12/10 Z
H02G1/02
H02G7/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022113299
(22)【出願日】2022-07-14
【審査請求日】2022-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501410779
【氏名又は名称】九州電技開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】久保田 豊
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸信
(72)【発明者】
【氏名】立木 秀志
(72)【発明者】
【氏名】中村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】松木 昂平
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113901551(CN,A)
【文献】特開2018-031693(JP,A)
【文献】特開平11-252729(JP,A)
【文献】特開平11-098634(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105466391(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106557600(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
E04H 12/00 -12/26
H02G 1/02 - 1/04
H02G 7/00 - 7/22
G06Q 50/06 -50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設塔の位置の選定を支援する支援方法であって、
援装置が備える塔処理部が、前記新設塔の塔中心候補位置及び塔候補形状に対して、標高データにより特定される地表の標高における前記新設塔の脚の候補位置を計算する塔処理ステップと、
前記支援装置が備える表示制御部が、表示装置に対して、前記標高データに重ねて前記新設塔の脚の候補位置を表示させる表示ステップと、
前記新設塔の脚の候補位置を参照して基本ルートが決定されて地上測量が実施された後に敷地図が作成される敷地図作成ステップを含む支援方法。
【請求項2】
前記塔処理ステップにおいて、
前記支援装置が備える碍子処理部が、入力された情報を用いて前記新設塔が備える碍子装置を構成する碍子部品の順番と配置を特定した碍子部品特定データを生成し、
前記塔処理部が、入力された情報を用いて前記新設塔の頂点の位置、電線の位置、及び、脚の位置を特定し、
前記支援装置が備える電線処理部が、前記碍子部品特定データによって特定される碍子部品と他の塔との間を結ぶ電線の位置及び標高を特定して、前記電線の標高を利用して前記電線の移動する可能性のある範囲を特定する、請求項1記載の支援方法。
【請求項3】
新設塔の位置の選定を支援する支援装置であって、
前記新設塔の塔中心候補位置及び塔候補形状に対して、地表の標高を特定可能な標高データを用いて、前記新設塔の脚の候補位置を計算する塔処理部と、
表示装置に対して、前記標高データに重ねて前記新設塔の脚の候補位置を表示させる表示制御部と、
前記新設塔と他の塔との間を結ぶ電線の位置及び標高を特定して、前記電線の標高を利用して前記電線の移動する可能性のある範囲を特定する電線処理部と、
木が倒れた場合に前記電線の移動する可能性のある範囲と干渉するか否かを判断する干渉処理部と、
前記木の頂点よりも上からの測定結果である上方測定データと、前記木の頂点よりも下からの測定結果である下方測定データによって、前記木の頂点及び根元の位置を特定する測定値処理部を備え、
前記上方測定データは、前記木の頂点よりも上に位置する上方測定装置によって、測定位置を特定しつつ得られたものであり、
前記下方測定データは、前記木の頂点よりも下に位置する下方測定装置によって、位置を特定可能な下方位置装置との相対的な位置関係を特定しつつ得られたものであり、
前記測定値処理部は、前記上方測定データ及び前記下方測定データを、前記上方測定データの測定位置と、前記下方位置装置の位置及び前記下方位置装置と前記下方測定装置の相対的な位置関係によって統合して、前記木の頂点及び根元の位置を特定する、支援装置。
【請求項4】
支援装置において新設塔の位置の選定を支援する支援方法であって、
前記支援装置が備える塔処理部が、前記新設塔の塔中心候補位置及び塔候補形状に対して、地表の標高を特定可能な標高データを用いて、前記新設塔の脚の候補位置を計算する塔処理ステップと、
前記支援装置が備える表示制御部が、表示装置に対して、前記標高データに重ねて前記新設塔の脚の候補位置を表示させる表示ステップと、
前記支援装置が備える電線処理部が、前記新設塔と他の塔との間を結ぶ電線の位置及び標高を特定して、前記電線の標高を利用して前記電線の移動する可能性のある範囲を特定する電線処理ステップと、
前記支援装置が備える干渉処理部が、木が倒れた場合に前記電線の移動する可能性のある範囲と干渉するか否かを判断する干渉処理ステップを含み
前記木の頂点及び根元の位置は、前記支援装置が備える測定値処理部が、前記木の頂点よりも上からの測定結果である上方測定データと、前記木の頂点よりも下からの測定結果である下方測定データによって特定したものであり、
前記上方測定データは、前記木の頂点よりも上に位置する上方測定装置によって、測定位置を特定しつつ得られたものであり、
前記下方測定データは、前記木の頂点よりも下に位置する下方測定装置によって、位置を特定可能な下方位置装置との相対的な位置関係を特定しつつ得られたものであり、
前記測定値処理部は、前記上方測定データ及び前記下方測定データを、前記上方測定データの測定位置と、前記下方位置装置の位置及び前記下方位置装置と前記下方測定装置の相対的な位置関係によって統合して、前記木の頂点及び根元の位置を特定する、支援方法。
【請求項5】
コンピュータにおいて、請求項1記載の支援方法を実現するためのプログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項記載の支援装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、支援装置、支援方法及びプログラムに関し、特に、新設塔の位置の選定を支援する支援装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、送電線の管理、建設のための調査などのための地図データを生成するための地図データ生成方法等を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6990810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のルート設定手法では、基本ルートを設定してから具体的な鉄塔を新設する位置を決めていた。そのため、個々の新設鉄塔について、適切な場所を選定できていない可能性があった。
【0005】
そこで、本願発明は、新設塔の候補位置に関する情報を早く提供することにより、信頼性の高い敷地位置の選定を実現することに適した支援装置等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の側面は、新設塔の位置の選定を支援する支援装置であって、前記新設塔の塔中心候補位置及び塔候補形状に対して、地表の標高を特定可能な標高データを用いて、前記新設塔の脚の候補位置を計算する塔処理部と、表示装置に対して、前記標高データに重ねて前記新設塔の脚の候補位置を表示させる表示制御部を備える。
【0007】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の支援装置であって、前記新設塔と他の塔との間を結ぶ電線の位置及び標高を特定して、前記電線の標高を利用して前記電線の移動する可能性のある範囲を特定する電線処理部を備える。
【0008】
本願発明の第3の側面は、第2の側面の支援装置であって、木が倒れた場合に前記電線の移動する可能性のある範囲と干渉するか否かを判断する干渉処理部を備える。
【0009】
本願発明の第4の側面は、第3の側面の支援装置であって、前記木の頂点よりも上からの測定結果である上方測定データと、前記木の頂点よりも下からの測定結果である下方測定データによって、前記木の頂点及び根元の位置を特定する測定値処理部を備え、前記上方測定データは、前記木の頂点よりも上に位置する上方測定装置によって、測定位置を特定しつつ得られたものであり、前記下方測定データは、前記木の頂点よりも下に位置する下方測定装置によって、位置を特定可能な下方位置装置との相対的な位置関係を特定しつつ得られたものであり、前記測定値処理部は、前記上方測定データ及び前記下方測定データを、前記上方測定データの測定位置と、前記下方位置装置の位置及び前記下方位置装置と前記下方測定装置の相対的な位置関係によって統合して、前記木の頂点及び根元の位置を特定する。ここで、下方測定データは、下方測定装置において位置情報を使用せずに測量することにより得られるものである。
【0010】
本願発明の第5の側面は、第1の側面の支援装置であって、前記新設塔が備える碍子装置を構成する碍子部品の順番と配置を特定した碍子部品特定データを生成する碍子処理部を備える。
【0011】
本願発明の第6の側面は、支援装置において新設塔の位置の選定を支援する支援方法であって、前記支援装置が備える塔処理部が、前記新設塔の塔中心候補位置及び塔候補形状に対して、地表の標高を特定可能な標高データを用いて、前記新設塔の脚の候補位置を計算する塔処理ステップと、前記支援装置が備える表示制御部が、表示装置に対して、前記標高データに重ねて前記新設塔の脚の候補位置を表示させる表示ステップを含む。
【0012】
本願発明の第7の側面は、コンピュータを、第1の側面の支援装置として機能させるためのプログラムである。
【0013】
本願発明を、第7の側面のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の各側面によれば、いわば、平面図に標高を加味することにより、新設塔の塔中心候補位置などの入力に応じて、標高データを利用して脚の候補位置などを計算して表示することにより、敷地位置の選定について信頼度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】支援システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図2図1の支援システム1の動作の一例を示すフロー図である。
図3】新設鉄塔の候補位置などの計算処理について説明するための図である。
図4】鉄塔候補位置を計算して標高データに重ねて表示した一例を示す。
図5図4を(a)平面図及び(b)斜視図として表示したものである。
図6】第1鉄塔E1及び第2鉄塔E2の間の電線G1及びG2についての処理を説明するための図である。
図7】干渉処理部73による干渉の有無の判断について説明するための図である。
図8】本願発明において提案する測定手法の一例を示す図である。
図9】(a)下方測定部93による測定結果と、(b)上方測定部87及び下方測定部93による測定結果を統合したものを示す図である。
図10】碍子装置図の一例を示す。
図11】碍子装置の名称などの入力例を示す。
図12】碍子装置データの呼び出しなどの入力例を示す。
図13図10の碍子装置図において、アース側の2個の碍子金具の選定及び配置の入力のためのものである。
図14図10の碍子装置図において、アース側から3個目及び4個目の碍子金具の選定及び配置の入力のためのものである。
図15図10の碍子装置図において、碍子連の選定及び配置の入力のためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0017】
図1は、支援システム1の構成の一例を示すブロック図である。この例では、簡単のために、塔は鉄塔とし、第1鉄塔と第2鉄塔の2つの新設鉄塔の位置を決定するための支援を行うものとする。3つ以上の新設鉄塔、1つ以上の既設鉄塔と1つ以上の新設鉄塔の組み合わせなどについても、同様に処理をすることができる。また、電線との干渉は、電線の周辺にある木との関係について倒木の可能性を考慮して調べるものとする。建造物などとの干渉については、位置が定まっており、同様に調べることができる。
【0018】
図1を参照して、支援システム1の構成の一例を説明する。支援システム1は、入力装置3と、表示装置5と、上方測定装置7(本願請求項の「上方測定装置」の一例)と、下方位置装置8(本願請求項の「下方位置装置」の一例)と、下方測定装置9(本願請求項の「下方測定装置」の一例)と、支援装置11を備える。入力装置3は、例えばキーボードやマウスなどの入力装置である。表示装置5は、例えばディスプレイなどの出力装置である。入力装置3と表示装置5は、例えばタッチパネルのように、同じ入出力装置によって実現してもよい。
【0019】
支援装置11は、鉄塔関連情報記憶部13と、入出力処理部15と、測定データ記憶部17と、標高データ記憶部19と、碍子記憶部21と、処理部23を備える。各記憶部は、例えば、メモリ、ハードディスクなどの記憶装置によって実現することができる。処理部は、例えばプロセッサなどのプログラムによって動作する情報処理装置によって実現することができる。
【0020】
鉄塔関連情報記憶部13は、鉄塔候補データ25と、電線候補データ27と、周辺データ29を記憶する。
【0021】
鉄塔候補データ25は、第1鉄塔候補データ33と、第2鉄塔候補データ35を含む。第1鉄塔候補データ33は、第1鉄塔中心候補位置データ37と、第1鉄塔候補形状データ39と、第1碍子部品特定データ40を含む。第2鉄塔候補データ35は、第2鉄塔中心候補位置データ41と、第2鉄塔候補形状データ43と、第2碍子部品特定データ44を含む。
【0022】
電線候補データ27は、電線候補標高データ45を含む。
【0023】
周辺データ29は、木頂点位置データ47と、木根本位置データ49を含む。
【0024】
入出力処理部15は、入力処理部55と、表示制御部57(本願請求項の「表示制御部」の一例)を備える。
【0025】
測定データ記憶部17は、上方測定データ59と、下方測定データ61を記憶する。
【0026】
標高データ記憶部19は、第1鉄塔と第2鉄塔を設置する候補となりうる位置を含む一定の地域において、地表の位置と標高を特定することができる標高データ63を記憶する。標高データ63は、例えば、数値標高データなどである。
【0027】
碍子記憶部21は、碍子装置を構成する碍子部品の形状などを特定する碍子部品データ65を記憶する。
【0028】
処理部23は、鉄塔処理部67(本願請求項の「塔処理部」の一例)と、電線処理部69(本願請求項の「電線処理部」の一例)と、測定値処理部71と(本願請求項の「測定値処理部」の一例)、干渉処理部73(本願請求項の「干渉処理部」の一例)と、碍子処理部75(本願請求項の「碍子処理部」の一例)を備える。
【0029】
図2は、図1の支援システム1の動作の一例を示すフロー図である。図2を参照して、図1の支援システム1の動作の一例を説明する。
【0030】
利用者は、入力装置3を操作して、第1鉄塔を設置する位置の候補、形状の候補、碍子の部品などの情報を入力する(ステップST1)。鉄塔処理部67は、入力された情報を利用して、鉄塔関連情報記憶部13に第1鉄塔候補データ33を記憶する(ステップST2)。鉄塔処理部67は、例えば、利用者が表示装置5に表示された標高データ63を利用して第1鉄塔の中心位置を指定した場合に、標高データ63において指定された位置(本願請求項の「塔中心候補位置」の一例)を第1鉄塔中心候補位置データ37とする。鉄塔処理部67は、例えば、利用者が第1鉄塔の高さの候補(本願請求項の「塔候補形状」の一例)を指定した場合に、鉄塔の一般的な形状を特定する情報を参照して、その高さの候補から鉄塔の頂点の位置、電線の位置、脚の位置などを特定して第1鉄塔候補形状データ39とする。利用者に対して複数の候補となる形状を提示して利用者がそれらから選択するように、利用者が具体的な形状を特定してもよい。第1碍子部品特定データ40については、図10図15を参照して後に具体的に説明する。
【0031】
利用者は、入力装置3を操作して、第2鉄塔について、第1鉄塔と電線で接続することを特定して、第2鉄塔を設置する位置の候補、形状の候補、碍子の部品などの情報を入力する(ステップST3)。鉄塔処理部67は、入力された情報を利用して、鉄塔関連情報記憶部13に第2鉄塔候補データ35を記憶する(ステップST4)。鉄塔処理部67は、例えば、利用者が表示装置5に表示された標高データ63を利用して第2鉄塔の中心位置を指定した場合に、標高データ63において指定された位置を第2鉄塔中心候補位置データ41とする。鉄塔処理部67は、例えば、利用者が第2鉄塔の高さの候補を指定した場合に、鉄塔の一般的な形状を特定する情報を参照して、その高さの候補から鉄塔の頂点の位置、電線の位置、脚の位置などを特定して、第2鉄塔候補形状データ43とする。第2碍子部品特定データ44については、図10図15を参照して後に具体的に説明する。
【0032】
電線処理部69は、第1鉄塔と第2鉄塔が電線で接続されていることが入力されていることから、両者を接続する電線の位置及び標高を計算し、電線候補標高データ45とする(ステップST5)。電線処理部69は、風、地震などの影響による電線の動きを分析する(ステップST6)。干渉処理部73は、木頂点位置データ47及び木根本位置データ49を用いて、倒木などによる木の動きを分析する(ステップST7)。干渉処理部73は、分析された電線及び木の動きを利用して、電線間の干渉、電線と木の間の干渉などを分析する(ステップST8)。
【0033】
図3図4及び図5を参照して、鉄塔の候補位置などの計算処理について説明する。簡単のために、新設鉄塔の基本的な形状は、脚が正方形の頂点にある四角錘のものとする。底面の正方形において、最も高い地盤に位置する脚(基準脚)と、最も低い地盤に位置する脚とが対角に位置するとする。以下では、最も高い地盤に位置する脚(基準脚)と、最も低い地盤に位置する脚と、鉄塔の頂点とによる断面を参照して説明する。第1鉄塔と第2鉄塔について、同様に計算処理を行うことができる。
【0034】
利用者は、新設鉄塔の候補となる位置B1を、鉄塔中心位置によって指定する。図3の例では、新設鉄塔の頂点の直下の位置とする。鉄塔処理部67は、候補となる鉄塔中心位置を、地表面の位置B1とする。
【0035】
利用者が新設鉄塔の候補となる形状を指定すると、鉄塔処理部67は、候補となる鉄塔中心位置B1を参照して、仮の新設鉄塔の位置A1を特定する。この場合、仮の脚の位置B2は地中に位置することとなる。
【0036】
鉄塔処理部67は、仮の鉄塔の位置A1を上げて鉄塔の位置A2とすることにより、仮の脚の位置B2の位置を上げて地表の位置B4に移動させ、他の脚も地表よりも上に位置するようにする。これにより、基準脚の位置B4を決定することができる。候補となる鉄塔中心位置B1の標高と基準脚B4の標高の差(図3の線分B15の長さ)を仮FL(Formation Level)という。
【0037】
鉄塔処理部67は、基準脚以外の脚について、仮の脚の位置B3から位置B6に上げる。鉄塔処理部67は、位置B6から新設鉄塔の頂点とは反対側に延長した直線が地表と交わる位置B7により、片継脚の位置を特定することができる。
【0038】
このように、鉄塔処理部67は、仮FLを決定し、片継脚を推定することができる。
【0039】
表示制御部57は、表示装置5に対して、標高データ63に重ねて新設鉄塔の脚の候補位置を表示させる。
【0040】
図4は、実際に鉄塔候補位置を計算して、標高データに重ねて表示した一例を示す。この場合、鉄塔中心位置は、鉄塔においてC5として表示されている。図4は斜視図であるが、平面図とすることにより、鉄塔中心位置は、C5により表示することができる。脚の位置C1は基準脚である。他の脚の位置C2、C3及びC4により、片継脚を表示している。
【0041】
図5(a)は、図4を平面図として表示したものである。片継脚がどちらに長く延びているかを表示することができる。図5(b)は斜視図として表示したものである。図5(a)によれば、平面図であるために沢D1の位置を明確に把握することは困難である。他方、図5(b)によれば、標高を考慮して斜視図を表示することにより、沢D2の位置を明確に特定できるとともに、沢D2に向かって片継脚が延びており、極めてリスクが高い状況であることが一目瞭然である。
【0042】
このように、いわば、新設鉄塔の設置候補となる位置を検討する段階で、平面図において標高を加味して、仮FLの決定に加えて片継脚の推定を行って提示することにより、敷地位置の選定について、信頼度が向上する。
【0043】
従来のルート設定手法では、航空測量などにより概略のルート図を作成し、踏査により鉄塔予定地点での鉄塔位置を確認して鉄塔位置を決定して基本ルートを決定し、地上測量を実施し、鉄塔高さを決定して敷地図を作成し、縦断図を作成する。FL及び片継脚の決定は、敷地図の作成の時点となる。基本ルートの決定時には、FL及び片継脚は考慮されていなかった。
【0044】
本願発明のルート設定手法によれば、鉄塔位置の候補の選定の段階で仮FLを決定し片継脚を推定するため、踏査による鉄塔予定地点での鉄塔位置の確認の時点で片継脚の可能性を考慮でき、片継脚などを考慮した鉄塔位置の決定をすることができる。さらに、基本ルートを決定して地上測量を実施した後の鉄塔高さの決定でも、仮FLを考慮することができる。そのため、敷地図を作成する以前で、FL及び片継脚についての考慮をすることができる。
【0045】
図6図7図8及び図9を参照して、電線の干渉についての処理について説明する。
【0046】
図6は、第1鉄塔E1及び第2鉄塔E2の間の電線G1及びG2についての処理を説明するための図である。図6(a)を参照して、第1鉄塔E1は、碍子装置F1及びF2を備える。碍子装置F1及びF2は、第1碍子部品特定データ40により特定されている。第2鉄塔E2は、碍子装置F3及びF4を備える。碍子装置F3及びF4は、第2碍子部品特定データ44により特定されている。
【0047】
図6(b)を参照して、第1鉄塔E1の碍子装置F1と第2鉄塔E2の碍子装置F3は、電線G1により接続される。電線処理部69は、電線G1の位置及び標高を計算する。第1鉄塔E1の碍子装置F2と第2鉄塔E2の碍子装置F4は、電線G2により接続される。電線処理部69は、電線G2の位置及び標高を計算する。電線処理部69は、鉄塔関連情報記憶部13において、電線G1及び電線G2の位置及び標高を、電線候補データ27の電線候補標高データ45として記憶させる。
【0048】
電線処理部69は、電線G1の位置及び標高を利用して、風などによって電線G1が移動する可能性のある範囲G3を計算する。電線処理部69は、電線G2の位置及び標高を利用して、風などによって電線G2が移動する可能性のある範囲G4を計算する。ここで、電線処理部69は、碍子装置F1、F2、F3、F4の具体的な形状を利用して、電線G1及び電線G2の位置及び標高、移動する可能性のある範囲を計算することができる。
【0049】
図7を参照して、干渉処理部73による干渉の有無の判断について説明する。
【0050】
図7(a)を参照して、位置H1は、碍子装置F1とF3を結んだ直線の位置である。位置H2は、風などの影響がない状態での電線G1の位置である。位置H3は、風などの影響により電線G1が外側に移動する可能性がある位置である。電線処理部69は、位置H1を中心とする位置H2と位置H3を結ぶ円弧上の範囲を、電線G1が移動する可能性がある範囲とする。
【0051】
位置H4は、碍子装置F2とF4を結んだ直線の位置である。位置H5は、風などの影響がない状態での電線G2の位置である。位置H6は、風などの影響により電線G2が外側に移動する可能性がある位置である。電線処理部69は、位置H4を中心とする位置H5と位置H6を結ぶ円弧上の範囲を、電線G2が移動する可能性がある範囲とする。
【0052】
干渉処理部73は、電線G1及びG2の位置を参照して、電線G1及びG2の一定の範囲内に干渉する可能性がある木について特定する。干渉処理部73は、木頂点位置データ47及び木根本位置データ49を参照して、木の頂点J2及び根元J1を特定する。図7(a)の状態では、木は電線G1及び電線G2が移動する可能性がある範囲にはない。
【0053】
しかしながら、図7(b)を参照して、木が倒れた場合には、干渉する可能性がある。倒木は、木の根元を中心として、木の頂点が円弧状に動く範囲で移動する可能性がある。そのため、干渉処理部73は、木が動く可能性のある範囲を、木の頂点J2及び根元J1に対して、根元J1を中心とする頂点J2と位置J3を結ぶ円弧上の範囲により特定する。干渉処理部73は、電線G1及び電線G2が移動する可能性がある範囲と、木が動く可能性のある範囲が重なるならば(図7(b)参照)、干渉が生じる可能性があると判断する。干渉処理部73は、電線G1及び電線G2が移動する可能性がある範囲と、木が動く可能性のある範囲が重ならないならば、干渉が生じる可能性がないと判断する。ただし、頂点J2が成長により高くなることにより重なる可能性があるならば、現時点では重なっていないものの、成長に応じた年月の後に重なるリスクが生じると判断する。表示制御部57は、表示装置5において、干渉処理部73の判定結果を表示する。
【0054】
干渉処理部73の判断は、木の根元J1及び頂点J2の位置の精度が高くなるほど、高い精度になる。従来、このような測定は、航空機やドローンのような飛行体を利用して行われていた。この場合、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)などによって測定位置を特定できる。そして、木の頂点J2の測定はできる。しかし、木の根元J1の測定をすることは難しかった。他方、人が測定装置を背負って歩くなどによって測定することもできる。この場合、木の根元J1の測定はできる。しかし、木の頂点J2の測定は難しい。さらに、GPSなどの信号を得ることができず、GPSなどによって測定位置を特定することが困難であった。
【0055】
図8は、本願発明において提案する測定手法の一例を示す図である。上方測定装置81(図1の上方測定装置7の一例)は、木の頂点J2よりも上に位置して測定するものである。上方測定装置81は、上方測定部87と、上方位置特定部89を備える。上方位置特定部89は、GPSなどによって上方測定部87による測定位置を特定する。上方測定部87は、木の頂点J2よりも上に位置して木の空間的な位置関係を測定する。上方測定部87は、レーザー照射位置と目標物(測点)が共に移動するため、正確な位置関係を把握することが困難である。そのため、GPSなどによって特定される測定位置を利用して測定を補正する。
【0056】
下方位置装置83(図1の下方位置装置8の一例)は、例えば上方に木々がなく開いた場所で、GPSなどの信号を得て位置を特定できるものである。下方位置装置83は、下方位置部91を備える。下方位置部91は、GPSなどの信号を得て位置を特定する。
【0057】
下方測定装置85(図1の下方測定装置9の一例)は、木の頂点J2よりも下に位置して測定するものである。下方測定装置85は、下方測定部93と、下方位置特定部95を備える。下方測定部93は、木の頂点J2よりも下に位置して移動しつつ、レーダー、レーザーなどによって木の空間的な位置関係を測定する。例えば、固定型のレーザー測量機は、レーザー照射位置が固定されているため、目標物(測点)にレーザーを照射して距離を正確に測定することができる。他方、移動型のレーザー測量機は、レーザー照射位置と目標物(測点)が共に移動するため、正確な位置関係を把握することが困難であった。そのため、一般的には、GPSを利用して測定を補正している(上方測定装置81による測量を参照。)。しかしながら、移動型のレーザー測量機でGPSを連動させる方式では、GPSの信号が遮られる樹木が生い茂る山中での測量をすることができない。そのため、従来、GPSの信号が届かない場所での移動型のレーザー測量を実現できない、という固定概念があった。下方測定装置85の下方測定部93は、GPSなどの位置情報に頼らない相対型の測量を実施する。具体的には、例えばレーザー測量を行う場合に、絶対座標を持つ基準球を測定することで、レーザー照射位置と目標物(測点)の相対座標を、絶対座標に変換する。そのため、GPSの信号が届かない地点でも正確な測量を実現することができる。正確な相対測量が可能な移動型の測量機により、GPSの信号の届かない山中でもレーザー測量が可能である。しかしながら、上方測定部87によりGPSなどによる位置情報を用いた測量を行っているのに対し、下方測定部93がGPSなどの位置情報を利用せずに測量を行うと、これらの測量結果を統合することは困難であった。そのため、下方位置特定部95は、下方測定部93による測定位置を、下方位置部91との相対的な位置関係により特定する。下方測定部93は、下方位置特定部95による測定位置を測定処理に使用する必要はない。そのため、下方測定部93による測量結果の精度は、下方位置特定部95の位置情報の精度に依存しない。例えば、下方位置特定部95の位置情報において、例えば木などの影響によって位置情報が特定されにくい部分があっても、その部分での測量結果を十分に高い精度で得ることができる。
【0058】
下方測定部93の測定位置は、下方位置部91と下方位置特定部95により、GPSなどによって特定することができる。そのため、測定値処理部71は、上方測定部87及び下方測定部93の測定結果について、GPSなどによって共通の基準を利用して測定位置を特定することにより統合することができる。測定値処理部71は、上方測定部87及び下方測定部93の測定結果について、それぞれ、上方測定データ59及び下方測定データ61として測定データ記憶部17に記憶する。測定値処理部71は、GPSなどによって共通の基準を利用して両者の測定位置を特定することにより統合して、各木の頂点及び根元の位置を分析して、鉄塔関連情報記憶部13において、周辺データ29の木頂点位置データ47及び木根本位置データ49として記憶する。
【0059】
図9(a)は、下方測定部93による測定結果を示す。この測定結果のみでは、木の根元L1及びL2の位置を特定することはできるが、木の頂点K1及びK2の位置を特定することができない。
【0060】
図9(b)は、上方測定部87及び下方測定部93による測定結果を統合したものを示す。この測定結果により、木の根元L1及びL2の位置に加えて、木の頂点K1及びK2の位置を高い精度で特定することができる。
【0061】
図10乃至図15を参照して、本願発明が提案する碍子装置の特定について説明する。
【0062】
送電用の碍子装置は、鉄塔装柱を決定するためには必須の資料である。しかしながら、鉄塔に付属する碍子装置は、電圧、電線サイズ、碍子個数等が適用箇所毎に異なり、構造が複雑なため、3次元CADでの作図は、非常に多くの労力を要する割りには、精度に大きな問題があった。そこで、本願発明は、いくつかの技術を組み合わせることで、精度の高い碍子装置図を容易に作成することができることを提案する。以下では、VBA(Visual Basic for Applications)と、3D(3次元)用オブジェクト作成技術、CAD(Computer Aided Design)を処理能力の高いパソコン上で組み合わせる。
【0063】
具体的には、碍子装置を構成する複数の碍子部品のそれぞれについて、部品形状特定データ(例えばSATフォーマットのデータなど)により特定する。SATフォーマットのデータは、3次元ジオメトリデータをプレーンテキスト形式で保存するものである。SATフォーマットのデータで作成する碍子部品図は、金具同士を接合するボルト穴の中心を原点に作成する。碍子装置図は、左から順番に組み立てる。そのため、VBAを利用して、各碍子部品について、左からの表示順番と、回転・表示位置の調整などの制御を行ってCADで作図する。ここで、左側の穴の中心を原点とする。Z軸は、部品の肉厚の中心を原点にする。Y軸は、碍子装置の中心を原点にする。
【0064】
図10は、碍子装置図の一例を示す。左がアース側であり、右がライン側である。
【0065】
図11は、碍子装置の名称などの入力例を示す。図11(a)では、碍子装置の種別、電圧、強度系(kN)、碍子種類、吊型、電線種類、クランプ種別及び特殊項目を入力する。図11(b)は、登録行、装置品番、装置名称を特定する。また、図示を省略するが、基準線作図として、原点座標を作図するときに、原点作図用のテキストデータが出力される。
【0066】
図12は、碍子装置データの呼び出しなどの入力例を示す。図12(a)は、CADデータを作成したりTXT(テキスト)データを取り込んだりするためのものである。図12(b)は、碍子個数、碍子連数、碍子連の間隔を入力するためのものである。図12(c)は、電線の導体数及び素導体間隔を入力するためのものである。図12(d)は、V吊装置の設定をするためのものである。V吊装置は、左右対称であるため、片側を作図した後、鏡像コマンドで反対側を作図する。そのための設定をするものである。
【0067】
図13は、図10の碍子装置図において、アース側の2個の碍子金具(左から2個の碍子金具)の選定及び配置の入力のためのものである。図13(a)にあるように、これらの2つの碍子金具は同じものである。図13(b)にあるように、最も左にあるものに対し、次に左にあるものは反転指示がされ、X軸に90度回転が指示されている。
【0068】
図14は、図10の碍子装置図において、アース側から3個目及び4個目の碍子金具の選定及び配置の入力のためのものである。図14(a)は、これらの金具を示す。図14(b)にあるように、アークホーンは、ホーン取付金具の中間付近に付くため、その間隔に合わせて3個目と4個目の金具のX方向の寸法を変更する。アークホーンの取付穴は碍子連の中心から50mmずれているため、Y方向の欄に50mmを入力する。アークホーンは肉厚が8mmあるため、Z方向欄に-8mmを入力する。
【0069】
図15は、図10の碍子装置図において、碍子連の選定及び配置の入力のためのものである。図15(a)は、碍子連を示す。図15(b)にあるように、クランプの品番を入力して、X軸の位置を選定する。ここでは、1連碍子のため、「X軸中心」を選択している。
【0070】
図1を参照して、碍子記憶部21が記憶する碍子部品データ65は、個々の碍子部品の形状などを特定するデータである。これは、例えば、3Dプリンタなどを利用することにより容易に作成することができる。
【0071】
碍子処理部75は、利用者による入力を用いて、第1碍子部品特定データ40及び第2碍子部品特定データ44を生成して、鉄塔関連情報記憶部13に記憶する。第1碍子部品特定データ40は、碍子部品データ65によって特定された碍子部品を組み合わせる順番と、配置を指定することにより、碍子装置(図6の碍子装置F1及びF2参照)を特定する。第2碍子部品特定データ44は、碍子部品データ65によって特定された碍子部品を組み合わせる順番と、配置を指定することにより、碍子装置(図6の碍子装置F3及びF4参照)を特定する。
【0072】
本願発明は、碍子装置図を、プログラム(例えば、ファイルを出力できるもの。VBAなど。)の制御の下で、CADにおいて実現することにより、高い精度で容易に作成することができることを示した。碍子処理部75は、同様に、碍子部品を組み合わせることによって、碍子装置を高精度に特定することができる。本願発明は、さらに、電線処理部69による電線の移動の分析において、このように高い精度で特定された碍子装置を利用することにより、より精度の高い分析を実現できる。
【符号の説明】
【0073】
1 支援システム
3 入力装置
5 表示装置
7 上方測定装置
8 下方位置装置
9 下方測定装置
11 支援装置
13 鉄塔関連情報記憶部
15 入出力処理部
17 測定データ記憶部
19 標高データ記憶部
21 碍子記憶部
23 処理部
25 鉄塔候補データ
27 電線候補データ
29 周辺データ
33 第1鉄塔候補データ
35 第2鉄塔候補データ
37 第1鉄塔中心候補位置データ
39 第1鉄塔候補形状データ
40 第1碍子部品特定データ
41 第2鉄塔中心候補位置データ
43 第2鉄塔候補形状データ
44 第2碍子部品特定データ
45 電線候補標高データ
47 木頂点位置データ
49 木根本位置データ
55 入力処理部
57 表示制御部
59 上方測定データ
61 下方測定データ
63 標高データ
65 碍子部品データ
67 鉄塔処理部
69 電線処理部
71 測定値処理部
73 干渉処理部
75 碍子処理部
81 上方測定装置
83 下方位置装置
85 下方測定装置
87 上方測定部
89 上方位置特定部
91 下方位置部
93 下方測定部
95 下方位置特定部
【要約】
【課題】 新設塔の候補位置に関する情報を早く提供することにより、信頼性の高い敷地位置の選定を実現することに適した支援装置等を提案する。
【解決手段】 支援装置11は、新設鉄塔の位置の選定を支援するものである。鉄塔処理部67は、新設鉄塔の鉄塔中心候補位置及び鉄塔候補形状に対して、地表の標高を特定可能な標高データ63を用いて、新設鉄塔の脚の候補位置を計算する。表示制御部57は、表示装置5に対して、標高データ63に重ねて新設鉄塔の脚の候補位置を表示させる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15