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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】PET製二重構造容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/04 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
B65D77/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019021011
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2020128225
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】薦田 弦
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-325241(JP,A)
【文献】特開2015-157643(JP,A)
【文献】特開2006-111271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1肩部と第2肩部と前記第1肩部と前記第2肩部の間に形成されたくびれ部からなる肩部を有する内容器と、
前記内容器の口部を液密に封止する脱着可能な蓋と、
前記内容器より大きく、嵌合用突起を有する外容器と、
前記内容器と前記外容器が気密に溶着された接合部と、
前記内容器と前記外容器が前記接合部以外で掛止する掛止部を有し、
前記接合部は前記内容器の前記くびれ部に前記外容器の嵌合用突起が嵌合されて形成されることを特徴とするPET製二重構造容器。
【請求項2】
前記掛止部は前記内容器および前記外容器の底面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたPET製二重構造容器。
【請求項3】
前記掛止部は、
前記内容器の底面外側に設けた位置決め凸部と、
前記位置決め凸部が掛止する前記外容器の底面内側に設けられた環状凸部で形成されることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載されたPET製二重構造容器。
【請求項4】
前記掛止部は、
前記内容器の底面外側に設けた位置決め凸部と、
前記位置決め凸部が掛止する前記外容器の底面内側に設けられた回り止めリブで形成されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載されたPET製二重構造容器。
【請求項5】
前記環状凸部の中心には、ガス注入孔が設けられ、
前記環状凸部には中心から外側に向かう流路溝が設けられることを特徴とする請求項3または4の何れかに記載のPET製二重構造容器。
【請求項6】
前記ガス注入孔の周囲には、前記外容器の底面の外側に向かって円周リブが形成されていることを特徴とする請求項5に記載のPET製二重構造容器。
【請求項7】
前記内容器と前記外容器の間には、断熱性ガスが充填されることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載されたPET製二重構造容器。
【請求項8】
前記外容器は、断面が楕円形状で形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載されたPET製二重構造容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の二重構造を有する容器に関するもので、具体的な応用例の1つとして二重構造を有するPETボトルといった断熱効果を有する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のボトルは、コストの安さや運搬のしやすさ、また携帯する際にも軽量であるといった特徴を有している。また、PETボトルは再利用が可能であり、リサイクルという観点からも好適な材料といえる。しかし、樹脂製ボトルは、高・低温の液体を充填した際の保温性が低く、外気温より低い液体を充填した際には、ボトル表面に結露する、いわゆる汗かきによる濡れといった問題があった。これは、樹脂製の容器は断熱性が低いためである。
【0003】
断熱性を高める方法として、魔法瓶のように容器を二重にし、内外容器の間に真空層を設けるといった手法がある。しかし、樹脂製ボトルの場合は、大気圧に対する強度を確保するには、相当の厚さが必要となり、実用的であるとはいえない。
【0004】
そこで、特許文献1には、容器を二重構造とし、内外容器の間に空気層を設けた二重構造のPETボトルが開示されている。このPETボトルは、さらに外容器の表面を凹凸面で形成することで、断熱性と外容器の強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-145488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、容器を二重構造にして断熱性を持たせるには、内外容器の接続点をできるだけ少なくすることが求められる。そして、容器の大部分に保温性を持たせるためには、入り口に近い部分で内外容器を気密に溶着し、接合部分以外では、内外容器間に隙間が空くように形成する。
【0007】
しかし、液体を充填した内容器は重くなる。したがって、二重構造の容器を携帯等し、容器に振動を与えてしまうと、内容器は外容器との隙間の間で揺動する。この揺動は、内外容器の接合部分に不要な応力を加える。結果、内外容器の接合部分が破損してしまうという課題があった。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明は、樹脂製の二重構造容器において、内外容器を気密に溶着する箇所以外に、容器の底部で内外容器が掛止する掛止部を設け、液体が充填された際にも不用な振動が生じにくい樹脂製の二重構造容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のPET製二重構造容器は、
第1肩部26aと第2肩部26bと前記第1肩部と前記第2肩部の間に形成されたくびれ部26からなる肩部を有する内容器と、
前記内容器の口部を液密に封止する脱着可能な蓋と、
前記内容器より大きく、嵌合用突起を有する外容器と、
前記内容器と前記外容器が気密に溶着された接合部と、
前記内容器と前記外容器が前記接合部以外で掛止する掛止部を有し、
前記接合部は前記内容器の前記くびれ部に前記外容器の嵌合用突起が嵌合されて形成されることを特徴とする
【0010】
本発明によると、内外容器の接合部以外でも内外容器が掛止しているので、内容器に液体が充填されて、質量が増大しても、内容器に不要な揺動が加わらない。その結果接合部への応力集中が回避され、接合部の破損を防止することができる。
【0011】
上記構成において、
掛止部は、容器底部に設けられると好適である。
【0012】
本構成によれば、容器の口部の近辺に設けられる接合部と、接合部から最も遠い容器の底部で内容器を保持することになるため、液体が充填され質量が重くなった内容器を好適に保持することができる。
【0013】
上記構成において、
掛止部は、内容器の底面外側に設けた位置決め凸部と、前記位置決め凸部が掛止する外容器の底面内側に設けられた環状凸部で形成されると好適である。
【0014】
本構成によれば、どちらの構造も樹脂型で比較的簡単に成型できる上に、確実に内容器を掛止することができる。
【0015】
上記構成において、
掛止部は、内容器の底面外側に設けた位置決め凸部と、前記位置決め凸部が掛止する前記外容器の底面内側に設けられた回り止めリブで形成されると好適である。
【0016】
本構成によれば、内容器が外容器に対して回転することが抑制されるので、より確実に内容器を保持することができる。
【0017】
上記構成において、
環状凸部の中心には、ガス注入孔が設けられ、環状凸部には環状の内側から外側に向かう流路溝が設けられる。
【0018】
本構成によれば、ガス注入孔からガスが注入される際に、ガスは流路溝を通って内外容器の隙間に流入するので、ガスの注入に抵抗が生じない。また、流路溝は、外容器の底面外側に突出するリブともなり、底面の強度向上に寄与する。
【0019】
上記構成において、
ガス注入孔の周囲には、外容器底面の外側に向かって円形リブが形成されていると好適である。
【0020】
本構成によれば、ガス注入後、円形リブを溶融させることで、ガス注入孔を塞ぐ充填材となる。したがって、ガス注入孔を塞ぐための別途栓材料が不要となる。
【0021】
上記構成において、
内外容器の間には、断熱性の高い断熱性ガスを充填すれば好適である。
【0022】
本構成によれば、熱伝導率の小さなガスを内外容器の間の空間に封止することで、断熱効果を向上させることができる。
【0023】
上記構成において、
外容器は断面が楕円形状で形成されていると好適である。
【0024】
本構成によれば、内外容器の間の断熱ガスの膨張を外容器の側壁部直角方向への変形に変えることができ、接合部への応力集中を抑制し、気密接合部の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】樹脂二重構造容器の縦断面を見た斜視図である。
図2】蓋と内容器と外容器を別々に示した図である。
図3】内容器と外容器の底面を斜め下から見た図である。
図4】外容器の底面だけを内側から見た斜視図(図4(a))と、その断面図(図4(b))である。
図5】外容器の底面に回り止めリブを設けた場合を示した斜視図(図5(a))と、その一部拡大図(図5(b))である。
図6】内容器を外容器に挿設した図(図6(a))と、接合部を溶着した図(図6(b))である。
図7】樹脂二重構造容器の底部分に構成される掛止部の断面図(図7(a))と、上方からの平面図(図7(b))である。
図8】内容器と外容器の間に断熱性のガスを注入する手順を示す図である。
図9】外容器の断面を楕円にした場合の効果を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、方向については、図1等に示すように、本容器1の口部28がある方を「上」とし、本容器1の底面32がある方を「下」とする。また、「高さ方向」は上下方向を言う。また、内容器20および外容器30とも、口部28若しくは開口38を閉ざした状態で、底面と側壁部に囲われた側を「内側」といい、底面および側壁部で囲われていない側を「外側」と呼ぶ。
【0027】
図1は、樹脂製二重構造容器(以下「本容器1」と呼ぶ)の縦断面を見た斜視図である。図2は、蓋12と、内容器20と、外容器30を別々に示した図である。図3は、内容器20と外容器30を斜め下から見た図である。図4(a)は、外容器30の底面32の内側を外容器30の側壁部34を取った状態で見た斜視図である。図4(b)は、底面32の断面図である。図5(a)は外容器30の底面32の他の形態を示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)の一部拡大図である。
【0028】
図1図3で示すように、本容器1は、内容器20と外容器30とで構成される容器本体10と、蓋12で構成される。内容器20および外容器30は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPMP(ポリメチルペンテン)といった樹脂材が利用できる。中でも、PETは好適に利用できる。PETは成型しやすく、素材としての強度も高い。また、軟化点が100℃以上あり、熱湯の温度によって変形することはない。もちろん、氷を入れた冷水による温度でも変形しない。
【0029】
蓋12は、ポリエチレンやポリプロピレンが好適に利用できる。ある程度柔らかいので、液密に本容器1を着脱可能に封止しやすい。ただし、本容器1はこれらの材料に限定されない。
【0030】
内容器20と外容器30は、断面略円形で構成されているが、これに限定されるものではない。特に後述するように外容器30の断面は楕円であると好ましい場合がある。内容器20は底面22と、それに続く側壁部24と、肩部26と、口部28を有する。肩部26は側壁部24の外径よりも大きな外径を有している。また、肩部26は複数個あってもよい。図では、肩部26は第1肩部26aと第2肩部26bを有する場合を示す。第1肩部26aと第2肩部26bの間にはくびれ部26cが形成されている。したがって、肩部26は、第1肩部26aと第2肩部26bとくびれ部26cで構成されている。
【0031】
内容器20の口部28は、側壁部24の内径と同じ若しくは側壁部24の内径より小さい径の開口28oで構成されている。内容器20の口部28は高さ方向に所定の距離だけ延設されている。そして内容器20の口部28の外側には、雄ネジ28sが形成されている。
【0032】
内容器20の底面22には、位置決め凸部22aが設けられている。位置決め凸部22aは、複数個設けられていてもよい。
【0033】
蓋12は、内側に雌ネジ12sが形成されており、内容器20の口部28に形成された雄ネジ28sと螺合することで、内容器20を液密に封止することができる。
【0034】
外容器30は、底面32とそれに続く側壁部34で形成されている。底面32は、断面が上側に凸形状に形成される。側壁部34の上側の端部は、そのまま開口38が形成されている。外容器30の側壁部34の内径は、内容器20の側壁部24の外径よりも大きい。そして、外容器30の側壁部34の内径は、内容器20を外容器30に挿入した際に、内容器20の肩部26の外径と摺接する程度に同一に形成される。この部分で内容器20と外容器30を溶着し、接合部40を形成するためである。
【0035】
外容器30側の壁部34は、内容器20の肩部26を覆うまで延設される。開口38近傍の側壁部34において、内容器20の肩部26と摺接する部分を外容器30の肩部36と呼ぶ。肩部36には、外容器30の内側に向かって嵌合用突起36aが形成されている。この嵌合用突起36aは、内容器20を外容器30に挿着した際に、内容器20のくびれ部26cと嵌合することで、内容器20と外容器30の接合部40の位置決めに利用される。
【0036】
外容器30の底面32中央には、ガス注入孔33が設けられている。底面32外側のガス注入孔33の周囲には、ガス注入孔33から延設して形成される円周リブ33Lが設けられている。この円周リブ33Lは、ガス注入後にガス注入孔33を塞ぐ際に利用される。
【0037】
図4に示すように、外容器30の底面32内側には、ガス注入孔33の周囲を囲むように、環状凸部32rが形成されている。環状凸部32rは、内容器20の底面22外側の位置決め凸部22aと掛止することで、掛止部42(図1参照)を形成する。また、環状凸部32rには、ガス注入孔33から環状凸部32rの外側に向かって流路溝32nが形成されている。流路溝32nは複数個形成されていてもよい。
【0038】
また、図5に示すように環状凸部32rの内側でガス注入孔33の周囲に回り止めリブ32pが設けられていてもよい。回り止めリブ32pは回り止めリブ32p1と回り止めリブ32p2が対になって構成される。この回り止めリブ32p1と回り止めリブ32p2の間に、内容器20の底面22外側の位置決め凸部22aを挿入することで、内容器20の回転が抑制される。回り止めリブ32pは、位置決め凸部22aの数だけ備えれば望ましい。しかし、少なくとも1つあればよい。
【0039】
また、回り止めリブ32pは、環状凸部32rと同時に設けられていてもよいし、環状凸部32rがない場合に、回り止めリブ32pだけが設けられていてもよい。回り止めリブ32pが位置決め凸部22aと同じだけ設けられ、位置決め凸部22aが回り止めリブ32pに掛止されていれば、内容器20は外容器30に対して、横方向の振動および回転方向の振動も抑制することができるように構成することが可能だからである。
【0040】
環状凸部32rは外側からみれば、外容器30内面に向かった凹部32rrとなる。一方、流路溝32nは、外側からみると外容器30外面に向かった凸部32nrとなる。これらの凹凸形状は外容器30の底面32の補強構造ともなっている。
【0041】
次に、図6図8も加えて、本容器1の組み立てについて説明する。まず、図6(a)に示すように内容器20の底面22が、外容器30の開口38から挿入される。外容器30の肩部36は、内容器20の肩部26を覆う程度の位置まで延設されているので、外容器30に内容器20を挿入すると、内容器20の底面22外側と外容器30の底面32内側は当接し、内容器20の肩部26が外容器30の肩部36と摺接する。また、内容器20の肩部26にあるくびれ部26cに外容器30の嵌合用突起36aが嵌合し、掛止部42を形成する。
【0042】
次に互いに摺接している外容器30の肩部36と内容器20の肩部26を接合し、接合部40を形成する(図6(b))。接合されることで、接合部40は、気密に接合される。なお、ここで、「接合」とは、両部分が気密に固定されることをいい、熱や超音波を用いた溶着、接着剤を用いた接着といった方法を含む。また、外容器30の側壁部34の内径が内容器20の側壁部24の外径より大きいので、外容器30と内容器20の側壁部34、24間には空間が形成される。この空間を遮熱空間44と呼ぶ。
【0043】
図7に掛止部42の拡大図を示す。本容器1の底部分では、内容器20の底面22外側に設けた位置決め凸部22aが外容器30の内側に設けられた環状凸部32rの内側に当接し掛止部42を構成している。すなわち、内容器20は外容器30の接合部40で溶着固定され、掛止部42で外容器30に当接支持される。なお、回り止めリブ32pを設けた場合は、回り止めリブ32p1と回り止めリブ32p2および環状凸部32rの内側に位置決め凸部22aの先端部分が入り込むことで、内容器20と外容器30が掛止される(図7(c))。
【0044】
次に、図8(a)、図8(b)に示すように、ガス注入孔33から遮熱空間44の空気を抜き、断熱性の高いガスを注入する。断熱性の高いガスとは、熱伝導率の低い気体である。これを「断熱ガス」と呼ぶ。遮熱空間44の空気を抜くと、外容器30と内容器20は互いに接近しあう。つまり、外容器30は内容器20に向かって凹み、内容器20は外容器30に向かって膨らむ。このとき、内容器20の底面22と外容器30の底面32が互いに接近し、ガス注入孔33を塞ぐようになる(図8(b))。
【0045】
しかし、外容器30の底面32内側には、ガス注入孔33の周囲に環状凸部32rが形成されており(図4参照)、内容器20の底面22には、位置決め凸部22aが形成されているので、ガス注入孔33を完全に塞ぐのを回避する。さらに、環状凸部32rには、ガス注入孔33の中心から外側に向かって流路溝32nが形成されている。そのため、断熱ガスは、ガス注入孔33から注入されると、流路溝32nを通って遮熱空間44に流れる。その結果、遮熱空間44の空気を断熱ガスと置換することができる。
【0046】
断熱ガスとしては、キセノン若しくはクリプトンが好適に利用できる。断熱ガスは塩素ガス等他にもあるが、人体に対して無害であり、また入手もし易いガスとしてこれらのガスは、好適に利用できる。なお、断熱ガスを封止した後の遮熱空間44中の断熱ガスと空気の比率は、少なくとも50:1以上が好ましく、100:1以上であればより好ましい。これは断熱ガスと窒素との割合としてよい。
【0047】
次にガス注入孔33の周囲に設けられた円周リブ33Lを溶融し、ガス注入孔33を塞ぐ。円周リブ33Lを溶融してガス注入孔33を塞ぐため、ガス注入孔33を塞ぐための部材を別途用意する必要はない。したがって、完成した本容器1の底面32外側には、溶封痕33rが残る(図8(c))。
【0048】
次に本容器1に液体を注いだ場合を説明する。液体が注ぎ込まれた内容器20は質量が重くなる。この重量は外容器30の接合部40と本容器1の底(外容器30の底面32)の掛止部42によって支持されている。仮に、内容器20が外容器30の接合部40だけで支持されていたとすると、重い内容器20は、接合部40を支点にして揺動し、接合部40に大きな応力がかかる。これは接合部40の破損の原因となり得る。
【0049】
しかし、外容器30の肩部36に位置する接合部40と、底部32の掛止部42の2カ所で支持されることによって、内容器20は外容器30の中で揺動することはない。したがって、接合部40の破損は生じない。
【0050】
次に本容器1に高温の液体を入れた場合について説明する。本容器1は100℃の熱湯を注ぐことができる。断熱ガスを充填された遮熱空間44が内容器20の側壁部24から外容器30の側壁部34への熱伝導を抑制しているので、外容器30の側壁部34は素手で持てる程度の温度にしか上昇しないからである。
【0051】
一方、遮熱空間44中の断熱ガスは膨張し外容器30を膨らませる。図9にこの様子を模式的に示す。外容器30の断面が内容器20の断面と同じ円形であると(図9(c))、断熱ガスの膨張は外容器30を側壁部34に直角方向に均等に膨らませる。本容器1は、接合部40と掛止部42によって固定されているので、外容器30は、上下に縮もうとする。したがって、接合部40に大きな応力がかかる(図9(d))。
【0052】
一方、外容器30の断面が楕円であると(図9(a))、断熱ガスの膨張は、外容器を円形にする方向に働く。これを長軸に沿った断面で見ると、長軸方向の側壁部24を内側にへこませる方向に歪の力が働く。結果、外容器30の縦方向の応力は緩和される。したがって、外容器30の断面を楕円にしておくと、断熱ガスが膨張した時の接合部40への応力を緩和し、本容器1の寿命を長くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の樹脂製二重構造容器は、断熱性を有する簡易的で軽量な液体携帯容器として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 : 本容器
12 : 蓋
20 : 内容器
30 : 外容器
32 : 底面
32r: 環状凸部
32n: 流路溝
33 : ガス注入孔
40 : 接合部
42 : 掛止部
44 :遮熱空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9