(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】金属張積層板用含フッ素ポリマー、金属張積層板用組成物、硬化性組成物、金属張積層板及びプリント基板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/082 20060101AFI20230302BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230302BHJP
C08F 218/04 20060101ALI20230302BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20230302BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230302BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B32B15/082 B
B32B27/30 D
C08F218/04
C08L27/12
C08L63/00 A
C08F214/18
(21)【出願番号】P 2021537380
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030199
(87)【国際公開番号】W WO2021025117
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019144663
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019197865
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】石川 卓司
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 秀典
(72)【発明者】
【氏名】井本 克彦
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-268034(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/18
C08F 218/04
C08L 27/12
C08L 63/00
B32B 15/082
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマー(但し、前記含フッ素ビニルモノマーを除く)に基づく重合単位とを含み、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下であ
る含フッ素ポリマー
を含むことを特徴とする金属張積層板用組成物。
【請求項2】
更に、溶剤を含む
請求項1記載の金属張積層板用組成物。
【請求項3】
前記ビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上である請求項
1又は2記載の金属張積層板用組成物。
【請求項4】
前記ビニルエステルモノマーは、下記式:
CH
2=CH-O-C(=O)-R
A
(式中、R
Aは、炭素数1~4のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
で示されるモノマーである請求項
1~3のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項5】
前記ビニルエステルモノマーは、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル、及び、ピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項
1~4のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項6】
前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上である請求項
1~5のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項7】
前記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項
1~6のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項8】
前記含フッ素ポリマーは、更に、前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーに基づく重合単位を含む請求項
1~7のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項9】
前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーは、下記一般式(2):
【化1】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマーを含む請求項8記載の金属張積層板用組成物。
【請求項10】
前記含フッ素ポリマーは、数平均分子量が1000~30000である請求項
1~9のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項11】
含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含み、
前記含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルに基づく重合単位(但し、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を除く)とを含み、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である
ことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項12】
更に、溶剤を含む請求項11記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有する請求項11又は12記載の硬化性組成物。
【請求項14】
更に、硬化促進剤を含む請求項11~13のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項15】
金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、
前記樹脂層が、請求項11~14のいずれかに記載の硬化性組成物から形成される
ことを特徴とする金属張積層板。
【請求項16】
請求項15の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板。
【請求項17】
テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、テトラフルオロエチレン単位-ビニルエステル単位-テトラフルオロエチレン単位の連鎖が45モル%以上であり、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である含フッ素ポリマー
を含むことを特徴とする金属張積層板用組成物。
【請求項18】
前記含フッ素ポリマーの数平均分子量が15000以下である請求項17記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項19】
前記ビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上である請求項17又は18記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項20】
前記ビニルエステルモノマーは、下記式:
CH
2=CH-O-C(=O)-R
A
(式中、R
Aは、炭素数1~4のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
で示されるモノマーである請求項17~19のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項21】
前記ビニルエステルモノマーは、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル、及び、ピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項17~20のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項22】
前記テトラフルオロエチレンに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上である請求項17~21のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項23】
前記含フッ素ポリマーが、更に、前記テトラフルオロエチレン及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーに基づく重合単位を含む請求項17~22のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項24】
前記テトラフルオロエチレン及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーは、下記一般式(2):
【化2】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマーを含む請求項23記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項25】
更に、溶
剤を含む
請求項17~24のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項26】
請求項17~24のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物と、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項27】
更に、溶剤を含む請求項26記載の硬化性組成物。
【請求項28】
前記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有する請求項26又は27記載の硬化性組成物。
【請求項29】
更に、硬化促進剤を含む請求項26~28のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項30】
金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、
前記樹脂層が、請求項26~29のいずれかに記載の硬化性組成物から形成される
ことを特徴とする金属張積層板。
【請求項31】
請求項30の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板。
【請求項32】
含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、
前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位及びビニルエステルモノマーに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して70~100モル%であり、
前記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記含フッ素ビニルモノマーがテトラフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF
2H末端のCF
2Hの積分値が、CF
2全体の積分値に対して2%以下であり、
前記含フッ素ビニルモノマーがヘキサフルオロプロピレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF
2CFHCF
3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して2%以下であり、
前記含フッ素ビニルモノマーがクロロトリフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF
2H末端のCF
2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計が、CF
2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して2%以下であ
る含フッ素ポリマー
を含むことを特徴とする金属張積層板用組成物。
【請求項33】
前記含フッ素ポリマーの数平均分子量が1000~600000である請求項32記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項34】
前記ビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上である請求項32又は33記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項35】
前記ビニルエステルモノマーは、下記式:
CH
2=CH-O-C(=O)-R
A
(式中、R
Aは、炭素数1~4のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
で示されるモノマーである請求項32~34のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項36】
前記ビニルエステルモノマーは、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル、及び、ピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項32~35のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項37】
前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上である請求項32~36のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項38】
前記含フッ素ポリマーが、更に、前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーに基づく重合単位を含む請求項32~37のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項39】
前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーは、下記一般式(2):
【化3】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマーを含む請求項38記載の
金属張積層板用組成物。
【請求項40】
更に、溶
剤を含む
請求項32~39のいずれかに記載の金属張積層板用組成物。
【請求項41】
請求項32~39のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物と、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項42】
更に、溶剤を含む請求項41記載の硬化性組成物。
【請求項43】
前記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有する請求項41又は42記載の硬化性組成物。
【請求項44】
更に、硬化促進剤を含む請求項41~43のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項45】
金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、
前記樹脂層が、請求項41~44のいずれかに記載の硬化性組成物から形成される
ことを特徴とする金属張積層板。
【請求項46】
請求項45の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板。
【請求項47】
テトラフルオロエチレンに基づく重合単位及び/又はヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位とを含み、
前記テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、前記ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位及び前記アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して98~100モル%であるエポキシ樹脂。
【請求項48】
25℃における性状が液体である請求項47記載のエポキシ樹脂。
【請求項49】
数平均分子量が500~10000である請求項47又は48記載のエポキシ樹脂。
【請求項50】
テトラフルオロエチレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF
2H末端のCF
2Hの積分値が、CF
2全体の積分値に対して4%以下であり、
ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF
2CFHCF
3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して4%以下であることを特徴とする請求項47~49のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【請求項51】
前記アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位は、前記エポキシ樹脂の全重合単位に対して、10モル%以上である請求項47~50のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【請求項52】
前記テトラフルオロエチレンに基づく重合単位及びヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位の合計含有量は、前記エポキシ樹脂の全重合単位に対して、10モル%以上である請求項47~51のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【請求項53】
請求項47~52のいずれかに記載のエポキシ樹脂と、請求項32~39のいずれかに記載の
金属張積層板用組成物とを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項54】
更に、溶剤を含む請求項53記載の硬化性組成物。
【請求項55】
前記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有する請求項53又は54記載の硬化性組成物。
【請求項56】
更に、硬化促進剤を含む請求項53~55のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項57】
金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、
前記樹脂層が、請求項53~56のいずれかに記載の硬化性組成物から形成されることを特徴とする金属張積層板。
【請求項58】
請求項57の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属張積層板用含フッ素ポリマー、金属張積層板用組成物、硬化性組成物、金属張積層板及びプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器や、電子機器、通信機器は、非常にめざましく発展している。現在、これらの機器では、より高周帯域の周波数が使用される傾向にある。ところで、通常、これらの機器には、様々なプリント基板が使用されている。したがって、プリント基板にも、高周帯域の周波数に対応する優れた電気的特性や、ハンダ作業に耐え得るだけの優れた耐熱性等が求められている。プリント基板は基材及び銅箔層の2層で構成される積層板の場合、基材にポリイミドが使用され、接着剤層にエポキシ樹脂やアクリル樹脂などが使用されてきたが、絶縁性や接着性や耐熱性が十分ではなく、検討が行われていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属箔と基材とが強固に接着しており、優れた電気特性を示す金属張積層板を提供することを目的として、金属箔と、前記金属箔上に設けられた第一の樹脂層とを備える金属張積層板であって、前記第一の樹脂層がエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有する含フッ素ポリマーからなることを特徴とする金属張積層板、該金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えるフレキシブルプリント基板が記載されている。
【0004】
ところで、特許文献2には、特定の構造を有する活性エステル化合物、更に、該活性エステル化合物を少なくとも1種を含む活性エステル化合物成分と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-106491号公報
【文献】特開2006-307091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、エポキシ樹脂との相溶性に優れる金属張積層板用含フッ素ポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマー(但し、前記含フッ素ビニルモノマーを除く)に基づく重合単位とを含み、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下であることを特徴とする金属張積層板用含フッ素ポリマー(以下「本開示の第1の含フッ素ポリマー」とも記載する)を提供する。
【0008】
本開示はまた、上記本開示の第1の含フッ素ポリマーと、溶剤とを含むことを特徴とする金属張積層板用組成物(以下「本開示の第1の金属張積層板用組成物」とも記載する)を提供する。
【0009】
本開示はそして、含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含み、上記含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルに基づく重合単位(但し、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を除く)とを含み、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下であることを特徴とする硬化性組成物(以下「本開示の第1の硬化性組成物」とも記載する)を提供する。
本開示の第1の硬化性組成物は、更に、溶剤を含むことが好ましい。
本開示の第1の硬化性組成物は、含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有することが好ましい。
本開示の第1の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。
【0010】
上記ビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、上記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
【0011】
上記ビニルエステルモノマーは、下記式:
CH2=CH-O-C(=O)-RA
(式中、RAは、炭素数1~4のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)で示されるモノマーであることが好ましい。
【0012】
上記ビニルエステルモノマーは、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル、及び、ピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
上記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、上記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
【0014】
上記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、更に、上記含フッ素ビニルモノマー及び上記ビニルエステルモノマー以外のモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
【0016】
本開示の第1の含フッ素ポリマーにおいて、前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーは、下記一般式(2):
【化1】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマーを含むことが好ましい。
【0017】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、数平均分子量が1000~30000であることが好ましい。
【0018】
本開示はまた、金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が、上記硬化性組成物から形成されることを特徴とする金属張積層板(以下「本開示の第1の金属張積層板」とも記載する)を提供する。
本開示は更に、上記金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(以下「本開示の第1のプリント基板」とも記載する)を提供する。
【0019】
本開示はまた、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、テトラフルオロエチレン単位-ビニルエステル単位-テトラフルオロエチレン単位の連鎖が45モル%以上であり、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下であることを特徴とする含フッ素ポリマー(以下「本開示の第2の含フッ素ポリマー」とも記載する)を提供する。
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、数平均分子量が15000以下であることが好ましい。
本開示の第2の含フッ素ポリマーにおいて、前記ビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
本開示の第2の含フッ素ポリマーにおいて、前記ビニルエステルモノマーは、下記式:
CH
2=CH-O-C(=O)-R
A
(式中、R
Aは、炭素数1~4のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)で示されるモノマーであることが好ましい。
本開示の第2の含フッ素ポリマーにおいて、前記ビニルエステルモノマーは、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル、及び、ピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の第2の含フッ素ポリマーにおいて、前記テトラフルオロエチレンに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、更に、前記テトラフルオロエチレン及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
本開示の第2の含フッ素ポリマーにおいて、前記テトラフルオロエチレン及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーは、下記一般式(2):
【化2】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマーを含むことが好ましい。
本開示は更に、本開示の第2の含フッ素ポリマーと、溶剤とを含むことを特徴とする金属張積層板用組成物(以下「本開示の第2の金属張積層板用組成物」とも記載する)を提供する。
本開示はまた、本開示の第2の含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする硬化性組成物(以下「本開示の第2の硬化性組成物」ともいう)を提供する。
本開示の第2の硬化性組成物は、更に、溶剤を含むことが好ましい。
本開示の第2の硬化性組成物は、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有することが好ましい。
本開示の第2の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。
本開示は更に、金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、前記樹脂層が、上記硬化性組成物から形成されることを特徴とする金属張積層板(以下「本開示の第2の金属張積層板」とも記載する)を提供する。
本開示はそして、上記金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(以下「本開示の第2のプリント基板」とも記載する)を提供する。
【0020】
本開示はまた、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位及びビニルエステルモノマーに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して70~100モル%であり、含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、含フッ素ビニルモノマーがテトラフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF
2H末端のCF
2Hの積分値が、CF
2全体の積分値に対して2%以下であり、含フッ素ビニルモノマーがヘキサフルオロプロピレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF
2CFHCF
3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して2%以下であり、含フッ素ビニルモノマーがクロロトリフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF
2H末端のCF
2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計が、CF
2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して2%以下であることを特徴とする含フッ素ポリマー(以下「本開示の第3の含フッ素ポリマー」とも記載する)を提供する。
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、数平均分子量が1000~600000であることが好ましい。
本開示の第3の含フッ素ポリマーにおいて、前記ビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
本開示の第3の含フッ素ポリマーにおいて、前記ビニルエステルモノマーは、下記式:
CH
2=CH-O-C(=O)-R
A
(式中、R
Aは、炭素数1~4のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)で示されるモノマーであることが好ましい。
本開示の第3の含フッ素ポリマーにおいて、前記ビニルエステルモノマーは、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル、及び、ピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の第3の含フッ素ポリマーにおいて、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、前記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、更に、前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
本開示の第3の含フッ素ポリマーにおいて、前記含フッ素ビニルモノマー及び前記ビニルエステルモノマー以外のモノマーは、下記一般式(2):
【化3】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマーを含むことが好ましい。
本開示は更に、本開示の第3の含フッ素ポリマーと、溶剤とを含むことを特徴とする金属張積層板用組成物(以下「本開示の第3の金属張積層板用組成物」とも記載する)を提供する。
本開示はまた、本開示の第3の含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする硬化性組成物(以下「本開示の第3の硬化性組成物」ともいう)を提供する。
本開示の第3の硬化性組成物は、更に、溶剤を含むことが好ましい。
本開示の第3の硬化性組成物は、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有することが好ましい。
本開示の第3の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。
本開示は更に、金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、前記樹脂層が、上記硬化性組成物から形成されることを特徴とする金属張積層板(以下「本開示の第3の金属張積層板」とも記載する)を提供する。
本開示はそして、上記金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(以下「本開示の第3のプリント基板」とも記載する)を提供する。
【0021】
本開示はまた、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位及び/又はヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位とを含み、前記テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、前記ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位及び前記アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して98~100モル%であることを特徴とするエポキシ樹脂(以下「本開示のエポキシ樹脂」とも記載する)を提供する。
本開示のエポキシ樹脂は、25℃における性状が液体であることが好ましい。また、数平均分子量が500~10000であることも好ましい。
本開示のエポキシ樹脂は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値が、CF2全体の積分値に対して4%以下であり、ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して4%以下であることが好ましい。
本開示のエポキシ樹脂において、前記アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位は、前記エポキシ樹脂の全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
本開示のエポキシ樹脂において、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位及びヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位の合計含有量は、前記エポキシ樹脂の全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。
本開示はまた、本開示のエポキシ樹脂と、含フッ素ポリマーとを含むことを特徴とする硬化性組成物(以下「本開示の第4の硬化性組成物」ともいう)を提供する。
本開示の第4の硬化性組成物は、更に、溶剤を含むことが好ましい。
本開示の第4の硬化性組成物は、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、前記エポキシ樹脂を1~1000質量部含有することが好ましい。
本開示の第4の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。
本開示は更に、金属箔と、前記金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、前記樹脂層が、上記硬化性組成物から形成されることを特徴とする金属張積層板(以下「本開示の第4の金属張積層板」とも記載する)を提供する。
本開示はそして、上記金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(以下「本開示の第4のプリント基板」とも記載する)を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本開示の金属張積層板用含フッ素ポリマー、本開示の第2の含フッ素ポリマー、及び第3の含フッ素ポリマーは、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。また、本開示のエポキシ樹脂は、含フッ素ポリマーとの相溶性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特許文献1の金属張積層板では、第一の樹脂層がエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有する含フッ素ポリマーからなることによって、金属箔と基材とを強固に接着させ、優れた電気特性を示す金属張積層板を提供しているが、エポキシ樹脂との相溶性の点で改善の余地があった。
特許文献2では、活性エステル化合物として、フェノール性水酸基が芳香族酸あるいは脂肪酸エステル化されている基(活性エステル基)を有する化合物が開示されているが、その他の水酸基含有樹脂の開示はなく、さらに低誘電率性、低誘電正接性の性能を向上させるためには改善の余地があった。
【0024】
本開示の金属張積層板用含フッ素ポリマー(本開示の第1の含フッ素ポリマー)は、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマー(但し、前記含フッ素ビニルモノマーを除く)に基づく重合単位とを含み、-OH基を含むモノマーに基づく重合単位及び-COOH基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下であることによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。また、上記含フッ素ポリマーによって、活性エステルとして機能するため、金属張積層板の樹脂層を低誘電率及び低誘電正接にすることができる。また、金属張積層板の樹脂層と金属箔とを強固に接着させることもできる。本開示者の鋭意検討によって、上記含フッ素ポリマーが上記の特性を有し、金属張積層板用(金属張積層板の樹脂層用)として特に好適であることが見出された。
本開示は、上記含フッ素ポリマーの金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0025】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位(以下「含フッ素ビニルモノマー単位」と記載する)を含む。
【0026】
上記含フッ素ビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、CTFE、フッ化ビニル、HFP及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。低誘電率及び低誘電正接であり、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性、及び耐薬品性等に優れている点、また、低誘電率及び低誘電正接であり、耐候性及び防湿性にも優れている点で、TFE、CTFE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、塩素を含まない点でTFE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、共重合性に優れている点で、TFEが特に好ましい。
上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
上記含フッ素ビニルモノマー単位は、低誘電率及び低誘電正接に優れることから、上記含フッ素ポリマーを構成する全重合単位に対して10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が更により好ましく、50モル%以上が特に好ましく、また、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0028】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、ビニルエステルモノマー(但し含フッ素ビニルモノマーを除く)に基づく重合単位(以下「ビニルエステルモノマー単位」と記載する)を含む。ビニルエステルモノマー単位を含むことによって、活性エステルを生成し、エポキシ樹脂と反応させることができる。
【0029】
上記ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0030】
上記ビニルエステルモノマーとしては、活性エステルの反応性が高いことから、下記式(A):
CH2=CH-O-C(=O)-RA (A)
(式中、RAは、炭素数1~4のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基である。)
で示されるモノマーであることが好ましい。
【0031】
上記RAのアルキル基は炭素数1~4のアルキル基であり、上記炭素数は1~2が好ましく、1がより好ましい。
【0032】
上記RAのフェニル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシル基、ジアルキルアミノ基等が挙げられ、t-ブチル基がより好ましい。
【0033】
活性エステルの反応性が高いことから、上記ビニルエステルモノマーとしては、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル及びピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0034】
上記ビニルエステルモノマー単位は、エポキシ樹脂との相溶性、反応性が優れることから、上記含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、20モル%以上であることが好ましい。上記ビニルエステルモノマー単位は、全重合単位に対して30モル%以上がより好ましく、40モル%以上が更に好ましく、また、耐熱性が優れることから、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0035】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、上記式(A)で示されるモノマーに基づく重合単位が10~100モル%であることが好ましく、上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーに基づく重合単位が0~90モル%であることが好適な態様の一つである。上記式(A)で示されるモノマーに基づく重合単位は、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、20~90モル%であることがより好ましく、30~80モル%であることが更に好ましく、35~75モル%であることが更により好ましく、40~70モル%であることが特に好ましい。上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましく、25~65モル%であることが更により好ましく、30~60モル%であることが特に好ましい。
【0036】
金属張積層板に使用する観点からは耐熱性に優れることが求められる。従って、上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーとしては、架橋することでガラス転移温度を高くすることができるビニルエステルモノマーが好ましい。例えば、けい皮酸ビニル、β-スチリルアクリル酸ビニル、β-フリルアクリル酸ビニル、p-アジドけい皮酸ビニル等が挙げられる。
【0037】
上記ビニルエステルモノマーは、水酸基及びカルボキシル基を含まないものであってよい。
【0038】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、更に、上記含フッ素ビニルモノマー及び上記ビニルエステルモノマー以外のモノマー(以下「他のモノマー」と記載する)に基づく重合単位(以下「他のモノマー単位」と記載する)を含んでもよい。
上記他のモノマーとしては、水酸基を含まないアルキルビニルエーテル、ハロゲン原子及び水酸基を含まない非フッ素化オレフィン、NH基を含まないアミノ基含有モノマー、OH基を含まない加水分解性シリル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、オキセタン基含有モノマー、ヘテロ環含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリマーガラス転移温度を高くできる点で、(メタ)アクリル酸の芳香族エステルや脂環式エステルが好ましく、特に下記一般式(2):
【化4】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマー(2)や(メタ)アクリル酸フェニルが好ましい。また、活性エステルとして機能できる点で、(メタ)アクリル酸の芳香族エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸フェニルが好ましい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸またはアクリル酸を意味する。
【0039】
上記水酸基を含まないアルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられ、なかでも、エチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0040】
上記ハロゲン原子及び水酸基を含まない非フッ素化オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n-ブテン、インブテン等が挙げられる。
【0041】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えばCH2=CH-O-(CH2)x-NH2(x=0~10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH2=CH-O-CO(CH2)x-NH2(x=1~10)で示されるアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0042】
上記加水分解性シリル基含有モノマーとしては、例えばCH2=CHCO2(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=CHCO2(CH2)3Si(OC2H5)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OC2H5)3、CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3(OC2H5)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC2H5(OCH3)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2(OC2H5)、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2OH、CH2=CH(CH2)3Si(OCOCH3)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC2H5(OCOCH3)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiCH3(N(CH3)COCH3)2、CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3〔ON(CH3)C2H5〕2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC6H5〔ON(CH3)C2H5〕2等の(メタ)アクリル酸エステル類;CH2=CHSi[ON=C(CH3)(C2H5)]3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHSi(OC2H5)3、CH2=CHSiCH3(OCH3)2、CH2=CHSi(OCOCH3)3、CH2=CHSi(CH3)2(OC2H5)、CH2=CHSi(CH3)2SiCH3(OCH3)2、CH2=CHSiC2H5(OCOCH3)2、CH2=CHSiCH3〔ON(CH3)C2H5〕2、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が例示される。
【0043】
上記含フッ素ポリマーは、水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である。水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計は0.5モル%以下であることが好ましく、0.3モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましく、0.0モル%であることが特に好ましい。水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計が上記範囲であることによって、低誘電率性及び低誘電正接性を向上させることができる。
【0044】
上記水酸基(-OH基)を含むモノマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシカルボン酸ビニルエステル、ヒドロキシカルボン酸アリルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
上記ヒドロキシアルキルビニルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0046】
上記ヒドロキシアルキルアリルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0047】
上記ヒドロキシカルボン酸ビニルエステルとしては、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロパン酸ビニル、ヒドロキシブタン酸ビニル、ヒドロキシヘキサン酸ビニル、4-ヒドロキシシクロヘキシル酢酸ビニル等が挙げられる。
【0048】
上記ヒドロキシカルボン酸アリルエステルとしては、ヒドロキシ酢酸アリル、ヒドロキシプロパン酸アリル、ヒドロキシブタン酸アリル、ヒドロキシヘキサン酸アリル、4-ヒドロキシシクロヘキシル酢酸アリル等が挙げられる。
【0049】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0050】
上記カルボキシル基を含むモノマーとしては、式(B):
R1aR2aC=CR3a-(CH2)n-COOH (B)
(式中、R1a、R2aおよびR3aは、同じかまたは異なり、いずれも水素原子または炭素数1~10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基;nは0以上の整数)で示されるモノマーが挙げられる。たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデシレン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ノナデセン酸、エイコセン酸、22-トリコセン酸等が挙げられる。
また、上記カルボキシル基を含むモノマーとしては、桂皮酸、3-アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸等も挙げられる。
【0051】
上記他のモノマーとしては、硬化性を向上させる観点から、エポキシ基含有モノマー又はオキセタン基含有モノマーを含むことが好ましい。上記エポキシ基含有モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。上記オキセタン基含有モノマーとしては、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレートなどがあげられる。エポキシ基やオキセタン基含有モノマーの含有量は、全重合単位に対して、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上が更に好ましい。また、15モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
水酸基及びカルボキシル基を含まない上記他のモノマーとしては、密着性を向上させる観点から、水酸基及びカルボキシル基を含まないヘテロ環含有モノマーが好ましい。上記ヘテロ環含有モノマーとしては、フランやテトラヒドロフルフリルアクリレート、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートなどの環状エーテル基を含むモノマー、5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03.7]ノナン-2-イル=アクリラートなどのラクトン基を含むモノマー、無水イタコン酸、無水シトラコン酸および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含むモノマー、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン基を含むモノマーなどがあげられる。ヘテロ環含有モノマーの含有量は、全重合単位に対して、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上が更に好ましい。また、耐熱性の観点から20モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0052】
上記他のモノマーとしては、耐熱性、低誘電率、低誘電正接の観点から、上記モノマー(2)を含むことが好ましい。一般式(2)のXBはH又はCH3であり、Hであることが好ましい。耐熱性をより向上させることができることから、上記モノマー(2)に基づく重合単位が、全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、15モル%以上であり、更に好ましくは、20モル%以上である。また、低誘電率、低誘電正接に優れることから、上記モノマー(2)単位は、全重合単位に対して、90モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、80モル%以下であり、更に好ましくは、70モル%以下であり、更により好ましくは、60モル%以下であり、特に好ましくは、50モル%以下である。
【0053】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマー単位/ビニルエステルモノマー単位のモル比が(10~90)/(10~90)であることが好ましく、(20~80)/(20~80)であることがより好ましく、(30~70)/(30~70)であることが更に好ましい。
上記含フッ素ポリマーにおいて、上記含フッ素ビニルモノマー単位とビニルエステルモノマー単位との合計含有量は、全重合単位に対して、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、95モル%以上が更により好ましく、97モル%以上が特に好ましい。全重合単位に対して、100モル%であってもよい。
上記他のモノマー単位の含有量は、含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、5モル%以下が更により好ましく、3モル%以下が特に好ましい。また、含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、0モル%以上が好ましく、0.1モル%以上がより好ましく、0.5モル%以上が更に好ましい。
【0054】
本開示の第1の含フッ素ポリマーの特に好ましい態様は、10~90モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~80モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~80モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことである。
より好ましい態様は、20~80モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~70モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~60モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことであり、更に好ましい態様は、30~70モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、20~60モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~40モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことであり、特に好ましい態様は、35~65モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、25~55モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~35モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~5モル%の他のモノマー単位を含むことである。
【0055】
本開示の第1の含フッ素ポリマーの好ましい態様としてはまた、10~90モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~80モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、1~60モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことである。
より好ましい態様は、20~80モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~70モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、5~50モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことであり、更に好ましい態様は、30~70モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、20~60モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、10~40モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことであり、特に好ましい態様は、35~65モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、25~55モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、10~30モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことである。
【0056】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、酸性度の高いOH基、具体的には、pKaが25以下のOH基(ジメチルスルホキシド溶媒中での測定値)が、芳香族酸あるいは脂肪酸でエステル化されている基(以下「活性エステル基(A)」ともいう)を有する化合物(以下「活性エステル化合物(A)」ともいう)であることが好ましい。本開示の含フッ素ポリマーが、上記活性エステル化合物(A)であることによってより効率的にエポキシ樹脂と反応可能な化合物となる。
例えば、含フッ素アルコールは、酸性度の高いアルコールとして知られており、そのpKaが25(ジメチルスルホキシド溶媒中での測定値、以下同じ)以下である。例えば、非フッ素アルコールである(CH3)3COHのpKaが32.2であるのに対して、CF3CH2OHのpKaは23.5、(CF3)2CHOHのpKaは17.9であることが知られている。
それに対して、フェノール性の水酸基のpKaは、含フッ素アルコールと同じくらいである。ナフトールのpKaは17.2、2,6-ジt-ブチルフェノールのpKaは16.8であることが知られている。
【0057】
本開示の第1の含フッ素ポリマーはまた、上記活性エステル基(A)を有するモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
また、本開示の含フッ素ポリマーは、上記活性エステル基(A)を有するモノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して10~70モル%であることが好ましく、20~60モル%であることがより好ましく、25~55モル%であることが更に好ましい。
【0058】
本開示の第1の含フッ素ポリマーのフッ素含有量は、低誘電率及び低誘電正接である点から、20質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上である。
上記含フッ素ポリマーのフッ素含有量は、自動試料燃焼装置を用いた元素分析により求めることができる。
【0059】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、ビニルエステルモノマー単位当量が90~5000g/egであることが好ましい。より好ましくは、90~1000g/egであり、更に好ましくは、90~500g/egである。
上記ビニルエステルモノマー単位当量は、組成より計算することができる。
【0060】
本開示の第1の含フッ素ポリマーの数平均分子量は、1000~50000であることが好ましい。上記含フッ素ポリマーの数平均分子量がこのような範囲であると、活性エステルとしての反応性が上がるためエポキシ樹脂と効率的に反応でき、金属張積層板の樹脂層と金属箔とを強固に接着させることができる。上記含フッ素ポリマーの数平均分子量としてより好ましくは、1000~30000で、より好ましくは、1000~20000で、更に好ましくは1000~15000である。
また、ゲル分率を高くする観点から、数平均分子量は10000以下であることが好ましく、7000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、3000以下が特に好ましい。
上記含フッ素ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0061】
本開示の第1の含フッ素ポリマーのガラス転移温度は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、60℃以上が更により好ましく、65℃以上が更により好ましく、70℃以上が殊更に好ましく、100℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度は高い方がよいが、加工性の観点からは、200℃以下であることが好ましい。
上記ガラス転移温度は、ASTM E1356-98に従い、下記条件のDSC測定装置を使用してセカンドランにおける熱吸収から中点法によって決定した値である。
測定条件
昇温速度;20℃/min
試料量;10mg
ヒートサイクル;-50℃~150℃、昇温、冷却、昇温
【0062】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマー単位(T’)-ビニルエステルモノマー単位(V’)-含フッ素ビニルモノマー単位(T’)の連鎖(T’V’T’の連鎖)が45モル%以上であることが好ましい。T’V’T’の連鎖が45モル%以上であることによって、ゲル分率を大きくすることができる。よりゲル分率を向上できることから、T’V’T’の連鎖は50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上が更に好ましく、65モル%以上が更により好ましく、70モル%以上が殊更に好ましく、75モル%以上が特に好ましい。
上記T’V’T’の連鎖は、NMR分析のピーク面積より算出することができる。例えば、含フッ素ビニルモノマーがTFEであり、ビニルエステルモノマーが安息香酸ビニルの場合、T’V’T’と並んだ連鎖では、6.1ppm付近にピークを与える。同様に、T’V’V’T’連鎖では、5.9ppm付近、T’V’V’V’T’連鎖では、5.6ppm付近にピークを与える。これらのピークの面積から、下記の式を用いてT’V’T’の連鎖の割合を算出する。単位はモル%とする。
(T’V’T’の連鎖の割合)=((T’V’T’の連鎖のピーク面積)/((T’V’T’の連鎖のピーク面積)+(T’V’V’T’の連鎖のピーク面積)+(T’V’V’V’T’の連鎖のピーク面積)))×100
T’V’V’T’の連鎖の割合やT’V’V’V’T’の連鎖の割合についても同様に算出した。
上記含フッ素ビニルモノマー単位は、TFEに基づく重合単位(TFE単位)であることが好ましく、ビニルエステルモノマー単位は、安息香酸ビニルに基づく重合単位であることが好ましい。
【0063】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、該含フッ素ポリマーの組成を上記のようにすることにより製造することができる。
【0064】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、または塊重合法で製造することができるが、なかでも溶液重合法で得られたものが好ましい。
【0065】
本開示の第1の含フッ素ポリマーは、上記単位を与えるモノマーを有機溶媒、重合開始剤や連鎖移動剤などを用いる溶液重合法により重合することにより製造することが好ましい。重合温度は、通常0~150℃、好ましくは5~95℃である。重合圧は通常0.1~10MPaG(1~100kgf/cm2G)である。
【0066】
上記有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、tert-ブタノール、iso-プロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0067】
上記重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類(さらに必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの還元剤も併用できる);酸化剤(たとえば過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなど)と還元剤(たとえば亜硫酸ナトリウムなど)および遷移金属塩(たとえば硫酸鉄など)からなるレドックス開始剤類;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;イソプロポキシカルボニルパーオキサイド、tert-ブトキシカルボニルパーオキサイドなどのジアルコキシカルボニルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシピバレートなどのアルキルパーオキシエステル類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンテン酸)などのアゾ系化合物などが使用できる。
上記連鎖移動剤としては、たとえばアルコール類であり、好ましくは炭素数1~10のアルコール類、より好ましくは炭素数1~10の1価のアルコール類である。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、2-メチルプロパノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロペンタノール、メチルシクロペンタノール、ジメチルシクロペンタノールが使用できる。なかでもメタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロペンタノール、メチルシクロペンタノールなどが好ましく、特にメタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0068】
T’V’T’の連鎖が45モル%以上である含フッ素ポリマーを製造する場合、含フッ素ビニルモノマーの割合を多くしたり、反応器への時間あたりのビニルエステルモノマー供給量を少なくしたり、モノマーと溶剤を混合して反応器へ導入したりしながら重合したりすることで製造することができる。
【0069】
本開示の第1の金属張積層板用組成物は、本開示の第1の含フッ素ポリマーと、溶剤とを含む。
本開示の第1の金属張積層板用組成物は、含フッ素ポリマーが上記構成を有することによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。また、金属張積層板の樹脂層に用いることで該樹脂層を低誘電率及び低誘電正接にすることができる。本開示は、上記金属張積層板用組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0070】
本開示の第1の金属張積層板用組成物は、溶剤を含む。上記溶剤としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒としては特に限定されないが、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類;ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;これらの混合溶媒などがあげられる。
【0071】
本開示の第1の金属張積層板用組成物は、更に、硬化促進剤を含んでもよい。上記硬化促進剤としては、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。塩基性触媒であることが好ましく、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、ピリジン類及びイミダゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。更に好ましくは、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、及び、アミン錯塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、更により好ましくは、イミダゾール化合物、及び、ピリジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、4―ジメチルアミノピリジン、2-エチル-4-メチルイミダゾールである。
これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
本開示の第1の金属張積層板用組成物は、固形分100質量%に対して、上記含フッ素ポリマーが10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、また、100質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
【0073】
本開示の第1の金属張積層板用組成物は、エポキシ樹脂を含まないものであってよい。
【0074】
本開示の第1の硬化性組成物は、含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含み、上記含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルに基づく重合単位(但し、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を除く)とを含み、-OH基を含むモノマーに基づく重合単位及び-COOH基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である。
従来の金属張積層板の樹脂層に提案されていた含フッ素ポリマーはエポキシ樹脂との相溶性が十分とはいえなかった。
本開示の第1の硬化性組成物は、上記含フッ素ポリマーを含むことによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。そのため、低誘電率及び低誘電正接であり、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の特性にも優れる。
また、上記含フッ素ポリマーを含むことによって低誘電率及び低誘電正接の樹脂層を形成できるため、金属張積層板の樹脂層を形成するために特に好適である。
本開示の第1の硬化性組成物は、金属張積層板用硬化性組成物であることが好ましい。本開示は、上記硬化性組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0075】
本開示の第1の硬化性組成物において、上記含フッ素ポリマーは、本開示の金属張積層板用含フッ素ポリマー及び本開示の金属張積層板用組成物における含フッ素ポリマーと同じである。従って、本開示の金属張積層板用含フッ素ポリマー及び金属張積層板用組成物において記載した含フッ素ポリマーの好適な態様を全て採用できる。
【0076】
上記エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
より具体的には、ビスフェノールAなどに基づくエピビス型化合物のエピコート828(シェル化学社製)、アルキル変性型のEPICLON800、EPICLON4050、EPICLON1121N(DIC社製)、ショーダイン(昭和電工社製)、アラルダイトCY-183(チバガイギー社製)などのグリシジルエステル系化合物、ノボラック型のエピコート154(シェル化学社製)、DEN431、DEN438(ダウケミカル社製)、クレゾールノボラック型のECN1280、ECN1235(チバガイギー社製)、ウレタン変性型EPU-6、EPU-10(地竜化工業社製)などが挙げられる。
【0077】
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、100~1000000であることが好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量がこのような範囲であると、樹脂層と金属箔とを強固に接着させることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としてより好ましくは、1000~100000である。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0078】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ当量が50~5000g/egであることが好ましい。より好ましくは、50~1000g/egであり、更に好ましくは、50~500g/egである。
上記エポキシ当量は、JIS7236に準拠して求められる。
【0079】
本開示の第1の硬化性組成物において、比(含フッ素ポリマーの質量とビニルエステルモノマー単位当量を乗じた値/(エポキシ樹脂の質量とエポキシ当量とを乗じた値)が、0.4~2.0であることが好ましい。より好ましくは、0.5~1.5であり、更に好ましくは、0.7~1.3であり、更により好ましくは、0.8~1.2であり、特に好ましくは、0.9~1.1である。上記の比が上記範囲であることによって、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とを効率よく硬化させることができる。
【0080】
本開示の第1の硬化性組成物は、誘電率、誘電正接、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の観点から、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、50質量部以上含有することがより好ましく、80質量部以上含有することが更に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。
【0081】
本開示の第1の硬化性組成物は、エポキシ樹脂の他にも、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等を含んでもよい。
【0082】
本開示の第1の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤としては、上記硬化促進剤としては、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。塩基性触媒であることが好ましく、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、ピリジン類及びイミダゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。更に好ましくは、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、及び、アミン錯塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、更により好ましくは、イミダゾール化合物及びピリジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、4―ジメチルアミノピリジン、2-エチル-4-メチルイミダゾールである。
これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0083】
本開示の第1の硬化性組成物は、要求特性に応じて各種の添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0084】
本開示の第1の硬化性組成物が上述した各種の添加剤を含む場合、本開示の硬化性組成物は、固形分100質量%に対して、上記含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂の合計量が5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましい。
【0085】
本開示の第1の硬化性組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類;ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;これらの混合溶媒などがあげられる。
本開示の硬化性組成物は、固形分濃度が、上記含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂の合計で10~80質量%であることが好ましい。固形分濃度がこの範囲であれば、硬化性組成物の粘度が適当であり、塗装して均一な塗膜を形成できる。
【0086】
本開示の第1の硬化性組成物を調製する方法は特に限定されない。例えば、含フッ素ポリマーの溶液又は分散液と、エポキシ樹脂の溶液又は分散液とを混合する方法等が挙げられる。
【0087】
本開示の第1の硬化性組成物は、金属張積層板の樹脂層として使用できる他、粉体塗料用樹脂、光学用途用樹脂にも使用することができる。
【0088】
本開示の第1金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が本開示の硬化性組成物から形成されるものである。上記本開示の第1の硬化性組成物を硬化させることによって樹脂層を形成できる。
本開示の第1の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂を含み、上記含フッ素ポリマーが含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルに基づく重合単位(但し、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を除く)とを含み、-OH基を含むモノマーに基づく重合単位及び-COOH基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である。
【0089】
本開示の第1の金属張積層板は、金属箔と樹脂層とを備える。上記樹脂層は絶縁性に優れており、金属張積層板の基材としての役割を果たす。
【0090】
金属箔としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、亜鉛、またはこれらの合金からなる金属箔が例示され、好ましくは銅箔である。また、接着力の向上を目的として、サイディング、ニッケルメッキ、銅-亜鉛合金メッキ、またはアルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤などによって、化学的あるいは機械的な表面処理を施してもよい。
【0091】
上記樹脂層は、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、10質量部以上含有することがより好ましく、50質量部以上含有することが更に好ましく、80質量部以上含有することが特に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。含フッ素ポリマーが多すぎると接着性低下のおそれがあり、エポキシ樹脂が多すぎると絶縁性、耐湿性、耐熱性、難燃性の低下のおそれがある。
なお、上記樹脂層は、本開示の第1の硬化性組成物から得られるものであり、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とが架橋しているので、上記の割合は、上記含フッ素ポリマーに由来する樹脂部分100質量部に対するエポキシ樹脂に由来する樹脂部分の割合である。
また、本開示の第1の金属張積層板は、金属箔と上記樹脂層とを備える限り、更にその他の層を含んでいてもよく、金属箔及び上記樹脂層はそれぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0092】
本開示の第1の金属張積層板は、更に、上記樹脂層(以下「第一の樹脂層」と記載する)上に設けられた第二の樹脂層を備えるものであってもよい。すなわち、本開示の第1の金属張積層板は、金属箔、第一の樹脂層、及び、第二の樹脂層がこの順に積層されたものであってもよい。第一の樹脂層は基材としての役割を果たす他、金属箔と第二の樹脂層とを接着する接着剤層としての役割を果たしてもよい。
また、本開示の第1の金属張積層板においては、金属箔の第一の樹脂層が設けられている面とは異なる面(反対側の面)にも第一の樹脂層が設けられていてもよい。すなわち、本開示の第1の金属張積層板は、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層の順に積層されたものであってもよいし、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層、第二の樹脂層の順に積層されたものであってもよい。
【0093】
上記第二の樹脂層には、従来のプリント基板に使用されている樹脂を使用することができるが、上記第二の樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、耐熱性の観点から、ポリイミドからなることがより好ましい。
【0094】
第一の樹脂層としては、厚みが1~150μmのフィルムを用いることができる。第一の樹脂層を介して金属箔と第二の接着層とを接着する場合、第一の樹脂層は、乾燥後の厚みを1~100μmとすることができる。
【0095】
上記第二の樹脂層としては、厚みが1~150μmの樹脂フィルムを用いることができる。
【0096】
本開示の第1の金属張積層板は、金属箔と、エポキシ樹脂及び本開示の第1の金属張積層板用含フッ素ポリマーからなるフィルムと、を接着することにより金属張積層板を得る工程を含む製造方法により得ることができる。
上記接着の方法としては、金属箔とエポキシ樹脂及び上記含フッ素ポリマーを含むフィルムとを重ねた後、50~300℃で加熱プレス機により熱圧着させる方法が好適である。
上記製造方法は、更に、エポキシ樹脂及び上記含フッ素ポリマーを含む組成物を成形して、エポキシ樹脂及び上記含フッ素ポリマーからなるフィルムを得る工程を含むものであってもよい。
成形方法としては、溶融押出成形法、溶媒キャスト法、スプレー法などの方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂及び上記含フッ素ポリマーを含む組成物は、後述するように、有機溶剤、硬化剤等を含むものであってもよいし、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等を含んでもよい。
【0097】
本開示の第1の金属張積層板は、金属箔に、エポキシ樹脂及び上記含フッ素ポリマーを含む組成物を塗布して第一の樹脂層を形成する工程を含む製造方法によっても得ることができる。
上記製造方法は、上記第一の樹脂層を形成する工程の後、更に上記第一の樹脂層上に第二の樹脂層となる樹脂フィルムを接着させ、金属箔と、第一及び第二の樹脂層とを備える金属張積層板を得る工程を含むものであってもよい。樹脂フィルムとしては、第二の樹脂層を形成するのに好適な樹脂からなるフィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを接着する方法としては、50~300℃で加熱プレス機により熱圧着させる方法が好適である。
上記製造方法において、第一の樹脂層を形成するための組成物を金属箔に塗布する方法としては、刷毛塗り、浸漬塗布、スプレー塗布、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコーター塗布、カーテン塗布等の方法が挙げられる。組成物を塗布した後、熱風乾燥炉等により25~200℃で1分~1週間乾燥し、硬化させることができる。
【0098】
本開示の第1の金属張積層板は、本開示の第1の硬化性組成物を第二の樹脂層となる樹脂フィルムに塗布し第一の樹脂層を形成する工程、及び、当該形成工程により得られる第一の樹脂層と第二の樹脂層とからなる積層体の第一の樹脂層に金属箔を接着させて、金属箔と、第一及び第二の樹脂層とを備える金属張積層板を得る工程を含む製造方法によっても製造することができる。上記樹脂フィルムとしては、第二の樹脂層を形成するのに好適な樹脂からなるフィルムが挙げられる。
第一の樹脂層を形成するための組成物を樹脂フィルムに塗布する方法としては、刷毛塗り、浸漬塗布、スプレー塗布、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコーター塗布、カーテン塗布等の方法が挙げられる。組成物を塗布した後、熱風乾燥炉等により25~200℃で1分~1週間乾燥し、硬化させることができる。
上記製造方法において、第一の樹脂層と第二の樹脂層とからなる積層体の第一の樹脂層に金属箔を接着させる方法としては、第一の樹脂層と第二の樹脂層とからなる積層体と金属箔とを当該積層体の第一の樹脂層と金属箔とが接着することとなるように重ねた後、50~300℃で加熱プレス機により熱圧着させる方法が好適である。
【0099】
本開示はまた、本開示の第1の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板を提供する。本開示のプリント基板は、フレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよいが、フレキシブル基板であることが好ましい。
本開示の第1のプリント基板は、上記金属張積層板上にカバーレイフィルムを備えるものであってもよく、上記カバーレイフィルムは上記樹脂層を介して金属張積層板と接着していてもよい。
上記エッチングの方法は限定されず従来公知の方法を採用することができる。また、パターン回路は限定されず、どのようなパターン回路のプリント基板でもよい。
【0100】
本開示の第1のプリント基板の用途は限定されるものではない。例えば、本開示のプリント基板は、低誘電率及び低誘電正接である樹脂層を有するため、4G(37.5Mbps)、5G(数G~20Gbps)のように使用周波数帯が高い用途で使用されるプリント基板にも使用可能である。
【0101】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、TFEに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、TFE単位-ビニルエステルモノマー単位-TFE単位の連鎖が45モル%以上であり、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下であることを特徴とする。本開示の第2の含フッ素ポリマーは、上記構成を有することによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れ、更に、アセトン浸漬後のゲル分率を大きくすることができる。
【0102】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、TFE単位(T)-ビニルエステルモノマー単位(V)-TFE単位(T)の連鎖(TVTの連鎖)が45モル%以上である。TVTの連鎖が45モル%以上であることによって、エポキシ樹脂との反応性に優れる。よりエポキシ樹脂との反応性に優れることから、本開示の第2の含フッ素ポリマーは、TVTの連鎖が50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上が更に好ましく、65モル%以上が更により好ましく、70モル%以上が殊更に好ましく、75モル%以上が特に好ましい。
上記TVTの連鎖は、NMR分析のピーク面積より算出することができる。例えば、ビニルエステルモノマーが安息香酸ビニルの場合、TVTと並んだ連鎖では、6.1ppm付近にピークを与える。同様に、TVVT連鎖では、5.9ppm付近、TVVVT連鎖では、5.6ppm付近にピークを与える。これらのピークの面積から、それぞれの連鎖の割合を算出する。他のモノマーを使用した場合でもピークの位置はこれに類して連鎖の割合を算出する。
上記TVTの連鎖が45モル%以上である含フッ素ポリマーは、TFEの割合を多くしたり、ビニルエステルモノマーの反応器への時間あたりの供給量を少なくしながら重合することで製造することができる。
【0103】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、TFEに基づく重合単位(以下「TFE単位」とも記載する)を含む。上記TFE単位は、低誘電率及び低誘電正接に優れることから、上記含フッ素ポリマーを構成する全重合単位に対して10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が更により好ましく、50モル%以上が特に好ましく、また、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0104】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、ビニルエステルモノマー(但し含フッ素ビニルモノマーを除く)に基づく重合単位(以下「ビニルエステルモノマー単位」と記載する)を含む。ビニルエステルモノマー単位を含むことによって、活性エステルを生成し、エポキシ樹脂と反応させることができる。
【0105】
上記ビニルエステルモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同じである。特に、式(A)で示されるモノマーが好ましく、特に、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル及びピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0106】
上記ビニルエステルモノマー単位は、エポキシ樹脂との相溶性、反応性が優れることから、本開示の第2の含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。上記ビニルエステルモノマー単位は、全重合単位に対して30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が更により好ましく、また、耐熱性が優れることから、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0107】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、上記式(A)で示されるモノマーに基づく重合単位が10~100モル%であることが好ましく、上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーに基づく重合単位が0~90モル%であることが好適な態様の一つである。上記式(A)で示されるモノマーに基づく重合単位は、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、20~90モル%であることがより好ましく、30~80モル%であることが更に好ましく、35~75モル%であることが更により好ましく、40~70モル%であることが特に好ましい。上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましく、25~65モル%であることが更により好ましく、30~60モル%であることが特に好ましい。
【0108】
金属張積層板に使用する観点からは耐熱性に優れることが求められる。従って、上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーとしては、架橋することでガラス転移温度を高くすることができるビニルエステルモノマーが好ましい。例えば、けい皮酸ビニル、β-スチリルアクリル酸ビニル、β-フリルアクリル酸ビニル、p-アジドけい皮酸ビニル等が挙げられる。
【0109】
上記ビニルエステルモノマーは、水酸基及びカルボキシル基を含まないものであってよい。
【0110】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、更に、TFE及び上記ビニルエステルモノマー以外のモノマー(以下「他のモノマー」と記載する)に基づく重合単位(以下「他のモノマー単位」と記載する)を含んでもよい。
上記他のモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同じであり、水酸基を含まないアルキルビニルエーテル、ハロゲン原子及び水酸基を含まない非フッ素化オレフィン、NH基を含まないアミノ基含有モノマー、OH基を含まない加水分解性シリル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、オキセタン基含有モノマー、ヘテロ環含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー等が挙げられる。各モノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーで例示したものを全て採用できる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリマーのガラス転移温度を高くできる点で、(メタ)アクリル酸の芳香族エステルや脂環式エステルが好ましく、特に下記一般式(2):
【化5】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマー(2)や(メタ)アクリル酸フェニルが好ましい。また、活性エステルとして機能できる点で、(メタ)アクリル酸の芳香族エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸フェニルが好ましい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸またはアクリル酸を意味する。
【0111】
上記他のモノマーとしては、硬化性の観点から、エポキシ基含有モノマー又はオキセタン基含有モノマーを含むことが好ましい。上記エポキシ基含有モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。上記オキセタン基含有モノマーとしては、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレートなどがあげられる。エポキシ基やオキセタン基含有モノマーの含有量は、全重合単位に対して、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上が更に好ましい。また、15モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
水酸基及びカルボキシル基を含まない上記他のモノマーとしては、密着性を向上させる観点から、水酸基及びカルボキシル基を含まないヘテロ環含有モノマーが好ましい。上記ヘテロ環含有モノマーとしては、ダイフランやテトラヒドロフルフリルアクリレート、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートなどの環状エーテル基を含むモノマー、5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03.7]ノナン-2-イル=アクリラートなどのラクトン基を含むモノマー、無水イタコン酸、無水シトラコン酸および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含むモノマー、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン基を含むモノマーなどがあげられる。ヘテロ環含有モノマーの含有量は、全重合単位に対して、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上が更に好ましい。また、耐熱性の観点から20モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0112】
上記他のモノマーとしては、耐熱性の観点から、上記モノマー(2)を含むことが好ましい。一般式(2)のXBはH又はCH3であり、Hであることが好ましい。耐熱性をより向上させることができることから、上記モノマー(2)に基づく重合単位が、全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、15モル%以上であり、更に好ましくは、20モル%以上である。また、上記モノマー(2)単位は、全重合単位に対して、90モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、80モル%以下であり、更に好ましくは、70モル%以下であり、更により好ましくは、60モル%以下であり、特に好ましくは、50モル%以下である。
【0113】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である。水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計は0.5モル%以下であることが好ましく、0.3モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましく、0.0モル%であることが特に好ましい。水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計が上記範囲であることによって、低誘電率性及び低誘電正接性を向上させることができる。
上記水酸基(-OH基)を含むモノマー、上記カルボキシル基を含むモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同じである。
【0114】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、TFE単位/ビニルエステルモノマー単位のモル比が(10~90)/(10~90)であることが好ましく、(20~80)/(20~80)であることがより好ましく、(30~70)/(30~70)であることが更に好ましい。
上記含フッ素ポリマーにおいて、上記TFE単位とビニルエステルモノマー単位との合計含有量は、全重合単位に対して、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、95モル%以上が更により好ましく、97モル%以上が特に好ましい。全重合単位に対して、100モル%であってもよい。
上記他のモノマー単位の含有量は、含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、5モル%以下が更により好ましく、3モル%以下が特に好ましい。また、含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、0モル%以上が好ましく、0.1モル%以上がより好ましく、0.5モル%以上が更に好ましい。
【0115】
本開示の第2の含フッ素ポリマーの特に好ましい態様は、10~90モル%のTFE単位、10~80モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~80モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことである。
より好ましい態様は、20~80モル%のTFE単位、10~70モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~60モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことであり、更に好ましい態様は、30~70モル%のTFE単位、20~60モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~40モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことであり、特に好ましい態様は、35~65モル%のTFE単位、25~55モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~35モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~5モル%の他のモノマー単位を含むことである。
【0116】
本開示の第2の含フッ素ポリマーの好ましい態様としてはまた、10~90モル%のTFE単位、10~80モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、1~60モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことである。
より好ましい態様は、20~80モル%のTFE単位、10~70モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、3~50モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことであり、更に好ましい態様は、30~70モル%のTFE単位、20~60モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、5~40モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことであり、特に好ましい態様は、35~65モル%のTFE単位、25~55モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、10~30モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことである。
【0117】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、酸性度の高いOH基、具体的には、pKaが25以下のOH基(ジメチルスルホキシド溶媒中での測定値)が、芳香族酸あるいは脂肪酸でエステル化されている基(以下「活性エステル基(A)」ともいう)を有する化合物(以下「活性エステル化合物(A)」ともいう)であることが好ましい。本開示の第2の含フッ素ポリマーが、上記活性エステル化合物(A)であることによってより効率的にエポキシ樹脂と反応可能な化合物となる。
本開示の第2の含フッ素ポリマーはまた、上記活性エステル基(A)を有するモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
また、本開示の第2の含フッ素ポリマーは、上記活性エステル基(A)を有するモノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して10~70モル%であることが好ましく、20~60モル%であることがより好ましく、25~55モル%であることが更に好ましい。
【0118】
本開示の第2の含フッ素ポリマーのフッ素含有量は、低誘電率及び低誘電正接である点から、20質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上である。上記含フッ素ポリマーのフッ素含有量は、自動試料燃焼装置を用いた元素分析により求めることができる。
【0119】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、ビニルエステルモノマー単位当量が90~5000g/egであることが好ましい。より好ましくは、90~1000g/egであり、更に好ましくは、90~700g/egである。上記ビニルエステルモノマー単位当量は、組成より計算することができる。
【0120】
本開示の第2の含フッ素ポリマーの数平均分子量は、1000~50000であることが好ましい。上記含フッ素ポリマーの数平均分子量がこのような範囲であると、活性エステルとしての反応性が上がるためエポキシ樹脂と効率的に反応でき、金属張積層板の樹脂層と金属箔とを強固に接着させることができる。上記含フッ素ポリマーの数平均分子量としてより好ましくは、1000~30000で、より好ましくは、1000~20000で、より好ましくは1000~15000である。
数平均分子量は1000~10000であることがより好ましく、1000~7000がより好ましく、1000~5000が更に好ましく、1000~3000が特に好ましい。
上記含フッ素ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0121】
本開示の第2の含フッ素ポリマーのガラス転移温度は、0℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、60℃以上が更により好ましく、65℃以上が更により好ましく、70℃以上が殊更に好ましく、100℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度は高い方がよいが、加工性の観点からは、200℃以下であることが好ましい。
【0122】
本開示の第2の含フッ素ポリマーは、本開示の第1の含フッ素ポリマーについて記載した方法を用いて製造することができる。
【0123】
本開示の第2の金属張積層板用組成物は、本開示の第2の含フッ素ポリマーと、溶剤とを含む。本開示の第2の金属張積層板用組成物は、含フッ素ポリマーが上記構成を有することによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。また、金属張積層板の樹脂層に用いることで該樹脂層を低誘電率及び低誘電正接にすることができる。本開示は、上記金属張積層板用組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0124】
本開示の第2の金属張積層板用組成物は、溶剤を含む。上記溶剤としては、本開示の第1の金属張積層板用組成物と同じである。
本開示の第2の金属張積層板用組成物は、更に、硬化促進剤を含んでもよい。上記硬化促進剤としては、本開示の第1の金属張積層板用組成物と同じである。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本開示の第2の金属張積層板用組成物は、固形分100質量%に対して、上記含フッ素ポリマーが10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、また、100質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
本開示の第2の金属張積層板用組成物は、エポキシ樹脂を含まないものであってよい。
【0125】
本開示の第2の硬化性組成物は、本開示の第2の含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含む。従来の金属張積層板の樹脂層に提案されていた含フッ素ポリマーはエポキシ樹脂との相溶性が十分とはいえなかった。
本開示の第2の硬化性組成物は、本開示の第2の含フッ素ポリマーを含むことによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。そのため、低誘電率及び低誘電正接であり、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の特性にも優れる。
また、本開示の第2の含フッ素ポリマーを含むことによって低誘電率及び低誘電正接の樹脂層を形成できるため、金属張積層板の樹脂層を形成するために特に好適である。
本開示の第2の硬化性組成物は、金属張積層板用硬化性組成物であることが好ましい。本開示は、上記硬化性組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0126】
本開示の第2の硬化性組成物において、上記エポキシ樹脂は、本開示の第1の硬化性組成物と同じであり、第1の硬化性組成物において記載した全ての態様を採用できる。
【0127】
本開示の第2の硬化性組成物において、比(含フッ素ポリマーの質量とビニルエステルモノマー単位当量を乗じた値/(エポキシ樹脂の質量とエポキシ当量とを乗じた値)が、0.4~2.0であることが好ましい。より好ましくは、0.5~1.5であり、更に好ましくは、0.7~1.3であり、更により好ましくは、0.8~1.2であり、特に好ましくは、0.9~1.1である。上記の比が上記範囲であることによって、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とを効率よく硬化させることができる。
【0128】
本開示の第2の硬化性組成物は、誘電率、誘電正接、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の観点から、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、50質量部以上含有することがより好ましく、80質量部以上含有することが更に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。
【0129】
本開示の第2の硬化性組成物は、エポキシ樹脂の他にも、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等を含んでもよい。
【0130】
本開示の第2の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤としては、本開示の第1の硬化性組成物と同じである。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0131】
本開示の第2の硬化性組成物は、要求特性に応じて各種の添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0132】
本開示の第2の硬化性組成物が上述した各種の添加剤を含む場合、本開示の第2の硬化性組成物は、固形分100質量%に対して、本開示の第2の含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂の合計量が5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましい。
【0133】
本開示の第2の硬化性組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶媒としては、本開示の第1の硬化性組成物と同じである。本開示の第2の硬化性組成物は、固形分濃度が、本開示の第2の含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂の合計で10~80質量%であることが好ましい。固形分濃度がこの範囲であれば、硬化性組成物の粘度が適当であり、塗装して均一な塗膜を形成できる。
【0134】
本開示の第2の硬化性組成物を調製する方法は特に限定されない。例えば、含フッ素ポリマーの溶液又は分散液と、エポキシ樹脂の溶液又は分散液とを混合する方法等が挙げられる。
【0135】
本開示の第2の硬化性組成物は、金属張積層板の樹脂層として使用できる他、粉体塗料用樹脂、光学用途用樹脂にも使用することができる。
【0136】
本開示の第2の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が本開示の第2の硬化性組成物から形成されるものである。上記本開示の第2の硬化性組成物を硬化させることによって樹脂層を形成できる。
本開示の第2の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂を含み、上記含フッ素ポリマーがTFEに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、TFE単位-ビニルエステルモノマー単位-TFE単位の連鎖が45モル%以上であり、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である。
【0137】
本開示の第2の金属張積層板は、金属箔と樹脂層とを備える。上記樹脂層は絶縁性に優れており、金属張積層板の基材としての役割を果たす。
【0138】
金属箔としては、本開示の第1の金属張積層板と同じである。
【0139】
上記樹脂層は、本開示の第2の含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、10質量部以上含有することがより好ましく、50質量部以上含有することが更に好ましく、80質量部以上含有することが特に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。含フッ素ポリマーが多すぎると接着性低下のおそれがあり、エポキシ樹脂が多すぎると絶縁性、耐湿性、耐熱性、難燃性の低下のおそれがある。
なお、上記樹脂層は、本開示の第2の硬化性組成物から得られるものであり、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とが架橋しているので、上記の割合は、上記含フッ素ポリマーに由来する樹脂部分100質量部に対するエポキシ樹脂に由来する樹脂部分の割合である。
また、本開示の第2の金属張積層板は、金属箔と上記樹脂層とを備える限り、更にその他の層を含んでいてもよく、金属箔及び上記樹脂層はそれぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0140】
本開示の第2の金属張積層板は、更に、上記樹脂層(以下「第一の樹脂層」と記載する)上に設けられた第二の樹脂層を備えるものであってもよい。すなわち、本開示の第2の金属張積層板は、金属箔、第一の樹脂層、及び、第二の樹脂層がこの順に積層されたものであってもよい。第一の樹脂層は基材としての役割を果たす他、金属箔と第二の樹脂層とを接着する接着剤層としての役割を果たしてもよい。
また、本開示の第2の金属張積層板においては、金属箔の第一の樹脂層が設けられている面とは異なる面(反対側の面)にも第一の樹脂層が設けられていてもよい。すなわち、本開示の第2の金属張積層板は、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層の順に積層されたものであってもよいし、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層、第二の樹脂層の順に積層されたものであってもよい。
【0141】
上記第二の樹脂層には、従来のプリント基板に使用されている樹脂を使用することができるが、上記第二の樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、耐熱性の観点から、ポリイミドからなることがより好ましい。
【0142】
第一の樹脂層としては、厚みが1~150μmのフィルムを用いることができる。第一の樹脂層を介して金属箔と第二の接着層とを接着する場合、第一の樹脂層は、乾燥後の厚みを1~100μmとすることができる。
【0143】
上記第二の樹脂層としては、厚みが1~150μmの樹脂フィルムを用いることができる。
【0144】
本開示の第2の金属張積層板は、含フッ素ポリマーとして本開示の第2の含フッ素ポリマーを使用すること以外は、本開示の第1の金属張積層体と同じ方法で製造できる。
【0145】
本開示はまた、本開示の第2の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(本開示の第2のプリント基板)を提供する。本開示の第2のプリント基板は、フレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよいが、フレキシブル基板であることが好ましい。
本開示の第2のプリント基板は、上記金属張積層板上にカバーレイフィルムを備えるものであってもよく、上記カバーレイフィルムは上記樹脂層を介して金属張積層板と接着していてもよい。
上記エッチングの方法は限定されず従来公知の方法を採用することができる。また、パターン回路は限定されず、どのようなパターン回路のプリント基板でもよい。
【0146】
本開示の第2のプリント基板の用途は限定されるものではない。例えば、本開示の第2のプリント基板は、低誘電率及び低誘電正接である樹脂層を有するため、4G(37.5Mbps)、5G(数G~20Gbps)のように使用周波数帯が高い用途で使用されるプリント基板にも使用可能である。
【0147】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位及びビニルエステルモノマーに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して70~100モル%であり、前記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記含フッ素ビニルモノマーがテトラフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値が、CF2全体の積分値に対して2%以下であり、前記含フッ素ビニルモノマーがヘキサフルオロプロピレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して2%以下であり、前記含フッ素ビニルモノマーがクロロトリフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計が、CF2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して2%以下であることを特徴とする。本開示の第3の含フッ素ポリマーは、上記構成を有することによって、誘電正接を小さくすることができる。
【0148】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位(以下「含フッ素ビニルモノマー単位」と記載する)を含む。
【0149】
上記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕及びクロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕からなる群より選択される少なくとも1種を含む。塩素を含まない点でTFE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、共重合性に優れている点で、TFEが特に好ましい。
【0150】
上記含フッ素ビニルモノマー単位は、低誘電率及び低誘電正接に優れることから、本開示の第3の含フッ素ポリマーを構成する全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が更により好ましく、50モル%以上が特に好ましい。また、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0151】
上記含フッ素ビニルモノマーがTFEを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値は、CF2全体の積分値に対して2%以下である。このように、-CF2H末端の割合を少なくすることで、誘電正接を小さくすることができる。低誘電正接により優れることから、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値は、CF2全体の積分値に対して、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0152】
上記含フッ素ビニルモノマーがHFPを含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値は、CF全体の積分値に対して2%以下である。このように、-CF2CFHCF3末端の割合を少なくすることで、誘電正接を小さくすることができる。低誘電正接により優れることから、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値は、CF全体の積分値に対して、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0153】
上記含フッ素ビニルモノマーがCTFEを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計は、CF2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して2%以下である。このように、-CF2H末端及び-CFClH末端の割合を少なくすることで、誘電正接を小さくすることができる。低誘電正接により優れることから、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計は、CF2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0154】
なお、19F-NMRの測定方法や積分値の算出方法は特に限定されず、通常の方法で実施可能である。
【0155】
-CF2H末端、-CF2CFHCF3末端、-CFClH末端の割合は、例えば、以下の方法で低減できる。
(方法1)フッ素系溶媒を用いて重合する。
(方法2)連鎖移動性の高いモノマーの使用を避ける。
(方法3)ポリマー組成を調整する。
(方法4)ポリマーを高分子量化する。
【0156】
上記方法1に関し、フッ素系溶媒としては、フッ素を有する溶媒であれば特に限定されないが、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、ハイドロフルオロエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばC6F13H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C6F13C2H5(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、C2F5CHFCHFCF3(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物としては、たとえばヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばCF3CH2OCF2CF2H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、C4F9OCH3(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、C4F9OC2H5(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、C2F5CF(OCH3)C3F7(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンとしては、たとえばペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。
フルオロアルコールとしては、たとえば2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。なかでも、フッ素化アルカン、ハイドロフルオロエーテル及びフルオロアルコールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ハイドロフルオロエーテルがより好ましい。
【0157】
上記方法2に関し、連鎖移動性が高いモノマーとしては、ビニルエーテル類やアリルエーテル類などが挙げられ、より詳細には、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテルや、その他の官能基を含有するビニルエーテル類、アリルエーテル類などが挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、クロロプロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
アリルエーテルとしては、例えば、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノールなどが挙げられる。
ヒドロキシアルキルビニルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
ヒドロキシアルキルアリルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどが挙げられる。その他の官能基を含有するアリルエーテル類として、エポキシ基を有するアリルグリシジルエーテル〔AGE〕などが挙げられる。
連鎖移動性が高いモノマーに基づく重合単位は、本開示の第3の含フッ素ポリマーを構成する全重合単位に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下が更に好ましく、0モル%であってもよい。
【0158】
上記方法3に関し、ポリマー組成の調整の一例として、含フッ素ビニルモノマー単位を少なくすることが挙げられる。このような観点から、含フッ素ビニルモノマー単位は、本開示の第3の含フッ素ポリマーを構成する全重合単位に対して、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下が更に好ましく、30モル%以下が特に好ましい。
【0159】
ポリマー組成の調整の他の例として、残存モノマーが適度に存在する条件で重合することが挙げられる。残存モノマーが適度に存在する条件としては、例えば、モノマーを添加後、所定の温度で重合反応を進行させる熟成工程(熟成反応)の時間を短くすることが挙げられる。熟成工程の時間は、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましく、15分以下が更に好ましく、0分、すなわち、熟成反応を実施しないことが特に好ましい。
【0160】
上記方法4に関し、本開示の第3の含フッ素ポリマーの数平均分子量は、-CF2H末端、-CF2CFHCF3末端、-CFClH末端の割合低減の観点から、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、7000以上が更に好ましく、9000以上が更により好ましく、10000以上が特に好ましい。また、活性エステルとしての反応性等の観点から、600000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、40000以下が更に好ましく、30000以下が特に好ましい。
上記含フッ素ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0161】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、ビニルエステルモノマー(但し含フッ素ビニルモノマーを除く)に基づく重合単位(以下「ビニルエステルモノマー単位」と記載する)を含む。ビニルエステルモノマー単位を含むことによって、活性エステルを生成し、エポキシ樹脂と反応させることができる。
【0162】
上記ビニルエステルモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同じである。特に、式(A)で示されるモノマーが好ましく、特に、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、酢酸ビニル及びピバリン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0163】
上記ビニルエステルモノマー単位は、エポキシ樹脂との相溶性、反応性が優れることから、本開示の第3の含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が更により好ましく、50モル%以上が特に好ましい。また、耐熱性が優れることから、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0164】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、上記式(A)で示されるモノマーに基づく重合単位が10~100モル%であることが好ましく、上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーに基づく重合単位が0~90モル%であることが好適な態様の一つである。上記式(A)で示されるモノマーに基づく重合単位は、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、20~90モル%であることがより好ましく、30~80モル%であることが更に好ましく、35~75モル%であることが更により好ましく、40~70モル%であることが特に好ましい。上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーに基づく重合単位は、上記ビニルエステルモノマー単位の合計100モル%に対して、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましく、25~65モル%であることが更により好ましく、30~60モル%であることが特に好ましい。
【0165】
金属張積層板に使用する観点からは耐熱性に優れることが求められる。従って、上記式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマーとしては、架橋することでガラス転移温度を高くすることができるビニルエステルモノマーが好ましい。例えば、けい皮酸ビニル、β-スチリルアクリル酸ビニル、β-フリルアクリル酸ビニル、p-アジドけい皮酸ビニル等が挙げられる。
【0166】
上記ビニルエステルモノマーは、水酸基及びカルボキシル基を含まないものであってよい。
【0167】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、更に、上記含フッ素ビニルモノマー及び上記ビニルエステルモノマー以外のモノマー(以下「他のモノマー」と記載する)に基づく重合単位(以下「他のモノマー単位」と記載する)を含んでもよい。
上記他のモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同じであり、水酸基を含まないアルキルビニルエーテル、ハロゲン原子及び水酸基を含まない非フッ素化オレフィン、NH基を含まないアミノ基含有モノマー、OH基を含まない加水分解性シリル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、オキセタン基含有モノマー、ヘテロ環含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー等が挙げられる。各モノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーで例示したものを全て採用できる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリマーのガラス転移温度を高くできる点で、脂環式エステルが好ましく、特に下記一般式(2):
【化6】
(式中、X
Bは、H又はCH
3である。)で示されるモノマー(2)や(メタ)アクリル酸フェニルが好ましい。また、活性エステルとして機能できる点で、(メタ)アクリル酸の芳香族エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸フェニルが好ましい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸またはアクリル酸を意味する。
【0168】
上記他のモノマーとしては、硬化性の観点から、エポキシ基含有モノマー又はオキセタン基含有モノマーを含むことが好ましい。上記エポキシ基含有モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。上記オキセタン基含有モノマーとしては、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレートなどがあげられる。エポキシ基やオキセタン基含有モノマーの含有量は、全重合単位に対して、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上が更に好ましい。また、15モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
水酸基及びカルボキシル基を含まない上記他のモノマーとしては、密着性を向上させる観点から、水酸基及びカルボキシル基を含まないヘテロ環含有モノマーが好ましい。上記ヘテロ環含有モノマーとしては、ダイフランやテトラヒドロフルフリルアクリレート、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートなどの環状エーテル基を含むモノマー、5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03.7]ノナン-2-イル=アクリラートなどのラクトン基を含むモノマー、無水イタコン酸、無水シトラコン酸および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含むモノマー、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン基を含むモノマーなどがあげられる。ヘテロ環含有モノマーの含有量は、全重合単位に対して、0.1モル%以上が好ましく、0.5モル%以上がより好ましく、1モル%以上が更に好ましい。また、耐熱性の観点から20モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0169】
上記他のモノマーとしては、耐熱性の観点から、上記モノマー(2)を含むことが好ましい。一般式(2)のXBはH又はCH3であり、Hであることが好ましい。耐熱性をより向上させることができることから、上記モノマー(2)に基づく重合単位が、全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、15モル%以上であり、更に好ましくは、20モル%以上である。また、上記モノマー(2)単位は、全重合単位に対して、90モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、80モル%以下であり、更に好ましくは、70モル%以下であり、更により好ましくは、60モル%以下であり、特に好ましくは、50モル%以下である。
【0170】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計が全重合単位に対して1モル%以下である。水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計は0.5モル%以下であることが好ましく、0.3モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましく、0.0モル%であることが特に好ましい。水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位及びカルボキシル基(-COOH基)を含むモノマーに基づく重合単位の合計が上記範囲であることによって、低誘電率性及び低誘電正接性を向上させることができる。
上記水酸基(-OH基)を含むモノマー、上記カルボキシル基を含むモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同じである。
【0171】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマー単位/ビニルエステルモノマー単位のモル比が(10~90)/(10~90)であることが好ましく、(20~80)/(20~80)であることがより好ましく、(30~70)/(30~70)であることが更に好ましい。
【0172】
本開示の第3の含フッ素ポリマーにおいて、含フッ素ビニルモノマー単位及びビニルエステルモノマー単位の合計含有量は、含フッ素ポリマーの全重合単位に対して70~100モル%である。低誘電率及び低誘電正接に優れることから、80~100モル%が好ましく、90~100モル%がより好ましく、95~100モル%が更に好ましく、97~100モル%が特に好ましい。
【0173】
本開示の第3の含フッ素ポリマーでは、水酸基(-OH基)を含むモノマーに基づく重合単位を少なくすることで、誘電正接をより小さくすることができる。このような観点から、本開示の第3の含フッ素ポリマーは、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下が更に好ましく、0モル%、すなわち、水酸基を含むモノマーに基づく重合単位を有しないことが特に好ましい。
なお、水酸基を含むモノマーとしては、本開示の第1の含フッ素ポリマーについての説明で例示したものが挙げられる。
【0174】
本開示の第3の含フッ素ポリマーの好ましい態様は、10~90モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~80モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~80モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことである。
より好ましい態様は、20~80モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~70モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~60モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことであり、更に好ましい態様は、30~70モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、20~60モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~40モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~10モル%の他のモノマー単位を含むことであり、特に好ましい態様は、35~65モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、25~55モル%の式(A)で示されるモノマー単位、0~35モル%の式(A)で示されるモノマー以外のビニルエステルモノマー単位、及び、0~5モル%の他のモノマー単位を含むことである。
【0175】
本開示の第3の含フッ素ポリマーの好ましい態様としてはまた、10~90モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~80モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、1~60モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことである。
より好ましい態様は、20~80モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、10~70モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、5~50モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことであり、更に好ましい態様は、30~70モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、20~60モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、10~40モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことであり、特に好ましい態様は、35~65モル%のTFE単位、HFP単位又はCTFE単位、25~55モル%の式(A)で示されるモノマー単位、及び、10~30モル%の一般式(2)で示されるモノマー(2)単位を含むことである。
【0176】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、酸性度の高いOH基、具体的には、pKaが25以下のOH基(ジメチルスルホキシド溶媒中での測定値)が、芳香族酸あるいは脂肪酸でエステル化されている基(以下「活性エステル基(A)」ともいう)を有する化合物(以下「活性エステル化合物(A)」ともいう)であることが好ましい。本開示の第2の含フッ素ポリマーが、上記活性エステル化合物(A)であることによってより効率的にエポキシ樹脂と反応可能な化合物となる。
本開示の第2の含フッ素ポリマーはまた、上記活性エステル基(A)を有するモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
また、本開示の第2の含フッ素ポリマーは、上記活性エステル基(A)を有するモノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して10~70モル%であることが好ましく、20~60モル%であることがより好ましく、25~55モル%であることが更に好ましい。
【0177】
本開示の第3の含フッ素ポリマーのフッ素含有量は、低誘電率及び低誘電正接である点から、20質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上である。上記含フッ素ポリマーのフッ素含有量は、自動試料燃焼装置を用いた元素分析により求めることができる。
【0178】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、ビニルエステルモノマー単位当量が90~5000g/egであることが好ましい。より好ましくは、90~1000g/egであり、更に好ましくは、90~700g/egである。上記ビニルエステルモノマー単位当量は、組成より計算することができる。
【0179】
本開示の第3の含フッ素ポリマーのガラス転移温度は、0℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、60℃以上が更により好ましく、65℃以上が更により好ましく、70℃以上が殊更に好ましく、100℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度は高い方がよいが、加工性の観点からは、200℃以下であることが好ましい。
【0180】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、12GHzでの誘電率が、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、2.6以下が更に好ましい。誘電率は小さいほど好ましいが、他の物性とのバランスを考慮して、0.5以上であってもよく、1以上であってもよく、2以上であってもよい。
【0181】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、12GHzでの誘電正接が、0.013以下が好ましく、0.012以下がより好ましく、0.010以下が更に好ましく、0.008以下が更により好ましく、0.005以下が特に好ましい。誘電正接は小さいほど好ましいが、他の物性とのバランスを考慮して、0.0001以上であってもよく、0.001以上であってもよく、0.002以上であってもよく、0.004以上であってもよい。
【0182】
本開示の第3の含フッ素ポリマーは、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同様の方法を用いて製造することができる。誘電正接低減の観点からは、上述の方法1~4を考慮した条件で製造することが好ましい。
【0183】
本開示の第3の金属張積層板用組成物は、本開示の第3の含フッ素ポリマーと、溶剤とを含む。
本開示の第3の金属張積層板用組成物は、含フッ素ポリマーが上記構成を有することによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。また、金属張積層板の樹脂層に用いることで該樹脂層を低誘電率及び低誘電正接にすることができる。本開示は、上記金属張積層板用組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0184】
本開示の第3の金属張積層板用組成物は、溶剤を含む。上記溶剤としては、本開示の第1の金属張積層板用組成物と同じである。
本開示の第3の金属張積層板用組成物は、更に、硬化促進剤を含んでもよい。上記硬化促進剤としては、本開示の第1の金属張積層板用組成物と同じである。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本開示の第3の金属張積層板用組成物は、固形分100質量%に対して、上記含フッ素ポリマーが10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、また、100質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
本開示の第3の金属張積層板用組成物は、エポキシ樹脂を含まないものであってよい。
【0185】
本開示の第3の硬化性組成物は、本開示の第3の含フッ素ポリマーと、エポキシ樹脂とを含む。従来の金属張積層板の樹脂層に提案されていた含フッ素ポリマーはエポキシ樹脂との相溶性が十分とはいえなかった。
本開示の第3の硬化性組成物は、本開示の第3の含フッ素ポリマーを含むことによって、エポキシ樹脂との相溶性に優れる。そのため、低誘電率及び低誘電正接であり、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の特性にも優れる。
また、本開示の第3の含フッ素ポリマーを含むことによって低誘電率及び低誘電正接の樹脂層を形成できるため、金属張積層板の樹脂層を形成するために特に好適である。
本開示の第3の硬化性組成物は、金属張積層板用硬化性組成物であることが好ましい。本開示は、上記硬化性組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0186】
本開示の第3の硬化性組成物において、上記エポキシ樹脂は、本開示の第1の硬化性組成物と同じであり、第3の硬化性組成物において記載した全ての態様を採用できる。
【0187】
本開示の第3の硬化性組成物において、比(含フッ素ポリマーの質量とビニルエステルモノマー単位当量を乗じた値/(エポキシ樹脂の質量とエポキシ当量とを乗じた値)が、0.4~2.0であることが好ましい。より好ましくは、0.5~1.5であり、更に好ましくは、0.7~1.3であり、更により好ましくは、0.8~1.2であり、特に好ましくは、0.9~1.1である。上記の比が上記範囲であることによって、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とを効率よく硬化させることができる。
【0188】
本開示の第3の硬化性組成物は、誘電率、誘電正接、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の観点から、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、50質量部以上含有することがより好ましく、80質量部以上含有することが更に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。
【0189】
本開示の第3の硬化性組成物は、エポキシ樹脂の他にも、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等を含んでもよい。
【0190】
本開示の第3の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤としては、本開示の第1の硬化性組成物と同じである。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0191】
本開示の第3の硬化性組成物は、要求特性に応じて各種の添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0192】
本開示の第3の硬化性組成物が上述した各種の添加剤を含む場合、本開示の第3の硬化性組成物は、固形分100質量%に対して、本開示の第3の含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂の合計量が5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましい。
【0193】
本開示の第3の硬化性組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶媒としては、本開示の第1の硬化性組成物と同じである。本開示の第3の硬化性組成物は、固形分濃度が、本開示の第3の含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂の合計で10~80質量%であることが好ましい。固形分濃度がこの範囲であれば、硬化性組成物の粘度が適当であり、塗装して均一な塗膜を形成できる。
【0194】
本開示の第3の硬化性組成物を調製する方法は特に限定されない。例えば、含フッ素ポリマーの溶液又は分散液と、エポキシ樹脂の溶液又は分散液とを混合する方法等が挙げられる。
【0195】
本開示の第3の硬化性組成物は、金属張積層板の樹脂層として使用できる他、粉体塗料用樹脂、光学用途用樹脂にも使用することができる。
【0196】
本開示の第3の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が本開示の第3の硬化性組成物から形成されるものである。上記本開示の第3の硬化性組成物を硬化させることによって樹脂層を形成できる。
本開示の第3の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂を含み、上記含フッ素ポリマーが含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位及びビニルエステルモノマーに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して70~100モル%であり、前記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記含フッ素ビニルモノマーがテトラフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値が、CF2全体の積分値に対して2%以下であり、前記含フッ素ビニルモノマーがヘキサフルオロプロピレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して2%以下であり、前記含フッ素ビニルモノマーがクロロトリフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計が、CF2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して2%以下である。
【0197】
本開示の第3の金属張積層板は、金属箔と樹脂層とを備える。上記樹脂層は絶縁性に優れており、金属張積層板の基材としての役割を果たす。
【0198】
金属箔としては、本開示の第1の金属張積層板と同じである。
【0199】
上記樹脂層は、本開示の第3の含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、10質量部以上含有することがより好ましく、50質量部以上含有することが更に好ましく、80質量部以上含有することが特に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。含フッ素ポリマーが多すぎると接着性低下のおそれがあり、エポキシ樹脂が多すぎると絶縁性、耐湿性、耐熱性、難燃性の低下のおそれがある。
なお、上記樹脂層は、本開示の第3の硬化性組成物から得られるものであり、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とが架橋しているので、上記の割合は、上記含フッ素ポリマーに由来する樹脂部分100質量部に対するエポキシ樹脂に由来する樹脂部分の割合である。
また、本開示の第3の金属張積層板は、金属箔と上記樹脂層とを備える限り、更にその他の層を含んでいてもよく、金属箔及び上記樹脂層はそれぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0200】
本開示の第3の金属張積層板は、更に、上記樹脂層(以下「第一の樹脂層」と記載する)上に設けられた第二の樹脂層を備えるものであってもよい。すなわち、本開示の第3の金属張積層板は、金属箔、第一の樹脂層、及び、第二の樹脂層がこの順に積層されたものであってもよい。第一の樹脂層は基材としての役割を果たす他、金属箔と第二の樹脂層とを接着する接着剤層としての役割を果たしてもよい。
また、本開示の第3の金属張積層板においては、金属箔の第一の樹脂層が設けられている面とは異なる面(反対側の面)にも第一の樹脂層が設けられていてもよい。すなわち、本開示の第3の金属張積層板は、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層の順に積層されたものであってもよいし、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層、第二の樹脂層の順に積層されたものであってもよい。
【0201】
上記第二の樹脂層には、従来のプリント基板に使用されている樹脂を使用することができるが、上記第二の樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、耐熱性の観点から、ポリイミドからなることがより好ましい。
【0202】
第一の樹脂層としては、厚みが1~150μmのフィルムを用いることができる。第一の樹脂層を介して金属箔と第二の接着層とを接着する場合、第一の樹脂層は、乾燥後の厚みを1~100μmとすることができる。
【0203】
上記第二の樹脂層としては、厚みが1~150μmの樹脂フィルムを用いることができる。
【0204】
本開示の第3の金属張積層板は、含フッ素ポリマーとして本開示の第3の含フッ素ポリマーを使用すること以外は、本開示の第1の金属張積層体と同じ方法で製造できる。
【0205】
本開示はまた、本開示の第3の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(本開示の第3のプリント基板)を提供する。本開示の第3のプリント基板は、フレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよいが、フレキシブル基板であることが好ましい。
本開示の第3のプリント基板は、上記金属張積層板上にカバーレイフィルムを備えるものであってもよく、上記カバーレイフィルムは上記樹脂層を介して金属張積層板と接着していてもよい。
上記エッチングの方法は限定されず従来公知の方法を採用することができる。また、パターン回路は限定されず、どのようなパターン回路のプリント基板でもよい。
【0206】
本開示の第3のプリント基板の用途は限定されるものではない。例えば、本開示の第3のプリント基板は、低誘電率及び低誘電正接である樹脂層を有するため、4G(37.5Mbps)、5G(数G~20Gbps)のように使用周波数帯が高い用途で使用されるプリント基板にも使用可能である。
【0207】
本開示のエポキシ樹脂は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位及び/又はヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位とを含み、前記テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、前記ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位及び前記アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して98~100モル%であり、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値が、CF2全体の積分値に対して4%以下であり、ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して4%以下であることを特徴とする。本開示のエポキシ樹脂は、上記構成を有することによって、アセトン浸漬後のゲル分率を大きくすることができる。
【0208】
本開示のエポキシ樹脂は、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位(以下「TFE単位」と記載する)及び/又はヘキサフルオロプロピレン(HFP)に基づく重合単位(以下「HFP単位」と記載する)を含む。共重合性に優れている点で、TFE単位を含むことが好ましい。
【0209】
上記TFE単位及びHFP単位の合計含有量は、本開示のエポキシ樹脂の全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が特に好ましい。また、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい、50モル%以下が特に好ましい。
【0210】
本開示のエポキシ樹脂は、アリルグリシジルエーテル(AGE)に基づく重合単位(以下「AGE単位」と記載する)を含む。
【0211】
上記AGE単位は、本開示のエポキシ樹脂の全重合単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、40モル%以上がより更により好ましく、50モル%以上が特に好ましい。また、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
【0212】
本開示のエポキシ樹脂において、TFE単位、HFP単位及びAGE単位の合計含有量は、エポキシ樹脂の全重合単位に対して98~100モル%である。アセトン浸漬後のゲル分率の観点から、99~100モル%が好ましく、100モル%がより好ましい。すなわち、本開示のエポキシ樹脂は、実質的に、TFE単位、HFP単位及びAGE単位のみからなることが好ましい。
【0213】
本開示のエポキシ樹脂がTFE単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値は、CF2全体の積分値に対して4%以下であることが好ましい。このように、-CF2H末端の割合を少なくすることで、アセトン浸漬後のゲル分率を大きくすることができる。アセトン浸漬後のゲル分率をより大きくできることから、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値は、CF2全体の積分値に対して、3%以下が好ましい。
【0214】
本開示のエポキシ樹脂がHFP単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値は、CF全体の積分値に対して4%以下であることが好ましい。このように、-CF2CFHCF3末端の割合を少なくすることで、アセトン浸漬後のゲル分率を大きくすることができる。アセトン浸漬後のゲル分率をより大きくできることから、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値は、CF全体の積分値に対して、3%以下が好ましい。
【0215】
-CF2H末端、-CF2CFHCF3末端の割合は、例えば、本開示の第3の含フッ素ポリマーで説明した方法1~4で低減できる。
【0216】
本開示のエポキシ樹脂は、数平均分子量が500~10000であることが好ましい。このような範囲であると、活性エステルを含む含フッ素ポリマーと効率的に反応でき、金属張積層板の樹脂層と金属箔とを強固に接着させることができる。数平均分子量としてより好ましくは、1000以上である。また、より好ましくは8000以下、更に好ましくは6000以下、特に好ましくは4000以下である。
上記エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
【0217】
本開示のエポキシ樹脂は、25℃における性状が液体であることが好ましい。これにより、他のポリマー(樹脂)との相溶性が良好となる。
このような性状は、例えば、エポキシ樹脂の低分子量化、低Tg化によって実現できる。
【0218】
本開示のエポキシ樹脂のフッ素含有量は、20質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上である。上記エポキシ樹脂のフッ素含有量は、自動試料燃焼装置を用いた元素分析により求めることができる。
【0219】
本開示のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が50~5000g/egであることが好ましい。より好ましくは、50~1000g/egであり、更に好ましくは、50~500g/egである。
上記エポキシ当量は、JIS7236に準拠して求められる。
【0220】
本開示のエポキシ樹脂のガラス転移温度は、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。また、-100℃以上が好ましく、-60℃以上がより好ましく、-40℃以上が更に好ましい。
【0221】
本開示のエポキシ樹脂は、本開示の第1の含フッ素ポリマーと同様の方法を用いて製造することができる。
【0222】
本開示の第4の硬化性組成物は、本開示のエポキシ樹脂と、本開示の第3の含フッ素ポリマーとを含む。
本開示の第4の硬化性組成物は、本開示の第3の含フッ素ポリマーを含むことで、本開示の第3の硬化性組成物と同様の利点を有する。さらに、本開示のエポキシ樹脂を含むことで、接着性等の特性をより改善できる。
本開示の第4の硬化性組成物は、金属張積層板用硬化性組成物であることが好ましい。本開示は、上記硬化性組成物の金属張積層板(金属張積層板の樹脂層)への使用を提供する。
【0223】
なお、本開示のエポキシ樹脂は、本開示の第1の含フッ素ポリマーや本開示の第2の含フッ素ポリマーと組み合わせて硬化性組成物としてもよい。
【0224】
本開示の第4の硬化性組成物において、比(含フッ素ポリマーの質量とビニルエステルモノマー単位当量を乗じた値/(エポキシ樹脂の質量とエポキシ当量とを乗じた値)が、0.4~2.0であることが好ましい。より好ましくは、0.5~1.5であり、更に好ましくは、0.7~1.3であり、更により好ましくは、0.8~1.2であり、特に好ましくは、0.9~1.1である。上記の比が上記範囲であることによって、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とを効率よく硬化させることができる。
【0225】
本開示の第4の硬化性組成物は、誘電率、誘電正接、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性の観点から、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、50質量部以上含有することがより好ましく、80質量部以上含有することが更に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。
【0226】
本開示の第4の硬化性組成物は、含フッ素ポリマーやエポキシ樹脂の他にも、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等を含んでもよい。
【0227】
本開示の第4の硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤としては、本開示の第1の硬化性組成物と同じである。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0228】
本開示の第4の硬化性組成物は、要求特性に応じて各種の添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0229】
本開示の第4の硬化性組成物が上述した各種の添加剤を含む場合、本開示の第3の硬化性組成物は、固形分100質量%に対して、本開示の第3の含フッ素ポリマー及び本開示のエポキシ樹脂の合計量が5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましい。
【0230】
本開示の第4の硬化性組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶媒としては、本開示の第1の硬化性組成物と同じである。本開示の第4の硬化性組成物は、固形分濃度が、本開示の第3の含フッ素ポリマー及び本開示のエポキシ樹脂の合計で10~80質量%であることが好ましい。固形分濃度がこの範囲であれば、硬化性組成物の粘度が適当であり、塗装して均一な塗膜を形成できる。
【0231】
本開示の第4の硬化性組成物を調製する方法は特に限定されない。例えば、含フッ素ポリマーの溶液又は分散液と、エポキシ樹脂の溶液又は分散液とを混合する方法等が挙げられる。
【0232】
本開示の第4の硬化性組成物は、金属張積層板の樹脂層として使用できる他、粉体塗料用樹脂、光学用途用樹脂にも使用することができる。
【0233】
本開示の第4の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が本開示の第4の硬化性組成物から形成されるものである。上記本開示の第4の硬化性組成物を硬化させることによって樹脂層を形成できる。
本開示の第4の金属張積層板は、金属箔と、該金属箔上に設けられた樹脂層とを備える金属張積層板であって、上記樹脂層が含フッ素ポリマー及びエポキシ樹脂を含み、上記含フッ素ポリマーが含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位と、ビニルエステルモノマーに基づく重合単位とを含み、前記含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位及びビニルエステルモノマーに基づく重合単位の合計含有量が、全重合単位に対して70~100モル%であり、前記含フッ素ビニルモノマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記含フッ素ビニルモノマーがテトラフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値が、CF2全体の積分値に対して2%以下であり、前記含フッ素ビニルモノマーがヘキサフルオロプロピレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して2%以下であり、前記含フッ素ビニルモノマーがクロロトリフルオロエチレンを含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値及び-CFClH末端のCFClHの積分値の合計が、CF2全体の積分値及びCFCl全体の積分値の合計に対して2%以下であり、上記エポキシ樹脂がテトラフルオロエチレンに基づく重合単位及び/又はヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位、並びに、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位のみからなり、数平均分子量が500~10000であり、25℃における性状が液体であり、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2H末端のCF2Hの積分値が、CF2全体の積分値に対して4%以下であり、ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位を含む場合、19F-NMRにおける-CF2CFHCF3末端のCFHの積分値が、CF全体の積分値に対して4%以下である。
【0234】
本開示の第4の金属張積層板は、金属箔と樹脂層とを備える。上記樹脂層は絶縁性に優れており、金属張積層板の基材としての役割を果たす。
【0235】
金属箔としては、本開示の第1の金属張積層板と同じである。
【0236】
上記樹脂層は、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、10質量部以上含有することがより好ましく、50質量部以上含有することが更に好ましく、80質量部以上含有することが特に好ましい。また、上記含フッ素ポリマー100質量部に対し、上記エポキシ樹脂を1000質量部以下含有することが好ましく、500質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することが更に好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。含フッ素ポリマーが多すぎると接着性低下のおそれがあり、エポキシ樹脂が多すぎると絶縁性、耐湿性、耐熱性、難燃性の低下のおそれがある。
なお、上記樹脂層は、本開示の第4の硬化性組成物から得られるものであり、含フッ素ポリマーとエポキシ樹脂とが架橋しているので、上記の割合は、上記含フッ素ポリマーに由来する樹脂部分100質量部に対するエポキシ樹脂に由来する樹脂部分の割合である。
また、本開示の第3の金属張積層板は、金属箔と上記樹脂層とを備える限り、更にその他の層を含んでいてもよく、金属箔及び上記樹脂層はそれぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0237】
本開示の第4の金属張積層板は、更に、上記樹脂層(以下「第一の樹脂層」と記載する)上に設けられた第二の樹脂層を備えるものであってもよい。すなわち、本開示の第4の金属張積層板は、金属箔、第一の樹脂層、及び、第二の樹脂層がこの順に積層されたものであってもよい。第一の樹脂層は基材としての役割を果たす他、金属箔と第二の樹脂層とを接着する接着剤層としての役割を果たしてもよい。
また、本開示の第4の金属張積層板においては、金属箔の第一の樹脂層が設けられている面とは異なる面(反対側の面)にも第一の樹脂層が設けられていてもよい。すなわち、本開示の第4の金属張積層板は、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層の順に積層されたものであってもよいし、第一の樹脂層、金属箔、第一の樹脂層、第二の樹脂層の順に積層されたものであってもよい。
【0238】
上記第二の樹脂層には、従来のプリント基板に使用されている樹脂を使用することができるが、上記第二の樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、耐熱性の観点から、ポリイミドからなることがより好ましい。
【0239】
第一の樹脂層としては、厚みが1~150μmのフィルムを用いることができる。第一の樹脂層を介して金属箔と第二の接着層とを接着する場合、第一の樹脂層は、乾燥後の厚みを1~100μmとすることができる。
【0240】
上記第二の樹脂層としては、厚みが1~150μmの樹脂フィルムを用いることができる。
【0241】
本開示の第4の金属張積層板は、含フッ素ポリマーとして本開示の第3の含フッ素ポリマーを使用すること、エポキシ樹脂として本開示のエポキシ樹脂を使用すること以外は、本開示の第1の金属張積層体と同じ方法で製造できる。
【0242】
本開示はまた、本開示の第4の金属張積層板の金属箔をエッチングして形成されたパターン回路を備えることを特徴とするプリント基板(本開示の第4のプリント基板)を提供する。本開示の第4のプリント基板は、フレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよいが、フレキシブル基板であることが好ましい。
本開示の第4のプリント基板は、上記金属張積層板上にカバーレイフィルムを備えるものであってもよく、上記カバーレイフィルムは上記樹脂層を介して金属張積層板と接着していてもよい。
上記エッチングの方法は限定されず従来公知の方法を採用することができる。また、パターン回路は限定されず、どのようなパターン回路のプリント基板でもよい。
【0243】
本開示の第4のプリント基板の用途は限定されるものではない。例えば、本開示の第4のプリント基板は、低誘電率及び低誘電正接である樹脂層を有するため、4G(37.5Mbps)、5G(数G~20Gbps)のように使用周波数帯が高い用途で使用されるプリント基板にも使用可能である。
【実施例】
【0244】
次に本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0245】
本明細書に記載された物性は以下の測定方法で測定したものである。
【0246】
(1)NMR分析:
測定装置:NMR測定装置:VARIAN社製
1H-NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
【0247】
(2)元素分析(フッ素含有量(質量%)の測定)
測定装置:自動試料燃焼装置(三菱化学(株)製 AQF-100) イオンクロマト(DIONEX社製 ICS-1500 Ion Chromatography System)内蔵
試料 3mg
【0248】
(3)分子量
測定装置:昭和電工(株)製Shodex GPC-104
測定条件:溶離液としてはテトラヒドロフランを使用し、分子量の標準サンプルとしては分子量既知のポリスチレンを使用する。
【0249】
(4)ガラス転移温度
ASTM E1356-98に従い、METLER TOLEDO社製のDSC測定装置を使用してセカンドランにおける熱吸収から中点法によってガラス転移温度および結晶融点を決定した。
測定条件
昇温速度;20℃/min
試料量;10mg
ヒートサイクル;-50℃~150℃、昇温、冷却、昇温
【0250】
(5)赤外スペクトル
測定装置:Perkin-Elmer FTIRスペクトロメーター1760X(パーキンエルマー社製)
測定は、粉状またはフィルム状の試料を、40回スキャンし測定し赤外スペクトルを得た。
【0251】
実施例1
容量3000mlのステンレス製オートクレーブにアセトン1050g、安息香酸ビニル(VBz)130gを投入し、減圧窒素置換の操作を行い、テトラフルオロエチレン(TFE)130gを仕込んだ。撹拌下に適温まで昇温し、過酸化物系重合開始剤8gを仕込み重合を開始した。反応器内圧が1.0MPaGから0.4MPaGへ低下した時点で反応を停止し、重合体を含む溶液を得た。得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
【0252】
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン50モル%、安息香酸ビニル50モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、11000であった。ガラス転移温度(Tg)は66℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量30.3質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、248g/eqであった。
【0253】
比較例1
容量6000mlのステンレス製オートクレーブに酢酸ブチル2500g、ネオノナン酸ビニルエステル(NNVE)584g、安息香酸ビニル(VBz)77g、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)527g、クロトン酸(CA)7gを投入し、減圧窒素置換の操作を行い、テトラフルオロエチレン(TFE)658gを仕込んだ。撹拌下に適温まで昇温し、過酸化物系重合開始剤30gを仕込み重合を開始した。反応器内圧が1.0MPaGから0.4MPaGへ低下した時点で反応を停止し、重合体を含む溶液を得た。得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
【0254】
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン45.0モル%、ネオノナン酸ビニルエステル33.3モル%、安息香酸ビニル5.5モル%、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル15.3モル%、クロトン酸0.9モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)16000であった。ガラス転移温度(Tg)は、30℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量が27.0質量%であった。
【0255】
また、実施例1で得られた含フッ素ポリマーについて、アセトン浸漬後の乾燥硬化物の赤外スペクトルを測定したところ、含フッ素重合体の特徴的な吸収(1728cm-1、1108cm-1、710cm-1)と、使用したエポキシ樹脂に特徴的な吸収(2947cm-1、1602cm-1、1491cm-1、752cm-1)の両方が認められたため、含フッ素ポリマーはエポキシ樹脂と反応しており、活性エステルとして機能したことが分かった。
【0256】
実施例2
容量3000mlのステンレス製オートクレーブに減圧窒素置換の操作を行い、アセトン900g、テトラフルオロエチレン(TFE)130gを仕込んだ。撹拌下に70.0℃まで昇温し、過酸化物系重合開始剤8gを仕込むと同時に、安息香酸ビニル(VBz)142gとアセトン71gの混合溶液を毎分3mlで投入し、重合を開始した。反応器内圧が1.0MPaGから0.4MPaGへ低下した時点で反応を停止し、重合体を含む溶液を得た。得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
【0257】
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、TFE54モル%、安息香酸ビニル46モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、9000であった。ガラス転移温度(Tg)は54℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量33.3質量%であった。組成より計算したビニルエステルユニット当量は、263g/eqであった。
【0258】
実施例3
実施例1において、安息香酸ビニルを87g、加えてイソボニルアクリレートを60g仕込んだ以外は、実施例1と同様に反応し、含フッ素ポリマーを得た。
【0259】
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン47モル%、安息香酸ビニル(VBz)34モル%、イソボニルアクリレート(IBAC)19モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、8000であった。ガラス転移温度(Tg)は61℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量26.3質量%であった。組成より計算したビニルエステルユニット当量は、402g/eqであった。
【0260】
相溶性評価については、以下の様に実施した。
実施例および比較例で得た含フッ素ポリマーをメチルエチルケトンに溶解し、固形分が50質量%となるように調整した。また、エポキシ樹脂(エポキシ当量:259g/eq)も同様に固形分が80質量%となるように溶液を調整した。
次に、この2種の溶液をビニルエステルユニット当量とエポキシ当量が同じになるように配合量を調整して混合した。混合溶液の外観を目視で観察し、相溶性の評価を行った。相溶性評価について下記の様に判断した。
【0261】
混合溶液の状態
透明 :〇 (相溶性良い)
不透明:× (相溶性悪い)
結果を表1に示す。
【0262】
エポキシ樹脂との反応性評価について、以下の様に実施した。
上記の混合液に4―ジメチルアミノピリジンを溶液の固形分に対して0.5質量%加え、良く混合し硬化組成物を作成した。
この上記の硬化組成物を、10g取り、50℃にした送風乾燥機で3時間乾燥した後、175℃にした送風乾燥機で12時間反応させた。反応後、硬化物を冷却した。
次に、硬化物の反応度の指標として、ゲル分率を測定した。
硬化物を取りあらかじめ重さをはかった400メッシュの金属金網で包んだ。50mlのサンプル管に25mlのアセトンと金網に包まれた硬化物を入れ、12時間アセトン中で硬化物を浸漬した。その後、金網を取り出し、乾燥させ乾燥後の重量を測定し、アセトン浸漬後の乾燥硬化物の重量を算出した。
ゲル分率は、アセトン浸漬後の乾燥硬化物の重量/アセトン浸漬前の硬化物の重量×100として算出した。結果を表1に示す。
【0263】
【0264】
また、実施例2および実施例3の樹脂におけるエポキシ樹脂との相溶性評価および反応性評価は、上記であった。
【0265】
また、NMR分析よりポリマー中のモノマーの並び方(連鎖)を測定した。テトラフルオロエチレン(T)、ビニルエステル(V)とすると、安息香酸ビニルの場合では、TVTと並んだ連鎖では、6.1ppm付近にピークを与える。同様に、TVVT連鎖では、5.9ppm付近、TVVVT連鎖では、5.6ppm付近にピークを与える。ここからそれぞれの連鎖の割合が、それぞれのNMRのピーク面積より算出される。算出した結果を表2に表す。
【表2】
【0266】
実施例1と実施例2より、ポリマー中の安息香酸ビニルの連鎖TVTが多くなるとエポキシ樹脂との反応性が良くなりゲル分率が上がることが分かる。
実施例1と実施例2より、ポリマーの分子量を小さくするとエポキシ樹脂との反応性が良くなりゲル分率が上がることが分かる。
実施例1と実施例3より、第三成分としてイソボニルアクリレートを用いるとエポキシ樹脂との反応性が良くなりゲル分率が上がることが分かる。
【0267】
合成例1
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン1000gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に安息香酸ビニル(VBz)の供給を開始した。安息香酸ビニルは1.5ml/分で合計150g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
反応開始から1時間後にパーブチルPV4.2gをさらに追加した。安息香酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。さらに、槽温を75℃として1時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度17質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン50モル%、安息香酸ビニル50モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、12000であった。ガラス転移温度(Tg)は66℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量30.3質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、248g/eqであった。
【0268】
合成例2
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン900gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に安息香酸ビニル140gとアセトン70gの混合溶液の供給を開始した。安息香酸ビニルとアセトンの混合溶液は1.5ml/分で合計200g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
反応開始から1時間後にパーブチルPV4.2gをさらに追加した。安息香酸ビニルとアセトンの混合溶液の供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。さらに、槽温を75℃として2時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度21質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン60モル%、安息香酸ビニル40モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、9600であった。ガラス転移温度(Tg)は55℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量33.3質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、263g/eqであった。
【0269】
合成例3
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと安息香酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に安息香酸ビニルの供給を開始した。安息香酸ビニルは2.5ml/分で合計100g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
安息香酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度14質量%)を得た。
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再沈させ、ポリマーの精製を行い、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン41モル%、安息香酸ビニル59モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、10000であった。ガラス転移温度(Tg)は62℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量23.5質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、214g/eqであった。
【0270】
合成例4
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gとピバリン酸ビニル(PV)20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を60℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時にピバリン酸ビニルの供給を開始した。ピバリン酸ビニルは2.0ml/分で合計160g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
ピバリン酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。60℃で1時間熟成反応を継続した後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、ピバリン酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度14質量%)を得た。
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再沈させ、ポリマーの精製を行い、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン55モル%、ピバリン酸ビニル45モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、14000であった。ガラス転移温度(Tg)は45℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量37.1質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、250g/eqであった。
【0271】
合成例5
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に4-t-ブチル安息香酸ビニル(t-BuVBz)の供給を開始した。4-t-ブチル安息香酸ビニルは2.0ml/分で合計160g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。さらに、槽温を75℃として1時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、4-t-ブチル安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度27質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン45モル%、4-t-ブチル安息香酸ビニル55モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、9000であった。ガラス転移温度(Tg)は85℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量34.5質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、374g/eqであった。
【0272】
合成例6
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと4-t-ブチル安息香酸ビニル40gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を65℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時に4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を開始した。4-t-ブチル安息香酸ビニルは2.0ml/分で合計120g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。さらに、槽温を65℃のまま0.5時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、4-t-ブチル安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度22質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン52モル%、4-t-ブチル安息香酸ビニル48モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、12000であった。ガラス転移温度(Tg)は107℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量26.1質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、311g/eqであった。
【0273】
合成例7
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと酢酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時に酢酸ビニルの供給を開始した。酢酸ビニルは1.0ml/分で合計110g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
酢酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。その後、さらに0.5時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、酢酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度17質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン48モル%、酢酸ビニル52モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、10000であった。ガラス転移温度(Tg)は35℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量39.3質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、178g/eqであった。
【0274】
合成例8
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと安息香酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、ヘキサフルオロプロピレンを600g仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時に安息香酸ビニルの供給を開始した。安息香酸ビニルは1.5ml/分で合計60g追加した。
安息香酸ビニルの供給を停止後、槽内温度70℃のまま4時間反応を継続した。
槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、安息香酸ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度14質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、ヘキサフルオロプロピレン37モル%、安息香酸ビニル63モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、7500であった。ガラス転移温度(Tg)は45℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量28.1質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、235g/eqであった。
【0275】
合成例9
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gとピバリン酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、ヘキサフルオロプロピレンを600g仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時にピバリン酸ビニルの供給を開始した。ピバリン酸ビニルは1.5ml/分で合計110g追加した。
ピバリン酸ビニルの供給を停止後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、ピバリン酸ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度23質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、ヘキサフルオロプロピレン42モル%、ピバリン酸ビニル58モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、9000であった。ガラス転移温度(Tg)は50℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量34.5質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、234g/eqであった。
【0276】
合成例10
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと4-t-ブチル安息香酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、ヘキサフルオロプロピレンを600g仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を開始した。4-t-ブチル安息香酸ビニルは2.0ml/分で合計110g追加した。
4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を停止後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、4-t-ブチル安息香酸ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度21質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、ヘキサフルオロプロピレン40モル%、4-t-ブチル安息香酸ビニル60モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、9000であった。ガラス転移温度(Tg)は110℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量25.2質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、305g/eqであった。
【0277】
合成例11
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと4-t-ブチル安息香酸ビニル16.5gと4-ヒドロキシブチルビニルエーテル3.5gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を65℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時に4-t-ブチル安息香酸ビニル180gと4-ヒドロキシブチルビニルエーテル37gの混合溶液の供給を開始した。4-t-ブチル安息香酸ビニルとヒドロキシブチルビニルエーテル37gの混合溶液は2.0ml/分で合計160g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
4-t-ブチル安息香酸ビニルと4-ヒドロキシブチルビニルエーテルの混合溶液の供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。その後、槽温70℃で0.5時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、4-t-ブチル安息香酸ビニル/4-ヒドロキシブチルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度14質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン48モル%、4-t-ブチル安息香酸ビニル31モル%、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル21モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、10000であった。ガラス転移温度(Tg)は40℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量26.5質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、435g/eqであった。
【0278】
合成例12
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン1000gと安息香酸ビニル10gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に安息香酸ビニル87gとイソボニルアクリレート(IBAC)60gの混合溶液の供給を開始した。安息香酸ビニルとイソボニルアクリレートの混合溶液は1.5ml/分で合計110g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
安息香酸ビニルとアクリル酸イソボニルの混合溶液の供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、安息香酸ビニル/イソボニルアクリレート/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度14質量%)を得た。
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再沈させ、ポリマーの精製を行い、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン47モル%、安息香酸ビニル34モル%、イソボニルアクリレート19モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、8000であった。ガラス転移温度(Tg)は60℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量26.3質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、401g/eqであった。
【0279】
合成例13
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと4-t-ブチル安息香酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時に4-t-ブチル安息香酸ビニル100gとイソボニルアクリレート54gの混合溶液の供給を開始した。4-t-ブチル安息香酸ビニルとイソボニルアクリレートの混合溶液は1.5ml/分で合計132g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
4-t-ブチル安息香酸ビニルとイソボニルアクリレートの混合溶液の供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。その後、槽内温度70℃で0.5時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、4-t-ブチル安息香酸ビニル/イソボニルアクリレート/テトラフルオロエチレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度20質量%)を得た。
反応終了後、得られた溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン42モル%、4-t-ブチル安息香酸ビニル36モル%、イソボニルアクリレート22モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、8000であった。ガラス転移温度(Tg)は95℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量19.8質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、450g/eqであった。
【0280】
合成例14
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてフッ素系溶媒(3M社製Novec7200)1400gと4-t-ブチル安息香酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を65℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)2.1gを仕込み、同時に4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を開始した。4-t-ブチル安息香酸ビニルは2.0ml/分で合計80g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。
4-t-ブチル安息香酸ビニルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、4-t-ブチル安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体のフッ素系溶媒の溶液(固形分濃度0.4質量%)を得た。4-t-ブチル安息香酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体の含フッ素ポリマーの固体が析出していたため、さらに、アセトン800gを槽内に投入し60℃で0.5時間撹拌し、含フッ素ポリマーを回収した。固形分濃度8.3質量%であった。
得られたアセトン溶液を濃縮後、大量のメタノール溶液に再沈させ、ポリマーの精製を行い、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、テトラフルオロエチレン19モル%、4-t-ブチル安息香酸ビニル81モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、19000であった。ガラス転移温度(Tg)は95℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量10.4質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、236g/eqであった。
【0281】
合成例15
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてフッ素系溶媒(3M社製Novec7200)1300gとアリルグリシジルエーテル40gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、テトラフルオロエチレンを槽内圧力が0.79MPaとなるまで仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時にアリルグリシジルエーテルの供給を開始した。アリルグリシジルエーテルは1.5ml/分で合計180g追加した。テトラフルオロエチレンも反応中、槽内圧力が0.775~0.7795MPaとなる様に連続で供給した。反応開始後、5時間、1時間、1.5時間経過時にさらにパーブチルPVを各4.2g追加した。
アリルグリシジルエーテルの供給を停止後、テトラフルオロエチレンの供給も停止した。
その後、さらに槽内温度を75℃として3時間熟成反応を継続した。
その後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、内容物を抜き出したが、アリルグリシジルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体のフッ素系溶媒の溶液(固形分濃度0.7質量%)とアリルグリシジルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体メイン成分の2層に分かれていた。アリルグリシジルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体はアセトンに溶けることが分かった為、さらに、アセトン800gを槽内に投入し60℃で0.5時間撹拌し、含フッ素ポリマーを回収し、先のアリルグリシジルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体メイン成分と合わせた。固形分濃度15.2質量%であった。
得られたアセトン溶液を濃縮、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマー(エポキシ樹脂)は、NMR分析より、テトラフルオロエチレン41モル%、アリルグリシジルエーテル59モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、1500であった。ガラス転移温度(Tg)は‐35℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量28.8質量%であった。25℃における性状は、液体であった。
組成より計算したエポキシユニット当量は、184g/eqであった。
【0282】
合成例16
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒としてアセトン800gと安息香酸ビニル20gを仕込み、オートクレーブを窒素置換して、槽温を70℃まで昇温した。これに攪拌下、ヘキサフルオロプロピレンを600g仕込んだ。
次に重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株式会社製)4.2gを仕込み、同時に安息香酸ビニルの供給を開始した。安息香酸ビニルは1.5ml/分で合計100g追加した。
安息香酸ビニルの供給を停止後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、安息香酸ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体のアセトン溶液(固形分濃度16質量%)を得た。
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再沈させ、ポリマーの精製を行い、乾燥して含フッ素ポリマーを得た。
得られた含フッ素ポリマーは、NMR分析より、ヘキサフルオロプロピレン37モル%、安息香酸ビニル63モル%の組成であった。分子量分析より、数平均分子量(Mn)は、9000であった。ガラス転移温度(Tg)は65℃であった。元素分析の結果は、フッ素含有量28.1質量%であった。
組成より計算したビニルエステルユニット当量は、235g/eqであった。
【0283】
〔比誘電率及び誘電正接〕
合成例1~14、16で作成した含フッ素ポリマーのフィルムを真空ヒートプレスすることで作成した。作成したフィルム(サンプルF)の比誘電率、誘電正接を下記の様に測定した。表3に結果を記す。
ネットワークアナライザーを使用し、空洞共振器により、上記で作製したサンプルFの共振周波数およびQ値の変化を測定し、12GHzにおける誘電正接(tanδ)を次式にしたがって算出した。空洞共振器法は、埼玉大学小林教授[空洞共振器法による誘電体平板材料の複素誘電率の非破壊測定 MW87-53]による。
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}-(Pc/ωW1)
【数1】
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:-0.402759
J1:3.83171
【0284】
-CF2H末端の比率
19F-NMRの測定により、-104ppmから-142ppmのCF2全体の積分値と-136ppmから-142ppmのCF2Hの積分値から下式に従い算出した。結果を表3に示す。
-CF2H末端の比率=(-136ppmから-142ppmのCF2Hの積分値)/(-104ppmから-142ppmのCF2全体の積分値)×100
【0285】
-CF2CFHCF3末端の比率
19F-NMRの測定により、-172ppmから-216ppmのCF全体の積分値と-210ppmから-216ppmのCFHの積分値から下式に従い算出した。結果を表3に示す。
-CF2CFHCF3末端の比率=(-210ppmから-216ppmのCFHの積分値)/(-172ppmから-216ppmのCF全体の積分値)×100
【0286】
【0287】
表3より、本開示の第3の含フッ素ポリマーに該当する合成例1~7、9、10、12~14、15は、誘電正接が低いことが分かる。
合成例1~3の比較や、合成例5及び14の比較から、-CF2H末端の比率が少なくなることで、誘電正接が低下することが分かる。
合成例8及び16の比較から、-CF2CFHCF3末端の比率が少なくなることで、誘電正接が低下することが分かる。
【0288】
相溶性評価については、以下の様に実施した。
合成例1~14、16で得た含フッ素ポリマー(エステル樹脂)をアセトンに溶解し、固形分が50質量%となるように調整した。また、エポキシA:合成例15、エポキシB:2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(東京化成工業株式会社製、純度92.6%、エポキシ当量184)、エポキシC:エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポキシ当量130)のエポキシ樹脂も同様に固形分が50質量%となるように溶液を調整した。
次に、この2種の溶液(エステル樹脂溶液、エポキシ樹脂溶液)をビニルエステルユニット当量とエポキシ当量が同じになるように配合量を調整して混合した。混合溶液の外観を目視で観察し、相溶性の評価を行った。相溶性評価について下記の様に判断した。
混合溶液の状態
透明 :〇 (相溶性良い)
不透明:× (相溶性悪い)
固形分濃度が50質量%で不透明の場合は、透明になるまでアセトンを追加し、透明になった固形分濃度を相溶性評価とした。結果を表4~6に示す。表内の相溶性評価の欄には、透明になった固形分濃度(質量%)を記載した。
【0289】
エポキシ樹脂との反応性評価について、以下の様に実施した。
上記の混合液に4―ジメチルアミノピリジン(DMAP)を溶液の固形分に対して0.5質量%加え、良く混合し硬化組成物を作成した。
この上記の硬化組成物を、10g取り、50℃にした送風乾燥機で3時間乾燥した後、175℃にした送風乾燥機で12時間反応させた。反応後、硬化物を冷却した。
次に、硬化物の反応度の指標として、ゲル分率を測定した。
硬化物を取りあらかじめ重さをはかった400メッシュの金属金網で包んだ。50mlのサンプル管に25mlのアセトンと金網に包まれた硬化物を入れ、12時間アセトン中で硬化物を浸漬した。その後、金網を取り出し、乾燥させ乾燥後の質量を測定し、アセトン浸漬後の乾燥硬化物の質量を算出した。
ゲル分率は、アセトン浸漬後の乾燥硬化物の質量/アセトン浸漬前の硬化物の質量×100として算出した。結果を表4~6に示す。
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
表4~6より、相溶性が高いもの(透明になった固形分濃度が大きいもの)ほどゲル分率が高いこと、合成例15のエポキシ樹脂(エポキシA)を用いるサンプルのゲル分率が高いことが分かる。
No.1~3から、概して、ビニルエステルモノマーとして、安息香酸ビニル(VBz)、酢酸ビニルを使用した場合に、エポキシ樹脂との反応性が良くなりゲル分率が上がることが分かる。
No.5、6から、含フッ素ビニルモノマー及びビニルエステルモノマー以外の第3成分として、イソボニルアクリレート(IABC)を用いることで、エポキシ樹脂との反応性が良くなりゲル分率が上がることが分かる。