(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】分岐用コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 11/11 20060101AFI20230302BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20230302BHJP
H01R 31/06 20060101ALI20230302BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20230302BHJP
H01R 12/81 20110101ALN20230302BHJP
【FI】
H01R11/11 G
H01R11/01 B
H01R31/06 Z
H02G15/08
H01R12/81
(21)【出願番号】P 2019192721
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山村 允人
(72)【発明者】
【氏名】小泉 友佳
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-068309(JP,U)
【文献】特開平06-310183(JP,A)
【文献】特開平08-190971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/11
H01R 11/01
H01R 12/81
H01R 31/06-31/08
H02G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電路の途中の分断部に固着された一対の端子金具と、
前記一対の端子金具を保持する端子保持部材と、
前記端子保持部材の外面に沿うように配され、前記一対の端子金具に接続される板状の短絡部材
と、
前記短絡部材を覆う角筒状の保護部材とを備え、
前記保護部材内には、前記一対の端子金具と前記端子保持部材が収容され、
前記短絡部材が前記保護部材の内面に保持され、
前記端子金具に分岐側端子が接続可能である分岐用コネクタ。
【請求項2】
前記短絡部材には、前記端子金具に対して弾性的に接触可能な弾性接触片が形成されている請求項1に記載の分岐用コネクタ。
【請求項3】
前記端子保持部材に、前記弾性接触片を収容する接続孔が形成されている請求項1又は請求項2に記載の分岐用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分岐用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数本の幹線を並列させた幹線ハーネスから、複数本の分岐線を有する枝線ハーネスを分岐させるための分岐構造が開示されている。この分岐構造は、幹線を構成する接続端子と、導体パターンが形成された回路基板と、接続ピンを有するコネクタとから構成されている。接続端子は、回路基板に取り付けることによって導体パターンに接続されている。コネクタを回路基板に取り付けることによって、接続ピンが導体パターンに接続されている。分岐線は接続ピンに接続される。以上の構成により、幹線と分岐線が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この分岐構造は、幹線と分岐線との間に回路基板と接続ピンが介在するため、スタブ長が長くなるという問題がある。また、回路基板には導体パターンを形成するためのスペースが必要であるため、大型化するという問題がある。
【0005】
本開示の分岐用コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スタブ長の短縮化と小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の分岐用コネクタは、
導電路の途中の分断部に固着された一対の端子金具と、
前記一対の端子金具を保持する端子保持部材と、
前記端子保持部材の外面に沿うように配され、前記一対の端子金具に接続される板状の短絡部材とを備え、
前記端子金具に分岐側端子が接続可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スタブ長の短縮化と小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の分岐用コネクタを用いた分岐構造の構成図である。
【
図2】
図2は、基板用コネクタと分岐用コネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、インナモジュールの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、分岐用ハウジングから短絡部材を外した状態の斜視図である。
【
図7】
図7は、分岐用コネクタと基板用コネクタを嵌合した状態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の分岐用コネクタは、
(1)導電路の途中の分断部に固着された一対の端子金具と、前記一対の端子金具を保持する端子保持部材と、前記端子保持部材の外面に沿うように配され、前記一対の端子金具に接続される板状の短絡部材とを備え、前記端子金具に分岐側端子が接続可能である。本開示の構成によれば、導電路を構成する一対の端子金具が短絡部材を介して接続されるので、導電路がデイジーチェーン接続され、スタブ長が短縮される。分岐側端子は、導電路を構成する端子金具に直接接続されるので、導電路と分岐側端子との間に他の部材が介在するものに比べると、小型化を図ることができる。短絡部材は板状をなすので、この構成によっても小型化を図ることができる。
【0010】
(2)前記短絡部材を覆う保護部材を備えていることが好ましい。この構成によれば、短絡部材を保護部材によって保護することができる。
【0011】
(3)前記短絡部材が前記保護部材の内面に保持されていることが好ましい。この構成によれば、短絡部材を端子保持部材から外した状態においても、保護部材によって短絡部材を保護することができる。
【0012】
(4)前記短絡部材には、前記端子金具に対して弾性的に接触可能な弾性接触片が形成されていることが好ましい。この構成によれば、弾性接触片の弾性変形により、各部品の寸法公差と各部品相互間の組付け公差が吸収されるので、短絡部材と端子金具との間の接触状態が安定する。
【0013】
(5)前記端子保持部材に、前記弾性接触片を収容する接続孔が形成されていることが好ましい。この構成によれば、端子保持部材の外面と短絡部材との間のクリアランスを狭めることができるので、小型化を図ることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示の分岐用コネクタ10を具体化した実施例1を、
図1~
図7を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
本実施例1において、前後の方向については、
図3,4,7における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図2~7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図5,6にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。左右方向と幅方向は、同義で用いる。
【0016】
本実施例1の分岐用コネクタ10は、
図1に示すように、幹線ハーネス50の途中に接続され、幹線ハーネス50から通信回路55を分岐させる機能を有する。幹線ハーネス50は、被覆電線からなる2系統の導電路51A,51Bを並列して構成されている。各導電路51A,51Bにおける分岐部位は、各導電路51A,51Bを分断した分断部52となっている。導電路51A,51Bが分断されている。分断部52では、
図7に示すように、絶縁被覆53が除去されて導体54が露出されている。
【0017】
通信回路55は、回路基板56にプリント回路として形成されたものである。回路基板56には基板用コネクタ60が実装されている。
図7に示すように、基板用コネクタ60は、回路基板56に固定される基板側ハウジング61に、2つの分岐側端子63を取り付けたものである。分岐側端子63のタブ67は、基板側ハウジング61のフード部62内に収容されている。分岐側端子63のうちフード部62の外部に露出している基板接続部64は、通信回路55に接続されている。分岐用コネクタ10を基板用コネクタ60に嵌合すると、幹線ハーネス50から通信回路55が分岐された状態となる。
【0018】
分岐用コネクタ10は、インナモジュール11と、保護部材としての機能を有する分岐用ハウジング35と、左右対称な一対の短絡部材46とを備えている。
図3に示すように、インナモジュール11は、端子保持部材12と、二対の端子金具30とを備えている。端子金具30の対の数は、幹線ハーネス50を構成する導電路51A,51Bの系統数と同じ数である。
【0019】
端子保持部材12は、上下対称な形状の単一部品からなる本体部材13と、上下対称な一対のカバー14とを組み付けて構成されている。本体部材13とカバー14は、合成樹脂等の絶縁性材料からなる部品である。本体部材13には、前後方向に細長い4つの端子収容溝15が、上下左右に整列して形成されている。上側の端子収容溝15は、本体部の上面を凹ませた形態であり、下側の端子収容溝15は、本体部の下面を凹ませた形態である。
図7に示すように、端子収容溝15の前端部には前側抜止め凹部16Fが形成され、端子収容溝15における前側抜止め凹部16Fよりも後方の位置には、後側抜止め凹部16Rが形成されている。
【0020】
本体部材13の前壁部17には、本体部材13の前端面から4つの端子収容溝15に個別に貫通した4つの挿入口18が形成されている。前壁部17の上端部と下端部における後面には、それぞれ、左右方向に延びる係止溝19が形成されている。
図3に示すように、
本体部材13の左右両外側面には、前後方向に延びる4つの係止段部20が形成されている。係止段部20は、前後方向における本体部の中央よりも後方の領域に配されている。各外側面において、2つの係止段部20が上下に間隔を空けて配されている。
【0021】
本体部材13には、4つの接続孔21が形成されている。本体部を左右いずれかの側方から見た側面視において、接続孔21は方形に開口している。接続孔21は、左右の外側面から端子収容溝15へ貫通した形態である。接続孔21は本体部の前端部に配されている。詳細には、接続孔21は、前壁部17よりも後方の領域、即ち前後方向において後述する端子金具30の角筒部31を露出させる領域に配されている。
【0022】
カバー14は、前後方向に長い板状部22と、左右一対の側板部23とを有する単一部品である。板状部22の外面における前後方向中央部には、位置決め突部24が形成されている。位置決め突部24の前面は、前後方向に対して傾斜している。位置決め突部24の後面は、前後方向に対して直角をなす。左右一対の側板部23は、板状部22の左右両側縁から板状部22に対して直角に延出した形態である。側板部23の延出方向は、板状部22の内面側、即ち位置決め突部24が形成されてない側である。側板部23は、板状部22の前後方向における中央よりも後方の領域に配されている。側板部23の内側面における延出端縁部には、前後方向に延びる嵌合リブ25が形成されている。
【0023】
端子金具30は、全体として前後方向に細長い形状である。端子金具30の前端部には角筒部31が形成され、端子金具30の後端部にはオープンバレル状の圧着部32が形成されている。圧着部32は、導電路51A,51Bの分断部52に対し、圧着によって導通可能に固着されている。角筒部31の前端部には、前後方向に対して直角な方向へ突出した前側スタビライザ33Fが形成されている。角筒部31の後端部には、前後方向に対して直角な方向へ突出した後側スタビライザ33Rが形成されている。
【0024】
圧着部32は、導電路51A,51Bの分断部52に対して導通可能に固着されている。導電路51A,51Bに固着された端子金具30は、導電路51A,51Bの分断部52から一直線状に延出している。1系統の導電路51A,51Bを構成する分断部52に固着された2つの端子金具30は、この1系統の導電路51A,51Bを構成する。
【0025】
端子金具30は、本体部材13からカバー14を外した状態で、各端子収容溝15内に収容されることにより、本体部材13に保持される。端子収容溝15に収容された端子金具30は、前側スタビライザ33Fと前側抜止め凹部16Fとの嵌合及び後側スタビライザ33Rと後側抜止め凹部16Rとの嵌合により、本体部材13に対する前後方向への相対変位が規制される。本体部材13に保持された端子金具30の角筒部31の側面は、接続孔21において本体部材13の外側面に露出している。
【0026】
本体部材13に保持された4つの端子金具30のうち、1系統の導電路51A,51Bを構成する2つの分断部52に固着された2つの端子金具30は、上下に並ぶような形態で端子収容溝15に収容されている。つまり、1系統の導電路51A,51Bを構成する2つの端子金具30は、端子金具30の長さ方向と直角な方向に並ぶように配置されている。本体部材13に4つの端子金具30を取り付けた後、本体部材13の上面と下面にカバー14を組み付ける。カバー14の組み付けに際しては、カバー14を本体部材13の上面と下面に対して斜めの姿勢にして、カバー14の前端縁部を本体部材13の係止溝19に嵌め込む。カバー14の前端縁部が係止溝19に嵌合されることにより、カバー14は本体部材13に対して後方への離脱を規制される。
【0027】
カバー14の前端縁部を本体部材13に嵌合した後、係止溝19を支点としてカバー14を本体部材13に接近させるように変位させ、左右両側板部23を本体部材13の左右両外側面に重ねる。側板部23の嵌合リブ25が本体部材13の係止段部20に係止すると、本体部材13に対するカバー14の組付けが完了する。組み付けられたカバー14は、本体部材13の上面及び下面における端子収容溝15の開口部を塞ぐ。端子収容溝15内の端子金具30は、カバー14により、端子収容溝15からの離脱を規制される。以上により、端子保持部材12の組み付けと、端子保持部材12に対する端子金具30の取付けが完了し、インナモジュール11が構成される。
【0028】
端子保持部材12の左側の外側面には、上下一対の接続孔21が開口している。この左側の一対の接続孔21においては、1系統の導電路51A,51Bを構成する2つの端子金具30の角筒部31の一部が、個別に露出した状態となっている。端子保持部材12の右側の外側面にも、上下一対の接続孔21が開口している。この右側の一対の接続孔21においては、別の導電路51A,51Bを構成する2つの端子金具30の角筒部31の一部が、個別に露出した状態となっている。二対の接続孔21は、本体部材13の外面のうちカバー14で覆われない領域に形成されている。
【0029】
分岐用ハウジング35は、合成樹脂等の絶縁性材料からなる角筒状の単一部品である。
図4,5に示すように、分岐用ハウジング35は、左右対称な一対の側壁部36と、左右両側壁部36の下端縁同士を連結した形態の底壁部37と、左右両側壁部36の上端縁同士を連結した形態の上壁部38とを有する。分岐用ハウジング35の内部は、前後両端面が分岐用ハウジング35の外部へ開放された保護空間39として機能する。
図7に示すように、底壁部37の内面には、底壁部37の全幅に亘って突出した形態の底部ストッパ40が形成されている。
【0030】
上壁部38の内面には、弾性抜止片42が形成されている。弾性抜止片42は、上壁部38に対して上下方向へ弾性的に相対変位し得るようになっている。分岐用ハウジング35には、上壁部38の外面を間隔を空けて覆う形態のロックアーム43が形成されている。ロックアーム43は、分岐用ハウジング35の前端部から後方へ片持ち状に延出した形態であり、弾性変形可能である。
【0031】
図5に示すように、左右両側壁部36の上下両端部には、それぞれ、上下一対の保持溝44が形成されている。保持溝44は、側壁部36の前端部に形成され、前後方向に細長く延びた形態である。保持溝44の前端は、分岐用ハウジング35の前方の外部空間へ開放されている。上端部の保持溝44は下方へ開放され、下端部の保持溝44は上方へ開放されている。保持溝44の後端部は、閉塞された形態であり、位置決め部として機能する。
【0032】
短絡部材46は、方形の金属板材に曲げ加工を施した単一部品である。
図4に示すように、短絡部材46には、上下一対の弾性接触片47が一体に形成されている。対をなす弾性接触片47は、上下に間隔を空けて並ぶように配置されている。弾性接触片47は、短絡部材46から斜め前方内面側へ片持ち状に延出した形態である。弾性接触片47の延出端部は接点部48として機能する。短絡部材46の上下両端縁部には、突起状の圧入部49が形成されている。
【0033】
短絡部材46は、分岐用ハウジング35の前方から保護空間39内に挿入され、短絡部材46の上下両端縁部を保持溝44に圧入させることによって分岐用ハウジング35に取り付けられている。分岐用ハウジング35に取り付けた短絡部材46は、圧入部49が保持溝44内に食い込むことによって、取付状態に保持される。弾性接触片47は、短絡部材46から内側へ突出した形態である。分岐用ハウジング35に取り付けられた短絡部材46は、保護空間39内に収容されるので、異物の干渉から保護される。
【0034】
分岐用ハウジング35にはインナモジュール11が取り付けられる。取り付ける際には、インナモジュール11を分岐用ハウジング35の後方から保護空間39内に挿入する。挿入の過程では、弾性抜止片42が位置決め突部24との干渉によって弾性変形するとともに、弾性接触片47が端子保持部材12の前端縁との干渉によって弾性変形する。インナモジュール11が分岐用ハウジング35の正規位置に挿入されると、位置決め突部24が底部ストッパ40に当接することによって、インナモジュール11が前止まりされるとともに、弾性抜止片42が弾性復帰して位置決め突部24に係止する。これにより、インナモジュール11が分岐用ハウジング35に対し前後方向への相対変位を規制された状態に保持される。
【0035】
インナモジュール11が分岐用ハウジング35の正規位置に取り付けられた状態では、弾性接触片47が、弾性復帰して接続孔21内に進入し、端子金具30の角筒部31に対して弾性的に接触する。1つの短絡部材46に形成されている上下一対の弾性接触片47が、上下に並ぶ2つの端子金具30を短絡可能な状態にする。上下に並ぶ2つの端子金具30は1系統の導電路51A,51Bを構成するので、短絡部材46も、2つの端子金具30と同様、1系統の導電路51A,51Bを構成する。短絡部材46と、この短絡部材46によって短絡された2つの端子金具30は、1本に繋がった導電路51A,51Bを構成する。分岐用ハウジング35にインナモジュール11を取り付けると、分岐用コネクタ10の組付けが完了する。
【0036】
分岐用コネクタ10は、フード部62に挿入することによって基板用コネクタ60に嵌合される。両コネクタ10,60を嵌合した状態では、分岐用コネクタ10のロックアーム43が基板用コネクタ60のフード部62に形成したロック部66に係止することにより、両コネクタ10,60が嵌合状態にロックされる。
【0037】
両コネクタ10,60を嵌合した状態にすると、2つの分岐側端子63のタブ67が、挿入口18から下側の2つの端子収容溝15内に挿入され、2つの端子金具30と個別に接続される。一方の分岐側端子63は、一方の導電路51A,51Bを構成する2つの端子金具30のうち下側の端子金具30に接続される。他方の分岐側端子63は、他方の導電路51A,51Bを構成する2つの端子金具30のうち下側の端子金具30に接続される。分岐側端子63と端子金具30との接続により、各系統の導電路51A,51Bから分岐側端子63と通信回路55が分岐される。
【0038】
本実施例の分岐用コネクタ10は、二対の端子金具30と、二対の端子金具30を保持する端子保持部材12と、板状をなす2つの短絡部材46とを有する。対をなす端子金具30は、1系統の導電路51A,51Bの途中に形成された2つの分断部52に固着されている。短絡部材46は、端子保持部材12の外面に沿うように配されており、対をなす端子金具30に接続される。端子金具30には分岐側端子63が接続可能である。分岐用コネクタ10は、短絡部材46によって1系統の導電路51A,51Bを構成する2つの端子金具30を短絡させる。これにより、導電路51A,51Bがデイジーチェーン接続される。
【0039】
分岐用コネクタ10と基板用コネクタ60を嵌合させると、分岐側端子63と通信回路55が、端子金具30を介して1系統の導電路51A,51Bから分岐される。導電路51A,51Bは、分岐用コネクタ10によってデイジーチェーン接続されているので、デイジーチェーンの接続部である分岐用コネクタ10から分岐側端子63を分岐させた状態では、スタブ長が短縮される。分岐側端子63は、導電路51A,51Bを構成する端子金具30に直接接続されるので、導電路51A,51Bと分岐側端子63との間に他の部材が介在するものに比べると、小型化を図ることができる。短絡部材46は板状をなすので、この構成によっても小型化を図ることができる。
【0040】
分岐用コネクタ10は、短絡部材46を覆う分岐用ハウジング35を備えているので、短絡部材46を分岐用ハウジング35によって保護することができる。短絡部材46は、分岐用ハウジング35の内面に保持されているので、インナモジュール11を分岐用ハウジング35から外して、短絡部材46を端子金具30と非接触の状態にしても、分岐用ハウジング35によって短絡部材46を保護することができる。
【0041】
短絡部材46には、端子金具30に対して弾性的に接触可能な弾性接触片47が形成されている。弾性接触片47の弾性変形により、端子保持部材12、端子金具30、分岐用ハウジング35、短絡部材46等の各部品の寸法公差が吸収される。同じく弾性接触片47の弾性変形により、端子保持部材12と端子金具30との間の組付け公差、分岐用ハウジング35と短絡部材46との間の組付け公差、インナモジュール11と分岐用ハウジング35との間の組付け公差が吸収される。これらの公差が弾性接触片47の弾性変形によって吸収されるので、短絡部材46と端子金具30との間の接触状態が安定する。
【0042】
弾性接触片47は短絡部材46から内面側へ突出しているため、分岐用コネクタ10の幅寸法が大きくなることが懸念される。しかし、端子保持部材12には、弾性接触片47を収容する接続孔21が形成されているので、端子保持部材12の外面と短絡部材46の内面との間のクリアランスを狭めることができる。これにより、幅方向の小型化を図ることができる。
【0043】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、1つの分岐用コネクタに二対の端子金具を設けて2系統の導電路を分岐させたが、分岐する導電路の系統数は1系統でもよく、3系統以上でもよい。導電路がいずれの本数であっても、1つの分岐用コネクタに、導電路の系統数と同じ対数の端子金具と、導電路の系統数と同じ枚数の短絡部材を設け、対をなす端子金具同士を短絡部材で接続すればよい。
上記実施例では、保護部材としての分岐用ハウジングが、短絡部材だけでなく、端子保持部材全体を包囲するが、保護部材は短絡部材のみを覆い、端子保持部材の少なくとも一部を露出させる形態であってもよい。
上記実施例では、短絡部材を保護部材としての分岐用ハウジングに保持したが、短絡部材は、端子保持部材の外面に保持してもよい。
上記実施例では、端子金具に弾性接触する弾性接触片を短絡部材に形成したが、短絡部材は弾性接触片を有しない形態としてもよい。この場合、端子金具に、短絡部材に対して弾性接触が可能な弾性部位を形成すれば、端子金具と短絡部材との間の接触状態を安定させることができる。
上記実施例では、端子保持部材に、弾性接触片が収容される接続孔を形成したが、端子保持部材の接続孔に端子金具の突起を収容し、この突起に短絡部材の弾性接触片が接触するようにしてもよい。
上記実施例では、端子保持部材を構成する本体部材とカバーのうち、本体部材に接続孔を形成したが、接続孔をカバーに形成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…分岐用コネクタ
11…インナモジュール
12…端子保持部材
13…本体部材
14…カバー
15…端子収容溝
16F…前側抜止め凹部
16R…後側抜止め凹部
17…前壁部
18…挿入口
19…係止溝
20…係止段部
21…接続孔
22…板状部
23…側板部
24…位置決め突部
25…嵌合リブ
30…端子金具
31…角筒部
32…圧着部
33F…前側スタビライザ
33R…後側スタビライザ
35…分岐用ハウジング(保護部材)
36…側壁部
37…底壁部
38…上壁部
39…保護空間
40…底部ストッパ
42…弾性抜止片
43…ロックアーム
44…保持溝
46…短絡部材
47…弾性接触片
48…接点部
49…圧入部
50…幹線ハーネス
51A…導電路
51B…導電路
52…分断部
53…絶縁被覆
54…導体
55…通信回路
56…回路基板
60…基板用コネクタ
61…基板側ハウジング
62…フード部
63…分岐側端子
64…基板接続部
66…ロック部
67…タブ