(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 7/60 20060101AFI20230302BHJP
B29B 7/48 20060101ALI20230302BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20230302BHJP
B29B 9/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B29B7/60
B29B7/48
B29B7/84
B29B9/02
(21)【出願番号】P 2019030717
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】本間 友博
(72)【発明者】
【氏名】青木 一史
(72)【発明者】
【氏名】竹田 多完
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-292626(JP,A)
【文献】特開平06-206216(JP,A)
【文献】特開2012-040789(JP,A)
【文献】特開平03-086504(JP,A)
【文献】特表2003-504229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-7/94
B29B 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベント式スクリュー押出し機を用い、ポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物を供給して加熱しながら混練し、口金の吐出口から吐出した後ホットカットすることによりポリアミドイミド樹脂ペレットを製造する方法であって、前記口金として、押出し機の一つのスクリューに対しては該スクリューの軸を中心とする一つの同一円周上にのみ複数の吐出口を有する口金を用いるとともに、前記口金の吐出口から吐出され製造されるペレットの組成と同一の組成を有する追加ペレットを、押出し機のベント口から、押出し機に供給される前記ポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物の供給量の10~50%に相当する割合で供給することを特徴とするポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
ベント式スクリュー押出し機としてベント式2軸押出し機を用いる、請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
ベント式スクリュー押出し機が、ポリアミドイミド樹脂
が溶融しない温度で予熱する固体搬送領域、固体搬送領域からのポリアミドイミド樹脂が溶融する遷移領域、溶融されたポリアミドイミド樹脂が前記吐出口へと搬送される溶融樹脂搬送領域を有し、固体搬送領域に設けられたベント口から、前記追加ペレットを供給する、請求項1または2に記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
固体搬送領域の温度が190℃~210℃、遷移領域の温度が190℃~340℃、溶融樹脂搬送領域の温度が320℃~340℃である、請求項3に記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
一つの同一円周上に設けられる複数の吐出口の数が12~16であり、各吐出口の径が2~3mmである、請求項1~4のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記ベント式スクリュー押出し機に供給されるポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物が粉体または粒体であり、該粉体または粒体が、(イ)0.1~700μmの平均粒子径、あるいは(ロ)0.1~0.8g/mlの嵩密度を有する、請求項1~5のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベント式スクリュー押出し機を用いて、ポリアミドイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物を溶融・混練し、ポリアミドイミド樹脂ペレットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベント式スクリュー押出し機、例えばベント式2軸押出し機を用いてポリアミドイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物を溶融・混練しポリアミドイミド樹脂ペレットを製造する場合、押出し材料に随伴された空気(以下、随伴空気ということもある。)やスクリュー回転による剪断発熱、押出し機シリンダーとスクリューの形状に起因する滞留部などによって、押出し材料の一部が、酸化または熱分解してゲル化物や炭化物等の熱劣化物が生成し、製品としてのペレットに混入することがある。
【0003】
この対策としては、ベント式スクリュー押出し機の吐出側シリンダー先端内部に、生成した熱劣化物の濾過、除去を目的としてフィルターが設けられ、定期的に交換するのが一般的である。しかしながら、熱劣化物を除去するためにフィルターを設ける方法は、フィルターの交換が煩雑であるだけでなく、溶融粘度の高いポリアミドイミド樹脂ではフィルターを設置できず、スクリューとシリンダーの洗浄を頻繁に行う必要があった。
【0004】
随伴空気による押出し材料の酸化防止対策としては、窒素ガスを押出し機の供給口等から供給し酸素濃度を低減することによって、熱劣化物の生成を抑制する技術が特許文献1に開示されている。しかしながら、窒素ガスを供給する方法では、随伴空気を置換するだけの窒素ガスを供給すると、押出し材料がスクリュー流路を逆流し供給口へ吹上げる現象を引き起こしやすく、搬送能力を低下かつ不安定にし、溶融樹脂の吐出も不安定にする現象を引き起こすことがあった。とくに押出し材料が粉体である場合、搬送能力の低下、吐出の不安定化につながりやすかった。
【0005】
また、その他の熱劣化物生成の抑制方法として、溶融・混練されて吐出されるポリアミドイミド樹脂ペレットと同組成のペレット(追加ペレット)を押出し機のベント口から押出し機の溶融樹脂吐出量の1/1000~1/2に相当する割合で供給し、セルフクリーニング性を向上させる方法が特許文献2に開示されている。この手法により、短時間の運転における熱劣化物の抑制は可能となったが、口金から吐出されるペレット重量のばらつきを生じることがあり、それにより、ベント口から投入するペレットの供給が不安定となり、24時間を超える長時間の押出し運転においては、熱劣化物の生成量が増加してしまうことがあるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-206216号公報
【文献】特開2002-292626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の、ベント式スクリュー押出し機を用いベント口から追加ペレットを供給してセルフクリーニング機能を発揮させながらポリアミドイミド樹脂ペレットを製造する方法では、吐出されるペレット重量のばらつき、ベント口から投入するペレットの供給不安定が生じるおそれがあり、長時間の押出し運転では熱劣化物の生成量が増加してしまうことがあるという問題が残されていた。
【0008】
そこで本発明の課題は、上記のような従来技術における問題点に鑑み、長時間の押出し運転においても熱劣化物の発生を抑制することが可能で、目標とする性状のペレットを安定して製造可能なポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法は、以下の構成を有する。
(1)ベント式スクリュー押出し機を用い、ポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物を供給して加熱しながら混練し、口金の吐出口から吐出した後ホットカットすることによりポリアミドイミド樹脂ペレットを製造する方法であって、前記口金として、押出し機の一つのスクリューに対しては該スクリューの軸を中心とする一つの同一円周上にのみ複数の吐出口を有する口金を用いるとともに、前記口金の吐出口から吐出され製造されるペレットの組成と同一の組成を有する追加ペレットを、押出し機のベント口から、押出し機に供給される前記ポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物の供給量の10~50%に相当する割合で供給することを特徴とするポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
(2)ベント式スクリュー押出し機としてベント式2軸押出し機を用いる、(1)に記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
(3)ベント式スクリュー押出し機が、ポリアミドイミド樹脂が実質的に溶融しない温度で予熱する固体搬送領域、固体搬送領域からのポリアミドイミド樹脂が溶融する遷移領域、溶融されたポリアミドイミド樹脂が前記吐出口へと搬送される溶融樹脂搬送領域を有し、を有し、固体搬送領域に設けられたベント口から、前記追加ペレットを供給する、(1)または(2)に記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
(4)固体搬送領域の温度が190℃~210℃、遷移領域の温度が190℃~340℃、溶融樹脂搬送領域の温度が320℃~340℃である、(3)に記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
(5)一つの同一円周上に設けられる複数の吐出口の数が12~16であり、各吐出口の径が2~3mmである、(1)~(4)のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
(6)前記ベント式スクリュー押出し機に供給されるポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物が粉体または粒体であり、該粉体または粒体が、(イ)0.1~700μmの平均粒子径、あるいは(ロ)0.1~0.8g/mlの嵩密度を有する、(1)~(5)のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る方法によれば、重量のばらつきが小さく、24時間を超える長時間の押出し運転においても熱劣化物の生成が少ないポリアミドイミド樹脂ペレットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る方法に用いるベント式スクリュー押出し機の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の押出し機の口金部の構成の一例を示す概略透視正面図である。
【
図3】比較例1で用いた口金部の構成を示す概略透視正面図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について、実施の形態とともに、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、本発明で用いるベント式スクリュー押出し機、とくにベント式2軸押出し機の例を示す。
図1において、100はベント式2軸押出し機を示しており、1は押出し機100のシリンダー、2はスクリュー、3は吐出用の口金、4は押出し材料の供給口、5はセルフクリーニング用の追加ペレットが投入されるベント口を示している。本発明で用いるベント式スクリュー押出し機としては、スクリューが1本の単軸押出し機の使用も可能ではあるが、押出し材料の溶融混錬をより均一かつ十分に行う上で、スクリューが2本並列に設けられているベント式2軸押出し機の使用が好ましい。
【0013】
本発明に使用するベント式2軸押出し機100の構成としては、例えば、シリンダー1が、複数の(例えば9個の)ブロックシリンダーからなり、第1番目と第2番目のブロックシリンダーに供給口4を有し、第6番目のブロックシリンダーに脱気口、つまりベント口5(ただし、いわゆる強制ベントでは無くナチュラルベントで自然排気するもの)を有する2条ネジタイプのスクリュー(例えば、直径56mm、長さ1625mm程度)の同方向回転2軸押出し機を使用することができる。
【0014】
本発明に使用するベント式2軸押出し機100のスクリュー2の領域構成およびシリンダー1内の領域構成としては、熱可塑性樹脂の圧縮・昇圧領域となるスクリューエレメントを設けた圧縮領域および該圧縮領域に続けて降圧となるスクリューエレメントを設けた降圧領域を含み、搬送するポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)未満あるいは融点(Tm)未満かつポリアミドイミド樹脂が実質的に溶融しない温度で予熱される固体搬送領域、およびポリアミドイミド樹脂が溶融する遷移領域を有し、かつ、実質的に真空脱気領域が無く、溶融樹脂のシリンダー内自由体積充満率が実質的に100%近くに達している領域を溶融樹脂の吐出用口金3側に接して形成された溶融樹脂搬送領域を有する構成とすることが好ましい。固体搬送領域に設けられたベント口5から、前述のセルフクリーニング用の追加ペレットが供給される。固体搬送領域の温度としては、210℃~260℃、遷移領域の温度としては、320℃~340℃の範囲に制御されることが好ましい。
【0015】
図2に本発明で使用する口金3の例を示す。
図2において、2は上述のスクリュー、とくに該スクリュー2の軸の位置を示しており、3は口金、7は口金3に設けられた複数の吐出口を示している。吐出口7は、押出し機100の一つのスクリュー2に対しては該スクリュー2の軸を中心とする一つの同一円周上にのみ複数の吐出口7として設けられており(したがって、複数の円からなる同心円上の配列は本発明の範囲外となる。)、図示例では、2軸押出し機100の2つのスクリュー2、2のそれぞれについて、一つの同一円6の円周上にのみ複数の吐出口7が設けられている。各一つの同一円周上に設けられる複数の吐出口7の数としては、12~16程度が好ましく、図示例では同一円周上に15個の吐出口7構成用のホールが形成されている。各吐出口の径としては2~3mm程度が好ましい、
【0016】
上述の如く、本発明における樹脂の固体搬送領域に相当するシリンダー設定温度は190~210℃、遷移領域に相当するシリンダー設定温度は190~340℃、溶融樹脂搬送領域に相当するシリンダー設定温度は320~340℃とすることが好ましい。この時の樹脂温度は、300~350℃の範囲であることが望ましい。
【0017】
次に、溶融・混練されて吐出されるポリアミドイミド樹脂ペレットと同一の組成を有するポリアミドイミド樹脂ペレット(追加ペレット)を、ペレット吐出側のベント口5からポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物の供給量の10~50%に相当する割合で供給することについて説明する。
【0018】
溶融・混練されて吐出されるポリアミドイミド樹脂と同組成のポリアミドイミド樹脂ペレットとは、当該押出し機を運転して口金から吐出された樹脂と同組成を有するペレットであればよく、たとえば吐出された樹脂そのもの、それに添加剤等を加えたものが使用できる。もちろん、別途作製されたものであってもよい。
【0019】
溶融・混練され、ホットカットし吐出されるポリアミドイミド樹脂ペレットと同組成のポリアミドイミド樹脂ペレット(追加ペレット)を供給することにより、セルフクリーニング性が向上し、熱劣化物を減少させることができる。当該ペレットの供給方法は特に限定されないが、押出し機内に形成される遷移領域よりも上流側(駆動モータ側)に存在するベント口(とくに、固体搬送領域に設けられたベント口)から供給されるのが好ましい。供給口数は特に限定されず、1ヶ所以上の供給口から供給されるのであればよい。
【0020】
溶融・混練されて吐出されるポリアミドイミド樹脂と同じ組成を有する追加ペレットの供給量は、ポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物供給量の10~50%に相当する割合であり、好ましくは30~35 %である。
【0021】
本発明に用いるポリアミドイミド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂と添加剤の混合物としては、粉体または粒体であることが好ましく、該粉体または粒体が、0.1~700μmの平均粒子径、あるいは0.1~0.8g/mlの嵩密度を有することが好ましい。このような平均粒子径、あるいは嵩密度を有することにより、押出し機内においてより均一に溶融・混練されやすくなる。
【0022】
ここで、平均粒子径と嵩密度は、以下の方法で求めた値とする。平均粒子径は、粉体の粒度分布測定をJIS Z8801に準拠して求めた。つまり、使用した網篩いの篩い分け重量と篩いの公称目開きから算出して求める。具体的には、例えばTyler篩いの呼び(メッシュ)で#24/#32/#48/#60/#200/#270の篩いを用いて乾式の機械式振動ふるい分けを10分間行い、各篩い上の重量分率を求める。その篩いわけ重量分率と各篩いの公称目開き(mm)0.701/0.495/0.295/0.246/0.074/0.053から平均粒子径を算出した。また、嵩密度は、JIS K6891に準拠し求めた値とする。
【0023】
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂とは、分子構造中にアミド結合とイミド結合とを有し、これらの結合間を芳香族残基、脂肪族残基などで結合している樹脂をいう。本発明において、残基とは官能基部分を除いた部分をいい、たとえば芳香族ジアミンのジアミン部分を除いた部分をいい、下記一般式(I)(式中、Rは2価の芳香族残基および/または脂肪族残基である。ここで2価の芳香族残基および/または脂肪族残基の具体例としては下記一般式(II)などを挙げることができる)で表される繰り返し単位を主な構造単位として有するものが用いられる。
【0024】
【0025】
【実施例】
【0026】
以下、実施例・比較例を挙げて本発明の効果等をさらに具体的に説明する。
まず、得られたペレットの評価方法を記載する。本発明の熱劣化物抑制効果を評価する方法としては、得られたポリアミドイミド樹脂ペレット中の熱劣化物混入量の測定を行った。ペレット中の熱劣化物混入量の測定方法は、旧大蔵省印刷局製造のきょう雑物測定図表を基準にして、0.08~0.5mm2 に相当する大きさのものを熱劣化物とし、50gのペレットにつき、ペレット表面に熱劣化物が1個以上存在したペレットの個数を計数した。この50gのペレットは、以下に示す実施例、比較例における押出し運転において、ポリアミドイミド樹脂粉体と添加剤の合計供給量が22~25kg/hとなる運転条件に設定した。
【0027】
実施例1
使用した材料は、ポリアミドイミド樹脂粉体であって、平均粒径0.39 mm、嵩密度0.34 g/mlのものを使用した。添加剤は、粉体状無機フィラーとして、二酸化チタンTR700(富士チタン工業社製)を、3重量%添加した。
【0028】
使用したベント式2軸押出し機の構成としては、9個のブロックシリンダーから成り、第1番目と第2番目のブロックシリンダーに供給口を有し、第6番目のブロックシリンダーにセルフクリーニングペレット投入口(ベント口)を有する2条ネジタイプのスクリュー(直径56mm、長さ1625mm)の同方向回転2軸押出機を使用した。
【0029】
第1番目シリンダー供給口(第1供給口)からは、ポリアミドイミド樹脂粉体97重量部と二酸化チタン3重量部の混合物を22~25kg/hで定量供給した。
【0030】
スクリューの領域配列については、以下のような配列を使用した。
スクリューの駆動側端 (シリンダーの駆動側端と同じ) から720mmまではフルフライト・スクリューの配列で、720mmから900mmまで(圧縮領域)は粉体の圧縮となる様に押出方向に沿って漸次スクリュー・ピッチが小さくなるようなフルフライト・スクリューとスクリュー外径の小さい(53mm)逆ネジスクリューを配列し、ここまでを固体搬送領域とした。900mmから1260mmまで(降圧領域)はフルフライト・スクリューの配列で、1260mmから1350mmまで(遷移領域)は漸次スクリュー・ピッチが小さくなるスクリューとニーディングスクリューを用いた溶融・混練させるためのスクリューエレメントを配列し、ここまでを遷移領域とした。1350mmから1445mmまでは溶融後の混練り領域、1445mmから1625mmまで(溶融樹脂搬送領域)はフルフライト・スクリューで漸次スクリュー・ピッチが小さくなるようにして押出圧力を発生させるようなスクリューの領域配列とし、ここまでを溶融樹脂搬送領域とした。樹脂の溶融・混練を行う領域に相当する領域のシリンダー設定温度は325℃、固体搬送領域に相当するシリンダー設定温度は210℃の外部加熱条件とし、モーター動力のトルクを目安にして前記吐出量を安定吐出できる範囲でスクリュー回転数の調整を行った。
【0031】
口金は、
図2に示す1つのスクリュー軸に対してそれぞれの同一円周上に計15個の吐出口形成用のホールを有し、各ホール径が2.8mmである口金を使用した。
【0032】
吐出した樹脂のカッティング方式はホットカット方式とし、直径2.5mm、長さ2.5mmの円筒状のペレットを得た。
【0033】
第6番目シリンダーのベント部より、溶融・混練されて吐出されるポリアミドイミド樹脂ペレットと同組成のペレットを、スクリュー式フィーダーを用いて7.8kg/hで供給した。
【0034】
なお、実施例1では、運転開始から15分ごとにペレットのサンプリングを行った。
【0035】
比較例1
口金形状以外は、実施例1と同様の条件で、押出し運転を実施した。
図3に比較例1で使用した口金の例を示す。
図3において2は押出機のスクリュー(スクリューの軸)、7aはホール、3aは口金である。1つのスクリュー軸に対して、中央部に5個、同一円周上に10個の計15個のホールを有し、各ホール径が2.8 mmである口金を使用した。
【0036】
比較例2
ベント口からのペレット供給量以外は、実施例1と同様の条件で、押出し運転を実施した。比較例2では、ベント口からのペレット供給無しで運転を行った。
【0037】
比較例3
口金形状以外は、比較例2と同様の条件で、押出し運転を実施した。比較例3では、比較例1と同様に、
図3に示す1つのスクリュー軸に対して、中央部に5個、同一円周上に10個の計15個のホールを有し、各ホール径が2.8 mmである口金を使用した。
【0038】
【0039】
表1に示す通り、実施例1では、ペレット重量のばらつきσが0.004と小さく、運転開始から24時間以上経過した際のペレット50gあたりの熱劣化物平均発生数は3個となり、安定した押出し運転が実施できた。
【0040】
比較例1では、ペレット重量のばらつきσが0.008と大きく、運転開始から24時間以上経過した際のペレット50gあたりの熱劣化物平均発生数が6個となり、やや不安定な押出し運転となった。
【0041】
比較例2では、ペレット重量のばらつきσは0.003と小さいが、運転開始2時間後のペレット50gあたりの熱劣化物平均発生数が10個の押出し運転となった。24時間を超える長時間の運転においてはペレット50gあたりの熱劣化物平均発生数が28個となり、不安定な運転となった。
【0042】
比較例3では、ペレット重量のばらつきσは0.009と大きく、運転開始2時間後のペレット50gあたりの熱劣化物平均発生数が16個の押出し運転となった。24時間を超える長時間の運転においてはペレット50gあたりの熱劣化物平均発生数が51個となり、非常に不安定な運転となった。
なお、実施例ならびに比較例の樹脂温度は、330℃~340℃であった。
【0043】
これらの結果から、本発明により、以下の作用、効果が得られることが分かる。
本発明で規定した同一円周上にのみ吐出口が配列された口金を使用することでペレット重量のバラつきが抑制される。その結果、セルフクリーニングペレットの供給が安定し、熱劣化物の掻き取り量が一定となる。その結果、熱劣化物の発生は抑制され、24時間を超える長時間の運転においても抑制可能となった。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダー
2 スクリュー
3、3a 口金
4 押出し材料の供給口
5 ベント口
6 同一円
7、7a 吐出口
100 押出し機