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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】強化繊維束
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/22 20060101AFI20230302BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20230302BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20230302BHJP
   C08J 5/04 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
D02G3/22
D06M15/59
D06M15/55
C08J5/04 CES
C08J5/04 CFG
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019512689
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2019001218
(87)【国際公開番号】W WO2019146483
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018011435
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018011436
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】舘山 勝
(72)【発明者】
【氏名】清家 聡
(72)【発明者】
【氏名】布施 充貴
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏
(72)【発明者】
【氏名】松井 明彦
(72)【発明者】
【氏名】浦 和麻
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136812(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104154(WO,A1)
【文献】特開2011-241494(JP,A)
【文献】特開2013-104156(JP,A)
【文献】特開平04-024264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00-3/48
D02J 1/00-13/00
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1m以上の長さを有し、未分繊処理区間の含有率が3%以上50%以下となるように分繊処理がなされた連続強化繊維束であって、
下記領域(I)において、単位幅あたりの単糸数が1600本/mm以下、束内平均繊維数が1000本以下、サイジング剤(I)の付着量が0.5重量%以上10重量%以下であり、
下記領域(II)において求められるドレープ値が120mm以上240mm以下、束内平均繊維数が50本以上4000本以下であることを特徴とする強化繊維束。
領域(I):繊維束末端から150mmまでの前記繊維束の部分
領域(II):領域(I)以外の前記繊維束の部分
【請求項2】
前記領域(I)に付与されたサイジング剤(I)が水溶性ポリアミドであることを特徴とする請求項に記載の強化繊維束。
【請求項3】
前記領域(II)にエポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤が付与されていることを特徴とする請求項1または2に記載の強化繊維束。
【請求項4】
前記領域(II)にポリアミド樹脂を主成分とするサイジング剤が付与されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の強化繊維束。
【請求項5】
前記領域(II)における束硬度が39g以上200g以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の強化繊維束。
【請求項6】
前記領域(II)における単位幅あたりの単糸数が600本/mm以上1600本/mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の強化繊維束。
【請求項7】
前記領域(II)における平均束厚みが0.01mm以上0.2mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の強化繊維束。
【請求項8】
前記領域(II)における平均束幅が0.03mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の強化繊維束。
【請求項9】
前記領域(II)に付着されたサイジング剤の付着量が、領域(II)の重量100重量%に対して0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の強化繊維束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料用途に好適に用いうる強化繊維束に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料(CFRP)は比強度・比剛性に優れており、近年、自動車部材向けのCFRPの開発も活発化している。
【0003】
CFRPの自動車への適用例としては、航空機やスポーツ材料で実績のある熱硬化性樹脂を用いたプリプレグ、レジントランスファーモールディング(RTM)、フィラメントワインディング(FW)による部材が上市されている。一方、熱可塑性樹脂を用いたCFRPは、高速成形が可能で、リサイクル性に優れることから、量産車向け材料として注目されている。その中でもプレス成形は生産性が高く、複雑な形状や大面積の成形にも対応できることから、金属成形の代替としての期待が高まっている。
【0004】
プレス成形に用いる中間基材は、不連続強化繊維を用いたシート状の材料が主流である。代表的なものとして、シートモールディングコンパウンド(SMC)、ガラスマットサーモプラスチック(GMT)がある(特許文献1、特許文献2)。いずれの中間基材も金型キャビティ内で材料が流動して充填される、いわゆるフロースタンピング成形に用いられ、比較的長い強化繊維がチョップドストランド状および/またはスワール状になって熱可塑樹脂中に分散した形態をとる。単糸数が多い繊維束からなるため、成形の際の流動性には優れるが成形品の力学特性に劣る傾向がある。また生産コスト低減や生産性向上のため、強化繊維束を連続的に供給する、中間基材の連続生産が要求されている。
【0005】
力学特性と流動性の両立を図ったものとして、繊維長や濃度パラメータの異なるシートからなる多層構造の成形材料(特許文献3)がある。また、力学特性と流動性に優れる成形材料の構成材料となる分繊処理区間と未分繊処理区間を含む繊維束(特許文献4)がある。繊維束の厚みや幅等の形態を調整することで力学特性を高めた成形材料(特許文献5)がある。このように力学特性と成形の際の流動性をバランスよく両立させるための改善が進められているが、さらなる力学特性と流動性の向上が要求されている。また繊維強化樹脂成形材料の連続生産性の向上も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-141502号公報
【文献】特開2003-80519号公報
【文献】特許第5985085号明細書
【文献】国際公開WO2016/104154パンフレット
【文献】特許第5512908号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記要求に鑑み、力学特性と成形時の流動性に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を構成し、連続的に生産可能な強化繊維束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決することができる強化繊維を発明するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1] 1m以上の長さを有する連続強化繊維束であって、下記領域(I)における単位幅あたりの単糸数が1600本/mm以下、束内平均繊維数が1000本以下、領域(II)において求められるドレープ値が120mm以上240mm以下であることを特徴とする強化繊維束。
領域(I):繊維束末端から150mmまでの前記繊維束の部分
領域(II):領域(I)以外の前記繊維束の部分
[2] 1m以上の長さを有する連続強化繊維束であって、下記領域(I)におけるサイジング剤(I)の付着量が0.5重量%以上10重量%以下、領域(II)において求められるドレープ値が120mm以上240mm以下であることを特徴とする、強化繊維束。
領域(I):繊維束末端から該末端から150mmまでの前記繊維束の部分
領域(II):領域(I)以外の前記繊維束の部分
[3] 前領域(I)に付与されたサイジング剤(I)が水溶性ポリアミドであることを特徴とする前記[2]に記載の強化繊維束。
[4] 前記領域(II)にエポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤が付与されていることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載の強化繊維束。
[5] 前記領域(II)にポリアミド樹脂を主成分とするサイジング剤が付与されていることを特徴とする前記[1]または[4]に記載の強化繊維束。
[6] 前記領域(II)における束内平均繊維数が50本以上4000本以下であることを特徴とする前記[1]~[5]のいずれかに記載の強化繊維束。
[7] 前記領域(II)における束硬度が39g以上200g以下であることを特徴とする前記[1]~[6]のいずれかに記載の強化繊維束。
[8] 前記領域(II)における単位幅あたりの単糸数が600本/mm以上1600本/mm以下であることを特徴とする前記[1]~[7]のいずれかに記載の強化繊維束。
[9] 前記領域(II)における平均束厚みが0.01mm以上0.2mm以下であることを特徴とする前記[1]~[8]のいずれかに記載の強化繊維束。
[10] 前記領域(II)における平均束幅が0.03mm以上3mm以下であることを特徴とする前記[1]~[9]のいずれかに記載の強化繊維束。
[11] 前記領域(II)に付着されたサイジング剤の付着量が領域(II)の重量を100重量%としたとき0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする前記[1]~[10]のいずれかに記載の強化繊維束。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、繊維強化樹脂成形材料の力学特性および複雑な形状でも成形可能とする成形性に優れ、また、該成形材料の連続生産性に優れる強化繊維束を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の強化繊維束を示す概略説明図である。
図2】本発明の強化繊維束の製造方法の例を示す概略説明図である。
図3】部分分繊処理工程とサイジング剤付与工程のタイミングを示す工程図である。
図4】繊維束拡幅工程および部分分繊処理工程とサイジング剤付与工程のタイミングを示す工程図である。
図5】サイジング剤塗布工程部分分繊処理工程、乾燥工程、熱処理工程の工程フローの一例を示す工程図である。
図6】繊維束拡幅工程より前にサイジング剤塗布工程を含む場合の工程フローを示す工程図である。
図7】繊維束拡幅工程より後にサイジング剤塗布工程を含む場合の工程フローを示す工程図である。
図8】ドレープ値の測定方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の強化繊維束は1m以上の長さを有する連続した繊維として構成され、図1に示すように繊維束末端から150mmまでの繊維束の部分である領域(I)、および、領域(I)以外の繊維束の部分である領域(II)とからなる。ここで、領域(I)は繊維束末端から150mmまでの繊維束の部分であるが、領域(I)は好ましく繊維束末端から120mmまでの繊維束の部分とすることができ、更に好ましく繊維束末端から80mmまでの繊維束の部分とすることができる。後に説明するように、領域(I)は強化繊維束相互の接続部分として利用されることが想定され、一方で領域(II)は繊維強化複合材料の補強に専ら利用されることが想定されている。従い、領域(I)は強化繊維束102の接続が強固とできるのであれば短い方が好ましいのである。領域(I)が前記の範囲とされることで繊維強化樹脂の力学特性を低下させることなく、強化繊維束102の領域(I)を利用して繋げることが可能となる。
【0012】
強化繊維の種類としては特に制限はないが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維からなる群から選ばれる繊維が好ましい。なかでも炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系の炭素繊維が力学特性の向上、繊維強化樹脂の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、得られる繊維強化樹脂の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。
【0013】
強化繊維束中に含まれる強化繊維の単繊維径は0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の単繊維径は20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。強化繊維束のストランド強度は3.0GPa以上が好ましく、4.0GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維束のストランド弾性率は200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維束のストランド強度または弾性率がそれぞれ、この範囲であれば、繊維強化樹脂成形材料の力学特性を高めることができる。
【0014】
本発明の強化繊維束の一態様を図1を用いてより具体的に説明する。
図1に示すように、本発明の強化繊維束102は長手方向に細分化、分繊処理されている。領域(I)と領域(II)における分繊処理条件は異なっていてもよい。分繊処理された分繊繊維束は未分繊処理区間130を含んでいてもよい。未分繊処理区間130は繊維束の幅方向で連続であっても良いし、不連続であってもよい。前記分繊繊維束において、1つの未分繊処理区間130を挟んで隣接する分繊処理区間150の長さは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
ここで、本発明にいう単位幅あたりの単糸数および束内平均繊維数は分繊処理がされている場合には分繊処理がされている箇所において求められる。例えば、総繊維本数が10000本のフィラメントが均等に50に分繊された場合、束内平均繊維数は200本となり、分割された箇所における一個の繊維束の幅が0.5mmであると単位幅あたりの繊維数は400本/mmとなる。
【0016】
また、本発明の強化繊維束の領域(I)におけるサイジング剤(I)(領域()に付与されているサイジング剤をサイジング剤()と称する)の付着量としては、強化繊維束の領域(I)部分の重量を100重量%としたとき10重量%以下がよく、8重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。サイジング剤(I)の付着量が10重量%を超えると、繊維束が硬くなりカット工程を通過しない可能性がある。一方、サイジング剤(I)の付着量は、0.5重量%以上が好ましく、0.7重量%以上が更に好ましく、1重量%以下がより好ましい。サイジング剤(I)の付着量が0.5重量%未満になると、繊維束どうしの接合強度が低下する。その結果カット工程時、繊維繋ぎ部が剥離する可能性がある。
【0017】
本発明の強化繊維束において、領域(I)で分繊処理された各束に含まれる強化繊維の束内平均繊維数n1は1000本以下である。この束内平均繊維数は800本以下であることがより好ましく、500本以下が更に好ましい。この範囲であれば強化繊維束同士を強度的に安定して繋ぐことが容易である。
【0018】
また、本発明の強化繊維束の領域(I)における単位幅あたり単糸数は1600本/mm以下である。好ましくは、1400本/mm以下であり、より好ましくは1250本/mm以下である。1600本/mmを超える場合、繊維同士の絡まりが弱まり、繋ぎ強度が落ちる傾向がある。強化繊維束の単位幅あたり単糸数の導出方法は後述する。
【0019】
本発明の強化繊維束に使用する繊維束は、予め集束された状態であることが好ましい。ここで予め集束された状態とは、例えば、繊維束を構成する単糸同士の交絡による集束した状態や、繊維に付与されたサイジング剤による集束した状態、繊維束の製造工程で含有されてなる撚りによる集束した状態を指す。
【0020】
また、本発明の強化繊維束は集束性を確保するために好ましくサイジング剤にて処理されている。前記のとおり集束性は強化繊維束に撚りをかけることでも確保することができるが、繊維強化複合材料としたときの力学特性において優れることからサイジング剤の付与によって集束性を確保することが好ましい。また、サイジング剤は繊維強化複合材料を構成するマトリクス樹脂と強化繊維との接着性を改善する作用を持たせることもできるので好ましく採用される。
【0021】
本発明の強化繊維束の領域(I)におけるサイジング剤(I)(領域(I)に付与されているサイジング剤をサイジング剤(I)と称する)の付着量としては強化繊維束の領域(I)部分の重量を100重量%としたとき3重量%以下が好ましく、2重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。サイジング剤(I)の付着量が3重量%を超えると、強化繊維束を構成する繊維の絡まりが弱まり、繋ぎ強度が落ちる傾向がある。
【0022】
強化繊維の表面にサイジング剤(I)を付着させる場合、サイジング剤(I)の溶質の濃度は、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。溶質の濃度が0.01重量%より下がると、強化繊維束を構成する各強化繊維に付着するサイジング剤(I)の量が少なくなるために、強化繊維束の集束性が低下してしまうだけでなく、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性、親和性を高めることができず、機械強度の良好な複合材料を得ることが困難となる傾向にある。サイジング剤(I)において溶質の濃度の上限としては、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。溶質の濃度が10重量%を超えると、サイジング剤(I)の粘度が高くなり、強化繊維束を構成する各強化繊維に溶質を均等に付与することが難しくなる傾向にある。サイジング剤(I)の付着量の導出方法は後述する。
【0023】
サイジング剤(I)の付与手段としては、特に限定されるものではなく、公知の手段を用いることができる。例えばスプレー法、ローラー浸漬法、ローラー転写法などが挙げられる。これら方法を単独もしくは組み合わせて使用してもよい。これら浸漬法の中でも、生産性、均一性に優れる方法として、ローラー浸漬法が好ましい。高分子溶液に強化繊維束を浸漬する際には、高分子溶液浴中に設けられた浸漬ローラーを介して、開繊と絞りを繰り返した場合、特に強化繊維束の中にまで高分子溶液を含浸させることができる。本発明における強化繊維に対するサイジング剤(I)の付着量は、高分子溶液の濃度や、絞りローラーの調整などによって調整を行うことが可能となる。
【0024】
また、強化繊維の毛羽立ちを防止したり、強化繊維の集束性を向上させたり、マトリックス樹脂との接着性を向上する等の目的でサイジング剤が付与されていても構わない。サイジング剤(I)としては、特に限定されないが、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。後述する本発明における強化繊維束の製造工程中におけるいずれかのタイミングで付与されるサイジング剤に関しても、同等のものを使用できる。
【0025】
先述したとおり、本発明の強化繊維束において領域(I)は強化繊維束相互の接続部分として利用されることが想定されている。この領域(I)を利用して強化繊維束相互を接続することによって繊維強化複合材料としての機械特性やプロセス性を向上させることができる。繋ぎ合わせる方法としては特に制限は無いが、例えば、ある強化繊維束の領域(I)を別の強化繊維束の領域(I)を長手方向に相互に重ね合わせ、その重ね合わせ部に、強化繊維束の幅方向に直列に複数の流体噴射孔が開口され、前記流体噴射孔の列が繊維長手方向に間隔をあけ2列配置された少なくとも1組の交絡処理手段により加圧流体を噴射して、両強化繊維を互いに絡み合わせることで繋ぐことができる。ここで、先述したサイジング剤(I)の溶質成分種および付着量は接続が強固かつ容易とできるよう前記したとおりの好ましい態様に調整することが可能である。
【0026】
また、サイジング剤(I)としては、サイジング剤(I)の溶融や変性等により繊維束どうしを接着できればよく、サイジング剤(I)の樹脂種は特に限定されない。また、2種以上のサイジング剤が用いられても良い。好ましいサイジング剤(I)としては、水溶性ポリアミドを使用することができる。水溶性ポリアミドは、水溶液としたとき溶質濃度0.01重量%以上の濃度で可溶であるポリアミドであり、例えば、主鎖中に三級アミノ基および/またはオキシエチレン基を有するジアミンとカルボン酸より重縮合して得られるポリアミド樹脂であり、前記ジアミンとして、ピペラジン環を有するN、N′-ビス(γ―アミノプロピル)ピペラジン、N-(β―アミノエチル)ピペラジン等主鎖中に三級アミノ基を含むモノマ、オキシエチレンアルキルアミン等の主鎖中にオキシエチレン基を含むアルキルジアミンが有用である。又、ジカルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸等を用いることができる。水溶性ポリアミドは共重合体であってもよい。共重合成分としては、例えばα-ピロリドン、α-ピペリドン、ε-カプロラクタム、α-メチル-ε-カプロラクタム、ε-メチル-ε-カプロラクタム、ε-ラウロラクタムなどのラクタムが挙げられる。また、二元共重合もしくは多元共重合も可能であるが、共重合比率は水溶性を妨げない範囲において決定される。好ましくはラクタム環を持つ共重合成分とする場合はラクタム環の重量比率を全体の30重量%以内にしないとポリマーが水に完溶し難くなる。
【0027】
しかしながら、前記範囲外の共重合成分比率に難水溶性のポリマーであっても、有機及び無機酸を用いて溶液を酸性にした場合溶解性が増大し、水可溶性になり使用が可能になる。有機酸としては、酢酸、クロル酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、しゅう酸、フルオロ酢酸等があり、無機酸としては、一般的な鉱酸類である塩酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。
【0028】
水溶性ポリアミドをサイジング剤に用いる場合、熱劣化を防止する観点から、サイジング剤溶液とし、該溶液を強化繊維束に塗布したあと、室温~180℃下で乾燥して水分を除去し、その後に熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度の下限は130℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。熱処理温度の上限は350℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましい。この熱処理温度は、前記水溶性ポリアミドが空気中の酸素によって自己架橋したりして、水溶性を失う温度である。この処理により、水溶性ポリアミドが不溶になり吸湿性も失うため、サイジング剤が付与された強化繊維束としてもべたつきがなくなり、後加工の作業性が向上するだけでなく、マトリックス材への密着性がよくなり取り扱いやすい繊維束を提供できる。また、溶剤に架橋促進剤を添加し、熱処理温度を低くしたり、時間を短縮したりすることも可能である。また、23±5℃の雰囲気下でエイジング処理を行うことで、繊維束の硬度を高めることもできる。
【0029】
本発明の強化繊維束は強化繊維束の領域(I)と別の強化繊維束の領域(I)を長手方向に相互に重ね合わせ、その重ね合わせ部を加熱することで樹脂を溶融、あるいは、変性することで両強化繊維束を互いに接着することで繋ぐことができる。
【0030】
次に、領域(II)について説明する。先述したとおり領域(II)は繊維強化複合材料の補強に専ら利用されることが想定されている。
【0031】
本発明の強化繊維束の領域(II)において、分繊処理された各束に含まれる束内の強化繊維の平均繊維数n2の上限としては4000本以下が好ましく、3000本以下がより好ましく、2000本以下がさらに好ましい。この範囲であれば繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の力学特性を高めることができる。また束内平均繊維数n2の下限としては50本以上が好ましく、100本以上がより好ましく、200本以上がさらに好ましい。この範囲であれば繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の流動性を高めることができる。束内平均繊維数の導出方法は後述する。
【0032】
本発明の強化繊維束の領域(II)にはサイジング剤が付与されていることが好ましく(領域(II)に付与されているサイジング剤をサイジング剤(II)と称する)、領域(II)に付与されるサイジング剤(II)の溶質の種類には特に限定されないが、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物が使用できる。好ましくは、エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤、または、ポリアミド樹脂を主成分とするサイジング剤を用いることである。これらは1種または2種以上を併用してもよい。また、サイジング剤を付与した強化繊維束に更に該サイジング剤とは異種のサイジング剤で処理することも可能である。なおここで、主成分とは溶質成分の70重量%以上を占める成分のことをいう。
【0033】
エポキシ樹脂の種類としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂の1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
また、ポリアミド樹脂は好ましく水溶性ポリアミド樹脂を用いることができ、例えば、水溶性ポリアミドは主鎖中に三級アミノ基および/またはオキシエチレン基を有するジアミンとカルボン酸より重縮合して得られるポリアミド樹脂とでき、前記ジアミンとして、ピペラジン環を有するN、N′-ビス(γ―アミノプロピル)ピペラジン、N-(β―アミノエチル)ピペラジン等主鎖中に三級アミノ基を含むモノマ、オキシエチレンアルキルアミン等の主鎖中にオキシエチレン基を含むアルキルジアミンが有用である。又、ジカルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸等を用いることができる。
【0035】
この水溶性ポリアミド樹脂を用いたサイジング剤は各種マトリックス材との親和性に優れておりコンポジット物性を著しく向上せしめるが、特にポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、及びポリエーテルアミドイミド系樹脂において優れた密着性の改善効果がある。
【0036】
前記の水溶性のポリアミドは共重合体であってもよい。共重合成分としては、例えばα-ピロリドン、α-ピペリドン、ε-カプロラクタム、α-メチル-ε-カプロラクタム、ε-メチル-ε-カプロラクタム、ε-ラウロラクタムなどのラクタムをあげることができ、二元共重合もしくは多元共重合も可能であるが、共重合比率は水溶性という物性を妨げない範囲において決定される。好ましくはラクタム環を持つ共重合成分比率を30重量%以内にしないとポリマーが水に完溶しなくなる。
【0037】
しかしながら、前記範囲外の共重合成分比率に難水溶性のポリマーであっても、有機及び無機酸を用いて溶液を酸性にした場合溶解性が増大し、水可溶性になり使用が可能になる。有機酸としては、酢酸、クロル酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、しゅう酸、フルオロ酢酸等があり、無機酸としては、一般的な鉱酸類である塩酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。
【0038】
サイジング剤(II)の付着量の上限としては、領域(II)の重量を100重量%としたとき5重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましく、3重量%以下がさらに好ましい。サイジング剤(II)の付着量が5重量%を超えると、繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維形態が得られない可能性が生じる。また、サイジング剤(II)の付着量の下限としては0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上が更に好ましい。サイジング剤(II)の付着量が0.1重量%未満の場合、成形品を作製しようとすると、マトリックスと強化繊維との接着性が低下する傾向にあり、成形品の力学特性が低くなる可能性がある。また、フィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性が低下したり、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。サイジング剤(II)の付着量の導出方法は後述する。
【0039】
サイジング剤(II)の付着量を上記範囲にすることで、繊維束を例えばカッターで切断する際に、ボビンからの巻き出し性の向上、ニップローラー、カッター刃への巻きつき低減といった効果が得られ、生産性の向上をはかることができる。さらに、切断された繊維束が割れたり単糸分散することを抑制でき、所定の束形態への保持性が向上する。すなわち、切断された繊維束が散布されたチョップド繊維束の束状集合体でチョップド繊維束を形成する単糸本数の分布が狭くなり、均一かつ最適な形態のチョップド繊維束が得ることが可能である。これにより、繊維束が面配向するため、さらに力学特性の向上をはかることができる。さらに、束状集合体の目付バラつきを低減化することができるため、成形品の力学特性のバラつきを低減化することが可能である。
【0040】
サイジング剤(II)は、強化繊維表面に均質に付着したものであることが好ましい。そのように均質に付着させる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、これらサイジング剤(II)を水またはアルコール、酸性水溶液0.1重量%以上、好ましくは1重量%~20重量%に濃度に溶解して、その高分子溶液にローラーを介して繊維束をサイジング剤処理液に浸漬する方法、サイジング剤処理液の付着したローラーに繊維束を接する方法、サイジング剤処理液を霧状にして繊維束に吹き付ける方法などがある。この際、繊維束に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング剤処理液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤(II)付与時に繊維束を超音波で加振させることはより好ましい。前記サイジング剤付着方法で付与してもよい。
【0041】
なお、強化繊維に付着したサイジング剤(II)中の水やアルコールなどの溶剤を除去するには、熱処理や風乾、遠心分離などのいずれの方法を用いてもよいが、中でもコストの観点から熱処理が好ましい。熱処理の加熱手段としては、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーターなどを使用することができる。この加熱処理条件も重要であり、取り扱い性、マトリックス材との接着性の良否に関わってくる。すなわち、サイジング剤(II)を強化繊維に付与した後の加熱処理温度と時間はサイジング剤(II)の成分と付着量によって調整すべきである。前記水溶性ポリアミドの場合、熱劣化を防止する観点から、室温~180℃下で乾燥し、水分を除去した後、熱処理する。熱処理温度の下限は130℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。熱処理温度の上限は350℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましい。この熱処理温度は、前記水溶性ポリアミドが空気中の酸素によって自己架橋したり、水溶性を失う温度である。この処理により、水溶性ポリマーが不溶になり吸湿性も失うため、フィラメントを集束したストランドのべたつきがなくなり、後加工の作業性が向上するだけでなく、マトリックス材への密着性がよくなり取り扱いやすい繊維束を提供できる。また、溶剤に架橋促進剤を添加し、熱処理温度を低くしたり、時間を短縮したりすることも可能である。また、23±5℃の雰囲気下でエイジング処理を行うことで、繊維束の硬度を高めることもできる。
【0042】
サイジング剤(II)の熱分解開始温度は200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。熱分解開始温度の導出方法は後述する。
【0043】
本発明の強化繊維束の製造方法について例を挙げて具体的に説明する。しかし、本発明は係る具体的な態様に限定して解釈されるものではない。
【0044】
まず、原材料となる強化繊維のトウを巻きだし機から巻きだして拡幅および分繊処理を実施する。この拡幅・分繊処理によって所望の束内平均繊維数および単位幅あたりの単糸数に調整することが可能である。なお、この処理は常に一定で行う必要は無く一定の周期あるいは所望の箇所で拡幅の幅を変動させても構わない。また、拡幅された繊維束に対して間欠的に分繊刃を挿入して強化繊維束内に部分的な分繊箇所を形成することもできる。
【0045】
図2は、分繊処理の一例を示している。(A)は概略平面図、(B)は概略側面図である。図中の繊維束走行方向a(矢印)が繊維束100の長手方向であり、図示されない繊維束供給装置から連続的に繊維束100が供給されていることを表す。分繊手段200は、繊維束100に突き入れ易い突出形状を有する突出部210を具備しており、走行する繊維束100に突き入れ、繊維束100の長手方向に略平行な分繊処理部150を生成する。ここで、分繊手段200は、繊維束100の側面に沿う方向に突き入れることが好ましい。繊維束の側面とは、繊維束の断面が、横長の楕円もしくは横長の長方形のような扁平形状であるとした場合の断面端部における垂直方向の面(例えば、図2に示す繊維束100の側表面に相当する)である。また、具備する突出部210は、1つの分繊手段200につき1つでもよく、また複数であってもよい。1つの分繊手段200で突出部210が複数ある場合、突出部210の磨耗頻度が減ることから、交換頻度を減らすことも可能となる。さらに、分繊する繊維束数に応じて、複数の分繊手段200を同時に用いることも可能である。複数の分繊手段200を、並列、互い違い、位相をずらす等して、複数の突出部210を任意に配置することができる。
【0046】
複数の単糸からなる繊維束100を、分繊手段200により本数のより少ない分繊束に分けていく場合、複数の単糸は、実質的に繊維束100内で、引き揃った状態ではなく、単糸レベルでは交絡している部分が多いため、分繊処理中に接触部211付近に単糸が交絡する絡合部160を形成する場合がある。
【0047】
ここで、絡合部160を形成するとは、例えば、分繊処理区間内に予め存在していた単糸同士の交絡を分繊手段200により接触部211に形成(移動)させる場合や、分繊手段200によって新たに単糸が交絡した集合体を形成(製造)させる場合等が挙げられる。
【0048】
本発明における部分分繊繊維束においては強化繊維表面に塗布樹脂を塗布しているため、強化繊維同士が拘束されており、上記分繊処理時における擦過等による単糸の発生を大幅に削減することができ、上記記載の絡合部160の発生を大幅に削減することができる。
【0049】
任意の範囲に分繊処理部150を生成した後、分繊手段200を繊維束100から抜き取る。この抜き取りによって分繊処理が施された分繊処理区間110が生成し、それと同時に上記のように生成された絡合部160が分繊処理区間110の端部部位に蓄積され、絡合部160が蓄積した絡合蓄積部120が生成する。また、分繊処理中に繊維束から発生した毛羽は毛羽溜まり140として分繊処理時に絡合蓄積部120付近に生成する。
【0050】
その後再度分繊手段200を繊維束100に突き入れることで、未分繊処理区間130が生成し、繊維束100の長手方向に沿って、分繊処理区間110と未分繊処理区間130とが交互に配置されてなる部分分繊繊維束180が形成される。本発明における部分分繊繊維束180では、未分繊処理区間130の含有率が3%以上50%以下であることが好ましい。ここで、未分繊処理区間130の含有率とは、繊維束100の全長に対し未分繊処理区間130の合計生成長の割合として定義する。未分繊処理区間130の含有率が3%未満だと、部分分繊繊維束180を切断/散布し、不連続繊維の繊維束の中間基材として成形に用いる際の流動性が乏しくなり、50%を超えるとそれを用いて成形した成形品の力学特性が低下する。
【0051】
また、個々の区間の長さとしては、上記分繊処理区間110の長さが、30mm以上1500mm以下であることが好ましく、上記未分繊処理区間130の長さが、1mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0052】
繊維束100の走行速度は変動の少ない安定した速度が好ましく、一定の速度がより好ましい。
【0053】
分繊手段200は、本発明の目的が達成できる範囲であれば特に制限がなく、金属製の針や薄いプレート等の鋭利な形状のような形状を備えたものが好ましい。分繊手段200は、分繊処理を行う繊維束100の幅方向に対して、複数の分繊手段200を設けることが好ましく、分繊手段200の数は、分繊処理を行う繊維束100の構成単糸本数F(本)によって任意に選択できる。分繊手段200の数は、繊維束100の幅方向に対して、(F/10000-1)個以上(F/50-1)個未満とすることが好ましい。(F/10000-1)個未満であると、後工程で強化繊維複合材料にした際に力学特性の向上が発現しにくく、(F/50-1)個以上であると分繊処理時に糸切れや毛羽立ちのおそれがある。
【0054】
次にサイジング剤付与のタイミングについて説明する。図3は、強化繊維束の製造工程中におけるサイジング剤付与工程のタイミング例を示している。図3には、繊維束100が部分分繊処理工程300を経て部分分繊繊維束180に加工される工程中において、サイジング剤塗布工程401、乾燥工程402、熱処理工程403を含むサイジング剤付与工程400が、部分分繊処理工程300よりも前に行われるパターンAと、部分分繊処理工程300よりも後に行われるパターンBとが示されている。パターンA、パターンBのいずれのタイミングも可能である。なお、サイジング剤付与工程において乾燥工程と熱処理工程は必ずしも含む必要はない。
【0055】
図4は、繊維束拡幅工程301を含む強化繊維束の製造工程中におけるサイジング剤付与工程400のタイミング例を示している。図4には、繊維束100が繊維束拡幅工程301と部分分繊処理工程300とをこの順に経て部分分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程400が、繊維束拡幅工程301よりも前に行われるパターンCと、繊維束拡幅工程301と部分分繊処理工程300との間で行われるパターンDと、部分分繊処理工程300よりも後に行われるパターンEとが示されている。パターンC、パターンD、パターンEのいずれのタイミングも可能であるが、最適な部分分繊処理を達成できる観点から、パターンDのタイミングが最も好ましい。なお、この図に示すパターンにおいても、乾燥工程と熱処理工程は必ずしも含む必要はない。
【0056】
図5は、強化繊維束の製造工程中における、サイジング剤塗布工程、乾燥工程、熱処理工程の別のタイミング例を示している。図5に示すタイミング例においては、サイジング剤付与工程400におけるサイジング剤塗布工程401と乾燥工程402、熱処理工程403とが分離されてそれぞれ別のタイミングで行われる。サイジング剤塗布工程401は、部分分繊処理工程300よりも前に行われ、乾燥工程402は、部分分繊処理工程300よりも後に行われる。
【0057】
図6は、繊維束拡幅工程を含む強化繊維束の製造工程における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程、熱処理工程を含むサイジング剤付与工程のタイミング例を示しており、繊維束100が繊維束拡幅工程301と部分分繊処理工程300とをこの順に経て部分分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程のサイジング剤塗布工程401が、繊維束拡幅工程301よりも前に行われ、乾燥工程402と熱処理工程403については、繊維束拡幅工程301と部分分繊処理工程300との間で行われるパターンFと、部分分繊処理工程300よりも後に行われるパターンGが示されている。
【0058】
図7は、繊維束拡幅工程を含む強化繊維束の製造工程における、サイジング剤塗布工程と乾燥工程、熱処理工程を含むサイジング剤付与工程の別のタイミング例を示しており、繊維束100が繊維束拡幅工程301と部分分繊処理工程300とをこの順に経て部分分繊繊維束180に形成される工程中において、サイジング剤付与工程のサイジング剤塗布工程401が、繊維束拡幅工程301と部分分繊処理工程300との間で行われ、乾燥工程402と熱処理工程403が、部分分繊処理工程300よりも後に行われる。
【0059】
このように、強化繊維束の製造方法において、サイジング剤は多様なタイミングで付与することが可能である。
【0060】
本発明の強化繊維束の領域(II)において求められるドレープ値は、その下限として、120mm以上である。該ドレープ値は145mm以上が好ましく、170mm以上がより好ましい。ドレープ値が120mmより小さくなるとフィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性の低下、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。また、該ドレープ値は、その上限として、240mm以下である。該ドレープ値は230mm以下がより好ましく、220mm以下がさらに好ましい。ドレープ値が240mmを超えると、繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維形態が得られない可能性が生じる。強化繊維束の領域(II)におけるドレープ値の導出方法は後述する。
【0061】
本発明の強化繊維束の領域(II)における束硬度は39g以上が好ましく、70g以上がより好ましく、120g以上がさらに好ましい。束硬度が39g未満の場合、フィラメントがばらけ、毛羽が発生することにより、ボビンからの巻き出し性の低下、ニップローラー、カッター刃への巻きつきが発生しうる。強化繊維束の領域(II)における束硬度は200g以下であることが好ましく、190g以下がより好ましく、180g以下がさらに好ましい。強化繊維束の束硬度が200gを超えると、強化繊維束のワインダーでの巻き取り性が低下し、本発明の効果を発揮しない。強化繊維束の領域(II)における束硬度の導出方法は後述する。
【0062】
本発明の強化繊維束の領域(II)における単位幅あたり単糸数は600本/mm以上が好ましく、700本/mm以上がより好ましく、800本/mm以上がさらに好ましい。600本/mm未満の場合、成形材料の流動性に劣る懸念がある。1600本/mm以下が好ましく、1400本/mm以下がより好ましく、1250本/mm以下がさらに好ましい。1600本/mmを超える場合、成形品の力学特性が劣る懸念がある。強化繊維束の領域(II)における単位幅あたり単糸数の導出方法は後述する。
【0063】
本発明の強化繊維束の領域(II)における平均束厚みは0.01mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましく、0.05mm以上がさらに好ましい。0.01mm未満の場合、成形材料の流動性に劣る懸念がある。強化繊維束の領域(II)における平均束厚みは0.2mm以下が好ましく、0.18mm以下がより好ましく、0.16mm以下がさらに好ましい。0.2mmを超える場合、成形品の力学特性が劣る懸念がある。
【0064】
本発明の強化繊維束の領域(II)における平均束幅の下限は0.03mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.07mm以上がさらに好ましい。0.03mm未満の場合、成形材料の流動性に劣る懸念がある。強化繊維束の領域(II)における平均束幅上限は3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。3mmを超える場合、成形品の力学特性が劣る懸念がある。
【0065】
本発明の強化繊維束の領域(II)の水への浸漬前における幅をW1、強化繊維束を25℃の水に、5分間浸漬した後、取り出し、1分間水を切った後における幅をW2としたときの強化繊維束の幅変化率(W2/W1)はその下限として0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。0.5より小さいと強化繊維束に付着されているサイジング剤の水可溶の物性が残っていることにより、分繊処理をした後、分繊された繊維束が再凝集することがあり、再凝集すると、最適な単糸数に調整された繊維束の形態を保持することが困難になる。最適な単糸数に調整された繊維束の形態に保持できないと、複合材料成形に用いられる成形材料作製のために該分繊繊維束を切断/散布し、不連続繊維束の中間基材とする際に、最適な形態の中間基材にすることが困難となり、成形の際の流動性と成形品の力学特性をバランスよく発現させることが困難となる。また一方、強化繊維束の幅変化率(W2/W1)はその上限として1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、1.1以下がさらに好ましい。1.3を超えると繊維束の柔軟性が欠けてきて硬くなりすぎ、ボビンの巻き取り、巻き出しがスムーズにいかなくなる可能性がある。また、カット時に単糸割れを引き起こし、理想のチョップド繊維束形態が得られない可能性が生じる。強化繊維束の領域(II)における幅変化率の導出方法は後述する。
【0066】
本発明の強化繊維束は好適に繊維強化複合材料の原材料として用いられる。例を挙げて説明すると本発明の強化繊維束は3~20mm程度の長さにカット、散布した後、束状集合体[F]となる。束集合体[F]にマトリックス樹脂を含浸することで成形材料が得られる。マトリックス樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。特に、上記熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を使用することが好ましく、さらにポリアミドに無機系の酸化防止剤を配合させることが好ましい。本発明に用いる熱可塑性ポリアミド樹脂としては、例えば、環状ラクタムの開環重合またはω-アミノカルボン酸の重縮合で得られるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12やジアミンとジカルボン酸の重縮合で得られるナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロンMFD6、2種以上のジアミンとジカルボン酸の重縮合で得られるナイロン66・6・6I、ナイロン66・6・12などの共重合ナイロンなどが好適に使用することができる。特にナイロン6、66、610は機械的特性とコストの観点から好ましい。
【0067】
また、ハロゲン化銅あるいはその誘導体としては、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、メルカプトベンズイミダゾールとヨウ化銅との錯塩などが挙げられる。なかでもヨウ化銅、メルカプトベンズイミダゾールとヨウ化銅との錯塩を好適に使用できる。ハロゲン化銅あるいはその誘導体の添加量としては、熱可塑性ポリアミド樹脂100重量部に対し0.001~5重量部の範囲にあることが好ましい。添加量が0.001重量部未満では予熱時の樹脂分解や発煙、臭気を抑えることができず、5重量部以上では改善効果の向上が見られなくなる。更に0.002~1重量部が熱安定化効果とコストのバランスから好ましい。
【0068】
束状集合体[F]にマトリックス樹脂を含浸する方法は特に限定するものではなく、上記熱可塑性樹脂を含浸する方法を例示すると、熱可塑性樹脂繊維を含有する束状集合体[F]を作製し、束状集合体[F]に含まれる熱可塑性樹脂繊維をそのままマトリックス樹脂として使用してもかまわないし、熱可塑性樹脂繊維を含まない束状集合体[F]を原料として用い、繊維強化樹脂成形材料を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸してもかまわない。
【0069】
また、熱可塑性樹脂繊維を含有する束状集合体[F]を原料として用いる場合であっても、繊維強化樹脂成形材料を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸することもできる。このような場合、熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂とマトリックス樹脂は同一の樹脂であってもかまわないし、異なる樹脂であってもかまわない。熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂とマトリックス樹脂が異なる場合は、両者は相溶性を有するか、あるいは、親和性が高い方が好ましい。
【0070】
繊維強化樹脂成形材料を製造するに際し、束状集合体[F]への、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂の含浸を、含浸プレス機を用いて実施することができる。プレス機としてはマトリックス樹脂の含浸に必要な温度、圧力を実現できるものであれば特に制限はなく、上下する平面状のプラテンを有する通常のプレス機や、1対のエンドレススチールベルトが走行する機構を有するいわゆるダブルベルトプレス機を用いることができる。かかる含浸工程においてはマトリックス樹脂を、フィルム、不織布又は織物等のシート状とした後、不連続繊維マットと積層し、その状態で上記プレス機等を用いてマトリックス樹脂を溶融・含浸することができるし、粒子状のマトリックス樹脂を束状集合体[F]上に散布し積層体としてもよいし、もしくはチョップド繊維束を散布する際に同時に散布し、束状集合体[F]内部に混ぜてもよい。
【実施例
【0071】
以下実施例を用いて本発明の詳細を説明する。各種測定方法、計算方法および評価方法は以下のとおりである。
【0072】
(1)束内平均繊維数の測定方法
強化繊維束の1mあたりの重量とフィラメント数からフィラメント1m長の重量a(mg/m)を導出する。次に、分繊された箇所から10mm程度の長さにカットして得られた分繊された強化繊維束の繊維長さl(mm)と重量b(mg)を測定し、下記式により束内繊維数を導出する。束内平均繊維数は前記の束内繊維数を20サンプルについて求め、その算術平均値とする。
束内平均繊維数b×1000/(a×l
【0073】
(2)サイジング剤(I)(II)の付着量の測定方法
サイジング剤が付着している炭素繊維束を5gほど採取し、耐熱製の容器に投入した。次にこの容器を80℃、真空条件下で24時間乾燥し、吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した炭素繊維の重量をm1(g)とし、続いて容器ごと、窒素雰囲気中、500℃、15分間の灰化処理を行った。吸湿しないように注意しながら室温まで冷却し、秤量した炭素繊維の重量をm2(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維へのサイジング剤の付着量を次式により求めた。測定は10本の繊維束について行い、その平均値を算出した。
サイジング剤の付着量(重量%)=100×m1-m2)/m1
【0074】
(3)熱分解開始温度の測定法
サイジング剤(II)の熱分解開始温度は下記のように測定される。まず、サイジング剤(II)が塗布された強化繊維を5mgほど採取し、110℃で2時間乾燥後、デシケーター内で室温で1時間、冷却する。その後、秤量し、窒素雰囲気中でTGA測定する。窒素流量を100ml/分、昇温速度を10℃/分とし、室温から650℃までの重量減少を測定する。縦軸を初期重量に対するサイズ糸の重量比(%)、横軸を温度(℃)とするTGA曲線において、重量減少速度(%/℃)の最大となる温度及びそれより低温側で最も隣接する、重量減少速度が極小となる温度を探し、各々の接線の交点の温度を熱分解開始温度と定義する。
【0075】
ただし熱分解開始温度の定義は、サイジング剤の化学変性後、マトリックス樹脂含浸前の状態に適用される。サイジング剤(II)が塗布された強化繊維の熱分解開始温度が測定できない場合、サイジング剤(II)を強化繊維の代わりに使用できる。
【0076】
(4)ドレープ値の測定
領域(II)にあたる強化繊維束の部分の中から30cmに切断した強化繊維束をまっすぐ伸ばして平らな台に載せ、湾曲したり撚れたりしないことを確認する。湾曲あるいは撚れが発生した場合、100℃以下の加熱、あるいは、0.1MPa以下の加圧によって可能な限りこれをとり除く。その後、図8に示すように、23±5℃の雰囲気下、直方体の台の端に、30cmに切断した強化繊維束を固定し、この時、強化繊維束は台の端から25cm突き出るように固定、すなわち、強化繊維束の端から5cmの部分が、台の端に来るようにし、この状態で5分間静置した後、台に固定していない方の強化繊維束の先端と、台の側面との最短距離を測定した値をドレープ値とした。測定本数はn=5とし、平均値を採用した。
【0077】
(5)束硬度の測定
強化繊維束の硬度は、JIS L-1096 E法(ハンドルオメータ法)に準じ、HANDLE-O-Meter(大栄科学精機製作所製「CAN-1MCB」)を用いて測定した。硬度測定に用いる試験片の長さは10cm、幅はフィラメント数1600本で1mmとなるように強化繊維束を開繊調整した。また、スリット幅は20mmに設定した。このスリット溝が設けられた試験台に試験片となる強化繊維束を1本乗せ、ブレードにて溝の一定深さ(8mm)まで試験片を押し込むときに発生する抵抗力(g)を測定した。強化繊維束の硬度は3回の測定の平均値から得た。
【0078】
(6)平均束厚み
束厚みを繊維束長手方向(繊維方向)に30cm間隔で20点ほど測定し、その平均値を平均繊維束厚みとした。
【0079】
(7)平均繊維束幅
分繊された箇所における、分繊された繊維束の束幅を繊維束長手方向(繊維方向)に約30cm間隔で20点測定し、その平均値を平均繊維束幅とした。
【0080】
(8)単位幅あたりの単糸数
束内平均繊維数を平均繊維束幅で割ることで単位幅あたりの単糸数とした。
【0081】
(9)サイジング剤が塗布された強化繊維束の幅変化率測定
強化繊維束の分繊処理を施す前の幅40mmから50mmに拡幅されサイジング剤が塗布された炭素繊維束を長さ230mmにカットし、その一端を端から30mmの位置をクリップで挟み、逆端から100mmの間で幅を5点測定し、その平均値を浸漬前におけるW1とした。その後、25℃の水に、5分間浸漬した後、取り出し、クリップで挟んだ側が上に来るように吊るした状態で1分間水を切った後、クリップで挟んだ逆端から100mmの間における幅を5点測定し、その平均値を浸漬後におけるW2とした。以上の処理を経て、サイジング剤が塗布された強化繊維束の幅変化率を次式により求めた。
幅変化率=W2/W1
【0082】
(10)力学特性
繊維強化樹脂成形材料を後記する方法により成形し、500×400mmの平板成形品を得た。平板長手方向を0°とし、得られた平板より0°と90°方向から、それぞれ100×25×2mmの試験片を16片(合計32片)を切り出し、JIS K7074(1988年)に準拠し測定を実施した。力学特性としては、曲げ強度を求めた。曲げ強度が200MPa未満をC、200MPa以上350MPa未満をB、350MPa以上をAと判定した。
【0083】
(11)流動性(スタンピング成形)
・樹脂シート1の場合
寸法150mm×150mm×2mmの繊維強化樹脂成形材料を2枚重ねた状態で、基材中心温度(二枚重ねた間の温度)が260℃となるように予熱後、150℃に昇温したプレス盤に配し、10MPaで30秒間加圧した。この圧縮後の面積A2(mm)と、プレス前の基材の面積A1(mm)を測定し、A2/A1×100を流動率(%)とした。流動率が200%未満をC、200%以上300%未満をB、300%以上をAと判定した。
・樹脂シート2の場合
寸法150mm×150mm×2mmの繊維強化樹脂成形材料を2枚重ねた状態で、基材中心温度(二枚重ねた間の温度)が220℃となるように予熱後、120℃に昇温したプレス盤に配し、10MPaで30秒間加圧した。この圧縮後の面積A2(mm)と、プレス前の基材の面積A1(mm)を測定し、A2/A1×100を流動率(%)とした。流動率が200%未満をC、200%以上300%未満をB、300%以上をAと判定した。
【0084】
[使用原料]
・原料繊維1: 炭素繊維束(ZOLTEK社製“PX35”、単糸数50,000本、“13”サイジング剤付き)を用いた。
・原料繊維2: ガラス繊維束(日東紡績製240TEX、単糸数1,600本)を用いた。
・原料繊維3: 炭素繊維束(ZOLTEK社製“PX35”、単糸数50,000本、サイジング剤なし)を用いた。
・樹脂シート1: ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”(登録商標)CM1001)からなるポリアミドマスターバッチを用いて、シートを作製した。
・樹脂シート2: 未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)社製、“プライムポリプロ”(登録商標)J106MG)90質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製、“アドマー”(登録商標)QE800)10質量%とからなるポリプロピレンマスターバッチを用いて、シートを作製した。
・サイジング剤1: 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“T-70”)を用いた。
・サイジング剤2: 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“A-90”)を用いた。
・サイジング剤3: 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“P-70”)を用いた。
・サイジング剤4: 水溶性ポリアミド(東レ(株)社製、“P-95”)を用いた。
【0085】
[繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の製造方法]
原料繊維を、ワインダーを用いて一定速度10m/分で巻出し、10Hzで軸方向へ振動する振動拡幅ロールに通し、拡幅処理を施した後に、幅規制ロールを通すことで任意の幅へ拡幅した拡幅繊維束を得た。
【0086】
その後、拡幅繊維束の末端から150mmまでの部分(領域(I))、及び/あるいは、領域(I)以外の部分(領域(II))を、精製水で希釈したサイジング剤に連続的に浸漬させた。次いで熱処理工程(I)、(II)を行った。熱処理工程(I)では、250℃のホットローラと250℃の乾燥炉(大気雰囲気下)にサイジング剤を塗布した拡幅繊維束を供し、乾燥して水分を除去し、1.5分熱処理を施した(実施例1~6、比較例1~3)。熱処理工程(II)では250℃のホットローラと250℃の乾燥炉(大気雰囲気下)にサイジング剤を塗布した拡幅繊維束の領域(II)のみを供し、乾燥して水分を除去し、1.5分熱処理を施した(サイジング工程)(実施例7~12、比較例4~6)。
【0087】
得られた拡幅繊維束に対して、厚み0.2mm、幅3mm、高さ20mmの突出形状を具備する分繊処理用鉄製プレートを、強化繊維束の幅方向に対して等間隔に並行にセットした分繊処理手段を準備した。この分繊処理手段を拡幅繊維束に対して、間欠式に抜き挿しし、任意の分割数の強化繊維束を得た。
【0088】
この時、分繊処理手段は一定速度10m/分で走行する拡幅繊維束に対して、3秒間分繊処理手段を突き刺し分繊処理区間を生成し、0.2秒間で分繊処理手段を抜き、再度突き刺す動作を繰り返し行なった。
【0089】
得られた強化繊維束は、狙いの平均繊維数になるように分繊処理区間で繊維束が幅方向に対して分繊されており、少なくとも1つの分繊処理区間の少なくとも1つの端部に、単糸が交絡した絡合部が蓄積されてなる絡合蓄積部を有していた。続いて、得られた強化繊維束を、ボビンから巻きだし、端部を繋ぐ作業を行いながら、ロータリーカッターへ連続的に挿入して繊維束を10mmの繊維長に切断、均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続繊維不織布を得た。
【0090】
樹脂シートを不連続繊維不織布の上下から挟み込み、プレス機で樹脂を不織布中に含浸させることにより、シート状の繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を得た。
【0091】
(実施例1)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い、繊維束末端から150mmまでの繊維束の部分である領域(I) (強化繊維束の末端から、該末端から150mmまでの強化繊維束の部分。以下同じ)において単位幅あたりの繊維数1547本/mm、束内平均繊維数10本、領域(II)(領域(I)以外の強化繊維束の部分。以下同じ)において単位幅あたりの繊維数1547本/mm、束内平均繊維数990本、サイジング剤1を含めたサイジング剤付着量3.2重量%である強化繊維束を作製した。
【0092】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0093】
(実施例2)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1493本/mm、束内平均繊維数450本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数1493本/mm、束内平均繊維数1030本、サイジング剤1を含めたサイジング剤付着量4.0重量%である強化繊維束を作製した。
【0094】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート2を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0095】
(実施例3)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1460本/mm、束内平均繊維数480本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数4372本/mm、束内平均繊維数1880本、サイジング剤1を含めたサイジング剤付着量3.1重量%である強化繊維束を作製した。
【0096】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0097】
(実施例4)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1543本/mm、束内平均繊維数540本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数1543本/mm、束内平均繊維数5230本、サイジング剤2を含めたサイジング剤付着量2.8重量%である強化繊維束を作製した。
【0098】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0099】
(実施例5)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1130本/mm、束内平均繊維数90本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数547本/mm、束内平均繊維数410本、サイジング剤2を含めたサイジング剤付着量3.3重量%である強化繊維束を作製した。
【0100】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0101】
(実施例6)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1420本/mm、束内平均繊維数110本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数1476本/mm、束内平均繊維数930本、サイジング剤3を含めたサイジング剤付着量5.5重量%である強化繊維束を作製した。
【0102】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート2を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0103】
(実施例7)
表1に示す、サイジング剤1を含むサイジング剤付着量3.2重量%、単位幅あたりの繊維数1540本/mmである領域(Iと、束内平均繊維数990本、単位幅あたりの繊維数1540本/mm、サイジング剤1を含むサイジング剤付着量3.2重量%である領域(IIとからなる強化繊維束を作製した。なお、この例では“13”サイジング剤が付与された原料繊維1に更にサイジング剤1が付与されている(他の例についても同様)。
【0104】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0105】
(実施例8)
表1に示す、サイジング剤1を含むサイジング剤付着量4.0重量%、単位幅あたりの繊維数1480本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数1030本、単位幅あたりの繊維数1480本/mm、サイジング剤1を含むサイジング剤付着量4.0重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。
【0106】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0107】
(実施例9)
表1に示す、サイジング剤1を含むサイジング剤付着量3.1重量%、単位幅あたりの繊維数1460本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数1880本、単位幅あたりの繊維数4380本/mm、サイジング剤1を含むサイジング剤付着量3.1重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。
【0108】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0109】
(実施例10)
表1に示す、サイジング剤2を含むサイジング剤付着量2.8重量%、単位幅あたりの繊維数1520本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数5230本、単位幅あたりの繊維数1540本/mm、サイジング剤2を含むサイジング剤付着量2.8重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。
【0110】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0111】
(実施例11)
表1に示す、サイジング剤2を含むサイジング剤付着量3.3重量%、単位幅あたりの繊維数1130本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数410本、単位幅あたりの繊維数550本/mm、サイジング剤2を含むサイジング剤付着量3.3重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。
【0112】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0113】
(実施例12)
表1に示す、サイジング剤3を含むサイジング剤付着量5.5重量%、単位幅あたりの繊維数1420本/mmである領域(I)と束内平均繊維数930本、単位幅あたりの繊維数1480本/mm、サイジング剤3を含むトータルサイジング剤付着量5.5重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。
【0114】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0115】
(比較例1)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数2870本/mm、束内平均繊維数890本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数2610本/mm、束内平均繊維数1540本、サイジング剤3を含めたサイジング剤付着量3.3重量%である強化繊維束を作製した。
【0116】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0117】
(比較例2)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1550本/mm、束内平均繊維数2270本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数3486本/mm、束内平均繊維数5020本、サイジング剤4を含めたサイジング剤付着量2.9重量%である強化繊維束を作製した。 この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0118】
(比較例3)
表1に示す原料繊維およびサイジング剤を用い領域(I)において単位幅あたりの繊維数1580本/mm、束内平均繊維数210本、領域(II)において単位幅あたりの繊維数4000本/mm、束内平均繊維数1120本、サイジング剤4を含めたサイジング剤付着量4.7重量%である強化繊維束を作製した。
【0119】
この強化繊維束の端部をエアスプライスで繋げチョップした強化繊維束と樹脂シート1を用いて繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0120】
(比較例4)
表1に示す、サイジング剤付着量1.5重量%、単位幅あたりの繊維数2870本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数1540本、単位幅あたりの繊維数2580本/mm、サイジング剤3を含むサイジング剤付着量3.3重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。なお、領域(I)に認められるサイジング剤は原料繊維1に存する“13”サイジング剤によるものである。
【0121】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0122】
(比較例5)
表1に示す、サイジング剤付着量1.6重量%、単位幅あたりの繊維数1580本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数1120本、単位幅あたりの繊維数3940本/mm、サイジング剤4を含むサイジング剤付着量4.7重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。なお、領域(I)に認められるサイジング剤は原料繊維1に存する“13”サイジング剤によるものである。
【0123】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0124】
(比較例6)
表1に示す、サイジング剤4を含むサイジング剤付着量13.0重量%、単位幅あたりの繊維数1420本/mmである領域(I)と、束内平均繊維数930本、単位幅あたりの繊維数1480本/mm、サイジング剤4を含むサイジング剤付着量3.1重量%である領域(II)とからなる強化繊維束を作製した。
【0125】
ボビンから巻き出された強化繊維束の端部(領域(I))同士をオーバーラップさせ、オーバーラップ部分を250℃、0.1MPaで1分間加圧して繋げつつ、強化繊維束の切断により不連続繊維不織布を得、該不連続繊維不織布に表2記載のマトリクス樹脂を載せて、加熱下で含浸することにより、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を作製した。繋ぎ部のプロセス性(A:繋ぎ部が外れない、B:繋ぎ部が10回に1~7回外れる、C:繋ぎ部が10回に8回以上外れる)や成形品の力学特性、流動性を評価し、結果を表2に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の強化繊維束は不連続強化繊維コンポジットの材料であり、不連続強化繊維コンポジットは自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、航空機内装材、輸送用箱体など等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0129】
100 繊維束
102 強化繊維束
180 部分分繊繊維束
300 部分分繊処理工程
301 繊維束拡幅工程
400 サイジング剤付与工程
401 サイジング剤塗布工程
402 乾燥工程
403 熱処理工程
A~G パターン
a 繊維束走行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8