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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】無機粉末の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/22 20060101AFI20230302BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230302BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B22F9/22 G
B22F1/00 M
B22F1/00 L
B22F1/00 K
B22F1/00 S
B22F1/00 N
B22F1/00 R
B22F9/22 F
B22F9/22 Z
B01J2/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021193455
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154264
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154265
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514132475
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、クン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン キョ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、オ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】モ、チャン ピン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョ ミン
(72)【発明者】
【氏名】チン、カン ファ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-063607(JP,A)
【文献】特開2000-345216(JP,A)
【文献】特開2005-139555(JP,A)
【文献】特開2007-138205(JP,A)
【文献】特開2008-045202(JP,A)
【文献】特開平05-247507(JP,A)
【文献】特表2007-522347(JP,A)
【文献】特表2015-522397(JP,A)
【文献】特公平07-063615(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0104257(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0020135(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F9/16-9/30
B22F 1/00
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮相の前駆体が気化されて気相前駆体が形成される気化部と、
前記気化部で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される部分析出部と、
前記部分析出部から一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体が反応ガスと反応して無機粉末を形成する反応部と、を含み、
前記部分析出部での前記気相前駆体の平衡蒸気圧は、前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧よりも低く、
前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体の蒸気圧以上である、無機粉末の製造装置。
【請求項2】
前記気化部の温度は、前記部分析出部の温度よりも高く、
前記反応部の温度は、前記部分析出部の温度以上である、請求項1に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項3】
前記部分析出部は、前記気相前駆体の析出を誘導する析出誘導部材を含む、請求項1に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項4】
流路を含む前駆体供給部と、
前記前駆体供給部から供給される気相前駆体が反応ガスと反応して無機粉末を形成する反応部と、を含み、
前記前駆体供給部は、凝縮相の前駆体を気化させて気相前駆体を形成する気化部と、
前記気化部で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される部分析出部と、を含み、
前記前駆体供給部の流路は、流体が前記気化部及び前記部分析出部を順に通過した後、前記反応部に排出されるように構成され、
前記気化部及び前記部分析出部は、前記前駆体供給部の流路内に設けられ、
前記反応部には、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体が投入され、
前記部分析出部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧よりも低く、
前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体の蒸気圧以上である、無機粉末の製造装置。
【請求項5】
前記流路は、流体が下方に流動する下方流路及び流体が上方に流動する上方流路を1つ以上含んで構成され、
前記下方流路及び前記上方流路は、互いに隣接して並列に配される、請求項に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項6】
前記気化部の温度は、前記部分析出部の温度よりも高く保持し、
前記反応部の温度は、前記部分析出部の温度以上に保持する、請求項に記載の無機粉末の製造装置
【請求項7】
前記部分析出部にクエンチングガスが投入されるクエンチングガス投入口を含む、請求項に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項8】
前記気化部は、熱源で加熱された下方流路内に含まれ、
前記部分析出部は、前記気化部を含む下方流路から繋がる上方流路と、前記反応部に繋がる下方流路と、の間に配されることを特徴とする、請求項に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項9】
前記気化部は、熱源で加熱された下方流路に沿って下方に移動する流体が通過する領域に配された前駆体気化装置を含み、
前記部分析出部は、前記前駆体気化装置を含む下方流路から繋がる上方流路と、前記反応部に繋がる下方流路と、の間に配される、請求項に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項10】
前記気化部は、熱源で加熱された上方流路に沿って上方に移動する流体が通過する領域に配された前駆体気化装置を含み、
前記部分析出部は、前記前駆体気化装置を含む上方流路から繋がる下方流路と、前記反応部に繋がる上方流路と、の間に配される、請求項に記載の無機粉末の製造装置。
【請求項11】
気化部で凝縮相の前駆体を気化させて形成された気相前駆体を形成する段階と、
前記気相前駆体の一部を部分析出部から凝縮相に析出させる段階と、
一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体を反応部で反応ガスと反応させて無機粉末を形成する段階と、を含むが、
前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧は、前記部分析出部での前記前駆体の平衡蒸気圧よりも高くて、前記部分析出部から前記気相前駆体の一部が析出され、
前記部分析出部から一部が析出された後、残りの気相前駆体の蒸気圧は、前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧以下である、無機粉末の製造方法。
【請求項12】
前記気化部の温度は、前記部分析出部の温度よりも高く、
前記反応部の温度は、前記部分析出部の温度以上である、請求項11に記載の無機粉末の製造方法。
【請求項13】
前記無機粉末は、金属粉末あるいはセラミック粉末を含む、請求項11に記載の無機粉末の製造方法。
【請求項14】
前記前駆体は、金属酢酸塩、金属臭化物、金属炭酸塩、金属塩化物、金属フッ化物、金属水酸化物、金属ヨウ化物、金属硝酸塩、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ酸塩、金属硫酸塩、及び金属硫化物のうち少なくとも何れか1つを含む、請求項11に記載の無機粉末の製造方法。
【請求項15】
前記無機粉末は、ニッケル、銅、銀、鉄、アルミニウム、コバルト、白金、金、錫、及びそれを含む合金のうち何れか1つを含む、請求項11に記載の無機粉末の製造方法。
【請求項16】
前記無機粉末は、ニッケル、銅、銀、鉄、アルミニウム、コバルト、白金、金及び錫のうち何れか1つの酸化物、窒化物及び炭化物のうち何れか1つを含む、請求項11に記載の無機粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉末(inorganic powder)の製造装置及びそれを用いた無機粉末の製造方法に係り、より詳細には、気相前駆体と反応ガスとの化学反応を用いて無機粉末を製造する化学気相合成(chemical vapor synthesis)装置及びそれを用いた無機粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学気相合成工程は、気相前駆体と反応ガスとの化学反応を通じて固相の物質を製造する工程である。前記固相の物質は、金属あるいはセラミックのような無機物を含む。化学気相合成工程によって無機物からなる粉末(以下、無機粉末と称する)を製造することができる。前駆体は、常温で気相であるものだけではなく、常温で固相または液相であるものを気化させて使用する。
【0003】
液相前駆体の供給方法としては、ポンプ、スプレー、バブラーなどがある。ポンプを利用する場合、体積が大きな液滴が反応器に入って気化されなければならず、この液滴の比表面積が小さくて熱伝達が円滑ではないので、気化に長い滞在時間が必要な問題がある。スプレーを利用する場合、小さな液滴が発生するが、依然として比表面積が小さな問題、スプレーするために多くのガスが使われる問題、スプレー角度による反応器直径の制約問題がある。バブラーを利用する場合、ポンプやスプレーに比べて定量を注入しやすいが、溶液の残量やガス流量などによって気化量が変化するという問題がある。
【0004】
固相前駆体の供給方法としては、フィーダー(feeder)を用いて粉末またはペレットを装入して気化させるか、坩堝に原料を装入して気化させる方法などがある。フィーダーを用いて粉末を装入する場合、粉末の流動性、粉末の水分の含量のような特性によって、フィーダーの誤差が発生し、これにより、定量注入が難しいという問題がある。フィーダーを用いてペレットを装入する場合、ペレットが気化されることによって、比表面積の変化が発生して気化される量が一定ではないという問題が発生する。坩堝に原料を装入する場合、同様に原料が気化されることによって、比表面積の変化が発生して気化される量が一定ではないという問題が発生する。
【0005】
このように、常温で固相または液相である前駆体は、定量供給が難しいという問題があり、化学気相合成工程で粉末を製造する場合、前駆体の供給量が変化することによって、製造される粉末のサイズ分布が一定ではなく、不均一になるという問題がある。したがって、化学気相合成工程用の固相または液相前駆体の定量供給の方案が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-347177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的思想が果たそうとする技術的課題は、固相または液相の前駆体を気化させた気相前駆体を反応部に一定の量で定量供給することができる前駆体供給部を含む化学気相合成装置を提供するところにある。また及びそれを用いて均一な形状及び狭い粒度分布を有する無機粉末を製造する方法を提供するところにある。
【0008】
しかし、このような課題は、例示的なものであって、本発明の技術的思想は、これに限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、凝縮相の前駆体が気化されて気相前駆体が形成される気化部;前記気化部で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される部分析出部;及び前記部分析出部から一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体が反応ガスと反応して無機粉末を形成する反応部;を含む無機粉末の製造装置が提供される。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記部分析出部での前記気相前駆体の平衡蒸気圧は、前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧よりも低く、前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体の蒸気圧以上である。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記気化部の温度は、前記部分析出部の温度よりも高く、前記反応部の温度は、前記部分析出部の温度以上である。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記部分析出部は、前記気相前駆体の析出を誘導する析出誘導部材を含みうる。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記無機粉末の製造装置は、前記気化部、部分析出部及び反応部が重力方向に対して下から上側に順次配される上向き式、上側から下に順次配される下向き式、及び重力方向に垂直な方向に順次配される水平式を含みうる。
【0014】
本発明の一観点によれば、流路を含む前駆体供給部;及び前記前駆体供給部から供給される気相前駆体が反応ガスと反応して無機粉末を形成する反応部;を含む無機粉末の製造装置が提供される。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記前駆体供給部は、凝縮相の前駆体を気化させて気相前駆体を形成する気化部;及び前記気化部で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される部分析出部;を含みうる。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記前駆体供給部の流路は、流体が前記気化部及び前記部分析出部を順に通過した後、前記反応部に排出されるように構成され、前記反応部には、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体が投入される。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記部分析出部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧よりも低く、前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体の蒸気圧以上である。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記流路は、流体が下方に流動する下方流路及び流体が上方に流動する上方流路を1つ以上含んで構成され、前記下方流路及び前記上方流路は、互いに隣接して並列に配置される。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記気化部の温度は、前記部分析出部の温度よりも高く保持し、前記反応部の温度は、前記部分析出部の温度以上に保持する。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記部分析出部にクエンチングガスが投入されるクエンチングガス投入口を含みうる。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記前駆体供給部の流路のうち、前記反応部に排出される部分は、流体が移動する方向に沿って流路の断面積が増加するように形成される領域を含みうる。
【0022】
本発明の一実施例によれば、前記気化部は、熱源で加熱された下方流路内に含まれ、前記部分析出部は、前記気化部を含む下方流路から繋がる上方流路と、前記反応部に繋がる下方流路と、の間に配置される。
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記気化部は、熱源で加熱された下方流路に沿って下方に移動する流体が通過する領域に配された前駆体気化装置を含み、前記部分析出部は、前記前駆体気化装置を含む下方流路から繋がる上方流路と、前記反応部に繋がる下方流路と、の間に配置される。
【0024】
本発明の一実施例によれば、前記気化部は、熱源で加熱された上方流路に沿って上方に移動する流体が通過する領域に配された前駆体気化装置を含み、前記部分析出部は、前記前駆体気化部装置を含む上方流路から繋がる下方流路と、前記反応部に繋がる上方流路と、の間に配置される。
【0025】
本発明の他の観点によれば、気化部で凝縮相の前駆体を気化させて形成された気相前駆体を形成する段階;前記気相前駆体の一部を部分析出部から凝縮相に析出させる段階;及び一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体を反応部で反応ガスと反応させて無機粉末を形成する段階;を含む無機粉末の製造方法が提供される。
【0026】
本発明の一実施例によれば、前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧は、前記部分析出部での前記前駆体の平衡蒸気圧よりも高くて、前記部分析出部から前記気相前駆体の一部が析出され、前記部分析出部から一部が析出された後、残りの気相前駆体の蒸気圧は、前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧以下である。
【0027】
本発明の一実施例によれば、前記気化部の温度は、前記部分析出部の温度よりも高く、前記反応部の温度は、前記部分析出部の温度以上である。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記無機粉末は、金属粉末あるいはセラミック粉末を含みうる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、前記前駆体は、金属酢酸塩(metal acetate)、金属臭化物(metal bromide)、金属炭酸塩(metal carbonate)、金属塩化物(metal chloride)、金属フッ化物(metal fluoride)、金属水酸化物(metal hydroxide)、金属ヨウ化物(metal iodide)、金属硝酸塩(metal nitrate)、金属酸化物(metal oxide)、金属リン酸塩(metal phosphate)、金属ケイ酸塩(metal silicate)、金属硫酸塩(metal sulfate)、及び金属硫化物(metal sulfide)のうち少なくとも何れか1つを含みうる。
【0030】
本発明の一実施例によれば、前記無機粉末は、ニッケル(nickel)、銅(copper)、銀(silver)、鉄(iron)、アルミニウム(Aluminum)、コバルト(cobalt)、白金(platinum)、金(gold)、錫(tin)、及びそれを含む合金(alloy)のうち何れか1つを含みうる。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記無機粉末は、ニッケル、銅、銀、鉄、アルミニウム、コバルト、白金、金及び錫のうち何れか1つの酸化物、窒化物及び炭化物のうち何れか1つを含みうる。
【発明の効果】
【0032】
本発明による場合、気相前駆体を反応部に一定の量で定量供給することによって、均一な形状及び狭い粒度分布を有する無機粉末を製造することができる。前述した本発明の効果は、例示的に記載され、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の技術思想による部分析出部の概念を説明する化学気相合成装置の概念図である。
図2A】各条件で前駆体注入速度による気化部での前駆体蒸気圧及び部分析出後の前駆体蒸気圧を示した図面である。
図2B】各条件で前駆体注入速度による気化部での前駆体蒸気圧及び部分析出後の前駆体蒸気圧を示した図面である。
図3A】各条件で前駆体注入速度による気化部での前駆体蒸気圧及び部分析出後の前駆体蒸気圧を示した図面である。
図3B】各条件で前駆体注入速度による気化部での前駆体蒸気圧及び部分析出後の前駆体蒸気圧を示した図面である。
図4A】各条件で前駆体注入速度による気化部での前駆体蒸気圧及び部分析出後の前駆体蒸気圧を示した図面である。
図4B】各条件で前駆体注入速度による気化部での前駆体蒸気圧及び部分析出後の前駆体蒸気圧を示した図面である。
図5A】本発明の技術思想による多様な形態の化学気相合成装置の概念図である。
図5B】本発明の技術思想による多様な形態の化学気相合成装置の概念図である。
図5C】本発明の技術思想による多様な形態の化学気相合成装置の概念図である。
図6】本発明の技術思想による垂直型下向き式化学気相合成装置の概略図である。
図7A】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図7B】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図8A】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図8B】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図9A】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図9B】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図9C】本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図10A】本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図10B】本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図11A】本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図11B】本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図11C】本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図12A】本発明の技術思想による水平式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図12B】本発明の技術思想による水平式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図12C】本発明の技術思想による水平式前駆体供給部の実施例を示した図面である。
図13】発明例及び比較例によって製造されたニッケル粉末をSEM(scanning electron microscope)で観察した結果である。
図14】発明例及び比較例によって製造されたニッケル粉末をSEM(scanning electron microscope)で観察した結果である。
図15】発明例及び比較例によって製造されたニッケル粉末をSEM(scanning electron microscope)で観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して、本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。本発明の実施例は、当業者に本発明の技術的思想をさらに完全に説明するために提供されるものであり、下記の実施例は、さまざまな他の形態に変形され、本発明の技術的思想の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。むしろ、これらの実施例は、本開示を、さらに充実かつ完全にし、当業者に本発明の技術的思想を完全に伝達するために提供されるものである。本明細書において、同じ符号は、始終同じ要素を意味する。さらに、図面での多様な要素と領域は、概略的に描かれたものである。したがって、本発明の技術的思想は、添付した図面に描かれた相対的なサイズや間隔によって制限されるものではない。
【0035】
本発明において、気相前駆体は、固相あるいは液相を気化させて形成することができ、以下、固相(solid phase)あるいは液相(liquid phase)を気相(gas phase)と区分して凝縮相(condensed phase)と定義する。
【0036】
本発明の技術思想によれば、気相前駆体と反応ガスとの反応を通じて無機粉末を製造する化学気相方法において、製造される無機粉末の均一な形状及び狭い粒度分布を具現するために、前記気相前駆体を可能な限り定量で均一に供給する装置及び方法が提供される。そのために、凝縮相から気化されて形成された気相前駆体を反応ガスと反応させる前に一部を凝縮相に析出させる構成が提供される。このように部分析出を通じて飽和蒸気圧に到達した気相前駆体は、引き続き反応部に投入されて反応ガスと反応して無機粉末を形成する。
【0037】
気相前駆体が特定温度で飽和蒸気圧に到達したということは、飽和蒸気圧を超過して気化された気相前駆体はいずれも凝縮相に析出されたということを意味する。特定温度での飽和蒸気圧は、一定の値で定められるので、前記特定温度で飽和蒸気圧を保持するならば、気相前駆体の量も一定に保持するということを意味する。飽和蒸気圧よりもさらに多くの量の前駆体が気化されたとしても、一旦飽和蒸気圧を有する条件を経れば、飽和蒸気圧を超過する量ほどの前駆体はいずれも凝縮相に析出される。本発明では、気相前駆体の一部を析出させて飽和蒸気圧を有させる構成を部分析出部と称する。このような部分析出部は、流体が通過することができる領域あるいは空間を含む。部分析出部は、前記領域あるいは空間内に部分析出を誘導する析出誘導部材をさらに含みうる。
【0038】
本発明において、無機粉末の原料に該当する前駆体は、反応ガスと反応して無機粉末を形成する凝縮相の金属化合物である。前記前駆体は、金属臭化物、金属炭酸塩、金属塩化物、金属フッ化物、金属水酸化物、金属ヨウ化物、金属硝酸塩、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ酸塩、金属硫酸塩、及び金属硫化物のうち少なくとも何れか1つを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記無機粉末は、ニッケル、銅、銀、鉄、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、白金、金、錫、及びそれを含む合金のうち何れか1つを含む。
【0040】
前記無機粉末は、ニッケル、銅、銀、鉄、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、白金、金及び錫のうち何れか1つの酸化物、窒化物及び炭化物のうち何れか1つである。
【0041】
図1は、本発明の技術思想による部分析出部の概念を説明する化学気相合成装置100の概念図である。図1を参照すれば、化学気相合成装置100は、気化部(E)、部分析出部(C)及び反応部(R)を含む。
【0042】
気化部(E)は、凝縮相の前駆体が気化されて気相前駆体が形成される領域である。一例として、図1のように、気化部(E)の内部には、熱源によって前駆体を加熱して気化させる前駆体気化装置(M)がその内部に配置される。前駆体気化装置(M)は、粉末あるいはペレット(pellet)状の前駆体、あるいは液相の前駆体が装入される坩堝形態を有しうる。この場合、気化部(E)に投入されるキャリアガス(CG)は、前駆体気化装置(M)で気化された気相前駆体と混合される。キャリアガス(CG)と気相前駆体の混合ガスは、部分析出部(C)の内部に移動する。図1の矢印110は、キャリアガスと気相前駆体の混合ガスとが部分析出部(C)に投入されることを示す。
【0043】
他の例として、気化部(E)は、熱源によって前駆体の気化温度以上に加熱される。このように加熱された気化部にキャリアガスと共に粉末状の前駆体が投入されて気相に気化されることにより、気相前駆体が形成されうる。
【0044】
部分析出部(C)は、気化部(E)で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される領域である。この際、部分析出部(C)から析出される前駆体は、当該温度での平衡蒸気圧に該当する前駆体の気化量を超過するものである。このように凝縮相に析出された前駆体は、自重によって部分析出部(C)の下部に落下するか、あるいは気相前駆体が移動する経路上にある部材の表面に凝集された形態で析出される。図1の矢印120は、部分析出部(C)から一部が凝縮相に析出された気相前駆体とキャリアガスとの混合ガスが反応部(R)に投入されることを示す。
【0045】
反応部(R)は、部分析出部(C)から一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体が反応ガスと反応して無機粉末を形成する領域である。図1には図示されていないが、反応部(R)には、反応に必要な反応ガスが投入される構成が存在する。気相前駆体は、部分析出部(C)に既に一部が析出されて常に飽和状態で反応部(R)に投入されるために、反応部(R)に供給される気相前駆体は一定の値を保持する。このような前駆体の定量供給の効果として反応部(R)で形成される無機粉末は、均一な形状と共に粉末の直径も均一であって、狭い粒度分布を示す。したがって、気相前駆体の不規則な供給によって粉末のサイズが毎回不均一に変化するか、粉末の粒度分布が広がる従来の問題を解決することができる。
【0046】
本発明の技術思想は、下記の条件1及び条件2を満足させることで具現可能である。
【0047】
条件1:部分析出部での気相前駆体の平衡蒸気圧(PCeq)は、気化部で形成された気相前駆体の蒸気圧よりも低い
【0048】
条件2:反応部での前駆体の平衡蒸気圧(PReq)は、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出され、残りの気相前駆体の蒸気圧(P)以上である
【0049】
条件1を満足する場合、(PCeq)と(P)との差に該当する量ほど前駆体が析出する。
【0050】
条件1を満足させた状態で一部が析出された気相前駆体が反応部に投入されたとしても、反応部の平衡蒸気圧(PReq)に比べて反応部に投入された気相前駆体の蒸気圧(P)が依然としてさらに高ければ、やはり反応部でも部分析出部でのように気相前駆体の一部が凝縮相に析出される。このような析出は、反応ガスとの反応によって正常に製造された無機粉末ではない不純物なので、このような反応部での析出は、無機粉末の品質を大きく悪化させる要因となる。
【0051】
したがって、反応部では、(PReq)が(P)よりも少なくとも同じか、さらに大きな値を有さなければならない。このような条件を満足して初めて、反応部で反応ガスとの反応の以外に気相前駆体の析出によって凝縮相が形成される現象が表われない。
【0052】
逆に、(P)が(PReq)に比べてさらに小さな値を有する場合、反応部に投入された気相前駆体は、反応ガスと接触する前までは析出が起こらず、反応ガスと接触した後、反応に参加する。
【0053】
気化部から部分析出部を経て反応部に排出されるガスの流量が一定に保持される場合、各部分での温度について説明する。条件1を満足するために、図1に示された気化部(E)は、前駆体気化温度以上の温度であるT1を有し、部分析出部(C)は、気化部(E)の温度T1に比べて低い温度であるT2を有する。T1とT2との温度差は、気相前駆体の一部を凝縮相に析出させる熱力学的駆動力として作用する。また、条件2を満足するためには、反応部(R)の温度T3は、部分析出部(C)での温度T2と同じか、大きな値を有する。したがって、反応部(R)から投入された気相前駆体が凝縮相に析出される熱力学的駆動力が存在せず、凝縮相に析出される現象が表われない。
【0054】
本発明の技術思想を証明するために、図1に示された化学気相合成装置100を用いて、気化部、部分析出部及び反応部での温度による気相前駆体の挙動を電算模写した。
【0055】
電算模写に用いられた前駆体は、ニッケル粉末製造用である固相のNiClであり、温度によるNiClの平衡蒸気圧を考慮して、NiClは、気化温度以上に保持される気化部に投入された後、気化されると設定した。キャリアガスは、窒素(N)と設定し、前駆体の蒸気圧変化のみ観察するために、反応は考慮しなかった。キャリアガスは、比較例Aは15LPMにし、残りは30LPMに固定した。気化NiClの蒸気圧は、気相NiClとキャリアガスとが混合された混合ガスに対して気相NiClの量が占める分率に化学気相合成装置内の全体圧力を乗算して導出した。したがって、投入されるキャリアガスの流量が一定の場合に、NiCl蒸気圧は、温度によってその値が決定される。
【0056】
表1には、電算模写に用いられた工程条件が示されており、図2Aないし図4Bには、各工程条件で前駆体注入速度(V)による気化部での前駆体蒸気圧(P1)、部分析出後の前駆体蒸気圧(P2)及び反応部での前駆体の平衡蒸気圧(P3)の結果が示されている。
【0057】
【表1】
【0058】
図2A及び図2Bは、実施例A及び実施例Bの条件での電算模写の結果であって、経時的な前駆体注入速度(V、g/min)による気化部での前駆体蒸気圧(P1、kPa)及び部分析出後の前駆体蒸気圧(P2、kPa)を示したものである。
【0059】
表1を参照すれば、実施例A及び実施例Bは、いずれも条件1及び条件2を満足している。すなわち、化学気相合成装置に投入されるキャリアガスの流量を30LPMに保持する時、気化部の温度が部分析出部の温度よりも高く保持され、部分析出部及び反応部の温度は、同様に保持される。NiClの850℃、900℃及び950℃の平衡蒸気圧は、9.78kPa、24.97kPa及び58.46kPaである。したがって、950℃に保持される気化部から十分に気化されたNiClの蒸気圧は、最大58.46kPaであり、900℃に保持される部分析出部に投入されれば、部分析出部の平衡蒸気圧である24.97kPaを超過するほど析出が起こる。実施例Aの場合、反応部の温度は900℃であって、部分析出部と同一なので、部分析出が起こった気相前駆体が反応部に投入されても、熱力学的駆動力がなくて、これ以上の析出は起こらない。
【0060】
図2Aを参照すれば、気化部に投入された前駆体投入速度(V)は、時間当たり投入されるNiClの重量を意味し、投入されるNiCl重量の増減に対応して気化部内のNiClの蒸気圧(P1)も増減を示すことを確認することができる。しかし、部分析出部では、NiClの平衡蒸気圧を超過する気相のNiClが固相に析出されることによって、部分析出後にはNiClの投入量に関係なくNiClの蒸気圧は平衡蒸気圧(P2)に一定に保持されることを確認することができる。これは、反応器の気化部に投入されるNiClの量が不規則であるとしても、反応部では常に気化されたNiClの蒸気圧が一定に保持されるということを意味する。
【0061】
図2Bは、実施例Bの結果であって、反応部での温度が1000℃であることを除き、残りのあらゆる実験条件が実施例Aと同一であった。反応部の温度が1000℃である場合、やはり反応部でこれ以上の析出は起こらないという点で実施例Aと電算模写の結果は同様に表われる。
【0062】
図3A及び図3Bは,比較例A及び実施例Cの電算模写の結果を示したものである。図3Aを参照すれば、比較例Aの場合、気化部に投入されるNiClの注入速度(V)が大きな偏差を有し、これは、経時的なNiClの投入重量に大きな偏差があるということを意味する。前駆体注入速度が最低値を示す場合には、気化部での蒸気圧(P1)が部分析出部での平衡蒸気圧よりも低いレベルを有する。このような状態でNiClが気化部に投入された後、気化されて部分析出部に入る場合、気化部での気相NiClの蒸気圧(P1)が部分析出部での平衡蒸気圧よりも低い状態の蒸気圧が存在するので、条件1を満足することができなくなる。したがって、実施例Aでのように、気相NiClの蒸気圧(P2)が部分析出部で飽和蒸気圧に一定になる効果が表われない。このように気化部に投入されるNiClの重量変化に対応して気相NiClの蒸気圧が変化される状態で気相NiClが反応部に投入されれば、これは、反応部に供給される気相NiClの量が経時的に不規則に変動するということを意味する。このような条件下で反応部から生成されたニッケル粒子は、直径のサイズが不規則であって、粒度分布が広い値を示す。
【0063】
このような問題を解決するためには、気化部で気相NiClの蒸気圧を部分析出部の平衡蒸気圧よりも高い値に増加させなければならない。実施例Cは、比較例Aと比較してキャリアガスの投入量を15LMPに減少させたものである。このようなキャリアガス投入量を半分に減少させることによって、キャリアガスと気化されたNiClとの混合ガス内での気相NiClの分率が相対的に増加する。これにより、気化部でNiClの蒸気圧が部分析出部での気相NiClの飽和蒸気圧よりもさらに大きくなる。図3Bを参照すれば、気化部でのNiClガスの蒸気圧(P1)が増加することによって、部分析出部では析出によって気相NiClの蒸気圧(P2)が飽和蒸気圧に一定になると確認することができる。
【0064】
図4A及び図4Bは,比較例B及び比較例Cの電算模写の結果を示したものである。
【0065】
表1を参照すれば、比較例Bの場合、気化部の温度よりも部分析出部の温度がさらに高く保持されている。したがって、条件1を満足することができず、気化部から気化されたNiClの蒸気圧(P1)が部分析出部での平衡蒸気圧よりも大きくて、一部が析出される効果は表われない。したがって、部分析出部での気相NiClの蒸気圧(P2)は、気化部での蒸気圧(P1)と実質的に同一であって、反応部でも経時的な気相NiClの蒸気圧の変化が気化部では実質的に同じ形態に表われる。これは、反応部に気相NiClの定量供給が起こらないということを意味する。
【0066】
表1を参照すれば、比較例Cの場合、反応部の温度が850℃であって、部分析出部の温度である900℃に比べてさらに低い値を有して条件2を満足することができない。したがって、図4Bを参照すれば、部分析出部から一部が析出された気相NiClがP2の蒸気圧を有し、反応部に投入されても、反応部での平衡蒸気圧(P3)を超過するほど固相のNiClが析出される。このように、反応部で固相のNiClが析出された場合には、製品として活用することができなくなる。
【0067】
本発明の技術思想による場合、部分析出部は、条件1及び条件2を満足するために、特定の温度に保持され、流体が移動することができる空間を含めば十分である。図5Aないし図5Cは,本発明の技術思想による多様な形態の化学気相合成装置の概念図である。気化部(E)、部分析出部(C)及び反応部(R)の配置方式によって重力方向に対して下から上側に順次配される上向き式、上側から下に順次配される下向き式、及び重力方向に垂直な方向に順次配される水平式が、それぞれ図5A図5B及び図5Cに示されている。
【0068】
図5A及び図5Cを参照すれば、上向き式500及び水平式520の場合には、前駆体気化装置(M)を気化部(E)内に備えることができる。前駆体気化装置(M)から気化された気相前駆体は、気化部(E)に投入されるキャリアガス(CG)と混合されて混合ガスを構成する。前記混合ガスは、部分析出部及び反応部に移動する。反応部(R)では、別途に投入される反応ガス(RG)と反応して無機粉末を形成する。
【0069】
図5Bを参照すれば、下向き式510の場合には、キャリアガスによって移動する粉末状の前駆体(SC)を気化部(E)に投入すれば、高温で加熱される気化部(E)内で下降しながら、直ちに気化させる。反応部(R)では、別途に投入される反応ガス(RG)と反応して無機粉末を形成する。
【0070】
図5Aないし図5Cは、例示的なものであり、上向き式及び水平式の場合にも、前駆体粉末がキャリアガスと共に気化部に投入され、下向き式の場合にも、気化部内に前駆体気化装置が備えられるということはいうまでもない。
【0071】
各形態の化学気相合成装置の部分析出部には、気相前駆体の部分析出を誘導することができる析出誘導部材(PIM)がさらに配置される。析出誘導部材(PIM)は、気化部(E)から供給された気相前駆体の一部が部分析出されるように気化部(E)に比べて相対的に低い温度を保持する。また、気化部(E)から供給された気相前駆体が部分析出が起こった後、反応部(R)が移動できるように気相前駆体が通過することができる流路が形成されうる。また、部分析出が起こった凝集相、例えば、粒子状の固相や液滴などは、析出誘導部材に張り付いて積層することができる。
【0072】
図6には、本発明の技術思想による無機粉末の製造装置の一例として、反応チャンバが垂直型である下向き式化学気相合成装置600が示されている。
【0073】
図6を参照すれば、化学気相合成装置600は、垂直方向に中空状が延びる垂直型反応チャンバ610を含む。反応チャンバ610の外周面には、反応チャンバ610を加熱するための加熱部640が配される。加熱部640は、例えば、電気で加熱される抵抗加熱体で構成することができる。加熱部640は、複数のヒーターに区分されて、各ヒーターは、別途に温度が制御される。例えば、図6のように、下方にヒーター1(641)、ヒーター2(642)及びヒーター3(643)のように3個のヒーターが配置される。3個のヒーター641、642、643のそれぞれは、別途の温度で制御される。したがって、各ヒーターの温度を制御することにより、反応チャンバ610の位置別に多様な温度分布を具現することができる。例えば、前駆体供給部(S)内で上部と下部との温度を互いに異ならせて保持する。他の例として、反応部の温度が下方に行くほどさらに低い温度になるように具現することができる。
【0074】
反応チャンバ610の上部には、前駆体を気化させて反応部に供給する前駆体供給部(S)が配され、前駆体供給部(S)の下部には、気相の前駆体と反応ガスとが互いに反応して無機粉末が形成される反応部(R)が配される。反応部(R)から生成された無機粉末は、反応部(R)の下部の捕集部(G)から捕集された後、分級、粉末洗浄のような一連の過程をさらに経る。
【0075】
反応チャンバ610の上部に配された第1供給部620は、原料である前駆体をキャリアガスと共に前駆体供給部(S)に供給する。他の例として、前駆体供給部(S)内に前駆体気化装置が内在されている場合には、気化された前駆体を運ぶためのキャリアガスのみを投入することができる。追加的に、第1供給部には、別途の流路がさらに形成されて前駆体供給部内の部分析出部を冷却するためのクエンチングガスがさらに供給されうる。前駆体供給部(S)は、前駆体の気化が起こるので、一定の温度以上の高温に保持する必要がある。また、前駆体供給部(S)内で気相前駆体の部分析出が起こらなければならないので、局所的には相対的に温度が低い領域が存在する。このために、前駆体供給部(S)の周囲の加熱部の温度を適切に制御して前駆体供給部内の温度が局所的に異なるように保持する。
【0076】
第2供給部630は、前駆体供給部(S)から反応部(R)に投入される気相前駆体と反応する反応ガスが投入される流路であって、反応部に直接反応ガスを供給するための構成を有するならば、形状や経路が特に限定するものではない。
【0077】
前駆体供給部(S)は、前駆体を気化させて気相前駆体を形成し、前記気相前駆体を反応部(R)に排出する。したがって、前駆体供給部(S)内には、気相前駆体が流動することができる流路が形成されている。第1供給部620を通じて投入された前駆体が前駆体供給部(S)に投入されながら、気化されて気相前駆体が形成されうる。他の例として、前駆体供給部(S)内に別途の前駆体気化装置が配され、この場合、第1供給部620を通じて投入されたキャリアガスは、前駆体気化装置から気化された前駆体と混合され、混合ガスは、前駆体供給部(S)から排出されて反応部(R)に投入される。
【0078】
以下、本発明の技術思想による多様な形態の前駆体供給部について説明する。
【0079】
本発明の技術思想による前駆体供給部は、凝縮相の前駆体を気化させて気相前駆体を形成する気化部及び前記気化部で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される部分析出部を含む。この際、前記前駆体供給部の流路は、流体が前記気化部及び前記部分析出部を順に通過した後、前記反応部を排出されるように構成される。前記部分析出部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記気化部で形成された前記気相前駆体の蒸気圧よりも低く、前記反応部での前記前駆体の平衡蒸気圧は、前記部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体の蒸気圧以上であることを特徴とする。
【0080】
図7A及び図7Bは、本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部700の実施例を示したものである。
【0081】
図7Aを参照すれば、前駆体供給部700の流路は、流体が下方に流動する下方流路710、730及び流体が上方に流動する上方流路720を1つ以上含んで構成される。前記下方流路710、730及び前記上方流路720は、互いに隣接して並列に配される。
【0082】
具体的に、前駆体供給部700の両側部から中央の中心軸方向に下方流路710、上方流路720及び下方流路730が順次に隣接して配される。下方流路710及び上方流路720は、中心軸を基準に互いに対称であり、下方流路730は、前駆体供給部700の中央部に形成されて中心軸に沿って延びる構成を有する。
【0083】
前駆体供給部700内の流路は、流体が前記気化部(E)及び前記部分析出部(C)を順に通過した後、前記反応部(R)に排出されるように構成される。流体の流れを図面に矢印で示した。
【0084】
前記気化部(E)は、下方流路710に投入される凝縮相の前駆体が気化される領域であって、熱源で加熱される下方流路710を含む。部分析出部(C)は、前記気化部(E)を含む下方流路710から繋がる上方流路720と、前記反応部(R)に繋がる下方流路730と、の間に配される。前記部分析出部(C)の温度は、気化部(E)の温度に比べてさらに低い温度に保持される。これは、前述したように、前駆体供給装置が配される反応チャンバ610の外周面に設けられた加熱部640の温度制御によって具現可能である。
【0085】
前記気化部(E)は、前駆体の気化温度以上に保持される。キャリアガスによって運ばれる凝縮相の前駆体(SC)、例えば、前駆体粉末が気化部(E)に投入されれば、気化されて気相前駆体になる。この際、投入される凝縮相の前駆体(SC)の量は、気化された後、その蒸気圧が部分析出部(C)での飽和蒸気圧よりも大きい程度に十分な量を投入しなければならない。これは、前述した条件1を満足させるための工程条件である。
【0086】
気相前駆体は、側面の上方流路720に沿って上方に流動して相対的に気化部(E)に比べて低い温度に保持される部分析出部(C)に到達する。この際、部分析出部(C)に到達した気相前駆体は、部分析出が起こりながら、気相前駆体の一部が凝縮相に析出される。析出された凝縮相は、上方流路720に沿って自重によって下降する。例えば、凝縮相が固相である場合、析出された固相の前球体は、粒子状であって、上方流路720に沿って自重によって下部に下降して底面に積層することができる。このように積もった粒子は、工程が完了した後、作業者によって除去される。
【0087】
部分析出部(C)を通過した気相前駆体は、下方流路730に沿って反応部(R)に排出されて反応ガスと反応して無機粉末を形成する。部分析出部(C)を通過しながら部分析出が起こった気相前駆体が反応部(R)に投入されることによって、気相前駆体が常に一定に供給される効果が具現可能である。
【0088】
図7Bは、気化部(E)を含む上方流路710が前駆体供給部(S)の中央部に位置し、中央部から両側部まで下方流路710、上方流路720及び下方流路730が順次に隣接して配されるという点を除き、作動の原理は、図7Aに示されたものと同一なので、重複説明は省略する。
【0089】
図8A及び図8Bは、本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部700の他の実施例である。
【0090】
図8Aを参照すれば、気化部(E)は、熱源で加熱された下方流路710に沿って下方に移動する流体が通過する領域に配された前駆体気化装置(M)を含む。下向き流路710にキャリアガス(CG)が投入され、前駆体気化装置810から気化された気相前駆体は、キャリアガスと混合されて上方流路720を通じて部分析出部(C)に到達する。後続の過程は、既に前の実施例で説明したので、省略する。
【0091】
前駆体気化装置(M)は、粉末あるいはペレット状の前駆体、あるいは液相の前駆体が装入される坩堝形態を有しうる。前駆体気化装置(M)は、別途の装置を通じて消耗した量ほどリアルタイムで再び補充される。あるいは所定時間ほど使用した後、既定の量が消耗すれば、前駆体を満たし、再び使用するか、新たなものに取り替えて使用することができる。
【0092】
本発明の技術思想によれば、部分析出部を通じて反応に参加する気相前駆体を一定の蒸気圧で保持することができ、したがって、前駆体気化装置(M)に入れられる固相前駆体の形状の差あるいは粒子サイズの差などが存在するとしても、このような差によって反応部に供給される気相前駆体の量が不規則に変動する現象は最大限抑制される。
【0093】
図8Bは、前駆体気化装置が(M)が中央部の下方流路710に配されたものを除いては、図8Aの前駆体供給部と作動原理が同一なので、これについての説明は省略する。
【0094】
図9Aないし図9Cは、本発明の技術思想による下向き式前駆体供給部900の他の実施例である。本実施例による前駆体供給部900は、部分析出部(C)にクエンチングガス(QC)が投入されるクエンチングガス投入口910を含む。前記クエンチングガスは、部分析出部を冷却させる役割を行い、これにより、部分析出部の温度が低くなれば、部分析出部での前駆体の平衡蒸気圧が低くなって部分析出がさらに円滑になされるようにする。クエンチングガスは、不活性ガス、窒素ガスなどが使われる。
【0095】
図9A及び図9Bを参照すれば、前記部分析出部(C)の上方に配されたクエンチングガス投入口910を通じてクエンチングガスが、前記部分析出部(C)に提供される。図9Cを参照すれば、前記部分析出部(C)の側方に配されたクエンチングガス投入口910を通じてクエンチングガスが、前記部分析出部(C)に提供される。投入されたクエンチングガスは、他のガスと共に反応部に移動する。
【0096】
図10A及び図10Bは、本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部1000の実施例を図示したものである。
【0097】
図10Aを参照すれば、上向き式前駆体供給部1000の流路は、流体が上方に流動する上方流路1010、1030及び流体が下方に流動する下方流路1020を1つ以上含んで構成される。前記上方流路1010、1030及び前記下方流路1020は、互いに隣接して並列に配される。
【0098】
具体的に、前駆体供給部1000の両側部から中央の中心軸方向に上方流路1010、下方流路1020及び上方流路1030が順次に隣接して配される。上方流路1010及び下方流路1020は、中心軸を基準に互いに対称であり、上方流路1030は、前駆体供給部1000の中央部に形成されて中心軸に沿って延びる構成を有する。
【0099】
前駆体供給部1000内の流路は、流体が気化部(E)及び部分析出部(C)を順に通過した後、反応部(R)に排出されるように構成される。流体の流れを図面に矢印で示した。
【0100】
前記気化部(E)は、熱源で加熱された上方流路1010に沿って上方に移動する流体が通過する領域に配された前駆体気化部(M)を含む。部分析出部(C)は、前記気化部(E)を含む上方流路1010から繋がる下方流路1020と、前記反応部(R)に繋がる上方流路1030と、の間に配される。前記部分析出部(C)の温度は、気化部(E)の温度に比べてさらに低い温度に保持される。上向き流路1010にキャリアガス(CG)が投入され、前駆体気化装置(M)から気化された気相前駆体は、キャリアガスと混合されて上方流路1010に沿って上昇した後、下方流路1020を通じて下降して部分析出部(C)に到達する。部分析出部(C)で部分析出が起こった気相前駆体は、上方流路1030に沿って上方に流動して反応部(R)に排出される。部分析出部(C)から析出された凝縮相の前駆体は、自重によって下降して部分析出部(C)の底部に積もる。今後、このように積もった凝縮相は、工程が完了した後、作業者によって除去される。
【0101】
図10Bは、気化部(E)を含む上方流路1010が前駆体供給部1000の中央部に位置し、中央部から両側部まで上方流路1010、下方流路1020及び上方流路1030が順次に隣接して配されるという点を除き、作動の原理は、図10Aに示されたものと同一なので、重複説明は省略する。
【0102】
図11Aないし図11Cは、本発明の技術思想による上向き式前駆体供給部1100の他の実施例である。本実施例による前駆体供給部1100は、部分析出部(C)にクエンチングガス(QC)が投入されるクエンチングガス投入口1110を含む。
【0103】
図11A及び図11Bを参照すれば、前記部分析出部(C)の下方に配されたクエンチングガス投入口1110を通じてクエンチングガスが、前記部分析出部(C)に提供される。図11Cを参照すれば、前記部分析出部(C)の側方に配されたクエンチングガス投入口1110を通じてクエンチングガスが、前記部分析出部(C)に提供される。
【0104】
図12Aないし図12Cは、本発明の技術思想による水平式前駆体供給部1200の実施例である。図12Aを参照すれば、気相前駆体が、前記部分析出部(C)から前記反応部(R)に排出される時、前記気相前駆体が上部に移動するように誘導する流体上昇誘導部材1210を含みうる。このような流体上昇誘導部材1210によって気相前駆体が部分析出部(C)で上昇して反応部(R)に排出される過程中に部分析出された凝縮相前駆体、例えば、粉末あるいは液滴形態の前駆体が自重によって下部に下降して部分析出部(C)の底部に積もる。したがって、このような凝縮相前駆体が反応部(R)に投入されることを最大限防止することができる。
【0105】
図12Aに示された実施例では、部分析出部(C)と反応部(R)との間に上部が開放された隔壁形態の流体上昇誘導部材1210が配される。図12Bに示された実施例では、気化部(E)と部分析出部(C)との間に下部が開放された隔壁が配されて、部分析出部(C)に投入される気相前駆体が下部で投入されるように誘導する流体下降上昇部材1220をさらに含む。図12Cは、水平式の変形された実施例であって、本実施例では、気化部(E)の直上に部分析出部(C)が存在し、気化部(E)から上昇して部分析出部(C)を通過した気相前駆体は、流体上昇誘導部材1210の上部開口部を通じて反応部(R)に投入される。
【0106】
実験例
【0107】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実験例を提示する。但し、下記の実験例は、本発明の理解を助けるためのものであり、本発明が、下記の実験例によって限定されるものではない。
【0108】
部分析出部の有無による無機粉末の特性を観察した。このために、図6に示されたような垂直型下向き式化学気相合成装置を利用した。発明例1の場合、前駆体供給部は、図9Bに示された扁平型を利用した。比較例1及び比較例2は、図6の装置のうち、前駆体供給部の代わりに、反応部に直接前駆体を供給する形態であることを除き、残りは発明例1と同じ装置を利用した。加熱部640を成すヒーター1ないしヒーター3の温度は、表2に示されている。本実験では、ニッケル粉末を製造し、前駆体としてはNiClが使われた。キャリアガス及び反応ガスは、それぞれ窒素ガス(N)及び水素ガス(H)が使われた。表2には、発明例と比較例とによるニッケル粉末の製造条件が示されている。
【0109】
【表2】

表3には、発明例と比較例とによるニッケル粉末の粒度分布と平均粒度とを分析する結果が示されている。粒度分布と平均粒度は、それぞれ幾何標準偏差(Geometric standard deviation、GSD)と中央直径値(Count median diameter、CMD)とを通じて算出した。
【0110】
【表3】

図13は、発明例1によるニッケル粉末をSEMで観察した結果である。図14及び図15は、それぞれ比較例1及び比較例2によるニッケル粉末をSEMで観察した結果である。
【0111】
図13を参照すれば、発明例1によるニッケル粉末は、GSDが1.19であり、CMDが112.99nmであって、狭い粒度分布を示し、球状のニッケル粉末のサイズが非常に均一であるということを確認することができる。
【0112】
一方、図14を参照すれば、比較例1によるニッケル粉末は、GSDが1.34であり、CMDが101.51nmであって、広い粒度分布を示し、粒子サイズが大きなニッケル粉末と小さなニッケル粉末とが混在されていることを確認することができる。これは、反応部に前駆体供給が一定に投入されなかった結果として理解される。
【0113】
一方、図15を参照すれば、比較例2によるニッケル粉末は、GSD及びCMD値を測定しにくい程度の形状を示した。前駆体であるNiClの完全揮発が起こらず、固相のNiCl状態でHによって還元されたNi粉末が観察された。比較例2の場合には、発明例1と比較する時、前駆体供給部の部材によって固相前駆体が完全に気化されるのに十分な滞在時間を確保することができなかった結果として理解される。
【0114】
前述した本発明の技術的思想が、前述した実施例及び添付図面に限定されず、本発明の技術的思想を外れない範囲内でさまざまな置換、変形及び変更が可能であるということは、当業者にとって明白である。
【符号の説明】
【0115】
600:化学気相合成装置
610:反応チャンバ
620:第1供給部
630:第2供給部
640:加熱部
700:前駆体供給部
710、730:下方流路
720:上方流路
【要約】
【課題】無機粉末の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、金属粉末の製造装置及びそれを用いた無機粉末の製造方法に係わるものである。本発明の一観点によれば、凝縮相の前駆体が気化されて気相前駆体が形成される気化部;気化部で形成された気相前駆体の一部が凝縮相に析出される部分析出部;及び部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体が反応ガスと反応して無機粉末を形成する反応部;を含む無機粉末の製造装置が提供される。本発明の技術思想によれば、部分析出部での気相前駆体の平衡蒸気圧は、気化部で形成された気相前駆体の蒸気圧よりも低く、反応部での前駆体の平衡蒸気圧は、部分析出部から一部が凝縮相に析出された気相前駆体の蒸気圧以上である。
【選択図】図6
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15