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特許7236067ピレスロイド非含有の防蟻材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ピレスロイド非含有の防蟻材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20230302BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20230302BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230302BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20230302BHJP
   A01N 43/78 20060101ALI20230302BHJP
   A01N 47/26 20060101ALI20230302BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A01N25/10
E04B1/72
A01P7/04
A01P17/00
A01N43/78 101
A01N47/26
A01M1/20 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018118880
(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2019218323
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518274113
【氏名又は名称】合同会社オフィス▲広▼
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲広▼重 亮一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一利
(72)【発明者】
【氏名】川上 剛史
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196684(JP,A)
【文献】特開昭60-166414(JP,A)
【文献】特開昭55-108805(JP,A)
【文献】特開昭60-123574(JP,A)
【文献】特開2003-096254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴムと、加硫剤と、チアゾール系化合物と、チウラム系化合物とを含み、
前記チアゾール系化合物は、2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィドであり、
前記チウラム系化合物は、テトラメチルチウラムモノスルフィドであり、
前記チアゾール系化合物の含有量は、0.30質量%以上、0.50質量%以下であり、
前記チウラム系化合物の含有量は、0.25質量%以上、0.50質量%以下であることを特徴とするピレスロイド非含有の防蟻材。
【請求項2】
基材ゴムと、加硫剤と、チアゾール系化合物と、チウラム系化合物とを配合して混練する混練工程と、
前記混練工程で得られる組成物を加硫成形する加硫成形工程と、
を有し、
前記チアゾール系化合物は、2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィドであり、
前記チウラム系化合物は、テトラメチルチウラムモノスルフィドであり、
前記チアゾール系化合物の含有量は、0.30質量%以上、0.50質量%以下であり、
前記チウラム系化合物の含有量は、0.25質量%以上、0.50質量%以下であることを特徴とするピレスロイド非含有の防蟻材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピレスロイド非含有の防蟻材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂などの基材に、ホウ酸やピレスロイドなどの防蟻薬を含ませたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このような防蟻材は、シロアリの食害を防ぐ必要がある部材として好適に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-247313号公報
【文献】特開2003-237814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホウ酸を含む防蟻材は、ホウ酸が熱的安定性に劣るとともに二次凝集性を有する。そのため、ホウ酸を含む防蟻材は、高濃度でホウ酸を含むマスターバッチを予め調製しておき、このマスターバッチをさらに所望濃度に希釈することで製造されていた。したがって、この防蟻材は、製造工数の増加により製造コストが増加する問題があった。
また、ピレスロイドを含む防蟻材は、農薬であるピレスロイドに使用制限があるため、供給元で予め許容濃度に希釈されたピレスロイドを、防蟻材の製造元でさらに所望濃度に希釈することで製造されていた。したがって、この防蟻材においても、製造工数の増加により製造コストが増加する問題があった。また、ピレスロイドは、比較的高価であるという問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、比較的安価な材料を使用して従来よりも簡素化された方法で製造することができるピレスロイド非含有の防蟻材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、基材ゴムと、加硫剤と、チアゾール系化合物と、チウラム系化合物とを含み、前記チアゾール系化合物は、2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィドであり、前記チウラム系化合物は、テトラメチルチウラムモノスルフィドであり、前記チアゾール系化合物の含有量は、0.30質量%以上、0.50質量%以下であり、前記チウラム系化合物の含有量は、0.25質量%以上、0.50質量%以下であることを特徴とするピレスロイド非含有の防蟻材である。
また、前記課題を解決する本発明の防蟻材の製造方法は、前記ピレスロイド非含有の防蟻材の製造方法であって、基材ゴムと、加硫剤と、チアゾール系化合物と、チウラム系化合物とを配合して混練する混練工程と、前記混練工程で得られる組成物を加硫成形する加硫成形工程と、を有し、前記チアゾール系化合物は、2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィドであり、前記チウラム系化合物は、テトラメチルチウラムモノスルフィドであり、前記チアゾール系化合物の含有量は、0.30質量%以上、0.50質量%以下であり、前記チウラム系化合物の含有量は、0.25質量%以上、0.50質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的安価な材料を使用して従来よりも簡素化された方法で製造することができるピレスロイド非含有の防蟻材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】チアゾール系化合物と、チウラム系化合物の含有量を変えて製造した防蟻材のシロアリ食害率を示すマップである。
図2】防蟻材の食害率評価試験に使用した試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施する形態(本実施形態)の防蟻材及びその製造方法について詳細に説明する。
≪防蟻材≫
本実施形態の防蟻材は、基材ゴムと、加硫剤と、チアゾール系化合物と、チウラム系化合物とを含むことを特徴とする。
【0010】
<基材ゴム>
本実施形態での基材ゴムは、天然ゴム及び合成ゴムを想定している。
合成ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(Si,Q)、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの基材ゴムは、それぞれ単独で使用することができるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でもエチレンプロピレンジエンゴムは好ましい。
【0011】
また、本実施形態での基材ゴムには、前記した天然ゴム及び合成ゴムに加えてさらに熱可塑性又は熱硬化性のエラストマを含めることができる。
このエラストマとしては、例えば、ポリウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、アイオノマ樹脂、ポリオレフィン系エラストマ、ポリウレアなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらのエラストマは、それぞれ単独で使用することができるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
基材ゴム中の前記エラストマの含有量としては、適用する防蟻材の種類に応じて適宜に決定することができ、例えば0質量%以上、20質量%以下の範囲に設定することができるが、これに限定されるものではない。
【0012】
<加硫剤>
加硫剤としては、前記の基材ゴムに対応して使用される公知のものが挙げられる。具体的な加硫剤としては、例えば、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂系、アミン系のもの、キノンジオキシムなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0013】
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ(ペルオキシルベンゾエート)が挙げられるがこれに限定されるものではない。
その他の加硫剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リサージ、フェノール樹脂などの樹脂、p-キノンジオキシム、p-ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ-p-ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリンが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0014】
加硫剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、さらに好ましくは2.5質量部以下である。
【0015】
<チアゾール系化合物>
本実施形態でのチアゾール系化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの塩(例えば、亜鉛塩などの金属塩)、及び2-メルカプトベンゾチアゾールの二量体(2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィド)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィドは好ましい。
【0016】
防蟻材中のチアゾール系化合物の含有量は、0.30質量%以上、0.50質量%以下が好ましく、より好ましくは0.40質量%以上、0.50質量%以下である。なお、チアゾール系化合物の含有量が0.30質量%以上の防蟻材は、次に説明するチウラム系化合物と協働してシロアリの食害を効果的に防止する。また、チアゾール系化合物の含有量は0.50質量%を超えてもそれに見合うシロアリの食害防止効果の向上が認められない。
【0017】
<チウラム系化合物>
本実施形態でのチウラム系化合物としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
(但し、式(1)中、Xは、1から4の整数であり、R1及びR2は、互いに独立に炭素数1から4のアルキル基であり、R1、R2及び窒素原子は、一緒になってピペリジノ基を構成していてもよい)
【0020】
1及びR2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。
チウラム系化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラn-ブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。中でも、テトラメチルチウラムモノスルフィドは好ましい。
【0021】
防蟻材中のチウラム系化合物の含有量は、0.25質量%以上、0.50質量%以下が好ましく、より好ましくは0.30質量%以上、0.50質量%以下である。なお、チウラム系化合物の含有量が0.25質量%以上の防蟻材は、前記のチアゾール系化合物と協働してシロアリの食害を効果的に防止する。また、チウラム系化合物の含有量は0.50質量%を超えてもそれに見合うシロアリの食害防止効果の向上が認められない。
【0022】
<その他>
本実施形態の防蟻材は、前記の基材ゴム、加硫剤、チアゾール系化合物、及びチウラム系化合物の他に、必要に応じてさらに補強材、充填材、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、粘着剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤を含むことができる。
【0023】
≪防蟻材の製造方法≫
本実施形態の防蟻材の製造方法は、前記の防蟻材の原料の所定量を配合して混練する混練工程と、この混練工程で得られた組成物を加硫成形する加硫成形工程と、を有している。
【0024】
混練工程では、前記の基材ゴムと、加硫剤と、チアゾール系化合物と、チウラム系化合物と、必要に応じて前記の添加剤とが混練される。
この混練には、例えば、オープンロール混練機、バンバリミキサ、インターナルミキサ、加圧ニーダ、オープンニーダなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
加硫成形工程では、混練工程で得られた組成物が所定温度で加熱され、所定の成形機で成形される。
組成物の加熱温度(加硫温度)としては、使用する基材ゴムによって適宜に調節することができる。具体的には、例えば120~200℃程度に設定することができるが、これに限定されるものではない。また、加硫時間としては、例えば30~240分程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
成形機としては、特に制限はなく、例えば、直圧式プレス成形機、トランスファプレス成形機、真空プレス成形機、射出成形機、連続押し出し成形機などが挙げられる。
【0026】
防蟻材の形状としては、特に制限はないが、例えば、Oリング形状、シート、断面形状が円形、楕円形、半円形、若しくは多角形の柱状体、管状体などが挙げられる。また、所定の立体構造が組み合わせられた複合構造体であってもよい。
このような防蟻材は、例えば、シール材、基礎材、断熱材などに使用することができるが、防蟻材の用途に制限はない。
【0027】
≪作用効果≫
以上のような本実施形態の防蟻材及びその製造方法によれば、比較的安価な材料を使用して従来よりも簡素化された方法で製造することができる。
また、本実施形態の防蟻材は、前記チアゾール系化合物として、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの塩、及び2-メルカプトベンゾチアゾールの二量体から選ばれる少なくとも1種を使用することで、より効果的にシロアリの食害を防止することができる。
また、本実施形態の防蟻材は、前記チウラム系化合物としては、前記式(1)で示されるものを使用することで、より効果的にシロアリの食害を防止することができる。
また、本実施形態の防蟻材においては、前記チアゾール系化合物の含有量を、0.30質量%以上、0.50質量%以下とし、前記チウラム系化合物の含有量を、0.25質量%以上、0.50質量%以下とすることによって、より一層効果的にシロアリの食害を防止することができる。
また、本実施形態の防蟻材は、基材ゴムとして、エチレンプロピレンジエンゴムを使用することで、耐候性が一段と向上する。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
前記実施形態の防蟻材は、前記の基材ゴム、加硫剤、チアゾール系化合物、チウラム系化合物などを所定量で含む単一組成物からなるものを想定している。しかしながら、本発明の防蟻材は、これに限定されずに、例えば複数層からなり、これらの層のうちの少なくとも1層が他の層と異なる組成を有する構成とすることができる。また、防蟻材が前記の複合構造体である場合に、構成部材ごとに防蟻材の組成を変えることもできる。
【実施例
【0029】
以下では、本発明の作用効果を検証した実施例について説明する。
(実施例)
本実施例では、図1に示すように、チアゾール系化合物としての2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィド(以下、DMと略することがある)と、チウラム系化合物としてのテトラメチルチウラムモノスルフィド(以下、TSと略することがある)との含有量を変えた防蟻材を作製した。
【0030】
図1は、チアゾール系化合物DMと、チウラム系化合物TSの含有量を変えて製造した防蟻材のシロアリ食害率を示すマップである。なお、マップの縦軸は、防蟻材中のチアゾール系化合物DMの含有量[質量%]であり、マップの横軸は、防蟻材中のチウラム系化合物TSの含有量[質量%]である。また、マップ中に示す0.0から1.0の数字は、下記式(2)で示されるシロアリ食害率の値である。
シロアリ食害率=食害試料数M1/試験試料数M2 ・・・式(2)
【0031】
本実例の防蟻材の基材ゴムとしては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を使用した。加硫剤としては、基材ゴム100質量部に対して5質量部の酸化亜鉛を使用した。また、防蟻材には、基材ゴム100質量部に対して、110質量部のカーボンブラックと、90質量部の炭酸カルシウムと、75質量部のパラフィン系オイルと、1質量部のステアリン酸と、を配合した。
そして、これらの配合物に、図1に示す含有量となるように、チアゾール系化合物DMと、チウラム系化合物TSとを配合することで71種類の防蟻材をそれぞれ5つずつ作製した。
【0032】
[防蟻材の製造]
防蟻材の製造方法としては、まずエチレンプロピレンジエンゴム、カーボンブラック、炭酸カルシウム、パラフィン系オイル、及びステアリン酸の前記所定量を、加圧ニーダにて混練した。得られたカーボンマスタバッチに対して、ゴム用6インチ(152mm)ロールにて所定量の酸化亜鉛と、チアゾール系化合物DMと、チウラム系化合物TSとを混合した。
【0033】
次に、得られた混合物を厚さ5mmのシートに成形し、これを幅150mm、長さ150mmに予備裁断した。この裁断シートを160℃の金型に仕込むとともに、150tプレス装置にて裁断シートに加硫成形を行った。
この加硫成形を行った裁断シートを50mm四方の正方形に切り出して防蟻材の試料を作製した。
【0034】
[防蟻材のシロアリ食害率評価試験]
作製した防蟻材の試料について、JWPA(社団法人日本木材保存協会)規格JWPAS-TS-Sに準拠した次の食害率評価試験を行った。
図2は、食害率評価試験に使用した試験装置10の概略図である。
【0035】
図2に示すように、この食害率評価試験では、試験装置10のH管11の中央管12を遮るように、防蟻材の試料13を配置した。そして、H管11の一方の縦管14内に、イエシロアリ15の職蟻200頭と、兵蟻20頭とを投入した。また、H管11の他方の縦管14内には、餌木16(アカマツ3g)を配置した。
【0036】
この試験装置10を、28℃±2℃の恒温暗室内に21日間静置した後、イエシロアリ15による試料13の穿孔の有無と、食害量とを計測した。試験試料数M2(式(2)参照)は、作製した種類ごとの試料13の数に等しい「5」とした。
【0037】
試料13における食害部の計測は、デジタルマイクロスコープ(KH-7700,HIROX社製)を使用した。デジタルマイクロスコープによる計測は、試料13における食害部を目視にて特定した上で測定範囲を設定し、倍率50~200にて測定を行った。この計測は、試料13の基準面からの食害による凹みの深さが測定可能な食害部を対象とした。
試料13の食害量(体積)の計測では、まず食害凹部の最深部位置と食害周辺の非食害部との位置を焦点設定してその高低差を測定した。次いで、測定した高低差を10分割した各焦点ごとの撮影データを三次元合成することで、食害量(体積)を算出した。
【0038】
[防蟻材の食害評価]
図1に示す71種類の各5つの試料13(図2参照)のそれぞれについて、試料13の穿孔の有無と食害量とに基づいて、明らかにイエシロアリ15(図2参照)の食害があったものを食害試料数M1(式(2)参照)として計数した。そして、この判定結果に基づいて前記式(2)によりシロアリ食害率を算出した。その結果を図1に示す。
【0039】
図1から明らかなように、本実施例の防蟻材においては、チアゾール系化合物DMの含有量を、0.30質量%以上、0.50質量%以下とし、チウラム系化合物TSの含有量を、0.25質量%以上、0.50質量%以下とすることによって、また、より好ましくは、チアゾール系化合物DMの含有量を、0.40質量%以上、0.50質量%以下とし、チウラム系化合物TSの含有量を、0.30質量%以上、0.50質量%以下とすることによって、より一層効果的にイエシロアリ15の食害を防止できることが確認された。
また、マップにおいて、シロアリ食害率0.2以上の桝目に隣接するシロアリ食害率0.0の桝目を除いた、図1の網掛け領域を構成するチアゾール系化合物DM及びチウラム系化合物TSの含有量範囲(濃度範囲)の防蟻材が、より好ましいことが確認された。
【0040】
(参考例)
前記のチアゾール系化合物DM及びチウラム系化合物TSは、ゴム組成物の加硫促進剤としても使用されるところ、他の加硫促進剤との比較試験を行った。この比較試験では、チアゾール系化合物DM及びチウラム系化合物TSと、グアニジン系加硫促進剤としてのN,N´-ジフェニルグアニジン(以下、グアニジン系化合物Dと称する)及びジチオカルバメート系加硫促進剤としてのジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(以下、ジチオカルバメート系化合物BZと称する)とのシロアリ食害防止効果を対比した。
【0041】
この比較試験では、チアゾール系化合物DMを0.3質量%で含む濾紙(参考例1)と、チウラム系化合物TSを0.3質量%で含む濾紙(参考例2)と、グアニジン系化合物Dを0.3質量%で含む濾紙(比較例1)と、ジチオカルバメート系化合物BZを0.3質量%で含む濾紙(比較例2)と、コントロールとしての、何も含まない濾紙(比較例3)と、を各種3枚ずつ用意した。
【0042】
用意した濾紙のそれぞれをシャーレ内に配置するとともにイエシロアリの職蟻33頭と、兵蟻3頭とを投入した。これらのシャーレを28℃±2℃の恒温暗室内に14日間静置した。そして、日ごとのイエシロアリの餓死頭数を計数するとともに、イエシロアリの投入数(33頭)に対する14日経過後の死虫数の百分率を死虫率として算出した。
【0043】
その結果、比較例3で示すコントロールでの死虫率は2%であった。
また、グアニジン系化合物D(比較例1)の死虫率は8%であり、ジチオカルバメート系化合物BZ(比較例2)の死虫率は10%であった。
これに対して、チアゾール系化合物DM(参考例1)の死虫率は78%であり、チウラム系化合物TS(参考例2)の死虫率は68%であった。
【0044】
以上の比較試験により、ゴム組成物の加硫促進剤の中でもチアゾール系化合物DMと、チウラム系化合物TSとが、選択的にシロアリ食害防止効果に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
10 試験装置
11 H管
12 中央管
13 試料
14 縦管
15 イエシロアリ
16 餌木
図1
図2