IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 関西大学の特許一覧 ▶ 東北マイクロテック株式会社の特許一覧 ▶ メルテックス株式会社の特許一覧

特許7236111シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液
<>
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図1
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図2
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図3
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図4
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図5
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図6
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図7
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図8
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図9
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図10
  • 特許-シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20230302BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/308 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020522264
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021370
(87)【国際公開番号】W WO2019230833
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018105387
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】313003358
【氏名又は名称】東北マイクロテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593174641
【氏名又は名称】メルテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】清水 智弘
(72)【発明者】
【氏名】新宮原 正三
(72)【発明者】
【氏名】元吉 真
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】渡口 繁
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058647(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038075(WO,A1)
【文献】特開平06-041770(JP,A)
【文献】特開2018-022926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン半導体基板の表面に、貴金属層を含む触媒層を形成する工程と、
前記触媒層が表面に形成されたシリコン半導体基板を、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液に浸漬させる工程と、
を含むシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項2】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤である請求項1に記載のシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項3】
前記エッチング液は、前記界面活性剤を0.01ppm以上含む請求項1または2に記載のシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチング液の温度は、0℃以上、80℃以下である請求項1~3のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項5】
前記触媒層は、厚さ方向に貫通した孔を1個以上有する単位触媒層が1つまたは複数が互いに接することなく、シリコン半導体基板の表面に配置されたものである請求項1~4のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項6】
前記単位触媒層は、円相当直径が1ミクロン以上、10000ミクロン以下である請求項に記載のシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項7】
前記単位触媒層の厚さ方向に貫通した孔は、円相当直径が5nm以上、10000nm以下である請求項5または6に記載のシリコン半導体基板のエッチング方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のエッチング方法によりシリコン半導体基板をエッチングする工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法に用いるエッチング液であって、
フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液。
【請求項10】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤である請求項9に記載のエッチング液。
【請求項11】
前記界面活性剤を0.01ppm以上含む請求項9または10に記載のエッチング液。
【請求項12】
前記界面活性剤の分子量は、100以上、20000以下である請求項9~11のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項13】
前記酸化剤は、過酸化水素、硝酸、AgNO3、KAuCl4、HAuCl4、K2PtCl6、H2PtCl6、Fe(NO33、Ni(NO32、Mg(NO32、Na228、K228、KMnO4、及びK2Cr27よりなる群から選択される1以上である請求項9~12のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項14】
前記フッ化水素酸の濃度は、0.1mol/L以上、20mol/L以下である請求項9~13のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項15】
前記酸化剤の濃度は、0.1mol/L以上、10mol/L以下である請求項9~14のいずれかに記載のエッチング液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法およびエッチング液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、電極形成を目的に、例えばシリコン半導体基板に対し、深掘りエッチングを行って微細なビアホールを形成することが行われる。以下では、エッチングにより形成されたビアホール等の孔を「エッチング孔」ということがある。深堀りエッチングの方法として、深反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)が挙げられる。深反応性イオンエッチングは、シリコン半導体基板の表面に対して垂直に円筒状孔を形成できる技術であるが、エッチングを真空下で行う必要があり、反応性ガスを用いる必要もあることから高コストを招く。また、エッチング工程と、エッチング箇所の保護工程とを繰り返し行うことが必要であるため、生産性が低い、すなわち低スループットであるとの問題がある。更に、エッチングして得られた円筒状孔の側壁がスキャロップ状になるといった問題もある。
【0003】
上記深堀りエッチングの他の方法として、近年、メタルアシストエッチング法が開発されている。メタルアシストエッチング法は、シリコン半導体基板の表面に、所望のエッチング形状の触媒パターンを形成したのち、この触媒パターンの形成されたシリコン半導体基板を、フッ化水素酸(HF)と酸化剤を含むエッチング液に浸漬させる方法である。エッチング液に浸漬させたときに、シリコン半導体基板のうち触媒パターンと接している部分が優先的にエッチングされ、触媒はエッチングの進行とともに下方へ移動する。その結果、シリコン半導体基板の深さ方向にビアホール等を形成することができる。
【0004】
上記メタルアシストエッチング法として、例えば特許文献1には、半導体からなる構造物上に、貴金属からなる触媒層を形成することと、前記構造物を、フッ化水素酸と酸化剤と有機添加剤とを含んだエッチング液中に浸漬させて、前記構造物のうち前記触媒層と接している部分を除去することとを含んだエッチング方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-58647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記メタルアシストエッチング法で、シリコン半導体基板に対して高アスペクト比の貫通または非貫通の微細孔を製造する場合に、シリコン半導体基板の表面に対して垂直にエッチングされず、エッチング孔の中心軸が、垂直方向から逸れる場合があった。特に、複数のエッチング孔を同時に形成する場合、幾つかの孔で上記不具合が生じることがあった。
【0007】
ところで、メタルアシストエッチング法には、半導体装置の製造方法に採用するにあたり、エッチングレートが高く、高い生産性(高スループット)に寄与することも求められる。本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリコン半導体基板の表面に対して垂直に、高アスペクト比の微細孔を、生産性よく形成することのできるエッチング方法と、該エッチング方法で使用するエッチング液と、前記エッチング方法を含む半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、シリコン半導体基板の表面に、貴金属層を含む触媒層を形成する工程と、前記触媒層が表面に形成されたシリコン半導体基板を、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液に浸漬させる工程と、を含むシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0009】
本発明の態様2は、前記界面活性剤が、イオン性界面活性剤である態様1に記載のシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0010】
本発明の態様3は、前記エッチング液が、前記界面活性剤を0.01ppm以上含む態様1または態様2に記載のシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0011】
本発明の態様4は、前記エッチング液の温度が、0℃以上、80℃以下である態様1~3のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0012】
本発明の態様5は、前記触媒層が、厚さ方向に貫通した孔を1個以上有する単位触媒層が1つまたは複数が互いに接することなく、シリコン半導体基板の表面に配置されたものである態様1~4のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0013】
本発明の態様6は、前記単位触媒層が、円相当直径1ミクロン以上、10000ミクロン以下である態様1~5のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0014】
本発明の態様7は、前記単位触媒層の厚さ方向に貫通した孔が、円相当直径5nm以上、10000nm以下である態様1~6のいずれかに記載のシリコン半導体基板のエッチング方法である。
【0015】
本発明の態様8は、態様1~7のいずれかに記載のエッチング方法によりシリコン半導体基板をエッチングする工程を含む半導体装置の製造方法である。
【0016】
本発明の態様9は、シリコン半導体基板のエッチングに用いるエッチング液であって、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液である。
【0017】
本発明の態様10は、前記界面活性剤が、イオン性界面活性剤である態様9に記載のエッチング液である。
【0018】
本発明の態様11は、前記界面活性剤を0.01ppm以上含む態様9または10に記載のエッチング液である。
【0019】
本発明の態様12は、前記界面活性剤の分子量が、100以上、20000以下である態様9~11のいずれかに記載のエッチング液である。
【0020】
本発明の態様13は、前記酸化剤が、過酸化水素、硝酸、AgNO3、KAuCl4、HAuCl4、K2PtCl6、H2PtCl6、Fe(NO33、Ni(NO32、Mg(NO32、Na228、K228、KMnO4、及びK2Cr27よりなる群から選択される1以上である態様9~12のいずれかに記載のエッチング液である。
【0021】
本発明の態様14は、前記フッ化水素酸の濃度が、0.1mol/L以上、20mol/L以下である態様9~13のいずれかに記載のエッチング液である。
【0022】
本発明の態様15は、前記酸化剤の濃度が、0.1mol/L以上、10mol/L以下である態様9~14のいずれかに記載のエッチング液である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシリコン半導体基板のエッチング方法によれば、シリコン半導体基板の平面に対して垂直に、高アスペクト比の微細孔を、生産性よく形成することができる。また、本発明のシリコン半導体基板のエッチング方法を、例えばLSI等の半導体装置の製造工程で採用した場合に、特性の優れた半導体装置を、高いスループットで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のシリコン半導体基板のエッチング方法の模式図である。
図2図2は、比較例1の電子顕微鏡写真であり、Aはエッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真、Bは、前記Aにおける破線部分の拡大写真、Cは、複数のエッチング孔が形成されたシリコン半導体基板表面の電子顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例1-1におけるエッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真である。
図4図4は、比較例2のエッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真である。
図5図5は、実施例1-2におけるエッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真である。
図6図6は、実施例1-3の電子顕微鏡写真であり、Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真、Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真、Cは、複数のエッチング孔の断面が示された電子顕微鏡写真である。
図7図7は、実施例2-1の電子顕微鏡写真であり、Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真、Bは、複数のエッチング孔の断面が示された電子顕微鏡写真である。
図8図8は、実施例2-2におけるエッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真である。
図9図9は、実施例2-3の電子顕微鏡写真であり、Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真、Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真、Cは、複数のエッチング孔が形成されたシリコン半導体基板表面の電子顕微鏡写真である。
図10図10は、実施例2-4の電子顕微鏡写真であり、Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真、Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真である。
図11図11は、実施例3の電子顕微鏡写真であり、Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真であり、Cは、複数のエッチング孔が形成されたシリコン半導体基板表面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、メタルアシストエッチング法を用い、シリコン半導体基板の平面に対して垂直であって(以下、この特性を「垂直性が高い」ということがある)、高アスペクト比の微細孔を、エッチングレートを低下させることなく生産性良く形成すべく鋭意検討した。その結果、シリコン半導体基板のエッチング方法が、
シリコン半導体基板の表面に、貴金属層を含む触媒層を形成する工程と;
前記触媒層が表面に形成されたシリコン半導体基板を、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液に浸漬させる工程と;
を含むようにすればよいことを見いだした。
【0026】
本発明のシリコン半導体基板のエッチング方法は、特に、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液を用いるところに特徴を有する。以下、このシリコン半導体基板のエッチングに用いるエッチング液、シリコン半導体基板のエッチング方法、半導体装置の製造方法について説明する。
【0027】
本発明のエッチング液は、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含む。特に界面活性剤を、エッチング液全量に対して質量比で、0ppm超、5ppm以下の範囲内で含む点に特徴を有する。
【0028】
前記微量の界面活性剤をエッチング液に添加することで、高アスペクト比であって垂直性の高い微細孔を形成することができる。一方、本発明者らは、メタルアシストエッチング法における界面活性剤の効果について検討したところ、界面活性剤にはエッチングの抑制効果があり、多く含まれると、エッチングが抑制されてエッチングレートが低下することを見いだした。更に、後記する実施例に示す通り、界面活性剤の濃度を変えて、該濃度がエッチングレートに及ぼす影響について検討したところ、界面活性剤の濃度が5ppmを超えて例えば10ppmの場合、エッチングレートが急激に低下する場合があることを見いだした。
【0029】
前記界面活性剤の濃度は、5ppmを超えなければよいが、上記垂直性の高い微細孔を形成するという効果をより確実に発揮させる観点から、0.01ppm以上とすることが好ましい。前記界面活性剤の濃度は、より好ましくは0.10ppm以上、さらに好ましくは0.50ppm以上である。
【0030】
前記界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤として、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤は、これらの混合物であってもよい。
【0031】
前記陰イオン系界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の硫酸エステル型の界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム 、ペルフルオロブタンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等のスルホン酸型の界面活性剤;オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等の脂肪酸塩型の界面活性剤;ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のリン酸エステル型の界面活性剤;が挙げられる。
【0032】
前記陽イオン系界面活性剤として、塩化ベンザルコニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム等の第4級アンモニウム塩型の界面活性剤;モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩型の界面活性剤;塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウムを含むピリジン型の界面活性剤;が挙げられる。
【0033】
前記両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型の界面活性剤;コカミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドベタイン型の界面活性剤;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾール型;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル-β-アラニン等のアミノ酸型の界面活性剤;ラウリルジメチルアミンN-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシド等のアルキルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型の界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
前記非イオン性界面活性剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型の界面活性剤;ステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル等のエステル型の界面活性剤;ステアリン酸ポリエチレングリコール等の脂肪酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等のエステルエーテル型の界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド型の界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
前記界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。より好ましくはイオン性界面活性剤であり、その中でも、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムのうちの1以上が更に好ましい。
【0036】
前記界面活性剤の分子量は、100以上、20000以下の範囲内であることが好ましい。前記界面活性剤の分子量は、より好ましくは200以上、10000以下である。前記界面活性剤が高分子化合物である場合、その分子量は重量平均分子量である。
【0037】
前記フッ化水素酸の濃度は、0.1mol/L以上、20mol/L以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1mol/L以上、10mol/L以下の範囲内、更に好ましくは0.5mol/L以上、5mol/L以下の範囲内、より更に好ましくは1.0mol/L以上、3mol/L以下の範囲内である。フッ化水素酸の濃度が低い場合、高いエッチングレートを達成することが難しい。フッ化水素酸の濃度が高い場合、触媒層の剥離が生じる可能性がある。
【0038】
酸化剤は、過酸化水素、硝酸、AgNO3、KAuCl4、HAuCl4、K2PtCl6、H2PtCl6、Fe(NO33、Ni(NO32、Mg(NO32、Na228、K228、KMnO4、及びK2Cr27よりなる群から選択される1以上であることが好ましい。その中でも、過酸化水素が好ましい。
【0039】
前記酸化剤の濃度は、0.1mol/L以上、10mol/L以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5mol/L以上、10mol/L以下、更に好ましくは1.0mol/L以上、5mol/L以下、より更に好ましくは1.0mol/L以上、3mol/L以下の範囲内である。
【0040】
本発明のエッチング液は、前記フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含んでいればよく、その他の添加物については特に問わない。溶媒として、水、アルコール、アセトン、トルエン、クロロホルム、ヘキサンが挙げられる。なお前述の通り、本発明のエッチング液は5ppmを超える界面活性剤を含むものではない。前記添加物として、例えば浴のpH変動を少なくするため、pH緩衝剤が含まれていてもよい。前記pH緩衝剤として、りん酸、ほう酸、酢酸、酒石酸、クエン酸と、これらのアルカリ金属塩のうちの1種以上を用いることができる。
【0041】
本発明のエッチング液の態様として例えば、添加物が、前記フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤からなる水溶液、または前記フッ化水素酸、酸化剤、0ppm超、5ppm以下の界面活性剤、および前記pH緩衝剤からなる水溶液が挙げられる。
【0042】
本発明のシリコン半導体基板のエッチング方法は、
シリコン半導体基板の表面に、貴金属からなる触媒層を形成する工程と;
前記触媒層が表面に形成された半導体基板を、フッ化水素酸、酸化剤、および0ppm超、5ppm以下の界面活性剤を含むエッチング液に浸漬させる工程と;を含む。
【0043】
上記エッチング液を用いた、本発明のシリコン半導体基板のエッチング方法について、以下、模式図である図1のA~Fを用いて説明する。しかし、本発明はこれらの図面に示された実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更することができる。
【0044】
下記図1のA~Fでは説明の便宜上、触媒層として、厚さ方向に貫通した孔を複数有する単位触媒層1つを、シリコン半導体基板の表面に形成する実施形態を示している。また、図1のA~Fでは、容易に理解できる様に、円形状の単位触媒層の直径を含む断面を示している。
【0045】
まず、シリコン半導体基板1を用意し(図1A)、シリコン半導体基板1の表面にレジスト2を塗布し(図1B)、フォトリソグラフィを行って、触媒層形成予定部分以外にレジスト2が残るようにする(図1C)。図1Cでは、厚さ方向に貫通した孔を複数有する単位触媒層を形成するための、貫通孔形成用レジスト2Aが設けられている。
【0046】
次いで図1Dの通り、触媒層形成用の貴金属を、例えばスパッタリング法により堆積させて貴金属層3を形成する。前記貴金属の堆積方法はこれに限定されず、例えば電解めっき、無電解めっきといっためっき法の他、蒸着法を用いることができる。その後、図1Eの通り、レジストを除去(リフトオフ)して、触媒層4を形成する。前記レジストの種類やフォトリソグラフィの方法、レジストの除去方法等は特に限定されず、通常行われている条件を採用することができる。
【0047】
本発明において、前記貴金属とは、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)よりなる群から選択される1種以上の純金属または合金をいう。
【0048】
本発明では、触媒層が貴金属層を含んでいればよい。前記図1Dでは、貴金属層のみを形成しているが、これに限らず、触媒層として、該貴金属層3と他の金属層との積層でもよい。他の金属層を構成する金属として、Ti、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Sn、Sb、Inよりなる群から選択される1種以上の純金属または合金が挙げられる。
【0049】
触媒層4の厚さは、例えば3nm以上、500nm以下、更には10nm以上、200nm以下とすることができる。前記触媒層4が貴金属層と他の金属層との積層の場合、上記厚さは合計厚さをいう。
【0050】
本発明における触媒層は、厚さ方向に貫通した孔を1個以上有する単位触媒層が、1つまたは複数が互いに接することなく、シリコン半導体基板の表面に配置されたものであることが好ましい。前記厚さ方向に貫通した孔は、エッチング液に浸漬時、エッチング液を浸透させるための孔である。以下、「エッチング液浸透用孔」という。
【0051】
前記単位触媒層の形状は特に問わず、円形状、多角形状、矩形状等が挙げられる。好ましくは円形状膜である。単位触媒層の円相当直径は、1ミクロン以上、10000ミクロン以下であることが好ましい。前記単位触媒層の円相当直径とは、前記形状の単位触媒層と同じ面積を有する円の直径をいう。
【0052】
複数の単位触媒層が互いに接することなく、シリコン半導体基板の表面に配置されたものである場合、単位触媒層間ピッチは、例えば0.25ミクロン以上、1000ミクロン以下の範囲であることが好ましい。
【0053】
前記単位触媒層に設けられるエッチング液浸透用孔の形状は特に問わず、円形状、多角形状、矩形状等が挙げられる。好ましくは円形状孔である。前記エッチング液浸透用孔の円相当直径は、5nm以上、10000nm以下であることが好ましい。前記エッチング液浸透用孔の円相当直径とは、前記形状のエッチング液浸透用孔と同じ面積を有する円の直径をいう。
【0054】
前記単位触媒層に設けられるエッチング液浸透用孔の個数の密度は、該孔のサイズにもよるが1平方マイクロメートルあたり、例えば0.1以上、10000以下とすることができる。
【0055】
前記単位触媒層にエッチング液浸透用孔が複数設けられる場合、これらは、図1Eに示す通り互いに接することなく配置されることが好ましい。この場合、エッチング液浸透用孔間ピッチは、例えば10nm以上、10000nm以下の範囲とすることが好ましい。
【0056】
前記図1Eに示す触媒層4が表面に形成されたシリコン半導体基板1を、上述した本発明のエッチング液に浸漬させることによって、該エッチング液がエッチング液浸透用孔5から浸透し、シリコン半導体基板1と触媒層4との間に入り込む。これにより、図1Fに示す通り、シリコン半導体基板1のうち触媒層4と接している部分が優先的にエッチングされて、触媒層4がエッチングの進行とともに下方へ移動し、シリコン半導体基板1の深さ方向にエッチングすることができる。前記浸透の促進を目的に、超音波揺動を併せて行ってもよい。尚、エッチング液浸透用孔5は微小であるため、該孔直下のシリコン半導体基板1もエッチングされ、前記図1Fに例示する通り円筒状のエッチング孔6を形成できる。
【0057】
前記エッチング液の温度は、0℃以上とすることが好ましく、より好ましくは20℃以上である。また、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは60℃以下である。
【0058】
エッチング液への浸漬時間は、所望とするエッチング孔の形状にもよるが、例えば1時間以上、100時間以下の範囲内とすることができる。
【0059】
各工程における上記以外の条件、上記以外の工程は特に限定されない。前記エッチング液への浸漬後は、例えば洗浄等の工程を設けることができる。エッチング後の触媒層の除去方法として、例えば、ヨウ素や硝酸系の溶液で溶解してから、純水などで洗浄する方法が挙げられる。
【0060】
本発明の方法によれば、シリコン半導体基板の平面に対して垂直であって、微細かつ高アスペクト比のエッチング孔を有するシリコン半導体基板を得ることができる。前記エッチング孔は、シリコン半導体基板の板厚方向に貫通するものであってもよいし、貫通しないものであってもよい。前記エッチング孔として、
・円相当直径が、0.1ミクロン以上、10000ミクロン以下、更には1ミクロン以上、1000ミクロン以下、かつ、
・深さが、1ミクロン以上、1000ミクロン以下、特には深さが10ミクロン以上、500ミクロン以下、かつ、
・アスペクト比が、0.1以上、更には100以上、更には500以上
の形状のものを実現することができる。
【0061】
本発明には、前記エッチング方法によりシリコン半導体基板をエッチングする工程を含む半導体装置の製造方法も含まれる。前記エッチングの工程の後、エッチング孔に電極材料を埋め込む方法等は公知の方法を採用することができる。前記エッチング孔がシリコン半導体基板の板厚方向に貫通する貫通孔である場合、該貫通孔に電極材料を埋め込んでSi貫通電極(TSV:through silicon via)を形成し、例えば三次元LSIを製造することが挙げられる。
【実施例
【0062】
前記図1のA~Eに示す工程の通り、まずエッチング液浸漬用試料を作製した。詳細には、サイズ:5cm角のシリコン半導体基板の表面に、次の触媒層を形成した。前記触媒層は、Au(金)を厚さ10nmと更にTiを10nm積層させたものである。本実施例では、触媒層として、厚さ方向に貫通した孔(エッチング液浸透用孔)を複数有する単位触媒層を複数かつ互いに接することなく、前記シリコン半導体基板の表面に形成した。前記単位触媒層と、該単位触媒層に設けられたエッチング液浸透用孔のサイズ等は下記の通りである。
単位触媒層のサイズ:直径約10000nmの円形状
単位触媒層間ピッチ:100~200ミクロン
エッチング液浸透用孔のサイズ:直径約2000nm以下の円形状
エッチング液浸透用孔間ピッチ:約500nm
【0063】
上記エッチング液浸漬用試料を用い、下記例にそれぞれ示すエッチング液に各時間浸漬させて、エッチング孔の形成を行った。エッチング液の温度はいずれも40℃とした。
【0064】
エッチング後に洗浄してから、エッチング孔の断面を観察できるように加工し、該断面をSEMで撮影した。そして上記写真において、エッチング孔の垂直性を評価すると共に、エッチング深さからエッチングレートを評価した。一部の例では、エッチング孔の底面に触媒層(単位触媒層)を残した状態で撮影した写真、複数のエッチング孔を観察した写真も併せて示す。
【0065】
(比較例1)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと過酸化水素1.7mol/Lとを含み、界面活性剤を含まない水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果を図2A図2Cに示す。図2Aはエッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、図2Bは、図2Aにおける破線部分の拡大写真である。また、図2Cは、複数のエッチング孔が形成されたシリコン半導体基板表面の電子顕微鏡写真である。図2A図2Cに示す通り、本発明で規定する界面活性剤を含まない場合には、エッチング孔がシリコン半導体基板表面に対して垂直方向から逸れ、垂直性の低い形状となった。また、図2Bに示す通り、エッチング後の単位触媒層は平面が維持されず収縮した形状となった。
【0066】
(実施例1-1)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、ラウリル硫酸ナトリウム1ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを30分間行った。その結果として図3に、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0067】
(比較例2)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、ラウリル硫酸ナトリウム10ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを30分間行った。その結果として図4に、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0068】
実施例1-1と比較例2は、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムの濃度が異なっている。これらの結果の対比から、界面活性剤の濃度が10ppmの場合(比較例2)には、エッチングレートが著しく遅く、高いスループットを実現することができないことがわかる。
【0069】
(実施例1-2)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、ラウリル硫酸ナトリウム0.1ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果として図5に、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0070】
(実施例1-3)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、ラウリル硫酸ナトリウム1.0ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果を図6A図6Cに示す。図6Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、図6Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真であり、図6Cは、複数のエッチング孔の断面が示された電子顕微鏡写真である。
【0071】
(実施例2-1)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、塩化ベンザルコニウム0.1ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果を図7Aおよび図7Bに示す。図7Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、図7Bは、複数のエッチング孔の断面が示された電子顕微鏡写真である。
【0072】
(実施例2-2)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、塩化ベンザルコニウム1.0ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを30分間行った。その結果として図8に、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0073】
(実施例2-3)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、塩化ベンザルコニウム1.0ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果を図9A図9Cに示す。図9Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、図9Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真であり、図9Cは、複数のエッチング孔が形成されたシリコン半導体基板表面の電子顕微鏡写真である。
【0074】
(実施例2-4)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、塩化ベンザルコニウム2.0ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果を図10A図10Bに示す。図10Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、図10Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真である。
【0075】
(実施例3)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、ポリエチレングリコール1000(分子量1000)を5.0ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果を図11A図11Cに示す。図11Aは、エッチング孔の深さ方向の断面の電子顕微鏡写真であり、図11Bは、エッチング孔の底面に存在する触媒層(単位触媒層)の電子顕微鏡写真であり、図11Cは、複数のエッチング孔が形成されたシリコン半導体基板表面の電子顕微鏡写真である。
【0076】
(比較例3)
エッチング液として、フッ化水素酸(HF)1.0mol/Lと、過酸化水素1.7mol/Lと、ポリエチレングリコール1000(分子量1000)を10.0ppmとを含む水溶液を用いてエッチングを2時間行った。その結果、エッチング孔の形状は前記実施例3とほぼ同じであったが、エッチングレートが前記実施例3よりも1割程度遅くなった。
【0077】
実施例1-2~実施例3の結果に示される通り、界面活性剤の種類によらず、該界面活性剤の濃度を5ppm以下の範囲内で含むエッチング液を用いることによって、シリコン半導体基板の平面に対して垂直に、微細かつ高アスペクト比のエッチング孔を、生産性よく形成することができた。好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウムや塩化ベンザルコニウムの様なイオン性界面活性剤を用いることで、微細かつ高アスペクト比であって垂直性が高く、尚且つ、エッチング孔の深さ方向断面において上部と底部でエッチング孔の幅がほぼ等しく、下方に向かって生じ得る先細りの十分に抑えられた形状を実現することができた。
【0078】
本出願は、日本国特許出願である特願2018-105387号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願2018-105387号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 シリコン半導体基板
2 レジスト
2A 貫通孔形成用レジスト
3 貴金属
4 触媒層
5 エッチング液浸透用孔
6 エッチング孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11