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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】パジャマ
(51)【国際特許分類】
   A41D 10/00 20060101AFI20230302BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A41D10/00 H
A41D13/12 145
A41D13/12 154
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018195317
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020063530
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508345645
【氏名又は名称】株式会社シーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特許第5453655(JP,B2)
【文献】実開平03-011004(JP,U)
【文献】特開2018-089007(JP,A)
【文献】中国実用新案第202375088(CN,U)
【文献】特開2009-108450(JP,A)
【文献】特開2009-052169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D10/00
A41B9/00-17/00
A41D1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上衣と下衣から構成されるパジャマであって、
前記上衣は、肩部のみ連結された前身頃と後身頃から形成されている胴部と、一対の袖部とから構成され、
前記胴部と前記袖部の接続部では、前記胴部と前記袖部にそれぞれ袖部用面ファスナーが対向するように設置されており、
前記胴部の脇下に位置し、前記前身頃の縁端と隣接する前記後身頃の縁端には、これらの縁端に沿ってそれぞれ側部用面ファスナーが対向するように設置され、胴囲方向において、前記側部用面ファスナーのうち一方が他方よりも幅広であり、
前記袖部用面ファスナーと前記側部用面ファスナーは互いに分離されており、
一対の前記袖部が分離された状態でかつ前記側部用面ファスナーが接合されている状態の前記上衣は、半袖タイプであり、
前記上衣から分離された前記袖部を平面視した際の前記肩部側に配される端縁は、直線状をなし、
前記袖部には、この袖部を前記胴部へ取付ける際に前記袖部の接続位置を示す位置決め部が付されていることを特徴とするパジャマ。
【請求項2】
前記下衣は、表地と裏地とから構成されている略矩形のシート体であり、
このシート体の一辺は腰に巻き付けて固定される腰固定部となり、
この腰固定部に隣接する二辺の縁端において、これら縁端に沿って前記表地と前記裏地に下衣用面ファスナーが対向するように設置され、
前記胴囲方向において、前記下衣用面ファスナーのうち一方が他方よりも幅広となることを特徴とする請求項1に記載のパジャマ。
【請求項3】
前記裏地に、脚固定用ベルトが設置されていることを特徴とする請求項に記載のパジャマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に手足の不自由な者や、寝たきり状態の高齢者や病人を介護や補助する者にとって、脱ぎ着を容易に行うことができ、かつ就寝中や活動時に下衣の裾が捲り上がってしまうこと等のないパジャマに関する。
【背景技術】
【0002】
我々の生活において、衣服の脱ぎ着は毎日のように行われるものであるため、その作業を負担に感じることは殆どない。しかしながら、怪我等により手足が不自由になった場合、このような衣服の脱ぎ着は肉体的かつ精神的負担を伴う作業に一変する。さらに、自力で衣服の脱ぎ着が困難な寝たきり状態の高齢者や病人の場合、衣服の脱ぎ着は病人本人の負担に加えて、身の回りの世話をする介護者や補助者にとっても肉体的かつ精神的負担を伴うものとなる。なぜなら、介護者が病人の衣服を脱ぎ着させる場合、高齢者や病人に可能な限り痛みを感じさせないようにするため、彼らの体を支持しながら時間をかけて衣服を脱ぎ着させなければならないからである。このように、手足の不自由な者、寝たきり状態の高齢者や病人、更には彼らを介護や補助する者にとって、衣服の脱ぎ着は過酷なものとなる。
【0003】
手足の不自由な者、寝たきり状態の高齢者や病人、及び介護/補助する者にとって、衣服の脱ぎ着が容易となる技術があれば、彼らの肉体的かつ精神的な負担は大幅に軽減され、より良い生活を送ることができると考えられる。また、そのような技術があれば、これまで重労働のため厳しいと考えられてきた、高齢者や女性の介護分野への参加も可能となる。このことは、少子高齢化社会への移行に伴い予測されている、介護従事者不足への対策にも繋がると考えられる。
【0004】
このような背景から、手足が多少不自由な者でも自力で脱ぎ着でき、また女性や高齢の介護者であっても容易に脱ぎ着を補助できる、新しい衣服の開発が近年盛んに行われるようになっている。最近では、脱ぎ着の容易な衣服に関する技術が具体的にいくつか開示されている。
【0005】
例えば特許文献1では、「介護用パジャマ」という名称で、パジャマの上衣と下衣の発明が開示されている。ここでの上衣は、前後の各身頃の脇下側部にある縁端部と、袖を接続する部位に面ファスナーが設置され、これら面ファスナーの着脱により前後の身頃の脇下側部が開放可能となり、また袖も着脱可能としたものである。
一方、ズボン状の下衣は、前後の各身頃において股上から股下にかけて切断され、この切断線に沿って面ファスナーが取り付けられており、これら面ファスナーを剥がすことでズボンの左右は分離可能なものになっている。さらに、股下から裾にかけての内股側も切断されており、その切断線の縁端部には面ファスナーが設置され、これら面ファスナーを剥がすことにより切断部での分離も可能となっている。
このような上衣と下衣を有するパジャマであれば、面ファスナーの着脱によって体を通過させる開口部は広く開口させることができるようになる。したがって、このようなパジャマであれば、手足が不自由な者でも自力で脱ぎ着可能になると考えられる。また、このようなパジャマを寝たきり状態の病人等に着用させることができれば、補助する介護者/補助者は病人の体を僅かに動かす程度で衣服の着替えができるため、介護者等の肉体的・精神的負担を大幅に軽減することも可能となる。
【0006】
また、特許文献2では、「浮腫マッサージリハビリ用衣服」という名称で、リハビリ用衣服の上衣と下衣の発明が開示されている。この上衣では、前後の身頃が接続される縁端部と、袖の接続部に面ファスナーが設置されている。さらに前身頃においては、衿口から下方の裾を結ぶラインと両脇を結ぶラインが切断されており、その縁端に沿って面ファスナーが設置されている。
一方、下衣においても、前身頃と後身頃が接続される縁端、及び切断された前身頃と後身頃の股上から股下のラインに沿って面ファスナーが設置されている。このように、特許文献2で開示されている上衣と下衣は、複数のパーツから構成されており分解可能なものとなる。このような衣服を用いれば、体を通過させる開口部を広く開くこともできるため衣服の脱ぎ着は容易となり、手足の不自由な者、寝たきり状態の病人の介護者/補助者が衣服の脱ぎ着の際に受ける肉体的・精神的な負担も軽減されると考えられる。
【0007】
さらに、特許文献3では、「ワンタッチ腰巻」という名称で、介護を要する者、及び介護者に向けた腰巻に関する発明が開示されている。ここで、この腰巻は、布地の合わせ部分の上部に面ファスナーが設置されたものとなる。このような腰巻であれば、従来の腰巻のように脱ぎ着する際に固定用の紐を腰に巻き付けて結んだり解いたりする必要もなくなる。この結果、手足の不自由な者、寝たきり状態の病人を介護/補助する者が衣服を脱ぎ着する際に受ける肉体的・精神的な負担も軽減されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5453655号公報
【文献】登録実用新案第3145579号公報
【文献】特開平11-158701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示された衣服の発明は、何れも面ファスナーの着脱によって体を通過させる開口部をより広くすることで、脱ぎ着を容易にするものである。しかしながら、これらの衣服はサイズ調整について言及されておらず、構成上サイズ調整はできないと考えられる。そのため、標準体型の者に合わせて衣服が作られている場合、やせ型、肥満型の者にとって、そのような衣服は非常に着心地の悪いものとなる。したがって、特許文献1,2に開示される衣服は脱ぎ着が容易なものの、サイズ調整ができないため、着用する者によっては着心地が悪くなるという課題があった。
【0010】
さらに、特許文献2に開示されている上衣と下衣は面ファスナーにより接合された多くのパーツから構成され、所望の部位の面ファスナーを剥がすことで当該部位を広く開口させたり、治療の際は治療箇所のパーツのみを簡単に取り外して治療できるという利点を有する。しかしながら、例えば洗濯時に強力な力を受けて衣服が複数のパーツに分解した場合、元の形状に戻すのに多大な時間と労力が必要となり、さらにパーツの取付け位置を間違えてしまうと衣服の形状が歪み、着心地が非常に悪くなるという課題もあった。
【0011】
一方、特許文献3に開示されている腰巻は脱ぎ着が容易で着心地の良いものとなるが、小さな留め具が腰巻の上部に設置されているのみであり、就寝中に裾が捲り上がったり、多少の負荷がかかると留め具が外れて腰巻が脱げ落ちてしまうという課題があった。このような腰巻を重篤な症状の病人が着用した場合、就寝中に体が冷やされて体調が悪化してしまうことも懸念される。また、胴囲調整がゴムによるものであり、洗濯を繰り返すことでゴムが伸びた場合、胴囲の調整ができなくなるという課題もあった。
【0012】
本発明は特許文献1~3での課題を鑑みてなされたものであって、その目的は脱ぎ着が容易でサイズ調整も可能であり、就寝中や活動時に下衣が脱げ落ちたり、裾が捲り上がったりし難いパジャマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明であるパジャマの上衣は、肩部のみ連結された前身頃と後身頃から形成されている胴部と、一対の袖部とから構成され、
胴部と袖部の接続部では、胴部と袖部にそれぞれ袖部用面ファスナーが対向するように設置されており、胴部の脇下に位置し前身頃の縁端と隣接する後身頃の縁端には、これらの縁端に沿ってそれぞれ側部用面ファスナーが対向するように設置され、胴囲方向において側部用面ファスナーのうち一方が他方よりも幅広となることを特徴とする
【0014】
このような構成の上衣であれば、袖部用面ファスナーの着脱によって胴部に袖部を容易に着脱することができるという作用を有する。
また、側部用面ファスナーの着脱によって、前身頃と後身頃の肩部にある接続部を蝶番としたクラムシェルのように胴部を広く開口したり閉じたりすることができるという作用を有する。
さらに、対向する側部用面ファスナーのうち一方が他方よりも胴囲方向において幅広になることで、この方向において接着可能な領域が広くなるため、着用者の体形に応じて接着位置を調整できるという作用も有する。
【0015】
また、第2の発明は、第1の発明におけるパジャマの上衣の袖部において、この袖部を胴部へ取付ける際に袖部の接続位置を示す位置決め部が付されていることを特徴とする。このような袖部であれば、視覚的及び触覚的に袖部の向きを素早く把握できるという作用を有する。
【0016】
そして、第3の発明は、第1又は第2の発明におけるパジャマの下衣が、表地と裏地とから構成されている略矩形のシート体であり、このシート体の一辺は腰に巻き付けて固定される腰固定部となり、この腰固定部に隣接する二辺の縁端において、これら縁端に沿って表地と裏地に下衣用面ファスナーが対向するように設置され、胴囲方向において下衣用面ファスナーのうち一方が他方よりも幅広となることを特徴とする。
【0017】
このような下衣であれば、下衣用面ファスナーを接着することで、略矩形のシート体は容易に筒状体となり、この下衣用面ファスナーを剥がせば再び略矩形のシート体にすることができるという作用を有する。
また、対向する下衣用面ファスナーのうち一方が他方よりも胴囲方向において幅広となることで、この方向において接着可能な領域が広くなるため、接着位置を調整できるという作用も有する。
【0018】
そして、第4の発明は、第3の発明における下衣において、裏地に脚固定用ベルトが設置されていることを特徴とする。このように脚固定用ベルトを設置することで、固定用ベルトを脚に設置することで、下衣は腰だけでなく、その他の異なる位置にも固定できるように作用する。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明であるパジャマによれば、胴部と袖部の接続部において設置された面ファスナーの着脱によって、上衣は長袖タイプや半袖タイプに変更可能となる。これにより、着用者が気分又は季節に合わせて上衣の形態を選択することができるという効果を有する。
また、上衣の袖に腕を通すことが困難な者が着用する場合には、まず袖部を外して腕を通し易くした胴部に腕を通し、後から袖部のみを着用することも可能となる。
さらに、側部用面ファスナーの着脱により胴部の開口部の大きさが変化可能なため、胴部を開口させてから穴に頭部を挿通した後、再び側部用面ファスナーを接着するという簡単な作業で衣服を脱ぎ着できるという効果も有する。
【0020】
また、対向する側部用面ファスナーのうち一方が他方よりも胴囲方向において幅広となるため、これら側部用面ファスナーを接着する際に胴囲方向における接着位置を調整することが可能となる。すなわち、上衣の胴囲を調整できるという効果を有する。この結果、様々な体型に合わせて簡単に上衣の胴囲調整ができるという効果も有する。
さらに、側部用面ファスナーであるので、着用者が仰向けになり前身頃を胸部から腹部にかけて体の線に沿って置くようにした後に、そのまま今度は後身頃の側面用面ファスナーを対向している前身頃の側部用面ファスナーに接着すれば、体形に沿った胴囲調整が容易に可能である。
【0021】
また、第2の発明であるパジャマの上衣の袖部によれば、袖部自体の形状に方向性がある場合に袖部に位置決め部が設置されることで、袖部を胴部に取付ける際に取付ける位置、及び向きを間違え難くするという効果を有する。
【0022】
そして、第3の発明であるパジャマの下衣によれば、この下衣を腰に巻きつけて、二つの対向する下衣用面ファスナーを接着するだけで容易に着用することができるという効果を有する。この結果、手足の不自由な者が下衣を脱ぎ着する際や、寝たきり状態の病人の下衣を介護者が脱ぎ着させる際に、肉体的かつ精神的苦痛も生じ難くなるという効果も有する。
また、下衣用面ファスナーのうち一方が幅広となるため、対向する下衣用面ファスナーを接着する際に胴囲方向における接着位置を調整することが可能となり、その結果、下衣の胴囲も調整できるという効果を有する。これにより、様々な体型に合わせて簡単に下衣の胴囲調整ができるようになる。
【0023】
さらに、第4の発明であるパジャマの下衣によれば、裏地に設置された脚固定用ベルトにより下衣は腰部以外に脚にも固定することができるため、寝ている際に下衣の裾が捲り上がったり、下衣が脱げ落ちたりすることを防止できるという効果を有する。また、万一、歩行する必要がある際にも脚が下衣の内側で固定され、裾がはだけて脚が露出することもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係るパジャマの実施例の正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るパジャマの上衣の実施例の平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るパジャマの上衣の実施例の外観斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るパジャマの上衣であって、他の形態の実施例の正面図である。
図5】(a)は本発明の実施の形態に係るパジャマの下衣の実施例の平面図であり、(b)は使用時の状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のパジャマについて、図1乃至図5を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るパジャマであり、上衣と下衣を組み合わせた時の正面図である。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るパジャマ1は、上衣2と下衣3とから構成されている。このうち上衣2は胴部4と一対の袖部5,5とから成り、袖部5,5は胴部4の肩部位に着脱可能に設置されている。
この胴部4は、さらに前身頃4aと後身頃4bとから構成されており、この前身頃4aと後身頃4bは、胴部4の肩側に位置する縁部と、脇下から裾に亘って位置する縁部がそれぞれ結合されたものとなる。
ここで、前身頃4aと後身頃4bの結合方法については、肩の上端部分にある縁部は縫い合わされたものであり、脇下から裾にかけて形成されている縁部は、この縁部に沿って対向するように設置されている側部用面ファスナー4c,4d(図1には符号4dは示されず)によって結合されている(図2の説明において詳細に述べる)。
一方、略矩形のシート体である下衣3は、表地3aを図に示す通り腰の周りにおいて筒状に巻いて着用する。後の図5の説明の際に詳細を説明するが、筒状への形成は、表地3aの縁端に設置されている下衣用面ファスナー3eと表地3aに符合する裏地3b(図示せず)の縁端に設置されている下衣用面ファスナー3fを結合させて行う。
次に、図2図3を参照しながら、パジャマ1の上衣2について詳細に説明する。
【0027】
図2は本発明の実施の形態に係るパジャマの上衣の平面図であり、胴部と袖部とが分離され、かつ側部用面ファスナーが剥がされて広げられている状態を示している。また、図3は本発明の実施の形態に係るパジャマの上衣に関する外観斜視図であり、図2と同様に胴部と袖部が切り離された状態であり、胴部の面ファスナーは結合された状態を示している。
【0028】
図2より、胴部4の肩の上部にある前身頃4aと後身頃4bの縁端4e,4fは、互いに縫い合わされて接続されたものとなる。一方、脇下から裾にかけて形成されている前身頃4aと後見頃4bの各縁端4g,4hには、これらに沿って、前身頃4a側に側部用面ファスナー4c、後身頃4b側に側部用面ファスナー4dが対向するように設置され、このうち側部用面ファスナー4cは幅広に形成されている。
【0029】
また、胴部4と袖部5の接続部においては、胴部4の側に袖部用面ファスナー4iが、袖部5の側には袖部用面ファスナー5aが対向するように設置されている。なお、袖部面ファスナー5a上において、肩の上端に近い位置に位置決め部5bが形成されている。図3に詳細に示すように、対向する側部用面ファスナー4c,4dが接合された胴部4に、袖部5の袖部用面ファスナー5aを貼り付ける時に、位置決め部5bは肩口の上端に位置するように設定されている。
袖部5の位置決め部5bに符合させる箇所を特定するために、胴部4側では目印等を示していないのは、肩口の上端に対応する箇所は印等がなくとも判断が容易であるためで、肩口の下端の場合も同様に判断が容易と考えられるが、肩口の周囲の他の位置に設定した場合には、胴部4側にも位置決め部5bに符合する位置に位置決め部を設置することが望ましい。
【0030】
このように構成された本発明の実施の形態に係るパジャマ1の上衣2においては、側部面ファスナー4c,4dを剥がすことにより、体の通過口となる胴部4の腰付近の開口部を大きく開放できるという作用を有す。また、側部用面ファスナー4cは、これに対向するように設置された側部用面ファスナー4dに比べて幅広に形成されていることで、側部用面ファスナー4dの接着位置を胴囲方向において調整可能になるという作用を有する。
【0031】
なお、ここでは側部用面ファスナー4cを幅広としているが、特に側部用面ファスナー4cに限定したものではなく、側部用面ファスナー4dが幅広であっても良い。また、例示していないが、側部用面ファスナー4c,4dは、図2及び図3に示すように脇下から裾にかけて連続した略矩形状のものでなく、小サイズの面ファスナーが間隔を空けて配置されているものでも良い。この場合、各面ファスナーの間が接着されていないため、面ファスナーの間で通気が容易になるという作用を有する。
【0032】
また、上衣2において、胴部4の肩部位にある袖部用面ファスナー4iと袖部5側の袖部用面ファスナー5aの着脱により、胴部4から袖部5を容易に着脱可能になるという作用を有する。さらに、袖部用面ファスナー5a上に袖部5の位置決め部5bが形成されていることで、胴部4に袖部5が設置される際に、袖部5の向きを一定にするための標識になるという作用を有する。なお、この位置決め部5bの設置場所は、肩口の周囲であれば特に限定はなく、位置決め部5bにより結合時・使用時に袖5の方向性を認識できるものであれば良い。
【0033】
上述した作用により、本発明の実施の形態に係るパジャマ1の上衣2は、側部面ファスナー4c,4dを剥がすことにより、体の通過口となる胴部4の腰付近の開口部を大きく開放できるため、体を上衣2に通過させることが容易となり、上衣2の脱ぎ着が容易になるという効果を有する。さらに、上衣2であれば、手足の不自由な者や寝たきり状態の病人を介護/補助する者でも容易に脱ぎ着することができるため、彼らの肉体的かつ精神的負担が軽減できるという効果も有する。
加えて、側部用面ファスナー4cを側部用面ファスナー4dに接着する際に、側部用面ファスナー4cが幅広であり接着位置を胴囲方向で調整可能となるため、使用者は上衣2の胴囲サイズを体型に合わせて調整することも可能となる。その結果、どのような体型であっても着心地の良い衣服になるという効果も有する。
特に、側部用面ファスナーであるので、寝たきりの着用者が仰向けになった状態で、前身頃を胸部から腹部にかけて体の線に沿って載せた後に、そのまま今度は後身頃の側面用面ファスナーを対向している前身頃の側部用面ファスナーに接着すれば、その行為が体形に沿った胴囲調整となるため、体形に即した着用が容易に可能である。
【0034】
また、袖部5は袖部用面ファスナー4iと袖部用面ファスナー5aの着脱により、容易に胴部4からの着脱が可能となる。これにより、上衣2は季節に合わせて長袖タイプや半袖タイプに変化させることができるという効果を有する。また、怪我等により袖5に腕を通すことが難しい者が、長袖タイプの上衣2を着用する場合、まず半袖タイプとした上衣2を着用し、その後袖5に腕を通すことも可能である。したがって、袖部5が着脱可能であれば、着る者の状態に合わせて着用方法が種々選択できるという効果も有する。
【0035】
さらに、袖部用面ファスナー5a上に位置決め部5bが形成されていることで、胴部4に袖部5を設置する際に、袖5の向きや位置を間違えたりすることがなくなるという効果も有する。なお、例示はしていないが、この位置決め部5bに文字や図形等の情報を記載したり、一対の袖部5のそれぞれで形状を異なるものとしたりすることも可能である。これにより、着用する者が袖部5の向きや位置を視覚等により直感的に把握することが可能となり、着用者が左右で異なる袖部5の認識とそれぞれの接続位置をより間違い難くするという効果があると考えられる。
【0036】
また、上衣2にスライドファスナー等を設置して、上衣2に新たな作用、効果を加えても良い。そのような新たな作用、効果を加えた例を図4に示す。図4は本発明の実施の形態に係るパジャマの上衣の、他の形態の正面図である。なお、既に説明した上衣2と同一の構成要素については同一の符号を付しており、その構成の説明は省略する。
図4に示す上衣(上衣6)は上衣2と基本構造は同じものであるが、前身頃4aの中央にスライドファスナー7を併設している点で異なる。基本構造は上衣2と同じであるため、上衣6は上衣2と同じ作用、効果を有するが、上衣6は前身頃4aの中央に配置したスライドファスナー7の存在により、頭部を通過させる開口部を広く開口することができるという作用を有する。この作用により、上衣6は頭部が通過し易く、上衣2比べて更に脱ぎ着し易くなるという効果があると考えられる。また、開口部の開き具合を調整することで、体温調整もできるという効果も有する。
【0037】
次に、下衣3について、図5に基づいて詳細を説明する。図5(a)は本発明の実施の形態に係るパジャマの下衣の平面図であり、同図(b)は実際の使用時のように筒状に巻いた状態を示したものである。
図5(a)に示すように、本発明の実施の形態に係るパジャマのうちの下衣3は、略矩形のシート体であり、表地3aと裏地3bを有すものとなる。なお、図5(a)に示す下衣3の上端となる辺は腰に巻き付けて固定される腰固定部となるように配置されており、この腰固定部に当たる辺の縁端3gに隣接する二辺の縁端3c,3dには、同図(b)に示すように、これら縁端3c,3dに沿って表地3aに下衣用面ファスナー3eと、裏地3bに下衣用面ファスナー3fが、下衣3を表地3aが外表面となるように巻いた場合に対向するように設置されている。そして、下衣用面ファスナー3eが下衣用面ファスナー3fよりも胴囲方向にて幅広となる。加えて、表地3a側において、縁端3gと縁端3dとの交点部分に紐3hが設置され、さらに下衣用面ファスナー3eの二つの長辺のうち縁端3cから最も離れた辺と縁端3gとの交点部分に紐3iが設置されている。さらに、裏地3bには、その下方側で着用者の足首近傍に符合する位置において、縁端3gと平行な方向に2つの脚固定用ベルト3j,3jが間隔を開けて設置されている。
【0038】
このように構成された本発明の実施の形態に係るパジャマ1の下衣3において、下衣用面ファスナー3e,3fを着脱することで、下衣3はシート状から筒状に簡単かつ可逆的に変化させることが出来るという作用を有する。また、下衣用面ファスナー3eが下衣用面ファスナー3fよりも幅広に形成されていることで、下衣用面ファスナー3fの接着位置を胴囲方向において調整可能になるという作用を有する。加えて、紐3hと紐3iは張力をかけながら結んだり解いたりすることができ、これらを腰に巻き付けて結べば、下衣3を腰に強く固定できるという作用を有する。さらに、裏地3bには2つの脚固定用ベルト3j,3jが設置されていることで、下衣3は着用する者の両足と接続できるという作用を有する。
【0039】
なお、ここでは例示していないが、下衣用面ファスナー3e,3fは、図5に示すように連続した略矩形状のものでなく、小サイズの面ファスナーが間隔を空けて配置されたものでも良い。この場合、各面ファスナーの間が接着されていないため、各面ファスナーの間で通気が容易になるという作用を有する。
また、下衣用面ファスナー3eを幅広としているが、特に下衣用面ファスナー3eを幅広にしなければならないわけではなく、下衣用面ファスナー3fが幅広であっても良い。これらの構成であっても、下衣用面ファスナー3e又は3fの接着位置を胴囲方向において調整できるという作用を有する。
【0040】
上述した作用により、本発明の実施の形態に係るパジャマ1の下衣3を着用する際には、腰固定部となる一辺を腰周りに巻き、下衣用面ファスナー3e,3fを接着して紐3hと紐3iを結ぶだけで良く、また下衣3を脱ぐ場合も、結ばれた紐3hと紐3iを解き、下衣用面ファスナー3e,3fを剥がすだけで良い。このように下衣3は簡単に脱ぎ着が可能となるため、手足の不自由な者、及び寝たきり状態の病人を介護/補助する者の衣服の脱ぎ着における肉体的かつ精神的な負担が軽減できるという効果を有する。
【0041】
なお、紐3hと紐3iは、下衣用面ファスナー3e,3fが剥がれた際に下衣3の脱落を防止するものであるが、必ず設置しなければならないわけではない。下衣3の生地が非常に伸縮し易い特性を有す場合、また使用時に下衣3に大きな引張力が加わることがない場合には、下衣用面ファスナー3e,3fは剥離し難いため、紐3hと紐3iを結ぶことによる固定が不要と考えられるからである。紐3hと紐3iを設置する必要がない場合は、これらを結んだり解いたりするという作業がなくなるため、さらに下衣3の脱ぎ着は容易になるという効果を有することになる。
また、下衣用面ファスナー3eを下衣用面ファスナー3fに接着する際に、下衣用面ファスナー3eが幅広であり接着位置を胴囲方向で調整可能となることで、体型に合わせて下衣3の胴囲サイズを調整することが可能となる。その結果、どのような体型であっても着心地の良い衣服になるという効果も有する。
【0042】
さらに、裏地3bに設置された脚固定用ベルト3j,3jを各脚に固定することで、下衣3が脱げ落ちたり、特に、足首近傍で固定することによれば下衣3の裾が捲れ上がりし難くなるという効果を有する。このような効果により、重篤な症状の病人が下衣3を着用すれば、就寝中に下衣3の裾が捲り上がったり脱げたりすることがなくなるため、病人の予期せぬ体の冷却も抑えられ、治療効果も一層高まると考えられる。なお、万一、歩行する必要がある際にも、脚が下衣の内側で固定され、裾がはだけて脚が露出することもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の請求項1乃至請求項4に記載された発明は、脱ぎ着が容易でサイズの調整も容易であり、手足の不自由な者、寝たきり状態の高齢者や病人等が着用する衣服として利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…パジャマ 2…上衣 3…下衣 3a…表地 3b…裏地 3c…縁端 3d…縁端 3e…下衣用面ファスナー 3f…下衣用面ファスナー 3g…縁端 3h…紐 3i…紐 3j…脚固定用ベルト 4…胴部 4a…前身頃 4b…後身頃 4c…側部用面ファスナー 4d…側部用面ファスナー 4e…縁端 4f…縁端 4g…縁端 4h…縁端 4i…袖部用面ファスナー 5…袖部 5a…袖部用面ファスナー 5b…位置決め部 6…上衣 7…スライドファスナー
図1
図2
図3
図4
図5