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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】バッテリーパックの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6557 20140101AFI20230302BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230302BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230302BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230302BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230302BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20230302BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6563
H01M50/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019142214
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021026847
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390040958
【氏名又は名称】みのる化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】守谷 鉄也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181749(JP,A)
【文献】特開2001-006643(JP,A)
【文献】特開2013-134821(JP,A)
【文献】特開2016-091691(JP,A)
【文献】国際公開第2012/140791(WO,A1)
【文献】米国特許第06410185(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60 -10/667
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケース片を組み合わせてなるケース体で覆われる空間内に互いに間隔を置いて列設された複数の電池モジュールを有するバッテリーパックの冷却構造であって、
少なくともいずれかの前記ケース片は、前記電池モジュールの表面に当接して該電池モジュールを前記空間内で位置決めするように内面に延設された中空の突条を備えるとともに、少なくとも該突条とともにブロー成形により樹脂で一体形成されており、
該突条には、その内外を連通する貫通穴が設けられているバッテリーパックの冷却構造。
【請求項2】
前記いずれかのケース片の内面には複数条の前記突条が設けられており、該複数条の前記突条同士は、互いの内部が連通するように連結されている請求項1記載のバッテリーパックの冷却構造。
【請求項3】
前記ケース体は、第一のケース片としての上ケースと、第二のケース片としての下ケースとからなっており、
前記上ケースは、前記突条を備えるとともに、該突条とともにブロー成形により一体形成されており、
前記下ケースは、前記突条を備えるとともに、該突条とともにブロー成形により一体形成されている請求項1又は2記載のバッテリーパックの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパックの冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第一の背景技術としては、特許文献1に記載されたバッテリーパックの冷却装置における冷却構造を例示する。この冷却構造は、図8に示すようにケース120とカバー121で覆われる空間122内に設けられ、互いに間隔を空けて配置された複数の電池モジュール123を有するバッテリーパック102の冷却装置であって、複数の電池モジュール123の配置領域を上方から覆うように空間内に配置され、冷却風発生部で発生した冷却風を案内する案内部材140と、案内部材140に設けられ、電池モジュール123の上部または隣り合う電池モジュール123の間の少なくとも一方に、案内部材140で案内された冷却風Wを導入する冷却風導入部142を有する。
【0003】
第二の背景技術としては、特許文献2に記載された車両のバッテリー冷却構造を例示する。この冷却構造は、図9に示すように入口201と出口203の間に列をなして配置され、相対的に前記入口201に近く配置された少なくとも一つ以上のバッテリーモジュールからなる第1群モジュール205及び相対的に前記出口203に近く配置された少なくとも一つ以上のバッテリーモジュールでなる第2群モジュール207と、前記入口201側から前記第1群モジュール205を冷却しながら通過した空気が前記第2群モジュール207をバイパスして前記出口203に誘導されるように配置された第1ダクト209と、前記入口201側から前記第1群モジュール205をバイパスした空気が前記第2群モジュール207を冷却しながら通過するように配置された第2ダクト211と、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-107087号公報
【文献】特開2013-6576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、背景技術に係る冷却構造では、ケースとカバー等で覆われる空間内に、冷却風導入のための案内部材140や、ダクト209、211等の別部材を設ける必要があり、コスト及び組立工数が増大するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のバッテリーパックの冷却構造は、
複数のケース片を組み合わせてなるケース体で覆われる空間内に互いに間隔を置いて列設された複数の電池モジュールを有するバッテリーパックの冷却構造であって、
少なくともいずれかの前記ケース片は、前記電池モジュールの表面に当接して該電池モジュールを前記空間内で位置決めするように内面に延設された中空の突条を備えるとともに、少なくとも該突条とともにブロー成形により樹脂で一体形成されており、
該突条には、その内外を連通する貫通穴が設けられている。
【0007】
前記突条としては、特に限定されないが、その全長に渡って中空である必要はなく、一部が中実に形成されていてもよい。また、前記突条の断面形状としては、特に限定されないが、断面略矩形状、断面略円弧状、断面略多角形状、断面異形状に形成されている態様を例示する。また、前記突条の断面形状としては、その条長方向におけるサイズや形状が一定である必要はなく、途中で適宜変更してもよく、それによって形成された凹部に配線や配管を設置可能にすることができる。さらに、前記突条の配設経路としては、直線状、曲線状、折曲線状、又はそれらの組み合わせたもの等、適宜設定することができる。前記貫通穴は、前記一体成形時に形成してもよいし、該一体成形後に別途形成するようにしてもよい。
【0008】
前記突条が前記電池モジュールを位置決めする態様としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)前記空間内における水平方向の位置決めをする態様。これにより複数の前記電池モジュール同士の水平方向における間隔を規定したり、前記ケース片の内面とそれに対峙する前記電池モジュールの表面との水平方向における間隔を規定したりする。
(2)前記空間内における垂直方向の位置決めをする態様。これにより複数の前記電池モジュール同士の垂直方向における間隔を規定したり、前記ケース片の内面とそれに対峙する前記電池モジュールの表面との垂直方向における間隔を規定したりする。
【0009】
この構成によれば、前記突条の内部(中空部分)に冷却風を圧送したり吸引したりすることにより、前記突条に設けられた貫通穴から冷却風を放出したり回収したりすることができる。そのため、該突条によって位置決めされている電池モジュールの周囲に効率よく冷却風を流通させ、該電池モジュールを効率よく冷却することができる。また、前記ケース片は、補強構造体かつ冷却風の流路としての前記突条がブロー成形により樹脂で一体形成されているので、前記背景技術のように別部材を設ける必要がなく、軽量化が期待できる。さらに、前記背景技術のように別部材を有する必要がないので、コスト低減及び組立工数削減が期待できる。
【0010】
前記いずれかのケース片の内面には複数条の前記突条が設けられており、該複数条の前記突条同士は、互いの内部(中空部分)が連通するように連結されている態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、前述した作用効果を更に向上させることができる。
【0012】
前記ケース体は、第一のケース片としての上ケースと、第二のケース片としての下ケースとからなっており、
前記上ケースは、前記突条を備えるとともに、該突条とともにブロー成形により一体形成されており、
前記下ケースは、前記突条を備えるとともに、該突条とともにブロー成形により一体形成されている態様を例示する。
【0013】
この構成によれば、前記上ケース側における前記突条に設けられた前記貫通穴と、前記下ケース側における同前記貫通穴との間で、冷却風を流通させることができ、前述した作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るバッテリーパックの冷却構造によれば、樹脂ブロー成形により、冷却風ダクト構造、電池モジュール固定構造及びケース補強構造を実現できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を具体化した一実施形態に係るバッテリーパックの冷却構造の使用状態を示す分解斜視図である。
図2】同バッテリーパックの冷却構造における下ケース片を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線断面図、(c)は(a)のc-c線断面図である。
図3図2(c)における部分拡大図であり、(a)は同図における左端の突条を示す図であり、(b)は同図における中央の突条を示す図である。
図4】同バッテリーパックの冷却構造の使用状態を示す、図2(a)におけるc-c線の位置での断面図である。
図5】高さの異なる2種類の突条を設けた態様における同バッテリーパックの冷却構造を示す、図2(a)におけるc-c線に相当する位置での断面図である。
図6】条長方向における高さを低く形成している部分を設けている突条の態様における同バッテリーパックの冷却構造を示す、図2(a)におけるc-c線に相当する位置での断面図である。
図7】変更例に係る本発明のバッテリーパックの冷却構造を示す、図2(a)におけるc-c線に相当する位置での断面図である。
図8】第一の背景技術に係るバッテリーパックの冷却装置を示す側断面図である。
図9】第二の背景技術に係る車両のバッテリー冷却構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図6は本発明を具体化した一実施形態のバッテリーパック1の冷却構造2を示している。本例の冷却構造2は、図1図4に示すように、複数のケース片としての上ケース片3A及び下ケース片3Bを組み合わせてなるケース体4で覆われる空間5内に互いに間隔を置いて列設された複数の電池モジュール6を有しているバッテリーパック1におけるものである。本例では、上ケース片3A及び下ケース片3Bは、略上下対称に形成されているため、以下においては、主に下ケース片3Bについてのみ説明する。このケース片3Bは、内面に設けられた複数の突条7と、下ケース片3Bの内外を連通するように設けられたダクト8とを備えており、突条7及びダクト8とともにブロー成形により樹脂で一体形成されている。
【0017】
本例のバッテリーパック1は、互いに所定間隔をおいて2行×4列に配列された8個の電池モジュール6を有している。各電池モジュール6は複数のセルの集合体となっている。下ケース片3Bの内側面とそれに対峙する電池モジュール6の側面との間にも、所定間隔が設けられている。
【0018】
下ケース片3Bの本体は、平面視矩形状の略受け箱状に形成されるとともに、その開口部の外周にフランジ部11が形成されている。
【0019】
突条7は、下ケース片3Bの内底面における4辺に4本が配設されるとともに、2行×4列の電池モジュール6同士の間に横1本と縦3本が配設されており、該突条7の側面が電池モジュール6の表面としての側面に当接して該電池モジュール6を空間5内で水平方向に対して位置決めするように設けられている。突条7は、断面略矩形状かつ中空に形成されており、その頂面には内外を連通する貫通穴7aが設けられている。複数(本例では8本)の突条7同士は、互いの内部(中空部分)が連通するように連結されている。貫通穴7aを通じて冷却風Wを空間5内に流通させることにより、電池モジュール6の主に側面を冷却することができる。
【0020】
突条7としては、図5に例示するように、下ケース片3Bの内底面に、突条7よりも低く形成されたもの7Lを設け、該突条7Lの頂面を電池モジュール6の底面に当接させ、該電池モジュール6を下ケース片3Bの内底面から底上げして支持(垂直方向に対して位置決め)させるようにしてもよい。そして、該低い突条7Lを中空に形成するとともに、その内部(中空部分)を突条7と連結し、該低い突条7Lの側面に内外を連通する貫通穴7aを設け、該貫通穴7aを通じて冷却風Wを流通させるようにすれば、電池モジュール6の主に底面を冷却することができる。これと同様に、上ケース片3Aにおいては、低い突条7Lの側面に設けた貫通穴7aを通じて冷却風Wを流通させるようにすれば、電池モジュール6の主に上面を冷却することができる。
【0021】
また、突条7の断面形状としては、図6に例示するように、その条長方向における高さを低く形成している部分7bを設けることにより、該部分7bに配線や配管を通過させるようにしてもよい。なお、突条7における部分7bは中実であってもよく、その場合でも該部分7bの両側の中空部分は隣接する突条7の内部(中空部分)に連通しているため、該両側に冷却風Wを流通させることができる。
【0022】
ダクト8は、下ケース片3Bの内外を連通するように設けられ、下ケース片3Bの内外の間で冷却風Wを流通可能に設けられている。ダクト8における下ケース片内側の内部(中空部分)は、下ケース片3Bの内底面における4辺に配設された4本の内の1本の突条7の内部(中空部分)に連結されている。本例では、ダクト8は下ケース片3Bにブロー成形により樹脂で一体形成された態様を示しているが、ダクト8を省いた構成の下ケース片3Bに対し、別体のダクトを後付けするようにしてもよい。
【0023】
本例のバッテリーパック1に対する冷却風Wの送風方法としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)上ケース片3Aのダクト8に圧送ブロワーを接続し、そこから冷却風Wを圧送するとともに、下ケース片3Bのダクト8に吸引ブロワーを接続し、そこから冷却風Wを吸引すること(図4参照)。または、その逆に上ケース片3Aのダクト8に吸引ブロワーを接続し、下ケース片3Bのダクト8に圧送ブロワーを接続すること。
(2)上ケース片3Aのダクト8に圧送ブロワーを接続し、そこから冷却風Wを圧送し、下ケース片3Bのダクト8から冷却風Wを排気すること(図4参照)。または、その逆に下ケース片3Bのダクト8に圧送ブロワーを接続し、上ケース片3Aのダクト8から冷却風Wを排気すること。
(3)上ケース片3Aのダクト8に吸引ブロワーを接続し、そこから冷却風Wを吸引し、下ケース片3Bのダクト8から冷却風Wを入気すること。または、その逆に下ケース片3Bのダクト8に吸引ブロワーを接続し、上ケース片3Aのダクト8から冷却風Wを入気すること(図4参照)。
【0024】
以上のように構成された本例のバッテリーパック1の冷却構造2によれば、上ケース片3A及び下ケース片3Bは、電池モジュール6の表面に当接して該電池モジュール6を空間5内で位置決めするように内面に延設された中空の突条7を備えるとともに、少なくとも突条7とともにブロー成形により樹脂で一体形成されており、突条7には、その内外を連通する貫通穴7aが設けられている。この構成によれば、ダクト8を介して突条7の内部(中空部分)に冷却風Wを圧送したり吸引したりすることにより、突条7に設けられた貫通穴7aから冷却風Wを放出したり回収したりすることができる。そのため、該突条7によって位置決めされている電池モジュール6の周囲に効率よく冷却風Wを流通させ、該電池モジュール6を効率よく冷却することができる。また、上ケース片3A及び下ケース片3Bは、補強構造体かつ冷却風Wの流路としての突条7がブロー成形により樹脂で一体形成されているので、前記背景技術のように別部材を設ける必要がなく、軽量化が期待できる。さらに、前記背景技術のように別部材を有する必要がないので、コスト低減及び組立工数削減が期待できる。
【0025】
また、上ケース片3A及び下ケース片3Bの内面には複数条の突条7が設けられており、該複数条の突条7同士は、互いの内部(中空部分)が連通するように連結されているので、前述した作用効果を更に向上させることができる。
【0026】
また、ケース体4は、第一のケース片としての上ケース片3Aと、第二のケース片としての下ケース片3Bとからなっており、上ケース片3Aは、突条7を備えるとともに、該突条7とともにブロー成形により一体形成されており、下ケース片3Bは、突条7を備えるとともに、該突条7とともにブロー成形により一体形成されている。この構成によれば、上ケース片3A側における突条7に設けられた貫通穴7aと、下ケース片3B側における同貫通穴7aとの間で、冷却風Wを上下方向に流通させることができ、前述した作用効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)複数の突条7同士のすべての内部(中空部分)を互いに連結するのではなく、複数の突条7を複数のグループに分け、グループごとに突条7同士の内部(中空部分)を連結するようにし、グループごとに専用のダクト8を設けるようにすること。この構成により、冷却対象の複数の部分に対して、各グループの突条7を割り当てることにより、該各部分に対して個別的に最適な冷却を行うことができる。
(2)図7に例示するように、ケース体4の内側に、空間5に隣接させて、ブロワーを内蔵可能なブロワー収容部12を設け、空間5とブロワー収容部12を連通するようにダクト8を設けること。
(3)ケース体を上ケース片及び下ケース片で構成するとともに、上ケース片又は下ケース片の一方のケース片にのみ本発明の突条7及びダクト8を設け、他方のケース片にはその内外で冷却風を流通させる開口を設けること。
(4)ケース体を3以上のケース片で構成すること。また、その3以上のケース片のうちのいずれか1つ以上のケース片に本発明の突条7及びダクト8を設けること。
【符号の説明】
【0028】
1 バッテリーパック
2 冷却構造
3A 上ケース片
3B 下ケース片
4 ケース体
5 空間
6 電池モジュール
7 突条
7a 貫通穴
8 ダクト
11 フランジ部
12 ブロワー収容部
W 冷却風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9