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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】細胞構造体固定抜去システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019565030
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003741
(87)【国際公開番号】W WO2020157981
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-06-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511155187
【氏名又は名称】株式会社サイフューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】岸井 保人
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00 - 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂からなり、細胞塊が串刺しにされたニードルが突き刺される平らな突き刺し面を有する整列ベースと、
前記整列ベースと前記細胞塊との間の前記突き刺し面の上に載置される細胞構造体抜去具と、を備える細胞構造体固定抜去システムであって、
前記細胞構造体抜去具は、
前記突き刺し面の輪郭に対応するように延在して中央に穿刺開口を有するような枠体であって、前記枠体の下面は前記突き刺し面と平行な位置合わせ面を形成する枠体と、
前記枠体の前記穿刺開口を閉じるように前記位置合わせ面に付着して張られて取り付けられ、前記ニードルが貫通可能な多孔質シートと、を備え、
前記枠体の外側の輪郭は、前記整列ベースの前記突き刺し面の輪郭と同じであって、
前記細胞構造体抜去具の前記枠体の前記位置合わせ面における前記穿刺開口の輪郭縁は前記突き刺し面の輪郭内に位置し、
前記枠体の前記位置合わせ面は前記多孔質シートを介して前記突き刺し面と接触する細胞構造体固定抜去システム。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞構造体固定抜去システムであって、
前記枠体の前記位置合わせ面は、前記多孔質シートを介して前記突き刺し面と接触する前記枠体の幅が同一方向の前記穿刺開口の幅の1/6以上である細胞構造体固定抜去システム。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞構造体固定抜去システムであって、
前記整列ベースは、前記突き刺し面と平行に形成され、他の部分よりの硬度が高い少なくとも二層のシリコーン樹脂層を有する細胞構造体固定抜去システム。
【請求項4】
シリコーン樹脂からなり、細胞塊が串刺しにされたニードルが突き刺される平らな突き刺し面を有する整列ベースと、
前記整列ベースと前記細胞塊との間の前記突き刺し面の上に載置される細胞構造体抜去具と、を備える細胞構造体固定抜去システムの前記細胞構造体抜去具であって、
前記細胞構造体抜去具は、
前記突き刺し面の輪郭に対応するように延在して中央に穿刺開口を有するような枠体であって、前記枠体の下面は前記突き刺し面と平行な位置合わせ面を形成する枠体と、
前記枠体の前記穿刺開口を閉じるように前記位置合わせ面に付着して張られて取り付けられ、前記ニードルが貫通可能な多孔質シートと、を備え、
前記枠体の外側の輪郭は、前記整列ベースの前記突き刺し面の輪郭と同じであって、
前記細胞構造体抜去具の前記枠体の前記位置合わせ面における前記穿刺開口の輪郭縁は前記突き刺し面の輪郭内に位置し、
前記枠体の前記位置合わせ面は前記多孔質シートを介して前記突き刺し面と接触する細胞構造体抜去具。
【請求項5】
請求項4に記載の細胞構造体抜去具であって、
前記枠体の前記位置合わせ面は、前記多孔質シートを介して前記突き刺し面と接触する前記枠体の幅が同一方向の前記穿刺開口の幅の1/6以上である細胞構造体抜去具。
【請求項6】
請求項4に記載の細胞構造体抜去具であって、
前記整列ベースは、前記突き刺し面と平行に形成され、他の部分よりの硬度が高い少なくとも二層のシリコーン樹脂層を有する細胞構造体抜去具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の立体構造体を製造するために用いられる細胞構造体製造用の細胞構造体固定抜去システム、具体的には細胞構造体製造用抜去具と整列ベースとの組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接するように接触した細胞塊同士が融合する性質を利用し、複数の針状体に複数の細胞塊(スフェロイド)を隣接するように配置し、それらの細胞塊を立体的に積層して培養することで、立体構造体を作製する手法が知られている。たとえば、特許文献1には、立体構造体を作製する技術が開示されている。この技術では、まず、培養プレートで小さな多数の細胞をある程度の大きさを有する細胞塊に凝集させ、それらの細胞塊を積層トレイのそれぞれのウェルに移送し、その任意のウェル上の細胞塊に一本の細い針状体を鉛直方向に昇降させて細胞塊を串刺し、これを複数の細胞塊に対して連続して繰り返すことで複数の細胞塊を串刺しになった一本の針状体Nを作製する。そして、図7および図8に示すように、複数の細胞塊Sが串刺しになった一本の針状体Nを整列ベースBに突き刺して固定する。これを複数本の針状体Nmと複数の細胞塊Sに対して繰り返し、複数の細胞塊が串刺しになった複数本の針状体Nmが整列ベースBに突き刺さった状態にして培養する。培養により隣接する細胞塊Sは互いに融合して立体構造化した細胞構造体Sstが形成される。細胞構造体Sstが形成された後に、その細胞構造体Sstをそれらの針状体Nmから抜き去れば、構造的に自立した細胞の立体構造体Sstが得られる。特許文献2には、細胞塊Sが串刺しとなった針状体Nmを突き刺す整列ベースBと、培養後の細胞構造体を整列ベースBから抜き取る抜去トレイについて開示されている。抜去トレイFは中央に開口を有する枠体と、その中央部の開口に多孔質部材Psが貼り付けられて形成された治具である。複数の細胞塊が串刺しになった複数本の針状体Nmが整列ベースBに突き刺さす際には、その針状体Nmが多孔質部材Psを貫通して整列ベースBに突き刺して固定されるように、整列ベースBと抜去トレイFとが配置される。培養後の細胞構造体Sstを整列ベースBから抜き取る際には、整列ベースBに突き刺さされた針状体Nmが延在する方向に沿って抜去トレイFを移動させる。そうすると、抜去トレイFの多孔質部材Psが細胞構造体Sstの底部に接触する。抜去トレイFをそのまま針状体Nmが延在する方向に沿って上方に移動させ続けると、多孔質部材Psが細胞構造体Sstの底部を押し上げて、細胞構造体Sstを整列ベースBから抜き取ることができる。たとえば、整列ベースBは主要部の断面が正方形の直方体形状である。その正方形の一辺は代表的には20ミリメートルの比較的小さい形状であるので、抜去トレイFはピンセットの先端で把持して操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6334837号明細書
【文献】特開2018-143171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
培養後の細胞構造体Sstを針状体Nmから抜き取る際には、細胞構造体Sstへのダメージが小さくなるように、細胞構造体Sstに針状体に沿った方向にのみ力がかかるようにして、それ以外の負荷がなるべく小さくなるような状態で抜き取る必要がある。しかし、特許文献2で開示される抜去トレイFでは、実際には、多孔質部材Psが柔な材質であるので整列ベースBに対して安定せず、培養中の長い時間が経過する中では針状体の延在方向に対して垂直な面を保証することが難しい問題がある。また、多孔質部材Psはたとえば不織布などの多孔質シートであって、柔な素材となるため、現実には撓みが生じるので、針状体Nmの延在方向に対して垂直な面を保証できないと、細胞構造体Sstに針状体に沿った方向以外の力が大きくかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シリコーン樹脂からなり、細胞塊が串刺しにされたニードルが突き刺される平らな突き刺し面を有する整列ベースと、前記整列ベースと前記細胞塊との間の前記突き刺し面の上に載置される細胞構造体抜去具と、を備える細胞構造体固定抜去システムであって、前記細胞構造体抜去具は、前記突き刺し面の輪郭に対応するように延在して中央に穿刺開口を有するような枠体であって、前記枠体の下面は前記突き刺し面と平行な位置合わせ面を形成する枠体と、前記枠体の前記穿刺開口を閉じるように前記位置合わせ面に張られて配置され、前記ニードルが貫通可能な多孔質シートと、を備え、前記細胞構造体抜去具の前記枠体の前記位置合わせ面における前記穿刺開口の輪郭縁は前記突き刺し面の輪郭内に位置する細胞構造体固定抜去システムにより解決する。
【0006】
シリコーン樹脂からなり、細胞塊が串刺しにされたニードルが突き刺される平らな突き刺し面を有する整列ベースと、前記整列ベースと前記細胞塊との間の前記突き刺し面の上に載置される細胞構造体抜去具と、を備える細胞構造体固定抜去システムの前記細胞構造体抜去具であって、前記細胞構造体抜去具は、前記突き刺し面の輪郭に対応するように延在して中央に穿刺開口を有するような枠体であって、前記枠体の下面は前記突き刺し面と平行な位置合わせ面を形成する枠体と、前記枠体の前記穿刺開口を閉じるように前記位置合わせ面に張られて配置され、前記ニードルが貫通可能な多孔質シートと、を備え、前記細胞構造体抜去具の前記枠体の前記位置合わせ面における前記穿刺開口の輪郭縁は前記突き刺し面の輪郭内に位置する細胞構造体抜去具により解決する。
【0007】
シリコーン樹脂からなり、細胞塊が串刺しにされたニードルが突き刺される平らな突き刺し面を有する整列ベースと、前記整列ベースと前記細胞塊との間の前記突き刺し面の上に載置される細胞構造体抜去具と、を備える細胞構造体固定抜去システムの前記整列ベースであって、前記細胞構造体抜去具は、前記突き刺し面の輪郭に対応するように延在して中央に穿刺開口を有するような枠体であって、前記枠体の下面は前記突き刺し面と平行な位置合わせ面を形成する枠体と、前記枠体の前記穿刺開口を閉じるように前記位置合わせ面に張られて配置され、前記ニードルが貫通可能な多孔質シートと、を備え、前記細胞構造体抜去具の前記枠体の前記位置合わせ面における前記穿刺開口の輪郭縁は前記突き刺し面の輪郭内に位置する整列ベースにより解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の細胞構造体固定抜去システムによれば、抜去具を整列ベースに対して安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一の実施の形態の細胞構造体固定抜去システムを示した図である。
図2】本発明の第一の実施の形態の細胞構造体固定抜去システムであって、抜去具を整列ベースから離間させた図である。
図3A】本発明の第一の実施の形態の抜去具を細胞構造体固定抜去システムの図1の上側矢視3Aから見た図である。
図3B図1の断面3B-3Bを示した図であって、本発明の第一の実施の形態の抜去具を細胞構造体固定抜去システムの側面から見た図である。
図3C図2の断面3C-3Cを示した図であって、本発明の第一の実施の形態の整列ベースから離間させた状態の抜去具を細胞構造体固定抜去システムの側面から見た図である。
図4】本発明の第二の実施の形態の細胞構造体固定抜去システムを示した図である。
図5】本発明の第二の実施の形態の細胞構造体固定抜去システムであって、抜去具を整列ベースから離間させた図である。
図6A】本発明の第二の実施の形態の抜去具を細胞構造体固定抜去システムの上側矢視6Aから見た図である。
図6B図4の断面6B-6Bを示した図であって、本発明の第二の実施の形態の抜去具を細胞構造体固定抜去システムの側面から見た図である。
図6C図5の断面6C-6Cを示した図であって、本発明の第二の実施の形態の整列ベースから離間させた状態の抜去具を細胞構造体固定抜去システムの側面から見た図である。
図7】細胞塊が串刺しにされた針状体を整列ベースに固定する概念を示した図である。
図8】整列ベースに固定された針状体から細胞構造体を抜去する概念を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施の形態)
図1から図3Cを参照して、本発明の第一の実施の形態の細胞構造体固定抜去システム11について、説明する。細胞構造体固定抜去システム11は、整列ベース13と細胞構造体抜去具14とを具備する。図1は本発明の第一の実施の形態の細胞構造体固定抜去システム11の斜視図である。図2は、細胞構造体固定抜去システム11において、細胞構造体抜去具14を整列ベース13から離間させた状態の斜視図である。図3A図1の上側矢視3Aから見た図である。図3B図1の断面3B-3Bを示した図であって、細胞構造体抜去具14が整列ベース13の上に載置された状態で細胞構造体固定抜去システム11の側面から見た図である。図3C図2の断面3C-3Cを示した図であって、細胞構造体抜去具14が整列ベース13から離間した状態で細胞構造体固定抜去システム11の側面から見た図である。
【0011】
整列ベース13は、シリコーン樹脂で所定の形状に固められた自立可能なベースであって、たとえば主要部は断面が正方形の直方体形状である。その正方形の一辺は代表的には20ミリメートルの比較的小さい形状である。整列ベース13の頂面は、整列ベース13が所定の状態に載置された際に、水平となるような平面である突き刺し面130を構成する。細胞塊が串刺しにされた針状体は突き刺し面130に対して鉛直方向に突き刺される。すなわち、突き刺し面130は細胞塊が串刺しにされた針状体が突き刺される方向に対して垂直に延在する。突き刺し面130の形状は自由に設定可能であるが、代表的には正方形の形状である。
【0012】
本明細書では、針状体が突き刺される方向を「主軸方向」と定義する。整列ベース13は、主軸方向に鉛直に延在するように、離間して第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133とを二層のシリコーン樹脂層が形成されている。第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133とはシート状シリコーン樹脂である。第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133とは、突き刺し面130と平行に形成されることになる。第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133との層間距離は、突き刺し面130から針状体が突き刺された際に、その針状体が突き刺し面130から突き刺さると、第一高硬度シリコーン樹脂層131を貫通し、少なくとも針状体の先端が第二高硬度シリコーン樹脂層133に到達するように設定される。
【0013】
第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133との間には、ゲル状の第一低硬度シリコーン樹脂層132が形成されている。第一高硬度シリコーン樹脂層131と、第一低硬度シリコーン樹脂層132と、第二高硬度シリコーン樹脂層133との三層は、ゲル状第二低硬度シリコーン樹脂層134の上に形成されている。第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133とのそれぞれの硬度は、第一低硬度シリコーン樹脂層132の硬度よりも高い。特に、第一高硬度シリコーン樹脂層131の硬度は、針状体が第一高硬度シリコーン樹脂層131に突き刺さって第二高硬度シリコーン樹脂層133に至るまでの間に第一高硬度シリコーン樹脂層131が波を打つことなく平面を保てるような硬度を有することが必要である。そして、第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133との硬度は、針状体が貫通して、第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133との二箇所で針状体を保持できるようにすることが好ましい。第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133との硬度は、同一であってもよいし、異なっていても良い。突き刺し面130から針状体が突き刺された際に、その針状体は、第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133とによって、針状体が主軸方向に延在するように支持される。たとえば、第一高硬度シリコーン樹脂層131は厚さ0.5ミリメートルに、第二高硬度シリコーン樹脂層133は厚さ0.2ミリメートルに、第一低硬度シリコーン樹脂層132は厚さ2ミリメートルにすることができる。これらの寸法は任意に設定できる。少なくとも、針状体が第一高硬度シリコーン樹脂層131から第二高硬度シリコーン樹脂層133に至るまでの厚さは、針状体が第一高硬度シリコーン樹脂層131から第二高硬度シリコーン樹脂層133を貫通するまでの厚さとして設定される。
【0014】
さらに、第一高硬度シリコーン樹脂層131と第二高硬度シリコーン樹脂層133との構成に加えて、シート状シリコーン樹脂の第三高硬度シリコーン樹脂層135を第二高硬度シリコーン樹脂層133と離間して配置することもできる。そして、第二高硬度シリコーン樹脂層133と第三高硬度シリコーン樹脂層135との間をゲル状の第二低硬度シリコーン樹脂層134としてもよい。たとえば、第三高硬度シリコーン樹脂層135は厚さ0.5ミリメートルに、第二低硬度シリコーン樹脂層134は厚さ2ミリメートルにすることができるが、任意に設定することができる。
【0015】
突き刺し面130を有する第一高硬度シリコーン樹脂層131から第三高硬度シリコーン樹脂層135に至るまでの樹脂層群は、接着剤により台座ベース136の上面に接着されている。台座ベース136はたとえばシリコーン樹脂で形成された台座である。台座ベース136の下面は平面であって、第一高硬度シリコーン樹脂層131から第三高硬度シリコーン樹脂層135を水平に維持することができる。台座ベース136の下面側には、相対する方向に突出する耳部136a,136bが形成されている。耳部136a,136bを押し付けることで台座ベース136を固定することができる。
【0016】
細胞構造体抜去具14は、整列ベース13の突き刺し面130の上に載置され、整列ベース13と細胞構造体抜去具14とは、分離可能に一体的に組み合わされる。細胞塊Sが串刺しにされた針状体Nが突き刺し面130に突き刺される際には、細胞構造体抜去具14の多孔質シート143が突き刺し面130と細胞塊Sとの間に位置するように細胞構造体抜去具14の位置が設定されるようになっている。
【0017】
細胞構造体抜去具14は、枠体141と穿刺開口142と多孔質シート143とを具備している。枠体141は、細胞構造体抜去具14が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置された際に、突き刺し面130の輪郭130aの各辺に対応するような辺部材により突き刺し面130の輪郭130aに沿って延在する閉じた枠構造体である。枠体141で囲まれる中央部には穿刺開口142が形成される。穿刺開口142を形成する枠体141の縁は穿刺開口142の輪郭縁142aを形成する。穿刺開口142の輪郭縁142aで形成された面は主軸方向に垂直である。細胞構造体抜去具14が突き刺し面130の上に載置される際における枠体141の下面である位置合わせ面141aは突き刺し面130と平行な位置合わせ面を形成する。この位置合わせ面は穿刺開口142の輪郭縁142aで形成された面と同一面となる。
【0018】
多孔質シート143は穿刺開口142の輪郭縁142aで形成された面の全面を覆って穿刺開口142を閉じるように枠体141の位置合わせ面141aに付着して弛まないように張られて取り付けられる。多孔質シート143は針状体の径よりも小さい目を有するシート状部材である。たとえば、多孔質シート143は不織布である。細胞構造体抜去具14が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置された際には、枠体141の位置合わせ面141aにおける穿刺開口142の輪郭縁142aは突き刺し面130の輪郭130aの内側に位置するようになっている。これにより、枠体141の位置合わせ面141aが多孔質シート143を突き刺し面130に押し付けるように自重で密着し、多孔質シート143が突き刺し面130と面接触するような状態で細胞構造体抜去具14が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置可能となる。枠体141の外側の輪郭は突き刺し面130と同じ形状とすることができる。しかし、枠体141の外側の輪郭を整列ベース13の突き刺し面130の輪郭と同じ形状とすることで、ピンセットの先端で細胞構造体抜去具14を操作するために、細胞構造体抜去具14のみを挟持する際にも、整列ベース13と細胞構造体抜去具14とを同時に挟持しながらピンセットの先端が細胞構造体抜去具14のみを水平に正確に挟持するように調整しやすくなる効果がある。特に、整列ベース13と細胞構造体抜去具14とが小型であるため、細胞構造体抜去具14のみを水平に正確に挟持するために、枠体141の外側の輪郭を整列ベース13の突き刺し面130の輪郭と同じ形状とすることによる、細胞構造体抜去具14のみを水平に正確に挟持できることは、非常に大きな効果である。枠体141の位置合わせ面141aが多孔質シート143を介して突き刺し面130と接触する枠体141の幅dは、同一方向の穿刺開口142のわたり幅Dに対して1/6以上取ることが好ましい。このとき、細胞構造体抜去具14の多孔質シート143も細胞構造体抜去具14の下側(第一高硬度シリコーン樹脂層131突き刺し面130側)に少なくとも幅dを確保して位置合わせ面141aの下側に付着するように取り付けられる。細胞構造体抜去具14の多孔質シート143が第一高硬度シリコーン樹脂層131の突き刺し面130と接触すると細胞構造体抜去具14の自重で細胞構造体抜去具14の多孔質シート143と第一高硬度シリコーン樹脂層131の突き刺し面130とが密着する。図8のように、細胞構造体を針状体から抜去する際には、ピンセットの先端で細胞構造体抜去具14のみを挟持して整列ベース13から離間させるように持ち上げる。このとき、たとえば二本のピンセットを使用し、一方のピンセット(不図示)の先端で整列ベース13の台座ベース136の耳部136a,136bで台座ベース136を下方に押さえつけ、他方のピンセット(不図示)で細胞構造体抜去具14のみを挟持して整列ベース13から離間させるように持ち上げることができる。これにより、第一高硬度シリコーン樹脂層131の突き刺し面130と密着した細胞構造体抜去具14の多孔質シート143が第一高硬度シリコーン樹脂層131の突き刺し面130から容易に剥がれて離間しやすくなり、より安定して細胞構造体を抜去る工程を実現することができる。
【0019】
整列ベース13の第一高硬度シリコーン樹脂層131の表面を突き刺し面130とすることにより、細胞構造体抜去具14を突き刺し面130に載置した際にも多孔質シート143は密着しやすくなる一方、細胞構造体抜去具14を突き刺し面130から剥がれやすくできる。したがって、細胞塊の培養が終了した後に、細胞構造体抜去具14で細胞構造体を抜き取る際に、枠体141を突き刺し面130から剥がすことにより、大きな変形無く多孔質シート143が突き刺し面130から離間して、細胞構造体に無理は負荷をかけることなく、細胞構造体を針状体から抜去することが可能となる。
【0020】
(第二の実施の形態)
続いて、図4から図6Cを参照して、本発明の第二の実施の形態の細胞構造体固定抜去システム12について、説明する。細胞構造体固定抜去システム12は、整列ベース13と細胞構造体抜去具15とを具備する。図4は本発明の第二の実施の形態の細胞構造体固定抜去システム12の斜視図である。図5は、細胞構造体固定抜去システム12において、細胞構造体抜去具15を整列ベース13から離間させた状態の斜視図である。図6A図4の上側矢視6Aから見た図である。図6B図4の断面6B-6Bを示した図であって、細胞構造体抜去具15が整列ベース13の上に載置された状態で細胞構造体固定抜去システム12の側面から見た図である。図6C図5の断面6C-6Cを示した図であって、細胞構造体抜去具15が整列ベース13から離間した状態で細胞構造体固定抜去システム12の側面から見た図である。第二の実施の形態では、細胞構造体抜去具15の枠体の大きさが異なっている。
【0021】
細胞構造体抜去具15は、枠体151と、穿刺開口152と多孔質シート153とを具備している。枠体151は、細胞構造体抜去具15が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置された際に、突き刺し面130の輪郭130aの各辺に対応するような辺部材により突き刺し面130の輪郭130aに沿って延在する閉じた枠構造体である。整列ベース13は第一の実施の形態と全く同じである。以下、ここでは、異なる部分だけを説明し、それ以外の部分は第一の実施の形態と同じである。
【0022】
第一の実施の形態における細胞構造体抜去具14での枠体141の外側の輪郭は突き刺し面130と同じ形状であったが、第二の実施の形態における細胞構造体抜去具15での枠体151の外側の輪郭は突き刺し面130よりも大きい形状を有している点で異なっている。
【0023】
しかし、枠体151の内側の輪郭は、細胞構造体抜去具15が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置された際に、突き刺し面130の輪郭130aの各辺に対応するような辺部材により突き刺し面130の輪郭130aに沿って延在する閉じた枠構造体であって第一の実施の形態と同じである。多孔質シート153も第一の実施の形態と同様に、多孔質シート153は穿刺開口152の輪郭縁152aで形成された面の全面を覆って穿刺開口152を閉じるように枠体151の位置合わせ面151aに付着して弛まないように張られて取り付けられる。このとき、多孔質シート153は細胞構造体抜去具15が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置された際に、枠体151の位置合わせ面151aにおける穿刺開口152の輪郭縁152aが突き刺し面130の輪郭130aの内側に位置するように確保する。これにより、枠体151の位置合わせ面151aが多孔質シート153を突き刺し面130に押し付けるように自重で密着し、多孔質シート153が突き刺し面130と面接触するような状態で細胞構造体抜去具15が整列ベース13の突き刺し面130の上に載置可能となる。
【0024】
第二実施の形態でも枠体151で囲まれる中央部には穿刺開口152が形成される。穿刺開口152を形成する枠体151の縁は穿刺開口152の輪郭縁152aを形成する。穿刺開口152の輪郭縁152aで形成された面は主軸方向に垂直である。この場合でも、枠体151の位置合わせ面151aが多孔質シート153を介して突き刺し面130と接触する枠体151の幅dは、第一の実施の形態と同じく、同一方向の穿刺開口152のわたり幅Dに対して1/6以上取ることが好ましい。多孔質シート153も少なくとも幅dを確保して位置合わせ面151aに付着するように取り付けられる。
【符号の説明】
【0025】
11,12 細胞構造体固定抜去システム
13 整列ベース
14,15 抜去具
130 突き刺し面
131 第一高硬度シリコーン樹脂層
132 第一低硬度シリコーン樹脂層
133 第二高硬度シリコーン樹脂層
134 第二低硬度シリコーン樹脂層
141,151 枠体
141a,151a 位置合わせ面
142,152 穿刺開口
142a,152a 輪郭縁
143,153 多孔質シート
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8