(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】レンズシステムおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230302BHJP
G02B 13/08 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/08
(21)【出願番号】P 2020525736
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024031
(87)【国際公開番号】W WO2019244867
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018115756
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】宮下 悠哉
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/072245(WO,A1)
【文献】特開2012-053260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順番に配置された、負の屈折力の第1のレンズ群と、正の屈折力の第2のレンズ群と、正の屈折力の第3のレンズ群と、絞りと、正の屈折力の第4のレンズ群とから構成され、
フォーカシングの際に、隣り合うレンズ群との距離が変化し、
前記第3のレンズ群は、最も像面側の、前記絞りの物体側に配置された接合レンズであって、像面側の面が
、凹が像面側に向いた面を含む接合レンズを含み、
前記第4のレンズ群は、最も物体側の、前記絞りの像面側に配置された接合レンズであって、物体側の面が
、凹が物体側に向いた面を含む接合レンズを含み、
前記絞りの物体側に配置された接合レンズおよび前記絞りの像面側に配置された接合レンズは負の屈折力を含み、
前記
凹が像面側を向いた面の曲率半径g3erと、前記
凹が物体側を向いた面の曲率半径g4frと
、前記絞りの物体側に配置された接合レンズの焦点距離B2fと、前記絞りの像面側に配置された接合レンズの焦点距離B3fとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
2.5 ≦ |g4fr/g3er| ≦ 4.0
1.7 ≦ B3f/B2f ≦ 3.0
【請求項2】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順番に配置された、負の屈折力の第1のレンズ群と、正の屈折力の第2のレンズ群と、正の屈折力の第3のレンズ群と、絞りと、正の屈折力の第4のレンズ群とから構成され、フォーカシングの際に、隣り合うレンズ群との距離が変化し、
前記第3のレンズ群は、最も像面側の、前記絞りの物体側に配置された接合レンズであって、像面側の面が、凹が像面側に向いた面を含む接合レンズを含み、
前記第4のレンズ群は、最も物体側の、前記絞りの像面側に配置された接合レンズであって、物体側の面が、凹が物体側に向いた面を含む接合レンズを含み、
前記第4のレンズ群は、前記絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側に配置された
、凹が物体側を向いた正の屈折力のメニスカスレンズを含
み、
前記凹が像面側を向いた面の曲率半径g3erと、前記凹が物体側を向いた面の曲率半径g4frとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
2.5 ≦ |g4fr/g3er| ≦ 4.0
【請求項3】
請求項
2において、
前記絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側の、像面側に凸の面の曲率半径B3erと、前記正の屈折力のメニスカスレンズの物体側の、
凹が物体側を向いた面の曲率半径Lbfrとは以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.35 ≦ |B3er/Lbfr| ≦ 1.55
【請求項4】
請求項
2または3において、
前記第4のレンズ群は、前記正の屈折力のメニスカスレンズの像面側に配置された接合レンズを含み、前記正の屈折力のメニスカスレンズの像面側の、像面側に凸の面の曲率半径Lberと、前記正の屈折力のメニスカスレンズの像面側に配置された接合レンズの物体側の、
凹が物体側を向いた面の曲率半径B4frとは以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.03 ≦ |Lber/B4fr| ≦ 1.07
【請求項5】
請求項
4において、
前記絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側の、像面側に凸の面と、前記正の屈折力のメニスカスレンズの物体側の、
凹が物体側を向いた面との光軸上の距離Ld41と、前記正の屈折力のメニスカスレンズの像面側の、像面側に凸の面と、前記正の屈折力のメニスカスレンズの像面側に配置された接合レンズの物体側の、
凹が物体側を向いた面との光軸上の距離Ld43とは以下の条件を満たす、レンズシステム。
7 ≦ Ld41/Ld43 ≦ 23
【請求項6】
請求項
4または5において、
前記絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側の、像面側に凸の面と、前記正の屈折力のメニスカスレンズの物体側の、
凹が物体側を向いた面との光軸上の距離Ld41と、前記正の屈折力のメニスカスレンズの光軸上の厚さLd42とは以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.6 ≦ Ld41/Ld42 ≦ 1.0
【請求項7】
請求項
4ないし6のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群は、第1の接合レンズを含み、前記第1の接合レンズの有効径B1Dと、前記第3のレンズ群の前記絞りの物体側の第2の接合レンズの有効径B2Dと、前記第4のレンズ群の前記絞りの像面側の第3の接合レンズの有効径B33と、前記第4のレンズ群の前記正の屈折力のレンズの像面側の第4の接合レンズの有効径B4Dとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
B1D > B2D
B3D < B4D
【請求項8】
請求項
7において、
前記第1の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B1pと負の屈折力のレンズのアッベ数B1mとの差と、前記第2の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B2pと負の屈折力のレンズのアッベ数B2mとの差と、前記第3の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B3pと負の屈折力のレンズのアッベ数B3mとの差と、前記第4の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B4pと負の屈折力のレンズのアッベ数B4mとの差とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
|B1p-B1m| < |B2p-B2m|
|B3p-B3m| > |B4p-B4m|
【請求項9】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順番に配置された、負の屈折力の第1のレンズ群と、正の屈折力の第2のレンズ群と、正の屈折力の第3のレンズ群と、絞りと、正の屈折力の第4のレンズ群とから構成され、
無限遠から最至近へフォーカシングの際に、光軸に沿った前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群との距離が広がり、前記第2のレンズ群と前記第3のレンズ群との距離が縮まり、前記第4のレンズ群は、前記第4のレンズ群の物体側に配置された前記絞りとともに像面に対して固定され
、
前記第3のレンズ群は、最も像面側の、前記絞りの物体側に配置された接合レンズであって、像面側の面が、凹が像面側に向いた面を含む接合レンズを含み、
前記第4のレンズ群は、最も物体側の、前記絞りの像面側に配置された接合レンズであって、物体側の面が、凹が物体側に向いた面を含む接合レンズを含み、
前記凹が像面側を向いた面の曲率半径g3erと、前記凹が物体側を向いた面の曲率半径g4frとが以下の条件を満たすレンズシステム。
2.5 ≦ |g4fr/g3er| ≦ 4.0
【請求項10】
請求項
9において、
無限遠から最至近へフォーカシングの際に、前記第1のレンズ群は、前記像面に対して固定され、前記第2のレンズ群は像面側に移動し、前記第3のレンズ群は物体側に移動する、レンズシステム。
【請求項11】
請求項1ないし
10のいずれかに記載のレンズシステムと、
前記レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシステムおよびそれを有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特開2012-53260号公報には、無限遠物体合焦状態から撮影倍率等倍となる近距離物体合焦状態に至るまで収差変動の少ない、明るいマクロレンズとして、物体側より順に、正の第1群と、負の第2群と、正の第3群と、負の第4群とからなり、無限遠物体合焦状態から撮影倍率等倍となる近距離物体合焦状態へのフォーカシング時に、前記第1群及び前記第4群が移動せず、前記第2群が像側へ移動し、前記第3群が絞りとともに物体側へ移動するマクロレンズが開示されている。
【発明の開示】
【0003】
さらに取り扱いが容易であり、収差が良好に補正された画像を取得できるレンズシステムおよびそれを備えた撮像装置が求められている。
【0004】
本発明の一態様は、撮像用のレンズシステムであって、物体側から順番に配置された、負の屈折力の第1のレンズ群と、正の屈折力の第2のレンズ群と、正の屈折力の第3のレンズ群と、絞りと、正の屈折力の第4のレンズ群とから構成され、第3のレンズ群は、最も像面側の、絞りの物体側に配置された接合レンズであって、像面側の面が物体側に凹の面を含む接合レンズを含み、第4のレンズ群は、最も物体側の、絞りの像面側に配置された接合レンズであって、物体側の面が像面側に凹の面を含む接合レンズを含み、物体側に凹の面の曲率半径g3erと、像面側に凹の面の曲率半径g4frとが以下の条件を満たすレンズシステムである。
2.5 ≦ |g4fr/g3er| ≦ 4.0
【0005】
このレンズシステムにおいては、負-正-正-正のレトロフォーカス型のパワー配置であって、第4のレンズ群の物体側に配置された絞りの両側に、凹面が対峙するように接合レンズを配置することにより、絞りを中心とした対称的なアレンジを構成でき、収差補正を良好に行うことができる。その一方、絞りの物体側の凹面の曲率半径よりも、像面側の凹面の曲率半径を緩やかにする、非対称な構成を加えることにより、レトロフォーカス型で、絞りの像面側の公差感度が敏感な第4のレンズ群の感度を緩めることが可能となる。したがって、収差が良好に補正され、性能が安定した、取扱いが容易なレンズシステムを提供できる。
【0006】
絞りの物体側に配置された接合レンズおよび絞りの像面側に配置された接合レンズは負の屈折力を含み、絞りの物体側に配置された接合レンズの焦点距離B2fおよび絞りの像面側に配置された接合レンズの焦点距離B3fは以下の条件を満たしてもよい。
1.7 ≦ B3f/B2f ≦ 3.0
【0007】
第4のレンズ群は、絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側に配置された物体側に凹の正の屈折力のメニスカスレンズを含んでもよい。絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側の、像面側に凸の面の曲率半径B3erと、正の屈折力のメニスカスレンズの物体側の、物体側に凹の面の曲率半径Lbfrとは以下の条件を満たしてもよい。
1.35 ≦ |B3er/Lbfr| ≦ 1.55
【0008】
また、第4のレンズ群は、正の屈折力のメニスカスレンズの像面側に配置された接合レンズを含み、正の屈折力のメニスカスレンズの像面側の、像面側に凸の面の曲率半径Lberと、正の屈折力のメニスカスレンズの像面側に配置された接合レンズの物体側の、物体側に凹の面の曲率半径B4frとは以下の条件を満たしてもよい。
1.03 ≦ |Lber/B4fr| ≦ 1.07
【0009】
さらに、絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側の、像面側に凸の面と、正の屈折力のメニスカスレンズの物体側の、物体側に凹の面との光軸上の距離Ld41と、正の屈折力のメニスカスレンズの像面側の、像面側に凸の面と、正の屈折力のメニスカスレンズの像面側に配置された接合レンズの物体側の、物体側に凹の面との光軸上の距離Ld43とは以下の条件を満たしてもよい。
7 ≦ Ld41/Ld43 ≦ 23
【0010】
また、絞りの像面側に配置された接合レンズの像面側の、像面側に凸の面と、正の屈折力のメニスカスレンズの物体側の、物体側に凹の面との光軸上の距離Ld41と、正の屈折力のメニスカスレンズの光軸上の厚さLd42とは以下の条件を満たしてもよい。
0.6 ≦ Ld41/Ld42 ≦ 1.0
【0011】
第2のレンズ群は、第1の接合レンズを含み、第1の接合レンズの有効径B1Dと、第3のレンズ群の絞りの物体側の第2の接合レンズの有効径B2Dと、第4のレンズ群の絞りの像面側の第3の接合レンズの有効径B3Dと、第4のレンズ群の正の屈折力のレンズの像面側の第4の接合レンズの有効径B4Dとが以下の条件を満たしてもよい。
B1D > B2D
B3D < B4D
【0012】
さらに、第1の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B1pと負の屈折力のレンズのアッベ数B1mとの差と、第2の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B2pと負の屈折力のレンズのアッベ数B2mとの差と、第3の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B3pと負の屈折力のレンズのアッベ数B3mとの差と、第4の接合レンズの正の屈折力のレンズのアッベ数B4pと負の屈折力のレンズのアッベ数B4mとの差とが以下の条件を満たしてもよい。
|B1p-B1m| < |B2p-B2m|
|B3p-B3m| > |B4p-B4m|
【0013】
このレンズシステムにおいては、無限遠から最至近へフォーカシングの際に、光軸に沿った第1のレンズ群と第2のレンズ群との距離が広がり、第2のレンズ群と第3のレンズ群との距離が縮まり、第4のレンズ群は、第4のレンズ群の物体側に配置された絞りとともに像面に対して固定してもよい。さらに、無限遠から最至近へフォーカシングの際に、第1のレンズ群は、像面に対して固定され、第2のレンズ群は像面側に移動し、第3のレンズ群は物体側に移動してもよい。
【0014】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載のレンズシステムと、レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本例のレンズシステムおよび撮像装置の概略構成を示す図。
【
図3】フォーカシングの際に変動する数値を示す図。
【
図6】焦点距離が標準(中間距離)における諸収差を示す図。
【
図8】レンズシステムおよび撮像装置の他の例の概略構成を示す図。
【
図9】
図8のレンズシステムのレンズデータを示す図。
【
図10】フォーカシングの際に変動する数値を示す図。
【
図12】焦点距離が無限遠における諸収差を示す図。
【
図13】焦点距離が標準(中間距離)における諸収差を示す図。
【
図14】焦点距離が最至近における諸収差を示す図。
【発明の実施の形態】
【0016】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)の一例を示している。
図1(a)はフォーカスが無限遠の各レンズの配置を示し、
図1(b)はフォーカスが最至近の各レンズの配置を示している。このカメラ1は、光学系(撮像光学系、結像光学系、レンズシステム)10と、光学系10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。光学系10は、撮像用のレンズシステム10であって、4群16枚構成のレンズシステムである。具体的にはレンズシステム10は、物体側11から順番に配置された、像面5に対して位置が固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に光軸15に沿って移動する正の屈折力の第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3と、像面5に対して位置が固定され、物体側11に絞り(開口絞り)Stが配置され、屈折力が正の第4のレンズ群G4とを有し、これら4つのレンズ群G1~G4により像面5に像が結像される。
【0017】
収差補正能力が高く、高性能のレンズシステム10は一般的にレンズの構成枚数が多く、口径も大きい。このために重く、取り回しが大変で、安定した画像を取得することは容易ではない。特に、映画などの高画質の画像を撮影するためのレンズシステムは、レンズの構成枚数が10~20枚近くと多く、ハンディーでの取り回しは難しい。さらに、フォーカシングの際に絞りが動くことでF値も変動するため、焦点を合わせながら、明るさの変動の少ない画像を取得するためには撮影者の技能と経験とを要する作業となっている。これに対し、本願発明のレンズシステム10は、フォーカシング(合焦)の際に絞りStが移動せず、F値の変動が小さいレンズシステムとなっている。
【0018】
レンズシステム10の、最も物体側11に配置された負の屈折力の第1のレンズ群G1は、物体側11から順に配置された、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL11と、物体側11に凸の負の屈折力のメニスカスレンズL12と、両凹の負レンズL13の3枚構成である。すなわち、第1のレンズ群G1は、物体側11から順に配置された、正-負-負のパワー配置を備えたレンズ群である。正の屈折力の第2のレンズ群G2は、物体側11から両凹の負レンズL21と両凸の正レンズL22との2枚構成であり、負レンズL21および正レンズL22により、全体として像面側12に凸の正の屈折力の第1の接合レンズB1が構成されている。すなわち、第2のレンズ群G2は、物体側11から順に配置された、負-正のパワー配置を備え、これらが接合レンズを構成したレンズ群である。
【0019】
全体として正の屈折力の第3のレンズ群G3は、物体側11から順に配置された、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL31と、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL32と、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL33と、像面側12に凹の負の屈折力のメニスカスレンズL34との4枚構成である。正のメニスカスレンズL33および負のメニスカスレンズL34により、全体として物体側11に凸(像面側12に凹)の負の屈折力の第2の接合レンズB2が構成されている。すなわち、第3のレンズ群G3は、物体側11から順に配置された、正-正-正-負のパワー配置を備え、像面側12(絞りStに面した側)の正-負のレンズにより接合レンズが構成されたレンズ群である。
【0020】
最も像面側12に配置された、正の屈折力の第4のレンズ群G4は、物体側11から順に配置された、両凹の負レンズL41と、両凸の正レンズL42と、像面側12に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL43と、両凹の負レンズL44と、両凸の正レンズL45と、像面側12に凸の負のメニスカスレンズL46と、両凸の正レンズL47との7枚構成である。負レンズL41と正レンズL42とにより、全体として物体側11に凹(像面側12に凸)の負の屈折力の第3の接合レンズB3が構成されている。また、両凹の負レンズL44と両凸の正レンズL45とにより、全体として物体側11に凹(像面側12に凸)の負の屈折力の第4の接合レンズB4が構成されている。すなわち、第4のレンズ群G4は、物体側11から順に配置された、負-正-正-負-正-負-正のパワー配置を備え、物体側11(絞りStに面した側)の負-正のレンズにより接合レンズが構成され、正のパワーのレンズ挟んだ、負-正のレンズにより接合レンズが構成されているレンズ群である。
【0021】
また、第4のレンズ群G4の物体側11に絞りStが配置されており、絞りStは、物体側11に第2の接合レンズB2が他のレンズを挟まずに配置され、像面側12に第3の接合レンズB3が他のレンズを挟まずに配置されている。
【0022】
図2に、
図1に示したレンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。面Si(iは番号、以下においても同様)は物体側11から順に並んだ各レンズの面を示し、曲率riは物体側11から順に並んだ各レンズの各面の曲率半径(mm)を示し、間隔diは各レンズ面の間の距離(mm)を示し、屈折率niは各レンズの屈折率(d線)を示し、アッベ数νiは各レンズのアッベ数(d線)を示し、有効径Diは各レンズの各面の有効な直径(mm)を示している。以下の各実施例においても同様である。
【0023】
図3に、
図1に示したレンズシステム10の無限遠、標準(物体距離2280mm)、および最至近(物体距離630mm)の各フォーカシング位置(合焦位置)における、レンズシステム10の合成焦点距離、F値(Fno)、画角(度)、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2の間の距離d6、第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3の間の距離d9、および第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との距離(具体的には絞りStまでの距離)d16を示している。
【0024】
図1に記載されたレンズシステム10に基づき本発明のレンズシステムをさらに説明する。レンズシステム10は、撮像用のレンズシステムであって、物体側11から順番に配置された、負の屈折力の第1のレンズ群G1と、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、正の屈折力の第4のレンズ群G4とから構成された、全体として4群構成でレトロフォーカスタイプの、中望遠のレンズに適したレンズシステムである。レンズシステム10は、無限遠から最至近へフォーカシングの際に、光軸15に沿った第1のレンズ群G1と第2のレンズ群G2との距離d6が広がり、第2のレンズ群G2と第3のレンズ群G3との距離d9が縮まり、第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との距離d16(絞りStを含まなければ、d16+d17)が広がる。すなわち、フォーカシングの際に、第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3が光軸15に沿って独立して移動し、第4のレンズ群G4は、第4のレンズ群G4の物体側11に配置された絞りStとともに動かず、像面5に対して固定されている。
【0025】
さらに具体的には、このレンズシステム10においては、無限遠から最至近へフォーカシングの際に、第1のレンズ群G1は、像面5に対して固定され、第2のレンズ群G2は像面側12に移動し、第3のレンズ群G3は物体側11に移動する。したがって、このレンズシステム10は、フォーカシングの際に、最も物体側11の第1のレンズ群G1と、最も像面側12の第4のレンズ群G4が動かず、レンズシステム10の全長が一定で、第2のレンズ群G2と第3のレンズ群G3とが移動するインナーフォーカスタイプのレンズシステムである。
【0026】
このレンズシステム10においては、無限遠から最至近へのフォーカスの際に、負群の第1のレンズ群G1と、正群の第2のレンズ群G2との距離が離れることで、前側(物体側)11のピント位置を近距離へと移動させることができる。一方、第1のレンズ群G1と第2のレンズ群G2との距離が開き、第2のレンズ群G2と第4のレンズ群G4との距離が近付くことにより、第1のレンズ群G1と第2のレンズ群G2との合成したパワーと比較して、第2のレンズ群G2と第4のレンズ群G4との合成したパワーは強くなり、主点位置が像面側12にずれる。それによりレンズシステム10の全系の焦点距離が短焦点側へ変動し、かつ、正群の第2のレンズ群G2へ入射する光線のうち、軸上光線の光線高(軸上マージナル光線から光軸15までの光軸15と直交する方向の高さ)が高くなる。しかしながら、正群の第3のレンズ群G3を第2のレンズ群G2に接近するように物体側11へ移動することにより、第2のレンズ群G2の移動による全系の焦点距離の変動を補正することができ、レンズシステム10全体の正のパワーを前側へ移動して主点位置を元に戻しつつ、光線高が高くなった光線を第3のレンズ群G3により収束するように折り曲げて第4のレンズ群G4に入射させることができる。
【0027】
なお、ここでいう軸上光線とは、光軸上に配置される光点から出射されて絞りStを通過する光線であり、軸上光線の主光線を軸上主光線とする。また、軸上光線のマージナル光線(軸上マージナル光線)とは、光軸上に配置される光点から出射した光線の内、最も軸上主光線から離れた光線(光学系の入射瞳の端を通過する光線)であり、軸上光線の光束の幅である光線幅を規定する光線と規定する。
【0028】
このため、第4のレンズ群G4とともに絞りStを固定しても、絞りStで光線を蹴られないようすることができる。したがって、フォーカシングの際に絞りStを固定することにより、F値の変動を抑制できる。さらに、絞りStの物体側11に、フォーカシングの際に移動するレンズ群を集中配置できるので、レンズの移動機構に絞りStが巻き込まれることを防止でき、簡易な構造で、最至近から無限遠まで良好なフォーカス性能が得られるレンズシステム10を提供できる。さらに、フォーカシングによるF値の変動が少なく、明るさの変動の少ない画像を容易に取得できるレンズシステム10を提供できる。
【0029】
さらに、フォーカシングの際に、レンズシステム10の全長は不変で、フォーカシングの際に移動するレンズ群は隣接している第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3に限定することができるので駆動機構を簡素化できる。また、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3の移動方向は逆になるので、レンズシステム10の全体としては重心の変化は小さい。したがって、取り回しが容易で、ハンディータイプも可能なレンズシステム10を提供できる。
【0030】
このレンズシステム10においては、第2のレンズ群G2の焦点距離f2と、第3のレンズ群G3の焦点距離f3とは以下の条件(1)を満たしてもよい。
1.0 ≦ f2/f3 ≦ 1.5・・・(1)
第2のレンズ群G2の移動の影響を第3のレンズ群G3の移動により補償するために、それぞれのレンズ群G2およびG3の屈折力はほぼ等しいことが望ましい。このため、条件(1)の下限を超えると、第3のレンズ群G3の屈折力が小さくなりすぎて球面収差および軸上色収差を良好に補正しにくくなる。条件(1)の上限を超えると、第2のレンズ群G2の屈折力が小さくなりすぎて球面収差を良好に補正しにくくなる。
【0031】
また、第2のレンズ群G2の移動量FL1と、第3のレンズ群G3の移動量FL2とは以下の条件(2)を満たしてもよい。
2.5 ≦ FL1/FL2 ≦ 4.5・・・(2)
第2のレンズ群G2は、無限遠から最至近までのフォーカシング性能を得るための移動量FL1を確保する必要がある。すなわち、レンズシステム10は、負群の第1のレンズ群G1と正群の第2のレンズ群G2との距離を、より離すことにより、レトロフォーカス的構成により主点位置が移動して焦点距離を短くするとともに、物体側11の結像位置を像面側(カメラ側)12に近付ける作用を発揮する。また、この際の焦点距離の変動を抑制するために、第2のレンズ群G2の像面側12に配置される正群の第3のレンズ群G3を物体側11に近付けることでレンズシステム10の中間付近の正のパワーを強めて負群の第1のレンズ群G1により広がった軸上光線の光線高を狭めつつ、それとともに光学系の後方側(絞りよりも像側)の正のパワーを弱めることで主点位置を元に戻している。
【0032】
したがって、条件(2)において、下限を下回ると第3のレンズ群G3の移動量FL2が大きくなりすぎるため、相対的に第2のレンズ群G2の移動量FL1を確保できなくなり、第2のレンズ群G2を第1のレンズ群G1から引き離すことができず、十分な結像位置の調整および各収差の補正を行うことが難しくなる。このため、球面収差、像面湾曲および倍率色収差の補正が難しくなる。また、逆に、条件(2)の上限を超えると、第2のレンズ群G2の移動量FL1が大き過ぎるため、第3のレンズ群G3の移動量FL2が少なくなり過ぎて、第2のレンズ群G2の移動による焦点距離の移動の補正をしきれずに画角が大きく変化して、かつ、像面湾曲の補正が難しくなる。
【0033】
このレンズシステム10は、第2のレンズ群G2が第1の接合レンズB1で構成され、第3のレンズ群G3が第2の接合レンズB2を含み、第4のレンズ群G4が第3の接合レンズB3および第4の接合レンズB4を含む。第2のレンズ群G2の接合レンズB1と、第3のレンズ群G3の第2の接合レンズB2とは、それぞれフォーカシングの際に独立して移動する。このため、それぞれの接合レンズB1およびB2によりフォーカスによる軸上色収差および倍率色収差の変動を、分担して補正できる。特に、軸外光線の光線高(最も光軸15から離間した軸外マージナル光線から光軸15までの光軸15と直交する方向の高さ)の高い光線が入射する接合レンズB1は倍率色収差に対する補正能力が高く、軸外光線の光線高の低い光線が入射する接合レンズB2は軸上色収差に対する補正能力が高い。
【0034】
なお、ここでいう軸外光線とは、光軸外に配置される光点から出射されて絞りStを通過する光線の主光線の内、最も物体側11のレンズ面に入射する主光線と光軸15との成す角が最も大きくなる光線である。また、軸外光線の主光線を軸外主光線と規定する。軸外光線のマージナル光線(軸外マージナル光線)とは、軸外光線の内、最も軸外主光線から離れた光線であり、軸外光線の光束の幅である光線幅を規定する光線である。ちなみに、軸外マージナル光線は、軸外主光線と直交する光束断面上において、位置により光軸15との距離が異なる。そのため、最も物体側11に配置されたレンズ面に入射する軸外マージナル光線の内、光軸15との距離が最も大きい(離間した)光線を下側マージナル光線と規定し、光軸15との距離が最も小さい(近接した)光線を上側マージナル光線とする。
【0035】
さらに、第3のレンズ群G3は、第2の接合レンズB2の物体側11に配置された少なくとも1枚の物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズを含む。本例においては、第3のレンズ群G3は、接合レンズB2の物体側11に、2枚の物体側11に凸の正メニスカスレンズL31およびL32を含む。
【0036】
正メニスカスレンズL31およびL32は、軸上のマージナル光線を強く軸上主光線側に収束するように折り曲げて軸上光線の光線高を狭める方向に作用する。したがって、正メニスカスレンズL31およびL32の像面側12に配置された第2の接合レンズB2、およびそれに続く絞りStを小型化できる。一方、正メニスカスレンズL31およびL32は、軸上光線に関係する収差を発生させる。しかしながら、正メニスカスレンズL31およびL32は、物体側11に凸面を向けて配置されており、球面収差の発生を抑制され、かつ、2枚に分割されているので個々のレンズの面の曲率を緩やかにできる。このため、正メニスカスレンズL31およびL32による球面収差を含む収差の発生が抑制される。また、軸外光線においては、正メニスカスレンズL31およびL32の物体側11の凸面の周辺側へ入射する光線程、光軸15側に折り曲げられるが、像面側12の凹面により逆側へ曲げられる。このため、結果として軸外主光線及び軸外マージナル光線の入射角および出射角のバランスが崩れないまま収束させることが可能となる。したがって、バランスの崩れによって生じる収差を抑制することが可能となる。
【0037】
この第3のレンズ群G3においては、物体側11に凸の正メニスカスレンズL31およびL32を配置することで、軸上光線の光線高を効果的に小さくして、その像面側12に配置された接合レンズB2のレンズ径を小型化できる。また、正メニスカスレンズL31およびL32により軸外光線の上側マージナル光線および下側マージナル光線による光線幅(軸外主光線と直交する断面における上側マージナル光線から下側マージナル光線までの距離)を収束し、その像面側12に配置された負のパワーを有する接合レンズB2により発生するコマ収差と逆側のコマ収差を発生させることで、全体としてコマ収差を抑制できる。また、第3のレンズ群G3の物体側11に配置される正メニスカスレンズは1枚でもよいが、正メニスカスレンズを2枚に分割することで、各レンズL31およびL32にパワーを分散し、個々のレンズのパワーを弱めたり、曲率半径を緩めることが可能となり、各収差の発生をさらに抑制している。
【0038】
第1の接合レンズB1を、像面側12に凸のメニスカスレンズとし、第2の接合レンズB2を、物体側11に凸のメニスカスレンズとしてもよい。絞りStの物体側11に、物体側11に凸(像面側12に凹)のメニスカスレンズ型の接合レンズB2を配置することにより絞りStを小型化できる。また、接合レンズB2の物体側11に、反対方向を向いたメニスカス型の接合レンズB1を配置することにより、これらの接合レンズB1およびB2で発生する球面収差を効果的に補正できる。また、接合レンズB1は、物体側11から負-正の組み合わせであり、接合レンズB2は、物体側11から正-負の組み合わせであり、面形状に加えてパワー配置も対象になっており、球面収差をより効果的に抑制できる。
【0039】
さらに、レンズシステム10は、上述したように、第4のレンズ群G4は、物体側11に配置された第3の接合レンズB3と、像面側12に配置された第4の接合レンズB4とを含む。したがって、レンズシステム10は、絞りStを挟んで、第1の接合レンズB1および第2の接合レンズB2と、第3の接合レンズB3および第4の接合レンズB4とが対称的に配置されており、絞りStで分けたそれぞれの光学系の中で独立して収差を分担して補正できる。このため、レンズシステム10の全体として高い色収差補正能力を備えている。
【0040】
さらに、第1の接合レンズB1の有効径B1Dと、第2の接合レンズB2の有効径B2Dと、第3の接合レンズB3の有効径B3Dと、第4の接合レンズB4の有効径B4Dとが以下の条件(3)を満たしてもよい。
B1D > B2D
B3D < B4D・・・(3)
各接合レンズの代表的な有効径としては、最も物体側11の面の有効径Diを採用でき、本レンズシステム10においては、以下の条件(3a)とすることができる。
D7 > D14
D18 < D23・・・(3a)
【0041】
また、第1の接合レンズB1の正の屈折力のレンズL22のアッベ数B1p(ν8)と負の屈折力のレンズL21のアッベ数B1m(ν7)との差と、第2の接合レンズB2の正の屈折力のレンズL33のアッベ数B2p(ν14)と負の屈折力のレンズL34のアッベ数B2m(ν15)との差と、第3の接合レンズB3の正の屈折力L42のレンズのアッベ数B3p(ν19)と負の屈折力のレンズL41のアッベ数B3m(ν18)との差と、第4の接合レンズB4の正の屈折力のレンズL45のアッベ数B4p(ν24)と負の屈折力のレンズL45のアッベ数B4m(ν23)との差とが以下の条件(4)を満たしてもよい。
|B1p-B1m| < |B2p-B2m|
|B3p-B3m| > |B4p-B4m|・・・(4)
【0042】
このレンズシステム10は合計4つの接合レンズB1~B4を含む。条件(3)または(3a)を満足すると、これら4つの接合レンズB1~B4は、物体側11から軸外光線の光線高を見て、「高い-低い-低い-高い」の順で並ぶ。また、条件(4)を満足すると、4つの接合レンズB1~B4を形成する正レンズと負レンズのアッべ数の差が、「小さい-大きい-大きい-小さい」の順で並ぶ。このため、レンズシステム10の全体としてみると、絞りStを挟んで、光線高およびアッベ数の差について、2つの接合レンズB1およびB2と、B3およびB4とを対称的な配置で並べることができる。したがって、レンズシステム10は、高い色収差補正能力を有する。
【0043】
また、このレンズシステム10は、絞りStの前後で、第3のレンズ群G3は、最も像面側12の、絞りStの物体側11に配置された接合レンズB2であって、像面側12の面S16が物体側11に凹の面を含む接合レンズB2を含む。また、第4のレンズ群G4は、最も物体側11の、絞りStの像面側12に配置された接合レンズB3であって、物体側11の面S18が像面側12に凹の面を含む接合レンズB3を含む。軸外光線の光線高が低くなる絞りStの前後に接合レンズB2およびB3を配置することで、軸上色収差を重点的に補正することができる。また、接合レンズB2およびB3の凹面同士を向かい合わせることで、反対方向のコマ収差及び歪曲収差をそれぞれで発生させることで相殺し、効率よく収差補正を行うことができる。
【0044】
さらに、接合レンズB2は、物体側11から正のパワーのレンズL33および負のパワーのレンズL34の組み合わせとなり、接合レンズB3は、物体側11から負のパワーのレンズL41および正のパワーのレンズL42の組み合わせとなっている。このため、接合レンズB2およびB3により、絞りStを挟んで正負-負正と対称形にレンズを配置でき、球面収差や軸上色収差、コマ収差等の軸上収差を効果的に補正することができる。具体的には、絞りStの物体側11の凹面S16を有するレンズL34は、物体側11に凸の負のパワーを有する負のメニスカスレンズであり、正のパワーを有する物体側11に凸の正のメニスカスレンズL33と接合レンズB2を構成する。絞りStの像面側12の凹面S18を有するレンズL41は、両凹の負レンズであり、両凸の正レンズL42と接合レンズB3を構成する。
【0045】
さらに、接合レンズB2およびB3の絞りStに面した、物体側11に凹の面S16の曲率半径g3er(r16)と、像面側12に凹の面S18の曲率半径g4fr(r18)とが以下の条件(5)を満たしてもよい。
2.5 ≦ |g4fr/g3er| ≦ 4.0・・・(5)
絞りStの両側に配置された接合レンズB2およびB3により、絞りStを中心とした対称的なアレンジを構成することにより上記のように収差補正を良好に行うことができる。その一方、絞りStの物体側11の凹面S16の曲率半径r16よりも、像面側12の凹面S18の曲率半径r18を緩やかにする、非対称な構成を加えることにより、レトロフォーカス型で、絞りStの後の公差感度が敏感な第4のレンズ群G4の感度を緩めることが可能となる。したがって、収差が良好に補正され、性能が安定した、取扱いが容易なレンズシステムを提供できる。
【0046】
また、絞りStの像面側12の面S18に対する軸外光線の入射角を小さくすることができる。このため、アンダーのコマ(内向コマ)の発生を抑制できるという効果も得られる。したがって、条件(5)の下限を下回ると、球面収差および像面湾曲の補正が難しくなり、条件(5)の上限を上回ると、球面収差および軸上色収差の補正が難しくなる。
【0047】
また、レンズシステム10の絞りStの物体側11に配置された第2の接合レンズB2および絞りStの像面側12に配置された第3の接合レンズB3は負の屈折力を含み、第2の接合レンズB2の焦点距離B2fおよび第3の接合レンズB3の焦点距離B3fは以下の条件(6)を満たしてもよい。
1.7 ≦ B3f/B2f ≦ 3.0・・・(6)
負のパワーの第1のレンズ群G1が先行するレトロファーカスタイプのレンズシステム10において、絞りStの前後に対称的に接合レンズB2およびB3を配置して収差の補正性能を向上するとともに、物体側11の接合レンズB2のパワーを像面側12の接合レンズB3よりも強くする非対称な構成とすることにより、絞りStの物体側11でより強く光線を絞り、絞りStを含めて像面側12の構成をコンパクトにすることができる。条件(6)の上限を超えると、接合レンズB2に対する接合レンズB3のパワーが弱くなり過ぎるため、接合レンズB2で発生する球面収差の相殺が難しくなり、また、接合レンズB2とのバランスが崩れ、十分な軸上色収差の補正が難しくなる。逆に、条件(6)の下限を下回ると、接合レンズB2に対する接合レンズB3のパワーが強くなりすぎるため、接合レンズB2とのバランスが崩れ軸上色収差の補正が難しくなり、さらに、接合レンズB3の軸外光線を発散させる能力が強くなるため、接合レンズB3から出射される軸外光線の主光線に対する軸外光線の上側及び下側マージナル光線の出射角度が発散してしまう。このため、軸外光線の軸外主光線及び軸外マージナル光線のバランスが崩れ、倍率色収差の補正が難しくなる。したがって、条件(6)の下限を下回ると、軸上色収差および倍率色収差の補正が難しくなり、条件(6)の上限を上回ると、球面収差および軸上色収差の補正が難しくなる。
【0048】
第4のレンズ群G4は、さらに、絞りStの像面側12に配置された接合レンズB3の像面側12に配置された物体側11に凹の正の屈折力のメニスカスレンズL43を含む。像面側12に凸の第4のレンズG4の像面側12に近接して、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL43を配置することにより、軸外光線の光線幅を軸外主光線に対する上側マージナル光線との幅と、下側マージナル光線との幅とのバランスを調整することで軸外光線に発生する各収差を補正することが可能となる。
【0049】
さらに、接合レンズB3の像面側12の、像面側12に凸の面S20の曲率半径B3er(r20)と、正の屈折力のメニスカスレンズL43の物体側11の、物体側11に凹の面S21の曲率半径Lbfr(r21)とは以下の条件(7)を満たしてもよい。
1.35 ≦ |B3er/Lbfr| ≦ 1.55・・・(7)
接合レンズB3の像面側12の凸面S20の曲率r20(B3er)を、正のメニスカスレンズL43の物体側11の凹面S21の曲率r21(Lbfr)よりも大きく(緩く)することで、凸面S20から出射した軸外光線は光線幅を縮小する方向に収束し、凹面S21により収束気味の軸外光線を略平行に直すことができる。その際に、凸面S20から出射された軸外光線は、全体として光軸から離れる方向へ屈折するが、上側マージナル光線から下側マージナル光線へ向かうにつれて、より強く光線が曲げられる。このため、結果として軸外光線は収束する。すなわち、光軸15と交差した軸外光線は、凹面S21へ入射する際に、凹面S21の光軸15に対して一方側の曲面へ、全ての光線が入射する。そのため、凸面S20に対する入射角が光軸15に近い光線程大きくなり、より大きく曲がる。これにより、軸外光線の光線幅を主光線に対する上側マージナル光線との幅と、下側マージナル光線との幅とのバランスを調整でき、軸外光線に発生する各収差を補正することが可能となる。
【0050】
条件(7)の上限を超えると、凹面S21のパワーが強くなり、凹面S21に入射した軸外光線の軸外主光線に対する軸外マージナル光線が発散してしまい、軸外光線の光線幅や角度のバランスが崩れ、球面収差および倍率色収差の補正が難しくなる。逆に、条件(7)の下限を下回ると、凹面S21のパワーが弱くなり、凹面S21に入射した収束気味の軸外光線を略平行に戻すことができず、軸外光線の光線幅や角度のバランスが崩れ、球面収差および軸上色収差の補正が難しくなる。
【0051】
第4のレンズ群G4は、正の屈折力のメニスカスレンズL43の像面側12に配置された接合レンズ(第4の接合レンズ)B4を含む。正メニスカスレンズL43の像面側12の、像面側12に凸の面S22の曲率半径Lber(r22)と、第4の接合レンズB4の物体側11の、物体側11に凹の面S23の曲率半径B4fr(r23)とは以下の条件(8)を満たしてもよい。
1.03 ≦ |Lber/B4fr| ≦ 1.07・・・(8)
【0052】
正メニスカスレンズL43と、その像面側12に隣接した第4の接合レンズB4の間に空気レンズ(空気レンズ部)を作り、メニスカスレンズL43の像面側12の面S22と第4の接合レンズB4の物体側11の面s23とを近接させ、条件(8)を満足することにより周辺部の距離をほぼ0にするができる。この空気レンズにおいては、正メニスカスレンズL43の像面側12の凸面S22から出射した軸外光線の上側および下側マージナル光線を、軸外主光線側へ収束するように曲げる。その際に、空気レンズのレンズ厚は上側マージナル光線から下側マージナル光線へ向かうにつれて厚くなる。このため、上側マージナル光線よりも下側マージナル光線のほうが軸外主光線側へ収束し、また、軸外主光線は略垂直で入射するため曲がらない。結果として、空気レンズでは、下側マージナル光線が主に収束するように光線幅が縮小する。
【0053】
その後、収束気味の軸外光線が、第4の接合レンズB4の物体側11の凹面S23に入射する。その際、軸外主光線は略垂直に入射して曲がらないが、上側及び下側マージナル光線は軸外主光線から離れる方向に発散する。さらに、上側マージナル光線の方が下側マージナル光線よりも発散する方向に曲げられる。結果として、空気レンズの存在により、上側マージナル光線と主光線との間の幅に比べ、下側マージナル光線と軸外主光線との間の幅が優先的に狭められるように収束する。このため、より軸外光線のバランスを調整することが可能となり、各収差を良好に補正する。
【0054】
条件(8)の上限を超えると、凸面S22と比較して凹面S23の曲率が小さく(きつく)なりすぎるため、空気レンズ部からの出射光線が強く発散され過ぎてしまう。このため、軸外マージナル光線と軸外主光線とのバランスが崩れ、球面収差および像面湾曲の補正が難しくなる。また、条件(8)の下限を下回ると、逆に凸面S22の曲率が凹面S23の曲率の絶対値に近づく。このため、空気レンズからの出射光線の発散が弱くなり過ぎてしまい、やはり軸外マージナル光線と軸外主光線とのバランスが崩れ、球面収差および軸上色収差の補正が難しくなる。
【0055】
絞りStの像面側12に配置された第3の接合レンズB3の像面側12の、像面側12に凸の面S20と、正の屈折力のメニスカスレンズL43の物体側11の、物体側11に凹の面S21との光軸15上の距離Ld41(d20)と、正の屈折力のメニスカスレンズL43の像面側12の、像面側12に凸の面S22と、正の屈折力のメニスカスレンズL43の像面側12に配置された第4の接合レンズB4の物体側11の、物体側11に凹の面S23との光軸15上の距離Ld43(d22)とは以下の条件(9)を満たしてもよい。
7 ≦ Ld41/Ld43 ≦ 23・・・(9)
【0056】
条件(9)の下限を下回ると、正メニスカスレンズL43と第4の接合レンズB4との間の空気レンズが厚くなりすぎて球面収差および像面湾曲の補正が難しくなる。条件(9)の上限を超えることは、メカ的にレンズ間隔を調整できる限界を超えてしまうため難しい。
【0057】
また、絞りStの像面側12に配置された第3の接合レンズB3の像面側12の、像面側12に凸の面S20と、正の屈折力のメニスカスレンズL43の物体側11の、物体側11に凹の面S21との光軸15上の距離Ld41(d20)と、正の屈折力のメニスカスレンズL43の光軸15上の厚さLd42(d21)とは以下の条件(10)を満たしてもよい。
0.6 ≦ Ld41/Ld42 ≦ 1.0・・・(10)
条件(10)の上限を超えると、第3の接合レンズB3と正メニスカスレンズL43との間の間隔Ld41(d20)が、正メニスカスレンズL43の厚みLd42(d21)よりも厚くなる。このため、間隔Ld41へ入射した光線の内、軸外主光線および軸外マージナル光線が収束し過ぎてしまい、特に、上側マージナル光線と比較して軸外主光線及び下側マージナル光線の収束方向に対する曲がり方は強い。結果として、軸外主光線と軸外マージナル光線との間の幅のバランスが崩れたまま収束し過ぎるため、球面収差および倍率色収差を過剰に補正してしまう。逆に、条件(10)の下限を下回ると、間隔Ld41(d20)が厚みLd42(d21)に比べて薄くなりすぎるため、軸外光線が十分に収束できないまま正メニスカスレンズL43へ入射する。このため、球面収差および倍率色収差の補正が難しくなる。
【0058】
上記のように、正のパワーの第2のレンズ群G2、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4を構成することにより、良好に収差が補正されたレンズシステム10を提供できる。さらに、このレンズシステム10は、負のパワーが先行するレトロフォーカスタイプであり、第1のレンズ群G1の焦点距離f1と、第2のレンズ群G2の焦点距離f2とが以下の条件(11)を満たしてもよい。
1.0 ≦ |f2/f1| ≦ 1.15・・・(11)
条件(11)において、上限を上回ると、負群である第1のレンズ群G1の焦点距離f1に対して、正群である第2のレンズ群G2の焦点距離f2が大き過ぎ、第1のレンズ群G1に対して第2のレンズ群G2のパワーが不足する。このため、第2のレンズ群G2を移動させて第1のレンズ群G1との間の距離を変化させたとしても、レンズシステム10の内部における各群同士の合成した際のパワー配置を十分に変化させることができず、フォーカス位置の調整が難しくなる。さらに、負群の第1のレンズ群G1に対して正群の第2のレンズ群G2のパワーが弱くなることにより、負のパワーに対する正のパワーのバランスが崩れて軸上色収差の補正が難しくなる。
【0059】
逆に、条件(11)の下限を下回ると、負の第1のレンズ群G1に対して正の第2のレンズ群G2の焦点距離が小さ過ぎ、第1のレンズ群G1のパワーに対して第2のレンズ群G2のパワーが強くなりすぎる。このため、フォーカス時の正群の第2のレンズ群G2の移動量を減らすという点では有利ではあるが、正の第2のレンズ群G2のパワーが強くなり過ぎ、負の第1のレンズ群G1に対する正のパワーバランスが崩れて軸上色収差の補正が過剰となり、補正が難しくなる。また、正の第2のレンズ群G2から出射される軸上の軸上主光線と軸上マージナル光線とのバランスおよび軸外光線の軸外主光線と軸外マージナル光線とのバランスが崩れてフォーカス前後における収差の変動が大きくなる。
【0060】
また、第1のレンズ群G1は、最も物体側11に、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスの第1のレンズL11を含んでもよい。光線高が大きくなる最も物体側11に凸レンズL11を配置することで、その像面側12に配置される負のパワー構成により発生する歪曲収差等の収差を効果的に補正することが可能となる。また、凸レンズL11を、特に物体側11に凸面を向けたメニスカスレンズにすることで、凸レンズL11で発生する球面収差を抑制しながら、パワーを強くせずに光線高を効果的に小さくできる。このため、色収差等の発生も抑制しながら後方のレンズ径の増大を抑制することが可能となる。
【0061】
さらに、第1のレンズ群G1は、正メニスカスレンズL11に隣接して配置された負の屈折力の第2のレンズL12を含み、第1のレンズL11の光軸上の厚みLd1(d1)と、第1のレンズL11と第2のレンズL12との光軸15上の距離Ld12(d2)とは以下の条件(12)を満たしてもよい。
0.35 ≦ Ld12/Ld1 ≦ 0.70・・・(12)
条件(12)において、上限を超えると、レンズの間隔Ld12(d2)が大きくなりすぎるため、正メニスカスレンズL11から出射した軸外光線及び軸上光線が収束し過ぎて光線高が小さくなり過ぎてしまう。このため、第1のレンズ群G1の正メニスカスレンズL11の像面側12に配置される第2のレンズL12を含む負レンズ群により発生する収差に対する、正メニスカスレンズL11の補正能力が過剰となり、球面収差および像面湾曲が強く発生してしまう。
【0062】
逆に、条件(12)の下限を下回ると、レンズの間隔Ld12(d2)が小さくなりすぎるため、正メニスカスレンズL11から出射した軸外光線および軸上光線が収束しきれず光線高が高い状態で第1のレンズ群G1の像面側12の負のメニスカスレンズL12へ光線が入射してしまう。このため、負のメニスカスレンズL12による発散能力が強く作用し、正メニスカスレンズL11による、第1のレンズ群G1の負レンズ群により発生する収差の補正能力が不足する。したがって、球面収差および軸上色収差の補正が難しくなる。
【0063】
図1に示したレンズシステム10は、
図3にまとめて示すように、無限遠から最至近距離630mmまでのフォーカスレンジを備えた、無限遠における焦点距離が95mmの中望遠タイプのレンズである。レンズシステム10は、全16枚構成で、全長(最も物体側11のレンズ面から最も像面側12のレンズ面までの距離)LAが169.72mm、撮像面5までの距離が219.96mmの比較的コンパクトなレンズシステムであり、第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3がフォーカシングの際に移動するインナーフォーカスタイプのレンズシステムである。各焦点距離におけるF値は1.68と一定で小さい値であり、フォーカシング(合焦)の際に絞りStが移動せず、F値が変動しないレンズシステムとなっている。
【0064】
図4に示すように、第4のレンズ群G4の像面側12に凸の負メニスカスレンズL46の像面側12の面27が非球面となっている。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、
図4に示した係数K、A、B、C、D、EおよびFを用いて次式(X)で表わされる。以降の実施形態においても同様である。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y
2/[1+{1-(1+K)(1/R)
2Y
2}
1/2]
+AY
4+BY
6+CY
8+DY
10+EY
12+FY
14・・・(X)
【0065】
図5から
図7に、レンズシステム10の無限遠、標準距離および最至近にフォーカスしたときの諸収差を示している。
図5(a)、
図6(a)および
図7(a)は、球面収差、非点収差、歪曲収差を示し、
図5(b)、
図6(b)および
図7(b)は横収差を示している。球面収差は、波長435.8nm(二点鎖線)と、波長486.1nm(一点鎖線)と、波長546.1nm(破線)と、波長587.6nm(実線)と、656.3nm(長破線)とを示している。非点収差はタンジェンシャル光線Tとサジタル光線Sとを示している。また、横収差をタンジェンシャル光線およびサジタル光線のそれぞれについて、上記と同じ波長について示している。
【0066】
本例のレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。
第1のレンズ群G1の焦点距離f1: -131.56mm
第2のレンズ群G2の焦点距離f2: 135.28mm
第3のレンズ群G3の焦点距離f3: 113.40mm
第4のレンズ群G4の焦点距離f4: 66.61mm
第2のレンズ群G2の移動距離FL1: 17.02mm
第3のレンズ群G3の移動距離FL2: 5.51mm
第1の接合レンズB1の焦点距離B1f: 135.28mm
第2の接合レンズB2の焦点距離B2f: -85.57mm
第3の接合レンズB3の焦点距離B3f: -168.27mm
第4の接合レンズB4の焦点距離B4f: -21148.18mm
条件(1)(f2/f3): 1.19
条件(2)(FL1/FL2): 3.09
条件(3)(B1D>B2D、B3D<B4D
(D7>D14、D18<D23)):
(53.18>45.56、31.60<31.72)
条件(4)(|B1p-B1m|<|B2p-B2m|、
|B3p-B3m|>|B4p-B4m|):
(|44.20-25.43|<|94.66-34.71|、
|81.55-31.08|>|40.77-34.71|)
条件(5)(|g4fr/g3er|(|r18/r16|)): 3.08
条件(6)(B3f/B2f): 1.97
条件(7)(|B3er/Lbfr|(|r20/r21|)): 1.51
条件(8)(|Lber/B4fr|(|r22/r23)): 1.04
条件(9)(Ld41/Ld43(d20/d22)): 11.29
条件(10)(Ld41/Ld42(d20/d21)): 0.70
条件(11)(|f2/f1|): 1.03
条件(12)(Ld12/Ld1(d2/d1)): 0.45
【0067】
以上に示したように、
図1に示したレンズシステム10は、長さが固定されたコンパクトなレンズシステムであり、4群16枚構成のレンズシステムであるが、フォーカシングの際の重心の移動が少なく、取り扱い(取り回し)が容易なレンズシステムである。さらに、このレンズシステム10においては、フォーカシングの際にFNoは固定され、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、レンズシステム10は、条件(1)~(12)を満足する。また、
図5~
図7に示したように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0068】
また、このレンズシステム10においては、フォーカシングは絞りStの物体側11に配置された第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3で行われ、絞りStから離して、焦点距離の調整機能(機構)を絞りStの前方に集中できる。したがって、これらの機構も簡易化でき、さらに軽量、高性能でコンパクトなレンズシステム10および撮像装置1を提供できる。
【0069】
図8に、撮像装置1の異なる例を示している。この撮像装置(カメラ)1も、光学系(撮像光学系、結像光学系、レンズシステム)10と、レンズシステム10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。レンズシステム10は、撮像用の光学系であって、4群15枚構成のレンズシステムである。
図8(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図8(b)は、フォーカス位置が最近接(近距離、630mm)におけるレンズ配置を示している。
【0070】
このレンズシステム10も4群構成であり、最も物体側11の合成屈折力(パワー)が負の第1のレンズ群G1、および最も像面側12の合成屈折力(パワー)が正の第4のレンズ群G4は、フォーカシングに際して移動せず、像面5に対する距離が変わらない固定されたレンズ群である。また、第4のレンズ群G4の物体側11に配置された絞り(開口絞り)Stも、像面5に対する距離は変わらず、固定されている。第1のレンズ群G1の像面側12に配置された正の屈折力の第2のレンズ群G2は、無限遠から最至近にフォーカス位置が移動すると、像面側12に単調に移動する。第2のレンズ群G2の像面側12に配置された正の屈折力の第3のレンズ群G3は、無限遠から最至近にフォーカス位置が移動すると、物体側11に単調に移動する。
【0071】
図9に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図10に、焦点距離が無限遠、標準(2280mm)および最至近(630mm)のときの、焦点距離、F値および可変間隔d6、d9、およびd16の値を示している。
図11に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示している。この例では、第4のレンズ群G4の像面側12の負メニスカスレンズL46の像面側12の面S25が非球面となっている。
【0072】
図12~
図14に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、標準、最至近のそれぞれの球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示している。
図12(a)、
図13(a)および
図14(a)は、球面収差、非点収差、歪曲収差を示し、
図12(b)、
図13(b)および
図14(b)は横収差を示している。
【0073】
このレンズシステム10の基本的な構成は
図1に示したレンズシステム10と共通する。第1のレンズ群G1は、最も物体側11に固定された(フォーカシングの際に移動しない)負のパワーのレンズ群であり、物体側11から順に配置された、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL11と、物体側11に凸の負の屈折力のメニスカスレンズL12と、両凹の負レンズL13の3枚構成であり、正-負-負のパワー配置を備える。無限遠から最至近へフォーカシングの際に光軸15に沿って第1のレンズG1との距離d6が広がるように像面側12に移動する正の屈折力の第2のレンズ群G2は、物体側11から両凹の負レンズL21と両凸の正レンズL22との2枚構成であり、負-正のパワー配置を備え、負レンズL21および正レンズL22により、全体として像面側12に凸の正の屈折力の第1の接合レンズB1が構成されている。
【0074】
無限遠から最至近へフォーカシングの際に光軸15に沿って第1のレンズG1および第2のレンズ群G2との距離が縮まるように物体側11に移動する、全体として正の屈折力の第3のレンズ群G3は、物体側11から順に配置された、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL31と、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL32と、物体側11に凸の正の屈折力のメニスカスレンズL33と、像面側12に凹の負の屈折力のメニスカスレンズL34との4枚構成であり、正-正-正-負のパワー配置を備える。正のメニスカスレンズL33および負のメニスカスレンズL34により、全体として物体側11に凸(像面側12に凹)の負の屈折力の第2の接合レンズB2が構成されている。
【0075】
最も像面側12に配置された、正の屈折力の第4のレンズ群G4は、物体側11から順に配置された、両凹の負レンズL41と、両凸の正レンズL42と、両凹の負レンズL43と、両凸の正レンズL44と、像面側12に凸の負のメニスカスレンズL45と、両凸の正レンズL46との6枚構成であり、負-正-負-正-負-正のパワー配置を備える。負レンズL41と正レンズL42とにより、全体として物体側11に凹(像面側12に凸)の負の屈折力の第3の接合レンズB3が構成されている。また、第3の接合レンズB3の像面側12に隣接して、両凹の負レンズL43と両凸の正レンズL44とにより、全体として物体側11に凹(像面側12に凸)の負の屈折力の第4の接合レンズB4が構成されている。したがって、このレンズシステム10においては、
図1に示したレンズシステムに対し、第3の接合レンズB3と第4の接合レンズB4との間に配置された像面側12に凸の正メニスカスレンズが省かれており、第4の接合レンズB4が全体として正の屈折力の接合レンズとなっている。
【0076】
第4のレンズ群G4の物体側11に絞りStが配置されており、絞りStは、物体側11に第2の接合レンズB2が他のレンズを挟まずに配置され、像面側12に第3の接合レンズB3が他のレンズを挟まずに配置されている。
【0077】
図10にまとめて示すように、本例のレンズシステム10も、無限遠から最至近距離630mmまでのフォーカスレンジを備えた、無限遠における焦点距離が95mmの中望遠タイプのレンズである。レンズシステム10は、全15枚構成で、全長(最も物体側11のレンズ面から最も像面側12のレンズ面までの距離)LAが129.9mm、撮像面5までの距離が176.68mmのさらにコンパクトなレンズシステムであり、第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3がフォーカシングの際に移動するインナーフォーカスタイプのレンズシステムである。各焦点距離におけるF値は1.68と一定で小さい値であり、フォーカシング(合焦)の際に絞りStが移動せず、F値が変動しないレンズシステムとなっている。
【0078】
このレンズシステム10の諸数値および各条件の値は以下の通りである。なお、本例のレンズシステム10においては、第4のレンズ群G4は第3の接合レンズB3および第4の接合レンズB4が隣接しており、正メニスカスレンズが省略されているので、条件(7)~(10)は評価の対象とならない。
第1のレンズ群G1の焦点距離f1: -132.25mm
第2のレンズ群G2の焦点距離f2: 139.90mm
第3のレンズ群G3の焦点距離f3: 110.39mm
第4のレンズ群G4の焦点距離f4: 65.94mm
第2のレンズ群G2の移動距離FL1: 17.40mm
第3のレンズ群G3の移動距離FL2: 5.39mm
第1の接合レンズB1の焦点距離B1f: 139.90mm
第2の接合レンズB2の焦点距離B2f: -87.21mm
第3の接合レンズB3の焦点距離B3f: -252.93mm
第4の接合レンズB4の焦点距離B4f: 247.56mm
条件(1)(f2/f3): 1.27
条件(2)(FL1/FL2): 3.23
条件(3)(B1D>B2D、B3D<B4D
(D7>D14、D18<D21)):
(53.16>45.66、31.36<31.80)
条件(4)(|B1p-B1m|<|B2p-B2m|、
|B3p-B3m|>|B4p-B4m|):
(|44.20-25.43|<|94.66-34.71|、
|81.55-31.08|>|40.77-34.71|)
条件(5)(|g4fr/g3er|(|r18/r16|)): 2.71
条件(6)(B3f/B2f): 2.90
条件(11)(|f2/f1|): 1.06
条件(12)(Ld12/Ld1(d2/d1)): 0.52
【0079】
以上に示したように、
図8に示したレンズシステム10は、長さが固定されたコンパクトなレンズシステムであり、4群15枚構成のレンズシステムであるが、フォーカシングの際の重心の移動が少なく、取り扱い(取り回し)が容易なレンズシステムである。さらに、このレンズシステム10においても、フォーカシングの際にFNoは固定され、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、レンズシステム10は、条件(1)~(6)、(11)および(12)を満足し、
図12~
図14に示したように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0080】
また、このレンズシステム10においても、フォーカシングは絞りStの物体側11に配置された第2のレンズ群G2および第3のレンズ群G3で行われ、絞りStから離して、焦点距離の調整機能(機構)を絞りStの前方に集中できる。したがって、これらの機構も簡易化でき、さらに軽量、高性能でコンパクトなレンズシステム10および撮像装置1を提供できる。