(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 L
F28D15/02 102C
(21)【出願番号】P 2020566395
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000587
(87)【国際公開番号】W WO2020149223
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2019014840
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518297514
【氏名又は名称】KMT技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】小松 信夫
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-212028(JP,A)
【文献】特開2006-159797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1の部材と、金属から成る第2の部材を接合することにより作動流体が封入される密閉空間を形成するベーパーチャンバーの製造方法であって、
前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材が、第1の金属層、開口を有する第1のエッチングストップ層、第2の金属層を順に備え、前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材の前記第1の金属層をエッチングにより溶出させ、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記開口に接する前記第2の金属層をエッチングし、
前記第1の金属層からなる側面、前記開口を有する第1のエッチングストップ層
の前記第1の金属層側の面及びエッチングにより溶出されることにより形成される第2の金属層の凹状の凹面からなる凹部を設け、前記凹部を内側として前記第1の部材及び前記第2の部材を接合し、前記凹部からなる前記密閉空間に前記作動流体を封入することを特徴とするベーパーチャンバーの製造方法。
【請求項2】
金属からなる第1の部材と、金属から成る第2の部材を接合することにより作動流体が封入される密閉空間を形成するベーパーチャンバーの製造方法であって、
前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材は、
第1の金属層、開口を有する第1のエッチングストップ層、第2の金属層、第2のエッチングストップ層
及び第3の金属層を順に備え、前記第1の金属層をエッチングにより溶出し、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記開口に接する前記第2の金属層を前記第2のエッチングストップ層までエッチングにより溶出し、
前記第1の金属層からなる側面、前記開口を有する第1のエッチングストップ層
の前記第1の金属層側の面、エッチングにより形成された前記第2の金属層からなる側面及び第2のエッチングストップ層
の前記第1の金属層側の面からなる凹部
を設け、前記凹部を内側として前記第1の部材及び前記第2の部材を接合し、前記凹部からなる前記密閉空間に前記作動流体を封入することを特徴とするベーパーチャンバーの製造方法。
【請求項3】
金属からなる第1の部材と、金属から成る第2の部材を接合することにより作動流体が封入される密閉空間を形成するベーパーチャンバーの製造方法であって、
前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材は、第1の金属層、開口を有する第1のエッチングストップ層、第2の金属層、第2のエッチングストップ層及び第3の金属層を順に備え、前記第1の金属層をエッチングにより溶出し、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記開口に接する前記第2の金属層を前記第2のエッチングストップ層までエッチングにより溶出し、
さらに、前記第2のエッチングストップ層をエッチングにより溶出し、
前記第1の金属層からなる側面、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記第1の金属層側の面、エッチングにより形成された前記第2の金属層からなる側面及び前記第3の金属層
の前記第1の金属層側の面
からなる凹部を設け、前記凹部を内側として前記第1の部材及び前記第2の部材を接合し、前記凹部からなる前記密閉空間に前記作動流体を封入することを特徴とするベーパーチャンバーの製造方法。
【請求項4】
請求項
1乃至請求項
3のいずれか1項に記載のベーパーチャンバーの製造方法において、
前記密閉空間を形成する面を粗化処理による粗化面とすることを特徴とするベーパーチャンバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薄型のべーパーチャンバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の放熱方法として、半導体のバック面にダイボンド材として高熱伝導ペーストやはんだを用い、コールドプレートやベーパーチャンバー等のヒートコンダクターに導く方法が一般的である。また、半導体のアクティブ面にサーマルビアを形成し、電子回路基板を介して、はんだ付けによりヒートコンダクターに導く方法もある。また近年、スマートフォンを中心にモバイル機器はさらなる小型、薄型が求められている。また、半導体の信号大量伝送、高速化に伴う発熱問題が顕在化しており、様々な半導体の放熱対策が講じられている。
【0003】
スマートフォンに代表されるモバイル機器では、実装の厚さに制限があり、半導体の放熱対策として、グラファイトシートが使用されている。さらに、スマートフォンでの半導体の放熱能力の向上のため、ベーパーチャンバーの導入も検討されている。しかしながら、スマートフォンでは、ケースの厚みが制約されることから、ベーパーチャンバーの厚さは、0.3mm以下が要求され、未だ0.3mm以下のベーパーチャンバーの使用は実現されていない(非特許文献1)。
【0004】
ベーパーチャンバーは、ヒートパイプの原理を用いた平面放熱デバイスで、熱を放散させるヒートスプレターである。ベーパーチャンバーの内部は減圧された閉空間があり、熱を移動させるための作動流体が封入されている。作動流体が熱源によって加熱されると、作動流体は潜熱を吸収して蒸発する。蒸発した蒸気は閉空間内に拡散し、ヒートシンクに接している上部内壁面に到達すると冷却され、潜熱を放出して液体に戻る。ベーパーチャンバーの内壁または閉空間内には、毛細管力を発生させるウイックと呼ばれる構造体が配置されており、液体に戻った作動流体は毛細管現象によって移動する。ウイックは、作動流体を熱源方向に誘導するような形状をしており、熱源に移動した作動流体が再度吸熱を行って蒸発するといったサイクルが繰り返される。これにより、小さな熱源から発生した熱を、広い面積に拡散させることができる。
【0005】
ベーパーチャンバーは、作動流体を循環させることで放熱を行っているため、ウイックの構造設計は、ベーパーチャンバーの性能を大きく左右する。ベーパーチャンバーに関する先行技術には、次のようなものがある。例えば、特許文献1には、複数の中間板を閉空間内に積層して配置することで毛細管流路を形成したベーパーチャンバーが記載されている。各中間板には、微細な穴が流路として設けられており、作動流体が、毛細管現象によって熱源まで誘導される構造となっている。
【0006】
また、特許文献2には、閉空問内の上下に突起(フィン)を設けたベーパーチャンバーが記載されている。金属板を研削加工することで、金属板とー体化したウイックを形成することができるという特徴がある。
【0007】
また、特許文献3には、アルミニウム製の筐体に、溶解した銅の粉未を溶射することでウイックを形成するベーパーチャンバーが記載されている。当該ベーパーチャンバーは、溶射成形によってウイックを形成するため、前述したものと比較すると、微細な構造物を形成する工程を経なくてもよいという特徴がある。
【0008】
また、特許文献4には、樹脂材により形成された作動流体を循環させる空間を有する筐体及び筐体に一体成形されたウイックに金属メッキにより金属を被覆したベーパーチャンバーが開示されている。
【0009】
また、特許文献5では、作動流体を循環させる空間をエッチングもしくはプレス可能で形成することが記載されている。これらのベーパーチャンバーが有するウイックは、それぞれ構造は異なるが、いずれも作動流体を熱源方向に誘導するように形成されているという点で共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-28055
【文献】特開2007-3164
【文献】特開2011-102691
【文献】特開2015-10765
【文献】特許第6151813号
【0011】
【文献】Apple、iPhoneにモバイル端末用ベーパーチャンバーを採用か 熱伝導性を上げ、さらに効率の良い冷却システムを導入へ May25.2017 Correiente.Top
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体の高機能化と小型化により、半導体チップの発熱が問題となっており、発熱した半導体のより効率の良い放熱の方法が必要となっている。すなわち、現状は前述のとおり半導体の裏面(アクティブ面の反対面)から熱を逃がす方法が主に用いられている。半導体のバック面に放熱グリース、銀ペーストやはんだといった接合材を介し、ヒートコンダクターやヒートシンクに接続するものが多用されている。しかしながら、上記の方法では、素子からヒートシンクまでの距離や接合材の熱伝導性により伝熱抵抗が高くなるため、より効率の良い放熱機構が求められている。
【0013】
さらに、現在、半導体の素子材料はシリコンが主体であるが、次世代の半導体素子材料では炭化シリコンが注目されている。炭化シリコンはシリコンに比べ、動作可能温度が高いため、シリコン素材の半導体よりも放熱の効率向上が求められている。また、素子の放熱方法として、効率よく放熱するため、熱源に近い半導体素子のアクティブ面からの放熱も行われている。電子回路板に形成された回路板放熱路を介して、ヒートコンダクターやヒートシンクに接続材料を用いて効率よく放熱するものである。
【0014】
ここで、回路板放熱路とは、電子回路板を通して半導体の熱をベーパーチャンバーに放熱するための、電子回路板に形成されたサーマルビアや金属柱や回路配線といった熱伝導の良い放熱路のことをいう。この回路板放熱路を用いる方法は、素子からヒートシンクまでの距離や接合材の熱伝導性により伝熱抵抗が発生するため、より効率の良い放熱方法が求められている。
【0015】
特に、製品の厚さに制限のあるスマートフォンに代表されるモバイル機器を考えた場合に、上述のとおり放熱効率の課題に加え、薄型化が大きな課題になる。ベーパーチャンバーを使用する放熱は、冷却効率としては優れているが、現在では、スマートフォンに要求される薄型化には至っていない。スマートフォンの内部部品の冷却にベーパーチャンバーを使用するためには、ベーパーチャンバーの薄型化が必要である。実際には、発熱部品(例えばアプリケーションプロセッサーやパワー素子)、電子回路板及びベーパーチャンバーが実装されたスマートフォンとしてのトータル厚みを薄くする必要がある。現在は、ベーパーチャンバーと電子回路板は別々に作成し、張り合わせるため、薄型化にも限界がある。
【0016】
また、ベーパーチャンバーと電子回路板を別々に作製することにより、発熱部品から熱を効率よく逃がすサーマルビア等の回路板放熱路の形成は困難である。回路板放熱路は、発熱体の熱を発熱体の電極、電子回路板を通じてベーパーチャンバーに熱を導くもので、熱抵抗を小さくする必要がある。例えば、回路板放熱路がサーマルビアの場合、伝熱抵抗は、サーマルビアの金属の熱伝導率、断面積、距離に影響されるが、電子回路板とベーパーチャンバーとを接続する材料の熱伝導も放熱効率を決定する大きな要因となる。電子回路板とベーパーチャンバーの間に接着剤等の有機物が介在すると伝熱抵抗は大きくなり、高熱伝導の接着剤でも伝熱抵抗の増加は無視できない。
【0017】
また、ベーパーチャンバーの閉空間とウイックの作製は上述のとおり、空間を作成した後、別の工法でウイックを形成する。ウイックの形成工程は複雑である。また、発熱部品、電子回路板及びベーパーチャンバーは一般的に個片ごとに作成されるため、実装における生産性が低い。現状、電子回路板のサーマルビアとベーパーチャンバーは接合材で接合されるため、接合材の伝熱抵抗が大きいこと、電子回路板とべーパーチャンバーを合わせた厚さが厚くなること、及びはんだ等の加熱による加工が難しいことが課題となっている。ベーパーチャンバーは熱伝導が良いため、熱の放散が良く、はんだ付けの際にはんだ等の冷却が早いため、はんだ等による接合加工は容易でない。また、ベーパーチャンバーを製造するにあたり、薄型化が可能で、寸法精度よく、効率よく製造できる加工方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明に係るベーパーチャンバーの製造方法は、金属からなる第1の部材と、金属から成る第2の部材を接合することにより作動流体が封入される密閉空間を形成するベーパーチャンバーの製造方法であって、前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材が、第1の金属層、開口を有する第1のエッチングストップ層、第2の金属層を順に備え、前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材の前記第1の金属層をエッチングにより溶出させ、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記開口に接する前記第2の金属層をエッチングし、前記第1の金属層からなる側面、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記第1の金属層側の面及びエッチングにより溶出されることにより形成される第2の金属層の凹状の凹面からなる凹部を設け、前記凹部を内側として前記第1の部材及び前記第2の部材を接合し、前記凹部からなる前記密閉空間に前記作動流体を封入することを特徴とする。
【0024】
本願発明に係るベーパーチャンバーの製造方法は、金属からなる第1の部材と、金属から成る第2の部材を接合することにより作動流体が封入される密閉空間を形成するベーパーチャンバーの製造方法であって、前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材は、第1の金属層、開口を有する第1のエッチングストップ層、第2の金属層、第2のエッチングストップ層、第3の金属層を順に備え、前記第1の金属層をエッチングにより溶出し、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記開口に接する前記第2の金属層を前記第2のエッチングストップ層までエッチングにより溶出し、前記第1の金属層からなる側面、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記第1の金属層側の面、エッチングにより形成された前記第2の金属層からなる側面及び第2のエッチングストップ層の前記第1の金属層側の面からなる凹部を設け、前記凹部を内側として前記第1の部材及び前記第2の部材を接合し、前記凹部からなる前記密閉空間に前記作動流体を封入することを特徴とする。
【0025】
本発明に係るベーパーチャンバーの製造方法は、金属からなる第1の部材と、金属から成る第2の部材を接合することにより作動流体が封入される密閉空間を形成するベーパーチャンバーの製造方法であって、前記第1の部材若しくは前記第2の部材又は前記第1の部材及び前記第2の部材は、第1の金属層、開口を有する第1のエッチングストップ層、第2の金属層、第2のエッチングストップ層、第3の金属層を順に備え、前記第1の金属層をエッチングにより溶出し、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記開口に接する前記第2の金属層を前記第2のエッチングストップ層までエッチングにより溶出し、さらに、前記第2のエッチングストップ層をエッチングにより溶出し、前記第1の金属層からなる側面、前記開口を有する第1のエッチングストップ層の前記第1の金属層側の面、エッチングにより形成された前記第2の金属層からなる側面及び前記第3の金属層の前記第1の金属層側の面からなる凹部を設け、前記凹部を内側として前記第1の部材及び前記第2の部材を接合し、前記凹部からなる前記密閉空間に前記作動流体を封入することを特徴とする。
【0031】
また、本願発明に係るベーパーチャンバーの製造方法において、前記密閉空間を形成する面を粗化処理による粗面とすると好適である。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、発熱する電子部品が実装された電子回路板を効率的に放熱させるベーパーチャンバーを提供することができる。また、本発明のベーパーチャンバーの製造方法は、薄型化が可能で、寸法精度よく、効率よくベーパーチャンバーを製造することができる。
【0033】
本発明により得られるベーパーチャンバーは、空隙の限られた機器内での放熱が可能であるため、スマートフォンに代表されるモバイル機器をはじめ、LED使用機器、高周波機器、IGBTやMOSFETの様な発熱部品を有する機器の放熱に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバーを示し、(A)は、本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバーの断面構造例を、(B)は本発明の他の実施の形態に係るベーパーチャンバーの断面構造例を示す。
【
図2】本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバーの電子回路板の形成方法を示し、(C)は第1の部材を、(D)は第1の部材に絶縁材と銅箔を形成した状態を、(E)は第1の部材に形成された絶縁材と銅箔にビアホールを形成し、形成されたビアホールにめっきを行った状態を、(F)は第1の部材に電子回路板を形成していく状態を、(G)は本発明の実施の形態に係る第1の部材に電子回路板を形成した状態を示す。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る密閉空間の形成方法を示し、(H)は電子回路板が形成された第1の部材の電子回路板が形成された反対面にエッチングレジスト層を形成した状態を、(I)は電子回路が形成された第1の部材の電子回路板が形成された反対面にエッチングを行った状態を、(J)は電子回路板が形成された第1の部材の電子回路板が形成された反対面のエッチングレジストを除去し、凹部が形成された状態を、(K)は電子回路板が形成された第1の部材の電子回路板が形成された反対面に接合材を形成した状態を、(L)は電子回路板が形成された第1の部材の電子回路板が形成された反対面に凹部が形成された第1の部材に第2の部材が接合され、密閉空間が形成された状態を示す。
【
図4】電子部品が実装された本発明の本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバーの断面を示し、(M)はベーパーチャンバーに電子回路板が形成され、形成された電子回路板に電子部品が実装された断面を、(N)は他のベーパーチャンバーに電子回路板が形成され、形成された電子回路板に電子部品が実装された断面を示す。
【
図5】は本発明の実施の形態2に係るベーパーチャンバーの密閉空間の形成方法を示し、(O)はエッチングストップ層を有する第1の部材の断面構造を、(P)は本エッチングストップ層を有する第1の部材にエッチングマスクを形成した状態を、(Q)はエッチングストップ層を有する第1の部材をエッチングした状態を、(R)はエッチングストップ層を有する第1の部材に凹部が形成された状態を示す。
【
図6】は本発明の実施の形態3に係るベーパーチャンバーの密閉空間の形成方法を示し、(S)は第1の部材にエッチングストップ層の一部にエッチングストップ層が設けられないエッチングストップ層を設けた状態を示し、(T)は一部にエッチングストップ層が設けられないエッチングストップ層を設けた第1の部材をエッチングした状態の平面を、(U)は一部にエッチングストップ層が設けられないエッチングストップ層を設けた第1の部材をエッチングした状態の断面を、(V)は一部にエッチングストップ層が設けられないエッチングストップ層を設けた第1の部材をエッチングした第1の部材のエッチングストップ層が設けられない部分を拡大した断面を示す。
【
図7】は本発明の実施の形態に係る実施の形態4に係るベーパーチャンバーの密閉空間の形成方法を示し、(W)は第1の部材に一部にエッチングストップ層が設けられないエッチングストップ層を設け、さらに第1の部材の金属層の下部にエッチングストップ層を設けた第1の部材を、(X)は第1の部材に一部にエッチングストップ層が設けられないエッチングストップ層を設け、さらに第1の部材の金属層の下部にエッチングストップ層を設けた第1の部材をエッチングした第1の部材のエッチングストップ層が設けられない部分を拡大した断面を、(Y)は(X)におけるエッチングストップ層を除去した状態示す。
【
図8】本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバーであって、エッチングストップ層を有する第1の部材及び第2の部材をエッチングし、形成された凹部面同士を接合し、密閉空間を形成した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、電子回路板に実装される半導体のような発熱を伴う電子部品に発生する熱を速やかに放熱させるベーパーチャンバー及び当該ベーパーチャンバーの製造方法に関する。
【0036】
本発明のベーパーチャンバーは、ベーパーチャンバー内の作動流体の気化、液化を迅速に行うためにベーパーチャンバーの密閉空間を形成する面を粗面化することを特徴とする。このことにより、本発明に係るベーパーチャンバーは吸放熱を効率的に行うことができる。また、本発明は、電子部品の放熱を阻害するのは、電子部品とベーパーチャンバーに介在する電子回路板や接合材であり、電子部品とベーパーチャンバーに回路板放熱路を形成し、電子部品とバーパーチャンバー間を伝熱性の良好な材料により直接熱伝導させることを特徴とする。
【0037】
回路板放熱路とは、電子回路板を通して電子部品の熱をベーパーチャンバーに放熱するための、電子回路板に形成されたサーマルビアや金属柱や回路配線といった熱伝導の良い熱経路のことをいう。
【0038】
さらに、本発明は、電子回路板の回路板放熱路からベーパーチャンバーへの伝熱抵抗を低減しつつ、電子回路板とベーパーチャンバーを合わせた厚さを薄くするものである。また、半導体のグラウンドを回路板放熱路に接続することにより、ベーパーチャンバーの筐体(コンテナ)をグランドとして使用できるため、電子回路板の機能の安定化にも寄与することができる。
【0039】
以下、本発明が適応された電子回路板と一体となった薄型ベーパーチャンバー及びその製造方法について、図面を参照して説明する。
【0040】
図1は本発明の実施形態1に係るベーパーチャンバー1の密閉空間3を形成する面の反対側に電子回路板2を有するベーパーチャンバー1の断面構造図であって、図(A)は、ベーパーチャンバー1のエッチングにより凹部を有する金属からなる第1の部材4の密閉空間3を形成する面の反対側の全面に電子回路板2を有する状態を、図(B)はベーパーチャンバー1の第1の部材の密閉空間3を形成する面の反対側の一部に電子回路板2aを有する状態を示す。また、
図1(A)および
図1(B)には電子部品である半導体等の発熱部品と電気的接続するための電極11が設けてある。
図1(A)は、フリップチップ実装の場合の、断面構造図例で、ベーパーチャンバー1と電子回路板2は一体となっている。ベーパーチャンバー1と電子回路板2が一体となっているため、第1の部材4を構成する金属と回路板放熱路8である金属が充填されたビアホールにより、ベーパーチャンバー1と電子部品が接合層を介さず直接金属により接合している。すなわち、電子回路板2の回路板放熱路8の一つであるサーマルビアと第一の部材4が金属により接合されることにより、電子回路板2の回路放熱路8とベーパーチャンバー1は一体となり、本発明の電子回路板2を有するベーパーチャンバー1となる。すなわち、回路放熱路8を形成する金属は直接電子部品19及びベーパーチャンバー1と接触することができる。
【0041】
第1の部材4は第2の部材17と接合材16により接合され、ベーパーチャンバー1 が形成される。
【0042】
電子回路板2の回路板放熱路8の一方はベーパーチャンバー1と一体となっており、回路板放熱路8を有する電子回路板2には、電子部品と接続するための電極11が形成されている。
図1に示すように、発熱する電子部品(例えばアプリケーションプロセッサー)等の実装部品、電子回路板2及びベーパーチャンバー1が積層された実装形態のトータル厚みを薄くするために、電子回路板2とベーパーチャンバー1を一体で形成することで、ベーパーチャンバー1を備える電子回路板2を薄型化することができる。また、電子回路板2とベーパーチャンバー1の一体化により、発熱する電子部品から熱を効率よくベーパーチャンバーに逃がすサーマルビアやヒートコンダクター等の回路板放熱路8の形成を可能にするものである。
【0043】
ここで、回路板放熱路8とは、前述の通り、電子回路板2を通して電子部品の熱をベーパーチャンバー1に放熱するための、電子回路板2に形成されたサーマルビアや金属柱や回路配線といった熱伝導の良い熱経路のことをいう。電子回路板2の回路板放熱路8とベーパーチャンバー1が接続材料を用いず直接接合されるため、電子回路板2とベーパーチャンバー1をあわせた厚さを薄くすることができる。
【0044】
本発明の実施形態に係るベーパーチャンバー1の製造方法を
図2用いて説明する。
図2は、本発明の密閉空間3を形成するための凹部を形成するエッチングを行う前の金属部材12に電子回路板2を形成する方法を示す。電子回路板2は、絶縁材13、外層配線導体10、層間接続のためのビアホール9、電極11、ソルダーマスク7等一般の電子回路板と同様の構造と、回路板放熱路8からなる。
【0045】
電子回路板2は一般に半導体実装に用いられている材料、工法を用いて形成される。すなわち、リジッド配線板の製造において用いられる材料、例えばCCL、プリプレグ、銅箔、絶縁フィルムや、フレキシブル配線板の製造において用いられる材料、例えばポリイミドやLCPといった耐熱フィルムと銅箔を用いることができる。また、工法は、サブトラクティブ工法、セミアディティブ工法、ビルドアップ工法、コアレス工法等電子回路板の製造工法を用いることができる。
【0046】
電子回路板2は、
図2に示すように、金属部材12の一方の面に順次形成することも可能であるが、途中工程まで形成された電子回路板を、接着剤を用いて金属部材12に張り付けてもよい。途中工程の電子回路板を形成し、接着剤を用いて金属部材12に張り付ける場合は、途中工程の電子回路板を金属部材12に張り付けたのち、途中工程の電子回路板の断面方向に金属部材12に到達するビアホールを形成させ、めっき等を行うことにより、ビアホールの内部に金属を充填することにより、回路板放熱路8を形成する。
【0047】
金属部材12の一方の面に電子回路板2を形成した後、電子回路板2を形成した金属部材12をエッチングにより凹部を形成して第1の部材とすることができる。また、金属部材12をエッチングし、凹部を形成したのち、密閉空間3を形成する凹部が形成される反対面に電子回路板2を設けても構わない。
【0048】
金属部材12に回路板放熱路8を形成する以降に、回路板放熱路8を含む電子回路板2の形成を完了させる。以下、実際に実施できる方法を具体的に例示しながら説明する。
【0049】
図2(C)は金属部材12である。金属部材12は、エッチングにより凹部を形成して密閉空間3を有する第1の部材4となるが、厚さ200μmの銅板とすることが可能である。金属部材12は、使用する温度で熱伝導性が10W/m
2・K以上の金属が使用可能であり、銅、銅モリブデン合金、アルミニウムが好適であるが、めっきやエッチングといった加工性と伝導率の観点から、銅がさらに好適である。金属部材12の厚さは、9μmから10000μmが適しており、50μmから500μmが好適である。9μm未満であると、形成されるベーパーチャンバー1の密閉空間3の容積が小さくなり、作動流体を密閉空間3に封入する流路の確保が困難で、10000μmを超えるとベーパーチャンバーの形成時エッチングの効率が悪く生産性が著しく低下する。さらに加工性を考慮すると、50μmから500μmが好適である。
【0050】
金属部材12は銅板を用いることが可能であるが、銅板は例えば、福田金属箔粉工業株式会社の圧延銅箔が使用できるが、本発明ではそれに限定されない。
【0051】
図2(D)は金属部材12に絶縁材13と金属箔14を貼り合わせた図である。絶縁材13として、例えば、日立化成GEA-679の厚さ40μmを用いることでが可能である。絶縁材13は、電気抵抗率が10の10乗Ωm以上であって、接着剤として機能すれば使用が可能であり、他の例として、ガラス布基材エポキシ樹脂含侵のプリプレグ、ガラス布基材ポリイミド樹脂含侵のプリプレグ、味の素ファインテクノABFシリーズ等の層間絶縁材料、株式会社カネカのアピカル等のポリイミドフィルムを用いることができる。絶縁材13と金属箔14の接着性を向上させるため、絶縁材13と金属箔14の間に接着剤を介してもよい。絶縁材13の厚さは3μmから200μmが好ましい。3μm未満では層間絶縁性が低下し回路の故障が起こる。200μmを超えると、電子部品である半導体からベーパーチャンバー1への伝熱抵抗が大きくなる。
【0052】
金属箔14として、三井金属鉱業株式会社の銅箔で厚さ12μmを用いることが可能である。金属箔14とは膜状の金属を言う。金属箔14は電子回路板に常用される銅箔や金属箔を用いることができ、電解銅箔、圧延銅箔、キャリア付き銅箔、樹脂付き銅箔、アルミニウム箔が例示できる。
【0053】
金属部材12に絶縁材13を貼り合わせる場合、必要に応じて金属部材12の表面を前処理により清浄化する。金属部材12が銅の場合、前処理は、酸処理やマイクロエッチング剤による化学研磨、バフ、ブラシ又はスクラブといった物理研磨を用いることができ、研磨の後には水洗、乾燥を行う。これらの処理は電子回路板製造で通常行われている処理である。また、上記の表面清浄のため前処理を行うことができるが、これ以降は前処理の記載を省略する。貼り合わせは、真空成型プレス機にて、金属部材12、絶縁材13及び銅箔14を重ねて、熱及び圧力を加えながら、絶縁材13が含む樹脂が硬化する十分な条件で行われる。真空成型プレス機ではなく、加熱ロールにより熱及び圧力を加えながら、貼り合わせすることも可能である。
【0054】
図2(E)は金属箔14および絶縁材13の断面方向に、金属部材12に到達するビアホールを形成し、形成されるビアホールの内部に金属を充填し、回路放熱路8と電子回路板12の形成を行った図である。ビアホールを設けるには、ビアメカニクス株式会社製レーザー穴あけ機により金属部材12まで達するビアを開口させる。形成されるビアホールの内部に金属を充填するには、株式会社ケミトロン社製縦型めっき装置で銅めっきにより、回路板放熱路8となるビアホールに銅を充填する。形成される回路板放熱路8により、金属部材12の銅板と回路放熱路8は銅により結合される。すなわち、電子回路板2の回路放熱路8と金属部材12が金属により結合することにより、電子回路板2の回路放熱路8と金属部材12により形成されるベーパーチャンバー1は一体として形成できる。金属放熱路8に充填される金属とベーパーチャンバー1は接触することとなる。
【0055】
金属箔14および絶縁材13の断面方向に金属部材12に到達するビアホールを形成し、形成されるビアホールの内部に金属を充填する工程は、レーザードリルによる孔開け、過マンガン酸による孔内クリーニング、孔の内面への触媒層の形成、無電解めっき、電気めっき、の順となる。これらの工程、及び工程に使用される装置及び材料は、通常の電子回路板の製造に用いられているものである。
【0056】
ビアホールの形状は円形、方形、多角形、楕円形等、どのような形状でも構わない。ビアホールの断面方向の面積は0.02mm2~400mm2が好ましく、さらに0.05mm2~50mm2が好ましい。面積が0.02mm2より小さいと放熱効果が小さく、またビアホールへのメッキの充填も困難になる。面積が400mm2より大きいとはんだ接合の際、回路接続用のバンプとの熱容量のバランスが悪く安定したはんだ付けができない。また、ビアホールの断面積の合計が、電子部品の発熱面積の1/20~4/5が好ましく、さらには1/10~1/2であることが好ましい。1/20未満では放熱速度が遅いため、電子部品の温度が上昇する。4/5を超える場合は、回路接続用のバンプのための領域を確保できなくなる。
【0057】
金属箔14はエッチングにより配線回路が形成され、
図2(E)に示すように外層配線導体10が形成される。
【0058】
配線回路形成は、めっきレジスト形成、露光、現像、電気めっき、めっきレジスト剥離、シード層除去により行われる。
【0059】
図2(F)に示すように、
図2(E)の絶縁材13の面に形成された外装配線導体10にさらに絶縁材13及び金属箔14を重ね、2層及び3層或いはそれ以上の多層に配線層を重ねても構わない。
【0060】
図2(G)は、金属部材12に形成された電子回路板2にソルダーマスク7を形成した図である。
【0061】
図3は、電子回路板2が形成された金属部材12により、ベーパーチャンバー1を形成する実施の形態1の製造方法である。
【0062】
図3(H)は、電子回路板2が形成された金属部材12の電子回路板2が形成された反対側の面にエッチングマスク(エッチングレジストともいう)15を形成した図である。エッチングマスク15として、日立化成工業のフォテック膜厚40マイクロンメートルが使用できる。ベーパーチャンバーチャンバー1の密閉空間3に作動流体を封じ込める壁となる周囲の部分と作動流体の通る通路の部分はエッチングにより形成される。まず、エッチングマスク15を形成する金属部材12の面に前処理を行う。前処理は、酸処理、スクラブ整面バフ研磨、ソフトエッチング、ブラシ整面の単独もしくは組み合わせが一般的であるが、金属部材12の表面が清浄になれば、それにこだわらない。例えば、東京化工機株式会社の前処理機が使用できる。前処理を行った後、金属部材12の面にエッチングマスク15を形成する。
【0063】
エッチングマスク15の形成方法は、写真法と印刷法が一般的である。写真法は、ドライフィルムを金属部材12にドライフィルムラミネーターで熱圧着感光成膜を形成する方法、ローラー等により感光膜を塗布する方法等により金属部材12の面に感光層を形成した後、感光層に保護フィルムを貼り合わせ、露光マスクを介して露光を行い、保護フィルムを剥離したのち、現像、エッチング、ドライフィルム剥離の順で行うものである。材料と装置は、例えば、ドライフィルムは、日立化成工業のフォテックシリーズが使用でき、ドライフィルムラミネーターは株式会社日立プラントメカニクス製、露光機は株式会社オーク製作所の手動露光機、現像、エッチング、ドライフィルム剥離は株式会社ケミトロンの装置が使用できるが、これらは例示でこれらに限定されない。また、エッチング液は例えば、塩化第二鉄溶液、メック株式会社EXEシリーズ、株式会社JCUのHE-500を例示できるが、これらは例示でこれらに限定されない。また、写真法は、露光マスクを使用するため、複雑な形状も形成でき、作動流体を封じ込める壁となる周囲の部分と作動流体の通る通路の部分に複雑な凹凸形状を形成できることから、ウイックを形成し易い。
【0064】
印刷法は、前処理の後、シルクスクリーン法が一般的で、エッチングインクをスクリーン印刷機とスクリーンマスクを用いて金属部材12の面に印刷し、硬化し、エッチングマスク15を形成するものである。現像、エッチング、剥離は写真法と同様の方法で行うことができる。
【0065】
図3(I)は、金属部材12をエッチングし密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4を形成した図である。上述のエッチング方法により、金属部材12をエッチングすることにより、密閉空間3の一部を形成できる。さらに、MEC社エッチボンドCZで当該エッチング面を粗化処理してウイックを形成する。エッチング系の粗化処理液を使いることで、第1の部材4の密閉空間3の壁となるエッチングにより形成される凹部の表面に微細な粗化面を形成でき、簡便に密閉空間3を形成する面にウイックを形成できる。前記エッチングの際は、電子回路板2は保護膜等でエッチングされない様必要に応じて、処理を行う。
【0066】
粗面化表面の表面粗さは、平均粗さ0.2μm~5μm、最大粗さは20μm以下であることが好ましく、さらには平均粗さ0.5μm~3.0μm、最大粗さは8μm以下であることが好ましい。平均粗さ0.2μmより小さく、最大粗さは0.3μm小さい場合は、良好なウイックが形成できず熱伝導能力が劣りバーパーチャンバー1の機能が著しく劣る。平均粗さ5μmより大きく、最大粗さは20μmより大きい場合は、ベーパーチャンバー1の底部の金属の強度が低下し液漏れ等の不良の原因になる。
【0067】
密閉空間3の壁となるエッチングにより形成される凹部の表面に微細な粗化面を形成することにより、ベーパーチャンバー1内に封入される作動流体が密閉空間3を形成する壁の面積が大きくなる。結果として作動流体の吸熱及び放熱の効率を高めることができる。バーパーチャンバー1を形成する密閉空間3となるの凹部を有する第1の部材4又は第2の部材17にエッチングにより形成される凹部を微細な粗化面とすることにより、密閉空間3の表面積を大きくし、作動流体の吸熱及び放熱の効率を高めることができる。
【0068】
図3(J)は、エッチングマスク15を除去した図である。エッチングマスク15の除去は水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液もしくは有機溶剤により行う。
【0069】
図3(K)は、エッチングにより金属部材12に凹部を形成した第1の部材4に接合材16を形成した図である。接合材16の形成は、ディスペンサーによりはんだペーストを塗布することにより行うことができる。印刷法やはんだフローにより接合材16を形成することも可能である。接合材16としては、はんだペーストやはんだめっき等のはんだを使用することが一般的であるが、エポキシ等の耐熱性を有する接着剤でも使用が可能である。
【0070】
図3(L)は、接合材16を介して密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4と第2の部材17を接合し、密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4の密閉空間3を形成する面の反対側に有する電子回路板2が一体化されたベーパーチャンバー1が形成された図である。密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4と第2の部材17の接合は、接合材16を介して行われるが、接合材16による接着は、リフロー装置やレーザー加熱装置やボックスオーブンが使用できる。接合材16は、熱伝導性が良好で、ベーパーチャンバー1の作動時の内圧で破壊されないものであれば、どのようなものでも使用可能であり、はんだ又は有機系接着剤が例示できる。はんだは、一般的に用いられるSnAgCu系やSnPb等が使用できるが、低温はんだや高温はんだも使用できる。はんだ付けの方法は、手付によるもの、はんだペーストを用いてメタルマスク印刷し、リフロー炉やレーザー光による加熱によるもの、フローソルダーによるものが例示できる。接合工程において、必要に応じて治具やロボットを使って第1の部材4と第2の部材17を密着固定することも行われる。
【0071】
接合材16により、密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4と第2の部材17が接合され、密閉空間3が形成される。上述のとおり、接合材16は、密閉空間3を形成し、さらにベーパーチャンバーの動作時の内圧で破裂しない十分な強度が必要である。
【0072】
図4は、本発明の電子回路板2を有するベーパーチャンバー1に、熱源である電子部品19を実装した例である。電子部品19は、ベアチップ、BGA、CSP、WLP等と同一面に電極を持つ半導体素子又は半導体パッケージである。
【0073】
図4(M)は、電子部品19をフリップチップ実装した図で、半導体ベアチップの外部電極と電子回路板2の電極11は、はんだ18で接合されている。電子回路板2の電極11の一部には、回路板放熱路8の一つであるサーマルビアが形成されている。電子回路板2の電極11から回路板放熱路8を経てベーパーチャンバー1への熱経路は、接続材を介さず、金属で一体となるように接続されている。電子部品19のグランドを回路板放熱路8の形成された電子回路板2の電極11に接続することにより、電気的にベーパーチャンバー1と同電位になるため、ベーパーチャンバー1を形成する金属からなる密閉空間3となる凹部を有する第1の部材及び第2の部材はグランドとして使用できるため、グランドの安定に寄与することができる。
【0074】
図4(N)は、電子部品であるCSP(Chip Scale Package)19aとワイヤーボンドにより電極11と接続された半導体ベアチップ19bを電子回路板2に実装した図である。半導体ベアチップ19bの外部電極と電子回路板2の電極11はアルミニウムワイヤーで接合されている。ワイヤーは、金線、銅線も使用される。CSP19aと半導体ベアチップ19bは、ともに回路板放熱路8と接続されている。回路板放熱路8は比較的大きな貫通孔により形成される金属柱状の回路板放熱路23により形成され、電子部品19a及び19bがベーパーチャンバー1と接続されている。
【0075】
本発明の実施形態2に係るベーパーチャンバー1の製造方法を
図5及び
図6を用いて説明する。
【0076】
図5は本発明のベーパーチャンバー1を構成する電子回路板2の製造方法であり、金属部材12aに凹部を形成して密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4を得る製造方法を示す。
図5(O)は、エッチングストップ層21を有する金属部材12aを示し、金属部材12aは、金属層29及び金属層30の間にエッチングストップ層21を有する。金属層29及び金属層30は銅であり、エッチングストップ層21をニッケルとすることができる。金属部材12aは、金属層29の一方の面にエッチングストップ層21をメッキ又は蒸着により形成し、さらにエッチングストップ層21に金属層30をメッキ、スパッタリング又は蒸着により形成することにより得られる。
【0077】
金属層29はエッチング液によるエッチングにより凹部が形成される。エッチングによりエッチングマスク15が形成されない金属層29はエッチングストップ層21まで溶出される。すなわち、エッチング液により溶出されないエッチングストップ膜21により、溶出が止まるため、金属部材12aがエッチングストップ層21の溶出面の反対側に有する金属層30は溶出されずに残すことができる。
【0078】
金属層29を溶出させた後、露出したエッチングストップ層21にエッチングマスクを形成し、エッチング液を選択することによりエッチングストップ層21の表面をエッチングすることができる。
【0079】
金属層29及び金属層30はベーパーチャンバー1が使用される温度で、熱伝導率が10W/m2・K以上の金属が使用可能である。金属層29及び金属層30の材料としては、銅、銅モリブデン合金、アルミニウムが好適であるが、めっきやエッチングといった加工に対する適性と熱伝導率の観点から銅がさらに好適である。金属層29および金属層30が銅もしくは銅モリブデン合金の場合、エッチングストップ層21は、ニッケル、アルミニウム、錫が好適である。金属層29および金属層30がアルミニウムの場合、エッチングストップ層21は、銅、ニッケル、錫が好適である。
【0080】
エッチングストップ層21の厚さは、0.1μm~5μmが好ましく、さらに0.5μm~2μmが好ましい。0.1μmより薄いと、ピンホール等で十分なエッチングストップの機能をしない。また、5μmを超えると、エッチングストップ層21の除去が容易でない。
【0081】
図5(P)は、金属層29、エッチングストップ層21及び金属層30を有する金属部材12aにエッチングマスク15を形成した図である。エッチングマスク15は、エッチングする必要のない金属層30には、全面に形成される。本発明の
図3(H)と同様の方法で、エッチングマスク15を形成することができる。
【0082】
図5(Q)は、エッチングマスク15を形成した金属層29、エッチングストップ層21及び金属層30を有する金属部材12aをエッチングした図である。金属層29および金属層30が銅で、エッチングストップ層21がニッケルの場合、金属層29のエッチング液はアルカリエッチング液を用いると所望の処理ができる。ニッケルはアルカリエッチング液に侵されないので、ニッケルからなるエッチングストップ層21はエッチングストップ層として機能する。アルカリエッチング液は塩化鉄エッチング液や塩化銅エッチング液よりもエッチング効率が劣る。そのため、はじめに塩化鉄エッチング液や塩化銅エッチング液でエッチングを行い、途中でアルカリエッチング液に切り替えるエッチング方法も可能である。
【0083】
金属層29を溶出させ、露出したエッチングストップ層21を粗面化するためには、エッチングストップ層21をエッチングしなければならない。ニッケルからなるエッチングストップ層21は硫酸によりエッチングすることができる。硫酸に浸漬することにより、ニッケル膜を溶出することができる。硫酸はニッケルを溶解するが、銅は硫酸に不溶であるため。上述の処理が可能である。さらに、MEC社エッチボンドCZ等の粗化処理液で、エッチングストップ層21の面を粗化処理してウイックを形成することができる。エッチング系の粗化処理液を使いることで、エッチングストップ層21を有する金属部材12の金属層29を溶出させた後に露出するエッチングストップ層21の面を簡便に粗化面とし、ウイックを形成できる。粗化面の形成は、粗化めっきを用いることも可能である。
【0084】
図5(R)はエッチングマスクを除去し、形成された第1の部材4を示す。
【0085】
本発明の実施形態3に係るベーパーチャンバー1の製造方法を
図6に示す。
【0086】
図6(S)は、金属層29a、開口22を有するエッチングストップ層21a及び金属層30aを有する金属部材12bの断面構造図である。エッチングストップ層21aは部分的に開口22があり、開口22にエッチング液が30aに到達した場合、開口22からエッチングが進み、エッチング液が侵入する金属層30aの開口22の面をエッチングにより凹部24とすることができる。さらに、凹部24と粗面化処理と組み合わせて、良好なウイックを形成することができる。
【0087】
金属部材12bは、金属層29aの一方の面にメッキ又は蒸着によりエッチングストップ層21aを形成し、エッチングストップ層21aの開口部22以外の部分にエッチングマスクを形成したのち、エッチングを行い、開口部22を形成したのち、金属層30aをメッキにより形成することにより得られる。
【0088】
金属層29a層が溶出して露出したエッチングストップ層21aの面、は
図5(Q)に示したのと同様に粗化面とすることができる。
【0089】
図6(S)は、金属層29a、開口22を有するエッチングストップ層21a及び金属層30aを有する金属部材12bの断面を示す。
【0090】
図6(T)は、金属層29a、開口22を有するエッチングストップ層21a及び金属層30aを有する金属部材12bに
図6(S)に示すようなエッチングマスク15を形成し、エッチングし、エッチングマスク15を除去し、金属層29aの一部が溶出し、凹部が形成されることにより得られる密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4bの平面図である。
【0091】
金属部材12bをエッチングすることにより金属部材12bに凹部を形成させるが、金属部材12bの中央部に金属部材12bの周辺に形成するエッチングマスク15と分離させたエッチングマスク15aを形成することにより、得られる密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4bの凹部の中央部に金属層29aの島20を形成することができる。金属層29aの島20を形成することにより、作動流体の液化及び気化が行われる箇所を隔てる壁を設けることができ、液状の作動流体と気体状の作動流体が混合せずに、吸熱および放熱をスムーズに行うことができる。
【0092】
図6(U)は、金属層29a、開口22を有するエッチングストップ層21a及び金属層30aを有する金属部材12bに
図6(S)に示すようなエッチングマスク15を形成し、エッチングし、エッチングマスク15を除去し、金属層29aの一部が溶出し、凹部が形成されることにより得られる密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4bの断面構造図である。
【0093】
エッチングストップ層21aに形成される開口22の金属は、エッチング液により溶出し、金属層30aの一部も溶出する。開口22の形状は、凹部24の底面の深さを一定にするため、円形が望ましい。金属層30aの厚さTに対して、開口22の開口径は、T/5~Tが好適で、さらにT/3~T/2が好ましい。
【0094】
図6(V)は、開口22に接する金属層30aの一部がエッチングにより溶出した状態を示す密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4bの部分拡大図である。金属層30aに形成された凹部24の表面を粗化処理することにより、第1の部材4bは、開口部22に接する金属層30aに形成された凹部24と金属層30aに形成された凹部24の面に形成されたと粗化面を組み合わせた、表面積の大きなウイックを有することができる。
【0095】
図7は、本発明の実施の形態に係る実施の形態4に係るベーパーチャンバーの密閉空間の形成方法を示す。
【0096】
図7(W)は金属層29、開口22を有するエッチングストップ層21a、金属層30b、エッチングストップ層21及び金属層30を有する金属部材12cの断面構造図である。金属部材12cは金属部材12及び金属部材12aで述べた方法を組み合わせることにより得られる。開口22を有するエッチングストップ層21aに、さらにエッチングストップ層21を追加することにより、実施の形態3よりも精密な開口部22に接する金属層30bに形成された凹部24aを形成することができる。エッチングストップ層21および21aはニッケル、金属層29、30b及び30は銅により第1の部材12cを構成することも可能である。
【0097】
図7(X)は、開口22を有するエッチングストップ層21aに接する金属層30bのすべてが溶出され、エッチングストップ層21が露出している状態を示す。金属部材12cをエッチングし、密閉空間3となる凹部が形成され、形成された凹部を有する第1の部材4cの凹部の底面の一部を
図7(X)に示す。開口22を有するエッチングストップ層21aの下層にさらにエッチングストップ層21を設けることにより、開口22を有するエッチングストップ層21aの開口形状や開口径に関わらず、エッチングを確実に止めることができる。
【0098】
第1の部材4cの開口部22に接する金属層30bに形成された凹部24a及び露出したエッチングストップ層21の面は粗面化処理により粗化面とすることができる。
【0099】
図7(Y)は、
図7(X)のエッチングストップ層21a及び21をエッチングにより溶出させ、除去した状態を示す。
図7(X)に示す第1の部材12cに形成される凹部の底面を
図7(Y)に示す底面とすることにより、表面積をさらに大きくすることができる。
【0100】
図8は、実施の形態3で説明した金属層の島20を有する第1の部材4bと、金属層の島20を有しておらず、他の部分は第1の部材4bと同一の第2の部材17aを形成し、密閉空間3となる凹部を有する第1の部材4bと密閉空間3となる凹部を有する第2の部材17aを接合材16により接合し、形成されたベーパーチャンバー1を示す。第2の部材17は、
図3(L)に示すように板状であっても、
図8に示すようにエッチングにより凹部24が形成された第2の部材17aであっても構わない。さらに、密閉空間3を形成する面の反対側に電子回路板2が形成されていても構わない。
【0101】
ベーパーチャンバー1に作動液を充填する方法は、はヒートパイプや他のベーパーチャンバーと同様の一般的な方法ある。必要に応じて冷却しながら充填口から作動流体を注入し、充填口を物理的につぶし、さらにはんだ付けやろう付け、溶接等で封止するものである。充填口は第1の部材もしくは第2の部材に設けてもよいし、第1の部材と第2の部材両方に形成しても構わない。
【符号の説明】
【0102】
1:ベーパーチャンバー
2:電子回路板
3:密閉空間
4:第1の部材
7:ソルダーマスク
8:回路放熱路
9:層間接続のためのビアホール
10:外層配線導体
11:電極
12:金属部材
13:絶縁材
14:金属箔
15:エッチングマスク
16:接合材
17:第2の部材
18:はんだ
19:電子部品
20:金属層の島
21:エッチングストップ層
22:開口
23:金属柱状の回路放熱路
29:金属層
30:金属層