IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー−コーンの特許一覧

<>
  • 特許-ニコチンアミドリボシドの結晶形 図1
  • 特許-ニコチンアミドリボシドの結晶形 図2
  • 特許-ニコチンアミドリボシドの結晶形 図3
  • 特許-ニコチンアミドリボシドの結晶形 図4
  • 特許-ニコチンアミドリボシドの結晶形 図5
  • 特許-ニコチンアミドリボシドの結晶形 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ニコチンアミドリボシドの結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20230302BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230302BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230302BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230302BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230302BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
A61K31/706
A61P3/00
A61P3/02 104
A61P3/10
A61P25/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017547466
(86)(22)【出願日】2016-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 US2016020537
(87)【国際公開番号】W WO2016144660
(87)【国際公開日】2016-09-15
【審査請求日】2019-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/130,428
(32)【優先日】2015-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,エリック・シー
(72)【発明者】
【氏名】オスナ,ホセ
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/14722(WO,A1)
【文献】日本化学会編、実験化学講座(続)2 分離と精製、丸善株式会社、1967年1月25日、p.158~178、186~187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H19/
REGISTRY STN,CAPLUS STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形
【化1】
であって、
10.2、10.7、13.8、21.2、21.9、22.1、23.2、23.9、24.7、29.6、及び33.8°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターン
を特徴とする、上記ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形。
【請求項2】
下記図1に示されている粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項1に記載のII型結晶形
図1
【請求項3】
下記表1に提供されているピーク(±0.2°2θ)を有する粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項1又は2に記載のII型結晶形
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【請求項4】
678.3、695.6、及び1097.5cm-1±0.2cm-1にピークを有するIRスペクトル、
678.3、695.6、930.1、1084.7、及び1097.5cm-1±0.2cm-1にピークを有するIRスペクトル、又は
678.3、695.6、930.1、998.6、1084.7、1097.5、及び1412.6cm-1±0.2cm-1にピークを有するIRスペクトル
を特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のII型結晶形。
【請求項5】
下記図2に示されているIRスペクトルを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のII型結晶形
図2
【請求項6】
下記表2に示されているピーク(±0.2cm-1)を有するIRスペクトルを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のII型結晶形
【表2】
【請求項7】
126.57℃にピークを有する示差走査熱量測定サーモグラムを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のII型結晶形。
【請求項8】
前記II型結晶形が無水である、請求項1~7のいずれかに記載のII型結晶形。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のII型結晶形と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載のII型結晶形を薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせることを含む医薬組成物の製造法。
【請求項11】
疾患、状態又は障害の、予防、阻害又は改善のために使用するための、請求項1~8のいずれかに記載のII型結晶形又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形
【化2】
の製造法であって、
ニコチンアミドリボシドクロリドと
極性アルコール、アセトン、アセトニトリル、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2-ジメトキシ-エタン(DME)、ジメチル-ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルホスホラストリアミド(HMPT)、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、又はピリジンの一種以上である、水素結合を有する極性溶媒と
を含む混合物を、-5℃~-15℃の温度において形成させ;
任意に、前記混合物から前記ニコチンアミドリボシドクロリドを含むウェットケーキを単離し、そして前記ニコチンアミドリボシドクロリドと更なる量の前記水素結合を有する極性溶媒又は水素結合を有する異なる極性溶媒とを含む第二の混合物を形成させ;
前記混合物又は前記第二の混合物の温度を20℃~25℃に上げ;
そして
前記混合物又は前記第二の混合物からニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を単離する
ことを含む方法。
【請求項13】
前記混合物、前記第二の混合物又はその両方が、ニコチンアミドリボシドクロリド、前記水素結合を有する極性溶媒、及び水を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物中の前記水素結合を有する極性溶媒がメタノールである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の混合物中の前記水素結合を有する極性溶媒がアセトンである、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本願は、2015年3月9日出願の米国仮出願第62/130,428号に基づく優先権を主張し、前記出願の全内容は、引用によって本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本開示は、ニコチンアミドリボシド、特にニコチンアミドリボシドクロリドの結晶形、ならびに該結晶形を含有する組成物及び該結晶形の使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]有用な分子の結晶形は、そのような分子の非晶質形と比べて有利な性質を有しうる。例えば、結晶形は、結晶形を含む組成物を製造するような場合、取扱いや加工がより容易になることが多い。結晶形は、典型的にはより大きい貯蔵安定性を有し、精製にもより適している。薬学的に有用な化合物の結晶形を使用することにより、その化合物を含む医薬品の性能特性も改良できる。結晶形を得ることは、製剤科学者が、例えば製品に良好な加工又は取扱い特性、改良された溶解プロフィール、又は改良された貯蔵寿命などの様々な性質を付与することにより、製剤の最適化のために利用できる材料のレパートリーを拡大するのにも役立つ。
【0004】
[0004]ニコチンアミドリボシド(CAS番号1341-23-7)は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の前駆体で、ビタミンB3源である。最近の研究で、新しい健康利益は、食品中に天然に含まれるニコチンアミドリボシドより大量のニコチンアミドリボシドを摂取することによってもたらされうることが示された。例えば、ニコチンアミドリボシドは、組織のNAD濃度の上昇、インスリン感受性の導出、及びサーチュイン機能の増強に関与している。Chi Y,ら,Curr Opin Clin Nutr Metab Care.2013 Nov;16(6):657-61参照。NADの産生を増大できるということは、ニコチンアミドリボシドが、ミトコンドリアの健康を増進し、ミトコンドリアの機能を刺激し、そして新しいミトコンドリアの創生を誘導できることも示している。アルツハイマー病のモデルにおけるニコチンアミドリボシドの更なる研究によれば、当該分子は脳で生体利用可能で、おそらく脳のNAD合成を刺激することにより神経保護効果を提供することが示唆されている。同著者。さらに、2012年の研究で、ニコチンアミドリボシドを補給された高脂肪食マウスは、同じ高脂肪食を摂取し、ニコチンアミドリボシドを与えられていないマウスより体重増加が60%少ないことが観察された。
【0005】
[0005]ニコチンアミドリボシドクロリド(3-カルバモイル-1-[(2R,3R,4S5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-ピリン-1-イリウムクロリド;1-(β-D-リボフラノシル)ニコチンアミドクロリドとも呼ばれる)は、ニコチンアミドリボシドの公知の塩形で、以下に示す構造:
【0006】
【化1】
【0007】
を有する。
[0006]ニコチンアミドリボシド及びそのクロリド塩の、例えば医薬品又は栄養補助食品における有用な特性にも関わらず、改良が一般的に求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Chi Y,ら,Curr Opin Clin Nutr Metab Care.2013 Nov;16(6):657-61
【発明の概要】
【0009】
[0007]本開示は、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型を含むニコチンアミドリボシドの結晶形に関する。
【0010】
【化2】
【0011】
[0008]また、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を含む医薬組成物、及びそのような医薬組成物の製造法も開示する。
[0009]他の側面において、本開示は、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を対象に投与することを含む方法にも関する。
【0012】
[0010]本開示はニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の製造法も提供する。また、II型結晶形を製造するためのいずれかの開示方法に従って製造されたニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0011]図1は、ここに開示されたII型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドのX線粉末回折パターンを示す。
図2】[0012]図2は、ここに開示されたII型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドのソリッドステートIRスペクトルを示す。
図3】[0013]図3は、以前に記載されたI型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドのX線粉末回折パターンを示す。
図4】[0014]図4は、以前に記載されたI型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドのソリッドステートIRスペクトルを示す。
図5】[0015]図5は、ここに開示されたII型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドのサンプルの、示差走査熱量測定(DSC)を用いた融点の測定に関する研究結果を示す。
図6】[0016]図6は、ここに開示されたII型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0017]本発明は、本開示の一部を形成する添付の図面及び実施例と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解できるであろう。本発明は、本明細書中に記載及び/又は示された特定の製品、方法、条件又はパラメーターに限定されないこと、そして本明細書中で使用されている用語は、特定の態様を説明するためにほんの一例として使用されているに過ぎず、特許請求された発明を制限することを意図していないことは理解されるはずである。
【0015】
[0018]本文書中に引用又は記載されている各特許、特許出願、及び出版物の全開示内容は、引用によって本明細書に援用する。
[0019]上記及び本開示全体を通じて使用されている下記の用語及び略語は、別途記載のない限り、下記の意味を有すると理解される。
【0016】
[0020]本開示において、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除き、単数形の“a”、“an”及び“the”はその複数形の指示対象も含み、特定の数値への言及は少なくともその特定の値を含む。従って、例えば、“ある一つの溶媒(a solvent)”への言及は、一つ又は複数のそのような溶媒及び当業者に公知のその等価物への言及でもあるといったことなどである。さらに、ある要素が、X、Y、又はZで“ありうる(may be)”ことが示される場合、そのような用法によって該要素の他の選択肢が除外されることはいかなる場合もないものとする。
【0017】
[0021]値が“約”という先行詞の使用によって近似値として表されている場合、その特定の値は別の態様も形成することは理解されるであろう。本明細書において、“約X”(Xが数値の場合)とは、好ましくは、記載された値も含めてその±10%のことを言う。例えば、“約8”という語句は、7.2~8.8(これらの値を含む)の値のことを言う。別の例を挙げると、“約8%”という語句は、7.2%~8.8%(これらの値を含む)の値のことを言う。該当する場合、全ての範囲は包括的であり且つ結合可能である。例えば、“1~5”という範囲が記載されている場合、記載された範囲は、“1~4”、“1~3”、“1~2”、“1~2及び4~5”、“1~3及び5”などの範囲を含むと解釈されるべきである。さらに、代替物のリストが肯定的に提供されている場合、そのようなリストは、代替物のいずれかが除外されうる態様を含むこともできる。例えば、“1~5”という範囲が記載されている場合、そのような記載は、1、2、3、4、又は5のいずれかが除外されている状況を支持することができる。従って、“1~5”という記載は、“1及び3~5であるが、2ではない”、又は単に“2が除外される場合”も支持しうる。
【0018】
[0022]本明細書において、“治療”又は“療法”(ならびにそれらの異なる語形)という用語は、予防的(preventative, prophylactic)、治癒的、又は緩和的治療を含む。そのような予防的、治癒的、又は緩和的治療は完全でも部分的でもよい。例えば、望ましくない症状の完全除去、又は一つもしくは複数の望ましくない症状の部分的除去は、本明細書においては“治療”を表すと見なされる。
【0019】
[0023]上記及び開示全体を通じて使用されている“有効量”という用語は、関係する障害、状態、又は副作用の治療に関して所望の結果を達成するために有効な量(用量及び必要な期間)のことを言う。当然のことながら、本発明の成分の有効量は、選択される特定の化合物、成分又は組成物、投与経路、及び各人に所望の応答を引き出す成分の能力のみならず、緩和される病状又は状態の重症度、個人のホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の状態、及び治療される状態の重症度、特定の患者がその後従う併用薬物療法又は特別食などの要因、及び当業者が認識するであろうその他の要因などに応じて、患者ごとに変動するであろうことは理解されるはずである。適切な用量は、最終的には主治医の判断となる。投与計画は、改良された治療応答が提供されるように調整することができる。有効量は、治療上の有益効果が、成分の何らかの有毒又は有害作用を上回る量でもある。一例として、本発明の方法に有用な化合物は、血小板の活性化及び粘着活性のレベルが、治療開始前の活性のレベルと比べて低減するような用量及び期間で投与される。
【0020】
[0024]“薬学的に許容可能な”とは、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触するのに適切な、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形のことを言う。
【0021】
[0025]方法で使用される溶媒の量は、“体積”又は“vol”数として、例えば、材料が5体積の溶媒中に懸濁されうる、というように表すことができる。当業者であれば、これが材料1グラムあたりの溶媒のミリリットル数を意味することは分かるであろう。例えば、10グラムの材料を5体積の溶媒中に懸濁するとは、溶媒が材料1グラムあたり5mLの溶媒量で使用される、すなわち50mLの溶媒が使用されることを意味する。
【0022】
[0026]本明細書において提供されるのは結晶形のニコチンアミドリボシドクロリドである。ニコチンアミドリボシド及びそのクロリド塩は、当業者にはそれらの非晶質形で周知であり、例えば、NAD産生を増大させる当該分子の能力に由来する多数の用途を有するが、本開示は、新規結晶形のこれらの分子に向けられる。結晶形のニコチンアミドリボシドは、例えば、改良された化学的純度、流動性、溶解性、形態学又は晶癖、及び/又は安定性(例えば、貯蔵安定性、脱水に対する安定性、多形変換に対する安定性、低吸湿性、及び/又は低含量の残留溶媒)など、有益な特性を有する。
【0023】
[0027]結晶形は、本明細書においては、図面に実質的に“描かれているような”グラフデータによって特徴付けられると言うことができる。そのようなデータは、例えば、粉末X線回折図及びソリッドステートIRスペクトルを含む。当業者であれば、データのそのようなグラフ表示は、ピーク相対強度及びピーク位置などに小さな変動を受けやすいことは理解されるであろう。これらの変動は、当業者には周知のことであるが、機器の応答の変動、サンプルの濃度及び純度の変動といった要因によるものである。それでも、当業者であれば、本明細書中の図面のグラフデータを未知の結晶形から得られたグラフデータと比較し、これら2組のグラフデータが同じ結晶形であることを特徴とするか又は2つの異なる結晶形であることを特徴とするかを容易に確認することができるであろう。
【0024】
[0028]本開示は、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型を含むニコチンアミドリボシドの結晶形に関する。
【0025】
【化3】
【0026】
[0029]II型結晶形は、21.9、22.1、及び24.7°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。II型結晶形はまた、又はあるいは、21.2、21.9、22.1、24.7、及び33.8°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。II型結晶形はまた、又はあるいは、21.2、21.9、22.1、23.9、24.7、29.6、及び33.8°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。II型結晶形はまた、又はあるいは、10.2、10.7、13.8、21.2、21.9、22.1、23.2、23.9、24.7、29.6、及び33.8°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。
【0027】
[0030]他の態様において、II型結晶形は、実質的に図1に示されているような粉末X線回折パターンによって特徴付けることもできる。II型結晶形はまた、又はあるいは、実質的に以下の表1に提供されているようなピーク(±0.2°2θ)を有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。
【0028】
【表1-1】
【0029】
【表1-2】
【0030】
【表1-3】
【0031】
【表1-4】
【0032】
[0031]ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形はまた、又はあるいは、678.3、695.6、及び1097.5cm-1±0.2cm-1にピークを有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形はまた、又はあるいは、678.3、695.6、930.1、1084.7、及び1097.5cm-1±0.2cm-1にピークを有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形はまた、又はあるいは、678.3、695.6、930.1、998.6、1084.7、1097.5、及び1412.6cm-1±0.2cm-1にピークを有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。一定の態様において、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、実質的に図2に示されているようなソリッドステートIRスペクトルによって特徴付けることもできる。更なる態様において、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、実質的に以下の表2に提供されているようなピーク(±0.2cm-1)を有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。
【0033】
【表2-1】
【0034】
【表2-2】
【0035】
[0032]一部の態様において、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、126.4℃~126.7℃に吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを特徴とする。例えば、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、約126.57℃にピークを有するDSCサーモグラムを特徴としうる。この特徴は、融点を表していると表現することもできる。すなわち、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、約126.57℃に融点を有すると特徴付けることもできる。
【0036】
[0033]本ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、いくつかの異なる形態学のうちの一つで提供されうる。図4に、本発明の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドの一つの可能性ある形態学の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0037】
[0034]一部の態様において、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、少なくとも部分的に水和されており、他の態様においては、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は無水である。
【0038】
[0035]ここに開示されたニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、これまでに開示されているニコチンアミドリボシドクロリドとは異なる結晶形を示す。2014年7月24日出願の米国仮出願第62/028,685号及び2014年7月24日出願の米国仮出願第62/028,702号は、ここに開示されているニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形とは異なる結晶形を示すニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形を開示している。ニコチンアミドリボシドクロリドのI型は、本開示の以下の“実施例”の項に提供された記載に従って特徴付けることができる。
【0039】
[0036]本開示はまた、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を含む医薬組成物にも関する。医薬組成物は、上記のいずれかの態様のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含みうる。医薬組成物は、治療上有効量のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を含むべきである。
【0040】
[0037]本明細書において、“治療上有効量”という語句は、研究者、獣医師、医師又はその他の臨床医が、組織、系、動物、個体又はヒトにおいて求めている生物学的又は医学的応答を引き出す活性化合物の量のことを言い、下記の一つ又は複数を含む。
【0041】
(1)疾患又は状態の予防;例えば、ある疾患、状態又は障害にかかりやすい素因を有しうるが、まだその疾患の病理又は症状を経験又は示していない個人における疾患、状態又は障害の予防;
(2)疾患又は状態の阻害;例えば、ある疾患、状態又は障害の病理又は症状を経験又は示している個人における疾患、状態又は障害の阻害(すなわち、病理及び/又は症状の更なる発現の停止を含む);及び
(3)疾患又は状態の改善;例えば、ある疾患、状態又は障害の病理又は症状を経験又は示している個人における疾患、状態又は障害の改善(すなわち、病理及び/又は症状の逆転を含む)。
【0042】
[0038]本組成物は、あらゆるタイプの投与用に製剤化できる。例えば、本組成物は、経口、局所、非経口、腸内、又は吸入投与用として製剤化できる。II型結晶形は、そのままの単独投与用に製剤化されても、又は液体もしくは固体でありうる慣用の医薬用担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて製剤化されてもよい。適用可能な固体担体、希釈剤、又は賦形剤は、とりわけ、結合剤、崩壊剤、充填剤、滑沢剤、流動促進剤、圧縮助剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、保存剤、懸濁化剤/分散剤、錠剤崩壊剤、封入材料、皮膜形成剤又はコーティング、フレーバー、又は印刷インクとして機能しうる。いずれの単位剤形の製造に使用されるいずれの材料も、好ましくは薬学的に純粋で、使用される量において実質的に非毒性である。さらに、II型結晶形は、徐放性製剤に組み込むこともできる。これに関する投与は、とりわけ下記の経路、すなわち、静脈内、筋肉内、皮下、眼内 (intraocular)、滑液嚢内、経皮を含む経上皮、眼科的(ophthalmic)、舌下及び口腔(buccal)による投与;局所投与としては、眼科系(ophthalmic)、皮膚、眼(ocular)、直腸、及び吹送、エアゾールによる鼻腔吸入、及び直腸全身(rectal systemic)投与を含む。
【0043】
[0039]粉末の場合、担体、希釈剤、又は賦形剤は、微粉砕された固体でよく、それを微粉砕された活性成分と混合する。錠剤の場合、活性成分は、必要な圧縮特性を有する担体、希釈剤又は賦形剤と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。経口治療投与の場合、活性化合物は、担体、希釈剤、又は賦形剤と配合され、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形態で使用される。このような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、好ましくは適切な投与量が得られるような量である。
【0044】
[0040]液体の担体、希釈剤、又は賦形剤は、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシルなどの製造に使用されうる。本発明の活性成分は、薬学的に許容可能な液体、例えば、水、有機溶媒、両者の混合物、又は薬学的に許容可能な油又は脂肪中に溶解又は懸濁できる。液体の単体、賦形剤、又は希釈剤は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、フレーバー、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤、又は浸透圧調節剤などのその他の適切な医薬用添加剤を含有していてもよい。
【0045】
[0041]適切な固体の担体、希釈剤、及び賦形剤は、例えば、リン酸カルシウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、イオン交換樹脂、クロスカルメロースカーボン、アカシア、アルファ化デンプン、クロスポビドン、HPMC、ポビドン、二酸化チタン、多結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(methahydroxide)、寒天、トラガカント、又はそれらの混合物などでありうる。
【0046】
[0042]例えば、経口、局所、又は非経口投与用の適切な液体の担体、希釈剤、及び賦形剤の例は、水(特に上記の添加剤、例えばセルロース誘導体を含有する水、好ましくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコールを含む)及びそれらの誘導体、ならびに油(例えばヤシ油及びラッカセイ油)、又はそれらの混合物などである。
【0047】
[0043]非経口投与の場合、担体、希釈剤、又は賦形剤は、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルでもよい。また、想定されているのは、無菌の液体の担体、希釈剤、又は賦形剤で、これらが非経口投与用の無菌液体形組成物に使用される。遊離塩基又は薬理学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中に製造することができる。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、及び油中にも製造できる。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を防止するための保存剤を含有していてもよい。
【0048】
[0044]注射用に適切な薬剤の形態は、例えば、無菌の水溶液又は分散液、及び無菌の注射用溶液又は分散液を即席調製するための無菌粉末などである。いずれの場合も、その形態は好ましくは無菌で、容易な注射針通過性(syringability)を提供する流体である。製造及び貯蔵の条件下で好ましくは安定で、細菌及びカビ類などの微生物の汚染作用から守られているのが好ましい。担体、希釈剤、又は賦形剤は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合は所要の粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含めるのが好適であろう。注射用組成物の延長吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって達成できる。
【0049】
[0045]無菌の注射用溶液は、薬学的に適切な量のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を、必要に応じて上記の様々なその他の成分と共に適切な溶媒中に配合し、次いでろ過滅菌することによって製造できる。一般的に、分散液は、無菌の活性成分を、基本的な分散媒体及び必要な上記のその他の成分を含有する無菌ビヒクル中に配合することによって製造できる。無菌の注射用溶液調製用の無菌粉末の場合、好適な製造法は、活性成分(一つ又は複数)プラス何らかの追加の所望成分の粉末を、予め滅菌ろ過されたその溶液から得るための真空乾燥及び凍結乾燥技術を含みうる。
【0050】
[0046]このように、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、医学分野でよく確立されたいずれかの慣用技術によって有効量で投与できる。例えば、投与は、約50mg/日~約50,000mg/日の量でありうる。一部の態様において、投与は約250mg/kg/日の量でありうる。従って、投与は、約50mg/日、約100mg/日、約200mg/日、約250mg/日、約300mg/日、約500mg/日、約700mg/日、約800mg/日、約1000mg/日、約2000mg/日、約4000mg/日、約5000mg/日、約10,000mg/日、約20,000mg/日、約30,000mg/日、約40,000mg/日、又は約50,000mg/日の量でありうる。
【0051】
[0047]また、前に開示されたいずれかの態様のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形と薬学的に許容可能な賦形剤とを組み合わせることを含む医薬組成物の製造法も開示する。活性薬剤と薬学的に許容可能な賦形剤とを組み合わせる任意の許容可能な方法が本方法に従って使用でき、当業者であれば、適切な組合せの技術は容易に分かるはずである。一部の態様において、組合せの工程は、所望の量のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を、既存の物質、例えば液体飲料又は粉末飲料混合物に加えるという程度の単純なものでありうる。他の態様において、組合せの工程は、医薬用剤形(例えば、固体、半固体、液体、又は吸入に適切な形態)、化粧品(例えば、パウダー、クリーム、ローション、又はエモリエント)、又は食品(例えば、固体、半固体、又は液体)の製造に準じて、活性薬剤を賦形剤と混合するために従来使用されている任意の技術を含む。
【0052】
[0048]他の側面において、本開示は、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形を対象に投与することを含む方法に関する。ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の投与は、本医薬組成物との関連で上記した経路のいずれによってもよい。例えば、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、経口、局所、非経口、腸内、又は吸入により投与できる。ここに開示されたニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の例外的な安定性に鑑み、当該活性薬剤は、任意の公知投与経路用に使用又はさもなければ調製することができ、任意の公知投与経路が本方法に従って使用できる。ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0053】
[0049]治療用化合物の投与が疾患又は障害のための有効な治療計画となる対象又は患者は、好ましくはヒトであるが、臨床試験又はスクリーニングもしくは活性実験という状況における実験動物を含む任意の動物であってもよい。従って、当業者には容易に分かるように、本発明の方法、化合物及び組成物は、任意の動物、特に哺乳動物、例えば、決してこれらに限定されないが、ヒト、家畜(domestic animal)、例えば、ネコ又はイヌ対象、牧畜動物(farm animal)、例えば、これらに限定されないが、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、及びブタ対象、野生動物(野生でも動物園でも)、研究動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど、鳥類、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽などへの投与に特に適している(すなわち獣医学的使用)。
【0054】
[0050]本開示はニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の製造法も提供する。当該方法は、ニコチンアミドリボシドクロリドと水素結合を有する極性溶媒とを含む混合物を形成し、任意に、ニコチンアミドリボシドクロリドと任意に極性溶媒の一部とを含むウェットケーキを単離し、そして単離された材料と追加量の水素結合を有する極性溶媒又は水素結合を有する異なる極性溶媒とを含む第二の混合物を形成し、混合物又は第二の混合物の温度を上げ、そして混合物又は第二の混合物から結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドを単離する工程を含みうる。
【0055】
[0051]一部の態様において、混合物及び/又は第二の混合物を形成するための水素結合を有する極性溶媒は、極性アルコールでありうる。極性アルコールの例は、メタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブチルアルコール、ジエチレングリコール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、1-プロパノール、2-プロパノールなどである。溶液及び/又は第二の溶液を形成するための水素結合を有する極性溶媒は高い水溶性を有しうる。例えば、水素結合を有する極性溶媒は、アセトン、アセトニトリル、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2-ジメトキシ-エタン(DME)、ジメチル-ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルホスホラストリアミド(HMPT)、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、又はピリジンでありうる。水素結合を有する極性溶媒は水と組み合わせてもよい。
【0056】
[0052]一部の態様において、混合物の形成は、粗ニコチンアミドリボシドクロリド(すなわち、原料(raw)又は未精製のニコチンアミドリボシドクロリド)と水素結合を有する極性溶媒とを混合することを含む。他の態様において、混合物は、別の形態の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドを極性溶媒と混合することによって形成される。そのような場合、出発材料の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドは、上記のような及び米国仮出願第62/028,685号(2014年7月24日出願)に開示されているようなI型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドでも、米国仮出願第62/028,702号(2014年7月24日出願)に開示されているような結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドでも、又はそのような形態の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドの混合物でもよい。
【0057】
[0053]ニコチンアミドリボシドクロリドと水素結合を有する極性溶媒とを含む混合物の形成は、約15℃、約10℃、約0℃、約-10℃、約-15℃、約-20℃、又は約-25℃の温度で起こりうる。例示的態様において、温度は約15℃~約-25℃の範囲である。他の態様において、温度は約-10℃~約-20℃、又は約-5℃~約-15℃の範囲である。ニコチンアミドリボシドクロリドと水素結合を有する極性溶媒とを含む混合物の形成後、溶液は、例えば、約15℃、約10℃、約0℃、約-10℃、約-15℃、約-20℃、又は約-25℃でありうる所望温度に保持されうる。混合物が所望温度に保持される時間は、約10時間、約12時間、約18時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、又は約40時間でありうる。一態様において、混合物は所望温度に約10~約40時間保持される。混合物は所望温度に保持されている間、撹拌に付されてもよい。
【0058】
[0054]ニコチンアミドリボシドクロリドと水素結合を有する極性溶媒とを含む混合物を形成し、任意に該混合物を所望温度に保持した後、ニコチンアミドリボシドクロリドと、一部の態様においては極性溶媒の一部とを含むウェットケーキを混合物から単離してもよい。単離された材料は、次に、追加量の水素結合を有する第一の極性溶媒、水素結合を有する異なる極性溶媒、又は元の極性溶媒及び異なる極性溶媒の組合せと混合して、第二の混合物を形成することができる。一態様において、異なる極性溶媒はアセトンである。第二の混合物の温度は、ニコチンアミドリボシドクロリドと水素結合を有する極性溶媒とを含む元の混合物の温度とほぼ同じでも、それより低くても、又はそれより高くてもよい。好ましくは、第二の混合物の温度は、ニコチンアミドリボシドクロリドと水素結合を有する極性溶媒とを含む元の混合物の温度とほぼ同じである。
【0059】
[0055]ウェットケーキを第一の混合物から単離し、追加量の水素結合を有する極性溶媒又は異なる極性溶媒と混合するかどうかに関わらず、混合物又は第二の混合物の温度は上昇される。温度は、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、又は約40℃上昇されうる。例えば、温度は出発温度の-10℃から約20~25℃にまで上昇されうる。
【0060】
[0056]温度上昇後又は温度上昇中、混合物又は第二の混合物は撹拌に付されてもよい。
[0057]混合物又は第二の混合物が撹拌されるかどうかに関わらず、混合物又は第二の混合物が極性溶媒又は極性溶媒の混合物に対して所望量の水を含有するまで、水を加えてもよい。例えば、水は、極性溶媒又は極性溶媒の混合物の体積に対して、体積で約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、又は約6%の水分量になるまで加えることができる。
【0061】
[0058]水が添加されたかどうかに関わらず、混合物又は第二の混合物は、前に上昇された温度に所望時間の間保持されうる。混合物又は第二の混合物が上昇された温度に保持される時間は、約10~約40時間の範囲でありうる。例えば、温度は、約10時間、約12時間、約18時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、又は約40時間保持されうる。混合物又は第二の混合物は、上昇された温度に保持されている間、撹拌に付されてもよい。
【0062】
[0059]混合物又は第二の混合物が上昇された温度に保持された時間の後、固体のニコチンアミドリボシドクロリドが単離できる。固体は、例えば、極性溶媒又は極性溶媒の混合物(水を含有していてもよい)で洗浄されてもよい。固体は、例えば真空乾燥によって乾燥させることもできる。
【0063】
[0060]上記方法に従って製造されるニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形も開示する。ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形は、結晶形を形成させるための、本明細書中に開示されている方法のいずれかの態様に従って製造できる。
【0064】
[0061]本発明を以下の実施例においてさらに明確にする。これらの実施例は、本発明の好適な態様を示しているが、単に例示のために提供されたものであって、添付の特許請求の範囲を制限するものと見なされるべきでないことは理解されるべきである。上記解説及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確認でき、そしてその精神及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途及び条件に適応させるために、本発明の様々な変更及び修正を行うことができる。
【実施例
【0065】
出発材料-粗ニコチンアミドリボシド
[0062]ニコチンアミドリボシド及びそのクロリド塩を合成するための多数の経路が公表されている。任意の公知経路、又はいずれかその他の容認できる経路が、当該関連化合物の非結晶形を製造するために使用できる。ニコチンアミドリボシド又はそのクロリド塩を合成するための経路の例が下記出版物に開示されている。Jarmanら,J.Chem.Soc.(1969),(2),199-203(クロリド塩);Yangら,J.Med.Chem.2007,50,6458-6461;米国特許公開第2007/0117765号;Franchettiら,Bioorg Med Chem Lett.2004 Sep 20;14(18):4655-8;Saunders PPら,Cancer Res.1989 Dec 1;49(23):6593-9;Dowden Jら,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.2005;24(5-7):513-8;Schlenk,F.,Archives of Biochemistry(1943),3,93-103;Freyneら,Carbohydr.Res.,78:235-242(1980);Tanimoriら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,12:1135-1137(2002);WO 2010/017374;Davies LC,Nucleosides & Nucleotides 14(3-5),311-312 1995;Kam BLら,Carbohydrate Research,77(1979)275-280;Viscontini Mら,Volumen XXXIX,Fasciculus VI(1956)-No.195,1620-1631。上記各参考文献の全開示内容は、引用によって本明細書に援用する。
【0066】
[0063]ニコチンアミドリボシドは、最初にCl以外の異なるアニオン、例えばトリフレート又はトリフルオロメタンスルホネートを用いて合成できる。このニコチンアミドリボシドの代替形の合成の後、初期のイオンは、イオン交換クロマトグラフィーにより、クロリドアニオン又はその他のより高い親和性を有するアニオンに取って代わられることによって“交換”できる。当業者であればイオン交換クロマトグラフィーの実施法は容易に理解できる。
【0067】
[0064]あるいは、非晶質ニコチンアミドリボシドクロリドを商業的供給源から入手してもよい。
I型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドの製造
[0065]上述のように、II型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドを製造するための出発材料は別の形態の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドでありうる。例えば、出発材料の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドは、米国仮出願第62/028,685号(2014年7月24日出願)に開示されているような結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドでも、米国仮出願第62/028,702号(2014年7月24日出願)に開示されているような結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドでも、又はそのような形態の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドの混合物でもよい。上記仮出願は、本開示のニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形とは異なる結晶形を示すニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形を開示している。
【0068】
[0066]ニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形を形成するための例示的方法は次の通りである。メタノールと粗ニコチンアミドリボシドクロリドを含む混合物を形成させる。溶液の形成後、該溶液を-10℃に冷却し、その温度に維持する。その後の12~24時間にわたって生成物が結晶化し始める。結晶化が起こる速度は、例えば公知技術を用いて溶液に播種することによって増大できる。この期間の後、混合物がスラリーになっていることを確認し、3部(この量はメタノールの量に応じて例えば1~5部の間で変動しうる)のメチルt-ブチルエーテルを約6~12時間かけて徐々に加える。MTBEは、生成物の大部分を溶液から析出させるための逆溶媒として機能する。次に、反応混合物をさらに12時間、-10℃に保持する。次に、固体をろ過し、MTBEで濯ぐ。得られた固体は、I型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドを表す。
【0069】
[0067]I型のニコチンアミドリボシドクロリドは、5.1、15.7、及び21.7°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。I型結晶形はまた、又はあるいは、5.1、15.7、21.7、23.5、及び26.4°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。I型結晶形はまた、又はあるいは、5.1、15.7、18.6、21.7、23.5、26.4、及び28.0°2θ±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。
【0070】
[0068]他の場合において、I型結晶形は、実質的に図3に示されているような粉末X線回折パターンによって特徴付けることもできる。I型結晶形はまた、又はあるいは、実質的に以下の表3に提供されているようなピーク(±0.2°2θ)を有する粉末X線回折パターンを特徴としうる。
【0071】
【表3-1】
【0072】
【表3-2】
【0073】
【表3-3】
【0074】
[0069]ニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形はまた、又はあるいは、671.7、1035.6、及び1061.8cm-1±0.2cm-1にピークを有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。ニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形はまた、又はあるいは、671.7、1035.6、1061.8、1398.9、及び1649.3cm-1±0.2cm-1にピークを有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。一定の場合において、ニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形は、実質的に図4に示されているようなソリッドステートIRスペクトルによって特徴付けることもできる。更なる場合において、ニコチンアミドリボシドクロリドのI型結晶形は、実質的に以下の表4に提供されているようなピーク(±0.2cm-1)を有するソリッドステートIRスペクトルを特徴としうる。
【0075】
【表4-1】
【0076】
【表4-2】
【0077】
II型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドの製造
[0070]メタノールと、I型の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリド(2014年7月24日出願の米国仮出願第62/028,685号に開示)と、そして5体積のメタノール(3.5体積%の水を含有、温度-10℃)とを含む混合物を形成させた。混合物を-10℃に保持しながら少なくとも12時間撹拌した後、ニコチンアミドリボシドクロリド固体を単離した。次に、単離されたメタノール含有ウェットケーキを2.5体積の冷(-10℃)アセトンに入れた。次いでこの組合せの温度を20~25℃に調整した。この組合せを撹拌に付している間、混合物がアセトンの体積に対して3.5体積%の水分含有量になるまで20~25℃の温度の水を加えた。次いで、混合物を20~25℃で少なくとも12時間撹拌した。ニコチンアミドリボシドクロリド固体を単離し、アセトンと3.5体積%の水で洗浄した。単離され洗浄されたウェットケーキを乾燥するまで35℃で真空乾燥した。乾燥した材料はニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形であった。
【0078】
[0071]前述の反応/冷却時間は、数百キログラムのプラント製造に基づいたものであった。当業者には容易に分かるように、より小規模で反応を実施する場合、形態学及び物理的形態に劇的な影響を与えることなく多くの時間が削減できる。
【0079】
ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の評価
[0072]ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形のDSCサーモグラムは126.57℃にピークを生じた。これは、ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の融点を表すと言え、I型の融点よりおよそ4℃高い。
【0080】
[0073]ニコチンアミドリボシドクロリドのII型結晶形の走査型電子顕微鏡画像を得た。図6は、ここに開示されたニコチンアミドリボシドクロリドの結晶形の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0081】
計測装置
[0074]X線粉末回折。結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドに関するX線粉末回折情報は、PANalytical X-PertPRO多目的回折計、モデル番号PY3040を用いて得た。特別なサンプル調製は不要であった。
【0082】
[0075]SEM。走査型電子顕微鏡画像は、Hitachi FE-SEM モデル番号S-4500を用いて得た。特別なサンプル調製は不要であった。
[0076]赤外分光法。フーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルは、ユニバーサル減衰全反射(全反射吸収)(Attenuated Total Reflection)を備えたSpectrum OneTM FTIR装置(Perkin-Elmer,Inc.社製、マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて得た。
【0083】
[0077]示差走査熱量測定(DSC)。サーモグラムは、Q2000示差走査熱量計、V24.11,Build 124(TA Instruments社製、デラウェア州ニューカッスル)を用いて得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6