IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナントミクス,エルエルシーの特許一覧 ▶ ナント ホールディングス アイピー,エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許-がんのネオエピトープ 図1
  • 特許-がんのネオエピトープ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】がんのネオエピトープ
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20230302BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230302BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230302BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230302BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230302BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230302BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230302BHJP
   C12N 15/00 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K35/17
A61K39/395 L
A61K51/10 200
A61P35/00
C07K16/18
C07K16/46
C12N5/0783
C12N15/00 ZNA
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017555492
(86)(22)【出願日】2016-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 US2016029244
(87)【国際公開番号】W WO2016172722
(87)【国際公開日】2016-10-27
【審査請求日】2019-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/178,956
(32)【優先日】2015-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/159,145
(32)【優先日】2015-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516001591
【氏名又は名称】ナントミクス,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】513253467
【氏名又は名称】ナント ホールディングス アイピー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】グエン、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ニヤーズィー、ケイヴァン
(72)【発明者】
【氏名】スン-シオン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ラビザデ、シャールーズ
(72)【発明者】
【氏名】べンズ、スティーブン チャールズ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】鳥居 敬司
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235003(JP,A)
【文献】特表2010-505830(JP,A)
【文献】Cancer Imunol.Res.,2014,2(6),pp.522~529
【文献】Science,2006,Vol.314,pp.304~308
【文献】生物物理、2008、48(5)、pp.294~298
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69, A61K 35/00-35/768, A61K 39/00-39/44, C07K 16/00-16/46
CAPlus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん免疫療法のための薬剤を生成する方法であって、
少なくとも1つの患者特異的及びがん特異的ながんネオエピトープを含有するアミノ酸の長さが7~11である複数のペプチドをインシリコで生成するために患者の組織由来の腫瘍試料のオミクスデータをその患者の同じ組織由来の正常試料のオミクスデータと比較するステップであって、前記腫瘍試料及び前記正常試料のそれぞれからのオミクスデータには、全ゲノム配列決定データ、エクソーム配列決定データ、及び/又はトランスクリプトームデータからなる群から選択されるデータが含まれる、ステップと、
前記アミノ酸の長さが7~11である複数のペプチドをインシリコでフィルタリングし、そのようにしてネオエピトープ配列のサブセットを得るステップであって、前記フィルタリングは、突然変異の種類によるフィルタリング、発現の強さによるフィルタリング、細胞内の位置によるフィルタリング、及び患者のHLA型への結合親和性によるフィルタリングである、ステップと、
前記ネオエピトープ配列のサブセットからの配列情報を使用してアミノ酸の長さが7~11である少なくとも1つの合成ペプチドを調製するステップと、
組換え抗体を単離するためにアミノ酸の長さが7~11である前記合成ペプチドを使用するステップと、
前記組換え抗体の相補性決定領域の配列情報を得るステップと、
前記組換え抗体の相補性決定領域の配列情報を使用して合成抗体を生成するステップと、
前記合成抗体を治療剤又は診断薬に連結し、そのようにして薬剤を得るステップと
を含んでなる方法。
【請求項2】
組換え抗体を単離するためにアミノ酸の長さが7~11である前記合成ペプチドを使用するステップは、ファージパニングを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成抗体は、ヒト抗体の足場上へのCDR又はSDRのグラフティングを使用して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療剤又は診断薬は、化学療法薬、放射性同位体、PETで検出可能な同位体、SPECTで検出可能な同位体、親和性作用物質、T細胞、又はNK細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞は、エクトドメインとしてscFvを有するキメラ受容体を発現するT細胞であり、前記合成抗体はscFvである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記NK細胞は、高親和性のFcγ受容体(CD16)を発現するNK細胞であり、前記合成抗体はIgGであって、かつ、高親和性のFcγ受容体を介してNK細胞に結合される、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野はがんのネオエピトープであり、特にネオエピトープ特異抗体の生産におけるネオエピトープの同定及び使用、並びに、予防及び治療におけるネオエピトープ及びネオエピトープ特異抗体の使用である。
【背景技術】
【0002】
背景の説明には、本発明を理解するのに有用となりうる情報が含まれる。それは、本明細書中に提供される情報のいずれかが先行技術であるか若しくは特許請求の範囲に記載の発明に関連しているということ、又は、具体的に若しくは暗に参照されるいずれかの出版物が先行技術であるということを承認するものではない。
【0003】
全てではないにしてもほとんどの新生物疾患には、点突然変異、挿入、欠失、及び転座などの比較的多数の突然変異を伴うことは、当分野においてよく知られている。よって、1以上の突然変異タンパク質の存在により新生細胞を特徴づけることもまた可能であると仮定することは、少なくとも概念上は合理的である。ごく最近、多くの研究努力の結果として、T細胞認識ヒト腫瘍抗原のごく小さな一群が、限られた数の腫瘍の種類について利用可能となった(例えば、非特許文献1を参照されたい)。残念ながら、これらの抗原は特定の種類の腫瘍については有効な治療剤をもたらしていない。本明細書中に引用された出版物はすべて、個々の出版物又は特許出願がそれぞれ具体的かつ個別に参照により組み込まれると示された場合と同じように、参照により組み込まれる。さらに、組み込まれた参照文献中の用語の定義又は使用が本明細書中に提供されたその用語の定義と矛盾するか又は定義に反している場合、本明細書中に提供されるその用語の定義が適用され、かつ参照文献中のその用語の定義は適用されない。
【0004】
ある特定の腫瘍の免疫療法剤の生産に失敗することについて、他にも考えられる理由はあるが、同じ種類の腫瘍と診断された様々な患者の間でほとんどの腫瘍に突然変異が見かけ上ランダムに分布していることが、免疫学的に有効な作用物質として使用可能な1以上の抗原を同定するための探究を極めて複雑にしてきた。さらに、特定の抗原への免疫応答は、該抗原に結合しHLA複合体を介して同抗原を提示する個体の能力にも依存するので、多数の患者の腫瘍の治療に適した抗原を同定する統計学的確率は非常に低い。よって、患者特異的な腫瘍抗原の同定は、少なくとも概念上は、潜在的に治療剤に結びつく可能性が高そうである。
【0005】
残念ながら、多くの腫瘍は様々な免疫回避機構を発展させてきたので、潜在的に有用な患者及び腫瘍に特異的な抗原は、典型的には、治療上有効な免疫応答を、又は患者及び腫瘍に特異的な抗原に結合する抗体の産生すら、誘発できない。さらに、患者が患者及び腫瘍に特異的な抗原に対する特異性を備えた抗体を産生するB細胞を生成したとしても、そのようなB細胞の単離はかなり複雑であり多くの時間を必要とする。同様に、そのような患者からの治療上有用な多量の抗体の単離は等しく厄介でありかつ多くの時間を要し、恐らくは患者の平均余命を越えてしまうことになろう。加えて、患者特異的及び腫瘍特異的な1つの抗原に対する十分な量の抗体を得ることができたとしても、数多くの腫瘍の不均質性は、腫瘍塊中の細胞全てがその同じ抗原を発現するとは限らない場合があることから、やはり治療を無効にしてしまうかもしれない。なおもさらには、1人の患者に使用するために哺乳動物から様々な治療用抗体を生産又は単離することが可能であったとしても、そのような手法は、免疫療法を必要とする膨大な数の患者のための大量生産の基盤としては全く不適当であろう。実際、単一の抗原に対するモノクローナル抗体の従来式の生産には何か月もかかることが多い。
【0006】
よって、抗体産生が当分野において一般に良く知られているにもかかわらず、患者特異的な腫瘍抗原の迅速な同定、及び診断又は治療に使用するためのそのような抗原を標的とする抗体の短時間生産を可能にする、システム及び方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】キャンサー・イミュニティ(Cancer Immunity)、2013年7月15日、第13巻、p.15
【発明の概要】
【0008】
本発明の主題は、患者の様々ながんネオエピトープの同定及び使用であって、特にそのようなネオエピトープが患者において防御免疫応答を誘発しなかった場合の、がんネオエピトープの同定及び使用に関する。
【0009】
本発明の主題の1つの態様では、がん免疫療法のための薬剤を生成する方法。特に好ましい方法は、少なくとも1つの患者特異的及びがん特異的ながんネオエピトープを含有する複数のn‐mer体(n-mers)をインシリコで生成するために腫瘍についての適合する(matched)正常オミクスデータを使用するステップと、前記n‐mer体をインシリコでフィルタリングし、そのようにしてネオエピトープ配列のサブセットを得るさらなるステップとを含む。さらに別のステップでは、少なくとも1つの合成n‐merペプチドが、前記ネオエピトープ配列のサブセットからの配列情報を使用して調製され、かつその合成n‐merペプチドは次に組換え抗体を単離するために使用される。前記組換え抗体の相補性決定領域の配列情報が得られ、前記組換え抗体の相補性決定領域の配列情報を使用して合成抗体が生成される。さらに別のステップでは、前記合成抗体が次に治療剤又は診断薬に連結され、そのようにして薬剤を得ることができる。
【0010】
概して企図されるのは、前記適合する正常オミクスデータが全ゲノム配列決定データ、エクソーム配列決定データ、及び/又はトランスクリプトームデータであること、並びに前記適合する正常オミクスデータが患者の治療の前の正常なものと照合されることである。さらに、企図されるのは、前記複数のn‐merペプチドがそれぞれ7~11アミノ酸の長さを有すること及び/又は前記複数のn‐merペプチドが少なくとも1,000個のn‐merペプチドであることである。最も典型的には、前記複数のn‐merペプチドのうちの異なるものは異なるネオエピトープを有する。本発明の主題を限定するものではないが、前記フィルタリングのステップは、突然変異の種類によるフィルタリング、発現の強さによるフィルタリング、細胞内の位置によるフィルタリング、及び/又は患者のHLA型への結合親和性によるフィルタリングを含むことがさらに企図される。
【0011】
加えて、組換え抗体を単離するために前記合成n‐merペプチドを使用するステップがファージパニングを含んでなり、ファージパニングがさらに親和性成熟のステップを含んでなる場合もあることが企図される。前記組換え抗体の相補性決定領域の配列情報がCDR1‐H、CDR2‐H、及びCDR3‐Hを含んでなり、かつオプションでCDR1‐L、CDR2‐L、及びCDR3‐Lを含んでなること及び/又は前記合成抗体がヒト抗体の足場上へのCDR又はSDRのグラフティングを使用して生成されることもまた企図される。
【0012】
企図される合成抗体は、典型的には組換え発現によってIgG、F(ab’)2、Fab’、Fab、又はscFvとして生成され、また企図される治療剤又は診断薬として、非細胞性の作用物質(例えば化学療法薬、放射性同位体、PETで検出可能な同位体、SPECTで検出可能な同位体、親和性作用物質など)及び免疫能細胞(例えばT細胞、NK細胞など)が挙げられる。例えば、前記細胞がT細胞である場合、T細胞は、エクトドメインとしてscFvを有するキメラ受容体を発現してもよく、前記合成抗体はscFvである。あるいは又は加えて、前記細胞がNK細胞である場合、NK細胞は、高親和性のFcγ受容体(CD16)を発現してもよく、そのとき前記合成抗体は、高親和性のFcγ受容体を介してNK細胞に結合されるIgGであってもよい。中でも注目すべきことに、その結果として認識されるはずであるのは、患者特異的及びがん特異的な抗体並びにそのような抗体を含んでなる組成物は、患者がネオエピトープに対して有効かつ防御的な免疫応答を開始しない場合でも、著しく短時間(例えば、8週未満、又は6週未満、又は実に4週未満)で調製されることが可能であるということである。
【0013】
したがって、本発明者らはまた、患者のがんネオエピトープが防御免疫応答を誘発しなかった場合にがんネオエピトープに対する合成抗体を生成する方法も企図する。企図される方法は、典型的には、組換え抗体のライブラリから結合性の組換え抗体を選択するためにがんネオエピトープ(典型的には完全な合成物)を使用するステップであって、前記がんネオエピトープが患者特異的及びがん特異的であるステップを含むことになる。別のステップでは、次いで前記結合性の組換え抗体の超可変ループが分析され、それにより前記結合性の組換え抗体についての特異性の情報が得られ、その特異性の情報を使用して、ヒト抗体の少なくとも一部分をコードする遺伝子が改変される。最後に、その遺伝子は次いで前記合成抗体を生産するために組換え発現される。中でも注目すべきことに、がん及び患者に特異的な抗体はこのようにして哺乳動物の免疫系を使用することなく生産される。
【0014】
特に企図される方法において、前記がんネオエピトープは、HLAが適合するがんネオエピトープであり、加えて/あるいは、前記組換え抗体のライブラリは、ファージディスプレイライブラリである。望ましい場合には、該方法は、最適化された結合性の組換え抗体を導き出すために前記結合性の組換え抗体の親和性成熟を行うステップをさらに含みうる。追加のステップには関係なく、前記超可変ループは、その超可変ループをコードするDNAの配列決定により分析されることが好ましく、また前記改変するステップは、CDR又はSDRのグラフティング(例えば、ヒト抗体の一部分がscFvである場合)を含んでなることになろう。改変された遺伝子の組換え発現はその後、IgG、F(ab’)2、Fab’、Fab、又はscFvの形態で合成抗体をもたらすことになろう。最も典型的には、前記がんネオエピトープは、患者のがんにおいて発現されており、加えて/あるいは、前記ネオエピトープは患者及び患者の中のがんに特有のものである。
【0015】
別の観点から見ると、本発明者らはその結果として、患者特異的及びがん特異的なHLAが適合するがんネオエピトープに対して結合親和性を有する合成抗体を含んでなる組成物もまた企図し、前記ネオエピトープは患者及び患者のがんに特有のものである。
【0016】
特に好ましい態様において、前記HLAが適合するがんネオエピトープは、MHC‐I提示について適合しており、前記合成抗体は、IgG、F(ab’)2、Fab’、Fab、及びscFvのうちから選択される。望ましい場合、前記合成抗体には治療剤が連結されてもよく、前記治療剤は非細胞の作用物質(例えば化学療法薬、放射性同位体、PETで検出可能な同位体、SPECTで検出可能な同位体、又は親和性作用物質)である。あるいは、前記治療剤は細胞であってもよく、特に免疫能細胞(例えばT細胞又はNK細胞)であってもよい。例えば、前記細胞がT細胞である場合、T細胞は、エクトドメインとしてscFvを有するキメラ受容体を発現してもよく、前記合成抗体はscFvである。一方、前記細胞がNK細胞である場合、NK細胞は、高親和性のFcγ受容体(CD16)を発現してもよく、前記合成抗体は、高親和性のFcγ受容体を介してNK細胞に結合されるIgGである。数ある組成物の中でも特に、企図されるがんネオエピトープは、配列番号1~配列番号1,408,729のうちから選択される配列を有しうる。
【0017】
本発明の主題のさらに別の態様において、本発明者らはさらに、患者特異的及びがん特異的なHLAが適合するがんネオエピトープが結合した固相を含んでなる組成物もまた企図し、前記がんネオエピトープは、患者及び患者のがんに特有のものである。例えば、適切な固相としては、試薬容器の内壁、磁気ビーズ、又は個々にアドレス可能な要素が挙げられ、特に好ましいがんネオエピトープは、7~9アミノ酸の長さを有することになろう。数あるネオエピトープの中でも特に、企図されるネオエピトープとしては、配列番号1~配列番号1,408,729のうちのいずれか1つの配列を有するものが挙げられる。望ましい場合、前記がんネオエピトープには合成抗体(例えばIgG、F(ab’)2、Fab’、Fab、及びscFv)が結合されることが企図され、ひいてはウイルス粒子に連結されてもよい。
【0018】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、以降の好適な実施形態の詳細な説明に添付の図面を併せることでより明白になるであろう。図面中の同様の数字は同様の構成要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の主題の1つの態様についての例示の概略流れ図。
図2】計算されたネオエピトープについてのフィルタリング結果を示す例示のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、インシリコ及びインビトロの技法を組み合わせる概念的には単純であるが有効な手法で、様々な診断用及び治療用の組成物及び作用物質を調製することが可能であることを発見した。
【0021】
本発明者らのシステム及び方法を使用して、ここで認識されるべきなのは、1以上の患者特異的なネオエピトープに対する完全合成の抗体であって、特にいずれも防御免疫応答を誘発しなかった抗原及び/又は抑制された免疫応答を示した抗原に対する完全合成の抗体を生成可能であることである。さらにより有利であることに、注目されるべきは、そのような合成抗体が、患者のオミクスデータをインシリコ分析し、そのようにして比較的多数の潜在的に有用なネオエピトープを導き出し、該ネオエピトープはその後治療上の効能を高めるためにさらにフィルタリングすることが可能であること、によって調製可能であるということである。別の観点から見ると、企図される合成モノクローナル抗体は、実際に時間を要する腫瘍からの腫瘍特異的なペプチドの単離を伴うことなく、また哺乳動物(又は免疫系を備えた他の動物)における何らかの免疫化手法を伴うことなく、調製される。さらに、本明細書中で企図される方法は、典型的には数日~数週間(例えば5~21日)以内での合成抗体の急速生産を可能にするであろうことは、注目されるべきである。
【0022】
簡潔に述べると、また図1の流れ図に例示として示されるように、1つの企図される方法100は、インシリコ分析の部110と、インビトロ合成の部120とを含んでなることになる。最も典型的には、インシリコ分析は、同じ患者の正常組織と比較した腫瘍中の突然変異を同定するためのオミクス分析112で始まり、1以上のネオエピトープの算出のステップ114は、腫瘍及び患者に特異的なネオエピトープを規定するために実施される。そのようにして得られたネオエピトープはさらに、例えば発現が弱いか又は発現されないネオエピトープを排除するためにフィルタリングステップ116に供される。同定された発現ネオエピトープはその後、例えばネオエピトープを細胞外に露出したネオエピトープ又はMHC‐Iに結合したネオエピトープに限定するために、追加のフィルタリングアルゴリズム118に供されてもよい。図2は、一連のフィルタリングステップの結果を例示として示す。ここで、トリプルネガティブ乳がん試料を適合する正常試料と対照させた(すなわち、同じ患者の非病変組織と比較した)全ゲノム配列決定分析により、腫瘍試料中の比較的多数(~18,000個)のネオエピトープが明らかとなった。注目すべきことに、最初のフィルタリングステップでは同定されたネオエピトープ全体の50%超が発現の強度に基づいて除去された。ここで、ネオエピトープ配列は、適合する正常試料と比較して発現の20%未満の発現レベルで除去された。残った配列は、同じ試料の単一の特異的なHLA型に結合するであろう(例えば500nM未満の親和性の)配列を決定するためにインシリコ分析に供された。注目すべきは、再度ネオエピトープのかなりの割合が排除されたこと、及び最終的に全てのネオエピトープの1.3%未満のみが使用に適していると見出されたことである。
【0023】
再び図1を参照すると、そして適切なネオエピトープ配列のインシリコ同定の後に、対応する合成ペプチドが次いでインビトロで(例えば、固相合成を使用して)調製され、かつ典型的にはステップ122に示されるようにscFv構築物の大型の高多様性ライブラリ(例えば別個の構成員が少なくとも10個)を使用して、ファージディスプレイアッセイに使用される。当然のことであるが、強力に結合するファージはファージによって提示された適合するscFvを介して結合することになり、そのscFvは結合したファージ中に見出される該当核酸によってコードされている。そのファージDNAの配列分析はその後、ステップ124に示されるようにscFv中の相補性決定領域(典型的には少なくともCDR1‐H、CDR2‐H、及びCDR3‐H、並びにCDR1‐L、CDR2‐L、及びCDR3‐L)の配列を明らかにすることになる。この情報はその後、ヒト若しくはヒト化scFv又は他の抗体をコードする核酸を改変するための手引きとして使用することが可能である。ひとたび適切な発現系で発現されれば、合成抗体(「シンボディ(synbody)」)は次に、例えば抗体をNK細胞に結合すること、又は対応するscFvをキメラT細胞受容体にグラフティングすることにより、所望の治療用の実体へと調合される。
【0024】
より具体的には、そして1以上のネオエピトープを同定するために患者からオミクス情報を得ることに関して、一般に企図されるのは、オミクスデータが標準的な組織処理プロトコール及び配列決定プロトコールに従って1以上の患者生検試料から得られるということである。本発明の主題を限定するものではないが、データは患者の適合する腫瘍データ(例えば腫瘍と、対して同一患者の正常データ)であること、及びデータ形式はSAM、BAM、GAR、又はVCF形式であることが、典型的には好まれる。しかしながら、非適合のもの又は適合するものと、対してその他の参照となるもの(例えば、過去の同一患者の正常なもの若しくは過去の同一患者の腫瘍のもの、又はヒトについての統計データ(homo statisticus))も、本明細書中での使用に適していると考えられる。したがって、オミクスデータは、「新鮮な」オミクスデータであってもよいし、過去の手順(又はその上異なる患者)から得られたオミクスデータであってもよい。例えば、ネオエピトープは、腫瘍生検(又はリンパ生検若しくは転移部位の生検)及び適合する正常組織(すなわち末梢血のような同一患者由来の非病変組織)の全ゲノム及び/又はエクソームの分析によって、そのようにして得られたオミクス情報の位置を指針とした同期比較(location-guided synchronous comparison)を介して、最初のステップで患者の腫瘍から同定されうる。
【0025】
数ある選択肢の中でもとくに、企図されるのは、ゲノム分析は幾つもの分析法によって実施可能であり、しかしながら特に好ましい分析法には、大量並列型配列決定法、ion torrent(商標)シーケンシング、パイロシーケンシングなどのような次世代シーケンシングを使用した、腫瘍及び適合する正常試料のWGS(全ゲノム配列決定)及びエクソーム配列決定が挙げられるということである。同様に、当然のことであるが配列データのコンピュータ分析が数々の方法で実施されてもよい。しかしながら、ほとんどの好ましい方法では、分析は、例えば、BAMファイル及びBAMサーバを使用する米国特許出願第2012/0059670A1号明細書及び米国特許出願第2012/0066001A1号明細書に開示されるような、腫瘍及び正常試料の位置を指針とした同期アライメント(location-guided synchronous alignment)によってインシリコで実施される。当然ながら、配列分析のための別例のファイル形式(例えばSAM、GAR、FASTAなど)も本明細書中で明確に企図されている。
【0026】
注目されるべきなのは、コンピュータを対象としたいかなる言葉も、サーバ、インターフェース、システム、データベース、エージェント、ピア、エンジン、コントローラ、又は他の種類の個々に若しくは総体として作動するコンピュータデバイスなどのコンピュータデバイスの任意の適切な組み合わせを含むものとして読み取られるべきであるということである。当然のことであるが、コンピュータデバイスは、有形の非一過性のコンピュータ読取り可能な記憶媒体(例えば、ハードドライブ、ソリッド・ステート・ドライブ、RAM、フラッシュ、ROMなど)に記憶されたソフトウェア命令を実行するように構成されたプロセッサを含んでなる。ソフトウェア命令は好ましくは、開示された装置に関して以下に議論されるような役割、責任、又はその他の機能性を提供するようにコンピュータデバイスを構成する。さらに、開示された技術は、コンピュータベースのアルゴリズム、プロセス、方法、又はその他の命令の実装に関連した、開示されたステップをプロセッサに実行させるソフトウェア命令を記憶している非一過性のコンピュータ読取り可能な媒体を含む、コンピュータプログラムとして具現化することが可能である。特に好ましい実施形態では、様々なサーバ、システム、データベース、又はインターフェースは、恐らくはHTTP、HTTPS、AES、官民の鍵交換、ウェブサービスAPI、既知の金融取引プロトコール、又はその他の電子情報交換方法に基づいた、標準化されたプロトコール又はアルゴリズムを使用してデータを交換する。デバイス間のデータ交換は、パケット交換網、インターネット、LAN、WAN、VPN、若しくはその他の種類のパケット交換網、回線交換網、セル交換網、又はその他の種類のネットワーク上で行われることが可能である。
【0027】
当然ながら、そのようにして同定された配列の差異について、がん及び患者の特異的突然変異に基づく新たなペプチド配列に結びつくものを同定するために、下流の分析が実施されうることは、認識されるべきである。したがってネオエピトープは、突然変異の種類(例えば欠失、挿入、トランスバージョン、トランジション、転座)及び影響(例えばナンセンス、ミスセンス、フレームシフトなど)を考慮することにより同定されてもよく、かつそのようなものとしてサイレント突然変異及びその他の適切でない(例えば、発現されない)突然変異が排除されるコンテンツフィルタとしての役割を果たしうる。
【0028】
さらに当然のことであるが、本明細書中に企図されるようなネオエピトープ配列は、比較的短い長さ(例えば5~30mer、より典型的には7~11mer、又は12~25mer)の配列ストレッチであって、アミノ酸配列中に(1又は複数の)変化を含んでいるストレッチとして定義することが可能である。最も典型的には、(1又は複数の)変化は、中央又は中央付近(例えば中央部位から4アミノ酸未満、5アミノ酸未満、又は6アミノ酸未満)に位置する。したがって、また異なる観点から見ると、本明細書中に企図されるネオエピトープ配列は、適合する正常配列に対して1個のアミノ酸が交換されており、かつ変化したアミノ酸の部位が中央にあるか、又はネオエピトープ配列の中央付近にある(例えば、9merの場合、変化したアミノ酸が、2位、3位、4位、又は5位にあり、より典型的には、3位、4位、又は5位にあり、最も典型的には4位又は5位にある)ものを特に含むことになろう。よって、当然のことであるが、単一のアミノ酸変化は、変化したアミノ酸の部位に応じて、その変化したアミノ酸を含む多数のネオエピトープ配列の中に提示されうる。好都合には、そのような配列の多様性がネオエピトープの多数選択を可能とし、かつそのようにして潜在的に有用な標的の数を増加させ、該標的はその後1以上の望ましい形質(例えば患者のHLA型への最も高い親和性、最も高い構造安定性など)に基づいて選択されることが可能である。最も典型的には、ネオエピトープは、変化したアミノ酸を好ましくは中央にあるか又はそうでなければMHCへの結合を改善するような状態で備えて、2~50アミノ酸、より典型的には5~30アミノ酸、最も典型的には9~15アミノ酸の長さを有するように予測されることになる。例えば、エピトープがMHC‐I複合体によって提示されることになっている場合、典型的なエピトープ長は約8~11アミノ酸となる一方、MHC‐II複合体を介した提示のための典型的なエピトープ長は約13~17アミノ酸の長さを有することになる。容易に認識されることであるが、ネオエピトープ中の変化したアミノ酸の部位は中央以外であってもよいので、実際のペプチド配列及び該配列を備えてのネオエピトープの実際のトポロジーは相当に多様となりうる。さらに、ネオエピトープが合成ペプチドとして免疫能(又は他の)細胞に対して提示される場合、当然のことであるが、合成ペプチドはMHC‐I又はMHC‐IIシステムによって最終的に結合されるペプチド部分より著しく長く、そのようにして細胞内におけるタンパク質分解性のプロセシングが可能になっていてもよい。例えば、企図される合成ペプチドは従って、変化したアミノ酸の上流及び下流に8~15アミノ酸を有していてもよい。
【0029】
同定されたネオエピトープのフィルタリングに関して、一般に企図されるのは、ネオエピトープが実際に発現されることがオミクス(又は他の)分析から明らかになる場合にネオエピトープは本明細書中での使用に特に適しているということである。ネオエピトープの発現及び発現レベルの同定は当分野で既知のあらゆる方式で実施可能であり、好ましい方法としては、定量的RNA(hnRNA又はmRNA)分析及び/又は定量的プロテオミクス分析が挙げられる。最も典型的には、ネオエピトープを採り入れるための閾値は対応する適合する正常配列の発現レベルの少なくとも20%、及びより典型的には少なくとも50%の発現レベルになるであろうが、その結果として(ネオ)エピトープが免疫系にとって少なくとも潜在的に「見える」ことが保証される。ゆえに、オミクス分析が遺伝子発現の分析(トランスクリプトーム分析)をさらに含み、そのようにして突然変異を備えた遺伝子の発現のレベルを同定する助けとすることが、一般に好ましい。当分野において既知の数多くのトランスクリプトーム分析の方法が存在し、かつその既知の方法全てが本明細書中での使用に適していると考えられる。例えば、好ましい材料にはmRNA及び転写一次産物(hnRNA)が含まれ、RNA配列情報は逆転写されたポリA‐RNAから得られてもよく、これはさらには腫瘍試料及び同じ患者の適合する正常(健常)試料から得られる。同様に、注目されるべきなのは、ポリA‐RNAがトランスクリプトームの表象として典型的に好まれているが、他の形態のRNA(hn‐RNA、ポリアデニル化されていないRNA、siRNA、miRNAなど)も本明細書中での使用に適していると考えられるということである。好ましい方法としては、定量的RNA(hnRNA又はmRNA)分析及び/又は定量的プロテオミクス分析が挙げられる。最も典型的には、RNAの定量及び配列決定は、qPCR及び/又はrtPCRに基づく方法を使用して実施されるが、他の方法(例えば固相ハイブリダイゼーションに基づく方法)も適切であると考えられる。別の観点から見ると、トランスクリプトーム分析は、がん及び患者に特異的な突然変異を有する遺伝子を同定及び定量するのに(単独で、又はゲノム分析との組み合わせで)適切であるかもしれない。
【0030】
同じように、プロテオミクス分析はネオエピトープの発現を確認するために数々の方法で実施可能であり、あらゆる既知の方法又はプロテオミクス分析が本明細書中において企図される。しかしながら、特に好ましいプロテオミクスの方法には抗体に基づく方法及び質量分光分析法が挙げられる。さらに、注目されるべきなのは、プロテオミクス分析は本来タンパク質に関する定性的又は定量的な情報を提供しうるだけでなく、タンパク質が触媒活性又はその他の機能的活性を有する場合にタンパク質活性データをも含みうることである。プロテオミクスアッセイを行うための技法の一例には、2004年3月10日に出願されたダーフラー(Darfler)らの「組織病理学的に処理された生物学的試料、組織及び細胞からの液体組織調製(Liquid Tissue Preparation from Histopathologically Processed Biological Samples, Tissues, and Cells)」と題された米国特許第7,473,532号明細書が挙げられる。
【0031】
加えて、ネオエピトープはさらに、あらかじめ定められた構造及び/又は細胞内位置のパラメータを使用する詳細な分析及びフィルタリングに供されてもよい。例えば、ネオエピトープ配列は、該配列が膜に関連した位置にある(例えば、細胞の細胞膜の外側に位置している)として同定された場合及び/又はインシリコの構造予測によりネオエピトープが溶媒に曝露されていると思われるか又は構造的に安定なエピトープを提示するということが確認された場合に、さらなる使用のために選択されることが企図される。
【0032】
従って、認識されるべきことは、患者及びがんに特異的なネオエピトープが、患者及び腫瘍の種類に特有な潜在的エピトープを最終的に予測するインシリコの環境のみでオミクス情報から同定可能であるということである。そのようにして同定及び選択されたネオエピトープはその後、同定された患者HLA型に対してインシリコでさらにフィルタリングされることが可能である。そのようなHLAの適合化(マッチング)は、有核細胞のMHC‐I複合体及び特異的抗原提示細胞のMHC‐II複合体へのネオエピトープの強力な結合を保証すると考えられる。両方の抗原提示システムを標的とすると特に、免疫系の細胞性及び体液性両方の領域に関与する治療上有効かつ永続的な免疫応答を生じると考えられる。当然ながら、このようにして同定されたHLA適合ネオエピトープがインビトロで生化学的に検証されることが可能であることも認識されるべきである。
【0033】
MHC‐I及びMHC‐II両方についてのHLA決定は、当分野で良く知られた湿式化学の様々な方法を使用して行うことが可能であり、これらの方法は全て本明細書中での使用に適していると考えられる。しかしながら、特に好ましい方法では、HLA型は、より詳細に以下に示されるように、既知及び/又は一般的なHLA型の大部分又は全てを含有する参照配列を使用して、インシリコでオミクスデータから予測することも可能である。簡潔に述べれば、患者のHLA型が確認され(湿式化学又はインシリコでの決定を使用)、該HLA型に関する構造的解が計算されるか又はデータベースから得られ、これがその後、インシリコでドッキングモデルとして使用されて、HLAの構造的解に対するネオエピトープの結合親和性が決定される。結合親和性の決定のための適切なシステムには、NetMHCプラットフォーム(例えば、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、2008年7月1日、第36巻(ウェブサーバ版)、W509-W512を参照されたい)、HLAMatchmaker(http://www.epitopes.net/downloads.html)、及びIEDB Analysis Resource(http://tools.immuneepitope.org/mhcii/)が挙げられる。その後、先に決定されたHLA型に対する高い親和性(例えばMHC‐Iに対して100nM未満、75nM未満、50nM未満で、MHC‐IIに対して500nM未満、300nM未満、100nM未満)を備えたネオエピトープが選択される。最も高い親和性を予測する際、患者のHLA型への合成ネオエピトープの結合をさらに高めるためにエピトープにN末端及び/又はC末端の修飾を施すことによる、ネオエピトープの改変が実行されてもよい。よって、ネオエピトープは、同定された天然のものであってもよいし、特定のHLA型により良好に適合するようにさらに改変されてもよい。
【0034】
フィルタリングのさらに別の態様では、ネオエピトープは既知のヒト配列を含有するデータベースに対して比較され、そのようにしてヒトと同一の配列の使用が回避されてもよい。さらに、フィルタリングは、患者のSNPに起因するネオエピトープ配列の除去も含みうる。例えば、一塩基多型データベース(dbSNP)は、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)が米国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)との共同で開発及び主催する様々な生物種内及び生物種を越えた遺伝的変異に関する無料の公開アーカイブである。該データベースの名称は1種類の多型(すなわち一塩基多型(SNP))の集積しか意味していないが、実際には比較的広範囲の分子変異、すなわち、(1)SNP、(2)短い欠失挿入多型(インデル/DIP)、(3)マイクロサテライトマーカー又は短鎖縦列反復配列(STR)、(4)多塩基多型(MNP)、(5)ヘテロ接合配列、及び(6)名の付いたバリアント、を含有している。dbSNPは明らかに、中立多型、既知の表現型に相当する多型、及び変異のない領域を収載している。そのようなデータベースを使用して、それらの既知配列を除去するために患者及び腫瘍に特異的なネオエピトープがさらにフィルタリングされて、複数のネオエピトープ配列を備えて設定された治療用の配列が生み出されてもよい。
【0035】
結果的に、当然のことであるが、そのようにして同定されたがんネオエピトープは患者及び患者の特定のがんに特有のものである(例えば、同じがんと診断されたがん患者の集団において全てのネオエピトープの0.1%未満、及びより典型的には0.01%未満の頻度を有している)が、そのようにして同定されたがんネオエピトープは腫瘍において提示されている可能性が高く、したがってたとえそのがんが免疫抑制性の微小環境を有しているとしても、合成抗体によって特異的に標的とされる可能性が高い。
【0036】
実際面では、ネオエピトープは、可能性スコアを得るための、アレル頻度に100万あたりの転写物数(transcripts per million)を乗じた数に基づいて、スコア化/ランク付けされることが可能である。このスコアはその後、HLA情報及び患者のHLA型に対する計算上又は実際の結合親和性を使用してさらに強化されることが可能である。例えば、例示のランク付け形式は、
>254 NM_001000.3 RPL39 Missense p.M29K A->T Normal: WIRMKTGNK, AF: 0.179104477612 TPM: 1023.96 TPM_MEDIAN: 7.35 LL: 183.395820896 netMHC: 242.96 Allele: HLA-A0301 WIRKKTGNK
であってよい。
【0037】
ここで、ファイルはFASTA形式のファイルであり、エントリーは文字「> 」で始まるがこれは単に試料情報を伝えている。その次の行はネオエピトープである。試料情報の行に含まれるのは、試料に索引を付けるために使用された数字(例えば、254)、Refseqの遺伝子ID(例えば、NM_001000.3)、HUGO慣用名(例えば、RPL39)、バリアント分類(例えば、Missense)、タンパク質の変化(例えば、p.M29K)、塩基対の変化(例えば、A->T)、正常なエピトープ(例えば、Normal: WIRMKTGNK )、アレル頻度(例えば、AF: 0.179104477612)、この遺伝子の100万あたりの転写物数(例えば、TPM: 1023.96)、すべての遺伝子の平均発現レベルであるTPM_MEDIAN(例えば、TPM_MEDIAN: 7.35)、ちょうどAF×TPMであるLLスコア(例えば、LL: 183.395820896)、netMHCが予測した結合値(例えば、netMHC: 242.96)、及びネオエピトープが結合する特異的HLAアレル(例えば、Allele: HLA-A0301)である。そして次の行はネオエピトープ(例えば、WIRKKTGNK)である。
【0038】
そのような手法の実現可能性は、数々のがんを対象としている公的に利用可能なTCGAデータベースであって各々のがんについて多数の患者に関して利用可能なデータを有するデータベースからのオミクス情報を使用して、本発明者らによって示された。以下の表1は、名称及びがんの種類、続いて各々のがんの種類について見出されたネオエピトープを一覧にしている。
【0039】
【表1】
よって、特定のがんを有する特定の患者の完全な合理的に設計されたネオエピトープ集合物であって、次いで高親和性抗体を見出すか又は生成するためにインビトロでさらに試験することが可能な集合物を作り上げることが実現可能であることは、認識されるべきである。実際は、企図される集合物は、1、2、3、4、5、6~10、10~50、50~150、1,000個及びそれ以上の、患者及びがんに特異的なネオエピトープを含みうる。異なる観点から見ると、合理的に設計されたネオエピトープ集合物は、発現されて患者のHLA型に結合する全てのネオエピトープのうちの1~10%、又は10~25%、又は25~60%、又は60~100%を含めることができる。よって、企図される集合物は、がんイムノーム(発現されて患者のHLA型に結合するネオエピトープ)のうちの少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70、又は少なくとも90%を含んでなることになろう。結果的に、腫瘍免疫抑制又は化学療法で損傷された免疫系を有する患者についてさえ、免疫療法のための多数の標的をここでは利用可能であることも認識されるべきである。
【0040】
同定されたネオエピトープに対する合成抗体を得るために、インシリコで同定されたものが合成ペプチドを得るためにインビトロで調製されることが企図される。合成ペプチドを調製するための当分野で既知の多数の方法が存在するが、既知の方法は全て本明細書中での使用に適していると考えられる。例えば、がんネオエピトープ配列を備えたペプチドは、固相上で(例えば、メリフィード(Merrified)合成を使用)、液相合成によって、又はより小さなペプチドフラグメントから、調製することが可能である。あまり好ましくはない態様では、ペプチドは、適切な宿主における組換え核酸の発現によって生産されることも考えられる(特に、多数のネオエピトープがオプションでネオエピトープ間のスペーサー又は切断部位を伴って単一のペプチド鎖上にある場合)。
【0041】
したがって、ネオエピトープ配列に相当するか又はネオエピトープ配列を含んでなる合成ペプチドの構造は、X‐L‐(A‐L‐Qであってよく、前記式中、Xは合成ペプチドを共有結合又は非共有結合で固相に取り付けるのに適したオプションの連結基又は連結部分であり、Lは合成ペプチドを共有結合で固相又は連結基に結び付けるオプションのリンカーである。Aは、Aが天然の(タンパク質を構成する)アミノ酸でありかつnが7~30、最も典型的には7~11又は15~25の整数であるネオエピトープ配列を有する合成ペプチドである。Lは、特に多数の合成ペプチド配列(同一又は異なるもの)が構築物中にある場合に存在しうるオプションのリンカーであり、mは、典型的には1~30、最も典型的には2~15の整数である。最後に、Qは、合成ペプチドの端部を固相に(例えばペプチドを立体的に拘束するため)、又はレポーター基(例えば蛍光マーカー)若しくは他の官能基部分(例えば親和性マーカー)に連結するために使用されうる末端基である。結果的に、注目すべきことは、合成ペプチドが直接的なMHC‐I結合に使用される場合、全長は8~10アミノ酸になるであろうということである。同様に、合成ペプチドが直接的なMHC‐II結合に使用される場合、全長は14~20アミノ酸になるであろう。他方、合成ペプチドがMHC提示に先立ち細胞内で(典型的にはプロテアソームのプロセシングにより)処理される場合、全長は、合成ペプチド中の中央部位又はその近くに変化したアミノを伴って典型的には10~40アミノ酸になるであろう。
【0042】
例えば、Xは、固相上の対応する結合剤(例えばアビジン)に結合する非共有結合性の親和性部分(例えばビオチン)、又はペプチドのN末端若しくはC末端のアミノ基若しくはカルボキシル基と反応する化学基(スペーサーを伴っても伴わなくてもよい)、又はペプチド若しくはリンカーLの中のスルフヒドリル基と反応する選択的反応性基(例えばヨードアセチル基若しくはマレイミド基)であることも考えられる。Lは、固相からの合成ペプチドの距離を長くするために使用されてもよく、したがって典型的には、約2~20個の炭素‐炭素結合に等しい長さ(例えば0.3nm~3nm)を有する可撓性の線状部分(例えば、グリコール基、アルコキシ基、グリシンなどを含んでなる)を含んでなることになろう。当然ながら、合成ペプチドは該ペプチドがその上で生産された固相を使用してもよく、かつそういうものとして別個の連結基又はリンカーを必要としない場合もあることも、認識されるべきである。
【0043】
特定の合成ペプチド及び連結方法に応じて、当然のことであるが固相の性質は相当に変化しうるものであり、ペプチドを取り付けるための既知の固相は全て本明細書中での使用に適していると考えられる。例えば、適切な固相には、アガロースビーズ、ポリマービーズ(有色又はそうでなければ個々にアドレス可能なもの)、マイクロタイタープレートのウェルの壁面、紙、ニトロセルロース、ガラスなどが挙げられる。当業者であれば、固相及び取り付け用化学構造の適切な選択を容易に見積もるであろう。さらなる好ましい態様では、さらに注目されるのは、固相は、例えばファージ(又は他の足場担体)上に提示されたペプチドが合成ペプチドを介して固相に可逆的に結合するのを可能にするための、ファージディスプレイ法に関連したプロトコールに一般に適しているであろうことである。さらに企図される用途では、固相は、特に合成タンパク質が哺乳動物におけるワクチンとして、又はヒト以外の哺乳動物における抗体産生用の免疫原性化合物として使用される場合は、ワクチン接種に使用される担体タンパク質(例えばアルブミン、KLH、破傷風トキソイド、ジフテリア毒素など)であってよいことも認識されるべきである。同様に、合成タンパク質は、担体を伴わずにワクチン又は免疫原性化合物として使用されてもよい。
【0044】
さらに一層好ましい方法では、合成ペプチド(がんネオエピトープを含んでなるか又はがんネオエピトープに相当する)が固相上に固定化される場合、該ネオエピトープに対する親和性作用物質、及び特に抗体は、単離及び/又は精製されうることは認識されるべきである。最も好ましくは、そのような単離は、既製の高多様性の抗体ライブラリを含めることになる。本明細書中で使用されるように、かつ文脈がそうでないことを示さないかぎり、用語「抗体」又は「(複数の)抗体」には、抗体の全てのアイソタイプ及びサブタイプ(例えばIgG、IgM、IgEなど)並びにその全てのフラグメント、例えば一価のIgG、F(ab’)、Fab’、Fab、scFv、scFv‐Fc、VhHなどが含まれる。さらに、企図される抗体は、ヒト化されてもよいし、ヒト由来でもヒト以外(例えばげっ歯動物)に由来してもよいし、又はキメラ抗体であってもよい。典型的な方法では、高多様性ライブラリは、多様な少なくとも10種のそれぞれ異なる構成員、又は少なくとも1010種のそれぞれ異なる構成員、又はさらにより多くを有するファージディスプレイライブラリであって、典型的にはM13ファージに基づいてpIII、pVIII、pVI、若しくはpIXを介して提示するか、又はT7ファージ及びg10キャプシドタンパク質に基づいているライブラリであってよい。容易に了解されるべきことであるが、大きな多様性ライブラリの使用は、いくつかの結合性の候補抗体であって最も良く結合するものについてさらに選択されることが可能な抗体を、比較的短時間で提供するであろう。実際には、固定化された合成ペプチドへの結合親和性が所望されるよりも低い場合、親和性は当分野において良く知られたプロトコールを使用して親和性成熟によって改善可能であることが認識されるべきである。例えば、より小さなライブラリの低親和性(K>10-7M)の結合物又は構成員は、当分野で良く知られた方法を使用して、結合親和性及び/又は結合反応速度を改善するための親和性成熟に供されてもよい(例えば、ブリーフィングス・イン・ファンクショナル・ゲノミクス・アンド・プロテオミクス(Briefings In Functional Genomics And Proteomics)、2002年7月、第1巻、第2号、p.189-203を参照されたい)。加えて、注目されるべきなのは、抗体ライブラリが一般に好まれる一方で、他の足場も適切であると考えられ、βバレル、リボソームディスプレイ、細胞表面ディスプレイなどが挙げられることである(例えば、プロテイン・サイエンス(Protein Sci.)、2006年1月、第15巻、第1号、p.14-27を参照されたい)。よって、当然のことであるが、好ましい態様では合成ペプチドは抗体のライブラリにおいて餌(bait)として使用され、そのようにして高親和性(K<10-7M、及び典型的にはK<10-8M)にて結合する抗体が同定される。
【0045】
抗体はこれらの抗体をコードしている核酸を担持する細胞に直接連結しているので、そのような核酸がその後分析されて、軽鎖及び重鎖についてそれぞれ、超可変ループ、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びに/又はSDR(特異性決定残基)をコードする配列要素を同定することが可能であることは、さらに認識されるべきである。最も典型的には、決定は標準的な塩基配列決定方法を使用して実施される。ひとたび決定がなされれば、次に企図されるのは、超可変ループ、又はCDR1‐H、CDR2‐H及び/又はCDR3‐H、並びに/若しくは、CDR1‐L、CDR2‐L及び/又はCDR3‐L、並びに/若しくは、SDRが、ヒトの又はヒト化された抗体足場又は抗体の上にグラフティングされることである。容易に了解されるように、グラフティングは、ヒトの又はヒト化された抗体足場又は抗体をコードする核酸の遺伝子操作によって行うことが可能である。例えば、各CDR内には、抗原との相互作用に直接関与する可変性の高い部位、すなわち特異性決定残基(SDR)が存在する一方、CDRループの立体配座を維持する保存性の高い残基が存在する。SDRは、抗原‐抗体複合体の3D構造及び/又はCDRの突然変異分析から同定されうる。SDRがグラフティングされたヒト化抗体は、ヒトの鋳型上に、SDRとCDRの立体配座を維持する残基とをグラフティングすることにより構築される。結果的に、がんネオエピトープに対する特異性を備えたヒト又はヒト化抗体は、事前に抗原と接触したことのない細胞の中で抗体が発現されるという完全に人工的な方法で調製されることが可能であることは、認識されるべきである。さらに、企図される方法により、ネオエピトープに対する抗体の産生又は有効利用に失敗した患者の治療のための、患者及びがんに特異的な抗体の生産が可能となる。
【0046】
本発明の主題を限定するものではないが、そのようにして調製された合成抗体は、IgG(又はその他のアイソタイプ)として、フラグメント(例えば二重特異性Fab又はその他の二重特異性フラグメント)として、及び/又はキメラタンパク質(例えばキメラT細胞受容体のエクトドメインとしてのscFv)として直接、単独で又は治療剤若しくは診断薬との併用で、及び/又は細胞への抗体の細胞膜固着を確実にする膜貫通領域を備えたハイブリッドタンパク質として使用されることが可能である。ゆえに、本発明者らは、がん免疫療法のための薬剤を生成する方法であって、そのようにして同定された合成抗体が治療剤又は診断薬(細胞性又は非細胞性の構成要素を有しうる)に連結され、そのようにして薬剤が得られる方法を企図する。
【0047】
例えば、企図される非細胞性の作用物質には、様々な化学療法薬であって、そのようにして化学療法薬をがん細胞に直接送達するための化学療法薬が含まれる。例えば、適切な化学療法薬には、キナーゼ阻害剤(例えばエルロチニブ、イマチニブ、ボルテゾミブなど)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばトポテカン、エトポシド、テニポシドなど)、ヌクレオチドアナログ(例えばフルオロウラシル、ゲムシタビン、アザシチジンなど)、白金系作用薬(例えばシスプラチン、カルボプラチンなど)、アルキル化薬(例えばシクロホスファミド、クロラムブシル、テモゾロミドなど)、タキサン類(例えばドセタキセル、パクリタキセルなど)、マイクロチューブリン阻害剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチンなど)が挙げられる。他方、指向性かつ部位特異的な放射線療法が、がん細胞を選択的に破壊するために抗体に放射線剤を連結することにより、使用されてもよい。適切な放射線剤には、小線源治療に適した全ての放射線剤、特に125I、103Pd、又は192Irが挙げられる。別例として、低エネルギーの熱中性子を用いた中性子捕捉療法が望まれる場合には10Bが使用されてもよい。同様に、造影剤が抗体又はそのフラグメントに連結されてもよく、特に好ましい造影剤にはPET標識(例えば11C、13N、15O及び18F)並びにSPECT標識(例えば123I、99mTc、133Xe、201Tl及び18F)が挙げられる。本明細書中で使用されるように、また文脈がそうでないことを示していないかぎり、用語「~に連結された(coupled to)」は直接的な連結(互いに連結される2つの要素が互いに接触している)及び間接的な連結(2つの要素の間に少なくとも1つの追加の要素がある)の両方を含むように意図されている。したがって、用語「~に連結された(coupled to)」及び「~と共に連結された(coupled with)」は同義的に使用される。さらに企図される態様において、抗体は、免疫原性の抗原であることが知られている抗原を用いて修飾されてもよい。そのような修飾は、患者が以前に同一の抗原で免疫化された場合は特に有利である。そのような状況では、企図されているのは、ネオエピトープを備えたがん細胞が免疫原性の抗原を提示している修飾抗体で「塗装」されることであり、これは元のネオエピトープへの免疫応答が免疫原性でなかったか又は抑制された場合に特に有利である。
【0048】
ネオエピトープが免疫細胞を腫瘍へと向かわせるために使用される場合、抗体はT細胞受容体の一部又は細胞傷害性T細胞又はNK細胞にも連結されうることが注目されるべきである。例えば、抗体が細胞傷害性T細胞のキメラT細胞受容体において使用される場合、キメラT細胞受容体の抗原結合部分はエクトドメインとしてscFvを有してもよく、かつscFvはネオエピトープ(例えば配列番号1~配列番号1,408,729のもの)のうちの1つに対する結合親和性を有する。他方、抗体がNK細胞と共に使用される場合、好ましいNK細胞は、少なくとも1つのキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の発現が低減又は廃止されるような改変であってそのような細胞を(阻害の欠如又は低減により)恒常的に活性化させることになる改変がなされた、NK‐92派生細胞である。そのようなNK細胞はナントクエスト(NantKwest)(nantkwest.comを参照)からaNK細胞(「活性化NK細胞)として入手可能であり、ネオエピトープ(例えば配列番号1~配列番号1,408,729のもの)に対する結合親和性を備えた細胞膜結合型の合成抗体を発現するようにさらに改変されることができる。
【0049】
別例として、NK細胞は、高親和性のFcγ受容体(CD16)を発現するように改変されたNK‐92派生細胞であってもよく、かつ特に企図されるのは、本明細書中で企図される抗体がそのような改変NK細胞に結合されうるということである。そのような細胞はナントクエストからhaNK細胞(「高親和性ナチュラルキラー細胞)として入手できる。同様に、NK細胞はキメラT細胞受容体を発現するように遺伝子操作されてもよい。特に好ましい態様では、キメラT細胞受容体は、ネオエピトープ(例えば配列番号1~配列番号1,408,729)に対する結合特異性を備えたscFv部分又はその他のエクトドメインを有することになろう。当然ながら、治療剤が細胞性の構成要素を有する場合、細胞は患者由来の自己細胞であっても異種細胞であってもよいことも、注目されるべきである。
【0050】
結果的に、がんネオエピトープに対する有効な免疫応答が、患者や他の生物体における免疫化を必要としないプロセスを使用して誘発されることが可能であって、応答時間及び治療用抗体の利用を劇的に低減することが、認識されるべきである。実際に、企図された組成物及び方法を使用することにより、患者の免疫系が(例えば化学療法が原因で、又は、腫瘍又はTreg細胞若しくは骨髄由来抑制細胞による免疫抑制が原因で)防御反応を生成するのには十分でなかった場合に、その患者におけるネオエピトープに対する免疫応答を刺激するか又はまさに引き起こすことが可能となる。
【0051】
従って当然のことであるが、特定の組成物に応じて、薬剤はインビボで患者に、又はインビトロで細胞若しくは組織に投与されうる。例えば、合成抗体が診断に使用される場合、抗体は組織試料に対してエキソビボで(例えば顕微鏡スライド上で蛍光標識された抗体を使用してFFPE試料に対して)添加されてもよいし、インビボで(例えば抗体がPET標識で標識される場合に)添加されてもよい。他方、抗体が免疫能細胞に結合される場合、抗体は患者にインビボで投与されうる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明のある実施形態について説明及び権利主張するために使用される、成分の量、濃度のような性質、反応条件などを表現する数字は、場合によっては用語「約」によって修飾されているものとして理解されることになっている。従って、いくつかの実施形態では、記述された説明及び添付の特許請求の範囲において述べられた数的パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化することが可能な近似数である。いくつかの実施形態では、数的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、かつ通常の丸め技法を適用することにより、解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲について述べている数的な範囲及びパラメータは近似数であるものの、具体的な実施例において述べられた数値は実行可能なかぎり正確に報告されている。文脈が反対であることを示していないかぎり、本明細書中で述べられた範囲は全て、その範囲の端点を含んでいると解釈されるべきであり、またオープンエンドの範囲は商業上実用的な値を含むように解釈されるべきである。同様に、値の一覧は全て、文脈が反対であることを示していないかぎり、中間の値を含んでいるとみなされるべきである。
【0053】
既に記載されたもの以外の多くのさらなる改変が本明細書中の発明概念から逸脱することなく可能であることは、当業者には明白なはずである。本発明の主題はしたがって、添付の特許請求の範囲の範囲内であることを除いて制限されるべきではない。さらに、明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈する際に、全ての用語は文脈と矛盾せず可能な限り広くなるように解釈されるべきである。特に、用語「含んでなる(comprise)」及び「含んでなる(comprising)」は、要素、構成要素、又はステップを非排他的なかたちで指していると解釈されるべきであり、このことは、参照された要素、構成要素、若しくはステップが、明示的には参照されていない他の要素、構成要素、若しくはステップとともに存在し、又は利用され、又は組み合わされうることを示している。明細書特許請求の範囲が、A、B、C、、、及びNで構成されている群から選択される少なくとも1つの何かを指す場合、その文章は、Aに加えてN、又はBに加えてNなどではなく、その群から単に1つの要素を必要としていると解釈されるべきである。
図1
図2