(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 1/06 20060101AFI20230302BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20230302BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20230302BHJP
B41M 7/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B41M1/06
C09D11/101
B41M1/30 B
B41M1/30 D
B41M7/00
(21)【出願番号】P 2018231627
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】山田 智和
(72)【発明者】
【氏名】井上 真司
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021138(JP,A)
【文献】特開2010-000742(JP,A)
【文献】特開2009-012322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/06
C09D 11/101
B41M 1/30
B41M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1と、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線により硬化する工程2をこの順に有す
る印刷物の製造方法
であって、
前記紫外線硬化性オフセットインキが、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー、及び光重合開始剤を含有し、前記光重合開始剤が数平均分子量309以上2000以下のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含有する事を特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記基材が紙またはプラスチックであり、前記工程2の前または後に、前記硬化後のオフセットインキ層上に5%以上の有色顔料を含まない透明二ス組成物層を設ける工程(3-1)を有する請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記基材が紙であり、前記工程2の後に、前記硬化後のオフセットインキ層上にフィルムを設ける工程(3-2)をこの順に有する、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性オフセットインキがインキ全量の0.5~5質量%の光重合開始剤を含有する請求項1~
3のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記紫外線硬化性オフセットインキが、
2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2ー(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン、ポリエチレングリコールジ[β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン]プロピオネートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上含有する請求項1~4の何れかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
増感剤をインキ全量の0.1~5質量%含有する請求項1~
5のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記増感剤が、チオキサントン系化合物である請求項6に記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記紫外線硬化性オフセットインキが、3官能以上の重合性アクリレートモノマーをモノマー全量の30質量%以上含有する請求項1~7のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項9】
前記紫外
線がLED-U
Vであり、そのピーク波長が350~400nmである請求項1~8のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙またはプラスチック基材に、紫外線硬化性オフセットインキを設けた印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射条件下や電子線照射条件下で硬化する印刷インキは、その瞬間乾燥の特性の利便性から、紙器等の食品包装向けパッケージ印刷を中心に広く使用されている。
近年、食品包装において、インキ中の化学物質が内容食品へ移行(マイグレーション)する問題が懸念されており、例えば電子線(以下EBと称する場合がある)硬化型インキの場合はインキ成分中の未反応モノマーが、紫外線(以下UVと称する場合がある)硬化型インキの場合はインキ成分中の未反応光重合開始剤が、印刷面から裏移りし内容食品へ溶出することによるマイグレーションが問題となっている。また光重合開始剤は、光重合開始剤の開裂反応後の残渣が臭気を発生する場合もあり、該臭気が食品に移行する懸念も指摘されている。
【0003】
牛乳パック等の飲料紙器の分野での例を挙げれば、低マイグレーションを実現すべく、分子量の比較的大きな光重合開始剤や官能基度の高いモノマーを使用した特殊な配合の紫外線硬化性オフセットインキの使用が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかしながら食品安全性への要求が強まるに従い、そもそもの光重合開始剤の使用量低減を望む声が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-155499号公報
【文献】特開2015-172171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来の紫外線硬化性オフセットインキと同様の印刷適性を有し、且つ光重合開始剤の使用量を低減することの可能な、印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設けた後、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化することで、前記課題を解決した。
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1と、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線により硬化する工程2をこの順に有する印刷物の製造方法を提供する。
【0008】
また本発明は、前記基材が紙またはプラスチックであり、前記工程2の前または後に、前記硬化後のオフセットインキ層上に5%以上の有色顔料を含まない透明二ス組成物層を設ける工程(3-1)を有する前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0009】
また本発明は、前記基材が紙であり、前記工程2の後に、前記硬化後のオフセットインキ層上にフィルムを設ける工程(3-2)をこの順に有する、前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0010】
また本発明は、前記紫外線硬化性オフセットインキが、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー、及び光重合開始剤を含有し、前記光重合開始剤が、数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及び/又は数平均分子量250以上2000以下のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含有する前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、前記紫外線硬化性オフセットインキがインキ全量の0.5~5質量%の光重合開始剤を含有する前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0012】
また本発明は、前記紫外線硬化性オフセットインキが、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2ー(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン、ポリエチレングリコールジ[β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン]プロピオネートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上含有する前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0013】
また本発明は、増感剤をインキ全量の0.1~5質量%含有する前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0014】
また本発明は、前記紫外線硬化性オフセットインキが、3官能以上の重合性アクリレートモノマーをモノマー全量の30質量%以上含有する前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【0015】
また本発明は、前記紫外線ランプがLED-UVランプであり、そのピーク波長が350~400nmである前記記載の印刷物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法により、従来の紫外線硬化性オフセットインキと同様の印刷適性を有し、且つ光重合開始剤の使用量を低減することの可能な、印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の印刷物の製造方法は、少なくとも、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設けた印刷物の製造方法である。
【0018】
(工程1)
本発明の工程1において、使用する基材としては特に限定は無くオフセット印刷分野で通常使用されている紙もしくはプラスチック基材、食品包装分野で使用される軟包装基材を使用すればよい。例えば紙であれば、カタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、クラフト紙、純白ロール紙、グラシンペーパー、パーチメント紙、マニラボール、白ボール、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、等が挙げられる。
【0019】
またプラスチック基材や軟包装基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム;OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等や、特にシーラントフィルムとして使用される低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレン)、VMLDPE(アルミ蒸着低密度ポリエチレン)、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂等の樹脂フィルムがあげられる。
また前記樹脂フィルムに各種バリア機能等の機能性を付与するための、アルミニウム箔などの軟質金属箔、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層等が設けられた複合フィルムも挙げられる。
【0020】
前記基材において、プラスチック基材や軟包装基材に使用される樹脂フィルムは一般的に表面エネルギーが低く、紫外線硬化型オフセットインキに対する濡れが悪いため、密着性不良を引き起こしやすい。その為、高周波電源により供給される高周波・高電圧出力を、コロナ処理装置が備える放電電極とアースロールとの間に印加することでコロナ放電を発生させ、このコロナ放電下に前記フィルムを通過させることにより、前記基材の表面エネルギーを向上させることが好ましい。
【0021】
また、一般的にプライマーもしくはアンカー(コート剤)と称される密着性付与剤を予め前記プラスチック基材、軟包装基材上に塗布してもよく好ましい。
【0022】
これら基材に、オフセット印刷方式により印刷インキを転写し紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける。
オフセット印刷方式による印刷は、カラープロセスインキや特色インキを、単色や多色使いで刷重ね印刷を行う方法が一般的である。
オフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、リョービMHIグラフィックテクノロジー社、マンローランド社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製RMGTシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【0023】
前記活性エネルギー線硬化性オフセットインキ層の印刷後の基材上の膜厚は、紫外線照射前のウェット状態で1色に付き0.5~3μm程度であり、1.0~1.5μmの範囲にあることが好ましい。膜厚が0.5μmを下回ると、充分なインキ濃度が得られず、また膜厚が3μmを上回ると紫外線照射時の硬化不良が発生しやすい傾向となる。
【0024】
(工程2)
本発明の工程2においては、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)の使用が好ましく、紫外線ランプと成り得る具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線が挙げられる。前記紫外線発光ダイオード(UV-LED)としては、そのピーク波長が350~400nmの範囲であるものが好ましく、積算光量が5mJ/cm2以上、照射強度が500mW/cm2以上の条件で硬化させることが好ましい。
【0025】
本発明においては、工程2において、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化することを必須とする。紫外線ランプの露光チャンバー内の酸素濃度を5%以下に低減させれば、ラジカル反応の酸素阻害が抑えられ反応効率が上がるため、空気中で露光するよりも、より少ない光重合開始剤や増感剤の添加量で、優れた光硬化性を発現できるからである。また、それに伴い、臭気や、移行(マイグレーション)、溶出、黄変等の成分量を低減する事ができる。
【0026】
前記露光チャンバー内の酸素濃度を低減させる手法としては、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスをパージする方法や、気圧を減圧する方法が用いられる。特に、窒素パージがコスト的に安く、装置の作成も簡便で好ましく用いられる。
【0027】
前記酸素濃度の値としては、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下で露光を行うのが望ましい。これ以上の酸素濃度範囲では酸素阻害の影響が現れ、硬化不足になる恐れがある。
【0028】
(透明二ス組成物層を設ける工程(3-1))
本発明の印刷物の製造方法では、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化する工程2により、基材上に印刷された印刷物を得ることができる。
一方、商業印刷、紙器、紙パッケージ印刷や食品包装分野において、紙またはプラスチックの基材を用いる場合は、インキ表面の擦れを抑制したり、意匠性を付与する為に、5%以上の有色顔料を含まない透明二ス組成物層を前記紫外線硬化性オフセットインキ層の上に形成する形態も知られている。
【0029】
本発明で使用する前記透明二ス組成物層は、1層以上でもよく、前記透明二ス組成物上に異なる組成の透明二スを重ね、多層構造を形成してもよい。また、各透明二ス組成物層は前記工程2の後、即ち前記工程1で印刷される前記紫外線硬化性オフセットインキを前記工程2によって硬化させた後、別の公知公用の印刷機若しくはコーターにより塗工(オフライン塗工)してもよいし、前記工程2の前、即ち、前記紫外線硬化性オフセットインキを印刷する印刷機に付帯された透明二ス塗工ユニットにより、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1の後に塗工(インライン塗工)し、その後工程2によって硬化させてもよい。
【0030】
前記透明二ス組成物層の硬化・乾燥にあたっては、透明二ス組成物を構成する材料組成により、適宜、硬化・乾燥装置を選択することができる。例えば、前記透明二ス組成物中に、少なくとも(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー、を含有する場合は、前記工程2で照射される紫外線を使用して前記透明二ス組成物を硬化させてもよいし、別途活性エネルギー線源を使用して硬化・乾燥させてもよい。
また例えば、透明二ス組成物中に少なくとも水や揮発性有機溶剤を含有する場合は、熱風乾燥機を使用して水や有機溶剤が十分揮発する温度で乾燥させることが出来る。
【0031】
前記公知公用の印刷機若しくはコーターとは、具体的にロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。
【0032】
前記別途活性エネルギー線とは具体的には、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波、可視光線、赤外線、レーザー光線等が挙げられる。
【0033】
前記透明二ス組成物層の厚さは、0.1~30μmが好ましく、1~20μmであれば特に好ましい。透明二ス層が0.1μm以上であれば、摩擦により透明二ス層が破壊され、下層の紫外線硬化性オフセットインキ層に傷が付いたり、擦れたりするおそれがない。また、透明二ス層が30μm以下であれば、印刷物の屈曲により透明二ス層が割れたり、透明二ス組成物を硬化もしくは乾燥させる際に、該組成物の硬化・乾燥スピードが印刷スピードに対し、追従できず、硬化・乾燥不良を引き起こすおそれがない。
【0034】
(フィルムを設ける工程(3-2))
また一方、商業印刷、紙パッケージ印刷や食品包装分野においては、紙基材上に印刷した後、該印刷物上にフィルム等を貼りあわせ積層体とする形態も知られている。この場合例えば、前記硬化後の紫外線硬化性オフセットインキ層上に、フィルムを設ける工程(3-2)により得ることが出来る。
【0035】
本発明で使用できるフィルムとしては、前述の基材で述べたプラスチック基材や軟包装基材に適用される樹脂フィルム等が挙げられる。また硬化後の紫外線硬化性オフセットインキ層との密着性を高めるために、接着剤層を設けることが好ましい。接着剤層は、前記基材上に設けられた硬化後の紫外線硬化性オフセットインキ層上に塗工する方法で設けてもよいし、予めフィルムに接着剤層が設けられたプレコートフィルムを使用することもできる。接着剤を塗工する場合は前記のロールコーターやグラビアコーター法等の各種コーター法で行うことができる。
接着剤層を介しフィルムを設けた後、ラミネート法により積層体とすることができる。ラミネート法は特に限定されず、たとえばドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法等があげられる。
【0036】
前記接着剤層に使用する接着剤としては、特に限定なくラミネート包装分野で使用されるエポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系反応性接着剤等の接着剤などが挙げられる。また接着剤には、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、レベリング剤、コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子、ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、湿潤分散剤、シランカップリング剤、粘性調整剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、難燃剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防錆剤、蛍光性増白剤、無機系熱線吸収剤、防炎剤、帯電防止剤、脱水剤などが挙げられる。また前記接着剤層の厚さは、0.5~15μmが好ましく、1~8μmであれば特に好ましい。
【0037】
本発明の印刷物の製造方法により得られる印刷物は、次の溶出試験法に示す手順で検出される光重合開始剤の検出量が低レベルであることが好ましい。
1.印刷面の総インキ量が60mgとなるように印刷物を成形した後、フィルムを内側にして、印刷面の全てが液面に接するように容積1000cm3で、且つ、1000cm3の内容液と接触する液体容器内面の総面積が600cm2の液体容器を作製し、エタノール水溶液(エタノール50質量%と純水50質量%の混合溶液)1000cm3を注ぎ密閉する。
2.密閉した液体容器を40℃雰囲気下で10日間静置した後、液体容器からエタノール水溶液を取り出し、液体クロマトグラフ質量分析にて光重合開始剤を定量する。
【0038】
(紫外線硬化性オフセットインキ)
本発明で使用する紫外線硬化性オフセットインキは、特に限定なく該分野で公知のインキ組成物を使用することができる。一般的には、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー、及び光重合開始剤を含有するオフセットインキが使用される。
【0039】
((メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー)
本発明において、前記(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーとは、アクリルとメタクリルとを総称したものである。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシー3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチルー2-エチルー1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の重合製アクリレートモノマーがより好ましく、モノマー全量の30質量%以上含有する事が好ましい。
【0042】
重合性オリゴマーとしては、上述したアミン変性アクリレートの他に、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
単官能、2官能の(メタ)アクリレートに較べ、より反応性の高い3官能以上の(メタ)アクリレート、重合性オリゴマーを用いた方が硬化性や皮膜の強度を向上させるに有利であり、特にUV-LED光源の様な低エネルギーで紫外線硬化型オフセットインキを好適に硬化させるという点で有用である。軟包装用フィルム等の印刷基材への接着性、インキ硬化膜のひび割れを抑制した皮膜の柔軟性をより優先して考慮すれば、単官能~3官能の重量平均分子量1,000以下の(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー成分は、好ましくはインキ全量の10~80質量%含有し、より好ましくは20~70質量%含有する。
【0044】
(光重合開始剤)
本発明で使用する光重合開始剤は、特に限定なく該分野で公知の光重合開始剤を使用することができるが、中でも、前記酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化する工程2において、良好な印刷適性を与える組成として、前記光重合開始剤が、数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及び/又は数平均分子量250以上2000以下のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0045】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤について、数平均分子量300を上回ることで、内包物への光重合開始剤成分移行の移行に伴うマイグレーション量をより低減できる傾向にあり、数平均分子量1500を超えない量ではインキ自体の流動性、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存安定性、印刷後の皮膜乾燥性等を良好に保つことができる。
数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量418.5)、(2、4、6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量348.4)、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(数平均分子量316.3)等が挙げられる。
【0046】
また、前記α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤について、数平均分子量250を上回ることで、特にフィルムを設けた場合における光重合開始剤成分移行の移行に伴うマイグレーション量が低減できる可能性があり、数平均分子量1500を超えない量で、インキ自体の流動性、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存安定性、印刷後の皮膜乾燥性等を良好に保つことができる。
【0047】
数平均分子量250以上2000以下のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(数平均分子量279)、1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン(数平均分子量309)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン(数平均分子量364)、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(数平均分子量:366.5)、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(数平均分子量:380.5)、ポリエチレングリコールジ[β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン]プロピオネート(数平均分子量:1039)等が好ましい。
【0048】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤や前記α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、各々単独で用いても、併用してもよい。特に発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生するUV-LED光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アミノアルキルフェノン系化合物合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0049】
その他、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6-ビス(2-メチル-2-モルフォリノプロパノニル)-9-ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物や、
【0050】
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等の光重合開始剤を併用してもよい。
【0051】
特に本発明においては、前記光重合開始剤が、数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及び/又は数平均分子量250以上2000以下のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤に、増感剤を併用することが好ましく、インキ全量の0.1~5質量%の範囲で添加することがさらに好ましい。
【0052】
光増感剤は、紫外線を吸収して電子励起一重項状態に遷移した後、系間交差により三重項状態に遷移する。そして、基底状態の光重合開始剤と衝突した際にエネルギー移動が生じ、光重合開始剤を励起三重項状態に遷移させる働きをする化合物である。例えばLED等の発光波長域が狭い光源を使用する場合は、光重合開始剤からラジカルを効率よく発生させ、光重合開始剤の働きをサポートする為、増感剤を組み合わせることが好ましい。
【0053】
光増感剤としては、特に限定されないが、チオキサントン系、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アントラキノン系、クマリン系などが挙げられる。これらの中でも、特に2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物や、ミヒラーケトン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなど4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類が好ましく、性能、安全性や入手しやすさなどの観点から、2,4-ジエチルチオキサントン,2-イソプロピルチオキサントン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0054】
また、高い衛生性を所望する際は、高分子量化された増感剤を使用することが好ましい。一例としては、IGM社製の「Omnipol TX(数平均分子量:660)」や、RaHN社製の「Genopol TX-1(数平均分子量:820)」等があげられ、これらは単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の課題を達成するために光重合開始剤の量は出来る限り少ないことが好ましいが本発明の製造方法においては、硬化時に酸素濃度5%以下の雰囲気で行うために、紫外線硬化性オフセットインキが含有する全ての光重合開始剤の総量をインキ全量に対し5質量%以下に抑えることが可能である。この観点から、好ましい光重合開始剤の総量は、インキ全量の0.01~5質量%である。0.01質量%以上の添加量があれば良好な硬化乾燥性を得ることができる。一方、5質量%を越える量でも良好な硬化乾燥性を得ることができるが、場合によっては臭気等の問題が生じうる。一方10質量%以上ではインキ流動性等を適性な範囲に保つことが困難となり可能となる。
【0056】
更に、本発明の印刷物の製造方法で使用する紫外線硬化性オフセットインキは、公知公用の各種バインダー樹脂を利用することができる。ここで述べるバインダー樹脂とは、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキに要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般を示しており、例えば非反応性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、エポキシエステル樹脂、オルソフタル酸ジアリル及び/またはイソフタル酸ジアリル及び/またはテレフタル酸ジアリルを重合させたジアリルフタレート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体等を挙げることができ、これらバインダー樹脂化合物は、単独で使用しても、いずれか2種以上を組合せて使用してもよい。
【0057】
(顔料)
顔料としては、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0058】
また、本発明の紫外線硬化性オフセットインキには、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキ中に0.1~60重量%の範囲で使用することにより、着色やインキのレオロジー特性を調整したりすることが可能である。
【0059】
(その他添加剤)
その他の添加剤としては、例えば耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性を付与する添加剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックス等を例示することができる。
【0060】
また例えば、インキの保存安定性を付与する添加剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p -メトキシフェノール、t -ブチルカテコール、t -ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p -ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p -ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p -ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等の重合禁止剤が例示される。
【0061】
その他、要求性能に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等の添加剤を添加することができる。
【0062】
本発明の紫外線硬化性オフセットインキは、無溶剤で使用することもできるし、必要に応じて適当な溶媒を使用する事も可能である。溶媒としては、上記各成分と反応しないものであれば特に限定されるものではなく、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明の印刷物の製造方法で使用する紫外線硬化性オフセットインキの製造は、アクリレートモノマー、光重合開始剤、バインダー樹脂、増感剤、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【実施例】
【0064】
次に実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
【0065】
〔活性エネルギー線硬化型オフセットインキの製造方法〕
表1、表2に示す実施例1~10、比較例1~11及び表3、表4に示す実施例11~20、比較例11~21の組成に従って、インキを3本ロールミルにて練肉することによって、各種のインキを得た。尚、表中の空欄は、未配合を意味している。
【0066】
〔紙基材上の展色物の製造方法〕
この様にして得られた活性エネルギー線硬化型オフセットインキを、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、コートボール紙(王子マテリア製UFコート)上、約220cm2の面積範囲にわたって墨濃度1.8(X-Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に塗布されるように展色し、紙基材に対する展色物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0067】
〔フィルム基材上の展色物の製造方法〕
前記と同様、RIテスターを用い、活性エネルギー線硬化型オフセットインキ0.10mlを使用してRIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、軟包装用2軸延伸ポリプロピレンフィルム基材(東洋紡製パイレンフィルム-OT P2161 厚さ20μm)上に、前記と同じ墨濃度で均一に塗布されるように展色し、フィルム基材に対する展色物を作成した。
【0068】
〔紫外線発光ダイオード(UV-LED)光源による硬化方法〕
実施例1~20については、前記の方法で得られた紫外線硬化性オフセットインキ塗布後の展色物を石英製の透明な窓が付き、ガスの封入口と排気口のついた窒素置換ボックスに入れ、ボックス内の酸素濃度が5%となるように窒素ガスを封入した。その後、水冷式UV-LED(中心発光波長385nm±5nmUV-LEDの出力100%)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、コンベアスピード100m/minの速度で、LED直下(照射距離9cm)を通過させ、インキ皮膜を硬化乾燥させた。
また、比較例1~21については、前記の窒素置換ボックス内の酸素濃度が20%となるように窒素ガスを封入し、実施例1~16のときと同じ装置、照射条件で、展色物に紫外線を照射することで、インキ皮膜を硬化乾燥させた。
【0069】
〔紙基材上に硬化させた活性エネルギー線硬化型オフセットインキの硬化性評価方法〕
硬化直後に硬化インキ層を上質紙で擦ることにより硬化皮膜の硬化性を評価した。
評価基準は以下とした。
◎:強い力で擦っても傷が付かず、UV硬化性は非常に良好である。
〇:強い力で擦ると僅かに傷が付く。
△:強い力で擦ると明確に傷が付く
×:弱い力で擦っても明確に傷が付き、UV硬化性は不良である。
【0070】
〔フィルム基材上に硬化させた活性エネルギー線硬化型オフセットインキの硬化性評価方法〕
硬化直後に硬化インキ層を爪で擦ることにより硬化皮膜の硬化性を評価した。
評価基準は以下とした。
◎:強い力で擦っても傷が付かず、UV硬化性は非常に良好である。
〇:強い力で擦ると僅かに傷が付く。
△:強い力で擦ると明確に傷が付く
×:弱い力で擦っても明確に傷が付き、UV硬化性は不良である。
【0071】
〔硬化塗膜の臭気評価方法〕
前記硬化方法で硬化させた硬化物を縦5cm横2.5cmに切り取り、この切片を10枚用意した。この切片10枚を素早く外径40mm、高さ75mm、口内径20.1mm、容量50mlのコレクションバイアルに入れ、ふたを閉めて60℃の恒温槽に1時間保管し、コレクションバイアル中に臭気を充満させた。つぎに、このコレクションバイアルを室温になるまで放置し、臭気の強さを評価するモニター10名により、各サンプルの臭気の強さを10段階で評価した。
10名の臭気評価結果を平均し、そのサンプルの臭気の強さとした。なお、数値が高い方が、低臭であることを意味している。
○: 10~7
△: 6~3
×: 2~0
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
使用した原料の詳細は下記の通りである
顔料
「ラーベン1060Ultra」:BIRLA CARBON製 カーボンブラック
「FASTOGEN BLUE TGR-1」:DIC製 Pigment Blue 15:3
「ホスタパームバイオレット RL 02」:クラリアント製 Pigment Violet 23
【0077】
体質顔料・ワックス・添加剤
「ハイフィラー#5000PJ」:松村産業製 タルク
「S-381-N1」:シャムロック製 オレフィン系微粉末ワックス
「ステアラーTBH」:精工化学製 tert-ブチルハイドロキノン
【0078】
バインダー樹脂、メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー
「ジアリルフタレート樹脂ワニス」:大阪ソーダ製ダイソーダップ 35質量%をSR355NS 65質量%に溶解させた混合物
「61X1025J」:DIC(株)社製ロジン変性エポキシ樹脂
「アロニックスM-400」:東亞合成製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート
「Miramer M-300」:MIWON製 トリメチロールプロパントリアクリレート
「SR355NS」:サートマー社製 ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
「TPGDA」:トリプロピレングリコールジアクリレート
【0079】
光重合開始剤、増感剤
「PI-1」:1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン(式(1)の構造である)
【0080】
【化1】
「PI-2」:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン(式(2)の構造である)
【0081】
【0082】
「Omnirad 907」:IGM RESINS製 2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン
「Omnirad 369」:IGM RESINS製 2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン
「Omnirad 379」:IGM RESINS製 2ー(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン
「Omnirad TPO」:IGM RESINS製 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキシド
「Omnirad 819」:IGM RESINS製 ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド
「Omnipol 910」:IGM RESINS製 2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン、ポリエチレングリコールジ[β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン]プロピオネート
「Omnipol TX」:IGM RESINS製 カルボキシメトキシ チオキサントンとポリテトラメチレングリコール250のジエステル
【0083】
この結果、実施例1~20の紫外線線硬化型インキは、従来よりも相当量少ない光重合開始剤量であっても硬化性に優れることが明らかである。