(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】研磨液組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20230302BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230302BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230302BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230302BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2018244980
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大井 信
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-048125(JP,A)
【文献】特開2015-129217(JP,A)
【文献】特開2017-178986(JP,A)
【文献】特開2004-269577(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038617(WO,A1)
【文献】特開2015-143332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B
G11B 5/84-5/858
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウム粒子(成分A)と、アミン化合物(成分B)と、水系媒体とを含有する研磨液組成物であって、
成分Aは、単結晶酸化セリウム粒子であり、
成分Bは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ジアミン及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種のアミン化合物であ
って、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種のアミン化合物である、研磨液組成物。
【請求項2】
成分Aが正電荷を有する、請求項1に記載の研磨液組成物。
【請求項3】
前記研磨液組成物のpHが5.5以上7.5未満である、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
【請求項4】
有機酸(成分C)をさらに含有する、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項5】
成分AのBET法により算出される平均一次粒径が、5nm以上50nm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項6】
成分Aは、X線回折で測定される結晶子径に対するBET法により算出される平均一次粒径の比[平均一次粒径/結晶子径]が0.9以上1.1以下である、請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項7】
成分Aの含有量が、0.1質量%以上0.5質量%未満である、請求項1から6のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項8】
酸化珪素膜の研磨に用いられる、請求項1から7のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化セリウム粒子を含有する研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)技術とは、加工しようとする被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で研磨液をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面凹凸部分を化学的に反応させると共に機械的に除去して平坦化させる技術である。
【0003】
CMP技術のパフォーマンスは、CMPの工程条件、研磨液の種類、研磨パッドの種類等によって決められる。これらの中でも、特に研磨液は、CMP工程のパフォーマンスに最も大きな影響を及ぼす因子である。この研磨液に含まれる研磨粒子としては、シリカや酸化セリウム(セリア)が広く用いられている。
【0004】
現在では、半導体素子の製造工程における、層間絶縁膜の平坦化、シャロートレンチ素子分離構造(以下「素子分離構造」ともいう)の形成、プラグ及び埋め込み金属配線の形成等を行う際には、このCMP技術が必須の技術となっている。近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求されるようになってきている。それに伴い、CMP工程に関しても、研磨傷フリーで且つより高速な研磨が望まれるようになってきている。例えば、シャロートレンチ素子分離構造の形成工程では、高研磨速度と共に、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)に対する研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨選択性(換言すると、研磨ストッパ膜の方が被研磨膜よりも研磨されにくいという研磨の選択性)の向上が望まれている。
【0005】
このような要求に対して、例えば、特許文献1には、酸化セリウム粒子、分散剤、カチオン性を示し、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は第4級アンモニウムである水溶性有機低分子から選ばれる低分子添加剤、並びに水を含むCMP研磨剤が提案されている。
特許文献2には、セリア砥粒と、有機カチオン系化合物とを含有し、pH2~5.8の研磨液組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-7061号公報
【文献】特開2004-269577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められている。そのため、CMP研磨では、高積層化による段差解消のために酸化珪素膜(被研磨膜)に対して高い研磨速度が必須になる。研磨速度を向上させる手段としては粒子の大径化等あるが、酸化珪素膜の研磨速度が向上させる場合、窒化珪素膜(研磨ストッパ膜)の研磨速度も付随して増加してしまう。以上から、酸化珪素膜の研磨速度は低下させずに窒化珪素膜の研磨速度を抑制する技術が求められる。
【0008】
そこで、本開示は、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を抑制できる研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、アミン化合物(成分B)と、水系媒体とを含有する研磨液組成物であって、成分Aは、単結晶酸化セリウム粒子であり、成分Bは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ジアミン及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種のアミン化合物である、研磨液組成物に関する。
【0010】
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法に関する。
【0011】
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、一態様において、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を抑制できる研磨液組成物を提供できるという効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、所定の酸化セリウム粒子(以下、「セリア粒子」ともいう)と所定のアミン化合物とを含有する研磨液組成物を用いることで、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を抑制できることを見出した。
【0014】
本開示は、一又は複数の実施形態において、酸化セリウム粒子(成分A)と、アミン化合物(成分B)と、水系媒体とを含有する研磨液組成物であって、成分Aは、単結晶酸化セリウム粒子であり、成分Bは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ジアミン及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種のアミン化合物である、研磨液組成物(以下、「本開示の研磨液組成物」ともいう)に関する。本開示の研磨液組成物によれば、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を抑制できる。
【0015】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
特定のアミン化合物(成分B)が窒化珪素膜に吸着して、特定のセリア粒子(成分A)が窒化珪素膜に直接接触するのを阻害することに加えて、アミン化合物の有する疎水部により窒化珪素膜の加水分解が抑制されるため、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を選択的に抑制できると考えられる。
また、成分Aは単結晶であり、粒子表面に酸素欠陥を多く有することから、表面活性が高くなり、酸化珪素膜の研磨速度の向上に寄与すると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0016】
[酸化セリウム(セリア)粒子(成分A)]
本開示の研磨液組成物に含まれる成分Aは、単結晶酸化セリウム粒子である。成分Aは、1種類でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。本開示において、「単結晶酸化セリウム粒子」とは、結晶粒界が存在しない単結晶の酸化セリウム粒子、又は、走査型電子顕微鏡による観察で結晶粒界が確認されない単結晶の酸化セリウム粒子をいう。本開示における「単結晶酸化セリウム粒子」は、一又は複数の実施形態において、X線回折で測定される結晶子径に対する窒素吸着(BET)法により算出される平均一次粒径の比[平均一次粒径/結晶子径]が0.9以上1.1以下である酸化セリウム粒子と言い換えることができる。また、本開示において、「単結晶酸化セリウム粒子」は好ましくは正電荷を有し、「正電荷を有する単結晶酸化セリウム粒子」とは、好ましくはpH5.5以上7.5未満の水溶液中で正電荷を有する単結晶酸化セリウム粒子をいう。成分Aが正電荷を有する場合、負電荷の酸化珪素膜に接触しやすく、酸化珪素膜の研磨速度の向上に寄与すると考えられる。
【0017】
成分Aの結晶子径は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの結晶子径は、5nm以上40nm以下が好ましく、10nm以上30nm以下がより好ましく、15nm以上25nm以下が更に好ましい。本開示において、成分Aの結晶子径は、X線回折で測定される結晶子径であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0018】
成分Aの窒素吸着(BET)法により算出される平均一次粒径は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましく、25nm以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの平均一次粒径は、5nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上40nm以下がより好ましく、10nm以上30nm以下が更に好ましく、15nm以上25nm以下が更に好ましい。本開示において、成分Aの平均一次粒径は、BET法により求められるBET比表面積S(m2/g)を用いて算出されるBET比表面積換算粒径である。BET比表面積は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
成分Aの結晶子径に対する成分Aの平均一次粒径の比[平均一次粒径/結晶子径]は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、1に近いほど好ましく、例えば、0.9以上が好ましく、0.92以上がより好ましく、0.95以上が更に好ましく、そして、1.1以下が好ましく、1.08以下がより好ましく、1.05以下が更に好ましい。より具体的には、比[平均一次粒粒径/結晶子径]は、0.9以上1.1以下が好ましく、0.92以上1.08以下がより好ましく、0.95以上1.05以下が更に好ましい。
【0020】
成分Aの製造方法、形状、及び表面状態については特に限定されなくてもよい。成分Aとしては、例えば、コロイダルセリア、不定形セリア等が挙げられる。
コロイダルセリアは、例えば、特表2010-505735号公報の実施例1~4に記載の方法で、ビルドアッププロセスにより得ることができる。
不定形セリアとしては、例えば、粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアの一実施形態としては、例えば、炭酸セリウムや硝酸セリウムなどのセリウム化合物を焼成、粉砕して得られる焼成粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアのその他の実施形態としては、例えば、無機酸や有機酸の存在下でセリア粒子を湿式粉砕することにより得られる単結晶粉砕セリアが挙げられる。湿式粉砕時に使用される無機酸としては、例えば硝酸が挙げられ、有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する有機酸が挙げられ、具体的には、ピコリン酸、キナルジン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。湿式粉砕方法としては、例えば、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が挙げられる。
成分Aの形状としては、例えば、略球状、多面体状、ラズベリー状が挙げられる。
【0021】
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%未満が更に好ましく、0.4質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.2質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの含有量は、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上0.5質量%未満が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0022】
[アミン化合物(成分B)]
本開示の研磨液組成物に含まれる成分Bは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ジアミン及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種のアミン化合物であって、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、炭素数1以上のアルキル基又は炭素数2以上のアルケニル基を有する、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ジアミン及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分Bの炭素数は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、そして、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。より具体的には、成分Bの炭素数は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、1以上10以下が好ましく、2以上8以下がより好ましく、3以上6以下が更に好ましい。成分Bは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0023】
第1級アミンである成分Bの具体例としては、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
第2級アミンである成分Bの具体例としては、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。
第3級アミンである成分Bの具体例としては、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
ジアミンである成分Bの具体例としては、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0024】
成分Bとしては、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、成分Bとしては、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、第2級アミン及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種のアミン化合物が好ましく、ジプロピルアミンがより好ましい。
【0025】
本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、そして、同様の観点から、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.18質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Bの含有量は、0.05質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下が更に好ましく、0.08質量%以上0.18質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
【0026】
本開示の研磨液組成物中の成分Aと成分Bとの質量比A/B(成分Aの含有量/成分Bの含有量)は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.1以下が更に好ましい。より具体的には、質量比A/Bは、0.5以上1.5以下が好ましく、0.7以上1.3以下がより好ましく、0.9以上1.1以下が更に好ましい。
【0027】
[水系媒体]
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。被研磨基板の表面清浄性の観点から、水系媒体としては、水が好ましく、イオン交換水及び超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A、成分B及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。本開示の研磨液組成物における水系媒体中の水の割合は、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
【0028】
[有機酸(成分C)]
本開示の研磨液組成物は、有機酸(成分C)をさらに含有することができる。成分Cとしては、例えば、カルボキシル基を有する有機酸が挙げられ、具体的には、ピコリン酸、キナルジン酸等が挙げられる。成分Cは、1種でもよいし、2種類以上の組合せでもよい。
【0029】
本開示の研磨液組成物中の成分Cの含有量は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.15質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Cの含有量は、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.03質量%以上0.3質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以上0.15質量%以下が更に好ましい。成分Cが2種以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
【0030】
本開示の研磨液組成物中の成分Aと成分Cとの質量比A/C(成分Aの含有量/成分Cの含有量)は、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.4以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下が更に好ましい。より具体的には、質量比A/Cは、1.0以上2.0以下が好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましく、1.4以上1.6以下が更に好ましい。
【0031】
[その他の成分]
本開示の研磨液組成物は、必要に応じてその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、成分C以外の分散剤、pH調整剤、水溶性高分子、界面活性剤、増粘剤、防錆剤、防腐剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、窒化珪素膜研磨抑制剤、ポリシリコン膜研磨抑制剤等が挙げられる。前記その他の成分は、本開示の効果を損なわない範囲で研磨液組成物に配合されていてもよく、本開示の研磨液組成物中のその他の成分の含有量は、研磨速度確保の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.0025質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、そして、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、任意成分の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.0025質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。
【0032】
[研磨液組成物]
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、成分B及び水系媒体、並びに、所望により上述した成分C及びその他の成分を公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。例えば、本開示の研磨液組成物は、少なくとも成分A、成分B及び水系媒体を配合してなるものとすることができる。すなわち、本開示は、その他の態様において、成分Aと成分Bと水系媒体とを配合する配合工程を含む、研磨液組成物の製造方法(以下、「本開示の研磨液組成物の製造方法」ともいう)に関する。成分Aが複数種類のセリア粒子の組合せである場合、成分Aは、複数種類のセリア粒子をそれぞれ配合することにより得ることができる。成分Bが複数種類のアミン化合物の組合せである場合、成分Bは、複数種類のアミン化合物をそれぞれ配合することにより得ることができる。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B及び水系媒体、並びに必要に応じて上述した成分C及びその他の成分を同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は特に限定されない。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示の研磨液組成物の製造方法における各成分の配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の含有量と同じとすることができる。
【0033】
本開示の研磨液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。2液型の研磨液組成物の一実施形態としては、成分Aを含む第1液と、成分Bを含む第2液とから構成され、使用時に第1液と第2液とが混合されるものが挙げられる。第1液と第2液との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。第1液及び第2液はそれぞれ必要に応じて上述した成分C及びその他の成分を含有することができる。
【0034】
本開示の研磨液組成物のpHは、酸化珪素膜の研磨速度確保、及び窒化珪素膜の研磨速度抑制の観点から、5.5以上が好ましく、5.9以上がより好ましく、5.95以上が更に好ましく、6.0以上が更に好ましく、そして、7.5未満が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.5以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の研磨液組成物のpHは、5.5以上7.5未満が好ましく、5.9以上7.0以下がより好ましく、5.95以上7.0以下が更に好ましく、6.0以上6.5以下が更に好ましい。本開示において、研磨液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨時、すなわち、研磨液組成物の研磨への使用を開始する時点での前記各成分の含有量をいう。本開示の研磨液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて水系媒体で適宜希釈して研磨工程で使用することができる。希釈割合としては5~100倍が好ましい。
【0036】
[被研磨膜]
本開示の研磨液組成物を用いて研磨される被研磨膜としては、例えば、酸化珪素膜が挙げられる。したがって、本開示の研磨液組成物は、酸化珪素膜の研磨を必要とする工程に使用できる。一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、層間絶縁膜を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、埋め込み金属配線を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、又は、埋め込みキャパシタを形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨に好適に使用できる。その他の一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、3次元NAND型フラッシュメモリ等の3次元半導体装置の製造に好適に使用できる。
【0037】
[研磨液キット]
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を製造するためのキット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。本開示の研磨液キットによれば、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を抑制できる研磨液組成物が得られうる。本開示の研磨液キットによれば、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度を抑制が可能な研磨液組成物が得られうる。
本開示の研磨液キットの一実施形態としては、例えば、成分A及び水系媒体を含む砥粒分散液(第1液)と成分Bを含む溶液(第2液)とを相互に混合されていない状態で含有し、これらが使用時に混合される研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記第1液と前記第2液とが混合された後、必要に応じて水系媒体を用いて希釈されてもよい。前記第1液に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水の全量でもよいし、一部でもよい。前記第2液には、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の一部が含まれていてもよい。前記第1液及び前記第2液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
【0038】
[半導体基板の製造方法]
本開示は、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板の製造方法」ともいう。)に関する。本開示の半導体基板の製造方法によれば、研磨工程において酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度の抑制が可能となるため、基板品質が向上した半導体基板を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
【0039】
本開示の半導体基板の製造方法の具体例としては、まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒すことよりその表面に二酸化シリコン層を成長させ、次いで、当該二酸化シリコン層上に窒化珪素(Si3N4)膜又はポリシリコン膜等の研磨ストッパ膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、シリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された研磨ストッパ膜とを含む基板、例えば、シリコン基板の二酸化シリコン層上に研磨ストッパ膜が形成された基板に、フォトリソグラフィー技術を用いてトレンチを形成する。次いで、例えば、シランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の被研磨膜である酸化珪素(SiO2)膜を形成し、研磨ストッパ膜が被研磨膜(酸化珪素膜)で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、研磨ストッパ膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも研磨ストッパ膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と研磨ストッパ膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。本開示の研磨液組成物は、このCMP法による研磨を行う工程に用いることができる。
【0040】
CMP法による研磨では、被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で、本開示の研磨液組成物をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面の凹凸部分を平坦化させる。本開示の半導体基板の製造方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨ストッパ膜との間に他の絶縁膜が形成されていてもよいし、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)と研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)との間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0041】
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨パッドの回転数は、例えば、30~200rpm/分、被研磨基板の回転数は、例えば、30~200rpm/分、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重は、例えば、20~500g重/cm2、研磨液組成物の供給速度は、例えば、10~500mL/分に設定できる。研磨液組成物が2液型研磨液組成物の場合、第1液及び第2液のそれぞれの供給速度(又は供給量)を調整することで、被研磨膜及び研磨ストッパ膜のそれぞれの研磨速度や、被研磨膜と研磨ストッパ膜との研磨速度比(研磨選択性)を調整できる。
【0042】
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)の研磨速度は、生産性向上の観点から、好ましくは500Å/分以上、より好ましくは800Å/分以上、更に好ましくは1200Å/分以上である。
【0043】
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨速度は、研磨選択性向上及び研磨時間の短縮化の観点から、好ましくは500Å/分以下、より好ましくは300Å/分以下、更に好ましくは150Å/分以下である。
【0044】
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨速度比(被研磨膜の研磨速度/研磨ストッパ膜の研磨速度)は、研磨時間の短縮化の観点から、6以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が更に好ましく、18以上が更に好ましい。本開示において研磨選択性は、研磨ストッパの研磨速度に対する被研磨膜の研磨速度の比(被研磨膜の研磨速度/研磨ストッパ膜の研磨速度)と同義であり、研磨選択性が高いとは、研磨速度比が大きいことを意味する。
【0045】
[研磨方法]
本開示は、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含む、基板の研磨方法(以下、本開示の研磨方法ともいう)に関する。
本開示の研磨方法を使用することにより、研磨工程において酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度の抑制が可能となるため、基板品質が向上した半導体基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本開示の半導体基板の製造方法と同じようにすることができる。
【実施例】
【0046】
1.研磨液組成物の調製(実施例1~24及び比較例1~3)
セリア粒子(成分A又は非成分A)、アミン化合物(成分B)、有機酸(成分C)、及び水を混合して実施例1~24及び比較例1~3の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量、及び研磨液組成物のpHを表1に示す。研磨液組成物のpHは、アンモニアを用いて調整した。
【0047】
研磨液組成物の調製に用いた成分A、非成分A、成分B、成分Cを以下に示す。
(成分A)
単結晶セリア粒子[粉砕セリア、詳細物性は表1記載]
(非成分A)
多結晶セリア粒子[粉砕セリア、詳細物性は表1記載]
(成分B)
B1:プロピルアミン[和光純薬株式会社]
B2:ブチルアミン[和光純薬株式会社]
B3:ジプロピルアミン[和光純薬株式会社]
B4:トリエチルアミン[和光純薬株式会社]
B5:トリエチレンテトラミン[和光純薬株式会社]
B6:エチレンジアミン[和光純薬株式会社]
B7:1,2-プロパンジアミン[和光純薬株式会社]
B8:1,3-プロパンジアミン[和光純薬株式会社]
B9:1,4-ブタンジアミン[和光純薬株式会社]
B10:N-エチルエチレンジアミン[和光純薬株式会社]
B11:N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン[和光純薬株式会社]
B12:N,N-ジメチルエチレンジアミン[和光純薬株式会社]
B13:N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン[和光純薬株式会社]
B14:N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン[和光純薬株式会社]
(成分C)
C1:ピコリン酸[有機合成薬品工業株式会社]
C2:キナルジン酸[和光純薬株式会社]
【0048】
2.各パラメータの測定方法
(1)研磨液組成物のpH
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜電波工業社製、「HM-30G」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して1分後の数値である。結果を表1に示した。
【0049】
(2)セリア粒子(成分A又は非成分A)の結晶子径
セリア粒子の粉体を粉末X線回折測定にかけ、29~30°付近に出現するセリアの(111)面のピークの半値幅、回折角度を用い、シェラー式よりセリア砥粒の結晶子径(nm)を算出した。結果を表1に示した。
シェラー式:結晶子径(Å)=K×λ/(β×cosθ)
K:シェラー定数、λ:X線の波長=1.54056Å、β:半値幅、θ:回折角2θ/θ
【0050】
(3)セリア粒子(成分A又は非成分A)の平均一次粒径
セリア粒子の平均一次粒径(nm)は、下記窒素吸着(BET)法によって得られるBET比表面積S(m2/g)を用い、セリア粒子の真密度を7.2g/cm3として算出した。結果を表1に示した。
【0051】
(4)セリア粒子(成分A又は非成分A)のBET比表面積
セリア粒子をイオン交換水に分散させた砥粒分散液を120℃で3時間熱風乾燥した後、メノウ乳鉢で細かく粉砕しサンプルを得た。測定直前に120℃の雰囲気下で15分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いてBET法によりセリア粒子のBET比表面積S(m2/g)を測定した。結果を表1に示した。
【0052】
(5)セリア粒子(成分A又は非成分A)の結晶性
X線回折で測定し算出される結晶子径とBET法により算出される平均一次粒径の比[平均一次粒径/結晶子径]が0.9以上1.1以下であるセリア粒子を単結晶として示した。
【0053】
(6)セリア粒子(成分A又は非成分A)の電荷
セリア粒子のゼータ電位は、電気音響方向濃度ゼータ電位測定装置ZetaProbeを用いて測定した。なお、各条件で調製した砥粒分散液は希釈せず、原液のまま用いた。
【0054】
3.研磨液組成物(実施例1~24及び比較例1~3)の評価
[試験片の作成]
シリコンウェーハの片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
同様に、シリコンウェーハの片面に、CVD法で厚さ700nmの窒化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、窒化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
【0055】
[酸化珪素膜(被研磨膜)の研磨速度]
研磨装置として、定盤径380mmのテクノライズ製「TR15M-TRK1」を用いた。また、研磨パッドとしては、ニッタ・ハース社製の硬質ウレタンパッド「IC-1000/Suba400」を用いた。前記研磨装置の定盤に、前記研磨パッドを貼り付けた。前記試験片をホルダーにセットし、試験片の酸化珪素膜を形成した面が下になるように(酸化珪素膜が研磨パッドに面するように)ホルダーを研磨パッドに載せた。さらに、試験片にかかる荷重が300g重/cm2となるように、錘をホルダーに載せた。研磨パッドを貼り付けた定盤の中心に、研磨液組成物を50mL/分の速度で滴下しながら、定盤及びホルダーのそれぞれを同じ回転方向に100rpm/分で1分間回転させて、酸化珪素膜試験片の研磨を行った。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、酸化珪素膜試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
【0056】
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。結果を表1に示した。
酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
【0057】
[窒化珪素膜(研磨ストッパ膜)の研磨速度]
試験片として酸化珪素膜試験片の代わりに窒化珪素膜試験片を用いること以外は、前記[酸化珪素膜の研磨速度の測定]と同様に、窒化珪素膜の研磨及び膜厚の測定を行った。窒化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。結果を表1に示した。
窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の窒化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の窒化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
【0058】
[研磨選択性(研磨速度比)]
窒化珪素膜の研磨速度に対する酸化珪素膜の研磨速度の比を研磨速度比とし、下記式により算出し、下記表1に示した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が高いことを示す。
研磨速度比=酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)/窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
【0059】
【0060】
表1に示されるように、所定のセリア粒子(成分A)及び所定のアミン化合物(成分B)を含む実施例18は、成分Aを含み、成分Bを含まない比較例1に比べて、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度が抑制されていた。
所定のセリア粒子(成分A)、所定のアミン化合物(成分B)及び有機酸(成分C)を含む実施例1~17、19~24は、所定のセリア粒子(成分A)及び/又は所定のアミン化合物(成分B)を含まない比較例2~3に比べて、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ、窒化珪素膜の研磨速度が抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示の研磨液組成物は、高密度化又は高集積化用の半導体基板の製造方法において有用である。