(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/04 20060101AFI20230302BHJP
B23B 15/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B23Q7/04 R
B23B15/00 A
(21)【出願番号】P 2019049264
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎也
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特許第3628785(JP,B2)
【文献】実開平05-016102(JP,U)
【文献】特開平11-285950(JP,A)
【文献】特開2017-042831(JP,A)
【文献】国際公開第2008/050912(WO,A1)
【文献】特許第4939674(JP,B2)
【文献】特許第6174193(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258649(US,A1)
【文献】特開2004-142047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23Q 7/00-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持しつつ軸回転させる主軸、及び前記主軸を回転可能に支持する主軸台を有する主軸ユニットと、
前記ワークの軸線に沿う第1軸方向と前記第1軸方向と異なる方向である第2軸方向に前記主軸ユニットを移動させる主軸移動部と、
前記ワークに接触することにより前記ワークを加工する工具と、
前記ワークを把持又は把持を解除するローダ、及び前記ローダを前記第1軸方向のみに沿って移動させるローダスライド駆動部を有するローダ装置と、
前記ローダ装置と前記主軸移動部を制御し、前記ローダスライド駆動部を通じた前記ローダの前記第1軸方向の移動と前記主軸移動部を通じた前記主軸ユニットの前記第2軸方向の移動の連携により前記第1軸方向において前記主軸を前記ローダに対向させ、前記ローダを通じて前記ワークを前記主軸に受け渡す又は前記ワークを前記主軸から受け取る制御部と、を備
え、
前記ローダの移動可能経路は前記主軸の移動可能範囲に重なり、
前記制御部は、前記主軸ユニットを前記ローダの前記移動可能経路から外れた位置に退避させた状態で、前記ローダを前記移動可能範囲から外れた外部位置から前記移動可能範囲内を通って前記ワークを受け渡す又は受け取るためのワーク授受位置に移動させる、
工作機械。
【請求項2】
前記ワーク授受位置は、前記外部位置に比べて前記工具に近い位置に設定される、
請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御部は、前記ワーク授受位置にある前記ローダが前記主軸に対向した状態で前記ローダを介して前記主軸により把持された加工済みの前記ワークを受け取った後、前記主軸ユニットを前記ローダの前記移動可能経路から外れた位置に退避させ、その後、前記ローダを前記外部位置に移動させたうえで前記ワークの把持を解除する、
請求項
1又は
2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記ローダを介して前記外部位置において加工前の前記ワークを受け取った後、前記主軸ユニットを前記ローダの前記移動可能経路から外れた位置に退避させた状態で、前記ローダを前記外部位置から前記ワーク授受位置に移動させ、その後、前記主軸が前記ローダに前記第1軸方向に対向するように前記主軸ユニットを移動させたうえで加工前の前記ワークを前記ローダから前記主軸に受け渡す、
請求項
1から
3の何れか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御部は、前記外部位置である受け取り位置にて前記ローダを介して加工前の前記ワークを外部から受け取り、前記受け取り位置とは異なる位置にある前記外部位置である排出位置にて前記ローダの把持を解除することにより加工済みの前記ワークを排出する、
請求項
1から
4の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械において、被加工物(ワーク)を把持又はその把持を解除するローダを有し、ローダにより把持された被加工物を搬送する搬送装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のローダは、複数軸(例えば3軸)方向に移動可能に構成され、主軸に被加工物を受け渡す又は主軸から被加工物を受け取るべく、被加工物の把持及びその解除を行う2つのローダチャックを備える。2つのローダチャックは、それぞれ独立して旋回可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、ローダは複数軸方向に移動可能であり、各ローダチャックは旋回可能に構成されるため、構成が複雑となっていた。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、より簡単な構成で、ローダと主軸の間でワークを授受することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、ワークを把持しつつ軸回転させる主軸、及び前記主軸を回転可能に支持する主軸台を有する主軸ユニットと、前記ワークの軸線に沿う第1軸方向と前記第1軸方向と異なる方向である第2軸方向に前記主軸ユニットを移動させる主軸移動部と、前記ワークに接触することにより前記ワークを加工する工具と、前記ワークを把持又は把持を解除するローダ、及び前記ローダを前記第1軸方向のみに沿って移動させるローダスライド駆動部を有するローダ装置と、前記ローダ装置と前記主軸移動部を制御し、前記ローダスライド駆動部を通じた前記ローダの前記第1軸方向の移動と前記主軸移動部を通じた前記主軸ユニットの前記第2軸方向の移動の連携により前記第1軸方向において前記主軸を前記ローダに対向させ、前記ローダを通じて前記ワークを前記主軸に受け渡す又は前記ワークを前記主軸から受け取る制御部と、を備え、前記ローダの移動可能経路は前記主軸の移動可能範囲に重なり、前記制御部は、前記主軸ユニットを前記ローダの前記移動可能経路から外れた位置に退避させた状態で、前記ローダを前記移動可能範囲から外れた外部位置から前記移動可能範囲内を通って前記ワークを受け渡す又は受け取るためのワーク授受位置に移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工作機械において、より簡単な構成で、ローダと主軸の間でワークを授受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る
図2の拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るローダ装置により第2主軸からワークが排出される場合の加工処理のフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係るローダ装置により第2主軸にワークが供給される場合の加工処理のフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係るローダ装置、背面工具ユニット及び第2主軸ユニットの概略平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るローダ装置、背面工具ユニット及び第2主軸ユニットの概略平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るローダ装置、背面工具ユニット及び第2主軸ユニットの概略平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るローダ装置、背面工具ユニット及び第2主軸ユニットの概略平面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るローダ装置、背面工具ユニット及び第2主軸ユニットの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る工作機械について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、ワークWを加工するNC(Numerical Control)旋盤である。詳しくは、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1主軸ユニット10と、第1Z軸移動機構13と、工具機構30と、第2主軸ユニット70と、背面工具ユニット20と、工作機械1を制御する制御部300と、ローダ装置80と、
図2に示すシュートボックス96と、
図3に示す第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76と、を備える。
【0010】
(第1主軸ユニット10)
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークWを把持しつつ軸回転させ、ワークWの正面側を加工する。第1主軸ユニット10は、ワークWを回転可能に支持する正面主軸である第1主軸14と、第1主軸14を回転可能に支持する第1主軸台11と、を備える。第1主軸14は、何れも図示しない、ワークWを把持するチャックと、チャックで把持したワークWを軸回転させるワーク回転用モータと、を備える。
第1Z軸移動機構13は第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。第1Z軸移動機構13は、Z軸モータ13zでボールねじ13aを軸回転させることでナット13bとともに第1主軸ユニット10をワークWの軸方向に沿うZ軸方向に移動させる。
【0011】
(工具機構30)
図1に示すように、工具機構30は、第1主軸ユニット10により把持されたワークWに対して工具35aをX軸方向及びY軸方向に移動させる。工具機構30は、ベッドSに固定された固定台41と、固定台41に固定されるガイドブッシュレス装置98と、バイト等からなる工具35aを有する正面工具ユニット35と、正面工具ユニット35を高さ方向に沿うY軸方向に移動させるY軸移動機構32と、
図2に示すように、正面工具ユニット35をX軸方向に移動させるX軸移動機構33と、を備える。Y軸移動機構32及びX軸移動機構33は、第1Z軸移動機構13と同様に、モータ、ボールねじ及びナットにより構成される。第1Z軸移動機構13、Y軸移動機構32又はX軸移動機構33は、制御部300による制御のもと、工具35aを第1主軸14により回転されるワークWに対して移動させることによりワークWの加工を行う。
【0012】
図1に示すように、固定台41は、第1主軸14に把持されたワークWを中心とした空洞部41aを有する。空洞部41aには、第1主軸14の周囲に位置するガイドブッシュレス装置98が搭載されている。なお、ガイドブッシュレス装置98に代えて、ワークWを支持するガイドブッシュ装置が搭載されていてもよい。
【0013】
(第2主軸ユニット70)
図1に示すように、第2主軸ユニット70は、Z軸方向に第1主軸ユニット10と向かい合う位置に設けられ、ワークWを把持しつつ軸回転させ、ワークWの背面側を加工する。第2主軸ユニット70は、ワークWを回転可能に支持する背面主軸である第2主軸71と、第2主軸71を回転可能に支持する第2主軸台72と、を備える。第2主軸71は、何れも図示しない、ワークWを把持するチャックと、チャックで把持したワークWを軸回転させるワーク回転用モータと、を備える。
【0014】
図3に示すように、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76は、それぞれ上述した第1Z軸移動機構13と同様に構成される。X軸スライド機構76は、第2Z軸スライド機構75及び第2主軸ユニット70をX軸方向に移動させる。第2Z軸スライド機構75は、第2主軸ユニット70をZ軸方向に移動させる。従って、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76により、第2主軸ユニット70をZ軸方向及びX軸方向に沿う水平方向に移動させることができる。第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76は主軸移動部の一例である。
【0015】
(背面工具ユニット20)
図1に示すように、背面工具ユニット20は、第2主軸ユニット70により軸回転されるワークWを加工する。背面工具ユニット20は、ベッドS上に固定された工具保持部21と、工具保持部21に保持される工具22と、を備える。工具22は、ドリル、ターニングバイト等から構成されるとともにX軸方向に沿って配列される。工具22の先端は、Z軸方向における第2主軸71に近づく方向に突出する。
【0016】
(ローダ装置80)
図1、
図2及び
図3に示すように、ローダ装置80は、第2主軸71との間でワークWを授受するローダ82と、ローダ82をZ軸方向に沿って移動させるローダスライド駆動部84と、を備える。ローダスライド駆動部84は、出力軸83aを有するモータ83と、平歯車84a,84fと、ベルト84b,84cと、回転軸84eと、スライド部82sと、スライド案内部82gと、固定部材82dと、支持部材85と、を備える。
【0017】
図4に示すように、モータ83は、制御部300による制御のもと、出力軸83aを回転させる。出力軸83aはX軸方向に沿ってベルト84cに向けて延びる。出力軸83aの先端側にはベルト84bが噛み合う歯車83a1が固定されている。
平歯車84aは、平歯車84aの回転中心に固定される回転軸84eを介して回転可能に支持される。平歯車84aは、歯車83a1よりも大きい径を有し、歯車83a1に対してZ軸方向に並べられる。円環状のベルト84bは平歯車84aと歯車83a1の間に掛け回されている。歯車83a1、平歯車84a及びベルト84bによりモータ83の出力軸83aを減速させて平歯車84aに伝達する減速機構が構成される。
【0018】
回転軸84eは、平歯車84aの回転中心に位置し、平歯車84aと一体で回転する。回転軸84eは、平歯車84aからX軸方向に沿ってベルト84cに向けて延びる。回転軸84eの先端側にはベルト84cが噛み合う歯車84e1が固定されている。
【0019】
図1に示すように、平歯車84fは歯車84e1に対してZ軸方向に並べられる。平歯車84fは背面工具ユニット20に近い位置に設けられる。平歯車84fと歯車84e1の間の距離は、ローダ82の移動距離よりも大きく設定される。円環状のベルト84cは歯車84e1と平歯車84fの間に掛け回されている。
【0020】
固定部材82dは、ベルト84cの一部にスライド部82sを固定する。スライド案内部82gは、Z軸方向に沿って延びるレールであり、スライド案内部82gにはスライド部82sがZ軸方向に摺動可能に取り付けられる。スライド部82sは、歯車84e1と平歯車84fの間におけるベルト84cの回転に伴ってZ軸方向に移動する。
【0021】
図3に示すように、支持部材85は、スライド部82sに固定され、第2主軸71と同一の高さにローダ82を支持する。支持部材85は、Y軸方向に延びる第1板部85aと、第1板部85aの上端に連結され、X軸方向に背面工具ユニット20に向けて延びる第2板部85bと、を備える。第1板部85aの下端はスライド部82sに固定される。第2板部85bにおける背面工具ユニット20に近い端部にはローダ82が固定される。
【0022】
ローダ82は、ワークWを把持又はその把持を解除する。ローダ82は、シリンダ81と、ローダチャック82aと、を備える。シリンダ81は、ローダチャック82aの上方に位置し、ローダチャック82aを開閉動作する。ローダチャック82aは、X軸方向に沿って並び、X軸方向に沿って互いに接近又は離間する一対のハンド部82b,82cを有する。一対のハンド部82b,82cにおける互いに対向する面には、ワークWを外周面から把持する三角形状の穴部が形成される。
【0023】
ローダスライド駆動部84の作用について説明する。
モータ83が駆動すると、モータ83の出力軸83aの回転力はベルト84bを介して歯車83a1から平歯車84aに伝達される。平歯車84aの回転に伴い、歯車84e1が回転すると、歯車84e1と平歯車84fの間でベルト84cが回転する。ベルト84cの回転に伴い、スライド部82sがローダ82とともにZ軸方向に移動する。このように、ローダスライド駆動部84はローダ82をZ軸方向に沿って移動させることができる。
【0024】
図7に示すように、Z軸方向に延びるローダ82の移動可能経路Rは第2主軸71の移動可能範囲Arを通過するように設定される。ローダ82は、ローダスライド駆動部84により、Z軸方向に沿って並べられる第1の位置P1、第2の位置P2及び第3の位置P3の間で移動する。
第1の位置P1は背面工具ユニット20に近い位置に設定される。第1の位置P1は、ローダ82と第2主軸71の間でワークWを授受するためのワーク授受位置の一例である。
第2の位置P2及び第3の位置P3は、第1の位置P1に比べて背面工具ユニット20から遠い位置であって、移動可能範囲Arの外部に位置する。第3の位置P3は、第2の位置P2よりも背面工具ユニット20から遠くに位置する。第2の位置P2はローダ82から加工済みのワークWが外部(例えば、後述する受箱90)に排出される外部位置又は排出位置の一例である。第3の位置P3は外部(例えば、後述するパーツフィーダ95)からローダ82が加工前のワークWを受け取る外部位置又は受け取り位置の一例である。
【0025】
図2に示すように、シュートボックス96は、加工済みのワークWを外部に排出するための箱である。シュートボックス96は、ベッドSの上面であって、背面工具ユニット20の近傍に設けられる。シュートボックス96は、X軸方向においてスライド部82sと同一の位置に設けられるとともに、Z軸方向において背面工具ユニット20と同一の位置に設けられる。
【0026】
(制御部300)
制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御するものであり、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる後述する加工処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を備える。制御部300は、数値制御(NC)によって、第1主軸14、第2主軸71、ローダ装置80、第1Z軸移動機構13、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を制御する。
【0027】
次に、
図5のフローチャートを参照しつつ、ローダ装置80によりワークWが排出される場合の加工処理について説明する。この加工処理は制御部300により実行される。本例では、第1主軸14には、図示しないパーツフィーダによりワークWが供給される。この加工処理の開始時には、ローダ82は第2の位置P2に存在する。この加工処理が実行される際には、
図10に示すように、第2の位置P2に位置し加工済みのワークWが収容される受箱90が配置される。すなわち、シュートボックス96は利用されない。
図3に示すように、受箱90は、Y軸方向におけるローダ82の下方向に位置するため、ローダ82のZ軸方向の移動を妨げることはない。
【0028】
まず、制御部300は、第1主軸14により把持されたワークWの正面側を加工する(ステップS101)。具体的には、制御部300は、第1主軸14を通じて把持されたワークWを軸回転させた状態で、工具35aの刃先がワークWに接触するようにZ軸方向に工具35aをワークWに対して送る。これにより、ワークWの正面側が加工される。
【0029】
ワークWの正面側の加工が完了すると、制御部300は、第1主軸14により把持されたワークWを第1主軸14から第2主軸71に受け渡す(ステップS102)。具体的には、制御部300は、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を介して、第2主軸71を第1主軸14にZ軸方向に対向する位置まで移動させる。そして、第2主軸71のチャックによりワークWの正面側を把持し、第1主軸14のチャックによるワークWの背面側の把持を解除する。
【0030】
次に、制御部300は、第2主軸71により把持されたワークWの背面側を加工する(ステップS103)。具体的には、制御部300は、
図7に示すように、第2主軸71が工具22に対向する加工位置Paに近づくように第2主軸台72を移動させた後、第2主軸71を通じて把持されたワークWを軸回転させた状態で工具22の刃先をワークWに接触させる。これにより、ワークWの背面側が加工される。
【0031】
そして、制御部300は、
図8の矢印Y0で示すように、ローダ82の移動の妨げにならないように、第2主軸台72を加工位置Paから退避位置Pbに移動させる(ステップS104)。退避位置Pbは、ローダ82が移動可能経路Rに沿って移動する際にローダ82に接触しない第2主軸台72の位置に設定される。
【0032】
次に、制御部300は、
図8の矢印Y1で示すように、ローダスライド駆動部84を介してローダ82を第2の位置P2から第1の位置P1に移動させる(ステップS105)。
【0033】
そして、制御部300は、
図9の矢印Y2で示すように、第2主軸台72を退避位置Pbから受け渡し位置Pcに移動させる(ステップS106)。受け渡し位置Pcは、第2主軸71が第1の位置P1のローダ82に対向する第2主軸台72の位置であり、ワークWの背面側がローダチャック82aの一対のハンド部82b,82cの間に嵌まる位置である。具体的には、まず、第2主軸71がZ軸方向にローダ82に対向する位置に第2主軸台72が移動し、その後、第2主軸71により把持されたワークWがハンド部82b,82cの間に挿入されるように第2主軸台72がZ軸方向に移動する。このとき、ローダチャック82aは開状態にある。
なお、ワークWがハンド部82b,82cの間に挿入される際、第2主軸71がローダ82に近づくようにZ軸方向に移動してもよいし、反対にローダ82が第2主軸71に近づくようにZ軸方向に移動してもよい。
【0034】
次に、制御部300は、シリンダ81を介してローダチャック82aを閉じることにより、ローダ82によりワークWを把持し(ステップS107)、第2主軸71のチャックを開く(ステップS108)。これにより、ローダ82によりワークWが把持されるとともに、第2主軸71によるワークWの把持が解除される。
【0035】
そして、制御部300は、
図9の矢印Y3で示すように、ローダ82の移動の妨げにならないように、受け渡し位置Pcから退避位置Pbに第2主軸台72を移動させる(ステップS109)。具体的には、まず、第2主軸71により把持されたワークWがハンド部82b,82cの間から抜き出されるように第2主軸台72がZ軸方向に移動し、その後、第2主軸台72が退避位置Pbに移動される。
次に、制御部300は、
図10の矢印Y4で示すように、ローダスライド駆動部84を介してローダ82を第1の位置P1から第2の位置P2に移動させ(ステップS110)、シリンダ81を介してローダチャック82aを開くことにより、受箱90内に加工済みのワークWを排出する(ステップS111)。
以上で、ローダ装置80によりワークWが排出される場合の加工処理が終了となる。この加工処理は予め設定される回数だけ繰り返し実行される。
【0036】
次に、
図6のフローチャートを参照しつつ、ローダ装置80によりワークWが第2主軸71に供給される場合の加工処理について説明する。この加工処理は制御部300により実行される。この加工処理の開始時には、ローダ82は第3の位置P3に位置し、第2主軸台72は退避位置Pbに位置する。この加工処理が実行される際には、
図11に示すように、Z軸方向において第3の位置P3よりも外側にパーツフィーダ95が配置される。パーツフィーダ95は、加工前の複数のワークWを収容し、収容された複数のワークWのうち一つのワークWを第3の位置P3のローダ82にて受け取り可能な位置に配置する。
制御部300は、
図11で示すように、第3の位置P3のローダ82を介してパーツフィーダ95から加工前のワークWを受け取る(ステップS201)。具体的には、開状態にあるローダチャック82aの間にパーツフィーダ95により供給されるワークWが挟み込まれるようにZ軸方向に沿ってローダ82が移動した後に、ローダチャック82aが閉じる。これにより、ローダ82によりワークWが把持される。
【0037】
そして、制御部300は、
図11の矢印Y5で示すように、ローダスライド駆動部84を介してローダ82を第3の位置P3から第1の位置P1に移動させる(ステップS202)。次に、制御部300は、
図9の矢印Y2で示すように、第2主軸71がローダ82に対向するように第2主軸台72を退避位置Pbから受け渡し位置Pcに移動させる(ステップS203)。これにより、第2主軸71の開状態のチャック内には、ローダ82により把持されたワークWが挿入される。
【0038】
そして、制御部300は、第2主軸71のチャックを閉じる(ステップS204)。これにより、第2主軸71によりワークWの背面側が把持される。次に、制御部300は、シリンダ81を介してローダチャック82aを開くことにより、ローダ82によるワークWの把持を解除する(ステップS205)。そして、制御部300は、上記ステップS104と同様に、
図9の矢印Y3で示すように、受け渡し位置Pcから退避位置Pbに第2主軸台72を移動させる(ステップS206)。次に、制御部300は、ローダスライド駆動部84を介してローダ82を第1の位置P1から第3の位置P3に移動させる(ステップS207)。なお、このとき、ローダ82は、第3の位置P3でなく、第2の位置P2に移動してもよい。
【0039】
そして、制御部300は、上記ステップS103と同様に、第2主軸71により把持されたワークWの背面側を加工する(ステップS208)。次に、制御部300は、上記ステップS102と反対に、第2主軸71により把持されたワークWを第2主軸71から第1主軸14に受け渡す(ステップS209)。そして、制御部300は、上記ステップS101と同様に、第1主軸14により把持されたワークWの正面側を加工する(ステップS210)。次に、制御部300は、上記ステップS102と同様に、第1主軸14により把持されたワークWを第1主軸14から第2主軸71に受け渡す(ステップS211)。最後に、制御部300は、第2主軸71がシュートボックス96の下方となる位置まで、第2主軸台72を移動させ、ワークWを外部に排出する(ステップS212)。具体的には、第2主軸71のチャックを開くことにより、ワークWをシュートボックス96に落下させる。
以上で、ローダ装置80によりワークWが供給される場合の加工処理が終了となる。この加工処理は予め設定される回数だけ繰り返し実行される。なお、ステップS207においてローダ82が第3の位置P3に到達した後に、ステップS208以降の処理と同時に、次の加工処理におけるステップS201が実行されてもよい。これにより、加工時間を短縮することができる。
【0040】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械1は、ワークWを把持しつつ軸回転させる主軸の一例である第2主軸71、及び第2主軸71を回転可能に支持する主軸台の一例である第2主軸台72を有する主軸ユニットの一例である第2主軸ユニット70と、ワークWの軸線に沿う第1軸方向の一例であるZ軸方向とZ軸方向と異なる方向である第2軸方向の一例であるX軸方向に第2主軸ユニット70を移動させる主軸移動部の一例である第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76と、ワークWに接触することによりワークWを加工する工具22と、ワークWを把持又は把持を解除するローダ82、及びローダ82をZ軸方向のみに沿って移動させるローダスライド駆動部84を有するローダ装置80と、ローダ装置80と前記主軸移動部を制御し、ローダスライド駆動部84を通じたローダ82のZ軸方向の移動と前記主軸移動部を通じた第2主軸ユニット70のX軸方向の移動の連携によりZ軸方向において第2主軸71をローダ82に対向させ、ローダ82を通じてワークWを第2主軸71に受け渡す又はワークWを第2主軸71から受け取る制御部300と、を備える。
この構成によれば、ローダ82が第2主軸71との間でワークWを授受する際、ローダ82のZ軸方向の移動に加えて、第2主軸ユニット70のX軸方向の移動が利用される。このため、ローダ82は1軸方向(Z軸方向)のみに沿って移動可能に構成することができる。従って、ローダ装置80は、より簡単な構成で、第2主軸71との間でワークWを授受することができる。よって、ローダ装置80の組み立て工数やコストを低減することができる。
また、ローダ82はワークWの周囲を把持する一対のハンド部82b,82cを有する。一対のハンド部82b,82cによりワークWが授受されるため、この授受の際にワークWに傷がつくことが抑制される。
【0041】
(2)ローダ82の移動可能経路Rは第2主軸71の移動可能範囲Arに重なる。制御部300は、第2主軸ユニット70をローダ82の移動可能経路Rから外れた位置に退避させた状態で、ローダ82を移動可能範囲Arから外れた外部位置である第2の位置P2又は第3の位置P3から移動可能範囲Ar内を通ってワークWを受け渡す又は受け取るためのワーク授受位置の一例である第1の位置P1に移動させる。
この構成によれば、ローダ82の移動可能経路Rは第2主軸71の移動可能範囲Arに重なるため、工作機械1をコンパクトに構成することができる。また、この構成でも、ローダ82の移動時には第2主軸ユニット70は退避しているため、ローダ82が第2主軸ユニット70に衝突することが抑制される。
【0042】
(3)ワーク授受位置の一例である第1の位置P1は、外部位置である第2の位置P2又は第3の位置P3に比べて工具22に近い位置に設定される。
この構成によれば、第2主軸71がローダ82からワークWを受け取った後に、迅速にワークWを工具22にて加工することができる。よって、加工時間を短縮できる。
また、第2主軸71は工具22を利用したワークWの加工の後に、迅速にワークWをローダ82に受け渡すことができる。よって、加工時間を短縮できる。
【0043】
(4)制御部300は、ワーク授受位置の一例である第1の位置P1にあるローダ82が第2主軸71に対向した状態でローダ82を介して第2主軸71により把持された加工済みのワークWを受け取った後、第2主軸ユニット70をローダ82の移動可能経路Rから外れた位置に退避させ、その後、ローダ82を第2の位置P2に移動させたうえでワークWの把持を解除する。
この構成によれば、ローダ82が1軸方向に沿って移動可能に構成された場合であっても、ローダ82はワークWを第2主軸71から受け取った後に外部に排出することができる。
【0044】
(5)制御部300は、ローダ82を介して外部位置である第3の位置P3において加工前のワークWを受け取った後、第2主軸ユニット70をローダ82の移動可能経路Rから外れた位置に退避させた状態で、ローダ82を第3の位置P3から第1の位置P1に移動させ、その後、第2主軸71がローダ82にZ軸方向に対向するように第2主軸ユニット70を移動させたうえで加工前のワークWをローダ82から第2主軸71に受け渡す。
この構成によれば、ローダ82が1軸方向に沿って移動可能に構成される場合であっても、ローダ82は外部から加工前のワークWを受け取った後に第2主軸71に供給することができる。
【0045】
(6)制御部300は、受け取り位置の一例である第3の位置P3にてローダ82を介して加工前のワークWを外部から受け取り、第3の位置P3とは異なる位置にある外部位置である排出位置の一例である第2の位置P2にてローダ82の把持を解除することにより加工済みのワークWを排出する。
この構成によれば、第2の位置P2と第3の位置P3を異なる位置に設定することにより、
図11に示すように、ローダ82から加工済みのワークWが排出される受箱90とローダ82に加工前のワークWを供給するパーツフィーダ95の設置位置が干渉することが抑制される。よって、工作機械1の構成を変更することなく、
図5に示すローダ装置80によりワークWが排出される場合の加工処理と
図6に示すワークWが供給される場合の加工処理が実行可能となる。
【0046】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0047】
(変形例)
上記実施形態において第2の位置P2と第3の位置P3は同一の位置に設定されてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、ローダ装置80によりワークWが排出される場合の加工処理においては、加工済みのワークWが受箱90に収容される。このため、シュートボックス96は省略されてもよい。
【0049】
上記実施形態においては、ローダスライド駆動部84は、モータ83、ベルト84c、歯車84e1及び平歯車84fを備えていたが、ローダスライド駆動部84の構成はこれに限らず、第1Z軸移動機構13と同様に、モータ、ボールねじ及びナットにより構成されてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、ローダ装置80によりワークWが供給される場合の加工処理においては、第2主軸71はワークWをシュートボックス96に落とすことにより外部に排出していた(ステップS212)。しかしながら、ワークWを外部に排出する方法は、これに限らず、ローダ装置80によりワークWが受箱90に排出されてもよい。この場合、制御部300は、ステップS211の処理の後、
図5のステップS104の処理に移行する。
また、第2主軸71は、ワークWを第1主軸14から受け取る際に、内部の保持される加工済みのワークWが第2主軸71の後端から押し出されることによりワークWを外部に排出してもよい。この場合、受箱90は、ワークWを第1主軸14から受け取る位置の第2主軸71の後端の下方向に設けられる。
【0051】
上記実施形態においては、工作機械1は第1主軸ユニット10及び工具機構30を備えていたが、第1主軸ユニット10及び工具機構30は省略されてもよい。この場合、工作機械1によりワークWの背面側のみ加工される。
【0052】
上記実施形態においては、ローダ82の移動可能経路Rは第2主軸71の移動可能範囲Arに重なっていたが、ローダ82の移動可能経路Rは第2主軸71の移動可能範囲Arの外部に位置していてもよい。この場合、ローダ82を移動させる際に、第2主軸台72を退避させる必要がなくなる。
【符号の説明】
【0053】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、13…第1Z軸移動機構、14…第1主軸、20…背面工具ユニット、21…工具保持部、22,35a…工具、30…工具機構、32…Y軸移動機構、33…X軸移動機構、35…正面工具ユニット、41…固定台、70…第2主軸ユニット、71…第2主軸、72…第2主軸台、75…第2Z軸スライド機構、76…X軸スライド機構、80…ローダ装置,81…シリンダ、82…ローダ、82a…ローダチャック、82b,82c…ハンド部、82s…スライド部、83…モータ、84…ローダスライド駆動部、85…支持部材、90…受箱、95…パーツフィーダ、96…シュートボックス、300…制御部、Ar…移動可能範囲、P1…第1の位置、P2…第2の位置、P3…第3の位置、Pa…加工位置、Pb…退避位置、Pc…受け渡し位置、R…移動可能経路、S…ベッド、W…ワーク