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  • 特許-染毛用組成物及び染毛方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】染毛用組成物及び染毛方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/88 20060101AFI20230302BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230302BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61K8/88
A61K8/46
A61Q5/06
A61Q5/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019054248
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152691
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貴成
(72)【発明者】
【氏名】萩野 太徳
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-232264(JP,A)
【文献】国際公開第02/072046(WO,A2)
【文献】特表2013-515721(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181915(WO,A1)
【文献】特開2006-176513(JP,A)
【文献】特開2016-193939(JP,A)
【文献】特表2011-526275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/88
A61K 8/46
A61Q 5/06
A61Q 5/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド-8又はポリアミド-3、及び直接染料が配合された染毛用組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド-8の配合量が0.01質量%以上であるか、又は前記ポリアミド-3の配合量が0.01質量%以上である請求項1に記載の染毛用組成物。
【請求項3】
ジ(C12-15)パレス-2リン酸が配合された請求項1又は請求項2に記載の染毛用組成物。
【請求項4】
ポリビニルピロリドンが配合された請求項1~3のいずれか1項に記載の染毛用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の染毛用組成物を用いた染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛用組成物及び染毛用組成物を用いた染毛方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染色を行う目的で、種々の染毛用組成物が提供されている。染毛用組成物の一例として、酸化染料が配合された酸化染毛剤、酸性染料等の直接染料が配合された半永久染毛料がある。
【0003】
酸化染料が配合された染毛用組成物は、酸化染料の酸化反応によって発色させ、染毛するものである。一方、直接染料が配合された染毛用組成物は、酸化反応によらない染毛であるから、酸化反応による毛髪損傷や頭皮等の皮膚刺激を抑えた染毛が実現できる。
【0004】
上記直接染料が配合された染毛用組成物の例として、有機酸等のpH調整剤、増粘剤を含有する酸性染毛料組成物に、所定の酸性染料及びアルキレングリコールエステルを含有させることで、染毛力を高め、染毛後の退色を抑制し、染め上がりの色調の均一性を高める技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-201737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直接染料が配合された染毛用組成物においては、直接染料の毛髪への吸着や、直接染料の毛髪への浸透によって、染毛効果が得られる。しかし、直接染料が配合された染毛用組成物では、直接染料の毛髪への吸着や浸透が不十分となり、毛髪を濃く染色できず、所望する染毛結果が得られない場合があった。
そのため、直接染料が配合された染毛用組成物において、染毛性をより向上させる要望が存在する。
【0007】
本発明の目的は、染毛性を向上した染毛用組成物の提供、及び当該染毛用組成物を用いた染毛方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等が、鋭意検討したところ、直接染料が配合された染毛用組成物にポリアミド-8又はポリアミド-3が配合されたものとすれば、染毛用組成物の染毛性を向上できることを見出した。また、当該染毛用組成物によって、染毛性を向上した染毛方法が提供できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の染毛用組成物は、ポリアミド-8又はポリアミド-3、及び直接染料が配合されたものである。
【0010】
本発明の染毛用組成物は、前記ポリアミド-8の配合量が0.01質量%以上であるか、又は前記ポリアミド-3の配合量が0.01質量%以上であると、染毛性の向上により優れたものとなる。
【0011】
本発明の染毛用組成物は、さらに、ジ(C12-15)パレス-2リン酸が配合されたものとすれば、染毛性の向上がより優れるため好ましい。
【0012】
本発明の染毛用組成物は、さらに、ポリビニルピロリドンが配合されたものとすれば、垂れ落ちの抑制に優れるため好ましい。
【0013】
本発明の染毛方法は、上記染毛用組成物を用いたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の染毛用組成物によれば、染毛用組成物の染毛性を向上できる。また、本発明の染毛方法によれば、染毛性を向上した染毛方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1、実施例9の染毛用組成物における「垂れ落ちの抑制」の評価結果を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
【0017】
本実施形態の染毛用組成物は、ポリアミド-8又はポリアミド-3、及び直接染料が配合されたものである。なお、本実施形態の染毛用組成物には、ポリアミド-8又はポリアミド-3のいずれかが配合されたものでもあってよく、両者が配合されたものであってもよい。
【0018】
<ポリアミド-8>
本実施形態の染毛用組成物にポリアミド-8が配合されたものとすれば、染毛性を向上することができる。本実施形態の染毛用組成物に配合されるポリアミド-8は、エチレンジアミン、ネオペンチルグリコール、及び水添ダイマージリノール酸の共重合体の末端がステアリルアルコールでブロックされたものである。
本実施形態の染毛用組成物には、1種又は2種以上のポリアミド-8が配合されたものにすることができる。
【0019】
本実施形態の染毛用組成物に配合される前記ポリアミド-8は、例えば、ポリアミド-8が10質量%となるようにベンジルアルコールに溶解させた溶液を用いて、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度36s-1の条件で測定された粘度の値が、1mPa・s以上10mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0020】
本実施形態の染毛用組成物に配合されるポリアミド-8の配合量の下限は、染毛性の向上をより優れたものとする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、前記ポリアミド-8の配合量の上限は、染毛後の毛髪が硬い手触りとなるのを低減する観点から、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.7質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
<ポリアミド-3>
本実施形態の染毛用組成物にポリアミド-3が配合されたものとすれば、染毛性を向上することができる。本実施形態の染毛用組成物に配合されるポリアミド-3は、ジリノール酸、エチレンジアミン、及びポリプロピレングリコールジアミンを縮合させて得られた重合体の末端がPEG/PPG-32/10アミノプロピルメチルエーテルで封鎖されたものである。
本実施形態の染毛用組成物には、1種又は2種以上のポリアミド-3が配合されたものとすることができる。
【0022】
本実施形態の染毛用組成物に配合される前記ポリアミド-3は、例えば、ポリアミド-3が10質量%となるようにベンジルアルコールに溶解させた溶液を用いて、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度36s-1の条件で測定された粘度の値が、20mPa・s以上50mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0023】
本実施形態の染毛用組成物に配合されるポリアミド-3の配合量の下限は、染毛性の向上をより優れたものとする観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、前記ポリアミド-3の配合量の上限は、染毛後の毛髪が硬い手触りとなるのを低減する観点から、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.7質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
<直接染料>
本実施形態の染毛用組成物に、直接染料が配合されたものとすれば、直接染料が毛髪に吸着及び/又は浸透することで、染毛できる。本実施形態の染毛用組成物に配合される直接染料は、1種又は2種以上の直接染料を用いることができる。
前記直接染料としては、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料、分散染料、天然染料等が挙げられる。
【0025】
前記酸性染料は、染毛用組成物中において陰イオンとして存在し、当該イオンの毛髪への吸着により染毛が実現される。
前記酸性染料としては、例えば、赤色2号(Amaranth)、赤色3号(Erythrosine)、赤色102号(New Coccine)、赤色104号の(1)(Phloxine B)、赤色105号の(1)(Rose Bengal)、赤色106号(Acid Red)、赤色201号(Lithol Rubine B)、赤色227号(Fast Acid Magenta)、赤色230号の(1)(Eosine YS)、赤色230号の(2)(Eosine YSK)、赤色231号(Phloxine BK)、赤色232号(Rose Bengal K)、赤色401号(Violamine R)、赤色502号(Ponceau 3R)、赤色503号(Ponceau R)、赤色504号(Ponceau SX)、赤色506号(Fast Red S)、黄色4号(Tartrazine)、黄色5号(Sunset Yellow FCF)、黄色202号の(1)(Uranine)、黄色202号の(2)(Uranine K)、黄色203号(Quinoline Yellow WS)、黄色402号(Polar Yellow 5G)、黄色403号の(1)(Naphthol Yellow S)、黄色406号(Metanil Yellow)、黄色407号(Fast Light Yellow 3G)、橙色205号(Orange II)、橙色207号(Erythrosine Yellowish NA)、橙色402号(Orange I)、酸性橙3(INCI名:Acid Orange 3)、緑色3号(Fast Green FCF)、緑色204号(Pyranine Conc)、緑色205号(Light Green SF Yellowish)、緑色401号(Naphthol Green B)、緑色402号(Guinea Green B)、紫色401号(Alizurol Purple)、青色1号(Brilliant Blue FCF)、青色2号(Indigo Carmine)、青色202号(Patent Blue NA)、青色203号(Patent Blue CA)、青色205号(Alphazurine FG)、酸性青3、褐色201号(Rezorich Brown)、黒色401号(Naphthol Blue Black)等が挙げられる。
染毛用組成物における前記酸性染料の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.01~5質量%である。
【0026】
前記塩基性染料は、染毛用組成物中において陽イオンとして存在し、当該イオンの毛髪への吸着により染毛が実現される。
前記塩基性染料としては、例えば、塩基性黄40、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性紫1、塩基性紫2、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14、塩基性紫16、塩基性青3、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性青124、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤46、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性緑1、塩基性緑4、塩基性橙31等が挙げられる。
染毛用組成物における前記塩基性染料の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.01~5質量%である。
【0027】
前記ニトロ染料は、分子内にニトロ基を有する直接染料(前記酸性染料及び前記塩基性染料に該当するものを除く)であり、毛髪への吸着又は浸透により染毛が実現される。
前記ニトロ染料としては、例えば、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄9、HC黄11、HC黄13、HC紫1、HC紫2、HC青2、HC青12、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC橙1、HC橙2、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、2-ニトロ-5-グリセリルメチルアニリン、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、3-メチルアミノ-4-ニトロフェノキシエタノール等が挙げられる。
染毛用組成物における前記ニトロ染料の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.01~5質量%である。
【0028】
前記分散染料としては、例えば、分散青1、分散青3、分散黒9、分散紫1等が挙げられる。
染毛用組成物における前記分散染料の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.01~5質量%である。
【0029】
前記天然染料としては、例えば、スオウ色素、アカミノキ色素、キハダ色素、クチナシ黄色素、ベニコウジ色素、ベニコウジ色素、コチニール色素、ウコン色素等が挙げられる。
染毛用組成物における前記天然染料の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.01~5質量%である。
【0030】
<任意成分>
本実施形態の染毛用組成物に配合される前記ポリアミド-8、ポリアミド-3、及び直接染料以外の任意成分は、公知の染毛用組成物に配合される成分の中から、適宜に選定される。
前記任意成分としては、ジ(C12-15)パレス-2リン酸、ポリビニルピロリドン、浸透促進剤、ポリビニルピロリドン以外の高分子化合物、水、ジ(C12-15)パレス-2リン酸以外の界面活性剤(アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤)、多価アルコール、糖類、エステル、油脂、脂肪酸、ロウ、高級アルコール、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、粉体、酸、アルカリ、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤等である(但し、ポリアミド-8、ポリアミド-3、直接染料に該当するものを除く)。
【0031】
[ジ(C12-15)パレス-2リン酸]
本実施形態の染毛用組成物には、ジ(C12-15)パレス-2リン酸が配合されたものとすれば、染毛性をより向上することができる。
前記ジ(C12-15)パレス-2リン酸は、(C12-15)パレス-2とリン酸のジエステルである。上記(C12-15)パレス-2とは、炭素数12~15の合成脂肪族アルコールに酸化エチレンを付加重合し、平均付加モル数が2のものを意味する。
【0032】
本実施形態の染毛用組成物に対する前記ジ(C12-15)パレス-2リン酸の配合量は、特に限定されない。
前記ジ(C12-15)パレス-2リン酸の配合量の下限は、染毛性の向上をより優れたものとする観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、配合量が多すぎると、ジ(C12-15)パレス-2リン酸の配合による染毛性をより向上させる効果が低下する傾向にあるため、配合量の上限は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0033】
[ポリビニルピロリドン]
本実施形態の染毛用組成物に1種又は2種以上のポリビニルピロリドンが配合されたものとすれば、染毛用組成物を毛髪に塗布した後の垂れ落ちを抑制することができ、染毛操作をより行いやすくなる。前記ポリビニルピロリドンは、1-ビニル-2-ピロリドンの重合体を意味する。
【0034】
本実施形態の染毛用組成物に配合される前記ポリビニルピロリドンは、例えば、ポリビニルピロリドンの10質量%水溶液を用いて、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度36s-1の条件で測定された粘度の値が、100mPa・s以上300mPa・s以下であるものを用いることができる。
【0035】
本実施形態の染毛用組成物に対する前記ポリビニルピロリドンの配合量は、特に限定されない。配合量の下限は、染毛用組成物の垂れ落ちの抑制をより優れたものとする観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。また、配合量の上限は、染毛後の毛髪が硬い手触りとなるのを抑制する観点から、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0036】
[浸透促進剤]
本実施形態の染毛用組成物には、直接染料の毛髪内部への浸透を促進するために、1種又は2種以上の浸透促進剤が配合されたものとすると良い。
前記浸透促進剤としては、例えば、芳香族アルコール、脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、アルキレンカーボネート等が挙げられる。
【0037】
前記芳香族アルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、p-アニシルアルコール等が挙げられる。
前記脂肪族一価アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
前記脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エトキシジグリコール等が挙げられる。
前記アルキレンカーボネートとしては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。
【0038】
浸透促進剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上である。その配合量が多すぎても浸透促進剤の効果に大差はないので、20質量%以下の配合量であると良い。
【0039】
[酸]
本実施形態の染毛用組成物における直接染料として、酸性染料が用いられる場合、酸性染料が毛髪により吸着しやすくなる観点から、酸が配合されたものとすれば良い。酸としては、例えば、有機酸、無機酸が挙げられる。
有機酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸等が挙げられる。
酸の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0040】
[ポリビニルピロリドン以外の高分子化合物]
本実施形態の染毛用組成物には、ポリビニルピロリドン以外の高分子化合物を1種又は2種以上配合しても良い。前記ポリビニルピロリドン以外の高分子化合物としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子が挙げられる。
前記天然高分子としては、例えば、キサンタンガム、アルギン酸又はその塩、グアーガム、グルカン、セルロース、ヒアルロン酸又はその塩等が挙げられる。前記半合成高分子としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン等が挙げられる。前記合成高分子としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸アミド、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマー、メタクリロイルエチルベタイン・メタクリル酸エステル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
ポリビニルピロリドン以外の高分子化合物の配合量は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0041】
[水]
本実施形態の染毛用組成物には、水を配合して良い。水の配合量は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上90質量%以下である。
【0042】
<染毛用組成物>
本実施形態の染毛用組成物は、染毛に用いられる組成物を意味する。
【0043】
(剤型)
本実施形態の染毛用組成物の剤型は、特に限定されないが、例えば、液状、乳液状、ゲル状、クリーム状、泡状、スプレー状が挙げられる。
また、上記剤型の形態は、特に限定されないが、例えばO/W型エマルジョン、W/O型エマルジョン、W/O/W型エマルジョンが挙げられる。
【0044】
(製品形態)
本実施形態の染毛用組成物の製品形態は、特に限定されないが、例えば、ヘアマニキュア、カラーリンス、カラートリートメント、カラーシャンプー等が挙げられる。
【0045】
(粘度)
本実施形態の染毛用組成物の25℃での粘度は、例えば、1000mPa・s以上10000mPa・s以下である。なお、上記粘度は、応力制御型レオメーター(例えば、HAAKE社製「Rheo Stress 6000」)を使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度36s-1の条件で測定される。
【0046】
(pH)
本実施形態の染毛用組成物のpHは、特に限定されない。
本実施形態の染毛用組成物における直接染料として、酸性染料の1種以上が配合された場合、酸性染料による染毛性をより向上させる観点から、染毛用組成物の25℃でのpHの上限値は、4以下が好ましい。また、その場合、本実施形態の染毛用組成物の25℃でのpHの下限値は、例えば、1以下である。
本実施形態の染毛用組成物における直接染料として、塩基性染料の1種以上が配合された場合、染毛用組成物の25℃でのpHは、例えば、7以上9以下である。
【0047】
(製造方法)
本実施形態の染毛用組成物の製造方法としては、公知の製造方法を採用すれば良い。製造方法の一例としては、例えば、ポリアミド-8又はポリアミド-3と直接染料とを均一に混合して製造する方法がある。
【0048】
(使用方法)
本実施形態の染毛用組成物の使用方法としては、公知の染毛用組成物の使用方法を採用すれば良い。使用方法として、例えば、染毛用組成物の塗布後に洗い流すものとして良い。
【0049】
<染毛方法>
本実施形態の染毛方法は、ポリアミド-8又はポリアミド-3、及び直接染料が配合された本実施形態の染毛用組成物を用いたものである。
実施形態の染毛方法としては、公知の染毛用組成物による染毛方法を採用することができる。本実施形態の染毛方法の一例としては、濡れた毛髪に本実施形態の染毛用組成物を毛髪に塗布し、塗布後に室温又は加温して5~30分間放置し、放置後毛髪を水で洗い流して、毛髪を乾燥させる方法がある。
【実施例
【0050】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0051】
(染毛用組成物の調製)
表1~4に示す成分を混合することにより、実施例1~9、比較例1~3の染毛用組成物を調製した。
【0052】
(実施例1~7、比較例1~3の評価)
調製した実施例1~7、比較例1~3の染毛用組成物を用いて、次に示す「染毛性」の評価を行った。
【0053】
(染毛性の評価)
乾燥したビューラックス社製のヤク毛束BM-YK-A(長さ10cm、重さ1g)に対して、実施例1~7、比較例1~3の染毛用組成物を3g塗布し、室温で20分間放置して染毛した。染毛後の各毛束を流水で約30秒間洗い流して、タオルドライした後、ドライヤーで乾燥させた。
染毛後の乾燥した各毛束に対して、分光測色計(コニカミノルタ社製のSPECTROPHOTOMETER CM-5)を用いて、測定タイプ:反射測定、視野:10°、主光源:D65、測定径φ8mm、SCE方式(正反射光除去)の測定条件で、毛束の表面と裏面を各3回測定し、計6回の測定値から、明度を示すL値の平均値を求めた。さらに、得られた各L値の平均値を用いて、次の計算式からΔLの値を求めた。
ΔL=[(実施例1~7、又は比較例2、3のL値の平均値)-(比較例1のL値の平均値)]
なお、ΔLの値が小さい方が、比較例1(基準)よりも、濃く染毛され、染毛性に優れることを示す。
【0054】
(評価結果)
下記表1に、配合した成分と共に、実施例1、2、比較例1~3の染毛用組成物の評価結果を示す。なお、表1における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示す結果より、実施例1、2の染毛用組成物は、基準とした比較例1の染毛用組成物に比べて、ΔLの値が小さく、染毛性に優れたものであった。また、比較例2、3の染毛用組成物は、基準とした比較例1の染毛用組成物に比べて、ΔLの値が大きく、染毛性に劣ることが分かる。
【0057】
(評価結果)
下記表2に、配合した成分と共に、実施例1、実施例3~7、比較例1の染毛用組成物の評価結果を示す。なお、表2における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示す結果より、実施例1、実施例3~7の染毛用組成物は、基準とした比較例1の染毛用組成物に比べて、ΔLの値が小さく、染毛性に優れたものであった。そのため、染毛用組成物にポリアミド-8を0.01~3質量%配合すれば、染毛性に優れることが理解できる。
【0060】
(実施例1、8の評価)
調製した実施例1、8の染毛用組成物を用いて、上記の実施例1~7、比較例1~3と同様に、「染毛性」の評価を行った。評価に使用した毛束は、上記の実施例1~7、比較例1~3の評価で用いた毛束と異なるロットを用いた。また、ΔLの算出は次の式により求めた。
ΔL=[(実施例8のL値の平均値)-(実施例1のL値の平均値)]
なお、ΔLの値が小さい方が、実施例1(基準)よりも、濃く染毛され、染毛性に優れることを示す。
【0061】
(評価結果)
下記表3に、配合した成分と共に、実施例1、8の染毛用組成物の評価結果を示す。なお、表3における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示す結果より、実施例8の染毛用組成物は、基準とした実施例1の染毛用組成物に比べて、ΔLの値が小さく、染毛性に優れたものであった。そのため、染毛用組成物にジ(C12-15)パレス-2リン酸を配合すれば、染毛性により優れることが理解できる。
【0064】
(実施例1、9の評価)
調製した実施例1、9の染毛用組成物を用いて、「垂れ落ちの抑制」の評価を、次に示す評価方法及び評価基準により行った。
【0065】
(評価方法)
以下の手順(1)~(4)により評価した。
(1)A4サイズ(横210mm;縦297mm)のケント紙を準備し、ケント紙の片側の長辺から約5cmの位置に横方向の線を描いた。続いて、ケント紙の上に透明なビニールラップ(ポリ塩化ビニリデン製)を張った。
(2)ケント紙に描いた横方向の線の位置に、ビニールラップの上から実施例1又は9の染毛用組成物を1g静置した。
(3)染毛用組成物を静置した状態で、染毛用組成物が上側になるように、ビニールラップを張ったケント紙の片側の長辺を持ち上げ、約70度の角度に傾けて固定し、3分間放置した。
(4)3分間経過後、下記の評価基準に従って、垂れ落ちの抑制を評価した。また、3分経過後のケント紙を傾けた状態で写真撮影した。
【0066】
(評価基準)
○ :基準よりも垂れ落ちの抑制に優れる(基準よりも、染毛用組成物が垂れ落ちていない)。
同等:基準と垂れ落ちが同等。
× :基準よりも垂れ落ちの抑制に劣る(基準よりも、染毛用組成物が垂れ落ちている)。
【0067】
(評価結果)
下記表4に、配合した成分と共に、実施例1、9の染毛用組成物の評価結果を示す。なお、表4における各成分の数値は質量%であり、「-」の表記は未配合であることを表す。
図1に、実施例1及び実施例9の染毛用組成物について、垂れ落ちの抑制の評価後の写真を示す。なお、図1中の「下側」は、約70度の角度に傾けたケント紙の下側を示し、「上側」は約70度の角度に傾けたケント紙の上側を示す。また、図1中の上側にある横方向の線は、実施例1又は9の染毛用組成物を静置した位置を示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4、図1に示す結果より、実施例9の染毛用組成物は、基準とした実施例1の染毛用組成物に比べて、垂れ落ちの抑制の評価に優れていた。そのため、染毛用組成物にポリビニルピロリドンを配合すれば、垂れ落ちの抑制に優れることが理解できる。なお、表4には、記載していないが、実施例1と実施例9の染毛性は、目視で評価した際に同程度であり、ポリビニルピロリドンの配合による染毛性の影響はほとんどなかった。
図1