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特許7236313膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/06 20060101AFI20230302BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20230302BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230302BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20230302BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230302BHJP
   C02F 1/469 20230101ALI20230302BHJP
【FI】
B01D65/06
B01D65/02 520
B01D61/44 520
C02F1/44 J
B01D61/00
B01D19/00 H
C02F1/469
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019074911
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020171883
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯山 真充
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 浩紀
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170630(JP,A)
【文献】特開2005-288336(JP,A)
【文献】特開平08-266807(JP,A)
【文献】特開平07-313845(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117024(WO,A1)
【文献】特開平11-057415(JP,A)
【文献】特開2007-090249(JP,A)
【文献】特開2000-126559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/46- 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理手段、一次純水製造部及び二次純水製造部を有する超純水製造システムに設けられた膜脱気装置の洗浄方法であって、
前記膜脱気装置は、前記一次純水製造部に設けられた逆浸透膜装置の後段に設けられ、
前記膜脱気装置に、洗浄水を前記膜脱気装置の被処理水の通流方向と同じ方向に流して洗浄する順洗工程と、前記膜脱気装置に、前記洗浄水を前記膜脱気装置の前記被処理水の通流方向と逆の方向に流して洗浄する逆洗工程と、を交互に行うことを特徴とする膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項2】
前記順洗工程及び前記逆洗工程において、前記膜脱気装置の気体の流路に、洗浄用気体を加圧状態で送り込み、前記洗浄水中でバブリングさせることを特徴とする請求項1に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄水が、前記膜脱気装置の被処理水又は前記膜脱気装置の後段から循環させた処理水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄水として、前記被処理水又は前記処理水に、酸を添加した酸洗浄水、アルカリを添加したアルカリ洗浄水、界面活性剤を添加した洗浄水及びキレート剤を添加した洗浄水から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄水として、前記膜脱気装置の前記被処理水又は前記膜脱気装置の後段から循環させた処理水に、酸を添加した酸洗浄水、アルカリを添加したアルカリ洗浄水、界面活性剤を添加した洗浄水及びキレート剤を添加した洗浄水から選ばれる少なくとも1種を用い、
前記順洗工程及び前記逆洗工程において、前記膜脱気装置の気体の流路に、洗浄用気体を加圧状態で送り込み、前記酸洗浄水、前記アルカリ洗浄水、界面活性剤を添加した洗浄水及びキレート剤を添加した洗浄水から選ばれる少なくとも1種の洗浄水中でバブリングさせることを特徴とする請求項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記膜脱気装置の入口側の圧力と出口側の圧力との差圧を測定し、該差圧が所定の圧力を超えたときに、前記順洗工程及び前記逆洗工程を行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄水が、40~60℃に加温した洗浄水である請求項1~6のいずれか1項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項8】
さらに、前記膜脱気装置に、乾燥用気体を通流させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記膜脱気装置が、その前段に被処理水タンクを、その後段に電気再生式脱塩装置と、を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項10】
前記膜脱気装置に供給する前記被処理水の水質及び/又は前記膜脱気装置で処理された処理水の水質を測定し、その測定結果に応じて、前記洗浄水の種類及び洗浄の有無を決定することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項11】
前記被処理水の水質の測定項目としてSDIを、前記処理水の水質の測定項目として硬度、鉄又はアルミニウムの金属濃度及びシリカ濃度を、測定することを特徴とする請求項10に記載の膜脱気装置の洗浄方法。
【請求項12】
前処理手段、一次純水製造部及び二次純水製造部を有する超純水製造システムにおいて、
前記一次純水製造部に逆浸透膜装置を有し、前記一次純水製造部又は前記二次純水製造部に、前記逆浸透膜装置の後段に設けられた膜脱気装置を有し、かつ、前記膜脱気装置において、洗浄水を前記膜脱気装置の被処理水の通流方向と同じ方向に流して洗浄する順洗と、前記膜脱気装置に、前記洗浄水を前記膜脱気装置の前記被処理水の通流方向と逆の方向に流して洗浄する逆洗と、を実施可能な洗浄手段を備えたことを特徴とする超純水製造システム。
【請求項13】
前記洗浄手段が、前記膜脱気装置へ前記被処理水を供給するための被処理水供給配管と、前記被処理水供給配管から分岐し、前記膜脱気装置の処理水配管と接続され、逆洗用洗浄水を供給するための逆洗用配管と、前記被処理水供給配管から前記被処理水を供給して洗浄する順洗と前記逆洗用配管から前記被処理水を供給して洗浄する逆洗とを切り替えられる複数のバルブと、で構成されることを特徴とする請求項12に記載の超純水製造システム。
【請求項14】
前記洗浄手段が、前記膜脱気装置の気体の流路に、洗浄用気体を供給する洗浄用気体供給手段を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の超純水製造システム。
【請求項15】
前記洗浄手段が、前記膜脱気装置の前記被処理水又は前記膜脱気装置の後段から循環させた処理水に、酸を添加した酸洗浄水及び/又はアルカリを添加したアルカリ洗浄水を調製可能な洗浄水調製手段を有することを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項16】
前記洗浄手段が、前記膜脱気装置の液体の流路及び気体の流路に、乾燥用気体を供給する乾燥用気体供給手段を有することを特徴とする請求項12~15のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項17】
前記膜脱気装置の入口側の圧力と出口側の圧力との差圧を測定し、該差圧が所定の圧力を超えたときに、前記洗浄手段により前記膜脱気装置を洗浄させる制御手段を有することを特徴とする請求項12~16のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項18】
前記膜脱気装置が、その前段に被処理水タンクを、その後段に電気再生式脱塩装置と、を有することを特徴とする請求項12~17のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項19】
前記膜脱気装置に供給する前記被処理水の水質及び/又は前記膜脱気装置で処理された処理水の水質を測定する水質測定手段を有し、
前記制御手段が、前記水質測定手段により得られた測定結果に応じて、前記洗浄水の種類及び洗浄の有無を決定することを特徴とする請求項17に記載の超純水製造システム。
【請求項20】
前記被処理水の水質の測定項目としてSDIを、前記処理水の水質の測定項目として硬度、鉄又はアルミニウムの金属濃度及びシリカ濃度を測定することを特徴とする請求項19に記載の超純水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で使用する超純水は、超純水製造システムを用いて製造されている。超純水製造システムは、例えば、原水中の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理部、前処理水中の全有機炭素(TOC)成分やイオン成分を、逆浸透膜装置やイオン交換装置を用いて除去して一次純水を製造する一次純水製造部及び一次純水中の極微量の不純物を除去して超純水を製造する二次純水製造部で構成されている。原水としては、市水、井水、地下水、工業用水等が用いられる他、超純水の使用場所(ユースポイント:POU)で回収された使用済みの超純水(以下、「回収水」と称する。)が用いられる。
【0003】
このような超純水製造システムにおいて、被処理水中に溶存する気体の除去も行われ、これまで2床3塔型イオン交換装置(2B3T)の脱気塔を用いて除去されてきた。この場合、カチオン樹脂塔を通過した処理水は酸性となるため、溶存する二酸化炭素の除去を効率良く行うことができる利点がある。
【0004】
ところで、近年、超純水製造において、薬液の使用量をできるだけ減らす傾向にあり、ノンケミカル設備の2段逆浸透膜(2段RO)後に電気再生式脱塩装置(EDI)を設ける装置構成とする場合がある。その際、EDIの前には炭酸負荷の低減のため、硬度スケールの防止を目的として膜脱気装置(MDG)が設置されることがある。膜脱気装置は2床3塔型イオン交換装置よりもコンパクトであるため、設置面積やコスト等の面で好まれている。なお、中性領域での脱二酸化炭素が難しい点もあり、膜脱気装置を一次純水製造部に1段と二次純水製造部1段設けたり、膜脱気装置を直列2段で設けたり、真空引きと窒素置換によって二酸化炭素を除去するようにして脱気効率を向上させることも行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-056384号公報
【文献】特開2009-028695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜脱気装置(MDG)は、一般に、中空糸膜を用いて液体中に溶存する気体を分離することができる装置である。中空糸膜を用いることで液体と気体との界面(接触面積)を増やして脱気効率を向上させている。この中空糸膜は、多数の中空糸をすだれ状に束ねて配管に巻き付けられて構成され、この中空糸間の隙間は、例えば150μm程度と狭くなっている。そのため、膜脱気装置は異物に対して脆弱な構造である。
【0007】
また、膜脱気装置は、中空糸膜の材質として多孔質のポリプロピレン(PP)やポリメチルペンテン(PMP)等の疎水性膜が用いられ、液体は通過させず、気体のみ通過させる特徴がある。しかし、これら材質の膜は、酸化劣化しやすいため、その前段に過酸化水素の発生源となる紫外線酸化装置(TOC-UV)の設置や、酸化剤系(塩素系)の殺菌剤の使用は、通常できない。そのため、生菌発生への対応が困難である。また、膜脱気装置は疎水性膜であるため有機物が付着し易く、有機汚染が発生すると脱気性能が著しく低下するおそれがある。
【0008】
さらに、膜脱気装置を使用した脱二酸化炭素処理は、硬度、シリカ、粒子等のある程度の不純物を除去した被処理水を使用する。具体的には、2段ROの直後に膜脱気装置を設けることが好ましく、このとき、運転管理上、膜脱気装置の前(2段ROの後ろ)にはRO処理水タンクやピットを設置することとなる。
【0009】
一般に、ROは次亜塩素酸等による酸化劣化を受けやすい。したがって、前段にてこの酸化剤を除去して運転するため、ROの酸化劣化による水質悪化のトラブルは概ね起きることはない。しかし、超純水製造装置の場合、長期で連続運転をするため、トラブルにはいかないものの、ROの酸化劣化は少しずつ進行する場合がある。この場合、水質は徐々に悪化していく。また、地下ピットや配管施工時のゴミが膜脱気装置の目詰まり原因となる場合もある。このような場合、後段の装置に何らかの影響がでることがあるが、特に膜脱気装置に影響がでる場合が多いことが判明した。さらに、ROの後段にピットやタンクを備え、その後段に膜脱気装置がある場合と、ROと膜脱気装置の間にピットやタンクを備えない場合を比較すると、前者の方がこの影響が大きくでることが明らかになってきた。
【0010】
このように、膜脱気装置は異物の流入や蓄積に弱く閉塞しやすいことが分かってきた。しかし、RO処理の後段であれば膜の閉塞を進める物質はほとんど除去されているはずなので、閉塞に対応する設備を膜脱気装置に設置することは一般的ではなかった。したがって、この問題が発生した場合には、洗浄をせずに運転条件を調整して運転を可能な限り続けるか、純水装置から膜脱気装置を外してオフラインで洗浄することが行われることが多かった。ところが、膜脱気装置は2床3塔型イオン交換装置よりもコンパクトとは言え、依然大型の装置であるため、取り外して洗浄することは非効率で、非常に手間のかかるものとなっている。
【0011】
本発明は、上記した課題を解消するためになされたものであって、超純水製造システムから膜脱気装置を取り外すことなく、効率的に洗浄可能な膜脱気装置の洗浄方法及びその洗浄方法を実施可能な超純水製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、膜脱気装置の洗浄を効率的に行うことができる膜脱気装置の洗浄方法を見出し、本発明を完成するに至った。また、この膜脱気装置の洗浄方法を効率的に実施できる超純水製造システムも同時に完成した。
【0013】
すなわち、本発明の膜脱気装置の洗浄方法は、前処理手段、一次純水製造部及び二次純水製造部を有する超純水製造システムに設けられた膜脱気装置の洗浄方法であって、前記膜脱気装置に、洗浄水を前記膜脱気装置の被処理水の通流方向と同じ方向に流して洗浄する順洗工程と、前記膜脱気装置に、前記洗浄水を前記膜脱気装置の前記被処理水の通流方向と逆の方向に流して洗浄する逆洗工程と、を交互に行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の超純水製造システムは、前処理手段、一次純水製造部及び二次純水製造部を有する超純水製造システムにおいて、前記一次純水製造部又は前記二次純水製造部に、膜脱気装置を有し、かつ、前記膜脱気装置において、洗浄水を前記膜脱気装置の被処理水の通流方向と同じ方向に流して洗浄する順洗と、前記膜脱気装置に、前記洗浄水を前記膜脱気装置の前記被処理水の通流方向と逆の方向に流して洗浄する逆洗と、を実施可能な洗浄手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システムによれば、超純水製造システムへ配設したまま膜脱気装置の洗浄を行うことができ、効率的な洗浄が可能で、洗浄後はそのまま超純水製造の再開ができる。このような構成とすることで、膜脱気装置の性能を維持しながら超純水を長期間、安定して製造できる。
【0016】
また、水質を測定し、その測定結果に応じて洗浄操作を制御することとすれば、最適な洗浄操作の組み合わせを選択し、より効率的に膜脱気装置の洗浄、超純水の製造を可能とする膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る超純水製造システムを表すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る膜脱気装置とその洗浄手段の概略構成を説明する図である。
図3A図2の膜脱気装置の使用時における被処理水の流路を説明する図である。
図3B図2の膜脱気装置の順洗時における洗浄水の流路を説明する図である。
図3C図2の膜脱気装置の逆洗時における洗浄水の流路を説明する図である。
図4】一次純水製造部に膜脱気装置を設けた一例である概略構成を示す図である。
図5】二次純水製造部に膜脱気装置を設けた一例である概略構成を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る膜脱気装置とその洗浄手段の概略構成を説明する図である。
図7】第3の実施形態に係る膜脱気装置とその洗浄手段の概略構成を説明する図である。
図8】実施例と比較例における膜脱気装置の差圧回復率を示す図である。
図9】実施例1と比較例1における膜脱気装置の経時的な差圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、上記したように、前処理手段、一次純水製造部及び二次純水製造部を有する超純水製造システムに設けられた膜脱気装置の洗浄方法及び膜脱気装置とその洗浄手段を有する超純水製造システムである。以下、本発明について実施形態を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
膜脱気装置の洗浄方法を説明するにあたって、まずは、この洗浄を実施可能な超純水製造システムの構成について、図面を参照しながら、以下説明する。
【0020】
〈超純水製造システム〉
図1は、本発明の超純水製造システムの構成を示した図であるが、ここで示す超純水製造システムは、前処理手段2と、一次純水製造部3と、二次純水製造部4と、いう従来公知の装置構成からなる。そして、本実施形態においては、一次純水製造部3及び二次純水製造部4の少なくとも一方に膜脱気装置を有する点に特徴を有する。
【0021】
ここで、前処理部2は、原水中の懸濁物質を除去して、前処理水を生成し、この前処理水を一次純水製造部3に供給する。前処理部2は、例えば、原水中の懸濁物質を除去するための砂ろ過装置、精密ろ過装置等を適宜選択して構成され、さらに必要に応じて原水の温度調節を行う熱交換器等を備えて構成される。なお、原水の水質によっては、前処理部2は省略してもよい。
【0022】
原水は、例えば、市水、井水、地下水、工業用水、半導体製造工場などで使用され、回収されて処理された水(回収水)である。
【0023】
一次純水製造部3は、逆浸透膜装置、脱気装置(脱炭酸塔、真空脱気装置、膜脱気装置等)、イオン交換装置(陽イオン交換装置、陰イオン交換装置、混床式イオン交換装置等)、紫外線殺菌装置(殺菌UV)、紫外線酸化装置(TOC-UV)のうち1つ以上を適宜組み合わせて構成される。一次純水製造部3は、前処理水中のイオン成分及び非イオン成分、溶存ガスを除去して一次純水を製造し、この一次純水を二次純水製造部4に供給する。一次純水は、例えば、全有機炭素(TOC)濃度が5μgC/L以下、抵抗率が17MΩ・cm以上、である。
【0024】
二次純水製造部4は、一次純水中の微量不純物を除去して超純水を製造する。二次純水製造部4は、例えば、熱交換器(HEX)、紫外線酸化装置(TOC-UV)、過酸化水素除去装置(H除去装置)、膜脱気装置(MDG)、非再生型混床式イオン交換樹脂装置(Polisher)、限外ろ過膜装置(RO)等の装置を、必要に応じて適宜選択して組み合わせて構成される。
【0025】
なお、本実施形態における超純水製造システム1は、上記一次純水製造部3と二次純水製造部4の少なくとも一方に膜脱気装置を有する。ここで用いられる膜脱気装置は、従来超純水製造システムに用いられている公知の膜脱気装置であればよい。なお、超純水製造システム内において膜脱気装置とその洗浄手段の構成例を図2に示した。以下、図2を参照して説明する。
【0026】
膜脱気装置5は、その内部に多孔質の中空糸が充填された膜脱気モジュールを有しており、この中空糸膜により被処理水が通流する液体の流路と、被処理水から分離した溶存ガスが通流する気体の流路とが分かれて形成されている。膜脱気装置5には、液体の流路に対して被処理水を導入する被処理水導入口5aと、膜脱気装置5により溶存ガスが分離された処理水を排出する処理水排出口5bと、膜脱気装置5の気体の流路を減圧状態とし、スイープガスを供給するための気体供給口5cと、被処理水から分離された気体を排出する気体排出口5d、を有している。
【0027】
ここで用いられる膜脱気装置5は、公知の膜脱気装置を用いることができ、具体的には、DIC社製のSeparel、野村マイクロ・サイエンス社製 NOMURUSTA NEF-10Aなどの市販品が挙げられる。
【0028】
なお、図2に示されるように、この膜脱気装置5は、超純水製造システム1内において、取り外すことなく、その洗浄が可能な構成となっている。すなわち、膜脱気装置5に供給される被処理水及び洗浄水を貯留することができるタンク6と、このタンク6から被処理水及び洗浄水を膜脱気装置5へ供給できるポンプと、このポンプにより供給された被処理水及び洗浄水の温度を一定に調節することや、加温することが可能な熱交換器7と、熱交換器7により温度調節された被処理水が通流する被処理水供給配管61と、膜脱気装置5で処理された処理水を排出できる処理水排出配管62と、得られた処理水を次工程の装置へ供給できる処理水供給配管63と、上記ポンプによりタンク6から洗浄水を膜脱気装置5へ供給できる洗浄水供給配管64と、膜脱気装置5から洗浄水を排出する洗浄水排出配管65と、を有して構成される。
【0029】
この構成例においては、タンク6に貯留する洗浄水としては、被処理水や、後述のように膜脱気装置5の後段からタンク6に循環された処理水が好ましい。
本構成例の場合、洗浄のための装置を可能な限り増設しない例である。したがって、例えば、既存の装置を改造して対応する場合には、本構成例を行うことが好適である。
【0030】
なお、ここで、被処理水供給配管61及び被処理水排出配管62は、超純水製造時の被処理水の流路であるが、それぞれ、洗浄時(後述する順洗時)に洗浄水を通流させる洗浄水供給配管及び洗浄水排出配管としても用いることができるようになっている。また、これら配管には、所望の流路を形成できるように開閉可能なバルブ(V1~V6)が設けられている。
【0031】
さらに、膜脱気装置5を洗浄した洗浄水を、タンク6へと循環させることができる洗浄水循環配管66と、その洗浄水循環配管66において、循環させる洗浄水中の不純物を除去できるフィルター67を設けて構成されている。また、洗浄水循環配管66には、熱交換器を設けて、循環する洗浄水の温度を一定に調節することや、加温することも可能とする構成としてもよい。
なお、この循環は必須ではなく、洗浄後の洗浄水は、再利用せず、そのまま超純水製造システム外に排出してもよい。また、洗浄水循環配管66に循環経路とは分岐して排水配管68を設けて、洗浄水の一部又は全部を排水できる構造としてもよい。
【0032】
なお、膜脱気装置5は、洗浄時には、気体供給口5c及び/又は気体排出口5dから膜脱気装置5の気体の流路に洗浄用気体を送り込み、加圧状態とできる加圧ポンプを有してもよい。このように、膜脱気装置5の気体の流路において洗浄用気体を加圧状態で供給可能とすることで、洗浄水中に洗浄用気体をバブリングさせながら洗浄を行うことができる。
【0033】
ここで、図2で示した膜脱気装置5以外の構成は、上記で説明したように、膜脱気装置5の洗浄に用いられる洗浄手段を構成するものとなっている。
【0034】
<膜脱気装置の洗浄方法>
次に、本実施形態の膜脱気装置の洗浄方法について、上記の図1及び図2で説明した超純水製造システム1の構成に基づいて、以下説明する。
【0035】
なお、膜脱気装置5の洗浄方法の説明の前に、まず、超純水の製造において、被処理水の処理に関する膜脱気装置5の動作を説明する。膜脱気装置5における被処理水の処理は、図3Aに示したように、バルブを開閉して所定の流路を形成して行う。ここで、黒塗りしているバルブは閉まっており、白抜きのバルブが開いていることを示す(以下の動作説明においても同様である)。すなわち、バルブV1、V3、V6が開で、バルブV2、V4、V5が閉である。
【0036】
この場合、被処理水は、タンク6から被処理水供給配管61を経由して、膜脱気装置5の被処理水導入口5aから膜脱気装置5内へ導入される。膜脱気装置5に導入された被処理水は、膜脱気装置5内の中空糸膜と接触し、被処理水中の溶存ガスが減圧状態の気体の流路へ移動し脱ガス処理され、被処理水中の溶存ガス濃度が低減される。減圧状態は、膜脱気装置5の気体排出口5dに真空ポンプ等の減圧手段を接続しておくことで作ることができ、被処理水から分離したガスは膜脱気装置5外へ排出される。このとき、気体供給口5cからは膜脱気装置の脱気性能を向上させる為にスイープガスを供給する。
一方、脱ガス処理された処理水は膜脱気装置5の処理水排出口5bから排出され、処理水排出配管62から処理水供給配管63を通って、次の処理工程に付されることとなる。
【0037】
次に、洗浄操作を行う場合には、超純水製造の操作を止めて、以下のように洗浄操作を行う。なお、洗浄に用いる洗浄水としては、タンク6内に貯留された被処理水又は膜脱気装置5の後段からタンク6に循環された処理水を用いる場合を例に説明する。
【0038】
まず、洗浄水をタンク6から膜脱気装置5へ供給して洗浄を行うが、洗浄を行うにあたっては、洗浄水を被処理水の通流方向と同じ方向に流して洗浄する順洗工程と、洗浄水を被処理水の通流方向と逆の方向に流して洗浄する逆洗工程と、があり、これを交互に行う。
【0039】
順洗工程は、膜脱気装置5内に上記被処理水と同じ方向に洗浄水を流す。すなわち、図3Bに示したように、バルブV1、V3、V5を開とし、バルブV2、V4、V6を閉として、所定の流路を形成する。
【0040】
この場合、洗浄水は、タンク6から、被処理水供給配管61を経由して膜脱気装置5の被処理水導入口5aから膜脱気装置5内へ導入される。膜脱気装置5に導入された洗浄水は、膜脱気装置5の内部を洗浄しつつ、膜脱気装置5の処理水排出口5bから排出され、処理水排出配管62から洗浄水循環配管66を通り、タンク6に戻される。洗浄水循環配管66にはフィルター67が設けられており、ここで不純物が除去される。
【0041】
また、逆洗工程は、膜脱気装置5内に上記被処理水とは反対方向に洗浄水を流す。すなわち、図3Cに示したように、バルブV2、V4、V5を開とし、バルブV1、V3、V6を閉として、所定の流路を形成する。
【0042】
この場合、洗浄水は、タンク6から、洗浄水供給配管64を経由して膜脱気装置5の被処理排出口5bから膜脱気装置5内へ導入される。膜脱気装置5に導入された洗浄水は、膜脱気装置5の内部を洗浄しつつ、膜脱気装置5の被処理水導入口5aから排出され、洗浄水排出配管65から洗浄水循環配管66を通って、タンク6に戻される。洗浄水循環配管66にはフィルター67が設けられており、ここで不純物が除去される。
【0043】
本実施形態においては、上記順洗工程と逆洗工程とを、交互に行うものであればよい。この順洗工程と逆洗工程を、それぞれ1回ずつ行うことを1セットとしたとき、この洗浄を2セット以上行うことが好ましく、3セット以上行うことがより好ましい。また、順洗工程と逆洗工程のいずれを先に行ってもよいが、目詰まりの解消を効率的に行うことができるため、逆洗工程を先に行うことが好ましい。
【0044】
また、上記の順洗工程及び逆洗工程においては、同時にバブリングを行うことが好ましい。バブリングは、気体供給口5c及び/又は気体排出口5dから洗浄用気体を膜脱気装置5の気体の流路に加圧して送り込めばよい。このとき、膜脱気装置5の液体の流路を通流する洗浄水に対して気体側の圧力をバブリングが発生する程度に高める。この気体側の圧力は、洗浄水より低い圧力でもバブリングを発生させることができるが、洗浄水よりも高い圧力にすることで、より多くのバブリングを発生させることができる。
【0045】
洗浄用の気体としては、窒素ガス、空気等が挙げられ、圧力は、洗浄水の圧力より0.1MPa程度高くして液体中にバブリングすることが好ましい。ここで用いる洗浄用の気体の純度としては、オイルフリーまたはエアロゾルフリーの気体が好ましい。また、一般工業用として使われる1~3ミクロンフィルターを通した気体が好ましく、クリーン用途として使われる0.5ミクロン以下のフィルターを通した気体がより好ましい。このバブリングは、順洗工程及び逆洗工程のいずれにおいても同様の条件で行うことができる。このようにバブリングを行うことで、膜脱気装置5の洗浄効果を有意に高めることができ、好ましい。
【0046】
バブリングしながら洗浄するには、使用する膜脱気装置により条件は異なるが、例えば、洗浄水の流量を10~90m/h、圧力を0.1~0.7MPa、洗浄用気体の流量を5~20L/分、圧力を0.1~0.7MPaとして、洗浄操作を行うことが好ましい例として挙げられる。
【0047】
上記のような洗浄を行うことで、中空糸の目詰まりを引き起こす粒子やごみ等の除去を有効に行うことができる。
また、洗浄水を加温する場合は、膜がダメージを受けないように液温は60℃以下にするのが好ましく、50℃以下がより好ましい。洗浄効果を向上させるには、液温は40℃以上が好ましい。
【0048】
なお、洗浄水として、上記説明においてはタンク6内の被処理水又は循環された処理水をそのまま用いる場合を例に説明したが、これとは別に洗浄水を用意してもよい。その場合、洗浄水を貯留するタンクを超純水製造のラインとは分岐させて接続し、上記説明と同様に洗浄水の供給等を可能な構成とすればよい。
【0049】
また、超純水の製造から洗浄操作を行う際のタイミングは、超純水製造の通算した処理時間や、水質の変化等の所定のタイミングで行うことができるが、膜脱気装置5の入口側の圧力と出口側の圧力とを測定し、その差圧(出口側の圧力-入口側の圧力)が所定の数値以上となったところで、洗浄操作を行うようにすることが好ましい。このようにすることで、目詰まりの生じたタイミングで洗浄でき、効率が非常に良い。なお、所定の数値としては、差圧が0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、0.2MPa以上がさらに好ましい。
【0050】
[一次純水製造部に設ける構成例]
この第1の実施形態において、膜脱気装置を一次純水製造部に用いる場合の構成例としては、例えば、図4に示した構成が挙げられる。この図4では、前処理水を、活性炭(AC)31、紫外線殺菌装置(殺菌UV)32、膜処理装置(フィルター)33、逆浸透膜装置(RO)34、タンク6、膜脱気装置5、電気再生式脱塩装置(EDI)35、タンク36、をこの順に配設した構成である。
【0051】
活性炭装置(AC)31は、粒状又は粉末状の活性炭が充填された活性炭装置であり、前処理水から、天然有機物、残留塩素、トリハロメタン等を除去するものである。
【0052】
紫外線殺菌装置(殺菌UV)32は、波長254nm付近の紫外線を照射する紫外線ランプを有する。この紫外線照射により、被処理水中の生菌、バクテリアなどを分解して殺菌処理するものである。
【0053】
膜処理装置(フィルター)33は、紫外線殺菌処理後の被処理水から微粒子成分を除去するものであり、逆浸透膜装置34の負荷を低減する。
【0054】
逆浸透膜装置(RO)34は、被処理水中の塩類やイオン性の有機物、コロイド性の有機物を除去するものである。なお、逆浸透膜装置34の脱塩率を高めるために、逆浸透膜装置を2段直列に接続して2段逆浸透膜装置としてもよい。逆浸透膜装置の処理水は、タンク6に貯留され、膜脱気装置5に供給される。
【0055】
膜脱気装置(MDG)5は、上記説明したものであり、ここでは逆浸透膜装置34から得られる処理水中の溶存二酸化炭素を除去するものである。得られた処理水は電気再生式脱塩装置35に供給される。ここで、膜脱気装置(MDG)5の直前にガードフィルターを設置しても良い。たとえば、1μmのカートリッジフィルタが例示される。
【0056】
この電気再生式脱塩装置(EDI)35は、被処理水を脱塩室及び濃縮室に並行して供給し、脱塩室の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体が被処理水中のイオン成分を吸着するものである。吸着されたイオン成分は直流電流の作用により濃縮室に移行されて、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。
【0057】
電気再生式脱塩装置35は、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体に吸着されたイオン成分を直流電流の作用により濃縮室へ連続的に移行させることで、同時にこの混合体を再生する。そのため、電気再生式脱塩装置35では、酸やアルカリのようなイオン交換樹脂を再生するための薬品を一切使用せずに連続的にイオン成分の除去を行うことができる。
【0058】
タンク36は、電気再生式脱塩装置35の処理水を貯留するためのものであり、一次純水製造部で製造された一次純水を貯留するためのタンクである。
【0059】
一次純水製造部3は、前処理水中のイオン成分及び非イオン成分、溶存ガスを除去して一次純水を製造し、得られた一次純水を二次純水製造部に送る。一次純水は、例えば、全有機炭素(TOC)濃度が5μgC/L以下、抵抗率が17MΩ・cm以上である。
【0060】
[二次純水製造部に設ける構成例]
また、この第1の実施形態において、膜脱気装置を二次純水製造部に用いる場合の構成例としては、例えば、図5に示した構成が挙げられる。この図5では、一次純水を貯留するタンク36、熱交換装置(HEX)41、紫外線酸化装置(TOC-UV)42、過酸化水素除去装置43、タンク6、膜脱気装置5、非再生型混床式イオン交換樹脂装置(Polisher)44、限外ろ過膜(UF)45、をこの順に配設し、製造した超純水をユースポイント(POU)へ供給し得る構成である。
【0061】
熱交換器(HEX)41は、必要に応じてタンク36から供給された一次純水の温度調節を行う。熱交換器41で温度調節された一次純水の温度は、例えば25±3℃である。
【0062】
紫外線酸化装置(TOC-UV)42は、上記熱交換器41で温度調節された一次純水に紫外線を照射して、水中の微量有機物を分解除去する。紫外線酸化装置42は、例えば、波長185nm付近の紫外線を発生する紫外線ランプを有する。紫外線酸化装置42は、さらに波長254nm付近の紫外線を発生してもよい。紫外線酸化装置42内で水に紫外線を照射すると紫外線が水を分解してOHラジカルを生成し、このOHラジカルが、水中の有機物を酸化分解する。紫外線酸化装置において過剰の紫外線照射が行われた場合、有機物の酸化分解に寄与しないOHラジカル同士が反応して過酸化水素が発生する。この発生した過酸化水素は、下流の限外ろ過膜装置45の有する限外ろ過膜を劣化させることがある。
【0063】
そのため、紫外線酸化装置42から流出する過酸化水素を低減して、下流の限外ろ過膜装置45の有する限外ろ過膜の有するろ過膜の劣化を抑制するために、紫外線酸化装置42における紫外線照射量は、例えば0.05~0.2kWh/mであることが好ましい。
【0064】
過酸化水素除去装置(H除去装置)43は、水中の過酸化水素を分解除去する装置であり、例えば、パラジウム(Pd)担持樹脂によって過酸化水素を分解除去するパラジウム担持樹脂装置や表面に亜硫酸基及び/又は亜硫酸水素基を有する還元性樹脂を充填した還元性樹脂装置等が挙げられる。過酸化水素除去装置43を設けることで、水中の過酸化水素濃度を低減することができるので、膜脱気装置5、限外ろ過膜装置45の劣化を抑制することができる。過酸化水素除去装置43の処理水は、タンク6に貯留され、膜脱気装置5に供給される。
【0065】
膜脱気装置(MDG)5は、上記説明したものであり、ここでは過酸化水素除去装置43から得られる処理水中の溶存酸素を除去して、例えば、溶存酸素濃度(DO)が1μg/L以下の、処理水を生成する。
【0066】
非再生型混床式イオン交換樹脂装置(Polisher)44は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が混合された混床式イオン交換樹脂を有し、膜脱気装置5の処理水中の微量の陽イオン成分及び陰イオン成分を吸着除去する。
【0067】
非再生型混床式イオン交換樹脂装置44は、その内部に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合して収容する装置である。ここで用いられる陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂や弱酸性陽イオン交換樹脂が、陰イオン交換樹脂としては強塩基性陰イオン交換樹脂や弱塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。混床式イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂を混合したものを用いることが好ましい。
【0068】
限外ろ過膜装置45は、非再生型混床式イオン交換樹脂装置44の処理水を処理して、透過水と濃縮水を生成する。限外ろ過膜装置45は、超純水の水質悪化の原因となる微粒子の大部分を除去する。
【0069】
このようにして得られる超純水の水質は、例えば、全有機炭素(TOC)濃度が1μgC/L以下、抵抗率が18MΩ・cm以上である。得られた超純水は超純水の使用場所(POU)へ供給される。
【0070】
なお、以上の図4図5で示した構成例は、あくまで一例であり、これらの構成に限定されるものではない。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る、膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システムについて、図6を参照しながら説明する。
【0072】
この第2の実施形態は、基本的な構成は第1の実施形態と同一である。ここで、第1の実施形態と異なる構成は、図6に示したように、膜脱気装置5の洗浄手段として、被洗浄水の供給ラインと並列に、洗浄水調製タンク71を有する洗浄水の供給ラインが設けられている点にある。すなわち、被処理水の供給ラインとは別に、被処理水をタンク6から洗浄水調製タンク71へ供給する調製用被処理水供給配管72と、調製された洗浄水を膜脱気装置5へ供給するための配管に供給する調製済洗浄水供給配管73とを有する。
【0073】
この洗浄水調製タンク71は、膜脱気装置5の洗浄を行うにあたって、タンク6に収容されている被処理水又は処理水に対して所定の薬液を所定の濃度となるように添加し、洗浄水を調製するためのタンクである。ここで用いられる薬液は、酸、アルカリや有機溶剤、界面活性剤、キレート剤等の洗浄効果のある薬剤が挙げられる。
【0074】
ここで用いる薬剤は、酸としては、クエン酸、硝酸、リン酸、塩酸等が挙げられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、イソプロピルアルコール等の有機溶剤も使用可能である。さらに、膜の素材を考慮し、膜に悪影響を与えない界面活性剤やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤を選定して使用することも可能である。酸又はアルカリに、有機溶剤、界面活性剤、キレート剤を混合することも可能である。
【0075】
なお、酸とアルカリは同一のタンクで調製しないようにする。すなわち、図6では、洗浄水調製タンク71は1つ設けた場合を示しているが、2つ設けて、酸洗浄水とアルカリ洗浄水をそれぞれ調製できるようにしてもよい。
本実施形態は、洗浄水調製タンク71を設けるため、タンク6を洗浄剤で汚すことを避けられ、洗浄終了後直ちに純水製造を開始可能である。したがって、洗浄水として薬液を使用する場合に、特に好適に適用可能である。
【0076】
また、洗浄水調製タンク71を設けずに、タンク6において、酸又はアルカリを添加して洗浄水を調製できるようにすることで同様の洗浄操作をすることも可能である。その場合、洗浄終了後純水製造を開始する際に、タンク6の洗浄を行う必要がある。また、洗浄水調整タンク71の代わりに薬注ポンプと薬注タンクを設置することで、供給配管中で薬液として対応することも可能である。
【0077】
なお、酸洗浄は、膜脱気装置5内に生じた、CaやMgの硬度成分やFe、Al等の金属成分による硬度スケール及び金属スケールを除去するのに有効である。この酸洗浄においては、クエン酸濃度5~10%、硝酸濃度3~10%、リン酸濃度3~10%、塩酸濃度1~10%程度のいずれかの酸洗浄水を調製し、4~24時間程度洗浄することが好ましい。
【0078】
また、アルカリ洗浄は、膜脱気装置5内に生じた、生菌によるバイオファウリングやシリカスケールを除去するのに有効である。このアルカリ洗浄においては、水酸化ナトリウム濃度1~2%、水酸化カリウム濃度1~2%程度のいずれかのアルカリ洗浄水を調製し、4~24時間洗浄することが好ましい。
【0079】
なお、この酸洗浄水及びアルカリ洗浄水を用いた洗浄においても、第1の実施形態で説明したように順洗工程と逆洗工程を交互に行うことが好ましく、また、バブリングを行いながら洗浄することがより好ましい。さらに、薬液を添加しない洗浄水により洗浄した後、薬液を添加した洗浄水により洗浄してもよいし、薬液を添加した洗浄水により洗浄した後、薬液を添加しない洗浄水により洗浄してもよい。ここで行う洗浄は、いずれも順洗工程と逆洗工程を交互に行うことが好ましい。また、第1の実施形態と同様に、被処理水及び洗浄水を熱交換器7により温度調節して供給することもできる。
また、洗浄水を加温する場合は、膜がダメージを受けないように液温は60℃以下にするのが好ましく、50℃以下がより好ましい。洗浄効果を向上させるには、液温は40℃以上が好ましい。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る、膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システムについて、図7を参照しながら説明する。
【0081】
この第3の実施形態は、基本的な構成は第1の実施形態又は第2の実施形態と同一である。ここで、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる構成は、図7に示したように、膜脱気装置5の洗浄手段として、膜脱気装置5の被処理水導入口5aと処理水排出口5bにおいて、洗浄用気体を供給、排出できるようになっている点にある。すなわち、この実施形態では、膜脱気装置5の液体の流路に、洗浄用気体を流通させることができるようになっている。
【0082】
ただし、図7では、被処理水や洗浄水の流路となる配管は省略しているが、図3A~3Bと同様の配管構成を有している。すなわち、図7には、膜脱気装置5の被処理水導入口5aに洗浄用気体を供給できる洗浄用気体供給配管81が接続され、処理水排出口5bに洗浄用気体を排出できる洗浄用気体排出配管82が接続されている。なお、この気体の流通方向は逆方向としてもよい。
【0083】
この実施形態では、第1の実施形態及び/又は第2の実施形態で説明した洗浄水(洗浄水)による順洗工程及び逆洗工程の洗浄操作を終えた後、膜脱気装置5の内部を乾燥させることができる。この乾燥により、洗浄水では除去しきれなかった微粒子を、乾燥により縮小させたり、気体の流通により吹き飛ばしたり、して除去できる。
【0084】
ここで用いる洗浄用気体としては、上記第1の実施形態でバブリングの際に用いる洗浄用気体と同一のものが挙げられる。また、ここで用いる洗浄用気体の供給は、例えば、洗浄用気体の流量を合計で20L/分以下、圧力を0.1~0.7MPaとして、乾燥操作を行うことが好ましい。乾燥操作の時間は24時間以上が好ましい。また、洗浄用気体の温度は加温して乾燥を促進することもできるが、膜脱気装置5がダメージを受けないように60℃未満とすることが好ましい。
【0085】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る、膜脱気装置の洗浄方法及び超純水製造システムについて説明する。
【0086】
この第4の実施形態は、基本的な構成は第1の実施形態と同一であり、さらに、上記説明した第2の実施形態及び第3の実施形態で説明した洗浄手段を全て備えた超純水製造システムである。すなわち、洗浄手段として、逆洗工程及び順洗工程を行うことができ、洗浄をバブリングにより行うことができ、また、洗浄水として被処理水だけでなく、酸洗浄水の調製とアルカリ洗浄水の調製、それらの洗浄水を用いた洗浄を行うことができ、さらに、乾燥操作も行うことができる構成を備えているものである。
【0087】
そして、この実施形態においては、さらに、膜脱気装置5の入口側の水質と、出口側の水質と、を測定する測定手段を有し、それらの測定結果に応じて、どの洗浄を行うかを選択、制御できるようになっている。
【0088】
ここで、膜脱気装置5の入口側の水質としては、例えば、SDI(Slit Density Index)が測定できるようになっていればよい。また、膜脱気装置5の出口側の水質としては、硬度や鉄、アルミニウム等の金属成分の濃度及びシリカ濃度が測定できるようになっていればよい。
【0089】
SDIは、被処理水に含まれる微量の濁質成分量の指標となりうる項目で、ASTMD4189で定義されている。SDIが高くなると、膜脱気装置5の中空糸膜間や多孔質の孔を塞いで、目詰まりを起こさせるおそれがある。SDIの測定は、TOSC社製、商品名:Simple SDI:autoを設ければよい。
【0090】
硬度は、被処理水に含まれるミネラル分のうち、カルシウム及びマグネシウムの量を炭酸カルシウム量に換算したもので、硬度が高い場合、硬度スケールが膜脱気装置5の中空糸膜に生成し、目詰まりを起こさせるおそれがある。硬度の測定は、HACH社製硬度監視計、商品名:SP510等を用いればよい。
【0091】
硬度成分以外の金属成分のうち、鉄やアルミニウムはその濃度が高いと、それらの金属スケールが膜脱気装置5の中空糸膜に生成し、目詰まりを起こさせるおそれがある。これら金属成分の濃度の測定は、JMS社製、商品名:FE-4000S、AL-4000S等を用いればよい。
【0092】
そして、膜脱気装置5の洗浄操作においては、上記第1~第3の実施形態と同様に、膜脱気装置5の入口側と出口側の差圧が所定の圧力を超えたときに、洗浄操作を行うこととすればよい。その際、本実施形態においては、さらに、上記したような水質の測定を上記の測定装置により測定しておき、それらの数値に応じて、洗浄の種類を組み合わせて行うようにする。例えば、次のように測定値に応じて洗浄操作の有無を判断する。
【0093】
膜脱気装置5の入口側のSDIが高い場合、目詰まりの原因は被処理水中の粒子にあると考えられ、洗浄水として被処理水を用い、逆洗工程と順洗工程を、バブリングを行いながら交互に実施する洗浄操作のみを選択する。SDIが高いか否かは、例えば、SDIが3超であるか否かで判断することができる。また、その装置構成、水質等に応じてこの数値は適宜設定することができる。
【0094】
膜脱気装置5の出口側の硬度及び/又は所定の金属濃度が高い場合、硬度スケール及び/又は金属スケールが目詰まりの原因と考えられ、洗浄水として酸洗浄水を用い、逆洗工程と順洗工程を、バブリングを行いながら交互に実施する洗浄操作を選択する。
【0095】
硬度が高いか否かは、例えば、硬度が0.1ppm(CaCO換算値)以上であるか否かで判断することができる。また、その装置構成、水質等に応じてこの数値は適宜設定することができる。同様に、金属濃度が高いか否かは、例えば、鉄濃度が0.02ppm以上であるか否かで判断することができる。また、その装置構成、水質等に応じてこれらの数値は適宜設定することができる。
【0096】
膜脱気装置5の出口側のシリカ濃度が高い場合、シリカスケールが目詰まりの原因と考えられ、また、上記の測定では当てはまらないが、生菌による目詰まりが疑われる場合、洗浄水としてアルカリ洗浄水を用い、逆洗工程と順洗工程を、バブリングを行いながら交互に実施する洗浄操作を選択する。
【0097】
シリカ濃度が高いか否かは、例えば、シリカ濃度が0.2ppm以上であるか否かで判断することができる。また、その装置構成、水質等に応じてこの数値は適宜設定することができる。
【0098】
なお、上記のいずれにも該当しないが、差圧が高い場合はそれ以外の原因が考えられ、乾燥操作を行い、膜脱気装置内の中空糸膜を乾燥させて、微粒子等による目詰まりの解消を行う。
【0099】
上記した洗浄は、複数の項目において該当する場合は、組み合わせて洗浄操作を行うこともできる。上記の洗浄の組み合わせの判断は、上記した測定結果及び想定される目詰まりの原因に応じて、制御手段により、どの洗浄操作を実施するかを判断させることにより自動で実施できる。
【実施例
【0100】
以下、本発明について、実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
一次純水製造部に図2に示した膜脱気装置5とその洗浄手段を有する、図1の構成からなる超純水製造システムを使用した。ここで、膜脱気装置5としては野村マイクロ・サイエンス社製 NOMURUSTA NEF-10Aを用いた。
【0102】
上記構成を有する超純水製造装置に、原水として工業用水を用いて超純水の製造を行った。超純水の製造を24時間以上継続して行ったところ、膜脱気装置5の入口側の圧力と出口側の圧力との差圧が徐々に高くなり、0.1MPaを超えたため、一旦、超純水の製造を停止した。次いで、以下の操作により、膜脱気装置5の洗浄操作を行った。
【0103】
まず、タンク6に貯留される被処理水を用い、膜脱気装置5の逆洗工程と順洗工程とをバブリングさせながら交互に繰り返して2セット行った。具体的な洗浄条件は、最初に、逆洗工程を窒素バブリングさせながら1時間、次いで、順洗工程を窒素バブリングさせながら1時間、さらに、逆洗工程を窒素バブリングさせながら1時間と、順洗工程を窒素バブリングさせながら1時間、をこの順番で行った。このとき、被処理水の流量を21m/h、圧力を0.3MPaとし、窒素の流量を10L/分、圧力を0.4MPaとした。
【0104】
膜脱気装置5の洗浄前後における差圧を測定し、それら差圧の差から以下の計算式により差圧回復率を算出し、表1にまとめて示した。

洗浄回復率(%)={(洗浄前の差圧-洗浄後の差圧)/洗浄前の差圧}×100
【0105】
(実施例2)
実施例1とは、一次純水製造部に図6に示した膜脱気装置5とその洗浄手段を有する構成とした点のみが異なる超純水製造システムを使用した。実施例1と同様に超純水の製造を行い、同条件となったときに洗浄処理を行った。
本実施例では、洗浄工程において、被処理水にクエン酸を溶解して、濃度5%のクエン酸溶液を調製した。このクエン酸溶液を洗浄水として、膜脱気装置5の逆洗工程と順洗工程とをバブリングさせながら繰り返して1セット行った。すなわち、酸洗浄水により、逆洗工程を窒素バブリングさせながら1時間、次いで、順洗工程を窒素バブリングさせながら1時間行った。
このとき、膜脱気装置5の差圧回復率を算出し、表1にまとめて示した。
【0106】
(比較例1)
実施例1と同様の装置構成で超純水を製造し、同様の条件となったときに洗浄処理を行った。本実施例では、膜脱気装置5の逆洗工程をバブリングさせながら行った。すなわち、逆洗工程を窒素バブリングさせながら2時間行った。
このとき、膜脱気装置5の差圧回復率を算出し、表1にまとめて示した。
【0107】
(比較例2)
実施例2と同様の装置構成で超純水を製造し、同様の条件となったときに洗浄処理を行った。本実施例では、実施例2と同様にクエン酸溶液を調製した。このクエン酸溶液を洗浄水として、膜脱気装置5の逆洗工程を行った。すなわち、酸洗浄水による逆洗工程を2時間行った。
このとき、膜脱気装置5の差圧回復率を算出し、表1にまとめて示した。この結果を図8にもグラフで示した。
【0108】
【表1】
【0109】
また、実施例1及び比較例1においては、その洗浄1時間ごとの差圧も測定しており、その差圧の変化を以下の表2及び図9に示した。なお、差圧の測定は、洗浄時の通水方向で行ったため、比較例1においては、常に逆洗状態での差圧を測定した。
【0110】
【表2】
【0111】
以上の結果から、逆洗のみの洗浄では、バブリングを行っても(比較例1)、酸洗浄水を用いて行っても(比較例2)、差圧の回復率が低いものであり、洗浄効果としてはあまり高くない。
【0112】
これに対して、逆洗と順洗を交互に行うことで、差圧回復率は大幅に向上し、膜脱気装置の洗浄において極めて有効であることがわかった(実施例1)。さらに、酸洗浄水を用いることで、少ない洗浄回数でも差圧回復率が向上し得ることもわかった(実施例2)。
【0113】
以上より、逆洗工程と順洗工程を交互に行う洗浄方法が、膜脱気装置の洗浄に効果的で、超純水製造システムに設けられた状態で十分に洗浄できることがわかった。
【符号の説明】
【0114】
1…超純水製造システム、2…前処理部、3…一次純水製造部、4…二次純水製造部、5…膜脱気装置、5a…被処理水導入口、5b…処理水排出口、5c…気体排出口、5d…気体供給口、6…タンク、61…被処理水供給配管、62…処理水排出配管、63…処理水供給配管、64…洗浄水供給配管、65…洗浄水排出配管、66…洗浄水循環配管、67…フィルター、68…排水配管、71…洗浄水調製タンク、72…調製用被処理水供給配管、73…調製済洗浄水供給配管
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9