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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20230302BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20230302BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230302BHJP
   F25D 11/02 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
F25D17/08 307
F25D17/06 313
F25D11/00 101B
F25D11/02 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019083246
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020180731
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100129115
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慎
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183863(JP,A)
【文献】特開2017-215087(JP,A)
【文献】特開2002-115954(JP,A)
【文献】特開2000-002477(JP,A)
【文献】特開昭60-078266(JP,A)
【文献】特開平01-219468(JP,A)
【文献】特開2003-090664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貯蔵部と、第2貯蔵部とを含む筐体と、
前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部を冷却する冷却部と、
前記第1貯蔵部の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する温度推定部と

前記温度推定部により推定された前記第2貯蔵部の温度に基づいて、前記第2貯蔵部を第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、前記第2貯蔵部を前記第1温度帯よりも高い第2
温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すように前記冷却部を制御可能な制御部と、
を備え、
前記温度推定部は、前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度の変化量に基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記筐体の開口を開閉可能に閉じる扉をさらに備え、
前記冷却部は、冷媒が流れる冷却器と、前記冷却器により冷却された冷気を前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に送る送風機とを含み、
前記温度推定部は、前記扉が開閉された場合、前記扉が閉じられて前記送風機が所定時間運転された後に前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度と、その後の前記第1貯蔵部の温度の変化量とに基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記筐体内に設けられ、前記第1貯蔵部に通じる第1冷気吹出口と、前記第2貯蔵部に通じる第2冷気吹出口とを有した流路形成部品をさらに備え、
前記冷却部は、冷媒が流れる冷却器と、前記冷却器により冷却された冷気を前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に送る送風機とを含み、
前記温度センサは、前記第1冷気吹出口からの冷気の吹き出し方向において、前記第1冷気吹出口の正面を外れた位置に配置されており、
前記温度推定部は、前記送風機が第1回転数で運転中の場合は、前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度の変化量と、温度の単位変化量当たりの第1補正値とに基づき前記第2貯蔵部の温度を推定し、前記送風機の停止中または前記第1回転数よりも低い第2回転数で運転中の場合は、前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度の変化量と、温度の単位変化量当たりの第2補正値とに基づき前記第2貯蔵部の温度を推定し、
前記第1補正値は、前記第2補正値よりも大きい、
請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記温度推定部は、前記低温冷却制御中では前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度の変化量と、温度の単位変化量当たりの第3補正値とに基づき前記第2貯蔵部の温度を推定し、前記高温冷却制御中では前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度の変化量と、温度の単位変化量当たりの第4補正値とに基づき前記第2貯蔵部の温度を推定し、
前記第3補正値は、前記第4補正値よりも大きい、
請求項2から請求項のうちいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記冷却部は、冷媒が流れる冷却器と、前記冷却器により冷却された冷気を前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に送る送風機とを含み、
前記温度推定部は、前記第2貯蔵部の温度が第2温度帯に含まれて前記送風機が運転されている特定状態で前記第2貯蔵部の温度の推定をリセットし、前記特定状態で前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度と、予め設定された前記第1貯蔵部と前記第2貯蔵部の基準温度差と、その後の前記第1貯蔵部の温度の変化量とに基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する、
請求項2から請求項のうちいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
第1貯蔵部と、第2貯蔵部とを含む筐体と、
前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部を冷却する冷却部と、
前記第1貯蔵部の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する温度推定部と

前記温度推定部により推定された前記第2貯蔵部の温度に基づいて、前記第2貯蔵部を第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、前記第2貯蔵部を前記第1温度帯よりも高い第2
温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すように前記冷却部を制御可能な制御部と、
を備え、
前記温度推定部は、前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に対する前記冷却部による冷却時間の長さに基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する、
蔵庫。
【請求項7】
第1貯蔵部と、第2貯蔵部とを含む筐体と、
前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部を冷却する冷却部と、
前記第1貯蔵部の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する温度推定部と

前記温度推定部により推定された前記第2貯蔵部の温度に基づいて、前記第2貯蔵部を第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、前記第2貯蔵部を前記第1温度帯よりも高い第2温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すように前記冷却部を制御可能な制御部と、
前記筐体内に配置されたヒータを備え、
前記温度推定部は、前記ヒータの使用状態に基づいて前記第2貯蔵部の温度を補正する

冷蔵庫。
【請求項8】
前記温度推定部は、
前記冷却部が第1冷却能力で前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部を冷却する場合に、前記第2貯蔵部の温度を補正しない、または前記ヒータの使用状態と第5補正値とに基づいて前記第2貯蔵部の温度を補正し、
前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に対する前記冷却部による冷却が停止中または前記第1冷却能力よりも低い第2冷却能力で前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部を冷却する場合に、前記ヒータの使用状態と、前記冷却部が第1冷却能力で冷却する場合と比べて補正量が大きくなる第6補正値とに基づいて前記第2貯蔵部の温度を補正する、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記冷却部は、冷媒が流れる冷却器と、前記冷却器により冷却された冷気を前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に送る送風機とを含み、
前記冷蔵庫は、前記冷却器の温度を検出する冷却器温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記冷却部によって前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部が冷却される場合であって前記温度推定部により前記第2貯蔵部の温度が推定される場合に、前記冷却器温度センサにより検出される前記冷却器の温度が所定温度範囲内に含まれるように前記冷却部を制御する、
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記筐体の開口を開閉可能に閉じる扉をさらに備え、
前記温度推定部は、前記扉が開閉された場合、前記扉が閉じられた後に前記第2貯蔵部の温度を推定する、
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記冷却部は、冷媒が流れる冷却器と、前記冷却器により冷却された冷気を前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に送る送風機とを含み、
前記制御部は、前記冷却部によって前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部が冷却される場合であって前記温度推定部により前記第2貯蔵部の温度が推定される場合に、前記送風機の回転数が所定回転数範囲内に含まれるように前記冷却部を制御する、
請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵室よりも低い温度に保たれるチルド室を備えた冷蔵庫が知られている。チルド室は、発酵食品や生鮮食品などの食品をできるだけ低温で凍らない温度で保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-102320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで今後、第1貯蔵部(例えば冷蔵室)と第2貯蔵部(例えばチルド室)とを有する冷蔵庫において、第2貯蔵部を低温温度帯で冷却する低温冷却制御と、第2貯蔵部を高温温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すことで、より高いレベルでの食品の鮮度保持が求められる場合が想定される。この場合、冷蔵庫のコスト低減を図りながら、第2貯蔵部の温度を取得することが求められる場合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コスト低減を図ることができる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷蔵庫は、筐体と、冷却部と、温度センサと、温度推定部と、制御部とを持つ。前記筐体は、第1 貯蔵部と、第2 貯蔵部とを含む。前記冷却部は、前記第1 貯蔵部および前記第2 貯蔵部を冷却する。前記温度センサは、前記第1 貯蔵部の温度を検出する。前記温度推定部は、前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第2 貯蔵部の温度を推定する。前記制御部は、前記温度推定部により推定された前記第2 貯蔵部の温度に基づいて、前記第2 貯蔵部を第1 温度帯で冷却する低温冷却制御と、前記第2 貯蔵部を前記第1温度帯よりも高い第2 温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すように前記冷却部を制御可能であり、前記温度推定部は、前記温度センサにより検出された前記第1貯蔵部の温度の変化量に基づいて、前記第2貯蔵部の温度を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の冷蔵庫を示す正面図。
図2図1中に示された冷蔵庫のF2-F2線に沿う断面図。
図3】第1の実施形態の冷凍サイクル装置を示す構成図。
図4】第1の実施形態の制御盤の機能構成の一部を示すブロック図。
図5】第1の実施形態の冷蔵庫が特別チルド運転を行う場合のチルド室の空気温度の変化を示す図。
図6】第1の実施形態のよるチルド室温度の推定を説明するための図。
図7】第1の実施形態の換算係数の内容の一例を示す図。
図8】第2の実施形態の冷蔵室の温度とチルド室の温度との差分値を示す図。
図9】第2の実施形態の差分値の増加率の内容の一例を示す図。
図10】第1の変形例の制御盤の機能構成の一部を示すブロック図。
図11】第1の変形例のチルド室の温度を示す図。
図12】第2の変形例の冷蔵庫の制御部示すブロック図。
図13】第5の変形例の冷蔵庫の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書では、冷蔵庫の正面に立つユーザから冷蔵庫を見た方向を基準に、左右を定義している。また、冷蔵庫から見て冷蔵庫の正面に立つユーザに近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義している。
【0009】
また本明細書で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。また、「内容を変更する」とは、決定対象を直接に導出する場合に限定されず、基準値に対して補正を行うことで決定対象を導出する場合も含む。
【0010】
また本明細書では、「温度を取得する」とは、センサ等を用いて温度を検出することと、別の情報を用いて温度を推定することとを含むものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
[1.冷蔵庫の全体構成]
図1から図7を参照し、第1の実施形態の冷蔵庫1について説明する。まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。ただし、冷蔵庫1は、以下に説明する構成の全てを有する必要はなく、いくつかの構成が適宜省略されてもよい。
【0012】
図1は、冷蔵庫1を示す正面図である。図2は、図1中に示された冷蔵庫1のF2-F2線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、冷蔵庫1は、例えば、筐体10、複数の扉11、複数の棚12、複数の容器13、流路形成部品14、冷却部15、および制御盤16を有する。
【0013】
筐体10は、上壁21、下壁22、左右の側壁23,24、および後壁25を有する。
上壁21および下壁22は、略水平に広がっている。左右の側壁23,24は、下壁22の左右の端部から上方に起立し、上壁21の左右の端部に繋がっている。後壁25は、下壁22の後端部から上方に起立し、上壁21の後端部に繋がっている。
【0014】
図2に示すように、筐体10は、例えば、内箱10a、外箱10b、および断熱部10cを有する。内箱10aは、筐体10の内面を形成する部材である。外箱10bは、筐体10の外面を形成する部材である。外箱10bは、内箱10aよりも一回り大きく形成されており、内箱10aの外側に配置されている。内箱10aと外箱10bとの間には、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含む断熱部10cが設けられている。
【0015】
筐体10の内部には、複数の貯蔵室27が設けられている。複数の貯蔵室27は、例えば、冷蔵室27A、野菜室27B、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを含む。本実施形態では、最上部に冷蔵室27Aが配置され、冷蔵室27Aの下方に野菜室27Bが配置され、野菜室27Bの下方に製氷室27Cおよび小冷凍室27Dが配置され、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの下方に主冷凍室27Eが配置されている。ただし、貯蔵室27の配置は、上記例に限定されず、例えば野菜室27Bと主冷凍室27Eの配置が逆でもよい。筐体10は、各貯蔵室27の前面側に、各貯蔵室27に対して食品の出し入れを可能にする開口を有する。冷蔵室27の下部の一部は、チルド室27AAとして形成されている。チルド室27AAは、例えば、棚や壁などにより冷蔵室27に対して区画されている。冷蔵室27Aは、「第1貯蔵部」の一例である。チルド室27AAは、「第2貯蔵部」の一例である。
【0016】
筐体10は、第1および第2の仕切部28,29を有する。第1および第2の仕切部28,29は、例えば、それぞれ略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切部28は、冷蔵室27A(チルド室27AA)と野菜室27Bとの間に位置し、冷蔵室27A(チルド室27AA)と野菜室27Bとの間を仕切っている。一方で、第2仕切部29は、野菜室27Bと、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dとの間に位置し、野菜室27Bと、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dとの間を仕切っている。第2仕切部29は、例えば発泡断熱材を含み、断熱性を有する。第1仕切部28は、例えば合成樹脂などで形成されており、第2仕切部29よりも断熱性が小さい。
【0017】
複数の貯蔵室27の開口は、複数の扉11によって開閉可能に閉じられている。複数の扉11は、例えば、冷蔵室27Aの開口を閉じる左右の冷蔵室扉11Aa,11Ab、野菜室27Bの開口を閉じる野菜室扉11B、製氷室27Cの開口を閉じる製氷室扉11C、小冷凍室27Dの開口を閉じる小冷凍室扉11D、および主冷凍室27Eの開口を閉じる主冷凍室扉11Eを含む。冷蔵室扉11Aa,11Abは、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAを含む空間を開閉する。冷蔵室扉11Aa,11Abが開閉されると、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAが冷蔵庫1の外部の温度の影響を受ける。
【0018】
複数の棚12は、冷蔵室27Aに設けられている。
複数の容器13は、チルド室27AAに設けられたチルド室容器13A、野菜室27Bに設けられた第1および第2の野菜室容器13Ba,13Bb、製氷室27Cに設けられた製氷室容器(不図示)、小冷凍室27Dに設けられた小冷凍室容器13D、および主冷凍室27Eに設けられた第1および第2の主冷凍室容器13Ea,13Ebを含む。
【0019】
流路形成部品14は、筐体10内に配置されている。流路形成部品14は、第1ダクト部品31と、第2ダクト部品32とを含む。
【0020】
第1ダクト部品31は、筐体10の後壁25に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第1ダクト部品31は、例えば、野菜室27Bの下端部の後方から冷蔵室27Aの上端部の後方まで延びている。第1ダクト部品31と筐体10の後壁25との間には、冷気(空気)が流れる通路である第1ダクト空間D1が形成されている。第1ダクト部品31は、複数の冷蔵室冷気吹出口31a、チルド室冷気吹出口31bと、冷気戻り口31cとを有する。
【0021】
複数の冷蔵室冷気吹出口31aは、チルド室27AAよりも上方において複数の高さ位置に分かれて設けられている。複数の冷蔵室冷気吹出口31aは、冷蔵室27Aに開口しており、冷蔵室27Aに通じている。複数の冷蔵室冷気吹出口31aは、第1ダクト空間D1から冷気を冷蔵室27に吹き出すように設けられている。冷蔵室冷気吹出口31aは、「第1冷気吹出口」の一例である。
【0022】
チルド室冷気吹出口31bは、チルド室27AAに開口しており、チルド室27AAに通じている。チルド室冷気吹出口31bは、冷蔵室冷気吹出口31aと比べて、後述する冷蔵用冷却器41の近くに位置する。チルド室冷気吹出口31bは、第1ダクト空間D1から冷気をチルド室27AAに吹き出すように設けられている。チルド室冷気吹出口31bは、「第2冷気吹出口」の一例である。冷気戻り口31cは、第1ダクト部品31の下端部に設けられ、野菜室27Bの後方に位置する。
【0023】
第2ダクト部品32は、筐体10の後壁25に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第2ダクト部品32は、例えば、主冷凍室27Eの後方から製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの上端部の後方まで延びている。第2ダクト部品32と筐体10の後壁25との間には、冷気(空気)が流れる通路である第2ダクト空間D2が形成されている。第2ダクト部品32は、冷気吹出口32aと、冷気戻り口32bとを有する。冷気吹出口32aは、第2ダクト部品32の上端部に設けられ、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの後方に位置する。冷気戻り口32bは、第2ダクト部品32の下端部に設けられ、主冷凍室27Eの後方に位置する。
【0024】
冷却部(冷却ユニット)15は、後述する第1貯蔵室を冷却する第1冷却モジュール40と、後述する第2貯蔵室を冷却する冷却する第2冷却モジュール45と、圧縮機49と、冷媒を循環させることにより第1冷却モジュール40と第2冷却モジュール45を冷却する冷凍サイクル装置50(図3参照)とを含む。第1貯蔵室は、例えば、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B)である。第2貯蔵室は、例えば、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室27C、小冷凍室27D、主冷凍室27E)である。
【0025】
第1冷却モジュール40は、例えば、冷蔵用冷却器41と、冷蔵用ファン43とを含む。冷蔵用冷却器41は、第1ダクト空間D1に配置されている。冷蔵用冷却器41は、後述する圧縮機49により圧縮された冷媒が供給され、第1ダクト空間D1を流れる冷気を冷却する。冷蔵用冷却器41は、例えば、チルド室27AAに対応する高さに配置されている。チルド室27AAは、例えば冷蔵室27Aと比べて冷蔵用冷却器41の近くに位置することで、冷蔵用冷却器41によって冷却されやすい。チルド室27AAは、例えば、冷蔵室27Aと比べて低温に保たれる。
【0026】
冷蔵用ファン43は、例えば、第1ダクト部品31の冷気戻り口31cに設けられている。冷蔵用ファン43は、「送風機」の一例である。冷蔵用ファン43が駆動されると、野菜室27Bの空気が冷気戻り口31cから第1ダクト空間D1内に流入する。第1ダクト空間D1内に流入した空気は、第1ダクト空間D1内を上方に向けて流れ、冷蔵用冷却器41によって冷却される。冷蔵用ファン43が駆動されることで、冷蔵用冷却器41によって冷却された冷気は、複数の冷蔵室冷気吹出口31aから冷蔵室27Aに吹き出され、チルド室冷気吹出口31bからチルド室27AAに吹き出される。冷蔵室27Aに吹き出された冷気とチルド室27AAに吹き出された冷気は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAをそれぞれ流れた後、例えば野菜室27Bを経由して、再び冷気戻り口31cに戻る。これにより、冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27Bを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27Bの冷却が行われる。
【0027】
一方で、第2冷却モジュール45は、例えば、冷凍用冷却器46と、冷凍用ファン48とを含む。冷凍用冷却器46は、第2ダクト空間D2に配置されている。冷凍用冷却器46は、後述する圧縮機49により圧縮された冷媒が供給され、第2ダクト空間D2を流れる冷気を冷却する。
【0028】
冷凍用ファン48は、例えば、第2ダクト部品32の冷気戻り口32bに設けられている。冷凍用ファン48が駆動されると、主冷凍室27Eの空気が冷気戻り口32bから第2ダクト空間D2内に流入する。第2ダクト空間D2内に流入した空気は、第2ダクト空間D2内を上方に向けて流れ、冷凍用冷却器46によって冷却される。冷凍用冷却器46によって冷却された冷気は、冷気吹出口32aから製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eに流入する。製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに流入した冷気は、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dを流れた後、主冷凍室27Eを経由して、再び冷気戻り口32bに戻る。これにより、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27E内に流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eの冷却が行われる。
【0029】
圧縮機49は、例えば、冷蔵庫1の底部の機械室に設けられている。圧縮機49は、貯蔵室27の冷却に用いられる冷媒ガスを圧縮する。圧縮機49により圧縮された冷媒ガスは、後述する凝縮器51などを経由して、冷蔵用冷却器41および冷凍用冷却器46に送られる。
【0030】
制御盤16は、例えば、筐体10の上壁21に設けられている。本実施形態では、筐体10の上壁21の上面は、下方に向けて窪んだ凹部21aを有する。制御盤16は、凹部21aに配置されている。なお、制御盤16については、詳しく後述する。
【0031】
[2.冷凍サイクル装置]
上述のように構成された冷蔵庫1は、後述の制御部100によって制御される冷凍サイクル装置50によって冷却される。
【0032】
[2.1.冷凍サイクル装置の構成]
図3は、冷凍サイクル装置50を示す構成図である。冷凍サイクル装置50は、冷媒の流れ順に、圧縮機49と、凝縮器51と、ドライヤ52と、三方弁53と、キャピラリーチューブ54、55と、冷蔵用冷却器41と、冷凍用冷却器46とが環状に接続されることにより構成される。圧縮機49の高圧吐出口には、凝縮器51とドライヤ52とが順に接続パイプ56を介して接続されている。ドライヤ52の吐出側には、三方弁53が接続されている。三方弁53は、ドライヤ52が接続される1つの入口と、2つの出口とを有している。三方弁53の2つの出口のうち、一方の出口には冷蔵側キャピラリーチューブ54と冷蔵用冷却器41とが順に接続されている。冷蔵用冷却器41は、接続配管である冷蔵側サクションパイプ57を介して圧縮機49に接続されている。
【0033】
三方弁53の2つの出口のうち、他方の出口には、冷凍側キャピラリーチューブ55と冷凍用冷却器46とが順に接続されている。冷凍用冷却器46は、接続配管である冷凍側サクションパイプ58を介して圧縮機49に接続されている。なお、冷凍用冷却器46と圧縮機49との間には、冷蔵用冷却器41からの冷媒が冷凍用冷却器46側に逆流しないための逆止弁59が設けられている。
【0034】
[2.2.冷凍サイクル装置の冷媒の流れ]
次に、冷凍サイクル装置50の冷媒の流れを説明する。まず、冷凍サイクル装置50を循環する冷媒は、圧縮機49により圧縮されて、高温、高圧のガス状冷媒となり、流路Aを流れる。このガス状冷媒は、凝縮器51により放熱されて、中温、高圧の液状冷媒となる。その後、ドライヤ52を通って、汚れや水分などの不純物が取り除かれた液状冷媒は、三方弁53により絞り制御されながら、冷蔵側キャピラリーチューブ54(又は冷凍側キャピラリーチューブ55)に入る。このとき、冷蔵側キャピラリーチューブ54(又は冷凍側キャピラリーチューブ55)内の中温、高圧の液状冷媒は、冷蔵側サクションパイプ57(又は冷凍側サクションパイプ58)内の冷媒と熱交換されながら減圧される。そして、この冷媒は、冷蔵用冷却器41(又は冷凍用冷却器46)を通過しながら蒸発し、第1冷却モジュール40(又は第2冷却モジュール45)内が冷却される。その後、低温、低圧のガス状となった冷媒は、冷蔵側サクションパイプ57(又は冷凍側サクションパイプ58)に流入する。このとき、冷蔵用冷却器41(又は冷凍用冷却器46)から冷蔵側サクションパイプ57(又は冷凍側サクションパイプ58)に流入した直後の冷媒ガスの温度は、-10℃前後と低温である。しかし、この冷媒ガスは、サクションパイプ57(又はサクションパイプ58)を通る間に、前記キャピラリーチューブ54(又はキャピラリーチューブ55)内の冷媒と熱交換されて、最終的には室温程度にまで昇温される。そして、この冷媒ガスが、圧縮機49に再び吸入されて、冷媒の循環が完了する。
【0035】
上記の冷凍サイクル装置50において、三方弁53は、制御部100(図4参照)によって制御されており、流路Bおよび流路Cのうち一方又は両方を選択する。流路Bは、第1貯蔵室(冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27B)を冷却するために冷媒を冷蔵用冷却器41に供給する流路であり、一方、流路Cは、第2貯蔵室(製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27E)を冷却するために冷媒を冷凍用冷却器46に供給する流路である。これら二つの流路は合流点Dにおいて合流し、冷媒はこの合流点Dから矢印Eの方向に流れて圧縮機49へと戻る。
【0036】
[3.制御]
[3.1 制御の全体説明]
図4は、制御盤16の機能構成の一部を示すブロック図である。制御盤16は、例えば、制御部100と、温度推定部102とを備えている。制御部100は、冷蔵庫1の全般を制御する。温度推定部102については後述する。制御部100と温度推定部102とのそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、その機能うち一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0037】
冷蔵室温度センサ110、冷凍室温度センサ112、庫外温度センサ114、扉開閉検知センサ115、記憶部116、冷蔵用ファン43、冷凍用ファン48、圧縮機49、三方弁53、および操作パネル部150は、それぞれ制御部100に接続されており、それぞれ制御部100からの指令によって制御される。
【0038】
冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室27Aに設けられており、冷蔵室27A内の空気温度を検出する。本実施形態では、冷蔵室温度センサ110は、チルド室27AAよりも上方に設けられている。また、冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室冷気吹出口31aからの冷気の吹き出し方向において、冷蔵室冷気吹出口31aの正面を外れた位置に配置されている。これにより、冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室冷気吹出口31aから冷蔵室27Aに吹き出された冷気が直接には当たらないようになっている。例えば、冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室冷気吹出口31aよりも冷蔵室27の後方に奥まった位置に配置されている。冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室冷気吹出口31aから吹き出される冷気が冷蔵室温度センサ110に直接にぶつかる場合と比べて、冷蔵室27A内の空気温度を安定して検出することができる。
【0039】
冷凍室温度センサ112は、主冷凍室27Eに設けられており、主冷凍室27E内の空気温度を検出する。庫外温度センサ114は、筐体10の外側に設けられており、冷蔵庫1の外部の空気温度を検出する。冷蔵室温度センサ110、冷凍室温度センサ112、および庫外温度センサ114は、それぞれ、例えばサーミスタである。扉開閉検知センサ115は、例えば、筐体10において冷蔵室扉11Aa,11Abに面する位置に設けられており、冷蔵室扉11Aa,11Abの開閉を検知する。
【0040】
記憶部116は、冷蔵庫1の運転に必要な情報を記憶する。記憶部116は、例えば、冷却運転の制御に関わるデータを記憶する。これについては、後述する。
【0041】
操作パネル部150は、各貯蔵室の設定温度や運転モードを切り替えるための操作(例えば後述する通常チルド運転と特別チルド運転との切り替え操作)を受け付けるとともに、設定内容や現在の運転状況を表示させる。操作パネル部150は、例えば、いわゆるタッチ式の操作パネル部である。タッチ式の操作パネル部は、静電容量式スイッチによって構成されるタッチセンサを備える。
【0042】
制御部100は、第1貯蔵室を冷却する冷蔵運転を行うには、三方弁53を切り替えて冷媒の流路を流路Bに切り替えることにより、冷蔵用冷却器41を冷却する。また、制御部100は、第2貯蔵室を冷却する冷凍運転を行うには、三方弁53を切り替えて冷媒の流路を流路Cに切り替えることにより、冷凍用冷却器46を冷却する。尚、流路Bおよび流路Cの両方を選択した場合は、冷蔵運転と冷凍運転との両方が行われる。
【0043】
制御部100は、下記に説明する通常チルド運転と特別チルド運転のいずれか1つのモードに従って冷却を行う。
【0044】
[3.2 通常チルド運転]
まず、通常チルド運転について説明する。通常チルド運転においては、制御部100は、冷却部15を制御することにより、チルド室27AAを通常チルド目標温度に冷却する。例えば、制御部100は、通常チルド目標温度を所定の計算により冷蔵室目標温度に換算し、冷蔵室温度センサ110で検出された冷蔵室27Aの空気温度を冷蔵室目標温度にするように、PID制御(Proportional-Integral-Differential Control)などのフィードバック制御に従って冷却部15を制御する。これによって、チルド室27AAは、通常チルド目標温度に対応する通常チルド温度帯に保たれる。
【0045】
通常チルド目標温度は、例えば0~1℃に含まれる温度である。制御部100が、チルド室27AAを通常チルド目標温度にするように冷却部15を制御すると、通常チルド温度帯の中心温度は、通常チルド目標温度と略同じになる。したがって、通常チルド運転における通常チルド温度帯の中心温度も、例えば0~1℃に含まれる温度である。尚、中心温度とは、対象となる運転が実施される期間における最大温度と最小温度の和を2で除算した値である。制御部100が運転モードを切り替えた直後においてまだ温度が安定していない期間における温度は、中心温度の計算において除外されてもよい。本明細書において、「冷却部15を制御する」とは、例えば、冷蔵用ファン43と、冷凍用ファン48と、圧縮機49とのうちいずれか1つ以上を制御することを意味する。
【0046】
上記説明したように、制御部100は、三方弁53を制御することにより、冷媒の流路を図3に示される流路Bと流路Cとを交互に切り替える。流路Bに冷媒が流れている時には、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B)が冷却される。流路Cに冷媒が流れている時には、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室27C、小冷凍室27D、主冷凍室27E)が冷却される。制御部100は、例えば、40分の間、流路Bに冷媒を流して冷蔵用冷却器41を冷却するとともに冷蔵用ファン43を駆動させることで冷蔵温度帯の貯蔵室の冷却を行い、60分の間、流路Cに冷媒を流して冷凍用冷却器46を冷却するとともに冷凍用ファン48を駆動させることで冷凍温度帯の貯蔵室の冷却を行うことを交互に繰り返す。以下では特別な説明がない限り、流路Bに冷媒を流して冷蔵用冷却器41を冷却するとともに冷蔵用ファン43を駆動させる運転を「冷蔵運転」と称し、流路Cに冷媒を流して冷凍用冷却器46を冷却するとともに冷凍用ファン48を駆動させる運転を「冷凍運転」と称する。
【0047】
制御部100は、冷蔵庫1のデフォルト状態では、通常チルド運転でチルド室27AAを冷却するように設定されている。すなわち、制御部100は、冷蔵庫1の電源が切られた状態から冷蔵庫1の電源が入れられた場合に、通常チルド運転によりチルド室27AAを冷却する。
【0048】
尚、上記では、通常チルド運転において、制御部100は、チルド室27AAを凍結寸前の温度である通常チルド目標温度(例えば0~1℃に含まれる温度)に冷却するものとした。しかし、制御部100は、チルド室27AAを、半凍結・微凍結状態の温度であるいわゆるパーシャルの目標温度(例えば、-1℃~-3℃に含まれる温度)に冷却するものであってもよい。これによって、チルド室27AAは、パーシャルの目標温度に対応するパーシャル温度帯に保たれる。制御部100がチルド室27AAをパーシャルの目標温度にするように冷却部15を制御すると、パーシャルの温度帯の中心温度は、パーシャルの目標温度と略同じになる。したがって、パーシャルの温度帯の中心温度も、例えば、-1℃から-3℃のうちの任意の温度である。中心温度の計算は上記と同じである。
【0049】
[3.3 特別チルド運転]
次に、実施形態の特別チルド運転について説明する。
図5は、冷蔵庫1が特別チルド運転を行う場合のチルド室27AAの空気温度の変化を示す図である。図5においては、縦軸にチルド室27AAの空気温度が示され、横軸に経過時間が示される。
【0050】
冷蔵庫1の制御部100は、チルド室27AAの温度制御について、通常チルド運転と特別チルド運転を選択的に実行することができる。例えば、操作パネル部150をユーザがタッチすることにより、通常チルド運転と特別チルド運転の切り替えを行うことができる。尚、図5は、特別チルド運転の開始からの測定結果ではなく、特別チルド運転の途中からの空気温度の変化を示している。
【0051】
特別チルド運転においては、制御部100は、チルド室27AAを第1温度帯で冷却するように冷却部15を制御する低温冷却制御と、チルド室27AAを第1温度帯よりも高い第2温度帯で冷却するように冷却部15を制御する高温冷却制御とを交互に繰り返す運転を行う。尚、低温冷却制御と高温冷却制御との間に、任意の制御が行われてもよい。ここで、任意の制御は特に限定されるものではない。任意の制御が行われても、本実施形態の特別チルド運転を実現することができる。つまり、低温冷却制御と高温冷却制御との間に任意の制御を実行することは、本実施形態の特別チルド運転の一部を構成するものである。
【0052】
第1温度帯は、制御部100がチルド室27AAを特別チルド低温目標温度に基づいて冷却するように制御したときのチルド室27AAの温度帯である。特別チルド低温目標温度(第1温度帯の中心温度)は、例えば、-5℃である。特別チルド低温目標温度は、例えば、氷点以下の温度であり、0℃未満の温度である。本実施形態では、第1温度帯の最大値は、0℃未満の温度である。第1温度帯は、通常チルド温度帯よりも低い温度帯である。第1温度帯は、チルド室27AAの貯蔵物(食品)の表面を微凍結させる温度である。第1温度帯は、チルド室27AAの貯蔵物の真ん中のほうまで氷結させるのではなく、表面のみに氷結した層を作ることができる温度帯である。
【0053】
第2温度帯は、制御部100がチルド室27AAを特別チルド高温目標温度に基づいて冷却するように制御したときのチルド室27AAの温度帯である。特別チルド高温目標温度(第2温度帯の中心温度)は、例えば、1℃である。特別チルド高温目標温度は、例えば、氷点よりも高い温度であり、0℃以上の温度である。本実施形態では、第2温度帯の最大値は、0℃以上の温度であり、第2温度帯の最小値は、0℃未満の温度である。尚、第2温度帯の最小値は、0℃以上の温度でもよい。第2温度帯は、通常チルド温度帯よりも高い温度帯である。第2温度帯は、チルド室27AAの貯蔵物の表面を作られた微凍結の層を融解させることができる温度である。
【0054】
本実施形態においては、第2温度帯は、最大氷結晶生成帯(例えば、-5℃~-1℃)よりも高い温度を含む。最大氷結晶生成帯とは、食品中の水分における氷結晶の生成が最大となり、食品中の水分がほとんど凍結する温度帯である。また、制御部100は、第2温度帯においては、チルド室27AAに貯蔵される食品の温度が最大氷結晶生成帯よりも高い温度になるように冷却部15を制御している。
【0055】
第1温度帯は、制御部100がチルド室27AAを特別チルド低温目標温度に冷却するように制御したときにおいて、チルド室27AAの空気温度の極大値の平均値と極小値の平均値との間の温度帯であってもよい。このとき、チルド室27AAの空気温度の極大値と極小値のそれぞれの平均値を求める際には、外れ値を除外して平均値を計算してもよい。第2温度帯についても同様である。第1温度帯の中心温度は、制御部100がチルド室27AAを特別チルド低温目標温度に冷却するように制御したときにおける、チルド室27AAの空気温度の極大値の平均値と極小値の平均値との平均値であってよい。このとき、チルド室27AAの空気温度の極大値の平均値と極小値の平均値を求める際には、外れ値を除外して平均値を計算してもよい。第2温度帯の中心温度についても同様である。
【0056】
図5に示されるように、制御部100がチルド室27AAの冷却を第2温度帯から第1温度帯に変更してまだチルド室27AAの空気温度が安定していない期間におけるチルド室27AAの空気温度は、第1温度帯の空気温度の極大値と極小値から除外されもよい。同様に、制御部100がチルド室27AAの冷却を第1温度帯から第2温度帯に変更してまだチルド室27AAの空気温度が安定していない期間におけるチルド室27AAの空気温度は、第2温度帯の空気温度の極大値と極小値から除外されもよい。
【0057】
本明細書において「ある温度帯が別の温度帯よりも高い」という表現は、「ある温度帯の中心温度が、別の温度帯の中心温度よりも高い」という意味であり、「ある温度帯」の一部に、「別の温度帯」の一部が重なる場合も含むものとする。同様に、「ある温度帯が別の温度帯よりも低い」という表現は、「ある温度帯の中心温度が、別の温度帯の中心温度よりも低い」という意味であり、「ある温度帯」の一部に、「別の温度帯」の一部が含まれている場合も含むものとする。
【0058】
通常チルド運転では、チルド室27AAを高温気味にすると、鮮度が維持されにくい。逆に、チルド室27AAをパーシャルの温度、例えば-1℃の目標温度まで冷却してチルド室27AAを低温気味にすると、食品が凍ってしまう。このため、温度制御を適切に行わないと、食品内部まで徐々に微凍結して、凍結した部分が解凍時にドリップが発生するなど、食品状態が悪化してしまう可能性があった。そこで、特別チルド運転においては、例えば、低温冷却制御のデフォルト実施時間(例えば、2時間)の間、-5℃の低温目標温度にするように冷却(低温冷却)し、高温冷却制御のデフォルト実施時間(例えば、7時間)の間、1℃の高温目標温度にするように冷却(高温冷却)するということを繰り返すように制御を行うことにより、食品表面のみ微凍結することにより、食品の乾燥・酸化を抑制することができ、食品を冷凍しなくてもチルドで鮮度維持することができる。
【0059】
高温冷却制御のデフォルト実施時間は、高温目標温度にするように冷却を行う時間として、デフォルトで設定されている時間である。高温冷却制御のデフォルト実施時間は、食品の表面の凍結を融解させることができる、任意の時間であってよい。好ましくは、高温冷却制御のデフォルト実施時間は、例えば、4時間以上である。より好ましくは、高温冷却制御のデフォルト実施時間は、例えば、7時間である。
【0060】
低温冷却制御のデフォルト実施時間は、低温目標温度にするように冷却を行う時間として、デフォルトで設定されている時間である。低温冷却制御のデフォルト実施時間は、食品の鮮度を維持できる、任意の時間であってよい。好ましくは、低温冷却制御のデフォルト実施時間は、例えば、1時間以上の時間である。より好ましくは、低温冷却制御のデフォルト実施時間は、例えば、2時間である。
【0061】
制御部100は、低温冷却制御のデフォルト実施時間を基準として、低温冷却制御の実施時間を変更し、高温冷却制御のデフォルト実施時間を基準として、高温冷却制御の実施時間を変更することがある。
【0062】
図5に示されるように、低温冷却制御と高温冷却制御とが行われているそれぞれの期間において、制御部100は、上述した冷蔵運転と冷凍運転とを交互に行う。このため、低温冷却制御が行われている時間(例えば、2時間)と高温冷却制御が行われている時間(例えば、7時間)とのそれぞれにおいて、冷蔵運転が行われている時間(例えば、40分間)には、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの空気温度は低下し、冷凍運転が行われている時間(例えば、60分間)には、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの空気温度は上昇するということを繰り返す。図5において、低温冷却制御と高温冷却制御とが行われているそれぞれの期間において、チルド室27AAの空気温度を示す線が鋸歯状に上下することを繰り返しているのは、このためである。
【0063】
[3.4 チルド室の推定温度に基づく運転]
ここで本実施形態では、チルド室27AAには、専用の温度センサが設けられていない。本実施形態の冷蔵庫1は、温度推定部102を有する。温度推定部102は、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室27Aの温度(以下「冷蔵室温度」と称する)に基づいて、チルド室27AAの温度(以下「チルド室温度」と称する)を推定する。そして、制御部100は、温度推定部102により推定されたチルド室温度(推定温度)に基づいて、低温冷却制御と高温冷却制御とを交互に繰り返すように冷却部15を制御する。例えば、制御部100は、温度推定部102により推定されたチルド室温度に基づいて、低温冷却制御および高温冷却制御のそれぞれにおける圧縮機49の制御内容(運転周波数や運転時間、運転タイミング)や、冷蔵用ファン43の制御内容(回転数や運転時間、運転タイミング)などを決定する。
【0064】
また、制御部100は、低温冷却制御および高温冷却制御のそれぞれにおいて、温度推定部102により推定されたチルド室温度に基づいて、冷蔵運転から冷凍運転への切り替えや、冷凍運転から冷蔵運転への切り替えを行ってもよい。例えば、制御部100は、低温冷却制御中(または高温冷却制御中)の冷蔵運転において、上述した所定時間(例えば40分)の経過前に温度推定部102により推定されたチルド室温度が低温冷却制御(または高温冷却制御)の目標温度帯の下限値に達した場合、上記所定時間の終了を待たずに冷蔵運転を終了し、冷凍運転に移行してもよい。また、制御部100は、低温冷却制御中(または高温冷却制御中)の冷凍運転において、上述した所定時間(例えば60分)の経過前に温度推定部102により推定されたチルド室温度が低温冷却制御(または高温冷却制御)の目標温度帯の上限値に達した場合、上記所定時間の終了を待たずに冷凍運転を終了し、冷蔵運転に移行してもよい。
【0065】
[3.5 チルド室温度の推定方法]
[3.5.1 チルド室温度の推定方法の概要]
まず、チルド室温度の推定方法の概要を説明する。図6は、チルド室温度の推定を説明するための図である。図6は、本発明者らにより実測された冷蔵室温度およびチルド室温度を示す。例えば、図中の「冷蔵室温度」は、冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度である。また図中の「チルド室温度」は、この測定のためにチルド室27Aに設けられた温度センサによって検出されたチルド室温度である。図示されるように、冷蔵室温度の温度変化と、チルド室温度の温度変化との間には、一定の比例関係があることが本発明者らにより見出された。また、高温冷却制御と低温冷却制御とのそれぞれにおける冷蔵運転の開始時と冷凍運転の開始時のそれぞれにおいては、チルド室温度と冷蔵室温度との温度差に一定の関係があることが本発明者らにより見出された。本実施形態は、これらの一定の関係を用い、冷蔵室温度センサ110によって検出される冷蔵室温度に基づいて、チルド室温度を推定する方法について説明する。
【0066】
図6の例では、高温冷却制御中におけるある冷蔵運転の開始時t1(後述する「基準時点」の一例)においては、冷蔵室温度が約3.5℃であり、チルド室温度が約2.5℃である。つまり、冷蔵室温度とチルド室温度との温度差は、約-1℃である。この時点から冷蔵室温度が約4℃低下すると、チルド室温度は約8℃低下する。つまり、冷蔵室温度の温度低下1℃に対して、チルド室温度の温度低下は2℃である。以下、冷蔵室温度の単位変化量(例えば1℃)に対するチルド室温度の変化量の比率を、換算係数と呼ぶ。すなわち上記例での換算係数は「2」になる。冷蔵室温度とチルド室温度の関係を一般化すると、例えば下記の式(1)のように表現できる。
【0067】
チルド室温度=基準時点のチルド室温度の推定温度+冷蔵室温度の変化量×換算係数 …(1)
【0068】
尚、冷蔵室温度の変化量は、例えば、チルド室温度を推定する推定時点(現時点)に冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度から、基準時点に冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度を減算することで得られる。上記式(1)の関係に基づいて、温度推定部102は、例えば、冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度が、基準時点の冷蔵室温度に対して3℃低下した場合は、チルド室温度は以下のように推定することができる。
【0069】
チルド室温度=基準時点のチルド室温度の推定温度+冷蔵室温度の変化量×換算係数
=2.5℃+(-3℃×2)
=-3.5℃ …(2)
【0070】
式(2)に示されるように、冷蔵室温度が基準時点の冷蔵室温度に対して3℃低下した場合は、チルド室温度は3[℃]×2=6[℃]低下したものと推測され、基準時点のチルド室温度2.5℃に基づいて、この時のチルド室温度は、-3.5℃であると推定される。
【0071】
[3.5.2 チルド室温度の推定方法の実装例]
本実施形態では、温度推定部102は、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度の変化量に基づいて、チルド室温度を推定する。例えば、温度推定部102は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの温度が低下する状況(例えば冷蔵運転時)では、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度の低下幅が大きいほど、チルド室温度を低く推定する。一方で、温度推定部102は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの温度が上昇する状況(例えば冷凍運転時)では、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度の上昇幅が大きいほど、チルド室温度を高く推定する。
【0072】
本実施形態では、温度推定部102は、基準時点での冷蔵室温度とチルド室温度との温度差(基準温度差)と、前記基準時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と、チルド室温度を推定する推定時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と、温度の単位変化量当たりの補正値(上述した換算係数)とに基づき、チルド室温度を推定する。
【0073】
「基準時点」は、例えば、冷蔵庫1の運転中において、冷蔵室温度とチルド室温度との温度差の変動が比較的小さくなる所定条件が満たされる時点である。「基準時点」は、例えば、温度推定部102により推定されたチルド室温度が上記第2温度帯に含まれ、且つ、冷蔵用ファン43が運転されている状態(特定状態)が成立する時点である。「基準時点」は、例えば、高温冷却制御中であって冷蔵用ファン43が運転されている時点、または、高温冷却制御から低温冷却制御の移行時の前半であって冷蔵用ファン43が運転されている時点などである。さらに言えば、「基準時点」は、例えば、高温冷却制御中で、冷凍運転から冷蔵運転に切り替わる時点(冷蔵室温度が極大値となる時点)である。これは、高温冷却制御中は、低温冷却制御中と比べて、冷蔵室温度とチルド室温度との開きが小さいためであり、また、冷蔵用ファン43が運転されていると、冷蔵用ファン43が停止されている場合と比べて、冷蔵室27Aとチルド室27AAとで冷気の滞留が少なく、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの空気温度が安定しやすいためである。ただし、「基準時点」は、上記例に限定されない。「基準時点」は、低温冷却制御中の任意の時点でもよい。「基準時点」は、例えば、1回の高温冷却制御と1回の低温冷却制御とを含む冷却制御の1サイクルにおいて、少なくとも1回は定められている。
【0074】
尚、「基準時点」は、冷蔵室扉11Aa,11Abの開閉など、筐体10の外部からの温度影響があった場合は、予め定められた時点からずらされてもよい。例えば、温度推定部102は、冷蔵室扉11Aa,11Abのうち少なくとも一方の開閉が扉開閉検知センサ115により検知された場合、冷蔵室扉11Aa,11Abが閉じられて冷蔵用ファン43が所定時間運転された後を「基準時点」としてもよい。ここで言う「所定時間」は、冷蔵用ファン43の運転により冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの空気温度が安定する時間であり、例えば1分間である。
【0075】
本実施形態では、「基準時点での冷蔵室温度とチルド室温度との基準温度差」は、予め設定され、記憶部116に記憶されている。本実施形態では、温度推定部102は、基準時点に達した場合、それまでのチルド室温度の推定をリセットし、チルド室温度の推定を新しく開始する。この場合、制御部100は、基準時点に達した時点で記憶部116に記憶された「冷蔵室温度とチルド室温度との基準温度差」を読み出す。図6に示す例では、「冷蔵室温度とチルド室温度との基準温度差」は、-1℃である。この「-1℃」という数値が基準温度差として記憶部116に記憶されている。なお、「冷蔵室温度とチルド室温度との基準温度差」は、1つに限らず、冷蔵庫1の外部の温度や冷蔵室27Aおよびチルド室27AA内の貯蔵物の量など、冷蔵庫1が置かれている各種状況に応じた複数の値が予め用意されていてもよい。
【0076】
本実施形態では、温度推定部102は、所定の周期(例えば1分ごと)に、冷蔵室温度センサ110で冷蔵室温度を検出し、検出された冷蔵室温度に基づきチルド室温度(推定温度)を更新する。例えば、温度推定部102は、基準時点後の1回目(第1時点)の推定では、記憶部116から読み出された「冷蔵室温度とチルド室温度との基準温度差」と、基準時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と、基準時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と第1時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度との間の変化量と、上述した換算係数とに基づき、第1時点のチルド室温度を推定する。
【0077】
次に、温度推定部102は、基準時点後の2回目(第2時点)の推定では、第1時点で推定されたチルド室温度と、第1時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と第2時点で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度との間の変化量と、上述した換算係数とに基づき、第2時点のチルド室温度を推定する。3回目(第3時点)の推定も同様である。温度推定部102は、上記手法でチルド室温度の推定を繰り返す。そして、温度推定部102は、上述した基準時点に再び達した場合、それまでのチルド室温度の推定をリセットし、再び基準時点後の1回目(第1時点)の推定に戻る。
【0078】
[3.5.2 換算係数の例]
図7は、温度推定部102により用いられる換算係数の内容の一例を示す図である。図7中において「高温→低温冷却制御」とは、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時を意味する。同様に、「低温→高温冷却制御」とは、低温冷却制御から高温冷却制御への移行時を意味する。尚、低温冷却制御から高温冷却制御への移行時は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの温度を上昇させる必要があるため、基本的には冷蔵運転は行われず、主として冷凍運転が行われる。なお、冷凍運転は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの「非冷却時」と称されてもよい。
【0079】
本実施形態では、高温冷却制御中は、冷凍運転が行われる場合(すなわち、冷蔵用冷却器41に液体冷媒が供給されない場合)であっても、冷蔵用ファン43が運転される。これにより、冷蔵用冷却器41の除霜が行われるとともに、冷蔵用冷却器41で溶けた霜による湿潤な空気が冷蔵室27Aおよびチルド室27AAに供給される。
【0080】
一方で、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時または低温冷却制御中であって冷凍運転が行われる場合は、冷蔵用ファン43は停止され(または低い回転数で運転され)、実質的な送風は行われない。これは、冷蔵用冷却器41に液体冷媒が供給されない状態で冷蔵用ファン43による実質的な送風を行うと、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの温度上昇を招き、高温冷却制御から低温冷却制御への移行や低温冷却制御の実現を遅らせるためである。
【0081】
そして本実施形態では、温度推定部102は、チルド室27AAの冷却制御の状態と、冷蔵運転または冷凍運転を示す運転モードと、冷蔵用ファン43による送風状態とに基づき、換算係数を変更する。例えば、換算係数は、冷蔵用ファン43が運転される場合(例えば第1回転数で運転される場合)を通常状態とした場合、この通常状態では「2」に設定される。この換算係数「2」は、「第1補正値」の一例である。
【0082】
一方で、温度推定部102は、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時であって冷凍運転が行われる場合は、換算係数を「1」に変更する。これは、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時であって冷凍運転が行われる場合は、冷蔵用ファン43による送風状態が停止されるか低い回転数で運転される。言い換えると、冷蔵用ファン43が停止される場合または上記第1回転数よりも低い第2回転数で運転される場合は、換算係数は「1」に設定される。この換算係数「1」は、「第2補正値」の一例である。第1補正値は、第2補正値よりも大きい。
【0083】
この理由は、冷蔵用ファン43が運転される(例えば第1回転数で運転される場合)は、チルド室冷気吹出口31bから吹き出された冷気によってチルド室27AAの温度が大きく下がりやすい一方で、冷蔵室冷気吹出口31aから吹き出された冷気は冷蔵室温度センサ110に直接にぶつからないため、冷蔵室温度センサ110による検出温度と、チルド室27AAの温度とが開きやすいためである。一方で、冷蔵用ファン43が停止中または第1回転数よりも低い第2回転数で運転される場合は、チルド室冷気吹出口31bから吹き出される冷気が無いまたは量が限られており、冷蔵用ファン43が第1回転数で運転される場合と比べてチルド室27AAの温度が下がりにくく、冷蔵室温度センサ110による検出温度とチルド室27AAの温度とが近付きやすいためである。
【0084】
さらに本実施形態では、温度推定部102は、低温冷却制御時であって冷凍運転が行われる場合は、換算係数を「1.5」に変更する。これは、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時であって冷凍運転が行われる場合は、冷蔵用ファン43による送風状態が停止されるか低い回転数で運転される。言い換えると、低温冷却制御時であって冷蔵用ファン43が停止される場合または上記第1回転数よりも低い第2回転数で運転される場合は、換算係数は「1.5」に設定される。この換算係数「1.5」は、「第2補正値」の別の一例である。また別の観点で見ると、低温冷却制御時であって冷凍運転が行われる場合の換算係数(例えば「1.5」)は、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時であって冷凍運転が行われる場合の換算係数(例えば「1」)よりも高く設定される。
【0085】
これは、冷蔵用ファン43が停止中または第1回転数よりも低い第2回転数で運転される場合は、チルド室冷気吹出口31bから吹き出される冷気が無いまたは限られており、チルド室27AAの温度が下がりにくく、冷蔵室温度センサ110による検出温度と、チルド室27AAの温度とが近付きやすいためである。しかしながら、低温冷却制御時は、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時と比べて冷気の量が多く、冷蔵用ファン43が停止中または第2回転数で回転される場合、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAで冷気が分離し、多くの冷気がチルド室27AAに沈み、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時と比べてチルド室27AAの温度が低下しやすいためである。
【0086】
ただし、換算係数は、上記例に限定されない。例えば、冷蔵庫1の構造によっては、冷蔵用ファン43が停止されるまたは第1回転数よりも低い第2回転数で運転される場合の換算係数は、冷蔵用ファン43が第1回転数で運転される場合の換算係数よりも高く設定されてもよい。この場合の一例は、冷蔵室冷気吹出口31aから吹き出される冷気が直接にぶつかる位置に冷蔵室温度センサ110が配置されている場合などである。
【0087】
このように、温度推定部102は、冷蔵室温度センサ110に基づいてチルド室温度を推定し、制御部100は、温度推定部102により推定されたチルド室温度を所定の閾値と比較して判定を行い、判定結果に従って冷却部15を制御することができる。
【0088】
[4.利点]
本実施形態によれば、制御部100は、温度推定部102により推定された第2貯蔵部の温度に基づいて、チルド室27AAを第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、チルド室27AAを第1温度帯よりも高い第2温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すように冷却部15を制御可能である。このような構成によれば、チルド室27AAに専用の温度センサを設けることなく、冷蔵室27に設けられた冷蔵室温度センサ110の検出結果を利用して、チルド室27AAに関する冷却制御を行うことができる。これにより、冷蔵庫1の部品削減が可能になり、冷蔵庫1のコスト低減を図ることができる。
【0089】
本実施形態によれば、温度推定部102は、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度の変化量に基づいて、第2貯蔵部の温度を推定する。この構成によれば、冷蔵室温度の変化量に基づいて、チルド室温度を推定するので、簡易な計算方法でチルド室温度を推定することができる。
【0090】
本実施形態によれば、温度推定部102は、冷蔵室扉11Aa,11Abが開閉された場合、冷蔵室扉11Aa,11Abが閉じられて冷蔵用ファン43が所定時間運転された後に冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と、その後の冷蔵室温度の変化量とに基づいて、チルド室温度を推定する。このような構成によれば、冷蔵室扉11Aa,11Abが開閉された場合など筐体10の外部からの温度影響がある場合であっても、その影響を抑制し、安定した基準の下でチルド室温度を推定することができる。これにより、チルド室温度の推定精度を高めることができる。
【0091】
温度推定部102は、冷蔵用ファン43が第1回転数で運転中の場合は、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室27Aの温度の変化量と、温度の単位変化量当たりの第1補正値とに基づきチルド室温度を推定し、冷蔵用ファン43の停止中または前記第1回転数よりも低い第2回転数で運転中の場合は、冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室27Aの温度の変化量と、温度の単位変化量当たりの第2補正値とに基づき前記第2貯蔵部の温度を推定する。そして、前記第1補正値は、前記第2補正値よりも大きい。このような構成によれば、冷蔵用ファン43の回転状態に応じた異なる補正値を用いてチルド室温度をきめ細かく推定することができる。これにより、チルド室温度の推定精度を高めることができる。
【0092】
温度推定部102は、チルド室温度が第2温度帯に含まれて冷蔵用ファン43が運転されている特定状態でチルド室温度の推定をリセットし、上記特定状態で冷蔵室温度センサ110により検出された冷蔵室温度と、予め設定された冷蔵室27Aとチルド室27AAの基準温度差と、その後の冷蔵室温度の変化量とに基づいて、チルド室温度を推定する。このような構成によれば、所定のタイミングでチルド室温度の推定がリセットされるので、チルド室温度の推定を続けることで推定に伴う誤差が累積的に蓄積されることを抑制することができる。また、高い精度の推定が期待できる特定状態においてチルド室温度の推定をリセットすることで、チルド室温度の推定精度を高めることができる。
【0093】
(第1の実施形態の変形例A)
変形例Aは、高温冷却制御中の換算係数と、低温冷却制御中の換算係数とが互いに異なる点で、第1の実施形態とは異なる。尚、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0094】
本変形例では、低温冷却制御中の換算係数(例えば冷蔵運転時の換算係数)は、例えば「2.2」に設定される。この換算係数「2.2」は、「第3補正値」の一例である。一方で、高温冷却制御中の換算係数(例えば冷蔵運転時の換算係数)は、例えば「2」に設定される。この換算係数「2」は、「第4補正値」の一例である。第3補正値は、第4補正値よりも大きい。
【0095】
ここで、低温冷却制御中は、高温冷却制御中と比べて冷気が多く、高温冷却制御中と比べてチルド室27AAの温度が変動しやすい場合がある(例えば、冷蔵室27Aとチルド室27AAとの温度差が広がる場合がある)。このため本変形例では、低温冷却制御中の換算係数は、高温冷却制御中の換算係数と比べて高く設定される。このような構成によれば、チルド室温度の推定精度をさらに高めることができる場合がある。
【0096】
(第1の実施形態の変形例B)
変形例Bは、低温冷却制御および高温冷却制御において、チルド室温度の推定値に誤差が生じた場合の影響が小さくなるように換算係数が設定される点で、第1の実施形態とは異なる。尚、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0097】
本変形例では、低温冷却制御中の冷蔵運転時(チルド室27AAの温度が低下する運転時)の換算係数は、例えば「2.2」に設定されている。一方で、低温冷却制御中の冷凍運転時(チルド室27AAの温度が上昇する運転時)の換算係数は、例えば「2」に設定されている。すなわち、低温冷却制御中では、冷蔵運転時の換算係数は、冷凍運転時の換算係数よりも大きく設定される。言い換えると、低温冷却制御中では、チルド室温度は、チルド室温度が低くなる方向に重み付けされて推定される。そして、制御部100は、チルド室温度が第1温度帯の下限値に達した場合に、冷蔵運転を停止する(例えば冷凍運転に切り替える)。これにより、もしチルド室温度の推定値に誤差が生じた場合であっても、換算係数を変えない場合と比べて、低温冷却制御から高温冷却制御への切り替えを早めに行うことができる。これにより、チルト室温度の推定値に誤差が生じた場合に、チルド室27AA内の食品が第1温度帯の下限値を超えて過度に冷却されることを抑制することができる。これにより、食品が凍結状態になり、食材の品質劣化が生じることを抑制することができる。
【0098】
また、本変形例では、高温冷却制御中の冷蔵運転時(チルド室27AAの温度が低下する運転時)の換算係数は、例えば「2」に設定されている。一方で、高温冷却制御中の冷凍運転時(チルド室27AAの温度が上昇する運転時)の換算係数は、例えば「2.2」に設定されている。すなわち、高温冷却制御中では、冷凍運転時の換算係数は、冷蔵運転時の換算係数よりも大きく設定される。言い換えると、高温冷却制御中では、チルド室温度は、チルド室温度が低くなる方向に重み付けされて推定される。そして、制御部100は、チルド室温度が第2温度帯の上限値に達した場合に、冷蔵運転を再開する。これにより、もしチルド室温度の推定値に誤差が生じた場合であっても、換算係数を変えない場合と比べて、高温冷却制御から低温冷却制御への切り替えを早めに行うことができる。これにより、チルト室温度の推定値に誤差が生じた場合に、チルド室27AA内の食品が第2温度帯の上限値を超えて過度に温まることを抑制することができる。これにより、食品の腐食など食材の品質劣化が生じることを抑制することができる。
【0099】
(第1の実施形態の変形例C)
上記第1の実施形態では、温度推定部102は、温度の単位変化量当たりの補正値(換算係数)に基づき、チルド室温度を推定した。変形例Cでは、温度の単位変化量当たりの補正値(換算係数)を用いる代わりに、チルド室推定温度差を用いてチルド室の温度を推定する点で、第1の実施形態とは異なる。尚、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0100】
変形例Cでは、例えば、運転状態と、それに対応するチルド室推定温度差とが互いに関連付けられて予めテーブルとして記憶部116されている。例えば、テーブルには、「高温冷却制御実行中であって冷蔵用ファン43による送風が行われている」という運転状態に対して、「-5℃」というチルド室推定温度差が関連付けられて記憶されており、「低温冷却制御実行中であって冷蔵用ファン43による送風が行われていない」という運転状態に対して、「-3℃」というチルド室推定温度差が関連付けられて記憶されている。
【0101】
温度推定部102は、テーブルから運転状態に対応するチルド室推定温度差を読み出し、冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度に、読み出したチルド室推定温度差を加算することによりチルド室の推定温度を導出する。本変形例によれば、温度の単位変化量当たりの補正値(換算係数)を用いずに、より簡便な方法でチルド室の推定温度を導出することができる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、冷蔵運転と冷凍運転の切り替えが行われてからの経過時間に基づきチルド室温度を推定する点で、第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0103】
図8は、冷蔵室27Aの温度とチルド室27AAの温度との差分値を示す図である。図8は、本発明者らにより実測された冷蔵室温度およびチルド室温度を示す。図示されるように、例えば、高温冷却制御においては、冷蔵運転の開始時には、冷蔵室27A温度とチルド室27AAの温度との差分値は、約1℃である。一方で、冷蔵運転の終了時には、冷蔵室27Aの温度とチルド室27AAの温度との差分値は、約3.5℃である。図8に示す例では、冷蔵運転は15分間行われているので、1分あたりの差分値の増加率は、(3.5℃-1℃)÷15分≒0.16℃/分である。上述した図6に示されるように、高温冷却制御においての冷蔵運転の開始時t1(「基準時点」の一例)のチルド室27AAの温度は、約3.5℃である。これにより、冷蔵室27Aの温度とチルド室27AAの温度との関係を一般化すると、下記の式(3)のように表現できる。
【0104】
チルド室温度=冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度[℃]-(基準時点からの経過時間[分]×1分あたりの差分値の増加率[℃/分]) …(3)
【0105】
上記式(3)の関係に基づいて、温度推定部102は、例えば、冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度が3℃であり、冷蔵運転の開始からの経過時間が10分である場合は、チルド室温度を以下のように推定する。
【0106】
チルド室温度=冷蔵室温度センサ110によって検出された冷蔵室温度[℃]-(基準時点からの経過時間[分]×1分あたりの差分値の増加率[℃/分])
=3[℃]-(10[分]×0.16[℃/分])
=1.4[℃] …(4)
【0107】
式(4)に示されるように、冷蔵運転の開始から10分経過していれば、冷蔵室温度とチルド室温度との差分値は、10[分]×0.16[℃/分]=1.6[℃]であると推定される。そして、この差分値を冷蔵室温度から減算することで、チルド室温度は1.4[℃]であると推定される。
【0108】
上記では、高温冷却制御における冷蔵開始時からの経過時間に基づいて、チルド室温度を推定した。同様に、低温冷却制御における冷蔵開始時からの経過時間に基づいて、チルド室温度を推定することもできる。
【0109】
本実施形態によれば、温度推定部102は、冷蔵室27Aとチルド室27AAに対する冷却部15による冷却時間の長さに基づいて、チルド室温度を推定する。この構成によれば、基準時点(例えば冷蔵運転の開始時)からの経過時間に基づいて、チルド室温度を推定するので、簡易な計算方法でチルド室温度を推定することができる。なお、基準時点の設定方法や、チルド温度の推定のリセットのタイミングなどは、第1の実施形態と同様である。
【0110】
図9は、第2の実施形態において温度推定部102により用いられる差分値の増加率の内容の一例を示す図である。上述した第1の実施形態の内容および第1の実施形態の変形例A、Bは、第2の実施形態にも適用可能である。このため例えば、第1の実施形態および第1の実施形態の変形例A、Bの説明において、「換算係数」を「差分値の増加率」と読み替え、「温度の単位変化量当たりの」を「単位時間当たりの」と読み替えて、換算係数の値を図9に示される差分値の増加率に読み替えることにより、第2の実施形態の内容およびその変形例としてここに援用する。例えば、第1の実施形態において、換算係数「2」を「2.2」に増やす場合は、第2の実施形態においては、同様の比率で、差分値の増加率「0.16」を「0.176」に増やせばよい。
【0111】
(第1の実施形態と第2の実施形態の第1の変形例)
次に、第1の変形例について説明する。第1の変形例では、野菜室27Bの底面に野菜室27Bの食品の凍結を抑制する野菜室ヒータ120が備えられており、温度推定部102は、野菜室ヒータ120の使用状態(通電状態)に基づいて、推定されたチルド室温度を補正する点で、第1および第2の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0112】
図10は、第1の変形例の制御盤16の機能構成の一部を示すブロック図である。図示されるように、冷蔵庫1Aの制御部100には、制御部100の制御に従って野菜室27Bの底面を加熱する野菜室ヒータ120が接続されている。
【0113】
図11は、第1の変形例の冷蔵庫1Aの野菜室ヒータ120がONの時とOFFの時のそれぞれにおける、チルド室27AAの温度を示す図である。図示されるように、冷蔵室27Aの非冷却時(冷凍運転時)または通常の冷蔵運転よりは弱い冷却力で冷蔵室27Aを冷却している場合に、チルド室27AAの温度は野菜室ヒータ120の加熱によって影響を受ける。従って、温度推定部102は、冷蔵室27Aの非冷却時(冷凍運転時)または通常の冷蔵運転よりは弱い冷却力で冷蔵室27Aを冷却している場合に、野菜室ヒータ120の使用状態に基づいて、推定されたチルド室温度を補正する。「冷蔵室27Aの非冷却時(冷凍運転時)」は、「前記第1貯蔵部および前記第2貯蔵部に対する冷却部による冷却が停止中」の一例である。「通常の冷蔵運転の冷却力で冷蔵室27Aを冷却すること」は、例えば、「第1冷却能力」の一例である。「通常の冷蔵運転よりは弱い冷却力で冷蔵室27Aを冷却すること」は、「第1冷却能力よりも低い第2冷却能力」の一例である。
【0114】
温度推定部102は、冷蔵室27Aが非冷却時(冷凍運転時)である場合に、制御部100から野菜室ヒータ120のON/OFFを示す情報と通電率を示す情報とのうち少なくとも一方を取得し、野菜室ヒータ120の使用状態(ON/OFFと通電率とのうち少なくとも一方)に基づき推定されたチルド室温度を補正する。
【0115】
第1の変形例を第1の実施形態に適用する場合には、野菜室ヒータ120の通電率が閾値以上であって冷蔵室27Aが非冷却時(冷凍運転時)である場合には、温度推定部102は、換算係数を増加させる。例えば、換算係数が2である場合は、これを2.5とする。つまり、野菜室ヒータ120の通電率が100%である場合は、冷蔵室27Aの温度上昇1℃に対して、チルド室27AAは、2℃ではなく2.5℃上昇するとして、チルド室温度の推定を行う。換算係数「2.5」は、第6補正値の一例である。
【0116】
また、冷蔵室27Aの冷却時(冷蔵運転時)に、野菜室ヒータ120の使用状態に基づいて、推定されたチルド室温度を補正してもよい。この場合、野菜室ヒータ120の通電率が閾値以上であって冷蔵室27Aが冷却時(冷蔵運転時)である場合には、温度推定部102は、換算係数を減少させる。例えば、換算係数が2である場合は、これを1.8とする。つまり、野菜室ヒータ120の通電率が100%である場合は、冷蔵室27Aの温度減少1℃に対して、チルド室27AAは、2℃ではなく1.8℃温度減少するとして、チルド室温度の推定を行う。換算係数「1.8」は、第5補正値の一例である。
【0117】
第2の変形例を第2の実施形態に適用する場合には、野菜室ヒータ120の通電率が閾値以上であって冷蔵室27Aが非冷却時(冷凍運転時)である場合には、温度推定部102は、「差分値の増加率」を増加させる。例えば、「差分値の増加率」が0.16である場合は、これを0.2とする。つまり、野菜室ヒータ120の通電率が100%である場合は、1分あたりに、冷蔵室温度とチルド室温度の差分値は、1分あたり0.2増加するものとして、計算を行う。差分値の増加率「0.2」は、第6補正値の一例である。
【0118】
また、第2の変形例を第2の実施形態に適用する場合にも、冷蔵室27Aの冷却時(冷蔵運転時)に、野菜室ヒータ120の使用状態に基づいて、推定されたチルド室温度を補正してもよい。この場合、野菜室ヒータ120の通電率が閾値以上であって冷蔵室27Aが冷却時(冷蔵運転時)である場合には、温度推定部102は、「差分値の増加率」を減少させる。例えば、「差分値の増加率」が0.16である場合は、これを0.144とする。差分値の増加率「0.144」は、第5補正値の一例である。
【0119】
本実施形態によれば、温度推定部102は、ヒータ(例えば、野菜室ヒータ120)の使用状態に基づいて推定温度を補正する。この構成によれば、野菜室ヒータ120によってチルド室温度が影響を受ける時であっても、チルド室温度をより正確に推定することができる。
【0120】
本実施形態によれば、温度推定部102は、冷却部15が第1冷却能力で冷蔵室27Aおよびチルド室27AAを冷却する場合に、ヒータ(例えば、野菜室ヒータ120)の使用状態に基づいて推定温度を補正しない、またはヒータの使用状態と第5補正値とに基づいて推定温度を補正し、または冷蔵室27Aおよびチルド室27AAに対する冷却部15による冷却が停止中または第1冷却能力よりも低い第2冷却能力で冷蔵室27Aおよびチルド室27AAを冷却する場合に、ヒータの使用状態と、冷却部15が第1冷却能力で冷却する場合と比べて補正量が大きくなる第6補正値とに基づいて推定温度を補正する。この構成によれば、チルド室温度が野菜室ヒータ120の加熱によって影響を受けやすい冷蔵室の非冷却時(冷凍運転時)に推定温度の補正を行うか、またはより大きく推定温度の補正を行うのでので、チルド室温度をより正確に推定することができる。
【0121】
(第1の実施形態と第2の実施形態の第2の変形例)
次に、第2の変形例について説明する。第2の変形例では、温度推定部102がチルド室温度の推定を行う場合は、制御部100は冷却器温度センサ41aによって検出される冷蔵用冷却器41の温度が所定温度範囲となるように冷却部15を制御して冷却を行う点で、第1および第2の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0122】
図12は、第2の変形例の冷蔵庫1Bの制御部100を示すブロック図である。図示されるように、冷蔵庫1Bの制御部100には、冷蔵用冷却器41の温度を検出する冷却器温度センサ41aが接続されている。
【0123】
制御部100は、例えば、冷却器温度センサ41aによって検出される冷蔵用冷却器41の温度を所定温度範囲内に含まれるように圧縮機49を制御して冷却を行うことにより、冷蔵用冷却器41の温度の違いに起因するチルド室温度の推定誤差を抑制することができる。制御部100は、例えば、温度推定部102によりチルド室温度を推定する場合、冷却器温度が-15℃~-20℃となるように冷却部15を制御して冷却を行う。
【0124】
本実施形態によれば、制御部100は、冷却部15により冷蔵室27Aおよびチルド室27AAを冷却する場合であって温度推定部102によるチルド室温度の推定温度の推定が持続されている場合、冷却器温度センサ41aにより検出される冷蔵用冷却器41の温度が所定温度範囲内に含まれるようにして冷却部15により第1貯蔵部および前記第2貯蔵部を冷却する。この構成によれば、冷蔵用冷却器41の温度の変化に起因するチルド室温度の推定誤差を抑制することができる。
【0125】
(第1の実施形態と第2の実施形態の第3の変形例)
次に、第3の変形例について説明する。第3の変形例では、温度推定部102がチルド室温度の推定を行う場合は、冷蔵用ファン43の回転数が所定回転数範囲となるように冷却部15を制御して冷却を行う点で、第1および第2の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0126】
冷蔵用ファン43の回転数により、第1貯蔵室内の温度分布が変化する。そこで、制御部100は、例えば、冷蔵用ファン43の回転数を所定回転数範囲に含まれるように冷蔵用ファン43を制御して冷却を行うことにより、冷蔵用ファン43の回転数の違いに起因するチルド室温度の推定誤差を抑制することができる。制御部100は、例えば、温度推定部102によりチルド室温度を推定する場合、冷蔵用ファン43の回転数が-1400~1700rpmとなるように冷却部15を制御して冷却を行う。
【0127】
本実施形態によれば、制御部100は、冷却部15により冷蔵室27Aおよびチルド室27AAを冷却する場合であって温度推定部102によるチルド室温度の推定温度の推定が持続される間、冷蔵用ファン43の回転数が所定回転数範囲に含まれるようにして冷却部15により冷蔵室27Aおよびチルド室27AAを冷却する。この構成によれば、冷蔵用ファン43の回転数の変化に起因するチルド室温度の推定誤差を抑制することができる。
【0128】
(第1の実施形態と第2の実施形態の第4の変形例)
次に、第4の変形例について説明する。第4の変形例では、冷蔵室扉11Aa,11Abが閉じられている時に、温度推定部102がチルド室温度の推定を行う点で、第1および第2の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0129】
第4の変形例では、少なくとも冷蔵室扉11Aa,11Abのいずれか1つを開いている時には、温度推定部102はチルド室温度の推定温度を推定しない。これによって、冷蔵室扉11Aa,11Abを開いている時における、冷蔵室温度センサ110の検出温度の一時的な上昇に起因するチルド室温度の推定誤差を抑制できる。
【0130】
本実施形態によれば、温度推定部102は、冷蔵室扉11Aa,11Abが閉じられた状態で、チルド室温度の推定温度を推定する。この構成によれば、冷蔵室扉11Aa,11Abを開いたことに起因するチルド室温度の推定誤差を抑制することができる。
【0131】
例えば、温度推定部102は、冷蔵室扉11Aa,11Abが閉じられてから所定時間が経過した後に、チルド室温度の推定温度を推定する。「所定時間」は、冷蔵用ファン43の運転により冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの空気温度が安定する時間であり、例えば1分間である。
【0132】
(第1の実施形態と第2の実施形態の第5の変形例)
次に、第4の変形例について説明する。第4の変形例の冷蔵庫1Cは、チルド室27AAに2段式のトレイが配置された点が、第1の実施形態と第2の実施形態の冷蔵庫1と異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1、第2の実施形態と同様である。
【0133】
図13は、冷蔵庫1Cの断面図である。第4の変形例の冷蔵庫1Cにおいては、チルド室上面仕切部320とチルド室蓋330とによって冷蔵室27Aから区画されたチルド室27AAに、チルド室容器13Aとして出し入れ可能に設けられた上段チルドケース300と下段チルドケース310とが備えられている。
【0134】
上段チルドケース300は、例えば、底部300a、後壁300b、前壁300c、左右の側壁(左側壁300dのみ図示)を有し、上方が開放された椀状に形成されている。底部300aは、水平に延びて、上段チルドケース300の内部(収容空間)と、下段チルドケース310の内部(収容空間)との間に位置する。後壁300bは、底部300aの後端部から起立している。後壁300bは、底部300a、前壁300c、および左右の側壁と比べて、チルド室冷気吹出口31bに近い壁部である。前壁300cは、底部300aの前端部から起立している。左右の側壁は、底部300aの左右の端部から起立している。下段チルドケース310も、説明は省略するが同様に構成されている。
【0135】
チルド室冷気吹出口31bは、上段チルドケース300の後壁300bの後方に設けられている。例えば、チルド室冷気吹出口31bは、冷蔵庫1Cの上下方向において、上段チルドケース300の底部300aに対して、下段チルドケース310とは反対側に位置する。
【0136】
図示されるように、冷蔵用ファン43から取り込まれて冷蔵用冷却器41で冷却された冷気は、チルド室冷気吹出口31bから、第1温度でチルド室27AAの上段チルドケース300の後壁300b近くに吹き出す。上段チルドケース300を冷却した冷気の一部は、上段チルドケース300の食品などの貯蔵物を冷却し、貯蔵物との熱交換により温度が上昇する。その後、冷気は、チルド室蓋330に沿って流れ、第1温度より高い第2温度で下段チルドケース310に流入し、下段チルドケース310の貯蔵物を冷却する。そして、冷気は、冷蔵用ファン43に吸引されて野菜室27Bの背後を通り、冷気戻り口31cから冷蔵用冷却器41に戻る。
【0137】
このような二段式の2段式のトレイが配置されたチルド室27AAにおいては、上段チルドケース300と下段チルドケース310とに温度差をつけることができる。つまり、上段チルドケース300を下段チルドケース310よりも低温に保つことができる。これにより、肉や魚介類などの解凍状態で保存すると傷みやすい食品を上段チルドケース300に保存し、凍らせずに保存しておきたい生鮮食品は、下段チルドケース310に保存するといったように、食品の種類によって、上段チルドケース300と下段チルドケース310とを使い分けることができる。
【0138】
温度推定部102は、上段チルドケース300と下段チルドケース310とのいずれか1つの空気温度をチルド室温度として推定することができる。この場合、導出したいチルド室温度と冷蔵室温度との間の関係を反映した換算係数や差分値の増加率を用いて、上記実施形態に説明した方法で推定を行うことができる。または、基準となるチルド室温度を上記実施形態に説明した方法で推定し、推定した基準となるチルド室温度に対して、上段チルドケース300と下段チルドケース310との間の推定温度差を加減算することにより、導出したいチルド室温度を得ることができる。
【0139】
また、チルド室冷気吹出口31bは、上段チルドケース300の後方に設けられることに代えて、下段チルドケース310の後方に設けられてもよい。この場合、チルド室冷気吹出口31bは、冷蔵庫1の上下方向において、上段チルドケース300の底部300aに対して、上段チルドケース300とは反対側に位置する。この場合、下段チルドケース310を上段チルドケース300よりも低温に保つことができる。
【0140】
以上、いくつかの実施形態および変形例について説明したが、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、実施形態および変形例は、互いに組み合わせて実現可能である。例えば、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて実行し、所定のルールでどちらか一方の推定値を採用してもよい。また上述した説明のなかで「第1…」、「第2…」などの序数詞は説明の便宜上のものであり、適宜振り直されてよい。
【0141】
以上説明した少なくともひとつの実施形態において、制御部は、温度推定部により推定された推定温度に基づいて、第2貯蔵部を第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、第2貯蔵部を第1温度帯よりも高い第2温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返すように冷却部を制御可能である。このような構成によれば、コスト低減を図ることができる。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0143】
1…冷蔵庫、10…筐体、11(11Aa、11Ab、11Ab、11B、11C、11D、11E)…扉、15…冷却部、27A…冷蔵室(第1貯蔵部)、27AA…チルド室(第2貯蔵部)、100…制御部、102…温度推定部、110…冷蔵室温度センサ。
図1
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図13