(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】電子部品の封止体、及び電子部品の封止体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230302BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230302BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230302BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019101328
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2019-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 亮
【合議体】
【審判長】杉江 渉
【審判官】藤井 勲
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-151900(JP,A)
【文献】特開2007-315483(JP,A)
【文献】特開2015-206005(JP,A)
【文献】特開平05-129476(JP,A)
【文献】特開2002-363383(JP,A)
【文献】特開2018-019067(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136253(WO,A1)
【文献】特開2018-174243(JP,A)
【文献】特開2016-021490(JP,A)
【文献】特表2007-5070108(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073809(WO,A1)
【文献】特開2019-021757(JP,A)
【文献】国際公開第2014/027673(WO,A1)
【文献】特開2007-287937(JP,A)
【文献】特許第6504302(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
H01L 23/28- 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を有し、
前記電子部品は、熱可塑性樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含むインサート成形用樹脂組成物により前記電子部品の表面上に
直接、形成された電磁波シールド層を含む樹脂成形物により封止されており、
前記熱可塑性樹脂はポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリウレタン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記電子部品の表面に垂直な方向における前記樹脂成形物の断面において、前記電子部品の表面に近い方の領域における200μm四方当りの前記電磁波シールド性フィラーの個数A(個/40,000μm
2)は、前記樹脂成形物の表面に近い方の領域における200μm四方当りの前記電磁波シールド性フィラーの個数B(個/40,000μm
2)の1.05倍以上である電子部品の封止体。
【請求項2】
前記インサート成形用樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂を含む請求項
1に記載の電子部品の封止体。
【請求項3】
前記電磁波シールド性フィラーは、導電性フィラーである請求項
1または
2に記載の電子部品の封止体。
【請求項4】
前記電磁波シールド性フィラーは、アスペクト比が1.5以上である請求項
1~
3のいずれかに記載の電子部品の封止体。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、及びポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項
2に記載の電子部品の封止体。
【請求項6】
射出成形機内にて樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含む第1の樹脂組成物
を溶融状態になるように加熱して5時間以上静置する工程、及び
前記第1の樹脂組成物を用いて、電子部品の表面上に電磁波シールド層を
直接、形成するインサート成形を行う工程を含み、
前記樹脂は、熱可塑性樹脂、又は不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、及びポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂である電子部品の封止体の製造方法。
【請求項7】
樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含む第1の樹脂組成物を用いて、電子部品の表面上に電磁波シールド層を
直接、形成するインサート成形を行う工程
、及び
樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含み、前記第1の樹脂組成物よりも電磁波シールド性フィラーの濃度が低いものである第2の樹脂組成物を用いて、前記電磁波シールド層の上に保護層を形成するインサート成形を行う工程を含み、
前記樹脂は、熱可塑性樹脂、又は不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、及びポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂である電子部品の封止体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形用樹脂組成物、及び電子部品の封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話等の電子機器には、半導体素子、コンデンサー、コイル等の電子部品が基板に取り付けられた電子部品搭載基板が用いられている。このような電子部品は、水、湿気、埃等の外部環境因子から悪影響を受けることがあるため、外部環境因子から保護するために電子部品は樹脂により封止されていた。更に、電磁波の悪影響から電子部品を保護するために、電磁波シールド性を封止材に付与する場合があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板と、基板の一方の面側に搭載された電子部品とを備える電子部品搭載基板を封止するのに用いられ、絶縁層と、絶縁層の一方の面側に積層された電磁波シールド層とを備える封止用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の封止用フィルムにより封止された電子部品搭載基板は、電磁波シールド層が封止部の表面側に形成されており、外部環境因子との接触によって電磁波シールド層が劣化するおそれがあった。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、電磁波シールド層の外部環境因子に対する耐久性に優れる電子部品の封止体、及びその電磁波シールド層を得るための樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできた本発明に係るインサート成形用樹脂組成物、及び電子部品の封止体は、以下の構成からなる。
[1]樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含むインサート成形用樹脂組成物。
[2]電子部品を有し、上記電子部品は、上記[1]に記載のインサート成形用樹脂組成物により上記電子部品の表面上に直接、形成された電磁波シールド層を含む樹脂成形物により封止されており、上記電子部品の表面に垂直な方向における上記樹脂成形物の断面において、上記電子部品の表面に近い方の領域における200μm四方当りの上記電磁波シールド性フィラーの個数A(個/40,000μm2)は、上記樹脂成形物の表面に近い方の領域における200μm四方当りの上記電磁波シールド性フィラーの個数B(個/40,000μm2)よりも多いものである電子部品の封止体。
[3]上記樹脂は、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である上記[2]に記載の電子部品の封止体。
[4]上記電磁波シールド性フィラーは、導電性フィラーである上記[2]または[3]に記載の電子部品の封止体。
[5]上記電磁波シールド性フィラーは、アスペクト比が1.5以上である上記[2]~[4]のいずれかに記載の電子部品の封止体。
[6]上記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリウレタン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である上記[3]に記載の電子部品の封止体。
[7]上記熱硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、及びポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である上記[3]に記載の電子部品の封止体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば上記構成により、電磁波シールド層の外部環境因子に対する耐久性に優れる電子部品の封止体、及びその電磁波シールド層を得るための樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電子部品の封止体の断面図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係る電子部品の封止体の断面図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態に係る電子部品の封止体の断面図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態に係る電子部品の封止体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
本発明の電子部品の封止体は、電子部品が、樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含むインサート成形用樹脂組成物により電子部品の表面上に直接、形成された電磁波シールド層を含む樹脂成形物により封止されており、電子部品の表面に垂直な方向における樹脂成形物の断面において、電子部品の表面に近い方の領域(以下では内部領域と呼ぶ場合がある)における200μm四方当りの電磁波シールド性フィラーの個数A(個/40,000μm2)が、樹脂成形物の表面に近い方の領域(以下では外部領域と呼ぶ場合がある)における200μm四方当りの電磁波シールド性フィラーの個数B(個/40,000μm2)よりも多いものである。本発明者が鋭意検討を行った結果、電磁波シールド層において外部環境因子の影響により劣化し易いのは外部領域における電磁波シールド性フィラーであることが分かった。そこで、樹脂成形物の内部領域よりも外部領域の電磁波シールド性フィラーの個数密度を小さくすることにより、電磁波シールド層の外部環境因子による劣化を防止し易くできることを見出した。
【0011】
更に本発明の電子部品の封止体は、インサート成形用樹脂組成物を用いて電子部品の表面上に直接、電磁波シールド層が形成されている。即ち、上記特許文献1に開示されているような電子部品と電磁波シールド層の間の絶縁層を省略することにより、封止部の厚さや重さを低減し易くすることができる。その結果、例えば封止部の軽量化やコンパクト化の要望が多い電子部品の封止において、封止部の厚さや重さが増大し過ぎない程度に電磁波シールド層の保護層等を外側に設けることができる。
【0012】
以下では
図1~4を参照して、本発明の第1~4の実施形態に係る電子部品の封止体について説明する。なお、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る電子部品の封止体の、電子部品の表面に垂直な方向における断面図である。
【0014】
図1に示す通り、電子部品の封止体10は、電子部品1を有するものである。電子部品1は、基板3上に取り付けられており、電子部品1の表面上に直接、電磁波シールド層2aが形成されている。更に、電磁波シールド層2aの表面には、保護層2bが形成されている。このように電子部品1は、電磁波シールド層2aと保護層2bとを含む樹脂成形物2により封止されている。なお電子部品1は後記する第4実施形態に係る電子部品の封止体のように基板3上に取り付けられていなくともよい。
【0015】
電子部品1としては、トランジスタ等の半導体素子、コンデンサー、コイル、抵抗器等が挙げられる。電子部品1の導電部分や半導体部分等が樹脂や金属によりパッケージされている場合は、電子部品1の表面はパッケージの表面に相当するものとする。
【0016】
電磁波シールド層2aは、樹脂成形物2中において、上記電子部品1の表面に近い方の領域(内部領域)に位置しており、樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含むインサート成形用樹脂組成物により形成されている。上記内部領域は、電子部品1の表面と、樹脂成形物2の表面との中間に位置する仮想面よりも電子部品1の表面側に位置する領域であるとも言える。
【0017】
保護層2bは、樹脂成形物2中において、上記樹脂成形物2の表面に近い方の領域(外部領域)に位置しており、樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含むインサート成形用樹脂組成物により形成されている。上記外部領域は、電子部品1の表面と、樹脂成形物2の表面との中間に位置する仮想面よりも樹脂成形物2の表面側に位置する領域であるとも言える。また、保護層2bの電磁波シールド性フィラーの含量は、電磁波シールド層2aの電磁波シールド性フィラーの含量よりも少なくなっている。
【0018】
即ち、内部領域における200μm四方当りの電磁波シールド性フィラーの個数A(個/40,000μm2)は、外部領域における200μm四方当りの電磁波シールド性フィラーの個数B(個/40,000μm2)よりも多くなっている。これにより、電磁波シールド層2aで電磁波をシールドしつつ、保護層2bにより電磁波シールド層2aを外部環境因子から保護することができる。更に、保護層2bにも電磁波シールド性フィラーを含有させることにより、樹脂成形物2の電磁波シールド性を向上させることもできる。具体的には、個数A(個/40,000μm2)は、個数B(個/40,000μm2)の1.01倍以上であることが好ましく、1.03倍以上であることがより好ましく、1.05倍以上であることが更に好ましく、1.1倍以上であることが特に好ましい。一方、個数A(個/40,000μm2)は、個数B(個/40,000μm2)の10倍以下であることが好ましい。これにより、例えば熱膨張時の歪み等が低減され易くなる。そのため個数A(個/40,000μm2)は、個数B(個/40,000μm2)の5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることが更に好ましい。なお保護層2bには、電磁波シールド性フィラーを含有させなくともよい。電磁波シールド性フィラーの個数は、電子顕微鏡等を用いて公知の方法により測定することができる。更に電磁波シールド性フィラーの個数をカウントするに当たっては、長径が0.5μm未満のフィラーは電磁波シールド性が微弱なものであるためカウントしないものとする。
【0019】
内部領域における200μm四方(40,000μm2)当りの電磁波シールド性フィラーの総面積A(μm2)は、外部領域における200μm四方(40,000μm2)当りの電磁波シールド性フィラーの総面積B(μm2)よりも大きいものであることが好ましい。樹脂成形物の内部領域よりも外部領域の電磁波シールド性フィラーの総面積を小さくすることにより、電磁波シールド層の外部環境因子による劣化を防止し易くできる。
【0020】
総面積A(μm2)は、総面積B(μm2)の1.01倍以上であることが好ましく、1.03倍以上であることがより好ましく、1.05倍以上であることが更に好ましく、1.1倍以上であることが特に好ましい。一方、総面積A(μm2)は、総面積B(μm2)の10倍以下であることが好ましい。これにより、例えば熱膨張時の歪み等が低減され易くなる。そのため総面積A(μm2)は、総面積B(μm2)の5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることが更に好ましい。
【0021】
上記内部領域における200μm四方の領域は、電子部品1の表面から1.0mm以内の領域中から選択されることが好ましく、500μm以内の領域中から選択されることがより好ましい。一方、上記外部領域における200μm四方の領域は、樹脂成形物2の表面から1.0mm以内の領域中から選択されることが好ましく、500μm以内の領域中から選択されることがより好ましい。
【0022】
上記内部領域における200μm四方の領域は、電子部品1の表面に垂直な方向における樹脂成形物2の断面の高さに対して、電子部品1の表面から10%以内の領域中から選択されることが好ましく、5%以内の領域中から選択されることがより好ましい。一方、上記外部領域における200μm四方の領域は、樹脂成形物2の表面から10%以内の領域中から選択されることが好ましく、5%以内の領域中から選択されることが好ましい。
【0023】
電磁波シールド層2aに含まれる電磁波シールド性フィラーは、電磁波を反射、吸収等することにより電磁波シールド性を発揮することができる素材である。
【0024】
電磁波シールド性フィラーは、導電性フィラーであることが好ましい。導電性フィラーが導電性を有することにより、電磁波の反射損失を大きくしたり、電磁波の吸収損失を大きくしたりし易くすることができる。
【0025】
電磁波シールド性フィラーは、体積抵抗率が1Ω・cm以下であることが好ましい。これにより導電し易くなり、体積抵抗率が低い程、電磁波シールド性が発揮され易くなる。そのため、体積抵抗率は10-3Ω・cm以下であることがより好ましく、10-5Ω・cm以下であることがより好ましく、10-6Ω・cm以下であることが更により好ましく、10-7Ω・cm以下であることが特に好ましい。
【0026】
電磁波シールド性フィラーとして、金属系フィラー、金属化合物系フィラー、カーボン系フィラーが挙げられる。また、電磁波シールド性フィラーとして、導電性を有する磁性体系フィラー、ガラスビーズや繊維等を金属等で被覆した金属メッキ体を用いてもよい。更に、金属系フィラー、金属化合物系フィラー、カーボン系フィラー、磁性体系フィラー、ガラスビーズや繊維等をシリカ等で被覆したものを用いてもよい。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
金属系フィラーとして、アルミニウム、亜鉛、鉄、銀、銅、ニッケル、ステンレス、パラジウム等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
金属化合物系フィラーとして、酸化亜鉛系、硫酸バリウム系、ホウ酸アルミ系、酸化チタン系、チタンブラック系、酸化錫系、酸化インジウム系、チタン酸カリウム系、チタン酸ジルコン酸鉛系等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
カーボン系フィラーとして、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
磁性体系フィラーは、磁性を帯びる事が可能なものであり、電磁波を吸収して低減することができる。磁性フィラーとして、具体的には、Mnフェライト、Niフェライト、Znフェライト、Baフェライト、Srフェライト、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト等のフェライト系フィラー;鉄-アルミニウム-ケイ素合金等のケイ素原子含有鉄系フィラー;ニッケル-マンガン-鉄合金、ニッケル-モリブデン-銅-鉄合金、ニッケル-モリブデン-マンガン-鉄合金等のニッケル-鉄系合金系フィラー;鉄-コバルト系合金系フィラー;ネオジム-鉄-ホウ素合金系フィラー等が挙げられる。これらのうちフェロ磁性やフェリ磁性を示す強磁性体が好ましい。
【0031】
その他、電磁波シールド性フィラーとして、導電性を有さない磁性体系フィラーが挙げられる。
【0032】
電磁波シールド性フィラーの形状は特に限定されないが、球状フィラー、針状フィラー、棒状フィラー、繊維状フィラー、扁平状フィラー、鱗片状フィラー、及び板状フィラーよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。このうち、針状フィラー、棒状フィラー、繊維状フィラー、扁平状フィラー、鱗片状フィラー、及び板状フィラーよりなる群から選択される少なくとも1種は、導電性を向上しやすいためより好ましい。また、球状フィラーを用いると応力集中の偏在を低減でき、更に熱膨張時の歪みも低減され易くなる。そのため、針状フィラー、棒状フィラー、繊維状フィラー、扁平状フィラー、鱗片状フィラー、及び板状フィラーよりなる群から選択される少なくとも1種と、球状フィラーとの組み合わせが、電磁波シールド性のみならず耐熱性等が求められる場合に有効である。
【0033】
電磁波シールド性フィラーは、アスペクト比が1.5以上であることが好ましい。電磁波シールド性フィラーのアスペクト比が1.5以上であることにより、電磁波シールド性が向上し易くなる。そのため電磁波シールド性フィラーのアスペクト比は、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更により好ましくは10以上である。一方、アスペクト比が60以下であることにより、応力集中の偏在や、熱膨張時の歪みが低減され易くなる。そのため、アスペクト比は60以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましい。
【0034】
電磁波シールド層2aは、アスペクト比が1.5以上の電磁波シールド性フィラーと、アスペクト比が1.5未満の電磁波シールド性フィラーとを含んでいてもよい。この場合、アスペクト比が1.5未満の電磁波シールド性フィラーに対する、アスペクト比が1.5以上の電磁波シールド性フィラーの個数割合は、10%以上、90%以下であることが好ましい。個数割合が10%以上であることにより、導電性が向上し易くなる。そのため、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。一方、個数割合が90%以下であることにより、応力集中の偏在や、熱膨張時の歪みが低減され易くなる。そのため、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。
【0035】
電磁波シールド性フィラーは、長径が0.5μm以上であることが好ましい。長径が0.5μm以上であることにより、電磁波シールド性が向上し易くなる。そのため電磁波シールド性フィラーの長径は、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは2.0μm以上、更により好ましくは5.0μm以上である。一方、電磁波シールド性フィラーの長径の上限は特に限定されないが、例えば、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。
【0036】
電磁波シールド層2aは、長径が0.5μm以上の電磁波シールド性フィラーと、長径が0.5μm未満の電磁波シールド性フィラーとを含んでいてもよい。この場合、長径が0.5μm未満の電磁波シールド性フィラーに対する、長径が0.5μm以上の電磁波シールド性フィラーの個数割合は、10%以上、90%以下であることが好ましい。個数割合が10%以上であることにより、導電性が向上し易くなる。そのため、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。一方、個数割合が90%以下であることにより、応力集中の偏在や、熱膨張時の歪みが低減され易くなる。そのため、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。
【0037】
電磁波シールド層2a中、電磁波シールド性フィラーの含量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、1000質量部以下である。電磁波シールド性フィラーの割合が3質量部以上であることにより、電磁波シールド性が向上し易くなる。そのため、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更により好ましくは15質量部以上である。一方、電磁波シールド性フィラーの割合が1000質量部以下であることにより、電磁波シールド層2aの接着性が向上し易くなる。そのため、より好ましくは800質量部以下、更に好ましくは300質量部以下、更により好ましくは100質量部以下である。
【0038】
電磁波シールド層2aに含まれる樹脂としては、後記する本発明のインサート成形用樹脂組成物に含まれる樹脂の記載を参照すればよい。
【0039】
保護層2bに含まれる電磁波シールド性フィラーの素材、形状、アスペクト比、長径等は、上記電磁波シールド層2aに含まれる電磁波シールド性フィラーを参照することができる。
【0040】
保護層2b中、電磁波シールド性フィラーの含量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、950質量部以下である。電磁波シールド性フィラーの割合が1質量部以上であることにより、保護層2bにおける電磁波シールド性が向上し易くなる。そのため、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更により好ましくは10質量部以上である。一方、電磁波シールド性フィラーの割合が950質量部以下であることにより、保護層2bの接着性が向上し易くなる。そのため、より好ましくは750質量部以下、更に好ましくは250質量部以下、更により好ましくは90質量部以下である。なお保護層2bは、電磁波シールド性フィラーを含んでいなくともよい。
【0041】
保護層2bに含まれる樹脂は、後記する本発明のインサート成形用樹脂組成物の説明の欄に記載の樹脂を参照すればよい。なお、電磁波シールド層2aに含まれる樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。
【0042】
樹脂成形物2の外形は特に限定されず、必要に応じて凹部や凸部を設けてもよい。樹脂成形物2中の電磁波シールド層2aは1層に限らず、2層以上であってもよい。また樹脂成形物2中の保護層2bは1層に限らず、2層以上であってもよい。
【0043】
樹脂成形物2による電子部品1の封止は、例えば以下の方法により行うことができる。まず基板3に取り付けられた電子部品1に対して、樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含む成形用樹脂組成物を用いてインサート成形することにより電磁波シールド層2aを形成する。更に電磁波シールド性フィラーの含量が低い成形用樹脂組成物を用いてインサート成形することにより保護層2bを形成する。このようにして樹脂成形物2により電子部品1を封止することができる。
【0044】
基板3としては、樹脂製の基板、ガラスエポキシ基板、スズメッキ銅基板、ニッケルメッキ銅基板、SUS基板、アルミ基板等が挙げられる。樹脂製の基板としては、絶縁性樹脂により形成される基板であることが好ましい。
【0045】
次に
図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る電子部品の封止体について説明する。
図2は、第2実施形態に係る電子部品の封止体の、電子部品の表面に垂直な方向における断面図である。
【0046】
図2に示す通り、電子部品の封止体20内の電子部品1は、電子部品1の表面上に直接、電磁波シールド層2aが形成されている。更に、電子部品1の取付け部4とは反対側の電磁波シールド層2aの表面(以下では、上部表面と呼ぶ場合がある)に保護層2bが設けられている。このように電磁波シールド層2aの表面の一部に保護層2bが形成されていてもよい。電磁波シールド層2aの上部表面は、特に外部環境因子の影響を受けやすいため、少なくとも電磁波シールド層2aの上部表面が保護層2bにより保護されていることが好ましい。
【0047】
次に
図3を参照して、本発明の第3実施形態に係る電子部品の封止体について説明する。
図3は、第3実施形態に係る電子部品の封止体の、電子部品の表面に垂直な方向における断面図である。
【0048】
図3に示す通り、電子部品の封止体30内の電子部品1は、電子部品1の表面上に直接、電磁波シールド層2aが形成されている。
【0049】
電磁波シールド層2a中、電子部品1の表面と、樹脂成形物2(電磁波シールド層2a)の表面との中間に位置する仮想面よりも電子部品1の表面側に位置する領域(内部領域)の方が、上記仮想面よりも樹脂成形物2(電磁波シールド層2a)の表面側に位置する(外部領域)よりも、電磁波シールド性フィラーの含量が大きくなっている。具体的には、電磁波シールド層2a中において、内部側に向かって電磁波シールド性フィラーの含量が高くなるように濃度傾斜構造が形成されている。これにより、電磁波シールド層2aの内部側では電磁波シールド性が高く、電磁波シールド層2aの外部側では電磁波シールド性フィラーの含量が少ないため外部環境因子との接触による劣化が防止され易くなる。
【0050】
濃度傾斜構造は、例えばインサート成形において、射出成形機内にて可塑化状態(溶融状態)で長時間静置し、次いで当該状態で射出成形すること等により形成することができる。上記静置の時間は、例えば5時間以上である。
【0051】
次に
図4を参照して、本発明の第4実施形態に係る電子部品の封止体について説明する。
図4は、第4実施形態に係る電子部品の封止体の、電子部品の表面に垂直な方向における断面図である。
【0052】
図4に示す通り、電子部品の封止体40内の電子部品1は、電子部品1の表面上に直接、電磁波シールド層2aが形成されている。更に、電磁波シールド層2aの表面には、保護層2bが形成されている。このように電子部品1は、電磁波シールド層2aと保護層2bとを含む樹脂成形物2により封止されている。電子部品の封止体40のように、電子部品1は基板上に取り付けられていなくともよい。
【0053】
本発明には、これらの電子部品の封止体の電磁波シールド層を得るための樹脂組成物も含まれる。具体的には本発明の樹脂組成物は、樹脂と電磁波シールド性フィラーとを含むインサート成形用樹脂組成物である。
【0054】
インサート成形用樹脂組成物に含まれる電磁波シールド性フィラーとしては、第1実施形態に係る電子部品の封止体の電磁波シールド層2aに含まれる電磁波シールド性フィラーを参照することができる。
【0055】
インサート成形用樹脂組成物に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0056】
熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリウレタン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのうちポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0057】
ポリエステル系樹脂として、カルボン酸成分と水酸基成分とを反応させて形成されるものが挙げられる。カルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。水酸基成分として、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-ドデカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販品として、例えば東洋紡社製の結晶性ポリエステル樹脂 GM-950、GM-955、GM-960等が挙げられる。
【0058】
ポリエステル系樹脂として、ポリアルキレングリコール成分を含むポリエステルが好ましい。具体的には、主としてポリエステルセグメントを含むハードセグメントと、主としてポリアルキレングリコール成分を含むソフトセグメントとがエステル結合されたものが好ましい。
【0059】
ハードセグメントはポリエステル系樹脂全体に対して、20重量%以上、80重量%以下含有されることが好ましく、30重量%以上、70重量%以下含有されることがより好ましい。
【0060】
ハードセグメント中のポリエステルセグメントは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールとの重縮合により形成されるポリエステルが主成分であることが好ましい。主成分とは、ポリエステルセグメント中、80重量%以上含まれていることを意味し、より好ましくは90重量%以上である。
【0061】
芳香族ジカルボン酸は、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸が耐熱性を向上できるため好ましく、テレフタル酸および/又はナフタレンジカルボン酸であることがグリコールと反応し易いためより好ましい。
【0062】
脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールは、好ましくは炭素数2~10のアルキレングリコール類であり、より好ましくは炭素数2~8のアルキレングリコール類である。脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールは全グリコール成分の50モル%以上の割合で含まれることが好ましく、70モル%以上の割合で含まれることがより好ましい。グリコール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が好ましく、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールがポリエステルの耐熱性を向上し易いため、より好ましい。
【0063】
ソフトセグメントは、ポリエステル系樹脂全体に対して20重量%以上、80重量%以下含有されることが好ましく、30重量%以上、70重量%以下含有されることがより好ましい。
【0064】
ソフトセグメント中のポリアルキレングリコール成分は、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等であることが好ましく、柔軟性向上、低溶融粘度化できる面でポリテトラメチレングリコールであることがより好ましい。
【0065】
ソフトセグメントは、主としてポリアルキレングリコール成分からなることが好ましい。ソフトセグメントの共重合比率はポリエステル系樹脂を構成するグリコール成分全体を100モル%としたとき1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましく、20モル%以上であることが特に好ましい。これにより溶融粘度が高くなり低圧で封止し易くすることができる。一方、90モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることが更に好ましく、45モル%以下であることが特に好ましい。これにより耐熱性が向上し易くなる。
【0066】
ソフトセグメントの数平均分子量は、400以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましい。これにより柔軟性を付与し易くすることができる。一方、ソフトセグメントの数平均分子量は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。これにより、他の共重合成分との共重合し易くすることができる。
【0067】
ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、3,000以上であることが好ましく、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは7,000以上である。これにより、樹脂組成物の耐加水分解性や高温高湿下での強伸度を向上し易くすることができる。一方、上限は好ましくは60,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは40,000以下である。溶融粘度を低減し易くなり、成形圧力を低減できる。
【0068】
ポリエステル系樹脂の融点は、好ましくは70℃以上、210℃以下、より好ましくは100℃以上、190℃以下である。
【0069】
ポリアミド系樹脂として、分子中にアミド結合を有する樹脂が挙げられる。ポリアミド系樹脂として、具体的には、ダイマー酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族、脂環式および/またはポリエーテルジアミンの反応生成物が好ましい。具体的には、50~98モル%のダイマー脂肪酸、2~50モル%のC6~C24脂肪族ジカルボン酸、0~10モル%のC14~C22モノカルボン酸、0~40モル%のポリエーテルジアミンおよび60~100モル%の脂肪族ジアミンを含むものであることがより好ましい。市販品として、例えばボスティック社製のTHERMELT 866、867、869、858等が挙げられる。
【0070】
ポリオレフィン系樹脂として、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単重合体もしくは共重合体;これらのオレフィン類と共重合可能な単量体成分との共重合体;またはこれらの無水マレイン酸変性物等が挙げられる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
ポリカーボネート系樹脂として、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られるものが挙げられる。多官能ヒドロキシ化合物として、置換基を有していてもよい4,4'-ジヒドロキシビフェニル類、置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類等が挙げられる。炭酸エステル形成性化合物としては、ホスゲンなどの各種ジハロゲン化カルボニルや、クロロホーメート等のハロホーメート、ビスアリールカーボネート等の炭酸エステル化合物が挙げられる。
【0072】
ポリウレタン系樹脂として、水酸基成分(プレポリマー)と、イソシアネート化合物(硬化剤)を反応させて形成されるものが挙げられる。水酸基成分は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリアルキレンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。イソシアネート化合物は、トリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びキシリレンジイソシアネート(XDI)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
熱硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、及びポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのうちウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、又はエポキシ系樹脂がより好ましい。
【0074】
エポキシ系樹脂として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、あるいはこれらの誘導体からのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールおよびその誘導体からのビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノールおよびその誘導体からのビフェノール型エポキシ樹脂、あるいはナフタレンおよびその誘導体からのナフタレン型エポキシ樹脂、さらにはノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の分子量の目安であるエポキシ当量は174~16000g/eqのものが好ましい。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ系樹脂として、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートとして、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂にアクリル酸またはメタクリル酸を付加反応させて得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。またエポキシ(メタ)アクリレートをラジカル重合性単量体及び/又はラジカル重合性多量体に溶解したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂であってもよい。
【0075】
フェノール系樹脂は、フェノール残基を構成単位とする種々の樹脂が使用でき、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、p-アルキルフェノール、クロルフェノール、ビスフェノールA、フェノールスルホン酸、レゾルシン、各種変性フェノール等のフェノール性水酸基を有するフェノール類と、ホルマリン、フルフラール等のアルデヒド類を反応させて形成した樹脂が挙げられる。
【0076】
不飽和ポリエステル系樹脂は、酸成分とアルコール成分を反応させて形成される。酸成分として、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和の多塩基酸又はその無水物、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。アルコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールA-C2-4アルキレンオキシド等の芳香族ジオールが挙げられる。
【0077】
ジアリルフタレート系樹脂は、例えばジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルオルソフタレート等のジアリルフタレートモノマーから得られる樹脂等が挙げられる。
【0078】
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂は、例えば一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種とジイソシアネートとを反応させて得られた化合物の分子末端のイソシアネート、および/または一分子中にイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基にアルコール性水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。その他に、アルコール性水酸基と(メタ)アクリレート基を有する化合物とジイソシアネートとをイソシアネート基が残るように反応させて残ったイソシアネート基と、一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種とを反応させて得られる分子末端に(メタ)アクリレート基の二重結合を有する化合物をウレタン(メタ)アクリレート系樹脂として用いることができる。
【0079】
ポリイミド系樹脂は、分子主鎖中にイミド結合を有する樹脂であり、例えば、芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートと芳香族テトラカルボン酸との縮合重合体、芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとビスマレイミドとの付加重合体であるビスマレイミド樹脂、アミノ安息香酸ヒドラジドとビスマレイミドとの付加重合体であるポリアミノビスマレイミド樹脂、及びジシアネート化合物とビスマレイミド樹脂とからなるビスマレイミドトリアジン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0080】
インサート成形用樹脂組成物は、樹脂と電磁波シールド性フィラーの他、樹脂成形物の特性を損なわない範囲で、射出成型等で通常用いられる各種添加剤を添加することができる。添加剤として、難燃剤、可塑剤、離型剤、加水分解抑制剤、充填剤、酸化防止剤、熱老化防止剤、銅害防止剤、帯電防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 電子部品
2 樹脂成形物
2a 電磁波シールド層
2b 保護層
3 基板
4 取付け部
10 第1実施形態に係る電子部品の封止体
20 第2実施形態に係る電子部品の封止体
30 第3実施形態に係る電子部品の封止体
40 第4実施形態に係る電子部品の封止体