(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
B66B5/02 R
B66B5/02 E
(21)【出願番号】P 2019111771
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】山形 光生
(72)【発明者】
【氏名】篠島 隆司
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山下 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 実
(72)【発明者】
【氏名】楢崎 聡之
(72)【発明者】
【氏名】福岡 康平
(72)【発明者】
【氏名】長岡 勉
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/098656(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/072344(WO,A1)
【文献】特開2012-056681(JP,A)
【文献】特開2014-156757(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082650(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/048991(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0020978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内が水平方向に並ぶ複数の区画に防火区画され、その複数の区画に備えられる複数の一般用エレベータを制御するエレベータ制御装置であって、
複数の前記区画は、複数の前記区画の夫々に前記一般用エレベータが設置されるように区画され、
複数の前記一般用エレベータの運転を制御する運転制御部と、建物内の火災状況を示す火災情報を取得する情報取得部と、が備えられ、
前記運転制御部は、前記情報取得部にて取得された前記火災情報に基づいて
、複数の前記区画のうち、火災が発生している火災区画
及びそれに隣接する隣接区画を含む運転休止区画を設定し、
前記火災区画に存在する前記一般用エレベータと前記隣接区画に存在する前記一般用エレベータとの双方の運転を休止するように前記運転休止区画に存在する前記一般用エレベータの運転を休止するとともに、前記運転休止区画以外の運転継続区画に存在する前記一般用エレベータの運転を許容する火災時管制運転制御を実行し、
前記運転制御部は、前記火災時管制運転制御の実行中に、前記情報取得部にて取得された前記火災情報に基づいて前記運転休止区画の設定を更新し、その更新で追加設定された前記運転休止区画に存在する前記一般用エレベータの運転を休止するエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記火災時管制運転制御が、建物内の複数の前記一般用エレベータの運転を停止してそれらのエレベータ籠を避難階に着床させる避難階着床処理を実行した後、前記運転休止区画に存在する前記一般用エレベータの運転を停止状態に維持して休止するとともに、前記運転継続区画に存在する前記一般用エレベータの運転を復旧して許容する制御である請求項
1記載のエレベータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の一般用エレベータを制御するエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非常用エレベータ以外の一般用エレベータの火災時管制運転制御では、火災が発生すると、建物内の全ての一般用エレベータの運転を停止してそれらのエレベータ籠を避難階に着床させる避難階着床処理を実行した後、全ての一般用エレベータの運転を停止状態に維持して休止するようにしている。そのため、一般用エレベータの運転休止後は、上階からの垂直避難は階段を用いるしかなく、歩行困難者等の避難安全性に課題があった。
ちなみに、非常用エレベータは、火災発生時に消防隊が消火・救出活動に使用できる特殊な構造のエレベータで、高さ31mを超える高層の建物に設置が義務付けられている。
【0003】
なお、特許文献1には、二基の非常用エレベータが備えられる高層の集合建物において、火災状況に応じて一方の非常用エレベータが消防用の用途に設定され、他方の非常用エレベータが避難用の用途に設定されて、建物利用者が避難用に使用することが記載されているが、この技術は複数の非常用エレベータを有する建物に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中低層で各階の床面積が広く設計されるショッピングセンター等の用途の建物では、建物の内部が水平方向に並ぶ複数の区画に防火区画され、その複数の区画に複数の一般用エレベータが備えられる場合が多い。
このような建物では、火災発生時に火災の影響を受けていない区画も広く存在するので、この火災の影響を受けていない区画に存在する一般用エレベータを有効に活用して建物利用者が避難できるようにすることが望まれる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、火災発生時において、建物内の火災の影響を受けていない区画に存在する一般用エレベータを有効に活用して建物利用者を円滑且つ安全に避難させることのできるエレベータ制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、建物内が水平方向に並ぶ複数の区画に防火区画され、その複数の区画に備えられる複数の一般用エレベータを制御するエレベータ制御装置であって、
複数の前記区画は、複数の前記区画の夫々に前記一般用エレベータが設置されるように区画され、
複数の前記一般用エレベータの運転を制御する運転制御部と、建物内の火災状況を示す火災情報を取得する情報取得部と、が備えられ、
前記運転制御部は、前記情報取得部にて取得された前記火災情報に基づいて、複数の前記区画のうち、火災が発生している火災区画及びそれに隣接する隣接区画を含む運転休止区画を設定し、前記火災区画に存在する前記一般用エレベータと前記隣接区画に存在する前記一般用エレベータとの双方の運転を休止するように前記運転休止区画に存在する前記一般用エレベータの運転を休止するとともに、前記運転休止区画以外の運転継続区画に存在する前記一般用エレベータの運転を許容する火災時管制運転制御を実行し、
前記運転制御部は、前記火災時管制運転制御の実行中に、前記情報取得部にて取得された前記火災情報に基づいて前記運転休止区画の設定を更新し、その更新で追加設定された前記運転休止区画に存在する前記一般用エレベータの運転を休止する点にある。
【0008】
本構成によれば、運転制御部は、火災発生時において、火災時管制運転制御を実行し、情報取得部にて取得された火災情報に基づいて、火災の影響を受けている火災区画を含む区画を運転休止区画に設定し、その運転休止区画に存在する一般用エレベータの運転を休止するとともに、運転休止区画以外の火災の影響を受けていない区画である運転継続区画に存在する一般用エレベータの運転を許容することができる。そのため、建物利用者は、火災発生時において、火災の影響を受けていない運転継続区画に存在する安全な一般用エレベータを使用して避難することができる。
【0009】
しかも、運転制御部は、火災時管制運転制御の実行中に、情報取得部にて取得される火災情報に基づいて運転休止区画の設定を更新し、その更新で追加設定された運転休止区画の一般用エレベータの運転を休止するので、時間経過に伴う火災の拡大に対応し、運転休止区画を随時拡大して一般用エレベータの運転を随時休止することができる。そのため、建物利用者が避難に使用できる一般用エレベータを適切に選定しながら、建物利用者が一般用エレベータを使用して避難できる状況をできるだけ長時間維持することができる。
よって、火災発生時において、建物内の火災の影響を受けていない区画に存在する一般用エレベータを有効に活用して建物利用者を円滑且つ安全に避難させることができる。
【0011】
また、火災時管制運転制御において、一般用エレベータの運転を休止する運転休止区画が火災区画及びそれに隣接する隣接区画を含むように設定されるので、より安全性の高い区画を運転継続区画とすることができ、建物利用者は、より安全性の高い一般用エレベータを使用して避難することができる。
【0012】
特に、前述の如く、運転制御部は、火災時管制運転制御において、火災情報に基づいて運転休止区画を逐次更新するので、火災の拡大によって運転継続区画が火災区画に隣接する隣接区画となった時点で、その区画が運転休止区画に設定されることになる。そのため、運転継続区画の外周縁に常に隣接区画(未だ火災が発生していない区画)を位置させる状態で運転継続区画に存在する一般用エレベータの運転を行わせることができ、建物利用者が一般用エレベータを使用して避難行動を行っている運転継続区画が急に火災区画となって当該一般用エレベータの使用安全性が大きく低下することを抑制することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記火災時管制運転制御が、建物内の複数の前記一般用エレベータの運転を停止してそれらのエレベータ籠を避難階に着床させる避難階着床処理を実行した後、前記運転休止区画に存在する前記一般用エレベータの運転を停止状態に維持して休止するとともに、前記運転継続区画に存在する前記一般用エレベータの運転を復旧して許容する制御である点にある。
【0014】
本構成によれば、運転制御部は、火災時管制運転制御において、運転休止区画に存在する一般用エレベータだけでなく、運転継続区画に存在する一般用エレベータについても、まず、運転を停止してそれらのエレベータ籠を避難階に着床させる避難階着床処理を実行する。そして、運転休止区画に存在する一般用エレベータの運転を停止状態に維持して休止するとともに、運転継続区画に存在する一般用エレベータの運転を復旧して許容する。
【0015】
そのため、初期の火災情報を取得した火災初期時点で、運転休止区画に存在する一般用エレベータを使用している建物利用者だけでなく、運転継続区画に存在する一般用エレベータを使用している建物使用者も迅速に避難階に避難させることができ、たとえ初期の火災情報(火災発生箇所等)に誤り等があっても、エレベータ籠内に閉じ込められる等で実際に火災の影響を受けている区画の一般用エレベータを使用中の建物利用者の避難が遅れるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】火災時管制運転制御による一般用エレベータの動作を示す図
【
図3】火災時管制運転制御による一般用エレベータの動作を示す図
【
図4】火災時管制運転制御による一般用エレベータの動作を示す図
【
図5】火災時管制運転制御の制御フローを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のエレベータ制御装置が設置された建物の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、
図1~
図4において、開放状態の防火区画手段3を破線で表し、閉鎖状態の防火区画手段3を実線で表している。また、電力供給状態にない耐火ケーブル9Aを破線で表し、電力供給状態にある耐火ケーブル9Aを実線で表している。更に、運転中の一般用エレベータ4を白抜きで表し、運転が停止されて避難階Rに着床している一般用エレベータ4をグレーで表示している。
【0018】
図1に示すように、この建物1は、例えば、ショッピングセンター等の各階の床面積が広い中低層(図示例では4階建て)の建物として構成される。建物1内が水平方向に並ぶ複数の区画2に防火区画手段3にて防火区画され、その複数の区画2の夫々に一般用エレベータ4が設置される。各区画2は、一般用エレベータ4の昇降路7を含む複数階に亘る領域となっている。図示例では、各区画2の境界が、各階で水平方向の同じ位置となる一直線状の態様となっているが、各階の利用形態等に応じて各階で水平方向の異なる位置となる凹凸状等の各種の態様で構成される。建物利用者は、床面積の広い各階において、所望の区画2に存在する一般用エレベータ4を利用して建物1内を容易に移動することができる。ちなみに、一般用エレベータ4とは別に、火災発生時に消防隊が使用する非常用エレベータが設置されてもよい。
【0019】
建物内の各区画2の各階の天井等には、火災を検知可能な火災検知器5が設置される。火災検知器5は、例えば、火災による熱や煙を検知して火災信号等の火災情報を防災センタ等に設置される防災盤(図示省略)や後述するエレベータ制御装置6等に出力自在に構成される。この火災情報には、建物内での火災の発生を示す代表情報と、火災の発生している火災区画2aやその火災区画2a中の火災が発生している火災階等の火災発生箇所を示す個別情報とが含まれる。
【0020】
防火区画手段3は、少なくとも火災発生時に建物1内の区画2どうしの間を避難上支障なく閉鎖自在に構成される。防火区画手段3は、防火・防煙シャッターや建物1の壁体や床スラブ等を用いて構成することができ、例えば、火災検知器5の検知作動等に連動して、火災が発生している火災区画2a(
図2、
図3参照)とそれに隣接する隣接区画2b(
図2、
図3参照)との間を自動的に閉鎖するように構成される。
【0021】
一般用エレベータ4は、例えば、建物1内の各階に亘る昇降路7内に配置されるエレベータ籠4A、ロープを用いて当該エレベータ籠4Aを上昇及び下降させる巻上機等の駆動装置4B、当該駆動装置4Bやエレベータ籠4Aの戸の開閉装置(図示省略)等を制御する個別制御盤4C等を備えて構成される。個別制御盤4Cは、個別の一般用エレベータ4に対する操作(呼び出し操作や行き先指定操作)に基づいて駆動装置4Bやエレベータ籠4Aの戸の開閉装置(図示省略)等を制御して通常の個別の運転を行わせる通常時運転制御を実行する。駆動装置4Bや個別制御盤4Cは、建物1内における昇降路7に隣接する機械室8等に設置される。なお、駆動装置4Bは、ロープ式に限らず、油圧式等であってもよい。
【0022】
また、この建物1には、火災発生時に複数の一般用エレベータ4に駆動電力を供給自在な非常電源としての発電機9が備えられる。この発電機9は、外周面に耐火層を有する耐火ケーブル9Aにて複数の一般用エレベータ4に接続される。例えば、火災検知器5の検知作動等に連動して、複数の一般用エレベータ4の電力の供給元が常用電源(図示省略)から発電機9に切り換わるように構成される。
【0023】
建物1には、火災発生時に複数の一般用エレベータ4を制御するエレベータ制御装置6が備えられる。このエレベータ制御装置6には、複数の一般用エレベータ4の運転を制御する運転制御部6Aと、建物1内の火災状況を示す火災情報を火災検知器5や防災盤等から受け付けて取得する情報取得部6Bと、が備えられる。エレベータ制御装置6は、情報取得部6Bにより火災情報を取得して運転制御部6Aにより後述する火災時管制運転制御を実行することで、火災発生時に複数の一般用エレベータ4を制御する。なお、運転制御部6Aは、例えば、複数の一般用エレベータ4の個別制御盤4Cを制御することで、複数の一般用エレベータ4の運転を制御する。
【0024】
そして、この建物1では、複数の一般用エレベータ4の火災時管制運転制御において、火災情報に基づいて建物1内の火災の影響を受けていない区画2を逐次更新しながら、その時点で火災の影響を受けていない区画2に存在する一般用エレベータ4を個別に運転させて建物利用者の避難に利用できるようにしている。
以下、エレベータ制御装置6による火災時管制運転制御にて実行される複数の一般用エレベータ4の動作について、
図5のフローチャート、及び、
図2~
図4に基づいて説明する。なお、
図2及び
図3は、図中の左端の区画2にて火災が発生している状態を示し、
図4は、
図2及び
図3の状態から図中の左端から2番目の区画2に火災が拡大した状態を示している。
【0025】
図2に示すように、建物1内で火災が発生すると、情報取得部6Bにより火災情報が取得され(
図5のステップ♯01)、運転制御部6Aにより全ての一般用エレベータ4を対象にした避難階着床処理が実行される(
図5のステップ♯02)。この避難階着床処理により、全ての一般用エレベータ4は、その運転が停止(中止)され、予め設定された地上に通じる階等の避難階Rに移動されて避難階Rに着床し、エレベータ籠4Aの戸が開かれる。そのため、火災発生時に一般用エレベータ4を使用中の全ての建物利用者を避難階Rに移動させることができ、エレベータ籠4A内に閉じ込められる等で当該建物利用者の避難が遅れるのを回避することができる。
【0026】
次いで、
図3に示すように、運転制御部6Aにより、火災情報に基づいて一般用エレベータ4の運転を休止する運転休止区画Aが設定される(
図5のステップ♯03)。運転休止区画Aは、複数の区画2のうち、火災が発生している火災区画2a(
図3では左端の区画2)と、当該火災区画2aに隣接する隣接区画2b(
図3では左端から2番目の区画2)を含むように設定される。本実施形態では、火災区画2aと隣接区画2bとが運転休止区画Aに設定される。
【0027】
そして、運転制御部6Aにより、運転休止区画Aに存在する一般用エレベータ4の運転が停止状態に維持されて休止されるとともに、運転休止区画A以外の運転継続区画Bに存在する一般用エレベータ4の運転が復旧されて許容される(
図5のステップ♯04)。そのため、建物利用者は、運転が許容された運転継続区画Bに存在する安全な一般用エレベータ4を使用して避難することができる。
【0028】
図4に示すように、情報取得部6Bにより後続の火災情報が取得されると(
図5のステップ♯05)、運転制御部6Aにより、後続の火災情報に基づいて運転休止区画Aの設定が更新される(
図5のステップ♯06)。
図4では、火災の拡大により、
図3の時点で隣接区画2bであった区画2(図中の左端から2番目の区画2)が火災区画2aとなり、
図3の時点で火災区画2aの隣接区画2bではなかった区画2(図中の左端から3番目の区画2)が新たに隣接区画2bとなっている。この場合には、その新たに隣接区画2bとなった区画2が運転休止区画Aに追加設定される。
【0029】
そして、運転制御部6Aにより、追加設定された運転休止区画Aに存在する一般用エレベータ4を対象にして避難階着床処理が実行される(
図5のステップ♯07)。この避難階着床処理により、追加設定された運転休止区画Aに存在する一般用エレベータ4は、その運転が停止され、避難階Rに移動されて避難階Rに着床し、エレベータ籠4Aの戸が開かれる。そして、その一般用エレベータ4の運転が停止状態に維持される。
【0030】
そのため、火災の拡大で新たに隣接区画2bとなった区画2の一般用エレベータ4を使用中の建物利用者を避難階Rに移動させることができ、エレベータ籠4A内に閉じ込められる等で当該建物利用者の避難が遅れるのを回避することができる。
更に、未だ火災区画2a又は隣接区画2bになっていない運転継続区画Bに存在する一般用エレベータ4は通常の個別の運転が継続されるので、建物利用者はその一般用エレベータ4を使用して避難することができる。
【0031】
そして、このような火災情報の取得と運転休止区画Aの設定の更新が、火災時管制運転制御が解除されるまで逐次行われる(
図5のステップ♯8のno、ステップ♯5)。そのため、時間経過に伴う火災の拡大に対応し、運転継続区画Bの外周縁に常に隣接区画2b(未だ火災が発生していない区画2)を位置させる形態で安全性を確保しながら、建物利用者が一般用エレベータ4を使用して避難できる状況をできるだけ長時間維持することができ、一般用エレベータ4を有効に活用して建物利用者を円滑に避難させることができる。
【0032】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0033】
(1)上記実施形態では、運転休止区画Aが、複数の区画2のうち、火災区画2a及びそれに隣接する隣接区画2bを含むように設定される場合を例に示したが、建物1や防火区画手段3の防火性能等によっては、火災区画2aだけが運転休止区画Aに設定されてもよい。
【0034】
(2)上記実施形態では、火災時管制運転制御において、まず、建物内の全ての一般用エレベータ4を対象にして避難階着床処理が実行される場合を例に示したが、例えば、まず、火災情報に基づいて運転休止区画Aが設定され、運転休止区画A以外の運転継続区画Bに存在する一般用エレベータ4は対象にせず、運転休止区画Aに存在する一般用エレベータ4を対象にして避難階着床処理が実行されるようにしてもよい。
【0035】
(3)上記実施形態では、エレベータ制御装置6の情報取得部6Bが、建物1内に設置される火災検知器5や防災盤等から火災情報を取得する場合を例に示したが、建物1外の管理施設等から火災情報を取得するように構成されてもよい。
【0036】
(4)本発明は、上記実施形態は示したショッピングセンター等の大型の商業施設に限らず、各種用途の中低層の建物に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 建物
2 区画
2a 火災区画
2b 隣接区画
4 一般用エレベータ
4A エレベータ籠
6 エレベータ制御装置
6A 運転制御部
6B 情報取得部
A 運転休止区画
B 運転継続区画
R 避難階