(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】内面研削盤用砥石カバー装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/04 20060101AFI20230302BHJP
B24B 5/10 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B24B55/04 A
B24B5/10
(21)【出願番号】P 2019168220
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】加尾 卓也
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276032(JP,A)
【文献】実開昭62-92143(JP,U)
【文献】実開昭57-189754(JP,U)
【文献】特開2012-76212(JP,A)
【文献】特許第6481067(JP,B1)
【文献】特許第5909148(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/04
B24B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する主軸を支持する主軸台と、主軸台に対向するように配置されてワークの内面を研削する砥石を回転させる内面研削軸と、主軸台および内面研削軸を覆う全体カバーとを備えている内面研削盤に設けられて、砥石を覆う砥石カバー装置であって、主軸台と内面研削軸との間を仕切る固定カバーと、固定カバーに設けられた内面研削軸の進退を可能とする開口を開閉可能とする可動カバーと、可動カバーを開位置と閉位置とに移動させる移動装置とを備えていることを特徴とする内面研削盤用砥石カバー装置。
【請求項2】
可動カバーは、固定カバーに固定された上下に延びるガイドレールに沿って移動し、流体圧シリンダによって上下させられることを特徴とする請求項1の内面研削盤用砥石カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内面研削盤における砥石カバー装置に関し、特に、段取り換えを行う際の作業者を保護する内面研削盤用砥石カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内面研削盤には、特許文献1に示されているように、砥石を被覆するカバー位置と砥石を露出させる非カバー位置との間で移動させられる砥石カバーが設けられている。このような研削盤では、砥石カバーを非カバー位置に移動させた状態で研削を行い、研削終了時には、回転を続ける砥石をカバー位置に移動させた砥石カバーで覆い、段取り換えを行う作業者が砥石に接触することを防ぐようになっている。
【0003】
従来の内面研削盤用砥石カバー装置の一例を
図4および
図5に示す。
【0004】
内面研削盤(1)は、
図4に示すように、ワーク(W)を保持する主軸台(2)と、主軸台(2)に対向するように配置されて砥石(6)を回転させる内面研削軸(5)と、主軸台(2)および内面研削軸(5)を覆う全体カバー(7)と、全体カバー(7)に設けられた作業者出入り用の開口(7a)を開閉するドア(8)と、砥石(6)を覆う砥石カバー装置(30)とを備えている。
【0005】
砥石カバー装置(30)は、砥石(6)とともに砥石軸方向に移動させられる砥石カバー(31)と、砥石カバー(31)が砥石(6)を被覆するカバー位置と砥石(6)を露出させる非カバー位置の間で砥石カバー(31)を旋回させる砥石カバー旋回装置(32)とを備えている。
【0006】
図5(b)に示すように、カバー位置にある砥石カバー(31)は、砥石(6)の前方を覆う前壁(33)と、砥石(6)の上方を覆う上壁(34)と、砥石(6)の作業者出入り用の開口(7a)に近い側方を覆う左壁(35)とを有している。
【0007】
砥石カバー(31)は、砥石カバー旋回装置(32)の旋回アーム(32a)を旋回させることによって、
図5(a)に示す非カバー位置と
図5(b)に示すカバー位置との間で移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4および
図5に示す砥石カバー(31)は、ドア(8)を開いて段取り作業空間(S)に入った作業者が砥石(6)に接触することを防止するために設置されているもので、砥石(6)が破損したときに、砥石(6)の飛散を防ぐようにはなっていない。したがって、加工中の破損による砥石(6)の飛散は、全体カバー(7)によって防ぐことができるものの、段取り換え中の破損による砥石(6)の飛散を防ぐことはできない。そのため、砥石の回転を安全な回転数に落としてから段取り換えを行う必要があり、砥石の回転数を落とすには時間がかかるため、部品の製作時間の増大につながるという問題があった。
【0010】
この発明の目的は、段取り換え中の破損による砥石の飛散を防ぐことができる内面研削盤用砥石カバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による内面研削盤用砥石カバー装置は、ワークを保持する主軸を支持する主軸台と、主軸台に対向するように配置されてワークの内面を研削する砥石を回転させる内面研削軸と、主軸台および内面研削軸を覆う全体カバーとを備えている内面研削盤に設けられて、砥石を覆う砥石カバー装置であって、主軸台と内面研削軸との間を仕切る固定カバーと、固定カバーに設けられた内面研削軸の進退を可能とする開口を開閉可能とする可動カバーと、可動カバーを開位置と閉位置とに移動させる移動装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明の内面研削盤用砥石カバー装置によると、可動カバーを開位置にすることで、固定カバーに設けられた開口からの内面研削軸の進退が可能となるので、この状態で、内面研削軸を進退させることにより、砥石によるワークの内面研削を行うことができる。そして、研削終了時には、固定カバーに設けられた開口から内面研削軸を後退させ、さらに、可動カバーを閉位置にすることにより、作業者が段取り換えを行う空間と砥石とが固定カバーおよび可動カバーによって隔てられる。したがって、高速回転する砥石が破損した場合であっても、砥石の飛散を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の内面研削盤用砥石カバー装置によれば、可動カバーを開位置にすることで、砥石によるワークの内面研削を行うことができ、研削終了時には、可動カバーを閉位置にすることで、作業者が段取り換えを行う空間と砥石とが固定カバーおよび可動カバーによって隔てられる。したがって、高速回転する砥石が破損した場合であっても、砥石の飛散を防ぐことができ、段取り換えを行うために砥石の回転数を落とす必要がなくなり、部品の製作時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、この発明による内面研削盤用砥石カバー装置の1実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図2は、この発明による内面研削盤用砥石カバー装置の1実施形態の前寄りから見た斜視図であり、(a)は可動カバーが開位置にある状態、(b)は可動カバーが閉位置にある状態をそれぞれ示している。
【
図4】
図4は、従来の内面研削盤用砥石カバー装置を示す平面図である。
【
図5】
図5は、同斜視図であり、(a)は砥石カバーが非カバー位置にある状態、(b)は砥石カバーがカバー位置にある状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図3までを参照して、この発明の内面研削盤用砥石カバー装置の実施形態について説明する。以下の説明において、
図1の左側を前、同右側を後といい、左右については、後から前を見た場合の左右をいうものとする。
【0016】
内面研削盤(1)は、
図1に示すように、前後方向に延びる主軸(3)を支持する主軸台(2)と、主軸(3)の先端部に設けられてワーク(W)を保持するチャック(4)と、前後方向に延びる軸を有し、主軸台(2)に対向するように配置された内面研削軸(5)と、内面研削軸(5)に回転可能に支持されてワーク(W)の内面を研削する砥石(6)と、主軸台(2)および内面研削軸(5)を覆う全体カバー(7)と、全体カバー(7)に設けられた作業者出入り用の開口(7a)を開閉するドア(8)と、砥石(6)を覆うことができる内面研削盤用砥石カバー装置(9)とを備えている。
【0017】
内面研削が行われている間、ドア(8)は閉じられており、内面研削が終了すると、作業者は、ドア(8)を開いて、段取り作業空間(S)に入り、ワーク(W)の取出しや装着などを行う。砥石カバー装置(9)は、段取り作業空間(S)において段取り換えを行う作業者を回転する砥石(6)から保護する。
【0018】
砥石カバー装置(9)は、主軸台(2)と内面研削軸(5)との間を仕切る固定カバー(10)と、上下移動可能なように固定カバー(10)に取り付けられた可動カバー(11)と、可動カバー(11)を開位置と閉位置とに移動させる移動装置(12)とを備えている。
【0019】
固定カバー(10)は、左右両端が全体カバー(7)に固定されており、その左右の中央部の下側には、
図2に示すように、内面研削軸(5)の進退を可能とする開口(10a)が設けられている。可動カバー(11)は、
図2(a)に示す開口(10a)を開放する上位置と、
図2(b)に示す開口(10a)を閉鎖する下位置との間を移動可能とされている。
【0020】
可動カバー(11)は、前壁(13)、上壁(14)および左右壁(15)を有しており、左右壁(15)には、左右壁(15)に対して90°外側に折り曲げられた左右縁部(15a)が設けられている。左右壁(15)は、その後部が固定カバー(10)に設けられたガイド溝(16)に挿通され、左右縁部(15a)が後側から固定カバー(10)に間隙をおいて対向させられている。
【0021】
移動装置(12)は、固定カバー(10)の可動カバー(11)の左右縁部(15a)に対向する面に固定された上下に延びる左右のガイドレール(17)と、可動カバー(11)の左右縁部(15a)の固定カバー(10)に対向する面に固定されてガイドレール(17)に嵌め合わされた左右の上下1対のガイドブロック(18)と、固定カバー(10)の右端部に取り付けられて可動カバー(11)の右縁部(15a)下端部に固定されたブラケット(20)を上下移動させる流体圧シリンダ(19)とを備えている。
【0022】
流体圧シリンダ(19)によると、下方にのびるピストン(19a)の下端部がブラケット(20)に固定されており、ピストン(19a)を上方に移動させることにより、ブラケット(20)を介して可動カバー(11)を上位置(すなわち、開位置)と下位置(すなわち、閉位置)とに移動させることができる。
【0023】
固定カバー(10)および可動カバー(11)は、全体カバー(7)と同程度の強度を有する材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で形成される。したがって、可動カバー(11)が閉位置にある場合、作業者が段取り換えを行う段取り作業空間(S)は、強固なカバー(10)(11)によって、内面研削軸(5)が配置されている空間と分断される。
【0024】
上記の内面研削盤用砥石カバー装置(9)によると、
図2(a)に示すように、可動カバー(11)が開位置にある場合、固定カバー(10)に設けられた開口(10a)を通過させて、
図1に二点鎖線で示す位置まで内面研削軸(5)を前進させることにより、砥石(6)によるワーク(W)の内面研削を行うことができる。
【0025】
そして、研削終了時には、固定カバー(10)に設けられた開口(10a)を通過させて、
図1に実線で示す位置まで内面研削軸(5)を後退させるとともに、可動カバー(11)を
図2(b)に示す閉位置に移動させる。これにより、段取り作業空間(S)と砥石(6)とは、固定カバー(10)および可動カバー(11)によって隔てられる。したがって、高速回転する砥石(6)が破損した場合であっても、砥石(6)の飛散を防ぐことができ、段取り換えを行うために砥石(6)の回転数を落とす必要がなくなり、部品の製作時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0026】
(1):内面研削盤
(2):主軸台
(3):主軸
(5):内面研削軸
(6):砥石
(7):全体カバー
(9):内面研削盤用砥石カバー装置
(10):固定カバー
(10a):開口
(11):可動カバー
(12):移動装置
(17):ガイドレール
(18):ガイドブロック
(19):流体圧シリンダ
(W):ワーク