(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】HAPSのマルチフィーダリンクにおけるスペクトル拡散パイロット信号を用いた伝搬路応答測定及び干渉キャンセリング
(51)【国際特許分類】
H04B 1/7097 20110101AFI20230302BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20230302BHJP
H04B 7/185 20060101ALI20230302BHJP
H04B 7/204 20060101ALI20230302BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20230302BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20230302BHJP
【FI】
H04B1/7097
H04B7/06 152
H04B7/185
H04B7/204
H04W84/06
H04W16/28
(21)【出願番号】P 2019200260
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318002806
【氏名又は名称】HAPSモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-295569(JP,A)
【文献】特表2008-502210(JP,A)
【文献】特開2009-273175(JP,A)
【文献】藤井隆史 他,HAPSマルチゲートウェイフィーダリンクシステムにおけるリバースリンク対応送信干渉キャンセラーの検討,電子情報通信学会講演論文集,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年08月27日,通信ソサイエティ大会講演論文集1,第314頁
【文献】藤井隆史 他,HAPSシステムにおけるマルチゲートウェイを用いたフィーダリンクの周波数有効利用技術の検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年11月13日,Vol.118, No.311,第143-148頁
【文献】矢野一人 他,アダプティブアレーアンテナと干渉キャンセラの統合によるDS-CDMA方式の特性改善,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2000年07月11日,Vol.100, No.192,第29-34頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/7097
H04B 7/06
H04B 7/185
H04B 7/204
H04W 84/06
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む空中滞在型の通信中継装置を備えるシステムであって、
互いに時間同期され、前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、
前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で、前記フィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送受信する手段と、
前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いて前記拡散後の複数のパイロット信号をスペクトル逆拡散し、前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定する手段と、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応するウェイトを計算する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号に対し、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算又は加算する手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、
前記複数のゲートウェイ局は、前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を前記中継通信局に送信し、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、
前記複数のゲートウェイ局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、
前記複数のゲートウェイ局は、
前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置は、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果を前記中継通信局に送信し、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記いずれか一つのゲートウェイ局又前記共通装置から送信された前記複数の伝搬路応答の推定結果を受信し、
前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、
前記複数のゲートウェイ局は、
前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を前記中継通信局に送信し、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれから送信された前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を受信し、
前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、
前記複数のゲートウェイ局それぞれから受信した前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、
前記複数のゲートウェイ局は、
前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置は、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記ウェイトの計算結果を前記中継通信局に送信し、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記いずれか一つのゲートウェイ局又前記共通装置から送信された前記複数のウェイトの計算結果を受信し、
前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、
前記複数のゲートウェイ局は、前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を前記中継通信局に送信し、
前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、
前記複数のゲートウェイ局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記中継通信局は、前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、
前記複数のゲートウェイ局はそれぞれ、
前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記ゲートウェイ局で受信した受信信号に対し、前記他のゲートウェイ局で受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかのシステムにおいて、
前記複数の拡散符号は互いに直交し、
前記複数のパイロット信号は、同一周波数で送受信されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのシステムにおいて、
前記拡散後の複数のパイロット信号は、前記フィーダリンクの送信信号帯域の両隣に位置する複数のガードバンドに分散されて送受信されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかのシステムにおいて、
前記拡散後の複数のパイロット信号は、前記フィーダリンクの送信信号帯域内で送受信されることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかのシステムにおいて、
前記フィーダリンクの送信信号帯域の中心周波数又はその周辺の周波数において、前記複数の伝搬路応答を推定して前記複数のウェイトを計算する、ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局であって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記フィーダリンク通信部は、
前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局から受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記干渉抑圧部は、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算する、
ことを特徴とする中継通信局。
【請求項13】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局であって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記フィーダリンク通信部は、
前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局に送信し、
前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて推定した前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答の推定結果を受信し、
前記干渉抑圧部は、
前記いずれか一つのゲートウェイ局又は前記共通装置から受信した前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とする中継通信局。
【請求項14】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局であって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記フィーダリンク通信部は、
前記互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局に送信し、
前記複数のゲートウェイ局が前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を受信し、
前記干渉抑圧部は、
前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とする中継通信局。
【請求項15】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局であって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記フィーダリンク通信部は、
前記フィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局に送信し、
前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて記複数のゲートウェイ局それぞれについて計算した、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトの計算結果を受信し、
前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とする中継通信局。
【請求項16】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局であって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記フィーダリンク通信部は、
前記フィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局から受信し、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記干渉抑圧部は、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とする中継通信局。
【請求項17】
請求項12乃至16のいずれかの中継通信局を有することを特徴とする空中滞在型の通信中継装置。
【請求項18】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局であって、
前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期され、
前記フィーダリンクにおける前
記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信し、
前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信し、
自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果を前記中継通信局に送信する、
ことを特徴とするゲートウェイ局。
【請求項19】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局であって、
前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期され、
前記フィーダリンクにおける前
記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信し、
前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散し、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信し、
自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記
フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算する、
ことを特徴とするゲートウェイ局。
【請求項20】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局であって、
前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期され、
前記フィーダリンクにおける前
記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信し、
前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信し、
自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記中継通信局から自局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、
自局で受信した受信信号に対し、前記他のゲートウェイ局で受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する、
ことを特徴とするゲートウェイ局。
【請求項21】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法であって、
前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で、前記フィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した複数のパイロット信号を送受信することと、
前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いて前記拡散後の複数のパイロット信号をスペクトル逆拡散し、前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定することと、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対するウェイトを計算することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号に対し、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算又は加算することと、
を含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項22】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局から、前記
中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を受信するためのプログラムコードと、
前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散して逆拡散するためのプログラムコードと、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項23】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局に、前記
中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて推定した前記
フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答の推定結果を受信するためのプログラムコードと、
前記いずれか一つのゲートウェイ局又は前記共通装置から受信した前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項24】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局に、前記
中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局が前記拡散後のパイロット信号の受信信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を受信するためのプログラムコードと、
前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項25】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局に、前記
中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて前記フィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれについて計算した、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトの計算結果を受信するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項26】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
互いに時間同期された複数のゲートウェイ局から、前記
中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおける前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いて前記ゲートウェイ局がスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号を受信するためのプログラムコードと、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散するためのプログラムコードと、
前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号に対し、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項27】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期するためのプログラムコードと、
前記フィーダリンクにおける前
記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信するためのプログラムコードと、
前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散して逆拡散するためのプログラムコードと、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の複数の拡散符号に対応する受信側の複数の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、
自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果を前記中継通信局に送信するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項28】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期するためのプログラムコードと、
前記フィーダリンクにおける前
記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信するためのプログラムコードと、
前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散して逆拡散するためのプログラムコードと、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、
自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項29】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期するためのプログラムコードと、
前記フィーダリンクにおける前
記ゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するための複数のパイロット信号を符号系列が互いに異なる互いに直交する複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信するためのプログラムコードと、
前記中継通信局から送信された前記拡散後のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信した受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、
前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散して逆拡散するためのプログラムコードと、
前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号を用いてスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、
自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記中継通信局から自局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、
自局で受信した受信信号に対し、前記他のゲートウェイ局で受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元化ネットワークの構築に適したHAPS等の空中浮揚型の無線中継装置のマルチフィーダリンクにおける伝搬路応答測定及び干渉キャンセリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この空中浮揚型の通信中継装置における通信回線は、その通信中継装置と移動通信網側のゲートウェイ(GW)局との間のフィーダリンクと、通信中継装置と端末装置との間のサービスリンクとで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0046387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記空中浮揚型の通信中継装置(以下「上空中継装置」という。)のサービスリンクの通信容量はその中継周波数であるフィーダリンクの通信容量に依存するため、フィーダリンクの周波数有効利用は必要不可欠である。そのため、地上のGW局を互いに離れた場所に複数設置し、それぞれのGW局から同一周波数で異なるフィーダリンク信号を送受信するマルチフィーダリンクを形成する方式が考えられる。しかし、上空中継装置は固定局と異なり所定の空域内を飛び回るので、上空中継装置と複数のGW局と間の同一周波数のマルチフィーダリンクにおいて動的な干渉が発生するおそれがあり、このマルチフィーダリンクにおける動的な干渉の抑制を簡易な構成で実現したいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るシステムは、端末装置の無線通信を中継する中継通信局を含む空中滞在型の通信中継装置を備えるシステムである。このシステムは、互いに時間同期され、前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で、互いに直交する複数の拡散符号を用いてスペクトル拡散した複数のパイロット信号を送受信する手段と、前記複数のパイロット信号をスペクトル逆拡散した受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の伝搬路応答を推定する手段と、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算する手段と、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算する手段と、を備える。
【0006】
前記システムにおいて、前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、前記複数のゲートウェイ局は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を前記中継通信局に送信し、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記複数のゲートウェイ局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算してもよい。
【0007】
前記システムにおいて、前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、前記複数のゲートウェイ局は、前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置は、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記伝搬路応答の推定結果を前記中継通信局に送信し、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記いずれか一つのゲートウェイ局又前記共通装置から送信された前記複数の伝搬路応答を受信し、前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算してもよい。
【0008】
前記システムにおいて、前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、前記複数のゲートウェイ局は、前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を前記中継通信局に送信し、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれから送信された前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を受信し、前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれから受信した前記複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算してもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、前記複数のゲートウェイ局は、前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置は、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記ウェイトの計算結果を前記中継通信局に送信し、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記いずれか一つのゲートウェイ局又前記共通装置から送信された前記複数のウェイトの計算結果を受信し、前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算してもよい。
【0010】
前記システムにおいて、前記中継通信局は、前記複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備え、前記複数のゲートウェイ局は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を前記中継通信局に送信し、前記中継通信局の前記フィーダリンク通信部は、前記複数のゲートウェイ局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記中継通信局の前記干渉抑圧部は、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算してもよい。
【0011】
前記システムにおいて、前記中継通信局は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信し、前記複数のゲートウェイ局は、前記中継通信局から前記拡散後の複数のパイロット信号を受信し、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記ゲートウェイ局で受信した受信信号から、前記他のゲートウェイ局で受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算してもよい。
【0012】
本発明の他の態様に係る中継通信局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局である。この中継通信局は、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備える。前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数類の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局から受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記干渉抑圧部は、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算する。
【0013】
本発明の更に他の態様に係る中継通信局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局である。この中継通信局は、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備える。前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局に送信し、前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて推定した前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答の推定結果を受信する。前記干渉抑圧部は、前記いずれか一つのゲートウェイ局又は前記共通装置から受信した前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する。
【0014】
本発明の更に他の態様に係る中継通信局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局である。この中継通信局は、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備える。前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局に送信し、前記複数のゲートウェイ局が前記拡散後のパイロット信号の受信信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を受信する。前記干渉抑圧部は、前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る中継通信局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局である。この中継通信局は、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備える。前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局に送信し、前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれについて計算した、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトの計算結果を受信する。前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する。
【0016】
本発明の更に他の態様に係る中継通信局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局である。この中継通信局は、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備える。前記フィーダリンク通信部は、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号を、前記複数のゲートウェイ局から受信し、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散する。前記干渉抑圧部は、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る空中滞在型の通信中継装置は、前記いずれかの中継通信局を有する。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るゲートウェイ局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局である。このゲートウェイ局は、前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期され、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信し、前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信し、自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記伝搬路応答の推定結果を前記中継通信局に送信する。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るゲートウェイ局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局である。このゲートウェイ局は、前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期され、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信し、前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信し、自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算する。
【0020】
本発明の更に他の態様に係るゲートウェイ局は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局である。このゲートウェイ局は、前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期され、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信し、前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信し、自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記中継通信局から自局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算し、自局で受信した受信信号から、前記他のゲートウェイ局で受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算する。
【0021】
本発明の更に他の態様に係る干渉抑圧方法は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法である。この干渉抑圧方法は、前記中継通信局と前記複数のゲートウェイ局との間で、互いに直交する複数の拡散符号を用いてスペクトル拡散した複数のパイロット信号を送受信することと、前記複数のパイロット信号をスペクトル逆拡散した受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の伝搬路応答を推定することと、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算することと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームを介して送受信される信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算することと、を含む。
【0022】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局から、互いに直交する複数類の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を受信するためのプログラムコードと、前記拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散するためのプログラムコードと、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数のウェイトを計算するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号から、他のゲートウェイ局に対応する指向性ビームで受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて減算するためのプログラムコードと、を含む。
【0023】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局に、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて推定した前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答の推定結果を受信するためのプログラムコードと、前記いずれか一つのゲートウェイ局又は前記共通装置から受信した前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、を含む。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局に、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局が前記拡散後のパイロット信号の受信信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を受信するためのプログラムコードと、前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記ゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、を含む。
【0025】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局に、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を送信するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局のいずれか一つのゲートウェイ局又は各ゲートウェイ局に共通の共通装置が前記拡散後の複数のパイロット信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて前記複数のゲートウェイ局それぞれについて計算した、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトの計算結果を受信するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、を含む。
【0026】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局から、複数のゲートウェイ局それぞれが互いに異なる送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号を受信するためのプログラムコードと、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散するためのプログラムコードと、前記スペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における前記複数のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記ゲートウェイ局に送信する送信信号から、他のゲートウェイ局に送信する送信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、を含む。
【0027】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期するためのプログラムコードと、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信するためのプログラムコードと、前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散するためのプログラムコードと、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定し、前記伝搬路応答の推定結果を前記中継通信局に送信するためのプログラムコードと、
を含む
【0028】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期するためのプログラムコードと、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信するためのプログラムコードと、前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散するためのプログラムコードと、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数の伝搬路応答の推定結果に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記中継通信局から前記ゲートウェイ局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、を含む。
【0029】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継する中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するゲートウェイ局に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて前記同一周波数で中継信号を送受信する他のゲートウェイ局と時間同期するためのプログラムコードと、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散した拡散後の複数のパイロット信号を、前記中継通信局から受信するためのプログラムコードと、前記中継通信局から送信された前記拡散後のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信した受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、前記拡散後のパイロット信号の受信信号を、前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散するためのプログラムコードと、前記拡散後の複数のパイロット信号を前記他のゲートウェイ局が受信して前記送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散した逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果を、前記他のゲートウェイ局から受信するためのプログラムコードと、自局及び前記他のゲートウェイ局の前記逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における自局及び前記他のゲートウェイ局と前記通信中継装置のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数の伝搬路応答に基づいて、前記中継通信局から自局に送信した送信信号が他のゲートウェイ局で受信されて干渉する干渉信号を抑圧するためのウェイトを計算するためのプログラムコードと、自局で受信した受信信号から、前記他のゲートウェイ局で受信した受信信号に前記他のゲートウェイ局に対応する前記ウェイトを掛けて加算又は減算するためのプログラムコードと、を含む。
【0030】
前記システム、前記中継通信局、前記空中滞在型の通信中継装置、前記ゲートウェイ局、前記干渉抑圧方法、前記フィーダリンク通信方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の拡散符号は互いに直交し、前記複数のパイロット信号は、同一周波数で送受信してもよい。
また、前記複数のパイロット信号は、前記フィーダリンクの送信信号帯域の両隣に位置する複数のガードバンドに分散して送受信してもよい。
また、前記複数のパイロット信号は、前記フィーダリンクの送信信号帯域内で送受信してもよい。
また、前記フィーダリンクの送信信号帯域の中心周波数又はその周辺の周波数において、前記複数の伝搬路応答を推定して前記複数のウェイトを計算してもよい。
前記複数のウェイトはそれぞれ、前記伝搬路応答の行列を用いたZF(Zero-Forcing)法又はMMSE(Minimum Mean Square Error)法により計算してもよい。
【0031】
前記複数のゲートウェイ局はそれぞれ、前記空中滞在型の通信中継装置を追尾するようにフィーダリンク用アンテナを制御するアンテナ制御部を備えてもよい。
【0032】
前記空中滞在型の通信中継装置は、前記複数のゲートウェイ局それぞれに対応する複数の指向性ビームを有するフィーダリンク用アンテナと、前記複数のビームがそれぞれ対応するゲートウェイ局の方向に向くように前記フィーダリンク用アンテナを制御するアンテナ制御部と、を備えてもよい。
前記フィーダリンク用アンテナは、互いに異なる方向に指向性ビームを有する複数のフィーダリンク用アンテナであり、前記アンテナ制御部は、前記複数のフィーダリンク用アンテナの指向性ビームがそれぞれ対応するゲートウェイ局の方向に向くように、前記複数のフィーダリンク用アンテナそれぞれを機械的に制御してもよい。
前記フィーダリンク用アンテナは、鉛直方向の仮想軸を中心とした任意の外方向に向けて前記複数の指向性ビームを形成可能なアレイアンテナであり、前記アンテナ制御部は、前記複数の指向性ビームがそれぞれ対応するゲートウェイ局の方向に向くように、前記アレイアンテナの複数のアンテナ素子に対する送受信信号の振幅及び位相を制御することを特徴とするシステム。
前記フィーダリンク用アンテナは、互いに異なる方向を中心とした所定の角度範囲に指向性ビームを形成可能な複数のアレイアンテナであり、前記アンテナ制御部は、前記複数のアレイアンテナの指向性ビームがそれぞれ対応するゲートウェイ局の方向に向くように、各アレイアンテナの複数のアンテナ素子に対する送受信信号の振幅及び位相の制御と前記複数のアレイアンテナの切替制御とを選択的に行ってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、空中浮揚型の通信中継装置と複数のゲートウェイ局との間の同一周波数のマルチフィーダリンクにおける干渉の動的な抑圧に用いる複数のパイロット信号として狭帯域のパイロット信号を用いる必要がないため、狭帯域のパイロット信号を送信するための高安定度の発信周波数回路を送信側に設ける必要なく、狭帯域のパイロット信号を受信側で分離する狭帯域受信フィルターが不要になる。よって、空中浮揚型の通信中継装置と複数のゲートウェイ局との間のマルチフィーダリンクにおける干渉の動的な抑制を簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムにおけるHAPSのセル構成の一例を示す説明図。
【
図2】(a)は実施形態に係る複数GWシステムの概略構成の一例を示す側面図。(b)はHAPSの複数のフィーダリンク用アンテナと複数のGW局との関係を上方から見た説明図。
【
図3】実施形態に係る複数のGW局のGWアンテナがHAPSを追尾する様子の一例を示す説明図。
【
図4】実施形態に係るHAPSの複数のFLアンテナの指向性ビームの一例を示す説明図。
【
図5】実施形態に係るHAPSにおけるFLアンテナの指向性ビーム制御の一例を示す説明図。
【
図6】実施形態に係るHAPSにおけるFLアンテナの指向性ビーム制御の他の例を示す説明図。
【
図7】実施形態に係るHAPSにおけるFLアンテナの指向性ビーム制御の更に他の例を示す説明図。
【
図8】複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク干渉の一例の説明図。
【
図9】複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のリバースリンク干渉の一例の説明図。
【
図10】ウェイトWを近似式で求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図。
【
図11】実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるHAPS側(受信側)に設けたフォワードリンクの干渉キャンセラー部の概略構成の一例を示す説明図。
【
図12】ZF法によりウェイトWを求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図。
【
図13】各GW局から送信される上り回線の送信信号帯域における狭帯域のパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図14】HAPSで受信された上り回線の受信信号帯域における狭帯域のパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図15】伝搬路応答の導出に用いられる狭帯域のパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図16】フィーダリンクの伝搬路応答の導出モデルの一例を示す説明図。
【
図17】実施形態に係るGW局から送信される上り回線の送信信号帯域におけるスペクトル拡散されたパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図18】実施形態に係るHAPSで受信された上り回線の受信信号帯域におけるスペクトル拡散されたパイロット信号の一例を示す説明図。
【
図19】実施形態に係るHAPSで受信されてフィルターで分離された逆拡散前のパイロット信号群の一例を示す説明図。
【
図20】実施形態に係る逆拡散後のパイロット信号群の一例を示す説明図。
【
図21】(a)は、GW局の送信機の一例を示す機能ブロック図。(b)はGW局の送信機から送信される送信信号における希望信号(S
i)及びスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号(C
iS
pi)の一例を示すスペクトル図。
【
図22】(a)は、HAPSの中継通信局の受信機の一例を示す機能ブロック図。(b)はHAPSの中継通信局の受信機で受信される受信信号における希望信号(S
i)及びスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号(C
iS
pi)の一例を示すスペクトル図。
【
図23】実施形態に係るHAPSの中継通信局の主要構成の一例を示す説明図。
【
図24】実施形態に係るGW局から送信される上り回線の送信信号帯域におけるスペクトル拡散されたパイロット信号の他の例を示す説明図。
【
図25】(a)は、他の実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるGW局側(受信側)に設けたリバースリンクの干渉キャンセラー部の概略構成の一例を示す説明図。(b)は送信信号Sと受信信号Yとの関係を示す説明図。
【
図26】(a)は、更に他の実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるHAPS20側(送信側)に設けたリバースリンクの干渉キャンセラー部の概略構成の一例を示す説明図。(b)は送信信号Sと受信信号Yとの関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムにおけるHAPS20のセル構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又はその後の世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。また、本明細書に開示する通信システム、無線中継局、基地局、リピータ及び端末装置に適用可能な移動通信の標準規格は、第5世代の移動通信の標準規格、及び、第5世代以降の次々世代の移動通信の標準規格を含む。
【0036】
図1に示すように、通信システムは、複数の空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)20を備えている。HAPS20は、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域に3次元セル(3次元エリア)を形成する。HAPS20は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体としての飛行船に、中継通信局21が搭載されたものである。
【0037】
HAPS20の位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0038】
本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPSで3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、HAPS20が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。
【0039】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、HAPS20で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置する端末装置61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0040】
HAPS20の中継通信局はそれぞれ、サービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」という。)215により、移動局である端末装置61と無線通信するための複数のビームを地面に向けて形成する。端末装置61は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンに組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域においてビームが通過する領域が3次元セルである。セル形成目標空域において互いに隣り合う複数のビームは部分的に重なってもよい。
【0041】
HAPS20の中継通信局21はそれぞれ、例えば、地上(又は海上)側のコアネットワークに接続された中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局、又は、地上(又は海上)側の基地局に接続された中継局としてのフィーダ局(リピータ親機)70と無線通信するリピータ子機である。
【0042】
HAPS20の中継通信局21は、フィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」という。)211により無線通信可能な地上又は海上に設置されたフィーダ局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS20とフィーダ局70との間のフィーダリンクの通信は、マイクロ波又はミリ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0043】
HAPS20はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS20はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。
【0044】
また、HAPS20それぞれの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理は、移動通信網の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)によって制御できるようにしてもよい。管理装置は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS20は、管理装置からの制御情報を受信したり管理装置に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置8ら識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0045】
また、HAPS20はそれぞれ、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理に関する情報、HAPS20の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS20の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS20の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS20の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0046】
中継通信局21と端末装置61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局21と端末装置61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0047】
なお、以下の実施形態では、端末装置61と無線通信する中継通信局21を有する通信中継装置が、無人飛行船タイプのHAPS20の場合について図示して説明するが、通信中継装置はソーラープレーンタイプのHAPSであってもよい。また、以下の実施形態は、HAPS以外の他の空中浮揚型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0048】
また、HAPS20とフィーダ局としてのゲートウェイ局(以下「GW局」と略す。)70を介した基地局90との間のリンクを「フィーダリンク」といい、HAPS10と端末装置61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、HAPS20とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS20を経由して端末装置61に向かう通信のダウンリンクを「フォワードリンク」といい、端末装置61からHAPS20を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」ともいう。
【0049】
図1において、通信中継装置は無人飛行船タイプのHAPS20であるが、ソーラープレーンタイプのHAPSあってもよい。また、図示の例において、HAPS20の高度が約20kmの成層圏に位置し、HAPS20が複数のセル200C(1)~200C(7)を形成し、その複数セル(7セル)構成のセル200C(1)~200C(7)のフットプリント200F(1)~200F(7)からなるサービスエリア20Aの直径は100~200kmであるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
図1において、成層圏に位置するHAPS20を用いた地上(又は水上)の端末装置61と直接通信する通信サービスは、サービスエリアの拡大、災害時の通信手段として非常に魅力的である。HAPS20の通信回線はGW局70とHAPS20との間を結ぶフィーダリンクFLと、HAPS20と端末装置61との間を結ぶサービスリンクSLから成る。サービスリンクの通信容量はその中継周波数であるフィーダリンクの通信容量で決まることから、フィーダリンクの周波数利用効率を高める必要がある。特に
図1に示すようにサービスリンクが多セル構成になった場合はフィーダリンクの通信容量が不足しやすくなるため、フィーダリンクの周波数有効利用技術が不可欠である。しかしながら、HAPS20とGW局70を一対一で構成した場合、フィーダリンクの周波数利用効率を高めることが難しい。
【0051】
そこで、本実施形態では、HAPS20との間の周波数分割複信(FDD)方式のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のGW局を備え、一つのHAPS20と複数のGW局との間に形成したマルチフィーダリンクにおいて空間分割多重通信を行う複数ゲートウェイシステム(以下「複数GWシステム」ともいう。)を構築している。この複数GWシステムでは、複数のフィーダリンク間の干渉を除去することにより、設置するGW局の数の分だけ周波数利用効率を向上できる。
【0052】
なお、以下の実施形態では、HAPS20と複数のGW局との間の空間分割多重通信をフィーダリンクのフォワードリンクのみで行う場合について説明するが、当該空間分割多重通信は、フィーダリンクのリバースリンクのみで行ってもよいし、フォワードリンクとリバースリンクの両方で行うようにしてもよい。
【0053】
図2(a)は実施形態に係る複数GWシステムの概略構成の一例を示す側面図であり、
図2(b)はHAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)との関係を上方から見た説明図である。図示の例では、FLアンテナの数(N)及びGW局の数(N)はそれぞれ同数(図示の例では3)であり、同数のFLアンテナ211(1)~211(3)及びGW局70(1)~70(3)を互いに1対1で対応させて設けている。また、FLアンテナ211及びGW局70の組数は2組でもよいし、4組以上であってもよい。また、図示の例では複数のGW局70は、HAPS20からの距離及びGW局間の間隔が互いに等しくなるように配置されているが、当該距離及び当該間隔の少なくとも一方は互いに異ならせてもよい。各GW局70は、HAPS20の各FLアンテナ211(「HAPS局アンテナ」ともいう。)の受信する複素振幅が無相関となるように配置する。また、GW局70(1)~70(3)のフィーダリンク用アンテナ(以下「GWアンテナ」という。)71(1)~71(3)は互いに直交する垂直偏波(V)及び水平偏波(H)の2偏波で送受信可能である。また、図示の例ではHAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)は、HAPS20の中心からの距離及びFLアンテナ間の間隔が互いに等しくなるように配置されているが、当該距離及び当該間隔の少なくとも一方はFLアンテナ間で互いに異ならせてもよい。例えば、当該距離及び当該間隔はFLアンテナ間で互いに異ならせてもよい。
【0054】
また、
図3に示すように、複数のGW局70(1)~70(3)はそれぞれ、空中で移動するHAPS20を追尾するようにGWアンテナ71(1)~71(3)を制御するアンテナ制御部を備えてもよい。図中の破線のHAPS20’は移動前の位置を示し、図中の実線のHAPS20は移動後の位置を示している。GWアンテナ71(1)~71(3)それぞれがHAPS20を追尾することにより、パラボラアンテナなどの高い指向性を有するGWアンテナ71(1)~71(3)を用いた場合でも、HAPS20の移動によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。
【0055】
また、
図4に示すように、HAPS20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)はそれぞれ、GW局70(1)~70(3)に対応するアンテナ指向性ビーム(以下「指向性ビーム」又は「ビーム」という。)212(1)~212(3)を有し、HAPS20は、複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くようにFLアンテナ211(1)~211(3)を制御するアンテナ制御部を備えてもよい。FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)はそれぞれ、例えば、自身に最も対向しているGW局70の方向を向き、その他のGW局には干渉を与えないように、すなわち、主ビームの利得と反対方向の利得の比(F/B)が十分に大きくなるように形成される。これにより、HAPS20が移動したり回転したりした場合もで、そのHAPS20の移動及び回転によるフィーダリンクの通信品質の低下を抑制できる。
【0056】
HAPS20のアンテナ制御部による複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)の制御方式としては、ジンバル方式、電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)、電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)など、各種の方式を用いることができる。
【0057】
例えば、
図5のジンバル方式では、HAPS20の上下方向の軸(ヨーイング軸、Z軸)を中心とした回転(旋回)に応じて、その軸を中心として複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の全体を機械的に回転駆動制御可能である。例えば、
図5において、HAPS20が左回転方向Rbに約45度回転すると、その回転方向とは逆の右回転方向Raに複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の全体を機械的に回転駆動させる。
【0058】
各FLアンテナ211(1)~211(3)の角度調整の回転駆動制御は、HAPSの位置や姿勢の情報を参照して行ってもよいが、FLアンテナ211(1)~211(3)の受信レベルの値を参照して各FLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御を行ってもよい。例えば、各FLアンテナ211(1)~211(3)を小刻みに回転させ、各FLアンテナ211(1)~211(3)の受信レベルが最大となるような角度を見つけ、その角度に向くように各FLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御を行う。ここで、各FLアンテナ211(1)~211(3)の受信レベルそれぞれに閾値を設定し、その値を下回ったときに各FLアンテナ211(1)~211(3)を既定の角度回転させ、上記受信レベルが最大となる角度へのFLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御を行ってもよい。上記受信レベルの閾値は例えば予め実験により求め、上記既定の角度は例えば360度/FLアンテナ数(図示の例では120度)であってもよい。各また、FLアンテナ211(1)~211(3)から対応するGW局以外からの受信レベルを比較するためのモニタリングビームを作り、最大レベルとなるGW局を選択し、その方向に指向性ビームが向くように各FLアンテナ211(1)~211(3)を回転駆動制御してもよい。
【0059】
なお、
図5では各FLアンテナ211(1)~211(3)の水平方向の角度調整について示しているが、垂直方向についても同様に角度調整を行ってもよい。
【0060】
上記FLアンテナ211(1)~211(3)の回転駆動制御により、HAPS20が回転しても、FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くので、フィーダリンクの通信品質の低下を防止できる。
【0061】
また、
図6の電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)では、FLアンテナとして、複数のアンテナ素子213aを円周形状に沿って配置したサーキュラーアレイアンテナ213を備える。そして、HAPS20の位置及び姿勢情報に基づいて、複数のアンテナ素子213aそれぞれを介して送受信される信号(振幅、位相)に適用するウェイトを制御する。例えば、HAPS20の位置及び姿勢の情報は、HAPS20に組み込んだGNSS(Global Navigation Satellite System)システムと慣性測定ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせたGNSS慣性航法システム(GNSS/INS)の出力に基づいて取得してもよい。
【0062】
上記サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aのウェイトの制御は、HAPSの位置や姿勢の情報を参照して行ってもよいが、サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aの受信レベルの値を参照し、各GW局に対応する位置で最大の受信レベルとなる指向性ビームを形成するように、各アンテナ素子213aのウェイトの制御を行ってもよい。例えば、サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aの位相を小刻みに変化させ、受信レベルが最大となるような角度を見つけ、その角度方向にビームが形成されるように各各アンテナ素子213aのウェイトの制御を行う。また、サーキュラーアレイアンテナ213から対応するGW局以外からの受信レベルを比較するためのモニタリングビームを作り、最大レベルとなるGW局を選択し、その方向にビームを形成してもよい。
【0063】
なお、
図6では水平方向のビーム角度調整について示しているが、垂直方向についても同様にビーム角度調整を行ってもよい。
【0064】
上記サーキュラーアレイアンテナ213の各アンテナ素子213aのウェイトの制御により、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれの方向に向く指向性ビーム212(1)~212(3)を形成する。これにより、HAPS20が回転しても、FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くので、フィーダリンクの通信品質の低下を防止できる。
【0065】
図7の電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)では、FLアンテナとして、複数のアンテナ素子214aを平面状に2次元配置した複数の平面アレイアンテナ214(1)~214(3)を備える。そして、GNSS/INSなどによって取得されたHAPS20の位置及び姿勢情報に基づいて、複数の平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の複数のアンテナ素子214aそれぞれを介して送受信される信号(振幅、位相)に適用するウェイトを制御するビームフォーミング制御を行う。
【0066】
上記平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の切り替え及びビームフォーミングの制御は、HAPSの位置や姿勢の情報を参照して行ってもよいが、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の受信レベルの値を参照し、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)が最大の受信レベルとなるようにアンテナ切り替えとビームフォーミングの制御を行ってもよい。例えば、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)を小刻みに回転させ、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の受信レベルが最大となるような角度を見つけ、その角度に向くように各の回転駆動制御を行う。ここで、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の受信レベルそれぞれに閾値を設定し、その値を下回ったときに、平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の切り替えを行うとともに、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)を既定の角度回転させ、上記受信レベルが最大となる角度へビームを形成するビームフォーミングを行ってもよい。上記受信レベルの閾値は例えば予め実験により求め、上記既定の角度は例えば360度/FLアンテナ数(図示の例では120度)であってもよい。また、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)から対応するGW局以外からの受信レベルを比較するためのモニタリングビームを作り、各平面アレイアンテナ214(1)~214(3)が最大レベルとなるGW局を選択し、その方向にビームを形成するようにアンテナ切り替えとビームフォーミングを行ってもよい。
【0067】
なお、
図7では水平方向のビーム角度調整について示しているが、垂直方向についても同様にビーム角度調整を行ってもよい。
【0068】
上記平面アレイアンテナ214(1)~214(3)の切り替え及びビームフォーミングの制御により、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれの方向に向く指向性ビーム212(1)~212(3)を形成する。ここで、例えば、平面アレイアンテナ214(1)の平面に垂直な法線方向に対して指向性ビーム212(1)が傾いている角度(図中のθ)が予め設定した所定角度θth度よりも大きくなったときに、GW局70(1)に対応するFLアンテナを平面アレイアンテナ214(2)に切り替える。これにより、HAPS20が回転しても、FLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビーム212(1)~212(3)がそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くので、フィーダリンクの通信品質の低下を防止できる。
【0069】
上記構成の複数GWシステムでは、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの少なくとも一方における干渉が大きくなるおそれがある。例えば、
図8に示すように、GW局70(1)から送信された希望信号(所望信号)S1がHAPS20のFLアンテナ211(1)で受信されているときに、他のGW局70(2),70(3)から送信された信号が干渉信号I2,I3としてFLアンテナ211(1)で受信される。そのため、フィーダリンクのSINR特性が悪化するおそれがある。また、
図9に示すように、HAPS20のFLアンテナ211(1)から送信された希望信号(所望信号)S1がGW局70(1)で受信されているときに、HAPS20の他のFLアンテナ211(2),211(3)から送信された信号が干渉信号I2,I3としてGW局70(1)で受信される。そのため、フィーダリンク(リバースリンク)のSINR特性が悪化するおそれがある。
【0070】
そこで、本実施形態では、以下に示すように見通し環境(LOS:Line-Of-Sight)対応のMIMO干渉キャンセラーをGW局間(フィーダリンク間)に適用し、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの干渉を低減することにより、フィーダリンク(フォワード、リバースリンク)のSINR特性を向上させている。
【0071】
まず、本実施形態の複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンクの干渉を低減する構成及び方法について説明する。
【0072】
[HAPS側(送信側)のフォワードリンクのMIMO干渉キャンセラー(受信干渉キャンセラー)]
図10は、ウェイトWを近似式で求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図である。
図11は、実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるHAPS側(送信側)に設けたフォワードリンクの干渉キャンセラー部220の概略構成の一例を示す説明図。HAPS20のFLアンテナ211(1)は、GW局70(1)から送信された希望信号S1(Y11)と、GW局70(2)から送信された干渉信号I2(Y12)と、GW局70(3)から送信された干渉信号I3(Y13)とを受信する。その受信信号AN1は、次式(1)で表される。
【0073】
【0074】
HAPS20の干渉キャンセラー部220では、次式(2)に示すように他のFLアンテナ211(2)及び211(3)で受信された信号S2,S3にそれぞれ対応するウェイトW2,W3を掛け、減算することにより、上記干渉信号I2,I3をキャンセルした希望信号S1(Y11)を出力することができる。GW局70(2),70(3)から送信された希望信号S2(Y22)及びS3(Y33)についても同様に他のGW局からの干渉信号をキャンセルすることができる。
【0075】
【0076】
図12は、ZF(Zero-Forcing)法によりウェイトWを求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図である。例えばGW局70(1)から送信された信号は、HAPS20のFLアンテナ211(1)で希望信号S1(Y11)として受信されるだけでなく、干渉信号I1(Y12),I1’(Y13)としてFLアンテナ211(2)及び211(3)に受信されル。更に、GW局70(2)から送信された信号は、干渉信号I2(Y21)としてFLアンテナ211(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I2’(Y23)としてFLアンテナ211(3)に受信される。更に、GW局70(3)から送信された信号は、干渉信号I3(Y31)としてFLアンテナ211(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I3’(Y32)としてFLアンテナ211(2)に受信される。
図12のMIMO干渉キャンセラーでは、これらの干渉信号I1,I1’,I2’及びI3’を考慮し、例えば次式(3)に示すように希望信号S1(Y11)を出力する。これにより、GW局間(フィーダリンク間)の干渉抑圧の精度を高めることができる。
【0077】
【0078】
上記MIMO干渉キャンセラーに用いるウェイトWを計算するには、HAPS20のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の伝搬路応答Hを把握する必要がある。特に、本実施形態の複数GWシステムでは、GW局70(1)~70(3)に対してHAPS20の機体が相対的に動くため、その動きに応じて伝搬路応答も変化する。
【0079】
本実施形態では、伝搬路応答を動的に把握するため、各GW局70(1)~70(3)からパイロット信号を送信している。
【0080】
図13は、参考例に係るGW局70(1)~70(3)から送信される上り回線の送信信号帯域における狭帯域のパイロット信号の一例を示す説明図である。
図14は、参考例に係るHAPS20で受信される上り回線の受信信号帯域における狭帯域のパイロット信号の一例を示す説明図である。
図15は、参考例に係るフィルターで分離され伝搬路応答の導出に用いられる狭帯域のパイロット信号の一例を示す説明図である。
図16は、
図13~
図15のパイロット信号を用いたフィーダリンクの伝搬路応答の導出モデルの一例を示す説明図である。
【0081】
図示の例では、GW局70(1)~70(3)から希望信号S1,S2,S3が送信されるフィーダリンクの送信信号帯域FBに低周波側及び高周波側から隣接する第1の隣接帯域である第1ガードバンドGB1及び第2の隣接帯域である第2ガードバンドGB2それぞれに、各GW局70(1)~70(3)から送信される複数のパイロット信号が分散配置されている。具体的には、第1ガードバンドGB1に各GW局70(1)~70(3)から送信される同一周波数の互いに周波数f1,f2,f3が異なるパイロット信号SP1,SP2,SP3が位置している。また、第2ガードバンドGB2に各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f1’,f2’,f3’が異なるパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’が位置している。HAPS20の中継通信局21は、GW局70(1)、70(2)及び70(3)から受信した第1ガードバンドGB1の複数のパイロット信号SP1,SP2,SP3をそれぞれフィルターで分離し、GW局70(1)、70(2)及び70(3)から受信した第2ガードバンドGB2の複数のパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’をそれぞれフィルターで分離する。
【0082】
次に、HAPS20の中継通信局21は、
図14に示すように受信信号から狭帯域受信フィルター218を用いて各パイロット信号S
Pi(i=1~3)を分離し(
図15参照)、分離したパイロット信号S
Piから、k番目のGW局70(k)HAPS20のi番目の送信機のFLアンテナ211(i)への伝搬路応答h
kiを求める。中継通信局21は、求めた伝搬路応答hkiの情報(次式(4)及び式(5)参照)を干渉キャンセラー部220に出力する。
【0083】
【0084】
例えば、HAPS20のFLアンテナ211(1)及び211(2)が受信するパイロット信号h11,h11’,h21及びh21’はそれぞれ次式(6)、(7)、(8)及び(9)で表され、それらの信号の比/及び/はそれぞれ、次式(10)及び(11)で表される。
【0085】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0086】
上記式(6)~(11)中のd1はGW局70(1)とFLアンテナ211(1)との間の経路長であり、Δd21はGW局70(1)とFLアンテナ211(1)及び211(2)それぞれとの間の経路長の差(経路差)である。GW局70(1)とFLアンテナ211(2)との間の経路長はd1+Δd21で表される。
【0087】
上記式(10)及び(11)から、上記経路差Δd21は次式(12)で求めることができる。なお、式(12)中のθは、h11’とh11の位相差と、h21とh21’の位相差とを加算した位相差である。すなわち、θ=(h11’とh11の位相差)+(h21とh21’の位相差)である。
【0088】
【0089】
GW局70(1)とFLアンテナ211(1)及び211(3)それぞれとの間の経路差Δd31及びその他の経路差Δd12,Δd13,Δd23,Δd32についても、同様に求めることができる。
【0090】
上記経路差Δd21,Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32を用いて、上記フィーダリンクの送信信号帯域の中心周波数fscにおける伝搬路応答Hfcは、例えば次式(13)のHPのように推定できる。
【0091】
【0092】
図13及び
図14に示すようにGW局70(1)~70(3)がそれぞれ複数のパイロット信号を送信する場合、各パイロット信号の波長λ
1、λ
2、λ
3以上の経路差を検知することができる。例えば、LTEを想定するとフィーダリンクの送信信号帯域FBの帯域幅Bは18MHzであるので、上記式(12)に示すようにΔd
21をパイロット周波数差Bの波長以内の範囲で推定可能となる。本例では、実装上必要な範囲である0<Δd
21<16[m]の範囲まで精度よく推定することができる。
【0093】
また、
図13及び
図14の例では、各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f
1,f
2,f
3,f
1’,f
2’,f
3’が異なる複数のパイロット信号S
P1,S
P2,S
P3及びパイロット信号S
P1’,S
P2’,S
P3’が、第1ガードバンドGB1及び第2ガードバンドGB2に均等に分散されて配置されているので、各パイロット信号をフィルターで分離して容易に個別検出することができる。
【0094】
なお、上記伝搬路応答の行列Hfc(上記式(13)のHP)を用いて、干渉キャンセラーに用いるウェイトは、例えば、伝搬路応答の行列を用いたZF(Zero-Forcing)法又はMMSE(Minimum Mean Square Error)法により計算することができる。
【0095】
例えば、ZF法では、次式(14)のように伝搬路応答の行列Hfcの逆行列でウェイトWを求めることができる。
【0096】
【0097】
また、MMSE法では、次式(15)によりウェイトWを用いることができる。ここで、NTは送信アンテナ数であり、γはSNRである。
【0098】
【0099】
上記参考例では、HAPS20の中継通信局21では、各GW局70(1)~70(3)から送信される異なる狭帯域周波数のパイロット信号を受信するために、複数のパイロット信号受信器及びパイロット信号を分離するための狭帯域受信フィルター218が必要である。例えば
図14の例ではガードバンドそれぞれにおいて3個の狭帯域受信フィルター218が必要である。また、空間多重するGW局の数の増加に応じて、上記パイロット信号受信器の数も増やす必要がある。特に、パイロット信号の周波数が高い場合(例えば、ミリ波)、発信周波数の周波数安定度が劣化しやすいため、狭帯域周波数のパイロット信号を送信するために高安定度の発信周波数回路が不可欠となる。このように狭帯域周波数のパイロット信号を用いると、中継通信局21の狭帯域受信フィルターの数が増えるともに高安定度の発信周波数回路が不可欠になるため、簡易な構成の中継通信局21を実現することが難しい。
【0100】
そこで、本実施形態では、GW局70(1)~70(3)とHAPS20の中継通信局21との間で送受信される複数のパイロット信号をスペクトル拡散して拡散することにより、パイロット信号を受信する中継通信局21において狭帯域受信フィルターが不要な簡易な構成を実現している。
【0101】
図17は、実施形態に係るGW局70(1)~70(3)から送信される上り回線の送信信号帯域におけるスペクトル拡散されたパイロット信号の一例を示す説明図である。
図18は、実施形態に係るHAPS20で受信された上り回線の受信信号帯域におけるスペクトル拡散されたパイロット信号の一例を示す説明図である。
図19は、実施形態に係るHAPS20で受信されてフィルターで分離された逆拡散前のパイロット信号の一例を示す説明図である。
図20は、実施形態に係る逆拡散後のパイロット信号群の一例を示す説明図である。
【0102】
各GW局70(1)~70(3)は、
図17に示すように送信対象の複数のパイロット信号S
P1,S
P2,S
P3,S
P1’,S
P2’,S
P3’を、互いに直交する(符号系列が互いに異なる)複数の送信側の拡散符号を用いてスペクトル拡散し、各ガードバンドにおいて拡散後の複数のパイロット信号を同一周波数で送信している。HAPS20の中継通信局21は、
図18に示すように各ガードバンドにおいてフィルター216を使用して拡散後のパイロット信号群を抽出し、抽出したパイロット信号群から、上記複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号(逆拡散符号)を用いたスペクトル逆拡散し、各パイロット信号(
図19参照)を分離する。HAPS20の中継通信局21は、逆拡散して分離した各GW局70(1)~70(3)からのパイロット信号に基づいて、前述の伝搬路応答h
kiを算出する。
【0103】
上記スペクトル拡散したパイロット信号を用いた伝搬路応答hkiの算出は、例えば次のように行うことができる。
【0104】
上記スペクトル拡散の拡散長をN、互いに直交する複数の拡散符号をCi(n)とおくと、拡散符号間では直交の定義より次式(16)の関係が成り立つ。ここで、i,jは、GW局70(GWアンテナ71)を識別する番号(本例の場合、i,j=1,2,3)であり、nは、拡散符号(符号系列)中の複数の符号の識別番号(n=1,2,---,N)である。
【0105】
【0106】
i番目のGW局70(i)から送信する送信対象のパイロット信号をSpi、拡散符号をCi(n)とおくと、スペクトル拡散した拡散後のパイロット信号の送信信号はCi(n)Spi(n<N)となる。ここで、GW局70(i)からHAPS20の中継通信局21のk番目のFLアンテナ211(k)の伝搬路応答をhkiとおくと、k番目のFLアンテナ211(k)で受信する逆拡散前のパイロット信号の受信信号Xk(n)は次式(17)で表せる。
【0107】
【0108】
HAPS20の中継通信局21のk番目のFLアンテナ211(k)のGW局70(i)からのパイロット信号の逆換算後の受信信号をPkiとおくと、Pkiは受信したパイロット信号の受信信号Xi(n)に、j番目のGW局70(j)の拡散符号Cj(n)で逆拡散(乗算)することにより、次式(18)で求められる。
【0109】
【0110】
送信対象のパイロット信号Spiは既知なので、伝搬路応答hkiは、前述の式(5)で求められる。
【0111】
図21(a)は、GW局70(i)の送信機711(i)の一例を示す機能ブロック図である。
図21(b)はGW局70(i)の送信機711(i)から送信される送信信号X
iにおける希望信号(S
i)及びスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号(C
iS
pi)の一例を示すスペクトル図である。なお、
図21(a)及び
図21(b)では、前述の低周波数側の第1ガードバンドGB1で送受信されるパイロット信号S
piについて例示しているが、高周波数側の第2ガードバンドGB2のパイロット信号S
pi’について同様にスペクトル拡散されて送受信される。
【0112】
図21(a)及び
図21(b)において、i番目のGW局70(i)の送信対象のパイロット信号S
piは、i番目の送信機711(i)において送信側の拡散符号C
i(n)が乗算されてスペクトル拡散される。拡散後のパイロット信号C
iS
piは、中継信号である希望信号S
iに加算されて送信信号X
iが生成される。拡散後のパイロット信号C
iS
piを含む送信信号X
iは、高周波増幅器712(i)で所定の電力に増幅され、GWアンテナ71(i)からHAPS20に送信される。
【0113】
図22(a)は、HAPS20の中継通信局21の受信機210(k)の一例を示す機能ブロック図である。
図22(b)はHAPS20の中継通信局21の受信機210(k)で受信される受信信号X
iにおける希望信号(S
i)及びスペクトル拡散した拡散後のパイロット信号(C
iS
pi)の一例を示すスペクトル図である。なお、
図22(a)及び
図22(b)では、前述の低周波数側の第1ガードバンドGB1で送受信されるパイロット信号S
piについて例示しているが、高周波数側の第2ガードバンドGB2のパイロット信号S
pi’について同様にスペクトル拡散されて送受信される。
【0114】
図22(a)及び
図22(b)において、HAPS20の中継通信局21のk番目のFLアンテナ211(k)で受信されたi番目のGW局70(i)からの受信信号X
iは、受信機210(k)の高周波増幅器219(k)で増幅された後、フィルター216(k),217(k)により、拡散後(逆拡散前)のパイロット信号C
iS
piと、中継信号である希望信号S
iとに分離される。希望信号S
iは干渉抑圧部(干渉キャンセラー)に出力される。
【0115】
一方、受信信号Xiに含まれていた拡散後(逆拡散前)のパイロット信号の受信信号は、i番目の送信機711(i)で使用された送信側の拡散符号Ci(n)に対応する受信側の拡散符号Ci(n)が乗算されてスペクトル逆拡散される。逆拡散後のパイロット信号の受信信号は、既知信号である送信対象のパイロット信号Spiの逆数(1/Spi)が乗算されることにより、フィーダリンクの伝搬路を伝搬した後のパイロット信号hkiに変換され、干渉抑圧部(干渉キャンセラー)で使用される伝搬路応答Hの要素として出力される。
【0116】
図23は、本実施形態に係るHAPS20の中継通信局21の主要構成の一例を示す説明図である。
図23において、中継通信局21は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222と周波数変換部223と各部を制御する制御部224と干渉抑圧部225を備える。
【0117】
フィーダリンク通信部221は、GW局70の数(FLアンテナ211の数)に対応する複数の受信機(
図22(a)参照)を備え、FLアンテナ211を介してGW局70との間でフィーダリンク用の第1周波数F1の無線信号を送受信する。
【0118】
また、フィーダリンク通信部221の複数の受信機210は、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれから送信された同一周波数の拡散後の複数のパイロット信号を受信し、拡散後の複数のパイロット信号が重複したパイロット信号群をフィルターで分離する。また、各受信機210は、上記フィルターで分離された拡散後の複数のパイロット信号の受信信号を、送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、逆拡散後のパイロット信号を、フィーダリンクの伝搬路を伝搬してきたパイロット信号hkiの受信結果として干渉抑圧部225に出力する。
【0119】
サービスリンク通信部222は、サービスリンク用アンテナ115を介して端末装置61との間でサービスリンク用の第2周波数F2の無線信号を送受信する。周波数変換部223は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222との間で第1周波数F1と第2周波数F2との周波数変換を行う。中継通信局21で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE-Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、無線信号の遅延が異なるマルチパスが発生しても良好な通信品質を維持できる。
【0120】
制御部224は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。
【0121】
干渉抑圧部225は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、フィーダリンク通信部221から出力された逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果(hki)に基づいて、前述の伝搬路応答の推定、ウェイトの計算及び干渉キャンセル信号処理を行う。
【0122】
なお、移動通信網の通信オペレータの遠隔制御装置(制御元)からの制御情報を受信したり遠隔制御装置に情報を送信したりする場合は、制御部224に接続されたユーザ端末(移動局)226を備えてもよい。制御部224は、例えば、遠隔制御装置から送信されてきた制御情報をユーザ端末(移動局)226で受信し、その制御情報に基づいて各部を制御してもよい。ここで、遠隔制御装置とユーザ端末(移動局)226との間の通信は、例えば遠隔制御装置及びユーザ端末(移動局)226それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は電話番号)を用いて行ってもよい。
【0123】
また、上記フォワードリンクにおける干渉キャンセラーでは、複数のスペクトル拡散後のパイロット信号S
pi及びS
pi’を、送信信号帯域FB外の第1ガードバンドGB1及び第2ガードバンドGB2のそれぞれに振り分けて送受信しているが、複数のスペクトル拡散後のパイロット信号S
pi及びS
pi’の少なくとも一方を、送信信号帯域FB内で送受信してもよい。例えば、
図24に示すように、複数のスペクトル拡散後のパイロット信号S
pi及びS
pi’のうち、その一方の低周波数側のパイロット信号S
piを送信信号帯域FB内で送受信し、他方の高周波数側のパイロット信号S
pi’を送信信号帯域FB外の第2ガードバンドGB2で送受信してもよい。このように送信信号帯域FB内でパイロット信号を送受信する場合においても、その送信信号帯域FB内で送受信されるパイロット信号はスペクトル拡散されているため、送信信号帯域FB内の希望信号S
iに対するパイロット信号の干渉を低減することができ、受信側において分離/誤り訂正により狭帯域信号(パイロット信号)による送信信号帯域内への干渉を解決することができる。
【0124】
次に、本実施形態の複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のリバースリンクの干渉を低減する構成及び方法について説明する。
【0125】
[GW局側(受信側)のリバースリンクのMIMO干渉キャンセラー(受信干渉キャンセラー)]
図25(a)は、実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるGW局側(受信側)に設けたリバースリンクの干渉キャンセラー部720の概略構成の一例を示す説明図であり、
図25(b)は送信信号Sと受信信号Yとの関係を示す説明図である。干渉キャンセラー部720は、例えば、複数のGW局70(1),70(2),70(3)のGWアンテナ71(1),71(2),71(3)の送受信機との間が通信回線(インターフェース)で接続された共通装置700に設けられる。
【0126】
なお、共通装置700は、複数のGW局70(1),70(2),70(3)から情報を集中させる場所に設置された装置(例えば、移動通信網の通信センター、コントロールセンター等に設けられた遠隔制御装置、サーバなど)であってもよい。また、干渉キャンセラー部720は、通信回線(インターフェース)で互いに接続されたGW局70(1),70(2),70(3)のいずれか一つに設け、GW局間で干渉キャンセルのための受信結果、伝搬路応答、ウェイトなどのデータを共有してもよい。
【0127】
図25において、例えば、GWアンテナ71(1)は、HAPS20のFLアンテナ211(1)から送信された希望信号S1(Y11)と、HAPS20のFLアンテナ211(2)から送信された干渉信号I2(Y12)と、HAPS20のFLアンテナ211(3)から送信された干渉信号I3(Y13)とを受信する。その受信信号AN1は、前述の式(1)で表される。
【0128】
干渉キャンセラー部720では、前述の式(2)に示すように他のGWアンテナ71(2)及び71(3)で受信された信号S2,S3にそれぞれ対応するウェイトW2,W3を掛け、加算又は減算することにより、上記干渉信号I2,I3をキャンセルした希望信号S1(Y11)を出力することができる。HAPS20のFLアンテナ211(2),211(3)から送信された希望信号S2(Y22)及びS3(Y33)についても同様に他のFLアンテナからの干渉信号をキャンセルすることができる。
【0129】
干渉キャンセラー部720は、ZF(Zero-Forcing)法により伝搬路応答の行列(伝搬路応答行列H)を用いて計算したウェイトWを用いることができる。例えばHAPS20のFLアンテナ211(1)から送信された信号は、GWアンテナ71(1)で希望信号S1(Y11)として受信されるだけでなく、干渉信号I1(Y12),I1’(Y13)としてGWアンテナ71(2)及び71(3)に受信される。更に、HAPS20のFLアンテナ211(2)から送信された信号は、干渉信号I2(Y21)としてGWアンテナ71(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I2’(Y23)としてGWアンテナ71(3)に受信される。更に、HAPS20のFLアンテナ211(3)から送信された信号は、干渉信号I3(Y31)としてGWアンテナ71(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I3’(Y32)としてGWアンテナ71(2)に受信される。干渉キャンセラー部720では、これらの干渉信号I1,I1’,I2’及びI3’を考慮し、例えば前述の式(3)に示すように希望信号S1(Y11)を出力する。これにより、GW局間(フィーダリンク間)のリバースリンクにおける干渉抑圧の精度を高めることができる。
【0130】
上記干渉キャンセラー部(MIMO干渉キャンセラー)720に用いるウェイトWを計算するには、GW局70(1)~70(3)のGWアンテナ71(1)~71(3)とHAPS20のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の伝搬路応答(伝搬路応答行列H)を把握する必要がある。特に、本実施形態の複数GWシステムでは、GW局70(1)~70(3)のGWアンテナ71(1)~71(3)に対してHAPS20の機体が相対的に動くため、その動きに応じて伝搬路応答(伝搬路応答行列H)も変化する。
【0131】
そこで、本実施形態では、伝搬路応答(伝搬路応答行列H)を把握するため、HAPS20の各FLアンテナ211(1)~211(3)から、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でスペクトル拡散し、拡散後の複数のパイロット信号を同一周波数で送信している。干渉キャンセラー部720では、各FLアンテナ211(1)~211(3)から受信した拡散後のパイロット信号を、複数の送信側の拡散符号に対応する複数の受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散し、逆拡散後のパイロット信号の受信結果に基づいて、フィーダリンクの送信信号帯域の中心周波数fscの伝搬路応答(伝搬路応答行列H)を推定し、ウェイトWを導出する。
【0132】
HAPS20の各FLアンテナ211(1)~211(3)から送信される拡散後の複数のパイロット信号は、例えば、希望信号S1,S2,S3が送信されるフィーダリンクの送信信号帯域FBに低周波側から隣接する第1の隣接帯域である第1ガードバンドGB1に配置してもよいし、送信信号帯域FBに高周波側から隣接する第2の隣接帯域である第2ガードバンドGB2に配置してもよい。また、拡散後の複数のパイロット信号は、第1ガードバンドGB1及び第2ガードバンドGB2の両方に配置してもよい。また、各FLアンテナ211(1)~211(3)から送信されるパイロット信号は、単一のパイロット信号でもよいし、複数のパイロット信号でもよい。
【0133】
図25のGW局側(受信側)に設けた干渉キャンセラー部720では、各GW局70(1)~70(3)のGWアンテナ71(1)~71(3)は(例えば50~100kmの離間距離で)互いに遠く離れているため、例えば、共通装置700又はGW局70(1)~70(3)のいずれかが次の処理を行う。
(1)各GWアンテナ71(1)~71(3)で拡散後の複数のパイロット信号を受信して測定した伝搬路応答を収集して又はGW局間で相互に交換して伝搬路応答行列Hを作成する。
(2)干渉キャンセラーのウェイトWを決定し、各受信機で受信されるリバースリンクの受信信号の干渉を除去する。
【0134】
また、各GWアンテナ71(1)~71(3)は互いに遠く離れているため、各GW局70(1)~70(3)の受信機間の遅延が発生する。従って、共通装置700と各GW局70(1)~70(3)の受信機との離間距離又は各GW局70(1)~70(3)の受信機間の離間距離を考慮したGW局70(1)~70(3)間の精度の高い時間同期が必要である。また、各GW局70(1)~70(3)の伝搬路応答を集める又はGW局間で相互に交換するための伝送路も必要となり、干渉キャンセラー部720の処理が複雑になる。
【0135】
そこで、以下に示すように、マルチフィーダリンクにおけるリバースリンクの干渉キャンセラーをHAPS20側に搭載してもよい。
【0136】
[HAPS搭載のリバースリンクのMIMO干渉キャンセラー(送信干渉キャンセラー)]
図26(a)は、更に他の実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるHAPS20側(送信側)に設けたリバースリンクの干渉キャンセラー部220の概略構成の一例を示す説明図であり、
図26(b)は送信信号Sと受信信号Yとの関係を示す説明図である。
図26の干渉キャンセラー部220は、送信機間の距離が短い(例えば数m)HAPS20内の各送信機の送信信号にウェイト(以下「送信ウェイト」という。)Wを掛けて送信することにより、各GW局70(1)~70(3)の受信信号に対するHAPS20内の他送信機からの干渉を抑圧する送信干渉キャンセラーの機能を有する。
【0137】
図26の干渉キャンセラー部220の例では、HAPS20の送信機で干渉キャンセル処理を行い、受信機間の距離が遠い(50~100km)GW局側の受信機では干渉キャンセル処理を行わない。干渉キャンセラー部220で送信ウェイトWを算出するには、フィーダリンクのリバースリンクであるHAPS20から各GW局70(1)~70(3)に向かう下り回線の伝搬路における伝搬路応答行列Hが必要である。
【0138】
前述のようにGW局70(1)~70(3)のGWアンテナ71(1)~71(3)に対してHAPS20の機体が相対的に動くため、その動きに応じて、下り回線の伝搬路応答(伝搬路応答行列H)も変化する。そこで、本例においても、伝搬路応答(伝搬路応答行列H)を把握するため、互いに直交している複数の拡散符号でスペクトル拡散して送受信される複数のパイロット信号を用いている。干渉キャンセラー部220では、パイロット信号に基づいて、フィーダリンクの送信信号帯域の中心周波数fscの伝搬路応答(伝搬路応答行列H)を推定し、送信ウェイトWを導出する。
【0139】
パイロット信号は、例えば、前述の
図17及び
図18に示す希望信号S1,S2,S3が送信されるフィーダリンクの送信信号帯域FBに隣接する第1ガードバンドGB1、第2ガードバンドGB2又はその両方に配置される。
【0140】
フィーダリンクの伝搬路応答(伝搬路応答行列H)を推定して送信ウェイトWを計算する方法として、例えば、下り回線のパイロット信号を用いる方法と、上り回線のパイロット信号を用いる方法がある。
【0141】
[下り回線のパイロット信号を用いた送信ウェイトWの計算方法]
まず、下り回線のパイロット信号を用いる場合について説明する。
本計算方法では、HAPS20の各送信機から各FLアンテナ211(1)~211(3)を介してGW局70(1)~70(3)に、送信信号帯域FB外のガードバンドに配置された、互いに直交した拡散符号Ci(n)でスペクトル拡散された同一周波数のパイロット信号Ci(n)SPi(i=1~3)が送信される。
【0142】
次に、各GW局70(1)~70(3)は、HAPS20から受信した受信信号を逆拡散して各パイロット信号S
Pi(i=1~3)を分離し(前述の
図15参照)、分離したパイロット信号S
PiからHAPS20のi番目の送信機のFLアンテナ211(i)からk番目のGW局70(k)への伝搬路応答hkiを求める。各GW局70(1)~70(3)は、求めた伝搬路応答hkiの情報(前述の式(4)及び式(5)参照)を、上り回線の制御信号を用いて、フィードバック情報として、HAPS20の送受信機を介して干渉キャンセラー部220に転送する。
【0143】
次に、HAPS20の干渉キャンセラー部220は、上り回線の制御信号で転送された各GW局70(1)~70(3)の下り伝搬路応答hki(前述の式(6)参照)に基づいて、パイロット信号SPiの下り伝搬路応答行列HP(次式(19)参照)を求める。
【0144】
【0145】
HAPS20の干渉キャンセラー部220は、パイロット信号SPiの伝搬路応答行列Hp(上記式(7)参照)に基づいて、送信信号帯域FB内の任意の周波数fdの伝搬路応答行列H(fd)(次式(20)参照)を推定する。
【0146】
【0147】
ここで、上記式(20)中のΔdki(k=1~3,i=1~3)は、下り回線における送信側のi番目のFLアンテナ211(i)と受信側のk番目のGW局70(k)のGWアンテナ71(k)との間の経路長の差(経路差)である。i番目のFLアンテナ211(i)に最も対向しているGW局70のGWアンテナ71の番号k(=i)を便宜的にiと表記すると、i番目のGWアンテナ71(i)とそれに最も対向しているi番目のFLアンテナ211(i)との間の所望信号の経路長diiを基準にして、k番目のGWアンテナ71(k)とi(≠k)番目のFLアンテナ211(i)との間の干渉信号の経路長をdkiとしたとき、上記Δdkiは、所望信号の経路長diiを基準にした、所望信号の経路長diiと干渉信号の経路長をdkiとの差(経路差)である。例えば、Δd12は、1番目のGWアンテナ71(1)とそれに最も対向している1番目のFLアンテナ211(1)との間の経路長d11を基準にし、その基準の経路長d11と、1番目のGWアンテナ71(1)と2番目のFLアンテナ211(2)との間の経路長d12との差(経路差)である。また、Δd21は、2番目のGWアンテナ71(2)とそれに最も対向している2番目のFLアンテナ211(2)との間の経路長d22を基準にし、その基準の経路長d22と、2番目のGWアンテナ71(2)と1番目のFLアンテナ211(1)との間の経路長d21との差(経路差)である。
【0148】
上記Δdkiは、次式(21)のように干渉信号の伝搬路応答hkiと所望信号の伝搬路応答hiiとの位相差Δθkiで表すことができる。
【0149】
【0150】
上記式(21)中のΔθkiは伝搬路応答のhkiとhiiとの位相差であり、Δθ’kiは伝搬路応答のh’kiとh’iiとの位相差である(次式(22)及び(23)参照)。
【0151】
【0152】
また、次式(24)に例示するように、ガードバンドに配置したパイロット信号SPiの周波数fPiでの伝搬路応答hki(fPi)と、送信信号帯域FB内の周波数fdでの伝搬路応答hki(fd)とは互いに等価であると仮定している。
【0153】
【0154】
HAPS20の干渉キャンセラー部220は、上記式(20)に示す送信信号帯域FB内の周波数fdの伝搬路応答H(fd)の推定結果に基づいて、各FLアンテナ211(1)~211(3)から送信する送信信号帯域FB内の周波数fdの送信信号に掛ける送信ウェイトW(fd)を計算する。例えば、ZF(Zero-Forcing)法では、次式(25)のように伝搬路応答行列H(fd)の逆行列でウェイトWZF(fd)を求めることができる。
【0155】
【0156】
実際の通信への適用時には、上記ZF法で求めたウェイトWZF(fd)に対して、送信電力を増大させないために相対電力1となるように規格化した次式(26)の送信ウェイトW(fd)を用いてもよい。
【0157】
【0158】
送信信号帯域FB内の周波数fdの送信信号に上記ウェイトW(fd)を掛けて各FLアンテナ211(1)~211(3)それぞれから送信すると、GW局70(1)~70(3)での受信信号は例えば次式(27)のようになる。式(27)中のSdは、送信信号帯域FB内の周波数fdでHAPS20からGW局70に送信される送信信号(希望信号)であり、Nはノイズである。
【0159】
【0160】
上記式(27)に例示するように、HAPS20との間のマルチフィーダリンクのリバースリンクにおいてGW局70(1)~70(3)それぞれが受信する受信信号Yでは、HAPS20の対応する送信機(FLアンテナ)以外の他の送信機(FLアンテナ)からの干渉をキャンセルすることができる。
【0161】
[上り回線のパイロット信号を用いたウェイトWの計算方法]
次に、上り回線のパイロット信号を用いる場合について説明する。
本計算方法では、各GW局70(1)~70(3)が、互いに直交する複数の送信側の拡散符号でパイロット信号SPi,SPi’を拡散して送信する。拡散後のパイロット信号SPi,SPi’が送信される回線は、HAPS20から送信信号が送信される下り回線(リバースリンク)とは逆方向の上り回線(フォワードリンク)であるので、パイロット信号SPi,SPi’はリバースリンクの送信信号帯域FB内に配置してもよい。
【0162】
HAPS20は、各GW局70(1)~70(3)から送信された上り回線(フォワードリンク)の拡散後のパイロット信号SPi,SPi’を受信し、送信側の拡散符号に対応する受信側の拡散符号でスペクトル逆拡散する。干渉キャンセラー部220は、自由空間送信を考慮した伝搬路モデルにより、逆拡散後の上りパイロット信号SPi,SPi’の受信結果に基づいて上りパイロット信号の伝搬路応答行列を求める。更に、干渉キャンセラー部220は、その上りパイロット信号の伝搬路応答行列を用いて、下り回線(リバースリンク)の送信信号帯域FB内の送信信号の伝搬路応答行列を推定する。
【0163】
上りパイロット信号SPiによる伝搬路応答行列HP、上りパイロット信号に基づいて推定した下り送信信号帯域の周波数fdの伝搬路応答行列H(fd)、ZF法で求めたウェイトWZF(fd)、規格化した送信ウェイトW(fd)及びGW局70での受信信号はそれぞれ、前述の式(19)、式(20)、式(25)、式(26)及び式(27)と同様になるので、それらの説明は省略する。
【0164】
上り回線のパイロット信号を用いたウェイトWの計算する場合も、HAPS20との間のマルチフィーダリンクのリバースリンクにおいてGW局70(1)~70(3)それぞれが受信する受信信号Yでは、HAPS20の対応する送信機(FLアンテナ)以外の他の送信機(FLアンテナ)からの干渉をキャンセルすることができる。
【0165】
以上、フィーダリンクの下り回線であるリバースリンクの信号を送信するHAPS20に設けた干渉キャンセラー部220を用いる構成は、ウェイトWを適用する信号を送信する送信機間の距離が短く(数m)、HAPS20上の各送信機の送信信号にウェイト(W)を掛けて、各GW局70の受信信号の他送信機からの干渉を抑圧する送信干渉キャンセラーであり、受信機間の距離が遠い(50~100km)GW局側の受信機では干渉キャンセル処理を行わないことから、システム構成が簡易になる。
【0166】
特に、上り回線(フォワードリンク)のパイロット信号を用いた下り回線(リバースリンク)の送信ウェイトWの計算法では、下り回線に伝搬路応答行列を推定するために送信帯域外にパイロット信号を挿入することなどが不要となり、システム構成が更に簡易になる。
【0167】
なお、実施形態に係るHAPS20の中継通信局21が希望信号の送信側としてリバースリンクの干渉を抑圧する場合、中継通信局21の主要構成は前述の
図23と同様な構成であってもよい。
【0168】
この場合、
図23のフィーダリンク通信部221は、GW局70の数(FLアンテナ211の数)に対応する複数の受信機や送信機を備え、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、次の(1)~(6)に例示するようなパイロット信号の受信処理や送信処理を行う。
(1)複数のGW局70(1)~70(3)から送信された同一周波数の拡散後の複数のパイロット信号を受信する処理
(2)拡散後の複数のパイロット信号が重複したパイロット信号群をフィルターで分離する処理
(3)拡散後の複数のパイロット信号をスペクトル逆拡散する処理
(4)逆拡散後のパイロット信号を、フィーダリンクの伝搬路を伝搬してきたパイロット信号h
kiの受信結果として干渉抑圧部225に出力する処理
(5)下り回線(リバースリンク)の送信対象の複数のパイロット信号を、互いに直交する(符号系列が互いに異なる)複数の送信側の拡散符号を用いて同一周波数でスペクトル拡散する処理
(6)拡散後のパイロット信号が重複したパイロット信号群を複数のGW局70(1)~70(3)に送信する処理
【0169】
また、
図23の干渉抑圧部225は、前述の干渉キャンセラー部220に対応し、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、次の(1)~(3)に例示するように前述の複数のGW局70(1)~70(3)との間に形成する複数のフィーダリンク間のリバースリンクの干渉を抑圧する処理を行う。
(1)逆拡散後の複数のパイロット信号の受信結果に基づいて複数の伝搬路応答を推定する処理
(2)推定した複数の伝搬路応答に基づいてウェイトWを計算する処理、又は、複数のGW局70(1)~70(3)のいずれか若しくは共通装置から受信した複数の伝搬路応答に基づいてウェイトWを計算する処理
(3)複数のGW局70(1)~70(3)それぞれについて、GW局に対する送信信号から、他のGW局に対応する送信信号に他のGW局に対応するウェイトWを掛けて加算又は減算する信号処理
【0170】
以上、本実施形態によれば、HAPS20と複数のGW局70(1)~70(3)との間の同一周波数のマルチフィーダリンクにおける複数のフィーダリンク間の干渉を動的に抑圧することができる。
【0171】
特に本実施形態によれば、HAPS20と複数のGW局70(1)~70(3)との間で送受信される複数のパイロット信号として狭帯域のパイロット信号を用いる必要がないため、狭帯域のパイロット信号を送信するための高安定度の発信周波数回路を送信側に設ける必要なく、狭帯域のパイロット信号を受信側で分離する狭帯域受信フィルターが不要になる。よって、HAPSのマルチフィーダリンクにおける干渉の動的な抑制を簡易な構成で実現することができる。
【0172】
また、本実施形態によれば、マルチフィーダリンクにおける干渉の動的な抑圧に必要となるHAPS20と複数のGW局70(1)~70(3)との経路差を実装上必要な範囲まで推定して把握することができるので、マルチフィーダリンクにおける干渉を精度よく抑圧することができる。
【0173】
また、本実施形態によれば、HAPS20のフィーダリンクのリバースリンクのSNIRの低下を抑制しつつ、フィーダリンクの周波数利用効率の向上を図ることができる。
【0174】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0175】
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0176】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0177】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0178】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0179】
20 HAPS(通信中継装置)
21 中継通信局
61 端末装置
70,70(1)~70(3) ゲートウェイ局(GW局)
71,71(1)~71(3) フィーダリンク用アンテナ(GWアンテナ)
200C,200C(1)~200C(7) 3次元セル
200F,200F(1)~200F(7) フットプリント
210 受信機
211、211(1)~211(3) フィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)
212、212(1)~212(3) アンテナ指向性ビーム
215 サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
216 パイロット信号用のフィルター
217 希望信号用のフィルター
218 狭帯域受信フィルター
219 高周波増幅器
220 干渉キャンセラー部
221 フィーダリンク通信部
222 サービスリンク通信部
223 周波数変換部
224 制御部
225 干渉抑圧部
700 共通装置
711 送信機
712 高周波増幅器
720 干渉キャンセラー部