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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】被着体の加工補助用シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230302BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230302BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230302BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CFD
C09J7/38
H05K3/00 M
H05K3/46 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019552692
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2018039179
(87)【国際公開番号】W WO2019093108
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2017215086
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100111419
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 崇志
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-074470(JP,A)
【文献】特開平09-132762(JP,A)
【文献】特開平06-275953(JP,A)
【文献】特開平06-275954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C09J 7/00-7/50
H05K 3/00、3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貫通孔をパンチング加工するのに先立ち、該被着体に積層して使用される、被着体のパンチング加工補助用シートにおいて、突刺強度が10N以下で、かつ厚さが10μm以上の、ミクロボイドを有するポリプロピレン樹脂フィルムを含むことを特徴とするシート。
【請求項2】
被着体表面に形成すべき導体パターンに対応する穴あけ加工をパンチングにより施した上で、該被着体に積層して使用される、被着体表面への導体パターン形成加工補助用シートにおいて、突刺強度が10N以下で、かつ厚さが10μm以上の樹脂フィルムを含むことを特徴とするシート。
【請求項3】
樹脂フィルムは、厚み1μmあたりの突刺強度が0.2N未満である請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
樹脂フィルムの、被着体に積層する側に再剥離性粘着層を有する請求項1~の何れかに記載のシート。
【請求項5】
被着体がセラミックグリーンシートである、請求項1~の何れかに記載のシート。
【請求項6】
被着体に補助シートを積層した状態で、前記被着体に貫通孔をパンチング加工するにあたり、前記補助シートとして、請求項1、3~5の何れかに記載の加工補助用シートを用いたことを特徴とする加工方法。
【請求項7】
被着体に補助シートを積層した状態で、前記被着体表面に導体パターンを形成するにあたり、前記補助シートとして、請求項2~5の何れかに記載の加工補助用シートを用いたことを特徴とする加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種積層セラミック製品の製造過程で使用される被着体(セラミックグリーンシートなど)に積層して使用される、被着体の加工補助用シートと、該シートを用いた加工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
各種積層セラミック製品の製造過程で使用される、被着体の一例としてのセラミックグリーンシートに、層間接続用の微小な貫通孔をパンチング(打ち抜き)加工する際、該グリーンシートの上面に粘着層を介して仮着(積層)される、樹脂フィルムを含むパンチング加工補助用シートが知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-132762
【文献】特開平9-279102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の加工補助用シートに要求される条件として、パンチング加工性が高い(すなわち、パンチングに対してせん断強度が小さい)ことの他、パンチング後のグリーンシートから破断することなく綺麗に剥離可能なことが必要である。
【0005】
しかしながら、特許文献1,2による技術など、従来の加工補助用シートは、加工性が十分ではなく、その結果、加工補助用シートでの貫通孔の打ち抜き形状が悪くなって、グリーンシート側へ食い込む方向にバリ(補助シートの小片またはささくれ)や欠けが発生し、グリーンシートに形成される貫通孔が変形し、または穴詰まりを引き起こすことがあった。
【0006】
また、特許文献1,2による加工補助用シートに、予め、セラミックグリーンシート表面に形成すべき導体パターン(配線回路パターン)に対応する穴あけ加工をパンチングにより施し、穴あけ加工済み加工補助用シートとした上で、該グリーンシートの上面に仮着(積層)して使用する態様も考えられる。しかしながら、この態様の場合も、従来構成のパンチング加工補助用シートと同様、穴あけ加工による打ち抜き形状が悪くなって、グリーンシート側へ食い込む方向にバリや欠けが発生することが懸念される。その結果、例えば、下記(a)~(c)などの不都合が生じることも想定される。
(a)セラミックグリーンシートへの仮着後、打ち抜き穴を通じて充填される導体ペーストのパターン形状に変形が生じる。
(b)導体ペーストにバリが巻き込まれることに起因して、使用目的を終えた後のグリーンシートから取り除く際に剥離不良が起こる。
(c)焼成後の導体パターンにクラックが発生する。
【0007】
加工性が良くなるよう、樹脂フィルム(基材)を極薄(数μm)の厚みで構成すると、パンチング後または導体ペースト印刷後のグリーンシートから剥離する際に、破断することがあり、結果、綺麗に剥離することができないことがあった。
【0008】
なお、この種の加工補助用シートには、パンチング後または導体ペースト印刷後のグリーンシートに対し、浮きを生じない程度の保持力(接着力)を有することも求められる。
【0009】
本発明の一側面では、パンチング後の被着体に対し貫通孔の変形や詰まりを生じさせることがなく、かつパンチング後の被着体に対して十分な保持力を発現しつつも、破断することなく綺麗に剥離可能である、被着体の加工補助用シートと、該シートを用いた加工方法を提供する。
【0010】
本発明の他の側面では、被着体上に形成される、導体ペーストパターンの変形や焼成後の導体パターンへのクラックを生じさせることがなく、かつ導体ペースト印刷後の被着体に対して十分な保持力を発現しつつも、破断することなく綺麗に剥離可能である、被着体の加工補助用シートと、該シートを用いた加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、使用する樹脂フィルムの突刺強度と厚さを制御することにより、使用する樹脂フィルムの材質の如何を問わず、パンチング特性、保持性、及び剥離性をすべて同時に満足できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明に係る被着体の加工補助用シート(本発明シート)は、被着体に積層して使用されるものであって、突刺強度が10N以下で、かつ厚さが10μm以上の樹脂フィルムを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る第1の加工方法は、被着体に補助シートを積層した状態で、前記被着体に貫通孔をパンチング加工するにあたり、補助シートとして、上記本発明の加工補助用シートを用いたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る第2の加工方法は、被着体に補助シートを積層した状態で、前記被着体表面に導体パターンを形成加工するにあたり、補助シートとして、被着体表面に形成すべき導体パターンに対応する穴あけ加工がパンチングにより施された形態での、上記本発明の加工補助用シートを用いたことを特徴とする。
なお、以下、上述した第1の加工方法と第2の加工方法を合わせて「本発明方法」と略記する。
【0015】
本発明シートは、被着体に貫通孔をパンチング加工するのに先立ち、該被着体に積層して使用される、被着体のパンチング加工補助用シートであることができる。
本発明シートは、被着体表面に形成すべき導体パターンに対応する穴あけ加工をパンチングにより施した上で、該被着体に積層して使用される、被着体表面への導体パターン形成加工補助用シートであることができる。
【0016】
本発明シート及び本発明方法において、樹脂フィルムは、厚み1μmあたりの突き刺し強度が0.2N以下であることが好ましい。
本発明シート及び本発明方法において、樹脂フィルムの、被着体に積層する側に再剥離性粘着層を有することが好ましい。
【0017】
本発明でいう被着体とは、各種積層セラミック製品(例えば、積層セラミックコンデンサ、セラミック多層回路基板など)の製造過程で使用される、未焼成物または焼成後の焼成物を意味する。例えば、セラミックグリーンシート(未焼成物)や、該シートを含むものの焼成物などが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明シートは、ベース基材として所定特性かつ所定厚みの樹脂フィルムを含むため、パンチング後の被着体に対し貫通孔の変形や詰まりを生じさせることがない。また、被着体上に形成される、導体ペーストパターンの変形や焼成後の導体パターンへのクラックを生じさせることがない。これらに加え、加工(パンチングまたは導体ペースト印刷)後の被着体に対して十分な保持力を発現しつつも、破断することなく綺麗に剥離することができる。
【0019】
本発明方法は、本発明の上記加工補助用シートを用いるため、被着体側へ食い込む方向に、バリ(補助シートの小片またはささくれ)や欠けが発生しない。このため、第1の加工方法は、パンチング後の被着体に対し貫通孔の変形や詰まりを生じさせることがない。第2の加工方法は、被着体上に形成される、導体ペーストパターンの変形や焼成後の導体パターンへのクラックを生じさせることがない。これらに加え、本発明方法は、加工(パンチングまたは導体ペースト印刷)後に被着体との間で浮きを生じることはないにもかかわらず、剥離の際、破断することもない。したがって、使用目的を終えた補助シートを被着体から綺麗に取り除くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、被着体が、脆弱で僅かな衝撃により変形や破損してしまう、未焼成物(セラミックグリーンシート)である場合を例示して説明する。
【0021】
被着体の一例に係るセラミックグリーンシートは、セラミック原料粉末と有機質バインダーと溶媒を含むスラリーをドクターブレード法によってキャリアテープ上に薄く延ばして成形(いわゆるテープ成形)されたものである。このテープ成形されたセラミックグリーンシートは、一般に、所定寸法に切断され、層間接続用の微小な貫通孔(ビアホール)がNC金型パンチング装置等によりパンチング(打ち抜き)加工される。その後、シート表面への導体パターンの印刷、複数枚のセラミックグリーンシートの積層、焼成の各工程を経て積層セラミック製品(セラミック多層回路基板など)が製造される。
【0022】
本発明の一例(本例)に係る加工補助用シートは、上記セラミックグリーンシートに貫通孔をパンチング加工するのに先立ち、該グリーンシートの上面に仮着(積層)して使用され、その使用目的(貫通孔のパンチング)を終えた後、グリーンシートから取り除かれる用途(セラミックグリーンシートのパンチング加工補助用シート)へ好適に使用しうるものである。
本例の加工補助用シートは、上記パンチング加工補助用のほか、予め、上記セラミックグリーンシート表面に形成すべき導体パターン(配線回路パターン)に対応する穴あけ加工をパンチングにより施し、穴あけ加工済み補助シートとした上で、その加工済み補助シートを該グリーンシートの上面に仮着(積層)して使用することもできる(セラミックグリーンシート表面への導体パターン形成加工補助用シート、つまりマスキングシート)。使用目的(セラミックグリーンシートへの仮着後、打ち抜き穴を通じて充填される導体ペーストの印刷)を終えた後は、貫通孔のパンチングと同様、グリーンシートから取り除かれる。
【0023】
本例の加工補助用シートは、ベース基材を含む。本例で用いられるベース基材は、所定特性の樹脂フィルムで構成される。本例では、樹脂フィルムとして、突刺強度が10N以下であり、かつ厚みが10μm以上のものを用いる。
【0024】
本発明者らは、ベース基材に使用する樹脂フィルム(例えばPET)の厚みを薄くしていくことで加工補助用シートのパンチング加工性の向上(バリや欠け発生の低減)を確認し、基材厚を10μm未満にまで薄くすれば、その樹脂フィルムのせん断強度が十分に低下し、その結果、バリや欠け発生の低減に良好な結果を得た。一方、基材厚が10μm未満と薄いと、加工(パンチングまたは導体ペースト印刷)後のグリーンシートから剥離する際に、基材が破断し、またはグリーンシート側へ粘着層(後述)が糊残りするなど、加工補助用シートをグリーンシートから綺麗に剥離することができなかった。
【0025】
そこで本発明者らは、バリや欠け発生の低減とグリーンシートからの綺麗な剥離の他、加工(パンチングまたは導体ペースト印刷)後のグリーンシートに対する十分な保持力の発現を、同時満足させるべく鋭意検討を重ねた結果、ベース基材に使用する樹脂フィルムの突刺強度が所定値以下であれば、基材厚が、加工補助用シートにグリーンシートからの綺麗な剥離効果を発現させる厚みである10μm以上としても、パンチング後のグリーンシートに対し貫通孔の変形や詰まりを生じさせなくでき、またグリーンシート上に形成される、導体ペーストパターンの変形や焼成後の導体パターンへのクラックを生じさせなくできることを見出した。
なお、基材厚が10μm未満と薄いと、グリーンシートへの積層または貼り合わせの難易度が上がり、結果、位置合わせに苦労したり、皺が入ることが多く、作業性が低下することもあり得る。
【0026】
本例で用いられる樹脂フィルムは、第1に、突刺強度が10N以下(好ましくは9N以下、より好ましくは8N以下)であることが必要である。使用する樹脂フィルムの突刺強度が10Nを超えると、その樹脂フィルムを含む補助シートでは、パンチング加工性が悪化する。これに加え、グリーンシートの位置ずれを起こしにくい薄さ(薄厚)で粘着層(後述)を形成した場合に、加工(パンチングまたは導体ペースト印刷)後のグリーンシートに対して十分な保持力を発現させにくい。
【0027】
突刺強度は、カテラン針(協和界面化学社製、サイズ:22G(=外径0.7mm)×長さ:33mm)をセットしたテンシロン万能材料試験機(A&D社製、RTC-1210A)を用い、針先端を樹脂フィルムに対向させた状態で、針を50mm/分の速度で樹脂フィルムに進入させ、針が貫通するまでに樹脂フィルムにかかった最大荷重(単位はN)を意味する。
【0028】
本例で用いられる樹脂フィルムは、第2に、樹脂フィルムの厚みが10μm以上であることが必要である。使用する樹脂フィルムの厚みが10μm未満であると、その樹脂フィルムを含む補助シートを加工(パンチングまたは導体ペースト印刷)後のグリーンシートから綺麗に剥離させる効果を発現させにくい。
【0029】
樹脂フィルムの厚みは、グリーンシートからの剥離性向上(グリーンシートからの綺麗な剥離効果の発現)の観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上である。一方、厚みが厚すぎると、10N以下の突刺強度を実現することは困難であるため、厚み上限は、100μm程度とすることができる。
【0030】
本例で用いられる樹脂フィルムは、上記2つの条件に加え、厚み1μmあたりの突き刺し強度が0.2N以下であることが好ましい。この場合、パンチング加工性とグリーンシートからの綺麗な剥離効果がより一層、高度にバランスされることが期待される。
【0031】
本例で用いられる樹脂フィルムとしては、その材質に特段の限定はない。例えば、ポリエチレン系樹脂; ポリプロピレン系樹脂; ノルボルネン樹脂等の環状ポリオレフィン系樹脂; シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂; アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂); アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂); ポリ塩化ビニル系樹脂; フッ素系樹脂; ポリ(メタ)アクリル系樹脂; ポリカーボネート系樹脂; ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂; 各種のナイロン等のポリアミド系樹脂; ポリイミド系樹脂; ポリアミドイミド系樹脂; ポリアリールフタレート系樹脂; シリコーン系樹脂; ポリスルホン系樹脂; ポリフェニレンスルフィド系樹脂; ポリエーテルスルホン系樹脂; ポリウレタン系樹脂; アセタール系樹脂; セルロース系樹脂;等、樹脂材料とするものを使用することができる。
【0032】
本例で用いられる樹脂フィルムは、例えば、上記の樹脂材料を1種または2種以上を使用して形成したものを使用することができる。上記材料からなる樹脂フィルムは、単独で使用してもよいし、接着剤等を使用して2層以上積層してもよい。
【0033】
本例では、樹脂フィルムとして、上記特性かつ厚みを持ち、かつ、ミクロボイド(微小な空隙)を有するポリプロピレン樹脂からなるものを用いた場合、特に良好な結果が得られる。
【0034】
ボイド(空隙)は、無機微粒子または有機フィラーを用いることで形成される。無機微粒子または有機フィラーの平均粒子径は、例えば0.01~15μm、より好ましくは0.01~8μmであるとよい。
【0035】
樹脂フィルム中での上記空隙の存在率は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上であるとよい。空隙存在率が少なすぎると、突刺強度が必要以上に高くなりすぎ、パンチング特性の低下を生じ得るからである。一方、空隙存在率は、好ましくは60%以下、より好ましくは35%以下であるとよい。空隙存在率が多すぎると、補助シート全体での機械的強度確保が難しくなり得る。
【0036】
本例で用いる樹脂フィルムとして特に好適な市販品としては、例えば、FPG60(ユポ・コーポレーション社製、厚さ60μm、延伸処理によりボイドを形成した多孔質ポリプロピレンフィルム)などが挙げられる。
【0037】
本例の加工補助用シートは、ベース基材のグリーンシートに積層される側に、粘着層が積層されていてもよい。粘着層はベース基材の両面に積層されていてもよい。
粘着層は、少なくとも樹脂成分を含む。樹脂成分としては、再剥離性があり、剥離時に糊残りを生じないものであればよく、このような成分としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系、ゴム系、ポリビニールエーテル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系などの樹脂成分が挙げられる。
【0038】
本例では、上記樹脂成分に架橋剤を配合させて粘着層としてもよい。架橋剤としては例えば、イソシアネート系化合物、アルミキレート、アジリジニル系化合物、エポキシ系化合物等が挙げられる。架橋剤の配合量は、樹脂成分の全固形分を100質量部としたときに、0.01~20質量部程度、配合すればよい。
【0039】
粘着層の接着力は、グリーンシートに対して、0.01~5.0N/25mmが好ましく、0.01~4.5N/25mmがより好ましく、0.01~4.0N/25mmがさらに好ましい。特に、0.01~3.0N/25mmが好ましく、0.01~2.8N/25mmがより好ましく、0.01~2.5N/25mmがさらに好ましい。当該範囲にすることによって、グリーンシートとの接着力を好適に維持することができ、且つ、グリーンシートから本例の加工補助用シートを剥離する際に、グリーンシート側への糊残りを発生することがない。0.01N/25mm未満であると、グリーンシートとの接着力が不足する場合があり、パンチング等の際に加工補助用シートが位置ずれしやすくなる。5.0N/25mm超であると、グリーンシートとの接着力が増大することから、使用目的を終え、グリーンシートから加工補助用シートを剥離する際にグリーンシート側へ糊残りを生じ、またグリーンシートの表面を荒らしてしまうおそれもある。
【0040】
粘着層の厚さは、それを増やすことで、グリーンシートとの接着力が向上する(同一の成分で比較した場合)が、1~15μmの範囲が一般的である。
【0041】
本例に係る加工補助用シートは、粘着層を含む場合、該粘着層を構成する樹脂成分を有機溶剤に溶解・分散させた粘着層形成用塗料をベース基材(樹脂フィルム)に塗布乾燥することにより形成することができる。
【0042】
なお、加工補助用シートが粘着層を含む場合、取扱性の観点で、粘着層を有する面にセパレータを設けることが好ましい。セパレータとしては、特に限定されず、紙や合成紙、ポリエチレンラミネート紙、プラスチックフィルム等が使用可能である。セパレータは、粘着層との離型性を向上させるため、粘着層と接する面に、ポリエチレンワックスやシリコーン離型剤を塗布し、離型処理を施したものであってもよい。
【0043】
本例に係る第1の加工方法(パンチング方法)は、セラミックグリーンシートの上面に本例の加工補助用シートを、その粘着層を対向させて積層した状態で、該加工補助用シートとともに前記グリーンシートに貫通孔をパンチングする。加工補助用シートは、使用目的(貫通孔のパンチング)を終えた後、グリーンシートから取り除かれる。
【0044】
本例に係る第2の加工方法(導体パターン形成方法)は、まず、本例の加工補助用シートに対し、セラミックグリーンシート表面に形成すべき導体パターン(配線回路パターン)に対応する穴あけ加工をパンチングにより施したもの(穴あけ加工済み補助シート)を準備する。次に、セラミックグリーンシートの上面に、準備した穴あけ加工済み補助シートを、その粘着層を対向させて積層する。この状態で、導体ペーストを補助シートの穴あき部分(打ち抜き穴)に充填することで、前記グリーンシートに導体パターンを形成する。穴あけ加工済み補助シートは、使用目的(導体ペーストの印刷)を終えた後、グリーンシートから取り除かれる。
【0045】
本例のパンチング方法及び導体パターン形成方法は、本例の加工補助用シートを用いるため、グリーンシート側へ食い込む方向に、バリや欠けが発生しない。このため、本例のパンチング方法は、パンチング後のグリーンシートに対し貫通孔の変形や詰まりを生じさせることがない。また本例の導体パターン形成方法は、グリーンシート上に形成される、導体ペーストパターンの変形や焼成後の導体パターンへのクラックを生じさせることがない。これらに加え、本例のパンチング方法及び導体パターン形成方法は、パンチング後または導体ペースト印刷後にグリーンシートとの間で浮きを生じることはないにもかかわらず、剥離の際、破断することもない。したがって、使用目的を終えた補助シートをグリーンシートから綺麗に取り除くことができる。さらに、グリーンシートへの積層または貼り合わせの際、位置合わせに苦労することは少なく、かつ積層または貼り合わせ時に皺が入ることもない。したがって、グリーンシートへの積層または貼り合わせの作業性向上も期待できる。
【実施例
【0046】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0047】
1.樹脂フィルムの準備
下記記載の樹脂フィルム(市販品)を準備した。
・フィルムa: 厚さ12μm、空隙非含有ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル社製、O310)
・フィルムb: 厚さ23μm、空隙非含有PETフィルム(東洋紡績社製、A4300)
・フィルムc: 厚さ38μm、空隙非含有PETフィルム(東洋紡績社製、A4300)
【0048】
・フィルムd: 厚さ40μm、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(サントックス社製、PA21)
・フィルムe-1: 厚さ50μm、PPSフィルム(東レ社製、トレリナ)
・フィルムe-2: 厚さ50μm、空隙非含有PETフィルム(東洋紡績社製、A4300)
【0049】
・フィルムf-1: 厚さ60μm、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム
・フィルムf-2: 厚さ60μm、OPPフィルム(サントックス社製、PA21)
・フィルムf-3: 厚さ60μm、空隙含有PPフィルム(ユポ・コーポレーション社製、FPG60)
【0050】
・フィルムg-1: 厚さ75μm、空隙非含有PETフィルム(東洋紡績社製、A4300)
・フィルムg-2: 厚さ75μm、空隙含有PETフィルム(東洋紡績社製、クリスパー)
・フィルムh: 厚さ80μm、TACフィルム
【0051】
・フィルムi: 厚さ100μm、空隙非含有PETフィルム(東洋紡績社製、A4300)
・フィルムj: 厚さ6μm、空隙非含有PETフィルム(三菱ケミカル社製、K200)
【0052】
2.樹脂フィルムの特性
(2-1)突刺強度
上記各樹脂フィルムa~jに対し、カテラン針(協和界面化学社製、サイズ:22G(=外径0.7mm)×長さ:33mm)をセットしたテンシロン万能材料試験機(A&D社製、RTC-1210A)を用い、針の先端を各樹脂フィルムに対向させた状態で、針を各樹脂フィルムに50mm/分の速度で進入させ、針が貫通するまでに各樹脂フィルムにかかった最大荷重の絶対値(単位はN)を読み取った。測定は各樹脂フィルムごとに5回ずつ行い、その平均値で示した。結果を表1に示す。
【0053】
(2-2)単位厚さ当たりの突刺強度
上記(2-1)で測定された各値を、各樹脂フィルムの厚さで除すことにより、単位厚さ(1μm)当たりの突刺強度(N/μm)を算出した。結果を表1に示す。
【0054】
3.シートサンプルの作製
[実験例1~14]
基材として、上記a~jを使用し、その片面に、アクリル系粘着剤(アクリル酸エステル共重合体(ライオンスペシャリティケミカルズ社製、AS409)100部に硬化剤(ライオンスペシャリティケミカルズ社製、B-45)2部を配合したもの)を4μmの厚さで塗布し、乾燥を行って粘着層を形成し、各実験例のシートサンプルを作製した。
【0055】
4.評価
各実験例で得られたシートサンプルについて、下記項目の評価をした。結果を表1に示す。
【0056】
(4-1)パンチング加工性
まず、ドクターブレード法でテープ成形され、100℃で3時間熱アニールを行って、セラミックグリーンシートを準備した。次に、得られたセラミックグリーンシートの上面に、各実験例で作製したシートサンプルをその粘着層を対向させて仮着(積層)した。次に、セラミックグリーンシートの下面にあるキャリアテープを剥がし、これを、カテラン針(協和界面化学社製、サイズ:22G(=外径0.7mm)×長さ:33mm)がセットされたテンシロン万能材料試験機(A&D社製、RTC-1210A)にセットし、各実験例で作製したシートサンプルを介してセラミックグリーンシートに貫通孔をパンチング加工した。
次に、シートサンプルに形成された貫通孔を、目視及びマイクロスコープ(KEYENCE社製、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9510)を用いて100倍で観察し、評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0057】
◎:バリや欠けの発生が全く見られない(非常に優れている)。
○:バリや欠けの発生が見られない(優れている)。
△:バリや欠けの発生がほぼ見られない(良好)。
×:バリまたは欠けの発生が見られる(不良)。
【0058】
(4-2)パンチング後の保持性
上記(4-1)によるパンチング加工後のグリーンシートの貫通孔付近を、マイクロスコープ(KEYENCE社製、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9510)を用いて100倍で観察し、グリーンシートとシートサンプルの間での浮きの発生状況を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0059】
○:浮きの発生が見られない(優れている)。
△:浮きの発生がほぼ見られない(良好)。
×:浮きの発生が見られる(不良)。
【0060】
(4-3)剥離性
上記(4-1)によるパンチング加工後のグリーンシートからシートサンプルを剥がし、グリーンシートの、シートサンプル引き剥がし面を、目視及びマイクロスコープ(KEYENCE社製、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9510)を用いて100倍で観察し、評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0061】
○:目視及びマイクロスコープで糊残りが確認できなかった(優れている)
△:目視では確認できなかったが、マイクロスコープで確認できた(良好)
×:目視で明らかに糊残りが確認でき、またはシートサンプルが破断した(不良)。
【0062】
【表1】
【0063】
5.考察
表1に示すように、ベース基材として突刺強度が10N以下で、かつ厚さ10μm以上の樹脂フィルムを用いた場合(実験例1,2,4,5,7,9,12)に、得られるシートサンプルの有用性が確認された。中でも、樹脂フィルムの厚さが50μm以上の場合(実験例7,9,12)、他の実験例(1,2,4,5)と比較して、パンチング加工性、剥離性及び保持性のバランスが優れていた。
【0064】
これに対し、突刺強度が10N以下でも厚さ10μm未満であったり、また厚さ10μm以上であっても突刺強度が10N超の場合(実験例3,6,8,10,11,13,14)、パンチング加工性、剥離性及び保持性のいずれかが不良となり、すべてを同時満足できないことが確認できた。